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特許7076473感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、化合物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220520BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20220520BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20220520BHJP
   C07C 309/39 20060101ALI20220520BHJP
   C07C 311/14 20060101ALI20220520BHJP
   C07C 311/51 20060101ALI20220520BHJP
   C07C 311/48 20060101ALI20220520BHJP
   C07C 233/92 20060101ALI20220520BHJP
   C07C 309/17 20060101ALI20220520BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
G03F7/038 601
C07C309/39 CSP
C07C311/14
C07C311/51
C07C311/48
C07C233/92
C07C309/17
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019562830
(86)(22)【出願日】2018-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2018041981
(87)【国際公開番号】W WO2019130866
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2017250563
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】小島 雅史
(72)【発明者】
【氏名】上村 稔
(72)【発明者】
【氏名】川島 敬史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 研由
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0015826(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/039
G03F 7/038
C07C 309/39
C07C 311/14
C07C 311/51
C07C 311/48
C07C 233/92
C07C 309/17
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の作用によって分解し極性が増大する基を有する繰り返し単位を有する樹脂及び一般式(I)で表される化合物Qを含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

一般式(I)中、
~R10は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
ただし、R、R、R~R、R、及び、R10のうちのいずれか1つは、一般式(II)で表される基である。
*-A-X (II)
一般式(II)中、
Aは、単結合又は2価の連結基を表す。
は、-SO 、-(SO)-N-(SO)R11、-(SO)-N-COR12、-CO-N-(SO)R13、又は、-CO-N-COR14を表す。
11~R14は、それぞれ独立に、有機基を表す。
【請求項2】
Aが単結合を表す、請求項1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
、R、R、及び、R10のうちのいずれか1つが、前記一般式(II)で表される基である、請求項1又は2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
更に、前記化合物Q以外の光酸発生剤を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された、レジスト膜。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光する工程と、
前記露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程と、を有する、パターン形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、及び、化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IC(Integrated Circuit、集積回路)及びLSI(Large Scale Integrated circuit、大規模集積回路)等の半導体デバイスの製造プロセスにおいては、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。
例えば、特許文献1には、以下の式で表される化合物を含む、レジスト組成物が開示されている。
【0003】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-189977号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1で開示された化合物を具体的に検討したところ、特許文献1で開示された化合物を使用した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、保存性安定性が必ずしも十分ではない場合があることを知見した。また、得られるパターンのLWR(line width roughness)性能にも改善の余地があることを知見した。
【0006】
本発明は、保存安定性に優れ、LWR性能に優れるパターンを得ることができる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する、レジスト膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、及び、化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、特定の構造の化合物Qを用いることで上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
〔1〕
酸の作用によって分解し極性が増大する基を有する繰り返し単位を有する樹脂及び一般式(I)で表される化合物Qを含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔2〕
一般式(I)中、Aが単結合を表す、〔1〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔3〕
一般式(I)中、R、R、R、及び、R10のうちのいずれか1つが、一般式(II)で表される基である、〔1〕又は〔2〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔4〕
更に、上記化合物Q以外の光酸発生剤を含む、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔5〕
〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された、レジスト膜。
〔6〕
〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程と、上記レジスト膜を露光する工程と、上記露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程と、を有する、パターン形成方法。
〔7〕
〔6〕に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
〔8〕
一般式(I-2)で表される、化合物。
〔9〕
一般式(I-2)中、Aが単結合を表す、〔8〕に記載の化合物。
〔10〕
一般式(I-2)中、R、R、R、及び、R10のうちのいずれか1つが、一般式(II)で表される基である、〔8〕又は〔9〕に記載の化合物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保存安定性に優れ、LWR性能に優れるパターンを得ることができる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供できる。
また、本発明は、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する、レジスト膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、及び、化合物を提供することを課題とする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されない。
本明細書中における基(原子団)の表記について、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を有する基をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光:Extreme Ultraviolet)、X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。本明細書中における「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。
本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及びEUV光等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による描画も含む。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0011】
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表す。
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(分子量分布ともいう)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー社製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶媒:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0012】
本明細書においてpKa(酸解離定数pKa)とは、水溶液中での酸解離定数pKaのことを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に定義される。酸解離定数pKaの値が低いほど酸強度が大きいことを示す。水溶液中での酸解離定数pKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定することにより実測できる。あるいは、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示す。
【0013】
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0014】
本明細書において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。
【0015】
〔感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物〕
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、単に「組成物」又は「本発明の組成物」ともいう)について説明する。
本発明の組成物は、いわゆるレジスト組成物であり、ポジ型のレジスト組成物であっても、ネガ型のレジスト組成物であってもよい。また、アルカリ現像用のレジスト組成物であっても、有機溶剤現像用のレジスト組成物であってもよい。
本発明の組成物は、典型的には、化学増幅型のレジスト組成物である。
【0016】
本発明の組成物の特徴点としては、酸の作用によって分解し極性が増大する基を有する繰り返し単位を有する樹脂と、後述する一般式(I)で表される化合物Qとを含む点が挙げられる。
このような構成で本発明の課題が解決されるメカニズムは必ずしも明確ではないが、本発明者らは以下のように推測している。
化合物Qが有するアニオン性基は酸性度が高く求核性が低いため、特許文献1に記載の化合物と比べて、組成物中の他の成分(上記樹脂など)の分解を生じさせにくく、組成物の保存安定性が改善されていると考えられている。
また、化合物Qは、ベタイン化合物であり、電荷が分子内で中和されるためにイオン性が低下している。その結果、樹脂との相溶性が向上し、膜中で均一に分散できるようになってLWR性能が改善されていると考えられている。
【0017】
以下、本発明の組成物に含まれる成分について詳述する。
【0018】
<酸の作用により分解し極性が増大する基を有する繰り返し単位を有する樹脂>
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、酸の作用により分解し極性が増大する基(以下、「酸分解性基」とも言う)を有する繰り返し単位を有する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」又は「樹脂A」ともいう)を含む。
この場合、本発明のパターン形成方法において、典型的には、現像液としてアルカリ現像液を採用した場合には、ポジ型パターンが好適に形成され、現像液として有機系現像液を採用した場合には、ネガ型パターンが好適に形成される。
【0019】
(酸分解性基を有する繰り返し単位)
樹脂Aは、酸分解性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
【0020】
酸分解性基は、極性基が酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)で保護された構造を有することが好ましい。
極性基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基(2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)、並びに、アルコール性水酸基等が挙げられる。
【0021】
なお、アルコール性水酸基とは、炭化水素基に結合した水酸基であって、芳香環上に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)以外の水酸基をいい、水酸基としてα位がフッ素原子などの電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基など)は除く。アルコール性水酸基としては、pKa(酸解離定数)が12~20の水酸基であることが好ましい。
【0022】
極性基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、又は、スルホン酸基が好ましい。
【0023】
酸分解性基として好ましい基は、これらの基の水素原子を酸の作用により脱離する基(脱離基)で置換した基である。
酸の作用により脱離する基(脱離基)としては、例えば、-C(R36)(R37)(R38)、-C(R36)(R37)(OR39)、及び、-C(R01)(R02)(OR39)等が挙げられる。
式中、R36~R39は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、アルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01及びR02は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、アルケニル基を表す。
【0024】
36~R39、R01及びR02のアルキル基は、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、へキシル基、及び、オクチル基等が挙げられる。
36~R39、R01、及び、R02のシクロアルキル基は、単環でも、多環でもよい。単環としては、炭素数3~8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、及び、シクロオクチル基等が挙げられる。多環としては、炭素数6~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、及び、アンドロスタニル基等が挙げられる。なお、シクロアルキル基中の1つ以上の炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
36~R39、R01、及び、R02のアリール基は、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及び、アントリル基等が挙げられる。
36~R39、R01、及び、R02のアラルキル基は、炭素数7~12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、及び、ナフチルメチル基等が挙げられる。
36~R39、R01、及び、R02のアルケニル基は、炭素数2~8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、及び、シクロへキセニル基等が挙げられる。
36とR37とが互いに結合して形成される環としては、シクロアルキル基(単環又は多環)であることが好ましい。単環のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、又は、シクロヘキシル基等が好ましく、多環のシクロアルキル基としては、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、又は、アダマンチル基等が好ましい。
【0025】
酸分解性基は、第3級のアルキルエステル基、アセタール基、クミルエステル基、エノールエステル基、又は、アセタールエステル基を有することが好ましく、アセタール基又は第3級アルキルエステル基を有することがより好ましい。
【0026】
樹脂Aは、酸分解性基を有する繰り返し単位として、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0027】
【化2】
【0028】
一般式(AI)中、Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、-COO-Rt-、及び-O-Rt-等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基を表す。
Tは、単結合又は-COO-Rt-が好ましい。Rtは、炭素数1~5の鎖状アルキレン基が好ましく、-CH-、-(CH-、又は-(CH-がより好ましい。
Tは、単結合であることがより好ましい。
【0029】
一般式(AI)中、Xaは、水素原子、ハロゲン原子、又は、1価の有機基を表す。
Xaは、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。
Xaのアルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基、及びハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)が挙げられる。
Xaのアルキル基は、炭素数1~4が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基、及び、トリフルオロメチル基等が挙げられる。Xaのアルキル基は、メチル基であることが好ましい。
【0030】
一般式(AI)中、Rx~Rxは、それぞれ独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx~Rxのいずれか2つが結合して環構造を形成してもよく、形成しなくてもよい。
Rx、Rx、及び、Rxのアルキル基としては、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基などが好ましい。アルキル基の炭素数としては、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。Rx、Rx、及び、Rxのアルキル基は、炭素間結合の一部が二重結合であってもよい。
Rx、Rx、及び、Rxのシクロアルキル基は、単環でも多環でもよい。単環のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基などが挙げられる。
【0031】
Rx、Rx、及び、Rxの2つが結合して形成する環は単環でも多環でもよい。単環の例としては、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、シクロヘプチル環、及び、シクロオクタン環などの単環のシクロアルカン環が挙げられる。多環の例としては、又はノルボルナン環、テトラシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、及び、アダマンタン環などの多環のシクロアルキル環が挙げられる。中でも、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、又は、アダマンタン環が好ましい。
また、Rx、Rx、及び、Rxの2つが結合して形成する環としては、下記に示す環も好ましい。
【0032】
【化3】
【0033】
以下に一般式(AI)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの具体例を挙げる。下記の具体例は、一般式(AI)におけるXaがメチル基である場合に相当するが、Xaは、水素原子、ハロゲン原子、又は、1価の有機基に任意に置換できる。
【0034】
【化4】
【0035】
樹脂Aは、酸分解性基を有する繰り返し単位として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0336>~<0369>に記載の繰り返し単位を有することも好ましい。
【0036】
また、樹脂Aは、酸分解性基を有する繰り返し単位として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0363>~<0364>に記載された酸の作用により分解してアルコール性水酸基を生じる基を含む繰り返し単位を有していてもよい。
【0037】
樹脂Aは、酸分解性基を有する繰り返し単位を、1種単独で有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
【0038】
樹脂Aに含まれる酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量(酸分解性基を有する繰り返し単位が複数存在する場合はその合計)は、樹脂Aの全繰り返し単位に対して、10~90モル%が好ましく、20~80モル%がより好ましく、30~70モル%が更に好ましい。
【0039】
(ラクトン構造、スルトン構造、及び、カーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位)
樹脂Aは、ラクトン構造、スルトン構造、及び、カーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
【0040】
ラクトン構造又はスルトン構造としては、ラクトン環又はスルトン環を有していればよく、5~7員環のラクトン環を有するラクトン構造又は5~7員環のスルトン環を有するスルトン構造が好ましい。
ビシクロ構造又はスピロ構造を形成する形で5~7員環ラクトン環に他の環が縮環しているラクトン構造も好ましい。ビシクロ構造又はスピロ構造を形成する形で5~7員環スルトン環に他の環が縮環しているスルトン構造も好ましい。
【0041】
中でも、樹脂Aは、下記一般式(LC1-1)~(LC1-22)のいずれかで表されるラクトン構造、又は、下記一般式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造を有する繰り返し単位を有することが好ましい。また、ラクトン構造又はスルトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。
中でも、一般式(LC1-1)、一般式(LC1-4)、一般式(LC1-5)、一般式(LC1-8)、一般式(LC1-16)、一般式(LC1-21)、若しくは、一般式(LC1-22)で表されるラクトン構造、又は、一般式(SL1-1)で表されるスルトン構造が好ましい。
【0042】
【化5】
【0043】
ラクトン構造又はスルトン構造は、置換基(Rb)を有していても、有していなくてもよい。置換基(Rb)としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数2~8のアルコキシカルボニル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、又は、酸分解性基等が好ましく、炭素数1~4のアルキル基、シアノ基、又は、酸分解性基がより好ましい。nは、0~4の整数を表す。nが2以上の場合、複数存在する置換基(Rb)は、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在する置換基(Rb)同士が結合して環を形成してもよい。
【0044】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(III)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0045】
【化6】
【0046】
上記一般式(III)中、
Aは、エステル結合(-COO-で表される基)又はアミド結合(-CONH-で表される基)を表す。
【0047】
nは、-R-Z-で表される構造の繰り返し数であり、0~5の整数を表し、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。nが0である場合、(-R-Z-)nは、単結合となる。
【0048】
は、アルキレン基、シクロアルキレン基、又は、その組み合わせを表す。Rが複数存在する場合、複数存在するRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
のアルキレン基又はシクロアルキレン基は置換基を有してもよい。
【0049】
Zは、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、又は、ウレア結合を表す。Zが複数存在する場合、複数存在するZは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
中でもZは、エーテル結合又はエステル結合が好ましく、エステル結合がより好ましい。
【0050】
は、ラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基を表す。
中でも、一般式(LC1-1)~(LC1-22)及び、一般式(SL1-1)~(SL1-3)で表される構造のいずれかにおいて、ラクトン構造又はスルトン構造を構成する炭素原子1つから、水素原子を1つ除いてなる基であることが好ましい。なお、上記水素原子を1つ除かれる炭素原子は、置換基(Rb)を構成する炭素原子ではないことが好ましい。
【0051】
は、水素原子、ハロゲン原子、又は、1価の有機基(好ましくはメチル基)を表す。
【0052】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(III-2)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0053】
【化7】
【0054】
一般式(III-2)中、RIIIは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、及び、1価の有機基(好ましくはメチル基)が挙げられる。
RIIIは、水素原子が好ましい。
cycは、ラクトン構造又はスルトン構造を有する基を表す。
具体的には、中でも、一般式(LC1-1)~(LC1-22)及び、一般式(SL1-1)~(SL1-3)で表される構造のいずれかにおいて、ラクトン構造又はスルトン構造を構成する炭素原子1つから、水素原子を2つ除いてなる基であることが好ましい。なお、上記水素原子を2つ除かれる炭素原子は、置換基(Rb)を構成する炭素原子ではないことが好ましい。
【0055】
樹脂Aは、カーボネート構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。カーボネート構造としては、環状炭酸エステル構造が好ましい。
環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(A-1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0056】
【化8】
【0057】
一般式(A-1)中、R は、水素原子、ハロゲン原子、又は、1価の有機基(好ましくはメチル基)を表す。
nは0以上の整数を表す。
は、置換基を表す。nが2以上の場合、複数存在するR は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Aは、単結合又は2価の連結基を表す。
Zは、式中の-O-CO-O-で表される基と共に単環構造又は多環構造を形成する原子団を表す。
【0058】
樹脂Aは、ラクトン構造、スルトン構造、及び、カーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0370>~<0414>に記載の繰り返し単位を有することも好ましい。
【0059】
樹脂Aは、ラクトン構造、スルトン構造、及び、カーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を、1種単独で有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
【0060】
以下にラクトン構造、スルトン構造、及び、カーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位に相当するモノマーを例示する。
下記の例示において、ビニル基に結合するメチル基は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基に置き換えられてもよい。
【0061】
【化9】
【0062】
【化10】
【0063】
樹脂Aがラクトン構造、スルトン構造、及び、カーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を有する場合、樹脂Aに含まれるラクトン構造、スルトン構造、及び、カーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位の含有量(ラクトン構造、スルトン構造、及び、カーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位が複数存在する場合はその合計)は、樹脂A中の全繰り返し単位に対して、5~70モル%が好ましく、10~65モル%がより好ましく、20~60モル%が更に好ましい。
【0064】
(極性基を有する繰り返し単位)
樹脂Aは、上述した基とは別に、極性基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、及び、フッ素化アルコール基等が挙げられる。
極性基を有する繰り返し単位としては、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位が好ましい。また、極性基を有する繰り返し単位は、酸分解性基を有さないことが好ましい。極性基で置換された脂環炭化水素構造における、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基又はノルボルナン基が好ましい。
【0065】
以下に極性基を有する繰り返し単位に相当するモノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に限定されない。
【0066】
【化11】
【0067】
この他にも、極性基を有する繰り返し単位の具体例としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0415>~<0433>に開示された繰り返し単位が挙げられる。
樹脂Aは、極性基を有する繰り返し単位を、1種単独で有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
樹脂Aが極性基を有する繰り返し単位を有する場合、極性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂A中の全繰り返し単位に対して、5~40モル%が好ましく、5~30モル%がより好ましく、10~25モル%が更に好ましい。
【0068】
(酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位)
樹脂Aは、上述した基とは別に、更に、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位を有していてもよい。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位は、脂環炭化水素構造を有することが好ましい。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位としては、例えば、米国特許出願公開2016/0026083A1号明細書の段落<0236>~<0237>に記載された繰り返し単位が挙げられる。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位に相当するモノマーの好ましい例を以下に示す。
【0069】
【化12】
【0070】
この他にも、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位の具体例としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0433>に開示された繰り返し単位が挙げられる。
樹脂Aは、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位を、1種単独で有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
樹脂Aが酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位を有する場合、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位の含有量は、樹脂A中の全繰り返し単位に対して、5~40モル%が好ましく、5~30モル%がより好ましく、5~25モル%が更に好ましい。
【0071】
樹脂Aは、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性、標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、又は、更にレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有していてもよい。
このような繰り返し構造単位としては、所定の単量体に相当する繰り返し構造単位が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
所定の単量体としては、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、及び、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等が挙げられる。
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物を用いてもよい。
樹脂Aにおいて、各繰り返し構造単位の含有モル比は、種々の性能を調節するために適宜設定される。
【0073】
本発明の組成物がArF露光用であるとき、ArF光の透過性の観点から、樹脂Aは実質的には芳香族基を有さないことが好ましい。より具体的には、樹脂A中の全繰り返し単位に対して、芳香族基を有する繰り返し単位が5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、理想的には0モル%、すなわち芳香族基を有する繰り返し単位を有さないことが更に好ましい。また、樹脂Aは単環又は多環の脂環炭化水素構造を有することが好ましい。
【0074】
樹脂Aは、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されていてもよい。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位であってもよく、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位であってもよく、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位との組み合わせであってもよい。中でも、アクリレート系繰り返し単位の含有量は、樹脂Aの全繰り返し単位に対して50モル%以下が好ましい。
【0075】
他にも、樹脂Aとしては、公知の樹脂を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0055>~<0191>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0035>~<0085>、及び、米国特許出願公開2016/0147150A1号明細書の段落<0045>~<0090>に開示された公知の樹脂を樹脂Aとして好適に使用できる。
【0076】
本発明の組成物がKrF露光用、EB露光用、又は、EUV露光用であるとき、樹脂Aは芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位を有することが好ましく、樹脂Aがフェノール性水酸基を含む繰り返し単位を有することがより好ましい。フェノール性水酸基を含む繰り返し単位としては、ヒドロキシスチレン系繰り返し単位、及び、ヒドロキシスチレン(メタ)アクリレート系繰り返し単位が挙げられる。
本発明の組成物がKrF露光用、EB露光用、又は、EUV露光用であるとき、樹脂Aは、フェノール性水酸基の水素原子が酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)で保護された構造を有することが好ましい。
この場合、樹脂Aに含まれる芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂A中の全繰り返し単位に対して、30~100モル%が好ましく、40~100モル%がより好ましく、50~100モル%が更に好ましい。
【0077】
樹脂Aの重量平均分子量は、1,000~200,000が好ましく、2,000~20,000がより好ましく、3,000~15,000が更に好ましく、3,000~12,000が特に好ましい。分散度(Mw/Mn)は、通常1.0~3.0であり、1.0~2.6が好ましく、1.0~2.0がより好ましく、1.1~2.0が更に好ましい。
【0078】
樹脂Aは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
樹脂Aの組成物中の含有量は、組成物中の全固形分に対し、一般的に20質量%以上の場合が多く、40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
なお、固形分とは、組成物中の溶剤を除いた成分を意図する。
【0079】
<化合物Q>
本発明の組成物は、化合物Qを含む。
化合物Qは、一般式(I)で表される化合物である。
【0080】
【化13】
【0081】
一般式(I)中、
~R10は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
ただし、R~R10のうちのいずれか1つは、一般式(II)で表される基である。
言い換えると、R~R10のうち、一般式(II)で表される基が1つ存在し、残りの9つの基は、一般式(II)で表される基以外の置換基又は水素原子である。
【0082】
*-A-X (II)
一般式(II)中、Aは、単結合又は2価の連結基を表す。
2価の連結基としては特に制限されないが、例えば、-O-、-S-、-NRF-(RFは、水素原子、又はアルキル基を表す。)、2価の炭化水素基(例えば、アルキレン基、アルケニレン基(例:-CH=CH-)、アルキニレン基(例:-C≡C-)、及びアリーレン基(フェニレン基が好ましい))、又は、これらを組み合わせた基が挙げられる。
上記2価の連結基としては、置換基を有していてもよいアルキレン基(好ましくは炭素数1~3)、エステル基、又は、これらの組み合わせからなる基が好ましい。
上記アルキレン基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子が更に好ましい。
中でも、Aは単結合であることが好ましい。
【0083】
は、-SO 、-(SO)-N-(SO)R11、-(SO)-N-COR12、-CO-N-(SO)R13、又は、-CO-N-COR14を表す。
11~R14は、それぞれ独立に、有機基を表す。
上記有機基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいシクロアルキル基が好ましい。
上記アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。炭素数は1~6が好ましい。
中でも、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、又は、n-ブチル基が好ましい。
上記シクロアルキル基としては、単環でも多環でもよい。炭素数は、5~10が好ましい。
上記アルキル基及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。例えば、上記アルキル基及びシクロアルキル基が有する水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)で置換されているものも好ましい。言い換えると、上記アルキル基が、フルオロアルキル基(パーフルオロアルキル基を含む。好ましくは炭素数1~6)であるものも好ましい。
ただし、R又はRが一般式(II)で表される基であり、かつ、-(SO)-N-(SO)R11の場合、R11はトリフルオロメチル基以外の有機基を表すことが好ましい。
【0084】
組成物の保存安定性がより優れ、LWR性能がより優れるパターンを得られる点から、R~R10のうち、R、R、R、及び、R10のうちのいずれか1つが、一般式(II)で表される基であることが好ましい。
【0085】
~R10で表される置換基のうち、一般式(II)で表される基である1個以外は、水素原子又は一般式(II)で表される基以外の置換基である。
一般式(II)で表される基以外の置換基としては、アニオン性基以外の基が好ましい。
~R10で表される置換基のうち、一般式(II)で表される基以外の置換基としては、例えば、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)で置換されていてもよいアルキル基が挙げられる。アルキル基としては直鎖状でも分岐鎖状でもよく、環状構造を有していてもよい。また、アルキル基を構成する炭素原子が、エーテル基、カルボニル基、及び、エステル基からなる群から選択される1以上の基で置換されていてもよい(例えば、アルキル基中の根元の炭素原子がエーテル基で置換されて、アルキル基がアルコキシ基の形態になっていてもよい)。中でも、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、又は、n-ブチル基が好ましい。これらの基が有する水素原子の、一部又は全部がハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)で置換されているものも好ましい。言い換えると、上記アルキル基が、フルオロアルキル基(パーフルオロアルキル基を含む。好ましくは炭素数1~6)であるものも好ましい。
一般式(II)で表される基以外のR~R10のうち、0~3個が置換基を表すことが好ましく、0~1個が置換基を表すことがより好ましい。
【0086】
化合物Qは、一般式(I-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0087】
【化14】
【0088】
一般式(I-2)中、
~R10は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
ただし、R~R10のうちのいずれか1つは、一般式(II)で表される基である。
*-A-X (II)
一般式(II)中、
Aは、単結合又は2価の連結基を表す。
は、-SO 、-(SO)-N-(SO)R11、-(SO)-N-COR12、-CO-N-(SO)R13、又は、-CO-N-COR14を表す。
11~R14は、それぞれ独立に、有機基を表す。
【0089】
一般式(I-2)中の各記号で表される基は、一般式(I)中における相当する基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
ただし、一般式(I-2)において、R又はRが一般式(II)で表される基であり、かつ、-(SO)-N-(SO)R11の場合、R11はトリフルオロメチル基以外の有機基を表す。
【0090】
化合物Qは分子内に正電荷と負電荷の両方を持つ分子で、いわゆる双性イオンである。
化合物Qは、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物であることが好ましい。
また、化合物Qは、未露光状態においては塩基性を示して、いわゆる酸拡散制御剤として作用することが好ましい。酸拡散制御剤は、露光によって光酸発生剤等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における樹脂Aの酸分解性基の反応進行を抑制する。
【0091】
化合物Qは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本発明の組成物の全固形分中の化合物Qの含有量は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、2.5質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、15.0質量%以下が好ましく、7.0質量%以下がより好ましく、5.0質量%以下が更に好ましい。
【0092】
<光酸発生剤>
本発明の組成物は、化合物Q以外の化合物である光酸発生剤を含むことが好ましい。
本明細書において、光酸発生剤は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物であって、化合物Q以外の化合物である。
光酸発生剤としては、活性光線又は放射線の照射により有機酸を発生する化合物が好ましい。例えば、スルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物、ジアゾニウム塩化合物、ホスホニウム塩化合物、イミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート化合物、ジアゾジスルホン化合物、ジスルホン化合物、及び、o-ニトロベンジルスルホネート化合物が挙げられる。
光酸発生剤は、双性イオンであってもよいが、化合物Qにはなり得ない。
【0093】
光酸発生剤としては、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物を、単独又はそれらの混合物として適宜選択して使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0125>~<0319>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0086>~<0094>、及び、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0323>~<0402>に開示された公知の化合物を光酸発生剤として好適に使用できる。
【0094】
光酸発生剤としては、例えば、下記一般式(ZI)、一般式(ZII)、又は、一般式(ZIII)で表される化合物が好ましい。
【0095】
【化15】
【0096】
上記一般式(ZI)において、
201、R202、及び、R203は、それぞれ独立に、有機基を表す。
201、R202、及び、R203としての有機基の炭素数は、一般的に1~30であり、1~20が好ましい。また、R201~R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)、及び、-CH-CH-O-CH-CH-が挙げられる。
は、アニオンを表す。
【0097】
一般式(ZI)におけるカチオンの好適な態様としては、後述する化合物(ZI-1)、化合物(ZI-2)、化合物(ZI-3)、及び、化合物(ZI-4)における対応する基が挙げられる。
なお、光酸発生剤は、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201~R203の少なくとも1つと、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201~R203の少なくとも1つとが、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0098】
まず、化合物(ZI-1)について説明する。
化合物(ZI-1)は、上記一般式(ZI)のR201~R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウム化合物、すなわち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201~R203の全てがアリール基でもよいし、R201~R203の一部がアリール基であり、残りがアルキル基又はシクロアルキル基であってもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、及び、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物が挙げられる。
【0099】
アリールスルホニウム化合物に含まれるアリール基としては、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子、又は、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、及び、ベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1~15の直鎖状アルキル基、炭素数3~15の分岐鎖状アルキル基、又は、炭素数3~15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、及び、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0100】
201~R203のアリール基、アルキル基及びシクロアルキル基は、それぞれ独立に、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~14)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、又は、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。
【0101】
次に、化合物(ZI-2)について説明する。
化合物(ZI-2)は、式(ZI)におけるR201~R203が、それぞれ独立に、芳香環を有さない有機基を表す化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含む芳香族環も包含する。
201~R203としての芳香環を有さない有機基は、一般的に炭素数1~30であり、炭素数1~20が好ましい。
201~R203は、それぞれ独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又は、ビニル基であり、より好ましくは直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、又は、アルコキシカルボニルメチル基、更に好ましくは直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基である。
【0102】
201~R203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及び、ペンチル基)、並びに、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及び、ノルボルニル基)が挙げられる。
201~R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1~5)、水酸基、シアノ基、又は、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0103】
次に、化合物(ZI-3)について説明する。
化合物(ZI-3)は、下記一般式(ZI-3)で表され、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0104】
【化16】
【0105】
一般式(ZI-3)中、
1c~R5cは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基、又は、アリールチオ基を表す。
6c及びR7cは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又は、アリール基を表す。
及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基、又は、ビニル基を表す。
【0106】
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとR、及び、RとRは、それぞれ結合して環構造を形成してもよく、この環構造は、それぞれ独立に酸素原子、硫黄原子、ケトン基、エステル結合、又は、アミド結合を含んでいてもよい。
上記環構造としては、芳香族又は非芳香族の炭化水素環、芳香族又は非芳香族の複素環、及び、これらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環が挙げられる。環構造としては、3~10員環が挙げられ、4~8員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
【0107】
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及び、RとRが結合して形成する基としては、ブチレン基及びペンチレン基等が挙げられる。
5cとR6c、及び、R5cとRが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、メチレン基及びエチレン基等が挙げられる。
Zcは、アニオンを表す。
【0108】
次に、化合物(ZI-4)について説明する。
化合物(ZI-4)は、下記一般式(ZI-4)で表される。
【0109】
【化17】
【0110】
一般式(ZI-4)中、
lは0~2の整数を表す。
rは0~8の整数を表す。
13は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又は、シクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
14は、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又は、シクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。R14は、複数存在する場合はそれぞれ独立して、水酸基等の上記基を表す。
15は、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、又は、ナフチル基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成するとき、環骨格内に、酸素原子、又は、窒素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。一態様において、2つのR15がアルキレン基であり、互いに結合して環構造を形成することが好ましい。
は、アニオンを表す。
【0111】
一般式(ZI-4)において、R13、R14、及び、R15のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状である。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-ブチル基、又は、t-ブチル基等がより好ましい。
【0112】
次に、一般式(ZII)、及び、一般式(ZIII)について説明する。
一般式(ZII)、及び、一般式(ZIII)中、R204~R207は、それぞれ独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204~R207のアリール基としてはフェニル基、又は、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R204~R207のアリール基は、酸素原子、窒素原子、又は、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、及び、ベンゾチオフェン等が挙げられる。
204~R207のアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及び、ペンチル基)、又は、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及び、ノルボルニル基)が好ましい。
【0113】
204~R207のアリール基、アルキル基、及び、シクロアルキル基は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。R204~R207のアリール基、アルキル基、及び、シクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~15)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、及び、フェニルチオ基等が挙げられる。
は、アニオンを表す。
【0114】
一般式(ZI)におけるZ、一般式(ZII)におけるZ、一般式(ZI-3)におけるZc、及び、一般式(ZI-4)におけるZとしては、下記一般式(3)で表されるアニオンが好ましい。
【0115】
【化18】
【0116】
一般式(3)中、
oは、1~3の整数を表す。pは、0~10の整数を表す。qは、0~10の整数を表す。
【0117】
Xfは、フッ素原子、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロアルキル基が好ましい。
Xfは、フッ素原子又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子又はCFであることがより好ましい。中でも、双方のXfがフッ素原子であることが更に好ましい。
【0118】
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R及びRが複数存在する場合、複数存在するR及び複数存在するRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
及びRで表されるアルキル基は、置換基を有していてもよく、炭素数1~4が好ましい。R及びRは、好ましくは水素原子である。
少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基の具体例及び好適な態様は一般式(3)中のXfの具体例及び好適な態様と同じである。
【0119】
Lは、2価の連結基を表す。Lが複数存在する場合、複数存在するLは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
2価の連結基としては、例えば、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)、及び、これらの複数を組み合わせた2価の連結基等が挙げられる。これらの中でも、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-SO-、-COO-アルキレン基-、-OCO-アルキレン基-、-CONH-アルキレン基-、又は、-NHCO-アルキレン基-が好ましく、-COO-、-OCO-、-CONH-、-SO-、-COO-アルキレン基-、又は、-OCO-アルキレン基-がより好ましい。
【0120】
Wは、環状構造を含む有機基を表す。これらの中でも、環状の有機基であることが好ましい。
環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び、複素環基が挙げられる。
脂環基は、単環であってもよく、多環であってもよい。単環の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及び、シクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、炭素数7以上の嵩高い構造を有する脂環基が好ましく、例としては、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等が挙げられる。
【0121】
アリール基は、単環であってもよく、多環であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、及び、アントリル基が挙げられる。
複素環基は、単環であってもよく、多環であってもよい。多環の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよいし、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、及び、ピリジン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、スルトン環、及び、デカヒドロイソキノリン環が挙げられる。ラクトン環及びスルトン環の例としては、前述の樹脂において例示したラクトン構造及びスルトン構造が挙げられる。複素環基における複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、又は、デカヒドロイソキノリン環が好ましい。
【0122】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよく、炭素数1~12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環(スピロ環等も含む)のいずれであってもよく、炭素数3~20が好ましい)、アリール基(炭素数6~14が好ましい)、水酸基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及び、スルホン酸エステル基が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であってもよい。
【0123】
一般式(3)で表されるアニオンとしては、SO -CF-CH-OCO-(L)q’-W、SO -CF-CHF-CH-OCO-(L)q’-W、SO -CF-COO-(L)q’-W、SO -CF-CF-CH-CH-(L)q-W、又は、SO -CF-CH(CF)-OCO-(L)q’-Wが好ましい。ここで、L、q、及び、Wは、一般式(3)と同様である。q’は、0~10の整数を表す。
【0124】
一態様において、一般式(ZI)におけるZ、一般式(ZII)におけるZ、一般式(ZI-3)におけるZc、及び、一般式(ZI-4)におけるZとしては、下記の一般式(4)で表されるアニオンも好ましい。
【0125】
【化19】
【0126】
一般式(4)中、
B1及びXB2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、フッ素原子を有さない1価の有機基を表す。XB1及びXB2は、水素原子であることが好ましい。
B3及びXB4は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基を表す。XB3及びXB4の少なくとも一方がフッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基であることが好ましく、XB3及びXB4の両方がフッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基であることがより好ましい。XB3及びXB4の両方が、フッ素で置換されたアルキル基であることが更に好ましい。
L、q、及び、Wは、一般式(3)と同様である。
【0127】
一般式(ZI)におけるZ、一般式(ZII)におけるZ、一般式(ZI-3)におけるZc、及び、一般式(ZI-4)におけるZとしては、下記一般式(5)で表されるアニオンも好ましい。
【0128】
【化20】
【0129】
一般式(5)において、Xaは、それぞれ独立に、フッ素原子、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。Xbは、それぞれ独立に、水素原子、又は、フッ素原子を有さない有機基を表す。o、p、q、R、R、L、及び、Wの定義及び好ましい態様は、一般式(3)と同様である。
【0130】
一般式(ZI)におけるZ、一般式(ZII)におけるZ、一般式(ZI-3)におけるZc、及び、一般式(ZI-4)におけるZは、ベンゼンスルホン酸アニオンであってもよく、分岐鎖状アルキル基又はシクロアルキル基によって置換されたベンゼンスルホン酸アニオンであることが好ましい。
【0131】
一般式(ZI)におけるZ、一般式(ZII)におけるZ、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZとしては、下記の一般式(SA1)で表される芳香族スルホン酸アニオンも好ましい。
【0132】
【化21】
【0133】
式(SA1)中、
Arは、アリール基を表し、スルホン酸アニオン及び-(D-B)基以外の置換基を更に有していてもよい。更に有してもよい置換基としては、フッ素原子及び水酸基等が挙げられる。
【0134】
nは、0以上の整数を表す。nとしては、1~4が好ましく、2~3がより好ましく、3が更に好ましい。
【0135】
Dは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、スルホキシド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、エステル基、及び、これらの2種以上の組み合わせからなる基等が挙げられる。
【0136】
Bは、炭化水素基を表す。
【0137】
好ましくは、Dは単結合であり、Bは脂肪族炭化水素構造である。Bは、イソプロピル基又はシクロヘキシル基がより好ましい。
【0138】
一般式(ZI)におけるZ、一般式(ZII)におけるZ、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZとしては、トリスルホンカルボアニオン又はジスルホンアミドアニオンであってもよい。
トリスルホンカルボアニオンは、例えば、C(SO-Rで表されるアニオンである。
ここで、Rは置換基を有していてもよいアルキル基を表し、フルオロアルキル基が好ましく、パーフルオロアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基が更に好ましい。
ジスルホンアミドアニオンは、例えば、N(SO-Rで表されるアニオンである。
ここで、Rは置換基を有していてもよいアルキル基を表し、フルオロアルキル基が好ましく、パーフルオロアルキル基がより好ましい。2個のRは互いに結合して環を形成してもよい。2個のRが互いに結合して形成される基は、置換基を有していてもよいアルキレン基が好ましく、フルオロアルキレン基が好ましく、パーフルオロアルキレン基が更に好ましい。上記アルキレン基(好ましくはフルオロアルキレン基、より好ましくはパーフルオロアルキレン基)の炭素数は2~4が好ましい。
【0139】
一般式(ZI)におけるスルホニウムカチオン、及び、一般式(ZII)におけるヨードニウムカチオンの好ましい例を以下に示す。
【0140】
【化22】
【0141】
一般式(ZI)、一般式(ZII)におけるアニオンZ、一般式(ZI-3)におけるZc、及び、一般式(ZI-4)におけるZの好ましい例を以下に示す。
【0142】
【化23】
【0143】
上記のカチオン及びアニオンを任意に組みわせて光酸発生剤として使用できる。
【0144】
光酸発生剤は、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
光酸発生剤は、低分子化合物の形態であることが好ましい。
光酸発生剤が、低分子化合物の形態である場合、分子量は3,000以下が好ましく、2,000以下がより好ましく、1,000以下が更に好ましい。下限は特に限定されないが、通常50以上である。
光酸発生剤が、重合体の一部に組み込まれた形態である場合、前述した樹脂Aの一部に組み込まれてもよく、樹脂Aとは異なる樹脂に組み込まれてもよい。
光酸発生剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
光酸発生剤の組成物中の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、0.1~35質量%が好ましく、0.5~25質量%がより好ましく、3~20質量%が更に好ましい。
【0145】
<疎水性樹脂>
本発明の組成物は、疎水性樹脂を含んでいてもよい。なお、疎水性樹脂は、樹脂Aとは異なる樹脂であることが好ましい。
本発明の組成物が、疎水性樹脂を含むことにより、感活性光線性又は感放射線性膜の表面における静的、及び/又は、動的な接触角を制御できる。これにより、現像特性の改善、アウトガスの抑制、液浸露光における液浸液追随性の向上、及び、液浸欠陥の低減等が可能となる。
疎水性樹脂は、レジスト膜の表面に偏在するように設計されることが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性性物質及び非極性物質を均一に混合することに寄与しなくてもよい。
【0146】
疎水性樹脂は、膜表層への偏在化の観点から、“フッ素原子”、“ケイ素原子”、及び“樹脂の側鎖部分に含まれたCH部分構造”からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を有する樹脂であることが好ましい。
疎水性樹脂が、フッ素原子及び/又はケイ素原子を含む場合、疎水性樹脂における上記フッ素原子及び/又はケイ素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
【0147】
疎水性樹脂がフッ素原子を含む場合、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。
【0148】
疎水性樹脂は、下記(x)~(z)の群から選ばれる基を少なくとも1つを有することが好ましい。
(x)酸基
(y)アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(以下、極性変換基ともいう)
(z)酸の作用により分解する基
【0149】
酸基(x)としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
酸基としては、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホンイミド基、又は、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基が好ましい。
【0150】
アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(y)としては、例えば、ラクトン基、カルボキシエステル基(-COO-)、酸無水物基(-CO-O-CO-)、酸イミド基(-NHCONH-)、カルボキシチオエステル基(-COS-)、炭酸エステル基(-O-CO-O-)、硫酸エステル基(-OSOO-)、及び、スルホン酸エステル基(-SOO-)等が挙げられ、ラクトン基又はカルボキシエステル基(-COO-)が好ましい。
これらの基を含んだ繰り返し単位としては、例えば、樹脂の主鎖にこれらの基が直接結合している繰り返し単位であり、例えば、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルによる繰り返し単位等が挙げられる。この繰り返し単位は、これらの基が連結基を介して樹脂の主鎖に結合していてもよい。又は、この繰り返し単位は、これらの基を有する重合開始剤又は連鎖移動剤を重合時に用いて、樹脂の末端に導入されていてもよい。
ラクトン基を有する繰り返し単位としては、例えば、先に樹脂Aの項で説明したラクトン構造を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。
【0151】
アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(y)を有する繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対して、1~100モル%が好ましく、3~98モル%がより好ましく、5~95モル%が更に好ましい。
【0152】
疎水性樹脂における、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位は、樹脂Aで挙げた酸分解性基を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位は、フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有していてもよい。酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対して、1~80モル%が好ましく、10~80モル%がより好ましく、20~60モル%が更に好ましい。
疎水性樹脂は、更に、上述した繰り返し単位とは別の繰り返し単位を有していてもよい。
【0153】
フッ素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対して、10~100モル%が好ましく、30~100モル%がより好ましい。また、ケイ素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対して、10~100モル%が好ましく、20~100モル%がより好ましい。
【0154】
一方、特に疎水性樹脂が側鎖部分にCH部分構造を含む場合においては、疎水性樹脂が、フッ素原子及びケイ素原子を実質的に含まない形態も好ましい。また、疎水性樹脂は、炭素原子、酸素原子、水素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる原子のみによって構成された繰り返し単位のみで実質的に構成されることが好ましい。
【0155】
疎水性樹脂の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、1,000~100,000が好ましく、1,000~50,000がより好ましい。
【0156】
疎水性樹脂に含まれる残存モノマー及び/又はオリゴマー成分の合計含有量は、0.01~5質量%が好ましく、0.01~3質量%がより好ましい。また、分散度(Mw/Mn)は、1.0~5.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましい。
【0157】
疎水性樹脂としては、公知の樹脂を、単独又はそれらの混合物として適宜に選択して使用できる。例えば、米国特許出願公開2015/0168830A1号明細書の段落<0451>~<0704>、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0340>~<0356>に開示された公知の樹脂を疎水性樹脂として好適に使用できる。また、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0177>~<0258>に開示された繰り返し単位も、疎水性樹脂を構成する繰り返し単位として好ましい。
【0158】
疎水性樹脂を構成する繰り返し単位に相当するモノマーの好ましい例を以下に示す。
【0159】
【化24】
【0160】
【化25】
【0161】
疎水性樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
表面エネルギーが異なる2種以上の疎水性樹脂を混合して使用することも、液浸露光における液浸液追随性と現像特性の両立の観点から好ましい。
疎水性樹脂の組成物中の含有量は、本発明の組成物中の全固形分に対し、0.01~10質量%が好ましく、0.03~8質量%がより好ましい。
【0162】
<界面活性剤>
本発明の組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤を含む場合、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(具体的には、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、又は、フッ素原子とケイ素原子との両方を有する界面活性剤)が好ましい。
【0163】
本発明の組成物が界面活性剤を含むことにより、250nm以下(特に220nm以下)の露光光源を使用した場合に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないパターンを得ることができる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤として、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落<0276>に記載の界面活性剤が挙げられる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落<0280>に記載の、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤も使用できる。
【0164】
これらの界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を使用してもよい。
本発明の組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.0001~2質量%が好ましく、0.0005~1質量%がより好ましい。
一方、界面活性剤の含有量が、組成物の全固形分に対して10質量ppm以上とすることにより、疎水性樹脂の表面偏在性が上がる。それにより、感活性光線性又は感放射線性膜の表面をより疎水的にすることができ、液浸露光時の水追随性が向上する。
【0165】
<溶剤>
本発明の組成物は、溶剤を含んでいてもよい。
本発明の組成物においては、公知のレジスト溶剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0665>~<0670>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0210>~<0235>、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0424>~<0426>、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0357>~<0366>に開示された公知の溶剤を好適に使用できる。
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及び、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
【0166】
有機溶剤として、構造中に水酸基を有する溶剤と、水酸基を有さない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を有する溶剤、及び水酸基を有さない溶剤としては、前述の例示化合物を適宜選択できるが、水酸基を含む溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル又は乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、又は、乳酸エチルがより好ましい。また、水酸基を有さない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を有していてもよいモノケトン化合物、環状ラクトン、又は、酢酸アルキル等が好ましく、これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルエトキシプロピオネート、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、又は、酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、エチルエトキシプロピオネート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、又は、2-ヘプタノンが更に好ましい。水酸基を有さない溶剤としては、プロピレンカーボネートも好ましい。
水酸基を有する溶剤と水酸基を有さない溶剤との混合比(質量比)は、1/99~99/1であり、10/90~90/10が好ましく、20/80~60/40がより好ましい。水酸基を有さない溶剤を50質量%以上含む混合溶剤が、塗布均一性の点で好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むことが好ましい。この場合、溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶剤でもよいし、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む2種類以上の混合溶剤でもよい。
【0167】
本発明の組成物の固形分濃度は、1.0~10質量%が好ましく、2.0~5.7質量%がより好ましく、2.0~5.3質量%が更に好ましい。つまり組成物が溶剤を含む場合における、組成物中の溶剤の含有量は、上記固形分濃度の好適な範囲を満たせるように調整することが好ましい。なお、固形分濃度とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他のレジスト成分の質量の質量百分率である。
組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性又は製膜性を向上させることで、本発明の組成物からなるレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)の膜厚を調整できる。
【0168】
<その他の添加剤>
本発明の組成物は、更に、上述した以外の樹脂、架橋剤、酸増殖剤、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止剤、又は、溶解促進剤等を含んでいてもよい。
【0169】
<調製方法>
本発明の組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤(好ましくは上記混合溶剤)に溶解し、これをフィルター濾過した後、所定の支持体(基板)上に塗布して用いることが好ましい。
フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.03μm以下が更に好ましい。このフィルターは、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、又は、ナイロン製のフィルターが好ましい。フィルター濾過においては、例えば日本国特許出願公開第2002-62667号明細書(特開2002-62667)に開示されるように、循環的な濾過を行ってもよく、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ってもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理等を行ってもよい。
【0170】
<用途>
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により反応して性質が変化する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、本発明の組成物は、IC(Integrated Circuit)等の半導体製造工程、液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造、インプリント用モールド構造体の作製、その他のフォトファブリケーション工程、又は、平版印刷版、若しくは酸硬化性組成物の製造に使用される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。本発明において形成されるパターンは、エッチング工程、イオンインプランテーション工程、バンプ電極形成工程、再配線形成工程、及び、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等において使用できる。
【0171】
〔パターン形成方法、レジスト膜〕
本発明は上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法にも関する。以下、本発明のパターン形成方法について説明する。また、パターン形成方法の説明と併せて、本発明のレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)についても説明する。
【0172】
本発明のパターン形成方法は、
(i)上述した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)を支持体上に形成する工程(レジスト膜形成工程(成膜工程))、
(ii)上記レジスト膜を露光する(活性光線又は放射線を照射する)工程(露光工程)、及び、
(iii)上記露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程(現像工程)、を有する。
【0173】
本発明のパターン形成方法は、上記(i)~(iii)の工程を含んでいれば特に限定されず、更に下記の工程を有していてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程における露光方法が、液浸露光であってもよい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の前に、(iv)前加熱(PB:PreBake)工程を含むことが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の後、かつ、(iii)現像工程の前に、(v)露光後加熱(PEB:Post Exposure Bake)工程を含むことが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(iv)前加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(v)露光後加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
【0174】
本発明のパターン形成方法において、上述した(i)レジスト膜形成工程(成膜工程)、(ii)露光工程、及び(iii)現像工程は、一般的に知られている方法により行うことができる。
【0175】
レジスト膜の膜厚は、解像力向上の観点から、90nm以下が好ましく、85nm以下がより好ましい。
また、必要に応じて、レジスト膜と支持体との間にレジスト下層膜(例えば、SOG(Spin On Glass)、SOC(Spin On Carbon)、及び、反射防止膜)を形成してもよい。レジスト下層膜を構成する材料としては、公知の有機系又は無機系の材料を適宜使用できる。
レジスト膜の上層に、保護膜(トップコート)を形成してもよい。保護膜としては、公知の材料を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開第2007/0178407号明細書、米国特許出願公開第2008/0085466号明細書、米国特許出願公開第2007/0275326号明細書、米国特許出願公開第2016/0299432号明細書、米国特許出願公開第2013/0244438号明細書、国際特許出願公開第2016/157988A号明細書に開示された保護膜形成用組成物を好適に使用できる。保護膜形成用組成物としては、上述した酸拡散制御剤を含むものが好ましい。
上述した疎水性樹脂を含むレジスト膜の上層に保護膜を形成してもよい。
【0176】
支持体は、特に限定されるものではなく、IC等の半導体の製造工程、又は液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造工程のほか、その他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程等で一般的に用いられる基板を使用できる。支持体の具体例としては、シリコン、SiO、及びSiN等の無機基板等が挙げられる。
【0177】
加熱温度は、(iv)前加熱工程及び(v)露光後加熱工程のいずれにおいても、70~150℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。
加熱時間は、(iv)前加熱工程及び(v)露光後加熱工程のいずれにおいても、30~300秒が好ましく、30~180秒がより好ましく、30~90秒が更に好ましい。
加熱は、露光装置及び現像装置に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
【0178】
露光工程に用いられる光源波長に制限はないが、例えば、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光(EUV)、X線、及び電子線等が挙げられる。これらの中でも遠紫外光が好ましく、その波長は250nm以下が好ましく、220nm以下がより好ましく、1~200nmが更に好ましい。具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(157nm)、X線、EUV(13nm)、又は、電子線等が好ましく、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV、又は、電子線がより好ましい。
【0179】
(iii)現像工程においては、アルカリ現像液であっても、有機溶剤を含む現像液(以下、有機系現像液ともいう)であってもよい。
【0180】
アルカリ現像液としては、通常、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される4級アンモニウム塩が用いられるが、これ以外にも無機アルカリ、1~3級アミン、アルコールアミン、及び、環状アミン等のアルカリ水溶液も使用可能である。
更に、上記アルカリ現像液は、アルコール類、及び/又は、界面活性剤を適当量含んでいてもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1~20質量%である。アルカリ現像液のpHは、通常10~15である。
アルカリ現像液を用いて現像を行う時間は、通常10~300秒である。
アルカリ現像液のアルカリ濃度、pH、及び現像時間は、形成するパターンに応じて、適宜調整できる。
【0181】
有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び、炭化水素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含む現像液であることが好ましい。
【0182】
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、2-ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、及び、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0183】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、ブタン酸ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、酢酸イソアミル、イソ酪酸イソブチル、及び、プロピオン酸ブチル等が挙げられる。
【0184】
アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び、炭化水素系溶剤としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0715>~<0718>に開示された溶剤を使用できる。
【0185】
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤又は水と混合してもよい。現像液全体としての含水率は、50質量%未満が好ましく、20質量%未満がより好ましく、10質量%未満が更に好ましく、実質的に水分を含まないことが特に好ましい。
有機系現像液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、90~100質量%が更に好ましく、95~100質量%が特に好ましい。
【0186】
現像液は、必要に応じて公知の界面活性剤を適当量含んでいてもよい。
【0187】
界面活性剤の含有量は現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%であり、0.005~2質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0188】
有機系現像液は、酸拡散制御剤を含んでいてもよい。
【0189】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、及び、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0190】
アルカリ水溶液を用いて現像を行う工程(アルカリ現像工程)、及び、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程(有機溶剤現像工程)を組み合わせてもよい。これにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、より微細なパターンを形成できる。
【0191】
(iii)現像工程の後に、リンス液を用いて洗浄する工程(リンス工程)を含むことが好ましい。
【0192】
アルカリ現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、例えば純水を使用できる。純水は、界面活性剤を適当量含んでいてもよい。この場合、現像工程又はリンス工程の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を追加してもよい。更に、リンス処理又は超臨界流体による処理の後、パターン中に残存する水分を除去するために加熱処理を行ってもよい。
【0193】
有機溶剤を含む現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、パターンを溶解しないものであれば特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用できる。リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及び、エーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含むリンス液を使用することが好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及び、エーテル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含む現像液において説明したものと同様のものが挙げられる。
この場合のリンス工程に用いるリンス液としては、1価アルコールを含むリンス液がより好ましい。
【0194】
リンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐鎖状、又は、環状の1価アルコールが挙げられる。具体的には、1-ブタノール、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、tert―ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-ヘキサノール、シクロペンタノール、2-ヘプタノール、2-オクタノール、3-ヘキサノール、3-ヘプタノール、3-オクタノール、4-オクタノール、及び、メチルイソブチルカルビノールが挙げられる。
1価アルコールは炭素数5以上であるものも好ましく、このような例としては、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、及び、メチルイソブチルカルビノール等が挙げられる。
【0195】
各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合して使用してもよい。
有機溶剤を含む現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。含水率を10質量%以下とすることで、良好な現像特性が得られる。
有機溶剤を含む現像液を用いた現像工程の後のリンス液は、界面活性剤を適当量含んでいてもよい。
【0196】
リンス工程においては、現像を行った基板を、リンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、又は、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。中でも、回転塗布法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2,000~4,000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去する方法が好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。この加熱工程によりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程において、加熱温度は通常40~160℃であり、70~95℃が好ましく、加熱時間は通常10秒~3分であり、30秒~90秒が好ましい。
【0197】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及び、本発明のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、又は、トップコート形成用組成物等)は、金属成分、異性体、及び、残存モノマー等の不純物を含まないことが好ましい。上記の各種材料に含まれるこれらの不純物の含有量としては、1質量ppm以下が好ましく、100質量ppt以下がより好ましく、10質量ppt以下が更に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
【0198】
上記各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過が挙げられる。フィルター孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルターの材質としては、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、又は、ナイロン製のフィルターが好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であってもよい。フィルターとしては、日本国特許出願公開第2016-201426号明細書(特開2016-201426)に開示されるような溶出物が低減されたものが好ましい。
フィルター濾過のほか、吸着材を用いて不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を使用でき、例えば、シリカゲル若しくはゼオライト等の無機系吸着材、又は、活性炭等の有機系吸着材を使用できる。金属吸着材としては、例えば、日本国特許出願公開第2016-206500号明細書(特開2016-206500)に開示されるものが挙げられる。
また、上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、又は、装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法が挙げられる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
【0199】
上記の各種材料は、不純物の混入を防止するために、米国特許出願公開第2015/0227049号明細書、及び、日本国特許出願公開第2015-123351号明細書(特開2015-123351)等に記載された容器に保存されることが好ましい。
【0200】
本発明のパターン形成方法により形成されるパターンに、パターンの表面荒れを改善する方法を適用してもよい。パターンの表面荒れを改善する方法としては、例えば、米国特許出願公開第2015/0104957号明細書に開示された、水素を含むガスのプラズマによってパターンを処理する方法が挙げられる。その他にも、日本国特許出願公開第2004-235468号明細書(特開2004-235468)、米国特許出願公開第2010/0020297号明細書、及び、Proc. of SPIE Vol.8328 83280N-1“EUV Resist Curing Technique for LWR Reduction and Etch Selectivity Enhancement”に記載されるような公知の方法を適用してもよい。
また、上記の方法によって形成されたパターンは、例えば日本国特許出願公開第1991-270227号明細書(特開平3-270227)、及び、米国特許出願公開第2013/0209941号明細書に開示されたスペーサープロセスの芯材(Core)として使用できる。
【0201】
〔電子デバイスの製造方法〕
また、本発明は、上記したパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法にも関する。本発明の電子デバイスの製造方法により製造された電子デバイスは、電気電子機器(例えば、家電、OA(Office Automation)関連機器、メディア関連機器、光学用機器、及び、通信機器等)に、好適に搭載される。
【0202】
〔化合物〕
本発明は化合物の発明も含む。
本発明の化合物は、一般式(II-2)で表される化合物と同一であり、好ましい条件も同様である。
【実施例
【0203】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されない。
【0204】
〔感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物〕
[成分]
以下に、実施例又は比較例で用いた感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下「組成物」ともいう)が含む成分を示す。
【0205】
<酸分解性樹脂>
組成物の製造に使用した酸分解性樹脂を以下に示す。
以下の式中、*は結合位置を表す。各繰り返し単位に付された数値は、各樹脂中において各繰り返し単位が占めるモル比率(モル%)を示す。
【0206】
【化26】
【0207】
<化合物Q>
(Q-1の合成)
以下のスキームに基づいて化合物Q-1を合成した。
【0208】
【化27】
【0209】
上記スキーム中に示す化合物HBI(5g)を、2,2,2-トリフルオロエタノール/ジクロロメタン混合液(体積比:2/1)(84ml)に溶解した後、更に、ベンゼン(2.6g)を加え、得られた溶液を室温で12時間撹拌した。上記溶液から溶媒を留去した後、メタノールを用いて晶析することで、化合物Q-1(2.4g)を得た(収率40%)。
【0210】
同様にして、化合物Q-2~Q-8を合成した。
組成物の調製に使用した化合物Qを以下に示す。
なお、化合物Q-9及びQ-10は、比較例において、比較用化合物として使用した。
【0211】
【化28】
【0212】
<光酸発生剤>
組成物の調製に使用した光酸発生剤を以下に示す。
【0213】
【化29】
【0214】
<疎水性樹脂>
組成物の調製に使用した疎水性樹脂を以下に示す。
以下の式中、*は結合位置を表す。各繰り返し単位に付された数値は、各樹脂中において各繰り返し単位が占めるモル比率(モル%)を示す。
【0215】
【化30】
【0216】
<界面活性剤>
組成物の調製に使用した界面活性剤を以下に示す。
・W-1: メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製;フッ素系)
・W-2: PolyFox PF-6320(OMNOVA Solutions Inc.製;フッ素系)
【0217】
<溶剤>
組成物の調製に使用した溶剤を以下に示す。
・SL-1: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
・SL-2: プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
・SL-3: シクロヘキサノン
・SL-4: γ-ブチロラクトン
【0218】
[組成物の調製]
後段に示す表に記載の配合で、各成分を溶剤に溶解させ、それぞれについて固形分濃度3.8質量%の溶液を調製した。次いで、得られた溶液を0.1μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターで濾過することで、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(組成物)を調製した。
【0219】
〔評価〕
<パターンの形成>
(レジスト膜の形成)
シリコンウエハ上に有機反射防止膜形成用ARC29SR(Brewer社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークを行い膜厚98nmの反射防止膜を形成した。その上に、後段に示す表に記載の配合で調製した各組成物を塗布し、100℃で60秒間に亘ってベークを行い、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。
【0220】
(露光~現像)
得られたレジスト膜を、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、C-Quad、アウターシグマ0.730、インナーシグマ0.630、XY偏向)を用いて、線幅44nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを通して露光した。液浸液としては超純水を使用した。その後120℃で、60秒間加熱した後、酢酸ブチルで30秒間現像した後、スピン乾燥してパターンを得た。
【0221】
<LWR性能>
線幅44nmの1:1ラインアンドスペースパターンのパターンを形成する際の露光量(mJ/cm)を最適露光量とした。最適露光量で露光及び現像して得られた線幅44nmの1:1ラインアンドスペースパターンの観測をした。パターンの観測においては、測長走査型電子顕微鏡(SEM((株)日立製作所S-8840))を用いてパターン上部から観察し、線幅を任意のポイント(160点)で観測して、その測定ばらつきを3σで評価した。
結果を後段に示す表に記載する。
表中「LWR(nm)」欄に示す値が小さいほどLWR性能が良好であることを示す。
なお、本評価でパターンの形成に用いた組成物は、調製直後の組成物である。
【0222】
<保存安定性(感度比)>
得られたレジスト膜において、線幅44nmの1:1ラインアンドスペースパターンのパターンを形成する際の露光量(mJ/cm)を最適露光量とした。調製直後の組成物を用いた場合に得られる最適露光量S1と、調製後4℃で1週間放置した組成物を用いた場合に得られる最適露光量S2との感度比(S1/S2)によって、感度変化を評価した。S1/S2の値が1に近いほうが、感度の変化が小さく、保存安定性に優れる。
結果を後段に示す表に記載する。
【0223】
<保存安定性(パーティクル)>
調製直後の組成物中のパーティクル数(パーティクル初期値)と、4℃で3ヶ月放置した後の組成物中のパーティクル数(経時後のパーティクル数)とを、それぞれ、リオン社製パーティクルカウンターを用いてカウントし、「(経時後のパーティクル数)-(パーティクル初期値)」で計算されるパーティクル増加数を以下の基準に当てはめて、組成物の保存安定性を評価した。
パーティクル増加数が少ない組成物ほど保存安定性に優れる。
なお、ここでは組成物1.0ml中に含まれる粒径0.25μm以上の物質をパーティクルとして数えた。
結果を後段に示す表に記載する。
【0224】
A:パーティクルの増加数が、0.2個/ml以下
B:パーティクルの増加数が、0.2個/ml超、1.0個/ml以下
C:パーティクルの増加数が、1.0個/ml超、5.0個/ml以下
D:パーティクルの増加数が、5.0個/ml超
【0225】
〔結果〕
組成物の配合、及び、それらの組成物を用いて行った評価の結果を下記表に示す。
なお、各組成物において、樹脂、疎水性樹脂、及び、界面活性剤は、それぞれ10g、0.05g、及び、0.03g配合した。化合物Q及び光酸発生剤については、各成分名称とともにカッコ書きで示した質量(g)を配合した。溶剤は、各溶剤の内分比(質量比)が各欄に示した比となり、かつ、組成物の固形分濃度が3.8質量%になるように調整して配合した。
【0226】
【表1】
【0227】
表に示した結果から、本発明の組成物は保存安定性に優れ、LWR性能に優れるパターンを得られることが確認された。
また、化合物Qについて、R、R、R、及び、R10のうちのいずれかが一般式(II)で表される基である場合、組成物の保存安定性がより優れ、LWR性能がより優れるパターンを得られることが確認された(実施例1、2、及び、5の比較)。
化合物Qについて、Aが単結合を表す場合、組成物の保存安定性がより優れ、LWR性能がより優れるパターンを得られることが確認された(実施例3、7、及び、11の比較)。
組成物が、更に、化合物Q以外の化合物である光酸発生剤を含む場合、LWR性能がより優れるパターンを得られることが確認された(実施例9及び19の比較)。