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特許7076490基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20220520BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20220520BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20220520BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/316 X
C23C16/40
C23C16/42
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020052448
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021153088
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】石橋 清久
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 司
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/027369(WO,A1)
【文献】特開2001-093898(JP,A)
【文献】特開2010-021378(JP,A)
【文献】国際公開第2016/038660(WO,A1)
【文献】特開2020-017571(JP,A)
【文献】特開2010-087167(JP,A)
【文献】特開2010-050425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/316
C23C 16/40
C23C 16/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)基板に対して第1成膜ガスを供給することで、酸窒化膜を形成する工程と、
(a2)前記基板に対して第1酸化ガスを供給することで、前記酸窒化膜を酸化させて第1酸化膜に変換させる工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第1酸化膜を形成する工程を有し、
(a1)で形成する前記酸窒化膜の酸素濃度および窒素濃度のうち少なくともいずれかを制御することで、(a2)において前記酸窒化膜を前記第1酸化膜に変換させる際の膜膨張率、および、(a2)において形成される前記第1酸化膜の膜応力のうち少なくともいずれかを調整する基板処理方法。
【請求項2】
(a1)基板に対して第1成膜ガスを供給することで、酸窒化膜を形成する工程と、
(a2)前記基板に対して第1酸化ガスを供給することで、前記酸窒化膜を酸化させて第1酸化膜に変換させる工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第1酸化膜を形成する工程を有し、
(a1)で形成する前記酸窒化膜の酸素濃度および窒素濃度のうち少なくともいずれかを、所定サイクル毎に変化させる基板処理方法。
【請求項3】
(a1)基板に対して第1成膜ガスを供給することで、酸窒化膜を形成する工程と、
(a2)前記基板に対して第1酸化ガスを供給することで、前記酸窒化膜を酸化させて第1酸化膜に変換させる工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第1酸化膜を形成する工程と、
(b1)前記基板に対して第2成膜ガスを供給することで、窒化膜を形成する工程と、
(b2)前記基板に対して第2酸化ガスを供給することで、前記窒化膜を酸化させて第2酸化膜に変換させる工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第2酸化膜を形成する工程と、を有し、
前記所定膜厚の第1酸化膜を形成する工程と、前記所定膜厚の第2酸化膜を形成する工程と、を所定回数行うことで、前記基板上に、前記所定膜厚の第1酸化膜と前記所定膜厚の第2酸化膜とが積層されてなる酸化膜を形成する基板処理方法。
【請求項4】
(a1)で形成する前記酸窒化膜の厚さを、所定サイクル毎に変化させる請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記所定膜厚の第1酸化膜と、前記所定膜厚の第2酸化膜と、の厚さを異ならせる請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記所定膜厚の第1酸化膜の膜応力は引っ張り応力であり、
前記所定膜厚の第2酸化膜の膜応力は圧縮応力である請求項3または5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記所定膜厚の第1酸化膜と前記所定膜厚の第2酸化膜とのうち、膜応力の絶対値が大きい方の膜を、膜応力の絶対値が小さい方の膜よりも薄くする請求項3、5、6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記所定膜厚の第1酸化膜と前記所定膜厚の第2酸化膜とのうち、膜応力の絶対値が小さい方の膜を形成する工程と、膜応力の絶対値が大きい方の膜を形成する工程と、膜応力の絶対値が小さい方の膜を形成する工程と、を1セットとしてこのセットを所定回数行う請求項3、5~7のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記所定膜厚の第1酸化膜と前記所定膜厚の第2酸化膜とのうち、膜応力の絶対値が小さい方の膜を形成する工程と、膜応力の絶対値が大きい方の膜を形成する工程と、膜応力の絶対値が小さい方の膜を形成する工程と、をこの順に行う請求項3、5~8のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
(a1)では、前記基板に対して前記第1成膜ガスとして原料ガスを供給する工程と、前記基板に対して前記第1成膜ガスとして窒化ガスを供給する工程と、前記基板に対して前記第1成膜ガスとして酸化ガスを供給する工程と、を含むセットを所定回数行う請求項1~9のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
(b1)では、前記基板に対して前記第2成膜ガスとして原料ガスを供給する工程と、前記基板に対して前記第2成膜ガスとして窒化ガスを供給する工程と、を含むセットを所定回数行う請求項3、5~9のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記原料ガスを供給する工程は、前記基板に対して前記原料ガスとして第1原料ガスを供給する工程と、前記基板に対して前記原料ガスとして第2原料ガスを供給する工程と、を含む請求項10または11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記第1原料ガスは、前記第2原料ガスよりも、同一条件下において分解しにくいガスである請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記第1原料ガスは1分子中に1つのシリコン原子を含み、前記第2原料ガスは1分子中に2つ以上のシリコン原子を含む請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記所定膜厚の第1酸化膜を形成する工程と、前記所定膜厚の第2酸化膜を形成する工程と、を同一処理室内にて行う請求項3、5~9、11のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記所定膜厚の第1酸化膜を形成する工程と、前記所定膜厚の第2酸化膜を形成する工程と、を異なる処理室内にて行う請求項3、5~9、11のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項17】
(a1)基板に対して第1成膜ガスを供給することで、酸窒化膜を形成する工程と、
(a2)前記基板に対して第1酸化ガスを供給することで、前記酸窒化膜を酸化させて第1酸化膜に変換させる工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第1酸化膜を形成する工程を有し、
(a1)で形成する前記酸窒化膜の酸素濃度および窒素濃度のうち少なくともいずれかを制御することで、(a2)において前記酸窒化膜を前記第1酸化膜に変換させる際の膜膨張率、および、(a2)において形成される前記第1酸化膜の膜応力のうち少なくともいずれかを調整する半導体装置の製造方法
【請求項18】
(a1)基板に対して第1成膜ガスを供給することで、酸窒化膜を形成する工程と、
(a2)前記基板に対して第1酸化ガスを供給することで、前記酸窒化膜を酸化させて第1酸化膜に変換させる工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第1酸化膜を形成する工程を有し、
(a1)で形成する前記酸窒化膜の酸素濃度および窒素濃度のうち少なくともいずれかを、所定サイクル毎に変化させる半導体装置の製造方法
【請求項19】
(a1)基板に対して第1成膜ガスを供給することで、酸窒化膜を形成する工程と、
(a2)前記基板に対して第1酸化ガスを供給することで、前記酸窒化膜を酸化させて第1酸化膜に変換させる工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第1酸化膜を形成する工程と、
(b1)前記基板に対して第2成膜ガスを供給することで、窒化膜を形成する工程と、
(b2)前記基板に対して第2酸化ガスを供給することで、前記窒化膜を酸化させて第2酸化膜に変換させる工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第2酸化膜を形成する工程と、を有し、
前記所定膜厚の第1酸化膜を形成する工程と、前記所定膜厚の第2酸化膜を形成する工程と、を所定回数行うことで、前記基板上に、前記所定膜厚の第1酸化膜と前記所定膜厚の第2酸化膜とが積層されてなる酸化膜を形成する半導体装置の製造方法
【請求項20】
基板が処理される処理室と、
前記処理室内の基板に対して第1成膜ガスを供給する第1成膜ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第1酸化ガスを供給する第1酸化ガス供給系と、
前記処理室内において、(a1)基板に対して前記第1成膜ガスを供給することで、酸窒化膜を形成する処理と、(a2)前記基板に対して前記第1酸化ガスを供給することで、前記酸窒化膜を酸化させて第1酸化膜に変換させる処理と、を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第1酸化膜を形成する処理を行わせ、(a1)で形成する前記酸窒化膜の酸素濃度および窒素濃度のうち少なくともいずれかを制御することで、(a2)において前記酸窒化膜を前記第1酸化膜に変換させる際の膜膨張率、および、(a2)において形成される前記第1酸化膜の膜応力のうち少なくともいずれかを調整するように、前記第1成膜ガス供給系および前記第1酸化ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項21】
基板が処理される処理室と、
前記処理室内の基板に対して第1成膜ガスを供給する第1成膜ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第1酸化ガスを供給する第1酸化ガス供給系と、
前記処理室内において、(a1)基板に対して前記第1成膜ガスを供給することで、酸窒化膜を形成する処理と、(a2)前記基板に対して前記第1酸化ガスを供給することで、前記酸窒化膜を酸化させて第1酸化膜に変換させる処理と、を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第1酸化膜を形成する処理を行わせ、(a1)で形成する前記酸窒化膜の酸素濃度および窒素濃度のうち少なくともいずれかを、所定サイクル毎に変化させるように、前記第1成膜ガス供給系および前記第1酸化ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項22】
基板が処理される処理室と、
前記処理室内の基板に対して第1成膜ガスを供給する第1成膜ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第1酸化ガスを供給する第1酸化ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第2成膜ガスを供給する第2成膜ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第2酸化ガスを供給する第2酸化ガス供給系と、
前記処理室内において、(a1)基板に対して前記第1成膜ガスを供給することで、酸窒化膜を形成する処理と、(a2)前記基板に対して前記第1酸化ガスを供給することで、前記酸窒化膜を酸化させて第1酸化膜に変換させる処理と、を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第1酸化膜を形成する処理と、
(b1)前記基板に対して前記第2成膜ガスを供給することで、窒化膜を形成する処理と、(b2)前記基板に対して前記第2酸化ガスを供給することで、前記窒化膜を酸化させて第2酸化膜に変換させる処理と、を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第2酸化膜を形成する処理と、
を行わせ、前記所定膜厚の第1酸化膜を形成する処理と、前記所定膜厚の第2酸化膜を形成する処理と、を所定回数行うことで、前記基板上に、前記所定膜厚の第1酸化膜と前記所定膜厚の第2酸化膜とが積層されてなる酸化膜を形成する処理を更に行わせるように、前記第1成膜ガス供給系、前記第1酸化ガス供給系、前記第2成膜ガス供給系、および前記第2酸化ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項23】
a1)基板に対して第1成膜ガスを供給することで、酸窒化膜を形成する手順と、
(a2)前記基板に対して第1酸化ガスを供給することで、前記酸窒化膜を酸化させて第1酸化膜に変換させる手順と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第1酸化膜を形成する手順と、
(a1)で形成する前記酸窒化膜の酸素濃度および窒素濃度のうち少なくともいずれかを制御することで、(a2)において前記酸窒化膜を前記第1酸化膜に変換させる際の膜膨張率、および、(a2)において形成される前記第1酸化膜の膜応力のうち少なくともいずれかを調整する手順と、をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項24】
(a1)基板に対して第1成膜ガスを供給することで、酸窒化膜を形成する手順と、
(a2)前記基板に対して第1酸化ガスを供給することで、前記酸窒化膜を酸化させて第1酸化膜に変換させる手順と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第1酸化膜を形成する手順と、
(a1)で形成する前記酸窒化膜の酸素濃度および窒素濃度のうち少なくともいずれかを、所定サイクル毎に変化させる手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項25】
(a1)基板に対して第1成膜ガスを供給することで、酸窒化膜を形成する手順と、
(a2)前記基板に対して第1酸化ガスを供給することで、前記酸窒化膜を酸化させて第1酸化膜に変換させる手順と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第1酸化膜を形成する手順と、
(b1)前記基板に対して第2成膜ガスを供給することで、窒化膜を形成する手順と、
(b2)前記基板に対して第2酸化ガスを供給することで、前記窒化膜を酸化させて第2酸化膜に変換させる手順と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第2酸化膜を形成する手順と、
前記所定膜厚の第1酸化膜を形成する手順と、前記所定膜厚の第2酸化膜を形成する手順と、を所定回数行うことで、前記基板上に、前記所定膜厚の第1酸化膜と前記所定膜厚の第2酸化膜とが積層されてなる酸化膜を形成する手順と、
コンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板上への窒化膜の形成と、この窒化膜を酸化させることによる酸化膜への変換と、を含む酸化膜の形成処理を行うことがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-087167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、基板上に形成される酸化膜の膜質を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
(a1)基板に対して第1成膜ガスを供給することで、酸窒化膜を形成する工程と、
(a2)前記基板に対して第1酸化ガスを供給することで、前記酸窒化膜を酸化させて第1酸化膜に変換させる工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第1酸化膜を形成する工程を行う技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板上に形成される酸化膜の膜質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示す図である。
図2図2は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を図1のA-A線断面図で示す図である。
図3図3は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラ121の概略構成図であり、コントローラ121の制御系をブロック図で示す図である。
図4図4(a)は、ウエハ200の表面を下地としてシリコン酸窒化膜を形成した後のウエハ200の表面における断面部分拡大図である。図4(b)は、ウエハ200の表面を下地として形成されたシリコン酸窒化膜を酸化させてシリコン酸化膜に変換させた後のウエハ200の表面における断面部分拡大図である。図4(c)は、シリコン酸窒化膜を酸化させることでウエハ200上に形成されたシリコン酸化膜を下地としてシリコン酸窒化膜を形成した後のウエハ200の表面における断面部分拡大図である。図4(d)は、シリコン酸窒化膜を酸化させることでウエハ200上に形成されたシリコン酸化膜を下地として形成されたシリコン酸窒化膜を酸化させてシリコン酸化膜に変換させた後のウエハ200の表面における断面部分拡大図である。
図5図5(a)は、ウエハ200の表面を下地としてシリコン窒化膜を形成した後のウエハ200の表面における断面部分拡大図である。図5(b)は、ウエハ200の表面を下地として形成されたシリコン窒化膜を酸化させてシリコン酸化膜に変換させた後のウエハ200の表面における断面部分拡大図である。図5(c)は、シリコン窒化膜を酸化させることでウエハ200上に形成されたシリコン酸化膜を下地としてシリコン酸窒化膜を形成した後のウエハ200の表面における断面部分拡大図である。図5(d)は、シリコン窒化膜を酸化させることでウエハ200上に形成されたシリコン酸化膜を下地として形成されたシリコン酸窒化膜を酸化させてシリコン酸化膜に変換させた後のウエハ200の表面における断面部分拡大図である。
図6図6(a)は、ウエハ200の表面を下地としてシリコン酸窒化膜を形成した後のウエハ200の表面における断面部分拡大図である。図6(b)は、ウエハ200の表面を下地として形成されたシリコン酸窒化膜を酸化させてシリコン酸化膜に変換させた後のウエハ200の表面における断面部分拡大図である。図6(c)は、シリコン酸窒化膜を酸化させることでウエハ200上に形成されたシリコン酸化膜を下地としてシリコン窒化膜を形成した後のウエハ200の表面における断面部分拡大図である。図6(d)は、シリコン酸窒化膜を酸化させることでウエハ200上に形成されたシリコン酸化膜を下地として形成されたシリコン窒化膜を酸化させてシリコン酸化膜に変換させた後のウエハ200の表面における断面部分拡大図である。
図7図7(a)はウエハ上に形成されたシリコン酸窒化膜、および、この膜を酸化させることで得たシリコン酸化膜における膜厚の測定結果をそれぞれ示す図である。図7(b)はウエハ上に形成されたシリコン酸窒化膜、および、この膜を酸化させることで得たシリコン酸化膜における膜応力の測定結果をそれぞれ示す図である。
図8図8(a)はウエハ上に形成されたシリコン窒化膜、および、この膜を酸化させることで得たシリコン酸化膜における膜厚の測定結果をそれぞれ示す図である。図8(b)はウエハ上に形成されたシリコン窒化膜、および、この膜を酸化させることで得たシリコン酸化膜における応力の測定結果をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、図1図4を参照しながら説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は温度調整器(加熱部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0011】
処理室201内には、第1~第3供給部としてのノズル249a~249cが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a~249cを、それぞれ第1~第3ノズルとも称する。ノズル249a~249cは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料により構成されている。ノズル249a~249cには、ガス供給管232a~232cがそれぞれ接続されている。ノズル249a~249cはそれぞれ異なるノズルであり、ノズル249a,249cのそれぞれは、ノズル249bに隣接して設けられている。
【0012】
ガス供給管232a~232cには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a~241cおよび開閉弁であるバルブ243a~243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232d,232fがそれぞれ接続されている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232e,232gがそれぞれ接続されている。ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、ガス供給管232hが接続されている。ガス供給管232d~232hには、ガス流の上流側から順に、MFC241d~241hおよびバルブ243d~243hがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a~232hは、例えば、SUS等の金属材料により構成されている。
【0013】
図2に示すように、ノズル249a~249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a~249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。平面視において、ノズル249bは、処理室201内に搬入されるウエハ200の中心を挟んで後述する排気口231aと一直線上に対向するように配置されている。ノズル249a,249cは、ノズル249bと排気口231aの中心とを通る直線Lを、反応管203の内壁(ウエハ200の外周部)に沿って両側から挟み込むように配置されている。直線Lは、ノズル249bとウエハ200の中心とを通る直線でもある。すなわち、ノズル249cは、直線Lを挟んでノズル249aと反対側に設けられているということもできる。ノズル249a,249cは、直線Lを対称軸として線対称に配置されている。ノズル249a~249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a~250cがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a~250cは、それぞれが、平面視において排気口231aと対向(対面)するように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a~250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0014】
ガス供給管232aからは、原料(原料ガス)として、例えば、ウエハ200上に形成される膜を構成する主元素としてのシリコン(Si)を含むシラン系ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。シラン系ガスとしては、例えば、Siおよびハロゲンを含むガス、すなわち、ハロシラン系ガスを用いることができる。ハロゲンには、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等が含まれる。ハロシラン系ガスとしては、例えば、SiおよびClを含むクロロシラン系ガスを用いることができる。
【0015】
ガス供給管232bからは、窒化ガス(窒化剤)として、例えば、窒素(N)及び水素(H)含有ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。N及びH含有ガスは、N含有ガスでもあり、H含有ガスでもある。
【0016】
ガス供給管232cからは、酸化ガス(酸化剤)として、例えば、酸素(O)含有ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。
【0017】
ガス供給管232dからは、原料(原料ガス)として、例えば、ウエハ200上に形成される膜を構成する主元素としてのSiを含むシラン系ガスが、MFC241d、バルブ243d、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。シラン系ガスとしては、例えば、Siおよびハロゲンを含むガス、すなわち、ハロシラン系ガスを用いることができる。ハロシラン系ガスとしては、例えば、SiおよびClを含むクロロシラン系ガスを用いることができる。
【0018】
ガス供給管232eからは、還元ガス(還元剤)として、例えば、水素(H)含有ガスが、MFC241e、バルブ243e、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。H含有ガスは、それ単体では酸化作用は得られないが、特定の条件下でO含有ガスと反応することで原子状酸素(atomic oxygen、O)等の酸化種を生成し、酸化処理の効率を向上させるように作用する。
【0019】
ガス供給管232f~232hからは、不活性ガスが、それぞれMFC241f~241h、バルブ243f~243h、ガス供給管232a~232c、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0020】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、原料ガス供給系(第1原料ガス供給系)が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、窒化ガス供給系(N及びH含有ガス供給系)が構成される。主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、酸化ガス供給系(O含有ガス供給系)が構成される。主に、ガス供給管232d、MFC241d、バルブ243dにより、原料ガス供給系(第2原料ガス供給系)が構成される。主に、ガス供給管232e、MFC241e、バルブ243eにより、還元ガス供給系(H含有ガス供給系)が構成される。主に、ガス供給管232f~232h、MFC241f~241h、バルブ243f~243hにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0021】
なお、原料ガス、N及びH含有ガス、O含有ガスのそれぞれ或いは全てを、成膜ガスとも称し、原料ガス供給系、N及びH含有ガス供給系、O含有ガス供給系のそれぞれ或いは全てを、成膜ガス供給系とも称する。また、O含有ガス、H含有ガスのそれぞれ或いは両方を、酸化ガスとも称することもあり、O含有ガス供給系、H含有ガス供給系のそれぞれ或いは両方を、酸化ガス供給系と称することもある。
【0022】
上述の各種ガス供給系のうち、いずれか、或いは、全てのガス供給系は、バルブ243a~243hやMFC241a~241h等が集積されてなる集積型ガス供給システム248として構成されていてもよい。集積型ガス供給システム248は、ガス供給管232a~232hのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232h内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a~243hの開閉動作やMFC241a~241hによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型ガス供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232h等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型ガス供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0023】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。図2に示すように、排気口231aは、平面視において、ウエハ200を挟んでノズル249a~249c(ガス供給孔250a~250c)と対向(対面)する位置に設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0024】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0025】
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0026】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0027】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0028】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0029】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0030】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241h、バルブ243a~243h、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0031】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241hによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243hの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御するように構成されている。
【0032】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0033】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200上に所定膜厚の酸化膜を形成する処理シーケンス例について、主に、図4(a)~図4(d)を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0034】
本態様における処理シーケンスでは、
ウエハ200に対して成膜ガスとして、原料ガスであるクロロシラン系ガス、窒化ガスであるN及びH含有ガス、酸化ガスであるO含有ガスを供給することで、酸窒化膜としてシリコン酸窒化膜(SiON膜)を形成するステップ(SiON膜形成)と、
ウエハ200に対して酸化ガスとして、O含有ガス、H含有ガスを供給することで、SiON膜を酸化させて、酸化膜としてのシリコン酸化膜(SiO膜)に変換させるステップ(SiO膜変換)と、
を非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)、好ましくは複数回(n回、nは2以上の整数)行うことで、ウエハ200の表面上に、所定膜厚のSiO膜を形成する。
【0035】
本明細書では、上述の処理シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例等の説明においても、同様の表記を用いる。なお、以下における「SiON」は、「SiON膜形成」を表し、「Ox」は、酸化によるSiON膜のSiO膜への変換、すなわち、「SiO膜変換」を表す。
【0036】
(SiON→Ox)×n ⇒ SiO
【0037】
なお、本態様における処理シーケンスでは、
SiON膜形成において、ウエハ200に対してクロロシラン系ガスを供給するステップと、ウエハ200に対してN及びH含有ガスを供給するステップと、ウエハ200に対してO含有ガスを供給するステップと、を含むセットを所定回数(n回、nは1以上の整数)行う。
【0038】
また、本態様における処理シーケンスでは、
SiO膜変換において、ウエハ200に対してO含有ガスとH含有ガスとを同時に供給する。
【0039】
本明細書では、上述のガス供給シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例等の説明においても、同様の表記を用いる。
【0040】
[(クロロシラン系ガス→N及びH含有ガス→O含有ガス)×n→O含有ガス+H含有ガス]×n ⇒ SiO
【0041】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0042】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)された後、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0043】
(圧力調整および温度調整)
ボートロードが終了した後、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0044】
(成膜処理)
その後、SiON膜を形成するステップ(SiON膜形成)と、SiON膜を酸化させてSiO膜に変換させるステップ(SiO膜変換)と、を非同時に行うサイクルを複数回(n回、nは1以上の整数)行う。
【0045】
(SiON膜形成)
SiON膜形成では、以下のステップ1~3を順次行うセットを所定回数(n回、nは1以上の整数)行う。
【0046】
[ステップ1]
ステップ1では、処理室201内のウエハ200に対してクロロシラン系ガスを供給する。
【0047】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へクロロシラン系ガスを流す。クロロシラン系ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対してクロロシラン系ガスが供給される(クロロシラン系ガス供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給してもよい。
【0048】
本ステップにおける処理条件としては、
クロロシラン系ガス供給流量:0.01~2slm、好ましくは0.1~1slm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10slm
各ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
処理温度:400~800℃、好ましくは600~700℃
処理圧力:1~2666Pa、好ましくは67~1333Pa
が例示される。
【0049】
なお、本明細書における「1~2666Pa」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「1~2666Pa」とは「1Pa以上2666Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0050】
上述の条件下でウエハ200に対してクロロシラン系ガスを供給することにより、下地としてのウエハ200の最表面上に、Clを含むSi含有層が形成される。Clを含むSi含有層は、ウエハ200の最表面への、クロロシラン系ガスの分子の物理吸着や化学吸着、クロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の化学吸着、クロロシラン系ガスの熱分解によるSiの堆積等により形成される。Clを含むSi含有層は、クロロシラン系ガスの分子やクロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の吸着層(物理吸着層や化学吸着層)であってもよく、Clを含むSiの堆積層であってもよい。本明細書では、Clを含むSi含有層を、単に、Si含有層とも称する。
【0051】
Si含有層が形成された後、バルブ243aを閉じ、処理室201内へのクロロシラン系ガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。このとき、バルブ243f~243hを開き、処理室201内へ不活性ガスを供給する。不活性ガスはパージガスとして作用する。
【0052】
クロロシラン系ガスとしては、モノクロロシラン(SiHCl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiHCl、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシランガス(SiCl、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(SiCl、略称:OCTS)ガス等を用いることができる。なお、クロロシラン系ガスの代わりに、テトラフルオロシラン(SiF)ガス等のフルオロシラン系ガスや、テトラブロモシラン(SiBr)ガス等のブロモシラン系ガスや、テトラヨードシラン(SiI)ガス等のヨードシラン系ガスを用いることもできる。
【0053】
不活性ガスとしては、窒素(N)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0054】
[ステップ2]
ステップ1が終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたSi含有層に対してN及びH含有ガスを供給する。
【0055】
具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へN及びH含有ガスを流す。N及びH含有ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対してN及びH含有ガスが供給される(N及びH含有ガス供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給してもよい。
【0056】
本ステップにおける処理条件としては、
N及びH含有ガス供給流量:0.1~10slm
N及びH含有ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは1~3000Pa
が例示される。他の処理条件は、ステップ1における処理条件と同様な処理条件とする。
【0057】
上述の条件下でウエハ200に対してN及びH含有ガスを供給することにより、ウエハ200上に形成されたSi含有層の少なくとも一部が窒化(改質)される。結果として、下地としてのウエハ200の最表面上に、SiおよびNを含む層として、シリコン窒化層(SiN層)が形成される。SiN層を形成する際、Si含有層に含まれていたCl等の不純物は、N及びH含有ガスによるSi含有層の改質反応の過程において、少なくともClを含むガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。これにより、SiN層は、ステップ1で形成されたSi含有層に比べて、Cl等の不純物が少ない層となる。
【0058】
SiN層が形成された後、バルブ243bを閉じ、処理室201内へのN及びH含有ガスの供給を停止する。そして、ステップ1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0059】
N及びH含有ガスとしては、アンモニア(NH)ガス、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス等の窒化水素系ガスを用いることができる。
【0060】
[ステップ3]
ステップ2が終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたSiN層に対してO含有ガスを供給する。
【0061】
具体的には、バルブ243cを開き、ガス供給管232c内へO含有ガスを流す。O含有ガスは、MFC241cにより流量調整され、ノズル249cを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対してO含有ガスが供給される(O含有ガス供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給してもよい。
【0062】
本ステップにおける処理条件としては、
O含有ガス供給流量:0.1~10slm
O含有ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは1~3000Pa
が例示される。他の処理条件は、ステップ1における処理条件と同様な処理条件とする。
【0063】
上述の条件下でウエハ200に対してO含有ガスを供給することにより、ウエハ200上に形成されたSiN層の少なくとも一部が酸化(改質)される。結果として、下地としてのウエハ200の最表面上に、Si、OおよびNを含む層として、シリコン酸窒化層(SiON層)が形成される。SiON層を形成する際、SiN層に含まれていたCl等の不純物は、O含有ガスによるSiN層の改質反応の過程において、少なくともClを含むガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。これにより、SiON層は、ステップ2で形成されたSiN層に比べて、Cl等の不純物が少ない層となる。
【0064】
SiON層が形成された後、バルブ243cを閉じ、処理室201内へのO含有ガスの供給を停止する。そして、ステップ1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0065】
O含有ガスとしては、酸素(O)ガス、オゾン(O)ガス、水蒸気(HOガス)、過酸化水素(H)ガス、亜酸化窒素(NO)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO)ガス等を用いることができる。
【0066】
[セットの所定回数実施]
上述したステップ1~3を非同時に、すなわち、同期させることなく行うセットを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、図4(a)に示すように、ウエハ200の表面を下地として、所定の厚さのSiON膜を形成することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成されるSiON層の厚さを所望の膜厚よりも薄くし、SiON層を積層することで形成されるSiON膜の厚さが所望の厚さになるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すのが好ましい。
【0067】
なお、本ステップを上述の処理条件下で行うことにより、ウエハ200上に形成されるSiON膜は、比較的大きな応力、例えば、0.4~0.5GPa程度の大きさの引っ張り応力を有する膜となる。
【0068】
(SiO膜変換)
所定の厚さのSiON膜が形成された後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたSiON膜に対してO含有ガスおよびH含有ガスを供給する。
【0069】
具体的には、バルブ243c,243eを開き、ガス供給管232c,232e内へO含有ガス、H含有ガスをそれぞれ流す。ガス供給管232c,232e内を流れたO含有ガス、H含有ガスは、それぞれ、MFC241c,241eにより流量調整され、ノズル249c,249bを介して処理室201内へ供給される。O含有ガスとH含有ガスは、処理室201内で混合されて反応し、その後、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して、O含有ガスとH含有ガスとの反応により生じた原子状酸素等の酸素を含む水分(HO)非含有の酸化種が供給される(O含有ガス+H含有ガス供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ不活性ガスを供給してもよい。
【0070】
本ステップにおける処理条件としては、
O含有ガス供給流量:0.1~10slm
H含有ガス供給流量:0.1~10slm
各ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
処理圧力:1~2000Pa、好ましくは1~1000Pa
が例示される。他の処理条件は、ステップ1における処理条件と同様な処理条件とする。
【0071】
上述の条件下でウエハ200に対してO含有ガス、H含有ガスを供給することにより、原子状酸素等の酸化種が有する強い酸化力を利用して、ウエハ200上に形成されたSiON膜を酸化させ、膜中にOを更に取り込ませることが可能となる。また、SiON膜中に含まれるNを膜中から脱離させることが可能となる。これらにより、図4(b)に示すように、SiON膜形成でウエハ200上に形成されたSiON膜を、SiO膜へと変換させることが可能となる。SiON膜を酸化させることで得られるSiO膜は、Nを殆ど或いは全く含まない、高純度で緻密なSiO膜となる。
【0072】
なお、SiON膜は、酸化によりSiO膜へ変換される際にOを取り込むことで膨張する。このため、SiON膜を酸化させることで得られたSiO膜は、酸化前のSiON膜よりも厚くなる。但し、この酸化前後の膜の膨張の度合い(膨張率)は、ウエハ200に対してクロロシラン系ガスを供給するステップと、ウエハ200に対してN及びH含有ガスを供給するステップと、を含むセットを所定回数行い、ウエハ200上にシリコン窒化膜(SiN膜)を形成し、このSiN膜を酸化させてSiO膜へ変換させる場合における酸化前後の膜の膨張の度合い(膨張率)に比べ、小さくなる。図7(a)に示すように、SiON膜を酸化させることで得られたSiO膜における膜厚は、酸化前のSiON膜における膜厚の1.3倍程度の厚さに収まる場合があることを、本件開示者等は確認済である。これに対し、図8(a)に示すように、SiN膜を酸化させることで得られたSiO膜における膜厚は、酸化前のSiN膜における膜厚の1.8倍程度の厚さまで増加する場合があることを、本件開示者等は確認済である。これらのことから、ベース膜をSiON膜とすることにより、ベース膜をSiN膜とする場合よりも、ベース膜を酸化させることで得られるSiO膜の膨張率を低くすることが可能となる。
【0073】
また、SiON膜を酸化させることで得られたSiO膜が有する応力(膜応力、内部応力、残留応力)は、酸化前のSiON膜が有する応力よりも小さくなる。この応力は、ウエハ200に対してクロロシラン系ガスを供給するステップと、ウエハ200に対してN及びH含有ガスを供給するステップと、を含むセットを所定回数行い、ウエハ200上にSiN膜を形成し、このSiN膜を酸化させてSiO膜へ変換させた場合にこのSiO膜が有する応力に比べ、小さくなる。図7(b)に示すように、酸化前のSiON膜が0.5GPa程度の大きさの引っ張り応力を有する場合、このSiON膜を酸化させることで得られたSiO膜が有する応力は、それよりも小さい0.3GPa程度の大きさの引っ張り応力となる場合があることを、本件開示者等は確認済である。これに対し、図8(b)に示すように、酸化前のSiN膜が0.5GPa程度の大きさの引っ張り応力を有する場合、このSiN膜を酸化させることで得られたSiO膜が有する応力は、引っ張り応力から圧縮応力へと変化し、また、その大きさは0.5GPa程度の大きさとなる場合があることを、本件開示者等は確認済である。なお、図7(b)、図8(b)では、引っ張り応力を「+」で、圧縮応力を「-」で表している。これらのことから、ベース膜をSiON膜とすることにより、ベース膜をSiN膜とする場合よりも、ベース膜を酸化させることで得られるSiO膜の応力を小さくすることが可能となる。
【0074】
SiON膜の酸化によるSiO膜への変換が終了した後、バルブ243c,243eを閉じ、処理室201内へのO含有ガス、H含有ガスの供給を停止する。そして、ステップ1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0075】
O含有ガスとしては、Oガス、Oガス、HOガス、Hガス、NOガス、NOガス、NOガス、COガス、COガス等を用いることができる。H含有ガスとしては、Hガスや重水素()ガスを用いることができるガスをDガスとも称する。本ステップでは、H含有ガスの供給を不実施とし、酸化ガスとしてO含有ガスを単体で供給するようにしてもよい。また、本ステップでは、O含有ガスおよびH含有ガスのうち少なくともいずれかをプラズマ励起させて供給するようにしてもよい。
【0076】
[サイクルの繰り返し]
その後、上述のSiON膜形成、SiO膜変換を再びこの順に行うことにより、図4(c)に示すように、ウエハ200上に形成されたSiO膜を下地としてSiON膜を形成し、図4(d)に示すように、SiO膜を下地として形成されたSiON膜をSiO膜へと変換させることが可能となる。このように、SiON膜形成、SiO膜変換を非同時に、すなわち、同期させることなく交互に行うサイクルを複数回(n回、nは2以上の整数)繰り返すことにより、ウエハ200上に、所望の厚さのSiO膜を形成することができる。この膜は、Nを殆ど或いは全く含まない高純度で緻密なSiO膜となり、絶縁特性等の特性に優れた膜となる。また、SiON膜形成、SiO膜変換を非同時に行うサイクルを複数回繰り返すことにより形成されるこのSiO膜は、SiON膜形成、SiO膜変換をこの順に1回ずつ行うことにより形成される同じ厚さのSiO膜に比べて、応力の小さな膜となる。なお、上述のサイクルは必ずしも複数回繰り返す必要はなく、1回のみ実施するようにしてもよい(n=1としてもよい)。
【0077】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ウエハ200上への所望の厚さのSiO膜の形成が完了した後、ノズル249a~249cのそれぞれからパージガスとして不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0078】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0079】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0080】
(a)ベース膜をSiON膜として、SiON膜形成、SiO膜変換を非同時に行うサイクルを所定回数行うことにより、ベース膜をSiN膜として、SiN膜形成、SiO膜変換を非同時に行うサイクルを所定回数行う場合に比べて、ベース膜を酸化させてSiO膜へ変換させる際における膜の膨張を抑制することが可能となる。また、SiON膜形成、SiO膜変換をこの順に行うことにより、SiN膜形成、SiO膜変換をこの順に行う場合に比べて、ベース膜を酸化させてSiO膜へ変換させる際における膜の応力の変化を抑制し、また、ベース膜をSiO膜へ変換させた後のSiO膜が有する応力を小さくすることが可能となる。このように、本態様によれば、SiO膜変換における酸化前後の「膜膨張」および「膜応力の変化」を抑制することができ、また、ウエハ200上に形成されるSiO膜を、内部応力の小さな膜とすることが可能となる。これらにより、SiO膜を形成する際の下地となるウエハ200の表面に形成されたピラー等の凹凸構造の変形等を回避することが可能となる。
【0081】
(b)ベース膜をSiON膜として、SiON膜形成、SiO膜変換を非同時に行うサイクルを所定回数行うことにより、ベース膜をSiN膜として、SiN膜形成、SiO膜変換を非同時に行うサイクルを所定回数行う場合に比べて、SiO膜変換におけるベース膜の酸化に要する時間を短縮させることが可能となる。これにより、成膜処理の生産性を向上させることが可能となる。
【0082】
(c)SiON膜形成、SiO膜変換を非同時に行うサイクルを所定回数行うことにより、ウエハ200上に形成されるSiO膜を、Nを殆ど或いは全く含まない、高純度で絶縁特性の高いSiO膜とすることが可能となる。
【0083】
(d)SiO膜変換において、O含有ガス+H含有ガスを酸化ガスとして用いることにより、ウエハ200上に形成されるSiO膜を、Nを殆ど或いは全く含まない、高純度で絶縁特性の高いSiO膜とすることが可能となる。また、SiO膜変換において、SiON膜の酸化によるSiO膜への変換を効率的に行うことができ、成膜処理の生産性を高めることが可能となる。
【0084】
(e)上述の効果は、SiON膜形成において、上述の各種シラン系ガス、上述の各種N及びH含有ガス、上述の各種O含有ガスを用いる場合や、SiO膜変換において、上述の各種O含有ガス、上述の各種H含有ガスを用いる場合や、これらの各工程において、上述の各種不活性ガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。
【0085】
(4)変形例
本態様における処理シーケンスは、以下に示す変形例のように変更することができる。これらの変形例は、任意に組み合わせることができる。特に説明がない限り、各変形例の各ステップにおける処理手順、処理条件は、上述の処理シーケンスの各ステップにおける処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0086】
(変形例1)
SiON膜形成で形成するSiON膜のO濃度およびN濃度のうち少なくともいずれかを制御することで、SiO膜変換においてSiON膜をSiO膜に変換させる際の膜の膨張率、および、SiO膜変換において形成されるSiO膜の内部応力のうち、少なくともいずれかを調整するようにしてもよい。SiON膜のO濃度やN濃度は、SiON膜形成において、例えば、O含有ガスの種類、分圧、供給流量、供給時間、および、N及びH含有ガスの種類、分圧、供給流量、供給時間のうち少なくともいずれかの条件を変化させることにより、調整することができる。
【0087】
本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、本変形例によれば、SiO膜変換における酸化条件の制御ではなく、SiON膜形成で形成するSiON膜を構成する元素(O及び/又はN)の濃度の制御により、SiO膜変換においてSiON膜をSiO膜に変換させる際の膜の膨張率、および、SiO膜変換において形成されるSiO膜の応力のうち、少なくともいずれかを調整することが可能となる。
【0088】
(変形例2)
SiON膜形成で形成するSiON膜のO濃度およびN濃度のうち少なくともいずれかを、所定サイクル毎に変化させてもよい。SiON膜のO濃度やN濃度は、SiON膜形成において、例えば、O含有ガスの種類、分圧、供給流量、供給時間、および、N及びH含有ガスの種類、分圧、供給流量、供給時間のうち少なくともいずれかの条件を所定サイクル毎に変化させることにより、所定サイクル毎に調整することができる。
【0089】
本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、本変形例によれば、ウエハ200上に形成される所定厚さのSiO膜の応力を、厚さ方向で変化させ、調整することが可能となる。
【0090】
(変形例3)
SiON膜形成で形成するSiON膜の厚さを、所定サイクル毎に変化させてもよい。SiON膜の厚さは、SiON膜形成におけるセット数nを所定サイクル毎に変化させることにより、所定サイクル毎に調整することができる。例えば、第1サイクルにおけるSiON膜形成でのセット数nを、第2サイクル以降におけるSiON膜形成でのセット数nと異ならせることにより、第1サイクルにおいて形成されるSiON膜の厚さを、第2サイクル以降において形成されるSiON膜の厚さと異ならせることができる。
【0091】
本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、本変形例によれば、ウエハ200上に形成される所定厚さのSiO膜の応力を、厚さ方向で微調整することが可能となる。
【0092】
(変形例4)
以下に示すガス供給シーケンスのように、SiON膜形成では、クロロシラン系ガス供給、O含有ガス供給、N及びH含有ガス供給をこの順に非同時に行うセットを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うようにしてもよい。
【0093】
[(クロロシラン系ガス→O含有ガス→N及びH含有ガス)×n→O含有ガス+H含有ガス]×n ⇒ SiO
【0094】
本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、本変形例によれば、SiON膜形成において、上述の態様におけるSiON膜形成で得られるSiON膜とは異なる組成(O濃度及び/またはN濃度)のSiON膜を形成することができ、SiO膜変換での膜の膨張率、および、SiO膜変換において形成されるSiO膜の内部応力のうち、少なくともいずれかを調整することが可能となる。
【0095】
(変形例5)
以下に示す処理シーケンスのように、
ウエハ200に対して成膜ガスとして、原料ガスであるクロロシラン系ガス、窒化ガスであるN及びH含有ガスを供給することで、窒化膜としてSiN膜を形成するステップ(SiN膜形成)と、
ウエハ200に対して酸化ガスとして、O含有ガス、H含有ガスを供給することで、SiN膜を酸化させて、酸化膜としてのSiO膜に変換させるステップ(SiO膜変換)と、
を非同時に行うサイクルを所定回数(n、nは1以上の整数)行うことで、ウエハ200上に、所定膜厚のSiO膜を形成するステップを更に行うようにしてもよい。
【0096】
そして、SiON膜形成、SiO膜変換を非同時に行うサイクルを所定回数(n、nは1以上の整数)行うことで第1SiO膜を形成するステップ(第1SiO膜形成)と、SiN膜形成、SiO膜変換を非同時に行うサイクルを所定回数(n、nは1以上の整数)行うことで第2SiO膜を形成するステップ(第2SiO膜形成)と、を所定回数行うことで、ウエハ200上に、所定膜厚の第1SiO膜と所定膜厚の第2SiO膜とが交互に積層されてなる酸化膜(SiO膜)を形成するようにしてもよい。
【0097】
(SiON→Ox)×n→(SiN→Ox)×n→・・・ ⇒ SiO
(SiN→Ox)×n→(SiON→Ox)×n→・・・ ⇒ SiO
【0098】
なお、本変形例における第2SiO膜形成では、以下に示すガス供給シーケンスのように、
SiN膜形成において、ウエハ200に対してクロロシラン系ガスを供給するステップと、ウエハ200に対してN及びH含有ガスを供給するステップと、を含むセットを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うようにしてもよい。各ステップにおける処理条件は、上述の態様における各ステップにおける処理条件と同様とすることができる。
【0099】
[(クロロシラン系ガス→N及びH含有ガス)×n→O含有ガス+H含有ガス]×n ⇒ SiO
【0100】
なお、本変形例では、第1SiO膜形成と、第2SiO膜形成とを、上述の基板処理装置における同一の処理室201内で(in-situにて)行うことが好ましい。第1SiO膜を形成する場合も、第2SiO膜を形成する場合も、上述の成膜ガス供給系および酸化ガス供給系を用いることができる。すなわち、第1SiO膜を形成する場合と、第2SiO膜を形成する場合とで、ガス供給系を共用とすることができる。
【0101】
本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、本変形例によれば、ウエハ200上に形成されるSiO膜、すなわち、第1SiO膜と第2SiO膜とが交互に積層されてなるSiO膜の応力を、厚さ方向で調整することが可能となる。
【0102】
なお、本変形例においては、所定膜厚の第1SiO膜と、所定膜厚の第2SiO膜と、の厚さを異ならせるようにしてもよい。第1SiO膜の厚さは、例えば、第1SiO膜形成におけるSiON膜形成でのセット数nを変化させることにより、調整することができる。また、第2SiO膜の厚さは、例えば、第2SiO膜形成におけるSiN膜形成でのセット数nを変化させることにより、調整することができる。すなわち、セット数n,nのうち少なくともいずれかを変化させることにより、第1SiO膜と、第2SiO膜と、の厚さを異ならせることができる。このように、それぞれのSiO膜の厚さを異ならせることで、ウエハ200上に形成されるSiO膜、すなわち、第1SiO膜と第2SiO膜とが交互に積層されてなるSiO膜の応力を、厚さ方向で微調整することが可能となる。
【0103】
また、本変形例においては、所定膜厚の第1SiO膜として引っ張り応力を有する膜を形成し、所定膜厚の第2SiO膜として圧縮応力を有する膜を形成するようにしてもよい。このように、第1SiO膜と第2SiO膜とが相反する応力を有するようにすることで、ウエハ200上に形成されるSiO膜、すなわち、第1SiO膜と第2SiO膜とが交互に積層されてなるSiO膜の応力を、厚さ方向でそれぞれのSiO膜の応力を相殺するように微調整することが可能となる。なお、図7(b)、図8(b)を用いて説明したように、第1SiO膜は引っ張り応力を有する傾向があり、第2SiO膜は圧縮応力を有する傾向があることを、本件開示者等は確認済である。
【0104】
また、本変形例においては、所定膜厚の第1SiO膜と所定膜厚の第2SiO膜とのうち、膜応力の絶対値が大きい方の膜を、膜応力の絶対値が小さい方の膜よりも薄くするようにしてもよい。すなわち、所定膜厚の第1SiO膜と所定膜厚の第2SiO膜とのうち、膜応力の絶対値が小さい方の膜を、膜応力の絶対値が大きい方の膜よりも厚くするようにしてもよい。なお、この膜厚調整は、後述するように、第1SiO膜と第2SiO膜とが相反する膜応力を有している場合に、特に有効となる。
【0105】
このように、第1SiO膜と第2SiO膜との厚さをそれぞれの膜応力に応じて変化させることで、ウエハ200上に形成されるSiO膜、すなわち、第1SiO膜と第2SiO膜とが交互に積層されてなるSiO膜(以下、積層SiO膜とも称する)の応力を、厚さ方向でより適正に微調整することが可能となる。例えば、第1SiO膜と第2SiO膜とのうち、膜応力の絶対値が大きい方の膜を、膜応力の絶対値が小さい方の膜よりも薄くすることで、膜応力の絶対値が大きい方の膜の膜応力の度合いを低下させる方向に、ウエハ200上に形成される積層SiO膜の応力を、微調整することが可能となる。また例えば、第1SiO膜と第2SiO膜とのうち、膜応力の絶対値が小さい方の膜を、膜応力の絶対値が大きい方の膜よりも厚くすることで、膜応力の絶対値が小さい方の膜の膜応力の度合いを高める方向に、ウエハ200上に形成される積層SiO膜の応力を微調整することが可能となる。
【0106】
なお、図7(b)、図8(b)を用いて上述したように、第2SiO膜の圧縮応力の絶対値の方が、第1SiO膜の引っ張り応力の絶対値よりも大きくなる場合があることを、本件開示者等は確認済である。この場合、所定膜厚の第2SiO膜を、所定膜厚の第1SiO膜よりも薄くすることにより、ウエハ200上に形成される積層SiO膜の応力を、厚さ方向でそれぞれのSiO膜の応力をより適正に相殺するように微調整することが可能となる。例えば、積層SiO膜の応力が圧縮応力側に偏る傾向を、緩和することが可能となる。なお、第1SiO膜と第2SiO膜とが相反する膜応力を有しており、それぞれの膜応力の絶対値が異なる場合は、膜応力の絶対値が小さい方のSiO膜を、膜応力の絶対値が大きい方のSiO膜よりも厚くするのが好ましい。すなわち、膜応力の絶対値が大きい方のSiO膜を、膜応力の絶対値が小さい方のSiO膜よりも薄くするのが好ましい。
【0107】
また、本変形例においては、所定膜厚の第1SiO膜と所定膜厚の第2SiO膜とのうち、膜応力の絶対値が小さい方の膜を形成する工程と、膜応力の絶対値が大きい方の膜を形成する工程と、膜応力の絶対値が小さい方の膜を形成する工程と、を1セットとしてこのセットを所定回数行うようにしてもよい。なお、この積層順序の調整は、第1SiO膜と第2SiO膜とが相反する膜応力を有している場合に、特に有効となる。
【0108】
このように、膜応力に応じて、第1SiO膜と第2SiO膜との積層順序を調整することで、膜応力の絶対値が大きい方の膜を、膜応力の絶対値が小さい方の膜で両サイドから挟み込む積層構造を形成することができ、ウエハ200上に形成される積層SiO膜の応力を、厚さ方向でそれぞれのSiO膜の応力をより適正に相殺するように微調整することが可能となる。
【0109】
例えば、第2SiO膜の膜応力(例えば、圧縮応力)の絶対値の方が、第1SiO膜の膜応力(例えば、引っ張り応力)の絶対値よりも大きい場合、以下に示す処理シーケンスのように、第1SiO膜形成と、第2SiO膜形成と、第1SiO膜形成と、を1セットとしてこのセットを所定回数行うようにしてもよい。この場合、第1SiO膜形成と、第2SiO膜形成と、を交互に複数回行い、最初および最後に、第1SiO膜形成を行うこととなる。この場合、積層SiO膜の構造を、比較的大きい圧縮応力を有する場合がある第2SiO膜を、比較的小さい引っ張り応力を有する傾向がある第1SiO膜で挟み込む構造とすることが可能となる。この結果、第1SiO膜および第2SiO膜のそれぞれの応力をより適正に相殺する方向に微調整することが可能となり、例えば、積層SiO膜の応力が圧縮応力側に偏る傾向を、バランスよく緩和することが可能となる。また例えば、積層SiO膜の底面側の応力と、表面側の応力と、を同等とすることが可能となることから、積層SiO膜の応力バランスが崩れることを、適正に防止することが可能となる。
【0110】
(SiON→Ox)×n→(SiN→Ox)×n→・・・・→(SiON→Ox)×n ⇒ SiO
【0111】
また、本変形例においては、所定膜厚の第1SiO膜と所定膜厚の第2SiO膜とのうち、膜応力の絶対値が小さい方の膜を形成する工程と、膜応力の絶対値が大きい方の膜を形成する工程と、膜応力の絶対値が小さい方の膜を形成する工程と、をこの順に行うようにしてもよい。なお、この積層順序の調整は、第1SiO膜と第2SiO膜とが相反する膜応力を有している場合に、特に有効となる。
【0112】
このように、膜応力に応じて、第1SiO膜と第2SiO膜との積層順序を調整することで、膜応力の絶対値が大きい方の膜を、膜応力の絶対値が小さい方の膜で両サイドから挟み込む積層構造を形成することができ、ウエハ200上に形成される積層SiO膜の応力を、厚さ方向でそれぞれのSiO膜の応力をより適正に相殺するように微調整することが可能となる。
【0113】
例えば、第2SiO膜の膜応力(例えば、圧縮応力)の絶対値の方が、第1SiO膜の膜応力(例えば、引っ張り応力)の絶対値よりも大きい場合、以下に示す処理シーケンスのように、第1SiO膜形成と、第2SiO膜形成と、第1SiO膜形成と、をこの順に行うようにしてもよい。この場合、第1SiO膜形成と、第2SiO膜形成と、第1SiO膜形成と、を1セットとしてこのセットを所定回数行う上述の場合と、同様の効果が得られる。
【0114】
(SiON→Ox)×n→(SiN→Ox)×n→(SiON→Ox)×n ⇒ SiO
【0115】
(変形例6)
以下に示すガス供給シーケンスのように、上述の態様におけるSiON膜形成では、ウエハ200に対して第1原料ガスとして第1シラン系ガスを供給するステップと、ウエハ200に対して第2原料ガスとして第2シラン系ガスを供給するステップと、ウエハ200に対して窒化ガスとしてN及びH含有ガスを供給するステップと、ウエハ200に対してO含有ガスを供給するステップと、を含むセットを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うようにしてもよい。なお、第1シラン系ガスと第2シラン系ガスとは分子構造が異なり、それぞれ後述する性質を有する。
【0116】
[(第1シラン系ガス→第2シラン系ガス→N及びH含有ガス→O含有ガス)×n→O含有ガス+H含有ガス]×n ⇒ SiO
【0117】
また、以下に示すガス供給シーケンスのように、上述の変形例5におけるSiN膜形成では、ウエハ200に対して第1原料ガスとして第1シラン系ガスを供給するステップと、ウエハ200に対して第2原料ガスとして第2シラン系ガスを供給するステップと、ウエハ200に対して窒化ガスとしてN及びH含有ガスを供給するステップと、を含むセットを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うようにしてもよい。なお、この場合も、第1シラン系ガスと第2シラン系ガスとは分子構造が異なり、それぞれ後述する性質を有する。
【0118】
[(第1シラン系ガス→第2シラン系ガス→N及びH含有ガス)×n→O含有ガス+H含有ガス]×n ⇒ SiO
【0119】
なお、いずれの場合も、第1シラン系ガス、第2シラン系ガスを、上述の第1原料ガス供給系、第2原料ガス供給系よりそれぞれ供給することができる。
【0120】
これらの場合において、第1シラン系ガスを供給するステップおよび第2シラン系ガスを供給するステップの処理条件は、それぞれ、上述の態様のステップ1における処理条件と同様とすることができる。なお、第1シラン系ガスの供給時間を第2シラン系ガスの供給時間以上とすることにより、好ましくは、第1シラン系ガスの供給時間を第2シラン系ガスの供給時間よりも長くすることにより、後述する効果がより充分に得られるようになる。N及びH含有ガスを供給するステップおよびO含有ガスを供給するステップにおける処理条件は、上述の態様のステップ2およびステップ3における処理条件とそれぞれ同様とすることができる。
【0121】
本変形例によれば、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0122】
また、本変形例によれば、2種類のシラン系ガスを用いることにより、SiON膜形成やSiN膜形成におけるサイクルレート(1サイクルあたりに形成されるSiON層やSiN層の厚さ)を、1種類のシラン系ガスを用いる場合に比べて厚くすることができ、成膜処理の生産性を高めることが可能となる。
【0123】
なお、本変形例においては、第1シラン系ガスとして、第2シラン系ガスよりも、同一条件下において分解しにくい(吸着しにくい、反応性が低い)ガスを用いるのが好ましい。このようにガス種を選択することで、サイクルレートを向上させつつ、ウエハ200上に形成されるベース膜としてのSiON膜やSiN膜、すなわち、これらの膜を酸化させて得られるSiO膜のステップカバレッジ特性を向上させることが可能となる。例えば、第1シラン系ガスとして1分子中に1つのSi原子を含むガスを用い、第2シラン系ガスとして1分子中に2つ以上のSi原子を含むガスを用いることにより、ここに記載した効果、すなわち、サイクルレートを向上させつつステップカバレッジ特性を向上させることが可能となる。例えば、第1シラン系ガスとして、HCDSガスやOCTSガスを用いる場合、第2シラン系ガスとして、MCSガス、DCSガス、TCSガス、STCガス、SiFガス、SiBrガス、SiIガス等を用いることができる。
【0124】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0125】
例えば、上述の態様では、SiON膜形成とSiO膜変換とを同一の処理室201内で(in-situにて)行う例について説明した。しかしながら、SiON膜形成とSiO膜変換とを異なる処理室内で(ex-situにて)行うようにしてもよい。また、上述の態様では、ウエハ200上にSiO膜を複数層積層する際に、それぞれのSiO膜を同一の処理室201内で(in-situにて)形成する例について説明した。しかしながら、それぞれのSiO膜を異なる処理室内で(ex-situにて)で形成するようにしてもよい。
【0126】
一連の処理をin-situで行えば、途中、ウエハ200が大気曝露されることはなく、ウエハ200を真空下に置いたまま一貫して処理を行うことができ、安定した基板処理を行うことができる。また、一部の処理をex-situで行えば、それぞれの処理室内の温度を例えば各処理での処理温度又はそれに近い温度に予め設定しておくことができ、温度調整に要する時間を短縮させ、生産効率を高めることができる。
【0127】
また例えば、上述の態様では、ウエハ200上にSiO膜を形成する例について説明した。しかしながら、本開示はこの態様に限定されず、以下に示す処理シーケンスのように、ウエハ200上にチタン酸化膜(TiO膜)、アルミニウム酸化膜(AlO膜)、ハフニウム酸化膜(HfO膜)、ジルコニウム酸化膜(ZrO膜)等の金属系酸化膜を形成する場合にも適用することができる。この場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0128】
(TiON→Ox)×n ⇒ TiO
(AlON→Ox)×n ⇒ AlO
(HfON→Ox)×n ⇒ HfO
(ZrON→Ox)×n ⇒ ZrO
(TiON→Ox)×n→(TiN→Ox)×n→・・・ ⇒ TiO
(TiN→Ox)×n→(TiON→Ox)×n→・・・ ⇒ TiO
(AlON→Ox)×n→(AlN→Ox)×n→・・・ ⇒ AlO
(AlN→Ox)×n→(AlON→Ox)×n→・・・ ⇒ AlO
(HfON→Ox)×n→(HfN→Ox)×n→・・・ ⇒ HfO
(HfN→Ox)×n→(HfON→Ox)×n→・・・ ⇒ HfO
(ZrON→Ox)×n→(ZrN→Ox)×n→・・・ ⇒ ZrO
(ZrN→Ox)×n→(ZrON→Ox)×n→・・・ ⇒ ZrO
【0129】
各処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各処理を迅速に開始できるようになる。
【0130】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更してもよい。
【0131】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0132】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様における処理手順、処理条件と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0133】
上述の態様は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様における処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0134】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
【0135】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
(a1)基板に対して第1成膜ガスを供給することで、酸窒化膜を形成する工程と、
(a2)前記基板に対して第1酸化ガスを供給することで、前記酸窒化膜を酸化させて第1酸化膜に変換させる工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第1酸化膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0136】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、
(a1)で形成する前記酸窒化膜の酸素濃度および窒素濃度のうち少なくともいずれかを制御することで、(a2)において前記酸窒化膜を前記第1酸化膜に変換させる際の膜膨張率、および、(a2)において形成される前記第1酸化膜の膜応力のうち少なくともいずれかを調整する。
【0137】
(付記3)
付記1または2に記載の方法であって、
(a1)で形成する前記酸窒化膜の酸素濃度および窒素濃度のうち少なくともいずれかを、所定サイクル毎に変化させる。
【0138】
(付記4)
付記1~3のいずれか1項に記載の方法であって、
(a1)で形成する前記酸窒化膜の厚さを、所定サイクル毎に変化させる。
【0139】
(付記5)
付記1~4のいずれか1項に記載の方法であって、
(b1)前記基板に対して第2成膜ガスを供給することで、窒化膜を形成する工程と、
(b2)前記基板に対して第2酸化ガスを供給することで、前記窒化膜を酸化させて第2酸化膜に変換させる工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、所定膜厚の第2酸化膜を形成する工程を更に有し、
前記所定膜厚の第1酸化膜を形成する工程と、前記所定膜厚の第2酸化膜を形成する工程と、を所定回数行うことで、前記基板上に、前記所定膜厚の第1酸化膜と前記所定膜厚の第2酸化膜とが積層されてなる酸化膜を形成する。
【0140】
(付記6)
付記5に記載の方法であって、
前記所定膜厚の第1酸化膜と、前記所定膜厚の第2酸化膜と、の厚さを異ならせる。
【0141】
(付記7)
付記5または6に記載の方法であって、
前記所定膜厚の第1酸化膜の膜応力は引っ張り応力であり、
前記所定膜厚の第2酸化膜の膜応力は圧縮応力である。
【0142】
(付記8)
付記5~7のいずれか1項に記載の方法であって、
前記所定膜厚の第1酸化膜と前記所定膜厚の第2酸化膜とのうち、膜応力の絶対値が大きい方の膜を、膜応力の絶対値が小さい方の膜よりも薄くする。すなわち、前記所定膜厚の第1酸化膜と前記所定膜厚の第2酸化膜とのうち、膜応力の絶対値が小さい方の膜を、膜応力の絶対値が大きい方の膜よりも厚くする。
【0143】
(付記9)
付記5~8のいずれか1項に記載の方法であって、
前記所定膜厚の第1酸化膜と前記所定膜厚の第2酸化膜とのうち、膜応力の絶対値が小さい方の膜を形成する工程と、膜応力の絶対値が大きい方の膜を形成する工程と、膜応力の絶対値が小さい方の膜を形成する工程と、を1セットとしてこのセットを所定回数行う。
【0144】
(付記10)
付記5~9のいずれか1項に記載の方法であって、
前記所定膜厚の第1酸化膜と前記所定膜厚の第2酸化膜とのうち、膜応力の絶対値が小さい方の膜を形成する工程と、膜応力の絶対値が大きい方の膜を形成する工程と、膜応力の絶対値が小さい方の膜を形成する工程と、をこの順に行う。
【0145】
(付記11)
付記1~10のいずれか1項に記載の方法であって、
(a1)では、前記基板に対して前記第1成膜ガスとして原料ガスを供給する工程と、前記基板に対して前記第1成膜ガスとして窒化ガスを供給する工程と、前記基板に対して前記第1成膜ガスとして酸化ガスを供給する工程と、を含むセットを所定回数行う。
【0146】
(付記12)
付記11に記載の方法であって、
前記原料ガスを供給する工程は、前記基板に対して前記原料ガスとして第1原料ガスを供給する工程と、前記基板に対して前記原料ガスとして第2原料ガスを供給する工程と、を含む。
【0147】
(付記13)
付記5~12のいずれか1項に記載の方法であって、
(b1)では、前記基板に対して前記第2成膜ガスとして原料ガスを供給する工程と、前記基板に対して前記第2成膜ガスとして窒化ガスを供給する工程と、を含むセットを所定回数行う。
【0148】
(付記14)
付記13に記載の方法であって、
前記原料ガスを供給する工程は、前記基板に対して前記原料ガスとして第1原料ガスを供給する工程と、前記基板に対して前記原料ガスとして第2原料ガスを供給する工程と、を含む。
【0149】
(付記15)
付記12~14のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第1原料ガスは、前記第2原料ガスよりも、同一条件下において分解しにくい(吸着しにくい、反応性が低い)ガスである。
【0150】
(付記16)
付記12~15のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第1原料ガスは1分子中に1つのシリコン原子を含み、前記第2原料ガスは1分子中に2つ以上のシリコン原子を含む。
【0151】
(付記17)
付記1~16のいずれか1項/付記5~16のいずれか1項に記載の方法であって、
(a1)および(a2)を同一処理室内(in-situ)にて行う/(b1)および(b2)を同一処理室内(in-situ)にて行う。また、前記所定膜厚の第1酸化膜を形成する工程と、前記所定膜厚の第2酸化膜を形成する工程と、を同一処理室内(in-situ)にて行う。
【0152】
(付記18)
付記1~16のいずれか1項/付記5~16のいずれか1項に記載の方法であって、
(a1)および(a2)を異なる処理室内(ex-situ)にて行う/(b1)および(b2)を異なる処理室内(ex-situ)にて行う。また、前記所定膜厚の第1酸化膜を形成する工程と、前記所定膜厚の第2酸化膜を形成する工程と、を異なる処理室内(ex-situ)にて行う。
【0153】
(付記19)
本開示の他の態様によれば、
基板が処理される処理室と、
前記処理室内の基板に対して第1成膜ガスを供給する第1成膜ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第1酸化ガスを供給する第1酸化ガス供給系と、
前記処理室内において、付記1の各処理(各工程)を行わせるように、前記第1成膜ガス供給系および前記第1酸化ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0154】
(付記20)
付記19に記載の基板処理装置であって、
前記処理室内の基板に対して第2成膜ガスを供給する第2成膜ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して第2酸化ガスを供給する第2酸化ガス供給系と、
を更に有し、
前記制御部は、付記5の各処理(各工程)を行わせるように、前記第1成膜ガス供給系、前記第1酸化ガス供給系、前記第2成膜ガス供給系、および前記第2酸化ガス供給系を制御することが可能なよう構成される。
【0155】
(付記21)
本開示の更に他の態様によれば、
付記1の各手順(各工程)をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0156】
(付記22)
付記21において、
付記5の各手順(各工程)をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【符号の説明】
【0157】
200 ウエハ(基板)
図1
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図3
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図7
図8