(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】パターン形成方法、レジスト組成物、電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/038 20060101AFI20220520BHJP
G03F 7/32 20060101ALI20220520BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
G03F7/038 601
G03F7/32
G03F7/20 521
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2019539158
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(86)【国際出願番号】 JP2018030134
(87)【国際公開番号】W WO2019044469
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2017168521
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】高桑 英希
(72)【発明者】
【氏名】水谷 一良
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-261392(JP,A)
【文献】特開2002-049155(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194769(WO,A1)
【文献】特開2017-078852(JP,A)
【文献】特開2013-140336(JP,A)
【文献】特開2010-026278(JP,A)
【文献】特開2010-032991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00-7/42
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノボラック樹脂及びi線露光によって酸を発生する光酸発生剤を含むレジスト膜であって、前記ノボラック樹脂の含有量が、前記レジスト膜の全固形分に対して50質量%以上であるレジスト膜を、i線を用いて露光する工程と、
前記レジスト膜を、有機溶剤を含む現像液を用いて現像してパターンを形成する工程と、
をこの順に有し、
前記ノボラック樹脂が、酸解離性基を有し、
前記酸解離性基は、前記ノボラック樹脂のフェノール性水酸基の酸素原子と結合してアセタール基を形成しており、
前記レジスト膜が、更に架橋剤を含み、
前記架橋剤が、メトキシメチル基を有する化合物であ
り、
前記レジスト膜の膜厚が15μm以上である、
パターン形成方法。
【請求項2】
前記メトキシメチル基を有する化合物が、6個以上のメトキシメチル基を有する、請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記メトキシメチル基を有する化合物が、フェノール性水酸基を有する、請求項1又は2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
ノボラック樹脂及びi線露光によって酸を発生する光酸発生剤を含むレジスト膜であって、前記ノボラック樹脂の含有量が、前記レジスト膜の全固形分に対して50質量%以上であるレジスト膜を、i線を用いて露光する工程と、
前記レジスト膜を、有機溶剤を含む現像液を用いて現像してパターンを形成する工程と、
をこの順に有し、
前記ノボラック樹脂が、酸解離性基を有
し、
前記酸解離性基は、前記ノボラック樹脂のフェノール性水酸基の酸素原子と結合してアセタール基を形成しており、
前記レジスト膜の膜厚が15μm以上である、
パターン形成方法。
【請求項5】
前記現像液が、沸点130℃以下のエステル系溶剤を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
ノボラック樹脂及びi線露光によって酸を発生する光酸発生剤を含むレジスト膜であって、前記ノボラック樹脂の含有量が、前記レジスト膜の全固形分に対して50質量%以上であるレジスト膜を、i線を用いて露光する工程と、
前記レジスト膜を、有機溶剤を含む現像液を用いて現像してパターンを形成する工程と、
をこの順に有し、
前記ノボラック樹脂が、酸解離性基を有し、
前記酸解離性基は、前記ノボラック樹脂のフェノール性水酸基の酸素原子と結合してアセタール基を形成しており、
前記レジスト膜の膜厚が15μm以上であり、
前記現像液が、沸点130℃以下のエステル系溶剤を含む、
パターン形成方法。
【請求項7】
前記現像液の温度が30~60℃である、請求項1~
6のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
ノボラック樹脂及びi線露光によって酸を発生する光酸発生剤を含むレジスト膜であって、前記ノボラック樹脂の含有量が、前記レジスト膜の全固形分に対して50質量%以上であるレジスト膜を、i線を用いて露光する工程と、
前記レジスト膜を、有機溶剤を含む現像液を用いて現像してパターンを形成する工程と、
をこの順に有し、
前記ノボラック樹脂が、酸解離性基を有し、
前記酸解離性基は、前記ノボラック樹脂のフェノール性水酸基の酸素原子と結合してアセタール基を形成しており、
前記レジスト膜の膜厚が15μm以上であり、
前記現像液の温度が30~60℃である、
パターン形成方法。
【請求項9】
前記レジスト膜が、更に架橋剤を含む、請求項
4、6及び8のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記レジスト膜が、前記ノボラック樹脂及び前記光酸発生剤を含むレジスト組成物を用いて形成され、
前記レジスト組成物の固形分含有量が、40質量%以上である、請求項1~
9のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記現像液が、酢酸ブチルを含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記パターンを形成する工程が、前記現像液を、通算にて30秒以上、前記レジスト膜上に供給する工程を含む、請求項1~
11のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
ノボラック樹脂及びi線露光によって酸を発生する光酸発生剤を含む、
請求項1~
12のいずれか1項に記載のパターン形成方法に用いられるレジスト組成物。
【請求項14】
請求項1~
12のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法、レジスト組成物、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
KrFエキシマレーザー(248nm)用レジスト以降、光吸収による感度低下を補うためにレジストの画像形成方法として化学増幅という画像形成方法が用いられている。例えば、化学増幅の画像形成方法としては以下の方法が挙げられる。
エキシマレーザー、電子線、又は極紫外光等でレジスト膜を露光して、露光部においてレジスト膜中の光酸発生剤を分解して酸を生成させる。更に、その発生酸を反応触媒として利用し、露光部におけるレジスト膜の可溶性を変化させ、その後、現像液により露光部又は未露光部を除去して画像形成する方法がある。
【0003】
例えば、特許文献1では、「g線、i線、KrFエキシマレーザーおよび電子線から選ばれる少なくとも2種の露光光源を用いて露光する工程に用いられるネガ型レジスト組成物であって、アルカリ可溶性樹脂成分(A)、g線、i線、KrFエキシマレーザーおよび電子線の照射により酸を発生する酸発生剤成分(B)、および架橋剤成分(C)を含有することを特徴とするネガ型レジスト組成物。(請求項1)」を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今では露光光源の波長を利用した微細化は限界を迎えつつあり、特にインプラプロセス工程用途及びNANDメモリ(NOT ANDメモリ)においては、大容量化を目的としてメモリ層の三次元化が主流となりつつある。メモリ層の三次元化には縦方向への加工段数の増加が必要となるため、レジスト膜には、従来のナノメートルオーダーからマイクロメートルオーダーへの厚膜化が求められている。
このような、レジスト膜を厚膜化する場合においては、三次元的な微細加工を実現するために、矩形性に優れたパターンを得られることが求められている。
【0006】
本発明者らが、特許文献1に記載されたネガ型レジスト組成物を検討したところ、得られるパターンの矩形性について、更に改善する余地があることを知見した。
【0007】
そこで、本発明は、矩形性に優れるパターンを得られるパターン形成方法を提供することを課題とする。
また、本発明は上記パターン形成方法に用いられるレジスト組成物、及び電子デバイスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、ノボラック樹脂及び所定の光酸発生剤を含むレジスト膜をi線で露光し、更に有機溶剤を含む現像液を用いて現像してパターンを形成することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記目的を達成できることを見出した。
【0009】
〔1〕 ノボラック樹脂及びi線露光によって酸を発生する光酸発生剤を含むレジスト膜であって、上記ノボラック樹脂の含有量が、上記レジスト膜の全固形分に対して50質量%以上であるレジスト膜を、i線を用いて露光する工程と、上記レジスト膜を、有機溶剤を含む現像液を用いて現像してパターンを形成する工程と、を有する、パターン形成方法。
〔2〕 上記レジスト膜が、更に架橋剤を含む、〔1〕に記載のパターン形成方法。
〔3〕 上記架橋剤が、メトキシメチル基を有する化合物である、〔2〕に記載のパターン形成方法。
〔4〕 上記メトキシメチル基を有する化合物が、6個以上のメトキシメチル基を有する、〔3〕に記載のパターン形成方法。
〔5〕 上記メトキシメチル基を有する化合物が、フェノール性水酸基を有する、〔3〕又は〔4〕に記載のパターン形成方法。
〔6〕 上記ノボラック樹脂が、酸解離性基を有する、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔7〕 上記レジスト膜の膜厚が15μm以上である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔8〕 上記レジスト膜が、上記ノボラック樹脂及び上記光酸発生剤を含むレジスト組成物を用いて形成され、
上記レジスト組成物の固形分含有量が、40質量%以上である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔9〕 上記現像液が、沸点130℃以下のエステル系溶剤を含む、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔10〕 上記現像液が、酢酸ブチルを含む、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔11〕 上記現像液の温度が30~60℃である、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔12〕 上記現像液を、通算にて30秒以上、上記レジスト膜上に供給する、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔13〕 ノボラック樹脂及びi線露光によって酸を発生する光酸発生剤を含む、〔1〕~〔12〕のいずれかに記載のパターン形成方法に用いられるレジスト組成物。
〔14〕 〔1〕~〔12〕のいずれかに記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、矩形性に優れるパターンを得られるパターン形成方法を提供できる。
また、本発明によれば、上記パターン形成方法に用いられるレジスト組成物、及び電子デバイスの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に限定されない。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書における「i線」とは波長365nmの光を意味する。
本明細書において、「沸点」とは、1気圧における沸点を意図する。
【0012】
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表す。
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(分子量分布ともいう)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー社製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶剤:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0013】
本明細書中における基(原子団)の表記について、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を有する基をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
【0014】
また、本明細書において、「置換基を有していてもよい」という場合の置換基の種類、置換基の位置、及び、置換基の数は特に限定されない。置換基の数は例えば、1個、又は2個以上であってもよい。置換基の例としては水素原子を除く1価の非金属原子団を挙げられ、例えば、以下の置換基Tから選択できる。
(置換基T)
置換基Tとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、及びtert-ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、及びp-トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、及びフェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びメトキサリル基等のアシル基;メチルスルファニル基及びtert-ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基及びp-トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基;アルキル基;シクロアルキル基;アリール基;ヘテロアリール基;水酸基;カルボキシ基;ホルミル基;スルホ基;シアノ基;アルキルアミノカルボニル基;アリールアミノカルボニル基;スルホンアミド基;シリル基;アミノ基;モノアルキルアミノ基;ジアルキルアミノ基;アリールアミノ基;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0015】
本発明のパターン形成方法の特徴点としては、レジスト膜中のノボラック樹脂の含有量が、レジスト膜の全固形分に対して50質量%以上である点、及び有機溶剤を含む現像液を用いている点が挙げられる。
このようなパターン形成方法で本発明の課題が解決できるメカニズムは必ずしも明確ではないが、本発明者らは以下のように推測している。
まず、ノボラック樹脂を用いることでパターンの耐熱性が向上できていると推測している。そのため、架橋が完了しきっていない段階で現像後の加熱処理を行った場合における、パターン形状の劣化を回避できると考えている。また、有機溶剤を含む現像液で現像を行うことも解像性の劣化を抑制していると考えている。
【0016】
[レジスト膜]
まず、本発明のパターン形成方法で用いられるレジスト膜について詳述する。
【0017】
<ノボラック樹脂>
本発明のパターン形成方法で使用されるレジスト膜は、ノボラック樹脂を含む。また、ノボラック樹脂の含有量は、レジスト膜の全固形分に対して50質量%以上である。
以下、ノボラック樹脂について説明する。
【0018】
ノボラック樹脂は、例えば、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物(以下、単に「フェノール類」ともいう)とアルデヒド類とを酸触媒下で付加縮合させて得られる樹脂である。
【0019】
フェノール類としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、2,5-ジエチルフェノール、3,5-ジエチルフェノール、2,3,5-トリエチルフェノール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、p-フェニルフェノール、2-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、2-メトキシフェノール、3-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、2,3-ジメトキシフェノール、2,5-ジメトキシフェノール、3,5-ジメトキシフェノール、2-メトキシレゾルシノール、ホドロキノン、4-tert-ブチルカテコール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、没食子酸、没食子酸エステル、α-ナフトール、β-ナフトール、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、及びキシレノールとヒドロキシベンズアルデヒドとの縮合により得られるポリヒドロキシトリフェニルメタン系化合物が挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、フェノール類としては、パターンの矩形性がより優れる点から、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-キシレノール、2,5-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、3-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、又は2-tert-ブチル-5-メチルフェノールが好ましく、m-クレゾール又はp-クレゾールがより好ましい。
【0020】
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、アクロレイン、及びクロトンアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド類;シクロヘキサンアルデヒド、シクロペンタンアルデヒド、及びフリルアクロレインなどの脂環式アルデヒド類;フルフラール、ベンズアルデヒド、o-、m-、及びp-メチルベンズアルデヒド、p-エチルベンズアルデヒド、2,4-、2,5-、3,4-、及び3,5-ジメチルベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、m-及びp-ヒドロキシベンズアルデヒド、並びに、o-、m-、及びp-ニトロベンズアルデヒドなどの芳香族アルデヒド類;並びに、フェニルアセトアルデヒド及びケイ皮アルデヒドなどの芳香脂肪族アルデヒド類が挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、工業的に入手しやすいことから、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0021】
付加縮合における触媒は、例えば、塩酸、硫酸、過塩素酸、及び燐酸などの無機酸、蟻酸、酢酸、蓚酸、トリクロロ酢酸、及びp-トルエンスルホン酸などの有機酸;並びに、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、及び酢酸マグネシウムなどの二価金属塩が挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
触媒の使用量は、アルデヒド類1モルに対して、0.01~1モルが好ましい。
【0022】
縮合反応は常法に従って行える。例えば、60~150℃の範囲の温度で2~30時間程度反応させる方法が挙げられる。この反応では、例えば、エチルセロソルブ又はメチルエチルケトン等の反応溶媒を使用してもよい。また、反応終了後、酸触媒を除去するために塩基性化合物を添加して中和し、中和塩を水洗により除去してもよい。
【0023】
ノボラック樹脂としては例えば、下記一般式(N)で表されるような繰り返し単位を有する樹脂が好ましい。
【0024】
【0025】
上記ノボラック樹脂の由来となるフェノール類としては、m-クレゾールとp-クレゾールとを併用するのが好ましい。その場合における、m-クレゾールとp-クレゾールとの配合比(質量比)(m-クレゾール/p-クレゾール)は、パターンの矩形性がより優れる点から、30/70~50/50が好ましく、35/65~45/55がより好ましく、37.5/62.5~42.5/57.5が更に好ましい。
【0026】
ノボラック樹脂においては、その重量平均分子量は、2000~30000が好ましく、3000~20000がより好ましく、3500~17000が更に好ましい。
【0027】
また、上述のノボラック樹脂のフェノール性水酸基に酸解離性基を導入し、ノボラック樹脂が酸解離性基を有するのが好ましい。
なお、本明細書において、このように酸解離性基を導入されたノボラック樹脂の誘導体も、ノボラック樹脂に含まれる。
【0028】
ノボラック樹脂に導入される酸解離性基は、酸の作用により開裂し得る保護基であれば特に限定されず、酸解離性基として公知の基が挙げられる。酸解離性基は、上記のように縮合により得られたノボラック樹脂内のフェノール性水酸基の水素原子と置換する形で導入される。
【0029】
酸解離性基としては、例えば、-C(R36)(R37)(R38)、-C(R36)(R37)(OR39)、及び-C(R01)(R02)(OR39)等が挙げられる。
なお、上記に例示した酸解離性基における「-」は結合手を表す。
式中、R36~R39は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
R01及びR02は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
【0030】
R36~R39、R01、及びR02のアルキル基は、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、へキシル基、及びオクチル基等が挙げられる。
R36~R39、R01、及びR02のシクロアルキル基は、単環でも、多環でもよい。単環のシクロアルキル基としては、炭素数3~12のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、炭素数6~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、及びアンドロスタニル基等が挙げられる。なお、シクロアルキル基中の少なくとも1個の炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
R36~R39、R01、及びR02のアリール基は、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
R36~R39、R01、及びR02のアラルキル基は、炭素数7~12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、及びナフチルメチル基等が挙げられる。
R36~R39、R01、及びR02のアルケニル基は、炭素数2~8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、及びシクロへキセニル基等が挙げられる。
R36とR37とが互いに結合して形成される環としては、シクロアルキル基(単環又は多環)であるのが好ましい。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又はノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0031】
酸解離性基の具体例としては、tert-ブチル基、tert-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニルメチル基、ブチルオキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基、テトラヒドロ-2-ピラニル基、テトラヒドロ-2-フリル基、メトキシエチル基、1-エトキシエチル基、プロピルオキシエチル基、シクロヘキシルオキシエチル基、1-(2-メチルプロポキシ)エチル基、1-(2-メトキシエトキシ)エチル基、1-(2-アセトキシエトキシ)エチル基、1-〔2-(1-アダマンチルオキシ)エトキシ〕エチル基、1-〔2-(1-アダマンタンカルボニルオキシ)エトキシ〕エチル基、3-オキソシクロヘキシル基、4-メチルテトラヒドロ-2-ピロン-4-イル基、及び下記構造式で表される基が挙げられる。下記構造式中、*は結合位置を表す。
【0032】
【0033】
中でも、酸解離性基を有するノボラック樹脂においては、フェノール性水酸基の酸素原子と酸解離性基とが結合して、アセタール基又はエステル基を形成しているのが好ましく、アセタール基を形成しているのがより好ましい。
アセタール基は、通常、*-O-CH(Rxa)-O-Rxbで表される。
ここで、Rxa及びRxbは、それぞれ独立して炭素数1~18の1価の飽和炭化水素基を表し、*はフェノール基のベンゼン環への結合位置を表す。
【0034】
1価の飽和炭化水素基としては、例えば、炭素数1~12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び炭素数3~12のシクロアルキル基が挙げられる。
炭素数1~12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及びオクチル基が挙げられる。
炭素数3~12のシクロアルキル基としては、単環及び多環のいずれでもよい。単環のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、例えば、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、及びノルボルニル基等が挙げられる。
中でも、アセタール基は、Rxaがtert-ブチル基であって、Rxbがシクロへキシル基であるのが好ましい。
【0035】
つまりノボラック樹脂は、以下の一般式(NA)で表される繰り返し単位を有するのが好ましい。
【0036】
【0037】
酸解離性基の導入割合(保護率)は、ノボラック樹脂が有する全フェノール性水酸基に対して5~80モル%が好ましく、10~60モル%がより好ましく、20~60モル%が更に好ましい。
保護率が5モル%(より好ましくは10モル%、更に好ましくは20モル%)以上であれば、未露光部においてレジスト膜の有機溶剤に対する溶解性がより優れる。
保護率80モル%(より好ましくは60モル%)以下であれば、後述する架橋剤を使用した場合において、架橋剤による架橋反応がより十分に進行する。
この範囲内であれば、このノボラック樹脂を用いたレジスト組成物でのパターン形成後の解像性、残膜率、及び耐熱性がより良好となる。酸解離性基の導入割合は、例えば、TG-DTA(熱重量示差熱分析)装置を使用し、得られた結果から、酸の作用により開裂し得る基に対応する重量減少より計算できる。TG-DTA測定は、昇温速度10℃/分で行うのが好ましい。
【0038】
ノボラック樹脂のフェノール性水酸基に酸解離性基を導入する方法は、公知の方法が挙げられる。
【0039】
本発明のパターン形成方法において、レジスト膜中のノボラック樹脂の含有量は、レジスト膜の全固形分に対して、50質量%以上である。
中でも、レジスト膜のノボラック樹脂の含有量は、レジスト膜の全固形分に対して、50~80質量%が好ましく、55~75質量%がより好ましく、60~70質量%が更に好ましい。
なお、本明細書において、レジスト膜の全固形分とは、レジスト膜が含み得る溶剤を除く、レジスト膜中の他の全成分を意図する。
ノボラック樹脂は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
<光酸発生剤>
本発明のパターン形成方法で使用されるレジスト膜は、更にi線露光によって酸を発生する光酸発生剤(以下、単に「光酸発生剤」ともいう)を含む。
【0041】
また、光酸発生剤は、i線で1000mJ/cm2露光された際の光酸発生剤の分解率が、60モル%以上であるのが好ましく、80モル%以上であるのがより好ましい。
なお、光酸発生剤の分解率は以下の方法で求められる。
まず、測定対象となる光酸発生剤と、マトリックスである上記一般式(N)で表されるノボラック樹脂(m-クレゾール/p-クレゾール=50/50、重量平均分子量:3000)とを、1/99の比率(光酸発生剤/マトリックス(質量比))で含むレジスト膜を、膜厚30μmでシリコンウエハ(厚さ:725μm)上に成膜する。上記シリコンウエハを、100℃で120秒間加熱し、その後、i線で1000mJ/cm2露光し、130℃で60秒間加熱する。その後、上記シリコンウエハを、メタノール/THF(テトラヒドロフラン)=50/50溶液(質量比)に超音波を当てながら10分浸漬させる。抽出物を、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて分析し、得られる結果を以下の式に当てはめて、光酸発生剤の分解率を求められる。
分解率(%)=発生酸量(mol)/(発生酸量(mol)+光酸発生剤量(mol))×100
【0042】
光酸発生剤は、i線に対するモル吸光係数が100~10000L/(mol・cm)であるのが好ましく、i線に対するモル吸光係数が500~9000L/(mol・cm)であるのがより好ましく、i線に対するモル吸光係数が1000~8000L/(mol・cm)であるのが更に好ましい。
光酸発生剤のi線に対するモル吸光係数が、100L/(mol・cm)以上であれば、光酸発生剤がi線に対して良好な光官能性を示し、10000L/(mol・cm)以下であれば、厚膜のレジスト膜であっても深部における酸発生量を確保できる。
なお、光酸発生剤のモル吸光係数は、公知の方法で測定できる。具体的には、例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Carry-5 spctrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定するのが好ましい。
【0043】
光酸発生剤は、i線の照射により、pKaが0以下の酸を発生するのが好ましく、pKaが-2以下の酸を発生するのがより好ましく、pKaが-4以下の酸を発生するのが更に好ましい。
【0044】
光酸発生剤の例として、トリクロロメチル-s-トリアジン類、スルホニウム塩(トリアリールスルホニウム塩等)、ヨードニウム塩(ジアリールヨードニウム塩等)、第四級アンモニウム塩、ジアゾメタン化合物(ジアゾメタン誘導体等)、オキシムスルホネート化合物、及びイミドスルホネート化合物が挙げられる。
中でも、光酸発生剤は、スルホニウム塩が好ましく、トリアリールスルホニウム塩がより好ましい。
トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアリールヨードニウム塩、第四級アンモニウム塩、及びジアゾメタン誘導体の具体例としては、特開2011-221494号公報の段落<0083>~<0084>、及び<0086>~<0088>に記載の化合物が例示できる。
【0045】
(トリアリールスルホニウム塩)
トリアリールスルホニウム塩としては、中でも、下記一般式(S)で表されるトリアリールスルホニウム塩が好ましい。
【0046】
【0047】
一般式(S)中、R1~R4は、それぞれ独立に、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、水素原子が置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。
【0048】
m1、m3、及びm4は、それぞれ独立に、0~5の整数を表す。中でも、m1、m3、及びm4は、それぞれ独立に、0~3が好ましく、0~2がより好ましく、0~1が更に好ましく、0が特に好ましい。
m2は、0~4の整数を表す。中でも、m2は、0~3が好ましく、0~2がより好ましく、0~1が更に好ましく、0が特に好ましい。
【0049】
X-は一価の多原子アニオンを表す。中でもX-は、一般式(S)で表されるトリアリールスルホニウム塩にi線で露光して発生する酸(HX)に対応するアニオンである。
X-は,一価の多原子アニオンであるということ以外には制限がないが、例えば、PYa
-、(Rf)bPF6-b
-、R5
cGaY4-c
-、R6SO3
-、(R6SO2)3C-、及び(R6SO2)2N-で表されるアニオンが挙げられる。
【0050】
Yは、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を表す。
Rfは、水素原子の80モル%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1~8のアルキル基)を表す。
【0051】
また、X-は、硫黄原子又はリン原子を有するのが好ましい。
【0052】
トリアリールスルホニウム塩の具体例としては、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、及び4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテートが挙げられる。
【0053】
(オキシムスルホネート化合物)
光酸発生剤としてはオキシムスルホネート化合物も好ましい。
オキシムスルホネート化合物、すなわち、オキシムスルホネート基を有する化合物としては、下記一般式(B1)で表されるオキシムスルホネート基を有する化合物が好ましい。
【0054】
【0055】
一般式(B1)中、R21は、アルキル基又はアリール基を表す。波線は他の基との結合を表す。
【0056】
R21のアルキル基としては、炭素数1~10の、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましい。R21のアルキル基は、炭素数6~11のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は、シクロアルキル基(7,7-ジメチル-2-オキソノルボルニル基などの有橋式脂環基を含む、好ましくはビシクロアルキル基等)で置換されてもよい。
R21のアリール基としては、炭素数6~11のアリール基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましい。R21のアリール基は、低級アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されてもよい。
【0057】
上記一般式(B1)で表されるオキシムスルホネート基を含む上記化合物は、下記一般式(B2)で表されるオキシムスルホネート化合物であることも好ましい。
【0058】
【0059】
一般式(B2)中、R42は、アルキル基又はアリール基を表し、Xは、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表し、m4は、0~3の整数を表し、m4が2又は3であるとき、複数のXは同一でも異なっていてもよい。
【0060】
Xのアルキル基は、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。Xのアルコキシ基は、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基が好ましい。
Xのハロゲン原子は、塩素原子又はフッ素原子が好ましい。
m4は、0又は1が好ましい。中でも、上記一般式(B2)中、m4が1であり、Xがメチル基であり、Xの置換位置がオルト位であり、R42が炭素数1~10の直鎖状アルキル基、7,7-ジメチル-2-オキソノルボルニルメチル基、又はp-トルイル基である化合物が好ましい。
【0061】
上記一般式(B1)で表されるオキシムスルホネート化合物は、下記一般式(B3)で表されるオキシムスルホネート化合物であることも好ましい。
【0062】
【0063】
一般式(B3)中、R43は式(B2)におけるR42と同義であり、X1は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、又はニトロ基を表し、n4は0~5の整数を表す。
【0064】
R43としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-オクチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロ-n-プロピル基、パーフルオロ-n-ブチル基、p-トリル基、4-クロロフェニル基、又はペンタフルオロフェニル基が好ましく、n-オクチル基がより好ましい。
X1としては、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
n4としては、0~2が好ましく、0~1がより好ましい。
【0065】
上記一般式(B3)で表される化合物の具体例としては、α-(メチルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド、α-(エチルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド、α-(n-プロピルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド、α-(n-ブチルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド、α-(4-トルエンスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド、α-〔(メチルスルホニルオキシイミノ)-4-メトキシフェニル〕アセトニトリル、α-〔(エチルスルホニルオキシイミノ)-4-メトキシフェニル〕アセトニトリル、α-〔(n-プロピルスルホニルオキシイミノ)-4-メトキシフェニル〕アセトニトリル、α-〔(n-ブチルスルホニルオキシイミノ)-4-メトキシフェニル〕アセトニトリル、及びα-〔(4-トルエンスルホニルオキシイミノ)-4-メトキシフェニル〕アセトニトリルが挙げられる。
【0066】
オキシムスルホネート化合物の具体例としては、下記化合物(i)~(viii)等も好ましい。
【0067】
【0068】
上記一般式(B1)で表されるオキシムスルホネート化合物としては、下記一般式(3)で表される化合物であることも好ましい。
【0069】
【0070】
一般式(3)中、R1は、アルキル基又はアリール基を表し、R2は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R3~R6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。ただし、R3とR4、R4とR5、又はR5とR6とがそれぞれ結合して、脂環又は芳香環を形成してもよい。Xは、エーテル基又はチオエーテル基を表す。
【0071】
R1は、アルキル基又はアリール基を表す。アルキル基は、分岐鎖状のアルキル基又は環状のアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数は、3~10が好ましい。特にアルキル基が分岐鎖状である場合、炭素数3~6が好ましく、アルキル基が環状である場合、炭素数5~7が好ましい。アルキル基としては、例えば、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、及びオクチル基が挙げられ、イソプロピル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、又はシクロヘキシル基が好ましい。アリール基の炭素数は、6~12が好ましく、6~8がより好ましく、6~7がさらに好ましい。上記アリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられ、フェニル基が好ましい。
R1のアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基等)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、ヒドラジノ基、及びヘテロ環基が挙げられる。また、これらの基はさらに、置換基によって置換されていてもよい。
置換基としては、ハロゲン原子又はメチル基が好ましい。
【0072】
R1は、例えば、アルキル基が好ましい。保存安定性と感度とを両立させる観点から、R1は、炭素数3~6の分岐鎖状のアルキル基、炭素数5~7の環状のアルキル基、又は、フェニル基が好ましく、炭素数3~6の分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数5~7の環状のアルキル基がより好ましい。また、R1がこのようなかさ高い基(特に、かさ高いアルキル基)である場合、透明性を向上できる。
かさ高い置換基の中でも、イソプロピル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、又はシクロヘキシル基が好ましく、tert-ブチル基又はシクロヘキシル基がより好ましい。
【0073】
R2は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R2で表されるアルキル基としては、炭素数1~10の、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基が好ましい。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、及びシクロヘキシル基が挙げられ、メチル基が好ましい。
アリール基としては、炭素数6~10のアリール基が好ましい。上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、p-トルイル基(p-メチルフェニル基)が挙げられ、フェニル基又はp-トルイル基が好ましい。ヘテロアリール基としては、例えば、ピロール基、インドール基、カルバゾール基、フラン基、及びチオフェン基が挙げられる。
R2で表されるアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、R1が表すアルキル基等が有し得る置換基を同様に挙げられる。
R2は、アルキル基又はアリール基が好ましく、アリール基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。フェニル基の置換基としてはメチル基が好ましい。
【0074】
R3~R6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)を表す。R3~R6で表されるアルキル基は、R2で表されるアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同様である。また、R3~R6で表されるアリール基としては、R1で表されるアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
R3~R6のうち、R3とR4、R4とR5、又はR5とR6とが結合して環を形成していてもよく、環としては、脂環又は芳香環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
R3~R6は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、若しくはハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)であるのが好ましく、水素原子、メチル基、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子であるのがより好ましい。
また、R3とR4、R4とR5、若しくはR5とR6が結合してベンゼン環を構成しているのも好ましい。
より具体的な、R3~R6の好ましい態様は以下の通りである。
(態様1)少なくとも1個(より好ましくは2個以上)が水素原子である。
(態様2)アルキル基、アリール基、及びハロゲン原子の数が、合計で3個以下(より好ましくは1個以下)である。
(態様3)R3とR4、R4とR5、又はR5とR6とが結合してベンゼン環を構成している。
(態様4)上記態様1と2とを満たす態様、及び/又は、上記態様1と3とを満たす態様。
【0075】
Xは、エーテル基又はチオエーテル基を表す。
【0076】
上記一般式(3)の具体例としては、以下のような化合物が例示される。なお、例示化合物中、Tsはトシル基(p-トルエンスルホニル基)を表し、Meはメチル基を表し、Buはn-ブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【0077】
【0078】
(イミドスルホネート化合物)
光酸発生剤としてはイミドスルホネート化合物も好ましい。
イミドスルホネート化合物が有するイミドスルホネート基としては、5員環イミドスルホネート基が好ましい。また、イミドスルホネート化合物は、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【0079】
【0080】
一般式(3)中、R6は、炭素数2又は3のフルオロアルキル基を表し、炭素数2又は3のパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0081】
R7は、アルキレン基、アルケニレン基、又はアリーレン基を表す。アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、環状が好ましい。アルキレン基の炭素数は、1~12が好ましく、3~12がより好ましく、3~8が更に好ましい。
アルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、環状が好ましい。アルケニレン基の炭素数は、2~12が好ましく、3~12がより好ましく、3~8が更に好ましい。
アリーレン基の炭素数は、6~18が好ましく、6~12がより好ましい。
イミドスルホネート化合物は、5員環イミドスルホネート基と、ノルボルネン基とを有する化合物であるのが好ましい。
【0082】
イミドスルホネート基を有する化合物の市販品としては、NT-1TF及びNT-3TF(サンアプロ社製)が挙げられる。
その他のイミドスルホネート基を有する化合物の具体例としては、下記例示化合物が挙げられる。
【0083】
【0084】
光酸発生剤の含有量は、レジスト膜の全固形分に対して、0.1~3.0質量%が好ましく、0.125~1.5質量%がより好ましく、0.15~1.0質量%が更に好ましい。
光酸発生剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0085】
<架橋剤>
本発明のパターン形成方法で使用されるレジスト膜は、更に架橋剤を含むのが好ましい。
【0086】
架橋剤は、架橋性基を有する化合物である。架橋性基は、酸触媒下で上述のノボラック樹脂と反応して、架橋構造を形成できるのが好ましい。架橋性基は、パターンの矩形性がより優れる点から、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基が好ましく、アルコキシメチル基がより好ましく、メトキシメチル基又はエトキシメチル基が更に好ましく、メトキシメチル基が特に好ましい。
架橋剤が、分子内に架橋性基を、2個以上有するのが好ましく、4個以上有するのがより好ましく、6個以上有するのが好ましい。
つまり、架橋剤が、分子内にメトキシメチル基を、2個以上有するのが好ましく、4個以上有するのがより好ましく、6個以上有するのが更に好ましい。
架橋剤が分子内に有する架橋性基(好ましくはメトキシメチル基)の数の上限は特に制限されないが、10個以下が一般的である。
【0087】
また、架橋剤は、パターンの矩形性がより優れる点から、分子内にフェノール性水酸基を有するのが好ましく、分子内にフェノール性水酸基を、1~4個有するのが好ましく、2~3個有するのがより好ましく、3個有するのが更に好ましい。
【0088】
架橋剤としては、パターンの矩形性がより優れる点から、ヒドロキシメチル化又はアルコキシメチル化フェノール系化合物、アルコキシメチル化メラミン系化合物、アルコキシメチルグリコールウリル系化合物類、又はアルコキシメチル化ウレア系化合物が好ましく、ヒドロキシメチル化又はアルコキシメチル化フェノール系化合物がより好ましく、アルコキシメチル化フェノール系化合物が更に好ましい。
【0089】
中でも好ましい架橋剤としては、分子内にベンゼン環を2~5個有し、更にヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基(好ましくはアルコキシメチル基、より好ましくはメトキシメチル基)を合わせて2個以上(好ましくは6個以上)有し、分子量が1200以下のフェノール誘導体が挙げられる。
【0090】
上記架橋剤のうち、ヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有さないフェノール化合物とホルムアルデヒドを塩基触媒下で反応させて得られる。また、アルコキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体とアルコールを酸触媒下で反応させて得られる。
このようにして合成されたフェノール誘導体のうち、アルコキシメチル基を有するフェノール誘導体が感度、及び保存安定性の点から好ましい。
【0091】
別の好ましい架橋剤の例として、更にアルコキシメチル化メラミン系化合物、アルコキシメチルグリコールウリル系化合物類及びアルコキシメチル化ウレア系化合物のようなN-ヒドロキシメチル基又はN-アルコキシメチル基を有する化合物が挙げられる。
【0092】
このような化合物としては、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルグリコールウリル、1,3-ビスメトキシメチル-4,5-ビスメトキシエチレンウレア、及びビスメトキシメチルウレア等が挙げられる。このような化合物の具体例が、EP0,133,216A、西独特許第3,634,671号、同第3,711,264号、及びEP0,212,482A号に開示されている。
【0093】
以下に好ましい架橋剤の例を示す。
【0094】
【0095】
構造式中、L1~L8は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、又は炭素数1~6のアルキル基を表す。
中でも、L1~L8は、それぞれ独立に、メトキシメチル基であるのが好ましい。
【0096】
架橋剤の含有量は、レジスト膜の全固形分に対して、10~45質量%が好ましく、20~40質量%がより好ましく、30~37.5質量%が更に好ましい。
【0097】
架橋剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
<酸拡散制御剤>
本発明のパターン形成方法で使用されるレジスト膜は、更に酸拡散制御剤を含むのが好ましい。酸拡散制御剤は、露光時に光酸発生剤等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における反応を抑制するクエンチャーとして作用する。例えば、塩基性化合物(DA)、露光により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)、酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)、又はカチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)等を酸拡散制御剤として使用できる。本発明の組成物においては、公知の酸拡散制御剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0627>~<0664>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0095>~<0187>、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0403>~<0423>、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0259>~<0328>に開示された公知の化合物を酸拡散制御剤として好適に使用できる。
【0099】
塩基性化合物(DA)としては、下記一般式(A)~(E)で示される構造を有する化合物が好ましい。
【0100】
【0101】
一般式(A)及び(E)中、
R200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、ヒドロキシアルキル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数2)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又はアリール基(炭素数6~20)を表す。R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
R203、R204、R205、及びR206は、同一でも異なってもよく、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0102】
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、置換基を有していても無置換であってもよい。
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1~20のアミノアルキル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~20のシアノアルキル基が好ましい。
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換であるのがより好ましい。
【0103】
塩基性化合物(DA)としては、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、又はピペリジン等が好ましく、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造若しくはピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、又は、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアニリン誘導体等がより好ましい。
【0104】
露光により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)(以下、「化合物(DB)」ともいう。)は、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、露光により分解して、プロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化する化合物である。
【0105】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基、又は、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0106】
【0107】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル構造、アザクラウンエーテル構造、1~3級アミン構造、ピリジン構造、イミダゾール構造、及びピラジン構造等が挙げられる。
【0108】
化合物(DB)は、露光により分解してプロトンアクセプター性が低下若しくは消失し、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここでプロトンアクセプター性の低下若しくは消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(DB)とプロトンとからプロトン付加体が生成するとき、その化学平衡における平衡定数が減少することを意味する。
プロトンアクセプター性は、pH測定を行うことによって確認できる。
【0109】
露光により化合物(DB)が分解して発生する化合物の酸解離定数pKaは、pKa<-1を満たすのが好ましく、-13<pKa<-1を満たすのがより好ましく、-13<pKa<-3を満たすのが更に好ましい。
【0110】
酸解離定数pKaとは、水溶液中での酸解離定数pKaのことを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に定義される。酸解離定数pKaの値が低いほど酸強度が大きいことを示す。水溶液中での酸解離定数pKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定して実測できる。または、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求められる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示す。
【0111】
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0112】
本発明の組成物では、光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)を酸拡散制御剤として使用できる。
光酸発生剤と、光酸発生剤から生じた酸に対して相対的に弱酸である酸を発生するオニウム塩とを混合して用いた場合、露光により光酸発生剤から生じた酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行える。
【0113】
光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩としては、下記一般式(d1-1)~(d1-3)で表される化合物が好ましい。
【0114】
【0115】
式中、R51は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Z2cは置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基(ただし、Sに隣接する炭素にはフッ素原子は置換されていないものとする)であり、R52は有機基であり、Y3は直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基、又はアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり、M+はそれぞれ独立に、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、又はヨードニウムカチオンである。
【0116】
光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)は、カチオン部位とアニオン部位を同一分子内に有し、かつ、カチオン部位とアニオン部位が共有結合により連結している化合物(以下、「化合物(DCA)」ともいう。)であってもよい。
化合物(DCA)としては、下記一般式(C-1)~(C-3)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0117】
【0118】
一般式(C-1)~(C-3)中、
R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に炭素数1以上の置換基を表す。
L1は、カチオン部位とアニオン部位とを連結する2価の連結基又は単結合を表す。
-X-は、-COO-、-SO3
-、-SO2
-、及び-N--R4から選択されるアニオン部位を表す。R4は、隣接するN原子との連結部位に、カルボニル基(-C(=O)-)、スルホニル基(-S(=O)2-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)のうち少なくとも1個を有する1価の置換基を表す。
R1、R2、R3、R4、及びL1は、互いに結合して環を形成してもよい。また、一般式(C-3)において、R1~R3のうち2個を合わせて1個の2価の置換基を表し、N原子と2重結合により結合していてもよい。
【0119】
R1~R3における炭素数1以上の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、及びアリールアミノカルボニル基等が挙げられる。中でも、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基が好ましい。
【0120】
2価の連結基としてのL1は、直鎖状及び分岐鎖状アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、並びにこれらの2種以上を組み合わせてなる基等が挙げられる。L1は、アルキレン基、アリーレン基、エーテル基、エステル基、又はこれらの2種以上を組み合わせてなる基が好ましい。
【0121】
窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)(以下、「化合物(DD)」ともいう。)は、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体であるのが好ましい。
酸の作用により脱離する基としては、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、又はヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、又はヘミアミナールエーテル基がより好ましい。
化合物(DD)の分子量は、100~1000が好ましく、100~700がより好ましく、100~500が更に好ましい。
化合物(DD)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有してもよい。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d-1)で表される。
【0122】
【0123】
一般式(d-1)において、
Rbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~30)、アリール基(好ましくは炭素数3~30)、アラルキル基(好ましくは炭素数1~10)、又はアルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1~10)を表す。Rbは相互に結合して環を形成していてもよい。
Rbが表すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、それぞれ独立に水酸基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Rbが表すアルコキシアルキル基についても同様である。
【0124】
Rbとしては、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基が好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はシクロアルキル基がより好ましい。
2個のRbが互いに結合して形成する環としては、脂環炭化水素、芳香族炭化水素、複素環式炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。
一般式(d-1)で表される基の具体的な構造としては、米国特許公報US2012/0135348A1号明細書の段落<0466>に開示された構造が挙げられるが、これに限定されない。
【0125】
化合物(DD)は、下記一般式(6)で表される構造を有するのが好ましい。
【0126】
【0127】
一般式(6)において、
lは0~2の整数を表し、mは1~3の整数を表し、l+m=3を満たす。
Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。lが2の場合、2個のRaは同じでも異なっていてもよく、2個のRaは互いに結合して式中の窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。この複素環には式中の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
Rbは、上記一般式(d-1)におけるRbと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(6)において、Raとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、それぞれ独立にRbとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基が置換されていてもよい基として前述した基と同様な基で置換されていてもよい。
【0128】
上記Raのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらの基は、上記基で置換されていてもよい)の具体例としては、Rbについて前述した具体例と同様な基が挙げられる。
本発明における特に好ましい化合物(DD)の具体例としては、米国特許出願公開2012/0135348A1号明細書の段落<0475>に開示された化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0129】
カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)(以下、「化合物(DE)」ともいう。)は、カチオン部に窒素原子を含む塩基性部位を有する化合物であるのが好ましい。塩基性部位は、アミノ基であるのが好ましく、脂肪族アミノ基であるのがより好ましい。塩基性部位中の窒素原子に隣接する原子の全てが、水素原子又は炭素原子であるのが更に好ましい。また、塩基性向上の観点から、窒素原子に対して、電子求引性の官能基(カルボニル基、スルホニル基、シアノ基、及びハロゲン原子等)が直結していないのが好ましい。
化合物(DE)の好ましい具体例としては、米国特許出願公開2015/0309408A1号明細書の段落<0203>に開示された化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0130】
酸拡散制御剤の好ましい例を以下に示す。
【0131】
【0132】
【0133】
酸拡散制御剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸拡散制御剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、レジスト膜の全固形分に対して、0.05~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましい。
【0134】
<界面活性剤>
本発明のパターン形成方法で使用されるレジスト膜は、界面活性剤を含むのが好ましい界面活性剤を含む場合、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(具体的には、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、又はフッ素原子とケイ素原子との両方を有する界面活性剤)が好ましい。
【0135】
レジスト膜が界面活性剤を含むことにより、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないパターンを得られる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤として、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落<0276>に記載の界面活性剤が挙げられる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落<0280>に記載の、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤も使用できる。
【0136】
これらの界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、レジスト膜の全固形分に対して、0.0001~2質量%が好ましく、0.0005~1質量%がより好ましい。
【0137】
(その他の添加剤)
本発明のパターン形成方法で使用されるレジスト膜は、更に、ノボラック樹脂以外の樹脂、酸増殖剤、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、溶解阻止剤、又は溶解促進剤等を含んでいてもよい。
【0138】
[レジスト組成物]
レジスト膜は、上述した成分を溶剤中に分散させて得られるレジスト組成物を用いて形成されるのが好ましい。
レジスト組成物は、少なくともノボラック樹脂及びi線露光によって酸を発生する光酸発生剤を含むのが好ましい。
以下に、レジスト組成物の調製に使用される溶剤について説明する。
【0139】
<溶剤>
本発明のパターン形成方法で使用されるレジスト組成物においては、公知の溶剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0665>~<0670>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0210>~<0235>、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0424>~<0426>、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0357>~<0366>に開示された公知の溶剤を好適に使用できる。
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及びピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
【0140】
有機溶剤として、構造中に水酸基を有する溶剤と、水酸基を有さない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を有する溶剤、及び水酸基を有さない溶剤としては、前述の例示化合物を適宜選択できるが、水酸基を含む溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、又は乳酸アルキルが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、又は乳酸エチルがより好ましい。
また、水酸基を有さない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を有していてもよいモノケトン化合物、環状ラクトン、又は酢酸アルキルが好ましく、これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルエトキシプロピオネート、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、エチルエトキシプロピオネート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、又は2-ヘプタノンが更に好ましい。水酸基を有さない溶剤としては、プロピレンカーボネートも好ましい。
水酸基を有する溶剤と水酸基を有さない溶剤との混合比(質量比)は、1/99~99/1が好ましく、10/90~90/10がより好ましく、20/80~60/40が更に好ましい。水酸基を有さない溶剤を50質量%以上含む混合溶剤が、塗布均一性の点で好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むのが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶剤でもよいし、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む2種類以上の混合溶剤でもよい。
【0141】
<調製方法>
本発明のパターン形成方法で使用されるレジスト組成物の固形分含有量は、40質量%以上が好ましく、40~60質量%がより好ましく、45~55質量%が更に好ましい。
なお、固形分含有量とは、レジスト組成物の全質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量の質量百分率である。
【0142】
レジスト組成物は、上記の成分を所定の溶剤(好ましくは上記混合溶剤)に溶解し、これをフィルター濾過して得るのが好ましい。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.03μm以下が更に好ましい。このフィルターは、ポリテトラフルオエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製が好ましい。フィルター濾過においては、例えば特開2002-62667号公報に開示されるように、循環的な濾過を行ってもよく、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ってもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理等を行ってもよい。
【0143】
本発明のパターン形成方法で使用されるレジスト組成物の粘度は、塗布性に優れる点で、100~5000mPa・sであるのが好ましく、300~3000mPa・sであるのがより好ましい。
なお、粘度は、25℃で、E型粘度計により測定できる。
【0144】
このようなレジスト組成物を支持体上に塗布してレジスト膜を形成できる。支持体上にレジスト組成物を塗布する方法としては、例えば、スピン塗布法が挙げられる。
支持体は、特に限定されず、IC(Integrated Circuit)等の半導体の製造工程、又は液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造工程のほか、その他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程等で一般的に用いられる基板も使用できる。支持体の具体例としては、シリコン、SiO2、及びSiN等の無機基板等が挙げられる。
【0145】
また、必要に応じて、レジスト膜と支持体との間にレジスト下層膜(例えば、SOG(Spin On Glass)、SOC(Spin On Carbon)、及び、反射防止膜)を形成してもよい。レジスト下層膜を構成する材料としては、公知の有機系又は無機系の材料を適宜使用できる。
【0146】
<用途>
本発明のパターン形成方法で使用されるレジスト組成物は、i線の照射により反応して性質が変化するレジスト組成物に関する。更に詳しくは、本発明の組成物は、IC等の半導体製造工程、液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造、インプリント用モールド構造体の作製、その他のフォトファブリケーション工程、又は平版印刷版、若しくは酸硬化性組成物の製造に使用されるレジスト組成物に関する。本発明において形成されるパターンは、エッチング工程、イオンインプランテーション工程、バンプ電極形成工程、再配線形成工程、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等において使用できる。
【0147】
[パターン形成方法]
以下、本発明のパターン形成方法について説明する。
本発明のパターン形成方法で形成されるパターンは、典型的にはネガ型パターンである。
【0148】
本発明のパターン形成方法で使用されるレジスト膜の膜厚は、加工段数を増やす目的として、15μm以上が好ましく、16μm以上がより好ましく、18μm以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、例えば100μm以下である。
形成されるパターンの膜厚は、加工段数を増やす目的として、15μm以上が好ましく、16μm以上がより好ましく、18μm以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、例えば100μm以下である。
【0149】
本発明のパターン形成方法は、
(i)支持体上に形成されたレジスト膜を、i線を用いて露光する工程(露光工程)、及び、
(ii)上記露光されたレジスト膜を、有機溶剤を含む現像液を用いて現像して、パターンを形成する工程(現像工程)、
を有する。
【0150】
本発明のパターン形成方法は、上記(i)及び(ii)の工程を含んでいれば特に限定されず、更に下記の工程を有していてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(i)露光工程における露光方法が、液浸露光であってもよい。
本発明のパターン形成方法は、(i)露光工程の前に、(iii)前加熱(PB:PreBake)工程を含むのが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(i)露光工程の後、かつ、(ii)現像工程の前に、(iv)露光後加熱(PEB:Post Exposure Bake)工程を含むのが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)現像工程の後に、後述のリンス工程を行うことなく(v)現像後加熱工程を実施するのも好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(i)露光工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(iii)前加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(iv)露光後加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(v)現像後加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
【0151】
本発明のパターン形成方法において、上述した(i)露光工程、及び(ii)現像工程は、一般的に知られている方法により行える。
【0152】
加熱温度は、(iii)前加熱工程(iv)露光後加熱工程、及び(v)現像後加熱工程のいずれにおいても、70~160℃が好ましく、80~150℃がより好ましい。
加熱時間は、(iii)前加熱工程(iv)露光後加熱工程、及び(v)現像後加熱工程のいずれにおいても、30~300秒が好ましく、30~180秒がより好ましく、30~150秒が更に好ましい。
加熱は、露光装置及び現像装置に備わっている手段で実施でき、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
【0153】
露光工程に用いられる光源はi線(波長365nm)である。
なお、露光工程に用いられる光源はパターン形成に支障のない範囲で他の波長の光を含んでいてもよい。
【0154】
(ii)現像工程において用いられる有機溶剤を含む現像液(「有機系現像液」ともいう)は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含む現像液であるのが好ましい。
【0155】
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、2-ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、及びプロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0156】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、ブタン酸ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、酢酸イソアミル、イソ酪酸イソブチル、及びプロピオン酸ブチル等が挙げられる。
【0157】
アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0715>~<0718>に開示された溶剤を使用できる。
【0158】
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤又は水と混合してもよい。
【0159】
中でも、有機系現像液は、エステル系溶剤を含むのが好ましく、沸点130℃以下のエステル系溶剤を含むのが好ましく、酢酸ブチルを含むのが更に好ましい。
また、有機系現像液は、エステル系溶剤であるのが好ましく、沸点130℃以下のエステル系溶剤であるのが好ましく、酢酸ブチルであるのが更に好ましい。
【0160】
現像液全体としての含水率は、50質量%未満が好ましく、20質量%未満がより好ましく、10質量%未満が更に好ましく、3質量%未満が特に好ましく、実質的に水分を含まないのが最も好ましい。
現像液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全質量に対して、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、90~100質量%が更に好ましく、95~100質量%が特に好ましい。
【0161】
現像液は、必要に応じて公知の界面活性剤を適当量含んでいてもよい。
【0162】
界面活性剤の含有量は現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%であり、0.005~2質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0163】
現像液は、上述した酸拡散制御剤を含んでいてもよい。
【0164】
現像方法としては、例えば、一定速度で回転している基板上に現像液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、一定速度で回転している基板上に現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、及び基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
中でも現像方法としては、パドル法又はスプレー法が好ましく、スプレー法がより好ましい。
ここで、ダイナミックディスペンス法におけるスキャンとは、基板の回転中心を通る線上で吐出ノズルを往復移動させることをいう。
スプレー法における噴霧とは、シャワー状に現像液を吐出することを含む。また、スプレー法において現像液を吐出する際に、基板を回転させていてもよい。
【0165】
現像工程において、現像液がレジスト膜上に供給される時間は、パターンの矩形性がより優れる点から、通算にて、30秒以上が好ましく、60~600秒がより好ましく、120~300秒が更に好ましい。
なお、「現像液がレジスト膜上に供給される」時間は、現像工程において現像液がレジスト膜上に新たに供給される時間を意図する。さらに、複数回にわたって現像液がレジスト膜上に供給される場合は、それら複数回の合計の時間を意図する。
【0166】
現像工程において使用される現像液の温度は、パターンの矩形性がより優れる点から、30~60℃が好ましく、35~55℃がより好ましく、40~50℃が更に好ましい。
【0167】
(iii)現像工程の後に、リンス液を用いて洗浄する工程(リンス工程)を含むことも好ましい。
【0168】
有機溶剤を含む現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、パターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液及び純水等を使用できる。リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含むリンス液を用いるのが好ましい。
ケトン系溶剤及びエステル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含む現像液において説明したのと同様の溶剤が挙げられる。
この場合のリンス工程に用いるリンス液としては、1価アルコールを含むリンス液も好ましい。
【0169】
リンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐鎖状、又は環状の1価アルコールが挙げられる。具体的には、1-ブタノール、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、tert―ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-ヘキサノール、シクロペンタノール、2-ヘプタノール、2-オクタノール、3-ヘキサノール、3-ヘプタノール、3-オクタノール、4-オクタノール、及びメチルイソブチルカルビノールが挙げられる。炭素数5以上の1価アルコールとしては、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、及びメチルイソブチルカルビノール等が挙げられる。
【0170】
各種成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合して使用してもよい。
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。含水率を10質量%以下とすれば、良好な現像特性が得られる。
【0171】
リンス液は、界面活性剤を適当量含んでいてもよい。
リンス工程においては、有機系現像液を用いる現像を行った基板を、有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、及び基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
中でも、回転塗布法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2,000~5,000rpm(revolution per minute)の回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去するのが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。この加熱工程によりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程において、加熱温度は通常40~160℃であり、70~95℃が好ましく、加熱時間は通常10秒~3分であり、30秒~90秒が好ましい。
【0172】
本発明のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、溶剤、現像液、又はリンス液)は、金属成分、異性体、及び残存モノマー等の不純物を含まないのが好ましい。上記の各種材料に含まれるこれらの不純物の含有量としては、1ppm以下が好ましく、100ppt以下がより好ましく、10ppt以下が更に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
【0173】
上記各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過が挙げられる。フィルター孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルターの材質としては、ポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製が好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したフィルターを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であってもよい。フィルターとしては、特開2016-201426号公報に開示されるような溶出物が低減されたフィルターが好ましい。
フィルター濾過のほか、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を使用でき、例えば、シリカゲル若しくはゼオライト等の無機系吸着材、又は活性炭等の有機系吸着材を使用できる。金属吸着材としては、例えば、特開2016-206500号公報に開示されるフィルターが挙げられる。
また、上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、及び装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法が挙げられる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
【0174】
上記の各種材料は、不純物の混入を防止するために、米国特許出願公開第2015/0227049号明細書、及び特開2015-123351号公報等に記載された容器に保存されるのが好ましい。
【0175】
本発明のパターン形成方法により形成されるパターンに、パターンの表面荒れを改善する方法を適用してもよい。パターンの表面荒れを改善する方法としては、例えば、米国特許出願公開第2015/0104957号明細書に開示された、水素を含むガスのプラズマによってパターンを処理する方法が挙げられる。その他にも、特開2004-235468号公報、米国特許出願公開第2010/0020297号明細書、及びProc. of SPIE Vol.8328 83280N-1“EUV Resist Curing Technique for LWR Reduction and Etch
Selectivity Enhancement”に記載されるような公知の方法を適用してもよい。
また、上記の方法によって形成されたパターンは、例えば特開平3-270227号公報及び米国特許出願公開第2013/0209941号明細書に開示されたスペーサープロセスの芯材(Core)として使用できる。
【0176】
[電子デバイスの製造方法]
また、本発明は、上記したパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法にも関する。本発明の電子デバイスの製造方法により製造された電子デバイスは、電気電子機器(例えば、家電、OA(Office Automation)関連機器、メディア関連機器、光学用機器、及び通信機器等)に、好適に搭載される。
【実施例】
【0177】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
【0178】
[レジスト組成物]
以下に、実施例又は比較例で使用したレジスト組成物に含まれる各種成分を示す。
【0179】
<ノボラック樹脂>
・ノボラック樹脂(N-1)
ノボラック樹脂EP6050G(旭有機材工業社製、m-クレゾール/p-クレゾール=40/60(質量比)、重量平均分子量:2500~4000(カタログ値))のフェノール性水酸基をアセタール化し、下記一般式(A)で表される基を結合させて、下記構造式に示されるノボラック樹脂(N-1)を得た。
*は結合位置を示す。
ノボラック樹脂(N-1)のアセタール化率(保護率)は30モル%であった。なお、アセタール化率は、下記ノボラック樹脂の構造式中のXの値に相当する。つまり、アセタール化率が30モル%であるノボラック樹脂(N-1)は、下記構造式のXが30モル%である場合に相当する。
【0180】
【0181】
【0182】
なお上記アセタール化は、特開2013-214053号公報の段落<0407>の記載を参考に、同様の方法で実施した。
より具体的には、ノボラック樹脂EP6050G(10.0g)をテトラヒドロフラン(THF)(60g)に溶解して得た混合溶液に、トリエチルアミン(9.00g)を加え、氷水浴中で撹拌した。この混合溶液に、下記に示すクロロエーテル化合物(12.50g)を滴下し、氷水浴中で4時間撹拌した。
【0183】
【0184】
その後、混合溶液に蒸留水を加えて反応を停止した。THFを減圧留去して、得られた反応物を酢酸エチルに溶解した。得られた有機相を蒸留水で5回洗浄した後、有機相をヘキサン(1.0L)中に滴下して固体を析出させた。得られた固体をろ別し、少量のヘキサンで洗浄することで、ノボラック樹脂(N-1)(11.7g)を得た。
【0185】
・ノボラック樹脂(N-2)
ノボラック樹脂EPR5030G(旭有機材工業社製、m-クレゾール/p-クレゾール=50/50(質量比)、重量平均分子量:4000~6500(カタログ値))を、ノボラック樹脂(N-1)と同様にアセタール化し、上記一般式(A)で表される基を結合させて、ノボラック樹脂(N-2)を得た。
アセタール化率は32モル%であった。
【0186】
・ノボラック樹脂(N-3)
ノボラック樹脂EP4080G(旭有機材工業社製、m-クレゾール/p-クレゾール=60/40(質量比)、重量平均分子量:4000~6000(カタログ値))を、ノボラック樹脂(N-1)と同様にアセタール化し、上記一般式(A)で表される基を結合させて、ノボラック樹脂(N-3)を得た。
アセタール化率は29モル%であった。
【0187】
・ノボラック樹脂(N-4)
ノボラック樹脂EP6050G(旭有機材工業社製、m-クレゾール/p-クレゾール=40/60(質量比)、重量平均分子量:2500~4000(カタログ値))(10.0g)をテトラヒドロフラン(THF)(60g)に溶解して混合溶液を得た。この混合溶液に、1-アダマンタンカルボニルクロリド(14.88g)及びトリエチルアミン(10.11g)を加えてから、さらに50℃で4時間撹拌した。混合溶液を室温に戻した後、酢酸エチル(100mL)と蒸留水(100mL)とを加え、混合溶液を氷水中で撹拌しながら、1NのHCl水溶液を少しずつ添加して混合溶液を中和した。混合溶液を分液ロートに移し、そこへさらに酢酸エチル(100mL)と蒸留水(100mL)とを加え、撹拌後、水相を除去した。その後、有機相を蒸留水(200mL)で5回洗浄した後、有機相を濃縮し、ヘキサン(2L)中に滴下して固体を析出させた。その後、固体をろ別し、真空乾燥することでノボラック樹脂(N-4)(9.8g)を得た。
ノボラック樹脂(N-4)の構造を以下に示す。
なお、ノボラック樹脂(N-4)のエステル化率(保護率)は28モル%であった。
【0188】
【0189】
・ノボラック樹脂(N-5)
m-クレゾールを、ホルムアルデヒドとサリチルアルデヒドとを併用(ホルムアルデヒド/サリチルアルデヒド=1/0.3(質量比))して重合してノボラック樹脂N-5(重量平均分子量:4000)を得た。
【0190】
<非ノボラック樹脂>
・樹脂(R-1)
日本曹達株式会社製、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)(VP2500)(20g)をテトラヒドロフラン(THF)(120mL)に溶解して混合溶液を得た。この混合溶液に、1-アダマンタンカルボニルクロリド(4.96g)及びトリエチルアミン(3.37g)を加えてから、さらに50℃で4時間撹拌した。混合溶液を室温に戻した後、酢酸エチル(100mL)と蒸留水(100mL)とを加え、混合溶液を氷水中で撹拌しながら、1NのHCl水溶液を少しずつ添加して混合溶液を中和した。混合溶液を分液ロートに移し、そこへさらに酢酸エチル(100mL)と蒸留水(100mL)とを加え、撹拌後、水相を除去した。その後、有機相を蒸留水(200mL)で5回洗浄した後、有機相を濃縮し、ヘキサン(2L)中に滴下して固体を析出させた。その後、固体をろ別し、真空乾燥することで比較用の樹脂(R-1)(20.6g)を得た。
樹脂(R-1)の構造を以下に示す。なお、以下の構造式中、「15」及び「85」の単位は、モル%を意図する。
【0191】
【0192】
<光酸発生剤>
以下の光酸発生剤を使用した。
・CPI-210S(サンアプロ株式会社製)
【0193】
<架橋剤>
以下の架橋剤を使用した。
【0194】
・(L-1):下記化合物
【0195】
【0196】
・(L-2):ニカラックMW100-LM(メチル化メラミン樹脂、三和ケミカル社製下記に示す化合物を含む)
【0197】
【0198】
・(L-3):ニカラックMX-270(メチル化尿素樹脂、三和ケミカル社製、下記に示す化合物を含む)
【0199】
【0200】
・(L-4):下記化合物
【0201】
【0202】
・(L-5):下記化合物
【0203】
【0204】
<酸拡散制御剤>
以下の酸拡散制御剤を使用した。
・トリエタノールアミン
【0205】
<界面活性剤>
以下の界面活性剤を使用した。
・メガファックR-41(DIC社製)
【0206】
<溶剤>
以下の溶剤を使用した。
・PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)及びPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)の混合溶剤
(PGMEA/PGME=50/50(質量比))
【0207】
上述した各種成分を表1に示す配合で混合して、それぞれレジスト組成物を調製した。なお、溶剤の配合量は、レジスト組成物の固形分含有量が表1に示す値になるように調整した。
【0208】
[パターンの形成]
(実施例1~18、及び20、比較例1~3)
得られた各レジスト組成物をそれぞれシリコンウエハ(直径:8インチ、Bare-Si)上にスピン塗布して、更に100℃のホットプレートで120秒間加熱した。
その後、レジスト膜に対して、i線ステッパー露光装置(FPA-3000i5+、Canon社製)を用いて100μmの線状パターンの露光処理(波長:365nm、露光量:1000mJ/cm2)を行い、更に130℃のホットプレートで60秒間加熱した。
【0209】
上記加熱後、シリコンウエハを真空チャック方式で水平回転テーブルに固定した。更に、シリコンウエハを50rpmで回転させつつ、その回転中心の上方より下記に示す各現像液を各温度で30秒間又は120秒間つづけて連続的に噴出ノズルからシャワー状に供給して現像処理を行い(スプレー法)、その後シリコンウエハを2000rpmで30秒間回転させて乾燥処理をした。その後、シリコンウエハを150℃のホットプレートで120秒間加熱して、パターンを得た。
【0210】
(実施例19)
上述のパターンの形成方法において、シリコンウエハを水平回転テーブルに固定するまでは同様に行い、次に、シリコンウエハを回転させずに静止させた状態で、シリコンウエハの中心の上方から、40℃の酢酸ブチル(現像液)を3秒間吐出して、シリコンウエハの上面に現像液を行き渡らせた。シリコンウエハ上で現像液が表面張力で盛り上がった状態にして、そのまま新たな現像液を供給することなく300秒間静置した(パドル法)。その後、純水をシャワー状に吐出してリンス処理を実施した。
さらに上述したのと同様にシリコンウエハへの乾燥処理と加熱とをしてパターンを得た。
【0211】
[評価]
得られたパターンの断面形状を、電界放出形走査電子顕微鏡S-4800(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて観察し、シリコンウエハとパターンの接触部分の角度を基準にパターンの矩形性の評価を行った。なお、角度が90度に近いほど矩形性が優れる。
結果を表1に示す。
【0212】
<現像液>
以下の現像液を使用して現像を行った。
・酢酸ブチル
・酢酸アミル
・MEK(メチルエチルケトン)
・TMAHaq(2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)
(ただし、現像液としてTMAHaqを用いた場合(比較例1)は、上述の現像処理を行った後、乾燥処理を行う前に、純水をシャワー状に吐出してリンス処理を行った。)
【0213】
下記表1に、実施例及び比較例における、使用したレジスト組成物の配合、現像の条件、及び評価の結果を示す。
表1中、「樹脂種類」の欄は、使用した樹脂の種類を示す。「NV」はノボラック樹脂を意味し、「PHS」はポリヒドロキシスチレン系樹脂を意味する。
表1中、「樹脂含有量」の欄は、レジスト膜(レジスト組成物)中の全固形分に対する、樹脂の含有量(質量%)を表す。
表1中、「m/p」の欄は、使用したノボラック樹脂における、m-クレゾール由来の繰り返し単位とp-クレゾール由来の繰り返し単位との比を表す。(m-クレゾール/p-クレゾール(質量比))
表1中、「保護種類」の欄は、樹脂が有するフェノール性水酸基に対する保護の種類を示す。「アセタール化」はフェノール性水酸基をアセタール化したことを意味し、「エステル化」はフェノール性水酸基をエステル化したことを意味する。
表1中、「MOM基数」の欄は、使用した架橋剤が有するメトキシメチル基の数を示す。
表1中、「OH基数」の欄は、使用した架橋剤が有するフェノール性水酸基の数を示す。
表1中、「膜厚」の欄は、形成したレジスト膜の膜厚を示す。
表1中、「現像液」の欄の括弧内の値は、使用した現像液の沸点を示す。
表1中、「現像液温」の欄は、現像処理において、現像液を噴出ノズルから供給した際の現像液の温度を示す。
表1中、「現像方法」の欄は、現像工程で用いた現像方法を示す。「スプレー」はスプレー法を意味し、「パドル」はパドル法を意味する。
表1中、「供給時間」の欄は、現像工程で現像液をレジスト膜上に供給した通算の時間を示す。
【0214】
【0215】
表1に示した結果から、本発明のパターン形成方法によれば、矩形性に優れるパターンを得られることが確認された。
上記酸解離性基が、ノボラック樹脂のフェノール性水酸基の酸素原子と結合してアセタール基を形成している場合パターンの矩形性がより優れる傾向が確認された(実施例1及び16の比較)。
レジスト膜が架橋剤を含む場合、パターンの矩形性がより優れる傾向が確認された(実施例1、4、5、6、7、及び17の比較)。
また、架橋剤がメトキシメチル基を6個以上有する場合、パターンの矩形性がより優れる傾向が確認された(実施例4及び5の比較、並びに、実施例1、6、及び7の比較)。
架橋剤がフェノール性水酸基を有する場合、パターンの矩形性がより優れる傾向が確認された(実施例5及び6の比較、並びに、実施例1と4の比較)。
レジスト組成物の固形分含有量が40質量%以上である場合、パターンの矩形性がより優れる傾向が確認された(実施例8及び20の比較)。
現像液が沸点130℃以下のエステル化合物である場合、パターンの矩形性がより優れる傾向が確認された(実施例1、9、及び10の比較)。
現像する際の現像液の温度が30~60℃である場合、パターンの矩形性がより優れる傾向が確認された(実施例11、13、及び14、並びに、実施例12及び15の比較)。
現像液をレジスト膜上に供給する供給する時間が通算30秒以上である場合、パターンの矩形性がより優れる傾向が確認された(実施例1、18、及び19の比較)。
ノボラック樹脂のm-クレゾール由来の繰り返し単位とp-クレゾール由来の繰り返し単位との比(m-クレゾール/p-クレゾール)が、50/50以下である場合(m-クレゾール由来の繰り返し単位が、p-クレゾール由来の繰り返し単位よりも少ない場合)、パターンの矩形性がより優れる傾向が確認された(実施例1、2、及び3の比較)。