(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】絶縁被覆導電粒子、異方導電フィルム、異方導電フィルムの製造方法、接続構造体及び接続構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 5/00 20060101AFI20220524BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20220524BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20220524BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
H01B5/00 M
H01B5/16
H01R11/01 501A
H01R11/01 501D
H01R43/00 H
(21)【出願番号】P 2018564633
(86)(22)【出願日】2018-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2018002350
(87)【国際公開番号】W WO2018139552
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2017013456
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】森谷 敏光
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 弘行
(72)【発明者】
【氏名】赤井 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】市村 剛幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 勝
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-537570(JP,A)
【文献】特開2018-073808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/00
H01B 5/16
H01R 11/01
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する絶縁性微粒子と、を備え、
単位面積当たりの絶縁性微粒子数が少ない若しくは0である粗領域と、前記粗領域よりも単位面積当たりの絶縁性微粒子数が多い密領域と、を有
し、
前記粗領域が、前記絶縁性微粒子の粒子密度が0個/μm
2
である領域を含み、
前記密領域が、前記絶縁性微粒子の粒子密度が2.0個/μm
2
~5.0個/μm
2
である領域を含む、絶縁被覆導電粒子。
【請求項2】
前記基材粒子の中心を通る中心軸が通る前記粗領域を2つ有する、請求項1に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項3】
前記基材粒子の表面積をS
0
μm
2
としたときに、前記2つの粗領域に、絶縁性微粒子数が0である領域が0.1×S
0
μm
2
以上含まれる、請求項2に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項4】
導電性を有する基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する絶縁性微粒子と、を備える複合粒子の、前記基材粒子を二つの平行な平面で切ったときの2つの球冠領域にある前記絶縁性微粒子の一部又は全部を除去してなり、
前記2つの球冠領域が、前記絶縁性微粒子の粒子密度が0個/μm
2
である領域を含み、
前記基材粒子を二つの前記平面で切ったときの球帯領域が、前記絶縁性微粒子の粒子密度が2.0個/μm
2
~5.0個/μm
2
である領域を含む、絶縁被覆導電粒子。
【請求項5】
前記基材粒子の表面積をS
0
μm
2
としたときに、前記2つの球冠領域に、絶縁性微粒子数が0である領域が0.1×S
0
μm
2
以上含まれる、請求項4に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項6】
導電性を有する基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する絶縁性微粒子と、を備え、
前記基材粒子を二つの平行な平面で切ったときの球帯領域に前記絶縁性微粒子が偏在
し、
前記球帯領域が、前記絶縁性微粒子の粒子密度が2.0個/μm
2
~5.0個/μm
2
である領域を含む、絶縁被覆導電粒子。
【請求項7】
前記基材粒子を二つの前記平面で切ったときの2つの球冠領域に、前記基材粒子の表面積をS
0
μm
2
としたときに、絶縁性微粒子数が0である領域が0.1×S
0
μm
2
以上含まれる、請求項6に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の絶縁被覆導電粒子と、接着剤成分と、が含まれる導電性接着剤層、を備える、異方導電フィルム。
【請求項9】
請求項2に記載の絶縁被覆導電粒子を含み、
前記絶縁被覆導電粒子は、前記基材粒子の中心を通り且つ前記導電性接着剤層の厚み方向に平行な軸が2つの前記粗領域を通るように配されている、請求項
8に記載の異方導電フィルム。
【請求項10】
請求項
4に記載の絶縁被覆導電粒子を含み、
前記絶縁被覆導電粒子は、前記基材粒子の中心を通り且つ前記導電性接着剤層の厚み方向に平行な軸が2つの前記球冠領域を通るように配されている、請求項
8に記載の異方導電フィルム。
【請求項11】
請求項
4又は
6に記載の絶縁被覆導電粒子を含み、
前記絶縁被覆導電粒子は、前記基材粒子の中心を通り且つ前記導電性接着剤層の厚み方向に平行な軸と前記二つの平行な平面とが直交するように、配されている、請求項
8に記載の異方導電フィルム。
【請求項12】
前記絶縁被覆導電粒子が前記導電性接着層の両主面の一方面側に偏在しており、前記絶縁被覆導電粒子と前記一方面との最短距離が0μmより大きく1μm以下である、請求項8~11のいずれか一項に記載の異方導電フィルム。
【請求項13】
導電性を有する基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する絶縁性微粒子と、を備える複合粒子を用意するステップと、
閉鎖端面を有する孔が設けられた粒子収容部材の前記孔に前記複合粒子を収容するステップと、
前記孔から露出する前記複合粒子の球冠領域にある前記絶縁性微粒子の一部又は全部を除去するステップと、
第1の接着剤層上に、球冠領域の絶縁性微粒子が除去された前記複合粒子を、前記球冠領域側が前記第1の接着剤層に接するように前記粒子収容部材から移しつつ、前記複合粒子の前記絶縁性微粒子の一部を前記粒子収容部材の前記閉鎖端面に付着させて除去することにより、前記第1の接着剤層上に絶縁被覆導電粒子を設けるステップと、
前記第1の接着剤層の前記絶縁被覆導電粒子が配されている側に第2の接着剤層を貼り合せるステップと、を備
え、
前記第1の接着剤層の厚みDaと前記第2の接着剤層の厚みDbとの比Da/Dbが20/1~15/5である、異方導電フィルムの製造方法。
【請求項14】
バンプ電極を有する第1の回路部材と、
前記バンプ電極に対応する回路電極を有する第2の回路部材と、
前記バンプ電極及び前記回路電極の間に介在して前記バンプ電極及び前記回路電極を電気的に接続する請求項1~
7のいずれか一項に記載の絶縁被覆導電粒子と、
を備える、接続構造体。
【請求項15】
バンプ電極を有する第1の回路部材と、前記バンプ電極に対応する回路電極を有する第2の回路部材との間に、請求項
8~12のいずれか一項に記載の異方導電フィルム又は請求項
13の方法によって得られる異方導電フィルムを介在させ、前記第1の回路部材と前記第2の回路部材とを熱圧着するステップを有する、接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁被覆導電粒子、異方導電フィルム、異方導電フィルムの製造方法、接続構造体及び接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶ディスプレイとテープキャリアパッケージ(TCP)との接続、フレキシブルプリント基板(FPC)とTCPとの接続、或いはFPCとプリント配線板との接続には、接着剤フィルム中に導電粒子を分散させた異方導電フィルムが用いられている。また、半導体シリコンチップを基板に実装する場合にも、従来のワイヤーボンディングに代えて、半導体シリコンチップを基板に直接実装する、いわゆるチップオンガラス(COG)が行われており、ここでも異方導電フィルムが用いられている。
【0003】
近年では、電子機器の発達に伴い、配線の高密度化及び回路の高機能化が進んでいる。その結果、接続電極間の間隔が例えば15μm以下となるような接続構造体が要求され、接続部材のバンプ電極も小面積化されてきている。小面積化されたバンプ接続において安定した電気的接続を得るためには、充分な数の導電粒子がバンプ電極と基板側の回路電極との間に介在している必要がある。
【0004】
このような課題に対し、特許文献1及び2では、導電粒子を一定割合で基板側に偏在化させると共に、導電粒子を均等間隔に整列させることで、バンプ電極と回路電極の導電粒子の捕捉性を向上させるとともに、狭小化された隣り合う回路電極間の絶縁性の向上を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2009-535843号公報
【文献】特開2015-25104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の手法では、導電粒子が均等間隔に整列することで導電粒子の捕捉性を向上させ、接続信頼性を向上させることが可能であるが、回路接続時に異方導電フィルムが溶融し流動するため、均等間隔に整列させた導電粒子も流動する可能性があり、隣り合う回路電極間の絶縁性が低下する問題が生じるおそれがあった。
【0007】
本発明は、対向する電極を有する回路部材同士の接続において、対向する電極間の接続信頼性の確保と回路部材内の隣り合う電極同士の絶縁性の確保とを両立できる絶縁被覆導電粒子及び異方導電フィルム、異方導電フィルムの製造方法、並びに、対向する電極間の接続信頼性と回路部材内の隣り合う電極同士の絶縁性とを両立できる接続構造体及び接続構造体の製造方法を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、導電性を有する基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する絶縁性微粒子と、を備え、単位面積当たりの絶縁性微粒子数が少ない若しくは0である粗領域と、粗領域よりも単位面積当たりの絶縁性微粒子数が多い密領域とを有する第1の絶縁被覆導電粒子を提供する。
【0009】
本発明の第1の絶縁被覆導電粒子は、上記密領域によって粒子同士が接触したときの絶縁性を確保しつつ、上記粗領域によって導電特性を確保することができる。
【0010】
本発明の第1の絶縁被覆導電粒子は、上記基材粒子の中心を通る中心軸が通る上記粗領域を2つ有することができる。
【0011】
このような絶縁被覆導電粒子は、対向する電極を有する回路部材同士の接続において、2つの粗領域を対向する電極にそれぞれ接触させることにより対向する電極間の接続信頼性を確保することができ、他の絶縁被覆導電粒子が接触する場合には上記密領域によって絶縁性を確保することができる。
【0012】
本発明はまた、導電性を有する基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する絶縁性微粒子とを備える複合粒子の、基材粒子を二つの平行な平面で切ったときの2つの球冠領域にある絶縁性微粒子の一部又は全部を除去してなる第2の絶縁被覆導電粒子を提供する。
【0013】
本発明の第2の絶縁被覆導電粒子は、対向する電極を有する回路部材同士の接続において、絶縁性微粒子の一部又は全部が除去された2つの球冠領域を対向する電極にそれぞれ接触させることより対向する電極間の接続信頼性を確保することができ、他の絶縁被覆導電粒子と接触するときには球帯領域にある絶縁性微粒子によって絶縁性を確保することができる。
【0014】
本発明はまた、導電性を有する基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する絶縁性微粒子とを備え、基材粒子を二つの平行な平面で切ったときの球帯領域に絶縁性微粒子が偏在している第3の絶縁被覆導電粒子を提供する。
【0015】
本発明の第3の絶縁被覆導電粒子は、対向する電極を有する回路部材同士の接続において、2つの球冠領域を対向する電極にそれぞれ接触させることより対向する電極間の接続信頼性を確保することができ、他の絶縁被覆導電粒子と接触するときには球帯領域に偏在している絶縁性微粒子によって絶縁性を確保することができる。
【0016】
本発明はまた、上記本発明の第1、第2又は第3の絶縁被覆導電粒子と、接着剤成分とが含まれる導電性接着剤層を備える異方導電フィルムを提供する。
【0017】
本発明の異方導電フィルムによれば、対向する電極を有する回路部材同士の接続において、対向する電極間の接続信頼性の確保と回路部材内の隣り合う電極同士の絶縁性の確保とを両立することができる。
【0018】
本発明の異方導電フィルムは、基材粒子の中心を通る中心軸が通る粗領域を2つ有する上記本発明の第1の絶縁被覆導電粒子を含み、該絶縁被覆導電粒子が、基材粒子の中心を通り且つ導電性接着剤層の厚み方向に平行な軸が2つの粗領域を通るように配されていてもよい。
【0019】
このような異方導電フィルムによれば、対向する電極を有する回路部材同士の接続において、絶縁被覆導電粒子が有する2つの粗領域をそれぞれ対向する電極により確実に接触させることができ、他の絶縁被覆導電粒子と接触する場合には互いの密領域によって絶縁性を確保することができる。これにより、対向する電極間の接続信頼性の確保と、回路部材内の隣り合う電極同士の絶縁性の確保とをより高水準で両立することができる。
【0020】
本発明の異方導電フィルムは、上記本発明の第2の絶縁被覆導電粒子を含み、該絶縁被覆導電粒子が、基材粒子の中心を通り且つ導電性接着剤層の厚み方向に平行な軸が2つの球冠領域を通るように配されていてもよい。
【0021】
このような異方導電フィルムによれば、対向する電極を有する回路部材同士の接続において、絶縁被覆導電粒子が有する2つの球冠領域をそれぞれ対向する電極により確実に接触させることができ、他の絶縁被覆導電粒子と接触する場合には互いの球帯領域にある絶縁性微粒子によって絶縁性を確保することができる。これにより、対向する電極間の接続信頼性の確保と、回路部材内の隣り合う電極同士の絶縁性の確保とをより高水準で両立することができる。
【0022】
本発明の異方導電フィルムは、上記本発明の第2又は第3の絶縁被覆導電粒子を含み、該絶縁被覆導電粒子が、基材粒子の中心を通り且つ導電性接着剤層の厚み方向に平行な軸と上記二つの平行な平面とが直交するように、配されていてもよい。
【0023】
このような異方導電フィルムによれば、対向する電極を有する回路部材同士の接続において、絶縁被覆導電粒子が有する2つの球冠領域をそれぞれ対向する電極により確実に接触させることができ、他の絶縁被覆導電粒子と接触する場合には互いの球帯領域にある絶縁性微粒子によって絶縁性を確保することができる。これにより、対向する電極間の接続信頼性の確保と、回路部材内の隣り合う電極同士の絶縁性の確保とをより高水準で両立することができる。
【0024】
本発明はまた、導電性を有する基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する絶縁性微粒子と、を備える複合粒子を用意するステップと、閉鎖端面を有する孔が設けられた粒子収容部材の孔に複合粒子を収容するステップと、孔から露出する複合粒子の球冠領域にある絶縁性微粒子の一部又は全部を除去するステップと、第1の接着剤層上に、球冠領域の絶縁性微粒子が除去された複合粒子を、球冠領域が第1の接着剤層に接するように粒子収容部材から移しつつ、複合粒子の絶縁性微粒子の一部を粒子収容部材の閉鎖端面に付着させて除去することにより、第1の接着剤層上に絶縁被覆導電粒子を設けるステップと、第1の接着剤層の絶縁被覆導電粒子が配されている側に第2の接着剤層を貼り合せるステップとを備える異方導電フィルムの製造方法を提供する。
【0025】
本発明の異方導電フィルムの製造方法によれば、第1の接着剤層上に、絶縁性微粒子の一部又は全部が除去された2つの球冠領域を有する絶縁被覆導電粒子を設けることができ、これに第2の接着剤層を貼り合せることにより、絶縁被覆導電粒子が含まれる導電性接着剤層を簡便に形成することができる。この導電性接着剤層においては、基材粒子の中心を通り且つ導電性接着剤層の厚み方向に平行な軸が2つの球冠領域を通るように絶縁被覆導電粒子を配することができる。
【0026】
また、本発明の異方導電フィルムの製造方法においては、粒子収容部材に規則的に配列された孔を設けることにより、異方導電フィルム内の絶縁被覆導電粒子を規則的に配列することができる。また、第1の接着剤層及び第2の接着剤層の厚みを調整することにより、絶縁被覆導電粒子が導電性接着剤層の両主面の一方側に偏在して含まれる導電性接着剤層を形成することができる。
【0027】
本発明はまた、バンプ電極を有する第1の回路部材と、バンプ電極に対応する回路電極を有する第2の回路部材と、バンプ電極及び回路電極の間に介在してバンプ電極及び回路電極を電気的に接続する上記本発明に係る第1、第2又は第3の絶縁被覆導電粒子とを備える接続構造体を提供する。
【0028】
本発明の接続構造体は、上記本発明に係る第1、第2又は第3の絶縁被覆導電粒子によってバンプ電極及び回路電極が接続されているため、対向する電極間の接続信頼性と回路部材内の隣り合う電極同士の絶縁性とを両立することができる。
【0029】
本発明はまた、バンプ電極を有する第1の回路部材と、バンプ電極に対応する回路電極を有する第2の回路部材との間に、上記本発明に係る異方導電フィルム又は上記本発明に係る異方導電フィルムの製造方法によって得られる異方導電フィルムを介在させ、第1の回路部材と第2の回路部材とを熱圧着するステップを有する接続構造体の製造方法を提供する。
【0030】
本発明の接続構造体の製造方法によれば、対向する電極間の接続信頼性と回路部材内の隣り合う電極同士の絶縁性とを両立する接続構造体を得ることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、対向する電極を有する回路部材同士の接続において、対向する電極間の接続信頼性の確保と回路部材内の隣り合う電極同士の絶縁性の確保とを両立できる絶縁被覆導電粒子及び異方導電フィルム、異方導電フィルムの製造方法、並びに、対向する電極間の接続信頼性と回路部材内の隣り合う電極同士の絶縁性とを両立できる接続構造体及び接続構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】(a)は本発明に係る絶縁被覆導電粒子の一実施形態を示す図であり、(b)は(a)に示される中心軸Pに沿った断面を模式的に示す図である。
【
図2】本発明に係る絶縁被覆導電粒子における最大径及び最小径について説明する図である。
【
図3】(a)は本発明に係る異方導電フィルムの一実施形態を示す模式的断面図であり、(b)は異方導電フィルムの要部拡大模式図である。
【
図4】本発明に係る異方導電フィルムの製造工程を示す模式的断面図である。
【
図5】
図4の後続の工程を示す模式的断面図である。
【
図6】
図5の工程を経て得られる異方導電フィルムを示す模式的断面図である。
【
図7】絶縁被覆導電粒子の配列の例を示す図である。
【
図8】本発明に係る接続構造体の一実施形態を示す模式的断面図である。
【
図9】
図8に示した接続構造体の製造工程を示す模式的断面図である。
【
図10】
図9の後続の工程を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る絶縁被覆導電粒子、異方導電フィルム、異方導電フィルムの製造方法、接続構造体及び接続構造体の製造方法の好適な実施形態について詳細を説明する。
【0034】
[絶縁被覆導電粒子の構成]
図1の(a)は本発明に係る絶縁被覆導電粒子の一実施形態の外観を示す図であり、
図1の(b)は(a)に示される中心軸Pに沿った断面を模式的に示す図である。絶縁被覆導電粒子10は、導電性を有する基材粒子1と、基材粒子1の表面を被覆する絶縁性微粒子2とを備えて構成される。中心軸Pは、基材粒子1の中心を通る軸を意味する。
【0035】
基材粒子1は、コア粒子と、コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する金属層とから構成されるコアシェル型の粒子であってよい。例えば、コア粒子をめっきにより金属で被覆したものが挙げられる。
【0036】
コア粒子は、金属コア粒子、有機コア粒子及び無機コア粒子のいずれかを用いることができる。導通性の点で、有機コア粒子を用いることが好ましい。
【0037】
有機コア粒子の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
【0038】
有機コア粒子をめっき等で被覆する場合、その金属としては、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、パラジウム、ニッケル、錫、クロム、チタン、アルミニウム、コバルト、ゲルマニウム、カドミウム等の金属、ITO、及びはんだ等の金属化合物などが挙げられる。
【0039】
有機コア粒子を被覆する金属層の構造は特に限定されないが、導通性の点で、最外層がニッケル層であることが好ましい。また、導通性の点で、最外層が突起(又は凸部)を有することが好ましい。ニッケル層の内側に銅等の金属層が更に設けられていてもよい。
【0040】
基材粒子1の平均一次粒子径は、接続する電極高さのばらつきを吸収できる点、及び導通信頼性と絶縁信頼性との両立の観点から、1μm以上10μm以下であることが好ましく、2μm以上5μm以下であることがより好ましく、2μm以上3μm以下であることが更に好ましい。
【0041】
絶縁性微粒子2は、無機酸化物微粒子、有機微粒子などを用いることができ、絶縁性及び導通性等の所望の特性に応じて適宜選択することができる。絶縁性微粒子2は、有機ポリマーを含むコア微粒子と、コア微粒子の表面の少なくとも一部を被覆するシェル層とから構成されるコアシェル型の粒子を用いることが好ましい。シェル層の材質は、例えば架橋ポリシロキサンが挙げられる。
【0042】
絶縁性微粒子2の平均一次粒子径は、導通信頼性と絶縁信頼性との両立の観点から、100nm以上500nm以下であることが好ましく、200nm以上450nm以下であることがより好ましく、250nm以上350nm以下であることが更に好ましい。特に、絶縁性微粒子2の平均一次粒子径が250nm以上であれば、対向する電極を有する回路部材間の接続において絶縁被覆導電粒子10同士が凝集した場合であっても、隣り合う回路電極間の絶縁性を充分に確保することが容易となり、350nm以下であれば、後述する単位面積当たりの絶縁性微粒子数が少ない疎領域に絶縁性微粒子が存在していても、対向回路間の導通を充分に確保することが容易となる。
【0043】
本実施形態の絶縁被覆導電粒子10は、単位面積当たりの絶縁性微粒子数が少ない若しくは0である粗領域と、粗領域よりも単位面積当たりの絶縁性微粒子数が多い密領域とを有することができる。
【0044】
絶縁被覆導電粒子10は、
図1に示されるように、上記基材粒子1の中心を通る中心軸Pが通る上記粗領域を2つ有することが好ましい。言い換えると、絶縁被覆導電粒子10は、基材粒子1を二つの平行な平面で切ったときの2つの球冠領域に粗領域を有し、球帯領域に密領域を有することが好ましい。さらに、言い換えると、絶縁被覆導電粒子10は、基材粒子1を二つの平行な平面で切ったときの球帯領域に絶縁性微粒子2が偏在していることが好ましい。
【0045】
このような絶縁被覆導電粒子10は、導電性を有する基材粒子1と、該基材粒子1の表面を被覆する絶縁性微粒子2とを備える複合粒子の、基材粒子1を二つの平行な平面で切ったときの2つの球冠領域にある絶縁性微粒子2の一部又は全部を除去することにより得ることができる。
【0046】
なお、本実施形態において、粗領域と密領域との境界は必ずしも明確である必要はなく、粗領域と密領域との間に単位面積当たりの絶縁性微粒子数が粗領域よりも多く且つ密領域よりも少ない中間領域が設けられていてもよく、粗領域から密領域にかけて単位面積当たりの絶縁性微粒子数が増加するようにそれぞれの領域が設けられていてもよい。
【0047】
絶縁被覆導電粒子10は、対向回路間の接続時の低抵抗化の観点から、絶縁性微粒子2の粒子密度が0個/μm2~2.0個/μm2である粗領域を有することが好ましく、0個/μm2~1.0個/μm2である粗領域を有することがより好ましく、0個/μm2~0.5個/μm2である粗領域を有することが更に好ましい。また、基材粒子1の表面積をS0μm2としたときに、上記の粗領域が、0.5×S0μm2以上あることが好ましく、0.7×S0μm2以上あることがより好ましい。
【0048】
絶縁被覆導電粒子10は、隣接回路間の絶縁性向上の観点から、絶縁性微粒子2の粒子密度が2.0個/μm2~5.0個/μm2である密領域を有することが好ましく、2.5個/μm2~4.5個/μm2である密領域を有することがより好ましく、3.0個/μm2~3.5個/μm2である密領域を有することが更に好ましい。また、基材粒子の表面積をS0μm2としたときに、上記の密領域が、0.2×S0μm2以上あることが好ましく、0.3×S0μm2以上あることがより好ましい。
【0049】
粗領域及び密領域における単位面積当たりの絶縁性微粒子数は、絶縁被覆導電粒子のSEM写真における基材粒子1の中心部(基材粒子1の外周円の直径の半分の長さを直径とし、当該外周円と同心円状の円)に存在する絶縁粒子数を計測することによって測定される。また、絶縁性微粒子2の粒子密度は、上記単位面積当たりの絶縁性微粒子数から算出することができる。単位面積は、基材粒子1の表面積をS0mm2としたときに、0.04×S0mm2~0.20×S0mm2のうちの所定の面積に設定することができ、0.17×S0mm2に設定してもよい。
【0050】
対向回路間の接続時の電極同士と導電粒子が直接接触する面積を確保する観点から、絶縁被覆導電粒子10は、基材粒子1の球冠領域に絶縁性微粒子数が0である領域が0.05×S0μm2以上含まれることが好ましく、0.10×S0μm2以上含まれることがより好ましい。
【0051】
絶縁被覆導電粒子10における絶縁性微粒子2の被覆率は、35~75%が好ましく、40~75%がより好ましい。なお、縁性微粒子の被覆率は、絶縁被覆導電粒子のSEM写真における基材粒子1の中心部(基材粒子1の外周円の直径の半分の長さを直径とし、当該外周円と同心円状の円)を解析することによって測定される値を意味する。具体的には、上記SEM写真における基材粒子1の中心部の総表面積をW(導電粒子の粒子径から算出した面積)、上記SEM写真における基材粒子1の中心部のうち、絶縁性微粒子2で被覆されていると分析された部分の表面積をPとしたときに、被覆率はP/W×100(%)と表される。なお、本実施形態における上記被覆されていると分析された部分の表面積Pは、絶縁被覆導電粒子のSEM写真200枚から求めた表面積の平均値である。
【0052】
絶縁被覆導電粒子10の最小径X’は、導通特性の観点から、基材粒子1の直径以上、基材粒子1の直径及び絶縁性微粒子2の直径の合計値以下であることが好ましい。また、絶縁被覆導電粒子10の最大径Y’は、絶縁性の観点から、基材粒子1の直径及び2×(絶縁性微粒子2の直径)の合計値以上、基材粒子1の直径及び6×(絶縁性微粒子2の直径)の合計値以下であることが好ましい。なお、
図2は、
図1の(b)に示される絶縁被覆導電粒子10の最小径X’が基材粒子1の直径であり、最大径Y’が基材粒子1の直径及び2×(絶縁性微粒子の直径)の合計である場合を示す。
【0053】
導通性と絶縁性とを両立する観点から、絶縁被覆導電粒子10の最小径X’と最大径Y’との比X’/Y’は、0.4以上0.9以下であることが好ましい。X’/Y’を0.4以上にすることで、回路部材のバンプ面積を小面積化した場合であっても、絶縁被覆導電粒子10の捕捉性を確保しやすくなり、X’/Y’を0.9以下にすることで、接続抵抗を低抵抗化しやすくなる。
【0054】
上記のような絶縁被覆導電粒子10を作製するには、各々の方法を用いることができる。例えば、(i)基材粒子1をその粒子径と同じ隙間が設けられた平行板に充填し、充填された基材粒子1上に絶縁性微粒子2を付着させる方法、(ii)基材粒子1の表面全体を絶縁性微粒子2で被覆した複合粒子を用意し、この複合粒子の絶縁性微粒子2の一部を除去する方法などが挙げられる。
【0055】
(i)で基材粒子1上に絶縁性微粒子2を付着させる方法としては、例えば、基材粒子1と絶縁性微粒子2を平行板間に充填した後、有機溶剤や熱を用いて絶縁性微粒子2を基材粒子1に溶着させる方法が挙げられる。
【0056】
(ii)で基材粒子1の表面全体を絶縁性微粒子2で被覆した複合粒子を得る方法としては、例えば、基材粒子1にポリエチレンイミンなどの帯電処理材を塗布し、静電気的な力で絶縁性微粒子2を付着させる手法、基材粒子1と絶縁性微粒子2に相互に結合可能な官能基を導入し、化学結合にて複合粒子を得る方法が挙げられる。また、絶縁性微粒子2の一部を除去する手段としては、粘着テープ等を用いて、複合粒子の球冠領域の絶縁性微粒子2を取り除く手法が簡便な手法として挙げられる。さらに、後述する本発明に係る異方導電フィルムの製造方法は、異方導電フィルムの作製中に絶縁被覆導電粒子10を作製することができ、特に有用な方法である。
【0057】
[異方導電フィルムの構成]
図3の(a)は、本発明に係る異方導電フィルムの一実施形態を示す模式的断面図であり、
図3の(b)は異方導電フィルムの要部拡大模式図である。図に示される剥離フィルム付き異方導電フィルム11は、剥離フィルム12と、絶縁被覆導電粒子10及び接着剤成分が含まれる導電性接着剤層(異方導電フィルム)13とから構成されている。絶縁被覆導電粒子10は導電性接着剤層13中に分散している。本明細書においては、導電性接着剤層13を厚み方向と垂直な面で切断したときの断面に絶縁被覆導電粒子10が含まれていない領域を接着剤領域といい、絶縁被覆導電粒子10が含まれている領域を導電領域という場合もある。
【0058】
剥離フィルム12は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン等によって形成されている。剥離フィルム12には、任意の充填剤を含有させてもよい。また、剥離フィルム12の表面には、離型処理又はプラズマ処理等が施されていてもよい。
【0059】
導電性接着剤層13に含まれる接着剤成分としては、モノマー及び硬化剤が挙げられる。モノマーは、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物又はラジカル重合性化合物を用いることができる。カチオン重合性化合物及びアニオン重合性化合物としては、エポキシ系化合物が挙げられる。
【0060】
エポキシ系化合物としては、エピクロルヒドリンと、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD等のビスフェノール化合物とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと、フェノールノボラック又はクレゾールノボラック等のノボラック樹脂とから誘導されるエポキシノボラック樹脂、並びに、グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物などを用いることができる。
【0061】
ラジカル重合性化合物としては、ラジカルにより重合する官能基を有する化合物を用いることができ、例えば、(メタ)アクリレート等のアクリルモノマー、マレイミド化合物、スチレン誘導体などが挙げられる。ラジカル重合性化合物は、モノマー又はオリゴマーのいずれの状態でも使用することができ、モノマーとオリゴマーとを混合して使用してもよい。
【0062】
モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
エポキシ系化合物を用いる場合は、硬化剤として、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素-アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等が挙げられる。これらの硬化剤は、ポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化されていることが、可使時間が延長される点で好適である。
【0064】
エポキシ系化合物と併用される硬化剤は、目的とする接続温度、接続時間、保存安定性等により適宜選定される。硬化剤は、高反応性の点から、エポキシ系化合物及び硬化剤が含まれる組成物としたときに、そのゲルタイムが所定の温度で10秒以内となることが好ましく、保存安定性の点から、40℃で10日間恒温槽に保管後の組成物とのゲルタイムに差がないことが好ましい。このような点から、硬化剤はスルホニウム塩であることが好ましい。
【0065】
アクリルモノマーを用いる場合は、硬化剤として、過酸化化合物、アゾ系化合物等の加熱により分解して遊離ラジカルを発生するものが挙げられる。
【0066】
アクリルモノマーと併用される硬化剤は、目的とする接続温度、接続時間、保存安定性等により適宜選定される。硬化剤は、高反応性と保存安定性の点から、半減期10時間の温度が40℃以上かつ半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物又はアゾ系化合物が好ましく、半減期10時間の温度が60℃以上かつ半減期1分の温度が170℃以下の有機過酸化物又はアゾ系化合物がより好ましい。
【0067】
硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。導電性接着剤層13には、分解促進剤、抑制剤等を更に含有させてもよい。
【0068】
硬化剤の配合量は、エポキシ系化合物及びアクリルモノマーのいずれを用いた場合においても、接続時間を10秒以下としたときに充分な反応率を得る観点から、モノマーと後述のフィルム形成材との合計100質量部に対して、0.1質量部~40質量部とすることが好ましく、1質量部~35質量部とすることがより好ましい。硬化剤の配合量が0.1質量部以上であると、充分な反応率を得ることができ、良好な接着強度及び小さな接続抵抗が得られやすくなり、40質量部以下であると、導電性接着剤層13の流動性が低下して接続抵抗が上昇することを防止しやすくなり、また、異方導電フィルムの保存安定性を確保しやすくなる。
【0069】
導電性接着剤層13はフィルム形成材を含んでいてもよい。フィルム形成材は、上記のモノマー及び硬化剤が含まれる粘度の低い組成物の取り扱いを容易にする作用を有するポリマーである。フィルム形成材を用いることによって、フィルムが容易に裂けたり、割れたり、べたついたりすることを抑制でき、取り扱いが容易な異方導電フィルム11が得られる。
【0070】
フィルム形成材としては、熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、キシレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂等が挙げられる。これらのポリマー中には、シロキサン結合又はフッ素置換基が含まれていてもよい。上記の樹脂の中でも、接着強度、相溶性、耐熱性、及び機械強度の観点から、フェノキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0071】
上記の熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
熱可塑性樹脂は、分子量が大きいほどフィルム形成性が容易に得られ、また、異方導電フィルム11の流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、5000~150000であることが好ましく、10000~80000であることがより好ましい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量が5000以上であると良好なフィルム形成性が得られやすく、150000以下であると他の成分との良好な相溶性が得られやすくなる。
【0073】
なお、本発明において、重量平均分子量は、下記の条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値をいう。
(測定条件)
装置:東ソー株式会社製 GPC-8020
検出器:東ソー株式会社製 RI-8020
カラム:日立化成株式会社製 Gelpack GLA160S+GLA150S
試料濃度:120mg/3mL
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:60μL
圧力:2.94×106Pa(30kgf/cm2)
流量:1.00mL/min
【0074】
フィルム形成材の配合量は、モノマー、硬化剤及びフィルム形成材の総量を基準として5質量%~80質量%であることが好ましく、15質量%~70質量%であることがより好ましい。フィルム形成材の配合量を5質量%以上とすることで良好なフィルム形成性が得られやすくなり、80質量%以下とすることで導電性接着剤層13(特には接着剤領域)が良好な流動性を示す傾向にある。
【0075】
また、導電性接着剤層13には、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート類等を更に含有していてもよい。
【0076】
導電性接着剤層13が充填剤を含有する場合、接続信頼性の向上が更に期待できる。充填剤の最大径は、絶縁被覆導電粒子10の最小径未満であることが好ましい。導電性接着剤層13における充填剤の含有量は、導電性接着剤層100体積部に対して5体積部~60体積部であることが好ましい。この範囲であれば、添加量に見合った信頼性向上の効果が得られやすくなる。
【0077】
本実施形態の導電性接着剤層(異方導電フィルム)13において、絶縁被覆導電粒子10は導電性接着剤層13の両主面の一方面側に偏在していることが好ましい。
図3の(b)に示すように、絶縁被覆導電粒子10が導電性接着剤層13の離型フィルム12が設けられている一方面側に偏在している場合、絶縁被覆導電粒子10と一方面との最短距離は0μmより大きく1μm以下であってもよい。最短距離Dを上記範囲内にすることで、圧着時の絶縁被覆導電粒子10の流動を抑制することができ、絶縁被覆導電粒子10の捕捉性能を向上させることができる。
【0078】
また、
図3の(b)に示すように、絶縁被覆導電粒子10は、基材粒子1の中心を通り且つ導電性接着剤層13の厚み方向に平行な軸P’が2つの粗領域若しくは絶縁性微粒子2の一部又は全部が除去された2つの球冠領域を通るように配されている、又は、平行な軸P’と上記二つの平行な平面(2つの球冠領域及び球帯領域を分ける平面)とが直交するように配されていることが好ましい。このような異方導電フィルム11において、絶縁被覆導電粒子10の、軸P’の方向における粒子径Xと、軸P’と直交する方向における粒子径Yとは、Y>Xの関係となる。なお、軸P’と直交する方向は、異方導電フィルム11が帯状である場合にはその長手方向ということもできる。
【0079】
また、上記粒子径Xは、基材粒子1の直径以上、基材粒子1の直径及び絶縁性微粒子2の直径の合計値以下であることが好ましい。粒子径Xがこのような条件を満たす場合、絶縁被覆導電粒子10は、軸P’を垂線とする二つの平行な平面で切ったときの2つの球冠領域の少なくとも一方に、絶縁性微粒子2が存在しない領域を有する状態となる。この場合、対向する電極を有する回路部材同士の接続において、対向する電極間に絶縁被覆導電粒子10が捕捉されるときに、絶縁被覆導電粒子10の基材粒子1と電極との間に絶縁性微粒子2が挟まれることが抑制され、低抵抗接続が容易となる。
【0080】
また、上記粒子径Yは、基材粒子1の直径及び2×(絶縁性微粒子2の直径)の合計値以上、2×(基材粒子1の直径)の値以下であることが好ましい。粒子径Yがこのような条件を満たす場合、絶縁被覆導電粒子10は、軸P’を垂線とする二つの平行な平面で切ったときの球帯領域に、絶縁性微粒子2で被覆された領域を有しており、対向する電極を有する回路部材同士の接続において絶縁被覆導電粒子10の凝集が発生しても、凝集粒子による短絡を好適に抑制することができる。なお、粒子径Yが大きくなる程、短絡の抑制には効果的であるが、2×(基材粒子1の直径)の値以下であると、導電性接着剤層13における絶縁被覆導電粒子10の粒子密度の調整、及び圧着時の導電性接着剤層13の流動性の制御の点で好ましい。
【0081】
また、導通性と絶縁性とを両立する観点から、上記粒子径Xと上記粒子径Yとの比X/Yが、0.4以上0.9以下であることが好ましい。X/Yが0.4以上であると、回路部材のバンプ面積を小面積化した場合であっても、絶縁被覆導電粒子10の捕捉性を確保しやすくなり、X/Yが0.9以下であると、接続抵抗を低抵抗化しやすくなる。
【0082】
本実施形態の導電性接着剤層(異方導電フィルム)13においては、絶縁被覆導電粒子の80%以上についての平均が上記の条件を満たしていることが好ましい。
【0083】
上記粒子径X、上記粒子径Y、及び最短距離Dは、異方導電フィルム11を、絶縁被覆導電粒子10の基材粒子1の中心を通り、且つ導電性接着剤層13の厚み方向に平行な面に沿って切断したときの断面を観察することにより確認することができる。
【0084】
断面観察は、収束イオンビーム(FIB)、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)などの加工・観察装置によって可能である。例えば、FIBを用いて、導電性接着剤層(異方導電フィルム)13の断面を切削し、その後、SEMにて観察および測定することが可能である。具体的には、離型フィルム付き異方導電フィルム11の離型フィルム12側を導電性のカーボンテープを用いて、試料加工・観察用の冶具に固定する。その後、導電性接着剤層(異方導電フィルム)13側から白金スパッタ処理を実施し、導電性接着剤層(異方導電フィルム)13上に10nmの白金膜を形成する。収束イオンビーム(FIB)を用いて、離型フィルム付き異方導電フィルム11の導電性接着剤層13側から加工を実施し、加工断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察する。
【0085】
導電性接着剤層(異方導電フィルム)13における接着剤領域の厚みは適宜設定することができ、例えば、導電領域の上記最短距離Dを満たす接着剤領域とは反対側の接着剤領域の厚みは、バンプ電極の高さに応じて適宜設定することができる。
【0086】
異方導電フィルムは、導電性接着剤層13に、導電粒子を含有しない絶縁性接着剤層を積層した多層構成にすることも可能である。
【0087】
絶縁性接着剤層は、導電性接着剤層13と同様に、上述したモノマー、硬化剤及びフィルム形成材を含有することができ、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート類等を更に含有していてもよい。
【0088】
導電性接着剤層13に絶縁性接着剤層を積層することで、異方導電フィルムに含まれる絶縁被覆導電粒子10をフィルムの一方面側に偏在させることが容易になる。この場合、導電性接着剤層13に由来する第1の接着剤領域/導電領域/第2の接着剤領域と、第2の接着剤領域に隣接し、絶縁性接着剤層に由来する第3の接着剤領域とから構成される異方導電フィルムを形成することができる。また、導電性接着剤層13と絶縁性接着剤層の溶融粘度の差を調節することによって、回路接続時の絶縁被覆導電粒子10及び接着剤領域の流動性を任意に調整することができる。
【0089】
調整方法としては、例えば、所定のガラス転移温度(Tg)を有するフィルム形成材を導電性接着剤層13及び絶縁性接着剤層に含有させることが挙げられる。本実施形態においては、導電性接着剤層13に含有させるフィルム形成材として、Tgが60~180℃の熱可塑性樹脂(特にはフェノキシ樹脂)を用い、絶縁性接着剤層に含有させるフィルム形成材として、Tgが40~100℃の熱可塑性樹脂(特にはフェノキシ樹脂)を用いることが好ましい。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)等の熱物性測定装置で測定される。例えば、フィルム成形材をアルミニウム製のサンプルパンに秤量し、空のアルミニウム製サンプルパンと同時に測定することで、熱量の差を計測する。この際、1度目の測定では、フィルム形成材の溶融等の影響により測定誤差が生じる場合があるため、2度目以降の測定データからガラス転移温度を測定することが好ましい。
【0090】
絶縁被覆導電粒子10は、規則的な配列で導電性接着剤層13中に配されていることが好ましい。例えば、導電性接着剤層13の厚み方向から見たときに、
図7に示されるような配列模様を形成するように絶縁被覆導電粒子10を配列させるとことが好ましい。配列模様は、絶縁被覆導電粒子10同士を直線で結んだときに含まれる形状として、正三角形型、二等辺三角形型、正五角形型、正方系型、長方形型、これらの模様を傾斜させた配列模様等が挙げられる。この中でも、正三角形型の配列は、絶縁被覆導電粒子10の最密充填が可能な模様であり、対向する電極間に捕捉される絶縁被覆導電粒子数を増加させるために好適な配列模様である。
【0091】
絶縁被覆導電粒子10の粒子密度は、5000個/mm2以上40000個/mm2以下であることが好ましい。この条件を満たすことにより、対向する電極間の接続信頼性の確保と、回路部材内の隣り合う電極同士の絶縁性の確保とをより好適に両立できる。
【0092】
[異方導電フィルムの製造方法]
次に、本発明に係る異方導電フィルムの製造方法の一実施形態について、
図4~
図6を参照しながら説明する。
【0093】
図4~
図6に示される本実施形態の異方導電フィルムの製造方法は、
導電性を有する基材粒子1と、該基材粒子1の表面を被覆する絶縁性微粒子2と、を備える複合粒子20を用意するステップ1と、
閉鎖端面Sを有する孔32が設けられた粒子収容部材30の孔32に複合粒子20を収容するステップ2(
図4の(a)を参照)と、
孔32から露出する複合粒子20の球冠領域3にある絶縁性微粒子2の一部又は全部を除去するステップ3(
図4の(b)を参照)と、
第1の接着剤層13a上に、球冠領域3の絶縁性微粒子2が除去された複合粒子20を、球冠領域3側が第1の接着剤層13aに接するように粒子収容部材30から移しつつ、複合粒子20の絶縁性微粒子2の一部を粒子収容部材30の閉鎖端面Sに付着させて除去することにより、第1の接着剤層13a上に絶縁被覆導電粒子10を設けるステップ4(
図5の(a)及び(b)を参照)と、
第1の接着剤層13aの絶縁被覆導電粒子10が配されている側に第2の接着剤層13bを貼り合せるステップ5(
図5の(c)を参照)と、
を備える。
【0094】
ステップ1における複合粒子20は、上述した(ii)の方法で説明したようにして用意することができる。
【0095】
ステップ2で用いられる粒子収容部材30の材質としては、例えば、アクリレート、メタクリレート等のラジカル重合性化合物の硬化物が挙げられる。孔32の形状としては、複合粒子20を収容でき、複合粒子20の球冠領域3が粒子収容部材30から突出することができるものであればよく、例えば、円柱、円錐、角柱、角推が挙げられる。閉鎖端面Sの形状としては、例えば、円形状(球面状)、多角形状が挙げられる。
【0096】
孔32は、規則的な配列(例えば、
図7に示される配列)で設けることが好ましく、これにより、上述した配列模様で絶縁被覆導電粒子10を配した導電性接着剤層13を形成することができる。
【0097】
複合粒子20の球冠領域3にある絶縁性微粒子2を除去する方法としては、例えば、ウレタンゴム製、金属製等のスキージを用いて掻きとる手法、刷毛等を用いて掻きとる手法が挙げられる。
【0098】
第1の接着剤層13aを構成する材料としては、上述した導電性接着剤層13に含まれる、モノマー、硬化剤及びフィルム形成材が挙げられる。第1の接着剤層13aは、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート類等を更に含有していてもよい。
【0099】
本実施形態においては、
図5の(a)に示されるように、剥離フィルム12上に第1の接着剤層13aを形成した積層体を用いることができる。第1の接着剤層13aの厚みは、バンプ電極の高さに応じて適宜設定することができる。
【0100】
また、第2の接着剤層13bの貼り合せにおいても、剥離フィルム12上に第2の接着剤層13bを形成した積層体を用いることができる。第2の接着剤層13bの厚みは、バンプ電極の高さに応じて適宜設定することができる。第2の接着剤層13bを構成する材料としては、上述した導電性接着剤層13に含まれる、モノマー、硬化剤及びフィルム形成材が挙げられる。第2の接着剤層13bは、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート類等を更に含有していてもよい。
【0101】
貼り合せの方法としては、例えば、接着剤を加熱しながら貼り合せるラミネート手法が挙げられる。また、加熱だけでなく、減圧下にてラミネートを行う真空加熱ラミネータを用いれば、貼り合せ時に気泡の巻き込みを低減することが可能である。
【0102】
上記ステップ1~5を経て、
図6に示されるような、剥離フィルム12と、絶縁被覆導電粒子10及び接着剤成分が含まれる導電性接着剤層(異方導電フィルム)13と、剥離フィルム12とがこの順に積層された積層構造を有する剥離フィルム付き異方導電フィルムが得られる。
【0103】
本実施形態においては、絶縁被覆導電粒子10を導電性接着剤層13の一方面側に偏在させる観点から、第1の接着剤層13aの厚みDaと、第2の接着剤層13bの厚みDbとの比Da/Dbを、20/1~15/5とすることが好ましい。
【0104】
[接続構造体の構成]
図8は、本発明に係る接続構造体の一実施形態を示す模式的断面図である。同図に示すように、接続構造体50は、互いに対向する第1の回路部材52及び第2の回路部材53と、これらの回路部材52,53を接続する導電性接着剤(異方導電フィルム)の硬化物54とを備えて構成されている。
【0105】
第1の回路部材52は、例えばテープキャリアパッケージ(TCP)、プリント配線板、半導体シリコンチップ等である。第1の回路部材52は、本体部5の実装面5a側に複数のバンプ電極6を有している。バンプ電極6は、例えば平面視で矩形状をなしており、厚みは例えば3μm以上18μm未満となっている。バンプ電極6の形成材料には、例えばAu等が用いられ、導電性接着剤(異方導電フィルム)の硬化物54に含まれる絶縁被覆導電粒子10よりも変形し易くなっている。なお、実装面5aにおいて、バンプ電極6が形成されていない部分には、絶縁層が形成されていてもよい。
【0106】
第2の回路部材53は、例えば液晶ディスプレイに用いられるITO、IZO、若しくは金属等で回路が形成されたガラス基板又はプラスチック基板、フレキシブルプリント基板(FPC)、セラミック配線板などである。第2の回路部材53は、
図6に示すように、本体部7の実装面7a側にバンプ電極6に対応する複数の回路電極8を有している。回路電極8は、バンプ電極6と同様に、例えば平面視で矩形状をなしており、厚みは例えば100nm程度となっている。回路電極8の表面は、例えば金、銀、銅、錫、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、インジウム錫酸化物(ITO)、及びインジウム亜鉛酸化物(IZO)から選ばれる1種或いは2種以上の材料で構成されている。なお、実装面7aにおいても、回路電極8が形成されていない部分に絶縁層が形成されていてもよい。
【0107】
硬化物54は、例えば、
図3の(a)に示される剥離フィルム付き異方導電フィルム11を用いて形成され、導電性接着剤層(異方導電フィルム)13の硬化物とすることができる。なお、本実施形態では、説明の便宜上、絶縁被覆導電粒子10が分散された層を導電性接着剤層13と称するが、層を構成している接着剤成分自体は非導電性である。
【0108】
絶縁被覆導電粒子10は、第2の回路部材53側に偏在した状態となっていてもよく、圧着によって僅かに扁平に変形した状態でバンプ電極6と回路電極8との間に介在している。これにより、バンプ電極6と回路電極8との間の電気的な接続が実現されている。また、隣接するバンプ電極6,6間及び隣接する回路電極8,8間では、絶縁被覆導電粒子10がパターン模様を形成した状態で離間されており、隣接するバンプ電極6,6間及び隣接する回路電極8,8間の電気的な絶縁が実現されている。
【0109】
[接続構造体の製造方法]
図9及び
図10は、
図8に示した接続構造体の製造工程を示す模式的断面図である。接続構造体50の形成にあたっては、まず、剥離フィルム付き異方導電フィルム11から剥離フィルム12を剥離し、実装面7aと対向するようにして導電性接着剤層(異方導電フィルム)13を第2の回路部材53上にラミネートする。次に、
図10に示すように、バンプ電極6と回路電極8とが対向するように、導電性接着剤層(異方導電フィルム)13がラミネートされた第2の回路部材53上に第1の回路部材52を配置する。そして、導電性接着剤層(異方導電フィルム)13を加熱しながら第1の回路部材52と第2の回路部材53とを厚み方向に加圧する。
【0110】
これにより、導電性接着剤層(異方導電フィルム)13の接着剤成分が流動し、バンプ電極6と回路電極8との距離が縮まって絶縁被覆導電粒子10が噛合した状態で、導電性接着剤層13が硬化する。導電性接着剤層13の硬化により、バンプ電極6と回路電極8とが電気的に接続され、かつ隣接するバンプ電極6,6同士及び隣接する回路電極8,8同士が電気的に絶縁された状態で導電性接着剤層(異方導電フィルム)13の硬化物54が形成され、
図8に示した接続構造体50が得られる。得られた接続構造体50では、導電性接着剤層(異方導電フィルム)13の硬化物54によってバンプ電極6と回路電極8との間の距離の経時的変化が充分に防止されると共に、電気的特性の長期信頼性も確保できる。
【0111】
なお、接続時の加熱温度は、硬化剤において重合活性種が発生し、重合モノマーの重合が開始される温度以上であることが好ましい。この加熱温度は、例えば80℃~200℃であり、好ましくは100℃~180℃である。また、加熱時間は、例えば0.1秒~30秒、好ましくは1秒~20秒である。加熱温度が80℃未満であると硬化速度が遅くなり、200℃を超えると望まない副反応が進行しやすい。また、加熱時間が0.1秒未満では硬化反応が充分に進行せず、30秒を超えると硬化物54の生産性が低下し、さらに、望まない副反応も進みやすい。
【0112】
本実施形態の接続構造体の製造方法によれば、絶縁被覆導電粒子10を含む導電性接着剤層(異方導電フィルム)13を用いることにより、対向する電極間の接続信頼性と回路部材内の隣り合う電極同士の絶縁性とを両立できる接続構造体を得ることができる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0114】
[接着剤層の形成]
以下に示す方法で接着剤層をそれぞれ形成した。
【0115】
(接着剤層1)
ジムロート冷却管、塩化カルシウム管、及び攪拌モーターに接続されたポリテトラフルオロエチレン製の攪拌棒を装着した3000mLの3つ口フラスコ中で、4,4’-(9-フルオレニリデン)-ジフェノール45g(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)、及び3,3’,5,5’-テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル50g(三菱化学株式会社製:YX-4000H)を、N-メチルピロリドン1000mLに溶解して反応液とした。これに炭酸カリウム21gを加え、マントルヒーターで110℃に加熱しながら攪拌した。3時間攪拌後、1000mLのメタノールが入ったビーカーに反応液を滴下し、生成した沈殿物を吸引ろ過することによってろ取した。ろ取した沈殿物を300mLのメタノールで3回洗浄して、フェノキシ樹脂aを75g得た。
【0116】
なお、フェノキシ樹脂aの分子量及び分散度について、下記の条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より測定したところ、標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算で、Mn=15769、Mw=38045、Mw/Mn=2.413であった。
(測定条件)
装置:東ソー株式会社製 GPC-8020
検出器:東ソー株式会社製 RI-8020
カラム:日立化成株式会社製 Gelpack GLA160S+GLA150S
試料濃度:120mg/3mL
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:60μL
圧力:2.94×106Pa(30kgf/cm2)
流量:1.00mL/min
【0117】
また、フェノキシ樹脂aのガラス転移温度について、下記の条件に従って、測定したところ、160℃であった。
(測定条件)
示差走査熱量測定装置(株式会社パーキンエルマージャパン製、Pyeis)を用いて、窒素雰囲気下にて昇温速度:10℃/min、30~250℃の範囲にて2回測定し、2度目の測定結果をガラス転移温度とした。
【0118】
次に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製:jER828)を50質量部、硬化剤として4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを5質量部、及びフィルム形成材としてフェノキシ樹脂aを50質量部、をメチルエチルケトンに溶解、混合し、接着剤ペーストを調製した。
【0119】
得られた接着剤ペーストを、厚み50μmのPET樹脂フィルム上に、コータを用いて塗布し、70℃で5分間熱風乾燥することにより、厚みが15μmの接着剤層1を形成した。
【0120】
(接着剤層2)
接着剤層1の形成と同様にして、厚みが0.8μmの接着剤層2を形成した。
【0121】
(接着剤層3)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学社製:jER807)を45質量部、硬化剤として4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを5質量部、及びフィルム形成材としてフェノキシ樹脂YP-70(新日鉄住金化学社製)を55質量部混合し、接着剤ペーストを調製した。
【0122】
得られた接着剤ペーストを、厚み50μmのPET樹脂フィルム上に、コータを用いて塗布し、70℃で5分間熱風乾燥することにより、厚みが15μmの接着剤層3を形成した。
【0123】
[複合粒子の調製]
以下に示す方法で複合粒子をそれぞれ調製した。
【0124】
(基材粒子)
平均粒径3.0μmの架橋ポリスチレン粒子(樹脂微粒子)3gを、アルカリ脱脂の後、酸で中和した。次いで、樹脂微粒子を、pH6.0に調整したカチオン性高分子液100mLに添加し、60℃で1時間攪拌した後、直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾過し、水洗を行った。パラジウム触媒であるアトテックネオガント834(アトテックジャパン(株)製、商品名)を8質量%含有するパラジウム触媒化液100mLに水洗後の樹脂微粒子を添加し、35℃で30分攪拌した後濾過し、水洗を行った。
【0125】
次に、水洗後の樹脂微粒子を3g/Lの次亜リン酸ナトリウム液に添加し、表面が活性化された樹脂微粒子(樹脂コア粒子)を得た。この樹脂コア粒子と、水1000mLと、リンゴ酸ナトリウム(濃度20g/L)とを2000mLのガラスビーカーに投入し、超音波分散させた。続いて、フッ素製攪拌羽根により攪拌(600rpm)を行いながらpHを5.5以下に調整し、分散液を80℃に加温した。そこに、無電解ニッケルめっき液であるSEK670(日本カニゼン株式会社、製品名)を(SEK670-0)/(SEK670-1)=1.8の割合で混合した初期薄膜めっき液を、定量ポンプを用いて7ml/分で添加したところ、約30秒後に還元反応が開始し、浴中から気泡が発生して浴全体が灰色から黒色になった。その後、初期薄膜形成を終了した後、間をあけずに硫酸ニッケル(濃度224g/L)、及びリンゴ酸ナトリウム(濃度305g/L)を混合した厚付けめっき液と、次亜リン酸ナトリウム(濃度534g/L)、及び水酸化ナトリウム(濃度34g/L)で混合した厚付けめっき液を13ml/分で2液同時に添加した。その後、気泡の発生が停止するまで攪拌を行ったところ、浴全体が黒色から灰色に変化した。このめっき処理により、樹脂コア粒子を被覆するニッケルめっき層が形成された。基材粒子の直径をSEMにより測定したところ、直径3.3μmであった。
【0126】
(絶縁性微粒子)
500mL三ツ口フラスコに、ラジカル重合性二重結合及びアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤(3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製:KBM-5103)7.5gと、メタクリル酸(和光純薬工業(株)製)6.9gと、アクリル酸メチル(和光純薬工業(株)製)4.1gと、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.36gと、アセトニトリル350gとを入れてこれらを混合した。窒素(100mL/分)により1時間かけて溶存酸素を置換した後、80℃に加熱しながら6時間重合反応を進行させて、一次粒子径300nmの有機無機ハイブリッド粒子を得た。この有機無機ハイブリッド粒子を含む分散液を20mLの容器に入れ、3000r.p.m.で30分間の遠心分離(株式会社コクサン製:H-103N)により、未反応のモノマーを除去した。更にメタノールを20mL追加し、超音波分散させ再度遠心分離を行った。そこに、硬化触媒として、カルボキシル基の量に対して等モルのトリエチルアミンを入れ、メタノールを追加して超音波分散させて、架橋反応を進行させた。再度の遠心分離後、トリエチルアミンを除去し、得られた絶縁性微粒子をメタノールに分散させた。
【0127】
(複合粒子1)
<基材粒子に表面官能基を形成する工程>
メルカプト酢酸(和光純薬工業株式会社製、商品名)8mmolをメタノール200mlに溶解し、そこに上記で用意した基材粒子を10g加えた。直径45mmの攪拌羽を取り付けたスリーワンモーター(新東科学株式会社製、商品名:BL3000)を用いて室温(25℃)で2時間攪拌し、メタノールで洗浄したφ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製 :コーテッドタイプメンブレンフィルター)で濾過して、表面官能基としてカルボキシル基を有する基材粒子10gを得た。
【0128】
<高分子電解質を基材粒子に吸着させる工程>
重量平均分子量70000のポリエチレンイミンを含む30質量%ポリエチレンイミン水溶液(和光純薬工業株式会社製、商品名:30%ポリエチレンイミン P-70溶液)を超純水で希釈して0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液を得た。この0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液に、上述のカルボキシル基が導入された基材粒子10gを加えた。室温(25℃)で15分間攪拌し、φ3μmのメンブレンフィルタで濾過して、高分子電解質であるポリエチレンイミンが表面に吸着した粒子を得た。この粒子を、超純水200gに混合して室温(25℃)で5分攪拌し、濾過を行った。濾過して得られた粒子を該メンブレンフィルタ上で200gの超純水で2回洗浄して、粒子に吸着していないポリエチレンイミンを除去した。
【0129】
<絶縁性微粒子によって基材粒子を被覆する工程>
ポリエチレンイミンが吸着した基材粒子10gを、上記で用意した絶縁性微粒子を2-プロパノール(和光純薬工業(株)製)で希釈して得られた2質量%の絶縁性微粒子分散液50gを滴下しながら室温(25℃)で30分間攪拌して、基材粒子及びこれを被覆する絶縁性微粒子から構成される複合粒子1を得た。濾過により取り出した複合粒子1を、重量平均分子量1000のシリコーンオリゴマー(日立化成コーテッドサンド株式会社製:SC-6000)50gとメタノール150gの混合液に入れて、室温(25℃)で1時間攪拌して濾過を行った。最後に、複合粒子をトルエン(和光純薬工業(株)製)に入れて3分攪拌し、濾過を行った。
【0130】
<分級工程>
得られた複合粒子1を150℃、1時間の条件で真空乾燥した。その後、旋回気流式ふるい分け分級機(株式会社セイシン企業)で凝集物を取り除いた。
【0131】
(複合粒子2)
複合粒子1と同様にして、表面官能基としてカルボキシル基を有する基材粒子10gを得た。
【0132】
重量平均分子量70000のポリエチレンイミンを含む30質量%ポリエチレンイミン水溶液(和光純薬工業株式会社製、商品名:30%ポリエチレンイミン P-70溶液)を超純水で希釈して0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液を得た。この0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液に、上述のカルボキシル基が導入された基材粒子を10g加えた。室温(25℃)で15分間攪拌し、φ5μmのメンブレンフィルタで濾過して、高分子電解質であるポリエチレンイミンが表面に吸着した粒子を得た。この粒子を、超純水200gに混合して室温(25℃)で5分攪拌し、濾過を行った。濾過して得られた粒子を該メンブレンフィルタ上で200gの超純水で2回洗浄して、粒子に吸着していないポリエチレンイミンを除去した。
【0133】
ポリエチレンイミンが吸着した10gの基材粒子を、上記で用意した絶縁性微粒子を2-プロパノール(和光純薬工業(株)製)で希釈して得られた2質量%の絶縁性微粒子分散液50gを滴下しながら室温(25℃)で30分間攪拌して、導電粒子及びこれを被覆する絶縁性微粒子1から構成される複合粒子2を得た。濾過により取り出した複合粒子2を、重量平均分子量1000のシリコーンオリゴマー(日立化成コーテッドサンド株式会社製:SC-6000)50gとメタノール150gの混合液に入れて、室温(25℃)で1時間攪拌して濾過を行った。最後に、複合粒子をトルエン(和光純薬工業(株)製)に入れて3分攪拌し、濾過を行った。
【0134】
得られた複合粒子2を150℃、1時間の条件で真空乾燥した。その後、旋回気流式ふるい分け分級機(株式会社セイシン企業)で凝集物を取り除いた。
【0135】
(複合粒子3)
複合粒子1と同様にして、表面官能基としてカルボキシル基を有する基材粒子10gを得た。
【0136】
重量平均分子量70000のポリエチレンイミンを含む30質量%ポリエチレンイミン水溶液(和光純薬工業株式会社製、商品名:30%ポリエチレンイミン P-70溶液)を超純水で希釈して0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液を得た。この0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液に、上述のカルボキシル基が導入された基材粒子を10g加えた。室温(25℃)で15分間攪拌し、φ6μmのメンブレンフィルタで濾過して、高分子電解質であるポリエチレンイミンが表面に吸着した粒子を得た。この粒子を、超純水200gに混合して室温(25℃)で5分攪拌し、濾過を行った。濾過して得られた粒子を該メンブレンフィルタ上で200gの超純水で2回洗浄して、粒子に吸着していないポリエチレンイミンを除去した。
【0137】
ポリエチレンイミンが吸着した10gの基材粒子を、絶縁性微粒子を2-プロパノール(和光純薬工業(株)製)で希釈して得られた2質量%の絶縁性微粒子分散液50gを滴下しながら室温(25℃)で30分間攪拌して、導電粒子及びこれを被覆する絶縁性微粒子1から構成される複合粒子3を得た。濾過により取り出した複合粒子3を、重量平均分子量1000のシリコーンオリゴマー(日立化成コーテッドサンド株式会社製:SC-6000)50gとメタノール150gの混合液に入れて、室温(25℃)で1時間攪拌して濾過を行った。最後に、複合粒子をトルエン(和光純薬工業(株)製)に入れて3分攪拌し、濾過を行った。
【0138】
得られた複合粒子3を150℃、1時間の条件で真空乾燥した。その後、旋回気流式ふるい分け分級機(株式会社セイシン企業)で凝集物を取り除いた。
【0139】
[粒子収容部材の用意]
以下に示す粒子収容部材をそれぞれ用意した。
【0140】
(粒子収容部材1)
厚み5.0μmのメタクリレートの重合によって得られた板に、閉鎖端面(底面)を有する円筒形状(直径4.0μm、深さ3.8μm)の孔を、正三角形型に29000個/mm2の密度で配列するように設けた。
【0141】
(粒子収容部材2)
厚み5.0μmのメタクリレートの重合によって得られた板に、閉鎖端面(底面)を有する円筒形状(直径4.0μm、深さ3.8μm)の孔を、正方形型に20000個/mm2の密度で配列するように設けた。
【0142】
(粒子収容部材3)
厚み5.0μmのメタクリレートの重合によって得られた板に、閉鎖端面(底面)を有する円筒形状(直径4.6μm、深さ3.8μm)の孔を、正三角形型に25000個/mm2の密度で配列するように設けた。
【0143】
(粒子収容部材4)
厚み5.0μmのメタクリレートの重合によって得られた板に、閉鎖端面(底面)を有する円筒形状(直径5.2μm、深さ3.8μm)の孔を、正三角形型に20000個/mm2の密度で配列するように設けた。
【0144】
(粒子収容部材5)
厚み5.0μmのメタクリレートの重合によって得られた板に、閉鎖端面(底面)を有する円筒形状(直径3.7μm、深さ3.8μm)の孔を、正三角形型に29000個/mm2の密度で配列するように設けた。
【0145】
[異方導電フィルムの作製]
【0146】
(実施例1)
図4の(a)及び(b)に示される方法と同様にして、粒子収容部材1の孔に複合粒子1を収容し、端面が水平なウレタンゴム製のスキージを用いて、孔から露出する複合粒子の球冠領域にある絶縁性微粒子を除去した。なお、この操作により、複合粒子の球冠領域には、絶縁性微粒子数が0個である領域が54.7μm
2設けられたことをSEMによる観察によって確認した。
【0147】
次に、
図5の(a)及び(b)に示される方法と同様にして、接着剤層1上に正三角形型に29000個/mm
2の粒子密度で配置された絶縁被覆導電粒子を設けた。なお、このとき、粒子収容部材1の孔の底面に絶縁性微粒子が付着することにより、絶縁被覆導電粒子の接着剤層1と接する部分とは反対側には、絶縁性微粒子数が0個である領域が47.9μm
2設けられたことをSEMによる観察によって確認した。
【0148】
次に、40℃に加熱したホットロールラミネータで、接着剤層1の絶縁被覆導電粒子が配されている側に接着剤層2を貼り合せて、2つのPET樹脂フィルム間に導電性接着剤層が設けられた異方導電フィルムを得た。
【0149】
(実施例2)
粒子収容部材2を用いて、接着剤層1上に正方形型に20000個/mm2の粒子密度で配置された絶縁被覆導電粒子を設けたこと以外は実施例1と同様にして、異方導電フィルムを得た。
【0150】
(実施例3)
複合粒子1に代えて複合粒子2を、また、粒子収容部材1に代えて粒子収容部材3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、異方導電フィルムを得た。この場合も、複合粒子の球冠領域には、絶縁性微粒子数が0個である領域が50.2μm2設けられたことを確認でき、絶縁被覆導電粒子の接着剤層1と接する部分とは反対側には、絶縁性微粒子数が0個である領域が48.7μm2設けられたことを確認できた。
【0151】
(実施例4)
複合粒子1に代えて複合粒子3を、また、粒子収容部材1に代えて粒子収容部材4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、異方導電フィルムを得た。この場合も、複合粒子の球冠領域には、絶縁性微粒子数が0個である領域が53.3μm2設けられたことを確認でき、絶縁被覆導電粒子の接着剤層1と接する部分とは反対側には、絶縁性微粒子数が0個である領域が48.7μm2設けられたことを確認できた。
【0152】
(実施例5)
粒子収容部材1に代えて粒子収容部材5を用いたこと以外は実施例1と同様にして、異方導電フィルムを得た。この場合も、複合粒子の球冠領域には、絶縁性微粒子数が0個である領域が52.6μm2設けられたことを確認でき、絶縁被覆導電粒子の接着剤層1と接する部分とは反対側には、絶縁性微粒子数が0個である領域が47.9μm2設けられたことを確認できた。
【0153】
(実施例6)
接着剤層1に代えて接着剤層3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、異方導電フィルムを得た。
【0154】
[異方導電フィルムの評価]
実施例1~6の異方導電フィルムについて、FIB-SEMにて断面加工及び断面観察を行った。なお、断面観察は、絶縁被覆導電粒子の基材粒子の中心を通り且つ導電性接着剤層の厚み方向に平行な面において行い、このときの絶縁被覆導電粒子の、導電性接着剤層の厚み方向に平行な方向における粒子径Xと、導電性接着剤層の厚み方向と直交する方向における粒子径Yとを測定するとともに、絶縁被覆導電粒子と、導電性接着剤層の一方面との最短距離Dを測定した。結果を表1に示す。
【0155】
【0156】
[接続構造体の作製]
第1の回路部材として、バンプ電極を一列に配列したストレート配列構造を有するICチップ(外形2mm×20mm、厚み0.55mm、バンプ電極の大きさ100μm×30μm、バンプ電極間距離8μm、バンプ電極厚み15μm)を準備した。また、第2の回路部材として、ガラス基板(コーニング社製:#1737、38mm×28mm、厚み0.3mm)の表面にITOの配線パターン(パターン幅21μm、電極間スペース17μm)を形成したものを準備した。
【0157】
実施例1~6に係る異方導電フィルム(2.5mm×25mm)の一方のPET樹脂フィルムを剥離し、導電性接着剤層をガラス基板上に、セラミックヒータからなるステージ(150mm×150mm)及びツール(3mm×20mm)から構成される熱圧着装置を用いて80℃、0.98MPa(10kgf/cm2)の条件で2秒間加熱及び加圧して貼り付けた。
【0158】
次に、異方導電フィルムの他方のPET樹脂フィルムを剥離し、ICチップのバンプ電極とガラス基板の回路電極との位置合わせを行った後、セラミックヒータからなるステージ(150mm×150mm)及びツール(3mm×20mm)から構成される熱圧着装置を用いて、導電性接着剤層の実測最高到達温度170℃、及びバンプ電極での面積換算圧力70MPaの条件で5秒間加熱及び加圧して、接続構造体を得た。
【0159】
[接続構造体の評価]
得られた接続構造体について、バンプ電極と回路電極との間の接続抵抗、及び隣り合う回路電極間の絶縁抵抗を評価した。なお、接続抵抗の評価は、四端子測定法にて実施し、14箇所の測定の平均値を用いた。また、絶縁抵抗の評価は、接続構造体に50Vの電圧を印加し、計1440か所の回路電極間の絶縁抵抗を一括で測定した。結果を表2に示す。
【0160】
【0161】
表2に示すように、実施例1~6の異方導電フィルムを用いて作製した接続構造体は、接続抵抗値が1.2Ω以下であり、かつ充分な絶縁抵抗を有していた。
【符号の説明】
【0162】
1…基材粒子、2…絶縁性微粒子、3…球冠領域、6…バンプ電極、8…回路電極、10…絶縁被覆導電粒子、11…剥離フィルム付き異方導電フィルム、12…剥離フィルム、13…導電性接着剤層(異方導電フィルム)、13a…第1の接着剤層、13b…第2の接着剤層、20…複合粒子、30…粒子収容部材、32…孔、50…接続構造体、52…第1の回路部材、53…第2の回路部材、54…硬化物。