(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
H02K 19/10 20060101AFI20220523BHJP
H02P 25/08 20160101ALI20220523BHJP
H02K 3/52 20060101ALI20220523BHJP
H02K 3/04 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
H02K19/10 A
H02P25/08
H02K3/52 E
H02K3/04 J
(21)【出願番号】P 2021143422
(22)【出願日】2021-09-02
【審査請求日】2021-09-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】521210667
【氏名又は名称】株式会社A.H.MotorLab
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】特許業務法人プロウィン特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新口 昇
(72)【発明者】
【氏名】平田 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寛典
(72)【発明者】
【氏名】竹村 望
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/161509(WO,A1)
【文献】特開平08-116651(JP,A)
【文献】特開2008-067461(JP,A)
【文献】特開平11-113229(JP,A)
【文献】国際公開第2014/097432(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 19/10
H02P 25/08
H02K 3/52
H02K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転可能に配置された回転子と、内周に複数のティース部が形成された固定子を有するモータ部と、
前記モータ部に電力を供給するスイッチインバータ部と、
前記スイッチインバータ部に含まれる各スイッチを制御するスイッチ制御部とを備えるモータ装置であって、
前記回転子が強磁性体で構成されたスイッチトリラクタンスモータであり、
前記複数のティース部には、
複数系統の6相巻線が巻回されており、
前記複数系統の6相巻線は、前記固定子の周方向に沿って環状にA相、B相、C相、D相、E相およびF相が順に繰り返して接続されており、
前記6相巻線の各系統において互いに対応する各相は、それぞれ前記スイッチインバータ部における同じ相に電気的に接続され、
前記A相、前記B相、前記C相、前記D相、前記E相および前記F相には、位相が順に60度ずつ異なる信号が前記スイッチインバータ部から印加されることを特徴とするモータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ装置であって、
前記固定子の外部にn本のバスバーを有し、前記バスバーは各々前記スイッチインバータ部の各相に電気的に接続され、
前記各系統において互いに対応する前記各相は、共通の前記バスバーに電気的に接続されていることを特徴とするモータ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のモータ装置であって、
前記ティース部に巻回された前記巻線の一端は、隣接する前記巻線の他端と共に前記固定子の外部に導出されていることを特徴とするモータ装置。
【請求項4】
請求項
1から3の何れか一つに記載のモータ装置であって、
前記回転子の極数Pと、前記ティース部のスロット数Sの比は、P:S=5:6であることを特徴とするモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置に関し、特に、回転子に強磁性体を用いるスイッチトリラクタンスモータのモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な技術分野において、交流の周波数を変化させることで回転数を制御でき、安定した回転数を得られる三相モータが動力源として用いられている。また、回転子に強磁性体を用いるスイッチトリラクタンスモータも提案されている(例えば特許文献1を参照)。また、複数の相を備えた多相巻線を複数系統備えたモータ装置も提案されている。
【0003】
図8は、従来の6相巻線を2系統備えたモータ装置の駆動回路を簡略化して示す回路図である。
図8に示すようにモータ装置は、第1系統の6相巻線としてA1相コイル、B1相コイル、C1相コイル、D1相コイル、E1相コイルおよびF1相コイルを有し、第2系統の6相巻線としてA2相コイル、B2相コイル、C2相コイル、D2相コイル、E2相コイルおよびF2相コイルを有している。また、A1相コイルとA2相コイル、B1相コイルとB2相コイル、C1相コイルとC2相コイル、D1相コイルとD2相コイル、E1相コイルとE2相コイル、およびF1相コイルとF2相コイルは、それぞれ並列接続されると共に、A-F相が直列接続されている。
【0004】
また、F相コイルとA相コイルの間、A相コイルとB相コイルの間、B相コイルとC相コイルの間、C相コイルとD相コイルの間、D相コイルとE相コイルの間、およびE相コイルとF相コイルの間は、それぞれスイッチインバータ部のA相スイッチからF相スイッチに接続され、各スイッチがオンの場合には電位Va~Vfが供給される。このようなモータ装置では、スイッチインバータ部のA相スイッチからF相スイッチが順次オン/オフ切り替えされることで、各コイルの両端に印加される電位差によって電流が流れ、回転子が回転される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に示した従来のモータ装置では、2系統の対応する各相(例えばA1相とA2相)は固定子の対向するティース(突極)に巻回され、コイルの両端が並列接続される。そのため2系統の6相巻線では、合計12本の配線が固定子の外周で引き回されて直並列に接続されることになり、結線作業が煩雑化するという問題があった。固定子のティース数を増加させて、2系統以上の6相巻線を巻回する場合にはさらに配線数が増加し、結線作業がさらに煩雑化してしまう。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、複数系統の多相巻線を固定子のティース部に巻回しても、結線作業を容易に行うことが可能なモータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のモータ装置は、回転軸を中心に回転可能に配置された回転子と、内周に複数のティース部が形成された固定子を有するモータ部と、前記モータ部に電力を供給するスイッチインバータ部と、前記スイッチインバータ部に含まれる各スイッチを制御するスイッチ制御部とを備えるモータ装置であって、前記回転子が強磁性体で構成されたスイッチトリラクタンスモータであり、前記複数のティース部には、複数系統の6相巻線が巻回されており、前記複数系統の6相巻線は、前記固定子の周方向に沿って環状にA相、B相、C相、D相、E相およびF相が順に繰り返して接続されており、前記6相巻線の各系統において互いに対応する各相は、それぞれ前記スイッチインバータ部における同じ相に電気的に接続され、前記A相、前記B相、前記C相、前記D相、前記E相および前記F相には、位相が順に60度ずつ異なる信号が前記スイッチインバータ部から印加されることを特徴とする。
【0009】
このような本発明のモータ装置では、n個の相が隣接して直列接続されたn相巻線は、m系統が環状に直列接続されており、対応する各相は、それぞれスイッチインバータ部における同じ相に接続される。これにより、環状に直列接続された各相の中間をスイッチインバータ部に接続することで各相に電流を供給できるため、結線作業を容易に行うことが可能となる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記固定子の外部にn本のバスバーを有し、前記バスバーは各々前記スイッチインバータ部の各相に電気的に接続され、前記各系統において互いに対応する前記各相は、共通の前記バスバーに電気的に接続されている。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記ティース部に巻回された前記巻線の一端は、隣接する前記巻線の他端と共に前記固定子の外部に導出されている。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記回転子の極数Pと、前記ティース部のスロット数Sの比は、P:S=5:6である。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、複数系統の多相巻線を固定子のティース部に巻回しても、結線作業を容易に行うことが可能なモータ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係るモータ装置におけるモータ部10の構成を示す図であり、
図1(a)は回路図であり、
図1(b)はモータ部10の構造例を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係るモータ装置のモータ部10とスイッチインバータ部の接続を示す等価回路図である。
【
図3】第1実施形態に係るモータ装置におけるスイッチインバータ部の制御を示すタイミングチャートであり、
図3(a)はスイッチインバータ部の各相スイッチに印加される信号を示し、
図3(b)は各系統の各相コイルに流れる電流を示している。
【
図4】第2実施形態に係るモータ装置のモータ部10とスイッチインバータ部の接続を示す等価回路図である。
【
図5】第3実施形態に係るモータ装置におけるモータ部10の構成を示す図であり、
図5(a)は回路図であり、
図5(b)はモータ部10の構造例を示す模式図である。
【
図6】第4実施形態に係るモータ装置の構造を示す模式図であり、
図6(a)は模式斜視図であり、
図6(b)は上面図である。
【
図7】第4実施形態に係るモータ装置におけるモータ部10の等価回路を示す回路図である。
【
図8】従来の6相巻線を2系統備えたモータ装置の駆動回路を簡略化して示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係るモータ装置におけるモータ部10の構成を示す図であり、
図1(a)は回路図であり、
図1(b)はモータ部10の構造例を示す模式図である。
図1に示した例では、モータ装置は10突極12スロットのスイッチトリラクタンスモータを構成している。
【0017】
図1(a)(b)に示すように本実施形態のモータ部10は、回転子(ロータ)11と、回転子11の周囲に配置された固定子(ステータ)12を備えている。また、回転子11には、外周に沿って強磁性体からなるロータティース(突極)が配置されている。また固定子12は、コアバック部とその内周に突出して形成された複数のティース部13を備えている。また、各ティース部13に巻線(コイル)14が、A1相巻線~F1相巻線、A2相巻線~F2相巻線として巻回されている。A1相巻線~F1相巻線は、それぞれ1/6周期の差で配置されており第1系統の6相巻線(2つの3相巻線)を構成している。同様に、A2相巻線~F2相巻線は、それぞれ1/6周期の差で配置されており第2系統の6相巻線(2つの3相巻線)を構成している。
【0018】
図1(b)では、回転子11が10個のロータティースを備え、固定子12が12個のティース部13を備えた10極12スロットのスイッチトリラクタンスモータの例を示している。モータ部10の極数Pとスロット数Sは、10極12スロットには限定されないが、P:S=5:6の比率となっている。また、ティース部13への各相の巻回方法も集中巻きに限定されず分布巻きであってもよい。
【0019】
コアバック部は、回転子11の外側に回転子11の外周を円周状に取り囲むように配置された部分であり、内周に複数のティース部13が等間隔に突出して形成されている。コアバック部には公知のものを用いることができ、構成する材料や構造は限定されない。また、コアバック部よりも外周には別途モータハウジング等の部材が設けられている。
【0020】
ティース部13は、コアバック部の内周面から回転子11に向かって突出して形成された突起状部分であり、各ティース部13は同じ長さと形状で形成されると共に等間隔に配置されており、各ティース部13の間には間隔が設けられてスロットを構成している。各ティース部13およびスロットには、巻線14が巻回されており、巻線14に電流が流れることでティース部13に磁界が発生する。
【0021】
第1系統の6相巻線A1~F1と第2系統の6相巻線A2~F2は、それぞれ隣接したティース部13に順に巻回されて環状に直列接続されている。つまり、固定子12のティース部13には、6個の相(n=6)が隣接して直列接続された6相巻線が、2系統(m=2)環状に直列接続されている。また、第1系統と第2系統の対応するA1~F1とA2~F2の各相は、固定子12において180度異なるティース部13に巻回されている。
【0022】
図2は、本実施形態に係るモータ装置のモータ部10とスイッチインバータ部の接続を示す等価回路図である。
図2に示すように、本実施形態のスイッチインバータ部は、電源電圧(+V)と接地電圧(0V)の間に6つのスイッチA相~F相が並列に接続されている。スイッチA相,C相,E相は、下流側に逆接続ダイオードが直列接続され、スイッチB相,D相,F相は、上流側に逆接続ダイオードが直列接続されている。これにより、合計6個のスイッチ(スイッチA相~スイッチF相)と6個の逆接続ダイオードで三相非対称型のスイッチインバータ部が構成されている。各スイッチは、それぞれドレインが電源電圧側(上流側)に接続され、ソースが接地電圧側(下流側)に接続されている。また、各スイッチとしてMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を用いる場合には、ソースとドレインの間に寄生ダイオードが並列に逆接続された等価回路となる。また、各スイッチはスイッチ制御部(図示省略)によって動作が制御される。
【0023】
図1および
図2に示したように、モータ部10の巻線A1と巻線B1の間、および巻線A2と巻線B2間はスイッチB相と逆接続ダイオードの間に接続されている。また、モータ部10の巻線B1と巻線C1の間、および巻線B2と巻線C2間はスイッチC相と逆接続ダイオードの間に接続されている。また、モータ部10の巻線C1と巻線D1の間、および巻線C2と巻線D2間はスイッチD相と逆接続ダイオードの間に接続されている。また、モータ部10の巻線D1と巻線E1の間、および巻線D2と巻線E2間はスイッチE相と逆接続ダイオードの間に接続されている。また、モータ部10の巻線E1と巻線F1の間、および巻線E2と巻線F2間はスイッチF相と逆接続ダイオードの間に接続されている。また、モータ部10の巻線F1と巻線A1の間、および巻線F2と巻線A2間はスイッチA相と逆接続ダイオードの間に接続されている。つまり、第1系統および第2系統の各系統において互いに対応する巻線A1~巻線F1と巻線A2~巻線F2の各相は、それぞれスイッチインバータ部における同じ相に電気的に接続される。
【0024】
したがって、巻線A1,A2の両端には、スイッチA相のソース側電位Vaと、スイッチB相のドレイン側電位Vbが印加される。同様に、巻線B1,B2の両端には、スイッチB相のドレイン側電位Vbと、スイッチC相のソース側電位Vcとが印加される。同様に、巻線C1,C2の両端には、スイッチC相のソース側電位Vcと、スイッチD相のドレイン側電位Vdが印加される。同様に、巻線D1,D2の両端には、スイッチD相のドレイン側電位Vdと、スイッチE相のソース側電位Veが印加される。同様に、巻線E1,E2の両端には、スイッチE相のソース側電位Veと、スイッチF相のドレイン側電位Vfが印加される。同様に、巻線F1,F2の両端には、スイッチF相のドレイン側電位Vfと、スイッチA相のソース側電位Vaが印加される。
【0025】
図1および
図2に示したように、本実施形態のモータ装置では、環状に直列接続された各相の巻線A1~F1,A2~F2の中間をスイッチインバータ部に接続する。これにより、各相の巻線A1~F1,A2~F2に電流を供給するための配線を固定子12の外部に引き回す必要がなくなり、結線作業を容易に行うことが可能となる。
【0026】
図3は、本実施形態に係るモータ装置におけるスイッチインバータ部の制御を示すタイミングチャートであり、
図3(a)はスイッチインバータ部の各相スイッチに印加される信号を示し、
図3(b)は各系統の各相コイルに流れる電流を示している。
図3(a)の横軸は電気角(度)を示し、縦軸は各スイッチに印加されるオン信号とオフ信号を示している。
図3(b)の横軸は電気角(度)を示し、縦軸は各巻線を流れる電流を示している。
図3(b)においては、各系統の対応する巻線A1~巻線F1と巻線A2~巻線F2とをそれぞれA~Fとして代表して示している。
【0027】
図3(a)に示したように、A相~F相の各スイッチには、オン信号とオフ信号が180度(π)ずつ交互に印加される。また、A相~F相のオン信号とオフ信号は、それぞれ60度(π/3)ずつ位相がずれている。また、A相とD相、B相とE相、C相とF相は位相が180度(π)異なって互いに反転した信号が印加されている。換言すると、A相~F相の各スイッチには、A相、C相、E相と、B相、D相、F相の2つの三相交流信号が印加されている。したがって、巻線A1~巻線F1と巻線A2~巻線F2は、スイッチA相~F相で制御されることで、それぞれ2つの三相モータを備えた合計6相を有するモータとして機能する。
【0028】
図3(b)に示したように、巻線A1~巻線F1と巻線A2~巻線F2を流れる電流は、スイッチインバータ部のA相~F相のオン信号よりも30度(π/6)だけ位相が進んだものとなる。また、A相とD相、B相とE相、C相とF相は位相が180度(π)異なって互いに反転した電流が流れる。このとき、コイルである巻線A1~巻線F1と巻線A2~巻線F2は環状に直列に接続されており、各巻線の間がスイッチインバータ部の各スイッチに接続されているため、スイッチインバータ部の電源電位+Vからオン状態の各スイッチと巻線を経て、他のオン状態のスイッチを経て設置電位に電流が流れる。これにより、巻線A1~巻線F1と巻線A2~巻線F2には60度ずつ位相が異なる電流が順に流れてティース部13に磁界が発生し、回転子11を回転させることができる。
【0029】
上述したように本実施形態のモータ装置では、6個の相が隣接して直列接続された6相巻線を環状に2系統直列接続し、対応する各相はそれぞれスイッチインバータ部における同じ相に接続されている。これにより、各相の巻線A1~F1,A2~F2に電流を供給するための配線を固定子12の外部に引き回す必要がなくなり、結線作業を容易に行うことが可能となる。
【0030】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図4を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。本実施形態ではスイッチインバータ部の構成を第1実施形態とは異ならせている。
図4は、本実施形態に係るモータ装置のモータ部10とスイッチインバータ部の接続を示す等価回路図である。
【0031】
図4に示すように、本実施形態のスイッチインバータ部は、電源電圧(+V)と接地電圧(0V)の間に3つのスイッチ群(AD群、EB群、CF群)が並列に接続されている。各スイッチ群には、2つのスイッチとその間に逆接続されたダイオードが直列接続されており、合計6個のスイッチ(スイッチA相~スイッチF相)と3個の逆接続ダイオードによる改良型9スイッチインバータで、スイッチインバータ部が構成されている。各スイッチは、それぞれドレインが電源電圧側(上流側)に接続され、ソースが接地電圧側(下流側)に接続されている。また、各スイッチとしてMOSFETを用いる場合には、ソースとドレインの間に寄生ダイオードが並列に逆接続された等価回路となる。また、各スイッチはスイッチ制御部(図示省略)によって動作が制御される。
【0032】
本実施形態でも、モータ部10の巻線A1~巻線F1と巻線A2~巻線F2は、それぞれ隣接して環状に直列接続されている。また、第1系統および第2系統の各系統において互いに対応する巻線A1~巻線F1と巻線A2~巻線F2の各相は、それぞれスイッチインバータ部における同じ相に電気的に接続される。また、スイッチインバータ部の各スイッチA相~F相に印加される信号と、巻線A1~巻線F1と巻線A2~巻線F2に流れる電流の関係は、
図3に示したものと同様になる。
【0033】
本実施形態のモータ装置でも、6個の相が隣接して直列接続された6相巻線を環状に2系統直列接続し、対応する各相はそれぞれスイッチインバータ部における同じ相に接続されている。これにより、各相の巻線A1~F1,A2~F2に電流を供給するための配線を固定子12の外部に引き回す必要がなくなり、結線作業を容易に行うことが可能となる。
【0034】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図5を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。本実施形態では、モータ部10としての突極とスロットの数を第1実施形態とは異ならせている。
図5は、本実施形態に係るモータ装置におけるモータ部10の構成を示す図であり、
図5(a)は回路図であり、
図5(b)はモータ部10の構造例を示す模式図である。
図5に示した例では、モータ装置は15突極18スロットのスイッチトリラクタンスモータを構成している。
【0035】
図5(a)(b)に示すように本実施形態のモータ部10は、各ティース部13に巻線(コイル)14が、A1相巻線~F1相巻線、A2相巻線~F2相巻線、A3相巻線~F3相巻線として巻回されている。A1相巻線~F1相巻線は、それぞれ1/6周期の差で配置されており第1系統の6相巻線(2つの3相巻線)を構成している。同様に、A2相巻線~F2相巻線は、それぞれ1/6周期の差で配置されており第2系統の6相巻線(2つの3相巻線)を構成している。同様に、A3相巻線~F3相巻線は、それぞれ1/6周期の差で配置されており第3系統の6相巻線(2つの3相巻線)を構成している。
【0036】
第1系統の6相巻線A1~F1、第2系統の6相巻線A2~F2、および第3系統の6相巻線A3~F3は、それぞれ隣接したティース部13に順に巻回されて環状に直列接続されている。つまり、固定子12のティース部13には、6個の相(n=6)が隣接して直列接続された6相巻線が、3系統(m=3)環状に直列接続されている。また、第1系統から第3系統の対応するA1~F1、A2~F2、A3~F3の各相は、固定子12において120度異なるティース部13に巻回されている。
【0037】
本実施形態でも、モータ部10の巻線A1~巻線F1と巻線A2~巻線F2は、それぞれ隣接して環状に直列接続されている。また、第1系統から第3系統の各系統において互いに対応する巻線A1~巻線F1と巻線A2~巻線F2の各相は、それぞれスイッチインバータ部における同じ相に電気的に接続される。また、スイッチインバータ部の各スイッチA相~F相に印加される信号と、巻線A1~巻線F1、巻線A2~巻線F2、巻線A3~巻線F3に流れる電流の関係は、
図3に示したものと同様になる。
【0038】
本実施形態のモータ装置でも、6個の相が隣接して直列接続された6相巻線を環状に3系統直列接続し、対応する各相はそれぞれスイッチインバータ部における同じ相に接続されている。これにより、各相の巻線A1~F1,A2~F2,A3~F3に電流を供給するための配線を固定子12の外部に引き回す必要がなくなり、結線作業を容易に行うことが可能となる。
【0039】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について
図6および
図7を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。本実施の形態では、固定子12の外部に設けたバスバーを用いる点が第1実施形態と異なっている。
図6は、本実施形態に係るモータ装置の構造を示す模式図であり、
図6(a)は模式斜視図であり、
図6(b)は上面図である。
図7は、本実施形態に係るモータ装置におけるモータ部10の等価回路を示す回路図である。
【0040】
図6(a)(b)に示すように本実施形態のモータ部10は、回転子11と、固定子12と、ティース部13と、巻線14と、バスバー21を備えている。また、各ティース部13に巻回された巻線14は、それぞれ1/6周期の差で配置されており、A2相巻線~F2相巻線が第1系統の6相巻線(2つの3相巻線)を構成し、A2相巻線~F2相巻線が第2系統の6相巻線(2つの3相巻線)を構成している。各巻線14の一端は、隣接する巻線14の他端と共に固定子12の外部に導出され、バスバー21と電気的に接続されている。
【0041】
ここで、隣接する巻線14の一端と他端を共に導出するとは、例えばA1巻線を構成する線材の一端(B1側)が延長され、B1巻線を構成する線材の他端(A1側)が延長され、同じ位置において外部に取り出されていることを示している。また、隣接する巻線14の一端と他端を共に導出する場合に、線材の強度向上と取り扱いを容易にするために、二つの線材を相互にツイストして撚り線とすることが好ましい。ティース部13に巻回された巻線14の一端と、隣接する巻線14の他端とを共に固定子12の外部に導出することで、2本の巻線14を一組としてスイッチインバータ部に接続する際の作業性が向上する。
【0042】
バスバー21は、モータ部10の固定子12外部に配置された導電性部材である。バスバー21は巻線14の相数と同じ本数が備えられており、半円状(円弧状)で巻線14の上方に配置されている。またバスバー21は、A1巻線~F1巻線とA2巻線~F2巻線のそれぞれ対応する相の間を電気的に接続すると共に、スイッチインバータ部に電気的に接続される。
【0043】
図6に示した例では、6本のバスバー21a~21fを有している。
図7に示したようにバスバー21aは、A1巻線とB1巻線の間およびA2巻線とB2巻線の間から導出された巻線の端部が接続されると共に、スイッチインバータ部のスイッチA相に電気的に接続される。同様にバスバー21bは、B1巻線とC1巻線の間およびB2巻線とC2巻線の間から導出された巻線の端部が接続されると共に、スイッチインバータ部のスイッチB相に電気的に接続される。同様にバスバー21cは、C1巻線とD1巻線の間およびC2巻線とD2巻線の間から導出された巻線の端部が接続されると共に、スイッチインバータ部のスイッチC相に電気的に接続される。同様にバスバー21dは、D1巻線とE1巻線の間およびD2巻線とE2巻線の間から導出された巻線の端部が接続されると共に、スイッチインバータ部のスイッチD相に電気的に接続される。同様にバスバー21eは、E1巻線とF1巻線の間およびE2巻線とF2巻線の間から導出された巻線の端部が接続されると共に、スイッチインバータ部のスイッチE相に電気的に接続される。同様にバスバー21fは、F1巻線とA1巻線の間およびF2巻線とA2巻線の間から導出された巻線の端部が接続されると共に、スイッチインバータ部のスイッチF相に電気的に接続される。換言すると、複数の系統における対応する巻線が共通のバスバー21に接続され、スイッチインバータ部の対応する相に接続されている。
【0044】
ここでは、バスバー21の形状として円弧状のものを例示したが、複数の系統における対応する相の巻線間を電気的に接続することが出来れば、直線状や曲線状、平板状、立体形状などで構成してもよい。また、バスバー21を設ける位置は上面に限定されず、固定子12の外部であれば固定子12の側面、底面等に設けるとしてもよい。また、
図6に示した例では6相巻線(2つの3相巻線)が2系統の場合を示したが、3系統以上を備える場合には、バスバー21の長さは全ての系統に対応するものとなる。一例として
図5に示した3系統の場合には系統数m=3であるため、(m-1)/m=2/3周の長さが必要となる。
【0045】
本実施形態のモータ装置では、固定子12の外部に相数nに対応する本数nのバスバー21を有し、バスバー21は各々スイッチインバータ部の各相に電気的に接続され、各系統において互いに対応する各相が共通のバスバー21に電気的に接続されるため、巻線14を固定子12の外部で引き回す必要がない。これにより、結線作業をさらに容易に行うことが可能となる。
【0046】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
10…モータ部
11…回転子
12…固定子
13…ティース部
14…巻線
21,21a~21f…バスバー
【要約】
【課題】複数系統の多相巻線を固定子のティース部に巻回しても、結線作業を容易に行うことが可能なモータ装置を提供する。
【解決手段】回転子(11)と、モータ部(10)と、スイッチインバータ部と、スイッチ制御部とを備えるモータ装置であって、回転子(11)が強磁性体で構成されたスイッチトリラクタンスモータであり、複数のティース部(13)には、n,mを2以上の自然数として、n個の相が隣接して直列接続されたn相巻線が巻回されており、m系統のn相巻線(A1~F1、A2~F2)が環状に直列接続されており、各系統において互いに対応する各相(A1~F1、A2~F2)は、それぞれスイッチインバータ部における同じ相(A相~F相)に電気的に接続されている。
【選択図】
図1