(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】レーザ三角測量装置及び較正方法
(51)【国際特許分類】
G01C 3/00 20060101AFI20220519BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
G01C3/00 120
G01C3/06 110A
(21)【出願番号】P 2021515181
(86)(22)【出願日】2019-09-09
(86)【国際出願番号】 EP2019073985
(87)【国際公開番号】W WO2020069822
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-05-14
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ドープ,エルウィン
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-015572(JP,A)
【文献】特開2006-030157(JP,A)
【文献】特開2017-198475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 3/00
G01C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置から物体までの距離を決定するための装置であって、
透過型デバイスの第1の表面と第2の表面との間に所定の距離を有する透過型デバイスであって、前記第1の表面が、放射ビームの第1の部分を反射するように配置され、及び前記第2の表面が、前記放射ビームの第2の部分を反射するように配置される、透過型デバイスと、
検出器であって、
i)前記放射ビームの前記第1の部分の少なくとも一部を前記検出器上の第1の箇所で受け取り、
ii)前記放射ビームの前記第2の部分の少なくとも一部を前記検出器上の第2の箇所で受け取り、
iii)前記透過型デバイス及び前記物体との相互作用後の前記放射ビームの少なくとも一部を前記検出器上の第3の箇所で受け取る
ように構成された検出器と、
前記検出器から信号を受信して、前記第1の箇所と前記第2の箇所との間の空間距離と、前記第1の箇所と前記第3の箇所との間の空間距離及び前記第2の箇所と前記第3の箇所との間の空間距離の少なくとも一方とに基づいて前記装置から前記物体までの前記距離を決定するように構成されたプロセッサと
を備える装置。
【請求項2】
前記透過型デバイスが透過板であり、並びに前記第1の表面が前記透過板の一方の側にあり、及び前記第2の表面が前記透過板の反対側にある、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記透過型デバイスが平行平面である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記透過型デバイスには、少なくとも1つの調整可能な反射面が設けられる、請求項1~3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記透過型デバイスは、
-少なくとも、第1の所定の厚さを有する第1の透過板と、第2の所定の厚さを有する第2の透過板と、又は
-各々が所定の厚さを有する複数の透過板
を備える、請求項1~4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記透過型デバイスが、前記物体から反射された前記放射ビームと交差しないように配置される、請求項1~5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記透過型デバイスは、前記物体から反射された前記放射ビームが前記透過型デバイスと相互作用せずに通過するための凹所を備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記放射ビームが、少なくとも、第1の放射ビームと第2の放射ビームとを含み、前記第1の放射ビーム及び前記第2の放射ビームが、幾何学的に異なる前記透過型デバイスと交差する、請求項1~7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
温度センサを更に備える、請求項1~8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記プロセッサが、
前記放射ビームの強度、及び
前記放射ビームの波長
の少なくとも一方を制御するように構成される、請求項1~9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の少なくとも1つの装置を備えるリソグラフィ装置。
【請求項12】
請求項1~10の何れか一項に記載の少なくとも1つの装置を備えるメトロロジ装置。
【請求項13】
請求項1~10の何れか一項に記載の少なくとも1つの装置を備えるカメラシステム。
【請求項14】
装置から物体までの距離を決定する方法であって、
放射ビームを提供することと、
前記放射ビームを前記装置内に配置された透過型デバイスに投影することと、
前記透過型デバイスを透過した前記放射ビームの少なくとも一部を前記物体に照射することと、
前記透過型デバイスの第1の表面により反射された前記放射ビームの第1の部分の少なくとも一部を検出器上の第1の箇所で受け取ることと、
前記透過型デバイスの第2の表面により反射された前記放射ビームの第2の部分の少なくとも一部を前記検出器上の第2の箇所で受け取ることと、
前記透過型デバイス及び前記物体との相互作用後の前記放射ビームの少なくとも一部を前記検出器上の第3の箇所で受け取ることと、
前記第1の箇所と前記第2の箇所との間の空間距離と、
前記第1の箇所と前記第3の箇所との間の空間距離及び
前記第2の箇所と前記第3の箇所との間の空間距離の少なくとも一方と
に基づいて前記装置から前記物体までの前記距離を導出することと
を含む方法。
【請求項15】
前記透過型デバイスが、前記透過型デバイスの前記第1の表面と前記第2の表面との間に所定の距離を有する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2018年10月2日に出願された欧州特許出願公開第18198239.8号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、距離測定デバイス及び方法に関する。より詳細には、本発明は、装置と物体との間の距離を測定するための三角測量変位装置、及び可動部品なしの光学インライン較正方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 物体表面までの距離を正確に測定する技術は、三角測量変位センサの使用によるものである。これらのセンサは、測定中に放射ビームが物体に投影されて、放射ビームの一部が受取要素、通常はリニアアレイ光電検出器に反射される、基本原理に基づいて動作する。距離測定は、放射ビームが物体表面に投影されて物体表面で反射され、それにより、反射された放射ビームが、較正された距離に対応する、較正されたベースライン位置からずれた位置で検出器により受け取られたときに実現される。センサに対する物体の距離は、受取要素に当たる放射ビームの位置を定める。したがって、物体とセンサとの間の距離が変化すると、受取要素上のビームの位置が変化する。変位センサが使用され得る前に、入力変数(センサと物体との間の空間距離)と出力変数との正確なマッピング関係を知る必要がある。このマッピング関係を知ることは較正により達成される。
【0004】
[0004] 変位センサは、表面の位置、振動、プロファイル測定値などの幾何学量の超精密測定に使用される。例えば、三角測量技術を使用することにより、基準、例えばセンサに対する物体までの距離又は物体の変位を、非接触測定が必要であるときでさえ高分解能で決定することができる。リソグラフィ装置(リソグラフィ装置に関する更なる情報は、米国特許第6952253号において得られる)では、例えば、可動部品、例えば可動ステージの位置を極めて正確に知る必要がある。このことは、これらの部品の位置が頻繁に監視されることを意味し、位置の頻繁な監視は、変位センサを使用した三角測量により実現することができる。キャリア、例えばウェーハステージの位置を高精度で知る必要がある、メトロロジ装置についても同じことが言える。追加的に、光学要素の位置、例えば、メトロロジデバイス及びカメラシステムにおいて使用されるレンズ又は回折格子の位置の測定及び監視も、リソグラフィ装置、メトロロジ装置内に、及び撮影デバイス内に配置された三角測量変位センサにより実施され得る。最後に、変位センサの使用は、可動ステージ又は光学要素に限定されず、ドリフトの原因となる様々な(準)静止部品にも適用され得ることが明らかである。
【0005】
[0005] 変位センサの精度は、センサ出力の、直線較正線からの直線性誤差偏差などの、固有の系統的誤差の影響を受ける。変位センサはサブミクロン分解能を有し得るが、直線性誤差は、分解能レベルよりもはるかに大きいことがある。直線性誤差は通常、定常的なものではない、例えば環境変化に起因するものなので、変位センサは、信頼性の高い測定結果を確保するために頻繁な較正を必要とする。位置が正確に判明している測定放射ビーム中にゲージ基準を配置することにより三角測量変位センサ(又はより一般には、装置)を較正するのが一般的である。これらのゲージ基準は、物体平面の近傍に又は物体平面内に位置決めされ、測定すべき物体の代わりとなる。通常、測定装置は、較正、すなわち、エクスシチュ較正を実施するために、システム又はシステムが使用されている機能環境、例えばリソグラフィ装置から取り外す必要がある。しかし、システムの環境条件は、エクスシチュ較正中の環境条件と異なることがある。インシチュ較正は、放射ビーム中にゲージ基準を配置するために変位センサが利用可能である場合に有利であることがある。インシチュ較正手順とエクスシチュ較正手順の両方において、外部ゲージ基準は、較正手順中に放射ビームの内外に移動させて配置する必要があり、操作に時間がかかり及び操作が面倒であるだけでなく、これらの較正方法はシステムの休止時間をもたらす。
【発明の概要】
【0006】
[0006] 本発明の目的は、装置を較正するための較正要素をシステムの内外に移動させる必要がない三角測量技術に基づく距離測定装置を提供することである。上記を考慮すると、本発明は、デバイスの第1の表面と第2の表面との間に所定の距離を有する、透過型デバイスを備える、装置から物体までの距離を決定するための装置を提供する。透過型デバイスの第1の表面は、放射ビームの第1の部分を反射するように配置され、及び透過型デバイスの第2の表面は、放射ビームの第2の部分を反射するように配置される。装置は、放射ビームの第1の部分の少なくとも一部を検出器上の第1の箇所で受け取り、放射ビームの第2の部分の少なくとも一部を検出器上の第2の箇所で受け取り、及び透過型デバイス及び物体との相互作用後の放射ビームの少なくとも一部を検出器上の第3の箇所で受け取るように構成された検出器を更に備える。装置は、検出器から信号を受信して、第1の箇所と第2の箇所との間の空間距離及び第1の箇所と第3の箇所との間の空間距離及び/又は第2の箇所と第3の箇所との間の空間距離に基づいて装置から物体までの距離を決定するように構成されたプロセッサを備える。
【0007】
[0007] 上記を考慮して、本発明は、内部基準又はゲージを備える距離測定のための装置を提供する。すなわち、透過型デバイスは、2つの基準表面として使用される第1の表面及び第2の表面を提供する。これらの2つの基準表面の相互間距離は事前に定められる。これにより、透過型デバイスはゲージ基準として使用され得る。第1の表面及び第2の表面によりそれぞれ反射された放射ビームの第1の部分及び第2の部分は、検出器上の異なる箇所、すなわち第1の箇所及び第2の箇所で受け取られる。これにより、第1の表面と第2の表面との間の空間距離が検出器上の箇所の差に変換される。したがって、物体により反射されて検出器により検出器上の箇所で少なくとも一部が受け取られる放射ビームは、物体と装置の第1の表面及び/又は第2の表面との間の空間距離と相関があることがある。
【0008】
[0008] 装置は、ゲージ基準として使用され得る透過型デバイスを備えるので、物体により反射された放射ビームの検出器による記録が、透過型デバイスの表面で反射された放射ビームに対応する記録と比較され得る。したがって、各測定は、エクスシチュ較正のための外部ゲージ基準を挿入せずに、又はエクスシチュ較正のための環境から装置を取り外さずに、透過型デバイスからの反射により較正され得る。
【0009】
[0009] 実施形態では、装置は、透過板により構成される透過型デバイスを備える。第1の表面は透過板の一方の側にあり、及び第2の表面は透過板の反対側にある。例えば、2つの分離した個別の要素の代わりに板を使用することが、安定性の観点から好ましい。透過板の場合には、第1の表面と第2の表面とが強固に接続される。これにより、両表面間の距離が保たれる。
【0010】
[00010] 実施形態では、透過型デバイスは平行平面透過板である。透過型デバイスの第1の表面と第2の表面の両方は、透過板の第1の表面で反射された放射ビームと第2の表面で反射された放射ビームとが互いに平行に伝搬するような向きに等しく配置される。これにより、透過板と検出器との間の距離は、反射された放射ビームの検出器上の第1の箇所と第2の箇所との間の空間距離に影響を及ぼさない。
【0011】
[00011] 実施形態では、透過型デバイスには、少なくとも1つの調整可能な反射面が設けられる。少なくとも1つの調整可能な反射面は、切り替え可能なミラーを備え得、及び反射率は、コントローラにより制御され得る。少なくとも1つの反射面は、純粋な反射状態に、純粋な透過状態に、又は中間状態に切り替えられ得る。この反射面の切り替えは、第1の表面及び/又は第2の表面を通過する放射パワーの量を制御でき、これにより、検出器と相互作用する反射された放射ビームの強度も制御できるという利点を有する。加えて、透過型デバイスの反射率、ひいては透過率を調整することにより、物体に衝突する放射パワーを制御することができる。この放射パワーの制御は、物体への放射誘起損傷を防止するのに必要であることがある。
【0012】
[00012] 実施形態では、装置は、少なくとも、第1の所定の厚さを有する第1の透過板と、第2の所定の厚さを有する第2の透過板とを備える。別の実施形態では、装置は、各々が所定の厚さを有する複数の透過板を備える。各透過板は、反射された追加のビームを導入し得る。各透過板は、反射された追加の放射ビームを検出器へ誘導するように配置される。したがって、2つ以上の透過板を備える透過型デバイスを距離測定デバイスに設けることにより、反射される放射ビームの数、及び検出器による対応する記録を増加させてもよい。このことは、基準位置の数が増加するので、装置の較正及び直線性を改善するのに有益であることがある。
【0013】
[00013] 実施形態では、透過型デバイスは、物体から反射された放射ビームと交差しないように配置される。この配置は、物体から反射された放射ビームが透過型デバイスと相互作用せずに通過するための凹所により達成される。このように、物体から反射された放射ビームは、透過型デバイスの影響を受けない。これにより、反射された放射ビームの更なる反射及び/又は吸収が防止される。
【0014】
[00014] 実施形態では、放射ビームは、少なくとも、第1の放射ビームと第2の放射ビームとを含み、第1の放射ビーム及び第2の放射ビームは、幾何学的に異なる透過型デバイスと交差する。互いに対して異なる向きに配置される少なくとも2つの放射ビームを使用することにより、物体上の少なくとも2箇所についての物体と装置との間の距離を測定することができる。これにより、2つ以上の次元での距離の測定が可能となる。
【0015】
[00015] 実施形態では、装置は、環境変化を監視するための温度センサを備える。環境温度の変化により、例えば、透過型デバイスの幾何学的特性が変化する可能性がある。結果として、検出器により記録される基準位置が、幾何学的変化に応じてずらされることがある。装置の温度を監視することにより、そのような熱誘起のずれを観測して補正することができる。
【0016】
[00016] 実施形態では、装置は、放射ビームの強度及び/又は放射ビームの波長及び/又は透過型デバイスの少なくとも1つの表面の反射率を制御するように構成されたプロセッサを備える。放射ビーム及び/又は透過型デバイスの光学特性を制御することにより、距離測定を物体の表面特性に対して最適化し及び/又は適合させることができる。
【0017】
[00017] 本発明の態様によれば、本明細書に記載する装置を備えるリソグラフィ装置が提供される。装置は、リソグラフィ装置内の物体、例えばステージ又は光学要素の距離又は変位を測定するために使用され得る。
【0018】
[00018] 本発明の更なる態様によれば、本明細書に記載する装置を備えるメトロロジ装置が提供される。この装置は、メトロロジ装置内の物体、例えば移動ステージ又は光学要素の距離又は変位を測定するために使用され得る。
【0019】
[00019] 本発明の態様によれば、本明細書に記載する装置を備えるカメラシステムが提供される。カメラシステムは、例えば、メトロロジデバイスでの又は更には撮影デバイスでの撮像目的で使用され得る。カメラシステム内の光学要素の位置は、例えば、ドリフト、摩耗、又はヒステリシスにより生じる、予想される位置からずれることがあり、装置を用いて測定及び/又は監視することができる。
【0020】
[00020] ここで、本発明の実施形態について、添付の概略図を参照しながら単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1a】三角測量変位センサを較正するための一般的な方法の概要図を示す。
【
図1b】三角測量変位センサを較正するための一般的な方法の概要図を示す。
【
図1c】三角測量変位センサを較正するための一般的な方法の概要図を示す。
【
図3】本発明の実施形態で使用され得る透過型デバイスの概略図を示す。
【
図4】本発明による透過型デバイスの上面図を示す。
【
図5a】本発明の実施形態で使用され得る透過型デバイスの概略図を示す。
【
図5b】本発明の実施形態で使用され得る透過型デバイスの概略図を示す。
【
図6】本発明の実施形態で使用され得る透過型デバイスの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[00021] ここで、類似の参照番号が同一又は機能的に同様の要素を表す、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明のコンポーネントは、概略的に説明し図に図示するように、多種多様な構成で実装され得る。したがって、図に表される、本発明の装置及び方法の実施形態の以下のより詳細な説明は、特許請求の範囲に記載される、本発明の範囲を限定するように意図されたものではなく、本発明の好ましい実施形態の単なる代表的なものにすぎない。
【0023】
[00022]
図1は、距離測定デバイス又は装置とも呼ばれる、三角測量変位センサ100を較正するために使用される方法を概略的に示す。一般的な較正方法は、
図1a~
図1cに図示するように、いくつかの手順ステップを含み得る。この例では、簡略化する理由から、較正ステップの数が3つに限定されている。当業者には、較正又は精度を改善するためにより多くのステップが含まれ得ることが理解されよう。ここで、一般的な較正手順ステップをより詳細に説明する。
【0024】
[00023]
図1aに図示するように、較正手順の第1のステップの間に、放射源110は、センサ100から既知又は所定の距離をおいて位置決めされた物体113に放射ビーム111を提供する。物体113は、較正手順中に、ゲージ基準として使用される。放射ビーム111は、第1の位置114における物体113の表面で反射し、これにより、反射された放射ビーム112を形成する。第1の位置114は、基準位置又はゼロ位置と呼ばれることがある。検出器120は、反射された放射ビーム112の少なくとも一部を受け取るように構成される。通常、検出器120は、放射感応性要素又は画素のアレイ、例えばCCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサを備える。検出器120は、反射された放射ビーム112が、第1の位置114に対応する、第1の画素位置121で検出器120に当たるように配置される。
【0025】
[00024]
図1bに図示する、較正手順の第2のステップでは、センサ100に対する物体113の距離が変化し(物体がz軸に沿って移動し)、それにより、放射ビーム111が、ゼロ位置114と異なる位置である、第2の位置115における物体113の表面で反射する。その結果、反射された放射ビーム112が、ゲージ基準又は物体113の第1の位置114に対応する第1の画素位置121からずらされた、第2の位置115に対応する第2の画素位置122で検出器120に当たる。
【0026】
[00025]
図1cに図示する、較正手順の第3のステップでは、放射ビーム111が、第1の位置114及び第2の位置115と異なる位置である、第3の位置116における物体表面で反射するように、物体113がz軸に沿って変位する。これにより、反射された放射ビーム112は、第1の画素位置121及び画素位置122と異なる検出器上の位置である、第3の位置116に対応する第3の画素位置123で検出器120に当たる。
【0027】
[00026] 図示の較正手順中に、物体表面の3つの位置(114、115、及び116)が高精度で決定される。これらの較正された物体位置の測定は、通常、外部装置により実施される。
【0028】
[00027] また、異なるz位置にゲージ基準を位置決めする代わりに、異なる高さステップを有する、例えば、3つのレベルが3つの異なる位置114、115、及び116に対応する、単一のゲージ基準が、三角測量変位センサ100を較正するために使用されることがある。ゲージ基準113を異なる位置に位置決めするのと同様に、各ステップの高さの差を正確に測定し較正する必要がある。
【0029】
[00028] 物体位置(114、115、及び116)又はゲージ基準113の高さステップと、反射された放射ビーム112が検出器120に当たる位置(画素位置121、122、及び123)との相関関係により、三角測量変位センサ100が較正される。検出器120の画素位置をz位置に変換するルックアップテーブル又は数学関数を評価するために配置されるプロセッサが、位置又は変位の較正及び測定のために一般的に使用される。未知の位置における測定物体の表面から反射された放射ビーム112の画素位置を決定することにより、較正結果に基づいて物体の位置が決定される。
【0030】
[00029]
図1に示す三角測量変位センサ100は概略図である。放射ビーム111及び/又は112を整形し及び/又は集束させるために、光学要素、例えばレンズ又はミラーが使用され得ることは明らかである。明確にする理由から、これらの光学コンポーネントは図に表示されていない。
【0031】
[00030] 前の段落で説明したように、外部ゲージ基準113を三角測量変位センサ又は距離測定デバイス100の前方に高精度で位置決めする必要がある。このことは、エクスシチュ較正のために、センサ100をその機能環境から取り外す必要があること、又はインシチュ較正のために、センサ100が配置されるシステム内にゲージ基準113を正確に配置する必要があることを意味する。両方の状況では、三角測量変位センサ100が利用可能である必要がある。加えて、ゲージ基準113を挿入することにより、環境条件が乱されることがある。
【0032】
[00031]
図2は、物体232の位置を決定するための、概して言えば、物体232と装置200との間の距離を決定するための、又は装置200を較正するための較正要素をシステムの内外に移動させる必要がない三角測量技術に基づいて、装置200を基準にして物体232の変位を決定するための装置200を図示する、本発明の実施形態を示す。装置200は、三角測量変位センサ又は距離測定デバイスとも呼ばれる。放射源210により提供される放射ビーム211は、デバイスの第1の表面230と第2の表面231との間に所定の距離235を有する透過型デバイス213と相互作用する。放射ビーム211は、第1の表面230で少なくとも一部が反射され、反射された第1の放射ビーム240を提供する。放射ビーム211の一部は、第1の表面230で透過され得、第2の表面231と相互作用し得る。透過された第1の放射ビーム211aは、第2の表面231で一部が反射され、反射された第2の放射ビーム241を提供し得る。透過された放射ビーム211aの一部は、第2の表面231で透過し得て、透過された第2の放射ビーム211bを形成し、この透過された第2の放射ビーム211bは、物体232、例えば、第2の表面231から距離236だけ変位させた、調査中の物体と相互作用し得る。透過された第2の放射ビーム211bは、物体232の表面で少なくとも一部が反射し得て、これにより、反射された第3の放射ビーム242を提供する。
【0033】
[00032] 好ましい実施形態では、透過型デバイス213は、所定の厚さ235を有する、以下、透過性較正板とも呼ばれる、透過板である。第1の表面230は、透過板213の一方の側にあり、及び第2の表面231は、透過板213の反対側にある。透過板213を使用することは、第1の表面230と第2の表面231との間の距離を正確に測定することができ、及びこの距離が経時的に不変のままであるという利点を有する。較正基準(透過性較正板)として機能する硬質で剛性の透過型デバイス213を有することも好ましい。加えて、装置内に配置された透過性較正板213はまた、その環境からの汚染及び/又は外乱を防止し得る。
【0034】
[00033] 三角測量変位センサ200は、反射された放射ビーム240、241、及び242の少なくとも一部を受け取って検出するように配置された、検出器220を備える。反射された放射ビーム(240~242)の各々は、異なる箇所で検出器220に衝突する。検出器220は、検出器220の表面に入射する放射の強度を検出し、放射強度を表す出力信号を生成する。検出器220は、一般的に画素として知られる、放射感応性要素のアレイを備え得る。放射感応性要素のアレイは、CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサにより形成され得る。反射された第1の放射ビーム240は、第1の画素位置250で検出器220に衝突し得る。反射された第2の放射ビーム241は、第2の画素位置251で検出器に衝突する前に、透過型デバイス213を2回通過する。反射された第3の放射ビーム242は、画素位置252で放射感応性アレイと相互作用する前に、透過型デバイス213を2回通過し得る。
【0035】
[00034]透過型デバイス213は、好ましくは、平行平面透過板である。これにより、反射された第1の放射ビーム240の伝搬経路と反射された第2の放射ビーム241の伝搬経路とが平行である。例えば、第2の表面231により形成された表面平面が第1の表面230により形成された表面平面に対して傾斜している場合の、非平行な表面を有する透過型デバイスも使用され得る。しかし、反射された第2の放射ビーム241が、反射された第1の放射ビーム240から発散し得るので、非平行な透過板では、追加の較正ステップが必要となる。そのような状況では、透過板213と検出器220との間の距離により、第1の画素位置250と第2の画素位置251との画素位置の差が決まる。平行平面透過板213の場合、反射された放射ビーム(240、241)は発散せず、これにより、検出器220上の第1の画素位置250と第2の画素位置251との画素位置の差は、平行平面透過板213と検出器220との間の距離により制御されない。
【0036】
[00035]
図2は、画素又は1組の画素により受け取られ記録されたときの、放射強度を、チャンネル数としても報告される、画素数の関数として図示するグラフを示す。各画素位置は反射点に対応する。例えば、第1の画素位置250は、較正板213の第1の表面230での反射に対応する。よって、画素位置と物体(又は反射位置)との相関関係を取得することができる。この情報は、プロセッサ221により利用可能であり得る、ルックアップテーブルに格納することができる。
【0037】
[00036] 放射ビーム211は、ゼロよりも大きな入射角234で平行平面透過板213と相互作用するように配置され得る。これにより、検出器220へ誘導された第1の反射ビーム240及び第2の反射ビーム241の経路が、空間的に分離される。両方のビーム経路の空間的分離は、
図2に概略的に図示するように、平行平面透過板213の厚さ235と入射角234とにより決定される。
【0038】
[00037]
図2に図示するように、透過型デバイス213は、検出器220において少なくとも2つの記録を誘発し得る。第1の画素位置250と第2の画素位置251との画素位置の差は、透過型デバイス213に対する放射ビーム211の入射角234と、透過型デバイス213の第1の表面230と第2の表面231との間の光路長とにより制御される。光路長は、両表面間の幾何学的距離、すなわち板厚さ235と、第1の表面230と第2の表面231との間の材料の屈折率とにより決定される。封入材料の屈折率を定めるのみならず、距離235を又は透過板の場合には厚さを正確に測定することにより、第1の画素位置250と第2の画素位置251との画素位置の差が、既知の長さ又は距離の測度となる。したがって、装置200内に配置された、平行平面透過板であり得る、透過型デバイス213は、外部ゲージ基準を配置せずに装置200を較正するために使用され得る。
【0039】
[00038] 透過板213の所定の厚さ235と、第1の反射ビーム240及び第2の反射ビーム241の記録のための画素位置の差との相関関係により、装置200と物体232との間の距離236は、第3の反射ビーム242について記録された画素位置252を用いて決定される。すなわち、装置200は、検出器220から信号222を受信して第1の画素位置250と第2の画素位置251との間の空間距離及び第1の画素位置250と第3の画素位置252との間の空間距離及び/又は第2の画素位置251と第3の画素位置252との間の空間距離に基づいて装置200から物体232までの距離を決定するように構成されたプロセッサ221を備える。
【0040】
[00039]
図2を参照すると、物体232の距離測定中に、透過型デバイス213の反射された放射ビームも記録される。したがって、調査中の物体232の基準位置(250及び251)及び位置252が同時に記録される。このことは、装置200の較正が実際の距離又は変位測定中に実施され得ることを意味する。これには、装置200を(再)較正するのに外部ゲージ基準が必要でないという利点がある。
【0041】
[00040] 当業者であれば、測定精度及び測定範囲が入射角234により設定され得ることを理解するであろう。すなわち、放射ビーム211の入射角234を減少させることにより、反射される放射ビームの空間的広がりが増大し、したがって、画素位置の差が増大する。これにより、装置200の距離測定範囲が、検出器220の放射感応性アレイの幾何学的サイズ又は空間的捕捉範囲により制限され得る。入射角234を増大させることにより、画素位置の差のみならず、反射される放射ビームの空間的広がりも減少する。そして、入射角234の増大は、装置200の距離測定範囲を拡大する必要がある場合に有益であることがある。
【0042】
[00041] 入射角234は、検出範囲を改変し及び定めるために調整可能であり得る。
【0043】
[00042] 検出器220に衝突する放射ビームのスポットは、大きさが単一の画素よりも大きいことがある。このことは、反射された放射を2つ以上の画素が受け取り得ることを意味する。これにより、放射パワーを画素の集合又は組に分散させる。そのような場合、基準位置又は測定位置を定めるために、画素集合の(加重)平均又は中心画素数が決定され得る。
【0044】
[00043] 放射源210は、少なくとも放射ビーム211を装置200に直接又は光ファイバを介して提供するために配置された、レーザ、スーパールミネッセンスダイオード(SLD)、又は発光ダイオード(LED)であり得る。当業者であれば、装置200に放射ビーム211を提供するためにファイバが使用されることがあり、これにより、装置200に対して離れた位置に放射源210を配置することが可能であることを理解するであろう。このことは、例えば、装置環境への放射源210の熱的影響を避けるための、技術的観点からのみならず、メンテナンスの観点からも有益であることがある。
【0045】
[00044] 放射ビーム211は、単一の放射波長又は複数の波長を含み得る。測定精度を改善するために、波長の選択がなされ得る。すなわち、異なる波長の放射ビームは、異なるように物体232の表面と相互作用し得る。1組の放射波長を使用することにより、波長依存性が回避され得る。
【0046】
[00045] 当業者であれば、三角測量変位センサとして使用される、装置200が1つ又は複数の光学要素を備え得ることを理解するであろう。装置は、例えば、放射ビーム211及び/又は反射された放射ビーム240~242を誘導し、整形し、及び/又は集束させるように配置される1つ若しくは複数のレンズ及び/又はミラーを備え得る。
【0047】
[00046] 装置200は、検出器220から信号222を受信するように構成されたプロセッサ221を備え得る。検出器信号222は、反射された放射ビーム(240、241、242)により照射される画素(250、251、252)の情報を少なくとも含む。プロセッサ221は、物体232の位置又は変位を決定するために検出器220の画素位置をz位置に変換するルックアップテーブル又は数学関数を評価するために配置され得る。
【0048】
[00047] プロセッサ221は、放射源210を制御するためのコントローラを備え得る。例えば、放射ビーム211の強度及び/又は波長は、コントローラにより制御され得る。
【0049】
[00048]
図3は、
図2に示すように、装置200において使用され得る透過型デバイス313の実施形態を示す。放射ビーム311は、透過型デバイス313と相互作用するように配置される。放射ビーム311は、第1の表面330で少なくとも一部が反射され、反射された第1の放射ビーム340を提供する。放射ビーム311の一部は、透過され、第2の表面331と相互作用し得る。透過された第1の放射ビーム311aは、第2の表面331で一部が反射され、反射された第2の放射ビーム341を提供し得る。透過された放射ビーム311aの一部は、第2の表面331で透過され、透過された第2の放射ビーム311bを形成し得、及び物体332、例えば、第2の表面331から距離336だけ変位させた、調査中の物体と相互作用し得る。透過された第2の放射ビーム311bは、物体332の表面で少なくとも一部が反射され、これにより、反射された第3の放射ビーム342を提供し得る。
【0050】
[00049]
図3に図示するように、透過型デバイス313は、物体332から反射された放射ビーム342と相互作用しないように配置される。この実施形態の利点は、透過型デバイス313による外乱が少ないことである。すなわち、反射された第3の放射ビーム342が透過型デバイス313と相互作用する場合(例えば、
図2の第3の放射ビーム242を参照)、反射された第3の放射ビームの一部が、第2の表面331及び第1の表面330で反射され、これにより、検出器220が受け取るときの放射強度が低減される。加えて、第1の表面330と第2の表面331とにより封入された材料による放射の吸収に起因して、光伝送損失が発生することがある。反射と吸収の両方が好ましくないことがある。
【0051】
[00050] 透過型デバイス313は、透過板313の第1の表面330と第2の表面331の一方又は両方に直交して配置された側面337を備える透過板であり得る。異なる実施形態では、例えば
図3に図示するように、透過板313は、面取りされた側面337を備える。この側面337は、装置200の近傍の物体332までの距離を測定するのに有益であることがあり、距離336は、透過板313の厚さ335と同程度である。
【0052】
[00051] 反射された第3の放射ビーム342は、
図4に図示するように、凹所、開口部、又は隙間領域370のため、透過型デバイス313と相互作用しないことがある。
図4は、透過板313における空洞化した領域370の2つの概略的な実施形態の上面図を示す。実施形態では、反射された第3のビーム342が通過すると予測される位置において、透過板313の一部が欠けていることがある。すなわち、透過板313の大きさは、反射された第3のビーム342と干渉しないような大きさである。例えば、機械的剛性、環境調整のために、又は装置200の汚染を避けるために、透過板313を延長することが有利であることがある。これにより、透過板313に開口部370を作成するために、材料が除去され得る。開口部370は、正方形、矩形、又は円形の形態であり得る。
【0053】
[00052]
図5a及び
図5bは、それぞれ制御可能な反射率を有する第1の表面430及び第2の表面431を備えた、三角測量変位センサとして使用される、装置200において使用され得る透過型デバイス413(又は透過板)の実施形態を概略的に図示する。一方又は両方の表面(430、431)は、切り替え可能なミラーに電気信号を印加することによりその反射率を調節できる、スマートガラスとしても知られる、切り替え可能なミラーを備え得る。切り替え可能なミラーは、透過板413の第1の表面430若しくは第2の表面431の何れかに又は透過板413の両面に堆積された薄膜液晶層又は合金薄膜からなってもよい。
【0054】
[00053]
図5aに図示する状況では、第1の表面430における切り替え可能なミラーは、純粋な反射状態に切り替えられる。これにより、放射ビーム411は、第1の表面430により反射され、反射された第1の放射ビーム440を提供する。
図5bに図示する状況では、第1の表面430における切り替え可能なミラーは、透明状態に切り替えられ、及び第2の表面431における切り替え可能なミラーは、純粋な反射状態に切り替えられる。これにより、放射ビーム411は、透過板413を透過し、第2の表面431における切り替え可能なミラーで反射して、反射された第2の放射ビーム441を提供する。
【0055】
[00054] 当業者であれば、各切り替え可能なミラーが中間状態に切り替えられ得ることを理解するであろう。切り替え可能なミラーは、調整可能な反射面であり得る。例えば、第1の表面430における切り替え可能なミラーが、切り替えられて70%の透過率を有する状態に調整され得る。
【0056】
[00055] 透過板213(413)の1つ又は複数の表面に切り替え可能及び調整可能なミラーを設けることが、透過板213及び/又は物体232と相互作用する放射強度を制御するのに有益であることがある。そのような配置は、例えば、距離測定の前に装置200を較正するための、反射された第1の放射ビーム240及び/又は反射された第2の放射ビーム241において十分な放射強度を確保するために使用され得る。
【0057】
[00056] 加えて、透過型デバイス213の少なくとも1つの表面の反射率、ひいては透過率を調整することにより、物体232に衝突する放射パワーを制御することができる。この放射パワーの制御は、物体232への放射誘起損傷を防止するのに必要であることがある。
【0058】
[00057] 透過型デバイス213は、両方とも所定の厚さを有する、第1の透過板及び第2の透過板を備え得る。或いは、
図6に図示するように、透過型デバイス513は、装置200内に配置され得る、各々が所定の厚さを有する複数の透過板(透過性較正板)を備え得る。各光学板は、反射された追加のビームを導入し得る。したがって、2つ以上の透過板を備える透過型デバイス513を装置200に設けることにより、反射される放射ビーム545の数を増加させてもよい。このことは、基準位置、すなわち反射位置及び画素位置の数が増加するので、装置200の較正を改善するのに有益であることがある。そして、3つ以上の位置で、システムの直線性を確認及び較正することができる。
【0059】
[00058] 透過型デバイス513の表面の各々は、切り替え可能なミラーを備え得る。これにより、各表面の反射率及び透過率が調整可能であり得る。
【0060】
[00059] 当業者であれば、(三角測量変位センサ又は距離測定デバイスとして使用される)装置200が、物体232までの距離を決定するために2つ以上の放射ビーム211を含み得ることを理解するであろう。幾何学的に異なる透過型デバイス213と交差する少なくとも第1の放射ビーム及び第2の放射ビームを配置することにより、例えば、各放射ビームが異なる入射角234を有するか、又は各放射ビームが異なる箇所で伝搬するか、又は各放射ビームが異なる幾何学的向きを有し、測定精度が改善され得る。追加的に、(準)2次元距離測定は、2つ以上の放射ビームを使用して実施され得る。第1の放射ビーム及び第2の放射ビームは両方とも同じ波長を有し得る。例えば、物体232により反射された受け取られる放射ビーム242の強度を最適化するために、異なる波長も提供され得る。すなわち、物体232は、異なるように、異なる波長の放射と相互作用し得る。
【0061】
[00060] 環境温度は、距離測定の精度に影響を及ぼすことがある。例えば、環境温度の変化により、透過型デバイスの幾何学的特性が変化する可能性がある。結果として、検出器により記録される基準位置が、幾何学的変化に応じてずらされることがある。誤った距離測定を防止するために、装置200は、温度センサを備え得る。これにより、装置200内の熱誘起変化を監視することができ、物体までの距離を決定するときに、この熱誘起変化を考慮に入れることができる。
【0062】
[00061] 上記で説明した装置200は、周囲環境、真空環境、及び高圧環境で適用され得る。
【0063】
[00062] リソグラフィ装置は、三角測量変位センサとして使用される、本発明の実施形態による1つ又は複数の装置200を備え得る。1つ又は複数の装置200は、ステージ、例えばレチクルステージ又はウェーハステージの位置を測定及び/又は監視するために使用され得る。1つ又は複数の装置200はまた、リソグラフィ装置において使用されるメトロロジデバイス内の、光学コンポーネント、例えば、レンズ、ミラー及び/又は回折格子の動きを監視するように構成され得る。リソグラフィ装置内のステージ及びメトロロジデバイスの利用は一般的に困難である。インシチュ較正は、概して、三角測量変位センサの利用可能性に起因して可能でない、このことは、三角測量変位センサをエクスシチュ較正する必要があることを意味する。本発明の実施形態による三角測量変位センサ200の適用では、(エクスシチュ)較正のために三角測量変位センサを構築又は取り外す必要はない。そして、このことは、リソグラフィ装置の生産性に有益である。
【0064】
[00063] 例えば、メトロロジデバイス又は更には撮影デバイスでの撮像目的で使用される、カメラシステムでは、光学要素の位置は、予測される位置からずれることがある。この位置ずれは、例えば、光学要素のドリフト、摩耗、及び/又はヒステリシスにより生じることがある。この位置ずれにより、誤った記録又は焦点外画像がもたらされることがある。1つ又は複数のレンズの位置を三角測量により測定又は監視することが好ましい場合がある。カメラシステムに本発明の実施形態による1つ又は複数の装置200を設けることにより、三角測量変位センサ(装置200)のインシチュ及びリアルタイム較正の利点がもたらされ、これにより、1つ又は複数の光学要素の誤った位置を補正する機会がもたらされ得る。
【0065】
[00064] 本文では、リソグラフィ装置との関連で本発明の実施形態について具体的に言及がなされ得るが、本発明の実施形態は他の装置において使用されることがある。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、或いはウェーハ(若しくは他の基板)又はマスク(若しくは他のパターニングデバイス)などの物体を測定又は処理する任意の装置の一部を形成することがある。これらの装置は、一般にリソグラフィツールと呼ばれることがある。そのようなリソグラフィツールは、真空条件又は周囲(非真空)条件を使用することがある。
【0066】
[00065] 本発明の具体的な実施形態を上記で説明してきたが、上記で説明した以外の方法で本発明が実施され得ることが理解されるであろう。上記の説明は、限定的なものではなく、例示的なものと意図されている。したがって、以下に記載する特許請求の範囲から逸脱することなく、説明したように本発明に修正がなされ得ることは、当業者には明らかであろう。