IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】フッ素樹脂被覆体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20220524BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220524BHJP
   C23C 14/12 20060101ALI20220524BHJP
   C23C 16/02 20060101ALI20220524BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B32B27/12
B32B27/30 D
C23C14/12
C23C16/02
B32B5/24 101
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021526860
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2020023887
(87)【国際公開番号】W WO2020256043
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2019115505
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 浩之
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-174069(JP,A)
【文献】特開平07-042075(JP,A)
【文献】特開2003-211569(JP,A)
【文献】特開2019-112682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C23C14/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状物質で構成される基材上に、フッ素、炭素及び酸素からなる不均一な島状安定核や海状安定核による膜に窪み状のホールが多数存在する不均一なフッ素樹脂被覆膜を有し、被覆されていない部分の最短距離が5nm~10μmであり、単位面積当たりの被覆率が10~80%であることを特徴とするフッ素樹脂被覆体。
【請求項2】
前記フッ素樹脂被覆膜の厚みが1nm~200nmである請求項1記載のフッ素樹脂被覆体。
【請求項3】
水の接触角が90°以上である請求項1または2に記載のフッ素樹脂被覆体。
【請求項4】
n-ヘキサデカンの静的接触角が60°以上である請求項1~3のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆体。
【請求項5】
前記繊維状物質で構成される基材が、セルロース、疎水変性セルロース、天然岩石、ガラス、プラスチック繊維、炭素繊維、活性炭素繊維、又は金属繊維で構成される基材である請求項1~4のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆体。
【請求項6】
前記繊維状物質で構成される基材が、紙、不織布、または織布である請求項1~5のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆体。
【請求項7】
前記繊維状物質で構成される基材表面にカルボニル基、水酸基、アミノ基又はアルミニウム原子、珪素原子、銅原子、ニッケル原子又は窒素原子の不均一な分布を有し、該不均一な分布上にフッ素樹脂膜を有する請求項1~6のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のフッ素樹脂被覆体の製造方法であって、繊維状物質で構成される基材表面にカルボニル基、水酸基又はアルミニウム原子、珪素原子、銅原子又は窒素原子の不均一な分布を設ける工程と、該不均一な分布上にフッ素樹脂膜を設ける工程とを有することを特徴とするフッ素樹脂被覆体の製造方法。
【請求項9】
前記不均一な分布をコロナ処理、プラズマ処理、レーザー処理、イトロ処理又はスパッタ処理により設ける請求項8に記載のフッ素樹脂被覆体の製造方法。
【請求項10】
前記フッ素樹脂膜を設ける工程を化学蒸着法(CVD法)、物理蒸着法(PVD法)又はスパッタリング法で行う請求項8又は9に記載のフッ素樹脂被覆体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が撥水撥油性を示す撥水撥油性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撥水撥油性を付与する方法として、パーフルオロアルキル基、フルオロ基、もしくはパーフルオロアルキルオキシ基等のフッ素基を有する化合物を利用する方法が知られている。これらのフッ素基を有する化合物は、その表面自由エネルギーが非常に小さいために、撥水性、撥油性、耐薬品性、離型性、防汚性、潤滑性などを有する。これらの性質を利用し、撥水撥油剤や磁気記録媒体の潤滑剤、離型剤等に幅広く利用されている。
【0003】
フッ素基を有する化合物を利用し基材に撥水撥油性を有した表面を形成する方法としては蒸着法が知られており(例えば特許文献1、2参照)、これにより数nm~1μm程度の均一膜が形成される。しかしながらこの方法は基材全面に均一膜が形成されるため、撥水撥油性を施した基材を包装材料に適用する際、たとえば包装体として組み立てる際に使用する接着剤やヒートシール処理で接着することができず、包装体の組み立てが困難となる等の問題があった。また、紙やセルロースファイバーや無機物の繊維にした炭素繊維や金属ファイバー等のヒートシール性能を持たない基材の場合では繊維その物のガス吸着性や導電性等を損なう。
【0004】
一方、撥水撥油性を付与する方法として、表面に微細な凹凸構造を付与することで、該表面が撥水撥油性を示すこと(ロータス効果)も知られており、例えば、基材上にフォトリソグラフィ法および等方性ウェットエッチング法によって形成された凹凸構造(複数の突起状の凸部が規則的に配置された構造、複数のライン状の凸部が互いに平行に配置された構造、または格子状の凸部が配置された構造)を有する撥水性構造体や(特許文献3参照)、表面に独立した複数の凹部を有し、凹部の深さDの1/2の位置における凹部の幅Aと、同位置における凹部以外の部分の幅Bとの比率(A/B)が、3以上である撥水撥油性物品(例えば特許文献4参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-116278号公報
【文献】特開2011-230466号公報
【文献】特開2000-203035号公報
【文献】特開2014-177072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、たとえば包装体として組み立てる際に使用する接着剤やヒートシール処理による組み立てが容易な撥水撥油性を有するフッ素樹脂被覆体を提供することにある。
もしくは、たとえば包装材料や建築材料として組み立てられた素材が適度なガス吸着能力やガス透過能力を保有しながら撥水撥油性を有するフッ素樹脂被覆体を提供する事にある。
もしくは、たとえばフィルター等として組み立てられた素材が適度な導電性能を保有しながら撥水撥油性を有するフッ素樹脂被覆体を提供する事にある。
これらの繊維は水や油が浸透する事が多いが、撥水撥油性を有することでフッ素樹脂被覆体は水や油が浸透し難い表面を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、繊維状物質で構成される基材上に、フッ素、炭素及び酸素からなる不均一なフッ素樹脂被覆膜を有し、被覆されていない部分の最短距離と単位面積当たりの被覆率とが特定の範囲であるフッ素樹脂被覆体が前記課題を解決することを見出した。
【0008】
蒸着法により薄膜を形成する場合、基材、薄膜材料、温度、蒸着速度、真空度(圧力)、残留気体等粒子が基材上に入射する条件によって基材上における薄膜の形態が変化する。
一般的に蒸着薄膜の成長は核成長型で形成される事が多く、蒸発源から出た蒸気は基材と衝突し、一部は反射し他は吸着する。吸着した物質は基盤表面を表面拡散し、物質同士の2次元衝突を起こしてクラスタを形成するか、あるいは再蒸発する。クラスタは表面拡散物質との衝突や放出を繰り返すが、一定量を超えると安定な核となる。安定核は表面拡散物質または入射物質との衝突によって成長し、更に隣接する安定核と合体してやがて連続膜になる。この際に最初は安定核が島状に点在し、この島状安定核同士が成長して合体してその接点が増えて不均一な島を形成し、更には島状安定核の面積が増加すると同時に海状の基材表面に島が点在していた形から島が海状に変化し、この海状安定核による膜に窪み状のホールが多数存在する不均一膜を形成する。通常は更に蒸着膜が成長することで連続した膜が形成され、窪み上のホールが殆ど無いか、極小さいピンホールが残存する程度の連続膜を形成する事で蒸着膜を完成する。
【0009】
本発明者らは、繊維状物質で構成される基材上に、不均一な島状安定核や海状安定核による膜に窪み状のホールが多数存在する不均一膜の状態を完成型とし、皮膜率が10~80%の範囲のフッ素樹脂被覆体つまり基材表面がむき出しの部分が約20~90%存在するフッ素樹脂被覆体とすることで、薄膜でも撥水性能や撥油性能を実現できることを見出した。
【0010】
即ち本発明は、繊維状物質で構成される基材上に、フッ素、炭素及び酸素からなる不均一なフッ素樹脂被覆膜を有し、被覆されていない部分の最短距離が5nm~10μmであり、単位面積当たりの被覆率が10~80%であるフッ素樹脂被覆体を提供する。
【0011】
また本発明は、前記フッ素樹脂被覆膜の厚みが1nm~200nmである前記記載のフッ素樹脂被覆体を提供する。
【0012】
また本発明は、水の接触角が90°以上である前記記載のフッ素樹脂被覆体を提供する。
【0013】
また本発明は、n-ヘキサデカンの静的接触角が60°以上である前記記載のフッ素樹脂被覆体を提供する。
【0014】
また本発明は、前記繊維状物質で構成される基材が、セルロース、疎水変性セルロース、天然岩石、ガラス、石英、炭素繊維、または活性炭素繊維で構成される基材である前記記載のフッ素樹脂被覆体を提供する。
【0015】
また本発明は、前記繊維状物質で構成される基材が、紙、不織布、または織布である請前記記載のフッ素樹脂被覆体を提供する。
【0016】
また本発明は、前記繊維状物質で構成される基材表面にカルボニル基、水酸基、アミノ基又はアルミニウム原子、珪素原子、銅原子、ニッケル原子又は窒素原子の不均一な分布を有し、該不均一な分布上にフッ素樹脂膜を有する前記記載のフッ素樹脂被覆体を提供する。
【0017】
また本発明は、繊維状物質で構成される基材表面にカルボニル基、水酸基又はアルミニウム原子、珪素原子、銅原子又は窒素原子の不均一な分布を設ける工程と、該不均一な分布上にフッ素樹脂膜を設ける工程とを有するフッ素樹脂被覆体の製造方法を提供する。
【0018】
また本発明は、前記不均一な分布をコロナ処理、プラズマ処理、レーザー処理、イトロ処理又はスパッタ処理により設ける前記記載のフッ素樹脂被覆体の製造方法を提供する。
【0019】
また本発明は、前記フッ素樹脂膜を設ける工程を化学蒸着法(CVD法)、物理蒸着法(PVD法)又はスパッタリング法で行う前記記載のフッ素樹脂被覆体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明のフッ素樹脂被覆体には、繊維状物質で構成される基材上に、単位面積当たりの被覆率が10~80%であり、即ち基材表面がむき出しの部分が約20~90%存在するので、フッ素樹脂が被覆された撥水性能や撥油性能と、基材そのものの特性である接着剤との接着性やヒートシール性の両方を発現できるので、たとえば包装体として組み立てる際に使用する接着剤やヒートシール処理による組み立てが容易である。
【0021】
また、本発明のフッ素樹脂被覆体は、繊維状物質で構成される基材表面がむき出しの部分が約20~90%存在するので、例えば建築材料として組み立てられた素材は、撥水撥油性と適度なガス吸着能力とを両方を発現できる。
また、本発明のフッ素樹脂被覆体は、繊維状物質で構成される基材表面がむき出しの部分が約20~90%存在するので、例えば静電気を忌避する部品等として撥水撥油性と適度な電気伝導性能とを両方発現できる。
【0022】
また、基材の前処理法として、コロナディスチャージ処理、レーザー処理、アルゴンプラズマエッチング、酸素プラズマ改質、スパッタ法による前処理を行うことで、表面の均一性や不均一性を変更することができる。また、イトロ処理により基材表面を超親水状態にする事で後処理であるフッ素樹脂被覆層と基材の密着を改善する事もできる。
これらの表面前処理によって更に薄膜でも撥水性能や撥油性能を実現できる。
【0023】
連続膜よりも薄膜で撥水性能や撥油性能を実現できる本発明のフッ素樹脂被覆体は、材料コストおよび製膜速度の面で連続膜フッ素樹脂被膜体より優位である。表面前処理を行う事で更に薄膜化できる事で更に優位である。更に、基材そのものの特性を生かして、例えばヒートシール可能なフッ素樹脂被膜体が得られる。
【0024】
また、スパッタ法等で表面前処理をマクロ的には均一に、ミクロ的には不均一な疎らな元素分布表面を作り出す事で、前述の蒸着初期の安定核が増加し効率よく不均一膜の状態を作成する事もできる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(言葉の定義)
本発明において、「撥水性」とは、水をはじく性質をいい、「撥油性」とは、油をはじく性質をいう。
【0026】
(フッ素、炭素及び酸素からなる不均一な樹脂膜)
本発明で使用するフッ素、炭素及び酸素からなる不均一な樹脂膜は、具体的には、パーフルオロアルキル基、フルオロ基、もしくはパーフルオロアルキルオキシ基等を含有した化合物を含有する樹脂膜である。パーフルオロアルキルオキシ基等を含有したフッ素化合物(以下フッ素化合物と称す)としては、例えば、テトラフルオロメタン、パーフルオロエタン、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン等のパーフルオロアルカン類、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(4-メチル-2-ペンテン)、パーフルオロ(2-メチル-2-ペンテン)、パーフルオロ-1-ヘキセン等のパーフルオロアルケン類、及び下記一般式(1)により表されるフッ素化合物等が挙げられる。
【0027】
【化1】
(1)
【0028】
(式(1)中、nは1~10が望ましいがnが10以上であってもよい。Yはフッ素原子を含有しない置換基である。)
前記Yとしては、例えば、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、並びに、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子よりなる群から選択されるハロゲン原子等の置換基が挙げられる。前記アルキル基としては、更に炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましく、前記アルケニル基としては、炭素原子数2~4のアルケニル基が好ましい。前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、各種ブテニル基等を挙げることができる。また、イオンやラジカル等の活性種が発生し易い、不飽和炭化水素基や、ヨード基を含有していてもよい。
【0029】
前記式(1)により表されるフッ素化合物の中でも、炭素原子数10以下のフッ素化合物が好ましい。このような炭素原子数10以下のフッ素化合物としては、具体的には例えば、1H-パーフルオロペンタン、1H-パーフルオロヘキサン等の1H-パーフルオロアルカン類、パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン等のパーフルオロアルキルエチレン類、パーフルオロブチルヨージド、パーフルオロヘキシルヨージド、1-クロロトリデカフルオロペンタン、1-クロロトリデカフルオロヘキサン、1-ブロモトリデカフルオロペンタン、1-ブロモトリデカフルオロヘキサン等のハロゲン化パーフルオロアルキル類等が挙げられる。
中でも、撥水撥油性が良好であることから、nは3~6であることが好ましい。
【0030】
前記フッ素化合物としては、前記式(1)により表されるフッ素化合物の中でも、Yで表される置換基が、水素原子、炭素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子よりなる群から選択される1種の原子、又は、炭素原子と、水素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子よりなる群から選択される1種以上の原子とからなる化合物であることがより好ましい。炭素原子と、水素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子よりなる群から選択される1種以上の原子とからなる化合物としては、炭化水素基が好ましく、中でも不飽和炭化水素基が好ましく、更にアルケニル基が好ましい。
【0031】
好適なフッ素化合物としては、例えば、パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロヘキシルヨージド等が挙げられる。
【0032】
(フッ素、炭素及び酸素からなる不均一な樹脂膜の製法)
フッ素、炭素及び酸素からなる不均一な樹脂膜は、前記フッ素化合物を使用して、繊維状物質で構成される基材上に、塗料化して塗工する方法(Wet法)や、物理気層蒸着法(PVD法)や、化学気層蒸着法(CVD法)や、スパッタリング法(スパッタ法)等が挙げられる。中でもPVD法やCVD法、スパッタ法は、プラズマアシストすることで、基材への密着性を向上させたり膜質の変更等が可能である。
【0033】
(物理気層蒸着法(PVD法)
PVD法とは、各種熱源によりテトラフルオロエチレンを加熱することで蒸気を発生させ、より低温に保持した基材表面に液滴または結晶として析出させる方法である。かかる手法は、加工面全体を一度に処理するバッチ法であっても、基材または反応槽を移動させることで、機材を連続的に処理、異なる加工面を連続的に処理する方法のいずれでも用いることができる。
本発明における蒸着加工は加圧、常圧、減圧、真空状態およびそのスイング、大気中および不活性ガスいずれの雰囲気においても実施する事ができる。減圧または真空状態とすることで、蒸散速度の向上および蒸散温度の低減が可能であり、加圧により蒸散物の析出を促進することができる。また、真空または不活性雰囲気とすることでポリテトラフルオロエチレンや担体の酸化を抑制することが可能であるが、本発明は熱分解温度以下で低温処理が可能であるためコスト面で大気雰囲気を用いることも可能である。
本発明においては、フッ素化合物の蒸着条件の調整により目的に応じて好ましい付着状態を得ることができる。蒸着条件として重要なのは蒸着チャンバー内の圧力とフッ素化合物蒸気に基材表面が接触する時間であり、この時間を制御することで皮膜率や被覆されていない部分の最短距離等のフッ素樹脂被膜の不均一性を制御できる。
【0034】
(スパッタリング法(スパッタ法))
スパッタリング法としては、RFマグネトロンスパッタリングが好適である。スパッタリングは、例えば1×10-4Pa以下に減圧され、かつ不活性ガス(例えばアルゴン等)が導入されたチャンバー内で行うことが望ましい。処理空間内には、薄膜の原料となるターゲットと基材とを対向させて配置する。ターゲットの裏側には永久磁石が配置されている。磁界によって電子のらせん軌道を束縛し、高密度プラズマを生成させてスパッタリングを行う。不活性ガスのイオン化が促進され、イオンがターゲットに衝突して、薄膜の原料となる微小粒子が生成する。この時、エネルギーを得た微小粒子は高速に加速されてターゲットから飛び出し、基板に成膜される。
ターゲットとして、撥水性材料のターゲットとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFEの)場合、PTFE粒子を圧縮して成形されたペレットや、PTFEのシートを用いることができる。
RFマグネトロンスパッタリングを行う際の高周波出力は、特に限定されず、適正な成膜速度を実現する観点から調整すればよい。また、成膜中の基材の温度は室温から100℃程度に制御することが望ましい。
【0035】
(化学気層蒸着法(CVD法)
CVD法とは、薄膜材料を構成する元素からなる1種または数種の化合物ガスや担体ガス(本発明においてはフッ素化合物を含有した反応性ガス)を被処理基体上に供給し、気相または基体表面での化学反応により所望の薄膜を形成する成膜方法である。高温環境下にすることなく成膜が可能である。またプラズマCVD法は通常減圧するが、大気圧プラズマCVD法を用いることもできる。
CVD法には、プラズマを発生させるプラズマアシストCVD法、反応容器を加熱する熱CVD法、光(レーザ光、紫外線など)を照射する光CVD法などが知られており、本発明では、反応性ガスを放電解離条件下でプラズマ化し、プラズマ中で励起された堆積種が被処理基体表面に堆積することで、フッ素含有有機膜を形成するプラズマアシストCVD法を採用するのが好ましい。プラズマアシストCVD法は、熱CVD法などに比して、より低い温度で膜形成が可能である。また、プラズマ反応用ガスには、フッ素化合物の反応性を制御し、操作性を高めるために希釈ガスを混入することができる。希釈ガスとしては希ガスまたは炭化水素系ガスを用いることができ、例えば、アルゴン、ヘリウム、キセノンなどが挙げられる。また、炭化水素系ガスとしては、例えば、メタン、エチレン、アセチレン等の炭素数1~3の炭化水素が挙げられる。これらの中でも、アルゴン、メタンまたはエチレンガスの使用が好ましい。これら希釈ガスは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
希釈ガスの使用量は、プラズマ反応性ガス成分の合計量に対して、通常、0重量%~95重量%である。
【0036】
本発明においては、CVD法、特にプラズマアシストCVD法を使用すると、高温環境下にすることなくフッ素樹脂膜を形成することができ、基材材料として耐熱性の高い材料に限定されないので、材料選択の幅が広く好ましい。また、CVD法はフッ素樹脂膜を形成させる素材の形状が三次元的に複雑であっても表面を被覆する事が可能であることから繊維状表面を持つ素材にフッ素樹脂膜を形成させるために好ましい。
【0037】
(不均一なフッ素樹脂被覆膜の製造方法)
前記PVD法やCVD法、あるいはスパッタ法を用いて、本発明の被覆されていない部分の最短距離が5nm~10μmであり、単位面積当たりの被覆率が10~80%であるフッ素樹脂被覆体を製造するには、基材と、温度、蒸着速度、真空度(圧力)、残留気体等粒子が基材上に入射する条件を適宜コントロールすればよい。
具体的には、前述の通り、一般的に蒸着薄膜の成長は核成長型で形成される事が多いので、具体的には、島状安定核の面積が増加すると同時に海状の基材表面に島が点在していた形から島が海状に変化し、この海状安定核による膜に窪み状のホールが多数存在する不均一膜を形成した段階で被覆を終了させればよい。
【0038】
(基材表面の前処理法)
本発明においては、基材表面に予め、コロナディスチャージ処理、レーザー処理、アルゴンプラズマエッチング、酸素プラズマ改質、窒素プラズマ改質、スパッタ法等の前処理を行うことで、表面の均一性や不均一性をさらにコントロールすることも可能である。また、イトロ処理により基材表面を超親水状態にする事で後処理であるフッ素樹脂層と基材の密着を改善する事もできる。
これらの処理により、基材表面にカルボニル基、水酸基又はアルミニウム原子、珪素原子、銅原子又は窒素原子の不均一な分布を設けることが可能である。
カルボニル基は、コロナディスチャージ処理、レーザー処理、酸素プラズマ改質処理で設けることができる。また、水酸基はコロナディスチャージ処理、レーザー処理、酸素プラズマ改質処理で設けることができる。また、アミノ基はアミノ基含有シラン化合物を使用したイトロ処理で設けることができる。また、アルミニウム原子はスパッタ処理、PVD処理、CVD処理で得られる。また、アルミニウム原子はスパッタ処理、PVD処理、CVD処理で得られた膜をアルゴンプラズマエッチングする事でも得られる。
【0039】
また、珪素原子はスパッタ処理、PVD処理、CVD処理もしくはイトロ処理で設けることができる。また、銅原子はスパッタ処理、PVD処理、CVD処理で設けることができる。また、ニッケル原子はスパッタ処理、PVD処理、CVD処理で設けることができる。また、窒素原子は窒素プラズマ改質処理で設けることができる。
【0040】
(性質 被覆されていない部分の最短距離)
このようにして得られた本発明のフッ素樹脂被覆体において、被覆されていない部分の最短距離は5nm~10μmである。最短距離は中でも20nm~5μmであることが好ましい。最短距離の測定方法は、例えば原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を使用し、平面視と対応する断面視の拡大写真とを逐次対比して求める方法、平面視拡大写真の画像処理によって求める方法等、種々の手法を適用することができるが、本発明においては、平面視拡大写真の画像処理によって求める方法により求めた。この際に基材の繊維状物質の表面における被覆されていない部分の最短距離を計測しており、繊維状物質同士の距離を計測する物ではない。
【0041】
(性質 単位面積当たりの被覆率)
また本発明のフッ素樹脂被覆体において、単位面積当たりの被覆率は10~80%である。被覆率は中でも25~60%であることが好ましい。被覆率は例えば原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を使用し、平面視拡大写真の画像処理によって求めた。
【0042】
(性質 膜厚)
また本発明のフッ素樹脂被覆体において、フッ素樹脂被覆膜の膜厚は1nm~200nmである。膜厚率は中でも5nm~50nmであることが好ましい。膜厚は例えば原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を使用し、断面視拡大写真の画像処理によって求めた。
【0043】
(性質 接触角)
また本発明のフッ素樹脂被覆体は、接触角が90°以上であることが好ましい。具体的には、膜表面における純水の静的接触角が、θ/2法で95°以上であることが、撥水性に優れる点から好ましく、膜表面におけるn-ヘキサデカンの静的接触角が、θ/2法で60°以上であることが、撥油性に優れる点から好ましい。
【0044】
前記本発明のフッ素樹脂被覆体の性質は、フッ素原子固有の性質に基づいている。フッ素原子は,原子半径及び分極率が小さく,電気陰性度はあらゆる元素の中で最も高い。また,炭素-フッ素結合については,その結合エネルギーが大きいために,優れた耐熱性,耐候性、耐薬品性を実現でき,その分極率が小さいために,分子間凝集力が小さくなり低表面自由エネルギー表面を形成できる。
【0045】
(基材)
本発明においてフッ素樹脂被覆膜を形成する基材は繊維状物質で構成される。なお本発明において、繊維状物質で構成される基材とは、主成分として繊維状物質を有することを指し、繊維状物質を基材として使用しうる形状である膜もしくはフィルムもしくはシート状に加工する際に必要なその他の物質を含みうるものとする。
繊維状物質で構成された基材は、用途に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。前記繊維状物質として例えば、セルロース、疎水変性セルロース、天然岩石、ガラス、プラスチック繊維、炭素繊維、活性炭素繊維、金属繊維等が挙げられる。
【0046】
セルロースとしては、例えば繊維径が15~50μmの天然セルロースやこれを繊維径4~20nmまで解きほぐしたセルロースナノファイバーが挙げられる。更に、セルロースの水酸基の一部をカルボキシメチル基で置換されたカルボキシメチルセルロース(CMC)やエチルエーテル基で置換されたエチルセルロース(EC)やメチルエーテル基で置換されたメチルセルロース(MC)等変性セルロースが挙げられる。
【0047】
例えば疎水変性セルロースとしては、セルロースをTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)触媒酸化した後に軽微な解繊処理を施すことによって得られる繊維径3~10nm程度の疎水変性セルロースナノファイバーが挙げられる。
【0048】
天然岩石としては、例えば、玄武岩や石英、その他の天然岩石が挙げられ、該岩石を繊維状物質にしたロックウールやスラグウールや石英を繊維径2~10μm程度の繊維状物質にした石英ウール等の人造鉱物繊維が挙げられる。
【0049】
ガラスとしては、例えば、ガラスを繊維径2~10μm程度の繊維状物質にしたグラスウールや石英を繊維径2~10μm程度の繊維状物質にした石英ウールが挙げられる。
【0050】
プラスチック繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリイミド。ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクリロニトリルポリマー、アクリロニトリルコポリマー、メタクリロニトリルポリマー、メタクリロニトリルコポリマー、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等を繊維状に加工し繊維径5nm~100μm程度にしたプラスチック繊維が挙げられる。
【0051】
炭素繊維としては、例えば、アクリル繊維またはPITCH(石油、石炭、コールタール等を製造する際の炭化水素を主成分とする副生成物)を炭化させた繊維径2~10μm程度の繊維状物質で、炭素繊維と呼称される物が挙げられる。
【0052】
活性炭素繊維としては、例えば、アクリル繊維またはPITCHまたはセルロース繊維を加熱処理等によって酸化させ、繊維の細孔構造を発達させる賦活工程により繊維の表面積を増加させて表面吸着性能を持たせた繊維径2~40μ程度の活性炭素繊維が挙げられる。
【0053】
金属繊維としては、例えば、ステンレスもしくは銅もしくは黄銅もしくはチタンもしくはアルミニウム等を素材にした繊維径10~200μ程度の金属繊維が挙げられる。
【0054】
これらの繊維は、公知の方法で、膜もしくはフィルムもしくはシート状に加工され基材として使用される。本発明においては、加工された繊維状物質で構成される基材としては、紙、不織布、または織布であることが好ましい。また巻き取れるもの、巻き取れるほどには曲がらないが負荷をかけることによって湾曲するもの、完全に曲がらないもののいずれであってもよい。各繊維状物質で構成される基材を容器状に加工した物品であってもよい。繊維状物質で構成される基材の厚みは、用途に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、通常10μm~200mmである。
【0055】
本発明に用いられる繊維状物質で構成される基材の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。
【実施例
【0056】
次に、本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明する。例中断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0057】
(使用基材)
基材としては、カップ用紙(セルロースで構成される)、純白上質紙(セルロースで構成される)、炭素繊維フェルト(炭素繊維で構成される)、活性炭素繊維、プラスチック製不織布(プラスチック繊維で構成される)、ガラスクロス(ガラスで構成される)、ロックウールペーパー(玄武岩で構成される)、チタン繊維シート(金属チタンで構成される)を用いた。
【0058】
カップ用紙:DCK 200g/m(大王製紙製)
純白上質紙:はまゆう40g/m(紀州製紙製)
炭素繊維フェルトGF-20-7FH(日本カーボン製)
活性炭素繊維:KFペーパー110g/m(東洋紡製)
不織布(ポリエステル/ポリアミド):WC001(日本バイリーン製)
不織布(ポリエチレン):タイベック1443R(デュポン製)
ガラスクロス:EGW110TH-153 110g/m(セントラルグラスファイバー製)
ロックウールペーパー:RW300(巴川製紙所製)
チタン繊維シート:チタン50μm繊維による1.4mmシート(日工テクノ製)
【0059】
(プラズマCVD法)
プラズマCVD装置として、PED-401(アネルバ製)をベースとするプラズマCVD装置を使用した。当該装置はガス供給部分を複数個所から供給出来る様改良している。基材をプラズマCVD装置の真空チャンバーに入れ、下部電極上に設置した。下部電極の温度は22℃とした。チャンバーを閉めて0.4Paまで減圧したあと、アルゴン(Ar)ガスをキャリアガスとし、フッ素化合物(モノマー材料)として「パーフルオロヘキシルエチレン」(ダイキン工業(株)製、品番:F-1620)を真空チャンバー内に供給した。このとき、Arガスの流量を30sccmとした。排気量を調整して真空チャンバー内の圧力を50Paに調整したのち、放電電力を54Wとし、成膜を行った。成膜時間は10秒~10分間とし実施例及び比較例のフッ素樹脂被覆体を得た。
酸素プラズマ処理を行う場合には、本装置を使用してArガスの替わりに酸素ガスを同程度の流量・真空・放電条件にて1分間処理した。
【0060】
(スパッタ法)
スパッタ装置として、マグネトロンスパッタ装置(キャノンアネルバ社製:型式EB1100)を用いた。
ここでは、ターゲットとしてPTFEターゲットを用い、プロセスガスにはアルゴンもしくはアルゴンと酸素とを用いて、DCスパッタにより、PTFE蒸着層を形成した。スパッタ電源パワーは、5.0W/cm2とし、成膜圧力は0.4Paとした。酸素を使用する場合は酸素分圧は、10%とした。蒸着時間を10秒-40分程度で制御する事で実施例の膜厚を得た。
当該装置を前処理として使用する場合には、ターゲットとしてNi、Cu、SiOxターゲットを用い、0.5-5秒の極短時間で処理した。
【0061】
(PVD法)
PVD蒸着装置として、EB加熱及び抵抗加熱可能な真空蒸着装置(アルバックテクノ株式会社製)内に、ルツボに入れたPTFEターゲットを入れ、真空度:3.0×10-3Paまで排気して、製膜速度を水晶振動子により確認しながら10Å/s~500Å/sの範囲で製膜出来る様に加熱した。製膜時間は1秒~10分で処理し実施例及び比較例のフッ素樹脂被覆体を得た。
【0062】
(基材表面の前処理法)
基材表面に前処理する方法として、コロナ処理、またはイトロ処理を行った。
(コロナ処理)
春日電機製TEC-4AXを使用して、表面エネルギー45mN/m以上になるように処理した。
【0063】
(イトロ処理)
基材表面に、フレーム処理により極薄膜のケイ素化合物膜を構成する処理方法であり、ITRO社に依頼して処理した。OPPフィルム(二村製FOR25μm)の処理表面が表面エネルギー>70mN/mの超親水膜状となるように条件設定を行い、同条件で処理した。
【0064】
(被覆されていない部分(未被覆部分)の最短距離、被覆率、膜厚の測定方法)
得られたフッ素樹脂被覆体の、被覆されていない部分の最短距離は、以下の方法により測定した。
(1)原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いてフッ素樹脂を検出する。
(2)続いて被覆されていない部分の最短距離を検出する。なお最短距離を求める方法としては、平面視拡大写真の画像処理によって求めた。
(3)被覆率は、平面視拡大写真の画像処理により求めた。
(4)膜厚は、断面視拡大写真の画像処理によって求めた。
【0065】
(接触角の測定)
得られたフッ素樹脂被膜体表面上に、評価用液として純水もしくはnーヘキサデカンを約2μlを置き、水滴と被膜表面とのなす角(接触角)を接触角計(協和界面科学製:CA-X型)で測定した。
【0066】
(体積抵抗率の測定)
三菱ケミカルアナリテック製ロレスタGXを用いて、体積抵抗率は四端子測定法を用いて測定した。
【0067】
(水蒸気透過率の測定)
Illinois社製水蒸気透過率測定装置7012を用いて、伝導度法「ISO-15106-3」に準じ、40℃90%RHの雰囲気下で測定した。測定面積は5cmである。
【0068】
(水分吸着量の測定)
23℃、相対湿度65%RHの恒温恒湿度で24時間機材を調湿し、その後40℃、相対湿度90%RHの恒温恒湿度で24時間放置後の重量変化率を測定した。
【0069】
(Cobb値の測定)
紙の耐水性の指標として、JIS P 8140(1998年)に準じてCobb法で、吸水度試験器(ガーレー式コッブサイズ度測定機、テスター産業製)を用いて吸水度を測定した。測定条件は20℃の室温、水温で水との接触時間は1分である。
【0070】
(シール強度の測定)
得られたフッ素樹脂被覆体を、面シールは幅10mm×長さ400mmのヒートシールバー、線シールでは幅1mm×長さ400mmのヒートシールバー、ローレットではピッチ0.51mmのローレット加工をした面シールを行った。(ヒートシール条件:200℃5秒、0.2MPa)
【0071】
得られたヒートシール物を、室温まで冷却した後、JIS K6854に準じる方法を用い、180°剥離試験にて200mm/minの剥離速度でラミネート強度を測定した。
【0072】
フッ素樹脂被覆体の製法の構成、及び性質を表に示す。
なお、表中の略語は以下の通りである。
Ar:アルゴンガス
:窒素ガス
:酸素ガス
PE-CVD:プラズマアシスト-CVD法
【0073】
(プラズマCVD法)によるフッ素樹脂被覆体の製法の構成、及び性質
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
(スパッタ法)によるフッ素樹脂被覆体の製法の構成、及び性質
【0077】
【表3】
【0078】
(PVD法)によるフッ素樹脂被覆体の製法の構成、及び性質
【0079】
【表4】
【0080】
前処理した基材を使用したフッ素樹脂被覆体の製法の構成、及び性質
【0081】
【表5】
【0082】
フッ素樹脂被覆した不織布(ポリエチレン)のシール強度の測定
【0083】
【表6】
【0084】
この結果、実施例で得たフッ素樹脂被覆体は、線シールやローレットシールにおいて実用上問題のないシール強度を得た。
【0085】
フッ素被覆したカップ用紙の水蒸気透過率、水蒸気による水分吸着量、Cobb値の測定
【0086】
【表7】
【0087】
この結果、実施例で得たフッ素樹脂被覆体は、実用上問題のない耐水性(Cobb値)と十分な水蒸気透過率、および十分な水蒸気吸着能力(長時間における水分吸着量)を並立して実現できた。
【0088】
フッ素被覆したチタン繊維シートの体積抵抗率の測定
【0089】
【表8】
【0090】
この結果、実施例で得たフッ素樹脂被覆体は、比較例9のむき出しの金属繊維に近い体積抵抗率を実現できた。