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特許7076569インプリント用下層膜形成用組成物、下層膜、パターン形成方法および半導体素子の製造方法
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  • 特許-インプリント用下層膜形成用組成物、下層膜、パターン形成方法および半導体素子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】インプリント用下層膜形成用組成物、下層膜、パターン形成方法および半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20220520BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20220520BHJP
   C08F 290/12 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
H01L21/30 564
H01L21/30 573
B29C59/02 Z
C08F290/12
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020548232
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2019033723
(87)【国際公開番号】W WO2020066442
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2018182347
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】袴田 旺弘
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】下重 直也
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-093552(JP,A)
【文献】国際公開第2011/013630(WO,A1)
【文献】特開2014-024322(JP,A)
【文献】特開2016-028419(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152600(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/092713(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/007079(WO,A1)
【文献】特開2009-158729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
B29C 53/00-53/84、57/00-59/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体と、
pKaが5以下の酸であり、かつ、前記重合体と結合可能な官能基を有し、かつ、分子量が1000以下である低分子化合物と、
溶剤と
を含む、インプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項2】
前記重合体が(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂およびノボラック樹脂の少なくとも1種である、請求項1に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項3】
前記重合体の重量平均分子量が4000以上である、請求項1または2に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項4】
前記低分子化合物のpKaが-5~5の範囲内である、請求項1~3のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項5】
前記低分子化合物の分子量が600以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項6】
前記重合体が、前記低分子化合物が有する前記官能基と結合可能な官能基を有し、
前記重合体が有する官能基と前記低分子化合物が有する官能基との組み合わせが、エチレン性不飽和基同士、アミノ基と酸基もしくは酸無水物基、アミノ基と架橋性基、ヒドロキシ基と架橋性基、および架橋性基と酸基もしくは酸無水物基の組み合わせから選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項7】
前記低分子化合物が、カルボン酸基、チオカルボン酸基、ジチオカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸モノエステル基、リン酸ジエステル基、およびリン酸基からなる群から選択される酸基の少なくとも1種を有する酸である、請求項1~6のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項8】
前記低分子化合物が有する官能基が、エチレン性不飽和基である、請求項1~7のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項9】
前記重合体が、前記低分子化合物が有する前記官能基と結合可能な官能基を有し、
前記重合体が有する官能基が、エチレン性不飽和基である、請求項1~7のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項10】
前記低分子化合物が組成物の固形分の0.001~1質量%の割合で含まれる、請求項1~9のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項11】
前記組成物の99.0質量%以上が溶剤である、請求項1~10のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物を基板に適用しインプリント用下層膜を形成する工程、
前記インプリント用下層膜上にインプリント用硬化性組成物を適用する工程、
前記インプリント用硬化性組成物にモールドを接触させた状態で前記インプリント用硬化性組成物を露光する工程および
前記モールドを剥離する工程
を含む、パターン形成方法。
【請求項13】
表面から10nmの厚さまでの領域の炭素含有量が70質量%以上である基板を用いる、請求項12に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
前記インプリント用下層膜を形成する工程がスピンコート法を含む、請求項12または13に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記インプリント用硬化性組成物を適用する工程がインクジェット法を含む、請求項1214のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
請求項1215のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント用下層膜形成用組成物、ならびに、インプリント用下層膜形成用組成物、を用いた下層膜、パターン形成方法および半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント法は、モールドのパターンを転写して樹脂の層に所望の構造を形成する方法である。なかでも露光による樹脂の硬化を利用する光インプリント法においては、光透過性モールドや光透過性基板を通して光照射し、硬化性組成物を光硬化させる。その後、モールドを剥離することで微細パターンを光硬化物に転写することができる。この方法では、室温でのインプリントが可能になるため、半導体集積回路の作製などの超微細パターンの精密加工分野に応用することができる。最近では、この長所を組み合わせたナノキャスティング法や3次元積層構造を作製するリバーサルインプリント法などの新しい展開も報告されている。
インプリント用硬化性組成物の塗布方法として、インクジェット塗布が検討されている(例えば、特許文献1)。そこでは、しばしば、インプリント用硬化性組成物が1~100pL程度の液滴として基材上に滴下される(特許文献2~5)。インクジェット塗布を採用することにより、インプリントパターンの粗密に対応して塗布量を調整することができ、均一なインプリントパターンを確保することが可能となる。
【0003】
インプリント法の活発化に伴い、基板とインプリント用硬化性組成物との間の接着性が問題視されるようになってきた。光インプリント法では、上記のとおり、基板の表面にインプリント用硬化性組成物を塗布し、その表面にモールドを接触させた状態で光照射してインプリント用硬化性組成物を硬化させた後、モールドを剥離する。このモールドを剥離する工程で、硬化物が基板から剥れてモールドに付着してしまうことがある。これは、基板と硬化物との接着性が、モールドと硬化物との接着性よりも低いことが原因と考えられる。
【0004】
かかる問題点を解決するため、特許文献6には、ナフタレン構造にアルキニル基をもつ所定の構造を有し、ポリスチレン換算重量平均分子量が3,000以上10,000以下である重合体、及び溶媒を含有するレジスト下層膜形成用組成物が開示されている。また、特許文献7には、下記の構成単位を有する化合物(X,Yは整数)を含む、密着膜が開示されている。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2005-533393号公報
【文献】特開2013-093552号公報
【文献】特開2014-093385号公報
【文献】特開2016-146468号公報
【文献】特開2017-206695号公報
【文献】特開2012-215842号公報
【文献】国際公開第2007/050133号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のとおり、基板と硬化物との接着性を向上させるインプリント用下層膜形成用組成物が検討されている。しかしながら、近年、基板が多様化しており、それらに広く対応する材料としては、上記のものでは十分とは言えない。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、多様な基板との密着性に優れたインプリント用下層膜形成用組成物、ならびに、インプリント用下層膜形成用組成物を用いた下層膜、パターン形成方法および半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、重合体と特定の低分子化合物と溶剤とを含むインプリント用下層膜形成用組成物を用いることにより、多様な基板に対する密着性に優れた下層膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>重合体と、
pKaが5以下の酸およびpKa5以下の酸を発生可能な酸発生剤から選択され、かつ、上記重合体と結合可能な官能基を有し、かつ、分子量が1000以下である低分子化合物と、
溶剤と
を含む、インプリント用下層膜形成用組成物。
<2>上記重合体が(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂およびノボラック樹脂の少なくとも1種である、<1>に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<3>上記重合体の重量平均分子量が4000以上である、<1>または<2>に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<4>上記低分子化合物のpKaが-5~5の範囲内である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<5>上記低分子化合物の分子量が600以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<6>上記重合体が、上記低分子化合物が有する上記官能基と結合可能な官能基を有し、上記重合体が有する官能基と上記低分子化合物が有する官能基との組み合わせが、エチレン性不飽和基同士、アミノ基と酸基もしくは酸無水物基、アミノ基と架橋性基、ヒドロキシ基と架橋性基、および架橋性基と酸基もしくは酸無水物基の組み合わせから選択される、<1>~<5>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<7>上記低分子化合物が、カルボン酸基、チオカルボン酸基、ジチオカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸モノエステル基、リン酸ジエステル基、およびリン酸基からなる群から選択される酸基の少なくとも1種を有する酸であるか、上記酸基の少なくとも1種を有する酸を発生する酸発生剤である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<8>上記低分子化合物が有する官能基が、エチレン性不飽和基である、<1>~<7>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<9>上記重合体が、上記低分子化合物が有する上記官能基と結合可能な官能基を有し、上記重合体が有する官能基が、エチレン性不飽和基である、<1>~<7>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<10>上記低分子化合物が組成物の固形分の0.01~0.03質量%の割合で含まれる、<1>~<9>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<11>上記組成物の99質量%以上が溶剤である、<1>~<10>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<12>上記低分子化合物が、pKaが5以下の酸である、<1>~<11>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<13><1>~<12>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物から形成された下層膜。
<14><1>~<12>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物を基板に適用しインプリント用下層膜を形成する工程、
上記インプリント用下層膜上にインプリント用硬化性組成物を適用する工程、
上記インプリント用硬化性組成物にモールドを接触させた状態で上記インプリント用硬化性組成物を露光する工程および
上記モールドを剥離する工程
を含む、パターン形成方法。
<15>表面から10nmの厚さまでの領域の炭素含有量が70質量%以上である基板を用いる、<14>に記載のパターン形成方法。
<16>上記インプリント用下層膜を形成する工程がスピンコート法を含む、<14>または<15>に記載のパターン形成方法。
<17>上記インプリント用下層膜上に液膜を形成する工程を含む、<14>~<16>のいずれか1つに記載のパターン形成方法。
<18>上記インプリント用硬化性組成物を適用する工程がインクジェット法を含む、<14>~<17>のいずれか1つに記載のパターン形成方法。
<19><14>~<18>のいずれか1つに記載のパターン形成方法を含む半導体素子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
多様な基板との密着性に優れたインプリント用下層膜形成用組成物、ならびに、インプリント用下層膜形成用組成物を用いた下層膜、パターン形成方法および半導体素子の製造方法を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】パターン形成方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシを表す。
本明細書において、「インプリント」は、好ましくは、1nm~10mmのサイズのパターン転写をいい、より好ましくは、およそ10nm~100μmのサイズ(ナノインプリント)のパターン転写をいう。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「光」には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波だけでなく、放射線も含まれる。放射線には、例えばマイクロ波、電子線、極端紫外線(EUV)、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルタを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。
本発明における沸点測定時の気圧は、特に述べない限り、1013.25hPa(1気圧)とする。また、本発明における温度は、特に断らない限り、23℃である。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
本発明のインプリント用下層膜形成用組成物(以下、「本発明の組成物」ということがある)は、重合体(以下、特定重合体と称することがある)と、pKaが5以下の酸およびpKa5以下の酸を発生可能な酸発生剤から選択され、かつ、上記重合体と結合可能な官能基を有し、かつ、分子量が1000以下である低分子化合物(以下、特定低分子化合物と称することがある)と、溶剤とを含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、基板およびインプリント用硬化性組成物との密着性に優れた組成物が得られる。特に、多様な基板に対応して優れた密着性を発揮する下層膜形成用組成物が得られる。
本発明において、このような効果が得られる理由は不明の点を含むが、以下のように推定される。すなわち、インプリント用下層膜形成用組成物を用いて形成された下層膜において、上記特定低分子化合物が特定重合体と結合する。一方、特定低分子化合物が酸または酸発生剤であることによって生じる極性が、上層のインプリント用硬化性組成物層や下層である基板と相互作用するためと考えられる。
以下、本発明の構成について、詳細に説明する。
【0012】
<特定重合体>
本発明で用いる特定重合体は、通常、下層膜の主成分となるものであり、公知の重合体を広く用いることができる。
特定重合体は、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂およびメラミン樹脂が例示され、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂およびノボラック樹脂の少なくとも1種であることが好ましい。
上記重合体の重量平均分子量は、4000以上であることが好ましく、6000以上であることがより好ましく、8000以上であることがさらに好ましい。上限としては、100000以下であることが好ましく、50000以下であってもよい。重合体の分子量は後述する実施例に記載の方法に基づき測定した値を採用する。
上記重合体は官能基を有することが好ましい。この官能基は、後述する低分子化合物が有する官能基と結合可能であることが好ましい。特定重合体が有する官能基は、エチレン性不飽和基、アミノ基、架橋性基、ヒドロキシ基であることがより好ましい。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニル基、ビニルオキシ基、アリル基、メチルアリル基、プロぺニル基、ブテニル基、ビニルフェニル基、シクロヘキセニル基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基、ビニル基が好ましい。ここで定義するエチレン性不飽和基をEtと称する。架橋性基としては、イソシアネ-ト基、メチロール基(ヒドロキシメチル基)、エポキシ基(オキシラン基)が挙げられる。ここで規定する架橋性基をBdと称する。ここで規定される特定重合体の官能基を官能基Q1と称し、特定低分子化合物の官能基Q2と区別して呼ぶことがある。特定重合体の官能基と特定低分子化合物の官能基との具体的な組合せは後述する表3に記載のとおりである。
【0013】
特定重合体は下記の式(1)~(3)の少なくとも1つの構成単位を有することが好ましい。
【0014】
【化2】
【0015】
式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基である。R21およびRはそれぞれ独立に後述する置換基Tである。n2は0~4の整数である。n3は0~3の整数である。
【0016】
、L、Lはそれぞれ独立には単結合または後述する連結基Lである。中でも、単結合、または連結基Lで規定されるアルキレン基もしくは(オリゴ)アルキレンオキシ基が好ましい。ただし、(オリゴ)アルキレンオキシ基の末端の酸素原子はその先の基の構造により、その有無が調整されればよい。
は特定重合体の官能基であり、上記の官能基Q1の例が挙げられる。
【0017】
21が複数あるとき、互いに連結して環状構造を形成してもよい。本明細書において連結とは結合して連続する態様のほか、一部の原子を失って縮合(縮環)する態様も含む意味である。また特に断らない限り、連結に際しては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子(アミノ基)を介在していてもよい。形成される環状構造としては、脂肪族炭化水素環(これを環Cfと称する)(例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロプロペン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等)、芳香族炭化水素環(これを環Crと称する)(ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等)、含窒素複素環(これを環Cnと称する)(例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピロリン環、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、ピぺリジン環、ピペラジン環、モルホリン環等)、含酸素複素環(これを環Coと称する)(フラン環、ピラン環、オキシラン環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、ジオキサン環等)、含硫黄複素環(これを環Csと称する)(チオフェン環、チイラン環、チエタン環、テトラヒドロチオフェン環、テトラヒドロチオピラン環等)などが挙げられる。
【0018】
が複数あるとき、それらは、互いに連結して環状構造を形成してもよい。形成される環状構造としては、環Cf、環Cr、環Cn、環Co、環Csなどが挙げられる。
【0019】
上記の特定重合体は、上記式(1)~(3)の構成単位以外の他の構成単位を有する共重合体であってもよい。他の構成単位としては、下記の(11)、(21)および(31)が挙げられる。他の構成単位は、特定重合体中で、構成単位(11)が構成単位(1)と組み合わせられることが好ましく、構成単位(21)が構成単位(2)と組み合わせられることが好ましく、構成単位(31)が構成単位(3)と組み合わせられることが好ましい。
【0020】
【化3】
【0021】
式中、R11およびR22は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基である。R は後述する置換基Tであり、n31は0~3の整数である。R31が複数あるとき、互いに連結して環状構造を形成してもよい。形成される環状構造としては、環Cf、環Cr、環Cn、環Co、環Csの例が挙げられる。
【0022】
17は式中のカルボニルオキシ基とエステル構造を形成する有機基または水素原子である。この有機基としては、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい;鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい;アルキル基部分は鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよい)、式中の酸素原子が炭素原子に結合している芳香族複素環からなる基(環状構造で示すと、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、フラン環、チオフェン環、チアゾール環、オキサゾール環、インドール環、カルバゾール環等)、式中の酸素原子が炭素原子に結合している脂肪族複素環からなる基(環状構造で示すと、ピロリン環、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、ピぺリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、ピラン環、オキシラン環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、ジオキサン環、チイラン環、チエタン環、テトラヒドロチオフェン環、テトラヒドロチオピラン環)である。
17は本発明の効果を奏する範囲でさらに置換基Tを有していてもよい。
【0023】
27は後述する置換基Tであり、n21は0~5の整数である。R27が複数あるとき、それらは、互いに連結して環状構造を形成していてもよい。形成される環状構造としては、環Cf、環Cr、環Cn、環Co、環Csの例が挙げられる。
【0024】
置換基Tとしては、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~21が好ましく、7~15がより好ましく、7~11がさらに好ましい)、アルケニル基(炭素数2~24が好ましく、2~12がより好ましく、2~6がさらに好ましい)、ヒドロキシ基、アミノ基(-NR )(炭素数0~24が好ましく、0~12がより好ましく、0~6がさらに好ましい)、スルファニル基、カルボキシ基、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、アルコキシ基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アリールオキシ基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、アシル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アシルオキシ基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アリーロイル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)、アリーロイルオキシ基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)、カルバモイル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、スルファモイル基(炭素数0~12が好ましく、0~6がより好ましく、0~3がさらに好ましい)、スルホ基、スルホオキシ基、ホスホノ基、ホスホノオキシ基、アルキルスルホニル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アリールスルホニル基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、複素環基(酸素原子、窒素原子、および硫黄原子の少なくとも1つを含む;炭素数1~12が好ましく、1~8がより好ましく、2~5がさらに好ましい;5員環または6員環を含むことが好ましい)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、オキソ基(=O)、イミノ基(=NR)、アルキリデン基(=C(R)などが挙げられる。
は水素原子、置換基Tのアルキル基、置換基Tのアルケニル基、置換基Tのアリール基、置換基Tのアリールアルキル基、または置換基Tの複素環基である。
各置換基に含まれるアルキル部位およびアルケニル部位は鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよい。上記置換基Tが置換基を取りうる基である場合にはさらに置換基Tを有してもよい。例えば、アルキル基にヒドロキシ基が置換したヒドロキシアルキル基になっていてもよい。
【0025】
連結基Lとしては、アルキレン基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)、アルケニレン基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、(オリゴ)アルキレンオキシ基(1つの構成単位中のアルキレン基の炭素数は1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい;繰り返し数は1~50が好ましく、1~40がより好ましく、1~30がさらに好ましい)、アリーレン基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、カルボニル基、チオカルボニル基、-NR-、およびそれらの組み合わせにかかる連結基が挙げられる。アルキレン基、アルケニレン基、アルキレンオキシ基は上記置換基Tを有していてもよい。例えば、アルキレン基がヒドロキシ基を有していてもよい。
連結基Lの連結鎖長は、1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい。連結鎖長は連結に関与する原子団のうち最短の道程に位置する原子数を意味する。例えば、-CH-C(=O)-O-であると3となる。
なお、連結基Lで規定されるアルキレン基、アルケニレン基、(オリゴ)アルキレンオキシ基は、鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよい。
連結基Lを構成する原子としては、炭素原子と水素原子、必要によりヘテロ原子(酸素原子、窒素原子、硫黄原子から選ばれる少なくとも1種等)を含むものであることが好ましい。連結基中の炭素原子の数は1~24個が好ましく、1~12個がより好ましく、1~6個がさらに好ましい。水素原子の数は炭素原子等の数に応じて定められればよい。ヘテロ原子の数は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のそれぞれについて、0~12個が好ましく、0~6個がより好ましく、0~3個がさらに好ましい。
【0026】
特定重合体の合成は常法によればよい。例えば、式(1)の構成単位を有する重合体は、オレフィンの付加重合に係る公知の方法を適宜採用することができる。式(2)の構成単位を有する重合体は、スチレンの付加重合に係る公知の方法を適宜採用することができる。式(3)の構成単位を有する重合体は、フェノール樹脂の合成に係る公知の方法を適宜採用することができる。
【0027】
特定重合体の配合量は特に限定されないが、インプリント用下層膜形成用組成物において、固形分中では過半を占めることが好ましく、固形分中で70質量%以上であることがより好ましく、固形分中で80質量%以上であることがさらに好ましい。上限は特に制限されないが、99.0質量%以下であることが実際的である。
特定重合体のインプリント用下層膜形成用組成物中(溶剤を含む)における含有量は、特に限定されないが、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。上限としては、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%未満であることが一層好ましい。
上記の重合体は1種を用いても複数のものを用いてもよい。複数のものを用いる場合はその合計量が上記の範囲となる。
【0028】
<特定低分子化合物>
本発明のインプリント用下層膜形成用組成物は、上記の特定重合体と組み合わせて、pKaが5以下の酸およびpKa5以下の酸を発生可能な酸発生剤から選択され、かつ、上記重合体と結合可能な官能基を有し、かつ、分子量が1000以下である低分子化合物(特定低分子化合物)を含有する。
【0029】
特定低分子化合物に係る酸のpKaは5以下であるが、4.5以下であることが好ましく、4.2以下であることがより好ましい。下限値としては、-5以上であることが好ましく、-4以上であることがより好ましく、-3.5以上であることがさらに好ましい。このpKaを-5以上とすることにより、基板やモールドの損傷を効果的に抑制することができる。一方、pKaを上記の上限値以下とすることで、特定重合体と組み合わせて用いるときに、多様な基板との良好な密着性が確保されるため好ましい。
【0030】
(pKaの算出方法)
本明細書において低分子化合物のpKaとは、水溶液中でのpKaのことを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に記載のものであり、この値が低いほど酸強度が大きいことを示している。水溶液中でのpKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、23℃での酸解離定数を測定することにより実測することができる。実測できない場合は、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数および公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書におけるpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージ1を用いて計算により求めた値を示している。ソフトウェアパッケージ1: Advanced
Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0031】
特定低分子化合物の分子量は、1000以下であるが、800以下であることが好ましく、700以下であることがより好ましく、600以下であることがさらに好ましい。下限値は特に制限されないが、例えば、80以上であり、100以上であってもよい。特定低分子化合物の分子量を上記上限値以下とすることで、特定重合体と組み合わせて用いる際に、撥水性の高い基板であっても好適に対応して良好な密着性を実現することができる。
【0032】
特定低分子化合物が酸基を有するとき、その酸基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、フェノール性ヒドロキシ基、リン酸基、チオカルボン酸基、ジチオカルボン酸基が挙げられる。中でも、酸基は、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基が好ましい。
酸発生剤としては、酸基が、これを発生可能な基となっている態様が挙げられる。酸基を発生可能な基としては、具体的に、カルボン酸エステル基、チオカルボン酸エステル基、ジチオカルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、リン酸モノエステル基、リン酸ジエステル基、ジカルボン酸無水物基(環状構造を形成したカルボニルオキシカルボニル基)が挙げられる。
エステルを構成する有機基としては、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、およびアリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)が挙げられる。エステルを構成するアルキル基としては、中でも、第三級アルキル基(炭素数4~24が好ましく、4~12がより好ましく、4~8がさらに好ましい)が好ましく、第三級炭素に置換するアルキル基が互いに連結して環状構造(好ましくはシクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環が挙げられる)を形成している第三級アルキル基がより好ましい。
本明細書では上記の酸基ないし酸基を発生可能な基を総称して酸基等Acと称する。
【0033】
特定低分子化合物が酸発生剤であるとき、酸発生剤として光酸発生剤および熱酸発生剤が例示され、本発明においては中でも、光酸発生剤が好ましい。酸発生剤から発生する酸は、上述のpKaが5以下の酸と同様である。また、pKaが5以下の酸の酸基を保護している保護基としては、トリフェニルスルホニウム基、ジアゾ基が好ましい。このように、酸を酸発生剤とすることで、特定低分子化合物の酸基の部位を保護した安定な形で扱うことができる利点がある。
【0034】
特定低分子化合物が有する官能基は、特定重合体が有する官能基と反応して結合するものであれば特に限定されない。例えば、エチレン性不飽和基、酸基もしくは酸無水物基、架橋性基が挙げられる。エチレン性不飽和基としては、上記エチレン性不飽和基Etの例が挙げられる。酸基または酸無水物基としては、上記酸基等Acの例が挙げられる。架橋性基としては、上記の架橋性基Bdの例が挙げられる。ここで規定される特定低分子化合物の官能基を官能基Q2と称し、特定重合体の官能基Q1と区別して呼ぶことがある。特定重合体の官能基と特定低分子化合物の官能基との具体的な組合せは表3に記載のとおりである。
【0035】
特定低分子化合物の酸は、無機酸でも有機酸でもよいが、有機酸であることが好ましい。
無機酸としては、硫酸、硝酸、リン酸、塩酸、ホウ酸が例示される。
【0036】
特定低分子化合物が有機酸の場合、式(4)で表される化合物であることが好ましい。
(Qn41-L-(Acn42 (4)
は上記で規定した官能基Q2である。Acは上記で定義した酸基等Acである。n41は1~4の整数である。n42は1~4の整数である。Lは単結合または上記の連結基L(n41+n42が3以上であるときは3価以上の連結基として読み替えられる)である。Lは中でも単結合、あるいは連結基Lで規定されるアルキレン基もしくはその構造を有する3価以上の連結基、アリーレン基もしくはその構造を有する3価以上の連結基、(オリゴ)アルキレンオキシ基もしくはその構造を有する3価以上の連結基、またはそれらを組み合わせた連結基が好ましい。ただし、(オリゴ)アルキレンオキシ基の末端の酸素原子はその先の基の構造により、その有無が調整されればよい。
【0037】
特定低分子化合物の合成は常法によればよい。
【0038】
特定低分子化合物の具体例を以下に挙げるが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。B-8とB-9は酸発生剤であり、pKaは発生する酸のpKaである。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
特定低分子化合物の配合量は特に限定されないが、インプリント用下層膜形成用組成物において、固形分中で1質量%以上であることが好ましく、固形分中で5質量%以上であることがより好ましく、固形分中で8質量%以上であることがより好ましい。上限は特に制限されないが、固形分中で20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であってもよい。
特定低分子化合物のインプリント用下層膜形成用組成物中(溶剤を含む)における含有量は、特に限定されないが、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましい。上限としては、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.8質量%以下であることが一層好ましく、0.5質量%以下であることがより一層好ましい。
特定低分子化合物の特定重合体に対する比率は、その効果を十分に引き出し、かつ過剰量になることの不具合を避ける観点から、特定重合体100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。上限としては、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。
特定低分子化合物は1種を用いても複数のものを用いてもよい。複数のものを用いる場合はその合計量が上記の範囲となる。
【0042】
<官能基の組み合わせ>
特定重合体が有する官能基Q1と、特定低分子化合物が有する官能基Q2との組み合わせは、総じていえば、(i)エチレン性不飽和基同士、(ii)アミノ基と酸基もしくは酸無水物基、(iii)アミノ基と架橋性基、(iv)ヒドロキシ基と架橋性基、および(vi)架橋性基と酸基もしくは酸無水物基の組み合わせから選択されることが好ましい。酸無水物基としては、ジカルボン酸の無水物基(炭素原子と結合して環状構造を形成しているカルボニルオキシカルボニル基)が挙げられる。エチレン性不飽和基としてはエチレン性不飽和基Etの例、酸基もしくは酸無水物としては酸基等Acの例が挙げられる。架橋性基としては架橋性基Bdの例がそれぞれ挙げられる。特定重合体が有する官能基Q1と特定低分子化合物が有する官能基Q2との組み合わせは、より好ましくは、下記の表に示したとおりである。
【0043】
官能基の好ましい組み合わせ
【表3】
【0044】
<溶剤>
インプリント用下層膜形成用組成物は溶剤(以下、「下層膜用溶剤」ということがある)を含む。溶剤は例えば、23℃で液体であって沸点が250℃以下の化合物が好ましい。通常、不揮発性成分が最終的に下層膜を形成する。インプリント用下層膜形成用組成物は、下層膜用溶剤を99.0質量%以上含むことが好ましく、99.5質量%以上含むことがより好ましく、99.6質量%以上であってもよい。溶剤の比率を上記の範囲とすることで、膜形成時の膜厚を薄く保ち、エッチング加工時のパターン形成性良化につながる。
溶剤は、インプリント用下層膜形成用組成物に、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
下層膜用溶剤の沸点は、230℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましく、160℃以下であることが一層好ましく、130℃以下であることがより一層好ましい。下限値は23℃であることが実際的であるが、60℃以上であることがより実際的である。沸点を上記の範囲とすることにより、下層膜から溶剤を容易に除去でき好ましい。
【0045】
下層膜用溶剤は、有機溶剤が好ましい。溶剤は、好ましくはアルキルカルボニル基、カルボニル基、ヒドロキシ基およびエーテル基のいずれか1つ以上を有する溶剤である。なかでも、非プロトン性極性溶剤を用いることが好ましい。
【0046】
具体例としては、アルコキシアルコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、アルコキシプロピオン酸エステル、鎖状ケトン、環状ケトン、ラクトン、およびアルキレンカーボネートが選択される。
【0047】
アルコキシアルコールとしては、メトキシエタノール、エトキシエタノール、メトキシプロパノール(例えば、1-メトキシ-2-プロパノール)、エトキシプロパノール(例えば、1-エトキシ-2-プロパノール)、プロポキシプロパノール(例えば、1-プロポキシ-2-プロパノール)、メトキシブタノール(例えば、1-メトキシ-2-ブタノール、1-メトキシ-3-ブタノール)、エトキシブタノール(例えば、1-エトキシ-2-ブタノール、1-エトキシ-3-ブタノール)、メチルペンタノール(例えば、4-メチル-2-ペンタノール)などが挙げられる。
【0048】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、および、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートからなる群より選択される少なくとも1つが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)であることが特に好ましい。
【0049】
また、プロピレングリコールモノアルキルエーテルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)またはプロピレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。
乳酸エステルとしては、乳酸エチル、乳酸ブチル、または乳酸プロピルが好ましい。
酢酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、酢酸イソアミル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、または酢酸3-メトキシブチルが好ましい。
アルコキシプロピオン酸エステルとしては、3-メトキシプロピオン酸メチル(MMP)、または、3-エトキシプロピオン酸エチル(EEP)が好ましい。
鎖状ケトンとしては、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトンまたはメチルアミルケトンが好ましい。
環状ケトンとしては、メチルシクロヘキサノン、イソホロンまたはシクロヘキサノンが好ましい。
ラクトンとしては、γ-ブチロラクトン(γBL)が好ましい。
アルキレンカーボネートとしては、プロピレンカーボネートが好ましい。
【0050】
上記成分の他、炭素数が7以上(7~14が好ましく、7~12がより好ましく、7~10がさらに好ましい)、かつ、ヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤を用いることが好ましい。
【0051】
炭素数が7以上かつヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤の好ましい例としては、酢酸アミル、酢酸2-メチルブチル、酢酸1-メチルブチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸ペンチル、プロピオン酸ヘキシル、プロピオン酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、プロピオン酸ヘプチル、ブタン酸ブチルなどが挙げられ、酢酸イソアミルを用いることが特に好ましい。
【0052】
また、引火点(以下、p成分ともいう)が30℃以上である溶剤を用いることも好ましい。このような成分としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(p成分:47℃)、乳酸エチル(p成分:53℃)、3-エトキシプロピオン酸エチル(p成分:49℃)、メチルアミルケトン(p成分:42℃)、シクロヘキサノン(p成分:30℃)、酢酸ペンチル(p成分:45℃)、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(p成分:45℃)、γ-ブチロラクトン(p成分:101℃)またはプロピレンカーボネート(p成分:132℃)が好ましい。これらのうち、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル、酢酸ペンチルまたはシクロヘキサノンがさらに好ましく、プロピレングリコールモノエチルエーテルまたは乳酸エチルが特に好ましい。
【0053】
下層膜用溶剤として中でも好ましい溶剤としては、アルコキシアルコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、アルコキシプロピオン酸エステル、鎖状ケトン、環状ケトン、ラクトン、およびアルキレンカーボネートが挙げられる。
【0054】
<その他の成分>
インプリント用下層膜形成用組成物は、上記の他、アルキレングリコール化合物、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、レベリング剤、増粘剤、界面活性剤等を1種または2種以上含んでいてもよい。
熱重合開始剤等については、特開2013-036027号公報、特開2014-090133号公報、特開2013-189537号公報に記載の各成分を用いることができる。含有量等についても、上記公報の記載を参酌できる。
【0055】
<<アルキレングリコール化合物>>
インプリント用下層膜形成用組成物は、アルキレングリコール化合物を含んでいてもよい。アルキレングリコール化合物は、アルキレングリコール構成単位を3~1000個有していることが好ましく、4~500個有していることがより好ましく、5~100個有していることがさらに好ましく、5~50個有していることが一層好ましい。アルキレングリコール化合物の重量平均分子量(Mw)は150~10000が好ましく、200~5000がより好ましく、300~3000がさらに好ましく、300~1000が一層好ましい。
アルキレングリコール化合物は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、これらのモノまたはジメチルエーテル、モノまたはジオクチルエーテル、モノまたはジノニルエーテル、モノまたはジデシルエーテル、モノステアリン酸エステル、モノオレイン酸エステル、モノアジピン酸エステル、モノコハク酸エステルが例示され、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが好ましい。
アルキレングリコール化合物の23℃における表面張力は、38.0mN/m以上であることが好ましく、40.0mN/m以上であることがより好ましい。表面張力の上限は特に定めるものではないが、例えば48.0mN/m以下である。このような化合物を配合することにより、下層膜の直上に設けるインプリント用硬化性組成物の濡れ性をより向上させることができる。
表面張力は、協和界面科学(株)製、表面張力計 SURFACE TENS-IOMETER CBVP-A3を用い、ガラスプレートを用いて23℃で測定する。単位は、mN/mで示す。1水準につき2つの試料を作製し、それぞれ3回測定する。合計6回の算術平均値を評価値として採用する。
【0056】
アルキレングリコール化合物は、含有する場合、不揮発性成分の40質量%以下であり、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、1~15質量%であることがさらに好ましい。
アルキレングリコール化合物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0057】
<<重合開始剤>>
インプリント用下層膜形成用組成物は、重合開始剤を含んでいてもよく、熱重合開始剤および光重合開始剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。重合開始剤を含むことにより、インプリント用下層膜形成用組成物に含まれる重合性基の反応が促進し、密着性が向上する傾向にある。インプリント用硬化性組成物との架橋反応性を向上させる観点から光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤が好ましく、ラジカル重合開始剤がより好ましい。また、本発明において、光重合開始剤は複数種を併用してもよい。
【0058】
光ラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を任意に使用できる。例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物、トリハロメチル基を有する化合物など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノン、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、有機ホウ素化合物、鉄アレーン錯体などが挙げられる。これらの詳細については、特開2016-027357号公報の段落0165~0182の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
アシルホスフィン化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイドなどが挙げられる。また、市販品であるIRGACURE-819やIRGACURE1173、IRGACURE-TPO(商品名:いずれもBASF製)を用いることができる。
【0059】
上記インプリント用下層膜形成用組成物に用いられる光重合開始剤の含有量は、配合する場合、不揮発性成分中、例えば、0.0001~5質量%であり、好ましくは0.0005~3質量%であり、さらに好ましくは0.01~1質量%である。2種以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が上記範囲となる。
【0060】
<表面自由エネルギー>
本発明のインプリント用下層膜形成用組成物から形成されたインプリント用下層膜の表面自由エネルギーが30mN/m以上であることが好ましく、40mN/m以上であることがより好ましく、50mN/m以上であることがさらに好ましい。上限としては、200mN/m以上であることが好ましく、150mN/m以上であることがより好ましく、100mN/m以上であることがさらに好ましい。
表面自由エネルギーの測定は、協和界面科学(株)製、表面張力計 SURFACE TENS-IOMETER CBVP-A3を用い、ガラスプレートを用いて23℃で行うことができる。
【0061】
<インプリント用硬化性組成物>
本発明の下層膜形成用組成物は、通常、インプリント用硬化性組成物用の下層膜を形成するための組成物として用いられる。
インプリント用硬化性組成物の組成等は、特に定めるものではないが、重合性化合物を含むことが好ましい。
【0062】
<<重合性化合物>>
インプリント用硬化性組成物は重合性化合物を含むことが好ましく、この重合性化合物が最大量成分を構成することがより好ましい。重合性化合物は、一分子中に重合性基を1つ有していても、2つ以上有していてもよい。インプリント用硬化性組成物に含まれる重合性化合物の少なくとも1種は、重合性基を一分子中に2~5つ含むことが好ましく、2~4つ含むことがより好ましく、2または3つ含むことがさらに好ましく、3つ含むことが一層好ましい。
インプリント用硬化性組成物に含まれる重合性化合物の少なくとも1種は、環状構造を有することが好ましい。この環状構造の例としては脂肪族炭化水素環Cfおよび芳香族炭化水素環Crが挙げられる。なかでも、重合性化合物は芳香族炭化水素環Crを有することが好ましく、ベンゼン環を有することがより好ましい。
重合性化合物の分子量は100~900が好ましい。
上記重合性化合物の少なくとも1種は、下記式(I-1)で表されることが好ましい。
【化4】
20は、1+q2価の連結基であり、例えば環状構造の連結基が挙げられる。環状構造としては、上記環Cf、環Cr、環Cn、環Co、環Csの例が挙げられる。
21およびR22はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。
21およびL22はそれぞれ独立に単結合または上記連結基Lを表す。L20とL またはL22は連結基Lを介してまたは介さずに結合して環を形成していてもよい。L20、L21およびL22は上記置換基Tを有していてもよい。置換基Tは複数が結合して環を形成してもよい。置換基Tが複数あるとき互いに同じでも異なっていてもよい。
q2は0~5の整数であり、0~3の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましく、0または1がさらに好ましい。
【0063】
重合性化合物の例としては下記実施例で用いた化合物、特開2014-90133号公報の段落0017~0024および実施例に記載の化合物、特開2015-9171号公報の段落0024~0089に記載の化合物、特開2015-70145号公報の段落0023~0037に記載の化合物、国際公開第2016/152597号の段落0012~0039に記載の化合物を挙げることができるが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
【0064】
重合性化合物は、インプリント用硬化性組成物中、30質量%以上含有することが好ましく、45質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、55質量%以上が一層好ましく、60質量%以上であってもよく、さらに70質量%以上であってもよい。また、上限値は、99質量%未満であることが好ましく、98質量%以下であることがさらに好ましく、97質量%以下とすることもできる。
【0065】
重合性化合物の沸点は、上述したインプリント用下層膜形成用組成物に含まれる特定化合物との関係で設定され配合設計されることが好ましい。重合性化合物の沸点は、500℃以下であることが好ましく、450℃以下であることがより好ましく、400℃以下であることがさらに好ましい。下限値としては200℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましく、240℃以上であることがさらに好ましい。
【0066】
<<他の成分>>
インプリント用硬化性組成物は、重合性化合物以外の添加剤を含有してもよい。他の添加剤としては、重合開始剤、界面活性剤、増感剤、離型剤、酸化防止剤、重合禁止剤等を含んでいてもよい。
本発明で用いることができるインプリント用硬化性組成物の具体例としては、特開2013-036027号公報、特開2014-090133号公報、特開2013-189537号公報に記載の組成物が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、インプリント用硬化性組成物の調製、膜(パターン形成層)の形成方法についても、上記公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0067】
本発明では、インプリント用硬化性組成物における溶剤の含有量は、インプリント用硬化性組成物の5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
インプリント用硬化性組成物は、ポリマー(好ましくは、重量平均分子量が1,000を超える、より好ましくは重量平均分子量が2,000を超える)を実質的に含有しない態様とすることもできる。ポリマーを実質的に含有しないとは、例えば、ポリマーの含有量がインプリント用硬化性組成物の0.01質量%以下であることをいい、0.005質量%以下が好ましく、全く含有しないことがより好ましい。
【0068】
<<物性値等>>
インプリント用硬化性組成物の粘度は、20.0mPa・s以下であることが好ましく、15.0mPa・s以下であることがより好ましく、11.0mPa・s以下であることがさらに好ましく、9.0mPa・s以下であることが一層好ましい。上記粘度の下限値としては、特に限定されるものではないが、例えば、5.0mPa・s以上とすることができる。粘度は、下記の方法に従って測定される。
粘度は、東機産業(株)製のE型回転粘度計RE85L、標準コーン・ロータ(1°34’×R24)を用い、サンプルカップを23℃に温度調節して測定する。単位は、mPa・sで示す。測定に関するその他の詳細はJISZ8803:2011に準拠する。1水準につき2つの試料を作製し、それぞれ3回測定する。合計6回の算術平均値を評価値として採用する。
【0069】
インプリント用硬化性組成物の表面張力(γResist)は28.0mN/m以上であることが好ましく、30.0mN/m以上であることがより好ましく、32.0mN/m以上であってもよい。表面張力の高いインプリント用硬化性組成物を用いることで毛細管力が上昇し、モールドパターンへのインプリント用硬化性組成物の高速な充填が可能となる。上記表面張力の上限値としては、特に限定されるものではないが、下層膜との関係およびインクジェット適性を付与するという観点では、40.0mN/m以下であることが好ましく、38.0mN/m以下であることがより好ましく、36.0mN/m以下であってもよい。
インプリント用硬化性組成物の表面張力は、上記アルキレングリコール化合物における測定方法と同じ方法に従って測定される。
【0070】
インプリント用硬化性組成物の大西パラメータは、5.0以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.7以下であることがさらに好ましい。インプリント用硬化性組成物の大西パラメータの下限値は、特に定めるものではないが、例えば、1.0以上、さらには、2.0以上であってもよい。
大西パラメータはインプリント用硬化性組成物の不揮発性成分について、それぞれ、全構成成分の炭素原子、水素原子および酸素原子の数を下記式に代入して求めることができる。
大西パラメータ=炭素原子、水素原子および酸素原子の数の和/(炭素原子の数-酸素原子の数)
【0071】
<<保存容器>>
本発明で用いるインプリント用硬化性組成物の収容容器としては従来公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器としては、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0072】
<パターンおよびパターン形成方法>
本発明の好ましい実施形態にかかるパターンの形成方法は、基板表面に、本発明のインプリント用下層膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程(下層膜形成工程)、上記下層膜上(好ましくは、下層膜の表面)にインプリント用下層膜形成用組成物を適用してインプリント用硬化性組成物層を形成する工程(インプリント用硬化性組成物層形成工程)、上記インプリント用硬化性組成物層にモールドを接触させる工程、上記モールドを接触させた状態で上記インプリント用硬化性組成物層を露光する工程、および上記モールドを、上記露光したインプリント用硬化性組成物層から剥離する工程を含む。
以下、パターン形成方法について、図1に従って説明する。本発明の構成が図面により限定されるものではないことは言うまでもない。
【0073】
<<下層膜形成工程>>
下層膜形成工程では、図1(1)(2)に示す様に、基板1の表面に、下層膜2を形成する。下層膜は、インプリント用下層膜形成用組成物を基板上に層状に適用して形成することが好ましい。基板1は、単層からなる場合の他、下塗り層や密着層を有していてもよい。
【0074】
基板の表面へのインプリント用下層膜形成用組成物の適用方法としては、特に定めるものではなく、一般によく知られた適用方法を採用できる。具体的には、適用方法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート法、スリットスキャン法、あるいはインクジェット法が例示され、スピンコート法が好ましい。
また、基板上にインプリント用下層膜形成用組成物を層状に適用した後、好ましくは、熱によって溶剤を揮発(乾燥)させて、薄膜である下層膜を形成する。
【0075】
下層膜2の厚さは、2nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましく、4nm以上であることがさらに好ましく、5nm以上であってもよく、7nm以上であってもよく、10nm以上であってもよい。また、下層膜の厚さは、40nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましく、15nm以下であってもよい。膜厚を上記下限値以上とすることにより、インプリント用硬化性組成物の下層膜上での拡張性(濡れ性)が向上し、インプリント後の均一な残膜形成が可能となる。膜厚を上記上限値以下とすることにより、インプリント後の残膜が薄くなり、膜厚ムラが発生しにくくなり、残膜均一性が向上する傾向にある。
【0076】
基板の材質としては、特に定めるものでは無く、特開2010-109092号公報の段落0103の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。本発明では、シリコン基板、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、シリコンカーバイド(炭化ケイ素)基板、窒化ガリウム基板、アルミニウム基板、アモルファス酸化アルミニウム基板、多結晶酸化アルミニウム基板、SOC(スピンオンカーボン)、SOG(スピンオングラス)、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、ならびに、GaAsP、GaP、AlGaAs、InGaN、GaN、AlGaN、ZnSe、AlGa、InP、または、ZnOから構成される基板が挙げられる。なお、ガラス基板の具体的な材料例としては、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスが挙げられる。本発明では、シリコン基板およびSOC(スピンオンカーボン)を塗布した基板が好ましい。
シリコン基板は適宜表面修飾したものを用いることができ、基板の表面から10nmの厚さ(より好ましくは100nmの厚さ)までの領域の炭素含有量を70質量%以上(好ましくは、80~100質量%)としたものを用いてもよい。例えば、シリコン基板に各種のスピンオンカーボン膜をスピンコート法で塗布し、240℃で60秒間ベークを行って得られる膜厚200nmのSOC(Spin on Carbon)膜を有する基板が挙げられる。近年はこうした多様なSOC基板表面であっても安定したモールドパターニングが求められており、本発明によれば、このような基板とインプリント用硬化性組成物から形成される層との良好な密着性を確保することができ、基板剥がれの生じない安定したモールドパターニングが実現される。
【0077】
本発明においては、有機層を最表層として有する基板を用いることが好ましい。
基板の有機層としてはCVD(Chemical Vapor Deposition)で形成されるアモルファスカーボン膜や、高炭素材料を有機溶剤に溶解させ、スピンコートで形成されるスピンオンカーボン膜が挙げられる。スピンオンカーボン膜としては、ノルトリシクレン共重合体、水素添加ナフトールノボラック樹脂、ナフトールジシクロペンタジエン共重合体、フェノールジシクロペンタジエン共重合体、特開2005-128509号公報に記載されるフルオレンビスフェノールノボラック、特開2005-250434号公報に記載のアセナフチレン共重合、インデン共重合体、特開2006-227391号公報に記載のフェノール基を有するフラーレン、ビスフェノール化合物およびこのノボラック樹脂、ジビスフェノール化合物およびこのノボラック樹脂、アダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、ヒドロキシビニルナフタレン共重合体、特開2007-199653号公報に記載のビスナフトール化合物およびこのノボラック樹脂、ROMP、トリシクロペンタジエン共重合物に示される樹脂化合物が挙げられる。
SOCの例としては特開2011-164345号公報の段落0126の記載を参照することができ、その内容は本明細書に組み込まれる。
【0078】
基板表面の水に対する接触角としては、20°以上であることが好ましく、40°以上であることがより好ましく、60°以上であることがさらに好ましい。上限としては、90°以下であることが実際的である。接触角は、後述する実施例で記載の方法に従って測定される。
【0079】
本発明においては、塩基性の層を最表層として有する基板(以下、塩基性基板という)を用いることが好ましい。塩基性基板の例としては、塩基性有機化合物(例えば、アミン系化合物やアンモニウム系化合物など)を含む基板や窒素原子を含有する無機基板が挙げられる。
【0080】
<<インプリント用硬化性組成物層形成工程>>
適用工程では、例えば、図1(3)に示すように、上記下層膜2の表面に、インプリント用硬化性組成物3を適用する。
インプリント用硬化性組成物の適用方法としては、特に定めるものでは無く、特開2010-109092号公報(対応US出願の公開番号は、US2011/183127)の段落0102の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。上記インプリント用硬化性組成物は、インクジェット法により、上記下層膜の表面に適用することが好ましい。また、インプリント用硬化性組成物を、多重塗布により塗布してもよい。インクジェット法などにより下層膜の表面に液滴を配置する方法において、液滴の量は1~20pL程度が好ましく、液滴間隔をあけて下層膜表面に配置することが好ましい。液滴間隔としては、10~1000μmの間隔が好ましい。液滴間隔は、インクジェット法の場合は、インクジェットのノズルの配置間隔とする。
さらに、下層膜2と、下層膜上に適用した膜状のインプリント用硬化性組成物3の体積比は、1:1~500であることが好ましく、1:10~300であることがより好ましく、1:50~200であることがさらに好ましい。
また、本発明の好ましい実施形態に係る積層体の製造方法は、インプリント用硬化性組成物およびインプリント用下層膜形成用組成物を含むキットを用いて製造する方法であって、上記インプリント用下層膜形成用組成物から形成された下層膜の表面に、インプリント用硬化性組成物を適用することを含む。さらに、本発明の好ましい実施形態に係る積層体の製造方法は、上記インプリント用下層膜形成用組成物を基板上に層状に適用する工程を含み、上記層状に適用したインプリント用下層膜形成用組成物を、好ましくは100~300℃で、より好ましくは130~260℃で、さらに好ましくは150~230℃で、加熱(ベーク)することを含むことが好ましい。加熱時間は、好ましくは30秒~5分である。
インプリント用硬化性組成物を下層膜に適用するに当たり、基板上に液膜を形成する形態としてもよい。液膜の形成は常法によればよい。例えば、23℃で液体の架橋性モノマー(上記重合性化合物の例が挙げられる)などを含有する組成物を基板上に適用することにより形成してもよい。
【0081】
<<モールド接触工程>>
モールド接触工程では、例えば、図1(4)に示すように、上記インプリント用硬化性組成物3とパターン形状を転写するためのパターンを有するモールド4とを接触させる。このような工程を経ることにより、所望のパターン(インプリントパターン)が得られる。
具体的には、膜状のインプリント用硬化性組成物に所望のパターンを転写するために、膜状のインプリント用硬化性組成物3の表面にモールド4を押接する。
【0082】
モールドは、光透過性のモールドであってもよいし、光非透過性のモールドであってもよい。光透過性のモールドを用いる場合は、モールド側から硬化性組成物3に光を照射することが好ましい。本発明では、光透過性モールドを用い、モールド側から光を照射することがより好ましい。
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドである。上記モールドが有するパターンは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じて形成できるが、本発明では、モールドパターンの形成方法は特に制限されない。また、本発明の好ましい実施形態に係るパターンの形成方法によって形成したパターンをモールドとして用いることもできる。
本発明において用いられる光透過性モールドを構成する材料は、特に限定されないが、ガラス、石英、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート樹脂などの光透過性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示され、石英が好ましい。
本発明において光透過性の基板を用いた場合に使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの基板などが例示され、特に制約されない。
基板の表面は適宜常法により処理してもよく、例えば、UVオゾン処理等により基板の表面にOH基を形成して、基板表面の極性を高めることで、より密着性が向上する態様してもよい。
【0083】
上記パターンの形成方法では、インプリント用硬化性組成物を用いてインプリントリソグラフィを行うに際し、モールド圧力を10気圧以下とするのが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にある。また、圧力が小さいため装置を縮小できる傾向にある点からも好ましい。モールド圧力は、モールド凸部にあたるインプリント用硬化性組成物の残膜が少なくなる一方で、モールド転写の均一性が確保できる範囲から選択することが好ましい。
また、インプリント用硬化性組成物とモールドとの接触を、ヘリウムガスまたは凝縮性ガス、あるいはヘリウムガスと凝縮性ガスの両方を含む雰囲気下で行うことも好ましい。
【0084】
<<光照射工程>>
光照射工程では、上記インプリント用硬化性組成物に光を照射して硬化物を形成する。光照射工程における光照射の照射量は、硬化に必要な最小限の照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、インプリント用硬化性組成物の不飽和結合の消費量などを調べて適宜決定される。
照射する光の種類は特に定めるものではないが、紫外光が例示される。
また、本発明に適用されるインプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温とするが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドとインプリント用硬化性組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。また、上記パターンの形成方法中、光照射時における好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲である。
露光に際しては、露光照度を1~500mW/cmの範囲にすることが好ましく、10~400mW/cmの範囲にすることがより好ましい。露光の時間は特に限定されないが、0.01~10秒であることが好ましく、0.5~1秒であることがより好ましい。露光量は、5~1000mJ/cmの範囲にすることが好ましく、10~500mJ/cmの範囲にすることがより好ましい。
上記パターンの形成方法においては、光照射により膜状のインプリント用硬化性組成物(パターン形成層)を硬化させた後、必要に応じて、硬化させたパターンに熱を加えてさらに硬化させる工程を含んでいてもよい。光照射後にインプリント用硬化性組成物を加熱硬化させるための温度としては、150~280℃が好ましく、200~250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5~60分間が好ましく、15~45分間がさらに好ましい。
【0085】
<<離型工程>>
離型工程では、上記硬化物と上記モールドとを引き離す(図1(5))。得られたパターンは後述する通り各種用途に利用できる。
すなわち、本発明では、上記下層膜の表面に、さらに、インプリント用硬化性組成物から形成されるパターンを有する、積層体が開示される。また、本発明で用いるインプリント用硬化性組成物からなるパターン形成層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.01μm~30μm程度である。
さらに、後述するとおり、エッチング等を行うこともできる。
【0086】
<パターンとその応用>
上述のように上記パターン(硬化物パターン)の形成方法によって形成されたパターンは、液晶表示装置(LCD)などに用いられる永久膜や、半導体素子製造用のエッチングレジスト(リソグラフィ用マスク)として使用することができる。特に、本明細書では、本発明の好ましい実施形態に係るパターンの形成方法によりパターンを得る工程を含む、半導体デバイス(回路基板)の製造方法を開示する。さらに、本発明の好ましい実施形態に係る半導体デバイスの製造方法では、上記パターンの形成方法により得られたパターンをマスクとして基板にエッチングまたはイオン注入を行う工程と、電子部材を形成する工程と、を有していてもよい。上記半導体デバイスは、半導体素子であることが好ましい。すなわち、本明細書では、上記パターン形成方法を含む半導体デバイスの製造方法を開示する。さらに、本明細書では、上記半導体デバイスの製造方法により半導体デバイスを得る工程と、上記半導体デバイスと上記半導体デバイスを制御する制御機構とを接続する工程と、を有する電子機器の製造方法を開示する。
また、上記パターンの形成方法によって形成されたパターンを利用して液晶表示装置のガラス基板にグリッドパターンを形成し、反射や吸収が少なく、大画面サイズ(例えば55インチ、60インチ、(1インチは2.54センチメートルである))の偏光板を安価に製造することが可能である。例えば、特開2015-132825号公報や国際公開第2011/132649号に記載の偏光板が製造できる。
本発明で形成されたパターンは、図1(6)(7)に示す通り、エッチングレジスト(リソグラフィ用マスク)としても有用である。パターンをエッチングレジストとして利用する場合には、まず、基板上に上記パターンの形成方法によって、例えば、ナノまたはミクロンオーダーの微細なパターンを形成する。本発明では特にナノオーダーの微細パターンを形成でき、さらにはサイズが50nm以下、特には30nm以下のパターンも形成できる点で有益である。上記パターンの形成方法で形成するパターンのサイズの下限値については特に定めるものでは無いが、例えば、1nm以上とすることができる。
また、本発明では、基板上に、本発明の好ましい実施形態に係るパターンの形成方法によりパターンを得る工程と、得られた上記パターンを用いて上記基板にエッチングを行う工程と、を有する、インプリント用モールドの製造方法も開示する。
ウェットエッチングの場合にはフッ化水素等、ドライエッチングの場合にはCF等のエッチングガスを用いてエッチングすることにより、基板上に所望のパターンを形成することができる。パターンは、特にドライエッチングに対するエッチング耐性が良好である。すなわち、上記パターンの形成方法によって形成されたパターンは、リソグラフィ用マスクとして好ましく用いられる。
【0087】
本発明で形成されたパターンは、具体的には、磁気ディスク等の記録媒体、固体撮像素子等の受光素子、LED(light emitting diode)や有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)等の発光素子、液晶表示装置(LCD)等の光デバイス、回折格子、レリーフホログラム、光導波路、光学フィルタ、マイクロレンズアレイ等の光学部品、薄膜トランジスタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、反射防止膜、偏光板、偏光素子、光学フィルム、柱材等のフラットパネルディスプレイ用部材、ナノバイオデバイス、免疫分析チップ、デオキシリボ核酸(DNA)分離チップ、マイクロリアクター、フォトニック液晶、ブロックコポリマーの自己組織化を用いた微細パターン形成(directed self-assembly、DSA)のためのガイドパターン等の作製に好ましく用いることができる。
【実施例
【0088】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0089】
<インプリント用下層膜形成用組成物の調製>
下記表4、5に示す成分を含有する溶液を調製した。これを孔径0.02μmのナイロンフィルタおよび孔径0.010μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルタでろ過して、実施例および比較例に示すインプリント用下層膜形成用組成物を調製した。
【0090】
<インプリント用硬化性組成物の調製>
下表8に記載の各種化合物を混合し、さらに重合禁止剤として4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカル(東京化成社製)を重合性化合物の合計量に対して200質量ppm(0.02質量%)となるように加えて調製した。これを孔径0.02μmのナイロンフィルタおよび孔径0.001μmのPTFEフィルタでろ過して、インプリント用硬化性組成物を調製した。
【0091】
<分子量の測定方法>
重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC測定)に従い、ポリスチレン換算値として定義した。装置はHLC-8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000およびTSKgel Super HZ2000(東ソー(株)製)を用いた。溶離液は、THF(テトラヒドロフラン)を用いた。検出は、RI検出器を用いた。
上記の方法で分子量の同定が困難なものを含め、低分子量の化合物(分子量が約1000以下の化合物)については、LC-MS、NMR、IR等の常法により化学構造を特定し、特定された化学式から分子量を決定した。
【0092】
<接触角の評価>
基板に対する水(表面張力72.9mN/m)の接触角の測定は、協和界面科学(株)製、DMs-401を用いて23℃で行った。液滴着弾後500m秒後の値をn=3で測定し、その平均値を接触角とした。
【0093】
<下層膜の形成/膜厚評価>
下記表4、5に記載の基板上に、下記表4、5に記載のインプリント用下層膜形成用組成物をスピンコートし、ホットプレートを用いて200℃に加熱し、下層膜を形成した。厚さは、約10nmとなるように塗布量等を調節した。下層膜の膜厚(FT1)はエリプソメータおよび原子間力顕微鏡により測定した。
【0094】
<液膜>
実施例10については以下のように基板の上にインプリント用下層膜形成用組成物を形成し、その上に液膜を適用した。具体的には、下記化合物(AB)を1-メトキシ-2-プロパノール(プロピレングリコ-ルモノメチルエ-テル)で0.3質量%に希釈し、塗布液(AB)を準備した。各基板の表面に塗布液(AB)を8nmの厚さになるようにスピンコートして、60℃1分間にてホットプレートを用いて加熱し、液膜を形成した。
【化5】
【0095】
<密着性の評価>
上記で得られた下層膜表面に、23℃に温度調整したインプリント用硬化性組成物V1およびV2のいずれかを塗布した。具体的には、富士フイルムダイマティックス製インクジェットプリンターDMP-2831を用いて、ノズルあたり6pLの液滴量で吐出して、上記下層膜上に液滴を塗布した。次に、インプリント用硬化性組成物の液滴上に、特開2014-24322号公報の実施例6に示す密着層形成用組成物をスピンコートした石英ウエハをHe雰囲気下(置換率90%以上)で押接し、インプリント用硬化性組成物を押印した。押印後10秒が経過した時点で、モールド側から高圧水銀ランプを用い、150mJ/cmの条件で露光した。露光後のモールドを剥離する際に必要な力を測定し、下層膜の密着力Fとした。
A:F≧30N
B:25N≦F<30N
C:20N≦F<25N
D:F<20N
【0097】
<面状評価(下層膜の表面平坦性の評価)>
上記で得られた下層膜を、原子間力顕微鏡(AFM、ブルカー・エイエックスエス製Dimension Icon)を用いて、10μm角を1024x1024ピッチで表面凹凸データを測定し、算術平均表面粗さ(Ra)を算出した。結果は下記表に示す。
A:0nm≦Ra<0.8nm
B:0.8nm≦Ra<1.6nm
C:1.6nm≦Ra
【0098】
上記の評価結果を、下記表4、5に併せて示す。
【表4】
【表5】
【0099】
重合体
【表6】
【0100】
低分子化合物:実施例・・・上述の例示化合物
比較例・・・下記の化合物
【表7】
【0101】
インプリント用硬化性組成物
【表8】
配合量の単位は質量部
沸点の単位は℃(1013.25hPa)
【0102】
<基板>
SOC-1:直径8インチのシリコンウエハ上にスピンオンカーボン膜ODL-102(信越化学工業社製)をスピンコート法で塗布し、240℃で60秒間ベークを行い、膜厚200nmのSOC(Spin on Carbon)膜を形成した基板。水との接触角が45°となった。
SOC-2:直径8インチの窒化ケイ素ウエハ上にスピンオンカーボン膜ODL-50(信越化学工業社製)をスピンコート法で塗布し、240℃で60秒間ベークを行い、膜厚200nmのSOC(Spin on Carbon)膜を形成した基板。水との接触角が60°となった。
SOC-3:直径8インチのシリコンウエハ上にSOC NCA9053EH(日産化学社製)をスピンコート法で塗布し、240℃で60秒間ベークを行い、膜厚200nmのSOC(Spin on Carbon)膜を形成した基板。水との接触角が75°となった。
Si(Si基板):直径8インチのシリコンウエハ。水との接触角が30°であった。
処理Si(オゾン処理したSi基板):直径8インチのシリコンウエハをUV照射機(セン特殊光源株式会社製、PL21-200-4)にて5分間UV照射した基板。水との接触角が5°となった。
【0103】
上記の結果から明らかなとおり、特定重合体と特定低分子化合物とを含有させたインプリント用下層膜形成用組成物は、一般的なSi基板はもとより、カーボン含量が異なり水に対する接触角の異なるSOC基板や、Si基板をオゾン処理した基板など、多様な基板に対して良好な密着性を実現しており、汎用性の高い材料であることが分かった(実施例1~11)。さらに、本発明のインプリント用下層膜形成用組成物は、(メタ)アクリレート化合物の液膜を基板上に形成し、その上に適用して下層膜を形成する態様であっても、密着性に優れ、下層膜の上に形成したインプリント用硬化性組成物の層の面状にも優れることが分かった(実施例10)。
一方、低分子化合物を用いないインプリント用下層膜形成用組成物では、特に接触角の高い撥水性(疎水性)のSOC基板に対して、十分な密着性が得られなかった(比較例1)。低分子化合物を用いていても、重合性基のないもの(C-1)、pKaが高すぎるもの(C-3)、酸基のないもの(C-4)では、親水性の程度によらず、SOC基板およびSi基板に対して十分な密着性が得られなかった(比較例2、4、5、6)。共存させる化合物が重合性基および酸基を有していても、分子量の大きな化合物(C-2)では、水との接触角の大きい撥水性のSOC基板に対して、十分な密着性が得られなかった(比較例3)。
【0104】
実施例1で使用した低分子化合物B-1に代えてB-2~B-12を用いて、それぞれSOC-1、SOC-2、SOC-3、Si、オゾン(O)処理したSi基板の各基板との密着性試験を行った。その結果、いずれの低分子化合物についてもAまたはBの結果であった。
【符号の説明】
【0105】
1 基板
2 下層膜
3 インプリント用硬化性組成物
4 モールド
図1