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特許7077674画像形成装置、画像形成方法、及び記録物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法、及び記録物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220524BHJP
   C09D 11/324 20140101ALI20220524BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20220524BHJP
   H05B 6/80 20060101ALI20220524BHJP
   H05B 6/62 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B41J2/01 125
C09D11/324
B41J2/01 501
B41M5/00 120
B41M5/00 100
H05B6/80 Z
H05B6/62
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018039669
(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公開番号】P2019151071
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】相良 亜弥佳
(72)【発明者】
【氏名】池上 廣和
(72)【発明者】
【氏名】小篠 団
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0027478(US,A1)
【文献】特開2014-217989(JP,A)
【文献】米国特許第05814138(US,A)
【文献】特開2006-257433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
C09D 11/00-13/00
B41M 5/00
H05B 6/46
H05B 6/52-6/64
H05B 6/70-6/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と顔料とを含有するインクと、前記インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクを加熱する誘電加熱手段とを有し、
前記樹脂が親水性基と、疎水性基とを有し、
前記インク中における、前記樹脂と、前記顔料との質量比率(樹脂/顔料)が、0.5以上0.95以下であり、
前記インクの蒸発率80%時の導電率が、0.010S/m以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記インク中における、前記樹脂と、前記顔料との質量比率(樹脂/顔料)が、0.5以上0.8未満である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記顔料が、カーボンブラックである請求項1から2のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記樹脂が粒子状の樹脂粒子である請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記樹脂粒子の平均粒子径が、20nm以上45nm以下である請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記樹脂がウレタン樹脂である請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記誘電加熱手段が、高周波誘電加熱手段である請求項1から6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記誘電加熱手段が、マイクロ波加熱手段である請求項1から6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記高周波誘電加熱手段における駆動周波数が100MHz以下である請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項10】
樹脂と顔料とを含有するインクをインクジェットヘッドにより吐出し、記録媒体上に前記インクからなる画像を形成する画像形成工程と、前記記録媒体上の前記インクを加熱する誘電加熱工程と、を有し、
前記樹脂が親水性基と、疎水性基とを有し、
前記インク中における、前記樹脂と、前記顔料との質量比率(樹脂/顔料)が、0.5以上0.95以下であり、
前記インクの蒸発率80%時の導電率が、0.010S/m以下であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項11】
樹脂と顔料とを含有するインクをインクジェットヘッドにより吐出し、記録媒体上に前記インクからなる画像を形成する画像形成工程と、前記記録媒体上の前記インクを加熱する誘電加熱工程と、を有し、
前記樹脂が親水性基と、疎水性基とを有し、
前記インク中における、前記樹脂と、前記顔料との質量比率(樹脂/顔料)が、0.5以上0.95以下であり、
前記インクの蒸発率80%時の導電率が、0.010S/m以下であることを特徴とする記録物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法、インク、及び記録物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、容易にカラー画像の記録が可能であり、しかもランニングコストが低いなどの理由から、近年、急速に普及してきている。
インクジェット記録用インクとして、顔料を微粒子状にして水に分散させた水性顔料インクが注目されている。水分散性顔料を使用したインクジェット記録用インクは耐水性、耐光性に優れている。
一方、商業印刷や工業印刷の分野における高生産性のニーズを受けて、数十m毎分といった高速度で画像を形成・乾燥させるため、印刷物を効率よく高速で乾燥させる手段が種々検討されている。
印刷物を乾燥させる方式として、温風を印刷物にあてる対流方式や、ヒートローラーのような高温の熱源を印刷物に接触させる電熱方式がある。しかし、これらの乾燥方式では、高速印刷において、印刷物を十分に乾燥させられずに、画像が重ねた紙に転写したり、搬送ローラーにインクが付着するといった問題が発生する。
一方、誘電加熱方式は、温風乾燥やホットプレート乾燥などの電熱方式とは異なり、画像内部から加熱されるため、高効率・高速で乾燥することができ、高い生産性を満足することができる。
誘電加熱方式を用いたインクジェット装置において、カーボンブラックを含むインクで画像を形成した際のスパークの発生を抑制するインクジェット装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、誘電加熱方式を用い高い生産性を満足したインクジェットの画像形成装置であって、画像の黄変を抑制することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
本発明の画像形成装置は、
樹脂と顔料とを含有するインクと、前記インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクを加熱する誘電加熱手段とを有し、
前記樹脂が親水性基と、疎水性基とを有し、
前記インクの蒸発率80%時の導電率が、0.010S/m以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によると、誘電加熱方式を用い高い生産性を満足したインクジェットの画像形成装置であって、画像の黄変を抑制することができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本発明のインクジェット画像形成装置の実施形態1の側面図である。
図2図2は、本発明のインクジェット画像形成装置の実施形態1の高周波誘電加熱手段の斜視図である。
図3図3は、本発明のインクジェット画像形成装置の実施形態1の高周波誘電加熱手段の側面図である。
図4A図4Aは、実施形態1の高周波誘電加熱手段において、電極の形状を変形した一例を示す概略図である。
図4B図4Bは、実施形態1の高周波誘電加熱手段において、電極の形状を変形した他の一例を示す概略図である。
図5図5は、本発明のインクジェット画像形成装置の実施形態2の高周波誘電加熱手段の斜視図である。
図6図6は、本発明のインクジェット画像形成装置の実施形態2の高周波誘電加熱手段の側面図である。
図7図7は、実施形態2の高周波誘電加熱手段において、電極の形状を変形した一例を示す概略図である。
図8図8は、本発明のインクジェット画像形成装置の実施形態3の側面図である。
図9図9は、本発明のインクジェット画像形成装置の実施形態3のマイクロ波加熱ユニットの斜視図である。
図10図10は、本発明のインクジェット画像形成装置の実施形態3のマイクロ波加熱ユニットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者らは、誘電加熱方式を用いたインクジェットの画像形成装置について検討したところ、カーボンブラック等の顔料を含有するインク層を乾燥させると、画像のベタ部分に黄変が生じることがわかった。これは、顔料に含まれる炭素により形成された導電体による影響のためと思われる。
そこで、本発明者らは、検討を重ねた。その結果、インクジェットの画像形成装置において、誘電加熱方式と特定のインクとを組み合わせることにより、上記課題を解決できる画像形成装置が提供できることを見出した。誘電加熱方式を用い高い生産性を満足し、かつ、画像の黄変を抑制できる画像形成装置として、以下の構成の画像形成装置が有効である。
【0008】
(画像形成装置、画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、インクと、前記インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクを加熱する誘電加熱手段とを有する。本発明の画像形成装置は、必要に応じ、その他の手段を有してもよい。
本発明の画像形成方法は、インクをインクジェットヘッドにより吐出し、記録媒体上にインクからなる画像を形成する画像形成工程と、記録媒体上のインクを加熱する誘電加熱工程とを有する。本発明の画像形成方法は、必要に応じ、その他の工程を有してもよい。
本発明の画像形成装置は、本発明の画像形成方法を実施することと同義であるので、本発明の画像形成装置の説明を通じて本発明の画像形成方法の詳細についても明らかにする。
【0009】
<インク>
インクは、樹脂と顔料とを含有し、必要に応じてその他の成分を含有する。
樹脂は、親水性基と疎水性基とを有する。
前記インクの蒸発率80%時の導電率は、0.010S/m以下である。
導電率が、0.010S/m以下であることにより、誘電加熱方式のインクジェット画像形成装置において、顔料を有するインクを用いた場合に生じる、画像の黄変の問題を有効に防止することができる。
インクの蒸発率80%時の導電率は、実用上の観点から、0.003S/mから0.010S/mの範囲であることがより好ましい。
インク中の樹脂として、親水性基および疎水性基を有する樹脂を添加することで、誘電加熱方式によるインクの乾燥における画像の黄変を抑制している。これは、親水性基の存在により、上記樹脂が少量でもインク中で安定に分散し、顔料の分散体または分散助剤として作用するためと考えられる。インク中でカーボンブラック等の顔料と樹脂とが均一に分散することで、印字・乾燥後の画像状態においても顔料と樹脂とが均一に層を形成する。これにより、顔料粒子間に樹脂が存在することで、画像層中で顔料同士の接触確率が低くなり、導電体としての作用を抑制することで、乾燥時における画像の黄変を抑制できると考えられる。
インクの蒸発率80%時の導電率は、例えば、以下のようにして測定することができる。
【0010】
[インクの蒸発率80%時の導電率]
インクをφ40mmシャーレに1g滴下し、50℃環境下で放置し、インク蒸発率が80%となるまで、乾燥する。この乾燥サンプルについて、ロレスターGP(日本測器株式会社製)を用いて、導電率を測定する。インクの重量変化を確認することにより、インクの蒸発率を確認する。具体的には、インク1gが0.2gになったときの導電率を測定する。
【0011】
また、インク中における、樹脂と、顔料との質量比率(樹脂/顔料)は、0.5以上0.8未満であることが好ましい。
親水性基を含む樹脂を用いることで、樹脂が少量でもインク中で安定に分散し、顔料と樹脂とがインク中で均一に分散する。インク中の樹脂と顔料との質量比率(樹脂/顔料)が、0.5以上0.8未満であれば、水分蒸発時の粘度上昇を抑制し、高い吐出信頼性を確保することができる。
誘電加熱方式を用いるような高生産性向け装置では、デキャップ時間が長く、さらにメンテナンス頻度も少ないため、高い吐出信頼性が求められる。
顔料と、親水性基と疎水性基とを有する特定の樹脂との質量比率を、上記特定の範囲とすることにより、誘電加熱方式で乾燥した際にも、画像の黄変を抑制することができ、かつインクの高い吐出信頼性を満足することができる。
【0012】
顔料は、カーボンブラックであると好ましい。本発明で規定する導電率を満足する上で、カーボンブラックの示す導電率が適している。
樹脂は、粒子状の樹脂粒子であるとよく、樹脂粒子の平均粒子径としては、20nm以上45nm以下であるとよい。
樹脂はウレタン樹脂であるとよい。
【0013】
以下、インクに用いる有機溶剤、水、色材(顔料)、樹脂、添加剤等について説明する。
<<有機溶剤>>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0014】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0015】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0016】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0017】
<<水>>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0018】
<<色材(顔料)>>
色材として、本発明では、以下に記載する顔料が用いられる。
顔料としては、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラック等のブラック顔料が挙げられる。顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
【0019】
インク中の色材(顔料)の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0020】
顔料をインク中に分散させるには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加し水中に分散可能とした自己分散顔料等が使用できる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能なものを用いることができる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0021】
<<顔料分散体>>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を分散し、粒径を調製して得られる。分散は分散機を用いるとよい。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0022】
<<樹脂>>
本発明では、樹脂は、親水性基と疎水性基とを有する。
親水性基としては、例えば、-OH基、-COOH基、-SH基、-SOH基、-PO基、-OPOH基、-P(=O)(OH)(R01)基、-OP(=O)(OH)(R01)基、-N(R01)CO(R01)基、-N(R01)SO(R01)基、-CON(R02)(R03)基、-SON(R02)(R03)基、-SONHSO(R01)基、-N(R02)(R03)基、少なくとも一つの窒素原子を含有する5~6員の複素環基またはこれら5~6員の複素環と縮環構造を形成する複素環基、カチオン基等が挙げられる。これらの親水性基は、構成する繰り返し単位の同一分子中に1個含有されていてもよく、2個以上含有されていてもよい。また、親水性を示す樹脂が共重合体である場合には、2種以上の共重合成分を含有していてもよい。
ここで置換基R01は、置換されていてもよい炭素数1~12の脂肪族基または置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基を表す。R02およびR03は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~18の脂肪族基または置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基を表す。なお、R02とR03とは、環を形成していてもよく、その場合は、R02とR03は環を形成する原子群を表す。
疎水性基としては、疎水性基は上記親水性基として例示した官能基以外の官能基であり、例えば、炭化水素基などが挙げられる。
官能基の分析は、熱分解GC-MSで可能であり、親水性基についてはIRでも分析可能である。
【0023】
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は定着樹脂および定着樹脂としてインク中に含まれるものであれば、特に制限はない。さらにこの中でも、ウレタン樹脂が好ましい。
インク中の樹脂は、樹脂粒子として含まれていることがより好ましい。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。さらに、カーボンブラック顔料分散体に対する分散助剤という機能を果たすために、20nm以上45nm以下であることがより好ましい。
体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
尚、上述したように、本発明では、樹脂と、カーボンブラック等の顔料との質量比率(樹脂/顔料)は、0.5以上0.8未満であるとよい。これにより、誘電加熱時の画像の黄変抑制と吐出信頼性の両立を実現することができる。上記比率より低いと、誘電加熱時の画像黄変が生じやすくなり、一方高いと吐出信頼性が低下する。
【0024】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1,000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0025】
<<添加剤>>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えてもよい。
【0026】
<<<界面活性剤>>>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化1】
一般式(S-1)
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは整数を表わす。 R及びR’はアルキル基、アルキレン基を表わす。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0028】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化2】
一般式(F-1)
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
2n+1-CH2CH(OH)CH2-O-(CH2CH2O)-Y
一般式(F-2)
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCnF2n+1でnは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-CnF2n+1でnは4~6の整数、又はCpH2p+1でpは1~19の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR(いずれも、DuPont社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Du Pont社製のFS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0029】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0030】
<<<消泡剤>>>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0031】
<<<防腐防黴剤>>>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0032】
<<<防錆剤>>>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0033】
<<<pH調整剤>>>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0034】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0035】
<前処理液>
前処理液は、凝集剤、有機溶剤、水を含有し、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等を含有してもよい。
有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤は、インクに用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。
凝集剤の種類は特に限定されず、水溶性カチオンポリマー、酸、多価金属塩等が挙げられる。
【0036】
<後処理液>
後処理液は、透明な層を形成することが可能であれば、特に限定されない。後処理液は、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等、必要に応じて選択し、混合して得られる。また、後処理液は、記録媒体に形成された記録領域の全域に塗布してもよいし、インク像が形成された領域のみに塗布してもよい。
【0037】
<記録媒体>
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。
前記非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である基材をいう。
前記非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートフィルムなどのプラスチックフィルムを、好適に使用することができる。
【0038】
<記録物>
本発明のインク記録物は、記録媒体上に、インクを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット画像形成装置及びインクジェット画像形成方法により、記録媒体上にインクからなる画像を形成して記録物を得ることができる。
【0039】
<画像形成装置の装置構成>
本発明の画像形成装置は、インク吐出手段と、誘電加熱手段とを有し、必要に応じてその他の手段を有する。
<<インク吐出手段>>
インク吐出手段は、インクに、刺激を印加し、インクを吐出させて画像を記録する手段である。
インク吐出手段として、インクを吐出するインクジェットヘッドを有する。
【0040】
前記刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱(温度)、圧力、振動、光、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好適に挙げられる。
【0041】
前記インクの吐出の態様としては、例えば、インク流路内の前記インクを加圧する圧力発生手段として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる、いわゆるピエゾ方式(例えば、特公平2-51734号公報参照);発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させる、いわゆるサーマル方式(例えば、特公昭61-59911号公報参照);インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、前記振動板と前記電極との間に発生させる静電力によって前記振動板を変形させることで、インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電方式(例えば、特開平6-71882号公報参照)などが挙げられる。
【0042】
<<誘電加熱手段>>
誘電加熱手段としては、例えば、高周波誘電加熱手段、又はマイクロ波加熱手段が挙げられる。高周波誘電加熱手段は、周波数帯域が3MHz~300MHzの短波や超短波の電磁波を利用し、高周波回路を作り、その回路上の電極間にできた高周波電界に被加熱物を置いて誘電加熱するものである。一方、マイクロ波加熱手段は、周波数帯域が300MHz~30GHzの極超短波やセンチ波の電磁波を利用し、発振器より電磁波を放射して高周波電界をつくり、そこに被加熱物を置いて誘電加熱するものである。
高周波誘電加熱手段は、より具体的には、複数の電極と、該複数の電極に高周波を印加する高周波印加手段と、インクが付与された記録媒体を搬送する媒体搬送手段とを有する。
複数の電極は、例えば、インクが付与された記録媒体を挟む形で対向する位置に配置される。
高周波印加手段に高周波電力を印加することで記録媒体を加熱する。媒体搬送手段により記録媒体は搬送され、順次、記録媒体の異なる領域が加熱される。
高周波誘電加熱手段の駆動周波数は、100MHz以下であるとよい。駆動周波数が100MHz以下であると、不要な輻射を抑えるシールドの構成が簡易で済む。なぜなら、商用印刷機では装置本体において給紙用の隙間ができる為、周波数が高くなると(波長が短くなり)、その隙間から不要な輻射が漏れてしまう。しかし、100MHz以下とすれば、不要な輻射の漏れを低減することができる。また、駆動周波数が100MHz以下であれば、簡単な電極構成で済む。
【0043】
<画像形成装置の実施形態>
以下、本発明の画像形成装置の具体的実施形態について、説明する。
画像形成装置は、インクと、インクを吐出し記録媒体上に画像を形成するインクジェットヘッドと、記録媒体とともに記録媒体上のインクを加熱する誘電加熱手段とを有する。
【0044】
<<本発明のインクジェット画像形成装置の実施形態1の構成>>
図1は、画像形成装置の一例を示す模式図である。
図1に示すように、本発明のインクジェット画像形成装置1は、記録媒体2、インクジェットヘッド3、記録紙トレー4、搬送ローラ5、高周波誘電加熱手段6aを有する。また、3Y、3M、3C、3Kは、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色のインクを示している。一般的にこの4色によりカラー画像が形成される。
【0045】
記録媒体2が搬送される方向100に沿って、インクジェットヘッド3、高周波誘電加熱手段6aが配置されている。記録紙トレー4からは記録媒体2である記録紙が搬送され、インクジェットヘッド3から吐出されたインクにより、記録紙上に画像が形成される。
【0046】
実施形態1においては、加熱手段として高周波誘電加熱手段6aを使用する。図2及び図3は高周波誘電加熱手段6aを示している。図2に示すように、棒状電極61が記録媒体2の下側に配置されている。図3に示すように、棒状電極61は、隣り合う電極が異極になるように構成されている。棒状電極61には、例えば、100MHz以下、より具体的には、10MHz~80MHzの高周波が掛けられる。すると、図3の点線で示す電気力線が記録媒体2へ作用し、インク等に加熱作用が起きる。この加熱作用の強さは材質に依存する。一般的に高周波中に誘電体を置くと、誘電体ロスδ(誘電損失角)、電圧E、電流Icとすると、Ic・tabδ・E分の熱が発生することが知られている。このtabδを誘電正接と呼び、この値が大きいほど強く加熱され、この値が小さいほど加熱されにくい。
図示しないインクタンクからインクジェットヘッド3にインクが供給される。インクジェットヘッド3は、小さなインク滴を吐出し、記録媒体2上に画像を形成する。
さらに、高周波誘電加熱手段6aの棒状電極61近傍をインクが通過する際に、インク内の水分が加熱され蒸発することにより、インクが乾燥する。この時、高周波誘電加熱手段6aの出力及び加熱時間は、インク内の水分量、吐出したインクの量等に応じ、適宜設定することができる。
【0047】
尚、高周波誘電加熱手段6aにおける電極の形状は、特に制限はなく、図2及び図3で示した棒状の電極以外にも、図4Aで示す平板状電極とすることもできる。また、図4Bで示す電極構造とすることもでき、この場合には、電気力線が、放射円状に広がっていく。
【0048】
<<本発明のインクジェット画像形成装置の実施形態2の構成>>
実施形態2においては、実施形態1の構成と比較して、高周波誘電加熱手段6aの構成が異なっている。図5及び図6に示すように、実施形態2では、記録媒体2を挟んで棒状電極61を千鳥に配置している。この場合、図6に示すように、電気力線が最も強くなる電極間を直線で結んだ線上を記録媒体2が通過する。
実施形態2では実施形態1と同様に、記録媒体2の画像形成部分が高周波誘電加熱手段6aを通過する際に、高周波誘電加熱手段6aによって加熱を行い、インク内の水分を蒸発させる。
【0049】
尚、実施形態2の千鳥に配した棒状電極61は、図7で示すように平板状電極とすることもできる。
【0050】
<<本発明のインクジェット画像形成装置の実施形態3の構成>>
実施形態3では、加熱手段として高周波誘電加熱手段6aの代わりにマイクロ波による加熱手段を使用する。図8の6bはマイクロ波加熱ユニットを示している。図9に示すように、マイクロ波加熱ユニット6bは、加熱部62、導波管63、マイクロ波発生のためのマグネトロン64、反射板65により構成されている。導波管63は、マグネトロン64から反射板65に至るまで複数曲がった状態で設置されている。
【0051】
マイクロ波加熱ユニット6bには、実施形態1及び実施形態2の高周波誘電加熱装置6aのような電極はなく、高周波発生装置であるマグネトロン64から周波数2450MHzのマイクロ波が発生する。発生したマイクロ波を導波管63でアプリケータ内に導き定在波を作り、その中を記録媒体2が通過するようになっている。これは電子レンジと同じような構成である。
【0052】
しかしながら、マイクロ波によって加熱を行うと、約12cmおきに加熱ムラができる。これは、マイクロ波の周波数が2,450MHzと非常に大きいため、波長が12cmと短く、波長による加熱のムラが顕著に現れるためである。電子レンジでもこの問題を解決するため、旧式のものは内部に回転テーブルを持ち、被加熱物を回転させる構造となっていた。実施形態3においても、加熱ムラを発生させないようにするため、例えば、下記のように構成するとよい。
【0053】
図10に示すように、導波管63の最初の列である63aを記録媒体2が通過する時、前述のように記録媒体2には約12cmおきに加熱ムラができる。導波管63のカーブに至るまでの直線部の長さを調節することで、導波管63の列63bを記録媒体2が通過する時には、列63aで加熱した場所から少しずらした位置を加熱するように構成する。列63b以降の列63c、63dについても同様の調節を行い、記録媒体2が加熱部62を通過し終わった時には、記録媒体全体がムラなく加熱されるように構成する。列の数は63aから63dまでの4列としているが、4列に限らず、列の数が2以上であればよい。
実施形態3と、実施形態1及び実施形態2との違いは、高周波誘電加熱手段6aがマイクロ波加熱ユニット6bに置き換わったことである。即ち、インクが吐出された記録媒体2を搬送し、マイクロ波加熱ユニット6bによって加熱を行い、インク内の水分を蒸発させる。
【実施例
【0054】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。特に明記しない限り、以下の記載において部は質量部を示す。
【0055】
<自己分散型顔料分散液の調製(調製例1)>
Cabot Corporation製Black Pearls(登録商標)1000(BET表面積343m/g、およびDBPA105mL/100gを有するカーボンブラック)100gとスルファニル酸100ミリモル、およびイオン交換高純水1Lを室温環境下Silversonミキサー(6,000rpm)で混合した。得られたスラリーのpHが4より高い場合は、硝酸100ミリモルを添加する。30分後に、少量のイオン交換高純水に溶解された亜硝酸ナトリウム(100ミリモル)を上記混合物にゆっくりと添加した。さらに、撹拌しながら60℃に加温し、1時間反応させた。カーボンブッラクにスルファニル酸を付加した改質顔料が生成できた。次いで、10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド溶液(メタノール溶液)でpHを9に調整することにより、30分後に改質顔料分散体が得られた。少なくとも1つのスルファニル酸基またはスルファニル酸テトラブチルアンモニウム塩と結合した改質顔料を含んだ分散体とイオン交換高純水を用いて透析膜を用いた限外濾過を行い、さらに超音波分散を行って顔料固形分を20%に濃縮した改質顔料分散体を得た。表面処理レベルは0.75mmol/gであり、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定された粒子径(D50)は120nmであった。
【0056】
<樹脂被覆型顔料分散液の調製(調製例2)>
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃に昇温した。次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液Aを800g得た。
このポリマー溶液Aを28gと、C.I.カーボンブラック(デグサ社製、FW100)を42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。得られたペーストを純水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータ用いてメチルエチルケトン及び水を留去した。更に粗大粒子を除くためにこの分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、顔料固形分15質量%、固形分濃度20質量%のカーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液が得られた。カーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について、粒子径(D50)を粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)により測定したところ104nmであった。
【0057】
<高分子分散剤型顔料分散体-1(調製例3)>
・NIPEX150(カーボンブラック、オリオンエンジニアドカーボンズ社製)
・・・15.0質量部
・高分子分散剤(BYKJET-9151、有効成分100%、ビックケミー社製)
・・・・3.8質量部
・イオン交換水 ・・・80.0質量部
分散剤をイオン交換水に加えて溶解し、カーボンブラックNIPEX150を混合、撹拌し充分に湿潤したところで、混練装置(ダイノーミル KDL A型、WAB社製)に直径0.5mmジルコニアビーズを充填して、2,000rpmで60分間混練を行なった。ジルコニアビーズを取り出して平均孔径が1μmのフィルターでろ過して、顔料固形分濃度が15質量%である高分子分散剤型顔料分散体-1を得た。
【0058】
<高分子分散剤型顔料分散体-2(調製例4)>
・NIPEX150(カーボンブラック、オリオンエンジニアドカーボンズ社製)
・・・15.0質量部
・高分子分散剤(BYKJET-9151、有効成分100%、ビックケミー社製)
・・・・7.5質量部
・イオン交換水 ・・・80.0質量部
分散剤をイオン交換水に加えて溶解し、カーボンブラックNIPEX150を混合、撹拌し充分に湿潤したところで、混練装置(ダイノーミル KDL A型、WAB社製)に直径0.5mmジルコニアビーズを充填して、2,000rpmで60分間混練を行なった。ジルコニアビーズを取り出して平均孔径が1μmのフィルターでろ過して、顔料固形分濃度が15質量%である高分子分散剤型顔料分散体-2を得た。
【0059】
<界面活性剤分散型顔料分散体(調製例5)>
カーボンブラック 175質量部
(NIPEX160、degussa社製、BET比表面積150m/g、
平均一次粒径20nm、pH4.0、DBP吸油量620g/100g)
ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物 175質量部
(竹本油脂株式会社製パイオニンA-45-PN、ナフタレンスルホン酸2量体、
3量体、及び4量体の合計含有量=50質量%)
蒸留水 650質量部
上記の混合物をプレミックスし、混合スラリー(a)を作製した。これをディスクタイプのメディアミル(アシザワ・ファインテック株式会社製、DMR型)で0.05mmジルコニアビーズ、充填率55%を用いて周速10m/s、液温10℃で3分間循環分散し、遠心分離機(久保田商事株式会社製、Model-7700)で粗大粒子を遠心分離し、顔料濃度が13質量%となる界面活性剤分散型顔料分散体を得た。
【0060】
<ポリウレタン樹脂水分散体-1(調製例6)>
撹拌機及び加熱器を備えた簡易加圧反応装置に、Mn2,000の結晶性ポリカーボネートジオール[デュラノールT6002、旭化成ケミカルズ(株)製]287.9部、1,4ブタンジオール3.6部、DMPA8.9部、水添MDI98.3部及びアセトン326.2部を、窒素を導入しながら仕込んだ。
その後90℃に加熱し、8時間かけてウレタン化反応を行い、プレポリマーを製造した。
反応混合物を40℃に冷却後、トリエチルアミン6.8部を添加・混合し、更に水568.8部を加え回転子-固定子式方式の機械乳化機で乳化することで水性分散体を得た。
得られた水性分散体に撹拌下、10%のエチレンジアミン水溶液を28.1部加え、50℃で5時間撹拌し、鎖伸長反応を行った。
その後、減圧下に65℃でアセトンを除去し、水分調節をして、固形分40質量%のポリウレタン樹脂水分散体-1を得た。ポリウレタン樹脂水分散体-1について、樹脂粒子の平均粒子径(D50)を粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)により測定したところ42nmであった。
【0061】
<ポリウレタン樹脂水分散体-2(調製例7)>
トリエチルアミン添加量を8.0部に変更する以外は(調製例6)と同様にして、ポリウレタン樹脂水分散体-2を得た。ポリウレタン樹脂水分散体-2について、樹脂粒子の平均粒子径(D50)を粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)により測定したところ25nmであった。
【0062】
<ポリウレタン樹脂水分散体-3(調製例8)>
トリエチルアミン添加量を10.0部に変更する以外は、(調製例6)と同様にして、ポリウレタン樹脂水分散体-3を得た。ポリウレタン樹脂水分散体-3について、樹脂粒子の平均粒子径(D50)を粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)により測定したところ15nmであった。
【0063】
<ポリウレタン樹脂水分散体-4(調製例9)>
トリエチルアミン添加量を4.9部に変更する以外は、(調製例6)と同様にして、ポリウレタン樹脂水分散体-4を得た。ポリウレタン樹脂水分散体-4について、樹脂粒子の平均粒子径(D50)を粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)により測定したところ79nmであった。
【0064】
<アクリル-シリコーン樹脂水分散体-1(調製例10)>
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、ラテムルS-180 17.5g、イオン交換水350gを加え混合し、65℃に昇温した。
昇温後、反応開始剤であるt-ブチルパーオキソベンゾエート3.0g、イソアスコルビン酸ナトリウム1.0gを加え、5分後にメタクリル酸メチル45g、メタクリル酸2エチルヘキシル160g、アクリル酸5g、メタクリル酸ブチル45g、メタクリル酸シクロヘキシル30g、ビニルトリエトキシシラン15g、ラテムルS-180 8.0g、及びイオン交換水340gを混合し、3時間かけて滴下を行った。
その後、80℃で2時間加熱熟成を行った後、常温まで冷却し水酸化ナトリウムでpHを7~8に調整した。
エバポレータ用いてエタノールを留去し、水分調節をして、固形分40質量%のアクリル-シリコーン樹脂水分散体-1溶液730gを作製した。アクリル-シリコーン樹脂水分散体-1について、樹脂粒子の平均粒子径(D50)を粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)により測定したところ43nmであった。
【0065】
<アクリル-シリコーン樹脂水分散体-2(調製例11)>
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、イオン交換水350gに、8.0gのラテムルS-180(花王社製、反応性陰イオン性界面活性剤)を加えて混合し、65℃に昇温した。
次いで、反応開始剤のt-ブチルパーオキソベンゾエート3.0g、イソアスコルビン酸ナトリウム1.0gを加え、5分後にメタクリル酸メチル45g、メタクリル酸-2-エチルヘキシル160g、アクリル酸5g、メタクリル酸ブチル45g、メタクリル酸シクロヘキシル30g、ビニルトリエトキシシラン15g、ラテムルS-180 8.0g、及びイオン交換水340gの混合物を、3時間かけて滴下した。次いで、80℃で2時間加熱熟成した後、常温まで冷却し、水酸化ナトリウムでpHを7~8に調整した。次いでエバポレータによりエタノールを留去し、水分調節をして、固形分40%のアクリル-シリコーンポリマー微粒子分散体730gを得た。分散体中のポリマー微粒子の体積平均粒径(D50)を、粒度分布測定装置(日機装社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定したところ125nmであった。
【0066】
-インクジェット記録用インクの作製-
<インク1>
攪拌機を備えた容器に、下記に示す成分を入れ、30分程度攪拌して均一にした。
1,3-ブタンジオール20質量部
3-メチル-1,3-ブタンジオール10質量部
トリエチレングリコール8質量部
2-エチル-1,3-ヘキサンジオール2質量部
界面活性剤(TEGO WET270(Dupont社製))0.5質量部
次いで、自己分散型顔料分散体(調製例1)を顔料固形分量で5.0質量部および高純水を加え、60分程度攪拌して均一にした。
さらにポリウレタン樹脂水分散体-1(調製例6)を固形分量で3質量部加え、30分攪拌してインクを均一にした。
このインクジェット記録用インクを平均孔径1.2μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子およびごみを除去してインク1のインクジェット記録用インクを作製した。
【0067】
<インク2~12>
インク1と同様に、下記表1-1~1-3に示した水溶性有機溶剤、界面活性剤を混合攪拌し、水分散性着色剤(顔料分散体)、高純水を加えて混合攪拌し、さらには水分散性の樹脂(上記調製例6から11で作製した樹脂粒子)を混合攪拌しインクを均一とした。このインクジェット記録用インクを平均孔径1.2μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子およびごみを除去してインク2~12のインクジェット記録用インクを作製した。
【0068】
【表1-1】
【0069】
【表1-2】
【0070】
【表1-3】
【0071】
<インク物性>
<<インク初期粘度>>
各インクを調製後、粘度測定を行った。粘度の測定には、粘度計(RE80L、東機産業社製)を使用し、50回転又は100回転で25℃における粘度を測定した。評価結果を下記表2-1~表2-3に示す。
【0072】
<<pH>>
各インクのpHを測定した。結果を下記表2-1~表2-3に示す。
【0073】
<<インク保存安定性>>
各インクをインクカートリッジに充填して70℃で14日間保存し、保存前の粘度に対する保存後の粘度の変化率を下記式から求め、下記の基準により評価した。
【数1】
なお、粘度の測定には、粘度計(RE80L、東機産業社製)を使用し、50回転又は100回転で25℃における粘度を測定した。評価結果を表2-1~表2-3に示す。
[評価基準]
〇:粘度の変化率が±5%未満
△:粘度の変化率が±5%を超え、±10%未満
×:粘度の変化率が±10%以上
【0074】
<<蒸発率80%時導電率>>
インクをφ40mmシャーレに1g滴下し、50℃環境下で放置し、インク蒸発率が80%となるまで、乾燥した。この乾燥サンプルについて、ロレスターGP(日本測器株式会社製)を用いて、導電率の測定を行った。
評価結果を表2-1~表2-3に示す。
【0075】
(実施例1~10、比較例1~2)
次に、得られたインク1~12をインクカートリッジに充填し、このインクカートリッジを装着したインクジェットプリンタ(株式会社リコー製、IPSiO GX e5500)を用いて画像を形成した。上記プリンタを用いて画像形成を行ったのち、誘電加熱で乾燥を行った。誘電加熱は、電極(山本ビニター社製、長さ50cm、20mmピッチ格子電極)を用いて、1,000W、2.5秒の乾燥条件で行った。
上記方法で作成した画像について、下記評価を行った。
【0076】
(実施例11)
実施例11として、マイクロ波加熱手段を用いた。インク1を用いて、印字終了後、5秒後に、マイクロ波発生装置(ESG-2450S-2A 島田理化工業社製)を用いて、マイクロ波(発振周波数:2,450MHz、出力:100W)を3秒間照射し、乾燥させた。
上記方法で作成した画像について、下記評価を行った。
【0077】
<画像評価>
<<画像の黄変>>
印刷用グロス紙(坪量90g/mのLumiArtGross、Store Enso社製)に、上記インクジェットプリンタを用い、6cm四方をインク付着量10,000mg/mでベタ画像を印字した後、誘電加熱方式により乾燥後、画像状態の確認を行った。評価結果を表2-1~表2-3に示す。
[評価基準]
○:用紙の表裏にともに黄変なし
△:用紙裏面に目視できる黄変あり
×:用紙の表裏にともに黄変または画像異常あり
【0078】
<<耐ブロッキング性>>
日本紙パルプ技術協会が発行するTAPPI T477試験方法を参照して耐ブロッキング性を評価した。印刷用グロス紙(坪量90g/mのLumiArtGross、Store Enso社製)に、前記インクジェットプリンタを用い、6cm四方をインク付着量10,000mg/mでベタ画像を印字した後、前記ベタ画像に印刷面に印刷していない印刷用グロス紙を重ね、これを10cm四方のガラス板2枚の間に挟み、その上から、荷重1kg/mをかけた状態で、40℃、90%RHの環境条件下に、24時間放置した。その後2時間室温(25℃)に放置し、剥がした際の印刷用グロス紙同士の貼り付き具合を目視で観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。評価結果を表2-1~表2-3に示す。
[評価基準]
○:ブロッキングなし(隣接面に粘着や接着が生じることなく、試料の面が傷つかない)
△:僅かにブロッキング(僅かに粘着している。試料の面に僅かな傷がある)
×:顕著にブロッキング(隣接面に粘着又は接着が生じる。試料の面に傷あり)
【0079】
<<吐出信頼性>>
Microsoft Word2000にて作成した一色当りA4サイズ用紙の面積5%をベタ画像にて塗りつぶすチャートを連続200枚、MyPaper(株式会社リコー製)に打ち出し、打ち出し後の各ノズルの吐出乱れから評価した。印字モードはプリンタ添付のドライバで普通紙のユーザー設定より「普通紙-標準はやい」モードを「色補正なし」と改変したモードを使用した。評価結果を表2-1~表2-3に示す。
[評価基準]
〇:吐出乱れなし
△:若干吐出乱れあり
×:吐出乱れあり、もしくは吐出しない部分あり
【0080】
【表2-1】
【0081】
【表2-2】
【0082】
【表2-3】
【0083】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 樹脂と顔料とを含有するインクと、前記インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクを加熱する誘電加熱手段とを有し、
前記樹脂が親水性基と、疎水性基とを有し、
前記インクの蒸発率80%時の導電率が、0.010S/m以下であることを特徴とする画像形成装置である。
<2> 前記インク中における、前記樹脂と、前記顔料との質量比率(樹脂/顔料)が、0.5以上0.8未満である前記<1>に記載の画像形成装置である。
<3> 前記顔料が、カーボンブラックである前記<1>から<2>のいずれかに記載の画像形成装置である。
<4> 前記樹脂が粒子状の樹脂粒子である前記<1>から<3>のいずれかに記載の画像形成装置である。
<5> 前記樹脂粒子の平均粒子径が、20nm以上45nm以下である前記<4>に記載の画像形成装置である。
<6> 前記樹脂がウレタン樹脂である前記<1>から<5>のいずれかに記載の画像形成装置である。
<7> 前記誘電加熱手段が、高周波誘電加熱手段である前記<1>から<6>のいずれかに記載の画像形成装置である。
<8> 前記誘電加熱手段が、マイクロ波加熱手段である前記<1>から<6>のいずれかに記載の画像形成装置である。
<9> 前記高周波誘電加熱手段における駆動周波数が100MHz以下である前記<7>に記載の画像形成装置である。
<10> 樹脂と顔料とを含有するインクをインクジェットヘッドにより吐出し、記録媒体上に前記インクからなる画像を形成する画像形成工程と、前記記録媒体上の前記インクを加熱する誘電加熱工程と、を有し、
前記樹脂が親水性基と、疎水性基とを有し、
前記インクの蒸発率80%時の導電率が、0.010S/m以下であることを特徴とする画像形成方法である。
<11> インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクを加熱する誘電加熱手段とを有する画像形成装置において用いるインクであって、
前記インクは、樹脂と顔料とを含有し、
前記樹脂が親水性基と、疎水性基とを有し、
前記インクの蒸発率80%時の導電率が、0.010S/m以下であることを特徴とするインクである。
<12> 樹脂と顔料とを含有するインクをインクジェットヘッドにより吐出し、記録媒体上に前記インクからなる画像を形成する画像形成工程と、前記記録媒体上の前記インクを加熱する誘電加熱工程と、を有し、
前記樹脂が親水性基と、疎水性基とを有し、
前記インクの蒸発率80%時の導電率が、0.010S/m以下であることを特徴とする記録物の製造方法である。
【0084】
前記<1>から<9>のいずれかに記載の画像形成装置、前記<10>に記載の画像形成方法、前記<11>に記載のインク、及び前記<12>に記載の記録物の製造方法によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】
【文献】特開2014-217989号公報
【符号の説明】
【0086】
1 インクジェット画像形成装置
2 記録媒体
3 インクジェットヘッド
4 記録紙トレー
5 搬送ローラ
6a 高周波誘電加熱手段
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10