(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】調光用液晶組成物および液晶調光素子
(51)【国際特許分類】
C09K 19/34 20060101AFI20220524BHJP
C09K 19/12 20060101ALI20220524BHJP
C09K 19/14 20060101ALI20220524BHJP
C09K 19/20 20060101ALI20220524BHJP
C09K 19/30 20060101ALI20220524BHJP
C09K 19/32 20060101ALI20220524BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
C09K19/34
C09K19/12
C09K19/14
C09K19/20
C09K19/30
C09K19/32
G02F1/13 500
G02F1/13 505
(21)【出願番号】P 2018547123
(86)(22)【出願日】2017-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2017026281
(87)【国際公開番号】W WO2018078968
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2016210418
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】松田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】栗原 衣理子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 将之
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-036423(JP,A)
【文献】特許第6268562(JP,B1)
【文献】特開2013-166936(JP,A)
【文献】特開2005-290043(JP,A)
【文献】特開2005-250223(JP,A)
【文献】特開平04-128821(JP,A)
【文献】特開2008-007754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/34
C09K 19/12
C09K 19/14
C09K 19/20
C09K 19/30
C09K 19/32
G02F 1/13
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そしてネマチック相および正の誘電率異方性を有する調光用液晶組成物であって、
第一成分の割合が5質量%から90質量%の範囲であり、第二成分の割合が5質量%から90質量%の範囲であり、
第一成分として式(1-12)、式(1-14)
および式(1-30)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、調光用液晶組成物。
【化1】
【化2】
〔式中、R
1は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。
環Aは、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、ピリミジン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、またはテトラヒドロピラン-2,5-ジイルである。
Z
1は、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシである。
X
1およびX
2は独立して、水素またはフッ素である。
Y
1は、フッ素、塩素、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルオキシである。
aは、1、2、3、または4である。
R
2およびR
3は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
環Bおよび環Cは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンである。
Z
2は、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり;bは、1、2、または3である。〕
【請求項2】
第一成分として式(1-1)から式(1-11)、式(1-13)、式(1-15)か
ら式(1-29)および式(1-31)から式(1-35)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1に記載の調光用液晶組成物。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
〔式中、R
1は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。〕
【請求項3】
第二成分として式(2-1)から式(2-13)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1または2に記載の調光用液晶組成物。
【化7】
〔式中、R
2およびR
3は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。〕
【請求項4】
第三成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の調光用液晶組成物。
【化8】
〔式中、R
4およびR
5は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシである。
環Dおよび環Fは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたナフタレン-2,6-ジイル、クロマン-2,6-ジイル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたクロマン-2,6-ジイルである。
環Eは、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2-クロロ-3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-5-メチル-1,4-フェニレン、3,4,5-トリフルオロナフタレン-2,6-ジイル、または7,8-ジフルオロクロマン-2,6-ジイルである。
Z
3およびZ
4は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはメチレンオキシである。
cは、1、2、または3であり、dは、0または1であり;cとdとの和は3以下である。〕
【請求項5】
第三成分として式(3-1)から式(3-22)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の調光用液晶組成物。
【化9】
【化10】
〔式中、R
4およびR
5は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシである。〕
【請求項6】
第三成分の割合が3質量%から25質量%の範囲である、請求項4または5に記載の調光用液晶組成物。
【請求項7】
ネマチック相の上限温度(NI)が90℃以上である、請求項1から6のいずれか1項に記載の調光用液晶組成物。
【請求項8】
液晶層を有し、前記液晶層が、請求項1から7のいずれか1項に記載の調光用液晶組成物である液晶調光素子。
【請求項9】
前記液晶層が対向する一対の透明基板により挟持され、前記透明基板がガラス板またはアクリル板であり、前記透明基板が透明電極を有し、そして前記透明基板が配向層を有してもよい、請求項8に記載の液晶調光素子。
【請求項10】
前記液晶層が対向する一対の透明基板により挟持され、前記透明基板が透明電極を有し、前記透明基板は配向層を有してもよく、前記透明基板の一方の裏側には反射板を有する、請求項8に記載の液晶調光素子。
【請求項11】
直線偏光板により挟持された調光材を有し、前記調光材が第1の液晶配向層用フィルム、液晶層、および第2の液晶配向層用フィルムの積層構造であり、前記第1および第2の液晶配向層用フィルムが、透明プラスチックフィルム基板、透明電極、および配向層を含む、請求項8に記載の液晶調光素子。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか1項に記載の液晶調光素子を使用する調光窓。
【請求項13】
請求項8から11のいずれか1項に記載の液晶調光素子を使用するスマートウィンドウ。
【請求項14】
請求項1から7のいずれか1項に記載の調光用液晶組成物の、液晶調光素子への使用。
【請求項15】
請求項1から7のいずれか1項に記載の調光用液晶組成物の、透明基板がプラスチックフィルムである液晶調光素子への使用。
【請求項16】
請求項1から7のいずれか1項に記載の調光用液晶組成物の、調光窓への使用。
【請求項17】
請求項1から7のいずれか1項に記載の調光用液晶組成物の、スマートウィンドウへの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光用液晶組成物および調光機能を有する液晶調光素子に関する。
【0002】
調光素子は、光の透過率を制御する素子である。この素子には、エレクトロクロミック化合物や液晶性化合物が用いられる。液晶性化合物は、電圧を印加することによってその配列を制御することができるので、光シャッターとして用いられる。一例は、液晶性化合物に偏光板やカラーフィルタを組み合わせた液晶表示素子である。他の例は、液晶調光素子である。
【0003】
この液晶調光素子は窓ガラスや部屋の仕切りのような建築材料、車載部品などに使われる。これらの素子には、ガラス基板のような硬質基板に加えて、プラスチックフィルムのような軟質基板が使われる。これらの基板に挟持された液晶組成物では、印加する電圧を調節することによって、液晶分子の配列を変えることができる。この方法によって、液晶組成物を透過する光を制御できるので、液晶調光素子は、調光窓やスマートウィンドウに用いられる(特許文献1および2参照)。
【0004】
このような素子はネマチック相を有する液晶組成物を含有する。この組成物は適切な特性を有する。この組成物の特性を向上させることによって、良好な特性を有する素子を得ることができる。これらの特性における関連を下記の表1にまとめる。組成物の特性を素子に基づいてさらに説明する。ネマチック相の温度範囲は、素子の使用できる温度範囲に関連する。ネマチック相の好ましい上限温度は約90℃以上であり、そしてネマチック相の好ましい下限温度は約-20℃以下である。組成物の粘度は素子の応答時間に関連する。光の透過度を制御するためには短い応答時間が好ましい。1ミリ秒でもより短い応答時間が望ましい。したがって、組成物における小さな粘度が好ましい。低い温度における小さな粘度はさらに好ましい。組成物の弾性定数は素子の応答時間に関連する。素子において短い応答時間を達成するためには、組成物における大きな弾性定数がより好ましい。
【0005】
【0006】
組成物の光学異方性は、液晶調光素子のヘイズ率に関連する。ヘイズ率は全透過光に対する拡散光の割合である。光を遮断するときは大きなヘイズ率が好ましい。大きなヘイズ率には大きな光学異方性が好ましい。組成物における大きな誘電率異方性は、素子における低いしきい値電圧や小さな消費電力に寄与する。したがって、大きな誘電率異方性が好ましい。組成物における大きな比抵抗は、素子における大きな電圧保持率に寄与する。したがって、初期段階において大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。長時間使用したあと、大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。光や熱に対する組成物の安定性や耐候性は、素子の寿命に関連する。この安定性や耐候性が良好であるとき、寿命が長い。このような特性は、素子に好ましい。
【0007】
液晶調光素子の一例は、高分子分散型の素子である。ここでは、液晶組成物の液滴が重合体の中に封入され、固定されている(特許文献3参照)。他の例は、液晶組成物を2枚の基板で挟み込んで固定したサンドイッチ型の素子である。後者の型の素子においては、TNモード、VAモード、IPSモード、FFSモードなどのモードを有する場合がある。TNモードを有する液晶調光素子においては正の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。VAモードを有する液晶調光素子においては負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。IPSモードまたはFFSモードを有する液晶調光素子においては正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平03-47392号公報
【文献】特開平08-184273号公報
【文献】特開平07-175045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、正に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、光に対する高い安定性、熱に対する高い安定性、大きな弾性定数のような特性の少なくとも1つを充足し、調光に適した液晶組成物を提供することである。別の目的は、これらの特性の少なくとも2つのあいだで適切なバランスを有し、調光に適した液晶組成物を提供することである。別の目的は、このような組成物を含有する液晶調光素子を提供することである。別の目的は、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなヘイズ率、長い寿命のような特性を有する液晶調光素子を提供することである。さらに別の目的は、液晶調光素子を組み込んだ調光窓、スマートウィンドウなどを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そしてネマチック相および正の誘電率異方性を有する調光用液晶組成物、およびこの組成物を含有する液晶調光素子に関する。
【0011】
【0012】
式(1)において、R1は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;環Aは、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、ピリミジン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、またはテトラヒドロピラン-2,5-ジイルであり;Z1は、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;X1およびX2は独立して、水素またはフッ素であり;Y1は、フッ素、塩素、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルオキシであり;aは、1、2、3、または4である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の1つの長所は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、正に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、光に対する高い安定性、熱に対する高い安定性、大きな弾性定数のような特性の少なくとも1つを充足し、調光に適した液晶組成物を提供することである。別の長所は、これらの特性の少なくとも2つのあいだで適切なバランスを有し、調光に適した液晶組成物を提供することである。別の長所は、このような組成物を含有する液晶調光素子を提供することである。別の長所は、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなヘイズ率、長い寿命のような特性を有する液晶調光素子を提供することである。さらに別の長所は、液晶調光素子を組み込んだ調光窓、スマートウィンドウなどを提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。「液晶組成物」および「液晶調光素子」の用語をそれぞれ「組成物」および「素子」と略すことがある。「液晶調光素子」は調光機能を有する液晶パネルおよび液晶モジュールの総称である。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが、ネマチック相の温度範囲、粘度、誘電率異方性のような特性を調節する目的で組成物に混合される化合物の総称である。この化合物は、例えば1,4-シクロヘキシレンや1,4-フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。「重合性化合物」は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加する化合物である。アルケニルを有する液晶性化合物は、その意味では重合性ではない。
【0015】
液晶組成物は、複数の液晶性化合物を混合することによって調製される。この組成物に、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物のような添加物が必要に応じて添加される。液晶性化合物の割合は、添加物を添加した場合であっても、添加物を含まない液晶組成物の質量に基づいた質量百分率(質量%)で表される。添加物の割合は、添加物を含まない液晶組成物の質量に基づいた質量百分率(質量%)で表される。すなわち、液晶性化合物や添加物の割合は、液晶性化合物の全質量に基づいて算出される。質量百万分率(ppm)が用いられることがある。重合開始剤および重合禁止剤の割合は、例外的に重合性化合物の質量に基づいて表される。
【0016】
「ネマチック相の上限温度」を「上限温度」と略すことがある。「ネマチック相の下限温度」を「下限温度」と略すことがある。「比抵抗が大きい」は、組成物が初期段階において大きな比抵抗を有し、そして長時間使用したあと、大きな比抵抗を有することを意味する。「電圧保持率が大きい」は、素子が初期段階において室温だけでなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有することを意味する。組成物や素子の特性が経時変化試験によって検討されることがある。「誘電率異方性を上げる」の表現は、誘電率異方性が正である組成物のときは、その値が正に増加することを意味し、誘電率異方性が負である組成物のときは、その値が負に増加することを意味する。
【0017】
式(1)で表される化合物を「化合物(1)」と略すことがある。式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を「化合物(1)」と略すことがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物、2つの化合物の混合物、または3つ以上の化合物の混合物を意味する。他の式で表される化合物についても同様である。「少なくとも1つの‘A’」の表現は、‘A’の数は任意であることを意味する。「少なくとも1つの‘A’は、‘B’で置き換えられてもよい」の表現は、‘A’の数が1つのとき、‘A’の位置は任意であり、‘A’の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できる。このルールは、「少なくとも1つの‘A’が、‘B’で置き換えられた」の表現にも適用される。
【0018】
「少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよい」のような表現がこの明細書で使われる。この場合、-CH2-CH2-CH2-は、隣接しない-CH2-が-O-で置き換えられることによって-O-CH2-O-に変換されてもよい。しかしながら、隣接した-CH2-が-O-で置き換えられることはない。この置き換えでは-O-O-CH2-(ペルオキシド)が生成するからである。すなわち、この表現は、「1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよい」と「少なくとも2つの隣接しない-CH2-は-O-で置き換えられてもよい」の両方とを意味する。このルールは、-O-への置き換えだけでなく、-CH=CH-や-COO-のような二価基への置き換えにも適用される。
【0019】
成分化合物の化学式において、末端基R1の記号を複数の化合物に用いる。これらの化合物において、任意の2つのR1が表す2つの基は同一であってもよく、または異なってもよい。例えば、化合物(1-1)のR1がエチルであり、化合物(1-2)のR1がエチルであるケースがある。化合物(1-1)のR1がエチルであり、化合物(1-2)のR1がプロピルであるケースもある。このルールは、他の末端基などの記号にも適用される。式(1)において、添え字‘a’が2のとき、2つの環Aが存在する。この化合物において、2つの環Aが表す2つの基は、同一であってもよく、または異なってもよい。このルールは、添え字‘a’が2より大きいとき、任意の2つの環Aにも適用される。このルールは、他の記号にも適用される。
【0020】
六角形で囲んだA、B、C、Dなどの記号はそれぞれ環A、環B、環C、環Dなどの環に対応し、六員環、縮合環などの環を表す。「環Aおよび環Bは独立して、X、Y、またはZである」の表現では、主語が複数であるから、「独立して」を用いる。主語が「環A」であるときは、主語が単数であるから「独立して」を用いない。「環A」が複数の式で使われる場合には、「同一であってもよく、または異なってもよい」のルールが「環A」に適用される。他の基についても同様である。
【0021】
2-フルオロ-1,4-フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向き(L)であってもよいし、右向き(R)であってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン-2,5-ジイルのような、環から2つの水素を除くことによって生成した、左右非対称な二価基にも適用される。このルールは、カルボニルオキシ(-COO-または-OCO-)のような二価の結合基にも適用される。
【0022】
【0023】
液晶性化合物のアルキルは、直鎖状または分岐状であり、環状アルキルを含まない。直鎖状アルキルは、分岐状アルキルよりも好ましい。これらのことは、アルコキシ、アルケニルなどの末端基についても同様である。1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。
【0024】
本発明は、下記の項などである。
【0025】
項1. 第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そしてネマチック相および正の誘電率異方性を有する調光用液晶組成物。
【0026】
【0027】
式(1)において、R1は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;環Aは、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、ピリミジン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、またはテトラヒドロピラン-2,5-ジイルであり;Z1は、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;X1およびX2は独立して、水素またはフッ素であり;Y1は、フッ素、塩素、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルオキシであり;aは、1、2、3、または4である。
【0028】
項2. 第一成分として式(1-1)から式(1-35)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1に記載の調光用液晶組成物。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
式(1-1)から式(1-35)において、R1は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。
【0034】
項3. 第一成分の割合が5質量%から90質量%の範囲である、項1または2に記載の調光用液晶組成物。
【0035】
項4. 第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から3のいずれか1項に記載の調光用液晶組成物。
【0036】
【0037】
式(2)において、R2およびR3は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Bおよび環Cは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;Z2は、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり;bは、1、2、または3である。
【0038】
項5. 第二成分として式(2-1)から式(2-13)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から4のいずれか1項に記載の調光用液晶組成物。
【0039】
【0040】
式(2-1)から式(2-13)において、R2およびR3は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【0041】
項6. 第二成分の割合が5質量%から90質量%の範囲である、項4または5に記載の調光用液晶組成物。
【0042】
項7. 第三成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から6のいずれか1項に記載の調光用液晶組成物。
【0043】
【0044】
式(3)において、R4およびR5は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシであり;環Dおよび環Fは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたナフタレン-2,6-ジイル、クロマン-2,6-ジイル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたクロマン-2,6-ジイルであり;環Eは、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2-クロロ-3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-5-メチル-1,4-フェニレン、3,4,5-トリフルオロナフタレン-2,6-ジイル、または7,8-ジフルオロクロマン-2,6-ジイルであり;Z3およびZ4は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはメチレンオキシであり;cは、1、2、または3であり、dは、0または1であり;cとdとの和は3以下である。
【0045】
項8. 第三成分として式(3-1)から式(3-22)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から7のいずれか1項に記載の調光用液晶組成物。
【0046】
【0047】
【0048】
式(3-1)から式(3-22)において、R4およびR5は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシである。
【0049】
項9. 第三成分の割合が3質量%から25質量%の範囲である、項7または8に記載の調光用液晶組成物。
【0050】
項10. ネマチック相の上限温度(NI)が90℃以上である、項1から9のいずれか1項に記載の調光用液晶組成物。
【0051】
項11. 液晶層を有し、前記液晶層が、項1から10のいずれか1項に記載の調光用液晶組成物である液晶調光素子。
【0052】
項12. 前記液晶層が対向する一対の透明基板により挟持され、前記透明基板がガラス板またはアクリル板であり、前記透明基板が透明電極を有し、そして前記透明基板が配向層を有してもよい、項11に記載の液晶調光素子。
【0053】
項13. 前記液晶層が対向する一対の透明基板により挟持され、前記透明基板が透明電極を有し、前記透明基板は配向層を有してもよく、前記透明基板の一方の裏側には反射板を有する、項11に記載の液晶調光素子。
【0054】
項14. 直線偏光板により挟持された調光材を有し、前記調光材が第1の液晶配向層用フィルム、液晶層、および第2の液晶配向層用フィルムの積層構造であり、前記第1および第2の液晶配向層用フィルムが、透明プラスチックフィルム基板、透明電極、および配向層を含む、項11に記載の液晶調光素子。
【0055】
項15. 項11から14のいずれか1項に記載の液晶調光素子を使用する調光窓。
【0056】
項16. 項11から14のいずれか1項に記載の液晶調光素子を使用するスマートウィンドウ。
【0057】
項17. 項1から10のいずれか1項に記載の調光用液晶組成物の、液晶調光素子への使用。
【0058】
項18. 項1から10のいずれか1項に記載の調光用液晶組成物の、透明基板がプラスチックフィルムである液晶調光素子への使用。
【0059】
項19. 項1から10のいずれか1項に記載の調光用液晶組成物の、調光窓への使用。
【0060】
項20. 項1から10のいずれか1項に記載の調光用液晶組成物の、スマートウィンドウへの使用。
【0061】
本発明は、次の項も含む。(a)一対の透明基板の少なくとも一方に透明電極と配向層とを形成する工程と、前記配向層を内側にして前記一対の透明基板を対向させる工程と、前記一対の透明基板の間に、前記調光用液晶組成物を充填する工程とを含む、液晶調光素子の製造方法。この製造方法において、透明基板はガラス、アクリル板のような硬質素材であってもよく、またはプラスチックフィルムのような軟質素材であってもよい。(b)一対の透明基板の間に、前記調光用液晶組成物を有する液晶調光素子を挟持する工程を含む、調光窓の製造方法。(c)一対の透明基板の間に、前記調光用液晶組成物を有する液晶調光素子を挟持する工程を含む、スマートウィンドウの製造方法。このような製造方法によって、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなヘイズ率、長い寿命のような特性を有する調光窓およびスマートウィンドウを得ることができる。
【0062】
本発明の液晶調光素子に使われる組成物を次の順で説明する。第一に、組成物の構成を説明する。第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物に及ぼす主要な効果を説明する。第三に、組成物における成分の組み合せ、成分の好ましい割合およびその根拠を説明する。第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。第五に、好ましい成分化合物を示す。第六に、組成物に添加してもよい添加物を説明する。第七に、成分化合物の合成法を説明する。最後に、組成物の用途を説明する。
【0063】
第一に、組成物の構成を説明する。この組成物は、複数の液晶性化合物を含有する。この組成物は、添加物を含有してもよい。添加物は、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物などである。添加物は光や熱に対する安定性の観点から少ない方が好ましい。この化合物の好ましい割合は、5質量%以下であり、さらに好ましい割合は0質量%である。この組成物は、液晶性化合物の観点から組成物Aと組成物Bに分類される。組成物Aは、化合物(1)、化合物(2)、および化合物(3)から選択された液晶性化合物の他に、その他の液晶性化合物をさらに含有してもよい。「その他の液晶性化合物」は、化合物(1)、化合物(2)、および化合物(3)とは異なる液晶性化合物である。このような化合物は、特性をさらに調整する目的で組成物に混合される。その他の液晶性化合物の中で、シアノ(-CN)を有する化合物は光や熱に対する安定性の観点から少ない方が好ましい。この化合物の好ましい割合は、5質量%以下であり、さらに好ましい割合は0質量%である。
【0064】
組成物Bは、実質的に化合物(1)、化合物(2)、および化合物(3)から選択された化合物のみからなる。「実質的に」は、組成物Bが添加物を含有してもよいが、その他の液晶性化合物を含有しないことを意味する。組成物Bは組成物Aに比較して成分の数が少ない。コストを下げるという観点から、組成物Bは組成物Aよりも好ましい。その他の液晶性化合物を混合することによって特性をさらに調整できるという観点から、組成物Aは組成物Bよりも好ましい。
【0065】
第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物や素子に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類であり、記号0(ゼロ)は、極めて小さいことを意味する。
【0066】
【0067】
成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。化合物(1)は、誘電率異方性を上げる。化合物(2)は、上限温度を上げる、または下限温度を下げる。化合物(3)は、液晶分子の短軸方向における誘電率を上げる。
【0068】
第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分の好ましい割合およびその根拠を説明する。組成物における成分の好ましい組み合わせは、第一成分+第二成分、第一成分+第三成分、または第一成分+第二成分+第三成分である。さらに好ましい組み合わせは、第一成分+第二成分、または第一成分+第二成分+第三成分である。
【0069】
第一成分の好ましい割合は、誘電率異方性を上げるために約5質量%以上であり、下限温度を下げるために約90質量%以下である。さらに好ましい割合は約10質量%から約85質量%の範囲である。特に好ましい割合は約20質量%から約80質量%の範囲である。
【0070】
第二成分の好ましい割合は、上限温度を上げる、または下限温度を下げるために約5質量%以上であり、誘電率異方性を上げるために約90質量%以下である。さらに好ましい割合は約10質量%から約85質量%の範囲である。特に好ましい割合は約20質量%から約80質量%の範囲である。
【0071】
第三成分の好ましい割合は、液晶分子の短軸方向における誘電率を上げるために約3質量%以上であり、下限温度を下げるために約25質量%以下である。さらに好ましい割合は約5質量%から約20質量%の範囲である。特に好ましい割合は約5質量%から約15質量%の範囲である。
【0072】
第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。式(1)、式(2)、および式(3)において、R1は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR1は、光や熱に対する安定性を上げるために、炭素数1から12のアルキルである。R2およびR3は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR2またはR3は、上限温度を上げる、または下限温度を下げるために炭素数2から12のアルケニルであり、光や熱に対する安定性を上げるために炭素数1から12のアルキルである。R4およびR5は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシである。好ましいR4またはR5は、光や熱に対する安定性を上げるために炭素数1から12のアルキルであり、液晶分子の短軸方向における誘電率を上げるために炭素数1から12のアルコキシである。
【0073】
好ましいアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルである。さらに好ましいアルキルは、下限温度を下げるためにメチル、エチル、プロピル、ブチル、またはペンチルである。
【0074】
好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシである。さらに好ましいアルコキシは、下限温度を下げるためにメトキシまたはエトキシである。
【0075】
好ましいアルケニルは、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、または5-ヘキセニルである。さらに好ましいアルケニルは、下限温度を下げるために、ビニル、1-プロペニル、3-ブテニル、または3-ペンテニルである。これらのアルケニルにおける-CH=CH-の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。下限温度を下げるためなどから1-プロペニル、1-ブテニル、1-ペンテニル、1-ヘキセニル、3-ペンテニル、3-ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランスが好ましい。2-ブテニル、2-ペンテニル、2-ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシスが好ましい。
【0076】
好ましいアルケニルオキシは、ビニルオキシ、アリルオキシ、3-ブテニルオキシ、3-ペンテニルオキシ、または4-ペンテニルオキシである。さらに好ましいアルケニルオキシは、下限温度を下げるために、アリルオキシまたは3-ブテニルオキシである。
【0077】
少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたアルキルの好ましい例は、フルオロメチル、2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、4-フルオロブチル、5-フルオロペンチル、6-フルオロヘキシル、7-フルオロヘプチル、または8-フルオロオクチルである。さらに好ましい例は、誘電率異方性を上げるために2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、4-フルオロブチル、または5-フルオロペンチルである。
【0078】
少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたアルケニルの好ましい例は、2,2-ジフルオロビニル、3,3-ジフルオロ-2-プロペニル、4,4-ジフルオロ-3-ブテニル、5,5-ジフルオロ-4-ペンテニル、または6,6-ジフルオロ-5-ヘキセニルである。さらに好ましい例は、下限温度を下げるために2,2-ジフルオロビニルまたは4,4-ジフルオロ-3-ブテニルである。
【0079】
環Aは、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、ピリミジン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、またはテトラヒドロピラン-2,5-ジイルである。好ましい環Aは、光学異方性を上げるために1,4-フェニレンまたは2-フルオロ-1,4-フェニレンである。1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。テトラヒドロピラン-2,5-ジイルは、
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
環Bおよび環Cは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンである。好ましい環Bまたは環Cは、上限温度を上げるために、または下限温度を下げるために1,4-シクロヘキシレンであり、下限温度を下げるために1,4-フェニレンである。
【0084】
環Dおよび環Fは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたナフタレン-2,6-ジイル、クロマン-2,6-ジイル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたクロマン-2,6-ジイルである。好ましい環Dまたは環Fは、下限温度を下げるために、または上限温度を上げるために、1,4-シクロヘキシレンであり、下限温度を下げるために1,4-フェニレンである。
【0085】
環Eは、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2-クロロ-3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-5-メチル-1,4-フェニレン、3,4,5-トリフルオロナフタレン-2,6-ジイル、または7,8-ジフルオロクロマン-2,6-ジイルである。好ましい環Eは、下限温度を下げるために2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり、光学異方性を下げるために2-クロロ-3-フルオロ-1,4-フェニレンであり、液晶分子の短軸方向における誘電率を上げるために7,8-ジフルオロクロマン-2,6-ジイルである。
【0086】
Z1は、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシである。好ましいZ1は、上限温度を上げるために単結合であり、誘電率異方性を上げるためにジフルオロメチレンオキシである。Z2は、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシである。好ましいZ2は、光や熱に対する安定性を上げるために単結合である。Z3およびZ4は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはメチレンオキシである。好ましいZ3またはZ4は下限温度を下げるために単結合であり、下限温度を下げるためにエチレンであり、液晶分子の短軸方向における誘電率を上げるためにメチレンオキシである。
【0087】
aは、1、2、3、または4である。好ましいaは、下限温度を下げるために2であり、誘電率異方性を上げるために3である。bは、1、2、または3である。好ましいbは、下限温度を下げるために1であり、上限温度を上げるために2または3である。
cは、1、2、または3であり;dは、0または1であり;cおよびdの和は3以下である。好ましいcは、下限温度を下げるために1であり、上限温度を上げるために2または3である。好ましいdは、下限温度を下げるために0であり、上限温度を上げるために1である。
【0088】
第五に、好ましい成分化合物を示す。好ましい化合物(1)は、項2に記載の化合物(1-1)から化合物(1-35)である。これらの化合物において、第一成分の少なくとも1つが、化合物(1-4)、化合物(1-12)、化合物(1-14)、化合物(1-15)、化合物(1-17)、化合物(1-18)、化合物(1-23)、化合物(1-27)、化合物(1-29)、または化合物(1-30)であることが好ましい。第一成分の少なくとも2つが、化合物(1-12)および化合物(1-15)、化合物(1-14)および化合物(1-27)、化合物(1-18)および化合物(1-24)、化合物(1-18)および化合物(1-29)、化合物(1-24)および化合物(1-29)、または化合物(1-29)および化合物(1-30)の組み合わせであることが好ましい。
【0089】
好ましい化合物(2)は、項5に記載の化合物(2-1)から化合物(2-13)である。これらの化合物において、第二成分の少なくとも1つが、化合物(2-1)、化合物(2-3)、化合物(2-5)、化合物(2-6)、化合物(2-8)、または化合物(2-9)であることが好ましい。第二成分の少なくとも2つが化合物(2-1)および化合物(2-5)、化合物(2-1)および化合物(2-6)、化合物(2-1)および化合物(2-8)、化合物(2-1)および化合物(2-9)、化合物(2-3)および化合物(2-5)、化合物(2-3)および化合物(2-6)、化合物(2-3)および化合物(2-8)、または化合物(2-3)および化合物(2-9)の組み合わせであることが好ましい。
【0090】
好ましい化合物(3)は、項8に記載の化合物(3-1)から化合物(3-22)である。これらの化合物において、第三成分の少なくとも1つが、化合物(3-1)、化合物(3-2)、化合物(3-3)、化合物(3-4)、化合物(3-6)、化合物(3-7)、化合物(3-8)、または化合物(3-10)であることが好ましい。第三成分の少なくとも2つが、化合物(3-1)および化合物(3-6)、化合物(3-1)および化合物(3-10)、化合物(3-3)および化合物(3-6)、化合物(3-3)および化合物(3-10)、化合物(3-4)および化合物(3-6)、または化合物(3-4)および化合物(3-10)の組み合わせであることが好ましい。
【0091】
第六に、組成物に添加してもよい添加物を説明する。このような添加物は、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物などである。液晶分子のらせん構造を誘起してねじれ角を与える目的で光学活性化合物が組成物に添加される。このような化合物の例は、化合物(4-1)から化合物(4-5)である。光学活性化合物の好ましい割合は約5質量%以下である。さらに好ましい割合は約0.01質量%から約2質量%の範囲である。
【0092】
【0093】
大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するために、または素子を長時間使用したあと、室温だけではなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するために、酸化防止剤が組成物に添加される。酸化防止剤の好ましい例は、nが1から9の整数である化合物(5)などである。
【0094】
【0095】
化合物(5)において、好ましいnは、1、3、5、7、または9である。さらに好ましいnは7である。nが7である化合物(5)は、揮発性が小さいので、素子を長時間使用したあと、室温だけではなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するのに有効である。酸化防止剤の好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように約600ppm以下である。さらに好ましい割合は、約100ppmから約300ppmの範囲である。
【0096】
紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた好ましい。これらの吸収剤や安定剤における好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないために約10000ppm以下である。さらに好ましい割合は約100ppmから約10000ppmの範囲である。
【0097】
GH(guest host)モードの素子に適合させるために、アゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に添加される。色素の好ましい割合は、約0.01質量%から約10質量%の範囲である。泡立ちを防ぐために、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどの消泡剤が組成物に添加される。消泡剤の好ましい割合は、その効果を得るために約1ppm以上であり、液晶分子の動作不良を防ぐために約1000ppm以下である。さらに好ましい割合は、約1ppmから約500ppmの範囲である。
【0098】
重合性化合物は紫外線照射によって重合する。光重合開始剤などの開始剤存在下で重合させてもよい。重合のための適切な条件や、開始剤の適切なタイプおよび量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。例えば光重合開始剤であるIrgacure651(登録商標;BASF)、Irgacure184(登録商標;BASF)、またはDarocur1173(登録商標;BASF)がラジカル重合に対して適切である。光重合開始剤の好ましい割合は、重合性化合物の質量に基づいて約0.1質量%から約5質量%の範囲である。さらに好ましい割合は約1質量%から約3質量%の範囲である。
【0099】
重合性化合物を保管するとき、重合を防止するために重合禁止剤を添加してもよい。重合性化合物は、通常は重合禁止剤を除去しないまま組成物に添加される。重合禁止剤の例は、ヒドロキノン、メチルヒドロキノンのようなヒドロキノン誘導体、4-t-ブチルカテコール、4-メトキシフェノール、フェノチアジンなどである。
【0100】
極性化合物は、極性を有する有機化合物である。ここでは、イオン結合を有する化合物は含まれない。酸素、硫黄、および窒素のような原子は、より電気的に陰性であり、部分的な負電荷をもつ傾向にある。炭素および水素は中性であるか、または部分的な正電荷をもつ傾向がある。極性は、化合物中の別種の原子間で部分電荷が均等に分布しないことから生じる。例えば、極性化合物は、-OH、-COOH、-SH、-NH2、>NH、>N-のような部分構造の少なくとも1つを有する。
【0101】
第七に、成分化合物の合成法を説明する。これらの化合物は既知の方法によって合成できる。合成法を例示する。化合物(1-2)および化合物(1-8)は、特開平2-233626号公報に記載された方法で合成する。化合物(2-1)は、特開昭59-176221号公報に記載された方法で合成する。化合物(3-1)は、特表平2-503441号公報に記載された方法で合成する。酸化防止剤は市販されている。式(5)のnが1である化合物は、アルドリッチ(Sigma-Aldrich Corporation)から入手できる。nが7である化合物(5)などは、米国特許3660505号明細書に記載された方法によって合成する。
【0102】
合成法を記載しなかった化合物は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載された方法によって合成できる。組成物は、このようにして得た化合物から公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。
【0103】
最後に、組成物の用途を説明する。この組成物は、液晶調光素子などに用いられる。この素子は、対向する一対の透明基板に挟持された液晶層を有する。この透明基板の一例は、ガラス板、石英板、アクリル板のような変形しにくい材質である。他の例は、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルムのような可撓性の透明プラスチックフィルムである。透明基板は、その上に透明電極を有する。透明電極の上に配向層を有してもよい。透明電極の例は、酸化インジウムスズ(tin-doped indium oxide、ITO)や導電性ポリマーである。配向層には、ポリイミドやポリビニルアルコールの薄膜が適している。液晶層は、第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そして正の誘電率異方性を有する液晶組成物で充填されている。
【0104】
他の例は、直線偏光板により挟持された調光用の液晶組成物を有する液晶調光素子でもある。この素子は調光材を有し、この調光材は、第1の液晶配向層用フィルム、液晶層、および第2の液晶配向層用フィルムの積層構造を有する。液晶配向層用フィルムは、透明プラスチックフィルム基板、透明電極、および配向層を有する。基板の例は、透明なポリカーボネートフィルムである。液晶層は、第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そして正の誘電率異方性を有する液晶組成物で充填される。
【0105】
他の例は、液晶層が対向する一対の透明基板により挟持され、透明基板がガラス板またはアクリル板であり、透明基板が透明電極を有し、そして配向層を有する、液晶調光素子である。他の例は、液晶層が対向する一対の透明基板により挟持され、透明基板が透明電極を有し、透明基板は配向層を有してもよく、透明基板の一方の裏側には反射板を有する、液晶調光素子である。
【0106】
このような素子は、調光フィルムや調光ガラスとしての機能を有する。素子がフィルム状である場合は、既存の窓へ張り付けるか、または一対のガラス板で挟むことによって合わせガラスにする。このような素子は、外壁に設置された窓や会議室と廊下との仕切りに使われる。すなわち、電子ブラインド、調光窓、スマートウィンドウなどの用途がある。さらに、光スイッチとしての機能を活かして、液晶シャッター、導光板などに利用できる。
【実施例】
【0107】
実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によっては制限されない。本発明は、実施例1の組成物と実施例2の組成物との混合物を含む。本発明は、実施例の組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。合成した化合物は、NMR分析などの方法によって同定した。化合物、組成物および素子の特性は、下記の方法によって測定した。
【0108】
NMR分析:測定には、ブルカーバイオスピン社製のDRX-500を用いた。1H-NMRの測定では、試料をCDCl3などの重水素化溶媒に溶解させ、測定は、室温で、500MHz、積算回数16回の条件で行った。テトラメチルシランを内部標準として用いた。19F-NMRの測定では、CFCl3を内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
【0109】
ガスクロマト分析:測定には島津製作所製のGC-14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2mL/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1質量%)に調製したあと、その1μLを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC-R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。
【0110】
試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリカラムCBP1-M50-025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。
【0111】
組成物に含有される液晶性化合物の割合は、次のような方法で算出してよい。液晶性化合物の混合物をガスクロマトグラフィー(FID)で分析する。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は液晶性化合物の割合に相当する。上に記載したキャピラリカラムを用いたときは、各々の液晶性化合物の補正係数を1とみなしてよい。したがって、液晶性化合物の割合(質量%)は、ピークの面積比から算出することができる。
【0112】
測定試料:組成物および素子の特性を測定するときは、組成物をそのまま試料として用いた。化合物の特性を測定するときは、この化合物(15質量%)を母液晶(85質量%)に混合することによって測定用の試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法によって化合物の特性値を算出した。(外挿値)={(試料の測定値)-0.85×(母液晶の測定値)}/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10質量%:90質量%、5質量%:95質量%、1質量%:99質量%の順に変更した。この外挿法によって化合物に関する上限温度、光学異方性、粘度、および誘電率異方性の値を求めた。
【0113】
下記の母液晶を用いた。成分化合物の割合は質量%で示した。
【0114】
【0115】
測定方法:特性の測定は下記の方法で行った。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(Japan Electronics and Information Technology Industries Association;JEITAという)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED-2521B)に記載された方法、またはこれを修飾した方法であった。測定に用いたTN素子には、薄膜トランジスター(TFT)を取り付けなかった。
【0116】
(1)ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0117】
(2)ネマチック相の下限温度(TC;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、-10℃、-20℃、-30℃、および-40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が-20℃ではネマチック相のままであり、-30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、TCを<-20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0118】
(3)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定には東京計器株式会社製のE型回転粘度計を用いた。
【0119】
(4)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s):測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995)に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。この素子に16Vから19.5Vの範囲で0.5V毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文中の40頁記載の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度を測定した素子を用い、下に記載した方法で求めた。
【0120】
(5)光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計によって行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n∥は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n∥-n⊥、の式から計算した。
【0121】
(6)誘電率異方性(Δε;25℃で測定):2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε∥)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε∥-ε⊥、の式から計算した。
【0122】
(7)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が0.45/Δn(μm)であり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(32Hz、矩形波)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧-透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧で表した。
【0123】
(8)電圧保持率(VHR-1;25℃で測定;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmであった。この素子は試料を注入したあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積であった。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率で表した。
【0124】
(9)電圧保持率(VHR-2;80℃で測定;%):25℃の代わりに、80℃で測定した以外は、上記と同じ手順で電圧保持率を測定した。得られた値をVHR-2で表した。
【0125】
(10)電圧保持率(VHR-3;25℃で測定;%):紫外線を照射したあと、電圧保持率を測定し、紫外線に対する安定性を評価した。測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そしてセルギャップは5μmであった。この素子に試料を注入し、光を20分間照射した。光源は超高圧水銀ランプUSH-500D(ウシオ電機製)であり、素子と光源の間隔は20cmであった。VHR-3の測定では、16.7ミリ秒のあいだ減衰する電圧を測定した。大きなVHR-3を有する組成物は紫外線に対して大きな安定性を有する。VHR-3は90%以上が好ましく、95%以上がさらに好ましい。
【0126】
(11)電圧保持率(VHR-4;25℃で測定;%):試料を注入したTN素子を80℃の恒温槽内で500時間加熱したあと、電圧保持率を測定し、熱に対する安定性を評価した。VHR-4の測定では、16.7ミリ秒のあいだ減衰する電圧を測定した。大きなVHR-4を有する組成物は熱に対して大きな安定性を有する。
【0127】
(12)応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5.0μmであり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に矩形波(60Hz、5V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。立ち上がり時間(τr:rise time;ミリ秒)は、透過率が90%から10%に変化するのに要した時間である。立ち下がり時間(τf:fall time;ミリ秒)は透過率が10%から90%に変化するのに要した時間である。応答時間は、このようにして求めた立ち上がり時間と立ち下がり時間との和で表した。
【0128】
(13)弾性定数(K;25℃で測定;pN):測定には横河・ヒューレットパッカード株式会社製のHP4284A型LCRメータを用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである水平配向素子に試料を入れた。この素子に0ボルトから20ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。測定した静電容量(C)と印加電圧(V)の値を「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.99)からK11およびK33の値を得た。次に同171頁にある式(3.18)に、先ほど求めたK11およびK33の値を用いてK22を算出した。弾性定数は、このようにして求めたK11、K22、およびK33の平均値で表した。
【0129】
(14)比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを入れた。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。 (式1)
【0130】
(15)らせんピッチ(P;室温で測定;μm):らせんピッチはくさび法にて測定した。「液晶便覧」、196頁(2000年発行、丸善)を参照。試料をくさび形セルに注入し、室温で2時間静置した後、ディスクリネーション線(disclination line)の間隔(d2-d1)を偏光顕微鏡(ニコン(株)、商品名MM40/60シリーズ)によって観察した。らせんピッチ(P)は、くさびセルの角度をθと表した次の式から算出した。P=2×(d2-d1)×tanθ。
【0131】
(16)短軸方向における誘電率(ε⊥;25℃で測定):2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
【0132】
(17)配向安定性(液晶配向軸安定性):FFS素子の電極側における液晶配向軸の変化を評価した。ストレス印加前の電極側の液晶配向角度φ(before)を測定し、その後、素子に矩形波4.5V、60Hzを20分間印加した後、1秒間ショートし、1秒後および5分後に再び電極側の液晶配向角度φ(after)を測定した。これらの値から、1秒後および5分後の液晶配向角度の変化Δφ(deg.)を次の式を用いて算出した。
Δφ(deg.)=φ(after)-φ(before) (式2)
これらの測定はJ. Hilfiker, B. Johs, C. Herzinger, J. F. Elman, E. Montbach, D. Bryant, and P. J. Bos, Thin Solid Films, 455-456, (2004) 596-600を参考に行った。Δφが小さいほうが液晶配向軸の変化率が小さく、液晶配向軸の安定性が良いといえる。
【0133】
(18)フリッカ率(25℃で測定;%):測定には横河電機(株)製のマルチメディアディスプレイテスタ3298Fを用いた。光源はLEDであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が3.5μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)の素子に試料を入れた。この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に電圧を印加し、素子を透過した光量が最大になる電圧を測定した。この電圧を素子に印加しながらセンサ部を素子に近づけ、表示されたフリッカ率を読み取った。
【0134】
(19)ヘイズ率(%):ヘイズ率の測定には、ヘーズメーターHZ-V3(スガ試験機株式会社製)などを使用することができる。
【0135】
組成物の実施例を以下に示す。成分化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号によって表した。表3において、1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。記号化された化合物の後にあるかっこ内の番号は化合物が属する化学式を表す。(-)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、添加物を含まない液晶組成物の質量に基づいた質量百分率(質量%)である。最後に、組成物の特性値をまとめた。
【0136】
【0137】
[実施例1]
5-HXB(F,F)-F (1-1) 3%
3-HHXB(F,F)-F (1-4) 5%
3-HGB(F,F)-F (1-6) 3%
3-HB(F)B(F,F)-F (1-9) 5%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (1-18) 4%
3-HHBB(F,F)-F (1-19) 5%
4-HHBB(F,F)-F (1-19) 4%
3-GBB(F)B(F,F)-F (1-22) 3%
4-GBB(F)B(F,F)-F (1-22) 3%
5-BB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)-F
(1-31) 3%
3-BB(2F,3F)XB(F,F)-F (1-32) 3%
3-HB-CL (1) 3%
3-HHB-OCF3 (1) 3%
3-HH2BB(F,F)-F (1) 3%
3-HHB(F,F)XB(F,F)-F (1) 3%
3-HBB(2F,3F)XB(F,F)-F (1) 4%
3-HH-V (2-1) 20%
3-HH-V1 (2-1) 7%
5-HB-O2 (2-2) 3%
3-HHEH-3 (2-4) 3%
3-HBB-2 (2-6) 7%
5-B(F)BB-3 (2-7) 3%
NI=92.7℃;Tc<-20℃;Δn=0.114;Δε=6.9;Vth=1.53V;η=24.8mPa・s.
【0138】
[実施例2]
5-HXB(F,F)-F (1-1) 4%
3-HHXB(F,F)-F (1-4) 5%
3-HB(F)B(F,F)-F (1-9) 3%
V-HB(F)B(F,F)-F (1-9) 3%
2-HHB(F)B(F,F)-F (1-20) 3%
3-HHB(F)B(F,F)-F (1-20) 5%
3-GBB(F)B(F,F)-F (1-22) 3%
4-GBB(F)B(F,F)-F (1-22) 3%
2-BB(F)B(F,F)XB(F)-F (1-28) 3%
3-BB(F)B(F,F)XB(F)-F (1-28) 3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F)-F (1-28) 3%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-29) 3%
5-HB-CL (1) 3%
3-dhB(F,F)B(F,F)XB(F)B(F,F)-F
(1) 3%
2-HH-5 (2-1) 6%
3-HH-V (2-1) 9%
3-HH-V1 (2-1) 5%
4-HH-V (2-1) 8%
4-HH-V1 (2-1) 6%
5-HB-O2 (2-2) 5%
3-HHEH-3 (2-4) 3%
4-HHEH-3 (2-4) 3%
V2-BB(F)B-1 (2-8) 3%
1O1-HBBH-3 (-) 5%
NI=94.0℃;Tc<-20℃;Δn=0.114;Δε=6.9;Vth=1.54V;η=23.5mPa・s.
【0139】
[実施例3]
3-HHEB(F,F)-F (1-3) 5%
3-HHXB(F,F)-F (1-4) 7%
5-HBEB(F,F)-F (1-10) 5%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (1-18) 10%
2-HHB(F)B(F,F)-F (1-20) 3%
5-HHB(F,F)XB(F,F)-F (1) 6%
3-HBB(2F,3F)XB(F,F)-F (1) 5%
2-HH-3 (2-1) 8%
3-HH-V (2-1) 20%
3-HH-V1 (2-1) 7%
4-HH-V (2-1) 6%
5-HB-O2 (2-2) 5%
V2-B2BB-1 (2-9) 3%
3-HHEBH-3 (2-11) 5%
3-HHEBH-5 (2-11) 5%
NI=90.3℃;Tc<-20℃;Δn=0.088;Δε=5.4;Vth=1.69V;η=13.7mPa・s.
【0140】
[実施例4]
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (1-18) 9%
3-HHBB(F,F)-F (1-19) 5%
4-HHBB(F,F)-F (1-19) 4%
3-HBBXB(F,F)-F (1-23) 3%
3-BB(F)B(F,F)XB(F)-F (1-28) 3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F)-F (1-28) 3%
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-29) 3%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-29) 3%
3-HHB(F,F)XB(F,F)-F (1) 3%
5-HHB(F,F)XB(F,F)-F (1) 3%
2-HH-3 (2-1) 5%
3-HH-5 (2-1) 5%
3-HH-V (2-1) 20%
3-HH-VFF (2-1) 5%
5-HB-O2 (2-2) 6%
3-HHB-1 (2-5) 3%
3-HHB-3 (2-5) 3%
V-HHB-1 (2-5) 6%
V-HBB-2 (2-6) 6%
3-HHEBH-4 (2-11) 2%
NI=94.5℃;Tc<-20℃;Δn=0.111;Δε=6.8;Vth=1.55V;η=16.6mPa・s.
【0141】
[実施例5]
3-HHXB(F,F)-F (1-4) 7%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (1-18) 5%
3-HHBB(F,F)-F (1-19) 6%
4-HHBB(F,F)-F (1-19) 5%
4-BB(F)B(F,F)XB(F)-F (1-28) 5%
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-29) 4%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-29) 4%
3-HHB-OCF3 (1) 5%
3-HH-V (2-1) 27%
3-HH-V1 (2-1) 4%
F3-HH-V (2-1) 10%
1V2-HH-3 (2-1) 5%
3-HHB-O1 (2-5) 2%
V-HHB-1 (2-5) 5%
2-BB(F)B-3 (2-8) 6%
NI=91.8℃;Tc<-20℃;Δn=0.107;Δε=5.4;Vth=1.71V;η=13.2mPa・s.
【0142】
[実施例6]
3-HGB(F,F)-F (1-6) 4%
5-GHB(F,F)-F (1-7) 3%
3-GB(F,F)XB(F,F)-F (1-14) 3%
3-HHBB(F,F)-F (1-19) 4%
4-HHBB(F,F)-F (1-19) 3%
2-HHB(F)B(F,F)-F (1-20) 4%
3-GBB(F)B(F,F)-F (1-22) 3%
4-GBB(F)B(F,F)-F (1-22) 4%
2-dhBB(F,F)XB(F,F)-F (1-25) 3%
7-HB(F,F)-F (1) 3%
3-HGB(F,F)XB(F,F)-F (1) 3%
3-dhB(F,F)B(F,F)XB(F)B(F,F)-F
(1) 3%
2-HH-3 (2-1) 10%
2-HH-5 (2-1) 3%
3-HH-V (2-1) 26%
1V2-HH-3 (2-1) 4%
1V2-BB-1 (2-3) 3%
3-HB(F)HH-2 (2-10) 4%
5-HBB(F)B-2 (2-13) 5%
3-BB(2F,5F)B-3 (2) 5%
NI=91.5℃;Tc<-20℃;Δn=0.106;Δε=5.8;Vth=1.61V;η=21.1mPa・s.
【0143】
[実施例7]
3-HBB(F,F)-F (1-8) 4%
5-HBB(F,F)-F (1-8) 3%
3-BB(F)B(F,F)-F (1-15) 4%
2-dhBB(F,F)XB(F,F)-F (1-25) 3%
2-BB(F)B(F,F)XB(F)-F (1-28) 5%
4-BB(F)B(F,F)XB(F)-F (1-28) 3%
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-29) 3%
3-BB(F,F)XB(F)B(F,F)-F
(1-30) 3%
5-BB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)-F
(1-31) 3%
3-HH2BB(F,F)-F (1) 3%
4-HH2BB(F,F)-F (1) 3%
3-HGB(F,F)XB(F,F)-F (1) 3%
3-HBB(2F,3F)XB(F,F)-F (1) 3%
2-HH-5 (2-1) 5%
3-HH-V (2-1) 23%
3-HH-V1 (2-1) 3%
4-HH-V1 (2-1) 4%
5-HB-O2 (2-2) 3%
7-HB-1 (2-2) 3%
VFF-HHB-1 (2-5) 3%
VFF-HHB-O1 (2-5) 8%
5-HBB(F)B-2 (2-13) 5%
NI=94.3℃;Tc<-20℃;Δn=0.122;Δε=7.7;Vth=1.45V;η=23.0mPa・s.
【0144】
[実施例8]
3-HHB(F,F)-F (1-2) 8%
3-GB(F)B(F,F)-F (1-12) 3%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (1-18) 8%
3-HHBB(F,F)-F (1-19) 5%
3-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-27) 5%
5-GB(F,F)XB(F)B(F,F)-F
(1) 3%
3-HH-V (2-1) 25%
3-HH-V1 (2-1) 8%
3-HH-VFF (2-1) 6%
1V2-HH-3 (2-1) 8%
V2-BB-1 (2-3) 2%
3-HHB-3 (2-5) 4%
V-HHB-1 (2-5) 5%
5-HB(F)BH-3 (2-12) 5%
5-HBBH-3 (2) 5%
NI=92.4℃;Tc<-20℃;Δn=0.096;Δε=4.6;Vth=1.80V;η=16.2mPa・s.
【0145】
[実施例9]
3-HHEB(F,F)-F (1-3) 6%
3-HBEB(F,F)-F (1-10) 3%
5-HBEB(F,F)-F (1-10) 3%
3-BB(F)B(F,F)-F (1-15) 3%
4-HHBB(F,F)-F (1-19) 5%
3-HHB(F)B(F,F)-F (1-20) 3%
3-GBB(F)B(F,F)-F (1-22) 3%
3-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-27) 4%
4-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-27) 3%
5-HB-CL (1) 4%
3-HHB-OCF3 (1) 5%
5-HEB(F,F)-F (1) 3%
3-HHB(F,F)XB(F,F)-F (1) 3%
5-HHB(F,F)XB(F,F)-F (1) 3%
3-HGB(F,F)XB(F,F)-F (1) 3%
2-HH-5 (2-1) 3%
3-HH-5 (2-1) 4%
3-HH-V (2-1) 20%
4-HH-V (2-1) 4%
1V2-HH-3 (2-1) 3%
3-HHEH-3 (2-4) 5%
5-B(F)BB-2 (2-7) 5%
5-B(F)BB-3 (2-7) 2%
NI=91.2℃;Tc<-20℃;Δn=0.104;Δε=6.8;Vth=1.54V;η=23.0mPa・s.
【0146】
[実施例10]
3-HHXB(F,F)-F (1-4) 7%
5-HBB(F,F)-F (1-8) 3%
3-BB(F)B(F,F)-F (1-15) 4%
3-BB(F)B(F,F)-CF3 (1-16) 4%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (1-18) 3%
3-GBB(F)B(F,F)-F (1-22) 3%
4-GBB(F)B(F,F)-F (1-22) 4%
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-29) 4%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-29) 3%
3-HH-V (2-1) 22%
3-HH-V1 (2-1) 6%
5-HB-O2 (2-2) 9%
7-HB-1 (2-2) 4%
V2-BB-1 (2-3) 3%
3-HHB-1 (2-5) 4%
V-HHB-1 (2-5) 3%
1V-HBB-2 (2-6) 5%
5-HB(F)BH-3 (2-12) 3%
5-HBB(F)B-2 (2-13) 6%
NI=91.1℃;Tc<-20℃;Δn=0.126;Δε=6.3;Vth=1.60V;η=17.4mPa・s.
【0147】
[実施例11]
3-HHEB(F,F)-F (1-3) 5%
5-HBEB(F,F)-F (1-10) 3%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (1-18) 10%
3-HHBB(F,F)-F (1-19) 3%
4-HHBB(F,F)-F (1-19) 3%
7-HB(F,F)-F (1) 4%
3-dhB(F,F)B(F,F)XB(F)B(F,F)-F
(1) 5%
2-HH-5 (2-1) 5%
3-HH-V (2-1) 25%
3-HH-V1 (2-1) 3%
3-HH-VFF (2-1) 8%
3-HHB-1 (2-5) 5%
3-HHB-3 (2-5) 5%
3-HHB-O1 (2-5) 4%
3-HHEBH-3 (2-11) 3%
3-HHEBH-4 (2-11) 3%
3-HHEBH-5 (2-11) 3%
3-BB(2F,5F)B-3 (2) 3%
NI=97.7℃;Tc<-20℃;Δn=0.092;Δε=4.7;Vth=1.77V;η=14.4mPa・s.
【0148】
[実施例12]
3-HBB(F,F)-F (1-8) 3%
5-HBB(F,F)-F (1-8) 3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F)-F (1-28) 5%
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-29) 3%
3-BB(F,F)XB(F)B(F,F)-F
(1-30) 3%
5-BB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)-F
(1-31) 4%
3-HH2BB(F,F)-F (1) 3%
4-HH2BB(F,F)-F (1) 4%
2-HH-5 (2-1) 8%
3-HH-V (2-1) 27%
4-HH-V1 (2-1) 6%
5-HB-O2 (2-2) 2%
7-HB-1 (2-2) 3%
3-HHB-1 (2-5) 3%
VFF-HHB-1 (2-5) 3%
VFF-HHB-O1 (2-5) 8%
V-HBB-2 (2-6) 5%
2-BB(2F,3F)B-3 (3-9) 4%
3-HBB(2F,3F)-O2 (3-10) 3%
NI=92.7℃;Tc<-20℃;Δn=0.114;Δε=4.3;Vth=1.80V;η=13.8mPa・s.
【0149】
[実施例13]
3-HHEB(F,F)-F (1-3) 4%
3-HBEB(F,F)-F (1-10) 3%
5-HBEB(F,F)-F (1-10) 3%
3-BB(F)B(F,F)-F (1-15) 3%
3-HHBB(F,F)-F (1-19) 4%
4-HHBB(F,F)-F (1-19) 5%
3-HBBXB(F,F)-F (1-23) 6%
3-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-27) 4%
4-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F
(1-27) 4%
5-HB-CL (1) 2%
3-HHB-OCF3 (1) 4%
5-HEB(F,F)-F (1) 3%
5-HHB(F,F)XB(F,F)-F (1) 4%
3-HGB(F,F)XB(F,F)-F (1) 5%
3-HH-5 (2-1) 3%
3-HH-V (2-1) 15%
3-HH-V1 (2-1) 3%
4-HH-V (2-1) 3%
F3-HH-V (2-1) 3%
1V2-HH-3 (2-1) 3%
5-B(F)BB-2 (2-7) 5%
5-B(F)BB-3 (2-7) 2%
3-HB(2F,3F)-O2 (3-1) 3%
3-BB(2F,3F)-O2 (3-4) 2%
3-HHB(2F,3F)-O2 (3-6) 4%
NI=90.9℃;Tc<-20℃;Δn=0.112;Δε=7.5;Vth=1.48V;η=25.5mPa・s.
【0150】
[実施例14]
2-HHB(F,F)-F (1-2) 6%
3-HHB(F,F)-F (1-2) 6%
3-HBB(F,F)-F (1-8) 18%
2-HHBB(F,F)-F (1-19) 4%
3-HHBB(F,F)-F (1-19) 4%
4-HHBB(F,F)-F (1-19) 3%
5-HHBB(F,F)-F (1-19) 2%
3-HHB-F (1) 4%
2-HHB(F)-F (1) 6%
3-HHB(F)-F (1) 7%
5-HHB(F)-F (1) 6%
3-HH-4 (2-1) 10%
3-HB-O2 (2-2) 8%
5-HB-O2 (2-2) 8%
3-HHB-1 (2-5) 5%
3-HHB-O1 (2-5) 3%
NI=101.9℃;Tc<-40℃;Δn=0.098;Δε=5.2;Vth=1.85V;η=21.7mPa・s.
【0151】
[実施例15]
2-HHB(F,F)-F (1-2) 7%
3-HHB(F,F)-F (1-2) 7%
3-HBB(F,F)-F (1-8) 4%
2-HHBB(F,F)-F (1-19) 4%
3-HHBB(F,F)-F (1-19) 4%
4-HHBB(F,F)-F (1-19) 4%
5-HHBB(F,F)-F (1-19) 4%
3-HHB-F (1) 4%
2-HHB(F)-F (1) 6%
3-HHB(F)-F (1) 7%
5-HHB(F)-F (1) 6%
3-H2HB(F,F)-F (1) 7%
5-H2HB(F,F)-F (1) 7%
5-HB-O2 (2-2) 7%
7-HB-1 (2-2) 15%
3-HHB-1 (2-5) 4%
3-HHB-O1 (2-5) 3%
NI=98.8℃;Tc<-40℃;Δn=0.088;Δε=5.0;Vth=1.83V;η=24.7mPa・s.
【0152】
[実施例16]
実施例15に記載の組成物に、下記の光学活性化合物(4-5)を0.2質量%の割合で添加した。
【0153】
【0154】
液晶調光素子の作製
直線偏光板により挟持された調光材を有する液晶調光素子を作成する。調光材は、第1のポリカーボネートフィルム、液晶層、第2のポリカーボネートフィルムの積層構造を有する。第1および第2のポリカーボネートフィルムは透明であり、透明電極および配向層をフィルム上に有する。液晶層は、第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そして正の誘電率異方性を有する液晶組成物で充填される。
【0155】
液晶組成物や液晶表示素子の特性を測定するときは、通常はガラス基板の素子を用いる。液晶調光素子では、プラスチックフィルムを基板として用いることもある。そこで、基板がポリカーボネートである素子を作成し、しきい値電圧、応答時間のような特性を測定した。測定値をガラス基板の素子と比較した。その結果、二種類の測定値は、ほぼ同一であった。したがって、液晶組成物や液晶調光素子の特性を測定するときは、基板がガラスであっても、基板がポリカーボネートであるとみなすことができる。ここでは、しきい値電圧、応答時間のような特性は、ガラス基板の素子で測定を記載した。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明の調光用液晶組成物を含有する液晶調光素子は、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、長い寿命のような特性を有するので、調光窓、スマートウィンドウなどに用いることができる。