(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】パン粉組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/157 20160101AFI20220520BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20220520BHJP
【FI】
A23L7/157
A21D13/00
(21)【出願番号】P 2018144600
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 周平
(72)【発明者】
【氏名】榊原 通宏
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 総一郎
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-254739(JP,A)
【文献】特開昭57-170137(JP,A)
【文献】特開昭57-125667(JP,A)
【文献】特開昭54-098347(JP,A)
【文献】特開平03-259053(JP,A)
【文献】特開平11-196784(JP,A)
【文献】特開2012-029669(JP,A)
【文献】'ギャバン 香草パン粉ミックス 100g',11-12-2014 uploaded, [Retrieved on 27-04-2022], Retrieved from the Internet:<URL: https://www.kumitasu.com/products/detail/21087/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A21D
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素粒子
(ただし、液体に溶解、懸濁又は乳化させた状態のものを除く)とパン粉
との混合物からなり、且つ該色素粒子と該パン粉とが一体化していない、パン粉組成物。
【請求項2】
前記色素粒子の含有量が、前記パン粉100質量部に対して0.001~0.2質量部である請求項1に記載のパン粉組成物。
【請求項3】
フライ食品用である請求項1又は2に記載のパン粉組成物。
【請求項4】
色素粒子
(ただし、液体に溶解、懸濁又は乳化させた状態のものを除く)とパン粉
との混合物からなり、且つ該色素粒子と該パン粉とが一体化していない、パン粉組成物の製造方法であって、
色素粒子と、該色素粒子とは別に製造されたパン粉とを混合する工程を有する、パン粉組成物の製造方法。
【請求項5】
前記パン粉が乾燥パン粉である請求項
4に記載のパン粉組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素粒子を含有するパン粉組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パン粉は、パンを粉砕し、必要に応じ乾燥して製造される調理用加工食品であり、フライ食品の衣材、ハンバーグのつなぎなどに使用されている。例えば、パン粉含有食品の一種であるパン粉付フライ食品は、通常、各種具材に小麦粉をまぶし(いわゆる打ち粉)、液卵やバッター液に浸漬した後、パン粉を付着させて、油ちょうすることによって製造される。
【0003】
特許文献1には、パン粉付フライ食品における衣の食感の経時劣化を防止するためには、パン粉の原料であるパン生地に油脂及び糖類を添加しないことが有効であることが記載されている。また特許文献1には、油脂及び糖類を添加しないで製造したパン粉について、フライした時の着色が薄くなる問題が生じること、この問題を解決するためにパン生地にアナトー色素等の色素を添加することが有効であることも記載されている(特許文献1の[0013])。
【0004】
特許文献2には、油ちょう以外の方法で加熱調理されたいわゆるパン粉付ノンフライ食品の外観が、油ちょうによって加熱調理されたパン粉付フライ食品のそれとはかけ離れた色調であるという問題に鑑み、ノンフライ用パン粉のパン粉用原料にアナトー色素を配合することが記載されている。特許文献2記載のノンフライ用パン粉は、パン粉用原料にアナトー色素を配合した後、適宜仕込み水を添加しながら混練して得られた生地を焼成してパンを製造し、該パンを粉砕して製造される(特許文献2の[0011]及び実施例)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-136925号公報
【文献】特開2011-254739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パン粉付フライ食品においては、食味食感のみならず、パン粉を具材として形成された衣の外観、特に色も重要である。パン粉付フライ食品の衣の色としては通常、中身の具材の色と調和し、鮮やかな色調のものが望まれる。特許文献1及び2には、パン粉の素になるパン生地に色素を配合し、パン粉自体を着色することが記載されているが、このような着色パン粉をパン粉付フライ食品の衣材として用いても、色の鮮やかさの点で物足りず、改善の余地があった。
【0007】
本発明の課題は、鮮やかな色調のパン粉含有食品を簡便に製造することができるパン粉組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、色素粒子及びパン粉を含有するパン粉組成物である。
【0009】
また本発明は、色素粒子及びパン粉を含有するパン粉組成物の製造方法であって、色素粒子と、該色素粒子とは別に製造されたパン粉とを混合する工程を有する、パン粉組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鮮やかな色調のパン粉含有食品を簡便に製造することができるパン粉組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のパン粉組成物は、色素粒子及びパン粉を含有する。すなわち本発明のパン粉組成物は、色素粒子とパン粉との混合物であり、該パン粉組成物においては、色素粒子とパン粉とがそれぞれ独立に存在し得る。本発明のパン粉組成物において、色素粒子がパン粉の表面に物理的に係合し、あるいは何らかの作用で付着することはあっても、パン粉の内部に色素粒子が含有され両者が一体化された状態は通常存在しない。この点は、特許文献1及び2に記載の如き着色パン粉とは対照的である。
【0012】
パン粉含有食品の一種であるパン粉付きフライ食品においては、パン粉が具材の表面全体に均一に付着しているとは限らず、パン粉の非付着部が存在し得るところ、該パン粉が特許文献1及び2に記載の如き着色パン粉である場合には、パン粉の付着部と非付着部とで色調ないし色合いに違いが生じ、パン粉付きフライ食品全体として外観が悪化するという問題が生じ得る。また、着色パン粉は、色素と一体化しているため、それ自体が焦げやすいという問題もある。これに対し、本発明のパン粉組成物は、パン粉とは別体の色素粒子を含有し、色素粒子はパン粉の存在とは無関係に具材の表面に付着し、あるいはパン粉に付着するので、前記問題は生じない。したがって、本発明のパン粉組成物によれば、着色パン粉では得られない、鮮やかな色調のパン粉含有食品が得られる。
【0013】
色素粒子の粒子径は、ムラのない着色を実現する観点から、好ましくは0.5~100μm、より好ましくは1~50μmである。ここでいう「粒子径」とは、レーザー回折・散乱法により測定された値である。色素粒子の形状は特に限定されない。
【0014】
色素粒子の色調は、パン粉含有食品における具材の色調を考慮して、パン粉含有食品に鮮やかな色調を与えるという目的が達成されるよう、適宜選択すればよい。例えば、パン粉含有食品がパン粉付きフライ食品である場合において、その具材が畜肉類又は魚介類である場合、斯かる具材の多くは色調が赤色系であることから、色素粒子としては赤色系又は黄色系が好ましい。赤色系の色素粒子としては、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色40号、コチニール色素、ベニコウジ色素、アナトー色素、トウガラシ色素等が挙げられる。黄色系の色素粒子としては、例えば、黄色4号、黄色5号、ウコン色素、クチナシ色素、ベータカロテン等が挙げられる。本発明のパン粉組成物においては、2種類以上の色素粒子を併用してもよい。
【0015】
本発明のパン粉組成物における色素粒子の含有量は、使用する色素粒子の種類、色調などを考慮して適宜設定すればよいが、該パン粉組成物に含有されるパン粉100質量部に対して、好ましくは0.001~0.2質量部、より好ましくは0.005~0.15質量部、さらに好ましくは0.01~0.06質量部である。色素粒子の含有量が少なすぎると、これを使用する意義に乏しく、色素粒子の含有量が多すぎると、着色が強すぎてパン粉含有食品の外観が不自然になるおそれがある。
【0016】
本発明のパン粉組成物において色素粒子とともに含有されるパン粉としては、従来パン粉として使用されているものを特に制限無く用いることができる。パン粉は、典型的には、小麦粉、糖類、食塩、イースト、イーストフード、油脂、水等を原料として焙焼法、電極法などの方法によってパンを製造し、該パンを粉砕することによって製造される。
【0017】
本発明のパン粉組成物は、色素粒子と、該色素粒子とは別に製造されたパン粉とを混合することによって製造することができる。本発明のパン粉組成物は、典型的には、色素粒子及びパン粉をそれぞれ必要量計量し、混合して攪拌することによって製造される。一方、本発明のパン粉組成物は、着色パン粉の製造方法、すなわち、パン粉の素になるパン生地に色素粒子を配合し、パン粉自体を着色する方法では製造することはできない。斯かる製造方法では、色素粒子とパン粉とが一体化してしまい、両者がそれぞれ独立に存在し得る状態とはならないためである。
【0018】
本発明の製造方法で用いるパン粉、すなわちパン粉組成物の原料としてのパン粉としては、乾燥処理が施されていない生パン粉を用いることもできるが、乾燥処理が施された乾燥パン粉が好ましい。パン粉組成物の原料として生パン粉を用いた場合には、生パン粉と色素粒子とを混合した際に、生パン粉の水分によって色素粒子が溶解する不都合が生じるおそれがあるが、乾燥パン粉を用いた場合には斯かる不都合は生じない。乾燥パン粉の水分含量は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10~13質量%である。ここでいう「水分含量」は、絶乾法で測定した値である。なお、パン粉組成物の原料として生パン粉を用いた場合には、色素粒子と混合した後、その混合物を乾燥してもよい。
【0019】
本発明のパン粉組成物は、パン粉含有食品全般に適用可能である。本発明のパン粉組成物が適用可能なパン粉含有食品としては、例えば、畜肉類、魚介類、甲殻類、野菜類、根菜類等の具材とこれを被覆する衣とを有し、油ちょうにより製造されるパン粉付フライ食品;具材と衣とを有し、油ちょう以外の加熱調理法により製造されるフライ様食品(ノンフライ食品);コロッケやメンチカツ等の調理済みパテ類を用いた食品、パン粉焼き料理、つなぎとしてパン粉を用いたハンバーグ、風味付けとしてパン粉を用いたグラタン等が挙げられる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0021】
〔実施例1~9〕
乾燥パン粉(フライスター株式会社製)と色素粒子(ヤヱガキ醗酵技研株式会社製の粒子状アナトー色素)とを混合し、両者が均一になるまで撹拌して、パン粉組成物を製造した。
【0022】
〔実施例10~13〕
生パン粉(フライスター株式会社製)と色素粒子(ヤヱガキ醗酵技研株式会社製の粒子状アナトー色素)とを混合し、両者が均一になるまで撹拌した後、その混合物を気流式乾燥機で乾燥して、パン粉組成物を製造した。
【0023】
〔比較例1~4〕
いわゆる着色パン粉を常法に従って製造した。具体的には、パン生地原料として、強力小麦粉、イースト及びイーストフードを用い、更に、色素粒子(ヤヱガキ醗酵技研株式会社製の粒子状アナトー色素)の水溶液を用い、該パン生地原料と該水容液とを混合し、更に加水して混捏し、色素含有パン生地を製造した。この色素含有パン生地を焼成してパンを得、該パンを粉砕し、その粉砕物を気流式乾燥機で乾燥して、着色パン粉を製造した。
【0024】
〔試験例〕
評価対象のパン粉組成物又は着色パン粉をトレイに広げ、そこに豚ロース肉(厚さ約1cm、約100g×1枚)に打ち粉と卵液を絡めたものを載せ、何度か返しながら肉の全面に評価対象品を付着させた。これを170℃に熱した油槽で約3分間油ちょうしてトンカツ(パン粉含有食品)を製造した。
また、参考例として、色素粒子を用いなかった以外は実施例1~9と同様にしてトンカツを製造した。
製造したトンカツについて、10名の訓練されたパネラーにより、外観(色調)を以下の評価基準で評価した。結果を10名の評価点の平均値として下記表1~表2に示す。
【0025】
<トンカツの外観の評価基準>
5点:全体が均一にムラなく色付き、焦げ色がなく、極めて良好。
4点:全体に色付いており、焦げ色がなく、良好。
3点:色付きにわずかにムラがあるか、ごく一部に焦げ色になったパン粉はあるが、問題ない外観。
2点:色付きにムラがあるか、一部に焦げ色がついており、不良。
1点:色付きにムラが多いか、全体に焦げ色がついており、極めて不良。
【0026】
【0027】