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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】光造形用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20220524BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20220524BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20220524BHJP
   B29C 64/135 20170101ALI20220524BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220524BHJP
【FI】
C08F290/06
C08F2/46
B29C64/314
B29C64/135
B33Y70/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018075886
(22)【出願日】2018-04-11
(65)【公開番号】P2019183006
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】越峠 晴貴
(72)【発明者】
【氏名】奥野 大地
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-336006(JP,A)
【文献】特表2009-513764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に平均で1~7個の(メタ)アクリロイル基と、少なくとも2つのウレタン結合とを有するウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)、ハイパーブランチポリマー構造を有する(メタ)アクリレート化合物(B)、及び分子内に少なくとも1個のラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(C)(ただし、前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)、及び前記ハイパーブランチポリマー構造を有する(メタ)アクリレート化合物(B)を除く)を含み、
前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)の含有量が、光造形用樹脂組成物の総質量に対し、30~60質量%であり、前記ハイパーブランチポリマー構造を有する(メタ)アクリレート化合物(B)の含有量が、光造形用樹脂組成物の総質量に対し、5~15質量%であり、前記分子内に少なくとも1個のラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(C)の含有量が、光造形用樹脂組成物の総質量に対し、30~65質量%であり、
前記ハイパーブランチポリマー構造を有する(メタ)アクリレート化合物(B)が、分子内に平均で少なくとも8個の(メタ)アクリロイル基を有する、光造形用樹脂組成物。
【請求項2】
前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)が、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する、請求項に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項3】
前記分子内に少なくとも1個のラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(C)が、(メタ)アクリルアミド類を含有する、請求項1又は2に記載の光造形用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、及び耐衝撃性に優れた光造形物を製造できる光造形用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光造形用樹脂組成物を用い、光を照射することにより硬化させて、3次元の造形物を成形する技術は、光造形法として知られている。
近年、光造形用樹脂組成物が数多く提案されている。光造形用樹脂組成物には、得られる光造形物の耐熱性と、耐衝撃性を両立することが要求される。
【0003】
特許文献1は、エチレン性不飽和結合を有するモノマー、エチレン性不飽和結合を有するポリマー、及び重合開始剤を含む光造形用樹脂組成物について提案している。
特許文献2は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物と、エチレン性不飽和結合を有する化合物と、光重合開始剤とを含む光造形用樹脂組成物について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-204915号公報
【文献】特開2001-310918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2の組成物では、得られる光造形物の耐熱性と、耐衝撃性とを両立できない。
本発明は、耐熱性、及び耐衝撃性に優れた光造形物を製造できる光造形用樹脂組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1] ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)、ハイパーブランチポリマー構造を有する(メタ)アクリレート化合物(B)、及び分子内に少なくとも1個のラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(C)(ただし、前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)、及び前記ハイパーブランチポリマー構造を有する(メタ)アクリレート化合物(B)を除く)を含み、
前記ハイパーブランチポリマー構造を有する(メタ)アクリレート化合物(B)が、分子内に平均で少なくとも8個の(メタ)アクリロイル基を有する、光造形用樹脂組成物。
[2] 前記ハイパーブランチポリマー構造を有する(メタ)アクリレート化合物(B)の含有量が、光造形用樹脂組成物の総質量に対し、5~15質量%である、[1]に記載の光造形用樹脂組成物。
[3] 前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)が、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する、[1]又は[2]に記載の光造形用樹脂組成物。
[4] 前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)の含有量が、光造形用樹脂組成物の総質量に対し、30~60質量%である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の光造形用樹脂組成物。
[5] 前記分子内に少なくとも1個のラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(C)が、(メタ)アクリルアミド類を含有する、[1]~[4]のいずれか一項に記載の光造形用樹脂組成物。
[6] 前記分子内に少なくとも1個のラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(C)の含有量が、光造形用樹脂組成物の総質量に対し、30~65質量%である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の光造形用樹脂組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光造形用樹脂組成物によれば、耐熱性、及び耐衝撃性に優れた光造形物を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
≪光造形用樹脂組成物≫
本発明の光造形用樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)(以下、「(A)成分」ともいう)、ハイパーブランチポリマー構造を有する(メタ)アクリレート化合物(B)(以下、「(B)成分」ともいう)、及び分子内に少なくとも1個のラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(C)(ただし、前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)、及び前記ハイパーブランチポリマー構造を有する(メタ)アクリレート化合物(B)を除く)(以下、「(C)成分」ともいう)を含む。
なお本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸又はメタクリル酸」、「(メタ)アクリロイル基」は「アクリロイル基又はメタクリロイル基」、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」、「(メタ)アクリルアミド」は「アクリルアミド又はメタクリルアミド」をそれぞれ意味する。
【0009】
<ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)>
ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)は、分子内に平均で1~7個の(メタ)アクリロイル基と、少なくとも2つのウレタン結合とを有する化合物である。
例えば、(A)成分は、分子内に1個以上のアミド基、及び2個以上のNCO反応性ヒドロキシル基を有するアミドヒドロキシ化合物(a1)(以下、「(a1)成分」ともいう)と、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、及びポリカーボネートジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のジオール(a2)(以下、「(a2)成分」ともいう)と、有機ジイソシアネート化合物(a3)(以下、「(a3)成分」ともいう)と、ヒドロキシル基含有アクリル酸エステル(a4)(以下、「(a4)成分」ともいう)との付加反応により合成することができる。
【0010】
(a1)成分は、環状ヒドロキシカルボン酸エステルとアンモニア、又は1個の第一級又は第二級アミノ窒素を含む化合物との反応生成物である。
環状ヒドロキシカルボン酸エステルの具体例としては、例えばγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、これらの中でもγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンが特に好ましい。
1個の第一級又は第二級アミノ窒素を含む化合物の具体例としては、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、2-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、6-アミノ-1-ヘキサノール、1,4-ジアミノブタン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,10-ジアミノデカン等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、これらの中でもエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びN-メチルエタノールアミンが特に好ましい。
【0011】
環状ヒドロキシカルボン酸エステルと1個の第一級又は第二級アミノ窒素を含む化合物との反応は、当モル量の両者を混合し、約80~100℃で8~24時間加熱することにより行われる。
このようにして得られる(a1)成分の中でも、4-ヒドロキシ-N-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルブタナミドが特に好ましい。
【0012】
(a2)成分は、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、及びポリカーボネートジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のジオールである。
このようなポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、及びポリカーボネートジオールとしては、種々市販されているものが適用でき、その具体例としては、例えばポリエチレングリコール(繰り返し単位数:6~20)、ポリプロピレングリコール(繰り返し単位数:6~20)、ポリブチレングリコール(繰り返し単位数:6~20)、1-メチルブチレングリコール(繰り返し単位数:6~20)、ポリカプロラクトンジオール、アルキレン(炭素数2~10)ジオールのカプロラクトン付加(繰り返し単位数:2~10)ジオール、ポリカーボネートジオール(炭素数4~6の脂肪族骨格)、フタル酸とアルキレンジオールから誘導されたポリエステルジオール、マレイン酸とアルキレンジオールから誘導されたポリエステルジオール、フマル酸とアルキレンジオールから誘導されたポリエステルジオール等が挙げられ、これらの中でも、ポリブチレングリコール(繰り返し単位数:6~20)、ポリカプロラクトンジオール、アルキレン(炭素数2~10)ジオールのカプロラクトン付加(繰り返し単位数:2~10)ジオールが特に好ましい。
また、質量平均分子量が300~2000程度のものが好ましい。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。ジオールを用いるのは、3官能以上のポリオールであると、製造時に架橋、ゲル化しやすい為である。
【0013】
(a3)成分である有機ジイソシアネート化合物の具体例としては、例えばイソホロンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(4-イソシアナトフェニル)メタン、ビス(3-クロロ-4-イソシアナトフェニル)メタン、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、トリス(4-イソシアナトフェニル)メタン、1,2-キシレンジイソシアネート、1,4-キシレンジイソシアネート、1,2-水添キシレンジイソシアネート、1,4-水添キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられ、これらの中でも、イソホロンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,2-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,2-水添キシレンジイソシアネート、1,4-水添キシレンジイソシアネートが好ましい。更に、硬化物の耐候性の良さから、イソホロンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,2-水添キシリレンジイソシアネート、1,4-水添キシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂環族骨格のものが特に好ましい。
【0014】
(a4)成分であるヒドロキシル基含有アクリル酸エステルは、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリレート基、及び1個のNCO反応性ヒドロキシル基を有し、製造したポリウレタン前駆体の末端に付加して、(A)成分にラジカル反応性を付与する。
ヒドロキシル基含有アクリル酸エステル(a4)の具体例としては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、およびこれらのカプロラクトンの付加物が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、これらの中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0015】
(A)成分の合成方法としては、例えば、(a1)成分と(a2)成分の総ヒドロキシル基含有当量で0.9モル当量を合成釜内に仕込み、これに加熱・攪拌下で、(a3)成分2.0モル当量を滴下することで、前駆体のイソシアネート末端ポリウレタンが得られる。これに更に(a4)成分1.1~1.3モル当量分を滴下、加熱付加することにより、(A)成分が得られる。ここで、モル当量とは、使用化合物のモル数と官能基数を乗じた数を言う。
【0016】
本発明において、(A)成分中、(a1)~(a4)の使用比率は、モル当量で、(a3):[(a1)+(a2)]:(a4)=2.0:0.5~4.0:0.5~4.0であり、(a1):(a2)=0.2~1.0:1.0~0.2である。
ここでモル当量とは、分子内に1個以上のアミド基及び少なくとも2個のNCO反応性ヒドロキシル基を有するアミドヒドロキシ化合物(a1)、及び、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、及びポリカーボネートジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のジオール(a2)の場合は、分子内のヒドロキシル基数と使用モル数を乗じた数を指す。また、有機ジイソシアネート化合物(a3)の場合は、分子内のNCO基数と使用モル数を乗じたものを指す。また、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリレート基、及び1個のNCO反応性ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸のヒドロキシ基含有アルキルエステル(a4)の場合は使用モル数を指す。
【0017】
(A)成分は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
(A)成分の含有量は、光造形用樹脂組成物の総質量に対し、30~60質量%が好ましく、32~58質量%がより好ましく、35~55質量%がさらに好ましい。
(A)成分の含有量が上記範囲内であると、耐熱性、耐衝撃性及び靱性に優れる。
【0018】
<ハイパーブランチポリマー構造を有する(メタ)アクリレート化合物(B)>
ハイパーブランチポリマー構造を有する(メタ)アクリレート化合物(B)は、平均で少なくとも8個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
本明細書において、「ハイパーブランチポリマー構造を有する(メタ)アクリレート」とは、分岐した構造がさらに分岐して多重の分岐構造を形成し、該分岐構造が所定の一方向或いは二以上の方向に分岐状に延びる構造を有する多官能(メタ)アクリレートを意味するものである。なお、本発明において、「多官能(メタ)アクリレート」とは、(メタ)アクリロイル基を複数有する化合物を意味する。
【0019】
(B)成分の(メタ)アクリロイル基の数は、平均で少なくとも8個であり、8~20個が好ましく、10~18個がより好ましく、12~16個がさらに好ましい。
アクリロイル基の数が上記範囲内であると、耐熱性と耐衝撃性の両立ができる。
【0020】
(B)成分としては、例えば、市販品の巴工業株式会社製SARTOMER(登録商標)CN2302、CN2304等が挙げられる。
【0021】
(B)成分は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
(B)成分の含有量は、光造形用樹脂組成物の総質量に対し、5~15質量%が好ましく、5~13質量%がより好ましく、5~12質量%がさらに好ましい。
(B)成分の含有量が上記範囲内であると、耐熱性と耐衝撃性の両立ができる。
【0022】
<分子内に少なくとも1個のラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(C)>
分子内に少なくとも1個のラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(C)としては、具体的には、スチレン、α-メチルスチレン、α-クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル系モノマー類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アジピン酸ジビニル等のビニルエステルモノマー類;エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ジアリルフタレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のアリル化合物類;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸モルフォリル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル等のモノ(メタ)アクリレート;ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール(繰返し単位数:5~14)、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール(繰返し単位数:5~14)、ジ(メタ)アクリル酸1,3-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4-ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール(繰返し単位数:3~16)、ジ(メタ)アクリル酸ポリ(1-メチルブチレングリコール)(繰返し単位数:5~20)、ジ(メタ)アクリル酸1,6-ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,9-ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジシクロペンタンジオールのジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2~5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのγ-ブチロラクトン付加物(n+m=2~5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2~5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ブチレングリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2~5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、シクロヘキサンジメタノールのカプロラクトン付加物(n+m=2~5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ジシクロペンタンジオールのカプロラクトン付加物(n+m=2~5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(n+m=2~5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFのカプロラクトン付加物(n+m=2~5)のジ(メタ)アクリル酸エステルビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(p=1~7)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(p=1~7)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物(p=1~7)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物(p=1~7)のジ(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(p=1~5)のトリ(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物(p=1~5)のトリ(メタ)アクリル酸エステル、グリセリントリ(メタ)アクリル酸エステル、グリセリンエチレンオキサイド付加物(p=1~5)のトリ(メタ)アクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(p=1~5)のテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(p=1~5)のトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(p=1~15)のテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(p=1~5)のトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(p=1~15)のテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(p=1~5)のペンタ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(p=1~15)のヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、N,N',N"-トリス((メタ)アクリロキシポリ(p=1~4)(エトキシ)エチル)イソシアヌレート等のポリ(メタ)アクリレートペンタエリスリトールカプロラクトン(4~8モル)付加物のトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールカプロラクトン(4~8モル)付加物のテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールカプロラクトン(4~12モル)付加物のペンタ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールカプロラクトン(4~12モル)付加物のヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、N,N',N"-トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、N,N'-ビス(アクリロキシエチル)-N"-ヒドロキシエチルイソシアヌレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、及びイソシアヌル酸エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;ビスフェノールAグリシジルエーテル、ビスフェノールFグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等の分子内に複数のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により得られるエポキシポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なかでも、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、(メタ)アクリロイルモルホリンがより好ましい。
【0023】
(C)成分は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
(C)成分の含有量は、光造形用樹脂組成物の総質量に対し、30~65質量%が好ましく、35~60質量%がより好ましく、40~55質量%がさらに好ましい。
(C)成分の含有量が上記範囲内であると、光造形用樹脂組成物の粘度調製に優れる。
【0024】
<任意成分>
本発明の光造形用樹脂組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、ラジカル重合開始剤、光増感剤、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、充填剤、顔料、染料、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光剤、連鎖移動剤等の、各種添加剤を用途に応じて適宜添加することができる。
特に、紫外線吸収剤は、光造形用樹脂組成物の硬化深度を制御するのに有効な成分である。紫外線吸収剤の配合量は特に限定されないが、光学的立体造形用樹脂組成物100質量部に対して、0.005~1質量部加えることが好ましく、より好ましくは0.01~0.8質量部である。
また、本発明の光学的立体造形用樹脂組成物には、得られる立体造形物の性能を損なわない範囲で、必要に応じて有機溶剤、水を添加することもできる。
【0025】
ラジカル重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4-フェニルベンゾフェノン、t-ブチルアントラキノン、2-エチルアントラキノンや、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類;ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン等のアセトフェノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;メチルベンゾイルホルメート、1,7-ビスアクリジニルヘプタン、9-フェニルアクリジン等が挙げられる。
【0026】
光増感剤としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸アミル、4-ジメチルアミノアセトフェノン等が挙げられる。
【0027】
≪光造形用樹脂組成物の製造方法≫
本発明の光造形用樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分に、さらに必要に応じて任意成分を混合することにより得られる。
【0028】
≪光造形物≫
本発明の光造形物は、本発明の光造形用樹脂組成物に光を照射させて硬化することにより得られる。なお、製造する光造形物の構造、形状、大きさ等は特に制限されるものではなく、用途に応じて適宜設計することができる。
光造形物の製造方法としては、公知の光学的立体造形方法を採用することができるが、例えば、上記光造形用樹脂組成物からなる薄膜を形成する工程と、該薄膜に対して光エネルギーを選択的に照射し硬化させる工程とを複数回繰り返すことにより、硬化した薄膜を複数積層させ、所望の形状の光造形物を製造する光学的立体造形法が好適である。なお、光学的立体造形法により製造された光造形物をそのまま製品としても良いし、さらに、光照射や加熱によるポストキュアなどを行い、その機械的特性や形状安定性などを向上させたものを製品としても良い。
【0029】
薄膜を硬化させるために照射する光線としては、Arレーザー、He-Cdレーザー、He-Neレーザー、ArFエキシマレーザー、COレーザー、Nd:YAGレーザー、半導体レーザー、Dyeレーザー等から出射されるレーザー光線や、キセノンランプ、メタルハライドランプ、水銀灯、蛍光灯等から出射される紫外線等の活性エネルギー光線が好適である。これらの中でも特にレーザー光線が好適である。レーザー光線によれば、照射エネルギーを高くすることができ、硬化時間を短縮化できることに加えて、ビーム形状を小さくすることができるので、1回の光照射面積を小さくすることができ、造形精度の高い光造形物を得ることができる。
【0030】
本発明の光造形物は、設計の途中で外観デザインを検証するためのモデル、部品の機能性をチェックするためのモデル、実部品として機械製品等に組み込み、性能をチェックするためのモデル、樹脂型、金型を制作するためのベースモデル、試作金型用の直接型などの作製などの用途に適用することができる。より具体的には、精密部品、電気・電子部品、家具、建築構造物、自動車用部品、各種容器類、鋳物、金型、母型などのためのモデルや加工用モデルなどの製作等の用途に適用することができる。特に、繰り返し疲労試験用部品の試作、例えば家電製品の嵌合部分の設計、複雑な構造の機械的強度解析企用部品の製造などに極めて有用である。
【実施例
【0031】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の実施の態様がこれに限定されるものではない。
実施例で使用した成分は以下の通りである。
【0032】
<(A)成分>
・ウレタンアクリレート。以下の方法で合成したもの。
(ウレタンアクリレートの合成)
ウレタンアクリレートを合成した。反応の終点は、残存イソシアネート当量が1%未満となった時点とした。
(1)攪拌機、温度調節器、温度計、及び凝縮器を備えた内容積5Lの三つ口フラスコに、(a4)成分としてジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネート1850g(7.0モル当量)、及びジブチル錫ジラウレート0.7gを仕込み、ウォーターバスで内温が70℃になるように加熱した。
(2)別途、(a1)成分として4-ヒドロキシ-N-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルブタナミド193g(1.1モル当量)と、(a2)成分としてポリブチレングリコール(繰り返し単位数:12、平均分子量:865)1200g(1.4モル当量)とを均一に混合溶解させた液を、側管付きの滴下ロートに仕込み、これを上記(1)のフラスコ中の内容物に対して滴下した。この際、上記(1)のフラスコ中の内容物を攪拌しつつ、フラスコ内温を65~75℃に保持し、4時間かけて等速滴下した。さらに、滴下終了後、同温度で2時間攪拌して反応させた。
(3)別途、(a4)成分として2-ヒドロキシエチルアクリレート1335g(11.5モル当量)とハイドロキノンモノメチルエーテル2.5gとを均一に混合溶解させた液を、別の滴下ロートに仕込んだ。この内容物を、(2)のフラスコ内容物を75℃まで降温させた後、フラスコ内温を55~65℃に保持しながら2時間かけて等速滴下し、さらにフラスコ内容物の温度を75~85℃に保持し、4時間反応させることで、無色透明のウレタンアクリレートを得た。
<(B)成分>
・CN2302:ハイパーブランチ型ポリエステル(メタ)アクリレート。ブランチ構造がポリエステル構造である化合物。分子内の(メタ)アクリロイル基の数 平均で16。質量平均分子量1952。商品名「CN2302」、アルケマ社製。
<(B’)成分>
・CN2303:ハイパーブランチ型ポリエステル(メタ)アクリレート。ブランチ構造がポリエステル構造である化合物。分子内の(メタ)アクリロイル基の数 平均で6。質量平均分子量1377。商品名「CN2303」、アルケマ社製。(B)成分の比較品。
・V1000:デンドリマー型(メタ)アクリレート。大阪有機化学工業株式会社製。デンドリマー型(メタ)アクリレートとは、分岐した構造がさらに分岐して多重の分岐構造を形成し、該分岐構造が放射状に広がった構造を有する多官能(メタ)アクリレートを意味する。
<(C)成分>
・ACMO:アクリロイルモルホリン、KJケミカル社製。
<任意成分>
・Irgacure184:1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、BASF社製。
・IrgacureTPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、BASF社製。
【0033】
(実施例1~2、比較例1~5)
表1に示す割合で各成分を混合し、光造形用樹脂組成物を得た。
ガラス板上に、シリコーンシート枠(内寸127×13mm、厚み3mm)を固定し、得られた光造形用樹脂組成物を流し込んだ。次いで、もう一枚のガラス板でカバーをし、FUSIONランプで1000mJ/cmの照射量を当て、光造形物を得た。
【0034】
<耐熱性の評価>
JIS K 7191に準拠して光造形物の試験片を作製し、試験片の荷重たわみ温度(以下、「HDT」と示す)(℃)を測定して耐熱性を評価した。試験結果が89℃以上のものを合格とした。得られた結果を表1に示す。
【0035】
<耐衝撃性の評価>
ASTM D256に準拠して得られた光造形物について23℃の測定温度で測定した(単位:J/m)。試験結果が50以上のものを合格とした。得られた結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
以上の結果から、本発明を適用した実施例1~2は、耐熱性、耐衝撃性のいずれにも優れた光造形物を製造できた。
(B)成分を含まない比較例1は、耐衝撃性に劣っていた。
(B)成分の(メタ)アクリロイル基が平均で8個未満である比較例2は、耐熱性、耐衝撃性のいずれにおいても劣っていた。
(B)成分の(メタ)アクリロイル基が平均で8個未満であり、(B)成分の含有量が比較例2よりも多い比較例3は、耐衝撃性において劣っていた。
(B)成分をデンドリマー型(メタ)アクリレートに変更した比較例4及び5は、耐衝撃性において劣っていた。