(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 51/06 20060101AFI20220523BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20220523BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
C08L51/06
C08L33/06
C08F265/06
(21)【出願番号】P 2020563956
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(86)【国際出願番号】 KR2019015347
(87)【国際公開番号】W WO2020101326
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】10-2018-0139153
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0142395
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヨン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ダ・ウン・スン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヒ・アン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ミン・ジャン
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-509048(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0185959(US,A1)
【文献】特表2015-522084(JP,A)
【文献】特表2008-514466(JP,A)
【文献】特開昭63-254154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 51/06
C08L 33/06
C08F 265/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体をグラフト重合したグラフト共重合体;
C
1からC
3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第1マトリックス共重合体;
C
1からC
3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第2マトリックス共重合体;及び
C
1からC
3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を含む重合体を含む添加剤を含み、
前記第1マトリックス共重合体と前記第2マトリックス共重合体は、重量平均分子量が互いに異な
り、
前記グラフト共重合体、第1マトリックス共重合体及び第2マトリックス共重合体の合計100重量部に対して、
前記グラフト共重合体30から90重量部;
前記第1マトリックス共重合体1から65重量部;
前記第2マトリックス共重合体1から25重量部;及び
前記添加剤0.1から5.0重量部で含み、
前記グラフト共重合体は、前記グラフト共重合体の製造時に投入される単量体の総重量に対して、C
4
からC
10
のアルキル(メタ)アクリレート系単量体を30から50重量%、前記芳香族ビニル系単量体を30から50重量%、及び前記ビニルシアン系単量体を10から30重量%で含み、
前記第1マトリックス共重合体及び第2マトリックス共重合体は、前記第1マトリックス共重合体又は第2マトリックス共重合体の総重量に対して、それぞれ、前記C
1
からC
3
のアルキル(メタ)アクリレート系単量体を60から90重量%、前記芳香族ビニル系単量体を8から32重量%、及び前記ビニルシアン系単量体を2から12重量%で含み、
前記重合体は、C
1
からC
3
のアルキルメタアクリレート系単量体、及びC
1
からC
3
のアルキルアクリレート系単量体を90:10から99:1の重量比で含む、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記第1マトリックス共重合体と第2マトリックス共重合体の重量平均分子量の差は、50,000から150,000g/molである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記第1マトリックス共重合体は、重量平均分子量が160,000から240,000g/molである、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記第2マトリックス共重合体は、重量平均分子量が60,000から140,000g/molである、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記第1マトリックス共重合体及び第2マトリックス共重合体を55:45から95:5の重量比で含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記グラフト共重合体は、アクリル系ゴム質重合体の平均粒径が40.0から400.0nmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記グラフト共重合体は、アクリル系ゴム質重合体の平均粒径が40.0から100.0nmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記グラフト共重合体は、アクリル系ゴム質重合体の平均粒径が150.0から400.0nmである、請求項1~
6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記重合体は、C
1からC
3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を2種以上含む共重合体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記重合体は、重量平均分子量が30,000から90,000g/molである、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本発明は、2018年11月13日付で出願された韓国特許出願第10-2018-0139153号及び2019年11月8日付で出願された韓国特許出願第10-2019-0142395号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関し、伸び率、耐候性、表面光沢、外観品質、耐スクラッチ性及び白化現象が改善された熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
硬化(curing)工程を含む従来のペイントコーティング工程では、揮発性有機化合物(volatile organic compounds)のような有害な物質が大気に放出されるという環境汚染の問題により全世界的に法的規制が強化されている。
【0004】
このような理由により、現在、家電製品の外板素材は、腐食防止、低摩擦、及び外観光沢のためのPCM(polymer coated metal)が一般的に用いられている。特に、最終製品の高級化の需要に合わせて、PCM素材のうち、ビニル樹脂がコーティングされたVCM(vinyl coated metal)の使用が増加する傾向である。VCMは、亜鉛メッキ鋼板上にPVCとPETフィルムがコーティングされた素材であって、家電製品の外板素材として用いられている。VCMは、さらに建装材、家具、自動車、電気材料、屋根(roof tile)などに用いられ得る。
【0005】
現在、多様なVCM用コーティング素材を開発しているが、PVCとPETフィルムがコーティングされた外板素材は耐候性に劣るため、耐候性に優れたASAグラフト共重合体が代案となり得る。このようなASAグラフト共重合体は、コアとして衝撃向上のために主にアクリル系ゴム質重合体を用いて、シェルはマトリックス共重合体との着色性及び分散性を向上させるために、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどを用いる。
【0006】
ASAグラフト共重合体をVCMに適用するためには、板金のためのプレス工程時の破れを防止するための高い伸び率が必要であり、高温加工時にも表面品質に優れていなければならない。
【0007】
これに伴い、高い伸び率を有しながら、高温加工時にも気泡が発生しないASAグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を開発しようとする努力が続いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、耐衝撃性及び硬度などの基本物性は維持しながら、伸び率、耐候性、表面光沢、外観品質、耐スクラッチ性及び白化現象が改善された熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、アクリル系ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体をグラフト重合したグラフト共重合体;C1からC3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第1マトリックス共重合体;C1からC3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第2マトリックス共重合体;及びC1からC3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を含む重合体を含む添加剤を含み、前記第1マトリックス共重合体と前記第2マトリックス共重合体は、重量平均分子量が互いに異なるものである熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性及び硬度などの基本物性に優れるとともに、伸び率、耐候性、表面光沢、外観品質、耐スクラッチ性及び白化現象が顕著に改善され得る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をさらに詳しく説明する。
【0012】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0013】
本発明で、シード、コア、アクリル系ゴム質重合体及びグラフト共重合体の平均粒径は、動的光散乱(dynamic light scattering)法を用いて測定することができ、詳細には、Particle Sizing Systems社のNicomp 380 HPL装置を用いて測定することができる。
【0014】
本明細書で、平均粒径は、動的光散乱法によって測定される粒度分布における算術平均粒径、具体的には、散乱強度平均粒径を意味することができる。
【0015】
本発明で、グラフト共重合体のグラフト率は、下記式で算出することができる。
グラフト率(%):グラフトされた単量体の重量(g)/ゴム質重合体重量(g)×100
グラフトされた単量体の重量(g):グラフト共重合体1gをアセトン30gに溶解させて遠心分離した後の不溶性物質(gel)の重量
ゴム質重合体重量(g):グラフト共重合体粉末中の理論上C4からC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体の重量、またはグラフト共重合体の製造時に投入されたC4からC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体の重量
【0016】
本発明で、グラフト共重合体のシェルの重量平均分子量は、アクリル系ゴム質重合体にグラフトされた芳香族ビニル系単量体単位とビニルシアン系単量体単位を含む共重合体の重量平均分子量を意味することができる。
【0017】
本発明で、グラフト共重合体のシェルの重量平均分子量は、グラフト率の測定時にアセトンに溶けた部分(sol)をTHF(テトラヒドロフラン)溶液に溶かした後、ゲル浸透クロマトグラフィーを介して標準PS(ポリスチレン標準;standard polystyrene)試料に対する相対値で測定することができる。
【0018】
本発明で、第1マトリックス共重合体及び第2マトリックス共重合体の重量平均分子量は、溶出液としてTHFを用い、ゲル浸透クロマトグラフィーを介して標準試料であるポリ(メチルメタクリレート)(製造社:Polymer Laboratories)に対する相対値で測定することができる。
【0019】
本発明で、第1マトリックス共重合体及び第2マトリックス共重合体の重合転換率は、下記式で計算され得る。
重合転換率(%)={(実際に収得された共重合体の固形分重量)/(処方上投入された単量体の重量)}×100
【0020】
本発明で、添加剤に含まれた重合体の重量平均分子量は、溶出液としてテトラヒドロフランを用い、ゲル浸透クロマトグラフィーを介して標準試料であるポリ(メチルメタクリレート)(製造社:Polymer Laboratories)に対する相対値で測定することができる。
【0021】
本発明で、添加剤に含まれた重合体の重合転換率は、重合体から残留単量体成分をクロロホルム(CHCl3)とメタノールを用いた再沈殿法で抽出し、ガスクロマトグラフィー/質量分光法(GC/MSD)を用いて定量分析して測定することができる。
【0022】
本発明で、重合体は、1種の単量体を重合して形成される単一重合体(homopolymer)及び2種以上の単量体を重合して形成される共重合体(copolymer)を全て含む意味であってよい。
【0023】
本発明で、芳香族ビニル系単量体単位は、芳香族ビニル系単量体由来の単位であってよく、芳香族ビニル系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、及び2,4-ジメチルスチレンからなる群から選択される1種以上であってよく、このうちスチレンが好ましい。
【0024】
本発明で、ビニルシアン系単量体単位は、ビニルシアン系単量体由来の単位であってよく、ビニルシアン系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びエタクリロニトリルからなる群から選択される1種以上であってよく、このうちアクリロニトリルが好ましい。
【0025】
本発明で、C1からC3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位は、C1からC3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体由来の単位であってよく、C1からC3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びプロピル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上であってよく、このうち、メチルメタクリレート及びメチルアクリレートからなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0026】
1.熱可塑性樹脂組成物
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、1)アクリル系ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体をグラフト重合したグラフト共重合体;2)C1からC3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第1マトリックス共重合体;3)C1からC3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第2マトリックス共重合体;及び4)C1からC3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を含む重合体を含む添加剤を含み、前記2)第1マトリックス共重合体と前記3)第2マトリックス共重合体は、重量平均分子量が互いに異なる。
【0027】
以下、本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物の構成要素に対して詳しく説明する。
【0028】
1)グラフト共重合体
グラフト共重合体は、アクリル系ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体をグラフト重合したものである。
【0029】
前記グラフト共重合体は、可塑性樹脂組成物の耐候性、伸び率、着色性、耐化学性、加工性、表面光沢特性、白化特性を改善させることができる。
【0030】
前記アクリル系ゴム質重合体は、平均粒径が40.0から400.0nm、50.0から320.0nm、または65.0から310.0nmであってよく、このうち65.0から310.0nmが好ましい。前述した範囲を満たすと、耐候性及び耐衝撃性に優れたグラフト共重合体を提供することができる。
【0031】
一方、グラフト共重合体の耐候性、着色性、耐化学性、外観品質、伸び率及び白化特性を顕著に改善させるためには、前記アクリル系ゴム質重合体の平均粒径が40.0から100.0nm、50.0から90.0nmまたは65.0から75.0nmであってよく、このうち65.0から75.0nmが好ましい。詳しくは、前記アクリル系ゴム質重合体の平均粒径は、小さいほど比表面積が増加するため耐候性が増加し得る。また、可視光線がアクリル系ゴム質重合体を通過することができるので、着色性が顕著に改善され得る。また、前記グラフト共重合体が熱可塑性樹脂組成物に高い含量で均一に分散され得るので、伸び率及び白化特性が顕著に改善され得る。
【0032】
また、グラフト共重合体の耐衝撃性、耐化学性及び外観品質を顕著に改善させるためには、前記アクリル系ゴム質重合体は、平均粒径が150.0から400.0nm、230.0から320.0nmまたは250.0から310.0nmであってよく、このうち250.0から310.0nmが好ましい。
【0033】
前記グラフト共重合体は、ブチルアクリレートゴム質重合体にスチレン及びアクリロニトリルをグラフト共重合した共重合物であってよい。
【0034】
前記グラフト共重合体は、グラフト率が25から50%または30から45%であってよく、このうち、30から45%が好ましい。前述した範囲を満たすと、アクリル系ゴム質重合体にグラフトされた芳香族ビニル系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位によりマトリックス共重合体との相溶性が顕著に改善されるだけでなく、熱可塑性樹脂組成物の伸び率、白化特性及び耐衝撃性が顕著に改善され得る。
【0035】
前記グラフト共重合体は、シェルの重量平均分子量が30,000から200,000g/molまたは50,000から180,000g/molであってよく、このうち80,000から150,000g/molが好ましい。前述した範囲を満たすと、マトリックス共重合体との相溶性が改善され、熱可塑性樹脂組成物内にグラフト共重合体、具体的にはアクリル系ゴム質重合体の分散性が向上し得る。
【0036】
一方、前記グラフト共重合体は、C4からC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体からなる群から選択される1種以上を投入し架橋反応してシードを製造し、前記シード存在下にC4からC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体を投入し架橋反応してコアを製造し、前記コアの存在下に、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を投入しグラフト重合してシェルを製造することにより製造され得る。
【0037】
ここで、前記コアは、前述のアクリル系ゴム質重合体を意味することができる。
【0038】
前記C4からC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体は、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート及びデシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上であってよく、このうち、ブチルアクリレートが好ましい。
【0039】
前記C4からC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体は、前記グラフト共重合体の製造時に投入される単量体の総重量に対して、30から50重量%または35から45重量%で投入されてよく、このうち、35から45重量%で投入されることが好ましい。前述の範囲を満たすと、グラフト共重合体の耐候性、耐衝撃性、表面光沢特性、伸び率及び白化特性がより改善され得る。
【0040】
前記芳香族ビニル系単量体は、前記グラフト共重合体の製造時に投入される単量体の総重量に対して、前記グラフト共重合体の総重量に対して、30から50重量%または35から45重量%で投入されてよく、このうち、35から45重量%で投入されることが好ましい。前述の範囲を満たすと、グラフト共重合体の加工性がより改善されるだけでなく、グラフト共重合体が熱可塑性樹脂組成物内により均一に分散され、熱可塑性樹脂組成物の着色性をより改善させることができる。
【0041】
前記ビニルシアン系単量体は、前記グラフト共重合体の製造時に投入される単量体の総重量に対して、10から30重量%または15から25重量%で投入されてよく、このうち、15から25重量%で投入されることが好ましい。前述の範囲を満たすと、グラフト共重合体の耐化学性がより改善されるだけでなく、グラフト共重合体が熱可塑性樹脂組成物内により均一に分散され、熱可塑性樹脂組成物の着色性をより改善させることができる。
【0042】
前記シードの製造時に投入される単量体の総重量は、前記グラフト共重合体の製造時に投入される単量体の総重量に対して、1から20重量%または5から15重量%であってよく、このうち、5から15重量%が好ましい。
【0043】
前記コアの製造時に投入される単量体の総重量は、前記グラフト共重合体の製造時に投入される単量体の総重量に対して、20から50重量%または25から45重量%であってよく、このうち、25から45重量%が好ましい。
【0044】
前記シェルの製造時に投入される単量体の総重量は、前記グラフト共重合体の製造時に投入される単量体の総重量に対して、40から70重量%または45から65重量%であってよく、このうち、45から65重量%が好ましい。
【0045】
前記グラフト共重合体は、前記グラフト共重合体、第1マトリックス共重合体及び第2マトリックス共重合体の合計100重量部に対して、30から90重量部または35から85重量部で含まれてよく、このうち35から85重量部で含まれることが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の伸び率、耐候性、耐化学性、着色性、加工性、表面光沢特性、白化特性を顕著に改善させることができる。
【0046】
2)第1マトリックス共重合体
第1マトリックス共重合体は、C1からC3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む。
【0047】
前記第1マトリックス共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の着色性、耐候性及び硬度を改善させることができる。
【0048】
一方、前記第1マトリックス共重合体は、後述する第2マトリックス共重合体の重量平均分子量が互いに異なる。そして、前記第1マトリックス共重合体と第2マトリックス共重合体の重量平均分子量の差によって、熱可塑性樹脂組成物の伸び率を顕著に改善させることができる。
【0049】
前記第1マトリックス共重合体と第2マトリックス共重合体の重量平均分子量の差は、50,000から150,000g/mol、70,000から130,000g/molまたは90,000から110,000g/molであってよく、このうち90,000から110,000g/molであることが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の伸び率を顕著に改善させることができる。
【0050】
前記第1マトリックス共重合体は、重量平均分子量が160,000から240,000g/mol、170,000から230,000g/molまたは180,000から220,000g/molであってよく、このうち180,000から220,000g/molが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の着色性、耐候性及び硬度を顕著に改善させることができる。
【0051】
一方、前記第1マトリックス共重合体は、C1からC3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含む単量体混合物の共重合物であってよい。
【0052】
前記単量体混合物は、前記C1からC3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体を60から90重量%または65から85重量%で含んでよく、このうち65から85重量%で含むことが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂の着色性、耐候性及び硬度をより改善させることができる。
【0053】
前記単量体混合物は、前記芳香族ビニル系単量体を8から32重量%または10から25重量%で含んでよく、このうち10から25重量%で含むことが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の加工性をより改善させることができる。
【0054】
前記単量体混合物は、前記ビニルシアン系単量体を前記第1マトリックス共重合体の総重量に対して、2から12重量%または1から10重量%で含まれてよく、このうち1から10重量%で含まれることが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の耐化学性をより改善させることができる。
【0055】
前記第1マトリックス共重合体は、メチルメタクリレート、スチレン及びアクリロニトリルの共重合物であってよい。
【0056】
前記第1マトリックス共重合体は、前記グラフト共重合体、第1マトリックス共重合体及び第2マトリックス共重合体の合計100重量部に対して、1から65重量部または5から60重量部で含まれてよく、このうち5から60重量部で含まれることが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の着色性、耐候性、硬度を顕著に改善させることができる。
【0057】
一方、前記熱可塑性樹脂組成物は、前記第1マトリックス共重合体及び第2マトリックス共重合体を55:45から95:5または60:40から90:10の重量比で含んでよく、このうち60:40から90:10の重量比で含むことが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の伸び率、白化現象、耐スクラッチ性、及び外観特性がより改善され得る。
【0058】
3)第2マトリックス共重合体
第2マトリックス共重合体は、C1からC3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む。
【0059】
前記第2マトリックス共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の着色性、耐候性及び硬度を改善させることができる。
【0060】
前記第2マトリックス共重合体は、重量平均分子量が60,000から140,000g/mol、70,000から130,000g/molまたは80,000から120,000g/molであってよく、このうち80,000から120,000g/molが好ましい。
【0061】
前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の着色性、耐候性及び硬度を顕著に改善させることができる。
【0062】
一方、前記第2マトリックス共重合体は、C1からC3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含む単量体混合物の共重合物であってよい。
【0063】
前記単量体混合物は、前記C1からC3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体を60から90重量%または65から85重量%で含んでよく、このうち65から85重量%で含むことが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂の着色性、耐候性及び硬度をより改善させることができる。
【0064】
前記単量体混合物は、前記芳香族ビニル系単量体を8から32重量%または10から25重量%で含んでよく、このうち10から25重量%で含むことが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の加工性をより改善させることができる。
【0065】
前記単量体混合物は、前記ビニルシアン系単量体を2から12重量%または1から10重量%で含んでよく、このうち1から10重量%で含むことが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の耐化学性をより改善させることができる。
【0066】
前記第2マトリックス共重合体は、メチルメタクリレート、スチレン及びアクリロニトリルの共重合物であってよい。
【0067】
前記第2マトリックス共重合体は、前記グラフト共重合体、第1マトリックス共重合体及び第2マトリックス共重合体の合計100重量部に対して、1から25重量部または2から20重量部で含まれてよく、このうち2から20重量部で含まれることが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の着色性、耐候性、硬度を顕著に改善させることができる。
【0068】
4)添加剤
前記添加剤は、C1からC3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を含む重合体を含む。
【0069】
前記添加剤は、熱可塑性樹脂組成物の硬度、表面光沢、耐スクラッチ性及び外観品質を改善させることができる。
【0070】
前記重合体は、重量平均分子量が30,000から90,000g/mol、40,000から80,000g/molまたは50,000から70,000g/molであってよく、このうち50,000から70,000g/molが好ましい。前述した範囲を満たすと、前記グラフト共重合体、第1マトリックス共重合体及び第2マトリックス共重合体との相溶性がより改善され、熱可塑性樹脂組成物の表面光沢及び耐スクラッチ性をより改善させることができる。
【0071】
前記重合体は、ポリ(メチルメタクリレート)であってよい。
【0072】
前記重合体は、加工性、表面光沢及び硬度を改善させるために、C1からC3のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を2種以上含む共重合体であってよく、好ましくはC1からC3のアルキルメタクリレート系単量体単位及びC1からC3のアルキルアクリレート系単量体単位を含む共重合体であってよい。前記共重合体は、C1からC3のアルキルメタクリレート系単量体及びC1からC3のアルキルアクリレート系単量体を含む単量体混合物の共重合物であってよい。このとき、前記単量体混合物は、C1からC3のアルキルメタクリレート系単量体及びC1からC3のアルキルアクリレート系単量体を90:10から99:1または92:8から97:3の重量比で含んでよく、このうち、92:8から97:3の重量比で含むことが好ましい。前述した範囲を満たすと、加工性、流動性及び光学特性に優れ得る。
【0073】
前記共重合体は、メチルメタクリレート及びメチルアクリレートの共重合物であってよい。
【0074】
前記添加剤は、酸化防止剤をさらに含んでよい。
【0075】
前記酸化防止剤は、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート及びペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートからなる群から選択される1種以上であってよく、このうちトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。前記酸化防止剤は、前記重合体100重量部に対して0.01から1重量部または0.1から0.5重量部で含まれてよく、このうち0.1から0.5重量部で含まれることが好ましい。前述した範囲を満たすと、耐候性がより改善され得る。
【0076】
前記添加剤は、前記グラフト共重合体、第1マトリックス共重合体及び第2マトリックス共重合体の合計100重量部に対して、0.1から5.0重量部または1.0から3.0重量部で含まれてよく、このうち1.0から3.0重量部で含まれることが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の硬度、表面光沢、耐スクラッチ性及び外観品質を顕著に改善させることができる。
【0077】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例に対して詳しく説明する。しかし、本発明はいくつか異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施例に限定されない。
【実施例】
【0078】
製造例1
<シードの製造>
窒素置換された反応器に、ブチルアクリレート10重量部、開始剤として過硫酸カリウム0.04重量部、乳化剤としてジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩2重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.02重量部、アリルメタクリレート0.04重量部、電解質としてNaHCO30.1重量部及び蒸留水40重量部を一括投入し、65℃に昇温させた後、1時間重合してから、終了してシードであるブチルアクリレートゴム質重合体(平均粒径:52.5nm)を収得した。
【0079】
<コアの製造>
前記シードが収得された反応器に、ブチルアクリレート30重量部、乳化剤としてジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩0.5重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.2重量部、アリルメタクリレート0.2重量部、電解質としてNaHCO30.1重量部及び蒸留水20重量部を含む混合物と、開始剤である過硫酸カリウム0.06重量部それぞれを70℃で3時間一定の速度で連続投入しながら重合し、連続投入が完了した後、1時間さらに重合してから、終了してコアであるブチルアクリレートゴム質重合体(平均粒径:68.5nm)を収得した。
【0080】
<グラフト共重合体の製造>
前記コアが収得された反応器に、スチレン40重量部、アクリロニトリル20重量部、乳化剤としてロジン酸カリウム塩1.4重量部、電解質としてKOH0.042重量部、分子量調節剤としてt-ドデシルメルカプタン0.05重量部、及び蒸留水63重量部を含む混合物と、開始剤として過硫酸カリウム0.1重量部それぞれを70℃で5時間一定の速度で連続投入しながら重合し、連続投入が完了した後、70℃で1時間さらに重合してから、60℃まで冷却させて重合を終了し、グラフト共重合体ラテックス(平均粒径:95.0nm)を収得した。ここで、グラフト共重合体ラテックスの重合転換率は98%であり、pHは9.5、グラフト率は42%であった。
【0081】
前記グラフト共重合体ラテックスに、塩化カルシウム水溶液(濃度:10重量%)2重量部を投入して85℃で常圧凝集し、95℃で熟成し、脱水及び洗浄して、90℃の熱風で30分間乾燥した後、グラフト共重合体粉末を製造した。
【0082】
製造例2
<シードの製造>
窒素置換された反応器に、スチレン7.5重量部、アクリロニトリル2.5重量部、乳化剤としてジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩0.2重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.04重量部、グラフティング剤としてアリルメタクリレート0.04重量部、電解質としてNaHCO30.2重量部及び蒸留水40重量部を一括投入し、70℃に昇温させた後、過硫酸カリウム0.05重量部を一括投入し重合を開始した。その後、70℃で1時間重合した後、終了してシードであるスチレン-アクリロニトリルゴム質重合体(平均粒径:160.0nm)を収得した。
【0083】
<コアの製造>
前記シードが収得された反応器に、ブチルアクリレート40重量部、乳化剤としてジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩0.5重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.2重量部、グラフティング剤としてアリルメタクリレート0.2重量部、電解質としてNaHCO30.1重量部、過硫酸カリウム0.05重量部及び蒸留水20重量部を含む混合物を70℃で3時間一定の速度で連続投入しながら重合し、連続投入が完了した後、1時間さらに重合してから、終了してコアであるブチルアクリレートゴム質重合体(平均粒径:280.0nm)を収得した。
【0084】
<グラフト共重合体の製造>
前記コアが収得された反応器に、スチレン37.5重量部、アクリロニトリル12.5重量部、開始剤として過硫酸カリウム0.1重量部、乳化剤としてロジン酸カリウム塩1.5重量部、分子量調節剤としてt-ドデシルメルカプタン0.05重量部、及び蒸留水63重量部を含む混合物と、開始剤である過硫酸カリウム0.1重量部それぞれを、70℃で5時間一定の速度で連続投入しながら重合し、連続投入が完了した後、75℃で1時間さらに重合してから、60℃まで冷却させて重合を終了し、グラフト共重合体ラテックス(平均粒径:350.0nm)を収得した。ここで、グラフト共重合体ラテックスの重合転換率は98%であり、pHは9.5、グラフト率は38%であった。
【0085】
前記グラフト共重合体ラテックスに、塩化カルシウム水溶液(濃度:10重量%)2重量部を投入して85℃で常圧凝集し、95℃で熟成し、脱水及び洗浄して、90℃の熱風で30分間乾燥した後、グラフト共重合体粉末を製造した。
【0086】
製造例3
窒素置換された26lの第1反応器に、メチルメタクリレート80重量部、スチレン15重量部、アクリロニトリル5重量部、トルエン25重量部、開始剤として1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.01重量部、立体障害フェノール系酸化防止剤として1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン0.1重量部、及び分子量調節剤としてn-ドデシルメルカプタン0.08重量部を12l/時の速度で2時間連続投入しながら140℃で重合して第1共重合物を収得し、前記第1共重合物を窒素置換された26lの第2反応器に、12l/時の速度で2時間連続投入しながら150℃で重合して第2共重合物を収得した。このとき、重合転換率が72%であった。収得された第2共重合物を揮発槽に移送して215℃で未反応単量体及び反応媒質を除去し、ペレット状の共重合体(重量平均分子量:200,000g/mol)を製造した。
【0087】
製造例4
窒素置換された26lの第1反応器に、メチルメタクリレート80重量部、スチレン15重量部、アクリロニトリル5重量部、トルエン25重量部、開始剤として1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.01重量部、立体障害フェノール系酸化防止剤として1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン0.1重量部、及び分子量調節剤としてn-ドデシルメルカプタン0.08重量部を12l/時の速度で2時間連続投入しながら140℃で重合して第1共重合物を収得し、前記第1共重合物を窒素置換された26lの第2反応器に、12l/時の速度で2時間連続投入しながら150℃で重合して第2共重合物を収得した。このとき、重合転換率が60%であった。収得された第2共重合物を揮発槽に移送して215℃で未反応単量体及び反応媒質を除去し、ペレット状の共重合体(重量平均分子量:100,000g/mol)を製造した。
【0088】
製造例5
窒素置換された反応器に、メチルメタクリレート96重量部、メチルアクリレート4重量部、開始剤としてt-ブチルパーオキシネオデカネート0.2重量部、蒸留水133重量部、懸濁剤としてジメチルメタクリレート-メタクリル酸共重合体がNaOHでケン化されたケン化物水溶液(濃度:3重量%)0.82重量部、緩衝剤としてリン酸二水素ナトリウム0.098重量部、リン酸水素二ナトリウム0.053重量部、分子量調節剤としてn-オクチルメルカプタン0.33重量部を一括投入し、60℃に昇温した後、120分間重合した。そして、50分に亘って一定の速度で105℃に昇温した後、開始剤としてラウリルパーオキシドを一括投入し、40分間追加重合した後、完了してビーズ状の共重合体を収得した。このとき、重合転換率は99.95%であった。
【0089】
収得された共重合体は、遠心分離機で60℃の蒸留水で洗浄した後、水気及び粉塵などが濾過された120℃の空気を7.5m3/hrで投入しながら乾燥した。
【0090】
前記共重合体は、重量平均分子量が60,000g/molであり、多分散指数は1.7であった。
【0091】
前記共重合体100重量部及び酸化防止剤としてトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート0.2重量部を混合した後、245℃の二軸押出機で押出した後、ペレット状に製造した。
【0092】
実施例及び比較例
下記実施例及び比較例で用いられた成分の仕様は、次の通りである。
【0093】
(A)グラフト共重合体
(A-1)第1グラフト共重合体:製造例1のグラフト共重合体を用いた。
(A-2)第2グラフト共重合体:製造例2のグラフト共重合体を用いた。
【0094】
(B)マトリックス共重合体
(B-1)第1マトリックス共重合体:製造例3の共重合体を用いた。
(B-2)第2マトリックス共重合体:製造例4の共重合体を用いた。
(B-3)第3マトリックス共重合体:LG化学社の92HRを用いた。
【0095】
(C)添加剤:製造例5のペレットを用いた。
【0096】
前述した成分を下記[表1]及び[表2]に記載された含量通り混合し、撹拌して熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0097】
実験例1
実施例及び比較例の熱可塑性樹脂組成物を押出及び射出して試片を製造した。試片の物性を、下記に記載された方法で評価し、その結果を下記[表1]及び[表2]に記載した。
【0098】
(1)衝撃強度(kg・cm/cm):ASTM256に基づいて測定した。
【0099】
(2)硬度:ASTM785に基づいて測定した。
【0100】
(3)伸び率(%):ASTM D638に基づいて測定した。
【0101】
(4)耐候性(△E):促進耐候性試験装置(weather-o-meter、ATLAS社 Ci4000、キセノンアークランプ、Quartz(inner)/S.Boro(outer)フィルター、irradiance 0.55W/m
2 at 340nm)適用SAE J1960の条件で3,000時間の間テストを進行し、下記△Eは促進耐候性実験前後の算術平均値であり、値が0に近いほど耐候性に優れていることを示す。
【数1】
【0102】
前記式において、L’、a’及びb’は、試片に3,000時間SAE J1960条件で光を照射した後、CIE LAB色座標計で測定したL、a及びb値であり、LO、aO及びbOは、光の照射前にCIE LAB色座標計で測定したL、a及びb値である。
【0103】
実験例2
実施例及び比較例の熱可塑性樹脂組成物を、シート押出機を用いて幅10cm、厚さ0.2mmのシートを製造し、前記シートと亜鉛メッキ鋼板を接着剤を用いて200℃で接着させて試片を製造した。前記試片の物性を下記に記載された方法で評価し、その結果を下記[表1]及び[表2]に記載した。
【0104】
一方、比較例2の場合、加工不良により試片が損傷された状態で製造されたので、物性を評価することができなかった。
【0105】
(5)耐スクラッチ性:ASTM D3360に基づいて耐スクラッチ装置(商品名:QMESYS、製造社:QM450A)を用いて測定した。
○:HB以上、×:B以下
【0106】
(6)白化:Ball dropテスト器(商品名FDI-01、製造社:Labthink)を用いて1kgの鉄玉を1mの高さで前記試片上に落とした後、測定した。
○:白化現象未発生、×:白化現象発生又はシートが破れるか割れる
【0107】
(7)表面光沢:ASTM D523に基づいて光沢測定器(商品名:VG7000、製造社:NIPPON DENSHOKU)を用いて60゜で光沢を測定した。
【0108】
(8)外観品質:ベンディングプレスの後、試片の外観を目視で観察した。
○:全体的に光沢差、表面屈曲及び浮き上がりがない
×:局所的に光沢差、表面屈曲及び浮き上がりがあるか破れる
【0109】
【0110】
【0111】
表1及び表2を参照すれば、実施例1から6は、伸び率、耐候性、耐スクラッチ性、表面光沢及び外観品質が全て優れていることが確認できた。但し、大粒径グラフト共重合体を含む実施例6は、白化現象が発生することが確認できた。一方、実施例2と比較例5を比べると、添加剤を含まない比較例5が、伸び率、耐候性、耐スクラッチ性、表面光沢特性が低下していることが確認できた。実施例2、比較例6及び7を比べると、第2マトリックス共重合体を含まない比較例6と第1マトリックス共重合体を含まない比較例7が、伸び率、耐候性、及び外観品質が顕著に低下し、白化現象が発生したことが確認できた。また、実施例5と比較例4を比べると、第1及び第2マトリックス共重合体を含まない比較例4が、伸び率、耐候性、耐スクラッチ性、表面光沢及び外観品質が顕著に低下し、白化現象も発生したことが確認できた。
【0112】
一方、比較例1及び3は、添加剤を含んでいないため、伸び率、耐スクラッチ性、及び表面光沢が低下した。比較例2は、小粒径グラフト共重合体を過量含み、第1マトリックス共重合体を含んでいないため、加工不良により試片が損傷された状態で製造された。よって、物性を評価することができなかった。