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特許7078104エアロゲルの製造方法、エアロゲル、エアロゲルブロック及びポリシロキサン化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】エアロゲルの製造方法、エアロゲル、エアロゲルブロック及びポリシロキサン化合物
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/16 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
C01B33/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020504596
(86)(22)【出願日】2018-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2018009042
(87)【国際公開番号】W WO2019171543
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】赤須 雄太
(72)【発明者】
【氏名】牧野 竜也
(72)【発明者】
【氏名】小竹 智彦
(72)【発明者】
【氏名】岩永 抗太
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許発明第01400268(FR,A)
【文献】特開2000-026609(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038769(WO,A1)
【文献】NOGAMI Masayuki, et al.,Synthesis and characterization of transparent silica-based aerogels using methyltrimethoxysilane pre,J Sol-Gel Sci Technol,2010年07月17日,(2010)56,107-113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00- 33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素化合物又はケイ素化合物の加水分解生成物を含有するゾルを生成するゾル生成工程と、
前記ゾルをゲル化して、湿潤ゲルを得る湿潤ゲル生成工程と、
前記湿潤ゲルを乾燥してエアロゲルを得る乾燥工程と、
を備え、
前記ケイ素化合物が下記一般式(S)で表される構造を有するポリシロキサン化合物を含む、エアロゲルの製造方法。
【化1】

[式(S)中、R1sはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、R2sはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又は水素を示し、nsは2以上の整数を示し、msは2以上の整数を示し、lsは2以上の整数を示す。]
【請求項2】
前記ケイ素化合物がさらに3官能シランモノマー及びシランオリゴマーの少なくとも一種を含み、
前記3官能シランモノマーは、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基が3個結合したケイ素原子を有し、
前記シランオリゴマーは、ケイ素原子の総数に対し、3個の酸素原子と結合したケイ素原子を50%以上有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
下記一般式(S)で表される構造を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物である、エアロゲル。
【化2】

[式(S)中、R1sはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、R2sはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又は水素を示し、nsは2以上の整数を示し、msは2以上の整数を示し、lsは2以上の整数を示す。]
【請求項4】
下記一般式(S)で表される構造を有する、エアロゲル形成用ポリシロキサン化合物。
【化3】

[式(S)中、R1sはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、R2sはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又は水素を示し、nsは2以上の整数を示し、msは2以上の整数を示し、lsは2以上の整数を示す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゲルの製造方法、エアロゲル、エアロゲルブロック及びポリシロキサン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導率が小さく断熱性を有する材料としてシリカエアロゲルが知られている。シリカエアロゲルは、優れた機能性(断熱性等)、特異な光学特性、特異な電気特性などを有する機能素材として有用なものであり、例えば、シリカエアロゲルの超低誘電率特性を利用した電子基板材料、シリカエアロゲルの高断熱性を利用した断熱材料、シリカエアロゲルの超低屈折率を利用した光反射材料等に用いられている。このようなシリカエアロゲルを製造する方法として、例えばアルコキシシランを加水分解し、重合して得られたゲル状化合物(アルコゲル)を、分散媒の超臨界条件下で乾燥する超臨界乾燥法(例えば特許文献1参照)、あるいは当該アルコゲルの強度を向上させた上で常圧で乾燥させる方法(例えば特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第4402927号
【文献】特開2011-93744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来周知の製造方法で得られるエアロゲルはある程度の可視光透過性を有しているものの、強度が極めて低く脆い。一方で、従来の知見に基づきそのようなエアロゲルの強度を高めようとすると、可視光透過性が極端に低下してしまうのが現状である。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、良好な可視光透過率と強度とを両立可能なエアロゲルの製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、そのような製造方法により得られるエアロゲル、当該エアロゲルを含むエアロゲルブロック、さらには当該エアロゲルを得るためのエアロゲル形成用ポリシロキサン化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定のポリシロキサン化合物を用いることが重要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、ケイ素化合物又はケイ素化合物の加水分解生成物を含有するゾルを生成するゾル生成工程と、ゾルをゲル化して、湿潤ゲルを得る湿潤ゲル生成工程と、湿潤ゲルを乾燥してエアロゲルを得る乾燥工程と、を備え、ケイ素化合物が下記一般式(S)で表される構造を有するポリシロキサン化合物を含む、エアロゲルの製造方法を提供する。このような製造方法であれば、良好な可視光透過率と強度とを両立可能なエアロゲルを得ることができる。
【化1】
式(S)中、R1sはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、R2sはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又は水素を示し、nsは2以上の整数を示し、msは2以上の整数を示し、lsは2以上の整数を示す。
【0008】
本発明の製造方法において、ケイ素化合物がさらに3官能シランモノマー及びシランオリゴマーの少なくとも一種を含んでいてもよい。ここで、3官能シランモノマーは、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基が3個結合したケイ素原子を有するものであり、シランオリゴマーは、ケイ素原子の総数に対し、3個の酸素原子と結合したケイ素原子を50%以上有するものである。これにより、強度をより向上できるとともに、乾燥工程における体積収縮及びクラックの発生を抑制し易くなる。特に体積収縮及びクラックの発生が抑制されることにより、良好な可視光透過性と断熱性とを有するエアロゲルブロックが得易くなる。
【0009】
本発明はまた、可視光透過率が65%以上であり、単位体積当たりの曲げ破断エネルギーが0.30mJ/cm以上である、エアロゲルブロックを提供する。このようなエアロゲルブロックは、非常に高い水準で可視光透過率と強度とを共に有すると言える。
【0010】
本発明のエアロゲルブロックは、下記一般式(S)で表される構造を有するエアロゲルを含むことができる。下記構造は、良好な可視光透過率と強度とを両立可能なエアロゲルを得るために用いられる上記一般式(S)に由来する構造であってもよい。
【化2】
式(S)中、R1sはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、msは2以上の整数を示す。
【0011】
本発明はまた、下記一般式(S)で表される構造を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物である、エアロゲルを提供する。このようなエアロゲルは、良好な可視光透過率と強度とを両立可能である。
【化3】
式(S)中、R1sはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、R2sはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又は水素を示し、nsは2以上の整数を示し、msは2以上の整数を示し、lsは2以上の整数を示す。
【0012】
本発明はさらに、下記一般式(S)で表される構造を有する、エアロゲル形成用ポリシロキサン化合物を提供する。下記一般式(S)で表される構造を有するポリシロキサン化合物は、良好な可視光透過率と強度とを両立するエアロゲルを得るために特に有用であり、このようなポリシロキサン化合物がエアロゲル形成用の材料として従来使用された例は確認されていない。
【化4】
式(S)中、R1sはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、R2sはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又は水素を示し、nsは2以上の整数を示し、msは2以上の整数を示し、lsは2以上の整数を示す。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、良好な可視光透過率と強度とを両立可能なエアロゲルの製造方法を提供することができる。本発明はまた、そのような製造方法により得られるエアロゲル、当該エアロゲルを含むエアロゲルブロック、さらには当該エアロゲルを得るためのエアロゲル形成用ポリシロキサン化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。「A又はB」とは、A及びBのいずれか一方を含んでいればよく、両方を含んでいてもよい。本実施形態で例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
<エアロゲルの製造方法>
本実施形態に係るエアロゲルの製造方法は、ケイ素化合物又はケイ素化合物の加水分解生成物(ケイ素化合物及びケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種)を含有するゾルを生成するゾル生成工程と、ゾルをゲル化して、湿潤ゲルを得る湿潤ゲル生成工程と、湿潤ゲルを乾燥してエアロゲルを得る乾燥工程と、を備える。なお、より具体的には、本実施形態に係るエアロゲルの製造方法は、乾燥工程の前工程として湿潤ゲルを洗浄する洗浄工程を更に備えることができる。
【0016】
なお、ゾルとは、ゲル化反応が生じる前の状態であって、本実施形態においては、ケイ素化合物又はケイ素化合物の加水分解生成物が液体媒体中に溶解又は分散している状態を意味する。また、湿潤ゲルとは、液体媒体を含んでいながらも、流動性を有しない湿潤状態のゲル固形物を意味する。
【0017】
(ゾル生成工程)
ゾル生成工程は、具体的には下記一般式(S)で表される構造を有するポリシロキサン化合物を含むゾル、あるいは当該ポリシロキサン化合物を加水分解してポリシロキサン化合物の加水分解生成物を含むゾル、を生成する工程である。このような製造方法では、特定のポリシロキサン化合物を用いることで良好な可視光透過率と強度とを両立するエアロゲルを得ることができる。なお、このような優れた効果が得られる理由を、発明者らは次のように推察する。すなわち、可視光透過率については、一般式(S)における両端の多官能ケイ素ユニットにより可視光の波長以下の径の微細孔構造が得られ易いことにより、可視光透過率を低下する要因となるミー散乱が生じ難いエアロゲルが得られているものと考えられる。また、強度については、一般式(S)における中央のジオルガノシロキサンユニットにより可撓性が担保され、また当該ユニットの両端の多官能ケイ素ユニットにより剛性が発現され、結果的に高強度のエアロゲル骨格が得られているものと考えられる。なお、一般式(S)で表される構造を有するポリシロキサン化合物を使用することにより、後述する一般式(S)で表される構造をエアロゲルの骨格中に導入することができる。
【化5】
【0018】
式(S)中、R1sはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、R2sはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又は水素を示す。ここで、アリール基としてはフェニル基、置換フェニル基等が挙げられる。また、置換フェニル基の置換基としては、アルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。式(S)中、2個以上のR1sは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に2個のR2sは各々同一であっても異なっていてもよい。また、式(S)中、nsは2以上の整数を示し、msは2以上の整数を示し、lsは2以上の整数を示す。
【0019】
良好な可視光透過率と強度とを両立するエアロゲルを形成し易いという観点から、R1s及びR2sとしては、それぞれ独立に炭素数が1~6のアルキル基、フェニル基等が挙げられ、当該アルキル基としては、メチル基等が挙げられる。また、同様の観点から、nsは3以上の整数とすることができ、4以上の整数であってもよく、その上限は20とすることができる。msは3以上の整数とすることができ、その上限は30とすることができる。lsは3以上の整数とすることができ、4以上の整数であってもよく、その上限は20とすることができる。nsとlsとは同一であってもよい。
【0020】
なお、R2sがアルキル基である場合、上記ポリシロキサン化合物はアルコキシ基を有する。本工程において分子中のアルコキシ基は加水分解されていてもよく、その場合アルコキシ基の全てが加水分解されていてもよいし、部分的に加水分解されていてもよい。すなわち、アルコキシ基を有するポリシロキサン化合物とその加水分解生成物は混在していてもよい。
【0021】
ゾル生成工程では、上記特定のポリシロキサン化合物以外の他のケイ素化合物をさらに用いることができる。そのような他のケイ素化合物としては、例えば加水分解性の反応基又は縮合性の官能基を有する他のポリシロキサン化合物(但し、後述のT単位の割合が50%未満、又は、ケイ素原子の数が100個を超える)が挙げられる。加水分解性の反応基としてはアルコキシ基が挙げられ、アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられ、加水分解反応の反応速度の観点から、メトキシ基及びエトキシ基が好ましい。縮合性の官能基としては水酸基(ヒドロキシアルキル基等の水酸基含有基を含む)、シラノール基等が挙げられる。なお、他のポリシロキサン化合物をさらに用いることで、エアロゲルの柔軟性及び強靭性を向上させ易い。
【0022】
水酸基(ヒドロキシアルキル基)を有するポリシロキサン化合物(上記一般式(S)で表される構造を有するものを除く)としては、例えば、下記一般式(A)で表される構造を有するものが挙げられる。下記一般式(A)で表される構造を有するポリシロキサン化合物を使用することにより、後述する一般式(1)及び式(1a)で表される構造をエアロゲルの骨格中に導入することができる。
【0023】
【化6】
【0024】
式(A)中、R1aはヒドロキシアルキル基を示し、R2aはアルキレン基を示し、R3a及びR4aはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、nは1~50の整数を示す。ここで、アリール基としてはフェニル基、置換フェニル基等が挙げられる。また、置換フェニル基の置換基としては、アルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。なお、式(A)中、2個のR1aは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に2個のR2aは各々同一であっても異なっていてもよい。また、式(A)中、2個以上のR3aは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に2個以上のR4aは各々同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
式(A)中、R1aとしては炭素数が1~6のヒドロキシアルキル基等が挙げられ、当該ヒドロキシアルキル基としてはヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。また、式(A)中、R2aとしては炭素数が1~6のアルキレン基等が挙げられ、当該アルキレン基としてはエチレン基、プロピレン基等が挙げられる。また、式(A)中、R3a及びR4aとしてはそれぞれ独立に炭素数が1~6のアルキル基、フェニル基等が挙げられ、当該アルキル基としてはメチル基等が挙げられる。また、式(A)中、nは2~30とすることができるが、5~20であってもよい。
【0026】
上記一般式(A)で表される構造を有するポリシロキサン化合物としては、市販品を用いることができ、X-22-160AS、KF-6001、KF-6002、KF-6003等の化合物(いずれも、信越化学工業株式会社製)、XF42-B0970、Fluid OFOH 702-4%等の化合物(いずれも、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)などが挙げられる。
【0027】
アルコキシ基を有するポリシロキサン化合物(上記一般式(S)で表される構造を有するものを除く)としては、例えば、下記一般式(B)で表される構造を有するものが挙げられる。下記一般式(B)で表される構造を有するポリシロキサン化合物を使用することにより、後述する一般式(2)又は(3)で表される橋かけ部を有するラダー型構造をエアロゲルの骨格中に導入することができる。
【0028】
【化7】
【0029】
式(B)中、R1bはアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示し、R2b及びR3bはそれぞれ独立にアルコキシ基を示し、R4b及びR5bはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、mは1~50の整数を示す。ここで、アリール基としてはフェニル基、置換フェニル基等が挙げられる。また、置換フェニル基の置換基としては、アルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。なお、式(B)中、2個のR1bは各々同一であっても異なっていてもよく、2個のR2bは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に2個のR3bは各々同一であっても異なっていてもよい。また、式(B)中、mが2以上の整数の場合、2個以上のR4bは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に2個以上のR5bも各々同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
式(B)中、R1bとしては炭素数が1~6のアルキル基、炭素数が1~6のアルコキシ基等が挙げられ、当該アルキル基又はアルコキシ基としてはメチル基、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。また、式(B)中、R2b及びR3bとしてはそれぞれ独立に炭素数が1~6のアルコキシ基等が挙げられ、当該アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。また、式(B)中、R4b及びR5bとしてはそれぞれ独立に炭素数が1~6のアルキル基、フェニル基等が挙げられ、当該アルキル基としてはメチル基等が挙げられる。また、式(B)中、mは2~30とすることができるが、5~20であってもよい。
【0031】
上記一般式(B)で表される構造を有するポリシロキサン化合物は、特開2000-26609号公報、特開2012-233110号公報等にて報告される製造方法を適宜参照して得ることができる。
【0032】
また、アルコキシ基を有するポリシロキサン化合物としては、例えば、メチルシリケートオリゴマー、エチルシリケートオリゴマー等のシリケートオリゴマーを用いることもできる。このようなシリケートオリゴマーとしては、例えば、メチルシリケート51、メチルシリケート53A、エチルシリケート40、エチルシリケート48(いずれも、コルコート株式会社製)等が挙げられる。
【0033】
また、上記の他のケイ素化合物としては、例えば、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するシランモノマーが挙げられる。加水分解性の官能基及び縮合性の官能基としては上記に例示した基と同じ基が例示できる。なお、シランモノマーは、シロキサン結合(Si-O-Si)を有しないケイ素化合物ということもできる。なお、シランモノマーをさらに用いることで、エアロゲルの柔軟性及び強靭性を向上させ易い。
【0034】
加水分解性の官能基を有するシランモノマーとしては、例えば、モノアルキルトリアルコキシシラン、モノアリールトリアルコキシシラン、モノアルキルジアルコキシシラン、モノアリールジアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン、モノアルキルモノアルコキシシラン、モノアリールモノアルコキシシラン、ジアルキルモノアルコキシシラン、ジアリールモノアルコキシシラン、トリアルキルモノアルコキシシラン、トリアリールモノアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン等が挙げられる。具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトシシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
【0035】
縮合性の官能基を有するシランモノマーとしては、例えば、シランテトラオール、メチルシラントリオール、ジメチルシランジオール、フェニルシラントリオール、フェニルメチルシランジオール、ジフェニルシランジオール、n-プロピルシラントリオール、ヘキシルシラントリオール、オクチルシラントリオール、デシルシラントリオール、トリフルオロプロピルシラントリオール等が挙げられる。
【0036】
シランモノマーは、加水分解性の官能基及び縮合性の官能基とは異なる反応性基をさらに有していてもよい。反応性基としては、エポキシ基、メルカプト基、グリシドキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基等が挙げられる。エポキシ基は、グリシドキシ基等のエポキシ基含有基に含まれていてもよい。
【0037】
加水分解性の官能基及び反応性基を有するシランモノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0038】
縮合性の官能基及び反応性基を有するシランモノマーとしては、例えば、ビニルシラントリオール、3-グリシドキシプロピルシラントリオール、3-グリシドキシプロピルメチルシランジオール、3-メタクリロキシプロピルシラントリオール、3-メタクリロキシプロピルメチルシランジオール、3-アクリロキシプロピルシラントリオール、3-メルカプトプロピルシラントリオール、3-メルカプトプロピルメチルシランジオール、N-フェニル-3-アミノプロピルシラントリオール、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルシランジオール等が挙げられる。
【0039】
また、シランモノマーは2以上のケイ素原子を有していてもよく、このようなシランモノマーとしては、ビストリメトキシシリルメタン、ビストリメトキシシリルエタン、ビストリメトキシシリルヘキサン等が挙げられる。
【0040】
上記のシランモノマーの中で、特に3官能シランモノマー、すなわち、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基が3個結合したケイ素原子を有するモノマーをさらに用いることで、強度をより向上できるとともに、乾燥工程における体積収縮及びクラックの発生を抑制し易くなる。3官能シランモノマーとしては、例えば、上記のメチルトリメトキシシラン、メチルシラントリオール、ビストリメトキシシリルメタン等が挙げられる。
【0041】
また、上記の他のケイ素化合物としてはシランオリゴマーが挙げられる。シランオリゴマーはシランモノマーの重合体であり、複数のケイ素原子が酸素原子を介して連結された構造を有する。本明細書中、シランオリゴマーは、1分子中のケイ素原子の数が2~100個の重合体を示す。シランオリゴマーは、例えば、上記のシランモノマーの一種又は二種以上の重合体であってよい。なお、シランオリゴマーをさらに用いることで、強度をより向上できるとともに、乾燥工程における体積収縮及びクラックの発生を抑制し易くなる。特に体積収縮及びクラックの発生が抑制されることにより、良好な可視光透過性と断熱性とを有するエアロゲルブロックが得易くなる。
【0042】
シランオリゴマーに含まれるケイ素原子は、1個の酸素原子と結合したケイ素原子(M単位)、2個の酸素原子と結合したケイ素原子(D単位)、3個の酸素原子と結合したケイ素原子(T単位)及び4個の酸素原子と結合したケイ素原子(Q単位)に区別することができる。M単位、D単位、T単位及びQ単位としては、それぞれ以下の式(M)、(D)、(T)及び(Q)が例示できる。
【0043】
【化8】
【0044】
上記式中、Rはケイ素に結合する酸素原子以外の原子(水素原子等)又は原子団(アルキル基等)を示す。これらの単位の含有量に関する情報は、Si-NMRにより得ることができる。
【0045】
シランオリゴマーとしては、ケイ素原子の総数に対し、3個の酸素原子と結合したケイ素原子(T単位)を50%以上有するものを用いることができる。特に、3官能シランモノマーであるアルキルトリアルコキシシランを一定量以上含むシランモノマーの重合体であることが好ましい。なお、シランオリゴマーにおいて、上記T単位の割合は、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上であり、100%であってもよい。
【0046】
シランオリゴマーは、上記の式(M)、(D)、(T)及び(Q)中のRとして、アルキル基又はアリール基を有していることが好ましい。
【0047】
アルキル基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、これらのうちメチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0048】
アリール基としては、フェニル基、置換フェニル基等が挙げられる。置換フェニル基の置換基としては、アルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0049】
シランオリゴマーは加水分解性の官能基を有しており、ゾル生成工程において加水分解されていてもよい。この加水分解性の官能基が加水分解されると、シラノール基が生じると考えられる。加水分解性の官能基としては、アルコキシ基が挙げられる。
【0050】
シランオリゴマーの重量平均分子量は、例えば200以上であってよく、好ましくは400以上、より好ましくは600以上である。また、シランオリゴマーの重量平均分子量は、例えば10000以下であってよく、好ましくは7000以下、より好ましくは5000以下である。なお、本明細書中、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を示す。
【0051】
シランオリゴマーとしては市販品を用いてもよく、例えば、XR31-B1410、XC96-B0446(いずれも、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、KR-500、KR-515、X-40-9225、KC-89S(いずれも、信越化学工業株式会社製)、SR-2402、AY42-163(いずれも、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
【0052】
上記ゾルに含まれるケイ素化合物の含有量は、良好な反応性を得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、5質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよい。上記ゾルに含まれるケイ素化合物の含有量は、良好な相溶性を得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、50質量部以下であってもよく、40質量部以下であってもよい。
【0053】
ゾル生成工程で用いられるケイ素化合物のうち、上記一般式(S)で表される構造を有するポリシロキサン化合物の含有量は、良好な可視光透過率と強度とを両立し易いという観点から、ケイ素化合物の全量を基準として、5質量%以上とすることができ、8質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよい。なお、当該含有量の上限は、ゾルの相溶性を高め、良好な可視光透過性を有するエアロゲルを得易いという観点から、95質量%以下とすることができ、90質量%以下であってもよい。
【0054】
ゾル生成工程において、ケイ素化合物として他のポリシロキサン化合物を更に用いる場合、当該他のポリシロキサン化合物の量は、上記一般式(S)で表される構造を有するポリシロキサン化合物100質量部に対して、1500質量部以下とすることができ、1300質量部以下であってもよく、1000質量部以下であってもよい。また、他のポリシロキサン化合物の量は、上記一般式(S)で表される構造を有するポリシロキサン化合物100質量部に対して、例えば1質量部以上とすることができ、5質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよい。
【0055】
ゾル生成工程において、ケイ素化合物としてシランモノマーを更に用いる場合、当該シランモノマーの量は、上記一般式(S)で表される構造を有するポリシロキサン化合物100質量部に対して、1500質量部以下とすることができ、1300質量部以下であってもよく、1000質量部以下であってもよい。また、シランモノマーの量は、上記一般式(S)で表される構造を有するポリシロキサン化合物100質量部に対して、例えば1質量部以上とすることができ、5質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよい。
【0056】
ゾル生成工程において、ケイ素化合物としてシランオリゴマーを更に用いる場合、当該シランオリゴマーの量は、上記一般式(S)で表される構造を有するポリシロキサン化合物100質量部に対して、1500質量部以下とすることができ、1300質量部以下であってもよく、1000質量部以下であってもよい。また、シランオリゴマーの量は、上記一般式(S)で表される構造を有するポリシロキサン化合物100質量部に対して、例えば1質量部以上とすることができ、5質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよい。
【0057】
ゾル生成工程では、例えば、ケイ素化合物の混合及び場合により加水分解のために溶媒が用いられる。溶媒としては、例えば、水、又は、水との混和性のある有機溶媒を用いることができる。水との混和性のある有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、N,N-ジメチルホルムアミドを用いることで良好な可視光透過率が得られ易い。この理由は定かではないが、ゲル化途中の反応溶媒中で、シリカ粒子(エアロゲルを構成することになる個々の粒子)の凝集が静電的な相互作用により抑制されているためであると推察される。これらは単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
【0058】
また、上記の混合溶媒には低表面張力の溶媒を更に添加することもできる。低表面張力の溶媒としては、20℃における表面張力が30mN/m以下のものが挙げられる。なお、当該表面張力は25mN/m以下であっても、又は20mN/m以下であってもよい。低表面張力の溶媒としては、例えば、ペンタン(15.5)、ヘキサン(18.4)、ヘプタン(20.2)、オクタン(21.7)、2-メチルペンタン(17.4)、3-メチルペンタン(18.1)、2-メチルヘキサン(19.3)、シクロペンタン(22.6)、シクロヘキサン(25.2)、1-ペンテン(16.0)等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン(28.9)、トルエン(28.5)、m-キシレン(28.7)、p-キシレン(28.3)等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン(27.9)、クロロホルム(27.2)、四塩化炭素(26.9)、1-クロロプロパン(21.8)、2-クロロプロパン(18.1)等のハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル(17.1)、プロピルエーテル(20.5)、イソプロピルエーテル(17.7)、ブチルエチルエーテル(20.8)、1,2-ジメトキシエタン(24.6)等のエーテル類;アセトン(23.3)、メチルエチルケトン(24.6)、メチルプロピルケトン(25.1)、ジエチルケトン(25.3)等のケトン類;酢酸メチル(24.8)、酢酸エチル(23.8)、酢酸プロピル(24.3)、酢酸イソプロピル(21.2)、酢酸イソブチル(23.7)、エチルブチレート(24.6)等のエステル類などが挙げられる(かっこ内は20℃での表面張力を示し、単位は[mN/m]である)。上記の溶媒は単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
【0059】
ゾル生成工程では、溶媒として水及び水との混和性のある有機溶媒を併用することで、ケイ素化合物を加水分解させてもよい。また溶媒には、加水分解反応を促進させるための酸触媒が含まれていてもよい。
【0060】
酸触媒としては、フッ酸、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、臭素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸等の無機酸;酸性リン酸アルミニウム、酸性リン酸マグネシウム、酸性リン酸亜鉛等の酸性リン酸塩;酢酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、アゼライン酸等の有機カルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、得られるエアロゲルの耐水性がより向上する酸触媒としては有機カルボン酸が挙げられる。当該有機カルボン酸としては酢酸が挙げられるが、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸等であってもよい。
【0061】
酸触媒の添加量は特に限定されないが、例えば、ケイ素化合物の総量100質量部に対し、0.001~10質量部とすることができる。
【0062】
ゾル生成工程では、特許第5250900号公報に示されるように、溶媒中に界面活性剤、熱加水分解性化合物等を添加することもできる。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤等を用いることができる。これらは単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
【0063】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン等の親水部と主にアルキル基からなる疎水部とを含む化合物、ポリオキシプロピレン等の親水部を含む化合物などを使用できる。ポリオキシエチレン等の親水部と主にアルキル基からなる疎水部とを含む化合物としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。ポリオキシプロピレン等の親水部を含む化合物としては、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体等が挙げられる。
【0064】
イオン性界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム等が挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、ドデシルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。また、両イオン性界面活性剤としては、アミノ酸系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、アミンオキシド系界面活性剤等が挙げられる。アミノ酸系界面活性剤としては、例えば、アシルグルタミン酸等が挙げられる。ベタイン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。アミンオキシド系界面活性剤としては、例えばラウリルジメチルアミンオキシドが挙げられる。
【0065】
これらの界面活性剤は、後述する湿潤ゲル生成工程において、反応系中の溶媒と、成長していくシロキサン重合体との間の化学的親和性の差異を小さくし、相分離を抑制する作用をすると考えられている。なお、溶媒としてアルコール、N,N-ジメチルホルムアミド等の、水との混和性のある有機溶媒を用いた場合、これらの有機溶媒が界面活性剤による上記効果と同様の効果を奏すると考えられ、界面活性剤を添加しなくても湿潤ゲルを好適に生成することができる。
【0066】
熱加水分解性化合物は、熱加水分解により塩基触媒を発生して、反応溶液を塩基性とし、後述する湿潤ゲル生成工程でのゾルゲル反応を促進すると考えられている。よって、この熱加水分解性化合物としては、加水分解後に反応溶液を塩基性にできる化合物であれば、特に限定されず、尿素;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の酸アミド;ヘキサメチレンテトラミン等の環状窒素化合物などを挙げることができる。これらの中でも、特に尿素は上記促進効果を得られ易い。
【0067】
ゾル生成工程では、熱線輻射抑制等を目的として、可視光透過性及び強度が損なわれない範囲で、溶媒中にカーボングラファイト、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、銀化合物、チタン化合物等の成分を添加してもよい。また、強度をさらに向上する目的で、可視光透過性が損なわれない範囲で、溶媒中にシリカ、アルミナ等から構成されるナノ粒子、シリカ、アルミナ、セルロース等から構成されるナノファイバーなどを添加することもできる。
【0068】
ゾル生成工程の加水分解は、混合液中のケイ素化合物、酸触媒等の種類及び量にも左右されるが、例えば20~80℃の温度環境下で10分~24時間行ってもよく、50~60℃の温度環境下で5分~8時間行ってもよい。これにより、ケイ素化合物中の加水分解性官能基が十分に加水分解され、ケイ素化合物の加水分解生成物をより確実に得ることができる。
【0069】
ただし、溶媒中に熱加水分解性化合物を添加する場合は、ゾル生成工程の温度環境を、熱加水分解性化合物の加水分解を抑制してゾルのゲル化を抑制する温度に調節してもよい。この時の温度は、熱加水分解性化合物の加水分解を抑制できる温度であれば、いずれの温度であってもよい。例えば、熱加水分解性化合物として尿素を用いた場合は、ゾル生成工程の温度環境は0~40℃とすることができるが、10~30℃であってもよい。
【0070】
ゾル生成工程では、ケイ素化合物又はケイ素化合物の加水分解生成物を含むゾルが生成する。加水分解生成物は、ケイ素化合物が有する加水分解性の官能基の一部又は全部が加水分解されたものということもできる。ゾル生成工程ではケイ素化合物の一部又は全部が加水分解されてもよいが、上記のとおりケイ素化合物の加水分解は必須ではない。ケイ素化合物は後記の湿潤ゲル生成工程で加水分解されてもよい。
【0071】
(湿潤ゲル生成工程)
湿潤ゲル生成工程は、ゾル生成工程で得られたゾルをゲル化して、湿潤ゲルを得る工程である。より詳しくは、ケイ素化合物の加水分解生成物を得つつゾルをゲル化する、あるいはケイ素化合物の加水分解生成物を含むゾルをゲル化することで、湿潤ゲルを得る工程である。本工程は、ゾルをゲル化し、その後熟成して湿潤ゲルを得る工程であってもよい。本工程では、加水分解反応及びゲル化を促進させるため塩基触媒を用いることができる。
【0072】
塩基触媒としては、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸アンモニウム、炭酸銅(II)、炭酸鉄(II)、炭酸銀(I)等の炭酸塩類;炭酸水素カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩類;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムの水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;水酸化アンモニウム、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム等のアンモニウム化合物;メタ燐酸ナトリウム、ピロ燐酸ナトリウム、ポリ燐酸ナトリウム等の塩基性燐酸ナトリウム塩;アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、3-エトキシプロピルアミン、ジイソブチルアミン、3-(ジエチルアミノ)プロピルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン、3-(ジブチルアミノ)プロピルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、t-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、プロピルアミン、3-(メチルアミノ)プロピルアミン、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3-メトキシアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の脂肪族アミン類;モルホリン、N-メチルモルホリン、2-メチルモルホリン、ピペラジン及びその誘導体、ピペリジン及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体等の含窒素複素環状化合物類などが挙げられる。上記の塩基触媒は単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
【0073】
塩基触媒を用いることで、ゾル中のケイ素化合物の加水分解反応及び脱水縮合反応又は脱アルコール縮合反応を促進することができ、ゾルのゲル化をより短時間で行うことができる。また、これにより、強度(剛性)のより高い湿潤ゲルを得ることができる。特に、アルカリ金属、テトラアルキルアンモニウム等の水酸化物のような強塩基の触媒を用いることで、可視光透過性と強度とをより向上させ易い。
【0074】
塩基触媒の添加量は、ゾル生成工程で用いたケイ素化合物の総量100質量部に対し、0.1~10質量部とすることができるが、0.5~5質量部であってもよい。0.1質量部以上とすることにより、強度を向上し易くなり、10質量部以下とすることにより、可視光透過性の低下を抑制し易くなる。
【0075】
湿潤ゲル生成工程におけるゾルのゲル化は、溶媒及び塩基触媒が揮発しないように密閉容器内で行ってもよい。ゲル化温度は、30~100℃とすることができるが、40~90℃であってもよい。ゲル化温度を30℃以上とすることにより、ゲル化をより短時間に行うことができ、強度(剛性)のより高い湿潤ゲルを得ることができる。また、ゲル化温度を100℃以下にすることにより、溶媒(特に水又はアルコール)の揮発を抑制し易くなるため、体積収縮を抑えながらゲル化することができる。
【0076】
湿潤ゲル生成工程における熟成は、溶媒及び塩基触媒が揮発しないように密閉容器内で行ってもよい。熟成により、湿潤ゲルを構成する成分の結合が強くなり、その結果、乾燥時の収縮を抑制するのに十分な強度(剛性)の高い湿潤ゲルを得ることができる。熟成温度は、30~100℃とすることができるが、40~90℃であってもよい。熟成温度を30℃以上とすることにより、強度(剛性)のより高い湿潤ゲルを得ることができ、熟成温度を100℃以下にすることにより、溶媒(特に水又はアルコール)の揮発を抑制し易くなるため、体積収縮を抑えながらゲル化することができる。
【0077】
なお、ゾルのゲル化終了時点を判別することは困難な場合が多いため、ゾルのゲル化とその後の熟成とは、連続して一連の操作で行ってもよい。
【0078】
ゲル化時間と熟成時間は、ゲル化温度及び熟成温度により適宜設定することができる。ゲル化時間は3~120分間とすることができるが、5~90分間であってもよい。ゲル化時間を3分間以上とすることにより均質な湿潤ゲルを得易くなり、120分間以下とすることにより後述する洗浄工程から乾燥工程の簡略化が可能となる。なお、ゲル化及び熟成の工程全体として、ゲル化時間と熟成時間との合計時間は、4~480時間とすることができるが、6~200時間であってもよい。ゲル化時間と熟成時間の合計を4時間以上とすることにより、強度(剛性)のより高い湿潤ゲルを得ることができ、480時間以下にすることにより熟成の効果をより維持し易くなる。
【0079】
得られるエアロゲル粒子の密度を下げたり、平均細孔径を大きくするために、ゲル化温度及び熟成温度を上記範囲内で高めたり、ゲル化時間と熟成時間の合計時間を上記範囲内で長くしてもよい。また、得られるエアロゲルの密度を上げたり、平均細孔径を小さくするために、ゲル化温度及び熟成温度を上記範囲内で低くしたり、ゲル化時間と熟成時間の合計時間を上記範囲内で短くしてもよい。
【0080】
(洗浄工程)
洗浄工程は、湿潤ゲル生成工程で得られた湿潤ゲルを洗浄する工程である。洗浄工程では、湿潤ゲル中の洗浄液を乾燥条件(後述の乾燥工程)に適した溶媒に置換する溶媒置換を更に行ってもよい。
【0081】
洗浄工程では、湿潤ゲル生成工程により得られた湿潤ゲルを洗浄する。当該洗浄は、例えば水又は有機溶媒を用いて繰り返し行うことができる。この際、加温することにより洗浄効率を向上させることができる。
【0082】
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、1,2-ジメトキシエタン、アセトニトリル、ヘキサン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸、ギ酸等の各種の有機溶媒を使用することができる。上記の有機溶媒は単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
【0083】
溶媒置換では、乾燥によるゲルの収縮を抑制するため、低表面張力の溶媒を用いることができる。しかし、低表面張力の溶媒は、一般的に水との相互溶解度が極めて低い。そのため、溶媒置換において低表面張力の溶媒を用いる場合、洗浄に用いる有機溶媒としては、水及び低表面張力の溶媒の双方に対して高い相互溶解性を有する親水性有機溶媒が挙げられる。なお、洗浄において用いられる親水性有機溶媒は、溶媒置換のための予備置換の役割を果たすことができる。上記の有機溶媒の中で、親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。なお、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン等は経済性の点で優れている。
【0084】
洗浄に使用される水又は有機溶媒の量としては、湿潤ゲル中の溶媒を十分に置換し、洗浄できる量とすることができる。当該量は、湿潤ゲルの容量に対して3~10倍の量とすることができる。
【0085】
洗浄における温度環境は、洗浄に用いる溶媒の沸点以下の温度とすることができ、例えば、メタノールを用いる場合は、30~60℃程度の加温とすることができる。
【0086】
溶媒置換では、乾燥工程におけるエアロゲルの収縮を抑制するため、洗浄した湿潤ゲルの溶媒を所定の置換用溶媒に置き換える。この際、加温することにより置換効率を向上させることができる。置換用溶媒としては、具体的には、乾燥工程において、乾燥に用いられる溶媒の臨界点未満の温度にて、大気圧下で乾燥する場合は、後述の低表面張力の溶媒が挙げられる。一方、超臨界乾燥をする場合は、置換用溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、2-プロパノール、ジクロロジフルオロメタン、二酸化炭素等、又はこれらを2種以上混合した溶媒が挙げられる。
【0087】
低表面張力の溶媒としては、20℃における表面張力が30mN/m以下の溶媒が挙げられる。なお、当該表面張力は25mN/m以下であっても、又は20mN/m以下であってもよい。低表面張力の溶媒としては、例えば、ペンタン(15.5)、ヘキサン(18.4)、ヘプタン(20.2)、オクタン(21.7)、2-メチルペンタン(17.4)、3-メチルペンタン(18.1)、2-メチルヘキサン(19.3)、シクロペンタン(22.6)、シクロヘキサン(25.2)、1-ペンテン(16.0)等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン(28.9)、トルエン(28.5)、m-キシレン(28.7)、p-キシレン(28.3)等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン(27.9)、クロロホルム(27.2)、四塩化炭素(26.9)、1-クロロプロパン(21.8)、2-クロロプロパン(18.1)等のハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル(17.1)、プロピルエーテル(20.5)、イソプロピルエーテル(17.7)、ブチルエチルエーテル(20.8)、1,2-ジメトキシエタン(24.6)等のエーテル類;アセトン(23.3)、メチルエチルケトン(24.6)、メチルプロピルケトン(25.1)、ジエチルケトン(25.3)等のケトン類;酢酸メチル(24.8)、酢酸エチル(23.8)、酢酸プロピル(24.3)、酢酸イソプロピル(21.2)、酢酸イソブチル(23.7)、エチルブチレート(24.6)等のエステル類などが挙げられる(かっこ内は20℃での表面張力を示し、単位は[mN/m]である)。これらの中で、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン等)は低表面張力でありかつ作業環境性に優れている。また、これらの中でも、アセトン、メチルエチルケトン、1,2-ジメトキシエタン等の親水性有機溶媒を用いることで、洗浄時の有機溶媒と兼用することができる。なお、これらの中でも、さらに後述する乾燥工程における乾燥が容易な点で、常圧での沸点が100℃以下の溶媒を用いてもよい。上記の溶媒は単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
【0088】
溶媒置換に使用される溶媒の量としては、洗浄後の湿潤ゲル中の溶媒を十分に置換できる量とすることができる。当該量は、湿潤ゲルの容量に対して3~10倍の量とすることができる。
【0089】
溶媒置換における温度環境は、置換に用いる溶媒の沸点以下の温度とすることができ、例えば、ヘプタンを用いる場合は、30~60℃程度の加温とすることができる。
【0090】
(乾燥工程)
乾燥工程では、(洗浄工程を経た)湿潤ゲルを乾燥させることにより、エアロゲルを得ることができる。すなわち、上記ゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥してなるエアロゲルを得ることができる。
【0091】
乾燥の手法としては特に制限されず、公知の常圧乾燥、超臨界乾燥又は凍結乾燥を用いることができる。これらの中で、低密度のエアロゲルを製造し易いという観点からは、凍結乾燥又は超臨界乾燥を用いることができる。また、低コストで生産可能という観点からは、常圧乾燥を用いることができる。なお、本実施形態において、常圧とは0.1MPa(大気圧)を意味する。
【0092】
エアロゲルは、湿潤ゲルを、湿潤ゲル中の溶媒の臨界点未満の温度にて、大気圧下で乾燥することにより得ることができる。乾燥温度は、湿潤ゲル中の溶媒の種類により異なるが、特に高温での乾燥が溶媒の蒸発速度を速め、ゲルに大きな亀裂を生じさせる場合があるという点に鑑み、20~180℃とすることができる。なお、当該乾燥温度は30~150℃であってもよい。また、乾燥時間は、湿潤ゲルの容量及び乾燥温度により異なるが、4~300時間とすることができる。なお、生産性を阻害しない範囲内において臨界点未満の圧力をかけて乾燥を早めることも、常圧乾燥に包含されるものとする。
【0093】
エアロゲルは、また、湿潤ゲルを超臨界乾燥することによっても得ることができる。超臨界乾燥は、公知の手法にて行うことができる。超臨界乾燥する方法としては、例えば、湿潤ゲルに含まれる溶媒の臨界点以上の温度及び圧力にて溶媒を除去する方法が挙げられる。あるいは、超臨界乾燥する方法としては、湿潤ゲルを、液化二酸化炭素中に、例えば、20~25℃、5~20MPa程度の条件で浸漬することで、湿潤ゲルに含まれる溶媒の全部又は一部を当該溶媒より臨界点の低い二酸化炭素に置換した後、二酸化炭素を単独で、又は二酸化炭素及び溶媒の混合物を除去する方法が挙げられる。
【0094】
このような常圧乾燥又は超臨界乾燥により得られたエアロゲルは、さらに常圧下にて、105~200℃で0.5~2時間程度追加乾燥してもよい。これにより、密度が低く、小さな細孔を有するエアロゲルをさらに得易くなる。追加乾燥は、常圧下にて、150~200℃で行ってもよい。
【0095】
本実施形態に係る製造方法では、湿潤ゲルを所望の形状に成形してから、乾燥工程を実施してもよい。例えば、湿潤ゲルをミキサー等で粉砕してから乾燥工程を実施することで、粒状のエアロゲルを得ることができる。本実施形態に係る製造方法では、乾燥工程で得られたエアロゲルを成形する工程を更に備えていてもよい。例えば、乾燥工程で得られたエアロゲルを粉砕することで、粒状のエアロゲルを得ることができる。
【0096】
<ポリシロキサン化合物>
上記一般式(S)で表される構造を有するポリシロキサン化合物は、良好な可視光透過率と強度とを両立するエアロゲルを得るために特に有用であり、このようなポリシロキサン化合物がエアロゲル形成用の材料として従来使用された例は確認されていない。したがって、本実施形態に係るポリシロキサン化合物は、上記一般式(S)で表される構造を有する、エアロゲル形成用ポリシロキサン化合物ということができる。
【0097】
<エアロゲル>
本実施形態に係るエアロゲルは、上記一般式(S)で表される構造を有するポリシロキサン化合物を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物である。本実施形態に係るエアロゲルは、例えば、上記の製造方法によって得られたものであってよい。すなわち、本実施形態に係るエアロゲルは、ケイ素化合物又はケイ素化合物の加水分解生成物を含有するゾルを生成するゾル生成工程と、ゾルをゲル化して、湿潤ゲルを得る湿潤ゲル生成工程と、湿潤ゲルを乾燥してエアロゲルを得る乾燥工程と、を備え、ケイ素化合物が上記一般式(S)で表される構造を有するポリシロキサン化合物を含む、製造方法により得られるエアロゲルであってもよい。
【0098】
狭義には、湿潤ゲルに対して超臨界乾燥法を用いて得られた乾燥ゲルをエアロゲル、大気圧下での乾燥により得られた乾燥ゲルをキセロゲル、凍結乾燥により得られた乾燥ゲルをクライオゲルと称するが、本実施形態においては、湿潤ゲルのこれらの乾燥手法によらず、得られた低密度の乾燥ゲルを「エアロゲル」と称する。すなわち、本実施形態において、「エアロゲル」とは、広義のエアロゲルである「Gel comprised of a microporous solid in which the dispersed phase is a gas(分散相が気体である微多孔性固体から構成されるゲル)」を意味する。一般的に、エアロゲルの内部は、網目状の微細構造を有しており、2~20nm程度の粒子状のエアロゲル成分が結合したクラスター構造を有している。このクラスターにより形成される骨格間には、100nmに満たない細孔がある。これにより、エアロゲルは、三次元的に微細な多孔性の構造が形成されている。なお、本実施形態に係るエアロゲルは、例えば、シリカを主成分とするシリカエアロゲルである。シリカエアロゲルとしては、例えば、有機基(メチル基等)又は有機鎖を導入した、いわゆる有機-無機ハイブリッド化されたシリカエアロゲルが挙げられる。
【0099】
本実施形態に係るエアロゲルとしては、以下の態様が挙げられる。これらの態様を採用することにより、断熱性、難燃性、耐熱性及び柔軟性に優れるエアロゲルを得ることが容易となる。各々の態様を採用することで、各々の態様に応じた断熱性、難燃性、耐熱性及び柔軟性を有するエアロゲルを得ることができる。
【0100】
本実施形態に係るエアロゲルは、下記一般式(S)で表される構造を有することができる。
【化9】
【0101】
式(S)中、R1sはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示す。ここで、アリール基としてはフェニル基、置換フェニル基等が挙げられる。また、置換フェニル基の置換基としては、アルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。式(S)中、2個以上のR1sは各々同一であっても異なっていてもよい。また、式(S)中、msは2以上の整数を示す。
【0102】
良好な可視光透過率と強度とを両立するエアロゲルを形成し易いという観点から、R1sとしては、それぞれ独立に炭素数が1~6のアルキル基、フェニル基等が挙げられ、当該アルキル基としては、メチル基等が挙げられる。また、同様の観点から、msは2以上の整数とすることができ、その上限は30とすることができる。
【0103】
本実施形態に係るエアロゲルは、下記一般式(1)で表される構造を有することができる。本実施形態に係るエアロゲルは、式(1)で表される構造を含む構造として、下記一般式(1a)で表される構造を有することができる。
【化10】
【化11】
【0104】
式(1)及び式(1a)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、R及びRはそれぞれ独立にアルキレン基を示す。ここで、アリール基としてはフェニル基、置換フェニル基等が挙げられる。なお、置換フェニル基の置換基としては、アルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。pは1~50の整数を示す。式(1a)中、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよい。式(1a)中、2個のRは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個のRは各々同一であっても異なっていてもよい。
【0105】
上記式(1)又は式(1a)で表される構造をエアロゲル成分としてエアロゲルの骨格中に導入することにより、低熱伝導率かつ柔軟なエアロゲルとなる。このような観点から、式(1)及び式(1a)中、R及びRとしてはそれぞれ独立に炭素数が1~6のアルキル基、フェニル基等が挙げられ、当該アルキル基としてはメチル基等が挙げられる。また、式(1)及び式(1a)中、R及びRとしてはそれぞれ独立に炭素数が1~6のアルキレン基等が挙げられ、当該アルキレン基としてはエチレン基、プロピレン基等が挙げられる。式(1a)中、pは2~30とすることができ、5~20であってもよい。
【0106】
本実施形態に係るエアロゲルは、支柱部及び橋かけ部を備えるラダー型構造を有し、かつ橋かけ部が下記一般式(2)で表される構造を有することができる。このようなラダー型構造をエアロゲル成分としてエアロゲルの骨格中に導入することにより、耐熱性と機械的強度を向上させることができる。なお、本実施形態において「ラダー型構造」とは、2本の支柱部(struts)と支柱部同士を連結する橋かけ部(bridges)とを有するもの(いわゆる「梯子」の形態を有するもの)である。本態様において、エアロゲルの骨格がラダー型構造からなっていてもよいが、エアロゲルが部分的にラダー型構造を有していてもよい。
【化12】
【0107】
式(2)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、bは1~50の整数を示す。ここで、アリール基としてはフェニル基、置換フェニル基等が挙げられる。また、置換フェニル基の置換基としては、アルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。なお、式(2)中、bが2以上の整数の場合、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に2個以上のRも各々同一であっても異なっていてもよい。
【0108】
上記の構造をエアロゲル成分としてエアロゲルの骨格中に導入することにより、例えば、従来のラダー型シルセスキオキサンに由来する構造を有する(すなわち、下記一般式(X)で表される構造を有する)エアロゲルよりも優れた柔軟性を有するエアロゲルとなる。シルセスキオキサンは、組成式:(RSiO1.5を有するポリシロキサンであり、カゴ型、ラダー型、ランダム型等の種々の骨格構造を有することができる。なお、下記一般式(X)にて示すように、従来のラダー型シルセスキオキサンに由来する構造を有するエアロゲルでは、橋かけ部の構造が-O-であるが、本実施形態に係るエアロゲルでは、橋かけ部の構造が上記一般式(2)で表される構造(ポリシロキサン構造)である。ただし、本態様のエアロゲルは、一般式(2)で表される構造に加え、さらにシルセスキオキサンに由来する構造を有していてもよい。
【化13】
【0109】
式(X)中、Rはヒドロキシ基、アルキル基又はアリール基を示す。
【0110】
支柱部となる構造及びその鎖長、並びに橋かけ部となる構造の間隔は特に限定されないが、耐熱性と機械的強度とをより向上させるという観点から、ラダー型構造としては、下記一般式(3)で表されるラダー型構造を有していてもよい。
【化14】
【0111】
式(3)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、a及びcはそれぞれ独立に1~3000の整数を示し、bは1~50の整数を示す。ここで、アリール基としてはフェニル基、置換フェニル基等が挙げられる。また、置換フェニル基の置換基としては、アルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。なお、式(3)中、bが2以上の整数の場合、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に2個以上のRも各々同一であっても異なっていてもよい。また、式(3)中、aが2以上の整数の場合、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよく、同様にcが2以上の整数の場合、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよい。
【0112】
なお、より優れた柔軟性を得る観点から、式(2)及び(3)中、R、R、R及びR(ただし、R及びRは式(3)中のみ)としてはそれぞれ独立に炭素数が1~6のアルキル基、フェニル基等が挙げられ、当該アルキル基としてはメチル基等が挙げられる。また、式(3)中、a及びcは、それぞれ独立に6~2000とすることができるが、10~1000であってもよい。また、式(2)及び(3)中、bは、2~30とすることができるが、5~20であってもよい。
【0113】
エアロゲルの、25℃における密度は0.01~0.5g/cmとすることができるが、0.05~0.4g/cmであってもよい。密度が0.01g/cm以上であることにより、より優れた強度及び柔軟性を得ることができ、また、0.5g/cm以下であることにより、より優れた断熱性を得ることができる。エアロゲルの密度は、例えば電子比重計SD-200L(アルファーミラージュ株式会社製、製品名)を用い、JIS K7112に記載の方法に準じてアルキメデス法により測定することができる。
【0114】
エアロゲルの、大気圧下、25℃における熱伝導率は0.030W/(m・K)以下とすることができるが、0.028W/(m・K)以下であってもよく、又は0.025W/(m・K)以下であってもよい。熱伝導率が0.03W/m・K以下であることにより、高性能断熱材であるポリウレタンフォーム以上の断熱性を得ることができる。なお、熱伝導率の下限値は特に限定されないが、例えば0.005W/m・Kとすることができる。熱伝導率は、例えば定常法熱伝導率測定装置「HFM436Lambda」(NETZSCH社製、製品名)を用いて行うことができる。
【0115】
<エアロゲルブロック>
エアロゲルブロックは、上記のエアロゲルを含むことができる。そのため、本実施形態に係るエアロゲルブロックは、非常に高い水準で可視光透過率と強度とを共に有する。
【0116】
エアロゲルブロックの可視光透過率は65%以上である。ここで可視光とは、JIS Z8120の定義による電磁波をいう。エアロゲルブロックの可視光透過率は、68%以上であってもよく、70%以上であってもよい。可視光透過率が65%以上であることにより、自動車に採用されるガラス程度の可視光透過性を得ることができる。なお、可視光透過率の上限は特に限定されないが、100%とすることができる。可視光透過率は、例えばダブルビーム分光光度計「U-2900」(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、製品名)を用い、測定波長を550nmとして測定することができる。
【0117】
可視光透過率は、例えば上記一般式(S)における、中央のジオルガノシロキサンユニットの数(すなわち、式(S)中のmsの値)と、両端の多官能ケイ素ユニットの官能基数(すなわち、式(S)中のns及びlsの値)を変動させることにより調整できる。
【0118】
エアロゲルブロックの単位体積当たりの曲げ破断エネルギーは0.30mJ/cm以上である。エアロゲルブロックの単位体積当たりの曲げ破断エネルギーは0.40mJ/cm以上であってもよく、0.50mJ/cm以上であってもよい。なお、単位体積当たりの曲げ破断エネルギーの上限は特に限定されないが、1000mJ/cmとすることができる。単位体積当たりの曲げ破断エネルギーは、例えばテンシロン万能材料試験機(引張・圧縮試験機)「RTC―1350A」(株式会社オリエンテック製、製品名)を用い、測定モードを3点曲げとし、支点間距離を20mmとして測定することができる。
【0119】
単位体積当たりの曲げ破断エネルギーは、例えば上記一般式(S)における、可撓性に影響するであろう中央のジオルガノシロキサンユニットと、当該ユニットの両端の剛性に影響するであろう多官能ケイ素ユニットとの構成比率を変動させることにより調整できる。
【0120】
なお、本実施形態に係るエアロゲルの具体的形状として、上記ではある程度のボリュームを有するブロック状のエアロゲルについて説明したが、エアロゲルの形状はこれに限定されない。例えば、厚さをさらに低減したシート状のエアロゲルにおいても、本実施形態に係るエアロゲルは有用である。
【0121】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例
【0122】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0123】
(実施例1)
両末端9官能アルコキシ変性ポリシロキサン化合物(以下、「ポリシロキサン化合物S-1」という)を12mL、シランオリゴマー「KC-89S」(信越化学工業株式会社製、製品名)を20mL、N,N-ジメチルホルムアミドを140mL混合し、10分間撹拌した後、0.75Mに調整した水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液6mLを加え、さらに1分間攪拌してゾルを得た。得られたゾルを80℃でゲル化し、120時間熟成して湿潤ゲルを得た。
【0124】
得られた湿潤ゲルをメタノール2500mL中に浸漬し、60℃で3時間かけて洗浄を行った。この洗浄操作を、新しいメタノールに交換しながら2回行った。次に、洗浄した湿潤ゲルを、メチルエチルケトン2500mL中に浸漬し、60℃で3時間かけて溶媒置換を行った。この溶媒置換操作を、新しいメチルエチルケトンに交換しながら2回行った。さらに、メチルエチルケトンでの溶媒置換後の湿潤ゲルを、低表面張力溶媒であるn-ヘプタン2500mL中に浸漬し、60℃で3時間かけて再度溶媒置換を行った。この溶媒置換操作を、新しいn-ヘプタンに交換しながら2回行った。洗浄及び溶媒置換された湿潤ゲルを、常圧下にて、30℃で170時間乾燥し、その後さらに150℃で2時間乾燥することで、エアロゲルを得た。
【0125】
なお、上記「ポリシロキサン化合物S-1」は次のようにして合成した。撹拌機、温度計及びジムロート冷却管を備えた1リットルの3つ口フラスコにて、ヒドロキシ末端ジメチルポリシロキサン「XC96-723」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、製品名)を100質量部、「メチルシリケート51」(コルコート株式会社製、製品名)を293.8質量部及びt-ブチルアミンを0.50質量部混合し、30℃で5時間反応させることで、両末端9官能アルコキシ変性ポリシロキサン化合物(両末端にそれぞれ9個のアルコキシ基を有するポリシロキサン化合物)を得た。
【0126】
(実施例2)
シランオリゴマーとして、「KC-89S」に代えて「XR31-B1410」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、製品名)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、エアロゲルを得た。
【0127】
(実施例3)
ポリシロキサン化合物S-1を20mL、シランモノマー(メチルトリメトキシシラン)「KBM-13」(信越化学工業株式会社製、製品名)を12mL、N,N-ジメチルホルムアミドを140mL混合し、10分間撹拌した後、0.75Mに調整した水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液6mLを加え、さらに1分間攪拌してゾルを得た。得られたゾルを80℃でゲル化し、24時間熟成して湿潤ゲルを得た。その後は実施例1と同様にして、エアロゲルを得た。
【0128】
(実施例4)
ポリシロキサン化合物S-1を16mL、シランオリゴマー「KR-500」(信越化学工業株式会社製、製品名)を16mL、N,N-ジメチルホルムアミドを140mL混合し、10分間撹拌した後、0.75Mに調整した水酸化ナトリウム水溶液6mLを加え、さらに1分間攪拌してゾルを得た。得られたゾルを80℃でゲル化し、120時間熟成して湿潤ゲルを得た。その後は実施例1と同様にして、エアロゲルを得た。
【0129】
(実施例5)
ポリシロキサン化合物S-1に代えて、両末端11官能アルコキシ変性ポリシロキサン化合物(以下、「ポリシロキサン化合物S-2」という)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、エアロゲルを得た。
【0130】
なお、上記「ポリシロキサン化合物S-2」は次のようにして合成した。撹拌機、温度計及びジムロート冷却管を備えた1リットルの3つ口フラスコにて、ヒドロキシ末端ジメチルポリシロキサン「XC96-723」を100質量部、「メチルシリケート53A」(コルコート株式会社製、製品名)を185.7質量部及びt-ブチルアミンを0.50質量部混合し、30℃で5時間反応させることで、両末端11官能アルコキシ変性ポリシロキサン化合物(両末端にそれぞれ11個のアルコキシ基を有するポリシロキサン化合物)を得た。
【0131】
(比較例1)
「メチルシリケート51」、エタノール、水、及び15Nアンモニア水を、混合比が「メチルシリケート51」:エタノール:水:アンモニア水=49.56:67.06:52.97:0.25(質量比)となるように混合した。20秒程度攪拌後静置し、ゲル化させた。その後、エタノールを加え、50℃で72時間熟成し、湿潤ゲルを得た。
【0132】
次に、湿潤ゲルを5倍の容積の0.2M-ヘキサメチルジシラザン(東レ・ダウコーニング株式会社製)のトルエン溶液中に移し、1昼夜トルエン溶液の交換を繰り返し、ゲル内にヘキサメチルジシラザンを含有させた。その後、110℃で2時間程度加熱攪拌し、疎水化処理反応を行った後、ゲルをエタノール中に移して、1昼夜エタノールの交換を繰り返し、溶媒置換を行った。
【0133】
次に、このゲルを18℃、5.1MPaの二酸化炭素中に入れ、ゲル内のエタノールを二酸化炭素に置換する操作を2~3時間行った。その後、系内を二酸化炭素の超臨界条件である、40℃、8.1MPaにし、超臨界乾燥を約24時間行ってエアロゲルを得た。
【0134】
(比較例2)
「メチルシリケート51」に代えて「エチルシリケート40」(コルコート株式会社製、製品名)を用いた上で、混合比を「エチルシリケート40」:エタノール:水:アンモニア水=120.18:67.06:52.97:0.25(質量比)としたこと以外は、比較例1と同様にして、エアロゲルを得た。
【0135】
(比較例3)
「XR31-B1410」を32mL、N,N-ジメチルホルムアミドを140mL混合し、10分間攪拌した後、0.75Mに調整した水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液を6mL加え、さらに1分間攪拌してゾルを得た。得られたゾルを80℃でゲル化し、120時間熟成して湿潤ゲルを得た。その後は実施例1と同様にして、エアロゲルを得た。
【0136】
[各種評価]
各実施例及び各比較例で得られたエアロゲルについて、以下の条件に従って評価をした。結果を表1に示す。
【0137】
(1)密度の測定
エアロゲルの密度を、JIS K7112に記載の方法に準じてアルキメデス法により測定した。測定装置としては、電子比重計SD-200L(アルファーミラージュ株式会社製、製品名)を用いた。
【0138】
(2)熱伝導率の測定
エアロゲルを150mm×150mm×10mmのサイズとなるようにカットしてブロック状のエアロゲル(エアロゲルブロック)とした。面の平行を確保するために、必要に応じて#1500以上の紙やすりで整形した。整形したエアロゲルブロックを、定温乾燥機「DVS402」(ヤマト科学株式会社製、製品名)を用いて、大気圧下、100℃で30分間乾燥した後、デシケータ中に移し、25℃まで冷却して、熱伝導率測定用の測定サンプルを得た。
熱伝導率の測定は、定常法熱伝導率測定装置「HFM436Lambda」(NETZSCH社製、製品名)を用いて行った。測定条件は、大気圧下、平均温度25℃とした。測定サンプルを0.3MPaの荷重にて上部及び下部ヒーター間に挟み、温度差ΔTを20℃とし、ガードヒーターによって一次元の熱流になるように調整しながら、測定サンプルの上面温度、下面温度等を測定した。そして、測定サンプルの熱抵抗Rを次式より求めた。
=N((T-T)/Q)-R
式中、Tは測定サンプル上面温度を示し、Tは測定サンプル下面温度を示し、Rは上下界面の接触熱抵抗を示し、Qは熱流束計出力を示す。なお、Nは比例係数であり、較正試料を用いて予め求めておいた。
得られた熱抵抗R及び測定サンプルの厚さdより、測定サンプルの熱伝導率λを次式より求めた。
λ=d/R
【0139】
(3)単位体積当たりの曲げ破断エネルギーの測定
熱伝導率の測定と同様にして測定サンプルを作製した。これを3点曲げ測定用の測定サンプルとした。
測定装置としては、テンシロン万能材料試験機(引張・圧縮試験機)「RTC―1350A」(株式会社オリエンテック製、製品名)を用いた。測定モードは3点曲げとし、支点間距離を20mmとした。支点間の中央に、サンプル上面から荷重を加え、測定サンプルが破壊した点(破断点)で終了した。荷重を加える時の治具の移動速度は、0.3mm/minとし、測定温度は25℃とした。ここで、ひずみεは次式より求めた。
ε=6×s×h/L
式中、sは破断点での変位(mm)、hは負荷をかける前の測定サンプルの厚み(mm)、Lは支点間距離(mm)を示す。
また、破断曲げ応力σ(MPa)は、次式より求めた。
σ=3×F×L/2×b×h
式中、Fは破断点での荷重(N)を示し、bは負荷をかける前の測定サンプルの幅(mm)を示す。
そして、縦軸を応力、横軸をひずみで表した応力-ひずみ曲線において、破断点までの曲線の下側の面積を算出することにより、単位体積当りの曲げ破断エネルギー(mJ/cm)を求めた。
【0140】
(4)可視光透過率の測定
サイズを20mm×25mm×10mmとしたこと以外は、熱伝導率の測定と同様にして測定サンプルを作製した。これを透過率測定用の測定サンプルとした。測定装置としては、ダブルビーム分光光度計「U-2900」(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名)を用い、20mm×25mmの面に波長550nmの光を当てて、光が10mmの距離(光路長)を透過するときの透過率(平行光線透過率)を測定した。
【0141】
【表1】