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特許7076465純粋な1,3-ブタジエンを単離するための簡素化された方法
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  • 特許-純粋な1,3-ブタジエンを単離するための簡素化された方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】純粋な1,3-ブタジエンを単離するための簡素化された方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/04 20060101AFI20220520BHJP
   C07C 11/167 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
C07C7/04
C07C11/167
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019550594
(86)(22)【出願日】2018-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2018056050
(87)【国際公開番号】W WO2018166961
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】17160642.9
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ハイダ,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,トビアス
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-506184(JP,A)
【文献】特表2013-522175(JP,A)
【文献】特表2015-500254(JP,A)
【文献】特表2004-513931(JP,A)
【文献】特表2007-520519(JP,A)
【文献】特開昭57-123123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 7/00- 7/20
C07C 11/16- 11/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗C画分から、純粋な1,3-ブタジエンを得る方法であって、
得られる前記純粋な1,3-ブタジエンには、各場合とも1,3-ブタジエンに基づいて、少なくとも1つの低沸点物の最大含有量、及び1,2-ブタジエンの最大含有量が定められている方法において、
以下の工程、
a)低沸点留分及び高沸点留分を、蒸留によって前記粗C画分から分離し、精製されたC画分を得る工程であって、精製されたC画分は、前記少なくとも1つの低沸点物の含有量が、1,3-ブタジエンに基づいて、少なくとも1つの低沸点物の定められた最大含有量以下であり、且つ1,2-ブタジエンの含有量が、1,3-ブタジエンに基づいて、1,2-ブタジエンの定められた最大含有量以下である、工程、
b)前記精製されたC画分を、選択性溶媒を使用して少なくとも1つの抽出蒸留に付し、少なくともブタン及びブテンを含む留分、及び純粋な1,3-ブタジエン留分を得る工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの低沸点物がプロピンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プロピンの、前記定められた最大含有量が、1,3-ブタジエンに基づいて20ppmである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1,2-ブタジエンの、前記定められた最大含有量が、1,3-ブタジエンに基づいて25ppmである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
- 前記抽出蒸留で、1,3-ブタジエン及び選択性溶媒を含む負荷溶媒留分を得、及び粗1,3-ブタジエンを前記負荷溶媒留分から脱着させ、
- 前記粗1,3-ブタジエンを少なくとも2つの理論段を含む精留圏において、前記精留圏の頂部で得られた蒸気の凝縮によって得られた液状の1,3-ブタジエンで洗浄し、純粋な1,3-ブタジエンを得る、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
アセチレン留分も前記負荷溶媒留分から脱着させ、脱ガスされた選択性溶媒を得る、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記粗1,3-ブタジエンを、前記液状の1,3-ブタジエンを使用して洗浄する前に、脱ガスされた選択性溶媒を用いて抽出する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記粗C 画分を予備蒸留塔に導入し、前記予備蒸留塔は当該塔の長手方向に延びる隔壁を有し、C炭化水素を含む低沸点留分を頂部流として取り出し、高沸点留分を底部流として取り出し、前記精製されたC 画分を側部流として取り出す、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
- 前記精製されたガス状のC画分を少なくとも1つの抽出塔中で選択性溶媒と接触させ、ブタン及びブテンを含む頂部留分、及び1,3-ブタジエン及び選択性溶媒を含む底部留分を得、
- 粗1,3-ブタジエンを前記底部留分から脱着させ、予備脱ガスされた選択性溶媒を得、
- アセチレンを前記予備脱ガスされた選択性溶媒から脱着させ、脱ガスされた選択性溶媒を得、
- 前記粗1,3-ブタジエンを後スクラビング圏において脱ガスされた選択性溶媒で抽出し、及び
- 前記抽出された粗1,3-ブタジエンを精留圏において液状の1,3-ブタジエンで洗浄して純粋な1,3-ブタジエンを得る、
請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記精留圏を塔内又は塔区域で前記後スクラビング圏の上に配置する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記精製されたC画分を前記選択性溶媒と抽出塔内及び抽出及び予備脱ガス塔の上方区域で接触させ、前記粗1,3-ブタジエンを前記抽出及び予備脱ガス塔及び脱ガス塔の下方区域で前記底部留分から脱着させる、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記後スクラビング圏及び前記精留圏が、前記抽出及び予備脱ガス塔の上方区域に形成され、前記抽出及び予備脱ガス塔は当該塔の本質的に長手方向に延びる隔壁によって分離されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記脱ガス塔を前記抽出及び予備脱ガス塔と同じ圧力レベルで運転し、前記脱ガス塔からの前記頂部生成物を、前記抽出及び予備脱ガス塔への圧力を増加させずに再循環させる、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記精留圏の頂部で凝縮されなかった蒸気の部分が、前記予備蒸留塔からの蒸気と一緒に前記予備蒸留塔の頂部凝縮器を通って運ばれる、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
溶解した水が前記純粋な1,3-ブタジエンから分離される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記水の除去を冷却及び相分離によって、及び/又は回収塔における回収によって行う、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記選択性溶媒が少なくとも80質量%のN-メチルピロリドンを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純粋な1,3-ブタジエンを粗C留分から単離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業界において、1,3-ブタジエンは一般に、C留分から、すなわちC-炭化水素、特に1-ブテン、i-ブテン及び1,3-ブタジエンが優勢を占める炭化水素の混合物から得られる。
【0003】
留分(C 画分)は、例えば、エチレン及びプロピレンの熱分解による調製で、通常は蒸気クラッカーで、特にナフサ又はガスクラッカーで得られる。さらに、1,3-ブタジエンを含むC留分は、n-ブタン及び/又はn-ブテンの接触脱水素で得られる。n-ブテンから1,3-ブタジエンへの酸化的脱水素のための供給ガス混合物として、n-ブテンを含む任意の混合物を使用することができる。n-ブテンを含み、n-ブテンから1,3-ブタジエンへの酸化的脱水素において供給ガスとして使用されるガス混合物は、n-ブタンを含むガス混合物の非酸化的脱水素によって調製することができる。1,3-ブタジエンを含有するC留分は、以下に粗C留分と称する。それらは、少量のC-及びC-炭化水素だけでなく、一般にアセチレン(メチルアセチレン、エチルアセチレン及びビニルアセチレン)も含む。
【0004】
粗1,3-ブタジエンをまず粗C留分から単離し、次いでその粗1,3-ブタジエンをさらに精製してそこから純粋な1,3-ブタジエンを単離する、特定の方法工程の一連によって、純粋な1,3-ブタジエンを粗C留分から単離できることは知られている。粗1,3-ブタジエンは、約90~99.5質量%の1,3-ブタジエン、特に98~99質量%の1,3-ブタジエンを含む混合物である。純粋な1,3-ブタジエンについての規格はしばしば、純粋な1,3-ブタジエンの質量に対し、99.6質量%の1,3-ブタジエン最小含有量、及び各場合とも20ppmのアセチレン及び1,2-ブタジエン最大許容含有量とされる。
【0005】
1,3-ブタジエンのC留分からの単離は、成分の相対的な揮発性の差が小さいので、複雑な分離作業である。この理由から、抽出蒸留、すなわち、分離されるべき混合物の沸点よりも高い沸点を有し、分離されるべき成分の相対的な揮発性の差を増大させる、選択性溶媒を添加した蒸留が行われる。このようにして得られた粗1,3-ブタジエンを、規格を満たすために、蒸留により精製し、純粋な1,3-ブタジエンを得る。
【0006】
選択性溶媒を使用するC留分の抽出蒸留のあらゆる方法において、分離されるC留分が、蒸気の形態で液状の選択性溶媒に対して向流で、適した熱力学的条件(一般に、通常20~80℃の範囲の低温で、多くは約3~約6バールの中程度の圧力)下で運ばれる結果、選択性溶媒は、その親和性が高いC留分の成分が負荷され、一方で選択性溶媒の親和性が低い成分は蒸気相に残り、頂部流として取り出される。その後続いて成分は、適した熱力学的条件下、すなわち、高温及び/又は比較的低い圧力で、負荷された溶媒流中の選択性溶媒から部分的に遊離される。
【0007】
例えば、WO2011/110562A1によると、粗C留分が選択的に水素化され、その後続いて高沸点の構成成分が選択的に水素化されたC留分から分離され、次いで残りのC留分が抽出蒸留によってさらに後処理されて粗1,3-ブタジエンが得られる。粗1,3-ブタジエンを純蒸留(pure distillation)によってさらに精製して、純粋な1,3-ブタジエンを得る。
【0008】
DE10105660は、粗1,3-ブタジエンをC留分から選択性溶媒を使用して抽出蒸留によって単離するための方法を開示している。この方法は、隔壁(T)が塔の長手方向に配置されて第一の小領域(A)、第二の小領域(B)及び下方結合塔領域(C)を形成し、抽出スクラビング塔(K)が先行する隔壁塔(TK)内で行われる。
【0009】
WO2013/083536によると、液状の粗C留分を蒸留塔の上方3分の1に供給して濃縮区域と回収区域を形成し、C-炭化水素を含む頂部流と、Cオリゴマー及びCポリマー及びC5+-炭化水素を含む底部流とを蒸留塔から取り出し、ガス状の精製された粗C留分を回収区域から側部流として取り出すことによって、ガス状の精製された粗C留分が抽出蒸留のための供給流として提供される。
【0010】
初期の欧州特許出願17153120.5号は、選択性溶媒を使用する抽出蒸留によって粗C留分から純粋な1,3-ブタジエンを単離する方法を開示している。この方法では、C-炭化水素を含む第一の低沸点留分が頂部流として取り出され、ガス状のC留分が側部流として取り出され、第一の高沸点留分が底部流として取り出される、予備蒸留塔を使用する。予備蒸留塔は、予備蒸留塔の長手方向に延びる隔壁によって、流入領域と側部抜出領域とに分割されている。ガス状のC留分を選択性溶媒と接触させて、ブタン及びブテンを含む頂部留分と、1,3-ブタジエン及び選択性溶媒を含む底部留分とを得る。粗1,3-ブタジエンは、底部留分から脱着する。粗1,3-ブタジエンから第二の高沸点留分が純蒸留塔で除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】WO2011/110562A1
【文献】DE10105660
【文献】WO2013/083536
【文献】欧州特許出願17153120.5号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
1,3-ブタジエンは重合性化合物であり、分子量と架橋度に応じて、ゴム様の又は脆い(ポップコーンポリマーとして知られる)望ましくないポリマー堆積物を、プラントの様々な領域で形成する可能性がある。ゴム様のコーティングは熱伝達を妨げ、導管の断面積の減少をもたらす。ポップコーンポリマーの形成は、プラントの内部に深刻な損傷を引き起こし、凝縮器と導管の破裂をもたらす可能性がある。堆積物は通常、多大な労力と損失をもたらすダウンタイムを費やして、塔及びパイプから除去しなければならない。
【0013】
予備蒸留塔、抽出及び脱ガス塔、及び純蒸留塔を含む1,3-ブタジエン抽出プラントの建設と運転には、高い特定資本及び運転コストがかかる。純蒸留塔では、1,3-ブタジエンの濃度が高いので、ポップコーンポリマーの形成による高い安全性リスクがある。従って、プラントとその運転を簡素化することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、各場合とも1,3-ブタジエンに基づき、所定の最大含有量の少なくとも1つの低沸点物、及び所定の最大含有量の1,2-ブタジエンを有する純粋な1,3-ブタジエンを生成する粗C留分から、純粋な1,3-ブタジエンを単離する方法であって、
a) 低沸点留分及び高沸点留分を蒸留によって粗C留分から分離して、少なくとも1つの低沸点物の含有量が、1,3-ブタジエンに基づいて、少なくとも1つの低沸点物の所定の最大含有量以下であり、且つ1,2-ブタジエンの含有量が、1,3-ブタジエンに基づいて、1,2-ブタジエンの所定の最大含有量以下である、精製されたC留分を得る工程;
b) 精製されたC留分を、選択性溶媒を使用して少なくとも1回の抽出蒸留に付し、少なくともブタン及びブテンを含む留分、及び純粋な1,3-ブタジエン留分を得る工程、
を含む方法によって、達成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の方法を実施するための好ましいプラントを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
低沸点物、すなわち、(工程a)の蒸留の運転圧力で)1,3-ブタジエンの沸点よりも低い沸点を有する、粗C留分に含まれる成分は、低沸点留分を介して除去される。低沸点物は、特に、プロパン又はプロピン(メチルアセチレン)などのC-炭化水素である。少なくとも1つの低沸点物は、好ましくはプロピンである。プロピンは重要なC成分である。それは、プロパンなど任意の他のC-炭化水素も、工程b)でラフィネート1と一緒に検出限界未満まで除去されるからである。従って、プロピンの含有量を、予備蒸留という早い段階で純粋な1,3-ブタジエンの所望の規格限界未満の値まで減少させることが望ましい。プロピンの所定の最大含有量は、1,3-ブタジエンに基づいて、一般に20ppm、好ましくは10ppmである(あらゆるppmの数値は、質量ppmである)。
【0017】
1,3-ブタジエン及び1,2-ブタジエンは選択性溶媒中で同様の溶解性を有するので、抽出蒸留では容易に分離できない。従って本発明によれば、C留分中の1,2-ブタジエンの含有量は、予備蒸留という早い段階で、純粋な1,3-ブタジエンのために、所望される1,2-ブタジエンの規格限界未満の値に低減される。1,2-ブタジエンは、1,3-ブタジエンと比較して沸点差が最も小さい、粗C留分の高沸点成分である。一般に、1,2-ブタジエン規格を満たすC留分は、同様に1,3-ブタジエンのためのC5+-炭化水素規格を満たす。
【0018】
1,2-ブタジエンの所定の最大含有量は、1,3-ブタジエンに基づいて一般に25ppm、特に15ppmである。
【0019】
純粋な1,3-ブタジエンは、1,3-ブタジエンに基づいて、所定の最大含有量のC5+-炭化水素をしばしば有し、精製されたC留分のC5+-炭化水素の含有量は、C5+-炭化水素の所定の最大含有量以下である。C5+-炭化水素の所定の最大含有量は、1,3-ブタジエンに基づいて一般に20ppm、好ましくは10ppmである。
【0020】
1,3-ブタジエンよりも沸点が高く、粗C留分に含まれる成分は、高沸点留分を介して除去される。主要成分としての1,2-ブタジエンは、規格限界未満の含有量まで除去される。粗C留分に含まれるC5+-炭化水素及びCオリゴマー及びCポリマーは、そのまま排出される。カルボニル、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン又はアクロレインなども、高沸点留分を介してそのまま排出される。C5+成分、特に非常に易重合性のC-ジエン、例えばイソプレン又はシス-2-ペンタジエンなどは、予備蒸留から抽出蒸留に運ばれないため、これらは選択性溶媒に蓄積しない。
【0021】
低沸点留分及び高沸点留分は、一連の蒸留塔によって分離することができ、低沸点留分は第一の塔から頂部で分離され、第一の塔からの底部生成物は第二の塔で蒸留され、精製されたC留分は頂部で取り出され、第二の塔からの底部生成物は、高沸点留分として取り出される。高沸点物を最初に分離し、その後続いて低沸点物を分離することも可能である。
【0022】
しかしながら、低沸点留分及び高沸点留分は、好ましくは隔壁塔又は熱的に結合された蒸留塔で分離される。隔壁塔及び熱的に結合された塔の構造と機能の説明は、例えば、Chem.-Ing.Techn.61(1989)No.2、第104~112頁、及びGas Separation and Purification、4(1990)No.2、第109~第114頁に見出され得る。隔壁塔又は熱的に結合された蒸留塔により、3つ以上の成分から構成される供給混合物を、低いエネルギー消費で実質的に純粋な個々の成分に分離できる。エネルギー収支の点では同等であるものの、隔壁塔には、ここで2つの別個の蒸留塔の代わりに単一の塔を使用するという、熱的に結合された塔と比べると追加の利点がある。
【0023】
隔壁塔は、予備蒸留塔の本質的に長手方向に延びる隔壁によって、中間区域で流入領域と側部抜出領域とに分割されている。ここで、液状の粗C留分は流入領域に導入され、ガス状のC留分は側部抜出領域から取り出される。C-炭化水素を含む低沸点留分は頂部流として取り出され、高沸点留分は底部流として取り出される。
【0024】
隔壁塔は、分離性のある内部(separation-active internals)、例えば分離トレイ、構造化されたパッキング又は不規則床などを含む。分離トレイ又は不規則床が好ましい。分離トレイの中で、バブルキャップトレイ及びバルブトレイの使用が好ましい。不規則床のための好ましいパッキング要素は、IMTP(登録商標)、Intalox(登録商標)Ultra、Raschig(登録商標)Super Ring、Cascade Mini Ring(登録商標)又はNutter(登録商標)Ringである。隔壁塔は、例えば、50~100℃の底部温度及び4~10バールの圧力で運転することができる。本明細書で示す圧力はすべて絶対圧力である。
【0025】
蒸留塔又は塔区域の分離力は、通常、そこに存在する理論段数として報告される。文献でしばしば「理論的分離段階」とも称される理論段は、単独の蒸留事象における液体と蒸気の間の熱力学的平衡に対応する、より揮発性の成分の濃縮をもたらす塔単位である。隔壁塔は、特に30~100の理論段、又は特に好ましくは50~80の理論段を有する。隔壁は一般に、4~60の、好ましくは6~50の理論段にわたって広がる。
【0026】
一実施形態では、精製されたC留分は、隔壁塔からの側部流としてガス状形態で取り出される。よって隔壁塔は、粗C留分の精製と気化を同時にもたらす。他の実施形態では、液状形態で取り出される精製されたC留分は、別個の気化器で気化される。
【0027】
精製されたC留分は、選択性溶媒を使用した少なくとも1回の抽出蒸留に付され、ブタン及びブテンを含む留分、及び純粋な1,3-ブタジエン留分が少なくとも得られる。ブタン及びブテンを含む留分は、通常、ラフィネート1と称される。一般に、少なくとも1つのさらなる留分、すなわちC-アセチレン、エチルアセチレン及びビニルアセチレンを含むアセチレン留分がさらに得られる。アセチレンが除去された選択性溶媒は、ここで脱ガスされた選択性溶媒とも称する。
【0028】
本発明の方法で得られるラフィネート1は、下流のプラントで様々な形で干渉する可能性があるC-炭化水素、C5+-炭化水素及びカルボニルをほとんど含まない。
【0029】
1,3-ブタジエンの高い反応性により、1,3-ブタジエンの反応性オリゴマー及びポリマー、及び1,3-ブタジエンの二量化生成物である4-ビニルシクロヘキセン(以下、ビニルシクロヘキセン)は、選択性溶媒の抽出中及び脱ガス中に必然的に形成される。1,3-ブタジエンオリゴマー及びビニルシクロヘキセンは、C-炭化水素と比較して沸点がより高いので、選択性溶媒中に同様に蓄積する。1,3-ブタジエンポリマー及びオリゴマー、及びビニルシクロヘキセンが予備蒸留塔で実質的に完全に除去される場合でも、それらの再形成を完全に抑制することはできない。プロセス中のビニルシクロヘキセンの蓄積を避けるために、ビニルシクロヘキセンも同様に選択性溶媒から脱着又は回収されることが好ましい。ビニルシクロヘキセンは、アセチレン留分を介して除去できることが好ましい。
【0030】
1,3-ブタジエンオリゴマー及びポリマーを除去する最も簡素な形は、導入された量に対応する量の1,3-ブタジエンオリゴマー及びポリマーを除去することによって、溶媒の量を排出することである。しかしながら、選択性溶媒の副流を、連続的又は周期的に、例えば蒸留による、1,3-ブタジエンオリゴマー及びポリマーが除去される後処理にかけることが好ましい。そのようなプロセスの後処理段階は、ブタジエン抽出プラントにいずれにせよ存在し、脱ガスした溶媒から様々な化学物質、例えば消泡剤又は抑制剤、ポリマー、オリゴマー及び選択性溶媒の分解生成物などを除去する。
【0031】
1,3-ブタジエン及び選択性溶媒を含む負荷溶媒留分が、抽出蒸留で得られる。粗1,3-ブタジエンが、負荷溶媒留分から脱着される。脱ガスした選択性溶媒は有限濃度のビニルシクロヘキセンを含むため、粗1,3-ブタジエンは、通常の規格限界を超える可能性のある濃度のビニルシクロヘキセンを有する可能性がある。従って、一実施形態では、粗1,3-ブタジエンを精留圏で、精留圏の頂部で得られる蒸気の凝縮によって得られる液状の1,3-ブタジエンを用いて洗浄することが提案される。精留圏の頂部で得られる蒸気は、凝縮器で凝縮される。凝縮物の一部は、ランバックとして還流仕切りを介して精留圏に戻すことができ、一方で他の部分は純粋な1,3-ブタジエンとして排出される。還流の結果、ビニルシクロヘキセン及び溶媒残留物が凝縮され、精留圏の頂部で得られる純粋な1,3-ブタジエンは、規格基準を満たす。
【0032】
精留圏は、分離性のある内部、好ましくは分離トレイ、より好ましくはふるいトレイ、バブルキャップトレイ及びバルブトレイを含む。精留圏は、少なくとも2、好ましくは少なくとも4、特に4~8の理論段を含む。一実施形態では、精留圏は6~10の実際のトレイを含む。
【0033】
一般に、得られる純粋な1,3-ブタジエンは、特に1,2-ブタジエン及び/又はC5+-炭化水素(C-オリゴマー及びC-ポリマーを含む)を除去するための、さらなる蒸留に付されない。
【0034】
-アセチレンをなお含む可能性のある、負荷溶媒留分から脱着した粗1,3-ブタジエンは通常、脱ガスした選択性溶媒を使用して抽出される。この目的のために、粗1,3-ブタジエンを、脱ガスした選択性溶媒と後スクラビング圏で接触させる。ここで、粗1,3-ブタジエンになお含まれるC-アセチレンが抽出される。後スクラビング圏から、C-アセチレンが除去された粗1,3-ブタジエンを、上記の精留圏に供給することができる。
【0035】
工程b)は、2つの抽出蒸留工程を含むことができる。最初の区域では、精製されたC留分及び選択性溶媒を第一の抽出蒸留塔に供給し、そこで精製されたC留分を分画して2つの留分を得る:選択性溶媒中での溶解性が低い成分であるブタン及びブテンを含むラフィネート1頂部生成物、及び選択性溶媒と一緒にブタジエン及びその中に溶解したビニルアセチレンなどのC-アセチレンを含む底部生成物(これはより溶解性のある成分を表す)である。選択性溶媒は、ブタジエン及びその中に溶解したC-アセチレンと一緒に第一の回収塔に供給され、そこでブタジエン及びC-アセチレンは選択性溶媒から回収され、頂部から第二の抽出蒸留塔に運ばれる。回収された選択性溶媒は、第一の抽出蒸留塔に送り返される。
【0036】
第二の抽出蒸留塔では、最初の区域からのブタジエン/アセチレン流を再度分画して、2つの留分を得る:1,3-ブタジエン頂部留分、及び選択性溶媒及び1,3-ブタジエンよりも選択性溶媒中により易溶解性のC-アセチレンを含む底部留分である。第二の抽出蒸留からの底部生成物は、C-アセチレンに富む生成物が選択性溶媒から回収される、第二の回収塔で処理される。同じ選択性溶媒又は異なる選択性溶媒を、第一の抽出蒸留塔及び第二の抽出蒸留塔で使用することができる。
【0037】
好ましい実施形態では、工程b)は、部分脱着を伴う単一段階の抽出を含む。ここで、選択性溶媒に吸収される炭化水素は、選択性溶媒との親和性の順序と逆の順序で脱着される。
【0038】
ガス状の精製されたC留分は、少なくとも1つの抽出塔中で選択性溶媒と接触させ、ブタン及びブテンを含む頂部留分、及び1,3-ブタジエン、C-アセチレン及び選択性溶媒を含む底部留分を得る。ガス状のC留分は通常、抽出塔(複数可)の少なくとも1つの区域において、ガス状のC留分を選択性溶媒に対して向流で運ぶことによって、選択性溶媒と接触させる。
【0039】
単独の抽出塔を使用する代わりに、資本コストの理由から、熱力学的に単独の塔と同じ理論段数を有するように2つの塔を結合すると有利な可能性がある。抽出塔及び脱ガス塔はそれぞれ、完全に又は部分的に、統合された抽出及び脱ガス塔に統合することもできる。抽出及び脱ガス塔の前には、さらなる抽出塔(単数又は複数)がある、及び/又は後にさらなる脱ガス塔(単数又は複数)があってよい。統合された抽出及び脱ガス塔の下流にさらなる脱ガス塔が設置される場合、統合された塔は本明細書において、抽出及び予備脱ガス塔と称する。
【0040】
プロセスのパラメータ、例えば圧力、温度及び溶媒比などは、抽出塔において、選択性溶媒が1,3-ブタジエンに対するよりも低い親和性を有するC留分の成分、特にブタン及びブテンが、主に気相に留まる一方で、1,3-ブタジエン及びアセチレン、及び選択性溶媒が1,3-ブタジエンに対するよりも高い親和性を有するさらなる炭化水素が、選択性溶媒によって実質的に完全に吸収されるように設定する。ブタン及びブテンを含む頂部留分、及び1,3-ブタジエン、C-アセチレン及び選択性溶媒を含む底部留分はこのように得られる。頂部留分は通常ラフィネート1と称される。抽出塔は、例えば、20~80℃の温度及び3~6バールの圧力で運転することができる。圧力は、有利には、冷却水などの容易に入手可能な冷却材を使用して、抽出塔の頂部凝縮器を運転できるように選択される。
【0041】
底部留分は、溶媒及び1,3-ブタジエンだけでなく、一般に、選択性溶媒が1,3-ブタジエンに対するよりも高い親和性を有するさらなる炭化水素、例えばC-アセチレンも含む。
【0042】
一実施形態では、抽出塔からの底部留分は抽出及び予備脱ガス塔に運ばれる。抽出及び予備脱ガス塔の上方部分は回収区域として作用し、ここで、ブタン及びブテン、及び溶媒中になお溶解している他の低沸点物も、動かして頂部で取り出すことができる。抽出及び予備脱ガス塔からの頂部生成物は、抽出塔に供給し戻すことができる。抽出及び予備脱ガス塔の底部で脱着された、少量のCアセチレン及びビニルシクロヘキサンを1,3-ブタジエンに加えて含む粗1,3-ブタジエンは、抽出及び予備脱ガス塔から側部取出流として取り出すことができる。様々なC成分、例えばビニルアセチレンなどをなお含む予備脱ガスされた溶媒は、抽出及び予備脱ガス塔の底部で得られる。抽出及び予備脱ガス塔は、例えば、20~80℃の底部温度及び3~6バールの圧力で運転することができる。
【0043】
抽出及び予備脱ガス塔の底部で得られる予備脱ガスされた溶媒は、好ましくは脱ガス塔に供給される。この脱ガス塔では、選択性溶媒が1,3-ブタジエンに対するよりも高い親和性を有するさらなる炭化水素、例えばC-アセチレンが、脱着される。ビニルシクロヘキセンは、好ましくはC-アセチレンと一緒に脱着される。脱ガス塔は、例えば120~200℃の温度及び1.2~6バールの圧力で運転することができる。
【0044】
-アセチレン及びビニルシクロヘキセンを含むガスは、好ましくは脱ガス塔から側部取出流として取り出される。例えば、脱ガス塔から側部取出流として取り出されたC-アセチレンを含むガスは、選択性溶媒を回復するためにアセチレン洗浄で水を用いて洗浄することができる。アセチレン洗浄は脱ガス塔の側部塔として構成することができる。洗浄水は、溶媒回路に、例えば、脱ガス塔及び/又は抽出及び予備脱ガス塔内へ、再利用することができる。C-アセチレンを含む洗浄ガスによって同伴される水蒸気は凝縮し、そのまま又は部分的にアセチレン洗浄に再循環させることができる。
【0045】
脱ガス塔でのみ脱着される1,3-ブタジエンのその部分を回復するために、脱ガス塔からの頂部生成物を圧縮して抽出及び予備脱ガス塔に再循環させることができる。脱ガス塔からの頂部生成物は、例えば直接冷却器によって、圧縮前に適切に冷却される。
【0046】
別法として、脱ガス塔を抽出及び予備脱ガス塔と同じ圧力レベルで運転して、脱ガス塔からの頂部生成物を、抽出及び予備脱ガス塔への圧力を上げることなく再循環できるようにする。重合性C-ジエン、例えばイソプレン又はシス-2-ペンタジエンなどは、本発明の方法において予備蒸留という早い段階で除去されるので、脱ガス塔での汚染のリスクはない。
【0047】
脱ガスされた選択性溶媒が脱ガス塔の底部で得られ、これをまず熱回復のために使用することができ、最終冷却後に、部分的に抽出塔に及び部分的に以下に記述する後スクラビング圏に再循環させる。
【0048】
様々なC成分及びビニルシクロヘキセンをなお含む可能性のある、抽出及び予備脱ガス塔からの底部留分から脱着した粗1,3-ブタジエンは、続いて、脱ガスした選択性溶媒を用いて後スクラビング圏で、及び精留圏の頂部で得られる蒸気の凝縮により得られる液状の1,3-ブタジエンを用いて精留圏で、処理することが好ましい。後スクラビング圏では、粗1,3-ブタジエンを脱ガスした選択性溶媒と接触させる。ここで、粗1,3-ブタジエンになお含まれるC-アセチレンが抽出される。後スクラビング圏から出る溶媒は、抽出及び予備脱ガス塔に運ぶことができる。
【0049】
精留圏で、アセチレンが除去された粗1,3-ブタジエンを、精留圏の頂部で得られる蒸気の凝縮により得られる液状の1,3-ブタジエンを用いて洗浄する。精留圏の頂部で得られる蒸気は、凝縮器で凝縮される。凝縮物の一部はランバックとして還流仕切りを介して精留圏に戻すことができ、一方で他の部分は純粋な1,3-ブタジエンとして排出される。還流の結果、ビニルシクロヘキセン及び溶媒残留物が凝縮され、精留圏の頂部で得られる純粋な1,3-ブタジエンは、規格基準を満たす。
【0050】
後スクラビング圏及び精留圏は、別個の塔によって形成することができる。適した一実施形態では、後スクラビング圏及び精留圏は、塔の本質的に長手方向に延びる隔壁によって分離された抽出及び予備脱ガス塔の上方区域に形成される。そして抽出及び予備脱ガス塔の上方領域には隔壁が塔の長手方向に配置されて、上方区域に後スクラビング圏及び精留圏、及び底部で隔壁に隣接し脱着の役割を果たす下方区域を形成する。隔壁は、後スクラビング圏及び精留圏の断面積が抽出圏の断面積よりも小さくなるように、中心から離れて配置されることが好ましい。
【0051】
精留圏の頂部で凝縮させる純粋な1,3-ブタジエンの水含有量は、1,3-ブタジエン中の水の物理的溶解性に対応する。ほとんどの場合、より低い水含有量が望ましい、又は所定される。これらの場合、純粋な1,3-ブタジエンを、さらなる工程において水の除去に付することができる。
【0052】
水を除去するために、純粋な1,3-ブタジエンは例えば、冷却することができる。これにより、1,3-ブタジエン中の水の物理的溶解性が低下し、完全な可溶性ではなくなった水が、分離可能な分離相を形成する。別法として、水を回収塔で除去することができる。回収塔では、回収塔の底部で純粋な1,3-ブタジエンを部分的に気化させることにより得られる回収蒸気によって、純粋な1,3-ブタジエンが回収される。回収塔の頂部で得られた蒸気は凝縮され、凝縮物は水相と有機相への相分離に付される。有機相は、ランバックとして回収塔に運ぶことができる。脱水された純粋な1,3-ブタジエンは、底部で取り出される。純粋な1,3-ブタジエンを脱水する他の方式、例えば逆浸透又は吸着も、同様に考えられる。
【0053】
精留圏の頂部で凝縮されなかった蒸気の一部は、出口流として取り出される。出口流は本質的に、微量の水蒸気、酸素、及び不活性ガスを含む1,3-ブタジエンからなる。出口流は、酸素と不活性ガスを排出する役目を果たす。このようにして、抽出及び予備脱ガス塔の酸素含有量を、従来の酸素検出器の検出限界未満にすることができる。低いppm範囲又はそれ未満の少量の分子状酸素の存在は、塔及びプラント構成要素におけるブタジエンポリマーの望ましくない形成の主な原因として認識されている。
【0054】
本発明の方法の好ましい実施形態では、精留圏からの出口流は、予備蒸留塔からの蒸気と一緒に予備蒸留塔の頂部凝縮器を通って運ばれる。精留圏からの出口流は、例えば予備蒸留塔の頂部で又は凝縮器への供給導管中に導入することができる。精留圏からの出口流に含まれる1,3-ブタジエンは、このように方法を行うと失われない。予備蒸留塔の頂部凝縮器は、C-炭化水素が頂部流として分離される一方、高級炭化水素が凝縮されて予備蒸留塔へのランバックとして戻されるように運転される。従って1,3-ブタジエンは、予備蒸留塔の頂部凝縮器中で物質収支の点で実質的に完全に凝縮し、予備蒸留塔に流入して、そこから側部流として取り出されるガス状のC留分の一部を形成する。
【0055】
さらなる好ましい実施形態では、抽出塔からのガス状の出口流も提供される。出口は、凝縮器に又はその下流に、例えば蒸留物捕集器、すなわち抽出塔の頂部凝縮器で凝縮されない残りのガス構成成分が排出されるところに配置することが好ましい。これらの凝縮されない構成成分は本質的に、ブタン、ブテン、窒素などの不活性ガス、及び付随する量の分子状酸素からなる。抽出塔からの出口流は、脱ガス塔で脱着されるC-アセチレンを含むガスを希釈するために、有利に使用することができる。
【0056】
粗C留分は、少なくとも1,3-ブタジエン及びブテンを含む。ほとんどの場合、粗C留分は、1,3-ブタジエン、ブタン、ブテン及びC-アセチレンを含む。多くの場合、粗C留分は、1,3-ブタジエン、1,2-ブタジエン、ブタン、ブテン及びC-アセチレン、C-炭化水素及びC5+-炭化水素を含む。本発明の目的において、C5+-炭化水素は、5個以上の炭素原子を有する炭化水素である。
【0057】
粗C留分は、例えばナフサクラッカーからの粗C留分である。
【0058】
ナフサクラッカーからの通常の粗C留分は、質量パーセントで次に示す成分を有する。
【0059】
プロパン 0~0.5
プロペン 0~0.5
プロパジエン 0~0.5
プロピン 0~0.5
n-ブタン 3~10
i-ブタン 1~3
1-ブテン 10~20
i-ブテン 10~30
トランス-2-ブテン 2~8
シス-2-ブテン 2~6
1,3-ブタジエン 15~85
1,2-ブタジエン 0.1~1
エチルアセチレン 0.1~2
ビニルアセチレン 0.1~3
-炭化水素 0~0.5
【0060】
ナフサクラッカーからの粗C留分はこのように、主にブタン、ブテン及び1,3-ブタジエンを含む。さらに、少量の他の炭化水素が含まれる。C-アセチレンはしばしば最大で5質量%まで、しばしば最大で2質量%までの割合で含まれる。
【0061】
可能な選択性溶媒は、一般に、分画されるべき混合物の沸点よりも高い沸点、及び孤立二重結合及び単結合よりも共役二重結合及び三重結合に対して高い親和性を有する物質又は混合物、好ましくは双極性溶媒、特に好ましくは双極性非プロトン性溶媒である。装置を保護する理由から、腐食性がほとんどない、又は腐食性ではない物質が好ましい。本発明の方法に適した選択性溶媒は、例えば、ニトリル、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、ケトン、例えばアセトン、フルフリルアルコール、N-アルキル置換低級脂肪酸アミド、例えばジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N-ホルミルモルホリン、N-アルキル置換環式酸アミド(ラクタム)、例えばN-アルキルピロリドン、特にN-メチルピロリドン(NMP)である。一般に、N-アルキル置換低級脂肪酸アミド又はN-アルキル置換環式酸アミドが使用される。ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、フルフリルアルコール、及び特にN-メチルピロリドンが特に有利である。
【0062】
しかしながら、これらの溶媒と互いとの、例えばN-メチルピロリドンとアセトニトリルとの混合物、及びこれらの溶媒と共溶媒、例えば水、及びアルコール、特に5以下の炭素原子を有するもの、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、又は脂環式アルコール、例えばシクロペンタノール、ジオール、例えばエチレングリコール及び/又はtert-ブチルエーテル、例えばメチルtert-ブチルエーテル、エチルtert-ブチルエーテル、プロピルtert-ブチルエーテル、n-ブチル又はイソブチルtert-ブチルエーテルとの混合物を使用することも可能である。
【0063】
本発明の方法の好ましい一実施形態では、選択性溶媒は、少なくとも80質量%のN-メチルピロリドンを含む。選択性溶媒は、好ましくは85~95質量%のNMP、及び5~15質量%の水を含む。N-メチルピロリドンは、好ましくは水溶液中で、特に7~9質量%の水、特に好ましくは8.3質量%の水を含む水溶液中で、特に有用である。
【0064】
さらに、選択性溶媒は、特に、補助剤、例えば抑制剤、又は消泡剤をさらに含むことができる。有機二次成分は、不純物として含まれてよい。
【0065】
本発明を添付の図面及び以下の実施例によって詳細に説明する。
【0066】
図1は、本発明の方法を実施するための好ましいプラントを概略的に示す。
【0067】
液状の粗C留分1を予備蒸留塔K1に導入する。予備蒸留塔K1は、予備蒸留塔K1の本質的に長手方向に延びる隔壁2によって、中間区域で流入領域3と側部抜出領域4とに分割されている。流入領域3及び側部抜出領域4は、各々隔壁2の上方端から下方端へ垂直方向に延びる。ガス状のC留分7は、側部抜出領域4から取り出される。予備蒸留塔K1からの蒸気は、頂部凝縮器5を通って運ばれる。その中で形成された凝縮物は、予備蒸留塔K1に戻される。蒸気の凝縮されない部分は頂部流6を形成し、これは予備蒸留塔K1から低沸点留分として取り出される。さらに、高沸点留分は、予備蒸留塔K1から底部流9として取り出される。予備蒸留塔K1の底部は気化器8によって加熱される。
【0068】
ガス状のC留分7は、抽出塔K2の下方区域に供給し、抽出塔K2の上方区域に供給される脱ガスされた選択性溶媒10と、この塔において接触させる。凝縮器11における抽出塔K2からの蒸気の凝縮は、ブタン及びブテンを含む頂部留分12(ラフィネートIとして知られる)及び蒸気の凝縮されない部分13をもたらす。流れ13は、アセチレン32のための希釈ガスとしての役目を果たす。同時に、流れ13は、抽出塔K2のガス空間における分子状酸素の含有量を制御するための、抽出塔K2の出口流である。さらに、1,3-ブタジエンだけでなく、ビニルアセチレン、エチルアセチレン及びビニルシクロヘキサン、及びブタン及びブテンも溶解している選択性溶媒から本質的になる、底部留分14が得られる。
【0069】
底部留分14は、抽出及び予備脱ガス塔K3の上方区域15に導入される。後スクラビング圏16A及び精留圏16Bは、塔の本質的に長手方向に延びる隔壁によって、抽出及び予備脱ガス塔K3の上方区域から分離されている。粗1,3-ブタジエンの大部分は、抽出及び予備脱ガス塔K3の下方区域18で脱着される。後スクラビング圏16Aで、粗1,3ブタジエンを、C-アセチレンを分離するために、側部入口23を介して供給される脱ガスされた選択性溶媒と接触させる。精留圏16Bは、後スクラビング圏16Aの上に配置される。精留圏16Bは、多数の理論段を含む。凝縮器20における蒸気19の凝縮により、液状の純粋な1,3-ブタジエン21、及び精留蒸気の凝縮されない部分38が得られる。1,3-ブタジエンの凝縮物の一部21は、ランバックとして精留圏に再循環される。この場合、1,3-ブタジエンは逆流する凝縮物と接触し、ビニルシクロヘキセンなどの高沸点物及び選択性溶媒の残留物を分離する。1,3-ブタジエン凝縮物の他方の部分22は、純粋な1,3-ブタジエンとして任意の水除去K5に供給される。抽出及び予備脱ガス塔K3の底部は、気化器25によって加熱される。精留蒸気の凝縮されない部分38は、予備蒸留塔K1の頂部凝縮器5に戻し供給される。
【0070】
ブタン及びブテンを含み、抽出及び予備脱ガス塔K3の頂部で区域15から排出されるガス17は、抽出塔K2の下方区域に再循環される。熱力学的には、抽出及び予備脱ガス塔K3の区域15及び抽出塔K2は一緒に単独の抽出塔に対応し、これは塔の高さの理由から、垂直に2つに分割されている。
【0071】
抽出及び予備脱ガス塔K3の底部からの予備脱ガスされた溶媒は、流れ26として脱ガス塔K4にさらに運ばれる。さらなる粗1,3-ブタジエンが脱ガス塔K4において脱着され、これが抽出及び予備脱ガス塔K3の下方区域に供給される。示した実施形態では、脱ガス塔K4で脱着された粗1,3-ブタジエンは、導管27、任意に配置される直接冷却器K6、及び圧縮器31及び導管24を介して、抽出及び予備脱ガス塔K3の下方区域に運ばれる。冷却媒体は、導管29及び30を介して導入及び排出される。選択性溶媒の成分、例えば水及びNMPから本質的になる、プラントからの凝縮物は、冷却媒体としての役目を果たす。脱ガス塔K4の底部は、気化器37によって加熱される。



【0072】
-アセチレン及びビニルシクロヘキセン、及び1,3-ブタジエン及び選択性溶媒の成分、例えば水及びNMPを含むガス28は、脱ガス塔K4から側部取出流として取り出される。アセチレン洗浄K7において、C-アセチレン及びビニルシクロヘキセンを含むガス28は、導管36を介して導入される水で洗浄される。アセチレン洗浄K7の頂部で得られた流れ32は、抽出塔K2からの出口流13で希釈される。凝縮性の構成成分(主に水及び少量のビニルシクロヘキセン)は凝縮器33で凝縮されて、ランバック35としてアセチレン洗浄K7に戻すことができる。アセチレン洗浄K7からの排出物は、相分離に付して廃棄することができる廃水として、主に処理される。凝縮されない構成成分は、流れ34(希釈されたアセチレン流)として排出される。
【0073】
任意の水除去K5は、例えば、回収塔として構成され、ここで水相を1,3-ブタジエン21から分離する。
【実施例
【0074】
実施例1
本発明の方法を、図1に示すプラントをベースとしてシミュレーションした。シミュレーション計算のためにBASF社内ソフトウェアのChemasimを使用した。同等の結果は、市販のソフトウェア、例えばAspen Plus(製造者:AspenTech、Burlington/Massachusetts、米国)又はPRO II(Fullerton、米国)を使用して得られた。パラメータ一式は、包括的な平衡測定、実験室塔に関する研究、及び様々なプラントの運転データをベースとした。純粋な1,3-ブタジエンの目標規格は、少なくとも99.5%の1,3-ブタジエン、20ppm以下の1,2-ブタジエン、20ppm以下のアセチレンであった。
【0075】
1300ppmのC-炭化水素、2.0%のn-ブタン、0.6%のイソブタン、19.0%のn-ブテン、28.3%のイソブテン、5.5%のトランス-2-ブテン、4.4%のシス-2-ブテン、39.0%の1,3-ブタジエン、0.2%の1,2-ブタジエン、1200ppmの1-ブチン、4500ppmのビニルアセチレン、及び各場合とも3000ppmのC-炭化水素を含む粗C留分を想定して計算を行った。
【0076】
質量流量及び関連する流れの組成を表1にまとめる。表中の流れの呼称は、図1の呼称に関連している。
【0077】
【表1】
【0078】
約7kg/hの1,3-ブタジエンの損失が、単独の高沸点出口流9を介して生じる。分離するのが最も困難な高沸点物としてのC成分の含有量及び1,2-ブタジエン含有量の両方が、予備蒸留塔において約94%低下する。
【0079】
比較例
先行技術による方法をシミュレートした。粗C留分の組成及び純粋な1,3-ブタジエンの目標規格は、実施例1のものに対応する。ベースとして使用したプラントは、WO2013/083536A1による上流の蒸留塔を有しており、隔壁2を備えた予備蒸留塔K1の代わりに、液状の粗C留分を供給した。さらに、比較例のプラントは、純蒸留塔を有した。
【0080】
表2に、質量流量及び関連する流れの組成を要約する。
【0081】
【表2】
【0082】
1 液状の粗C留分(WO2013/083536A1の図1の参照符号1)
2 ガス状の精製された粗C留分(WO2013/083536A1の図1の参照符号4)
3 上流の蒸留塔から得られた底部流(WO2013/083536A1の図1の参照符号3)
4 純蒸留で得られた底部流
【0083】
この方法では、廃棄される2つのC5+-含有高沸点流が得られた:上流の蒸留塔からの底部流及び純蒸留から得られる底部流である。約43kg/hの1,3-ブタジエンの損失があった。比較例2の上流の蒸留塔では、ほんのわずかな割合のC5+成分のみが分離された(55%)。はるかに高い割合のC5+成分が、ガス状の精製された粗C留分を介して抽出塔に運ばれた。さらに、より低い割合の1,2-ブタジエン(75%)が、比較例2の上流の蒸留塔で分離された。結果として、20ppmの1,2-ブタジエンという規格を得るために、純粋な塔における1,2-ブタジエンのさらなる除去が、比較例では必要であった。このさらなる後続の分離は、本発明の方法を使用する場合、もはや必要ではない。
図1