(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/05 20060101AFI20220524BHJP
G05B 7/02 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
G05B19/05 D
G05B7/02 B
(21)【出願番号】P 2018054802
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】菅野 誠
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-267297(JP,A)
【文献】特開2012-014584(JP,A)
【文献】特開2004-094473(JP,A)
【文献】特開2004-227380(JP,A)
【文献】特開2008-020956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/04-19/05
G05B 23/00-23/02
G05B 7/00- 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象装置から受け取る入力信号に応じて前記制御対象装置の動作制御に必要となる出力信号を生成して出力する第一制御コントローラ部と、
前記入力信号に応じて前記出力信号を生成して出力することで前記第一制御コントローラ部の機能を代替するように構成された第二制御コントローラ部と、
前記第一制御コントローラ部が出力する前記出力信号または前記第二制御コントローラ部が出力する前記出力信号のいずれかを前記制御対象装置に与える切換スイッチ部と、
前記制御対象装置からの前記入力信号、前記第一制御コントローラ部が出力する前記出力信号および前記第二制御コントローラ部が出力する前記出力信号が入力され、これらに基づき前記第一制御コントローラ部と前記第二制御コントローラ部とを並行処理させたときに同一の前記入力信号に応じてそれぞれから出力される前記出力信号の整合性を検証し、その検証結果を前記切換スイッチ部の切換判断情報として出力する検証シミュレータ部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記第一制御コントローラ部と前記第二制御コントローラ部とは、それぞれがプログラマブルロジックコントローラによって構成されている
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記検証シミュレータ部は、時系列信号である前記出力信号の整合性を所定単位時間毎に検証するように構成されている
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記検証シミュレータ部が出力する前記切換判断情報には、互いに対応する前記出力信号同士を並べて表示する信号対比表示情報が含まれる
請求項1から3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記信号対比表示情報には、前記出力信号の信号パターンを定量的に表す補足情報が含まれる
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記検証シミュレータ部が出力する前記切換判断情報には、整合性が担保されていない旨のアラーム情報が含まれる
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記第二制御コントローラ部は、前記検証シミュレータ部が出力する前記切換判断情報の内容に基づいて、前記出力信号を生成するプログラムの修正を行えるように構成されている
請求項1から6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
制御対象装置から受け取る入力信号に応じて前記制御対象装置の動作制御に必要となる出力信号を生成して出力する第一制御コントローラ部と、前記入力信号に応じて前記出力信号を生成して出力することで前記第一制御コントローラ部の機能を代替するように構成された第二制御コントローラ部と、を用意する工程と、
前記第一制御コントローラ部と前記第二制御コントローラ部とを並行処理させるとともに、切換スイッチ部を通じて前記第一制御コントローラ部が出力する前記出力信号を前記制御対象装置に与える工程と、
前記制御対象装置からの前記入力信号、前記第一制御コントローラ部が出力する前記出力信号および前記第二制御コントローラ部が出力する前記出力信号に基づき、前記第一制御コントローラ部と前記第二制御コントローラ部とを並行処理させたときに同一の前記入力信号に応じてそれぞれから出力される前記出力信号の整合性を
前記入力信号との関係性も考慮しつつ検証する工程と、
前記第一制御コントローラ部が出力する前記出力信号と前記第二制御コントローラ部が出力する前記出力信号との整合性が担保されている場合に、前記第二制御コントローラ部が出力する前記出力信号を前記制御対象装置に与えるように、前記切換スイッチ部を切り換える工程と、
を備える制御方法。
【請求項9】
制御対象装置から受け取る入力信号に応じて前記制御対象装置の動作制御に必要となる出力信号を生成して出力する第一制御コントローラ部と、前記入力信号に応じて前記出力信号を生成して出力することで前記第一制御コントローラ部の機能を代替するように構成された第二制御コントローラ部と、のそれぞれに接続するコンピュータを、
前記制御対象装置からの前記入力信号、前記第一制御コントローラ部が出力する前記出力信号および前記第二制御コントローラ部が出力する前記出力信号に基づき、前記第一制御コントローラ部と前記第二制御コントローラ部とを並行処理させたときに同一の前記入力信号に応じてそれぞれから出力される前記出力信号の整合性を
前記入力信号との関係性も考慮しつつ検証する整合性検証部、および、
前記整合性検証部による検証結果を、前記第一制御コントローラ部が出力する前記出力信号または前記第二制御コントローラ部が出力する前記出力信号のいずれかを前記制御対象装置に与える切換スイッチ部の切換判断情報として出力する情報出力部
として機能させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場や研究施設等で用いられるプラント設備や自動化機器等の各種装置は、その動作が制御装置によって制御される。制御装置としては、例えば、制御対象となる装置(以下、「制御対象装置」という。)から受け取る入力信号に応じて、制御対象装置の動作制御に必要となる出力信号を生成し、生成した出力信号を制御対象装置に与えることで、制御対象装置における動作をコントロールするものがある。
【0003】
ところで、制御対象装置の動作を制御する制御装置については、既存のものを新規なものに更新する必要が生じる場合があるが、その場合に更新前後の制御動作が同一であるかを検証することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
制御装置を更新する場合には、制御対象装置の稼働停止の期間を極力抑制しつつ、更新後における制御対象装置の動作に支障を来さないようにすることが求められる。しかしながら、特許文献1に開示された技術では、必ずしも十分とはいえない。つまり、制御装置の更新に必ずしも好適に対応し得るとは限らない。
【0006】
例えば、入力信号に応じて出力信号を生成するように構成された制御装置については、更新前後で同一の入力信号に応じて同一パターンの出力信号が同一タイミングで出力されていなければ、更新前後の制御動作が同一であるとはいえない。また、制御対象装置の稼働停止期間を極力抑制するためには、制御対象装置に与える出力信号を更新前後で即時に切り換え得るようにする必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、制御装置を更新する場合であっても、その更新に好適に対応することができる制御装置、制御方法および制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、
制御対象装置から受け取る入力信号に応じて前記制御対象装置の動作制御に必要となる出力信号を生成して出力する第一制御コントローラ部と、
前記入力信号に応じて前記出力信号を生成して出力することで前記第一制御コントローラ部の機能を代替するように構成された第二制御コントローラ部と、
前記第一制御コントローラ部が出力する前記出力信号または前記第二制御コントローラ部が出力する前記出力信号のいずれかを前記制御対象装置に与える切換スイッチ部と、
前記第一制御コントローラ部と前記第二制御コントローラ部とを並行処理させたときに同一の前記入力信号に応じてそれぞれから出力される前記出力信号の整合性を検証し、その検証結果を前記切換スイッチ部の切換判断情報として出力する検証シミュレータ部と、
を備える制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御装置を更新する場合であっても、その更新に好適に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る制御システムの構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る制御システムにおける出力信号の整合性の検証結果の一具体例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態に係る制御装置、制御方法および制御プログラムについて、図面を参照しながら説明する。
【0012】
(1)制御システムの構成
先ず、本発明の一実施形態に係る制御システムの構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る制御システムの構成例を模式的に示すブロック図である。
【0013】
(全体構成)
本実施形態に係る制御システムは、制御対象装置20と、その制御対象装置20の動作を制御する制御装置10と、を備えて構成されている。
【0014】
(制御対象装置)
制御対象装置20は、制御装置10による動作制御の対象となる装置であり、具体的にはガンマ線照射装置がその一例として挙げられる。ただし、これに限定されることはなく、工場や研究施設等で用いられるプラント設備や自動化機器等といった他種の装置であってもよい。いずれの種類であっても、制御対象装置20は、センサやスイッチ等が発する信号を入力信号として制御装置10に与えるとともに、制御装置10からの出力信号に従ってアクチュエータやモータ等の駆動源を動作させるように構成されているものとする。
【0015】
(制御装置)
制御装置10は、制御対象装置20から受け取る入力信号に応じて、制御対象装置20の動作制御に必要となる出力信号を生成し、生成した出力信号を制御対象装置20に与えることで、制御対象装置20における動作をコントロールするように構成されたものである。ただし、制御装置10は、既存の制御機能から新規な制御機能への更新に対応し得るようになっている。
【0016】
そのために、制御装置10は、第一制御コントローラ部11と、第二制御コントローラ部12と、切換スイッチ部13と、検証シミュレータ部14と、を備えている。そして、制御対象装置20からの入力信号が第一制御コントローラ部11、第二制御コントローラ部12および検証シミュレータ部14のそれぞれに入力されるように構成されている。
【0017】
第一制御コントローラ部11は、例えばプログラマブルロジックコントローラ(以下「PLC」という。)によって構成されたもので、制御対象装置20から受け取る入力信号に応じて制御対象装置20の動作制御に必要となる出力信号を生成して出力するものである。さらに詳しくは、第一制御コントローラ部11は、複数の入力端子および複数の出力端子を有しており、各入力端子で受け取った入力信号に応じて、各出力端子のそれぞれから時系列信号である出力信号を出力するように構成されている。第一制御コントローラ部11からの出力信号は、切換スイッチ部13および検証シミュレータ部14のそれぞれに入力されるようになっている。なお、第一制御コントローラ部11において、出力信号の生成は、ラダーロジックまたはラダー図により予め設定されたプログラム(以下「ラダープログラム」という。)に従って行われるようになっている。
【0018】
第二制御コントローラ部12は、例えば第一制御コントローラ部11とは別のPLCによって構成されたもので、第一制御コントローラ部11と同様に、予め設定されたラダープログラムに従いつつ、制御対象装置20から受け取る入力信号に応じて制御対象装置20の動作制御に必要となる出力信号を生成して出力するものである。第二制御コントローラ部12からの出力信号は、切換スイッチ部13および検証シミュレータ部14のそれぞれに入力されるようになっている。
【0019】
換言すると、第二制御コントローラ部12は、入力信号に応じて出力信号を生成して出力することで、第一制御コントローラ部11の機能を代替するように構成されている。つまり、第一制御コントローラ部11の機能を既存のもの(すなわち、更新前のもの)とすると、その第一制御コントローラ部11とは別のPLCによって構成された第二制御コントローラ部12における機能は、第一制御コントローラ部11に対して新規なもの(すなわち、更新後のもの)に相当することになる。なお、第一制御コントローラ部11と第二制御コントローラ部12との関係は、機能を代替する関係にあれば、例えば、旧型と新型に相当するものであってもよいし、バーションアップ前とバージョンアップ後に相当するものであってもよいし、あるいは制御機能追加前と制御機能追加後に相当するものであってもよい。
【0020】
また、少なくとも第二制御コントローラ部12は、ラダープログラムの書き込みを行うコンピュータ装置(ただし不図示)を接続し得るように構成されている。これにより、第二制御コントローラ部12は、設定されているラダープログラムの修正を行えるようになっている。
【0021】
切換スイッチ部13は、例えば制御装置10の管理者や保守者等が操作するキースイッチによって構成されたもので、スイッチ切換状態に応じて第一制御コントローラ部11が出力する出力信号または第二制御コントローラ部12が出力する出力信号のいずれかを制御対象装置20に与えるものである。なお、切換スイッチ部13は、いずれかの出力信号を与えるようにスイッチ切換を行うものであれば、手動操作によるものではなく、後述する検証結果に応じて自動的に切り換わるように構成されたものであってもよい。
【0022】
検証シミュレータ部14は、第一制御コントローラ部11からの出力信号と第二制御コントローラ部12からの出力信号との整合性を検証するものである。検証処理の具体的な内容については、詳細を後述する。
また、検証シミュレータ部14は、整合性の検証結果を切換判断情報として出力するものである。切換判断情報の具体的な内容については、詳細を後述する。
つまり、検証シミュレータ部14は、各出力信号の整合性を検証する整合性検証部、および、その検証結果を切換判断情報として出力する情報出力部、として機能するものである。
【0023】
このような検証シミュレータ部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard disk drive)、通信I/F(interface)部等を有する情報処理部、ディスプレイ装置やプリンタ装置等の情報出力部、キーボードやマウス等の情報入力部といったハードウエア資源を組み合わせて構成されたコンピュータを用いて構成することが考えられる。
【0024】
その場合に、検証シミュレータ部14における整合性検証部および情報出力部としての機能は、所定の制御プログラムを情報処理部が実行することによって実現される。換言すると、所定の制御プログラムは、コンピュータとしてのハードウエア資源を備える検証シミュレータ部14を整合性検証部および情報出力部として機能させるものであり、本発明に係る制御プログラムの一実施形態に相当するものである。
なお、制御プログラムは、検証シミュレータ部14の情報処理部にインストールされて用いられる。その場合に、制御プログラムは、検証シミュレータ部14へのインストールに先立ち、検証シミュレータ部14で読み取り可能な記録媒体に格納されて提供されるものであってもよいし、あるいは検証シミュレータ部14と接続する図示せぬ通信回線を通じて当該検証シミュレータ部14へ提供されるものであってもよい。
【0025】
(2)制御方法の手順
次に、本発明の一実施形態に係る制御方法の手順について、上述した構成の制御システムにおいて制御対象装置20に対する制御機能を更新する場合の処理動作を例に挙げて説明する。
【0026】
制御対象装置20に対する制御機能の更新にあたっては、以下に述べる各工程を順に実行する。
【0027】
(第一工程)
具体的には、先ず、第一制御コントローラ部11(すなわち、更新前のもの)とは別に、その第一制御コントローラ部11の機能を代替する第二制御コントローラ部12(すなわち、更新後のもの)を用意する。そして、用意した第一制御コントローラ部11と第二制御コントローラ部12を用いて、上述した構成の制御システムを構築する。
【0028】
(第二工程)
制御システムを構築したら、その制御システムにおける制御対象装置20を動作させるとともに、制御対象装置20の動作を制御装置10によって制御する。すなわち、制御装置10は、制御対象装置20から受け取る入力信号に応じて、制御対象装置20の動作制御に必要となる出力信号を生成し、生成した出力信号を制御対象装置20に与えることで、制御対象装置20における動作をコントロールする。
【0029】
このとき、制御装置10においては、用意した第一制御コントローラ部11と第二制御コントローラ部12を並行処理させる。具体的には、制御対象装置20からの入力信号が第一制御コントローラ部11と第二制御コントローラ部12のそれぞれに入力されるので、入力信号に応じた出力信号の生成と、生成した出力信号の出力とを、第一制御コントローラ部11と第二制御コントローラ部12のそれぞれに並行して行わせる。なお、並行処理によって出力されるそれぞれの出力信号は、いずれも、切換スイッチ部13および検証シミュレータ部14に入力されることになる。
【0030】
出力信号が入力される切換スイッチ部13では、スイッチ切換状態を第一制御コントローラ部11の側にしておく。これにより、切換スイッチ部13は、第一制御コントローラ部11と第二制御コントローラ部12のそれぞれから出力信号が入力される場合であっても、そのうち第一制御コントローラ部11からの出力信号のみを制御対象装置20に与えることになる。
【0031】
つまり、制御対象装置20は、第一制御コントローラ部11における制御機能によって、その動作がコントロールされる。このことは、更新前の制御機能により、制御対象装置20に対する動作制御が行われることを意味する。
【0032】
(第三工程)
並行処理によって出力されるそれぞれの出力信号は、検証シミュレータ部14にも入力される。また、検証シミュレータ部14には、制御対象装置20からの入力信号も入力される。これらに基づき、検証シミュレータ部14は、第一制御コントローラ部11と第二制御コントローラ部12が並行処理を継続している間、各出力信号の整合性の検証を行う。さらに詳しくは、検証シミュレータ部14は、同一の入力信号に応じて第一制御コントローラ部11と第二制御コントローラ部12のそれぞれから出力される各出力信号を対比して、同一パターンの信号が同一タイミングで出力されているか否かを検証する。そして、検証シミュレータ部14は、各出力信号の整合性の検証結果を、切換スイッチ部13の切換判断情報として出力する。
【0033】
具体的には、検証シミュレータ部14は、整合性の検証を以下のように行う。
図2は、本実施形態に係る制御システムにおける出力信号の整合性の検証結果の一具体例を示す説明図である。
【0034】
第一制御コントローラ部11および第二制御コントローラ部12からは、時系列信号である出力信号が出力される。そこで、検証シミュレータ部14は、各出力信号を所定単位時間毎に分割し、その所定単位時間における信号パターンをタイムチャート形式で表すことによって、各出力信号の整合性を検証する。このようにすれば、出力信号が時間経過に伴ってハイ/ローのパターン変化が生じる時系列信号であっても、その整合性を適切に検証し得るようになる。なお、所定単位時間は、予め設定されているものであれば特に限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0035】
また、出力信号は、第一制御コントローラ部11および第二制御コントローラ部12が有する複数の出力端子のそれぞれから個別に出力される。そこで、検証シミュレータ部14は、互いに対応する出力信号同士について、タイムチャート形式で表したそれぞれの信号パターンを並べて対比することで、各出力信号の整合性を検証する。ここで、互いに対応する出力信号同士とは、第一制御コントローラ部11の出力端子から出力される出力信号と、の第二制御コントローラ部12の出力端子から出力される出力信号とで、制御対象装置20における同一構成要素に与えられることになる信号同士のことをいう。このようにすれば、例えば多数の出力端子から個別に出力信号が出力される場合であっても、対応する出力信号同士について、その整合性を容易かつ的確に検証し得るようになる。
【0036】
以上のように、検証シミュレータ部14は、各出力信号の信号パターンをタイムチャート形式で表し、かつ、互いに対応する出力信号同士を上下に並べて表示したもの(以下「信号対比表示情報」という。)を、各出力信号の整合性の検証結果として、検証シミュレータ部14における情報出力部で出力する。つまり、検証シミュレータ部14が整合性の検証結果として出力する切換判断情報には、信号対比表示情報が含まれていることになる。
【0037】
検証シミュレータ部14が表示出力する信号対比表示情報には、出力信号の信号パターンを定量的に表す補足情報が含まれていてもよい。具体的には、例えば、所定単位時間の開始から信号パターンの立ち上がりまたは立ち下がりまでの経過時間(経過秒数等)を数値で表したものを、補足情報として、タイムチャート形式の信号パターンと合わせて、検証シミュレータ部14における情報出力部で出力する。このようにすれば、対比する各出力信号の間の微妙な相違(タイミングのずれ等)についても容易に把握し得るようになる。
【0038】
各出力信号の整合性の検証の結果、第一制御コントローラ部11と第二制御コントローラ部12とから出力される各出力信号のパターンおよびタイミングが完全に一致していれば、各出力信号の整合性が担保されていると判断することができる。また、各出力信号が完全に一致していなくても、それぞれの間の相違量が予め設定された許容量の範囲内であれば、各出力信号の整合性が担保されていると判断するようにしても構わない。
【0039】
一方、各出力信号の整合性が担保されていると判断できない場合に、検証シミュレータ部14は、各出力信号の整合性が担保されていない旨のアラーム情報を、検証シミュレータ部14における情報出力部で出力するようにしても構わない。つまり、検証シミュレータ部14が整合性の検証結果として出力する切換判断情報には、アラーム情報が含まれていても構わない。アラーム情報としては、例えば、各出力信号のパターンまたはタイミングが一致しない箇所の表示色を他の箇所とは相違させる、といったものが考えられる。ただし、アラーム情報は、情報内容や出力形式等が特に限定されるものではなく、制御装置10の管理者や保守者等に注意を喚起し得るものであればよい。
【0040】
(第四工程)
第一制御コントローラ部11が出力する出力信号と第二制御コントローラ部12が出力する出力信号との整合性が担保されている場合には、制御装置10の管理者や保守者等が切換スイッチ部13を操作して、スイッチ切換状態を第二制御コントローラ部12の側に切り換える。これにより、切換スイッチ部13は、第一制御コントローラ部11と第二制御コントローラ部12のそれぞれから出力信号が入力される場合であっても、そのうち第二制御コントローラ部12からの出力信号のみを制御対象装置20に与えることになる。
【0041】
つまり、切換スイッチ部13の切り換え後、制御対象装置20は、第二制御コントローラ部12における制御機能によって、その動作がコントロールされる。このことは、更新後の制御機能により、制御対象装置20に対する動作制御が行われることを意味する。その場合であっても、第一制御コントローラ部11からの出力信号と第二制御コントローラ部12からの出力信号との整合性が担保されており、更新前後で同一の入力信号に応じて同一パターンの出力信号が同一タイミングで出力されることになるので、制御対象装置20における動作に支障を来してしまうことはない。しかも、切換スイッチ部13の切り換えるだけなので、その切り換えを即時に行うことができ、制御対象装置20の稼働停止期間を極力抑制し得るようになる。
【0042】
一方、各出力信号の整合性が担保されていない場合には、切換スイッチ部13の切り換えを行うことなく、第一制御コントローラ部11における制御機能によって、制御対象装置20の動作がコントロールされる。つまり、引き続き、更新前の制御機能により、制御対象装置20に対する動作制御が行われる。なお、このとき、第二制御コントローラ部12については、設定されているラダープログラムの修正を行う。修正は、検証シミュレータ部14が出力する切換判断情報の内容に基づいて行えばよい。具体的には、例えば切換判断情報にアラーム情報が含まれて出力されている場合であれば、そのアラーム情報に基づいて要修正箇所を特定した上で、出力信号を生成するラダープログラムの修正を行うことが考えられる。
【0043】
そして、ラダープログラムの修正が完了したら、再び、上述した第二工程からの一連の処理を実行する。つまり、各出力信号の整合性が担保されるまで、上述した一連の処理を繰り返す。
【0044】
以上のような手順を経ることで、制御対象装置20に対する制御機能の更新が完了する。更新が完了したら、更新前の制御機能を有する第一制御コントローラ部11を撤去することが可能になる。
【0045】
(その他の工程)
なお、制御対象装置20に対する制御機能の更新が完了した後であっても、制御システムにおいては、第一制御コントローラ部11を撤去することなく、第一制御コントローラ部11と第二制御コントローラ部12を並行処理させるようにしてもよい。このようにすれば、仮に更新後に各出力信号の整合性が担保されない状態になった場合でも、そのことが検証シミュレータ部14での検証結果から解るようになる。そして、切換スイッチ部13の切り換えによって元に戻すこと、すなわち第一制御コントローラ部11の制御機能により制御対象装置20に対する動作制御を行うようにすることが、容易に実現可能となる。
【0046】
(3)本実施形態により得られる効果
本実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果が得られる。
【0047】
(a)本実施形態では、制御対象装置20に対する制御機能の更新にあたり、第一制御コントローラ部11と第二制御コントローラ部12とを並行処理させるとともに、並行処理させたときに同一の入力信号に応じてそれぞれから出力される出力信号の整合性を検証シミュレータ部14で検証し、その検証結果として出力される切換判断情報に基づいて切換スイッチ部13の切り換えを行う。つまり、各出力信号との整合性が担保されている状態で、第一制御コントローラ部11による制御機能と第二制御コントローラ部12による制御機能とが切り換わる。
したがって、本実施形態によれば、制御対象装置20に対する制御機能を更新する場合であっても、更新前後で同一の入力信号に応じて同一パターンの出力信号が同一タイミングで出力されることになるので、制御対象装置20における動作に支障を来してしまうことはない。しかも、切換スイッチ部13の切り換えるだけなので、その切り換えを即時に行うことができ、制御対象装置20の稼働停止期間を極力抑制し得るようになる。
つまり、本実施形態によれば、制御装置10による制御対象装置20への制御機能を更新する場合であっても、その更新に好適に対応することができる。
【0048】
(b)本実施形態において、第一制御コントローラ部11と第二制御コントローラ部12はPLCによって構成されている。したがって、例えば制御対象装置20との間で多くの入出力信号を授受する必要があっても、これに好適に対応することができる。つまり、工場や研究施設等で用いられるプラント設備や自動化機器等の各種装置の動作制御に用いて好適なものとなる。
しかも、その場合であっても、上述したように制御機能の更新に好適に対応することができる。例えば、本実施形態で例に挙げたように、制御対象装置20がガンマ線照射装置である場合、ガンマ線を取り扱うことから、その動作に支障を来してしまうことは大きな問題となり得るが、本実施形態によればそのような事態を招くことがない。
【0049】
(c)本実施形態において、検証シミュレータ部14は、出力信号の整合性を所定単位時間毎に検証する。したがって、本実施形態によれば、出力信号が時間経過に伴ってハイ/ローのパターン変化が生じる時系列信号であっても、その整合性を適切に検証することができる。
【0050】
(d)本実施形態において、検証シミュレータ部14が出力する切換判断情報には、互いに対応する出力信号同士を並べて表示する信号対比表示情報が含まれる。したがって、本実施形態によれば、例えば多数の出力端子から個別に出力信号が出力される場合であっても、対応する出力信号同士について、その整合性を容易かつ的確に検証することができる。
【0051】
(e)本実施形態において、信号対比表示情報には、出力信号の信号パターンを定量的に表す補足情報が含まれる。具体的には、例えば、所定単位時間の開始からの経過時間を数値で表したものを、補足情報として出力する。したがって、本実施形態によれば、対比する各出力信号の間の微妙な相違(タイミングのずれ等)についても容易に把握し得るようになる。
【0052】
(f)本実施形態において、検証シミュレータ部14が出力する切換判断情報には、整合性が担保されていない旨のアラーム情報が含まれる。したがって、本実施形態によれば、各出力信号の整合性が担保されていない場合に、そのことを明確に報知することが可能となり、これにより制御装置10の管理者や保守者等に注意を喚起し得るようになる。
【0053】
(g)本実施形態において、第二制御コントローラ部12は、検証シミュレータ部14が出力する切換判断情報の内容に基づいて、出力信号を生成するラダープログラムの修正を行えるように構成されている。したがって、各出力信号の整合性が担保されていない場合には、ラダープログラムの修正を行って、制御対象装置20の動作に支障を来さないようにすること、すなわち各出力信号の整合性を担保することが実現可能となり、制御対象装置20に対する制御機能の更新を確実に行うことができる。
【0054】
(h)本実施形態で説明したように、制御対象装置20に対する制御機能の更新が完了した後であっても、第一制御コントローラ部11と第二制御コントローラ部12を並行処理させるようにすれば、仮に更新後に各出力信号の整合性が担保されない状態になった場合でも、そのことが検証シミュレータ部14での検証結果から解るようになる。そして、切換スイッチ部13の切り換えによって元に戻すこと、すなわち第一制御コントローラ部11の制御機能により制御対象装置20に対する動作制御を行うようにすることが容易に実現可能となるので、そのことによる制御対象装置20の稼働停止を招いてしまうことがない。
【0055】
(4)変形例等
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0056】
例えば、上述の実施形態では、制御装置10の管理者や保守者等が操作して切換スイッチ部13を切り換える場合、すなわち切換スイッチ部13の切り換えを手動で行う場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。例えば、切換スイッチ部13は、検証シミュレータ部14が整合性の検証結果として出力する切換判断情報に基づき、各出力信号が整合性を有する場合または整合性を有するとみなせる場合に、これに応じて自動的に切り換えを行うように構成されたものであってもよい。このような構成であれば、管理者や保守者等の手間を省きつつ、切換スイッチ部13の切り換えを迅速かつ的確に行い得るようになる。
【0057】
また、例えば、上述の実施形態では、第一制御コントローラ部11と第二制御コントローラ部12のそれぞれから出力される各出力信号について、検証シミュレータ部14がこれらを対比することで、各出力信号の整合性を検証する場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。例えば、検証シミュレータ部14には、各出力信号の他に、制御対象装置20からの入力信号も入力されることから、その入力信号との関係についても考慮しつつ、各出力信号の整合性を検証するようにしても構わない。具体的には、例えば、入力信号についても、各出力信号に並べて表示出力することが考えられる。このようにすれば、各出力信号の整合性の検証を、より一層精緻に行えることが期待できる。
【0058】
また、例えば、上述の実施形態では、第一制御コントローラ部11および第二制御コントローラ部12がラダープログラムを実行するPLCによって構成されている場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。例えば、第一制御コントローラ部11および第二制御コントローラ部12が他の言語形式によるプログラムを実行するコンピュータによって構成されたものであっても、上述の実施形態の場合と全く同様に本発明を適用することが可能である。
【0059】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0060】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
制御対象装置から受け取る入力信号に応じて前記制御対象装置の動作制御に必要となる出力信号を生成して出力する第一制御コントローラ部と、
前記入力信号に応じて前記出力信号を生成して出力することで前記第一制御コントローラ部の機能を代替するように構成された第二制御コントローラ部と、
前記第一制御コントローラ部が出力する前記出力信号または前記第二制御コントローラ部が出力する前記出力信号のいずれかを前記制御対象装置に与える切換スイッチ部と、
前記第一制御コントローラ部と前記第二制御コントローラ部とを並行処理させたときに同一の前記入力信号に応じてそれぞれから出力される前記出力信号の整合性を検証し、その検証結果を前記切換スイッチ部の切換判断情報として出力する検証シミュレータ部と、
を備える制御装置が提供される。
【0061】
(付記2)
付記1に記載の制御装置において、好ましくは、
前記第一制御コントローラ部と前記第二制御コントローラ部とは、それぞれがプログラマブルロジックコントローラによって構成されている。
【0062】
(付記3)
付記1または2に記載の制御装置において、好ましくは、
前記検証シミュレータ部は、時系列信号である前記出力信号の整合性を所定単位時間毎に検証するように構成されている。
【0063】
(付記4)
付記1から3のいずれか1つに記載の制御装置において、好ましくは、
前記検証シミュレータ部が出力する前記切換判断情報には、互いに対応する前記出力信号同士を並べて表示する信号対比表示情報が含まれる。
【0064】
(付記5)
付記4に記載の制御装置において、好ましくは、
前記信号対比表示情報には、前記出力信号の信号パターンを定量的に表す補足情報が含まれる。
【0065】
(付記6)
付記1から5のいずれか1つに記載の制御装置において、好ましくは、
前記検証シミュレータ部が出力する前記切換判断情報には、整合性が担保されていない旨のアラーム情報が含まれる。
【0066】
(付記7)
付記1から6のいずれか1つに記載の制御装置において、好ましくは、
前記第二制御コントローラ部は、前記検証シミュレータ部が出力する前記切換判断情報の内容に基づいて、前記出力信号を生成するプログラムの修正を行えるように構成されている。
【0067】
(付記8)
付記1から7のいずれか1つに記載の制御装置において、好ましくは、
前記切換スイッチ部は、手動切り換えを行うように構成されている。
【0068】
(付記9)
付記1から7のいずれか1つに記載の制御装置において、好ましくは、
前記切換スイッチ部は、前記検証シミュレータ部が出力する切換判断情報に応じて自動的に切り換わるように構成されている。
【0069】
(付記10)
付記1から9のいずれか1つに記載の制御装置において、好ましくは、
制御機能の更新完了後も前記第一制御コントローラ部と前記第二制御コントローラ部とを並行処理させるように構成されている。
【0070】
(付記11)
本発明の他の一態様によれば、
制御対象装置から受け取る入力信号に応じて前記制御対象装置の動作制御に必要となる出力信号を生成して出力する第一制御コントローラ部と、前記入力信号に応じて前記出力信号を生成して出力することで前記第一制御コントローラ部の機能を代替するように構成された第二制御コントローラ部と、を用意する工程と、
前記第一制御コントローラ部と前記第二制御コントローラ部とを並行処理させるとともに、切換スイッチ部を通じて前記第一制御コントローラ部が出力する前記出力信号を前記制御対象装置に与える工程と、
前記第一制御コントローラ部と前記第二制御コントローラ部とを並行処理させたときに同一の前記入力信号に応じてそれぞれから出力される前記出力信号の整合性を検証する工程と、
前記第一制御コントローラ部が出力する前記出力信号と前記第二制御コントローラ部が出力する前記出力信号との整合性が担保されている場合に、前記第二制御コントローラ部が出力する前記出力信号を前記制御対象装置に与えるように、前記切換スイッチ部を切り換える工程と、
を備える制御方法が提供される。
【0071】
(付記12)
本発明のさらに他の一態様によれば、
制御対象装置から受け取る入力信号に応じて前記制御対象装置の動作制御に必要となる出力信号を生成して出力する第一制御コントローラ部と、前記入力信号に応じて前記出力信号を生成して出力することで前記第一制御コントローラ部の機能を代替するように構成された第二制御コントローラ部と、のそれぞれに接続するコンピュータを、
前記第一制御コントローラ部と前記第二制御コントローラ部とを並行処理させたときに同一の前記入力信号に応じてそれぞれから出力される前記出力信号の整合性を検証する整合性検証部、および、
前記整合性検証部による検証結果を、前記第一制御コントローラ部が出力する前記出力信号または前記第二制御コントローラ部が出力する前記出力信号のいずれかを前記制御対象装置に与える切換スイッチ部の切換判断情報として出力する情報出力部
として機能させる制御プログラムが提供される。
【符号の説明】
【0072】
10…制御装置、11…第一制御コントローラ部、12…第二制御コントローラ部、13…切換スイッチ部、14…検証シミュレータ部、20…制御対象装置