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特許7077693プレートの製造方法、製造装置、及び製造プログラム、並びに製造されたプレート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】プレートの製造方法、製造装置、及び製造プログラム、並びに製造されたプレート
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220524BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20220524BHJP
   C12Q 1/6811 20180101ALI20220524BHJP
【FI】
C12M1/00 A ZNA
G01N35/10 D
C12Q1/6811 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018050475
(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公開番号】P2019162038
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】和泉 賢
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 学
(72)【発明者】
【氏名】川島 優大
(72)【発明者】
【氏名】大▲崎▼ 優介
(72)【発明者】
【氏名】湯本 真之
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/008083(WO,A1)
【文献】特開2014-033658(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169196(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/130707(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-42
G01N 35/00-10
C12Q 1/00-70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標識が付されたヌクレオシドを、増幅反応、転写反応、及びTdT反応のうちいずれかの反応を用いて、目的の塩基配列を有する核酸に付加する標識付与工程と、
前記標識が付与された核酸を含有する核酸含有溶液を微小区画に区分する微小区画化工程と、
前記微小区画に区分する前、又は前記微小区画に区分した後に、前記標識を検出する標識検出工程と、
前記標識を検出した結果をもとに、前記微小区画の1区画内に存在する核酸の前記目的の塩基配列の数を特定する塩基配列の数特定工程と、
前記目的の塩基配列の数が特定された核酸を含む前記微小区画をプレートのウェルに配する核酸配置工程と、
を含むことを特徴とするプレートの製造方法。
【請求項2】
目的の塩基配列を有する核酸に標識を付与する標識付与工程と、
前記標識が付与された核酸を含有する核酸含有溶液をインクジェット法で液滴にして微小区画に区分する微小区画化工程と、
前記液滴に含まれる前記標識を検出する標識検出工程と、
前記標識を検出した結果をもとに、前記微小区画の1区画内に存在する核酸の前記目的の塩基配列の数を特定する塩基配列の数特定工程と、
前記目的の塩基配列の数が特定された核酸を含む前記微小区画をインクジェット法により前記液滴として吐出してプレートのウェルに配する核酸配置工程と、
を含むことを特徴とするプレートの製造方法。
【請求項3】
前記ヌクレオシドが、ウリジンである、請求項1に記載のプレートの製造方法。
【請求項4】
目的の塩基配列を有するDNAに対し、前記標識が付されたヌクレオシドと、RNA Polymeraseとを反応させることにより、RNAを合成し、標識が付与されたRNAを合成する工程をさらに含む、請求項1及び3のいずれかに記載のプレートの製造方法。
【請求項5】
前記微小区画化工程が、液滴を形成することにより行われる、請求項1から4のいずれかに記載のプレートの製造方法。
【請求項6】
前記標識の検出が、光学的ラベルの検出、電気的又は磁気的ラベルの検出、及び放射線ラベルの検出のいずれかである、請求項1から5のいずれかに記載のプレートの製造方法。
【請求項7】
標識が付与された目的の塩基配列を有する核酸を含有する核酸含有溶液をインクジェット法で液滴にして微小区画に区分する微小区画化手段と、
前記液滴に含まれる前記標識を検出する標識検出手段と、
前記標識を検出した結果をもとに、前記微小区画の1区画内に存在する核酸の前記目的の塩基配列の数を特定する塩基配列の数特定手段と、
前記目的の塩基配列の数が特定された核酸を含む前記微小区画をインクジェット法により前記液滴として吐出してプレートのウェルに配する核酸配置手段と、
を有することを特徴とするプレートの製造装置。
【請求項8】
核酸を含む微小区画をプレートのウェルに配するプレートの製造方法に用いるプレートの製造プログラムであって、
標識が付与された目的の塩基配列を有する核酸を含有する核酸含有溶液をインクジェット法で液滴にして微小区画に区分し、
前記液滴に含まれる前記標識を検出し、
前記標識を検出した結果をもとに、前記微小区画の1区画内に存在する核酸の前記目的の塩基配列の数を特定し、
前記目的の塩基配列の数が特定された核酸を含む前記微小区画をインクジェット法により前記液滴として吐出してプレートのウェルに配する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプレートの製造プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレートの製造方法、製造装置、及び製造プログラム、並びに製造されたプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分析技術の高感度化により、測定対象を分子数単位で測定することが可能となっており、食品、環境検査、及び医療へ、微量核酸を検出する遺伝子検出技術の産業利用が求められている。
【0003】
例えば、分子生物学研究分野で多く使用されるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、その技術特性から、理論上1分子の核酸からでも増幅が可能とされている。
これらの微量の遺伝子検出においては、定量解析を行う場合に、標準試料を用いる必要がある。例えば、特定の塩基配列を有するDNA断片を限界希釈し、得られた希釈液のリアルタイムPCRの結果から、目的とする分子数を含む希釈液を選別する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、特定のコピー数のDNA断片を細胞に遺伝子組み換え技術により導入し、培養した細胞を単離することにより、目的のコピー数のDNA断片を含有する標準試料の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、目的の塩基配列の数が特定されている核酸を、該目的の塩基配列の数が所定数となるよう、プレート上の所定のウェルに分注することができるプレートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段としての本発明のプレートの製造方法は、
目的の塩基配列を有する核酸に標識を付与する標識付与工程と、
前記標識が付与された核酸を含有する核酸含有溶液を微小区画に区分する微小区画化工程と、
前記微小区画に区分する前、又は前記微小区画に区分した後に、前記標識を検出する標識検出工程と、
前記標識を検出した結果をもとに、前記微小区画の1区画内に存在する核酸の前記目的の塩基配列の数を特定する塩基配列の数特定工程と、
前記目的の塩基配列の数が特定された核酸を含む前記微小区画をプレートのウェルに配する核酸配置工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、目的の塩基配列の数が特定されている核酸を、該目的の塩基配列の数が所定数となるよう、プレート上の所定のウェルに分注することができるプレートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A図1Aは、電磁バルブ方式の液滴吐出ヘッドの一例を示す模式図である。
図1B図1Bは、ピエゾ方式の液滴吐出ヘッドの一例を示す模式図である。
図1C図1Cは、図1Bにおけるピエゾ方式の液滴吐出の変形例の模式図である。
図2A図2Aは、液滴の状態の一例を示す模式図である。
図2B図2Bは、液滴の状態の一例を示す模式図である。
図2C図2Cは、液滴の状態の一例を示す模式図である。
図3図3は、プレートのウェル内に順次液滴を着弾させるプレートの製造装置の一例を示す概略図である。
図4A図4Aは、液滴形成装置の一例を示す模式図である。
図4B図4Bは、図4Aの液滴形成装置の他の変形例を示す模式図である。
図5図5は、液滴形成装置の他の一例を示す模式図である。
図6図6は、マイクロ流路中を通過してきた核酸をカウントする方法の一例を示す模式図である。
図7A図7Aは、マイクロ流路中を通過してきた核酸をカウントする方法の他の一例を示す模式図である。
図7B図7Bは、マイクロ流路中を通過してきた核酸をカウントする方法の他の一例を示す模式図である。
図8図8は、マイクロ流路中を通過してきた核酸をカウントする方法の他の一例を示す模式図である。
図9図9は、プレートの製造装置における、プレートの製造プログラムの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
従来のPCR装置を用いた個別の分析では、反応液の組成やPCR装置の性能の影響により1分子の検出が必ずしも可能とは言えない。そこで、個別の分析法について感度などの検証が求められるようになってきており、この傾向は国際的な市場の拡大を背景により強くなっている。
しかし、1分子あるいは極めて低分子数のDNAの検出を対象とした方法は、いまのところ確立されていない。このような検出方法においては、含まれるDNAの分子数がわかっているサンプル(標準試料)の提供が必要であるが、従来の技術では数分子レベルでの標準試料の供給は困難である。
上記特許文献2に記載の方法には、1分子の核酸の標準試料を作製する方法が記載されている。しかし、上記特許文献2に記載の方法では、2分子以上の核酸の標準試料の作製は難しい。また上記特許文献2に記載の方法では、対象配列を有するDNA断片を細胞に導入するため、細胞由来の核酸や細胞質などの夾雑物が含有する。細胞由来の夾雑物が含有された標準試料は、非特異的な増幅が起きたりPCRなどの反応において反応効率が低下するなどの問題が生じるため、できるだけ標準試料には、細胞由来の夾雑物が含有されていないことが望ましい。
また、1分子あるいは極めて低分子数のRNAの検出を対象とした方法はいまだ提供されていない。
【0009】
本発明者らは、検討を重ねた結果、遺伝子検査に基づく分析検査等において標準試料として使用可能な、目的の塩基配列の数が既知の核酸が所定のウェルに配置されているプレートの製造方法として、以下の構成のプレートの製造方法が有効であることを見出した。
本発明のプレートの製造方法によれば、目的の塩基配列の数が特定された核酸を、該目的の塩基配列の数が所定数となるよう、プレート上の所定のウェルに分注することができる。これにより、精度の高い標準試料を作製することができる。このような高精度の標準試料を用いることで、DNAやRNAを対象とした核酸増幅技術を含む遺伝子検査に基づく分析検査の性能評価や精度管理が良好に行える。
【0010】
(プレートの製造方法、製造装置、製造プログラム)
本発明のプレートの製造方法は、標識付与工程と、微小区画化工程と、標識検出工程と、塩基配列の数特定工程と、核酸配置工程と、を含む。本発明のプレートの製造方法は、必要に応じて、その他の工程を含むことができる。
本発明のプレートの製造装置は、標識が付与された目的の塩基配列を有する核酸を用いて、微小区画化手段と、標識検出手段と、塩基配列の数特定手段と、核酸配置手段と、を有する。本発明のプレートの製造装置は、必要に応じて、その他の手段を有することができる。
本発明のプレートの製造プログラムは、核酸を含む微小区画をプレートのウェルに配するプレートの製造方法に用いるプログラムである。
本発明のプレートの製造プログラムは、標識が付与された目的の塩基配列を有する核酸を含有する核酸含有溶液を微小区画に区分し、微小区画に区分する前、又は微小区画に区分した後に、標識を検出する、処理をコンピュータに実行させる。また本発明のプレートの製造プログラムは、標識を検出した結果をもとに、微小区画の1区画内に存在する核酸の目的の塩基配列の数を特定し、目的の塩基配列の数が特定された核酸を含む微小区画をプレートのウェルに配する、処理をコンピュータに実行させる。
本発明のプレートの製造方法は、本発明のプレートの製造装置を用い、本発明のプレートの製造装置は、本発明のプレートの製造方法を実施することと同義であるので、本発明の製造方法の説明を通じて本発明のプレートの製造装置の詳細についても明らかにする。また、本発明のプレートの製造プログラムは、ハードウェア資源としてのコンピュータ等を用いることにより、本発明のプレートの製造装置として実現させることから、本発明のプレートの製造装置の説明を通じて本発明のプレートの製造プログラムの詳細についても明らかにする。
【0011】
<標識付与工程>
標識付与工程とは、目的の塩基配列を有する核酸に標識を付与する工程である。
<<目的の塩基配列を有する核酸>>
目的の塩基配列とは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、以下のものであると好ましい。
目的の塩基配列は、感染症検査に用いられる塩基配列(ウイルスの保存領域)、自然界に存在しない塩基配列、遺伝子組換えに用いられる塩基配列、動物由来の塩基配列、植物由来の塩基配列などが挙げられる。
核酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DNA、RNAなどが挙げられる。
尚、本発明においては、目的とする塩基配列そのもの(例えば、1遺伝子であるいわゆる最小単位)を1コピーともいう。さらにこの目的の塩基配列である1コピーを有し、その他の塩基配列も含む、一つにつながれた核酸の一つの単位を1分子ともいう。本発明では、検出する核酸1つ(1分子の核酸)に対して、その核酸の中に含まれている目的の塩基配列は1コピーであるのが好ましい。
【0012】
標識を付与するとは、例えば、光学的ラベル、電気的又は磁気的ラベル、あるいは放射線ラベルなどを付与することが挙げられる。光学的ラベルとしては、蛍光ラベルが好ましい。
標識物質が蛍光物質である場合、例えば、蛍光物質としては、フルオレセイン、テトラメチルローダミン、シアニン、テキサスレッド、ジエチルアミノクマリン、リサミン、ROX、TAMRA、R6G、R110などが挙げられる。
【0013】
核酸に標識を付与する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
標識が付されたヌクレオシドを、PCR反応で増幅させる方法、RNA Polymeraseを用いて転写反応する方法、及びTdT反応1本鎖DNAの3’末端に目的のヌクレオチドを付加する方法のいずれかの方法を用いて、核酸に付加することなどが挙げられる。
尚、使用するプライマーは目的の塩基配列に応じて選択することができ、増幅反応条件もプライマーのTm値から決定できる。
標識されたヌクレオチドを付加する数は、標識によって異なるが100以上が好ましく、500以上がより好ましく、1,000以上がさらに好ましい。100を下回ると検出下限となる可能性がある。
標識が付されたヌクレオチドとしては、例えば、標識が付されたデオキシウリジン三リン酸、デオキシアデノシン三リン酸、デオキシグアノシン三リン酸、デオキシチミジン三リン酸、デオキシシチジン三リン酸が挙げられる。
核酸に標識を付与する方法として、例えば、標識されたヌクレオチドと標識されていないヌクレオチドを混合してPCR増幅したり、PCR増幅において、塩基配列におけるチミンを蛍光標識されたウラシルに置換する方法が好ましく挙げられる。
【0014】
標識が付与された目的の塩基配列を有する核酸を形成する具体的な態様としては、例えば、以下に記載の場合が挙げられる。
(i)目的の塩基配列を有するDNAに対し、蛍光標識されたデオキシウリジン三リン酸を用いて増幅処理することにより、標識が付与された目的の塩基配列を有するDNAを得る。尚、該増幅処理後に、蛍光標識された鎖を除去するために、Uracil-N-Glycosylase(UNG)処理を行なってもよい。
(ii)目的の塩基配列を有するDNAに対し、標識が付されたヌクレオチドと、RNA Polymeraseとを用い反応させることにより、RNAを合成し、標識が付与されたRNAを得る。尚、RNA合成処理とともに、鋳型となるDNAを除去するために、DNase処理を行なってもよい。
【0015】
<微小区画化工程>
微小区画化工程とは、標識が付与された核酸を含有する核酸含有溶液を微小区画に区分する工程である。
微小区画に区分するとは、目的の塩基配列を1コピー有する核酸とその核酸に付与される標識との対を1単位としてみたときに、その単位を基準に、標識が付与された目的の塩基配列を有する核酸を微小区画内に配置することをいう。
本発明では、標識が付与された核酸を含有する核酸含有溶液が上記1単位を基準として微小区画内に配置されるように区分されればよく、微小区画の形態に特に制限はなく、例えば、核酸含有溶液が液体状態で区画化されても、ゲル状態で区画化されてもよい。
好ましい態様としては、核酸含有溶液が液体状態で、例えば、液滴として微小区画化されることが挙げられる。
液滴とは、表面張力によりまとまった液体のかたまりをいう。
本発明の微小区画化する好ましい態様として、プレートのウェルに着弾される1液滴内に、上記1単位を基準とする標識が付与された目的の塩基配列を有する核酸を配置する態様が挙げられる。
本発明では、目的の塩基配列を1コピー有する核酸とその核酸に付与される標識とからなる1単位が、その1単位を基準として液滴中に配置されるが、より好ましくは、1単位1液滴となるように区分されている態様である。
但し、1液滴に2単位入ってしまった場合を除く趣旨ではない。1液滴に2単位入っている場合でも、核酸に付与されている標識に対して行なった検出結果から、液滴中に目的の塩基配列が2コピー分入っていることを特定すれば、1液滴中に含まれる目的の核酸配列のコピー数を特定することができるからである。
【0016】
本発明においては、核酸に標識を付与し、いったん上述した1単位の関係を形成した後は、プレート上の各ウェルに分注するまで、その1単位の数や量が変化するような一切の反応は行わない。つまり、いったん核酸に標識を付与した後は、プレート上の各ウェルに分注するまで、目的の塩基配列に対し増幅反応させたり、核酸に標識となる物質を追加で付与する等の追加の反応処理は行わない。
これにより、目的の塩基配列を1コピー有する核酸に対し、その核酸に付く標識となる物質の数(量)が対応付けられ、標識を検出することにより、その検出された結果から、目的の塩基配列のコピー数を正確に特定することができる。
また、本発明では、標識する物質は、核酸に直接付与しており、細胞を用いて標識を行なっていないため、細胞を含まない態様で液滴化している。したがって、液滴を分注した各ウェルの中には、細胞を構成する成分、例えば、細胞膜、細胞質、その他細胞から分解されたものなどの細胞由来のものは入っていない。これにより、製造されたプレートを使ってそれ以降の反応を行う際、細胞由来の夾雑物が含有されていないため、反応効率の低下等の問題を防止することができる。
【0017】
微小区画に区分する方法として、以下、液滴に区分する場合を例に説明する。
液滴に区分する方法としては、プレートのウェルに着弾させる1液滴内に、上記1単位を基準とする標識が付与された目的の塩基配列を有する核酸を配置することができる方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて各種の方法が選択できる。
例えば、液滴を吐出する方法が挙げられる。液滴を吐出する方法としては、例えば、液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)を有する液滴形成装置を用いて液滴を吐出する方法や、フローサイトメーター/セルソーターを用いて液滴を吐出する方法などが挙げられる。
液滴に区分する方法の具体的実施形態については、後述する。
【0018】
<標識検出工程>
標識検出工程とは、微小区画に区分する前、又は微小区画に区分した後に、標識を検出する工程である。
微小区画に区分する前、又は微小区画に区分した後に、標識を検出する具体的実施形態については、後述する。
標識を検出する方法としては、例えば、光学的ラベルを光学的に検出する、電気的又は磁気的ラベルを検出する、あるいは放射線ラベルの放射線量を検出等が挙げられる。
中でも、蛍光ラベルを光学的に検出することが、好ましい。
【0019】
<塩基配列の数特定工程>
塩基配列の数特定工程とは、標識を検出した結果をもとに、微小区画の1区画内に存在する核酸の目的の塩基配列の数を特定する工程である。
上述したように、目的の塩基配列を1コピー有する核酸に対し、その核酸に付く標識(具体的には、標識物質、例えば、蛍光物質)の数(量)は対応付けられている。目的の塩基配列を1コピー有する核酸とその核酸に付いている標識物質とが対になり1単位を形成し、その1単位を基準に1区画内に含まれている。したがって、その標識を検出し、その結果(検出量)をもとにすれば、目的の塩基配列のコピー数を正確に特定することができる。例えば、蛍光強度を測定することにより、その蛍光強度の結果をもとに、どのくらいの標識物質が付与されているかが特定でき、さらにはその標識物質が付いている目的の塩基配列のコピー数を特定することができる。
【0020】
<核酸配置工程>
核酸配置工程とは、目的の塩基配列の数が特定された核酸を含む微小区画をプレートのウェルに配する工程である。
上述したように、<塩基配列の数特定工程>において、1液滴中に存在する目的の塩基配列のコピー数が特定できる。したがって、プレート上の所望の位置のウェルに、目的の塩基配列の数が所望の数となるよう、液滴を所定の数分注することができる。
ウェルに配される核酸における目的の塩基配列のコピー数としては、一般的に感染症の検量線用途、例えばノロウイルスの通知法では10から10までの領域で検量線が作製されることから、10コピー以上10コピー以下が好ましい。
【0021】
<プレートの製造方法、製造方法の具体的な実施形態>
以下、本発明のプレートの製造方法、製造装置の具体的な実施形態について、説明する。
【0022】
<<(1)液滴吐出後に標識を検出する実施形態>>
<<<液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)を有する液滴形成装置を用いて液滴を吐出し、液滴吐出後に標識を検出する方法>>>
液滴吐出後に標識を検出する方法の一例として、液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)を有する液滴形成装置を用いて液滴を吐出し、その後、標識を検出する方法が挙げられる。
これは、液滴を吐出後、プレート上のウェル内に液滴が着弾する前に、標識を検出する方法である。
-液滴形成方法-
標識が付与された目的の塩基配列を有する核酸の溶液(以下、特定の核酸溶液ともいう)を、液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)を用いて、液滴として吐出する。
吐出とは、標識が付与された目的の塩基配列を有する核酸の溶液を液滴として飛翔させることをいう。
【0023】
液滴を吐出する方式としては、例えば、オンデマンド方式、コンティニュアス方式などが挙げられる。
オンデマンド方式としては、例えば、液体に圧力を加えることによって液体を吐出する圧力印加方式、加熱による膜沸騰によって液体を吐出するサーマル方式、静電引力によって液滴を引っ張ることによって液滴を形成する静電方式等の既知の複数の方式などが挙げられる。
【0024】
圧力印加方式としては、ピエゾ素子を用いて液体に圧力を加える方式、電磁バルブ等のバルブによって圧力を加える方式などが挙げられる。
液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)の構成例を図1A図1Cに示す。
図1Aは、電磁バルブ方式の液滴吐出ヘッドの一例を示す模式図である。電磁バルブ方式の液滴吐出ヘッドは、電動機13a、電磁弁12、液室10、特定の核酸溶液14、及びノズル11を有する。
電磁バルブ方式の液滴吐出ヘッドとしては、例えば、TechElan社のディスペンサなどを好適に用いることができる。
また、図1Bは、ピエゾ方式の液滴吐出ヘッドの一例を示す模式図である。ピエゾ方式の液滴吐出ヘッドは、圧電素子13b、液室10、特定の核酸溶液14、及びノズル11を有する。
ピエゾ方式の液滴吐出ヘッドとしては、Cytena社のシングルセルプリンターなどを好適に用いることができる。
また、より好ましい構成として図1Cに示した構成なども挙げられる。図1Cは、図1Bにおける圧電素子を用いたピエゾ方式の液滴吐出ヘッドの変形例の模式図である。図1Cの液滴吐出ヘッドは、圧電素子13c、液室10、特定の核酸溶液14、及びノズル11を有する。
図1Cの液滴吐出ヘッドでは、図示していない制御装置からの圧電素子13cに対して電圧印加することにより、紙面横方向に圧縮応力が加わりメンブレンを紙面上下方向に変形させることができる。
【0025】
本発明において使用することができる液滴吐出ヘッドの液滴形成動作に関して、以下に説明する。
液滴吐出ヘッドは、圧電素子に形成された上下電極に、パルス状の電圧を印加することにより液滴を吐出することができる。図2A図2Cは、それぞれのタイミングにおける液滴の状態を示す模式図である。図2Aは、まず、圧電素子13cに電圧を印加することにより、メンブレン15が急激に変形することによって、液室10内に保持された特定の核酸溶液とメンブレン15との間に高い圧力が発生し、この圧力によってノズル部から液滴が外に押し出される。次に、図2Bに示すように、圧力が上方に緩和するまでの時間、ノズル部からの液押し出しが続き液滴が成長する。最後に、図2Cに示すように、メンブレン15が元の状態に戻る際に特定の核酸溶液とメンブレン15との界面近傍の液圧力が低下し、液滴16が形成される。
【0026】
本発明のプレートの製造方法では、凹部が形成されたプレートを移動可能なステージ上に固定し、ステージの駆動と液滴吐出ヘッドとからの液滴形成を組み合わせることにより、凹部に順次液滴を着弾させる。ここで、ステージの移動としてプレートを移動させる方法を示したが、当然のことながら液滴吐出ヘッドを移動させてもよい。
【0027】
図3は、プレートのウェル内に順次液滴を着弾させるプレートの製造装置の一例を示す概略図である。
図3に示すように、液滴を着弾させるプレートの製造装置2は、液滴形成装置1と、プレート23と、ステージ24と、制御装置25とを有している。
【0028】
プレートの製造装置2において、プレート23は、移動可能に構成されたステージ24上に配置されている。プレート23には液滴形成装置1の液滴吐出ヘッドから吐出された液滴22が着滴する複数のウェル20(凹部)が形成されている。制御装置25は、ステージ23を移動させ、液滴形成装置1の液滴吐出ヘッドとそれぞれのウェル20との相対的な位置関係を制御する。これにより、液滴形成装置1の液滴吐出ヘッドからそれぞれのウェル20中に順次、蛍光標識された目的の塩基配列を有する核酸(以下、特定の核酸ともいう)21を含む液滴22を吐出することができる。
【0029】
制御装置25は、例えば、CPU、ROM、RAM、メインメモリ等を含む構成とすることができる。この場合、制御装置25の各種機能は、ROM等に記録されたプログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現できる。ただし、制御装置25の一部又は全部は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。又、制御装置25は、物理的に複数の装置等により構成されてもよい。
【0030】
-液滴の吐出後に標識を検出する検出方法:光学的な検出方法-
図4Aを用いて、液滴の吐出後に標識を検出する方法であって、光学的に標識を検出する方法について、以下説明する。
図4Aは、液滴形成装置の一例を示す模式図である。図4Bは、液滴形成装置の他の一例を示す模式図である。図4Aに示すように、液滴形成装置1は、液滴形成手段である液滴吐出ヘッド30と、駆動手段34と、標識物質の検出手段である光照射手段(光源)35及び受光手段(受光素子)36と、制御手段37とを有する。
駆動手段34によって液滴吐出ヘッド30から液滴が吐出され、駆動手段34からの駆動信号と同期して発光する光Lによって飛翔液滴中の蛍光標識が蛍光を発する。その蛍光を受光素子36が受光し、受光素子36からの標的物質の検出結果の情報をもとに、飛翔液滴中の目的の塩基配列のコピー数がカウントされる。
図4A及び図4Bを用いて、さらに詳しく説明する。
【0031】
図4Aでは、目的の塩基配列を有する核酸を蛍光ラベルによって付加した後に所定の溶液に分散した液(特定の核酸溶液)を用いている。液体吐出ヘッドから形成した液滴に光源から発せられる特定の波長を有する光を照射し標識物質から発せられる蛍光を受光素子によって検出することによって計数を行う。
【0032】
液体吐出ヘッド30は、液室10と、メンブレン31と、駆動素子13bとを有しており、特定の核酸溶液32を液滴として吐出することができる。
【0033】
駆動素子13bに駆動手段34から駆動信号を供給することにより、メンブレン31を振動させることができる。メンブレン31の振動により、特定の核酸溶液32の液滴22を、ノズル33から吐出させることができる。
【0034】
光源35は、飛翔中の液滴22に光Lを照射する。
【0035】
受光素子36は、飛翔中の液滴22に蛍光ラベルが付与された目的の塩基配列を有する核酸(特定の核酸)21が含有されていた場合に、蛍光ラベルが光Lを励起光として吸収して発する蛍光Lfを受光する。
【0036】
制御手段37は、駆動手段34及び光源35を制御する機能を有している。
【0037】
図4Bは、図4Aの液滴形成装置の他の変形例を示す模式図である。図4Bに示すように、液滴形成装置1は、特定の核酸21から発せられる蛍光Lfを受光する受光素子36-1に加え、特定の核酸21から発せられる蛍光Lfを受光する受光素子36-2を設けた点が、図4Aの液滴形成装置1と相違する。
【0038】
ここで、蛍光Lf及びLfは、特定の核酸21から四方八方に発せられる蛍光の一部を示している。受光素子36-1及び36-2は、特定の核酸21から異なる方向に発せられる蛍光を受光できる任意の位置に配置することができる。
【0039】
制御手段37のコピー数を計数する手段は、受光素子36からの情報に基づいて、液滴22に含有された特定の核酸21における目的の塩基配列のコピー数(ゼロである場合も含む)を計数する。ここで、受光素子36からの情報とは、蛍光標識された目的の塩基配列を有する核酸21に付与されている蛍光物質にもとづく輝度値(光量)である。
コピー数を計数する手段は、例えば、受光素子36が受光した光量と予め設定された閾値とを比較して、蛍光標識された目的の塩基配列を有する核酸21のコピー数を特定(計数)することができる。
【0040】
<<<液滴を吐出する方式の別態様>>>
上述した、オンデマンド方式以外の方式で液滴を吐出する方法として、例えば、連続的に液滴を吐出させるコンティニュアス方式による液滴形成方法が挙げられる。
コンティニュアス方式では、液滴を加圧してノズルから押し出す際に圧電素子やヒーターによって定期的なゆらぎを与え、それによって微小な液滴を連続的に作り出すことができる。さらに、飛翔中の液滴の吐出方向を電圧を印加することによって制御することにより、ウェルに着弾させるか、回収部に回収するかを選ぶことも可能である。
このような方式は、セルソーター、又はフローサイトメーターで用いられており、例えば、ソニー株式会社製の装置名:セルソーターSH800を用いることができる。
尚、セルソーター、又はフローサイトメーターは、液滴吐出前に標識を検出する態様で使用することもできる。よって、その場合の態様については、下記<<(2)液滴吐出前に標識を検出する実施形態>>の欄で詳しく説明する。
【0041】
<<<電気的又は磁気的な検出による態様>>>
上述した光学的な検出を、電気的又は磁気的な検出に変えることもできる。電気的又は磁気的に検出する方法としては、図5に示すように、液室10から特定の核酸溶液を液滴22としてプレート39に吐出する液滴吐出ヘッドの直下に、コピー数計数のためのコイル38がセンサとして設置されている。核酸には特定の磁気ビーズが付加されており、磁気ビーズが付着した核酸がコイル中を通過する際に発生する誘導電流によって、飛翔液滴中の目的の塩基配列の有無を検出することができる。
【0042】
<<(2)液滴吐出前に標識を検出する実施形態>>
<<<フローサイトメーター/セルソーターを用いて、液滴吐出前に標識を検出する方法>>>
液滴を吐出する前に標識を検出する方法としては、図6に示すマイクロ流路41中を通過してきた特定の核酸21をカウントする方法が挙げられる。図6はセルソーター装置において用いられている方法であり、例えば、ソニー株式会社製のセルソーターSH800を用いることができる。図6では、マイクロ流路41中に光源44からレーザー光を照射して散乱光や蛍光を、集光レンズ43を用いて検出器42により検出することによって目的の塩基配列を有する核酸の有無を識別しながら液滴を形成することが可能である。本方法を用いることによって、マイクロ流路41中に通過した目的の塩基配列のコピー数を特定することができる。特定の核酸21が存在する領域、存在しない領域のそれぞれに対応した液滴が吐出されるため、特定の核酸21が液滴内に配置されている液滴を選択することができ、特定の核酸21が液滴内に配置されている液滴のみをウェル中に着弾させることができる。これにより、所定のコピー数の目的の塩基配列を有する核酸を、ウェル中に着弾させることができる。
【0043】
-フローサイトメーター/セルソーターの形態-
フローサイトメーター/セルソーターの形態としては、図7Aに示すキャピラリー方式のフローセル、図7Bに示すシース液方式のフローセル、いずれも用いることができる。
図7A、及び図7Bにおいて、符号41はマイクロ流路を、符号21は目的の塩基配列を有する核酸(特定の核酸)を、符号45は光源を、符号46は分光器・検出器を、符号47は荷電手段を、符号48はシース液導入を示す。
荷電手段47は、水流が液滴に分かれる直前に+又は-の荷電を加える手段である。これにより、特定の核酸が含まれている液滴を+又は-に帯電させることができる。例えば、液滴が偏光板の間を落下するとき、帯電されている液滴は+に荷電した液滴は-極板側に、-に荷電した液滴は+極板側に、引き寄せられる。これにより、特定の核酸が含まれる液滴をプレートのウェル上に着弾させることができる。一方、帯電されなかった液滴はそのまま落下するため、回収して廃棄することができる。
【0044】
<<<ドロップレットジェネレータを用いて、液滴吐出前に標識を検出する方法>>>
ドロップレットジェネレータを用いて、液滴吐出前に標識を検出することもできる。ドロップレットジェネレータでは、例えば、図8で示すように、液滴吐出前にマイクロ流路内で標識が付与された目的の塩基配列を有する核酸(特定の核酸)21を含む液滴51が形成されている。マイクロ流路内で液滴状態を形成する方法としては、特許第3746766号の方法等を用いることができる。
図8において、符号21は特定の核酸を、符号51は液滴を、符号52は光源を、符号53は分光器・検出器を、符号54は負電極を、符号55は正電極を、符号56はオイル導入を示す。
ドロップレットジェネレータでは、特定の核酸が含まれる液滴を含まれていない液滴と区別した後、該液滴を吐出することにより、特定の核酸が含まれる液滴をプレートのウェル上に着弾させることができる。
【0045】
<プレートの製造プログラム>
プレートの製造プログラムは、ハードウェア資源としてのコンピュータ等を用いることにより、本発明のプレートの製造装置において、プレートの製造方法を実行させるものである。
プレートの製造プログラムによる処理は、プレートの製造装置を構成する制御部を有するコンピュータを用いて実行することができる。
プレートの製造装置は、例えば、図3で示すように、液滴形成装置1と、プレート23と、ステージ24と、制御装置25とを有する。液滴形成装置1は、図4Aで示すように、液滴吐出ヘッド30と、駆動手段34と、光源35と、受光素子36と、制御手段37とを有する。ここで、プレートの製造装置における制御装置25は、液滴形成装置1の制御手段37を兼ねることもできる。
そして、このプレートの製造装置における制御装置25において、プレートの製造プログラムを実行することができる。
【0046】
本発明のプレートの製造プログラムの処理手順の一例を示す。図9は、本発明のプレートの製造装置を用いて、液滴吐出ヘッドから吐出された液滴に含まれる特定の核酸のコピー数を特定し、液滴をプレートのウェルに着弾させるまでの、プレートの製造プログラムの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0047】
(製造されたプレート)
上記本発明のプレートの製造方法により、以下のプレートが製造される。
本発明のプレートは、少なくとも1つのウェルを有する。
プレートにおけるウェルには、目的の塩基配列の数が特定された核酸が含まれており、細胞を構成する成分、例えば、細胞膜、細胞質、その他細胞から分解されたものなどの細胞由来のものは入っていない。
プレートは、プレートを認識するための認識手段と、ウェルに含まれている核酸に関する情報を保持する情報保持手段とを有する。
【0048】
<ウェル>
ウェルは、その形状、数、容積、材質、色などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ウェルの形状としては、核酸などを配することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平底、丸底、U底、V底等の凹部、プレート上の区画などが挙げられる。
ウェルの数は、少なくとも1つであり、2以上の複数であることが好ましい。
ウェルの容積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一般的な核酸検査装置に用いられる試料量を考慮すると、10μL以上1,000μL以下が好ましい。
ウェルの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ふっ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0049】
<プレート>
プレートの材質、形状、大きさ、構造などについて特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
プレートの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、半導体、セラミックス、金属、ガラス、石英ガラス、プラスチックスなどが挙げられる。これらの中でも、プラスチックスが好ましい。
【0050】
<認識手段>
認識手段は、プレートに設けられ、プレートを認識するための手段である。
認識手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メモリ、ICチップ、バーコード、QRコード(登録商標)、Radio Frequency Identifier(以下、「RFID」とも称することがある)、色分け、印刷などが挙げられる。
認識手段を設ける位置及び認識手段の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0051】
<情報保持手段>
情報保持手段は、プレートの測定領域以外の部位に、複数のウェルに収容されている核酸に関する情報を記憶する手段である。なお、プレートの測定領域とは、測定対象物を保持可能なウェル部をいう。
情報保持手段としては、例えば、メモリ、ICチップなどが挙げられる。
プレートの測定領域以外の部位としては、測定する領域以外の部位であれば、プレートの内部であってもプレートの外部であってもよい。
情報保持手段は、プレートから着脱可能に設けられていることが好ましい。情報保持手段の着脱方法としては、プレートと情報保持手段の境界部にミシン目を設けておくことにより、必要に応じてミシン目に沿って情報保持手段を切り離すことができる。これにより、プレートを分析装置に挿入する際には、情報保持手段をプレートから切り離して、切り離した情報保持手段を読み取り装置に入れて、両者を対応付けすることができる。
情報保持手段は、結合部材によりプレートに取り付けられていることが好ましい。これにより、情報保持手段の紛失を防止することができる。結合部材としては、例えば、紐、磁石などが挙げられる。
認識手段に記憶させる情報としては、ウェルに含まれている核酸に関する情報であり、各ウェルにおける、目的の塩基配列のコピー数の情報や、その他、例えば、分析結果(発光強度等)、核酸の種類、測定日時、測定者の氏名などの情報が挙げられる。
【0052】
認識手段の読み取りは、目視、プレートを分析装置に装着した際に、装置に内蔵している読み取り機構により行うことができる。また、分析装置の外部にある読み取り装置を用いることもできる。
情報保持手段に記憶されている情報の読み取りは、外部の情報読み取り装置を用いて行うことができ、プレートを分析装置に装着した際に、装置に内蔵している読み取り機構により行うことができる。
【0053】
認識手段と情報保持手段との対応付け方法は、情報保持手段にも認識手段と同じ認識表示を記憶させたり、認識手段が有する認識情報を情報保持手段が記憶することで行われる。
【0054】
上述したように、本発明のプレートの製造方法においては、標識する物質は、核酸に直接付与しており、細胞を用いて標識を行なっていない。したがって、液滴を分注した各ウェルの中には、細胞を構成する成分、例えば、細胞膜、細胞質、その他細胞から分解されたものなどの細胞由来のものは入っていない。これにより、製造されたプレートを使ってそれ以降の反応を行う際、細胞由来の夾雑物が含有されていないため、反応効率の低下等の問題を有効に防止することができる。
【0055】
本発明のプレートの製造方法により得られたプレートは、バイオ関連産業、ライフサイエンス産業、及び医療産業等において幅広く使用され、例えば、装置構成や感染症の検量線作成などの標準プレート等に好適に用いることができる。
【実施例
【0056】
<標識が付与された目的の塩基配列を有する核酸の作製>
目的の塩基配列を有する核酸(Template)としてCRM 6204-b(産業技術総合研究所:配列番号1)に、2μMのReverse Primer、PCR Fluorescein Labeling Mix、HOを、下記表1で示す処方で加えた。そして、65℃、5分間処理し、Solution1を得た。
ここで、Reverse Primerは、Thermofisher:サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製(配列番号3)を用いた。PCR Fluorescein Labeling Mixは、Roche:ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製を用いた。
【0057】
【表1】
【0058】
次いで、Solution1に、SuperScriptIV、SuperScriptIV Buffer、100mM DTT、RnaseOUT RNase Inhibitorを、下記表2で示す処方で加えた。そして、55℃、30分間処理後、80℃、10分間処理し、Solution2を得た。
ここで、SuperScriptIVは、Thermofisher:サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製を用いた。
【0059】
【表2】
【0060】
Solution2に、Taq DNA Polymerase、PCR Buffer with MgCl、2μMのForward Primer、2μMのReverse Primer、PCR Fluorescein Labeling Mixを、下記表3で示す処方で分注し、混合した。
ここで、Taq DNA Polymeraseは、Roche:ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製を用いた。PCR Buffer with MgClは、Roche:ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製を用いた。Forward Primerは、Thermofisher:サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製(配列番号2)を用いた。Reverse Primerは、Thermofisher:サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製(配列番号3)を用いた。PCR Fluorescein Labeling Mixは、Roche:ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製を用いた。
【0061】
【表3】
【0062】
次いで、サーマルサイクラー(Bio rad製 T100)を用いて、下記表4で示す条件で蛍光標識核酸を合成した。
【0063】
【表4】
【0064】
次いで得られた蛍光標識核酸を含む溶液の液滴を、セルソーター(Sony製SH800)を用いて形成した。液滴吐出前に、蛍光標識を検出することにより、蛍光標識核酸に含まれる目的の塩基配列のコピー数を特定した。目的の塩基配列の数が既知の核酸が含まれている液滴をプレート上のウェル内に着弾させた。プレートは、MicroAmp Optical 96-Well Reaction Plate(Thermofisher:サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用いた。
液滴内における目的の塩基配列の数がわかっているので、プレートの全てのウェルに対し、目的の塩基配列が10コピーになるよう、液滴を分注した。
これにより、目的の塩基配列の数が既知である核酸をウェルに配したプレートを作製できた。
【0065】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 目的の塩基配列を有する核酸に標識を付与する標識付与工程と、
前記標識が付与された核酸を含有する核酸含有溶液を微小区画に区分する微小区画化工程と、
前記微小区画に区分する前、又は前記微小区画に区分した後に、前記標識を検出する標識検出工程と、
前記標識を検出した結果をもとに、前記微小区画の1区画内に存在する核酸の前記目的の塩基配列の数を特定する塩基配列の数特定工程と、
前記目的の塩基配列の数が特定された核酸を含む前記微小区画をプレートのウェルに配する核酸配置工程と、
を含むことを特徴とするプレートの製造方法である。
<2> 前記標識付与工程は、標識が付されたヌクレオシドを、増幅反応、転写反応、及びTdT反応のうちいずれかの反応を用いて、前記核酸に付加することにより行う、前記<1>に記載のプレートの製造方法である。
<3> 前記ヌクレオシドが、ウリジンである、前記<2>に記載のプレートの製造方法である。
<4> 目的の塩基配列を有するDNAに対し、前記標識が付されたヌクレオシドと、RNA Polymeraseとを反応させることにより、RNAを合成し、標識が付与されたRNAを合成する工程をさらに含む、前記<2>から<3>のいずれかに記載のプレートの製造方法である。
<5> 前記微小区画化工程が、液滴を形成することにより行われる、前記<1>から<4>のいずれかに記載のプレートの製造方法である。
<6> 前記標識の検出が、光学的ラベルの検出、電気的又は磁気的ラベルの検出、及び放射線ラベルの検出のいずれかである、前記<1>から<5>のいずれかに記載のプレートの製造方法である。
<7> 標識が付与された目的の塩基配列を有する核酸を含有する核酸含有溶液を微小区画に区分する微小区画化手段と、
前記微小区画に区分する前、又は前記微小区画に区分した後に、前記標識を検出する標識検出手段と、
前記標識を検出した結果をもとに、前記微小区画の1区画内に存在する核酸の前記目的の塩基配列の数を特定する塩基配列の数特定手段と、
前記目的の塩基配列の数が特定された核酸を含む前記微小区画をプレートのウェルに配する核酸配置手段と、
を有することを特徴とするプレートの製造装置である。
<8> 核酸を含む微小区画をプレートのウェルに配するプレートの製造方法に用いるプレートの製造プログラムであって、
標識が付与された目的の塩基配列を有する核酸を含有する核酸含有溶液を微小区画に区分し、
前記微小区画に区分する前、又は前記微小区画に区分した後に、前記標識を検出し、
前記標識を検出した結果をもとに、前記微小区画の1区画内に存在する核酸の前記目的の塩基配列の数を特定し、
前記目的の塩基配列の数が特定された核酸を含む前記微小区画をプレートのウェルに配する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプレートの製造プログラムである。
<9> 少なくとも1つのウェルを有するプレートであって、
前記ウェルが、目的の塩基配列の数が特定された核酸を含み、
前記ウェルには、細胞を構成する成分は含まれておらず、
前記プレートは、前記プレートを認識するための認識手段と、前記ウェルに含まれている前記核酸に関する情報を保持する情報保持手段とを有することを特徴とするプレートである。
【0066】
前記<1>から<6>のいずれかに記載のプレートの製造方法、前記<7>に記載のプレートの製造装置、前記<8>に記載のプレートの製造プログラム、及び前記<9>に記載のプレートによると、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 液滴形成装置
2 プレートの製造装置
23 プレート
24 ステージ
25 制御装置
30 液滴吐出ヘッド
34 駆動手段
35 光源
36 受光素子
37 制御手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【文献】特開2014-33658号公報
【文献】特開2015-195735号公報
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
【配列表】
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