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特許7077956有機電界発光素子形成用組成物、有機電界発光素子及び有機膜の製造方法
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  • 特許-有機電界発光素子形成用組成物、有機電界発光素子及び有機膜の製造方法 図1
  • 特許-有機電界発光素子形成用組成物、有機電界発光素子及び有機膜の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】有機電界発光素子形成用組成物、有機電界発光素子及び有機膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20220524BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220524BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20220524BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
H05B33/22 B
H05B33/14 A
H05B33/10
H05B33/22 Z
H05B33/12 B
H05B33/22 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018556681
(86)(22)【出願日】2017-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2017044524
(87)【国際公開番号】W WO2018110535
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2016240539
(32)【優先日】2016-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】坂東 祥匡
(72)【発明者】
【氏名】山平 瑞喜
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/104183(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/186688(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
H05B 33/10
H05B 33/22
H05B 33/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも電荷注入輸送材料、有機溶媒、1種以上の第1表面改質剤、及び1種以上の第2表面改質剤を含有する有機電界発光素子形成用組成物であって、
前記有機溶媒の室温における表面張力(単位:mN/m)をSaとし、前記有機溶媒100重量部に対する前記1種以上の第1表面改質剤の合計の含有量をC1重量部とし、前記有機溶媒100重量部に対する前記1種以上の第2表面改質剤の合計の含有量をC2重量部とし、
各前記第1表面改質剤は、前記有機溶媒の100重量部に前記第1表面改質剤の0.01重量部を溶解させた混合物の室温における表面張力(単位:mN/m)をS1yとすると、下記式(1)を満たす表面改質剤であり、
Sa-S1y>1.0 ・・・(1)
各前記第2表面改質剤は、前記有機溶媒の100重量部に前記第2表面改質剤の0.01重量部を溶解させた混合物の室温における表面張力(単位:mN/m)をS2yとすると、下記式(2)を満たす表面改質剤であり、
Sa-S2y≦1.0 ・・・(2)
前記有機溶媒の100重量部と前記第1表面改質剤の前記C1重量部との混合物の室温における表面張力(単位:mN/m)をS1xとすると、下記式(3)を満たし、
Sa-S1x>1.0 ・・・(3)
前記有機溶媒の100重量部と前記第2表面改質剤の前記C2重量部との混合物の室温における表面張力(単位:mN/m)をS2xとすると、下記式(4)を満たす、
Sa-S2x<1.0 ・・・(4)
有機電界発光素子形成用組成物。
【請求項2】
前記C1が0.001~1である、請求項1に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
【請求項3】
前記C2が0.001~1である、請求項1又は2に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
【請求項4】
前記第1表面改質剤が、シリコン及び/又はフッ素を含有する材料である、請求項1~3のいずれか一項に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
【請求項5】
前記第2表面改質剤が、界面活性剤である、請求項1~4のいずれか一項に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤が、エーテル型、エステル型、及びエーテル・エステル型からなる群より選ばれるノニオン性界面活性剤である、請求項5に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
【請求項7】
少なくとも電荷注入輸送材料、有機溶媒、第5表面改質剤、及び第6表面改質剤を含有する有機電界発光素子形成用組成物であって、
純水の室温における表面張力(単位:mN/m)をSa’とし、純水の100重量部と前記第5表面改質剤の0.1重量部との混合物の室温における表面張力(単位:mN/m)をS1zとし、純水の100重量部と前記第6表面改質剤の0.1重量部との混合物の室温における表面張力(単位:mN/m)をS2zとすると、下記式(5)を満たす、
Sa’>S1z>S2z ・・・(5)
有機電界発光素子形成用組成物。
【請求項8】
前記有機溶媒100重量部に対する、前記第5表面改質剤の含有量が0.001~1重量部である、請求項7に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
【請求項9】
前記有機溶媒100重量部に対する、前記第6表面改質剤の含有量が0.001~1重量部である、請求項7又は8に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
【請求項10】
前記第5表面改質剤が、シリコン及び/又はフッ素を含有する材料である、請求項7~9のいずれか一項に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
【請求項11】
前記第6表面改質剤が、界面活性剤である、請求項7~10のいずれか一項に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
【請求項12】
前記界面活性剤が、エーテル型、エステル型、及びエーテル・エステル型からなる群より選ばれるノニオン性界面活性剤である、請求項11に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の有機電界発光素子形成用組成物を乾燥させてなる有機膜を含む、有機電界発光素子。
【請求項14】
隔壁で区画された領域への請求項1~12のいずれか一項に記載の有機電界発光素子形成用組成物の塗布、及び塗布された前記有機電界発光素子形成用組成物の乾燥を含む、有機膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子形成用組成物、有機電界発光素子及び有機膜の製造方法に関する。
2016年12月12日に日本国特許庁に出願された特願2016-240539の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容、並びに、本明細書で引用された文献等に開示された内容の一部又は全部をここに引用し、本明細書の開示内容として取り入れる。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子の製造方法としては、有機材料を真空蒸着法により成膜し、積層する製造方法が一般的であるが、近年、より材料使用効率に優れた製造方法として、溶液化した有機材料をインクジェット法等により成膜し、積層する湿式成膜による製造方法の研究が盛んになってきている。
湿式成膜による有機電界発光素子、特に有機ELディスプレイの製造においては、各画素をバンクと呼ばれる隔壁で区画し、バンク内の微小な領域に、有機電界発光素子を構成する有機膜を形成するための有機電界発光素子形成用組成物である塗布液をインクジェット法にて吐出し、成膜する方法を用いることが検討されている。この際、塗布液に種々の表面改質剤を混合することにより、バンクで囲まれた領域内において、より平坦な膜を得る技術が提案されている(特許文献1及び2)。
【0003】
特許文献1においては、均一な成膜を行うために、発光層形成用組成物に特定の高分子化合物を含有させることが記載されている。特定の高分子化合物の一例としてはポリシロキサンが挙げられており、インクジェット法にてバンク内に成膜し、均一な膜が形成されることが開示されている。
特許文献2においては、発光層形成用塗液に、特定量のレベリング剤、特にシリコン系化合物若しくはフッ素系化合物からなるレベリング剤を含有することによって、隔壁に囲まれた領域において平坦な膜が得られることが開示されている。
【0004】
しかしながら、これらの方法では、いまだ十分な平坦性が得られているとは言い難いのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2010/104183号
【文献】特開2002-056980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、有機電界発光素子を構成する有機膜を湿式成膜により形成する場合において、有機膜のバンクに囲まれた領域内における膜厚の均一性を改善可能な有機電界発光素子形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、有機電界発光素子を構成する有機膜を湿式成膜により形成する場合において、同一の溶媒に溶解したときに互いに表面張力の異なる2種類の表面改質剤を含有する有機電界発光素子形成用組成物を用いると、均一性に優れた有機膜を実現可能であることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の構成を有する。
【0008】
[1]少なくとも電荷注入輸送材料、有機溶媒、1種以上の第1表面改質剤、及び1種以上の第2表面改質剤を含有する有機電界発光素子形成用組成物であって、
前記有機溶媒の表面張力(単位:mN/m)をSaとし、前記有機溶媒100重量部に対する前記1種以上の第1表面改質剤の合計の含有量をC1重量部とし、前記有機溶媒100重量部に対する前記1種以上の第2表面改質剤の合計の含有量をC2重量部とし、
各前記第1表面改質剤は、前記有機溶媒の100重量部に前記第1表面改質剤の0.01重量部を溶解させた混合物の表面張力(単位:mN/m)をS1yとすると、下記式(1)を満たす表面改質剤であり、
Sa-S1y>1.0 ・・・(1)
各前記第2表面改質剤は、前記有機溶媒の100重量部に前記第2表面改質剤の0.01重量部を溶解させた混合物の表面張力(単位:mN/m)をS2yとすると、下記式(2)を満たす表面改質剤であり、
Sa-S2y≦1.0 ・・・(2)
前記有機溶媒の100重量部と前記第1表面改質剤の前記C1重量部との混合物の表面張力(単位:mN/m)をS1xとすると、下記式(3)を満たし、
Sa-S1x>1.0 ・・・(3)
前記有機溶媒の100重量部と前記第2表面改質剤の前記C2重量部との混合物の表面張力(単位:mN/m)をS2xとすると、下記式(4)を満たす、
Sa-S2x<1.0 ・・・(4)
有機電界発光素子形成用組成物。
[2]前記C1が0.001~1である、[1]に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
[3]前記C2が0.001~1である、[1]又は[2]に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
[4]前記第1表面改質剤が、シリコン及び/又はフッ素を含有する材料である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
[5]前記第2表面改質剤が、界面活性剤である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
[6]前記界面活性剤が、エーテル型、エステル型、及びエーテル・エステル型からなる群より選ばれるノニオン性界面活性剤である、[5]に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
【0009】
[7]少なくとも電荷注入輸送材料、有機溶媒、第5表面改質剤、及び第6表面改質剤を含有する有機電界発光素子形成用組成物であって、
純水の表面張力(単位:mN/m)をSa’とし、純水の100重量部と前記第5表面改質剤の0.1重量部との混合物の表面張力(単位:mN/m)をS1zとし、純水の100重量部と前記第6表面改質剤の0.1重量部との混合物の表面張力(単位:mN/m)をS2zとすると、下記式(5)を満たす、
Sa’>S1z>S2z ・・・(5)
有機電界発光素子形成用組成物。
[8]前記有機溶媒100重量部に対する、前記第5表面改質剤の含有量が0.001~1重量部である、[7]に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
[9]前記有機溶媒100重量部に対する、前記第6表面改質剤の含有量が0.001~1重量部である、[7]又は[8]に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
[10]前記第5表面改質剤が、シリコン及び/又はフッ素を含有する材料である、[7]~[9]のいずれか一項に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
[11]前記第6表面改質剤が、界面活性剤である、[7]~[10]のいずれか一項に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
[12]前記界面活性剤が、エーテル型、エステル型、及びエーテル・エステル型からなる群より選ばれるノニオン性界面活性剤である、[11]に記載の有機電界発光素子形成用組成物。
【0010】
[13][1]~[12]のいずれか一項に記載の有機電界発光素子形成用組成物を乾燥させてなる有機膜を含む、有機電界発光素子。
[14]隔壁で区画された領域への[1]~[12]のいずれか一項に記載の有機電界発光素子形成用組成物の塗布、及び塗布された前記有機電界発光素子形成用組成物の乾燥を含む、有機膜の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る有機電界発光素子形成用組成物によれば、バンクに囲まれた領域内における有機膜の膜厚の均一性を良好にすることができ、有機電界発光素子の特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の有機電界発光素子の実施の形態の一例を示す模式的な断面図である。
図2図2は、実施例における隔壁内への有機膜の形成の様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の有機電界発光素子形成用組成物の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。また、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。
また、特に断らない限り、本発明における含有量や濃度は、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる有機溶媒の量を基準値としたときの含有量や濃度を表している。例えば、100重量ppmの含有量の物質、と言った場合には、有機溶媒100重量部に対して0.01重量部の物質が含有されていることを意味する。
また、特に断らない限り、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「A~B」は、A以上B以下であることを意味する。
【0014】
[有機電界発光素子形成用組成物]
本発明の有機電界発光素子形成用組成物は、電荷注入輸送材料、有機溶媒、及び少なくとも2種の表面改質剤を含有する。
【0015】
本発明の有機電界発光素子形成用組成物の第1の態様は、少なくとも電荷注入輸送材料、有機溶媒、第1表面改質剤、及び第2表面改質剤を含有する有機電界発光素子形成用組成物であって、
該有機溶媒単独の表面張力をSa(mN/m)とすると、
第1表面改質剤は、該有機溶媒に該第1表面改質剤1種を100重量ppm溶解させたときの表面張力(S1y)がSa-S1y>1.0(以下、「式(1)」と言うこともある。)となるものを表し、
第2表面改質剤は、該有機溶媒に該第2表面改質剤1種を100重量ppm溶解させたときの表面張力(S2y)がSa-S2y≦1.0(以下、「式(2)」と言うこともある。)となるものを表し、
全ての第1表面改質剤のみを該有機電界発光素子形成用組成物における濃度と同濃度(重量%)で該有機溶媒に溶解させたときの表面張力をS1x(mN/m)、
全ての第2表面改質剤のみを該有機電界発光素子形成用組成物における濃度と同濃度(重量%)で該有機溶媒に溶解させたときの表面張力をS2x(mN/m)としたとき、
Sa-S1x>1.0(以下、「式(3)」と言うこともある。)、かつ、Sa-S2x<1.0(以下、「式(4)」と言うこともある。)
を満たすことを特徴とする。
【0016】
即ち、本発明の有機電界発光素子形成用組成物の第1の態様は、少なくとも電荷注入輸送材料、有機溶媒、1種以上の第1表面改質剤、及び1種以上の第2表面改質剤を含有する有機電界発光素子形成用組成物であって、
有機溶媒の表面張力(単位:mN/m)をSaとし、有機溶媒100重量部に対する第1表面改質剤の含有量(2種以上の第1表面改質剤を使用する場合には、それらの合計の含有量)をC1重量部とし、有機溶媒100重量部に対する第2表面改質剤の含有量(2種以上の第2表面改質剤を使用する場合には、それらの合計の含有量)をC2重量部とし、
各第1表面改質剤は、有機溶媒の100重量部に第1表面改質剤の0.01重量部を溶解させた混合物の表面張力(単位:mN/m)をS1yとすると、下記式(1)を満たす表面改質剤であり、
Sa-S1y>1.0 ・・・(1)
各第2表面改質剤は、有機溶媒の100重量部に第2表面改質剤の0.01重量部を溶解させた混合物の表面張力(単位:mN/m)をS2yとすると、下記式(2)を満たす表面改質剤であり、
Sa-S2y≦1.0 ・・・(2)
有機溶媒の100重量部と第1表面改質剤のC1重量部との混合物(即ち、有機溶媒中に、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる全ての第1表面改質剤のみを、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる量と同じ量で含有させた混合物。)の表面張力(単位:mN/m)をS1xとすると、下記式(3)を満たし、
Sa-S1x>1.0 ・・・(3)
有機溶媒の100重量部と第2表面改質剤のC2重量部との混合物(即ち、有機溶媒中に、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる全ての第2表面改質剤のみを、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる量と同じ量で含有させた混合物。)の表面張力(単位:mN/m)をS2xとすると、下記式(4)を満たすことを特徴とする。
Sa-S2x<1.0 ・・・(4)
【0017】
本発明の有機電界発光素子形成用組成物の第2の態様は、少なくとも電荷注入輸送材料、有機溶媒、第3表面改質剤、及び第4表面改質剤を含有する有機電界発光素子形成用組成物であって、該有機溶媒単独の表面張力をSa(mN/m)、該有機溶媒に該第3表面改質剤のみを100重量ppm溶解させたときの表面張力をS1y(mN/m)、該有機溶媒に該第4表面改質剤のみを100重量ppm溶解させたときの表面張力をS2y(mN/m)としたとき、
Sa-S1y>1.0、かつ、Sa-S2y≦1.0
を満たすことを特徴とする。
【0018】
本発明の有機電界発光素子形成用組成物の第3の態様は、少なくとも電荷注入輸送材料、有機溶媒、第5表面改質剤、及び第6表面改質剤を含有する有機電界発光素子形成用組成物であって、純水の表面張力をSa’(mN/m)、純水に第5表面改質剤のみを1000重量ppm溶解させたときの表面張力をS1z(mN/m)、純水に第6表面改質剤のみを1000重量ppm溶解させたときの表面張力をS2z(mN/m)としたとき、下記式(5)を満たすことを特徴とする。
Sa’>S1z>S2z ・・・(5)
【0019】
本発明の有機電界発光素子形成用組成物の第4の態様は、少なくとも電荷注入輸送材料、有機溶媒、第7表面改質剤、及び第8表面改質剤を含有する有機電界発光素子形成用組成物であって、該第7表面改質剤の分子量が1000以上であり、かつ、該第8表面改質剤の分子量が1000未満であることを特徴とする。
【0020】
<表面改質剤>
本発明における表面改質剤とは、液体の表面張力、又は固体の表面エネルギーを制御することのできる材料をいう。表面改質剤は、液体に少量添加することによって、該液体を塗布した後に液体表面、若しくは塗布して得られる固体表面に対して機能性を付与することができる。ここで付与される機能としては、撥液性、非粘着性、濡れ性、平滑性、分散性、消泡性等が挙げられる。
【0021】
表面改質剤として用いることのできる材料としては、液体表面に偏析しやすい材料が好ましく、具体的には、シリコンやフッ素を含有する材料(ポリマー、オリゴマー、低分子)、パラフィン又は界面活性剤等が挙げられる。
ここでいう界面活性剤とは、親水性を有する部分(基)と疎水性を有する部分(基)を有する両親媒性の化学構造をもつ物質であり、分散剤や起泡剤、消泡剤、乳化剤、食品添加物、保湿剤、帯電防止剤、濡れ性向上剤、滑剤、防錆剤等の幅広い用途に用いられている。このような界面活性剤は、親水性部分がカチオン性、アニオン性、両性のものと、ノニオン性のものに大別されるが、本発明においては、有機電界発光素子内での通電の妨げにならないように、ノニオン性の界面活性剤が好ましい。
【0022】
また、このような界面活性剤は、水と油への親和性の程度を表すHLB値によって分類されることもある。HLB値は0~20までの値をとり、0に近いほど親油性(疎水性)が高く、20に近いほど親水性が高くなることが知られている。本発明において、HLB値における限定は特にないが、有機溶媒への溶解性の観点から、好ましくは1.5以上であり、また、18以下である。
【0023】
以下に、本発明の表面改質剤として用いることのできる材料の具体例を示す。
シリコンを含有する材料としては、ポリシロキサン;ポリシロキサンを部分的にエーテル変性、エステル変性、アラルキル変性させた化合物;ポリシロキサンのメチル基をアルキル基置換した化合物;ポリシロキサンに反応基を付加させた反応性ポリシロキサン;等が挙げられる。
具体的には、信越化学社製KFシリーズとX-22シリーズ、KPシリーズ、ビックケミー社製BYKシリーズ、東レダウコーニング社製SHシリーズ、SFシリーズ、BYシリーズ、共栄社化学社製ポリフローKLシリーズ等が挙げられる。各社から提供しているカタログに記載の材料であれば、特に限定されることはないが、特に、有機溶媒への溶解性と耐熱性の観点から、KF-351A、KF―945、KF-96、KF-6015、KF-6017、KF-410、X22-821、FL-100、KF-414、KF―4917、X-22-7322、X-22-1877、KF-50、KF-6004、KF-889、KF-53、X-22-163、X-22-164、KP-124、KP―106、KP-623、KP-323、KP-327、KP-625、KP-341、KP-624、KP―310、KP-301、KP-105(信越化学社製)、BYK-361N、BYK-302、BYK-330、BYK-310、BYK-313、BYK-315N、BYK-370、BYK-322、BYK-323、BYK-065、BYK-323、BYK-3440、BYK-345、BYK-3560、BYK-306、BYK-333(ビックケミー社製)、SH-200、SH-3771、SH-3746、BY16―036、SH-28、SF―8428、3Additive、11Additive、29Additive、56Additive、8526Additive、501WAdditive、SF―8427、SF-8416、BY16-846、BY16-880、BY16-750、BY16-849、BY16-853、FZ-3785、SF-8411、BY16-870、BY16-869、SF-8417、BY16-205、SF-8413、BY16-880、SF-8421、SF-8416、SH-203、FS-1265、SH-510、SH-550、SH-710、SH-8410、FZ-77、FS-1265(東レダウコーニング社製)、ポリフローKL-400、ポリフローKL-401、ポリフローKL-402、ポリフローKL-403、ポリフローKL-404(共栄社化学社製)等が好ましい。
【0024】
フッ素を含有する材料としては、含フッ素基オリゴマー;パーフルオロアルキル基含有オリゴマー;UV反応基を有する上記オリゴマー;等が挙げられる。
具体的には、3M社製フロラードシリーズ、DIC社製メガファック(登録商標)Fシリーズ、メガファックRシリーズ、AGCセイミケミカル社製サーフロン(登録商標)Sシリーズ、ダイキン工業社製ユニダイン(登録商標)シリーズ、デムナム(登録商標)シリーズ、三菱マテリアル電子化成社製エフトップEFシリーズ、共栄社化学社製ポリフローシリーズ、トロイケミカル社製トロイゾルSシリーズ、OMNOVA社製PolyFoxシリーズ、DuPont社製Capstone(登録商標)等が挙げられる。各社から提供しているカタログに記載の材料であれば、特に限定されることはないが、特に、有機溶媒への溶解性の観点から、FC-4430、FC-4432(3M社製)、F-444、F―477、F-554、F-556、F-565、F-568、F-557、F-559、F-560、F-561、F-562、F-552、RS-75、RS-78、RS-56、F-410、F-510、F-553、F-430、F-555(DIC社製)、S-242、S-243、S-420、S-611、S-651、S-386、S-680、S-685(AGCセイミケミカル社製)、No.7、No.50、No.54、No.75、No.77、No.85、No.90、No.95、No.99(共栄社化学社製)、TG-5502、S-20、S-65、S-200(ダイキン工業社製)、EF-PP31、EF-PP33、EF-PP32、EF-L174(三菱マテリアル電子化成社製)、S-366(トロイケミカル社製)、PF-6320、PF-154、PF-159、PF-3320、PF-151、PF-652、PF-636(OMNOVA社製)、FS-22、FS-66、FS-83(DuPont社製)等が好ましい。
【0025】
パラフィンとは、炭化水素系化合物の一種で、炭素数が20以上のアルカン化合物のことである。パラフィンには固形のものと液体のものがあり、一般的に固形のものはパラフィンワックス、液体のものはパラフィンオイルと呼ばれている。本発明においては、有機溶媒への溶解性の観点からパラフィンオイルが好適と考えられる。
【0026】
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0027】
カチオン性界面活性剤としては、具体的には、アミン型、第4級アンモニウム塩型等が挙げられる。
【0028】
アミン型としては、ポリオキシエチレンアルキルアミンやアルキルアミン塩等の脂肪族アミン、アルキルイミダゾリンなどの複素環アミン塩などが挙げられる。
【0029】
第4級アンモニウム塩型としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩やジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩などが挙げられる。また、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドやジアルキルジメチルアンモニウムクロライドなどの塩素塩型や、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートなどの非塩素型などが挙げられる。
【0030】
これらの中でも、アミン型や第4級アンモニウム塩型の非塩素型のカチオン性界面活性剤が有機電界発光素子の性能を低下させる可能性のある元素を含んでおらず、非金属元素から構成されているという理由で好ましい。例えば、花王社製アセタミン(登録商標)シリーズ、サニゾール(登録商標)シリーズ、コータミン(登録商標)シリーズ(アセタミン24、アセタミン86、サニゾールB-50等)、第一工業製薬社製カチオーゲン(登録商標)シリーズ、シャロール(登録商標)シリーズ(カチオーゲンES-P、カチオーゲンDDM-PG等)、日華化学社製ニッカノン(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
【0031】
アニオン性界面活性剤としては、具体的には、硫酸エステル型、リン酸エステル型、カルボン酸型、スルホン酸型等が挙げられる。塩として、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属を含まず、非金属元素から構成されているアニオン性界面活性剤は、有機電界発光素子の性能を低下させる可能性のある元素を含んでいないという理由で好ましい。
【0032】
硫酸エステル型としては具体的に、アルキル硫酸エステル塩、エトキシ硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、長鎖アルコール硫酸エステル塩、その他の硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0033】
リン酸エステル型としては具体的に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(塩)などが挙げられる。
【0034】
カルボン酸型としては具体的に、脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩、アルケニルコハク酸塩、ポリアクリル酸塩、スチレン-マレイン酸コポリマーアンモニウム塩、カルボキシメチルセルロース塩などが挙げられる。
【0035】
スルホン酸型としては具体的に、スルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、フェノールスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物などが挙げられる。
【0036】
例えば、花王社製エマール(登録商標)シリーズ、ラテムル(登録商標)シリーズ、ネオペレックス(登録商標)シリーズ、ペレックス(登録商標)シリーズ、デモール(登録商標)シリーズ、ポイズ(登録商標)シリーズ、ホモゲノール(登録商標)シリーズ(エマール20C、ラテムルWX、ネオペレックスGS、ペレックスSS-L、デモールNL、ポイズ520等)、第一工業製薬社製モノゲン(登録商標)シリーズ、ハイテノール(登録商標)シリーズ、フライサーフシリーズ、ネオハイテノール(登録商標)シリーズ、カリセッケンシリーズ、ネオゲン(登録商標)シリーズ、ネオコール(登録商標)シリーズ(モノゲンY-100、ハイテノール227L、フライサーフA215C、ネオハイテノールLS、カリセッケンHY、ネオゲンS-20F、ネオコールP等)、日華化学社製サンレックシリーズ等が挙げられる。
【0037】
両性界面活性剤としては、具体的にはベタイン型、アミンオキサイド型、N-アルキルアミノ酸型、イミダゾリン型等が挙げられる。これらの中でも、ベタイン型やイミダゾリン型の非金属元素から構成されている両性界面活性剤が有機電界発光素子の性能を低下させる可能性のある元素を含んでいないという理由で好ましい。
【0038】
ベタイン型としては具体的に、アルキルベタイン、脂肪族アミドベタインなどのアミドベタインなどが挙げられる。
アミンオキサイド型としては具体的に、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
N-アルキルアミノ酸型としては、具体的にN-アルキル-β-アミノプロピオン酸塩などが挙げられる。
イミダゾリン型としては、具体的に2-アルキルイミダゾリン誘導体などが挙げられる。
【0039】
ノニオン性界面活性剤としては、具体的には、エーテル型、エステル型、エーテル・エステル型、多価アルコール型、アミド型、高分子型等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤は、電荷を有さない化合物であるため、有機電界発光素子中の電荷の流れを妨げることがない。また、有機電界発光素子の発光を消光してしまう可能性のある化合物も含んでいない。これらのことから、添加量に依存して有機電界発光素子の性能が変化しないため、界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0040】
エーテル型は、高級アルコールやアルキルフェノール等の水酸基と、一般的に酸化エチレンを付加させた骨格を有した化合物で、具体的にはポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンクミルフュエルエーテルなどが挙げられる。
【0041】
例えば、花王社製エマルゲン(登録商標)シリーズ(エマルゲン123P、エマルゲン130K、エマルゲン150、エマルゲン430、エマルゲン409PV、エマルゲン705、エマルゲン707、エマルゲン709、エマルゲンA-60、エマルゲンA-500等)や第一工業製薬社製ノイゲン(登録商標)シリーズ、アンチフロス(登録商標)シリーズ、エバンシリーズ、DKS-NLシリーズ(ノイゲンXL-40、ノイゲンXL-80、ノイゲンXL-1000、ノイゲンTDS-70、ノイゲンLF-80X、ノイゲンLF-202N、ノイゲンLP-100、ノイゲンSO-70、アンチフロスM-9、ノイゲンEA-167、ノイゲンEN、エバン410、エバン710、DKS-NL-15、ノイゲンET-128)、日本乳化剤社製ニューコール(登録商標)シリーズ(ニューコール2305、ニューコール2308、ニューコール2310、ニューコール2330、ニューコールNT-7、ニューコールNT-15、ニューコール1004、ニューコール1310、ニューコール1607、ニューコール2306Y、ニューコール2308Y、ニューコール703、ニューコール723、ニューコール610、ニューコール2607、ニューコール707F、ニューコールB13、ニューコールBNF6、ニューコールCMP6等)等が挙げられる。
【0042】
エステル型としては、ソルビトールやソルビタン、グリセリン、ショ糖等の多価アルコールと脂肪酸がエステル結合した骨格を有した化合物で、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖誘導体、脂肪酸エステル等が挙げられる。
例えば、花王社製レオドール(登録商標)シリーズ、レオドールスーパーシリーズ、エマゾール(登録商標)シリーズ、エキセル(登録商標)シリーズ(例;レオドールSP-L10、レオドールSP-P10、レオドールSP-S10V、レオドールSP-S20、レオドールSP-S30V、レオドールSP-O10V、レオドールSP-O30V、レオドールスーパーSP-L10、レオドールAO-10V、エマゾールL-10V、エマゾールO-10V、エマゾールO-120V、レオドールMS-50、レオドールMS-60、レオドールMO-60、レオドールMS-165V、エキセルS-95、エキセルO-95R、エキセル200等)や第一工業製薬社製DKS-NLシリーズ、ノイゲン(登録商標)ETシリーズ、ソルゲン(登録商標)シリーズ、DKエステルシリーズ、モノペット(登録商標)シリーズ(例;DKS-NL-70、DKS-NL-89、ノイゲンET―89、ノイゲンET-159、ソルゲン20V、ソルゲン40、DKエステルF160、DKエステルF90、DKエステルFA-10E、モノペットSB、モノペットSOA等)、日本乳化剤社製ニューコール(登録商標)シリーズ(例;ニューコール20、ニューコール60、ニューコール80、ニューコール25、ニューコール65、ニューコール85等)等が挙げられる。
【0043】
エーテル・エステル型は、ソルビトールやソルビタン、グリセリン、ショ糖等の多価アルコールと脂肪酸で構成されたエステルに、酸化エチレンを付加した骨格で、分子内にエステル結合とエーテル結合の両方を有している。具体的には、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテル、などが挙げられる。
【0044】
例えば、花王社製レオドール(登録商標)TWシリーズ、レオドールスーパーTWシリーズ、レオドール400シリーズ、エマノーン(登録商標)シリーズ、(例;レオドールTW-L120、レオドールTW-P120、レオドールTW-S120V、レオドールTW-O120V、レオドールTW-O320V、レオドールスーパーTW―L120、エマノーン3199V、エマノーン3299RV、エマノーン4110、エマノーンCH40等)や第一工業製薬社製ノイゲン(登録商標)HCシリーズ、ノイゲンDSシリーズ、ノイゲンGISシリーズ、ノイゲンESシリーズ、ソルゲン(登録商標)TWシリーズ(例;ノイゲンES-99D、ノイゲンES-129D、ノイゲンES-148D、ノイゲンES-168、ノイゲンDS-601、ソルゲンTW80V、ソルゲンTW20V、ノイゲンGIS-125、ノイゲンHC-400等)等が挙げられる。
【0045】
多価アルコール型としては、アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシドなどが挙げられる。例えば、第一工業製薬社製ノニオシドシリーズ(例;ノニオシドO-13)等が挙げられる。
【0046】
アミド型は、疎水基と親水基がアミド結合で結合した脂肪酸アルカノールアミドを有しており、具体的にはアルキルアルカノールアミド、オレフィン酸アミドなどが挙げられる。
例えば、花王社製アミート(登録商標)シリーズ、アミノーン(登録商標)シリーズ(例;アミート102、アミート105、アミート302、アミート320、アミノーンPK-02S等)、第一工業製薬社製アミラチンシリーズ、ダイヤノール(登録商標)シリーズ(例;ダイヤノールCDE、ダイヤノール300、アミラチンD、等)、日本乳化剤社製ニューコール(登録商標)シリーズ(例;ニューコールLA407、ニューコールOD420、ニューコールTA420等)等が挙げられる。
【0047】
高分子型としては、具体的に、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンポリアミンアルキレンオキシド付加物、ポリアルキレンポリイミンアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
例えば、第一工業製薬社製ピッツコール(登録商標)シリーズ、ディスコール(登録商標)シリーズ(例;ディスコールN508、ディスコールN518、ピッツコールK-30、ピッツコールK-40等)が挙げられる。
【0048】
[有機電界発光素子形成用組成物の第1の態様]
本態様は、少なくとも電荷注入輸送材料、有機溶媒、第1表面改質剤、及び第2表面改質剤を含有する有機電界発光素子形成用組成物であって、
該有機溶媒単独の表面張力をSa(mN/m)とすると、
全ての第1表面改質剤のみを該有機電界発光素子形成用組成物における濃度と同濃度(重量%)で該有機溶媒に溶解させたときの表面張力をS1x(mN/m)、
全ての第2表面改質剤のみを該有機電界発光素子形成用組成物における濃度と同濃度(重量%)で該有機溶媒に溶解させたときの表面張力をS2x(mN/m)としたとき、
Sa-S1x>1.0、かつ、Sa-S2x<1.0
を満たすことを特徴とする。
なお、該有機溶媒単独の表面張力をSa(mN/m)とすると、
第1表面改質剤は、該有機溶媒に該第1表面改質剤1種を100重量ppm溶解させたときの表面張力(S1y)がSa-S1y>1.0となるものを表し、
第2表面改質剤は、該有機溶媒に該第2表面改質剤2種を100重量ppm溶解させたときの表面張力(S2y)がSa-S2y≦1.0となるものを表す。
【0049】
即ち、本態様は、少なくとも電荷注入輸送材料、有機溶媒、1種以上の第1表面改質剤、及び1種以上の第2表面改質剤を含有する有機電界発光素子形成用組成物であって、
有機溶媒の表面張力(単位:mN/m)をSaとし、有機溶媒100重量部に対する第1表面改質剤の含有量(2種以上の第1表面改質剤を使用する場合には、それらの合計の含有量)をC1重量部とし、有機溶媒100重量部に対する第2表面改質剤の含有量(2種以上の第2表面改質剤を使用する場合には、それらの合計の含有量)をC2重量部とし、
各第1表面改質剤は、有機溶媒の100重量部に第1表面改質剤の0.01重量部を溶解させた混合物の表面張力(単位:mN/m)をS1yとすると、下記式(1)を満たす表面改質剤であり、
Sa-S1y>1.0 ・・・(1)
各第2表面改質剤は、有機溶媒の100重量部に第2表面改質剤の0.01重量部を溶解させた混合物の表面張力(単位:mN/m)をS2yとすると、下記式(2)を満たす表面改質剤であり、
Sa-S2y≦1.0 ・・・(2)
有機溶媒の100重量部と第1表面改質剤のC1重量部との混合物(即ち、有機溶媒中に、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる全ての第1表面改質剤のみを、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる量と同じ量で含有させた混合物。)の表面張力(単位:mN/m)をS1xとすると、下記式(3)を満たし、
Sa-S1x>1.0 ・・・(3)
有機溶媒の100重量部と第2表面改質剤のC2重量部との混合物(即ち、有機溶媒中に、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる全ての第2表面改質剤のみを、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる量と同じ量で含有させた混合物。)の表面張力(単位:mN/m)をS2xとすると、下記式(4)を満たすことを特徴とする。
Sa-S2x<1.0 ・・・(4)
【0050】
<電荷注入輸送材料>
電荷注入輸送材料は、電極からの電荷(正孔、電子)の注入と輸送を効率よく行うことが可能な材料であり、有機電界発光素子内では、主に、電荷注入層、電荷輸送層及び発光層に使用されている。また、これらの材料は、上記各層において単独でも用いられることが多いが、電荷輸送を制御するために複数種混合して用いられてもよい。さらに、低分子材料でも高分子材料でもよい。
【0051】
電荷注入輸送材料としては、有機電界発光素子用、有機光導電体用の公知の電荷注入輸送材料を用いることができる。このような電荷注入輸送材料は、正孔注入輸送材料及び電子注入輸送材料に分類され、これらの具体的な化合物を以下に例示するが、本発明はこれらの材料に限定されるものではない。
なお、有機電界発光素子の代表的な層構成については後述するが、正孔注入輸送材料はおもに、正孔注入層、正孔輸送層及び発光層に用いられ、電子注入輸送材料はおもに、発光層、正孔阻止層、電子輸送層及び電子注入層に用いられる。
【0052】
正孔注入輸送材料としては、例えば、酸化バナジウム(V)、酸化モリブデン(MoO)等の酸化物;無機p型半導体材料;ポルフィリン化合物;N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン(TPD)、N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン(NPD)等の芳香族第三級アミン化合物;ヒドラゾン化合物、キナクリドン化合物、スチリルアミン化合物等の低分子材料;ポリアニリン(PANI)、ポリアニリン-樟脳スルホン酸(PANI-CSA)、3,4-ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンサルフォネイト(PEDOT/PSS)、ポリ(トリフェニルアミン)誘導体(Poly-TPD)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)、ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ(p-ナフタレンビニレン)(PNV)等の高分子材料;等が挙げられる。
【0053】
正孔注入層に用いる正孔注入輸送材料としては、陽極からの正孔の注入・輸送をより効率よく行う点で、正孔輸送層に用いる正孔注入輸送材料より最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギー準位が低い材料を用いることが好ましい。
正孔輸送層に用いる正孔注入輸送材料としては、正孔注入層に用いる正孔注入輸送材料より正孔の移動度が高い材料を用いることが好ましい。
【0054】
また、より正孔の注入輸送性を向上させるため、上記の材料にさらにアクセプタをドープしたものを正孔注入輸送材料として用いることが好ましい。アクセプタとしては、有機電界発光素子用の公知のアクセプタ材料を用いることができる。これらの具体的な化合物を以下に例示するが、本発明においてはこれらの材料に限定されるものではない。
アクセプタ材料としては、Au、Pt、W、Ir、POCl、AsF、Cl、Br、I、酸化バナジウム(V)、酸化モリブデン(MoO)等の無機材料;TCNQ(7,7,8,8,-テトラシアノキノジメタン)、TCNQF4(テトラフルオロテトラシアノキノジメタン)、TCNE(テトラシアノエチレン)、HCNB(ヘキサシアノブタジエン)、DDQ(ジシクロジシアノベンゾキノン)等のシアノ基を有する化合物;TNF(トリニトロフルオレノン)、DNF(ジニトロフルオレノン)等のニトロ基を有する化合物;フルオラニル、クロラニル、ブロマニル等の有機材料;が挙げられる。この内、TCNQ、TCNQF4、TCNE、HCNB、DDQ等のシアノ基を有する化合物がよりキャリア濃度を効果的に増加させることが可能であるためより好ましい。また、4-イソプロピル-4-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート等のフッ素含有有機塩を用いることもできる。
【0055】
電子注入輸送材料としては、例えば、n型半導体である無機材料;オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、チオピラジンジオキシド誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、フルオレノン誘導体、ベンゾジフラン誘導体等の低分子材料;ポリ(オキサジアゾール)(Poly-OXZ)、ポリスチレン誘導体(PSS)等の高分子材料が挙げられる。特に、電子注入輸送材料としては、特にフッ化リチウム(LiF)、フッ化バリウム(BaF)等のフッ化物、酸化リチウム(LiO)等の酸化物等が挙げられる。
【0056】
電子注入層に用いる電子注入輸送材料としては、電子の陰極からの注入・輸送をより効率よく行う点で、電子輸送層に使用する電子注入輸送材料より最低空分子軌道(LUMO)のエネルギー準位が高い材料を用いることが好ましい。
電子輸送層に用いる電子注入材料としては、電子注入層に使用する電子注入輸送材料より電子の移動度が高い材料を用いることが好ましい。
【0057】
また、より電子の注入・輸送性を向上させるため、上記の材料にさらにドナーをドープしたものを電子注入輸送材料として用いることが好ましい。ドナーとしては、有機電界発光素子用の公知のドナー材料を用いることができる。これらの具体的な化合物を以下に例示するが、本発明においてはこれらの材料に限定されるものではない。
ドナー材料としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Al、Ag、Cu、In等の無機材料;アニリン類、フェニレンジアミン類、ベンジジン類(N,N,N’,N’-テトラフェニルベンジジン、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン、N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニルベンジジン等)、トリフェニルアミン類(トリフェニルアミン、4,4’4’’-トリス(N,N-ジフェニル-アミノ)トリフェニルアミン、4,4’4’’-トリス(N-3-メチルフェニル-N-フェニル-アミノ)トリフェニルアミン、4,4’4’’-トリス(N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ)トリフェニルアミン等)、トリフェニルジアミン類(N,N’-ジ-(4-メチル-フェニル)-N,N’-ジフェニル-1,4-フェニレンジアミン)等の芳香族3級アミンを骨格に持つ化合物;フェナントレン、ピレン、ペリレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン等の縮合多環化合物(ただし、縮合多環化合物は置換基を有してもよい。);TTF(テトラチアフルバレン)類、ジベンゾフラン、フェノチアジン、カルバゾール等の有機材料;が挙げられる。このうち、芳香族3級アミンを骨格に持つ化合物、縮合多環化合物、アルカリ金属がよりキャリア濃度を効果的に増加させることが可能であるためより好ましい。
【0058】
<有機溶媒>
本発明で用いられる有機溶媒は、湿式成膜により電荷注入輸送材料を含む層を形成するために用いる、揮発性を有する液体成分であり、該電荷注入輸送材料が良好に溶解する有機溶媒であれば特に限定されない。
好ましい有機溶媒としては、例えば、n-デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロヘキサン等のアルカン類;
トルエン、キシレン、メシチレン、フェニルシクロヘキサン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;
クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;
酢酸2-フェノキシエチル、ベンジルグリコール、フェニルグリコール等の芳香族グリコール類;
1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、エチルアニソール、プロピルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、メチルアニソール、ジメチルアニソール、エチルアニソール、ジエチルアニソール、プロピルアニソール、ブチルアニソール、ペンチルアニソール、メチルナフチルアニソール、オクチルアニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル、3フェノキシトルエン等の芳香族エーテル類;
酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル、安息香酸t-ブチル、安息香酸イソアミル等の芳香族エステル類;
シクロヘキサノン、シクロオクタノン、フェンコン等の脂環族ケトン類;
シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール類;
メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン類;
ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール類;
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジチレングリコールジ-n-ブチルエーテル等の脂肪族エーテル類;等が挙げられる。
溶解性や成膜均一性、素子特性の観点から、アルカン類、芳香族炭化水素類、芳香族エステル類及び芳香族エーテル類から少なくとも1つ選択されることが好ましく、芳香族エステル類及び/又は芳香族エーテルがより好ましい。特に好ましくは、安息香酸n-ブチル、安息香酸t-ブチル、安息香酸イソアミルやジフェニルエーテル、2,4-ジメチルアニソールが挙げられる。これらを用いることで、湿式成膜プロセスにおいて好ましい粘度と沸点を得られる傾向にある。
【0059】
これらの有機溶媒は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよいが、芳香族炭化水素類、芳香族エステル類、芳香族エーテル類は材料の溶解性を変えることなく、溶媒の表面張力や粘度を変化させることが可能であることから、組み合わせて用いることが好ましい。
【0060】
有機溶媒の沸点(有機溶媒として、2種類以上の有機溶媒を組み合わせて用いる場合には、組み合わせた各有機溶媒の含有量と沸点から算出した加重平均の値を沸点とする。以下同様。)は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、特に好ましくは200℃以上であり、通常350℃以下、好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下である。上記下限値以上であることで、湿式成膜時において、組成物からの有機溶媒の蒸発を抑制し、成膜安定性が得られる傾向にある。また、上記上限値以下であることで、乾燥後に有機膜本来の特性が得られる傾向にある。
有機溶媒の表面張力(測定方法については後述する)は、湿式製膜法において塗布することが可能であれば特に限定されることはないが、塗布性がよいという観点から、室温での値が通常20mN/m以上、好ましくは25mN/m以上であり、また、通常45mN/m以下、好ましくは40mN/m以下、より好ましくは38mN/m以下である。
有機溶媒の粘度は、塗布装置から射出できる粘度であれば限定はしないが、濾過のしやすさの観点から、通常、1cP以上であり,好ましくは2cP以上であり、また、室温での値が通常30cP以下、好ましくは25cP以下、より好ましくは20cP以下である。
【0061】
<第1表面改質剤>
第1表面改質剤は、有機電界発光素子形成用組成物に用いられる有機溶媒単独の表面張力(有機溶媒として、2種類以上の有機溶媒を組み合わせた混合物を用いる場合には、その混合物の表面張力を意味する。以下同様。)をSa(mN/m)とし、該有機溶媒に該第1表面改質剤1種を100重量ppm、即ち、該有機溶媒の100重量部に該第1表面改質剤の0.01重量部を溶解させたときの表面張力をS1yとすると、Sa-S1y>1.0を満たす表面改質剤である。
有機電界発光素子形成用組成物中に含まれる複数の表面改質剤のうち、上記条件を満たす表面改質剤は、全て第1表面改質剤であり、第1表面改質剤として1種以上の第1表面改質剤を含み、2種以上の第1表面改質剤を含んでもよい。
さらに、全ての第1表面改質剤(即ち、第1表面改質剤として2種以上の第1表面改質剤がある比率で用いられる場合には、それら2種以上の第1の表面改質剤のその比率における混合物を意味する。)のみを該有機電界発光素子形成用組成物における濃度と同濃度(重量%)で該有機溶媒に溶解させたときの表面張力をS1x(mN/m)とすると、Sa-S1x>1.0を満たす。
【0062】
なお、本発明において、表面張力は、自動表面張力計(例えば、協和界面科学社製CBVP-Z型)を用いて、室温下でプレート法(Wilhelmy法)により測定する。本測定でのプレートには白金を用い、測定直前に直火により表面の異物を除去して測定するものとする。
【0063】
第1表面改質剤として、具体的には、上述した表面改質剤のうち、シリコンを含有する材料、フッ素を含有する材料、パラフィン等(ポリマー、オリゴマー、低分子のいずれでもよい)が好適に用いられる。その中でも、特にシリコンを含有する材料及び/又はフッ素を含有する材料が好適である。特に、ポリシロキサン;ポリシロキサンを部分的にエーテル変性、エステル変性、アラルキル変性させた化合物;ポリシロキサンのメチル基をアルキル基置換した化合物;含フッ素基オリゴマー;パーフルオロアルキル基含有オリゴマー;等が好ましい。これら材料は、有機膜に用いる材料に与える影響、耐熱性、有機溶媒への親和性の観点で好ましい。
【0064】
有機電界発光素子形成用組成物中における、第1表面改質剤の含有量は、溶媒への溶解性の観点と表面改質としての機能性の観点から、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる有機溶媒の量を基準値として、好ましくは1重量ppm以上、より好ましくは10重量ppm以上、さらに好ましくは50重量ppm以上であり、好ましくは50000重量ppm以下、より好ましくは10000重量ppm以下、さらに好ましくは1000重量ppm以下である。
また、第1表面改質剤として2種以上の第1表面改質剤が用いられる場合には、有機電界発光素子形成用組成物中における、全ての第1表面改質剤の合計の含有量は、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる有機溶媒の量を基準値として、好ましくは1重量ppm以上であり、より好ましくは10重量ppm以上、さらに好ましくは50重量ppm以上であり、好ましくは50000重量ppm以下、より好ましくは10000重量ppm以下、さらに好ましくは1000重量ppm以下である。
上記上限値以下であることで、溶媒への溶解性を担保でき、また上記下限値以上であることで、表面改質剤としての機能を発現することができる。
【0065】
<第2表面改質剤>
第2表面改質剤は、有機電界発光素子形成用組成物に用いられる有機溶媒単独の表面張力をSa(mN/m)とし、該有機溶媒に該第2表面改質剤1種を100重量ppm、即ち、該有機溶媒の100重量部に該第2表面改質剤の0.01重量部を溶解させたときの表面張力をS2yとすると、Sa-S2y≦1.0を満たす表面改質剤である。
有機電界発光素子形成用組成物中に含まれる複数の表面改質剤のうち、上記条件を満たす表面改質剤は、全て第2表面改質剤であり、第2表面改質剤として1種以上の第2表面改質剤を含み、第2表面改質剤として2種以上の第2表面改質剤を含んでもよい。
さらに、全ての第2表面改質剤(即ち、第2表面改質剤として2種以上の第2表面改質剤がある比率で用いられる場合には、それら2種以上の第2の表面改質剤のその比率における混合物を意味する。)のみを該有機電界発光素子形成用組成物における濃度と同濃度(重量%)で該有機溶媒に溶解させたときの表面張力をS2x(mN/m)とすると、Sa-S2x<1.0を満たす。
【0066】
即ち、第1表面改質剤は、有機溶媒と混合されることにより、有機溶媒の表面張力を低下させることができ、第2表面改質剤は、有機溶媒と混合された場合、有機溶媒の表面張力を低下させる機能が第1表面改質剤に比べて弱いか、又は有機溶媒の表面張力を低下させる機能がない表面改質剤である。
【0067】
第2表面改質剤として、具体的には、上述した表面改質剤のうち、ノニオン性界面活性剤が好適に用いられる。ノニオン性界面活性剤の中でも、特にエーテル型、エステル型、又はエーテル・エステル型のノニオン性界面活性剤が好ましい。これら材料は、添加量に依存して有機電界発光素子の性能が変化しないため、有機電界発光素子の性能を維持できる傾向にある観点で好ましい。
【0068】
有機電界発光素子形成用組成物中における、第2表面改質剤の含有量は、溶媒への溶解性の観点から、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる有機溶媒の量を基準値として、好ましくは1重量ppm以上、より好ましくは10重量ppm以上、さらに好ましくは50重量ppm以上であり、好ましくは50000重量ppm以下、より好ましくは10000重量ppm以下、さらに好ましくは1000重量ppm以下である。
また、第2表面改質剤として2種以上の第2表面改質剤が用いられる場合には、有機電界発光素子形成用組成物中における、全ての第2表面改質剤の合計の含有量は、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる有機溶媒の量を基準値として、好ましくは1重量ppm以上、より好ましくは10重量ppm以上、さらに好ましくは50重量ppm以上であり、好ましくは50000重量ppm以下、より好ましくは10000重量ppm以下、さらに好ましくは1000重量ppm以下である。
上記上限値以下であることで、溶媒への溶解性を担保でき、また上記下限値以上であることで、表面改質剤としての機能を発現することができる。
【0069】
また、純水の表面張力をSa’(mN/m)とし、純水に全ての第1表面改質剤(即ち、第1表面改質剤として2種以上の第1表面改質剤がある比率で用いられる場合には、それら2種以上の第1の表面改質剤におけるその比率の混合物を意味する。)のみを1000重量ppm、即ち、純水の100重量部に該第1表面改質剤の0.1重量部を溶解させたときの表面張力をS1z’(mN/m)とし、純水に全ての第2表面改質剤(即ち、第2表面改質剤として2種以上の第2表面改質剤がある比率で用いられる場合には、それら2種以上の第2の表面改質剤のその比率における混合物を意味する。)のみを1000重量ppm、即ち、純水の100重量部に該第2表面改質剤の0.1重量部を溶解させたときの表面張力をS2z’(mN/m)とすると、Sa’>S1z’>S2z’を満たすことが好ましい。
これを満たすことにより、隔壁内に有機膜を湿式成膜した際に、良好な膜厚均一性を得ることができる傾向にある。
なお、純水、Sa’、S1z’、S2z’の定義は、後述する本発明の有機電界発光素子形成用組成物の第3の態様に示した、純水、Sa’、S1z、S2zとそれぞれ同義である。
【0070】
<第1表面改質剤と第2表面改質剤の組み合わせ>
第1表面改質剤と第2表面改質剤の組み合わせは、本発明の効果を大きく損なわなければ特に限定されない。特に、第1表面改質剤のシリコンを含有する材料と第2表面改質剤のエーテル型界面活性剤との組み合わせ、第1表面改質剤のシリコンを含有する材料と第2表面改質剤のエーテル・エステル型の界面活性剤との組み合わせ等が有機電界発光素子への影響度の観点で好ましい。
有機電界発光素子形成用組成物中の第1表面改質剤と第2表面改質剤の含有量比(重量比)は特に限定されない。第1表面改質剤の合計の含有量C1と第2表面改質剤の合計の含有量C2の比C2/C1として、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.5以上であり、好ましくは500以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは50以下である。
上記下限値以上であることで、乾燥工程における第2表面改質剤の吸着が期待通りに発生する傾向にあり、また上記上限値以下であることで、第1表面改質剤の表面張力を下げる効果が得られる傾向にある。
【0071】
<第1表面改質剤と第2表面改質剤を用いることによる効果>
有機電界発光素子形成用組成物中に第1表面改質剤と第2表面改質剤を含有させることにより、隔壁内に有機膜を湿式成膜した際に、良好な膜厚の平坦性を得ることができるメカニズムは、以下のように推定している。
ここで、平坦性とは、有機膜がどれだけ平坦なのかを示す指標であり、本発明においては、発光領域全体に対する、膜厚差が5nm以下の領域の割合を示している。このような平坦性は、オレンジピールの発生、ピンホールの発生、ムラの発生等の欠陥が生じることによって悪化してしまう。これらの欠陥発生の原因は、塗布膜の乾燥中に発生する、有機溶媒の蒸発、有機溶媒の蒸発に伴う粘度変化、表面張力の変化である。有機溶媒の蒸発や粘度変化は材料に大きく依存するため、通常は溶液の表面張力変化を極力低下させる、つまり表面改質剤で表面張力を低下かつ均一化することで平坦性の悪化を抑制していた。
【0072】
この場合、溶液の表面張力を低下かつ均一化させることによって、隔壁内中央部の有機膜の平坦性の悪化は抑制できるが、隔壁の近傍領域である隔壁際部の有機膜の平坦性は悪化してしまう。これは、隔壁際部で溶液のピニングが発生するために、コーヒーステイン効果により隔壁への溶液の濡れ上がりが誇張されてしまい、隔壁際部の有機膜の膜厚が大きく変化するためである。
【0073】
一方、本発明における、第1表面改質剤の働きは、溶液表面に偏析することで表面張力を低下かつ均一化させることであり、第2表面改質剤は、溶液中に分散するため表面張力を低下させる機能は第1表面改質剤に比べて弱いが、第1表面改質剤に吸着し第1表面改質剤の機能を変化させる作用があると考えられる。つまり、両表面改質剤が膜形成の過程において以下のように働いていると推定される。
【0074】
まず溶液の表面張力を均一化させる第1表面改質剤によって、隔壁内中央部の有機膜の平坦性悪化を抑制する。次に、乾燥工程に移行したときには、隔壁際部から乾燥するので、隔壁際部の第1表面改質剤と第2表面改質剤の濃度が高まる。このとき、第1表面改質剤と第2表面改質剤の平均自由工程が短くなって両者が接触する確率が高くなり、第2表面改質剤が第1表面改質剤に吸着しやすくなる。第2表面改質剤が吸着した第1表面改質剤は、溶液の表面張力を低下させる機能が抑制される。そのため、乾燥の早い隔壁際部の溶液の表面張力低下が抑制され、結果的に隔壁への濡れ上がりを抑制し、隔壁際部の有機膜の膜厚変化が小さくなる。このとき、隔壁内中央部は、隔壁際部に比べて乾燥速度が遅く両表面改質剤の濃度が高まっていない状態のため、溶液の表面張力は維持されたままであり、平坦性の悪化を抑制した状態である。さらに乾燥が進むにつれて、隔壁際部と同様に隔壁内中央部の両表面改質剤の濃度が高まり、溶液の表面張力の低下は抑制されるが、乾燥が進んだ状態ではコーヒーステイン効果により隔壁際部の方向に張力が働いた状態なので、この張力により隔壁内の有機膜の膜厚差が小さくなり、平坦性の悪化を抑制できているものと推定している。
【0075】
上記推定に基づき、[Sa-S1x]は、溶液の表面張力低下機能が高いことから、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上、最も好ましくは2.0以上である。また、[Sa-S2x]は、表面張力低下の機能がより第1表面改質剤より弱く、乾燥時の隔壁際部の表面張力低下の抑制効果が高いことから、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.6以下、特に好ましくは0.5以下である。
【0076】
[有機電界発光素子形成用組成物の第2の態様]
本態様は、少なくとも電荷注入輸送材料、有機溶媒、第3表面改質剤、及び第4表面改質剤を含有する有機電界発光素子形成用組成物であって、
該有機溶媒単独の表面張力をSa(mN/m)とし、該有機溶媒に該第3表面改質剤のみを100重量ppm溶解させたときの表面張力をS1y(mN/m)とし、該有機溶媒に該第4表面改質剤のみを100重量ppm溶解させたときの表面張力をS2y(mN/m)とすると、
Sa-S1y>1.0、かつ、Sa-S2y≦1.0
を満たす。
電荷注入輸送材料、及び有機溶媒については、上述の有機電界発光素子形成用組成物の第1の態様と同一である。
【0077】
<第3表面改質剤>
第3表面改質剤は、有機電界発光素子形成用組成物に用いられる有機溶媒単独の表面張力をSa(mN/m)とし、該有機溶媒に該第3表面改質剤1種(即ち、有機電界発光素子形成用組成物に2種以上の第3表面改質剤を用いる場合、2種以上の第3表面改質剤のそれぞれを個別に用いることを意味する。)を100重量ppm、即ち、該有機溶媒の100重量部に該第3表面改質剤の0.01重量部を溶解させたときの表面張力をS1yとすると、Sa-S1y>1.0を満たす表面改質剤である。
【0078】
第3表面改質剤として、具体的には、上述した表面改質剤のうち、シリコンを含有する材料、フッ素を含有する材料等(ポリマー、オリゴマー、低分子のいずれでもよい。)が第3表面改質剤として好適に用いられる。その中でも、特にシリコンを含有するポリマーが好適である。特に、ポリシロキサン;ポリシロキサンを部分的にエーテル変性、エステル変性、アラルキル変性させた化合物;ポリシロキサンのメチル基をアルキル基置換した化合物;が好ましい。これら材料は、有機膜に用いる材料に与える影響、耐熱性、有機溶媒への親和性の観点で好ましい。
【0079】
有機電界発光素子形成用組成物中における、第3表面改質剤の含有量は、溶媒への溶解性の観点と表面改質としての機能性の観点から、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる有機溶媒の量を基準値として、通常1重量ppm以上、好ましくは10重量ppm以上、より好ましくは50重量ppm以上であり、通常50000重量ppm以下、好ましくは10000重量ppm以下、より好ましくは1000重量ppm以下である。
上記上限値以下であることで、溶媒への溶解性を担保でき、また上記下限値以上であることで、表面改質剤としての機能を発現することができる。
【0080】
<第4表面改質剤>
第4表面改質剤は、有機電界発光素子形成用組成物に用いられる有機溶媒単独の表面張力をSa(mN/m)とし、該有機溶媒に該第4表面改質剤1種(即ち、有機電界発光素子形成用組成物に2種以上の第4表面改質剤を用いる場合、2種以上の第4表面改質剤のそれぞれを個別に用いることを意味する。)を100重量ppm、即ち、該有機溶媒の100重量部に該第4表面改質剤の0.01重量部を溶解させたときの表面張力をS2yとすると、Sa-S2y≦1.0を満たす表面改質剤である。
【0081】
即ち、第3表面改質剤は、有機溶媒と混合されることにより、有機溶媒の表面張力を低下させることができ、第4表面改質剤は、有機溶媒と混合された場合、有機溶媒の表面張力を低下させる機能が第3表面改質剤に比べて弱いか、又は有機溶媒の表面張力を低下させる機能がない表面改質剤である。
【0082】
第4表面改質剤として、具体的には、上述した表面改質剤のうち、ノニオン性界面活性剤が好適に用いられる。ノニオン性界面活性剤の中でも、特にエーテル型、エステル型、又は、エーテル・エステル型のノニオン性界面活性剤が好ましい。これら材料は、添加量に依存して有機電界発光素子の性能が変化しないため、有機電界発光素子の性能を維持できる傾向にある観点で好ましい。
有機電界発光素子形成用組成物中における、第4表面改質剤の含有量は、溶媒への溶解性の観点から、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる有機溶媒の量を基準値として、通常1重量ppm以上、好ましくは10重量ppm以上、より好ましくは50重量ppm以上であり、通常50000重量ppm以下、好ましくは10000重量ppm以下、より好ましくは1000重量ppm以下である。
上記上限値以下であることで、溶媒への溶解性を担保でき、また上記下限値以上であることで、表面改質剤としての機能を発現することができる。
【0083】
<第3表面改質剤と第4表面改質剤を用いることによる効果>
第3表面改質剤と第4表面改質剤を用いることによる効果、及びそのメカニズムは、第1表面改質剤と第2面改質剤を用いることによる効果と同一である。また、[Sa-S1y]及び[Sa-S2y]の好ましい範囲も、それぞれ、有機電界発光素子形成用組成物の第1の態様における[Sa-S1x]及び[Sa-S2x]の好ましい範囲と同一である。
【0084】
[有機電界発光素子形成用組成物の第3の態様]
本態様は、少なくとも電荷注入輸送材料、有機溶媒、第5表面改質剤、及び第6表面改質剤を含有する有機電界発光素子形成用組成物であって、
純水の表面張力をSa’(mN/m)、純水に第5表面改質剤のみを1000重量ppm溶解させたときの表面張力をS1z(mN/m)、純水に第6表面改質剤のみを1000重量ppm溶解させたときの表面張力をS2z(mN/m)としたとき、
Sa’>S1z>S2z ・・・(5)
を満たすことを特徴とする。
【0085】
即ち、本態様は、少なくとも電荷注入輸送材料、有機溶媒、第5表面改質剤、及び第6表面改質剤を含有する有機電界発光素子形成用組成物であって、
純水の表面張力(単位:mN/m)をSa’とし、純水の100重量部と第5表面改質剤の0.1重量部との混合物の表面張力(単位:mN/m)をS1zとし、純水の100重量部と第6表面改質剤の0.1重量部との混合物の表面張力(単位:mN/m)をS2zとすると、下記式(5)を満たすことを特徴とする。
Sa’>S1z>S2z ・・・(5)
【0086】
ここで、純水とは、不純物を含まないか、ほとんど含まない純度の高い水のことをいう。純水の純度の指標は、純水の比抵抗、若しくは導電率で評価され、10MΩ・cm以上であるものが純水と定義される。
電荷注入輸送材料、及び有機溶媒については、上述の有機電界発光素子形成用組成物の第1の態様と同一である。
【0087】
<第5表面改質剤>
第5表面改質剤は、純水の表面張力をSa’(mN/m)、純水に該第5表面改質剤のみを1000重量ppm溶解させたときの表面張力をS1z(mN/m)としたとき、Sa’>S1zを満たし、かつ、純水に該第6表面改質剤のみを1000重量ppm溶解させたときの表面張力をS2z(mN/m)としたとき、S1z>S2zを満たす表面改質剤である。
【0088】
第5表面改質剤は、有機電界発光素子形成用組成物に用いられる有機溶媒単独の表面張力(有機溶媒として、2種類以上の有機溶媒を組み合わせた混合物を用いる場合には、その混合物の表面張力を意味する。以下同様。)をSa(mN/m)とし、該有機溶媒に該第5表面改質剤1種を100重量ppm、即ち、該有機溶媒の100重量部に該第5表面改質剤の0.01重量部を溶解させたときの表面張力をS1yとすると、Sa-S1y>1.0を満たすことが好ましい。
有機電界発光素子形成用組成物中に含まれる複数の表面改質剤のうち、全ての第5表面改質剤は上記条件を満たすことが好ましい。第5表面改質剤として1種以上の第5表面改質剤を含み、2種以上の第5表面改質剤を含んでもよい。
【0089】
第5表面改質剤として、具体的には、上述した表面改質剤のうち、シリコンを含有する材料、フッ素を含有する材料等(ポリマー、オリゴマー、低分子のいずれでもよい。)が第5表面改質剤として好適に用いられる。その中でも、特にシリコンを含有するポリマーが好適である。特に、ポリシロキサン;ポリシロキサンを部分的にエーテル変性、エステル変性、アラルキル変性させた化合物;ポリシロキサンのメチル基をアルキル基置換した化合物;が好ましい。これら材料は、有機膜に用いる材料に与える影響、耐熱性、有機溶媒への親和性の観点で好ましい。
【0090】
有機電界発光素子形成用組成物中における、第5表面改質剤の含有量は、溶媒への溶解性の観点と表面改質としての機能性の観点から、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる有機溶媒の量を基準値として、通常1重量ppm以上、好ましくは10重量ppm以上、より好ましくは50重量ppm以上であり、通常50000重量ppm以下、好ましくは10000重量ppm以下、より好ましくは1000重量ppm以下である。
また、第5表面改質剤として2種以上の第5表面改質剤が用いられる場合には、有機電界発光素子形成用組成物中における、全ての第5表面改質剤の合計の含有量は、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる有機溶媒の量を基準値として、好ましくは1重量ppm以上であり、より好ましくは10重量ppm以上、さらに好ましくは50重量ppm以上であり、好ましくは50000重量ppm以下、より好ましくは10000重量ppm以下、さらに好ましくは1000重量ppm以下である。
上記上限値以下であることで、溶媒への溶解性を担保でき、また上記下限値以上であることで、表面改質剤としての機能を発現することができる。
【0091】
<第6表面改質剤>
第6表面改質剤は、純水の表面張力をSa’(mN/m)、純水に該第6表面改質剤のみを1000重量ppm溶解させたときの表面張力をS2z(mN/m)としたとき、Sa’>S2zを満たし、かつ、純水に該第5表面改質剤のみを1000重量ppm溶解させたときの表面張力をS1z(mN/m)としたとき、S1z>S2zを満たす表面改質剤である。
【0092】
即ち、第5表面改質剤及び第6表面改質剤は、純水と混合されることにより、純水の表面張力を低下させることができ、第5表面改質剤は、純水と混合された場合、純水の表面張力を低下させる機能が第6表面改質剤に比べて弱い。
【0093】
第6表面改質剤は、有機電界発光素子形成用組成物に用いられる有機溶媒単独の表面張力をSa(mN/m)とし、該有機溶媒に該第6表面改質剤1種を100重量ppm、即ち、該有機溶媒の100重量部に該第6表面改質剤の0.01重量部を溶解させたときの表面張力をS2yとすると、Sa-S2y≦1.0を満たすことが好ましい。
有機電界発光素子形成用組成物中に含まれる複数の表面改質剤のうち、全ての第6表面改質剤は上記条件を満たすことが好ましい。第6表面改質剤として1種以上の第6表面改質剤を含み、2種以上の第6表面改質剤を含んでもよい。
【0094】
第6表面改質剤としては、具体的には、上述した表面改質剤のうち、ノニオン性界面活性剤が好適に用いられる。ノニオン性界面活性剤の中でも、特にエーテル型、エステル型、又は、エーテル・エステル型のノニオン性界面活性剤が好ましい。これら材料は、添加量に依存して有機電界発光素子の性能が変化しないため、有機電界発光素子の性能を維持できる傾向にある観点で好ましい。
有機電界発光素子形成用組成物中における、第6表面改質剤の含有量は、溶媒への溶解性の観点から、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる有機溶媒の量を基準値として、通常1重量ppm以上、好ましくは10重量ppm以上、より好ましくは50重量ppm以上、通常50000重量ppm以下、好ましくは10000重量ppm以下、より好ましくは1000重量ppm以下である。
また、第6表面改質剤として2種以上の第6表面改質剤が用いられる場合には、有機電界発光素子形成用組成物中における、全ての第6表面改質剤の合計の含有量は、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる有機溶媒の量を基準値として、好ましくは1重量ppm以上であり、より好ましくは10重量ppm以上、さらに好ましくは50重量ppm以上であり、好ましくは50000重量ppm以下、より好ましくは10000重量ppm以下、さらに好ましくは1000重量ppm以下である。
上記上限値以下であることで、溶媒への溶解性を担保でき、また上記下限値以上であることで、表面改質剤としての機能を発現することができる。
【0095】
<第5表面改質剤と第6表面改質剤を用いることによる効果>
有機電界発光素子形成用組成物中に、より親水性が低く、さらに有機溶媒溶液の表面張力を低下かつ均一化させる第5表面改質剤と、より親水性が高く、有機溶媒の表面張力を変化させる機能は第5表面改質剤に比べて弱いが、第5表面改質剤に吸着し第5表面改質剤の機能を変化させる作用がある第6表面改質剤を含有させることにより、隔壁内に有機膜を湿式成膜した際に、良好な膜厚均一性を得ることができるメカニズムは、以下のように推定している。
【0096】
まず溶液の表面張力を均一化させる第5表面改質剤によって、隔壁内中央部の有機膜の平坦性悪化を抑制する。さらに、純水の表面張力をより低下させる、つまり親水性の高い第6表面改質剤が隔壁際に吸着し、隔壁の濡れ性をより親水化する。隔壁が親水性になることにより、有機溶媒を含む溶液が濡れにくくなり、ピニングが抑えられ、その結果、隔壁への濡れ上がりが穏やかになる。隔壁への濡れ上がりが抑制され、かつ表面張力の低下を均一化させたまま乾燥は進むため、有機膜の平坦性悪化は抑制されたままである。さらに乾燥が進行するにつれて、隔壁際の乾燥が早いことから隔壁際でいずれピニングが発生するが、このとき隔壁内全体において、平坦性悪化を抑制したまま乾燥が十分に進んだ状態になり、この結果、平坦性の高い膜が形成されるものと推定している。
【0097】
[有機電界発光素子形成用組成物の第4の態様]
本態様は、少なくとも電荷注入輸送材料、有機溶媒、第7表面改質剤、及び第8表面改質剤を含有する有機電界発光素子形成用組成物であって、
該第7表面改質剤の分子量が1000以上であり、かつ、該第8表面改質剤の分子量が1000未満である。
電荷注入輸送材料、及び有機溶媒については、上述の有機電界発光素子形成用組成物の第1の態様と同一である。
【0098】
<第7表面改質剤>
第7表面改質剤は、分子量が1000以上である表面改質剤である。第7表面改質剤がポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上である表面改質剤のことをいう。また、分子量(ポリマーの場合は、重量平均分子量。)が大きすぎると溶媒への溶解性が極端に低下するため、好ましくは100000以下、特に好ましくは10000以下である。
【0099】
第7表面改質剤として、具体的には、上述した表面改質剤のうち、シリコンを含有する材料、フッ素を含有する材料等(ポリマー、オリゴマー、低分子のいずれでもよい。)が第7表面改質剤として好適に用いられる。その中でも、特にシリコンを含有するポリマーが好適である。特に、ポリシロキサン;ポリシロキサンを部分的にエーテル変性、エステル変性、アラルキル変性させた化合物;ポリシロキサンのメチル基をアルキル基置換した化合物;が好ましい。
【0100】
有機電界発光素子形成用組成物中における、第7表面改質剤の含有量は、溶媒への溶解性の観点と表面改質としての機能性の観点から、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる有機溶媒の量を基準値として、通常1重量ppm以上、好ましくは10重量ppm以上、より好ましくは50重量ppm以上であり、通常50000重量ppm以下、好ましくは10000重量ppm以下、より好ましくは1000重量ppm以下である。
また、第7表面改質剤として2種以上の第7表面改質剤が用いられる場合には、有機電界発光素子形成用組成物中における、全ての第7表面改質剤の合計の含有量は、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる有機溶媒の量を基準値として、通常1重量ppm以上、好ましくは10重量ppm以上、より好ましくは50重量ppm以上であり、通常50000重量ppm以下、好ましくは10000重量ppm以下、より好ましくは1000重量ppm以下である。
上記上限値以下であることで、溶媒への溶解性を担保でき、また上記下限値以上であることで、表面改質剤としての機能を発現することができる。
【0101】
<第8表面改質剤>
第8表面改質剤は、分子量が1000未満である表面改質剤である。
【0102】
第8表面改質剤としては、具体的には、上述した表面改質剤のうち、ノニオン性界面活性剤が好適に用いられる。ノニオン性界面活性剤の中でも、特にエーテル型、エステル型、又は、エーテル・エステル型のノニオン性界面活性剤が好ましい。
有機電界発光素子形成用組成物中における、第8表面改質剤の含有量は、溶媒への溶解性の観点から、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる有機溶媒の量を基準値として、通常1重量ppm以上、好ましくは10重量ppm以上、より好ましくは50重量ppm以上、通常50000重量ppm以下、好ましくは10000重量ppm以下、より好ましくは1000重量ppm以下である。
また、第8表面改質剤として2種以上の第8表面改質剤が用いられる場合には、有機電界発光素子形成用組成物中における、全ての第8表面改質剤の合計の含有量は、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる有機溶媒の量を基準値として、好ましくは1重量ppm以上、より好ましくは10重量ppm以上、さらに好ましくは50重量ppm以上であり、好ましくは50000重量ppm以下、より好ましくは10000重量ppm以下、さらに好ましくは1000重量ppm以下である。
上記上限値以下であることで、溶媒への溶解性を担保でき、また上記下限値以上であることで、表面改質剤としての機能を発現することができる。
【0103】
<第7表面改質剤と第8表面改質剤を用いることによる効果>
有機電界発光素子形成用組成物中に第7表面改質剤と第8表面改質剤を含有させることにより、隔壁内に有機膜を湿式成膜した際に、良好な膜厚均一性を得ることができるメカニズムは、以下のように推定している。
本発明においては、分子量が1000未満の第8表面改質剤は、分子量が低いため液表面で分子がより配列するため平坦性の悪化を抑制する機能が強い。一方、分子量1000以上の第7表面改質剤を用いることで、液表面には分子の配列が起こりにくいが、乾燥中に第7表面改質剤の濃度が上昇して粘度が急激に増大するため、隔壁への溶液の濡れ上がりを抑制する機能を有しているものと考えられる。このことから、第8表面改質剤により隔壁内の有機膜の平坦性は向上し、さらに第7表面改質剤により隔壁際の濡れ上がりによる膜厚の増大を抑制しているため、平坦性がよくなるものと考えられる。
【0104】
[有機電界発光素子形成用組成物の第1~第4の態様に共通する態様]
以下、本発明の有機電界発光素子形成用組成物の第1~第4の態様に共通する態様について説明する。
【0105】
(有機電界発光素子形成用組成物の組成)
本発明の有機電界発光素子形成用組成物において、電荷注入輸送材料の含有量は、有機電界発光素子形成用組成物に含まれる有機溶媒の量を基準値(100重量部)として、通常0.1重量部以上、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1.0重量部以上であり、また、通常50重量部以下、好ましくは20重量部、より好ましくは10重量部以下である。
有機電界発光素子形成用組成物において、電荷注入輸送材料の含有量が上記下限値以上であれば、膜形成がしやすく、上記上限値以下であれば有機溶媒中で溶解状態を保持しやすい傾向にある。
本発明の有機電界発光素子形成用組成物において、有機電界発光素子形成用組成物の全体(100重量%)に占める有機溶媒の含有量は、通常50重量%以上、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上であり、通常99.9重量%以下、好ましくは99.5重量%以下、さらに好ましくは99重量%以下である。
有機電界発光素子形成用組成物の全体(100重量%)に占める有機溶媒の含有量が上記下限値以上であれば、電荷注入輸送層を析出させることなく溶解状態を保持しやすく、上記上限値以下であれば、膜形成がしやすい。
【0106】
(有機電界発光素子形成用組成物に含まれるその他の構成)
本発明の有機電界発光素子形成用組成物は、上述の電荷注入輸送材料、有機溶媒及び各表面改質剤以外に、適宜他の材料を含んでいてもよい。
例えば、発光に寄与するドーパント材料を含んでいてもよい。発光に関するドーパント材料の含有量は、電荷を効率よく発光させられる観点から、通常0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上であり、また、濃度過多による発光の消光を避ける観点から通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
また、Irganox1010やブチルヒドロキシアニソール等に代表される酸化防止剤等を含んでいてもよい。
【0107】
[有機電界発光素子]
本発明の有機電界発光素子は、本発明の有機電界発光素子形成用組成物を乾燥させてなる有機膜を含む。本発明の有機電界発光素子は、隔壁で区画された領域に、本発明の有機電界発光素子形成用組成物を塗布後、有機電界発光素子形成用組成物を乾燥して得られた有機膜を有するものが好ましい。
有機電界発光素子における全ての有機膜が本発明の有機電界発光素子形成用組成物を用いて形成される必要はなく、本発明の有機電界発光素子は、いずれかの有機膜が本発明の有機電界発光素子形成用組成物を用いて形成されていればよい。他の有機膜は従来公知の材料、方法を適宜用いて形成すればよいが、本発明の有機電界発光素子において、湿式成膜される全ての有機膜が本発明の有機電界発光素子形成用組成物を用いて形成されることが好ましい。
【0108】
本発明の有機電界発光素子は、基板上に直接又は他の層を介して形成された隔壁で区画された複数の領域を有することが好ましい。該領域が、有機電界発光素子の画素に相当する。
本発明に係る有機電界発光素子の一般的層構成の一例を図1に示す。
図1は本発明に係る有機電界発光素子10の構造例を示す断面の模式図であり、図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。なお、隔壁については省略している。
【0109】
上記各層を形成する有機膜の膜厚は、通常1~1000nm程度であるが、10~500nmが好ましい。膜厚が上記下限値以上であれば、本来必要とされる物性(電荷の注入特性、輸送特性、閉じ込め特性)を得やすく、ゴミ等の異物による画素欠陥が生じる可能性が低くなる。また、膜厚が上記上限値以下であれば、有機膜の電気抵抗が低く抑えられ、駆動電圧を低くすることができる。
【0110】
[有機膜の製造方法]
本発明の有機膜の製造方法は、隔壁で区画された領域への本発明の有機電界発光素子形成用組成物の塗布、及び塗布された有機電界発光素子形成用組成物の乾燥を含む。
本発明の隔壁で区画された領域の大きさは、特に限定されないが、長軸:600μm以下、短軸:300μm以下の時に特に効果が大きい。開口面積がこの範囲であると、隔壁近傍における平坦性が悪化する面積の割合が大きく、本発明の効果が特に大きい。
有機電界発光素子形成用組成物の塗布及び乾燥は、従来公知の湿式成膜法を用いることができる。ここで、湿式成膜法とは、溶媒を含む組成物を、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等湿式を用いて成膜する方法をいう。この中でも特に、インクジェット法を用いて塗布することが好ましい。塗布後の乾燥方法については、真空乾燥、加熱乾燥等、従来公知の乾燥方法を適宜用いればよいが、真空乾燥が好ましい。
【0111】
(隔壁の形成方法)
隔壁の形成方法も従来公知の形成方法を用いればよい。例えば、隔壁形成用の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、感光性樹脂組成物層を形成する塗布工程と、感光性樹脂組成物層を露光する露光工程と、を含む方法が挙げられる。このような隔壁の形成方法の具体例としては、インクジェット法とフォトリソグラフィー法とが挙げられる。
隔壁を形成するための感光性樹脂組成物としては、(A)エチレン性不飽和化合物、(B)光重合開始剤、(C)アルカリ可溶性樹脂を含有する感光性樹脂組成物を挙げることができる。
また、隔壁を形成するための感光性樹脂組成物は、撥液性の隔壁を形成する観点から(D)撥液剤を含有してもよく、また、前記(A)~(C)成分を撥液剤としての作用を示すものを用いてもよい。また、隔壁を形成するための感光性樹脂組成物は、通常(E)溶剤を含有する。
【0112】
(A)成分;エチレン性不飽和化合物
隔壁を形成するための感光性樹脂組成物は、(A)エチレン性不飽和化合物を含有する。(A)エチレン性不飽和化合物を含むことで、高感度となると考えられる。
ここで使用されるエチレン性不飽和化合物としては、エチレン性不飽和結合を分子内に1個以上有する化合物を意味するが、重合性、架橋性、及びそれに伴う露光部と非露光部の現像液溶解性の差異を拡大できる等の点から、エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物であることが好ましく、また、その不飽和結合は(メタ)アクリロイルオキシ基に由来するもの、つまり、(メタ)アクリレート化合物であることがさらに好ましい。
【0113】
特に、1分子中にエチレン性不飽和結合を2個以上有する多官能エチレン性単量体を使用することが望ましい。多官能エチレン性単量体が有するエチレン性不飽和基の数は特に限定されないが、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上であり、また、好ましくは15以下、より好ましくは10以下である。上記下限値以上とすることで重合性が向上して高感度となる傾向があり、上記上限値以下とすることで現像性がより良好となる傾向がある。
【0114】
エチレン性不飽和化合物の具体例としては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物と、不飽和カルボン酸及び多塩基性カルボン酸とのエステル化反応により得られるエステルなどが挙げられる。
【0115】
これらの中でも、適正なテーパー角度と感度の観点から(A)エチレン性不飽和化合物として、エステル(メタ)アクリレート類又はウレタン(メタ)アクリレート類を用いることが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2-トリスアクリロイロキシメチルエチルフタル酸、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートの二塩基酸無水物付加物、ペンタエリスリトールトリアクリレートの二塩基酸無水物付加物等を用いることがより好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0116】
(B)成分;光重合開始剤
隔壁を形成するための感光性樹脂組成物は、(B)光重合開始剤を含有する。光重合開始剤は、活性光線により、前記(A)エチレン性不飽和化合物が有するエチレン性不飽和結合を重合させる化合物であれば特に限定されるものではなく、公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0117】
感光性樹脂組成物は、(B)光重合開始剤として、この分野で通常用いられている光重合開始剤を使用することができる。このような光重合開始剤としては、例えば、ヘキサアリールビイミダゾール系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシム系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ヒドロキシベンゼン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アントラキノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、ハロゲン化炭化水素誘導体系光重合開始剤、有機硼素酸塩系光重合開始剤、オニウム塩系光重合開始剤、スルホン化合物系光重合開始剤、カルバミン酸誘導体系光重合開始剤、スルホンアミド系光重合開始剤、トリアリールメタノール系光重合開始剤が挙げられる。
【0118】
これらの光重合開始剤は、感光性樹脂組成物中にその1種が単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。これらの光重合開始剤の中で、オキシム系光重合開始剤、ヘキサアリールビイミダゾール化合物が好ましい。
また上記光重合開始剤と併用して、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としてはメルカプト基含有化合物や、四塩化炭素等が挙げられ、連鎖移動効果が高い傾向があることからメルカプト基を有する化合物を用いることがより好ましい。S-H結合エネルギーが小さいことによって結合開裂が起こりやすく、水素引きぬき反応や連鎖移動反応を起こしやすいためであると考えられる。感度向上や表面硬化性に有効である。
【0119】
メルカプト基含有化合物としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、2-メルカプト-4(3H)-キナゾリン、β-メルカプトナフタレン、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン等の芳香族環を有するメルカプト基含有化合物;へキサンジチオール、デカンジチオール、ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリスヒドロキシエチルトリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン等の脂肪族系のメルカプト基含有化合物、等が挙げられる。
これらは種々のものが1種を単独で、或いは2種以上を混合して使用できる。
【0120】
(C)成分;アルカリ可溶性樹脂
隔壁を形成するための感光性樹脂組成物は、(C)アルカリ可溶性樹脂を含有する。アルカリ可溶性樹脂としては現像液で現像可能なものであれば特に限定されないが、現像液としてはアルカリ現像液が好ましいため、アルカリ可溶性樹脂を用いる。アルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシ基又は水酸基含有の各種樹脂などが挙げられる。中でも、適度なテーパー角の隔壁が得られること及び隔壁の熱溶融による流出が抑えられ撥液性を保持できることなどより、カルボキシル基を有するものが好ましく、さらにエチレン性不飽和基を有するものであることがより好ましい。
【0121】
<カルボキシル基含有(共)重合体(1)>
カルボキシル基含有(共)重合体の代表的なものとしては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、ヒドロキシスチレンなどのスチレン類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルモルホリンなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリロニトリルなどの(メタ)アクリロニトリル類、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、酢酸ビニルなどのビニル化合物類、などとの共重合体が挙げられる。
【0122】
<カルボキシル基含有(共)重合体(2)>
また、前記の不飽和カルボン酸に代えて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに多塩基酸(無水物)を付加させた化合物と、前記のスチレン類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリロニトリル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニル化合物類、などとの共重合体が挙げられる。
【0123】
<不飽和カルボン酸と2種以上のエチレン性不飽和基含有化合物との共重合体>
側鎖にエチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有(共)重合体として、例えば、アリル(メタ)アクリレート、3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シンナミル(メタ)アクリレート、クロトニル(メタ)アクリレート、メタリル(メタ)アクリレート、N,N-ジアリル(メタ)アクリルアミドなどの2種以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、又は、ビニル(メタ)アクリレート、1-クロロビニル(メタ)アクリレート、2-フェニルビニル(メタ)アクリレート、1-プロペニル(メタ)アクリレート、ビニルクロトネート、ビニル(メタ)アクリルアミドなどの2種以上のエチレン性不飽和基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸、又はさらに不飽和カルボン酸エステルなどとを、前者のエチレン性不飽和基を有する化合物の全体に占める割合を10~90モル%、好ましくは30~80モル%程度となるように共重合させて得られた共重合体などが挙げられる。
【0124】
<エポキシ基含有不飽和化合物変性カルボキシル基含有(共)重合体>
また、側鎖にエチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有(共)重合体として、例えば、カルボキシル基含有(共)重合体に、エポキシ基含有不飽和化合物を反応させて、カルボキシル基含有(共)重合体のカルボキシル基の一部にエポキシ基含有不飽和化合物のエポキシ基を付加させて変性した変性カルボキシル基含有(共)重合体が挙げられる。
【0125】
そのカルボキシル基含有(共)重合体としては、感度の観点から、前述したカルボキシル基含有(共)重合体の(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸共重合体、及び、スチレン-(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸共重合体などが好ましい。
また、そのエポキシ基含有不飽和化合物としては、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジルイソクロトネート、クロトニルグリシジルエーテル、イタコン酸モノアルキルモノグリシジルエステル、フマル酸モノアルキルモノグリシジルエステル、マレイン酸モルアルキルモノグリシジルエステルなどの脂肪族エポキシ基含有不飽和化合物、及び、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロペンチルメチル(メタ)アクリレート、7,8-エポキシ〔トリシクロ[5.2.1.0]デシ-2-イル〕オキシエチル(メタ)アクリレートなどの脂環式エポキシ基含有不飽和化合物が挙げられる。
【0126】
<不飽和カルボン酸変性エポキシ基及びカルボキシル基含有(共)重合体>
また、側鎖にエチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有(共)重合体として、例えば、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、前述の脂肪族エポキシ基含有不飽和化合物又は脂環式エポキシ基含有不飽和化合物、又はさらに不飽和カルボン酸エステルやスチレンなどとを、前者のカルボキシル基含有不飽和化合物の全体に占める割合を10~90モル%、好ましくは30~80モル%程度となるように共重合させて得られた共重合体に、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸を反応させて、該共重合体のエポキシ基に不飽和カルボン酸のカルボキシル基を付加させて変性した変性エポキシ基及びカルボキシル基含有(共)重合体が挙げられる。
【0127】
<酸変性エポキシ基含有共重合体>
また、側鎖にエチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有共重合体として、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレート5~95モル%と、(メタ)アクリル酸エステルなどのエチレン性不飽和化合物通常5~95モル%との共重合体(以下、エポキシ基含有共重合体と略記する場合がある)を、該共重合体に含まれるエポキシ基の通常10~100モル%に、エチレン性不飽和モノカルボン酸を付加し、さらに付加したときに生成する水酸基の通常10~100モル%に、多塩基酸(無水物)を付加して得られる酸変性エポキシ基含有共重合体が挙げられる。
【0128】
<エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(酸変性エポキシ樹脂)>
カルボキシル基及びエチレン性不飽和基含有樹脂として、例えば、エポキシ樹脂のエチレン性不飽和基モノカルボン酸付加体に、さらに多塩基酸(無水物)が付加された、カルボキシル基及びエチレン性不飽和基含有エポキシ樹脂、つまりいわゆるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が挙げられる。即ち、エポキシ樹脂のエポキシ基に、エチレン性不飽和モノカルボン酸のカルボキシ基が開環付加されることにより、エポキシ樹脂にエステル結合(-COO-)を介してエチレン性不飽和結合が付加されると共に、その際生じた水酸基に、多塩基酸(無水物)の一方のカルボキシ基が付加されたものが挙げられる。
【0129】
ここで、エポキシ樹脂とは、熱硬化により樹脂を形成する以前の原料化合物をも含めて言うこととし、そのエポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂の中から適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールSエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、フェノールとジシクロペンタンとの重合エポキシ樹脂、ジハイドロオキシルフルオレン型エポキシ樹脂、ジハイドロオキシルアルキレンオキシルフルオレン型エポキシ樹脂、9,9-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル化物、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)アダマンタンのジグリシジルエーテル化物、などが挙げられる。
【0130】
また、エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等、及び、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート無水琥珀酸付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートテトラヒドロ無水フタル酸付加物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート無水琥珀酸付加物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート無水フタル酸付加物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートテトラヒドロ無水フタル酸付加物、(メタ)アクリル酸とε-カプロラクトンとの反応生成物などが挙げられる。
【0131】
また、多塩基酸(無水物)としては、例えば、琥珀酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、及びそれらの無水物などが挙げられる。
【0132】
<変性フェノール樹脂>
カルボキシル基及びエチレン性不飽和基含有樹脂として、例えば、フェノール樹脂のエチレン性不飽和基含有エポキシ化合物付加体に、多塩基酸(無水物)が付加された、カルボキシル基及びエチレン性不飽和基含有フェノール樹脂が挙げられる。即ち、フェノール樹脂のフェノール性水酸基に、エチレン性不飽和基含有エポキシ化合物のエポキシ基が開環付加されることにより、フェノール樹脂にエステル結合(-COO-)を介してエチレン性不飽和結合が付加されると共に、その際生じた水酸基に、多塩基酸(無水物)の一方のカルボキシ基が付加されたものが挙げられる。
【0133】
ここで、フェノール樹脂としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,5-キシレノール、3,5-キシレノール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、プロピルフェノール、n-ブチルフェノール、t-ブチルフェノール、1-ナフトール、2-ナフトール、4,4’-ビフェニルジオール、ビスフェノール-A、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4-ベンゼントリオール、安息香酸、4-ヒドロキシフェニル酢酸、サリチル酸、フロログルシノールなどのフェノール類の少なくとも1種を、酸触媒下、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類、又は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、の少なくとも1種と重縮合させたノボラック樹脂、及び、その重縮合における酸触媒に代えてアルカリ触媒を用いる以外は同様にして重縮合させたレゾール樹脂などが挙げられる。ここで、上記フェノール類とアルデヒド類との縮合反応は、無溶剤下又は溶剤中で行われる。
【0134】
<その他のアルカリ可溶性樹脂>
その他、アルカリ現像液に対して劣化しやすい基板の有機電界発光素子に隔壁を設けようとする場合であって、弱アルカリ性のアルカリ性化合物を含む現像液、或いはアルカリ性化合物を含有しない現像液を用いる場合においては、アルカリ可溶性樹脂として、ポリビニルアルコール、あるいはカルボキシル基含有(共)重合体(1)で挙げた共単量体(好ましい例としては、酢酸ビニルなど)を0.1~40モル%、好ましくは1~30モル%共重合させたビニルアルコール共重合体、あるいはカルボキシル基含有(共)重合体(1)で挙げた共重合体をエステル化反応により0.1~40モル%、好ましくは1~30モル%導入した変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。
【0135】
(D)成分;撥液剤
隔壁を形成するための感光性樹脂組成物は、撥液剤を含有していてもよい。特に、インクジェット法で有機電界発光素子を作成する場合には撥液剤を含有することが好ましく、撥液剤を含有することでそれが隔壁の表面に撥液性を付与できることから、得られる隔壁を有機層の画素ごとの混色を防ぐものとすることができる傾向がある。
【0136】
撥液剤としては、シリコン含有化合物やフッ素系化合物が挙げられ、好ましくは、架橋基を含有する撥液剤(以下、「架橋基含有撥液剤」と称す場合がある。)が挙げられる。架橋基としては、エポキシ基又はエチレン性不飽和基が挙げられ、現像液の撥液成分の流出抑制の観点から、好ましくはエチレン性不飽和基である。
架橋基含有撥液剤を用いる場合には、形成した塗布膜を露光する際にその表面での架橋反応を加速することができ、撥液剤が現像処理で流出しにくくなり、その結果、得られる隔壁を高い撥液性を示すものとすることができると考えられる。
その他、重合禁止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、熱重合開始剤、着色剤、シランカップリング剤を適宜使用してもよい。
【0137】
(E)成分;溶剤
隔壁を形成するための感光性樹脂組成物は、通常溶剤を含有し、前述の各成分を溶剤に溶解又は分散させた状態で使用される(以下、溶剤を含む感光性樹脂組成物を「感光性樹脂組成物溶液」と記すことがある。)。その溶剤としては、特に制限は無いが、例えば、以下に記載する有機溶剤が挙げられる。
【0138】
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコール-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、メトキシメチルペンタノール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルのようなグリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルのようなグリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-1-ブチルアセテートのようなグリコールアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサノールジアセテートなどのグリコールジアセテート類;シクロヘキサノールアセテートなどのアルキルアセテート類;アミルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジヘキシルエーテルのようなエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、メトキシメチルペンタノンのようなケトン類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、メトキシメチルペンタノール、グリセリン、ベンジルアルコールのような1価又は多価アルコール類;n-ペンタン、n-オクタン、ジイソブチレン、n-ヘキサン、ヘキセン、イソプレン、ジペンテン、ドデカンのような脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシルのような脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンのような芳香族炭化水素類;アミルホルメート、エチルホルメート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、メチルイソブチレート、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸メチル、エチルカプリレート、ブチルステアレート、エチルベンゾエート、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、γ-ブチロラクトンのような鎖状又は環状エステル類;3-メトキシプロピオン酸、3-エトキシプロピオン酸のようなアルコキシカルボン酸類;ブチルクロライド、アミルクロライドのようなハロゲン化炭化水素類;メトキシメチルペンタノンのようなエーテルケトン類;アセトニトリル、ベンゾニトリルのようなニトリル類:テトラヒドロフラン、ジメチルテトラヒドロフラン、ジメトキシテトラヒドロフランのようなテトラヒドロフラン類などである。
【0139】
インクジェット法では、溶剤による希釈等により粘度調整された感光性樹脂組成物をインクとして用い、所定の隔壁のパターンに沿ってインクジェット法によりインク液滴を基板上に吐出することで感光性樹脂組成物を基板上に塗布して未硬化の隔壁のパターンを形成する。そして、未硬化の隔壁のパターンを露光して、基板上に硬化した隔壁を形成する。未硬化の隔壁のパターンの露光は、マスクを用いないことの他は、後述するフォトリソグラフィー法における露光工程と同様に行われる。
【0140】
フォトリソグラフィー法では、感光性樹脂組成物を、基板の隔壁が形成される領域全面に塗布して感光性樹脂組成物層を形成する。形成された感光性樹脂組成物層を、所定の隔壁のパターンに応じて露光した後、露光された感光性樹脂組成物層を現像して、基板上に隔壁が形成される。
フォトリソグラフィー法における、感光性樹脂組成物を基板上に塗布する塗布工程では、隔壁が形成されるべき基板上に、ロールコーター、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いて感光性樹脂組成物を塗布し、必要に応じて、真空乾燥等の乾燥により溶媒を除去して、感光性樹脂組成物層を形成する。
【0141】
次いで、露光工程では、ネガ型のマスクを利用して、感光性樹脂組成物層に紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射し、感光性樹脂組成物層をバンクのパターンに応じて部分的に露光する。露光には、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯等の紫外線を発する光源を用いることができる。露光量は感光性樹脂組成物の組成によっても異なるが、例えば10~400mJ/cm2程度が好ましい。
【0142】
次いで、現像工程では、隔壁のパターンに応じて露光された感光性樹脂組成物層を現像液で現像することにより隔壁を形成する。現像方法は特に限定されず、浸漬法、スプレー法等を用いることができる。現像液の具体例としては、ジメチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機系のものや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、4級アンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。又、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。
その後、現像後の隔壁にポストベークを施して加熱硬化する。ポストベークは、150~250℃で15~60分間が好ましい。
【実施例
【0143】
以下、実施例を示して本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明はその要旨を逸脱しない限り任意に変更して実施できる。
【0144】
(実施例1)
<有機電界発光素子用組成物の調製>
安息香酸ブチルとジフェニルエーテル、酢酸2-フェノキシエチルを重量比で50:49:1となるように混合した有機溶媒1に、第1表面改質剤、第3表面改質剤、第5表面改質剤、又は第7表面改質剤(以下、実施例において、これらを総称して「表面改質剤A」と言う。)としてKF-96 10cs(信越化学社製)を100重量ppm(即ち、有機溶媒1の重量を100重量部として、0.01重量部のKF-96 10csを用いた。)、第2表面改質剤、第4表面改質剤、第6表面改質剤、又は第8表面改質剤(以下、実施例において、これらを総称して「表面改質剤B」と言う。)としてSP-O30V(花王社製)を500重量ppm(即ち、有機溶媒1の重量を100重量部として、0.05重量部のSP-O30Vを用いた。)を混合した溶液を調製した。
次いで、電荷注入輸送材料である芳香族アミン誘導体を単位骨格とする重量平均分子量4万のポリマー(P-1)及び(P-2)と、電子受容性化合物(A-1)を重量比で75:25:20となるように混合し、先に調製した溶液に、有機溶媒1の重量を100重量部として、これらの混合物が1.0重量部となるように溶解させ、有機電界発光素子形成用組成物1を調製した。
【0145】
有機電界発光素子形成用組成物1において、前述の方法で表面張力の測定を行ったところ、有機溶媒1単独の表面張力、即ちSaは36.0(mN/m)、有機溶媒1に上記表面改質剤Aのみを100重量ppm溶解させた場合の表面張力、即ちS1x、S1yは29.0(mN/m)、有機溶媒1に上記表面改質剤Bのみを100重量ppm溶解させた場合の表面張力、即ちS2yは36.4(mN/m)、有機溶媒1に上記表面改質剤Bのみを1000重量ppm溶解させた場合の表面張力は35.6(mN/m)であった。これらの値から、有機溶媒1に上記表面改質剤Bのみを500重量ppm溶解させた場合の表面張力、即ちS2xは35.6~36.4(mN/m)の範囲になると推定される。これらの値から、有機電界発光素子形成用組成物1は、前記式(1)~(4)を満たすことが判る。
【0146】
また、純水の表面張力、即ちSa’は72.7(mN/m)、純水に上記第1表面改質剤のみを1000重量ppm溶解させた場合の表面張力、即ちS1zは61.0(mN/m)、純水に上記第2表面改質剤のみを1000重量ppm溶解させた場合の表面張力、即ちS2zは32.5(mN/m)であり、有機電界発光素子形成用組成物1は、前記式(5)を満たすことが判る。
【0147】
<隔壁内への有機膜の形成>
図2に、本態様の隔壁内への有機膜の形成の様子を模式図として示す。
ITO基板20上に撥液性を有するアクリル系の樹脂1を用いて、角丸長方形(長軸長(図2中、bで示されている。);0.3mm、短軸長(図2中、aで示されている。);0.1mm)型の開口部(「隔壁で区画された領域」に相当する。)を有するように、前述のフォトリソグラフィーによる形成方法により厚さ1.7μmの隔壁を形成した。各開口部のピッチは短軸方向に0.2mmピッチ(図2中、cで示されている。)、長軸方向に0.5mmピッチ(図2中、dで示されている。)とした。次に、上記隔壁を形成したITO基板の所望の開口部に、インクジェットプリンター(富士フイルム社製DMP-2831)を用いて、有機電界発光素子形成用組成物1を乾燥膜厚が約30nmとなるように塗布した。その後、真空乾燥により有機溶媒を除去して有機電界発光素子形成用組成物1を乾燥し、230℃で30分間焼成し、有機膜を作成し、有機膜を形成した開口部12を形成した。
実施例1では、図2に示すように、開口部の短軸方向において5列おきに有機膜を形成しない開口部13を設けた。
【0148】
<<隔壁内の有機膜の平坦度測定>>
有機膜の膜厚は、有機膜が形成されたITO基板を触針式の表面粗さ計(テンコール社製P15)を用いて測定した。表面粗さ計の触針の走査は、図2のA-B間について、隔壁、有機膜を形成した開口部、有機膜を形成しない開口部がそれぞれ連続して走査されるようにして行った。つまり、走査方向は短軸方向とし、開口部の長軸方向における中央部を横断するようにし、かつ、有機膜を形成した開口部を、有機膜を形成しない開口部で挟むように測定を実施した。次に、測定により得られたA-B間のプロファイルデータを、両端の有機膜を形成していない領域のデータを基準にレベリングを行い、プロファイルデータの傾きを修整し、有機膜を形成していない領域に対する有機膜を形成した領域の高さを有機膜の膜厚とみなした。
【0149】
次に、走査した開口部の内、中央の2つの有機膜を形成した開口部のプロファイルデータを平均した後、有機膜の開口部中央4μmの領域の平均膜厚Daを算出し、Daとの差が5nmを超える領域の開口部の幅Xμmを算出した。そして、開口部の幅Yμmにおける、Daとの差が5nm以下の領域の割合、即ち、(Y-X)/Y(%)の値を平坦度とした。開口部の幅Yについては、有機膜を形成しない開口部のプロファイルデータより算出した。平坦度の値が大きいほど、開口部における有機膜の膜厚の均一性が良好であることを意味する。
実施例1の有機電界発光素子形成用組成物1からなる有機膜の平坦度は82%であった。
【0150】
(実施例2)
実施例1の有機電界発光素子形成用組成物1の調製において、表面改質剤Bとして、SP-O30V(花王社製)の代わりにエマルゲンA500(花王社製)を用いて調製したこと以外は(実施例2で用いた有機電界発光素子形成用組成物を、「有機電界発光素子形成用組成物2」とする。)、実施例1と同様に有機膜を作製し、平坦度の測定を行った。
【0151】
有機電界発光素子形成用組成物2において、前述の方法で表面張力の測定を行ったところ、有機溶媒1に上記表面改質剤Bのみを100重量ppm溶解させた場合の表面張力、即ちS2yは36.2(mN/m)、有機溶媒1に上記表面改質剤Bのみを1000重量ppm溶解させた場合の表面張力は36.0(mN/m)であった。これらの値から、有機溶媒1に上記表面改質剤Bのみを500重量ppm溶解させた場合の表面張力、即ちS2xは36.0~36.2(mN/m)の範囲になると推定される。これらの値から、有機電界発光素子形成用組成物2は、前記式(1)~(4)を満たすことが判る。
【0152】
また、純水に上記表面改質剤Bのみを1000重量ppm溶解させた場合の表面張力、即ちS2zは45.6(mN/m)であり、有機電界発光素子形成用組成物2は、前記式(5)を満たすことが判る。
実施例2の有機電界発光素子形成用組成物2からなる有機膜の平坦度は82%であった。
【0153】
(比較例1)
実施例1の有機電界発光素子形成用組成物1の調製において、SP-O30Vを用いず、表面改質剤KF-96 10csのみを100重量ppm、混合させたこと以外は、実施例1と同様に有機膜を形成し平坦度を測定した。
比較例1の有機膜の平坦度は64%であった。
【0154】
実施例1、2、及び比較例1の結果を表1に示す。
【0155】
【表1】
【0156】
(実施例3)
<有機電界発光素子用組成物の作成>
安息香酸イソアミルに、表面改質剤AとしてKF-96 10cs(信越化学社製)を100重量ppm、表面改質剤BとしてSP-O30V(花王社製)を500重量ppmを混合した溶液を調製した。次いで、電荷注入輸送材料である芳香族アミン誘導体を単位骨格とする重量平均分子量4万のポリマー(P-3)を、先に調製した溶液に固形分濃度1.0重量%となるように溶解させ、有機電界発光素子形成用組成物3を調製した。
【0157】
本実施例3において、前述の方法で表面張力の測定を行ったところ、安息香酸イソアミル単独の表面張力、即ちSaは31.5(mN/m)、安息香酸イソアミルに上記表面改質剤Aのみを100重量ppm溶解させた場合の表面張力、即ちS1x、S1yは29.4(mN/m)、安息香酸イソアミルに上記表面改質剤Bのみを100重量ppm溶解させた場合の表面張力、即ちS2yは32.0(mN/m)、安息香酸イソアミルに上記表面改質剤Bのみを1000重量ppm溶解させた場合の表面張力は32.0(mN/m)であった。これらの値から、安息香酸イソアミルに上記表面改質剤Bのみを500重量ppm溶解させた場合の表面張力、即ちS2xも32.0(mN/m)になると推定される。これらの値から、有機電界発光素子形成用組成物3は、前記式(1)~(4)を満たすことが判る。
また、純水に上記表面改質剤Bのみを1000重量ppm溶解させた場合の表面張力、即ちS2zは32.5(mN/m)であり、有機電界発光素子形成用組成物3は、前記式(5)を満たすことが判る。
【0158】
<隔壁内への有機膜の2層膜の形成>
実施例1において、開口部の短軸方向において7列おきに有機膜を形成しない開口部を設けたこと以外は同様にして、有機電界発光素子形成用組成物1からなる有機膜を有する有機膜パターン1を形成した。
次に、上記有機膜パターン1に対し、有機電界発光素子形成用組成物1からなる有機膜を形成しない開口部の列に加え、その両側の1列ずつにも有機膜を形成しないようなパターンとなるように、所望の開口部に対して、インクジェットプリンター(富士フイルム社製DMP-2831)を用いて、有機電界発光素子形成用組成物3を乾燥膜厚が約20nmとなるように塗布した。その後、真空乾燥により有機溶媒を除去して有機電界発光素子形成用組成物3を乾燥し、230℃で30分間焼成し、有機膜を作成し、有機電界発光素子形成用組成物1からなる有機膜及び有機電界発光素子形成用組成物3からなる有機膜を有する有機膜パターン2を形成した。
【0159】
<<隔壁内の有機膜の平坦度測定>>
有機膜の膜厚は、実施例1と同様、有機膜が形成されたITO基板を触針式の表面粗さ計(テンコール社製P15)を用いて測定した。ここでは、積層された有機膜の上層側の有機電界発光素子形成用組成物3からなる有機膜の平坦度を評価するため、有機電界発光素子形成用組成物1からなる有機膜の膜厚については、有機膜を形成しない開口部を基準に、有機電界発光素子形成用組成物1からなる有機膜のみが形成されている領域の平均膜厚プロファイル1を算出した。次に、有機電界発光素子形成用組成物1からなる有機膜のみが形成されている領域を基準に、有機電界発光素子形成用組成物1からなる有機膜及び有機電界発光素子形成用組成物3からなる有機膜が形成されている領域の平均膜厚プロファイル2を算出し、前述の平均膜厚プロファイル1を差し引くことで、有機電界発光素子形成用組成物3からなる有機膜のみの平均膜厚プロファイルを算出した。このプロファイルデータから、平坦度を算出することで、積層膜における上層の有機電界発光素子形成用組成物3からなる有機膜単独の平坦度が評価できることとなる。
実施例3の有機電界発光素子形成用組成物3からなる有機膜の平坦度は89%であった。
【0160】
(比較例2)
実施例3の有機電界発光素子形成用組成物3の調製において、SP-O30Vを用いず、表面改質剤KF-96 10csのみを10重量ppm混合させたこと以外は、実施例3と同様に有機膜を形成し、積層膜における上層の有機膜の平坦度を測定した。
比較例2の積層膜における上層の有機膜の平坦度は67%であった。
【0161】
(比較例3)
比較例2において、表面改質剤KF-96 10csの含有量を100重量ppmに変更したこと以外は、比較例2と同様に有機膜を形成し、積層膜における上層の有機膜の平坦度を測定した。
比較例3の積層膜における上層の有機膜の平坦度は76%であった。
【0162】
(比較例4)
実施例3の有機電界発光素子形成用組成物3の調製において、表面改質剤KF-96 10csを10重量ppm、SP-O30V(花王社製)を500重量ppmを混合したこと以外は、実施例3と同様に有機膜を形成し、積層膜における上層の有機膜の平坦度を測定した。
比較例4の積層膜における上層の有機膜の平坦度は65%であった。
【0163】
実施例3、比較例2、比較例3及び比較例4の結果を表2に示す。
【0164】
【表2】
【0165】
(実施例4)
<有機電界発光素子用組成物の作成>
安息香酸イソアミルに代えて有機溶媒1を用いたこと以外は、実施例3に記載の有機電界発光素子形成用組成物3と同様にして有機電界発光素子形成用組成物4を調製した。
次に、有機溶媒1に、表面改質剤AとしてKF-96 10cs(信越化学社製)を100重量ppm、表面改質剤BとしてSP-O30V(花王社製)を500重量ppmを混合した溶液を調製した。次いで、下記に示す電荷注入輸送材料である化合物(H-1)と(H-2)と発光材料である(D-1)を重量比で30:70:20となるように混合し、先に調製した溶液に固形分濃度2.4重量%となるように溶解させ、有機電界発光素子形成用組成物5を作成した。
【0166】

【化1】
【0167】
【化2】
【0168】
【化3】
【0169】
上述の有機電界発光素子形成用組成物5は、有機溶媒及び表面改質剤については有機電界発光素子形成用組成物1と同様であるため、前記式(1)~(4)、及び前記式(5)を満たすことが判る。
【0170】
<隔壁内への有機膜の3層膜の形成>
実施例3と同様にして、有機膜パターン1を形成した。
次に、上記有機膜パターン1に対し、有機電界発光素子形成用組成物1からなる有機膜を形成した開口部に対して、インクジェットプリンター(富士フイルム社製DMP-2831)を用いて、有機電界発光素子形成用組成物4を乾燥膜厚が約20nmとなるように塗布した。その後、真空乾燥により有機溶媒を除去して有機電界発光素子形成用組成物4を乾燥し、230℃で30分間焼成し、有機膜を作成し、有機電界発光素子形成用組成物1からなる有機膜及び有機電界発光素子形成用組成物4からなる有機膜を有する有機膜パターン3を形成した。
【0171】
次に、上記有機膜パターン3に対し、有機膜を形成しない開口部の列に加え、その両側の1列ずつにも有機膜を形成しないようなパターンとなるように、所望の開口部に対して、インクジェットプリンター(富士フイルム社製DMP-2831)を用いて、有機電界発光素子形成用組成物5を乾燥膜厚が約60nmとなるように塗布した。その後、真空乾燥により有機溶媒を除去して有機電界発光素子形成用組成物5を乾燥し、120℃で20分間焼成し、有機電界発光素子形成用組成物1からなる有機膜、有機電界発光素子形成用組成物4からなる有機膜及び有機電界発光素子形成用組成物5からなる有機膜を有する有機膜パターン4を形成した。
【0172】
<<隔壁内の有機膜の平坦度測定>>
有機膜の膜厚は、実施例1と同様、有機膜が形成されたITO基板を触針式の表面粗さ計(テンコール社製P15)を用いて測定した。ここでは、積層された有機膜の最上層の有機電界発光素子形成用組成物5からなる有機膜の平坦度を評価するため、有機電界発光素子形成用組成物1からなる有機膜上に有機電界発光素子形成用組成物4からなる有機膜が積層された積層膜の膜厚については、有機膜を形成しない開口部を基準に、有機電界発光素子形成用組成物1からなる有機膜上に有機電界発光素子形成用組成物4からなる有機膜が積層された積層膜の平均膜厚プロファイル1’を算出する。次に、有機電界発光素子形成用組成物1からなる有機膜上に有機電界発光素子形成用組成物4からなる有機膜が積層された積層膜のみが形成されている領域を基準に、有機電界発光素子形成用組成物1からなる有機膜上に有機電界発光素子形成用組成物4からなる有機膜が積層された積層膜及び有機電界発光素子形成用組成物5からなる有機膜が形成されている領域の平均膜厚プロファイル2’を算出し、前述の平均膜厚プロファイル1’を差し引くことで、有機電界発光素子形成用組成物5からなる有機膜のみの平均膜厚プロファイルを算出した。このプロファイルデータから、平坦度を算出することで、3層膜における最上層の有機電界発光素子形成用組成物5からなる有機膜単独の平坦度が評価できることとなる。
実施例4の有機電界発光素子形成用組成物5からなる有機膜の平坦度は68%であった。
【0173】
(比較例5)
実施例4の有機電界発光素子形成用組成物5の調製において、SP-O30Vを用いず、表面改質剤KF-96 10csのみを100重量ppm混合させたこと以外は、実施例4と同様に有機膜を形成し、3層膜における最上層の有機膜の平坦度を測定した。
比較例5の3層膜における最上層の有機膜の平坦度は55%であった。
【0174】
実施例4、及び比較例5の結果を表3に示す。
【0175】
【表3】
【0176】
(実施例5)
ITO基板上に、実施例1で用いたアクリル系の樹脂1とは異なる、撥液性を有する樹脂2を用いて、角丸長方形(長軸長(図2中、bで示されている。);約0.28mm、短軸長(図2中、aで示されている。);約0.078mm)型の開口部(「隔壁で区画された領域」に相当する。)を有するように、前述のフォトリソグラフィーによる形成方法により厚さ1.5μmの隔壁を形成した。各開口部のピッチは、短軸方向に約0.135mmピッチ(図2中、cで示されている。)、長軸方向に約0.370mmピッチ(図2中、dで示されている。)とした。上記隔壁を形成したITO基板を用いたこと以外は、実施例1と同様に有機膜を形成し、平坦度を測定した。
実施例5の有機電界発光素子形成用組成物1からなる有機膜の平坦度は83%であった。
【0177】
(実施例6)
表面改質剤AとしてF-552(DIC社製)を100重量ppm、表面改質剤BとしてSP-O30V(花王社製)を500重量ppmを用いたこと以外は、実施例1に記載の有機電界発光素子形成用組成物1と同様にして有機電界発光素子形成用組成物6を調製した。

有機電界発光素子形成用組成物6において、前述の方法で表面張力の測定を行ったところ、有機溶媒1に上記表面改質剤Aのみを100重量ppm溶解させた場合の表面張力、即ちS1x、S1yは25.4(mN/m)であった。これと上述の値から、有機電界発光素子形成用組成物6は、前記式(1)~(4)を満たすことが判る。
実施例5において、有機電界発光素子形成用組成物6を用いたこと以外は、実施例5と同様に有機膜を形成し、平坦度を測定した。
実施例6の有機電界発光素子形成用組成物6からなる有機膜の平坦度は84%であった。
【0178】
(実施例7)
実施例6において、表面改質剤BとしてSP-O30V(花王社製)を300重量ppm、エマルゲンA60(花王社製)を200重量ppmを混合させた有機電界発光素子形成用組成物7を用いたこと以外は、実施例6と同様に有機膜を形成し、平坦度を測定した。
有機電界発光素子形成用組成物7において、前述の方法で表面張力の測定を行ったところ、有機溶媒1にSP-O30Vを300重量ppm、エマルゲンA60を200重量ppm溶解させた場合の表面張力、即ちS2xは35.4(mN/m)であった。これと上述の値から、有機電界発光素子形成用組成物7は、前記式(1)~(4)を満たすことが判る。
実施例7の有機電界発光素子形成用組成物7からなる有機膜の平坦度は84%であった。
【0179】
(比較例6)
実施例5において、表面改質剤を添加せずに有機電界発光素子形成用組成物を調製したこと以外は、実施例5と同様に有機膜を形成し、平坦度を測定した。
比較例6の有機膜の平坦度は71%であった。
【0180】
(比較例7)
実施例5において、SP-O30Vを用いず、表面改質剤KF-96 10csのみを100重量ppm混合させた有機電界発光素子形成用組成物を調製し、使用したこと以外は、実施例5と同様に有機膜を形成し、平坦度を測定した。
比較例7の有機膜の平坦度は42%であった。
【0181】
(比較例8)
実施例5において、KF-96 10csを用いず、表面改質剤SP-O30Vのみを500重量ppm混合させた有機電界発光素子形成用組成物を調製し、使用した以外は、実施例5と同様に有機膜を形成し、平坦度を測定した。
比較例8の有機膜の平坦度は63%であった。
【0182】
(比較例9)
実施例6において、SP-O30Vを用いず、表面改質剤F-552のみを100重量ppm混合させた有機電界発光素子形成用組成物を調製し、使用した以外は、実施例6と同様に有機膜を形成し、平坦度を測定した。
比較例9の有機膜の平坦度は71%であった。
【0183】
実施例5~7及び比較例6~9の結果を表4に示す。
【0184】
【表4】
【0185】
表5~7に、実施例の表面張力の測定結果をまとめた。なお、表6中、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0186】
【表5】
【0187】
【表6】
【0188】
【表7】
【0189】
実施例1と比較例1より、表面改質剤Aのみを含有する有機電界発光素子形成用組成物に、所定の表面改質剤Bを含有させることで、有機膜の平坦度が64%から82%まで改善されることが判る。実施例2では実施例1とは異なる表面改質剤Bを含有させているが、同様に平坦度82%が得られており、表面改質剤の材料に依らず、本発明の効果が得られることが判る。
【0190】
また、実施例3、比較例2~4では、有機電界発光素子形成用組成物に、実施例1及び実施例2とは異なる有機溶媒及び電荷注入輸送材料を用いているが、表面改質剤Bを含有しない場合(比較例2、3)、及び、所定の表面張力値を満足しない場合(比較例4)と比較し、有機膜の平坦度が65~76%から89%まで改善されていることが判る。実施例4と比較例5の場合も同様に、平坦度が55%から68%に改善されていることが判る。
【0191】
また、実施例5と比較例6~8では、上記実施例とは異なる隔壁材料を用いた場合を示しているが、有機電界発光素子形成用組成物に表面改質剤が含有されない場合(比較例6)、1種類の表面改質剤のみが含有されている場合(比較例7、8)に比べ、平坦度が明らかに改善されていることが判る。
【0192】
また、実施例6では実施例5とは異なる表面改質剤Aを含有させているが、同様に表面改質剤が含有されない場合(比較例6)、1種類の表面改質剤のみが含有されている場合(比較例8、9)に比べ、平坦度が63~71%から84%と改善されており、表面改質剤の材料に依らず、本発明の効果が得られることが判る。
【0193】
また、実施例7では実施例6で使用された表面改質剤に加え、さらに別の表面改質剤Bを含有させているが、同様に表面改質剤が含有されない場合(比較例6)、1種類の表面改質剤のみが含有されている場合(比較例9)に比べ、平坦度が71%から84%と改善されていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0194】
本発明は、有機電界発光素子をはじめとする有機デバイス用の材料のほか、有機電界発光素子が使用される各種の分野、例えば、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯、照明装置等の分野において、好適に使用することが出来る。
【符号の説明】
【0195】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
10 有機電界発光素子
11 隔壁
12 有機膜を形成した開口部
13 有機膜を形成しない開口部
20 基板
図1
図2