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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】有害生物の防除方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/78 20060101AFI20220520BHJP
   A01G 7/06 20060101ALI20220520BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20220520BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20220520BHJP
   A01N 25/12 20060101ALI20220520BHJP
   A01N 47/02 20060101ALI20220520BHJP
   A01N 51/00 20060101ALI20220520BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
A01N43/78 C
A01G7/06 A
A01M1/20 A
A01N25/00 102
A01N25/12
A01N47/02
A01N51/00
A01P7/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018167641
(22)【出願日】2018-09-07
(62)【分割の表示】P 2015559955の分割
【原出願日】2015-01-21
(65)【公開番号】P2019014723
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2018-10-05
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2014013042
(32)【優先日】2014-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】坂本 えみ子
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】大熊 幸治
【審判官】伊藤 佑一
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-525251(JP,A)
【文献】特開2001-19685(JP,A)
【文献】林直人他,平成24年度農薬実用化試験で注目された病害虫防除剤,植物防疫,2013年,第67巻、第3号,第168-182頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化合物群(A)より選ばれる1種以上の化合物及びフルエンスルホンの有効量を含む粒剤を、土壌と混和する工程を有する有害生物の防除方法。
化合物群(A):クロチアニジン、チアメトキサム、イミダクロプリド及びフィプロニルからなる群。
【請求項2】
前記化合物群(A)より選ばれる1種以上の化合物と、フルエンスルホンとの重量比が、20:1~1:200の範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物群(A)より選ばれる1種以上の化合物及びフルエンスルホンの有効量を含む粒剤を土壌と混和する工程と、混和処理した土壌に作物を植え付ける工程とを有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物群(A)より選ばれる1種以上の化合物及びフルエンスルホンの有効量を含む粒剤を土壌と混和した直後から20日までの間に、作物を植え付ける工程を行う請求項3に記載の方法。
【請求項5】
作物がサツマイモである請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害生物の防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昆虫類を始めとする節足動物や線虫類等、作物に被害を与える有害生物に対して防除効果を有する種々の薬剤が知られている(例えば、欧州特許出願公開第0580553号明細書、欧州特許出願公開第0295117号明細書、国際公開第2001/002378号、The Pesticide Manual-16th edition(BCPC刊);ISBN 978-1-901396-86-7、Compendium of Pesticide Common Names、[online]、1996年12月10日、[平成25年12月6日検索]、インターネット<URL:http://www.alanwood.net/pesticides/>参照。)。しかしながら、これらの薬剤を用いる有害生物の防除方法において、十分な効果が得られないことがあった。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、有害生物に対して優れた防除効果を発揮する有害生物の防除方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく検討した結果、下記化合物群(A)より選ばれる1種以上の化合物及び下記化合物群(B)より選ばれる1種以上の化合物の有効量を、土壌混和処理することにより、有害生物に対する防除効果が向上することを見出した。
すなわち、本発明は以下の[1]~[6]の通りである。
[1] 下記化合物群(A)より選ばれる1種以上の化合物及び下記化合物群(B)より選ばれる1種以上の化合物の有効量を、土壌と混和する工程を有することを特徴とする有害生物の防除方法。
化合物群(A):クロチアニジン、チアメトキサム、イミダクロプリド及びフィプロニルからなる群。
化合物群(B):カズサホス、オキサミル及びフルエンスルホンからなる群。
[2] 前記化合物群(A)より選ばれる1種以上の化合物と、前記化合物群(B)より選ばれる1種以上の化合物との重量比が、20:1~1:200の範囲である[1]に記載の有害生物の防除方法。
[3] 前記工程が、前記化合物群(A)より選ばれる1種以上の化合物及び前記化合物群(B)より選ばれる1種以上の化合物の有効量を含む粒剤を、土壌と混和する工程である[1]又は[2]に記載の有害生物の防除方法。
[4] 前記化合物群(A)より選ばれる1種以上の化合物及び前記化合物群(B)より選ばれる1種以上の化合物の有効量を土壌と混和する工程と、混和処理した土壌に作物を植え付ける工程とを有する[1]~[3]の何れか1項に記載の有害生物の防除方法。
[5] 前記化合物群(A)より選ばれる1種以上の化合物及び前記化合物群(B)より選ばれる1種以上の化合物の有効量を土壌と混和した直後から20日までの間に、作物を植え付ける工程を行う[4]に記載の有害生物の防除方法。
[6] 作物がサツマイモである[4]又は[5]に記載の有害生物の防除方法。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明において用いられる前記化合物群(A)より選ばれる1種以上の化合物(以下、本化合物Aと記す。)及び前記化合物群(B)より選ばれる1種以上の化合物(以下、本化合物Bと記す。)について説明する。クロチアニジン、チアメトキサム、イミダクロプリド、フィプロニル、カズサホス及びオキサミルは何れも公知の化合物であり、例えば「The Pesticide Manual-16th edition(BCPC刊);ISBN 978-1-901396-86-7」の225、1104、640、491、148及び838に記載されている。これらの化合物は市販の製剤から得るか、公知の方法で製造することにより得られる。
また、フルエンスルホンも公知の化合物であり、例えば「The Pesticide Manual-16th edition(BCPC刊);ISBN 978-1-901396-86-7」の513ページに記載されており、国際公開第2001/002378号等に記載された方法で製造することができる。
本発明においては、本化合物Bとしてフルエンスルホンの使用が好ましく、クロチアニジン、チアメトキサム、イミダクロプリド及びフィプロニルからなる群より選ばれる1種以上の化合物とフルエンスルホンとを組み合わせて使用する態様が好適である。
本発明において用いられる本化合物A及び本化合物Bは、化合物そのものでもよいが、通常は本化合物A、本化合物B又はその両方と不活性担体とを混合し、必要に応じて界面活性剤やその他の製剤用補助剤を添加して、油剤、乳剤、フロアブル剤、水和剤、顆粒水和剤、粉剤、粒剤等に製剤化されて用いられる。
本化合物Aを含有する製剤(以下、本製剤Aと記す。)における本化合物Aの含有量、及び本化合物Bを含有する製剤(以下、本製剤Bと記す。)における本化合物Bの含有量は、それぞれ通常0.05~99重量%、好ましくは0.08~90重量%、更に好ましくは0.1~70重量%の範囲である。また、本化合物A及び本化合物Bを含有する製剤(以下、本製剤Cと記す。)における本化合物A及び本化合物Bの合計含有量は、通常0.05~99重量%、好ましくは0.08~90重量%、更に好ましくは0.1~70重量%の範囲である。なお、本製剤Cは本製剤Aと本製剤Bとの混合物でもよい。
製剤化の際に用いられる不活性担体としては、固体担体、液体担体が挙げられる。前記の固体担体としては、例えばカオリンクレー、アッタパルジャイトクレー、ベントナイト、モンモリロナイト、酸性白土、パイロフィライト、タルク、珪藻土、方解石等の鉱物、トウモロコシ穂軸粉、クルミ殻粉等の天然有機物、尿素等の合成有機物、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム等の塩類、合成含水酸化珪素等の合成無機物等からなる微粉末あるいは粒状物が挙げられ、液体担体としては、例えばキシレン、アルキルベンゼン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類、2-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、ダイズ油、綿実油等の植物油、石油系脂肪族炭化水素類、エステル類、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル及び水が挙げられる。
界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホネートホルムアルデヒド重縮合物等の陰イオン界面活性剤及びポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、及びアルキルトリメチルアンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤が挙げられる。
その他の製剤用補助剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、アラビアガム、アルギン酸及びその塩、CMC(カルボキシメチルセルロ-ス)、ザンサンガム等の多糖類、アルミニウムマグネシウムシリケート、アルミナゾル等の無機物、防腐剤、着色剤及びPAP(酸性リン酸イソプロピル)、BHT(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)等の安定化剤が挙げられる。
本発明は、本化合物A及び本化合物Bの有効量を、作物を栽培する土壌に処理することにより有害生物を防除する方法に関し、その処理形態が、土壌混和(soil incorporation)であることを特徴とする。土壌混和としては、植穴処理土壌混和(pricking-in hole treatment (soil incorporation))、植溝処理土壌混和(planting furrow treatment (soil incorporation))、作条処理土壌混和(planting row treatment (soil incorporation))及び全面処理土壌混和(broadcast treatment (soil incorporation))等を例示することができる。ここで、植穴処理土壌混和(植穴土壌混和ということもある。)とは、作物を植え付けるために土壌に開けた穴(植穴)へ本化合物A及び本化合物Bの有効量を置き、植穴の底の土壌と混和する形態を指し、植溝処理土壌混和(植溝土壌混和ということもある。)とは、作物を植え付けるために土壌に掘った溝(植溝)へ本化合物A及び本化合物Bの有効量を置き、植溝の底の土壌と混和する形態を指す。作条処理土壌混和(作条土壌混和ということもある。)とは、作物を植え付ける土壌表面へ本化合物A及び本化合物Bの有効量をすじ状に置き、表層土と本化合物A及び本化合物Bとを混和する形態を指す。また、全面処理土壌混和(全面土壌混和ということもある。)とは、作物を栽培する土壌表面全面へ本化合物A及び本化合物Bの有効量を置き、表層土と混和する形態を指す。本発明において、表層土(surface soil)とは作物を栽培する土壌の最上部の土壌層であり、作物を栽培するために掘り返す土壌層を意味する。
また、本発明においては、本化合物A及び本化合物Bの有効量を同時に、土壌混和処理する態様が好適である。
本発明において、本化合物A及び本化合物Bの処理量は、作物の種類、防除対象である有害生物の種類や発生程度、製剤形態、処理時期、気象条件等によって変わり得るが、本化合物A及び本化合物Bの合計量として、作物を栽培する土地1000m2あたり、通常0.1~5000g、好ましくは1~2000g、更に好ましくは10~1500gの範囲である。
また、本化合物Aと本化合物Bと重量比が、通常20:1~1:200、好ましくは10:1~1:100、更に好ましくは2:1~1:30の範囲になるように処理する。
本化合物A及び本化合物Bとして、本製剤A及び本製剤B又は本製剤Cを用いる場合、その製剤形態が、粒剤、粉剤等の場合は、通常希釈することなくそのまま処理する。本発明においては、粒剤の使用が好ましい。乳剤、水和剤、顆粒水和剤、フロアブル剤等の場合は、そのまま処理してもよいが、通常は水で希釈して処理する。この場合、水希釈液における本化合物A及び本化合物Bの合計濃度は、通常0.00001~10重量%、好ましくは0.0001~5重量%の範囲である。
作物が栽培されている土壌に、本化合物A及び本化合物Bの有効量を混和してもよいし、本化合物A及び本化合物Bの有効量を土壌と混和し、混和処理した土壌に作物を植え付けてもよい。
特に、本化合物A及び本化合物Bの有効量を土壌混和処理した後、作物を植え付けて栽培することにより、該作物に被害を与える有害生物を防除することができる。かかる作物としては、例えば、以下の作物が挙げられる。
農作物:トウモロコシ、イネ、ワタ、ダイズ(エダマメを含む)、ラッカセイ、テンサイ、ナタネ、ヒマワリ、サトウキビ、タバコ等。
野菜:ナス科野菜(ナス、トマト、ピーマン、ジャガイモ、トウガラシ等)、ウリ科野菜(キュウリ、カボチャ、スイカ、メロン、マクワウリ、ニガウリ、トウガン、シラウリ、ズッキーニ等)、アブラナ科野菜(セイヨウワサビ、コールラビ、ハクサイ、キャベツ、カラシナ、ブロッコリー、カリフラワー、アブラナ等)、キク科野菜(シュンギク、レタス等)、ユリ科野菜(ネギ、ニラ、タマネギ、ニンニク、ラッキョウ、ワケギ、アスパラガス等)、セリ科野菜(ニンジン、パセリ、セロリ、アメリカボウフウ等)、アカザ科野菜(ホウレンソウ、フダンソウ等)、シソ科野菜(シソ、ミント、バジル等)、イチゴ、サツマイモ、ヤマノイモ、ナガイモ、サトイモ、コンニャク、イチョウイモ、ハス、ショウガ等。
果樹:仁果類(リンゴ、セイヨウナシ、ニホンナシ、カリン、マルメロ等)、核果類(モモ、スモモ、ネクタリン、ウメ、オウトウ、アンズ、プルーン等)、カンキツ類(ウンシュウミカン、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ等)、堅果類(クリ、クルミ、ハシバミ、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、マカダミアナッツ等)、液果類(ブルーベリー、クランベリー、ブラックベリー、ラズベリー等)、ブドウ、カキ、オリーブ、ビワ、バナナ、コーヒー、ナツメヤシ、ココヤシ、アブラヤシ等。
果樹以外の樹木:チャ、クワ、花木類(ツツジ、ボタン、サツキ、ツバキ、アジサイ、サザンカ、シキミ、サクラ、ユリノキ、サルスベリ、キンモクセイ等)、街路樹(トネリコ、カバノキ、ハナミズキ、ユーカリ、イチョウ、ライラック、カエデ、カシ、ポプラ、ハナズオウ、フウ、プラタナス、ケヤキ、クロベ、モミノキ、ツガ、ネズ、マツ、トウヒ、イチイ、ニレ、トチノキ等)、サンゴジュ、イヌマキ、スギ、ヒノキ、クロトン、マサキ、カナメモチ等。
花卉:チューリップ、ユリ、アヤメ、ペチュニア、キク、トルコギキョウ、ガーベラ、カーネーション等。
上記の作物の中でも、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ヤマノイモ、キュウリ、メロン、カボチャ、スイカ、トマト、ナス、ピーマン、イチゴ、キャベツ、ネギ、ニラ及びエダマメが好ましい。
上記の作物は、遺伝子組換え技術や交配による古典的な育種法によって、除草剤耐性、有害生物への耐性あるいは環境ストレス耐性を付与された作物であってもよい。
本発明は、殊に、作物の栄養器官又は苗を植え付けて栽培する場合の有害生物の防除方法として好適である。ここで、栄養器官とは、苗条及び根、又はその一部を意味し、本発明においては、葉及び茎を総称して苗条(shoot)という。かかる栄養器官としては、具体的には、塊根(tuberous root)、鱗茎(bulb)、球茎(corm又はsolid bulb)、塊茎(tuber)、根茎(rhizome)、匍匐枝(stolon)、担根体(rhizophore)、むかご(propagule)及びつる(vine cutting)が挙げられる。なお、匍匐枝は、ランナー(runner)と呼ばれることもあり、むかごは、肉芽(broad bud)や珠芽(bulbil)と呼ばれることもある。また、つるとは、サツマイモやヤマノイモ等の苗条である。本発明においては、実生苗(seedling)及び苗木(sapling)を総称して苗という。苗の葉齢は、通常本葉1葉期~15葉期の範囲であり、好ましくは本葉1葉期~5葉期、更に好ましくは本葉1.5葉期~3葉期の範囲である。
また、本発明においては、キュウリの苗、キャベツの苗、ジャガイモの塊茎又はサツマイモのつるを植え付ける実施態様が好適である。
作物の植え付けは、本化合物A及び本化合物Bの有効量の処理直後から処理後20日までの間に実施することが好ましく、処理直後から処理後10日までの間に実施することが更に好ましい。
本発明において、本化合物A及び本化合物Bの有効量を土壌混和処理した後、土壌表面を被覆資材で覆うことにより、有害生物をより効果的に防除することができる。被覆資材としてはプラスチックフィルムの使用が好ましい。被覆資材はマルチ(mulch)やマルチフィルム(mulching film)等と呼ばれることもあり、具体的には、白色、黒色、緑色及び透明等のポリエチレン製マルチフィルム、表面が銀色で裏面が黒色、及び表面が白色で裏面が黒色等のポリエチレン製二層マルチフィルム、脂肪酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリブチルサクシネート、高分子系デンプン又はパルプ等を原料とする生分解性マルチフィルムが挙げられる。本発明においては、黒色のポリエチレン製マルチフィルムの使用が好ましい。被覆資材による被覆を開始する時期は、本化合物A及び本化合物Bの有効量の処理直後から処理後20日までの間が好ましく、処理直後から処理後10日までの間が更に好ましく、処理直後が更にいっそう好ましい。
本発明においては、1種以上の他の農薬を併用することもできる。他の農薬としては、例えば殺虫剤、殺線虫剤、殺菌剤、除草剤、植物生長調節剤及び薬害軽減剤が挙げられる。他の農薬は本化合物A及び本化合物Bの有効量と同時に処理してもよいし、別々に処理しても何ら差し支えない。
本発明により、有害生物(昆虫類及び線虫類)を防除することができる。かかる有害生物としては、具体的には、以下の有害生物が挙げられる。
半翅目害虫:ヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus)等のウンカ類、チャノミドリヒメヨコバイ(Empoasca onukii)等のヨコバイ類、ワタアブラムシ(Aphis gossypii)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)、ダイコンアブラムシ(Brevicoryne brassicae)、ユキヤナギアブラムシ(Aphis spiraecola)、チューリップヒゲナガアブラムシ(Macrosiphum euphorbiae)、ジャガイモヒゲナガアブラムシ(Aulacorthum solani)、ムギクビレアブラムシ(Rhopalosiphum padi)、ミカンクロアブラムシ(Toxoptera citricidus)、モモコフキアブラムシ(Hyalopterus pruni)、エンドウヒゲナガアブラムシ(Acyrthosiphon pisum)、クワイクビレアブラムシ(Rhopalosiphum nymphaeae)、Aphis naturtii、Aphis fabae等のアブラムシ類、クサギカメムシ(Halyomorpha mista)、ターニッシュッドプラントバグ(Lygus lineolaris)等のカメムシ類、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、シルバーリーフコナジラミ(Bemisia argentifolii)、ミカンコナジラミ(Dialeurodes citri)、ミカントゲコナジラミ(Aleurocanthus spiniferus)等のコナジラミ類、アカマルカイガラムシ(Aonidiella aurantii)、サンホーゼカイガラムシ(Comstockaspis perniciosa)等のカイガラムシ類。
鱗翅目害虫:アワノメイガ(Ostrinia furnacalis)、ハイマダラノメイガ(Hellula undalis)、シバツトガ(Pediasia teterrellus)、ヨーロピアンコーンボーラー(Ostrinia nubilaris)等のメイガ類、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、タマナヤガ(Agrotis ipsilon)等のヤガ類、モンシロチョウ(Pieris rapae)等のシロチョウ類、コドリンガ(Cydia pomonella)等のハマキガ類、コナガ(Plutella xylostella)等のスガ類、及びジャガイモガ(Phthorimaea operculella)等のキバガ類。
アザミウマ目害虫:ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)、ミナミキイロアザミウマ(Thrips parmi)、チャノキイロ
アザミウマ(Scirtothrips dorsalis)、ネギアザミウマ(Thrips tabaci)、ヒラズハナアザミウマ(Frankliniella intonsa)、タバコアザミウマ(Frankliniella fusca)等のアザミウマ類。
双翅目害虫:タネバエ(Delia platura)、タマネギバエ(Delia antiqua)等のハナバエ類、及びトマトハモグリバエ、(Liriomyza sativae)、マメハモグリバエ(Liriomyza trifolii)、ナモグリバエ(Chromatomyia horticola)等のハモグリバエ類。
鞘翅目害虫:ウエスタンコーンルートワーム(Diabrotica virgifera virgifera)、サザンコーンルートワーム(Diabrotica undecimpunctata howardi)等のコーンルートワーム類(Diabrotica spp.)、ドウガネブイブイ(Anomala cuprea)、アオドウガネ(Anomala albopilosa)、ヒメコガネ(Anomala rufocuprea)、マメコガネ(Popillia japonica)等のコガネムシ類、トビイロヒョウタンゾウムシ(Sphenophorus uniformis)等のゾウムシ類、ウリハムシ(Aulacophora femoralis)、コロラドハムシ(Leptinotarsa decemlineata)等のハムシ類、及びコメツキムシ類(Agriotes spp.)。
線虫類:サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)、ジャワネコブセンチュウ(Meloidogyne javanica)、キタネコブセンチュウ(Meloidogyne hapla)、アレナリアネコブセンチュウ(Meloidogyne arenaria)、 ナンヨウネコブセンチュウ(Meloidogyne microcephala)等のMeloidogyne属線虫類、イモグサレセンチュウ(Ditylelenchus destructor)、ナミクキセンチュウ(Ditylelenchus dipsaci)等のDitylelenchus属線虫類、ミナミネグサレセンチュウ(Pratylenchus cffeae)、キタネグサレセンチュウ(Pratylenchus penetrans)、クルミネグサレセンチュウ(Pratylenchus vulnus)、ムギネグサレセンチュウ(Pratylenchus neglectus)、チャネグサレセンチュウ(Pratylenchus loosi)等のPratylenchus属線虫類、ジャガイモシストセンチュウ(Globodera rostochiensis)、ジャガイモシロシストセンチュウ(Globodera pallida)等のGlobodera属線虫類、ダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)、テンサイシストセンチュウ(Heterodera shachtoii)等のHeterodera属線虫類、ハガレセンチュウ(Aphelenchoides ritzemabosi)等のAphelenchoides属線虫類、バナナネモグリセンチュウ(Radopholus similis)、カンキツネモグリセンチュウ(Radopholus citrophilus)等のRadopholus属線虫類、ミカンネセンチュウ(Tylenchulus semipenetrans)等のTylenchulus属線虫類、ニセフクロセンチュウ(Rotylenchulus reniformis)等のRotylenchulus属線虫類、イチゴメセンチュウ(Nothotylenchus acris)等のDitylenchus属線虫類、ニセネコブセンチュウ(Nacobbus aberrans)等のNacobbus属線虫類、カナヤサヤワセンチュウ(Hemicriconemoides kanayaensis)等のHemicriconemoides属線虫類等。
本発明は、上記の有害生物の中でも、昆虫類としては、アブラムシ類、コナジラミ類、メイガ類、ヤガ類、スガ類、アザミウマ類、ハモグリバエ類、コガネムシ類及びコメツキムシ類、線虫類としては、サツマイモネコブセンチュウ、キタネコブセンチュウ、アレナリアネコブセンチュウ、ミナミネグサレセンチュウ、キタネグサレセンチュウ及びジャガイモシストセンチュウの防除方法として好適であり、殊にアブラムシ類、メイガ類、スガ類、ヤガ類、コガネムシ類及びサツマイモネコブセンチュウの防除方法として好適である。
【実施例
【0005】
以下、本発明を製剤例及び試験例にてさらに詳しく説明するが、本発明は以下の例のみに限定されるものではない。なお、以下の例において、部は特にことわりの無い限り重量部を表す。
まず、製剤例を示す。
製剤例1(粒剤)
クロチアニジンを0.5部、カズサホスを3部、合成含水酸化珪素1部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、ベントナイトを30部及びカオリンクレー残部の混合物100部をよく粉砕混合し、水を加えてよく練り合せた後、造粒乾燥することにより粒剤を得る。
製剤例2(粒剤)
クロチアニジンを0.5部、オキサミルを0.8部、合成含水酸化珪素1部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、ベントナイトを30部及びカオリンクレー残部の混合物100部をよく粉砕混合し、水を加えてよく練り合せた後、造粒乾燥することにより粒剤を得る。
製剤例3(粒剤)
クロチアニジンを0.5部、フルエンスルホンを2部、合成含水酸化珪素1部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、ベントナイトを30部及びカオリンクレー残部の混合物100部をよく粉砕混合し、水を加えてよく練り合せた後、造粒乾燥することにより粒剤を得る。
製剤例4~7(粒剤)
クロチアニジン0.5部に代えて、下記の表1に記載のそれぞれの化合物及び使用量で適用した以外は製剤例1~3と同様の操作を行い、それぞれの粒剤を得る。
[表1]

製剤例8(水和剤)
クロチアニジン15部及びカズサホス15部を、ラウリル硫酸ナトリウム4部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、合成含水酸化珪素微粉末20部及び珪藻土残部の混合物中に加え、よく攪拌混合して水和剤100部を得る。
製剤例9(水和剤)
クロチアニジン15部及びオキサミル15部を、ラウリル硫酸ナトリウム4部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、合成含水酸化珪素微粉末20部及び珪藻土残部の混合物中に加え、よく攪拌混合して水和剤100部を得る。
製剤例10(水和剤)
クロチアニジン15部及びフルエンスルホン15部を、ラウリル硫酸ナトリウム4部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、合成含水酸化珪素微粉末20部及び珪藻土残部の混合物中に加え、よく攪拌混合して水和剤100部を得る。
製剤例11~13(水和剤)
クロチアニジン15部に代えて、下記の表2に記載のそれぞれの化合物及び使用量で適用した以外は製剤例8~10と同様の操作を行い、水和剤100部を得る。
[表2]

次に、本発明の効果を試験例にて示す。
以下の試験例で用いたフルエンスルホン2.0%粒剤は、次の方法にて作製した。なお、当該フルエンスルホン2.0%粒剤は作製した当日に試験に用いた。
6ml容量のガラス製スクリュー管(株式会社マルエム製)に、フルエンスルホン(純度99.0%)50.5mgと芳香族炭化水素(製品名:Solvesso 150ND、芳香族炭化水素として主にC10-11のアルキルベンゼンを含有、CAS No.64742-94-5、ExxonMobil Chemical Company製)100mgとを加え、蓋をして超音波を照射し、フルエンスルホン及びSolvesso 150NDの混合液を得た。
次に、6ml容量のガラス製スクリュー管(株式会社マルエム製)に、セラミックス多孔体(製品名:APLS N、成分としてシリカ(CAS No.7631-86-9)、酸化アルミニウム(CAS No.1344-28-1)及び酸化鉄(CAS No.1309-37-1)を含有、イソライト工業株式会社製)2.3495gを入れ、そこへ前記の混合液150.5mgを2回に分けて常温で添加し、蓋をして十分に混合して含浸させることにより、フルエンスルホンを2.0%含有する粒剤(以下、フルエンスルホン2.0%粒剤と記す)2.5gを得た。
試験例1
クロチアニジン0.5%粒剤(製品名:ダントツ粒剤、住友化学株式会社製)、チアメトキサム0.5%粒剤(製品名:アクタラ粒剤5、シンジェンタジャパン株式会社製)、イミダクロプリド1.0%粒剤(製品名:アドマイヤー1粒剤、バイエルクロップサイエンス株式会社製)及びフルエンスルホン2.0%粒剤を、下記の表3に示される量用いて混合し、試験用製剤(混合粒剤)をそれぞれ得た。混合は、20ml容量のガラス製スクリュー管(株式会社マルエム製)内で行った。
860ml容量のプラスチック製カップ(カップ上面の表面積は約1/10000a)に、土壌700gを充填し、水を150g加えて十分に混和し、栽培用土壌を準備した。各カップ内の栽培用土壌の表面に、表3に記載の試験用製剤を均一に置き(各有効成分の10aあたりの処理量は表4に記載の通りである)、栽培用土壌と十分に混和した(混和した土壌の深度は約7cm)。直ちに、カップ内の栽培用土壌の中央部に約5cm深、直径約6cmの穴を開け、キュウリの苗(3オンスカップで育苗した本葉1.5葉期の苗)を植え付け、室内(25℃)に置いた。植え付け(試験用製剤処理)7日後に、ワタアブラムシの2齢~3齢幼虫を約20頭放飼し、供試した虫の逃亡を防ぐため地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを処理区と呼ぶ。
一方、薬剤を処理しなかったこと以外は処理区と同様に、キュウリの苗を植え付け、室内に置き、植え付け7日後にワタアブラムシの2齢~3齢幼虫を約20頭放飼し、地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを無処理区と呼ぶ。
放飼5日後に供試した虫の生死を観察した。その観察結果から、下記の式1)によって防除価を算出した。その防除価を表4に示す。なお、試験は2反復で行った。
式1); 防除価(%)=100×(1-処理区の観察時の生存虫数/無処理区の観察時の生存虫数)
[表3]

[表4]


試験例2
860ml容量のプラスチック製カップ(カップ上面の表面積は約1/10000a)に、土壌700gを充填し、水を150g加えて十分に混和し、栽培用土壌を準備した。各カップ内の栽培用土壌の表面に、表3に記載の試験用製剤を均一に置き(各有効成分の10aあたりの処理量は表5に記載の通りである)、栽培用土壌と十分に混和した(混和した土壌の深度は約7cm)。試験用製剤処理10日後、カップ内の栽培用土壌の中央部に約5cm深、直径約6cmの穴を開け、キュウリの苗(3オンスカップで育苗した本葉1.5葉期の苗)を植え付け、室内(25℃)に置いた。植え付け7日後に、ワタアブラムシの2齢~3齢幼虫を約20頭放飼し、供試した虫の逃亡を防ぐため地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを処理区と呼ぶ。
一方、薬剤を処理しなかったこと以外は処理区と同様に、キュウリの苗を植え付け、室内に置き、植え付け7日後にワタアブラムシの2齢~3齢幼虫を約20頭放飼し、地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを無処理区と呼ぶ。
放飼5日後に供試した虫の生死を観察した。その観察結果から、前記の式1)によって防除価を算出した。その防除価を表5に示す。なお、試験は2反復で行った。
[表5]

試験例3
チアメトキサム0.5%粒剤(製品名:アクタラ粒剤5、シンジェンタジャパン株式会社製)及びフルエンスルホン2.0%粒剤を、下記の表6に示される量用いて混合し、試験用製剤(混合粒剤)をそれぞれ得た。混合は、20ml容量のガラス製スクリュー管(株式会社マルエム製)内で行った。
860ml容量のプラスチック製カップ(カップ上面の表面積は約1/10000a)に、土壌700gを充填し、水を150g加えて十分に混和し、栽培用土壌を準備した。各カップ内の栽培用土壌の表面に、表6に記載の試験用製剤、チアメトキサム0.5%粒剤120mg、フルエンスルホン2.0%粒剤15mg又はフルエンスルホン2.0%粒剤600mgをそれぞれ均一に置き(各有効成分の10aあたりの処理量は表7に記載の通りである)、栽培用土壌と十分に混和した(混和した土壌の深度は約7cm)。直ちに、カップ内の栽培用土壌の中心線(直径)に沿って約5cm深の溝を切り、サツマイモのつるを植え付け、室内(25℃)に置いた。植え付け(試験用製剤の処理)8日後に、ハスモンヨトウの2齢幼虫を10頭放飼し、供試した虫の逃亡を防ぐため地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを処理区Aと呼ぶ。
処理区Aと同様に、各カップ内の栽培用土壌表面に、表6に記載の試験用製剤を均一に置き(各有効成分の10aあたりの処理量は表7に記載の通りである)、栽培用土壌と十分に混和した。直ちに、栽培用土壌の表面をポリエチレン製の黒マルチ(積水フィルム株式会社製)で覆い、カップ内の栽培用土壌の中心線(直径)に沿って約5cm深の溝を切り(溝が切り易いように、黒マルチには切込みを入れた)、サツマイモのつるを植え付け、室内(25℃)に置いた。植え付け(試験用製剤の処理)8日後に、ハスモンヨトウの2齢幼虫を10頭放飼し、地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを処理区Bと呼ぶ。
薬剤を処理しなかったこと以外は処理区Aと同様に、各カップ内の栽培用土壌にサツマイモのつるを植え付けてから、直ちに、各カップ内の栽培用土壌の表面に、表6に記載の試験用製剤、チアメトキサム0.5%粒剤120mg、フルエンスルホン2.0%粒剤15mg又はフルエンスルホン2.0%粒剤600mgをそれぞれ均一に置き(各有効成分の10aあたりの処理量は表7に記載の通りである)、室内(25℃)に置いた。植え付け(試験用製剤の処理)8日後に、ハスモンヨトウの2齢幼虫を10頭放飼し、地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを処理区Cと呼ぶ。なお、処理区Cの処理形態は土壌表面処理である。
一方、薬剤を処理しなかったこと以外は処理区Aと同様にサツマイモのつるを植え付け、室内に置き、植え付け8日後にハスモンヨトウの2齢幼虫を10頭放飼し、地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを無処理区と呼ぶ。
放飼5日後に供試した虫の生死を観察した。その観察結果から、下記の式2)によって死虫率、下記の式3)によって補正死虫率をそれぞれ算出した。その補正死虫率を表7に示す。なお、試験は2反復で行った。
式2);死虫率(%)=(供試虫数-生存虫数)/供試虫数×100
式3);補正死虫率(%)={(処理区A、処理区B又は処理区Cの死虫率-無処理区死虫率)/(100-無処理区死虫率)}×100
[表6]

[表7]

試験例4
フィプロニル1.0%粒剤(製品名:プリンス粒剤、BASFジャパン株式会社製)及びオキサミル0.8%粒剤(製品名:バイデートL粒剤、三井化学アグロ株式会社製)を、下記の表8に示される量用いて混合し、試験用製剤(混合粒剤)をそれぞれ得た。混合は、20ml容量のガラス製スクリュー管(株式会社マルエム製)内で行った。
860ml容量のプラスチック製カップ(カップ上面の表面積は約1/10000a)に、土壌700gを充填し、水を150g加えて十分に混和し、栽培用土壌を準備した。各カップ内の栽培用土壌の表面に、表8に記載の試験用製剤を均一に置き(各有効成分の10aあたりの処理量は表9に記載の通りである)、栽培用土壌と十分に混和した(混和した土壌の深度は約7cm)。直ちに、カップ内の栽培用土壌の中央部に約5cm深、直径約6cmの穴を開け、キュウリの苗(3オンスカップで育苗した本葉1.5葉期の苗)を植え付け、室内(25℃)に置いた。植え付け(試験用製剤処理)7日後に、ワタアブラムシの2齢~3齢幼虫を約20頭放飼し、供試した虫の逃亡を防ぐため地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを処理区Aと呼ぶ。
処理区Aと同様に、各カップ内の栽培用土壌表面に、表8に記載の試験用製剤を均一に置き(各有効成分の10aあたりの処理量は表9に記載の通りである)、栽培用土壌と十分に混和した。直ちに、栽培用土壌の表面をポリエチレン製の黒マルチ(積水フィルム株式会社製)で覆い、カップ内の栽培用土壌の中央部に約5cm深、直径約6cmの穴を開け、キュウリの苗(3オンスカップで育苗した本葉1.5葉期の苗)を植え付け、室内(25℃)に置いた。植え付け(試験用製剤処理)7日後に、ワタアブラムシの2齢~3齢幼虫を約20頭放飼し、地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを処理区Bと呼ぶ。
一方、薬剤を処理しなかったこと以外は処理区Aと同様に、キュウリの苗を植え付け、室内に置き、植え付け7日後にワタアブラムシの2齢~3齢幼虫を約20頭放飼し、地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを無処理区と呼ぶ。
放飼5日後に供試した虫の生死を観察した。その観察結果から、下記の式4)によって防除価を算出した。その防除価を表9に示す。なお、試験は2反復で行った。
式4); 防除価(%)=100×(1-処理区A又は処理区Bの観察時の生存虫数/無処理区の観察時の生存虫数)
[表8]

[表9]

試験例5
860ml容量のプラスチック製カップ(カップ上面の表面積は約1/10000a)に、土壌700gを充填し、水を150g加えて十分に混和し、栽培用土壌を準備した。各カップ内の栽培用土壌の表面に、表8に記載の試験用製剤を均一に置き(各有効成分の10aあたりの処理量は表10に記載の通りである)、栽培用土壌と十分に混和した(混和した土壌の深度は約7cm)。試験用製剤処理10日後、カップ内の栽培用土壌の中央部に約5cm深、直径約6cmの穴を開け、キュウリの苗(3オンスカップで育苗した本葉1.5葉期の苗)を植え付け、室内(25℃)に置いた。植え付け7日後に、ワタアブラムシの2齢~3齢幼虫を約20頭放飼し、供試した虫の逃亡を防ぐため地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを処理区と呼ぶ。
一方、薬剤を処理しなかったこと以外は処理区と同様に、キュウリの苗を植え付け、室内に置き、植え付け7日後にワタアブラムシの2齢~3齢幼虫を約20頭放飼し、地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを無処理区と呼ぶ。
放飼5日後に供試した虫の生死を観察した。その観察結果から、前記の式1)によって防除価を算出した。その防除価を表10に示す。なお、試験は2反復で行った。
[表10]

試験例6
フィプロニル1.0%粒剤(製品名:プリンス粒剤、BASFジャパン株式会社製)及びカズサホス3.0%粒剤(製品名:ラグビーMC粒剤、石原バイオサイエンス株式会社製)を、下記の表11に示される量用いて混合し、試験用製剤(混合粒剤)をそれぞれ得た。混合は、20ml容量のガラス製スクリュー管(株式会社マルエム製)内で行った。
860ml容量のプラスチック製カップ(カップ上面の表面積は約1/10000a)に、土壌700gを充填し、水を150g加えて十分に混和し、栽培用土壌を準備した。各カップ内の栽培用土壌の表面に、表11に記載の試験用製剤を均一に置き(各有効成分の10aあたりの処理量は表12に記載の通りである)、栽培用土壌と十分に混和した(混和した土壌の深度は約7cm)。直ちに、カップ内の栽培用土壌の中央部に約6cm深、直径約4cmの穴を開け、キャベツの苗(128穴セルトレイで育苗した本葉2.5葉期の苗)を植え付け、室内(25℃)に置いた。植え付け(試験用製剤処理)5日後に、コナガの2齢幼虫を10頭放飼し、供試した虫の逃亡を防ぐため地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを処理区と呼ぶ。
一方、薬剤を処理しなかったこと以外は処理区と同様に、キャベツの苗を植え付け、室内に置き、植え付け5日後、コナガの2齢幼虫を10頭放飼し、地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを無処理区と呼ぶ。
放飼5日後に供試した虫の生死を観察した。その観察結果から、下記の式5)によって死虫率、下記の式6)によって補正死虫率をそれぞれ算出した。その補正死虫率を表12に示す。なお、試験は2反復で行った。
式5);死虫率(%)=(供試虫数-生存虫数)/供試虫数×100
式6);補正死虫率(%)={(処理区死虫率-無処理区死虫率)/(100-無処理区死虫率)}×100
[表11]

[表12]

試験例7
860ml容量のプラスチック製カップ(カップ上面の表面積は約1/10000a)に、土壌700gを充填し、水を150g加えて十分に混和し、栽培用土壌を準備した。各カップ内の栽培用土壌の表面に、表11に記載の試験用製剤を均一に置き(各有効成分の10aあたりの処理量は表13に記載の通りである)、栽培用土壌と十分に混和した(混和した土壌の深度は約7cm)。試験用製剤処理10日後、カップ内の栽培用土壌の中央部に約6cm深、直径約4cmの穴を開け、キャベツの苗(128穴セルトレイで育苗した本葉2.5葉期の苗)を植え付け、室内(25℃)に置いた。植え付け5日後に、コナガの2齢幼虫を10頭放飼し、供試した虫の逃亡を防ぐため地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを処理区と呼ぶ。
一方、薬剤を処理しなかったこと以外は処理区と同様に、キャベツの苗を植え付け、室内に置き、植え付け5日後、コナガの2齢幼虫を10頭放飼し、地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを無処理区と呼ぶ。
放飼5日後に供試した虫の生死を観察した。その観察結果から、前記の式5)によって死虫率、前記の式6)によって補正死虫率をそれぞれ算出した。その補正死虫率を表13に示す。なお、試験は2反復で行った。
[表13]

試験例8
チアメトキサム0.5%粒剤(製品名:アクタラ粒剤5、シンジェンタジャパン株式会社製)及びオキサミル0.8%粒剤(製品名:バイデートL粒剤、三井化学アグロ株式会社製)を、下記の表14に示される量用いて混合し、試験用製剤(混合粒剤)をそれぞれ得た。混合は、20ml容量のガラス製スクリュー管(株式会社マルエム製)内で行った。
860ml容量のプラスチック製カップ(カップ上面の表面積は約1/10000a)に、土壌700gを充填し、水を150g加えて十分に混和し、栽培用土壌を準備した。各カップ内の栽培用土壌の表面に、表14に記載の試験用製剤を均一に置き(各有効成分の10aあたりの処理量は表15に記載の通りである)、栽培用土壌と十分に混和した(混和した土壌の深度は約7cm)。直ちに、カップ内の栽培用土壌の中心線(直径)に沿って約5cm深の溝を切り、サツマイモのつるを植え付け、室内(25℃)に置いた。植え付け(試験用製剤処理)4日後に、ハスモンヨトウの1齢幼虫を10頭放飼し、供試した虫の逃亡を防ぐため地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを処理区Aと呼ぶ。
処理区Aと同様に、各カップ内の栽培用土壌表面に表14に記載の試験用製剤を均一に置き(各有効成分の10aあたりの処理量は表15に記載の通りである)、栽培用土壌と十分に混和した。直ちに、栽培用土壌の表面をポリエチレン製の黒マルチ(積水フィルム株式会社製)で覆い、カップ内の栽培用土壌の中心線(直径)に沿って約5cm深の溝を切り(溝が切り易いように、黒マルチには切込みを入れた)、サツマイモのつるを植え付け、室内(25℃)に置いた。植え付け(試験用製剤処理)4日後に、ハスモンヨトウの1齢幼虫を10頭放飼し、地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを処理区Bと呼ぶ。
一方、薬剤を処理しなかったこと以外は処理区Aと同様に、サツマイモのつるを植え付け、室内に置き、植え付け4日後にハスモンヨトウの1齢幼虫を10頭放飼し、地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを無処理区と呼ぶ。
放飼5日後に供試した虫の生死を観察した。その観察結果から、前記の式2)によって死虫率、前記の式3)によって補正死虫率をそれぞれ算出した。その補正死虫率を表15に示す。なお、試験は2反復で行った。
[表14]

[表15]

試験例9
860ml容量のプラスチック製カップ(カップ上面の表面積は約1/10000a)に、土壌700gを充填し、水を150g加えて十分に混和し、栽培用土壌を準備した。各カップ内の栽培用土壌の表面に、表14に記載の試験用製剤を均一に置き(各有効成分の10aあたりの処理量は表16に記載の通りである)、栽培用土壌と十分に混和した(混和した土壌の深度は約7cm)。試験用製剤処理10日後、カップ内の栽培用土壌の中心線(直径)に沿って約5cm深の溝を切り、サツマイモのつるを植え付け、室内(25℃)に置いた。植え付け4日後に、ハスモンヨトウの1齢幼虫を10頭放飼し、供試した虫の逃亡を防ぐため地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを処理区と呼ぶ。
一方、薬剤を処理しなかったこと以外は処理区と同様に、サツマイモのつるを植え付け、室内に置き、植え付け4日後にハスモンヨトウの1齢幼虫を10頭放飼し、地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを無処理区と呼ぶ。
放飼5日後に供試した虫の生死を観察した。その観察結果から、前記の式5)によって死虫率、前記の式6)によって補正死虫率をそれぞれ算出した。その補正死虫率を表16に示す。なお、試験は2反復で行った。
[表16]

試験例10
860ml容量のプラスチック製カップ(カップ上面の表面積は約1/10000a)に、土壌700gを充填し、水を150g加えて十分に混和し、栽培用土壌を準備した。各カップ内の栽培用土壌の表面に、表6、表8、及び表14に記載の試験用製剤を均一に置き(各有効成分の10aあたりの処理量は表17に記載の通りである)、栽培用土壌と十分に混和した(混和した土壌の深度は約7cm)。直ちに、カップ内の栽培用土壌の中央部に約5cm深、直径約4cmの穴を開け、ジャガイモの塊茎を植え付け、室内(25℃)に置いた。植え付け(試験用製剤処理)14日後に、ワタアブラムシの2齢~3齢幼虫を約20頭放飼し、供試した虫の逃亡を防ぐため地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを処理区と呼ぶ。
一方、薬剤を処理しなかったこと以外は処理区と同様に、ジャガイモの塊茎を植え付け、室内に置き、植え付け14日後にワタアブラムシの2齢~3齢幼虫を約20頭放飼し、地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを無処理区と呼ぶ。
放飼5日後に供試した虫の生死を観察した。その観察結果から、前記の式1)によって防除価を算出した。その防除価を表17に示す。なお、試験は2反復で行った。
[表17]

試験例11
クロチアニジン0.5%粒剤(製品名:ダントツ粒剤、住友化学株式会社製)、フルエンスルホン2.0%粒剤及びオキサミル0.8%粒剤(製品名:バイデートL粒剤、三井化学アグロ株式会社製)を、下記の表18に示される量用いて混合し、試験用製剤(混合粒剤)をそれぞれ得た。混合は、20ml容量のガラス製スクリュー管(株式会社マルエム製)内で行った。
860ml容量のプラスチック製カップ(カップ上面の表面積は約1/10000a)に、土壌700gを充填し、水を150g加えて十分に混和し、栽培用土壌を準備した。各カップ内の栽培用土壌の表面に、表18に記載の試験用製剤、クロチアニジン0.5%粒剤120mg、フルエンスルホン2.0%粒剤15mg又はフルエンスルホン2.0%粒剤600mg、オキサミル0.8%粒剤750mgをそれぞれ均一に置き(各有効成分の10aあたりの処理量は表19に記載の通りである)、栽培用土壌と十分に混和した(混和した土壌の深度は約7cm)。直ちに、カップ内の栽培用土壌の中心線(直径)に沿って約5cm深の溝を切り、サツマイモのつるを植え付け、室内(25℃)に置いた。植え付け(試験用製剤の処理)7日後に、ハスモンヨトウの2齢幼虫を10頭放飼し、供試した虫の逃亡を防ぐため地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを処理区と呼ぶ。
一方、薬剤を処理しなかったこと以外は処理区と同様にサツマイモのつるを植え付け、室内に置き、植え付け7日後にハスモンヨトウの2齢幼虫を10頭放飼し、地上部全体にプラスチック製カップを被せた。これを無処理区と呼ぶ。
放飼5日後に供試した虫の生死を観察した。その観察結果から、前記の式5)によって死虫率、前記の式6)によって補正死虫率をそれぞれ算出した。その補正死虫率を表19に示す。なお、試験は2反復で行った。
[表18]

[表19]

試験例12
フィプロニル1.0%粒剤(製品名:プリンス粒剤、BASFジャパン株式会社製)及びフルエンスルホン2.0%粒剤を、下記の表20に示される量用いて混合し、試験用製剤(混合粒剤)をそれぞれ得る。混合は、20ml容量のガラス製スクリュー管(株式会社マルエム製)内で行う。
860ml容量のプラスチック製カップ(カップ上面の表面積は約1/10000a)に、土壌700gを充填し、水を150g加えて十分に混和し、栽培用土壌を準備する。各カップ内の栽培用土壌の表面に、表20に記載の試験用製剤を均一に置き(各有効成分の10aあたりの処理量は表21に記載の通りである)、栽培用土壌と十分に混和する(混和した土壌の深度は約7cm)。直ちに、カップ内の栽培用土壌の中央部に約6cm深、直径約6cmの穴を開け、キャベツの苗(3オンスカップで育苗した本葉1.5葉期の苗)を植え付け、室内(25℃)に置く。植え付け(試験用製剤処理)3日後に、ハイマダラノメイガの卵を20個接種し、供試した虫の逃亡を防ぐため地上部全体にプラスチック製カップを被せる。これを処理区と呼ぶ。
一方、薬剤を処理しなかったこと以外は処理区と同様に、キャベツの苗を植え付け、室内に置き、植え付け3日後、ハイマダラノメイガの卵を20個接種し、地上部全体にプラスチック製カップを被せる。これを無処理区と呼ぶ。
放飼7日後に孵化した虫の生死を観察する。その観察結果から、下記の式7)によって死虫率、下記の式8)によって補正死虫率をそれぞれ算出する。なお、試験は2反復で行う。
式7);死虫率(%)=(供試卵数-生存虫数)/供試卵数×100
式8);補正死虫率(%)={(処理区死虫率-無処理区死虫率)/(100-無処理区死虫率)}×100
[表20]

[表21]
【産業上の利用可能性】
【0006】
本発明により、有害生物に対する防除効果が向上する。