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特許7076237下地剤、及び相分離構造を含む構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】下地剤、及び相分離構造を含む構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 153/02 20060101AFI20220520BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220520BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20220520BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20220520BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
C09D153/02
C09D5/00 D
B82Y30/00
B82Y40/00
B05D7/24 302J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018049774
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2018159061
(43)【公開日】2018-10-11
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2017057366
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】川上 晃也
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-216859(JP,A)
【文献】特開2016-108435(JP,A)
【文献】特開2014-185311(JP,A)
【文献】特開2014-185318(JP,A)
【文献】国際公開第2014/097993(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/098025(WO,A1)
【文献】特開2015-144262(JP,A)
【文献】IN, I. et al., Side-Chain-Grafted Random Copolymer Brushes as Neutral Surfacesfor Controlling the Orientation of Block Copolymer Microdomains inThin Films,Langmuir,(2006), vol.22,pp.7855-7860,DOI:10.1021/la060748g
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
B05D 1/00- 7/26
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成した、ブロックコポリマーを含む層、を相分離させるために用いられる下地剤であって、
樹脂成分(A)を含有し、
該樹脂成分(A)は、第1のポリマーブロックと第2のポリマーブロックとが下記一般式(Y1)で表される連結基を介して結合した高分子化合物(A1)を含
前記第1のポリマーブロック及び前記第2のポリマーブロックが、いずれもスチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位を有する下地剤。
【化1】
[一般式(Y1)中、Y b01 はそれぞれ独立に単結合又は炭素数1~3のアルキレン基であり、R b1 はそれぞれ独立に基板密着性基である。波線は前記第1のポリマーブロック又は前記第2のポリマーブロックとの結合手である。]
【請求項2】
前記基板密着性基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、チオール基、スルホ基、ホスホン酸基、アミノ基、及びアミド基からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の下地剤。
【請求項3】
前記高分子化合物(A1)の数平均分子量は、2000~100000である、請求項1又は2に記載の下地剤。
【請求項4】
前記第1のポリマーブロックの数平均分子量は、1000~50000である、請求項3に記載の下地剤。
【請求項5】
前記第1のポリマーブロック及び第2のポリマーブロックの少なくとも一方は、置換基を有してもよいスチレン骨格を含む構成単位を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の下地剤。
【請求項6】
基板上に、請求項1~5のいずれか一項に記載の下地剤を塗布して、下地剤層を形成する工程と、
該下地剤層の上に、ブロックコポリマーを含む層を形成する工程と、
該ブロックコポリマーを含む層を相分離させる工程と、
を有する、相分離構造を含む構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地剤、及び相分離構造を含む構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)のさらなる微細化に伴い、より繊細な構造体を加工する技術が求められている。このような要望に対し、互いに非相溶性のブロック同士が結合したブロックコポリマーの自己組織化により形成される相分離構造を利用して、より微細な構造体を形成する技術開発が行われている。
【0003】
ブロックコポリマーの相分離を利用するためには、ミクロ相分離により形成された自己組織化ナノ構造を、特定の領域のみに形成し、かつ、所望の方向へ配列させることが必須となる。
かかる自己組織化ナノ構造の位置制御及び配向制御を実現するため、ガイドパターンによって相分離パターンを制御するグラフォエピタキシーや、基板の化学状態の違いによって相分離パターンを制御するケミカルエピタキシー等の方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
ブロックコポリマーを相分離させて微細なパターンを形成する方法としては、例えば、基板の上に、2つのブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされた下地剤層を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このような下地剤層を基板の上に形成することで、基板の上のブロック共重合体が接触する面が、2つのブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーをもつ状態となる。これにより、既存のリソグラフィー技術よりも小さい寸法を有した様々な形状のパターンが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-36491号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】プロシーディングスオブエスピーアイイー(Proceedings of SPIE),第7637巻,第76370G-1(2010年).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
下地剤層の凝集を無くすためには、塗布後のベークを約250℃~280℃よりも低温で行う方法が考えられる。しかし、低温でベークを行うと、下地剤層表面の水に対する接触角が不十分となってしまう。また、下地剤に含有させる高分子化合物の分子量を、高分子量化する方法が考えられる。しかし、この方法では、下地剤膜の膜厚が厚くなってしまう。
下地剤層は、通常、基板の上に下地剤を塗布し、約250℃~280℃の高温でベーク処理を行うことにより形成される。本発明者らが検討したところ、このベーク工程において、形成した下地剤層が凝集してしまうという課題を発見した。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、基板への塗布後の高温ベークによる凝集が低減され、かつ、薄膜の下地剤層を形成できる下地剤、及びこれを用いた相分離構造を含む構造体の製造方法を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、基板上に形成した、ブロックコポリマーを含む層、を相分離させるために用いられる下地剤であって、樹脂成分(A)を含有し、該樹脂成分(A)は、第1のポリマーブロックと第2のポリマーブロックとが基板密着性基を含む連結基を介して結合した高分子化合物(A1)を含む、下地剤である。
本発明の第2の態様は、基板上に、本発明の第1の態様の下地剤を塗布して、下地剤層を形成する工程と、該下地剤層の上に、ブロックコポリマーを含む層を形成する工程と、該ブロックコポリマーを含む層を相分離させる工程と、を有する、相分離構造を含む構造体の製造方法である。
【0009】
尚、本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基又は化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様とする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【0010】
「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、アクリル酸(CH=CH-COOH)のカルボキシ基末端の水素原子が有機基で置換された化合物である。
アクリル酸エステルは、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該α位の炭素原子に結合した水素原子を置換する置換基は、水素原子以外の原子又は基であり、たとえば炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。アクリル酸エステルにおけるα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、カルボニル基が結合している炭素原子のことである。
以下、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸エステルをα置換アクリル酸エステルということがある。また、アクリル酸エステルとα置換アクリル酸エステルとを包括して「(α置換)アクリル酸エステル」ということがある。
【0011】
「スチレン若しくはスチレン誘導体から誘導される構成単位」とは、スチレン若しくはスチレン誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「スチレン誘導体」とは、スチレンのα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。それらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基で置換されていてもよいスチレンのベンゼン環に置換基が結合したもの等が挙げられる。α位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
スチレンのα位の水素原子を置換する置換基としては、前記α置換アクリル酸エステルにおいて、α位の置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0012】
上記α位の炭素原子に結合した水素原子を置換する置換基(α位の置換基)としてのアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
α位の置換基としてのハロゲン化アルキル基は、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部または全部を、ハロゲン原子で置換した基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
α位の置換基としてのヒドロキシアルキル基は、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部または全部を、水酸基で置換した基が挙げられる。該ヒドロキシアルキル基における水酸基の数は、1~5が好ましく、1が最も好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板への塗布後の高温ベークによる凝集が低減され、かつ、薄膜の下地剤層を形成できる下地剤、及びこれを用いた相分離構造を含む構造体の製造方法を提供するこができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る、相分離構造を含む構造体の製造方法の一実施形態例を説明する概略工程図である。
図2】任意工程の一実施形態例を説明する図である。
図3】本発明の作用機構を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<下地剤>
本発明の第一の態様である下地剤は、基板上に形成した、複数種類のブロックが結合したブロックコポリマーを含む層を相分離させるために用いられるものである。
かかる下地剤は、ブロックコポリマーの誘導自己組織化(DSA)技術によって微細な構造体を形成する際、基板の表面改質材料として有用である。かかる下地剤を基板上に塗布して下地剤層を設けることで、基板表面が、ブロックコポリマーを構成するブロックのいずれかのブロックと親和性の高いものとなり、ブロックコポリマーの相分離が促進する。
かかる下地剤は、樹脂成分(以下「樹脂成分(A)」又は「(A)成分」ということがある。)を含有する。
本明細書において、「下地剤層の凝集」とは、下地剤層を加熱したときに、下地剤層に凝集物が確認される状態を意味する。
【0016】
(ブロックコポリマー)
ブロックコポリマーとは、同種の構成単位が繰り返し結合した部分構成成分(ブロック)の複数が結合した高分子化合物である。本発明におけるブロックコポリマーは、疎水性ポリマーブロック(b11)と親水性ポリマーブロック(b21)とが結合した高分子化合物である。
疎水性ポリマーブロック(b11)(以下単に「ブロック(b11)」ともいう。)とは、水との親和性が相対的に異なる複数のモノマーが用いられ、これら複数のモノマーのうち水との親和性が相対的に低い方のモノマーが重合したポリマー(疎水性ポリマー)からなるブロックをいう。親水性ポリマーブロック(b21)(以下単に「ブロック(b21)」ともいう。)とは、前記複数のモノマーのうち水との親和性が相対的に高い方のモノマーが重合したポリマー(親水性ポリマー)からなるブロックをいう。
【0017】
ブロック(b11)とブロック(b21)とは、相分離が起こる組み合わせであれば特に限定されるものではないが、互いに非相溶であるブロック同士の組み合わせであることが好ましい。
また、ブロック(b11)とブロック(b21)とは、ブロックコポリマーを構成する複数種類のブロック中の少なくとも1種類のブロックからなる相が、他の種類のブロックからなる相よりも容易に除去可能な組み合わせであることが好ましい。
ブロックコポリマーを構成するブロックの種類は、2種類であってもよく、3種類以上であってもよい。
尚、本発明におけるブロックコポリマーは、ブロック(b11)及びブロック(b21)以外の部分構成成分(ブロック)が結合していてもよい。
【0018】
ブロック(b11)、ブロック(b21)としては、例えば、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位((α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位)が繰り返し結合したブロック、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸から誘導される構成単位((α置換)アクリル酸から誘導される構成単位)が繰り返し結合したブロック、シロキサン又はその誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、アルキレンオキシドから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、シルセスキオキサン構造含有構成単位が繰り返し結合したブロック等が挙げられる。
【0019】
スチレン誘導体としては、例えば、スチレンのα位の水素原子がアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基等の置換基に置換されたもの、又はこれらの誘導体が挙げられる。前記これらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基で置換されていてもよいスチレンのベンゼン環に置換基が結合したものが挙げられる。前記の置換基としては、例えば、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。
スチレン誘導体として具体的には、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-n-オクチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、4-メトキシスチレン、4-t-ブトキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、4-ニトロスチレン、3-ニトロスチレン、4-クロロスチレン、4-フルオロスチレン、4-アセトキシビニルスチレン、4-ビニルベンジルクロリド等が挙げられる。
【0020】
(α置換)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸エステル、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸エステルが挙げられる。前記の置換基としては、例えば、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。
(α置換)アクリル酸エステルとして具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸アントラセン、アクリル酸グリシジル、アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメタン、アクリル酸プロピルトリメトキシシラン等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸アントラセン、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメタン、メタクリル酸プロピルトリメトキシシラン等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。
【0021】
(α置換)アクリル酸としては、例えば、アクリル酸、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸が挙げられる。前記の置換基としては、例えば、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。
(α置換)アクリル酸として具体的には、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0022】
シロキサン又はその誘導体としては、例えば、ジメチルシロキサン、ジエチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン等が挙げられる。
アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソプロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。
シルセスキオキサン構造含有構成単位としては、かご型シルセスキオキサン構造含有構成単位が好ましい。かご型シルセスキオキサン構造含有構成単位を提供するモノマーとしては、かご型シルセスキオキサン構造と重合性基とを有する化合物が挙げられる。
【0023】
本発明におけるブロックコポリマーとしては、例えば、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、シロキサン又はその誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;アルキレンオキシドから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;アルキレンオキシドから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;かご型シルセスキオキサン構造含有構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;かご型シルセスキオキサン構造含有構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;かご型シルセスキオキサン構造含有構成単位が繰り返し結合したブロックと、シロキサン又はその誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物等が挙げられる。
【0024】
上記の中でも、ブロックコポリマーとしては、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物が好ましく、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物がより好ましく、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物がさらに好ましい。
具体的には、ポリスチレン-ポリメチルメタクリレート(PS-PMMA)ブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリエチルメタクリレートブロックコポリマー、ポリスチレン-(ポリ-t-ブチルメタクリレート)ブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリメタクリル酸ブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリメチルアクリレートブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリエチルアクリレートブロックコポリマー、ポリスチレン-(ポリ-t-ブチルアクリレート)ブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリアクリル酸ブロックコポリマー等が挙げられる。これらの中でも、PS-PMMAブロックコポリマーが特に好ましい。
【0025】
ブロックコポリマーを構成する各ポリマーの質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、相分離を起こすことが可能な大きさであれば特に限定されるものではないが、5000~500000が好ましく、5000~400000がより好ましく、5000~300000がさらに好ましい。
【0026】
ブロックコポリマーのMwは、相分離を起こすことが可能な大きさであれば特に限定されるものではないが、5000~100000が好ましく、20000~60000がより好ましく、30000~50000がさらに好ましい。
ブロックコポリマーの分子量分散度(Mw/Mn)は、1.0~3.0が好ましく、1.0~1.5がより好ましく、1.0~1.2がさらに好ましい。尚、Mnは数平均分子量を示す。
ブロックコポリマーの周期(ブロックコポリマーの分子1つ分の長さ)は、5~50nmが好ましく、10~40nmがより好ましく、20~30nmがさらに好ましい。
【0027】
≪樹脂成分(A)≫
樹脂成分(A)は、第1のポリマーブロックと第2のポリマーブロックとが基板密着性基を含む連結基を介して結合した高分子化合物(A1)を含む。
【0028】
[第1のポリマーブロック]
第1のポリマーブロックは、疎水性のポリマーブロックであってもよく、親水性のポリマーブロックであってもよい。
【0029】
疎水性ポリマーブロック(b12)(以下単に「ブロック(b12)」ともいう。)は、上記のブロックコポリマーを構成する親水性ポリマーブロック(b21)の構成単位を提供するモノマーに比べて、水との親和性が相対的に低いモノマーが重合したポリマー(疎水性ポリマー)からなるブロックである。ブロック(b12)の構成単位と上記ブロック(b11)の構成単位とは、その構造が同一であってもよく異なっていてもよい。中でも、下地剤層を介して基板とブロックコポリマーを含む層との密着性がより強まることから、ブロック(b12)の構成単位とブロック(b11)の構成単位とは、その構造が同一であることが好ましい。
【0030】
親水性ポリマーブロック(b22)(以下単に「ブロック(b22)」ともいう。)は、上記のブロックコポリマーを構成する疎水性ポリマーブロック(b11)の構成単位を提供するモノマーに比べて、水との親和性が相対的に高いモノマーが重合したポリマー(親水性ポリマー)からなるブロックである。ブロック(b22)の構成単位と上記ブロック(b21)の構成単位とは、その構造が同一であってもよく異なっていてもよい。中でも、下地剤層を介して基板とブロックコポリマーを含む層との密着性がより強まることから、ブロック(b22)の構成単位とブロック(b21)の構成単位とは、その構造が同一であることが好ましい。
【0031】
ブロック(b12)、ブロック(b22)としては、例えば、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、シロキサン又はその誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、アルキレンオキシドから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、シルセスキオキサン構造含有構成単位が繰り返し結合したブロック等が挙げられる。
ブロック(b12)及びブロック(b22)におけるスチレン又はスチレン誘導体、(α置換)アクリル酸エステル、(α置換)アクリル酸、シロキサン又はその誘導体、アルキレンオキシド、シルセスキオキサン構造含有構成単位を提供するモノマーとしては、上述したブロック(b11)、ブロック(b21)についての説明の中で例示した化合物と同様のものがそれぞれ挙げられる。
ブロック(b12)の構成単位としては、下地剤層の表面がより安定化しやすいことから、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が好ましい。即ち、置換基を有してもよいスチレン骨格を含む構成単位(u1)がより好ましい。
【0032】
・構成単位(u1)について
構成単位(u1)は、置換基を有してもよいスチレン骨格を含む構成単位である。
置換基を有するスチレン骨格とは、スチレンのα位もしくはベンゼン環の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されているものをいう。
構成単位(u1)における置換基としては、ハロゲン原子、又は酸素原子、ハロゲン原子若しくはケイ素原子を含んでいてもよい炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状又はこれらの組み合わせによる炭化水素基が挙げられる。
【0033】
構成単位(u1)における置換基について、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0034】
構成単位(u1)における置換基について、炭化水素基は、炭素数が1~20である。加えて、かかる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状又はこれらの組み合わせによる炭化水素基であり、酸素原子、ハロゲン原子若しくはケイ素原子を含んでいてもよい。
かかる炭化水素基としては、例えば直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、又はアリール基が挙げられる。
【0035】
かかる炭化水素基としてのアルキル基は、好ましくは炭素数が1~10であり、より好ましくは炭素数が1~8であり、さらに好ましくは炭素数が1~6である。
ここでのアルキル基は、部分的又は完全にハロゲン化されたアルキル基(ハロゲン化アルキル基)、アルキル基を構成する炭素原子がケイ素原子もしくは酸素原子に置換されているアルキルシリル基、アルキルシリルオキシ基又はアルコキシ基であってもよい。
部分的にハロゲン化されたアルキル基とは、アルキル基に結合する水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味し、完全にハロゲン化されたアルキル基とは、アルキル基に結合する水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい(すなわち、フッ素化アルキル基が好ましい)。
前記のアルキルシリル基としては、トリアルキルシリル基又はトリアルキルシリルアルキル基が好ましく、例えばトリメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基、トリメチルシリルエチル基、トリメチルシリル-n-プロピル基等が好適に挙げられる。
前記のアルキルシリルオキシ基としては、トリアルキルシリルオキシ基又はトリアルキルシリルオキシアルキル基が好ましく、例えばトリメチルシリルオキシ基、トリメチルシリルオキシメチル基、トリメチルシリルオキシエチル基、トリメチルシリルオキシ-n-プロピル基等が好適に挙げられる。
前記のアルコキシ基としては、好ましくは炭素数が1~10であり、より好ましくは炭素数が1~8であり、さらに好ましくは炭素数が1~6である。
【0036】
かかる炭化水素基としてのアリール基は、炭素数が4~20であり、好ましくは炭素数が4~10であり、より好ましくは炭素数が6~10である。
【0037】
構成単位(u1)の好ましいものとしては、例えば、下記一般式(u1-1)又は(u1-2)で表される構成単位が挙げられる。本発明においては、構成単位(u1)は、下記一般式(u1-1)で表される構成単位が好ましい。
【0038】
【化1】
[式中、Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。Rは、ハロゲン原子、又は酸素原子、ハロゲン原子若しくはケイ素原子を含んでいてもよい炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状又はこれらの組み合わせによる炭化水素基である。pは、0~5の整数である。n1は0又は1である。R12は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環であり、p1は1~5の整数である。]
【0039】
前記式(u1-1)又は(u1-2)中、Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。
Rにおける炭素数1~5のアルキル基は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
Rにおける炭素数1~5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素数1~5のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、水素原子、炭素数1~5のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0040】
前記式(u1-1)又は(u1-2)中、Rは、ハロゲン原子、又は酸素原子、ハロゲン原子若しくはケイ素原子を含んでいてもよい炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状又はこれらの組み合わせによる炭化水素基である。
構成単位(u1)において、ベンゼン環に、置換基として前記Rが結合していることにより、下地剤層表面の自由エネルギーが調節され、該下地剤層上に形成されるブロックコポリマーを含む層が垂直シリンダーパターン等に良好に相分離し得る。
前記式(u1-1)又は(u1-2)中のRは、上述した構成単位(u1)における置換基(ハロゲン原子、又は酸素原子、ハロゲン原子若しくはケイ素原子を含んでいてもよい炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状又はこれらの組み合わせによる炭化水素基)についての説明と同様である。
これらの中でも、Rとしては、下地剤層上に形成されるブロックコポリマーを含む層が良好に相分離し得ることから、酸素原子、ハロゲン原子若しくはケイ素原子を含んでいてもよい炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状又はこれらの組み合わせによる炭化水素基が好ましい。
その中でも、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1~20のアルキル基がより好ましく、
炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロゲン化アルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基がさらに好ましく、
炭素数1~6のアルキル基が特に好ましい。
【0041】
におけるアルキル基の炭素数は、1~6が好ましく、3~6がより好ましく、3又は4がさらに好ましく、4が特に好ましい。Rにおけるアルキル基としては、直鎖状のアルキル基、分岐鎖状のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基が好適に挙げられ、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基がより好ましく、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基がさらに好ましく、tert-ブチル基が特に好ましい。
におけるハロゲン化アルキル基は、前記のRにおけるアルキル基の水素原子の一部又は全部を、ハロゲン原子で置換した基が挙げられる。このハロゲン原子としては、特にフッ素原子が好ましい。Rにおけるハロゲン化アルキル基の炭素数は、1~6が好ましく、3~6がより好ましく、3又は4がさらに好ましい。
におけるアルコキシ基の炭素数は、1~6が好ましく、1~4がより好ましく、2が特に好ましい。Rにおけるアルコキシ基としては、直鎖状のアルコキシ基、分岐鎖状のアルコキシ基が好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t-ブトキシ基が好適に挙げられ、エトキシ基が特に好ましい。
【0042】
前記式(u1-1)又は(u1-2)中、pは、0~5の整数であり、0~3の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましく、0又は1がさらに好ましく、1が特に好ましい。
前記式(u1-2)中、p1は0又は1であり、0が好ましい。
【0043】
前記式(u1-2)中、R12は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環である。R12の芳香族炭化水素環としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環が挙げられる。また、R12が有していてもよい置換基としては、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。
前記式(u1-2)中、p1は1~5の整数である。
【0044】
以下に、ブロック(b12)の構成単位の具体例を挙げる。式中、Rαは、水素原子又はメチル基である。
【0045】
【化2】
【0046】
【化3】
【0047】
【化4】
【0048】
【化5】
【0049】
【化6】
【0050】
【化7】
【0051】
【化8】
【0052】
【化9】
【0053】
【化10】
【0054】
【化11】
【0055】
【化12】
【0056】
【化13】
【0057】
(A)成分が有するブロック(b12)の構成単位は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ブロック(b12)の構成単位は、構成単位(u1)を含有することが好ましい。
かかる構成単位(u1)としては、化学式(u1-1-1)~(u1-1-22)でそれぞれ表される構成単位からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、化学式(u1-1-1)~(u1-1-14)でそれぞれ表される構成単位からなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、化学式(u1-1-1)~(u1-1-11)でそれぞれ表される構成単位からなる群より選択される少なくとも一種がさらに好ましく、化学式(u1-1-1)~(u1-1-6)、(u1-1-11)でそれぞれ表される構成単位からなる群より選択される少なくとも一種が特に好ましく、化学式(u1-1-1)~(u1-1-3)、(u1-1-11)でそれぞれ表される構成単位からなる群より選択される少なくとも一種が最も好ましい。
【0058】
(A)成分中、ブロック(b12)の構成単位の割合は、該(A)成分を構成する全構成単位の合計に対して25モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、75~100モル%であることがさらに好ましい。
ブロック(b12)の構成単位の割合が好ましい下限値以上であれば、下地剤層の表面がより安定化し、下地剤層上に形成されるブロックコポリマーを含む層が良好に相分離し得る。
【0059】
ブロック(b22)の構成単位としては、下地剤層の表面がより安定化しやすいことから、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位、又は(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位(すなわち、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸又はそのエステルから誘導される構成単位(u2))が好ましい。
【0060】
・構成単位(u2)について
構成単位(u2)は、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸又はそのエステルから誘導される構成単位である。
構成単位(u2)の好ましいものとしては、例えば、下記一般式(u2-1)で表される構成単位が挙げられる。
【0061】
【化14】
[式中、Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。Rは、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のヒドロキシアルキル基である。]
【0062】
前記式(u2-1)中、Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。前記式(u2-1)中のRは、上述の前記式(u1-1)中のRと同様である。
Rとしては、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、水素原子、炭素数1~5のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0063】
前記式(u2-1)中、Rは、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のヒドロキシアルキル基である。
におけるヒドロキシアルキル基は、炭素数が1~20であり、好ましくは炭素数が1~10であり、より好ましくは炭素数が1~8であり、さらに好ましくは炭素数が1~6であり、特に好ましくは炭素数が1~4であるアルキル基の水素原子の一部又は全部を、ヒドロキシ基で置換した基が挙げられる。ヒドロキシ基の数は、好ましくは1~3あり、より好ましくは1又は2である。
におけるヒドロキシアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
における炭素数1~5のアルキル基はメチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0064】
以下に、ブロック(b22)の構成単位の具体例を挙げる。式中、Rαは、水素原子又はメチル基である。
【0065】
【化15】
【0066】
前記第1のポリマーブロックの数平均分子量(Mn)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算基準)は、1000~50000が好ましく、1500~20000がより好ましく、2000~15000がさらに好ましい。
【0067】
[第2のポリマーブロック]
本発明において、第2のポリマーブロックとしては、前記第1のポリマーブロックとして説明した疎水性ポリマーブロック(b12)、又は、親水性ポリマーブロック(b22)が挙げられる。
本発明において、第1のポリマーブロックと第2のポリマーブロックは同一で合ってもよく、異なっていてもよい。合成がより容易となる観点から、第1のポリマーブロックと第2のポリマーブロックは同じ構成単位からなるポリマーブロックであることが好ましい。
【0068】
また、前記第1のポリマーブロック及び第2のポリマーブロックの少なくとも一方は、置換基を有してもよいスチレン骨格を含む構成単位であることが好ましい。置換基を有してもよいスチレン骨格を含む構成単位としては、前記構成単位(u1)が挙げられる。
【0069】
[基板密着性基]
樹脂成分(A)は、第1のポリマーブロックと第2のポリマーブロックとが基板密着性基を含む連結基を介して結合した高分子化合物(A1)を含む。
基板密着性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、チオール基、スルホ基、ホスホン酸基、アミノ基、及びアミド基からなる群より選択される1種以上を含む連結基が好ましい。
【0070】
≪高分子化合物(A1)の製造方法≫
本発明に用いる高分子化合物(A1)の製造方法について説明する。
【0071】
[ポリマー結合剤製造工程]
まず、高分子化合物(A1)を製造するために用いるポリマー結合剤を製造する。
ポリマー結合剤は、基板密着性基を含む化合物と、t-ブチルジメチルクロロシランとを、イミダゾールの存在下で反応させることにより製造する。ポリマー結合剤製造工程の反応式を下記に示す。
【0072】
【化16】
[上記反応式中、各Yb01はそれぞれ独立に単結合又は炭素数1~3のアルキレン基であり、各Rb1はそれぞれ独立に基板密着性基である。Rb1´は、Rb1の基板密着性基の一つの水素原子が、t-ブチルジメチルシランで置換された基である。]
【0073】
〔Yb01
上記反応式中、各Yb01はそれぞれ独立に単結合又は炭素数1~3のアルキレン基である。Yb01のアルキレン基としては、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]が挙げられる。本発明においては、メチレン基又はエチレン基が好ましい。
【0074】
〔Rb1
上記反応式中、各Rb1はそれぞれ独立に基板密着性基である。
基板密着性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、チオール基、スルホ基、ホスホン酸基及びアミノ基、アミド基からなる群より選択される1種以上の基が好ましい。
中でも、ヒドロキシ基、カルボキシ基又はチオール基が好ましく、ヒドロキシ基又はカルボキシ基がより好ましい。
【0075】
[高分子化合物(A1)の前駆体製造工程]
次に、上記で製造したポリマー結合剤を用いて、高分子化合物(A1)の前駆体を製造する。
前駆体製造工程では、まず、第1のポリマーブロックを構成するモノマーを重合してポリマー化する。
【0076】
ここでは、高分子化合物(A1)の製造方法の一例として、前記構成単位(u1-1)を用いる場合を例に説明する。
前駆体の製造工程では、まず、重合開始剤を用い、構成単位(u1-1)をポリマー化する。次に、ポリマー結合剤を反応させる。前駆体製造工程の反応式を下記に示す。
【0077】
【化17】
[上記反応式中、Yb01はそれぞれ独立に単結合又は炭素数1~3のアルキレン基であり、Rb1はそれぞれ独立に基板密着性基である。Rb1´は、前記Rb1中の基板密着性基の一つの水素原子が、t-ブチルジメチルシランで置換された基である。Rは、ハロゲン原子、又は酸素原子、ハロゲン原子若しくはケイ素原子を含んでいてもよい炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状又はこれらの組み合わせによる炭化水素基である。pは、0~5の整数である。nは1以上の整数である。]
【0078】
上記反応式中、Yb01、Rb1に関する説明は、前記同様である。
上記反応式中、R、pに関する説明は、前記一般式(u1-1)中のR、pに関する説明と同様である。
【0079】
上記の反応例においては、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを用いた例を示した。この他にも、重合開始剤としては、例えばアニオン重合法を用いる場合、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、エチルリチウム、エチルナトリウム、1,1-ジフェニルヘキシルリチウム、1,1-ジフェニル-3-メチルペンチルリチウム等の有機アルカリ金属を使用してもよい。
【0080】
[高分子化合物(A1)の製造工程]
前記で製造した前駆体からt-ブチルジメチルシランを脱離させ、高分子化合物(A1)を製造する。高分子化合物(A1)の製造工程の反応式を下記に示す。
【0081】
【化18】
[上記反応式中、Yb01はそれぞれ独立に単結合又は炭素数1~3のアルキレン基であり、Rb1はそれぞれ独立に基板密着性基である。Rb1´は、前記Rb1中の基板密着性基の一つの水素原子が、t-ブチルジメチルシランで置換された基である。Rは、ハロゲン原子、又は酸素原子、ハロゲン原子若しくはケイ素原子を含んでいてもよい炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状又はこれらの組み合わせによる炭化水素基である。pは、0~5の整数である。nは1以上の整数である。]
【0082】
上記反応式中、Yb01、Rb1に関する説明は、前記一般式(Y1)におけるYb01、Rb1に関する説明と同様である。
上記反応式中、R、pに関する説明は、前記一般式(u1-1)中のR、pに関する説明と同様である。
【0083】
上記の高分子化合物(A1)の製造に用いる溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、臭化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化アルキル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セロソルブ類等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホロアミド等の非プロトン性極性溶剤類;水等が挙げられる。
【0084】
上記各工程の反応温度、反応時間等は、特に限定されず、例えば重合開始剤の種類等に応じて適宜決定すればよい。
【0085】
本発明において、第1のポリマーブロックと、第2のポリマーブロックとを結合させる、基板密着性基を含む連結基の構造は、ポリマー結合剤の化学構造に由来する。
基板密着性基を含む連結基は、下記一般式(Y1)で表される連結基が好ましい。
【0086】
【化19】
[一般式(Y1)中、Yb01はそれぞれ独立に単結合又は炭素数1~3のアルキレン基であり、Rb1はそれぞれ独立に基板密着性基である。波線は第1のポリマーブロック又は第2のポリマーブロックとの結合手である。]
【0087】
〔Yb01
一般式(Y1)中、Yb01はそれぞれ独立に単結合又は炭素数1~3のアルキレン基である。Yb01のアルキレン基としては、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]が挙げられる。本発明においては、メチレン基又はエチレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0088】
〔Rb1
b1はそれぞれ独立に基板密着性基である。
基板密着性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、チオール基、スルホ基、ホスホン酸基及びアミノ基、アミド基からなる群より選択される1種以上の基が好ましい。
中でも、ヒドロキシ基、カルボキシ基又はチオール基が好ましく、ヒドロキシ基又はカルボキシ基がより好ましい。
【0089】
本発明の高分子化合物(A1)は、下記一般式(A1)-1~(A1)-4のいずれかで表される高分子化合物であることが好ましい。
【0090】
【化20】
[一般式(A1)-1中、各Yb01はそれぞれ独立に単結合又は炭素数1~3のアルキレン基であり、各Rb1はそれぞれ独立に基板密着性基である。各Rb2はそれぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。Rは、ハロゲン原子、又は酸素原子、ハロゲン原子若しくはケイ素原子を含んでいてもよい炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状又はこれらの組み合わせによる炭化水素基である。pは、0~5の整数である。p1は1~5の整数である。n1は0又は1である。R12は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環である。Rは、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のヒドロキシアルキル基である。x1、x2、x3、x4、y1、y2、y3、y4は、それぞれ独立に、構成単位の繰り返し数を示す。]
【0091】
前記一般式(A1)-1~(A1)-4中、Yb01、Rb1に関する説明は、前記一般式(Y1)におけるYb01、Rb1に関する説明と同様である。
前記一般式(A1)-1~(A1)-4中、R、R、R12、R、p、p1、n1に関する説明は、前記一般式(u1-1)~(u1-2)、(u2-1)中のR、R、R、p、p1、n1に関する説明と同様である。
本発明においては、上記のなかでも一般式(A1)-1で表される高分子化合物であることがより好ましい。
【0092】
〔Rb2
前記一般式(A1)-1~(A1)-4中、Rb2はそれぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。Rb2は、使用する重合開始剤の化学構造に由来する。
【0093】
下記に、一般式(A1)-1~(A1)-4のいずれかで表される高分子化合物(A1)の具体例を記載する。下記式中、R、x1、x2、x3、x4、y1、y2、y3、y4は前記同様である。
【0094】
【化21】
【0095】
【化22】
【0096】
【化23】
【0097】
【化24】
【0098】
本発明に係る下地剤において、(A)成分は、1種の高分子化合物を単独で用いてもよく、2種以上の高分子化合物を併用してもよい。
【0099】
(A)成分の数平均分子量(Mn)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算基準)は、2000~100000が好ましく、2500~150000がより好ましく、3000~120000がさらに好ましい。
この好ましい範囲の上限値以下であると、後述の有機溶剤に充分に溶解するため、基板への塗布性に優れる。一方、この好ましい範囲の下限値以上であると、高分子化合物の製造安定性に優れる。
(A)成分の分子量分散度(Mw/Mn)は、特に限定されず、1.0~5.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましく、1.0~2.5がさらに好ましい。尚、Mnは数平均分子量を示す。
【0100】
本発明に係る下地剤中、(A)成分の含有量は、下地剤層の所望の膜厚等に応じて適宜調整すればよい。
本発明に係る下地剤中、(A)成分の含有量は、固形分全体に対して70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0101】
≪任意成分≫
本発明に係る下地剤は、上述した(A)成分に加えて、該(A)成分以外の成分(任意成分)をさらに含有してもよい。
【0102】
・酸発生剤成分(B)について
本発明に係る下地剤は、さらに、酸発生剤成分(B)(以下「(B)成分」ともいう。)を含有してもよい。(B)成分は、加熱や露光により酸を発生するものである。(B)成分は、そのもの自体が酸性を有している必要はなく、熱又は光などにより分解し、酸として機能するものであればよい。
【0103】
(B)成分は、特に限定されず、これまでフォトリソグラフィーで用いられている化学増幅型レジスト用の酸発生剤成分を用いることができる。
このような酸発生剤成分としては、加熱により酸を発生する熱酸発生剤、露光により酸を発生する光酸発生剤などが挙げられる。例えば、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
尚、「加熱により酸を発生する熱酸発生剤」とは、具体的には200℃以下の加熱により酸を発生する成分を意味する。加熱温度が200℃以下であれば、酸の発生の制御が容易となる。好ましくは50~150℃の加熱により酸を発生する成分が用いられる。好ましい加熱温度が50℃以上であれば、下地剤中での安定性が良好となる。
【0104】
(B)成分のオニウム塩系酸発生剤としては、アニオン部に、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、及びフッ素化アンチモン酸イオンからなる群より選択される少なくとも一種のアニオン基を有するものが好ましい。
【0105】
本発明に係る下地剤において、(B)成分は、1種の酸発生剤を単独で用いてもよく、2種以上の酸発生剤を併用してもよい。
下地剤が(B)成分を含有する場合、下地剤中の(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5~30質量部が好ましく、1~20質量部がより好ましい。(B)成分の含有量が上記範囲内であれば、本発明の効果が充分に得られる。
【0106】
本発明に係る下地剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、所望により、混和性のある添加剤、例えば下地剤層の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料、増感剤、塩基増殖剤、塩基性化合物(イミダゾール等の含窒素化合物など)等を適宜含有させることができる。
【0107】
・有機溶剤(S)について
本発明に係る下地剤は、(A)成分及び必要に応じて(B)成分等の各成分を、有機溶剤(以下「(S)成分」ともいう。)に溶解させて製造することができる。
(S)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、樹脂を主成分とする膜組成物の溶剤として公知のものの中から任意のものを1種又は2種以上適宜選択して用いることができる。
(S)成分としては、例えば、γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物;前記多価アルコール類もしくは前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤などが挙げられる。
(S)成分は、単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
中でも、(S)成分としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、ELが好ましい。
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶媒も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2の範囲内とされる。たとえば極性溶剤としてELを配合する場合、PGMEA:ELの質量比は、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2、さらに好ましくは3:7~7:3である。また、極性溶剤としてPGME及びシクロヘキサノンを配合する場合、PGMEA:(PGME+シクロヘキサノン)の質量比は、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2、さらに好ましくは3:7~7:3である。
また、(S)成分としては、PGMEA、EL、又は前記PGMEAと極性溶剤との混合溶媒と、γ-ブチロラクトンと、の混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者との質量比が好ましくは70:30~95:5とされる。
(S)成分の使用量は、特に限定されず、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的には下地剤の固形分濃度が0.1~20質量%、好ましくは0.2~15質量%の範囲内となるように用いられる。
【0108】
本発明の下地剤は、塗布後の高温ベークによる凝集が低減され、かつ、薄膜の下地剤層を形成できる。本発明の下地剤はこのような効果を奏する作用機構について、図3を用いて説明する。
本発明を適用して基板密着性基を含む連結基を高分子化合物の主鎖中に導入した場合を図3(b)に示す。図3(b)は、下地剤に含まれる高分子化合物32が基板1に密着する様子の模式図である。
ポリマー32は、基板密着性基32cを有する連結基を介して第1のブロック32aと第2のブロック32bが結合している。図3(b)は、基板密着性基32cが基板1に吸着した状態を示している。
基板密着性基32cを含む連結基を高分子化合物の主鎖中に導入すると、基板密着性基32cを含む連結基の両側に第1のブロック32aと第2のブロック32bとを配置できる。このため、高分子化合物32のポリマー鎖を短くでき、立体障害が抑制され、膜厚を薄くできる。また、立体障害により、基板密着性基32c同士が結合することが抑制され、凝集が低減されると推察される。
【0109】
図3(a)は、下地剤に含まれる高分子化合物31が基板1に密着する様子の模式図である。
図3(a)は、本発明を適用しない場合である。本発明を適用せず、基板密着性基31cが高分子化合物の末端に存在する高分子化合物31を用いると、基板密着性基31c同士が結合し、高分子化合物31は符号31a´に示すように、凝集してしまう。また、ポリマー鎖31aが長鎖であることに起因して、膜厚が厚くなってしまう。
【0110】
<相分離構造を含む構造体の製造方法>
本発明の第二の態様である、相分離構造を含む構造体の製造方法は、基板上に、上述した本発明の第一の態様の下地剤を塗布し、下地剤層を形成する工程(以下「工程(i)」という。)と、該下地剤層の上に、複数種類のブロックが結合したブロックコポリマーを含む層を形成する工程(以下「工程(ii)」という。)と、該ブロックコポリマーを含む層を相分離させる工程(以下「工程(iii)」という。)と、を有する。
以下、かかる相分離構造を含む構造体の製造方法について、図1を参照しながら具体的に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
【0111】
図1は、本発明に係る、相分離構造を含む構造体の製造方法の一実施形態例を示す。
まず、基板1上に、上述の本発明に係る下地剤を塗布して、下地剤層2を形成する(図1(I);工程(i))。
次に、下地剤層2上に、複数種類のブロックが結合したブロックコポリマーを含有する組成物(以下「BCP組成物」ともいう。)を塗布して、該ブロックコポリマーを含む層3を形成する(図1(II);工程(ii))。
次に、加熱してアニール処理を行い、該ブロックコポリマーを含む層3を、相3aと相3bとに相分離させる(図1(III);工程(iii))。
上述した本実施形態の製造方法、すなわち、工程(i)~(iii)を有する製造方法によれば、下地剤層2が形成された基板1上に、相分離構造を含む構造体3’が製造される。
【0112】
[工程(i)]
工程(i)では、基板1上に、前記下地剤を塗布して、下地剤層2を形成する。
基板1上に下地剤層2を設けることによって、基板1の表面が疎水化される。これによって、下地剤層2上に形成されるブロックコポリマーを含む層3のうち、疎水化された基板1との親和性の高いブロックからなる相は、基板1との密着性が高まる。これに伴い、ブロックコポリマーを含む層3の相分離によって、基板1表面に対して垂直方向に配向されたシリンダー構造が形成しやすくなる。
【0113】
基板1は、その表面上にBCP組成物を塗布し得るものであれば、その種類は特に限定されない。例えば、金属(シリコン、銅、クロム、鉄、アルミニウム等)、ガラス、酸化チタン、二酸化ケイ素(SiO)、シリカ、マイカなどの無機物からなる基板;SiN等窒化物からなる基板;SiON等の酸化窒化物からなる基板;アクリル、ポリスチレン、セルロース、セルロースアセテート、フェノール樹脂などの有機物からなる基板が挙げられる。これらの中でも、金属の基板1に好適であり、例えばシリコン基板(Si基板)、二酸化ケイ素基板(SiO基板)又は銅基板(Cu基板)において、シリンダー構造の構造体が形成される。中でも、Si基板、SiO基板に特に好適である。
基板1の大きさや形状は、特に限定されるものではない。基板1は、必ずしも平滑な表面を有する必要はなく、様々な形状の基板を適宜選択できる。例えば、曲面を有する基板、表面が凹凸形状の平板、薄片状などの形状の基板が挙げられる。
【0114】
基板1の表面には、無機系および/または有機系の膜が設けられていてもよい。
無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。
無機系の膜は、例えば、シリコン系材料などの無機系の反射防止膜組成物を、基板上に塗工し、焼成等することにより形成できる。
有機系の膜は、例えば、該膜を構成する樹脂成分等を有機溶剤に溶解した有機膜形成用材料を、基板上にスピンナー等で塗布し、好ましくは200~300℃、好ましくは30~300秒間、より好ましくは60~180秒間の加熱条件でベーク処理することにより形成できる。この有機膜形成用材料は、レジスト膜のような、光や電子線に対する感受性を必ずしも必要とするものではなく、感受性を有するものであってもよく、有しないものであってもよい。具体的には、半導体素子や液晶表示素子の製造において一般的に用いられているレジストや樹脂を用いることができる。
また、層3を加工して形成される、ブロックコポリマーからなるパターン、を用いて有機系の膜をエッチングすることにより、該パターンを有機系の膜へ転写し、有機系の膜パターンを形成できるように、有機膜形成用材料は、エッチング、特にドライエッチング可能な有機系の膜を形成できる材料であることが好ましい。中でも、酸素プラズマエッチング等のエッチングが可能な有機系の膜を形成できる材料であることが好ましい。このような有機膜形成用材料としては、従来、有機BARCなどの有機膜を形成するために用いられている材料であってよい。例えば、日産化学工業株式会社製のARCシリーズ、ロームアンドハース社製のARシリーズ、東京応化工業株式会社製のSWKシリーズなどが挙げられる。
【0115】
本発明に係る下地剤を基板1上に塗布して下地剤層2を形成する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法により形成できる。
たとえば、下地剤を、スピンコート又はスピンナーを用いる等の従来公知の方法により基板1上に塗布して塗膜を形成し、乾燥させることにより、下地剤層2を形成できる。
塗膜の乾燥方法としては、下地剤に含まれる溶媒を揮発させることができればよく、たとえばベークする方法等が挙げられる。この際、ベーク温度は、80~300℃が好ましく、180~270℃がより好ましく、220~250℃がさらに好ましい。ベーク時間は、30~500秒間が好ましく、60~400秒間がより好ましい。
塗膜の乾燥後における下地剤層2の厚さは、10~100nm程度が好ましく、40~90nm程度がより好ましい。
【0116】
基板1に下地剤層2を形成する前に、基板1の表面は、予め洗浄されていてもよい。基板1表面を洗浄することにより、下地剤の塗布性が向上する。
洗浄処理方法としては、従来公知の方法を利用でき、例えば酸素プラズマ処理、オゾン酸化処理、酸アルカリ処理、化学修飾処理等が挙げられる。
【0117】
下地剤層2を形成した後、必要に応じて、溶剤等のリンス液を用いて下地剤層2をリンスしてもよい。該リンスにより、下地剤層2中の未架橋部分等が除去されるため、ブロックコポリマーを構成する少なくとも1つのポリマー(ブロック)との親和性が向上し、基板1表面に対して垂直方向に配向されたシリンダー構造からなる相分離構造が形成されやすくなる。
尚、リンス液は、未架橋部分を溶解し得るものであればよく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、乳酸エチル(EL)等の溶剤、又は市販のシンナー液等を用いることができる。
また、該洗浄後は、リンス液を揮発させるため、ポストベークを行ってもよい。このポストベークの温度条件は、80~300℃が好ましく、100~270℃がより好ましく、120~250℃がさらに好ましい。ベーク時間は、30~500秒間が好ましく、60~240秒間がより好ましい。かかるポストベーク後における下地剤層2の厚さは、1~10nm程度が好ましく、2~7nm程度がより好ましい。
【0118】
[工程(ii)]
工程(ii)では、下地剤層2の上に、複数種類のブロックが結合したブロックコポリマーを含む層3を形成する。
下地剤層2の上に層3を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、例えばスピンコート又はスピンナーを用いる等の従来公知の方法により、下地剤層2上にBCP組成物を塗布して塗膜を形成し、乾燥させる方法が挙げられる。かかるBCP組成物の詳細については後述する。
【0119】
層3の厚さは、相分離が起こるために充分な厚さであればよく、基板1の種類、又は、形成される相分離構造の構造周期サイズもしくはナノ構造体の均一性等を考慮すると、20~100nmが好ましく、30~80nmがより好ましい。
例えば、基板1がSi基板又はSiO基板の場合、層3の厚さは、20~100nmが好ましく、30~80nmがより好ましい。
基板1がCu基板の場合、層3の厚さは、10~100nmが好ましく、30~80nmがより好ましい。
【0120】
[工程(iii)]
工程(iii)では、ブロックコポリマーを含む層3を相分離させる。
工程(ii)後の基板1を加熱してアニール処理を行うことにより、ブロックコポリマーの選択除去によって、基板1表面の少なくとも一部が露出するような相分離構造が形成する。すなわち、基板1上に、相3aと相3bとに相分離した相分離構造を含む構造体3’が製造される。
アニール処理の温度条件は、用いるブロックコポリマーのガラス転移温度以上であり、かつ、熱分解温度未満で行うことが好ましい。例えばブロックコポリマーがポリスチレン-ポリメチルメタクリレート(PS-PMMA)ブロックコポリマー(質量平均分子量5000~100000)の場合には、180~270℃が好ましい。加熱時間は、30~3600秒間が好ましい。
また、アニール処理は、窒素等の反応性の低いガス中で行われることが好ましい。
【0121】
以上説明した本発明に係る、相分離構造を含む構造体の製造方法によれば、ブロックコポリマーの相分離性能が高められ、既存のリソグラフィー技術に比べて、より微細な構造体を良好な形状で形成できる。加えて、基板表面に、位置及び配向性がより自在にデザインされたナノ構造体を備える基板を製造し得る。例えば、形成される構造体は、基板との密着性が高く、基板表面に対して垂直方向に配向されたシリンダー構造からなる相分離構造をとりやすい。
【0122】
[任意工程]
本発明に係る、相分離構造を含む構造体の製造方法は、上述した実施形態に限定されず、工程(i)~(iii)以外の工程(任意工程)を有してもよい。
かかる任意工程としては、ブロックコポリマーを含む層のうち、前記ブロックコポリマーを構成する複数種類のブロックのうちの少なくとも一種類のブロックからなる相を選択的に除去する工程(以下「工程(iv)」という。)、ガイドパターン形成工程等が挙げられる。
【0123】
・工程(iv)について
工程(iv)では、下地剤層の上に形成された、ブロックコポリマーを含む層のうち、前記ブロックコポリマーを構成する複数種類のブロックのうちの少なくとも一種類のブロックからなる相を選択的に除去する。これにより、微細なパターン(高分子ナノ構造体が形成される。
【0124】
ブロックからなる相を選択的に除去する方法としては、ブロックコポリマーを含む層に対して酸素プラズマ処理を行う方法、水素プラズマ処理を行う方法等が挙げられる。
尚、以下において、ブロックコポリマーを構成するブロックのうち、選択的に除去されないブロックをPブロック、選択的に除去されるブロックをPブロックという。例えば、PS-PMMAブロックコポリマーを含む層を相分離した後、該層に対して酸素プラズマ処理や水素プラズマ処理等を行うことにより、PMMAからなる相が選択的に除去される。この場合、PS部分がPブロックであり、PMMA部分がPブロックである。
【0125】
図2は、工程(iv)の一実施形態例を示す。
図2に示す実施形態においては、工程(iii)で基板1上に製造された構造体3’に、酸素プラズマ処理を行うことによって、相3aが選択的に除去され、離間した相3bからなるパターン(高分子ナノ構造体)が形成されている。この場合、相3bがPブロックからなる相であり、相3aがPブロックからなる相である。
【0126】
上記のようにして、ブロックコポリマーからなる層3の相分離によってパターンが形成された基板1は、そのまま使用することもできるが、さらに加熱することにより、基板1上のパターン(高分子ナノ構造体)の形状を変更することもできる。
加熱の温度条件は、用いるブロックコポリマーのガラス転移温度以上であり、かつ、熱分解温度未満が好ましい。また、加熱は、窒素等の反応性の低いガス中で行われることが好ましい。
【0127】
・ガイドパターン形成工程について
本発明に係る、相分離構造を含む構造体の製造方法においては、工程(i)と工程(ii)との間に、下地剤層上にガイドパターンを設ける工程(ガイドパターン形成工程)を有してもよい。これにより、相分離構造の配列構造制御が可能となる。
例えば、ガイドパターンを設けない場合に、ランダムな指紋状の相分離構造が形成されるブロックコポリマーであっても、下地剤層表面にレジスト膜の溝構造を設けることにより、その溝に沿って配向した相分離構造が得られる。このような原理で、下地剤層2上にガイドパターンを設けてもよい。また、ガイドパターンの表面が、ブロックコポリマーを構成するいずれかのポリマーと親和性を有することにより、基板表面に対して垂直方向に配向されたシリンダー構造からなる相分離構造が形成しやすくなる。
【0128】
ガイドパターンは、例えばレジスト組成物を用いて形成できる。
ガイドパターンを形成するレジスト組成物は、一般的にレジストパターンの形成に用いられるレジスト組成物やその改変物の中から、ブロックコポリマーを構成するいずれかのポリマーと親和性を有するものを適宜選択して用いることができる。該レジスト組成物としては、レジスト膜露光部が溶解除去されるポジ型パターンを形成するポジ型レジスト組成物、レジスト膜未露光部が溶解除去されるネガ型パターンを形成するネガ型レジスト組成物のいずれであってもよいが、ネガ型レジスト組成物であることが好ましい。ネガ型レジスト組成物としては、例えば、酸発生剤と、酸の作用により有機溶剤を含有する現像液への溶解性が酸の作用により減少する基材成分とを含有し、該基材成分が、酸の作用により分解して極性が増大する構成単位を有する樹脂成分、を含有するレジスト組成物が好ましい。
ガイドパターンが形成された下地剤層上にBCP組成物が流し込まれた後、相分離を起こすためにアニール処理が行われる。このため、ガイドパターンを形成するレジスト組成物としては、耐溶剤性と耐熱性とに優れたレジスト膜を形成し得るものであることが好ましい。
【0129】
・・ブロックコポリマーを含有する組成物(BCP組成物)について
BCP組成物としては、ブロックコポリマーを有機溶剤に溶解してなるものが挙げられる。
【0130】
・・・有機溶剤
BCP組成物は、上記ブロックコポリマーを有機溶剤に溶解することにより調製できる。この有機溶剤としては、下地剤に用いることができる有機溶剤として上述した(S)成分と同様のものが挙げられる。
BCP組成物に含まれる有機溶剤は、特に限定されるものではなく、塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定され、一般的にはブロックコポリマーの固形分濃度が0.2~70質量%、好ましくは0.2~50質量%の範囲内となるように用いられる。
【0131】
BCP組成物には、上記のブロックコポリマー及び有機溶剤以外に、さらに、所望により、混和性のある添加剤、例えば下地剤層の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料、増感剤、塩基増殖剤、塩基性化合物等を適宜含有させることができる。
【実施例
【0132】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
なお、各化学式中、nは構成単位の繰り返し数を示す。
【0133】
<高分子化合物の合成例>
≪ポリマー結合剤の合成≫
100mlの三口フラスコに温度計、滴下漏斗を備え、窒素雰囲気下で2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオール 5g、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と記載する。) 25g、イミダゾール 13gを加えて10℃以下まで冷却した。
その後、THF 25gに溶解させたt-ブチルジメチルクロロシラン 6.33gを10℃以下を保持しつつ、滴下し、30分間撹拌した後、室温で10時間反応させた。
続いて、超純水25gを加え、ジクロロメタン 100gで抽出し、超純水50gで5回、有機層を洗浄した。洗浄後の有機層を濃縮乾固することで、目的物であるポリマー結合剤7.85gを収率81%で得た。反応スキームを以下に示す。
【0134】
【化25】
【0135】
≪前駆体の合成≫
乾燥させた300mlのシュレンク管に塩化リチウム 0.77gを入れ、アルゴン雰囲気下、低酸素・低水分グレードのTHF 228gを入れ、-78℃まで冷却した。
その後、sec-ブチルリチウムの1Mシクロヘキサン溶液 1.64gと脱水・脱気処理を行ったスチレン 11.9gをシリンジにて注入し、30分間反応させた。
続いて、脱気処理を行った、上記ポリマー結合剤 0.44gをシリンジにて注入し、60分間反応させた。
反応液を室温まで昇温した後、濃縮したtert-ブチルメチルエーテル 115gで希釈し、1%塩酸水溶液 115gで3回、超純水 115gで4回、有機層を洗浄した。洗浄後の有機層を濃縮乾固することで、目的物である前駆体(PS2-TBS) 11.0gを収率96%で得た。反応スキームを以下に示す。GPC分析の結果、得られたPS2-TBSのMnは11000であり、Mw/Mnは1.15であった。
【0136】
【化26】
【0137】
≪高分子化合物(A1)の合成≫
温度計、冷却管を備えた三口フラスコに、上記で得た前駆体 6.88g、ジクロロメタン 56.3g、p-トルエンスルホン酸・一水和物 3.56gを加え、40℃にて10時間、撹拌した。
反応液を室温まで冷却した後、濾過を行い、濾液を回収した。
続いて、1%塩酸水溶液 70.7gで3回、超純水 70.7gで4回、有機層を洗浄した。洗浄後の有機層を濃縮乾固することで、目的物である高分子化合物(A1) 3.58gを収率80%で得た。反応スキームを以下に示す。GPC分析の結果、高分子化合物(A1)のMnは11000であり、Mw/Mnは1.15であった。
【0138】
【化27】
【0139】
<下地剤の調製>
(実施例1、比較例1~2)
次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に上記高分子化合物(A1)、下記高分子化合物(A2)、(A3)をそれぞれ溶解して、各例の下地剤(固形分濃度1.20質量%)を調製した。
【0140】
【表1】
【0141】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(A)-1:上記高分子化合物(A1)
(A)-2:下記の高分子化合物(A2)。
(A)-3:下記の高分子化合物(A3)。
(S)-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)。
【0142】
【化28】
【0143】
<下地剤層の製造>
8インチのシリコン(Si)ウェーハ上に、表1に示す各例の下地剤を、スピンナーを用いて塗布し、280℃で60秒間、焼成して乾燥させることにより、膜厚50nmの下地剤層を形成した。このとき、下地剤層の凝集の有無を目視で確認した。
この下地剤層を、OK73シンナー(商品名、東京応化工業株式会社製)でリンスして、未架橋部分等のランダムコポリマーを除去した。この後、250℃、60秒間でベークした。この後、下地剤層の膜厚と、水の接触角を測定した。
【0144】
[凝集性の確認]
下地剤層の凝集の有無について、目視で確認した。評価基準は下記の通りとし、その結果を表2に示す。
○:ほとんど凝集が観察されなかった。
△:凝集が一部観察された。
×:凝集が観察された。
【0145】
[下地剤層の表面における水の接触角の測定]
該下地剤層の表面に水を滴下し、DROP MASTER-700(製品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、接触角(静的接触角)の測定を行った(接触角の測定:水2μL)。この測定値を「接触角(°)」として表2に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
上記結果に示した通り、本発明を適用した実施例1は、下地剤層の凝集が無く、膜厚も薄膜で、水の接触角も高かった。
これに対し本発明を適用しない比較例1は、水の接触角は高いものの、下地剤層が凝集してしまった。また、比較例2は、下地剤層の凝集は一部抑制されていたものの、膜厚が厚くなってしまった。
【符号の説明】
【0148】
1…基板、2…下地剤層、3…層、3a…相、3b…相、30…基板密着性基、31…高分子化合物。
図1
図2
図3