(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】光学測定装置および配向度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/21 20060101AFI20220523BHJP
G01N 21/19 20060101ALI20220523BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
G01N21/21 Z
G01N21/19
G01N21/27 Z
(21)【出願番号】P 2018186510
(22)【出願日】2018-10-01
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼地 洋平
(72)【発明者】
【氏名】佐野 貴之
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-216922(JP,A)
【文献】特開2000-111472(JP,A)
【文献】特開平11-189665(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0215159(US,A1)
【文献】国際公開第2018/043438(WO,A1)
【文献】特開昭58-087445(JP,A)
【文献】特開2008-151559(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0314159(US,A1)
【文献】特開2010-033050(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0227782(US,A1)
【文献】特開2014-211426(JP,A)
【文献】特開2016-017907(JP,A)
【文献】米国特許第05844322(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/61
B29C 55/00-B29C 55/30
B29C 61/00-B29C 61/10
G02B 5/30
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象を保持する保持部と、
前記保持部に、直線偏光を照射する第1光照射部と、
前記保持部に、直線偏光を照射する第2光照射部と、
前記保持部を挟んで、前記第1光照射部が照射した光を受光する第1受光部と、
前記保持部を挟んで、前記第2光照射部が照射した光を受光する第2受光部と、
前記第1受光部および第2受光部が受光した光を分光して測光する分光光度計と、
前記保持部に保持された測定対象の温度調節を行う温度調節手段、前記保持部に保持された測定対象を延伸する延伸手段、および、前記保持部に保持された測定対象に光を照射する光照射手段の、少なくとも1つと、を有し、かつ、
前記第1光照射部および前記第2光照射部は、前記保持部における前記測定対象の保持面において、偏光方向が互いに直交する
ように、P波を前記保持部に照射し、または、S波を前記保持部に照射するものであり、
さらに、前記第1光照射部および前記第2光照射部は、出射するP波またはS波が、前記保持部の保持面において直交するように配置される、光学測定装置。
【請求項2】
前記第1光照射部および前記第2光照射部が、P波を前記保持部に照射する、請求項
1に記載の光学測定装置。
【請求項3】
前記温度調節手段を有する、請求項
1または2に記載の光学測定装置。
【請求項4】
前記第1光照射部および前記第2光照射部が、可視光の全波長域を含む直線偏光を前記保持部に照射する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の光学測定装置。
【請求項5】
前記第1光照射部および前記第2光照射部が、前記保持部に保持される前記測定対象の垂線に対して1°以上の角度で、前記保持部に直線偏光を照射する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の光学測定装置。
【請求項6】
前記分光光度計による測光結果から、前記第1光照射部および前記第2光照射部が出射した光の透過率を算出する透過率算出手段と、
前記透過率算出手段が算出した透過率から、吸光度を算出する吸光度算出手段と、
前記吸光度算出手段が算出した吸光度から、配向度を算出する配向度算出手段と、を有する、請求項1~
5のいずれか1項に記載の光学測定装置。
【請求項7】
偏光板となる測定対象に、前記偏光板の透過軸方向または吸収軸方向に偏光する
S波またはP波である第1の測定光、および、前記偏光板の前記第1の測定光とは異なる軸方向の直線偏光であ
り、かつ、入射面に対する偏光方向が前記第1の測定光と等しい第2の測定光を、
前記偏光板の表面において直交するように入射し、前記測定対象を透過した前記第1の測定光および前記第2の測定光を分光して測光することを、配向を促進する配向促進処理を前記測定対象に施しつつ行い、
前記測定対象を透過した前記第1の測定光および前記第2の測定光の測光結果から、前記測定対象に対する前記第1の測定光および前記第2の測定光の透過率を算出し、
前記算出した透過率から、前記測定対象の吸光度を算出し、
前記算出した吸光度から、前記測定対象の配向度を算出することを特徴とする、配向度測定方法。
【請求項8】
前記第1の測定光および前記第2の測定光として、前記測定対象にP波を入射する、請求項
7に記載の配向度測定方法。
【請求項9】
前記配向促進処理として、前記測定対象の加熱および冷却の少なくとも一方を行う、請求項
7または8に記載の配向度測定方法。
【請求項10】
前記第1の測定光および前記第2の測定光が、可視光の全波長域を含む、請求項
7~9のいずれか1項に記載の配向度測定方法。
【請求項11】
前記測定対象が、二色性物質および棒状液晶化合物を含有する塗膜を有する積層体である、請求項
7~10のいずれか1項に記載の配向度測定方法。
【請求項12】
前記積層体から前記塗膜を除いた基準サンプルを用い、
前記測定対象と同様にして、前記基準サンプルを透過した前記第1の測定光および前記第2の測定光を測光し、
前記基準サンプルの透過光の測光結果を用いて、前記測定対象を透過した前記第1の測定光および前記第2の測定光の測光結果から、前記測定対象に対する前記第1の測定光および前記第2の測定光の透過率を算出する、請求項
11に記載の配向度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板の製造における配向度を測定するための光学測定装置、および、配向度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネセンス表示装置に用いられる反射防止板、および、液晶ディスプレイ等に、一方向の直線偏光のみを選択的に透過する偏光板が用いられている。
【0003】
偏光板は、一例として、以下のように作製される。
まず、基材の表面に配向膜を形成する。次いで、この配向膜に、棒状液晶化合物と二色性色素等の二色性物質を含む組成物を塗布して、乾燥することで、塗膜を形成する。次いで、塗膜を加熱処理することで、二色性物質を配向させる配向促進工程(熟成工程)を行う。配向促進工程を終了したら、紫外線照射等によって塗膜(組成物)を硬化して、偏光板を作製する。
【0004】
このような偏光板において、高い偏光度を得るためには、配向度を高くする必要が有る。そのためには、偏光板の配向度を測定する必要がある。
配向度(偏光二色性)の測定装置として、例えば特許文献1には、互いに異なる偏光方向で配置された3個以上の偏光板と、この偏光板に対抗させた光センサと、光センサの出力に対して、偏光方向と偏光板、試料透過光強度との間の連続関係式から透過光強度の最大値および最小値、その値に対する偏光方向を算出するデータ処理装置とを有し、偏光板と光センサとの間に試料を配置する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
配向度の高い偏光板を得るためには、配向促進工程における配向度の変化すなわち分子挙動を把握する必要がある。例えば、上述した二色性物質を用いる偏光板であれば、塗膜の加熱処理を行う配向促進工程における配向度の変化すなわち二色性物質の挙動を把握する必要が有る。
そのためには、配向促進工程における配向度の変化を、時間経過に応じてリアルタイムで測定する必要が有る。
しかしながら、現状では、偏光板の製造における配向促進工程において、配向度の変化をリアルタイムに測定できる技術は、実現されていない。
【0007】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決することにあり、偏光板の製造における配向促進工程での配向度の変化を、リアルタイムに測定することを可能にする光学測定装置、および、配向度の測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
[1]測定対象を保持する保持部と、
保持部に、直線偏光を照射する第1光照射部と、
保持部に、直線偏光を照射する第2光照射部と、
保持部を挟んで、第1光照射部が照射した光を受光する第1受光部と、
保持部を挟んで、第2光照射部が照射した光を受光する第2受光部と、
第1受光部および第2受光部が受光した光を分光して測光する分光光度計と、
保持部に保持された測定対象の温度調節を行う温度調節手段、保持部に保持された測定対象を延伸する延伸手段、および、保持部に保持された測定対象に光を照射する光照射手段の、少なくとも1つと、を有し、かつ、
第1光照射部および第2光照射部は、保持部における測定対象の保持面において、偏光方向が互いに直交する直線偏光を照射する、光学測定装置。
[2] 第1光照射部および第2光照射部が、P波を保持部に照射する、または、第1光照射部および第2光照射部が、S波を保持部に照射する、[1]に記載の光学測定装置。
[3] 第1光照射部および第2光照射部が、P波を保持部に照射する、[2]に記載の光学測定装置。
[4] 温度調節手段を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の光学測定装置。
[5] 第1光照射部および第2光照射部が、可視光の全波長域を含む直線偏光を保持部に照射する、[1]~[4]のいずれかに記載の光学測定装置。
[6] 第1光照射部および第2光照射部が、保持部に保持される測定対象の垂線に対して1°以上の角度で、保持部に直線偏光を照射する、[1]~[5]のいずれかに記載の光学測定装置。
[7] 分光光度計による測光結果から、第1光照射部および第2光照射部が出射した光の透過率を算出する透過率算出手段と、透過率算出手段が算出した透過率から、吸光度を算出する吸光度算出手段と、吸光度算出手段が算出した吸光度から、配向度を算出する配向度算出手段と、を有する、[1]~[6]のいずれかに記載の光学測定装置。
[8] 偏光板となる測定対象に、偏光板の透過軸方向または吸収軸方向の直線偏光である第1の測定光、および、偏光板の第1の測定光とは異なる軸方向の直線偏光である第2の測定光を入射し、測定対象を透過した第1の測定光および第2の測定光を分光して測光することを、配向を促進する配向促進処理を測定対象に施しつつ行い、
測定対象を透過した第1の測定光および第2の測定光の測光結果から、測定対象に対する第1の測定光および第2の測定光の透過率を算出し、
算出した透過率から、測定対象の吸光度を算出し、
算出した吸光度から、測定対象の配向度を算出することを特徴とする、配向度測定方法。
[9] 第1の測定光および第2の測定光として、測定対象にP波を入射する、または、第1の測定光および第2の測定光として、測定対象にS波を入射する、[8]に記載の配向度測定方法。
[10] 第1の測定光および第2の測定光として、測定対象にP波を入射する、[9]に記載の配向度測定方法。
[11] 配向促進処理として、測定対象の加熱および冷却の少なくとも一方を行う、[8]~[10]のいずれかに記載の配向度測定方法。
[12] 第1の測定光および第2の測定光が、可視光の全波長域を含む、[8]~[11]のいずれかに記載の配向度測定方法。
[13] 測定対象が、二色性物質および棒状液晶化合物を含有する塗膜を有する積層体である、[8]~[12]のいずれかに記載の配向度測定方法。
[14] 積層体から塗膜を除いた基準サンプルを用い、
測定対象と同様にして、基準サンプルを透過した第1の測定光および第2の測定光を測光し、基準サンプルの透過光の測光結果を用いて、測定対象を透過した第1の測定光および第2の測定光の測光結果から、測定対象に対する第1の測定光および第2の測定光の透過率を算出する、[13]に記載の配向度測定方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、偏光板の製造における配向促進工程での配向度の変化を、リアルタイムに測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の光学測定装置の一例を概念的に示す図である。
【
図2】
図1に示す光学測定装置を説明するための概念図である。
【
図3】
図1に示す光学測定装置を説明するための概念図である。
【
図4】本発明の光学測定装置の別の例を説明するための概念図である。
【
図5】配向促進処理の処理時間と、温度および配向度との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の光学測定装置および配向度測定方法について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0012】
図1に、本発明の配向度の測定方法を実施する、本発明の光学測定装置の一例を概念的に示す。
図1に示す光学測定装置10は、保持部12に保持されたサンプルSの配向度を測定するための装置で、光照射光学系14と、受光光学系16と、第1分光光度計18aおよび第2分光光度計18bと、温度調節手段20と、温度測定手段24と、信号発生器26と、データ処理部30とを有して構成される。
【0013】
本発明において、測定対象であるサンプルSは、偏光板(偏光子、偏光フィルム)の製造において、配向を促進するための配向促進工程(配向度付与工程)に供される状態のものである。サンプルSには、制限はなく、偏光板(直線偏光板)の製造において配向促進工程に供される状態の公知の物が、各種、利用可能である。一例として、透明な基材と、基材の一面に形成された配向膜と、配向膜の表面に形成された二色性物質および棒状液晶化合物を含む組成物の塗膜と、を有するサンプルSが例示される。なお、二色性物質とは、二色性色素のように二色性を発現する物質である。
配向促進工程としては、加熱および冷却等の温度調節を行う熟成による配向促進工程、延伸による配向促進工程、および、紫外線照射等の光照射による配向促進工程等が例示される。従って、サンプルSとしては、上述した二色性色素等の加熱によって配向される化合物を含有する塗膜を有するサンプルに加え、ヨウ素を含有するポリビニルアルコールフィルムのように延伸によって配向される化合物を含むプラスチックフィルム、および、光照射によって配向される光配向性の化合物を含有する塗膜を有するサンプル、等が例示される。
図示例の光学測定装置10は、一例として、サンプルSの温度調節を行うことにより、サンプルSに配向促進処理を行う装置であり、サンプルSの加熱および/または冷却を行う温度調節手段20を有する。
【0014】
保持部12は、サンプルSを保持する部位である。
保持部12によるサンプルSの保持方法には、制限はなく、公知のシート状物の保持方法が、各種利用可能である。保持部12としては、一例として、サンプルSを載置して保持する台、サンプルSの端部全周を把持する枠体、および、サンプルSの端部を部分的に把持して張力を掛けて平面状に保持する冶具等が例示される。中でも、サンプルSを載置する台は、保持部12として好適に利用される。以下の説明では、サンプルSを載置して保持する台を、便宜的に『サンプル台』とも言う。
ここで、後述するが、光学測定装置10は、サンプルSの透過光を測光して、配向度を測定する。従って、サンプルSを載置するサンプル台は、光照射光学系14が照射する直線偏光に対して、十分な透過性を有するのが好ましい。一例として、光学測定装置10は、可視光の全波長域で配向度を算出するのが好ましいので、サンプルSを載置するサンプル台としては、石英ガラス製のサンプル台が好適に例示される。
【0015】
光照射光学系14は、保持部12に保持されたサンプルSに、サンプルSの表面において偏光方向が互いに直交する2つの直線偏光を照射する光学系である。
図示例において、光照射光学系14は、光源34と、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bとを有する。
【0016】
光源34は、サンプルSの配向度を測定するための測定光を照射する光源である。
光源34には、制限はなく、サンプルSが対応する偏光板が対象とする波長域を含む光を照射可能であれば、公知の光源が、各種、利用可能である。
すなわち、サンプルSが対応する偏光板が可視光全域を直線偏光とする用途に用いられる場合には、可視光の波長域を全て含む光を照射可能な光源が利用される。また、サンプルSが対応する偏光板が紫外線を選択的に直線偏光とする用途に用いられる場合には、対応する紫外線の波長域を全て含む光を照射可能な光源が利用される。なお、本発明において、可視光とは、380~780nmの波長域の光である。
【0017】
なお、本発明においては、可視光の全波長域を対象として、サンプルSの透過光を各波長に分光してサンプルSの透過光量を測光して、後述するように各波長毎に配向度を算出し、各波長毎の配向度から、サンプルSの配向度を算出するのが好ましい。
従って、光源34としては、可視光の全波長域を含む光を照射可能な光源が好適に用いられる。このような光源34としては、ハロゲンランプおよびキセノンランプ等が例示される。
【0018】
光源34が照射した光は、光ファイバ38によって伝搬されて、分波器40によって等光量に二分割される。分波器40によって分波された光は、一方は光ファイバ42aによって第1光照射部36aに伝搬され、もう一方は、光ファイバ42bによって第2光照射部36bに伝搬される。
第1光照射部36aおよび第2光照射部36bは、直線偏光(測定光)をサンプルSに照射するものである。第1光照射部36aおよび第2光照射部36bは、共に、光源34が照射した光を直線偏光にする偏光板と、偏光板による直線偏光を保持部12が保持したサンプルSに照射する投光レンズ(集光レンズ)とを有する。
第1光照射部36aおよび第2光照射部36bで、用いる偏光板および投光レンズは、共に、公知のものが全て利用可能である。
【0019】
なお、
図1においては、光学測定装置10の構成を明確にするために、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bは、対面するように示している。しかしながら、実際には、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bは、
図2に概念的に示すように、出射する直線偏光(一点鎖線)がサンプルS(保持部12)の表面において直交するように、配置される。すなわち、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bは、投光レンズの光軸が直交するように、配置される。
【0020】
第1光照射部36aおよび第2光照射部36bは、保持部12が保持したサンプルSの表面において、偏光方向が互いに直交する方向の直線偏光を照射する。従って、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bは、サンプルSの表面において、照射する直線偏光の偏光方向が互いに直交するように、偏光板の透過軸の方向、および、光の照射方向を設定される。
なお、本発明において、保持部12が保持したサンプルSの表面とは、サンプルSを載置するサンプル台の表面、および、サンプルSの端部全周を把持する枠体が成す面などの、保持部12によるサンプルSの保持面と、同義に扱うことができる。以下の説明では、保持部12が保持したサンプルSの表面を、単に『サンプルSの表面』とも言う。
光学測定装置10においては、
図2および
図3に概念的に示すように、第1光照射部36aは、矢印x方向の直線偏光(第1の測定光)をサンプルSに照射する。また、第2光照射部36bは、矢印x方向と直交する矢印y方向の直線偏光(第2の測定光)をサンプルSに照射する。
【0021】
これに対応して、サンプルSは、吸収軸の方向を、第1光照射部36aが照射する直線偏光の偏光方向(x方向)に一致して、保持部12に配置される。従って、サンプルSは、透過軸の方向を、第2光照射部36bが照射する直線偏光の偏光方向(y方向)と一致して配置される。あるいは、保持部12に保持されるサンプルSは、透過軸および吸収軸の方向を、上記と逆にして配置されてもよい。
一般的に、偏光板においては、配向膜における配向方向が吸収軸方向で、吸収軸と直交する方向が透過軸となる。
【0022】
好ましくは、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bは、共にP波(P偏光)をサンプルSに照射する。または、好ましくは、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bは、共にS波(S偏光)をサンプルSに照射する。より好ましくは、
図2および
図3に示すように、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bは、共にP波をサンプルSに照射する。
従って、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bは、
図2および
図3に示すように、互いが照射する直線偏光が、サンプルSの表面で直交するように配置されるのが好ましい。
【0023】
本発明においては、サンプルSの表面において、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bが出射する直線偏光の偏光方向が直交すれば、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bの位置関係は、各種の構成が利用可能である。
例えば、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bを直線上で対向するように配置して、
図4に概念的に示されるように、互いが照射する直線偏光がサンプルSの表面で直線状となるようにしてもよい。
【0024】
ここで、
図4に示される例では、サンプルSの表面で、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bが出射する直線偏光の偏光方向が直交するためには、第1光照射部36aが照射するx方向の直線偏光はP波になり、第2光照射部36bが照射するy方向の直線偏光はS波になる。周知のように、P波とS波とでは、媒体に入射した際の反射率が異なり、S波の方が反射率が高い。すなわち、P波とS波とでは、媒体に入射した際の透過率は、P波の方が高い。
後述するが、本発明においては、配向促進処理をサンプルSに行いつつ、吸収軸方向および透過軸方向の直線偏光をサンプルSに入射して、サンプルSを透過した透過光を測光することで、配向度を測定する。従って、サンプルSに、P波およびS波を入射すると、2つの直線偏光の透過率が異なるために、透過軸と吸収軸との間で、評価すべき数値に根本的な差異が生じてしまう。
すなわち、第1光照射部36aと第2光照射部36bとで、照射する直線偏光の入射面と直線偏光の偏光方向(すなわち偏波面)とが成す角度が互いに異なると、測定された配向度に誤差が生じてしまい、測定結果の補正等が必要になる。
【0025】
これに対して、本発明においては、好ましくは、
図2および
図3に示すように、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bが、共にP波をサンプルSに照射し、または、共にS波をサンプルSに照射する。これにより、入射面と偏波面とが成す角度の違いに起因する、2つの直線偏光の透過率の差を無くして、配向度の測定を正確に行うことが可能になる。
より好ましくは、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bがサンプルSに照射する直線偏光を、共にP波とすることにより、サンプルSを透過する直線偏光の透過率を高くして、より高効率な配向度の測定を行うことができる。
第1光照射部36aおよび第2光照射部36bが出射する直線偏光は、P波同士またはS波同士が最も好ましい。すなわち、本発明においては、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bが出射する直線偏光は、入射面と偏波面とが成す角度が、0°(p波)または90°(S波)であるのが最も好ましい。しかしながら、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bが出射する直線偏光は、入射面と偏波面とが成す角度が、好ましくは0°±5°または90°±5°の範囲、より好ましくは0°±2.5°または90°±2.5°の範囲であれば、後述するように配向度の変化の傾向を知見するのに十分な精度で配向度を測定できる。
【0026】
本発明において、第1光照射部36aが照射する直線偏光の偏光方向と、第2光照射部36bが照射する直線偏光の偏光方向とが成す角度は、サンプルS上において、直交すなわち90°から、若干、ズレていてもよい。
すなわち、第1光照射部36aが照射する直線偏光の偏光方向と、第2光照射部36bが照射する直線偏光の偏光方向とは、サンプルSの透過軸方向および/または吸収軸方向と、若干、ズレていてもよい。また、第1光照射部36aが照射する直線偏光と、第2光照射部36bが照射する直線偏光とが成す角度は、90°から、若干、ズレてもよい。
【0027】
後述するが、本発明は、透過軸方向の直線偏光と吸収軸方向の直線偏光をサンプルSに入射して、透過光の測光結果からサンプルSの配向度を測定することを、サンプルSに配向促進処理を施しつつ行う。配向促進処理とは、偏光板の製造における配向促進工程と同様の処理である。図示例においては、配向促進処理として、サンプルSの加熱および/または冷却(熟成)を行う。
本発明によれば、これにより、偏光板の製造における配向促進工程での配向度の変化を検出できる。その結果、本発明を用いることで、偏光板の製造において、高い配向度すなわち高い偏光度が得られるように、配向促進工程における処理条件を決定できる。
従って、本発明においては、配向促進処理における処理時間の経過および処理条件の変化に対する、配向度の変化の傾向が知見できれば、ある程度の目的を達成できる。
以上の点を考慮すると、本発明において、第1光照射部36aと第2光照射部36bとが照射する直線偏光の偏光方向は、サンプルSの表面において、完全に直交(90°)していなくてもよい。
すなわち、本発明において、サンプルSの表面において第1光照射部36aと第2光照射部36bとが照射する直線偏光の偏光方向が直交するとは、実質的には、サンプルSの表面において、2つの直線偏光の偏光方向が成す角度が90°±10°以内であることを示す。サンプルSの表面において、2つの直線偏光の偏光方向が成す角度は90°±5°以内であるのが好ましく、90°すなわち直交が最も好ましい。
【0028】
第1光照射部36aおよび第2光照射部36bからの直線偏光の出射方向は、サンプルSを透過した2つの透過光を、個々に独立して測定できれば、制限はない。
具体的には、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bは、サンプルSの表面の垂線(法線)に対して、1°以上の角度でサンプルSに直線偏光を照射するのが好ましい。
ここで、透過率を考慮すれば、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bは、P波をブリュースター角で入射するのが好ましい。しかしながら、サンプルSは、例えば、基材に配向膜を形成し、配向膜に組成物の塗膜を形成したものである。このようなサンプルSに、大きな角度で光を入射すると、屈折率の異なる各層の界面で光が反射されて、測定される透過率に誤差を生じてしまう。
この点を考慮すると、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bは、サンプルSの表面の垂線に対して15°~45°の角度でサンプルSに直線偏光を照射するのが好ましく、25°~35°の角度でサンプルSに直線偏光を照射するのがより好ましい。
【0029】
第1光照射部36aおよび第2光照射部36bが照射した直線偏光は、サンプルSおよび保持部12を透過して、受光光学系16に受光される。
受光光学系16は、第1光照射部36aが照射してサンプルSを透過した透過光を受光する第1受光部48aと、第2光照射部36bが照射してサンプルSを透過した透過光を受光する第2受光部48bとを有する。従って、第1光照射部36aと第1受光部48aとは、光軸を一致するのが好ましい。同様に、第2光照射部36bと第2受光部48bとは、光軸を一致するのが好ましい。
第1受光部48aは、受光レンズ50aと光ファイバ52aとを有する。第2受光部48bは、受光レンズ50bと光ファイバ52bとを有する。受光レンズ(集光レンズ)および光ファイバは、公知のものを用いればよい。
【0030】
第1受光部48aが受光した透過光は、受光レンズ50aによって集光されて、光ファイバ52aによって伝搬されて、第1分光光度計18aによって測光される。他方、第2受光部48bが受光した透過光は、受光レンズ50bによって集光されて、光ファイバ52bによって伝搬されて、第2分光光度計18bによって測光される。
第1分光光度計18aおよび第2分光光度計18bは、共に、公知の分光光度計であり、受光したサンプルSの透過光を分光して、各波長毎の強度を測光する。
なお、第1分光光度計18aおよび第2分光光度計18bが測光する波長の間隔、すなわち分光の程度には、制限はなく、公知の偏光板の配向度の測定方法と同様に、適宜、決定すればよい。第1分光光度計18aおよび第2分光光度計18bが測光する波長の間隔は、10nm間隔以下が好ましく、5nm間隔以下がより好ましい。
【0031】
第1分光光度計18aおよび第2分光光度計18bによる測光結果は、データ処理部30に供給される。
データ処理部30については、後に詳述する。
【0032】
光学測定装置10は温度調節手段を有する。温度調節手段20は、保持部12に保持されたサンプルSの温度を調節するものである。
すなわち、サンプルSは、偏光板の製造における配向促進工程において、加熱および/または冷却による熟成によって配向を促進される偏光板に対応するものである。これに対応して、光学測定装置10は、偏光板の製造における配向促進工程を模したサンプルSの加熱および/または冷却を行うことによって、サンプルSの配向促進処理を行う。
【0033】
温度調節手段20によるサンプルSの温度調節方法には、制限はなく、温風供給手段、冷風供給手段、赤外線ヒータ等の各種のヒータ、ペルチェ素子による冷却手段、保持部12を含む経路で加熱媒体を循環する手段、保持部12を含む経路で冷却媒体を循環する手段等、公知のシート状物の温度調節手段が、各種、利用可能である。
また、温度調節手段20によるサンプルSの温度調節の範囲にも、制限はなく、サンプルSに応じて、適宜、設定すればよい。例えば、サンプルSが、上述したように二色性物質および棒状液晶化合物を含有する塗膜を有する場合には、温度調節の範囲としては、一例として、20~200℃の範囲が例示される。
【0034】
なお、上述したように、本発明においては、偏光板に対応するサンプルPの配向促進処理は、温度調節による熟成以外にも、延伸による配向促進処理および紫外線照射等の光照射による配向促進処理も利用可能である。
また、このような配向促進処理の複数を行ってもよい。この際には、複数の配向促進処理は、同時に行っても、順次、行ってもよい。
【0035】
これに対応して、本発明の光学測定装置10は、偏光板の製造における延伸による配向促進工程を模して保持部12が保持したサンプルSを延伸する、延伸手段を有してもよい。また、本発明の光学測定装置10は、偏光板の製造における光照射による配向促進工程を模して保持部12が保持したサンプルSに光を照射する、光照射手段を有してもよい。
本発明の光学測定装置10は、延伸手段および光照射手段の一方のみを有するものでも。両方を有するものでもよい。また、延伸手段および/または光照射手段は、温度調節手段20に変えて設けてもよく、温度調節手段20に加えて設けてもよい。
【0036】
延伸手段には、制限はなく、偏光板の製造において、配向促進工程で用いられる延伸手段が、各種、利用可能である。
また、光照射手段にも、制限はなく、偏光板の製造において、配向促進工程で用いられる光照射手段が、各種、利用可能である。なお、本発明の光学測定装置において、サンプルSの配向促進処理に光照射手段を用いる場合には、光照射手段が照射した光が、第1受光部48aの受光レンズ50a、および、第2受光部48bの受光レンズ50bに入射しないようにするのが好ましい。また、本発明の光学測定装置において、サンプルSの配向促進に光照射手段を用いる場合には、光照射光学系14と、配向促進処理を行う光照射手段とで、異なる波長の光を照射するようにするのも好ましい。
【0037】
温度測定手段24は、保持部12に保持されたサンプルSの温度を測定して、測定結果をデータ処理部30に供給するものである。
温度測定手段24によるサンプルSの温度測定方法には、制限はなく、熱電対および放射温度計等の公知の温度測定方法が、各種、利用可能である。
なお、本発明では、サンプルSを載置するサンプル台などの保持部12の温度を測定して、保持部12の温度をサンプルSの温度としてもよい。
【0038】
信号発生器26は、第1分光光度計18aおよび第2分光光度計28b、ならびに、温度測定手段24に、計測を行うことを指示する、サンプリング信号を送るものである。サンプリング信号には、制限はないが、例えば、パルス信号が例示される。
信号発生器26は、第1分光光度計18a、第2分光光度計28bおよび温度測定手段24に、同じタイミングでサンプリング信号を出力する。第1分光光度計18aおよび第2分光光度計28bは、信号発生器26からサンプリング信号を受けた時点で、受光した透過光の測光を行い、温度測定手段24は、信号発生器26からサンプリング信号を受けた時点で、サンプルSの温度測定を行う。
上述したように、第1分光光度計18aおよび第2分光光度計28bは、透過光の測光結果を、温度測定手段24はサンプルSの温度測定結果を、共に、データ処理部30に供給する。
【0039】
本発明の光学測定装置10において、データ処理部30は、好ましい態様として設けられるものである。
データ処理部30は、第1分光光度計18aおよび第2分光光度計28bが測光したサンプルSの透過光の各波長毎の測光結果から、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bが照射した直線偏光のサンプルSの透過率を、各波長毎に算出する。次いで、データ処理部30は、算出した透過率から、第1光照射部36aおよび第2光照射部36bが照射した直線偏光のサンプルSによる吸光度を、各波長毎に算出する。次いで、データ処理部30は、算出した吸光度から、サンプルSの配向度を、各波長毎に算出する。さらに、データ処理部30は、算出したサンプルSの各波長毎の配向度から、サンプルSの配向度を算出する。
さらに、データ処理部30は、サンプルSの配向度を算出したら、配向促進処理の処理時間と、算出したサンプルSの配向度と、温度測定手段24から供給された温度測定結果とを対応付けして、出力する。
以上の点については、後に詳述する。
【0040】
このようなデータ処理部30は、例えば、パーソナルコンピュータ、ノート型コンピュータおよびタブレットコンピュータ等を利用して構成すればよい。
また、透過率の算出、または、透過率の算出および吸光度の算出は、データ処理部30ではなく、第1分光光度計18aおよび第2分光光度計28bで行ってもよい。
【0041】
以下、光学測定装置10の作用を説明することにより、本発明の光学測定装置および配向度測定方法について、より詳細に説明する。
【0042】
まず、サンプルSを保持部12に保持させる。保持部12は、一例として、サンプルSを載置して保持するサンプル台とする。
本例においては、一例として、サンプルSは、基材の表面に配向膜を有し、配向膜の表面に、二色性物質と棒状液晶化合物とを含有する組成物を塗布して乾燥した塗膜を形成したものとする。
サンプルSは、一例として、吸収軸の方向を、第1光照射部36aが照射する直線偏光の偏光方向(矢印x方向)に一致し、透過軸の方向を、第2光照射部36bが照射する直線偏光の偏光方向(矢印y方向)に一致してサンプル台に載置される。
また、本例では、サンプルSは、可視光全域を直線偏光にする偏光板に対応するものであり、可視光全域に対応して、サンプルSの配向度を測定する。
【0043】
サンプル台にサンプルSを載置したら、光源34すなわち第1光照射部36aおよび第2光照射部36bを駆動する。これにより、第1光照射部36aが照射したサンプルSの吸収軸方向の直線偏光(第1の測定光)、および、第2光照射部が照射したサンプルSの透過軸方向の直線偏光(第2の測定光)が、サンプルSに入射する。
第1光照射部36aが照射したサンプルSの吸収軸方向の直線偏光は、サンプルSおよびサンプル台を透過して、第1受光部48aの受光レンズ50aに入射し、光ファイバ52aを伝搬して、第1分光光度計18aに入射する。
他方、第2光照射部36bが照射したサンプルSの吸収軸方向の直線偏光は、サンプルSおよびサンプル台を透過して、第2受光部48bの受光レンズ50bに入射し、光ファイバ52bを伝搬して、第2分光光度計18bに入射する。
【0044】
第1光照射部36aおよび第2光照射部36bを駆動したら、次いで、温度調節手段20を駆動して、サンプルSを加熱および/または冷却して配向を促進する、配向促進処理を開始する。
サンプルSの温度調節には制限はなく、実際の偏光板の製造における、配向促進工程(熟成工程)での加熱および/または冷却を模した、各種の態様が利用可能である。従って、サンプルSの温度調節は、加熱(昇温)のみでもよく、加熱後に冷却(降温)してもよく、加熱および冷却後に、再度、加熱するものでもよく、加熱と冷却とを、複数回、繰り返すものでもよい。
配向促進処理を開始したら、信号発生器26が、パルス信号等のサンプリング信号を、第1分光光度計18a、第2分光光度計18bおよび温度測定手段24に、同時に出力する。また、データ処理部30は、配向促進処理を開始からの経過時間を計測する。
サンプリング信号を受けた第1分光光度計18aは、第1光照射部36aが出射して、サンプルSおよびサンプル台を透過した、吸収軸方向の直線偏光の透過光を、可視光全域で各波長毎に分光して測光し、測光結果をデータ処理部30に供給する。
また、サンプリング信号を受けた第2分光光度計18bは、第2光照射部36bが出射して、サンプルSおよびサンプル台を透過した、透過軸方向の直線偏光の透過光を、可視光全域で各波長毎に分光して測光し、測光結果をデータ処理部30に供給する。
さらに、サンプリング信号を受けた温度測定手段24は、その時点におけるサンプルSの温度を測定して、温度測定結果をデータ処理部30に供給する。
【0045】
データ処理部30は、第1分光光度計18aから供給された透過光の測光結果から、各波長毎に、サンプルSを透過した吸収軸方向の直線偏光の透過率を算出する。
また、データ処理部30は、第2分光光度計18bから供給された透過光の測光結果から、各波長毎に、サンプルSを透過した透過軸方向の直線偏光の透過率を算出する。
透過率の算出は、公知の方法で行えばよい。例えば、入射光量I0および透過光量Iを用いて『透過率T=I/I0』で算出すればよい。
【0046】
ここで、前述のように、サンプルSは、基材の表面に配向膜を有し、配向膜の表面に、二色性物質と棒状液晶化合物とを含有する組成物を塗布して乾燥した塗膜を形成したものである。
そのため、予め、塗膜を有さない、基材および配向膜のみの基準サンプルを作製して、基準サンプルの透過光を第1分光光度計18aおよび第2分光光度計18bで測光しておき、データ処理部30は、この基準サンプルの測光結果を用いて、透過率を算出するのが好ましい。
一例として、上述の透過率の算出において、入射光量I0として、基準サンプルの測光結果を用いる方法が例示される。別の方法として、基準サンプルの測光結果を透過率100%として、基準サンプルの測光結果とサンプルSの測光結果との比から、透過率を算出する方法も利用可能である。
【0047】
データ処理部30は、可視光全域において、各波長毎に、吸収軸方向の直線偏光の透過率、および、透過軸方向の直線偏光の透過率を算出したら、次いで、各波長毎に、吸収軸と透過軸の吸光度を算出する。
吸光度Aの算出は、透過率を先と同様にTとして、『吸光度A=-log10T』で算出すればよい。
【0048】
データ処理部30は、可視光全域の各波長毎に、吸収軸と透過軸の吸光度を算出したら、下記式によって、各波長毎の配向度Sを算出する。
配向度S=(Aa-At)/(2At+Aa)
上記の式において、『At』は透過軸の吸光度、『Aa』は吸収軸の吸光度である。
【0049】
このようにして、可視光全域の各波長毎の配向度を算出したら、各波長毎の配向度を用いて、サンプルSの配向度を算出する。
各波長毎の配向度を用いたサンプルSの配向度の算出は、各波長毎に算出した配向度Sに、視感度補正と呼ばれる感度補正をかけることによって、視感度補正配向度として算出すればよい。
【0050】
データ処理部30は、サンプルSの配向促進処理が終了したら、算出したサンプルSの配向度と、サンプルSの温度測定結果と、配向促進処理の時間経過とを対応付けして、出力する。
一例として、データ処理部30は、例えば、
図5に示すような、配向促進処理の処理時間を横軸にして、処理時間(秒[s])と、サンプルSの温度および配向度(視感度補正配向度)との関係を示すグラフを作成して、出力する。
このグラフから、配向促進処理における、処理時間と、サンプルPの温度変化と、配向度の変化との関係を把握できる。従って、本発明によれば、偏光板の製造での配向促進工程における配向度の変化を適正に把握して、高い配向度すなわち高い偏光度を得られる配向促進工程の処理条件を設定することが可能になる。
【0051】
上述したように、偏光板において、配向度の算出には、透過軸の吸光度および吸収軸の吸光度が必要である。そのためには、透過軸方向の直線偏光の透過率と、吸収軸方向の直線偏光の透過率が必要である。
しかも、
図5に示すように、配向促進処理(配向促進工程)において、配向度は、時間と共に、刻々と変化する。
従って、配向促進処理を行いつつ、正確に配向度を測定するためには、透過軸方向の直線偏光の透過率と、吸収軸方向の直線偏光の透過率とを、同時に測定する必要がある。
【0052】
従来の偏光板における配向度の測定では、配向促進処理を行いつつ、透過軸方向の直線偏光の透過率と、吸収軸方向の直線偏光の透過率とを、同時に測定できない。
【0053】
これに対して、本発明では、サンプルSに、サンプルSの表面において互いに偏光方向が直交する2つの直線偏光を入射し、サンプルSを透過した2つの直線偏光の透過光を測光することを、サンプルSに配向促進工程を模した配向促進処理を施しつつ行う。
そのため、本発明によれば、配向促進処理を行いつつ、透過軸方向の直線偏光の透過率と、吸収軸方向の直線偏光の透過率とを、同時に、かつ、リアルタイムで測定することができる。そのため、本発明によれば、
図5に示すように、配向促進処理における、処理時間の経過および処理条件の変化と、配向度の変化との関係を適正に把握できる。
特に、上述したように、サンプルSに入射する2つ直線偏光を、S偏光同士またはP偏光同士とすることにより、偏波に起因する2つの直掩偏光の透過率(反射率)を均一にできるので、より正確な配向度の測定を行うことが可能になる。
【0054】
以上、本発明の光学測定装置および配向度測定方法について詳細に説明したが、本発明は、上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行なってもよいのは、もちろんのことである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
偏光板の製造における配向促進工程の条件設定等に、好適に用いられる。
【符号の説明】
【0056】
10 光学測定装置
12 保持部
14 光照射光学系
16 受光光学系
18a 第1分光光度計
18b 第2分光光度計
20 温度調節手段
24 温度測定手段
26 信号発生器
30 データ処理部
34 光源
36a 第1光照射部
36b 第2光照射部
38,42a,42b,52a,52b 光ファイバ
40 分波器
48a 第1受光部
48b 第2受光部
50a,50b 受光レンズ