(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】放射線撮影システム及びその作動方法並びに放射線撮影システム用コンソール
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20220523BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
(21)【出願番号】P 2021513642
(86)(22)【出願日】2020-04-07
(86)【国際出願番号】 JP2020015684
(87)【国際公開番号】W WO2020209256
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2019075865
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019205346
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】特許業務法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 將高
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0085971(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0279331(US,A1)
【文献】特開2010-167259(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109567843(CN,A)
【文献】特開2019-33830(JP,A)
【文献】特開2012-29889(JP,A)
【文献】国際公開第2018/211124(WO,A1)
【文献】特開2014-144118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00、6/08
G16H 30/00、40/00、50/00
G01N 23/02
G01T 1/00
H05G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に対して放射線を照射する放射線源と、
前記被写体を透過した前記放射線を検出して放射線画像を得る放射線検出部と、
前記放射線検出部と向かい合う前記被写体を撮影して被写体のポジショニング画像を得るポジショニング撮影装置と、
プロセッサとを備え、
前記プロセッサは、
撮影メニュー登録用メモリに登録された1又は複数の撮影メニューのうち、前記ポジショニング画像に対応する撮影メニューを選択し、
選択された撮影メニューに従って、前記放射線源又は前記放射線検出部に対する撮影制御を行う放射線撮影システム。
【請求項2】
前記撮影メニューに基づく撮影制御の順序が、特定の順序として設定されている場合において、前記撮影メニューを選択する場合には、前記プロセッサは、前記特定の順序と異なる順序にて、前記撮影メニューに基づく撮影制御を行うことを可能にする請求項1記載の放射線撮影システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記ポジショニング画像に基づいて、前記被写体のポジショニングを認識し、
前記撮影メニュー登録用メモリに登録された撮影メニューのうち、前記ポジショニング画像に対応する撮影メニューとして、前記ポジショニングに対応する撮影メニューを選択する請求項1記載の放射線撮影システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記被写体のポジショニングに対応して予め定められたモデルデータと、前記ポジショニング画像とのパターンマッチングを行い、
前記ポジショニング画像に対応する撮影メニューとして、前記パターンマッチングにより得られた前記被写体のポジショニングに対応する撮影メニューを選択する請求項1ないし3いずれか1項記載の放射線撮影システム。
【請求項5】
前記撮影メニュー登録用メモリには、外部の放射線情報システムから送信された前記撮影メニューが受信されて登録される請求項1ないし4いずれか1項記載の放射線撮影システム。
【請求項6】
前記撮影メニューは、前記被写体のポジショニング撮影部位、姿勢、及び向きに関する情報を含む請求項1ないし5いずれか1項記載の放射線撮影システム。
【請求項7】
前記ポジショニング撮影装置は、前記放射線源側に取り付けられており、前記ポジショニング撮影装置の視野の範囲に、前記放射線検出部と向かい合う前記被写体が含んでいる請求項1ないし6いずれか1項記載の放射線撮影システム。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記ポジショニング画像に対応する撮影メニューが、前記撮影メニュー登録用メモリに未登録の撮影メニューであり、且つ、前記被写体の撮影に関する第1操作が行われた場合には、ユーザーに対するアラートを発する請求項1ないし7いずれか1項記載の放射線撮影システム。
【請求項9】
前記アラートが発せられ、且つ、前記被写体の撮影に関する第2操作が行われた場合には、
前記撮影メニュー登録用メモリには、前記未登録の撮影メニューが追加登録され、且つ、前記プロセッサは、追加登録された撮影メニューを選択する請求項8記載の放射線撮影システム。
【請求項10】
被写体に対して放射線を照射する放射線源、及び、前記被写体を透過した前記放射線を検出して放射線画像を得る放射線検出部に接続された放射線撮影システム用コンソールにおいて、
プロセッサが、
撮影メニュー登録用メモリに登録された撮影メニューのうち、前記放射線検出部と向かい合う前記被写体を撮影して得られる被写体のポジショニング画像に対応する撮影メニューを選択し、
選択された撮影メニューに従って、前記放射線源又は前記放射線検出部に対する撮影制御を行う放射線撮影システム用コンソール。
【請求項11】
被写体に対して放射線を照射する放射線源と、前記被写体を透過した前記放射線を検出して放射線画像を得る放射線検出部とを備える放射線撮影システムの作動方法において、
ポジショニング撮影装置が、前記放射線検出部と向かい合う前記被写体を撮影して被写体のポジショニング画像を得るステップと、
プロセッサが、
撮影メニュー登録用メモリに予め登録された1又は複数の撮影メニューのうち、前記ポジショニング画像に対応する撮影メニューを選択するステップと、
前記撮影メニュー選択部にて選択された撮影メニューに従って、前記放射線源又は前記放射線検出部に対する撮影制御を行うステップとを有する放射線撮影システムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線などの放射線を用いて被写体を撮影する放射線撮影システム及びその作動方法並びに放射線撮影システム用コンソールに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、放射線で照射された被写体を放射線検出部で撮像して得られる放射線画像を用いた診断が行われている。放射線画像の撮影時には、放射線を発する放射線源に対する撮影部位、姿勢、及び向きを特定する撮影メニューを予め登録し、設定した撮影メニューに基づいて、放射線源又は放射線検出部に対する撮像制御を行っている。撮影メニューについては、多数設けられており、これら多数の撮影メニューの中から、撮影依頼者である医師からの撮影オーダに対応する撮影メニューを選択することになる。RIS(Radiology Information System(放射線科情報システム))が導入されている施設においては、撮影オーダから自動的に撮影メニューを登録することが可能であるが、RISが導入されていない施設では、放射線検出部を取り扱う技師により、手動で撮影メニューを登録する必要がある。
【0003】
これに関して、特許文献1では、RISが導入されていない施設での撮影メニューの登録を想定し、放射線源側に設けられたカメラによって、被写体のポジショニングを撮影し、撮影により得られたポジショニング画像を用いて撮影メニューの登録を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
RISからの撮影オーダに、複数の撮影メニューが含まれている場合には、通常、撮影オーダが予め定めた撮影メニューの順番通りに、被写体の撮影が行われることになる。ただし、被写体である患者の状況によっては、予め定めた撮影メニューの順番を変更して、被写体の撮影を行ったほうがよい場合がある。この場合には、技師は、変更後の撮影メニューに合わせて、被写体に対して、ポジショニングを変更するよう指示する。その後に、技師は、放射線撮影を行う撮影室とは別のコンソール設置室まで移動し、コンソールを操作して、変更後の撮影メニューに設定変更する必要がある。このように、撮影メニューを設定変更することは手間がかかる上、撮影メニューの設定変更の操作に関する間違いを誘発する可能性がある。
【0006】
これに対して、被写体のポジショニングをカメラで撮影する特許文献1の適用が考えられるが、特許文献1は、RISが導入されていない施設での放射線撮影を前提としているため、撮影開始時には、撮影メニューは未だ登録されていない。そのため、特許文献1では、カメラによって撮影されたポジショニングの画像は、既に登録された撮影メニューの中からの自動選択に用いるのではなく、撮影メニューの設定に用いられる。
【0007】
本発明は、被写体の状況に合わせて、放射線源に対する被写体のポジショニングを変更する場合であっても、被写体のポジショニング変更に伴う撮影メニューの設定変更に要する手間を無くすことができる放射線撮影システム及びその作動方法並びに放射線撮影システム用コンソールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放射線撮影システムは、被写体に対して放射線を照射する放射線源と、被写体を透過した放射線を検出して放射線画像を得る放射線検出部と、放射線検出部と向かい合う被写体を撮影して被写体のポジショニング画像を得るポジショニング撮影装置と、プロセッサとを備え、プロセッサは、撮影メニュー登録用メモリに登録された1又は複数の撮影メニューのうち、ポジショニング画像に対応する撮影メニューを選択し、選択された撮影メニューに従って、放射線源又は放射線検出部に対する撮影制御を行う。
【0009】
撮影メニューに基づく撮影制御の順序が、特定の順序として設定されている場合において、撮影メニューを選択する場合には、プロセッサは、特定の順序と異なる順序にて、撮影メニューに基づく撮影制御を行うことを可能にすることが好ましい。
【0010】
プロセッサは、ポジショニング画像に基づいて、被写体のポジショニングを認識し、撮影メニュー登録用メモリに登録された撮影メニューのうち、ポジショニング画像に対応する撮影メニューとして、ポジショニングに対応する撮影メニューを選択することが好ましい。
【0011】
プロセッサは、被写体のポジショニングに対応して予め定められたモデルデータと、ポジショニング画像とのパターンマッチングを行い、ポジショニング画像に対応する撮影メニューとして、パターンマッチングにより得られた被写体のポジショニングに対応する撮影メニューを選択することが好ましい。
【0012】
撮影メニュー登録用メモリには、外部の放射線情報システムから送信された前記撮影メニューが受信されて登録されることが好ましい。撮影メニューは、被写体のポジショニング撮影部位、姿勢、及び向きに関する情報を含むことが好ましい。ポジショニング撮影装置は、放射線源側に取り付けられており、ポジショニング撮影装置の視野の範囲に、放射線検出部と向かい合う被写体が含んでいることが好ましい。
【0013】
プロセッサは、ポジショニング画像に対応する撮影メニューが、撮影メニュー登録用メモリに未登録の撮影メニューであり、且つ、被写体の撮影に関する第1操作が行われた場合には、ユーザーに対するアラートを発することが好ましい。アラートが発せられ、且つ、被写体の撮影に関する第2操作が行われた場合には、撮影メニュー登録用メモリには、未登録の撮影メニューが追加登録され、且つ、プロセッサは、追加登録された撮影メニューを選択することが好ましい。
【0014】
本発明は、被写体に対して放射線を照射する放射線源、及び、被写体を透過した放射線を検出して放射線画像を得る放射線検出部に接続された放射線撮影システム用コンソールにおいて、プロセッサが、撮影メニュー登録用メモリに登録された撮影メニューのうち、放射線検出部と向かい合う被写体を撮影して得られる被写体のポジショニング画像に対応する撮影メニューを選択し、選択された撮影メニューに従って、放射線源又は放射線検出部に対する撮影制御を行う。
【0015】
本発明は、被写体に対して放射線を照射する放射線源と、被写体を透過した放射線を検出して放射線画像を得る放射線検出部とを備える放射線撮影システムの作動方法において、ポジショニング撮影装置が、放射線検出部と向かい合う被写体を撮影して被写体のポジショニング画像を得るステップと、プロセッサが、撮影メニュー登録用メモリに予め登録された1又は複数の撮影メニューのうち、ポジショニング画像に対応する撮影メニューを選択するステップと、撮影メニュー選択部にて選択された撮影メニューに従って、放射線源又は放射線検出部に対する撮影制御を行うステップとを有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被写体の状況に合わせて、放射線源に対する被写体のポジショニングを変更する場合であっても、被写体のポジショニング変更に伴う撮影メニューの設定変更に要する手間を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】撮影メニューに基づく撮影制御の順序を表す特定の順序の説明図である。
【
図5】ポジショニング認識用学習済み処理部及び機械学習処理部を示すブロック図である。
【
図6】撮影メニューの自動選択を行った場合の特定の順序と異なる順序の説明図である。
【
図7】撮影メニューの自動選択を行う場合の本発明のフローチャートである。
【
図8】撮影メニューA、B、C、Dを含む撮影オーダの説明図である。
【
図9】ポジショニングの認識結果を示す説明図である。
【
図10】追加登録された撮影メニューEを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、放射線撮影システム10は、放射線を用いて被写体を撮影して放射線画像を取得する。放射線撮影システム10は、放射線源11と、放射線検出部12と、ポジショニング撮影装置13と、コンソール15(放射線撮影システム用コンソール)と、表示部16とを備えている。放射線源11、放射線検出部12、及びポジショニング撮影装置13は、被写体Hの撮影が行われる撮影室17に設けられている。コンソール15は放射線源11、放射線検出部12、及びポジショニング撮影装置13と接続されており、撮影室17とは別のコンソール設置室18に設けられている。
【0019】
放射線源11は放射線検出部12に対向して設けられている。放射線源11は、コンソール15からの撮影指示に従って、放射線検出部12に向かい合う被写体Hに対して、X線、γ線などの放射線を照射する。放射線検出部12は、コンソール15からの撮影指示に従って、被写体を透過した放射線を検出して放射線画像を得る。得られた放射線画像は、コンソール15に送信される。コンソール15は、放射線画像に対して各種の画像処理を施す。各種の画像処理が施された放射線画像は、表示部16に表示される。
【0020】
ポジショニング撮影装置13は、可視光で照明された被写体Hを撮像する可視光カメラであることが好ましい。ポジショニング撮影装置13は、放射線源11の近傍など放射線源11側に取り付けられており、ポジショニング撮影装置13の視野の範囲に、放射線検出部12と向かい合う被写体Hが含まれている。ポジショニング撮影装置13は、放射線検出部12と向かい合う被写体Hを撮影することによって、被写体Hのポジショニング画像を得る。ポジショニング画像は、技師によって、被写体Hのポジショニング撮影部位、姿勢、及び向きがそれぞれ放射線検出部12に対してポジショニングされた後の画像であることが好ましい。得られたポジショニング画像は、コンソール15に送信される。
【0021】
ポジショニング画像は、後述するように、コンソール15にて撮影メニューの選択に用いられる。なお、ポジショニング画像については、コンソール15からのポジショニング撮影の指示に従って取得してもよい。また、ポジショニング画像を常に取得できる状態にしておいて、撮影メニューを選択するタイミングにおいて、ポジショニング画像をコンソール15に送信するようにしてもよい。
【0022】
図2に示すように、コンソール15は、撮影オーダ受付部20と、撮影メニュー登録用メモリ21と、撮影メニュー選択部22と、システム制御部23とを備えている。コンソール15は、技師によって、放射線源11又は放射線検出部12を操作等するために用いられる。撮影オーダ受付部20は、外部のRIS(Radiology Information System(放射線科情報システム))から送信される撮影オーダを受信する。撮影オーダは、適宜のタイミングにて、表示部16に表示される。なお、RISへの撮影オーダの登録は、診療科の医師などの撮影依頼者によって行われる。
【0023】
なお、コンソール15では、撮影メニューの選択の処理等に関するプログラムがプログラム用メモリ(図示しない)に組み込まれている。プロセッサによって構成されるシステム制御部23によってプログラムが動作することによって、撮影オーダ受付部20、撮影メニュー選択部22、ポジショニング認識部30、比較部32、アラート発生部36などの機能が実現される。
【0024】
撮影オーダは、
図3に示すように、オーダID(Identification Data)、被写体ID、撮影メニュー等が含まれる。オーダIDは、個々の撮影オーダを識別する記号又は番号(例えば、「OD0001」)であり、RISにより自動的に付される。被写体IDは、被写体Hを識別するための記号又は番号(例えば、「H0500」)である。なお、撮影オーダは、RISの他、HIS(Hospital Information System(病院情報システム))によって送信してもよい。
【0025】
撮影メニューは、被写体Hの撮影に関する情報であって、放射線画像による診断を行うために必要な情報である。具体的には、撮影メニューは、被写体Hのポジショニング撮影部位、姿勢、及び向きに関する情報(例えば、「胸部」、「臥位」、「正面」など)を含んでいる。被写体Hのポジショニング撮影部位とは、例えば、頭部、頸椎、胸部、腹部、手、指、肘などである。被写体Hの姿勢とは、例えば、正面、側面、背面など放射線源11に対する被写体Hの向きである。なお、撮影オーダには、被写体Hの氏名、性別、年齢、身長、体重といった被写体情報の項目が設けられる。また、撮影オーダには、撮影依頼者の所属診療科、撮影依頼者のID、RISで撮影オーダを受け付けた日時、術後の経過観察又は治療薬の効果判定等の撮影目的、撮影依頼者から技師への申し渡し事項といった項目も設けられている。
【0026】
撮影メニュー登録用メモリ21は、RISから受信した撮影オーダのうち1又は複数の撮影メニューを予め登録する。登録する。また、撮影メニュー登録用メモリ21では、撮影メニューの登録に合わせて、撮影メニューに対応する撮影条件が関連付けて登録される。システム制御部23は、撮影メニュー登録用メモリ21に登録された撮影メニューに従って、放射線源11又は放射線検出部12に対する撮影制御を行う。撮影制御には、放射線源11から被写体Hに向けて放射線を照射すること、被写体を透過した放射線を検出して放射線画像を得ることなどの制御を少なくとも含み、コンソール15にて放射線画像を処理し、処理した放射線画像を表示部16に表示することも含まれる。なお、撮像制御については、ユーザーによる放射線撮影の指示に従い、ユーザーが、コンソールに接続されたユーザーインターフェース34を操作することによって、撮像制御を開始することが好ましい。
【0027】
撮影メニュー登録用メモリ21において、撮影メニューと撮影条件との関係は、撮影メニューテーブル(図示しない)に予め記憶されている。撮影条件には、放射線源11の管電圧、管電流、又は照射時間などの照射条件、放射線検出部12の駆動条件、又は、放射線検出部12で得られた放射線画像に対する画像処理に関する画像処理条件などが含まれる。
【0028】
また、撮影メニュー登録用メモリ21においては、撮影メニューが複数ある場合には、撮影メニューに基づく撮影制御の順序が特定の順序として予め設定されている。例えば、撮影メニューが撮影メニューA(「胸部」、「臥位」、「正面」)、撮影メニューB(「胸部」、「臥位」、「背面」)、撮影メニューC(「胸部」、「臥位」、「左側面」)、及び撮影メニューD(「胸部」、「臥位」、「右側面」)の4つ含まれる場合には、
図4に示すように、撮影メニューA、撮影メニューB、撮影メニューC、及び撮影メニューDの順が、特定の順序とされる。基本的には、特定の順序に従って、撮影メニューに基づく撮影が行われる。
【0029】
ただし、上記のように、撮影メニューが複数ある場合には、撮影メニューの数に対応して、被写体Hはポジショニングを変える必要がある。ポジショニングを変更することによる被写体Hの負担を軽減等するために、技師によって被写体のポジショニングを誘導することがある。このような場合に備えて、本実施形態では、技師による誘導した被写体Hのポジショニングをポジショニング撮影装置13にて撮影し、撮影により得られたポジショニング画像に対応する撮影メニューを撮影メニュー選択部22にて自動的に選択するようにしている。そして、システム制御部23は、撮影メニュー選択部22にて選択された撮影メニューに従って、撮影制御を行う。即ち、システム制御部23は、撮影メニュー登録用メモリ21に登録された特定の順序と異なる順序で、撮影メニューに基づく撮影制御を行うことが可能である。
【0030】
具体的には、まず、コンソール15のポジショニング認識部30(
図2参照)にて、ポジショニング画像から被写体Hのポジショニングを認識することが好ましい。そして、撮影メニュー選択部22では、撮影メニュー登録用メモリ21に登録された撮影メニューのうち、ポジショニング画像に対応する撮影メニューとして、ポジショニング認識部30にて認識した被写体Hのポジショニングに対応する撮影メニューを選択するようにすることが好ましい。
【0031】
ポジショニング認識部30にて認識する被写体Hのポジショニングとしては、被写体Hのポジショニング撮影部位、姿勢、及び向きに関する情報であることが好ましい。例えば、被写体Hのポジショニングは、「胸部」、「臥位」、「正面」などである。ポジショニング認識部30は、
図5に示すように、ポジショニング画像と被写体Hのポジショニングとの関係を機械学習したポジショニング認識用学習済み処理部40であることが好ましい。ポジショニング認識用学習済み処理部40は、コンソール15の内部、又はコンソール15に接続された外部の処理装置に設けられた機械学習処理部42を用いて、機械学習することが好ましい。なお、ポジショニング認識用学習済み処理部40は、例えば、NN(Neural Network)、CNN(Convolutional Neural Network)、Adaboost、ランダムフォレストなどからなる処理部であることが好ましい。
【0032】
図6に示すように、放射線源11に対して、臥位の被写体Hの胸部の正面をポジショニングした場合には、この状態でポジショニング撮影装置13によって撮影されたポジショニング画像を得る。そして、ポジショニング認識部30により、ポジショニング画像から被写体Hのポジショニングを認識し、撮影メニュー選択部22により、ポジショニング認識部30にて認識した被写体Hのポジショニングに対応する撮影メニューA(「胸部」、「臥位」、「正面」)を自動的に選択する。そして、撮影メニューAに基づく撮影制御が行われる。この時点では、まだ特定の順番に従っている。
【0033】
次に、被写体Hの胸部を正面から背面にポジショニングを変えるよりも、正面から左側面に代えたほうが、被写体Hの負担が軽減されると考えられる場合、技師は、胸部を正面から左側面にポジショニングを変えるように、被写体Hを誘導する。そして、臥位の被写体Hの胸部が、放射線源11に対して左側面に位置した場合に、この状態でポジショニング撮影装置13によって撮影されたポジショニング画像を得る。そして、ポジショニング認識部30により、ポジショニング画像から被写体Hのポジショニングを認識し、撮影メニュー選択部22により、ポジショニング認識部30にて認識した被写体Hのポジショニングに対応する撮影メニューC(「胸部」、「臥位」、「左側面」)が自動的に選択される。そして、撮影メニューCに基づく撮影制御が行われる。この時点では、特定の順番と異なる順序で、撮影制御が行われることになる。
【0034】
次に、被写体Hの胸部を左側面から右側面にポジショニングを変えた場合には、この状態でポジショニング撮影装置13によって撮影されたポジショニング画像を得る。そして、ポジショニング認識部30により、ポジショニング画像から被写体Hのポジショニングを認識し、撮影メニュー選択部22により、ポジショニング認識部30にて認識した撮影メニューD(「胸部」、「臥位」、「右側面」)が自動的に選択される。そして、撮影メニューDに基づく撮影制御が行われる。この時点でも、特定の順番と異なる順序で、撮影制御が行われることになる。
【0035】
次に、被写体Hの胸部を右側面から背面にポジショニングを変えた場合には、この状態でポジショニング撮影装置13によって撮影されたポジショニング画像を得る。そして、ポジショニング認識部30により、ポジショニング画像から被写体Hのポジショニングを認識し、撮影メニュー選択部22により、ポジショニング認識部30にて認識した被写体Hのポジショニングに対応する撮影メニューB(「胸部」、「臥位」、「背面」)が自動的に選択される。そして、撮影メニューBに基づく撮影制御が行われる。この時点でも、特定の順番と異なる順序で、撮影制御が行われることになる。
【0036】
なお、被写体Hのポジショニングの取得に関して、コンソール15内の比較部32によって、被写体Hのポジショニングに対応して予め定められたモデルデータと、ポジショニング画像とのパターンマッチングから、被写体Hのポジショニングを得てもよい。この場合においては、撮影メニュー選択部22では、ポジショニング画像に対応する撮影メニューとして、パターンマッチングで得られた被写体Hのポジショニングに対応する撮影メニューを選択する。予め定めておくモデルデータとしては、複数の撮影メニューに対応する被写体Hのポジショニングの状態で得られた被写体Hの放射線画像がある。モデルデータとポジショニング画像とのパターンマッチングから得られる被写体Hのポジショニングとしては、具体的には、被写体Hのポジショニング撮影部位、姿勢、及び向きに関する情報であることが好ましい。例えば、被写体Hのポジショニングは、「胸部」、「臥位」、「正面」などである。
【0037】
次に、本発明の一連の流れについて、
図7に示すフローチャートに沿って、説明する。放射線画像の撮影対象者である被写体Hは、撮影室17に入ると、技師の誘導により、放射線源11と放射線検出部12との間に配置される。被写体Hが放射線検出部12に向き合い、技師の誘導により、放射線源11に対して被写体Hが特定のポジショニングになった場合に、ポジショニング撮影装置13は、特定のポジショニング状態の被写体Hを撮影する。これにより、ポジショニング画像が得られる。
【0038】
次に、ポジショニング画像が得られると、ポジショニング認識部30により、ポジショニング画像から被写体Hのポジショニングを認識する。撮影メニュー選択部22は、撮影メニュー登録用メモリ21に予め登録された1又は複数の撮影メニューのうち、ポジショニング認識部30にて認識した被写体Hのポジショニングに対応する撮影メニューを自動的に選択する。撮影メニューが選択されると、システム制御部23は、選択された撮影メニューに従って、放射線源11又は放射線検出部12に対する撮影制御を行う。複数の撮影メニューが登録されている場合には、技師により、特定のポジショニングから他のポジショニングになる(ポジショニングの変更)ように、被写体Hを誘導し、他のポジショニングでのポジショニング画像を得る。そして、同様にして、他のポジショニング画像でのポジショニング画像に対応する撮影メニューを選択する。そして、ユーザーがユーザーインターフェース34を操作して、放射線撮影の指示を行うことにより、システム制御部23は、選択した撮影メニューに従って、撮影制御を行う。全ての撮影メニューについて撮影制御が完了するまで、上記と同様の処理を行う。全ての撮影メニューについて撮影制御が完了したら、放射線撮影を終了する。
【0039】
なお、上記実施形態においては、被写体Hのポジショニングの認識等に用いられるポジショニング画像に対応する撮影メニューが、撮影オーダの中に含まれていない撮影メニュー登録用メモリ21に未登録の撮影メニューである場合において、ユーザーがユーザーインターフェース34を操作して放射線撮影を開始する第1操作が行われた場合には、アラート発生部36は、ユーザーに対するアラートを発生する。アラートとしては、放射線撮影を停止する旨のメッセージを表示部16に表示することが好ましい。また、アラートを発生した場合には、システム制御部23は放射線撮影を停止する制御(例えば、放射線の照射の停止)を行うことが好ましい。この場合、ユーザーが、ユーザーインターフェース34を操作して、放射線撮影の承認意思を示す第2操作を行った場合には、未登録の撮影メニューは、撮影メニュー登録用メモリ21に自動的に追加登録される。また、撮影メニュー選択部22によって、自動的に追加登録された撮影メニューが選択される。そして、ユーザーは、ユーザーインターフェース34を操作して再度の放射線撮影の指示を行うことにより、システム制御部23は、追加登録の撮影メニューに従って、撮影制御を行う。
【0040】
例えば、撮影オーダの中に含まれている撮影メニューが、
図8に示すように、撮影メニューA(胸部/臥位/正面)、撮影メニューB(胸部/臥位/背面)、撮影メニューC(胸部/臥位/左側面)、及び、撮影メニューD(胸部/臥位/右側面)である場合において、ポジショニング認識部30で認識したポジショニングの認識結果が、
図9に示すように、「腹部/臥位/正面」である場合、「腹部/臥位/正面」のポジショニングに対応する撮影メニューは、撮影オーダの中に含まれていない撮影メニュー灯篭部21に未登録の撮影メニューである。未登録の撮影メニューである場合に放射線撮影の第1操作が行われた場合には、アラートが発せられる。そして、アラートに基づいて、ユーザーが、ユーザーインターフェース34のOKボタンを押圧操作する第2操作を行うことにより、撮影メニュー登録用メモリ21は、
図10に示すように、「腹部/臥位/正面」のポジショニングに対応する撮影メニューEを自動的に追加登録する。また、撮影メニュー選択部22によって、追加登録の撮影メニューEが選択される。そして、ユーザーは、ユーザーインターフェース34を操作して再度の放射線撮影の指示を行うことにより、システム制御部23は、追加登録の撮影メニューEに従って、撮影制御を行う。
【0041】
上記実施形態では、撮影オーダ受付部20、撮影メニュー登録用メモリ21、撮影メニュー選択部22、システム制御部23、ポジショニング認識部30、及び比較部32といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウエア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)、FPGA (Field Programmable Gate Array) などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、各種の処理を実行するために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0042】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGA、CPUとFPGAの組み合わせ、またはCPUとGPUの組み合わせ等)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウエアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0043】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた形態の電気回路(circuitry)である。また、記憶部のハードウェア的な構造はHDD(hard disc drive)やSSD(solid state drive)等の記憶装置である。
【符号の説明】
【0044】
10 放射線撮影システム
11 放射線源
12 放射線検出部
13 ポジショニング撮影装置
15 コンソール
16 表示部
17 撮影室
18 コンソール設置室
20 撮影オーダ受付部
21 撮影メニュー登録用メモリ
22 撮影メニュー選択部
23 システム制御部
30 ポジショニング認識部
32 比較部
34 ユーザーインターフェース
36 アラート発生部
40 ポジショニング認識用学習済み処理部
42 機械学習処理部
H 被写体