(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】ジアミン化合物、及びそれを用いたポリイミド前駆体及びポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
C07D 209/48 20060101AFI20220524BHJP
C08G 73/06 20060101ALI20220524BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
C07D209/48 CSP
C08G73/06
C08J5/18 CFG
(21)【出願番号】P 2021509194
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(86)【国際出願番号】 KR2020001137
(87)【国際公開番号】W WO2020153771
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】10-2019-0009547
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0005487
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミンジュ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジンヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ホヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、チョル ジュン
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/013403(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0095147(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102432878(CN,A)
【文献】米国特許第04668757(US,A)
【文献】特表2005-503478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 209/48
C08G 73/06
C08J 5/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記
[化学式1
]のジアミン化合物:
[化学式1]
【化1】
前記
[化学式1
]において、
Lは、
【化2】
から選択されるリンカーであり、
Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して
【化3】
から選択される2価の有機基であり、
R
1からR
11は、それぞれ独立して水素、重水素、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換または非置換の炭素数1~30のハロアルキル基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素数6~30のアリールシリル基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキルアミノ基、置換または非置換の炭素数6~30のアリールアミノ基、置換または非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキルチオール基、置換または非置換の炭素数6~30のアリールチオール基、置換または非置換の炭素数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素数6~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、-COOH基、置換または非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、アミド基、置換または非置換の炭素数3~30のシクロアルキルオキシ基、置換または非置換の炭素数1~30のシクロアルキルチオール基、エステル基、-CD
3、アジド基、ニトロ基、またはB、N、O、S、P(=O)、Si、及びPから選択された1種以上のヘテロ原子を含む置換または非置換の(3~30員)ヘテロアリール基であり、
Yは、
【化4】
から選択され、
l、m、n、o、p、q、r、s、t、u及びvは、それぞれ0~4の整数であり、l、m、n、o、p、q、r、s、t、u及びvが2~4の整数である場合、それぞれのR
1からR
11は、同一または異なっていてもよ
く、
★は、結合手である。
【請求項2】
前記
[化学式1
]のLが、
【化5】
から選択されるリンカーであり、
Ar
1及びAr
2が、それぞれ独立して
【化6】
であり、
R
1からR
8が、それぞれ独立してハロゲン原子、非置換、またはハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、
R
9が、ハロゲン原子、または非置換、またはハロゲンで置換された炭素数1~6のアルキル基であり、
Yは、
【化7】
から選択され、
l、m、n、o、p、q、r、s及びtが、それぞれ0~2の整数であ
り、
★は、結合手である、請求項1に記載のジアミン化合物。
【請求項3】
前記
[化学式1
]のLが、トリフルオロメチル、メチル、塩素(Cl)、及びメトキシからなる群から選択される1種以上の置換基で置換または非置換のフェニル;メチル、トリフルオロメチル、及び塩素(Cl)からなる群から選択される1種以上の置換基で置換または非置換のビフェニル;トリフルオロメチルで置換または非置換のテルフェニル;ビス(トリフルオロメチルフェニル)スルホン、ビス(メチルフェニル)スルホン、{(トリフルオロメチルフェニル)スルホニル}フェニル、ジフェニルスルフィド、ビス(メチルフェニル)スルフィド、ビス(トリフルオロメチルフェニル)スルフィドまたはジフェニルエーテルであり、Ar
1及びAr
2が、それぞれ独立してメチル、トリフルオロメチル、及び塩素(Cl)からなる群から選択される1種以上の置換基で置換または非置換のフェニルであり、
lが、0~2の整数であり、
m、n、o、p、q、r、s及びtが、それぞれ0または1の整数である、請求項1に記載のジアミン化合物。
【請求項4】
前記
[化学式1
]のジアミン化合物が、下記構造式1から構造式21の化合物のうちから選択される、請求項1に記載のジアミン化合物:
【化8】
【化9】
。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうち何れか一項に記載の
[化学式1
]のジアミン化合物及び1種以上の酸二無水物を含む重合成分を重合させて製造される、ポリイミド前駆体。
【請求項6】
前記酸二無水物が、BPDA(ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、6-FDA(4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物)またはこれらの混合物を含む、請求項5に記載のポリイミド前駆体。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のポリイミド前駆体から製造された、ポリイミドフィルム。
【請求項8】
請求項7に記載のポリイミドフィルムを基板として含む、フレキシブルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年1月25日付の大韓民国特許出願10-2019-0009547号及び2020年1月15日付の大韓民国特許出願10-2020-0005487号に基づいた優先権の利益を主張し、該特許文献に開示されたあらゆる内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、新規なジアミン化合物、及びそれを用いたポリイミド前駆体及びポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
最近、ディスプレイ分野で製品の軽量化及び小型化が重要視されており、現在、使われているガラス基板の場合、重くてよく割れてしまい、連続工程が困難であるという限界があるために、ガラス基板を代替して、軽くて柔軟であり、連続工程が可能な長所を有するプラスチック基板を携帯電話、ノート型パソコン、PDA(personal digital assistant)などに適用するための研究が活発に進められている。
【0004】
特に、ポリイミドは、合成が容易であり、薄膜フィルムを作ることができ、硬化のための架橋基が不要であるという長所を有しており、最近、電子製品の軽量及び精密化の現象によって、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)など半導体材料に集積化素材として多く適用されており、ポリイミドを軽くて柔軟な性質を有するフレキシブルディスプレイ基板(flexible plastic display board)に使用しようとする多くの研究が進められている。
【0005】
前記ポリイミドをフィルム化して製造したものが、ポリイミドフィルムであり、一般的に、ポリイミドは、芳香族二無水物(dianhydride)と芳香族ジアミンまたは芳香族ジイソシアネートとを溶液重合してポリアミド酸(polyamic acid)誘導体溶液を製造した後、それをシリコンウェーハやガラスなどにコーティングし、熱処理によって硬化させる方法で製造される。
【0006】
高温工程を伴うフレキシブルデバイスは、高温での耐熱性が要求されるが、特に、LTPS(low temperature polysilicon)工程を使用するOLED(organic light emitting diode)デバイスの場合、工程温度が500℃に近接する。しかし、このような温度では、耐熱性に優れたポリイミドであっても、加水分解による熱分解が起こりやすい。したがって、フレキシブルデバイスの製造のためには、高温工程でも加水分解による熱分解が起こらない優れた熱的特性及び貯蔵安定性を示すことができるポリイミドフィルムの開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、向上した耐熱性、貯蔵安定性などを示すポリイミドを製造するための新規なジアミン化合物を提供するところにある。
【0008】
本発明が解決しようとする他の課題は、前記新規なジアミン化合物を用いて製造されたポリイミド前駆体を提供するところにある。
【0009】
本発明が解決しようとするさらに他の課題は、前記ポリイミド前駆体を用いて製造されたポリイミドフィルム及びこのようなポリイミドフィルムを含むフレキシブルデバイスを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題を解決するために、本発明は、下記化学式1のジアミン化合物を提供する:
[化学式1]
【化1】
前記化学式1において、Lは、
【化2】
から選択されるリンカーであり、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して
【化3】
から選択される2価の有機基であり、R
1からR
11は、それぞれ独立して水素、重水素、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換または非置換の炭素数1~30のハロアルキル基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素数6~30のアリールシリル基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキルアミノ基、置換または非置換の炭素数6~30のアリールアミノ基、置換または非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキルチオール基、置換または非置換の炭素数6~30のアリールチオール基、置換または非置換の炭素数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素数6~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、-COOH基、置換または非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、アミド基、置換または非置換の炭素数3~30のシクロアルキルオキシ基、置換または非置換の炭素数1~30のシクロアルキルチオール基、エステル基、-CD
3、アジド基、ニトロ基、またはB、N、O、S、P(=O)、Si、及びPから選択された1種以上のヘテロ原子を含む置換または非置換の(3~30員)ヘテロアリール基であり、Yは、
【化4】
から選択され、l、m、n、o、p、q、r、s、t、u及びvは、それぞれ0~4の整数であり、l、m、n、o、p、q、r、s、t、u及びvが2~4の整数である場合、それぞれのR
1からR
11は、同一または異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のジアミン化合物は、分子内にイミド環が(ヘテロ)アリール環に直接結合された部分構造を含む新規な化合物であって、それを重合成分として含むポリイミド前駆体は、硬化後、改善された熱的及び機械的特性を有するポリイミドフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、多様な変換を加え、さまざまな実施例を有することができるので、以下、本発明の特定実施例を詳細な説明で説明する。しかし、これは、本発明の範囲を特定の実施形態で限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる、あらゆる変換、均等物または代替物を含むものと理解しなければならない。本発明を説明するに当って、関連した公知技術についての具体的な説明が、本発明の要旨を不明にする恐れがあると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0013】
芳香族ポリイミドは、熱酸化安定性、高い機械的強度のような優れた総合的な特性によって、マイクロ電子、航空宇宙、絶縁材料及び耐火性材料のような先端産業で広範囲に使われる。しかし、紫外線または可視光線領域で高い吸光度を有する芳香族ポリイミドは、薄い黄色または濃い褐色で着色されるが、これは、透明性及び無色特性が基本要求事項である光電子領域(optoelectronics area)での広範囲な適用を制限する。芳香族ポリイミドで着色が表われる理由は、高分子主鎖で交代電子供与体(dianhydride)と電子受容体(diamine)との間、及び内部分子間の電荷移動錯体(CT-complexes)を形成するためである。
【0014】
このような問題を解決するために、特定の官能基、体積が大きなペンダント基、フッ化官能基などを高分子主鎖として導入するか、-S-、-O-、-CH2-などを導入する方法が試みられて、高いガラス転移温度(Tg)を有する光学的に透明なポリイミドフィルムが開発された。
【0015】
本発明の発明者は、従来技術に基づいて先行技術の問題点を解決するために鋭意研究し、特定の構造を有する新規なジアミン化合物が、優れた熱的及び機械的特性を提供するということを明らかにし、本発明を完成した。
【0016】
これにより、本発明は、下記化学式1のジアミン化合物を提供する:
[化学式1]
【化5】
前記化学式1において、Lは、
【化6】
から選択されるリンカーであり、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して
【化7】
から選択される2価の有機基であり、R
1からR
11は、それぞれ独立して水素、重水素、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換または非置換の炭素数1~30のハロアルキル基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素数6~30のアリールシリル基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキルアミノ基、置換または非置換の炭素数6~30のアリールアミノ基、置換または非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキルチオール基、置換または非置換の炭素数6~30のアリールチオール基、置換または非置換の炭素数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素数6~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、-COOH基、置換または非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、アミド基、置換または非置換の炭素数3~30のシクロアルキルオキシ基、置換または非置換の炭素数1~30のシクロアルキルチオール基、エステル基、-CD
3、アジド基、ニトロ基、またはB、N、O、S、P(=O)、Si、及びPから選択された1種以上のヘテロ原子を含む置換または非置換の(3~30員)ヘテロアリール基であり、Yは、
【化8】
から選択され、l、m、n、o、p、q、r、s、t、u及びvは、それぞれ0~4の整数であり、l、m、n、o、p、q、r、s、t、u及びvが2~4の整数である場合、それぞれのR
1からR
11は、同一または異なっていてもよい。
【0017】
本明細書に記載されている「置換または非置換」という記載で「置換」は、ある作用基で水素原子が他の原子または他の作用基、すなわち、他の置換基で置き換えられたものを意味する。
【0018】
前記化学式1において、置換アルキル基、置換ハロアルキル基、置換アルキルシリル基、置換アリールシリル基、置換アルキルアミノ基、置換アリールアミノ基、置換アルコキシ基、置換アルキルチオール基、置換アリールチオール基、置換アリール基、置換アラルキル基、置換アリールオキシ基、置換シクロアルキル基、置換シクロアルキルオキシ基、置換シクロアルキルチオール基及び置換ヘテロアリール基の置換基は、それぞれ独立して重水素、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルチオール基、炭素数6~30のアリールチオール基、炭素数6~30のアリール基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数3~30のシクロアルケニル基、炭素数6~30のアリールオキシ基、炭素数1~30のアルキルシリル基、炭素数6~30のアリールシリル基、炭素数1~30のアルキルアミノ基、炭素数6~30のアリールアミノ基、炭素数1~30のアルキルカルボニル基、炭素数1~30のアルコキシカルボニル基、炭素数6~30のアリールカルボニル基、炭素数1~30のアルキルボルニル基、炭素数6~30のアリールボルニル基などから選択された1種以上のものである。
【0019】
本明細書において、「炭素数1~30のアルキル」は、炭素数が1~30個である直鎖または分枝鎖アルキルを意味し、炭素数が1~20個であることが望ましく、1~10個であることがさらに望ましい。前記アルキルの具体例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル及び3級ブチルなどがある。
【0020】
本明細書において、「炭素数2~30のアルケニル」は、炭素数が2~30個である直鎖または分枝鎖アルケニルを意味し、炭素数が2~20個であることが望ましく、2~10個であることがさらに望ましい。前記アルケニルの具体例として、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチルブタ-2-エニルなどがある。
【0021】
本明細書において、「炭素数2~30のアルキニル」は、炭素数が2~30個である直鎖または分枝鎖アルキニルを意味し、炭素数が2~20個であることが望ましく、2~10個であることがさらに望ましい。前記アルキニルの例として、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチリル、2-ブチリル、3-ブチリル、1-メチルペント-2-イニルなどがある。
【0022】
本明細書において、「炭素数1~30のアルコキシ」は、炭素数が1~30個である直鎖または分枝鎖アルコキシを意味し、炭素数が1~20個であることが望ましく、1~10個であることがさらに望ましい。前記アルコキシの例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、1-エチルプロポキシなどがある。
【0023】
本明細書において、「炭素数3~30のシクロアルキル」は、炭素数が3~30個である単環(monocycle)または多環(polycycle)炭化水素を意味し、炭素数が3~20個であることが望ましく、3~7個であることがさらに望ましい。前記シクロアルキルの例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどがある。
【0024】
本明細書において、「炭素数6~30のアリール(レン)」は、炭素数が6~30個である芳香族炭化水素由来の単環式または融合環式ラジカルを意味し、環骨格炭素数が6~20個であることが望ましく、6~15個であることがさらに望ましい。前記アリールの例として、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、フルオレニル、フェナントリル、アントラセニル、インデニル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニル、クライセニル、ナプタセニル、フルオランテニルなどがある。
【0025】
本明細書において、「(3~30員)ヘテロアリール(レン)」は、環骨格原子数が3~30個であり、B、N、O、S、P(=O)、Si、及びPからなる群から選択された1種以上のヘテロ原子を含むアリール基を意味する。ここで、環骨格原子数が3~20個であることが望ましく、3~15個であることがさらに望ましい。ヘテロ原子数は、望ましくは、1~4個であり、単環式であるか、1個以上のベンゼン環と縮合された融合環式であり、部分的に飽和されても良い。また、本明細書において、前記ヘテロアリールは、1種以上のヘテロアリール基またはアリール基が単一結合によってヘテロアリール基と連結された形態も含む。前記ヘテロアリールの例として、フリル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアジニル、テトラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、プラジャイル、ピリジル、ピラジンイル、ピリミジンイル、ピリダジンイルなどの単環式ヘテロアリールと、ベンゾフランイル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾフランイル、ジベンゾフランイル、ジベンゾチオフェニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、ベンゾチアジアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、カルバゾリル、フェノキサジンイル、フェナントリジンイル、ベンゾジオキソリルなどの融合環式ヘテロアリールがある。
【0026】
本明細書において、「ハロゲン」は、F、Cl、Br及びI原子を含む。
一実施例によれば、前記化学式1の化合物において、Lは、
【化9】
から選択されるリンカーであり、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して
【化10】
であり、R
1からR
8は、それぞれ独立してハロゲン原子、非置換、またはハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、R
9は、ハロゲン原子、または非置換、またはハロゲン原子で置換された(C1-C6)アルキル基であり、Yは、
【化11】
から選択され、l、m、n、o、p、q、r、s及びtは、それぞれ0~2の整数である。
【0027】
一実施例によれば、前記化学式1の化合物において、Lは、トリフルオロメチル、メチル、塩素(Cl)、及びメトキシからなる群から選択される1種以上の置換基で置換または非置換のフェニル;メチル、トリフルオロメチル、及び塩素からなる群から選択される1種以上の置換基で置換または非置換のビフェニル(biphenyl);トリフルオロメチルで置換または非置換のテルフェニル(terphenyl);ビス(トリフルオロメチルフェニル)スルホン、ビス(メチルフェニル)スルホン、{(トリフルオロメチルフェニル)スルホニル}フェニル、ジフェニルスルフィド、ビス(メチルフェニル)スルフィド、ビス(トリフルオロメチルフェニル)スルフィドまたはジフェニルエーテルであり、Ar1及びAr2は、それぞれ独立してメチル、トリフルオロメチル、及び塩素からなる群から選択される1種以上の置換基で置換または非置換のフェニルであり、lは、0~2の整数であり、m、n、o、p、q、r、s及びtが、それぞれ0または1の整数である。
【0028】
一実施例によれば、前記化学式1のジアミン化合物は、以下構造式の化合物から選択されうるが、これに限定されるものではない:
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【0029】
一実施例によれば、前記化学式1のジアミン化合物は、下記構造式1から構造式21の化合物のうちから選択されうるが、これに限定されるものではない:
【化28】
【化29】
【0030】
前記のように、本発明のジアミン化合物は、分子内イミド環を連結するフェニレンリンカー(L)及び前記イミド環がアリール環(Ar1及びAr2)に直接結合された構造を有することにより、ポリイミド前駆体の重合成分として使用時に、硬化後、改善された熱的及び機械的特性を付与することができる。
【0031】
本発明による化学式1のジアミン化合物の製造方法は、特に限定されず、当業者に公知の合成方法で製造し、例えば、下記反応式1によって製造することができる。
[反応式1]
【化30】
【0032】
前記反応式1において、Ar1、Ar2及びLは、化学式1での定義と同一である。
【0033】
前記反応式1の段階(1)は、反応化合物を酢酸、プロピオン酸のような溶媒中で還流下に10~14時間、例えば、12時間反応させることで行われる。
【0034】
前記反応式1の段階(2)では、Pd/C触媒の存在下に水素ガスを注入して還元反応を行い、この際、溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチルピロリドンなどが使われる。
【0035】
前記段階(2)以後に、固形物の収得のために、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールを添加して再結晶化を行うことができる。
【0036】
また、本発明は、1種以上のジアミン化合物及び1種以上の酸二無水物(acid dianhydride)を含む重合成分を重合させて製造されるポリイミド前駆体(ポリアミド酸)であって、前記ジアミン化合物が、前記化学式1のジアミン化合物を含むポリイミド前駆体を提供する。前記ポリイミド前駆体のイミド化反応を行って、所望のポリイミドが得られる。
【0037】
前記重合反応に使われる酸無水物としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物が使われる。前記テトラカルボン酸二無水物は、例えば、分子内芳香族、脂環族または脂肪族の4価の有機基、または、これらの結合基として、脂肪族、脂環族または芳香族の4価の有機基が架橋構造を通じて互いに連結されたものを含むものである。テトラカルボン酸二無水物は、望ましくは、単環式または多環式芳香族、単環式または多環式脂環族、または、これらのうち2つ以上が単一結合または官能基で連結された構造を有するもの、または芳香族、脂環族などの環構造が単独、または融合された(fused)複素環構造、または、これらのうち2つ以上が単一結合で連結された構造のような剛直な(rigid)構造を含むものである。
【0038】
例えば、テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式2aから化学式2eから選択される4価の有機基を含むものである:
[化学式2a]
【化31】
[化学式2b]
【化32】
[化学式2c]
【化33】
[化学式2d]
【化34】
[化学式2e]
【化35】
【0039】
前記化学式2aから化学式2eにおいて、R11からR17は、それぞれ独立してF、Cl、Br及びIから選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基(-SH)、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲノアルコキシ基、炭素数1~10のハロゲノアルキル基、及び炭素数6~20のアリール基から選択されるものであり、a1は、0~2の整数、a2は、0~4の整数、a3は、0~8の整数、a4、a5、a6、a7、a8及びa9は、それぞれ独立して0~3の整数であり、A11及びA12は、それぞれ独立して単一結合、-O-、-CR'R"-(この際、R'及びR"は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基など)、及び炭素数1~10のハロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基など)からなる群から選択されるものである)、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-S-、-SO-、-SO2-、-O[CH2CH2O]y-(yは、1~44の整数である)、-NH(C=O)NH-、-NH(C=O)O-、炭素数6~18の単環式または多環式のシクロアルキレン基(例えば、シクロへキシレン基など)、炭素数6~18の単環式または多環式アリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフタレン基、フルオレニレン基など)、及びこれらの組合わせからなる群から選択されうる。
【0040】
前記テトラカルボン酸二無水物は、また下記化学式3aから化学式3nから選択される4価の有機基を含むものである:
【化36】
【0041】
前記化学式3aから化学式3nの4価の有機基内の1個以上の水素原子は、F、Cl、Br及びIから選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲノアルコキシ基、炭素数1~10のハロゲノアルキル基、及び炭素数6~20のアリール基から選択される置換基で置換される。例えば、前記ハロゲン原子は、フッ素であり、ハロゲノアルキル基は、フッ素原子を含む炭素数1~10のフルオロアルキル基であって、フルオロメチル基、パーフルオロエチル基、トリフルオロメチル基などから選択されるものであり、前記アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基から選択されるものであり、前記アリール基は、フェニル基及びナフタレニル基から選択されるものであり、より望ましくは、フッ素原子及びフルオロアルキル基などのフッ素原子を含む置換基である。
【0042】
一実施例によれば、ポリイミド前駆体重合時に、前記化学式1のジアミン化合物の以外に、1種以上の追加のジアミン化合物がさらに使われるが、例えば、炭素数6~24の単環式または多環式芳香族の2価の有機基、炭素数6~18の単環式または多環式脂環族の2価の有機基、または、これらのうち2つ以上が単一結合や官能基で連結された構造を含むジアミン化合物を使用することができる。または、芳香族、脂環族などの環構造が単独、または融合された複素環構造、または、これらのうち2つ以上が単一結合で連結された構造のような剛直な構造を含むジアミン化合物を使用することができる。
【0043】
例えば、前記追加のジアミン化合物は、下記化学式4aから化学式4eから選択される2価の有機基を含むものである:
[化学式4a]
【化37】
[化学式4b]
【化38】
[化学式4c]
【化39】
[化学式4d]
【化40】
[化学式4e]
【化41】
【0044】
前記化学式4aから化学式4eにおいて、R21からR27は、それぞれ独立してF、Cl、Br及びIから選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲノアルコキシ基、炭素数1~10のハロゲノアルキル基、及び炭素数6~20のアリール基からなる群から選択され、A21及びA22は、それぞれ独立して単一結合、-O-、-CR'R"-(この際、R'及びR"は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基など)、及び炭素数1~10のハロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基など)からなる群から選択されるものである)、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-S-、-SO-、-SO2-、-O[CH2CH2O]y-(yは、1~44の整数である)、-NH(C=O)NH-、-NH(C=O)O-、炭素数6~18の単環式または多環式のシクロアルキレン基(例えば、シクロへキシレン基など)、炭素数6~18の単環式または多環式のアリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフタレン基、フルオレニレン基など)、及びこれらの組合わせからなる群から選択され、b1は、0~4の整数であり、b2は、0~6の整数であり、b3は、0~3の整数であり、b4及びb5は、それぞれ独立して0~4の整数であり、b7及びb8は、それぞれ独立して0~4の整数であり、b6及びb9は、それぞれ独立して0~3の整数である。
【0045】
例えば、前記追加のジアミン化合物は、下記化学式5aから化学式5pから選択される2価の有機基を含むものである:
【化42】
【0046】
または、前記追加のジアミン化合物は、芳香族環または脂肪族構造が剛直な鎖構造を形成する2価の有機基を含むのであり、例えば、単環構造、それぞれの環が単一結合で結合された構造またはそれぞれの環が直接に融合された複素環構造を含む2価の有機基の構造を含みうる。
【0047】
本発明の一実施例によれば、テトラカルボン酸二無水物の総含量とジアミン化合物の含量は、1:1.1~1.1:1のmol比で反応し、望ましくは、反応性の向上及び工程性の向上のために、テトラカルボン酸二無水物の総含量がジアミン化合物に比べて過量で反応するか、またはジアミン化合物の含量がテトラカルボン酸二無水物の総含量に比べて過量で反応することが望ましい。
【0048】
本発明の一実施例によれば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物は、1:0.98~0.98:1、望ましくは、1:0.99~0.99:1のmol比で反応することが望ましい。
【0049】
前記重合反応は、溶液重合など通常のポリイミドまたはその前駆体の重合方法によって実施することができる。
【0050】
前記重合反応に使われる有機溶媒としては、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、カルビトール、ジメチルプロピオンアミド(dimethylpropionamide、DMPA)、ジエチルプロピオンアミド(diethylpropionamide、DEPA)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチルウレア、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)]エーテル、エクアミド(Equamide)M100(3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、Idemitsu Kosan Co.,Ltd.)、エクアミドB100(3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、Idemitsu Kosan Co.,Ltd.)などがあり、これらのうち、1種を単独で使用するか、2種以上の混合物で使用することができる。
【0051】
一実施例によれば、前記有機溶媒は、25℃で分配係数Log Pが正数であり、沸点が300℃以下であるもの、より具体的に、分配係数Log Pが0.01~3、または0.01~2、または0.01~1であるものである。前記分配係数は、例えば、ACD/Labs社のACD/Percepta platformのACD/Log P moduleを使用して計算することができ、ACD/Log P moduleは、分子の2D構造を用いてQSPR(Quantitative Structure-Property Relationship)方法論の基盤のアルゴリズムを利用する。
【0052】
前記分配係数Log Pが正数である溶媒は、疎水性の溶媒であることを意味するが、本発明者の研究によれば、分配係数Log Pが正数である特定溶媒を使用してポリイミド前駆体組成物を製造すれば、エッジバック(edge back)現象が改善されることが分かった。また、本発明は、前記のように分配係数Log Pが正数である溶媒を使用することにより、素材の表面張力及び塗膜の平滑性を調節する添加剤、例えば、レベリング剤(leveling agent)を使用せずとも、溶液のエッジバック現象を制御することができ、付加的な添加剤を使用しないので、最終生成物に低分子物質が含有されるなどの品質及び工程上の問題を回避するだけではなく、より効率的に均一な特性を有するポリイミドフィルムを形成しうる効果がある。
【0053】
例えば、ポリイミド前駆体組成物をガラス基板にコーティングする工程において、硬化時または湿度条件下にコーティング液を放置する場合、コーティング層の収縮によるコーティング溶液のエッジバック現象が発生する恐れがある。このようなコーティング溶液のエッジバック現象は、フィルムの厚さの偏差をもたらして、これによるフィルムの耐屈曲性の不足でフィルムが切られるか、カッティング時に、エッジが割れる現象が表われて、工程上の作業性が悪く、収率が低下する問題が発生する恐れがある。
【0054】
また、基板に塗布されたポリイミド前駆体組成物に極性を有する微細異物が流入される場合、分配係数Log Pが負数である極性溶媒を含むポリイミド前駆体組成物では、前記極性異物によって異物の位置を基準に散発的なコーティングの亀裂または厚さ変化が起こりうるが、分配係数Log Pが正数である疎水性の溶媒を使用する場合には、極性を有する微細異物が流入される場合にも、コーティングの亀裂による厚さ変化などの発生が減少または抑制される。
【0055】
具体的に、Log Pが正数である溶媒を含むポリイミド前駆体組成物は、下記式1で定義されるエッジバック率(edge back ratio)が0%で0.1%以下である。
[式1]
エッジバック率(%)=[(A-B)/A]Х100
【0056】
前記式1において、Aは、基板(100mmХ100mm)上にポリイミド前駆体組成物が完全にコーティングされた状態での面積であり、Bは、ポリイミド前駆体組成物またはポリイミドフィルムがコーティングされた基板の縁部の先端からエッジバック現象が発生した後の面積である。
【0057】
このようなポリイミド前駆体組成物及びポリイミドフィルムのエッジバック現象は、ポリイミド前駆体組成物溶液をコーティングした後、30分以内に発生し、特に、縁部から巻き込まれ始めることにより、縁部の厚さを厚くする。
【0058】
ポリイミド前駆体組成物を基板にコーティングした後、例えば、10分以上、例えば、40分以上の間に、20~30℃の温度及び40%以上の湿度条件、より具体的には、40~80%の湿度条件、すなわち、40%、50%、60%、70%及び80%のそれぞれの湿度条件に放置された以後にも、0.1%以下の非常に小さなエッジバック率を示し、望ましくは、0.05%、より望ましくは、ほぼ0%に近いエッジバック率を示すことができる。
【0059】
前記のようなエッジバック率は、熱処理による硬化以後にも保持されるものであって、具体的には、0.05%、より望ましくは、ほぼ0%に近いエッジバック率を示すことができる。
【0060】
本発明によるポリイミド前駆体組成物は、このようなエッジバック現象を解決することにより、より均一な特性を有するポリイミドフィルムを収得することができて、製造工程の収率を向上させうる。
【0061】
また、前記重合反応に使われる溶媒は、ASTM D1475の標準測定方法で測定した密度が1g/cm3以下であり、密度が1g/cm3以上である場合には、相対粘度が高くなって、工程上の効率性が減少する。
【0062】
前記重合反応は、不活性ガスまたは窒素気流下に実施され、無水条件で実行可能である。
【0063】
前記重合反応は、-20~80℃、望ましくは、0~80℃で実施することができる。重合反応温度が過度に高い場合、反応性が高くなって、分子量が大きくなり、前駆体組成物の粘度が上昇することにより、工程上に不利である。
【0064】
ポリアミド酸を含むポリイミド前駆体組成物は、有機溶媒に溶解された溶液の形態であり、このような形態を有する場合、例えば、ポリイミド前駆体を有機溶媒中で合成した場合には、溶液は、得られる反応溶液自体でも良く、または、この反応溶液を他の溶媒で希釈したものであっても良い。また、ポリイミド前駆体を固形粉末として得た場合には、それを有機溶媒に溶解させて溶液にしたものであっても良い。
【0065】
一実施例によれば、全体ポリイミド前駆体の含量が8~25重量%になるように、有機溶媒を添加して組成物の含量を調節し、望ましくは、10~25重量%、より望ましくは、10~20重量%以下に調節することができる。または、前記ポリイミド前駆体組成物が3,000cP以上10,000cP以下の粘度を有するように調節し、望ましくは、4,000cP以上9,000cP以下、より望ましくは、4,000cP以上8,000cP以下の粘度を有するように調節することが望ましい。ポリイミド前駆体組成物の粘度が10,000cPを超過する場合、ポリイミドフィルム加工時に、脱泡の効率性が低下することにより、工程上の効率が不良であるだけではなく、製造されたフィルムは、気泡発生で表面粗度が不良であって、電気的、光学的及び機械的特性が低下する。
【0066】
本発明は、また、前記重合反応の結果として収得されたポリイミド前駆体組成物を化学的または熱的イミド化の方法を用いてイミド化させることにより、製造された透明ポリイミドフィルムを提供する。
【0067】
前記ポリイミドフィルムは、一実施例として、ポリイミド前駆体組成物をキャリア基板上に塗布する段階;及び前記ポリイミド前駆体組成物を加熱及び硬化する段階;を含む方法で製造することができる。
【0068】
この際、前記キャリア基板としては、ガラス、金属基板またはプラスチック基板などが特に制限なしに使われ、そのうちでも、ポリイミド前駆体に対するイミド化及び硬化工程中の熱及び化学的安定性に優れ、別途の離型剤処理なしでも、硬化後、形成されたポリイミド系フィルムに対して損傷なしに容易に分離されるガラス基板が望ましい。
【0069】
また、前記塗布工程は、通常の塗布方法によって実施し、具体的には、スピンコーティング法、バーコーティング法、ロールコーティング法、エアナイフ法、グラビア法、リバースロール法、キスロール法、ドクターブレード法、スプレー法、浸漬法またはブラシ法などが用いられうる。そのうちでも、連続工程が可能であり、ポリイミドのイミド化率を増加させることができるキャスティング法によって実施されることがより望ましい。
【0070】
また、前記ポリイミド前駆体組成物は、最終的に製造されるポリイミドフィルムがディスプレイ基板用として適した厚さを有させる量で、例えば、10~30μmの厚さにする量で基板に塗布されうる。
【0071】
前記ポリイミド前駆体組成物の塗布後、硬化工程に先立って、ポリイミド前駆体組成物内に存在する溶媒を除去するための乾燥工程が選択的にさらに実施することができる。
【0072】
前記乾燥工程は、通常の方法によって実施し、140℃以下の温度、例えば、80~140℃で実施することができる。乾燥工程の実施温度が80℃未満であれば、乾燥工程が長くなり、140℃を超過する場合、イミド化が急激に進行して、均一な厚さのポリイミドフィルムの形成が困難である。
【0073】
前記基板に塗布されたポリイミド前駆体組成物は、IRオーブンや熱風オーブン内で、またはホットプレート上で熱処理され、この際、前記熱処理は、300~500℃、望ましくは、320~480℃で行い、前記温度範囲内で多段階加熱処理で進行することもできる。前記熱処理工程は、20~70分間進行し、望ましくは、20~60分間進行しうる。
【0074】
前記のように製造されたポリイミドフィルムの硬化直後、残留応力は、40MPa以下であり、前記ポリイミドフィルムを25℃及び50%の湿度条件で3時間放置した後の残留応力変化値が、5MPa以下である。
【0075】
前記ポリイミドフィルムの黄色度は、15以下であり、望ましくは、13以下である。また、前記ポリイミドフィルムのヘイズ(Haze)は、2%以下であり、望ましくは、1%以下である。
【0076】
また、前記ポリイミドフィルムの450nmでの透過率は、75%以上であり、550nmでの透過率は、85%以上であり、630nmでの透過率は、90%以上である。
【0077】
前記ポリイミドフィルムは、耐熱性が高く、例えば、質量減少が1%起こる熱分解温度(Td_1%)が、500℃以上である。
【0078】
前記のように製造されたポリイミドフィルムは、モジュラス(弾性率)が0.1~4GPaである。前記モジュラスが0.1GPa未満であれば、フィルムの剛性が低くて、外部衝撃に容易に壊れやすく、前記モジュラスが4GPaを超過すれば、カバーレイフィルムの剛性は優れているが、十分な柔軟性を確保することができない問題が発生する恐れがある。
【0079】
また、前記ポリイミドフィルムの延伸率は、20%以上、望ましくは、50%以上であり、引張強度は、130MPa以上、望ましくは、140MPa以上である。
【0080】
また、本発明によるポリイミドフィルムは、温度変化による熱安定性に優れ、例えば、100~350℃の温度範囲で加熱及び冷却工程をn+1回経た後の熱膨張係数が、-10~100ppm/℃、望ましくは、-7~90ppm/℃、より望ましくは、80ppm/℃以下である(この際、nは、0以上の整数)。
【0081】
また、本発明によるポリイミドフィルムは、厚さ方向位相差(Rth)が-150~+150nmの値、望ましくは、-130~+130nmの値を有することにより、光学的等方性を示して、視感性が向上する。
【0082】
一実施例によれば、前記ポリイミドフィルムは、キャリア基板との接着力が5gf/in以上であり、望ましくは、10gf/in以上である。
【0083】
さらに、本発明は、前記ポリイミドフィルムを基板として含むフレキシブルデバイスを提供する。
【0084】
前記フレキシブルデバイスは、一実施例として、前記ポリイミド前駆体組成物をキャリア基板に塗布した後、加熱して製造されたポリイミドフィルム上に素子を形成する段階;及び前記素子が形成されたポリイミドフィルムを前記キャリア基板から剥離する段階;を含む方法で製造することができる。
【0085】
前記フレキシブルデバイスは、例えば、薄膜トランジスタ、液晶ディスプレイ(LCD)、電子ペーパー、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)、ICカードなどである。
【0086】
以下、当業者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳しく説明する。しかし、本発明は、さまざまな異なる形態として具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0087】
【0088】
化合物1-3の製造
窒素雰囲気で化合物1-1(108.0g、0.65mol)と化合物1-2(73.0g、0.32mol)とをテトラヒドロフラン(THF)(500mL)に溶かし、炭酸カリウム(135.2g、0.97mol)を水(250mL)に溶かして添加した後、100℃に加熱した。反応混合物が還流される状態でパラジウムテトラトリフェニルホスフィン(11.29g)を入れ、12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、酢酸エチル(250mL)を添加して有機層を分離した。分離した有機層は、無水硫酸マグネシウムを使用して乾燥させ、溶媒は、減圧蒸留装置(BUCHI Rotavapor R-300)を通じて除去して、化合物1-3(60.3g、収率69%)を得た。
【0089】
化合物1-5の製造
プロピオン酸(500mL)に化合物1-3(20.0g、74.3mmol)と化合物1-4(4.0g、37.1mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(500mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物1-5(21.5g、収率95%)を得た。
【0090】
化合物1の製造
化合物1-5(21.5g、35.3mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(200mL)で再結晶化して、化合物1(19.0g、収率98%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C34H22N4O4(M+):550.1641;found:550.1639
【0091】
【0092】
化合物2-2の製造
プロピオン酸(500mL)に化合物1-3(20.0g、74.3mmol)と化合物2-1(9.07g、37.1mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(500mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物2-2(24.9g、収率90%)を得た。
【0093】
化合物2の製造
化合物2-2(24.9g、33.3mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(200mL)で再結晶化して、化合物2(21.7g、収率95%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C36H20F6N4O4(M+):687.1422;found:687.1420
【0094】
【0095】
化合物3-2の製造
プロピオン酸(500mL)に化合物1-3(20.0g、74.3mmol)と化合物3-1(5.05g、37.1mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(500mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物3-2(21.8g、収率92%)を得た。
【0096】
化合物3の製造
化合物3-2(21.8g、34.2mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(200mL)で再結晶化して、化合物3(19.5g、収率99%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C36H26N4O4(M+):578.1954;found:578.1949
【0097】
【0098】
化合物4-2の製造
プロピオン酸(500mL)に化合物1-3(20.0g、74.3mmol)と化合物4-1(6.57g、37.1mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(500mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物4-2(22.1g、収率88%)を得た。
【0099】
化合物4の製造
化合物4-2(22.1g、32.6mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(200mL)で再結晶化して、化合物4(16.1g、収率80%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C34H20Cl2N4O4(M+):618.0862;found:618.0859
【0100】
【0101】
化合物5-2の製造
プロピオン酸(500mL)に化合物1-3(20.0g、74.3mmol)と化合物5-1(6.57g、37.1mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(500mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物5-2(22.9g、収率91%)を得た。
【0102】
化合物5の製造
化合物5-2(22.9g、32.6mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(200mL)で再結晶化して、化合物5(20.0g、収率96%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C34H20Cl2N4O4(M+):618.0862;found:618.0860
【0103】
【0104】
化合物6-2の製造
プロピオン酸(500mL)に化合物1-3(20.0g、74.3mmol)と化合物6-1(6.24g、37.1mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(500mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物6-2(23.6g、収率95%)を得た。
【0105】
化合物6の製造
化合物6-2(23.6g、35.3mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(200mL)で再結晶化して、化合物6(20.8g、収率97%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C36H26N4O6(M+):610.1852;found:610.1851
【0106】
【0107】
化合物7-2の製造
プロピオン酸(500mL)に化合物1-3(20.0g、74.3mmol)と化合物7-1(7.88g、37.1mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(500mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物7-2(23.6g、収率89%)を得た。
【0108】
化合物7の製造
化合物7-2(23.6g、33.0mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(200mL)で再結晶化して、化合物7(19.9g、収率92%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C42H30N4O4(M+):654.2267;found:654.2264
【0109】
【0110】
化合物8-2の製造
プロピオン酸(500mL)に化合物1-3(20.0g、74.3mmol)と化合物8-1(11.8g、37.1mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(500mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物8-2(29.3g、収率96%)を得た。
【0111】
化合物8の製造
化合物8-2(29.3g、35.6mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(250mL)で再結晶化して、化合物8(24.2g、収率89%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C42H24F6N4O4(M+):762.1702;found:762.1700
【0112】
【0113】
化合物9-2の製造
プロピオン酸(500mL)に化合物1-3(20.0g、74.3mmol)と化合物9-1(11.8g、37.1mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(250mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物9-2(29.3g、収率96%)を得た。
【0114】
化合物9の製造
化合物9-2(29.3g、35.6mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(250mL)で再結晶化して、化合物9(22.0g、収率89%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C40H24Cl2N4O4(M+):694.1175;found:694.1172
【0115】
【0116】
化合物10-2の製造
プロピオン酸(500mL)に化合物1-3(20.0g、74.3mmol)と化合物10-1(14.7g、37.1mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(500mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物10-2(32.7g、収率98%)を得た。
【0117】
化合物10の製造
化合物10-2(32.7g、36.4mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(300mL)で再結晶化して、化合物10(27.4g、収率90%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C48H28F6N4O4(M+):838.2015;found:838.2011
【0118】
【0119】
化合物11-3の製造
窒素雰囲気で化合物11-1(20g、85.4mmol)と化合物1-2(9.7g、42.7mmol)とをTHF(500mL)に溶かし、炭酸カリウム(11.8g、85.4mmol)を水(250mL)に溶かして添加した後、100℃に加熱した。反応混合物が還流される状態でパラジウムテトラトリフェニルホスフィン(1.48g)を入れ、12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、酢酸エチル(250mL)を添加して有機層を分離した。分離した有機層は、無水硫酸マグネシウムを使用して乾燥させ、溶媒は、減圧蒸留装置を通じて除去して、化合物11-3(11.5g、収率80%)を得た。
【0120】
化合物11-5の製造
プロピオン酸(500mL)に化合物11-3(11.5g、34.1mmol)と化合物11-4(4.1g、17.1mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(500mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物11-5(14.4g、収率96%)を得た。
【0121】
化合物11の製造
化合物11-5(14.4g、16.3mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(150mL)で再結晶化して、化合物11(12.7g、収率95%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C38H18F12N4O4(M+):822.1136;found:822.1131
【0122】
【0123】
化合物12-3の製造
窒素雰囲気で化合物12-1(30g、166.6mmol)と化合物1-2(25.2g、111.1mmol)とをTHF(500mL)に溶かし、炭酸カリウム(23.0g、166.6mmol)を水(250mL)に溶かして添加した後、100℃に加熱した。反応混合物が還流される状態でパラジウムテトラトリフェニルホスフィン(3.84g)を入れ、12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、酢酸エチル(250mL)を添加して有機層を分離した。分離した有機層は、無水硫酸マグネシウムを使用して乾燥させ、溶媒は、減圧蒸留装置を通じて除去して、化合物12-3(24.1g、収率77%)を得た。
【0124】
化合物12-5の製造
プロピオン酸(500mL)に化合物12-3(24.1g、58.4mmol)と化合物12-4(13.6g、42.7mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(500mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物12-5(32.6g、収率90%)を製造した。
【0125】
化合物12の製造
化合物12-5(32.6g、38.4mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(250mL)で再結晶化して、化合物12(24.3g、収率80%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C44H28F6N4O4(M+):790.2015;found:790.2012
【0126】
【0127】
化合物13-3の製造
窒素雰囲気で化合物13-1(30g、128.2mmol)と化合物1-2(19.4g、85.4mmol)とをTHF(500mL)に溶かし、炭酸カリウム(17.7g、128.2mmol)を水(250mL)に溶かして添加した後、100℃に加熱した。反応混合物が還流される状態でパラジウムテトラトリフェニルホスフィン(2.96g)を入れ、12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、酢酸エチル(250mL)を添加して有機層を分離した。分離した有機層は、無水硫酸マグネシウムを使用して乾燥させ、溶媒は、減圧蒸留装置を通じて除去して、化合物13-3(22.1g、収率77%)を得た。
【0128】
化合物13-5の製造
プロピオン酸(500mL)に化合物13-3(22.1g、65.8mmol)と化合物13-4(10.5g、32.9mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(500mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物13-5(28.9g、収率92%)を得た。
【0129】
化合物13の製造
化合物13-5(28.9g、30.2mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(250mL)で再結晶化して、化合物13(25.8g、収率95%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C44H22F12N4O4(M+):898.1449;found:898.1444
【0130】
【0131】
化合物14-3の製造
窒素雰囲気で化合物14-1(30g、149.2mmol)と化合物1-2(22.5g、99.5mmol)とをTHF(500mL)に溶かし、炭酸カリウム(20.6g、149.2mmol)を水(250mL)に溶かして添加した後、100℃に加熱した。反応混合物が還流される状態でパラジウムテトラトリフェニルホスフィン(3.43g)を入れ、12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、酢酸エチル(250mL)を添加して有機層を分離した。分離した有機層は、無水硫酸マグネシウムを使用して乾燥させ、溶媒は、減圧蒸留装置を通じて除去して、化合物14-3(26.4g、収率88%)を得た。
【0132】
化合物14-5の製造
プロピオン酸(500mL)に化合物14-3(26.4g、87.2mmol)と化合物14-4(11.0g、43.6mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(500mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物14-5(33.4g、収率93%)を得た。
【0133】
化合物14の製造
化合物14-5(33.4g、40.5mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(300mL)で再結晶化して、化合物14(26.9g、収率87%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C40H22Cl4N4O4(M+):764.0366;found:764.0363
【0134】
【0135】
化合物15-3の製造
化合物15-2(50.0g、0.22mol)をN-メチルピロリドン(NMP)(500mL)に溶かし、化合物15-1(26.6g、0.11mol)を数回分けて添加した後、140℃に加熱して6時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に水(1000mL)を加え、濾過して得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物15-3(19.6g、収率43%)を得た。
【0136】
化合物15-4の製造
化合物15-3(19.6g、47.7mmol)を氷酢酸(300mL)に分散させた後、0℃で過マンガン酸カリウム(18.8g、119mmol)を投入して1時間撹拌した後、常温に昇温して6時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に水(600mL)を投入して濾過した後、得た固体をエタノール(300mL)で再結晶化して、化合物15-4(19.4g、収率92%)を得た。
【0137】
化合物15-5の製造
化合物15-4(19.4g、43.7mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(150mL)で再結晶化して、化合物15-5(14.9g、収率89%)を得た。
【0138】
化合物15-6の製造
プロピオン酸(500mL)に化合物15-5(14.9g、38.9mmol)と化合物1-3(20.9g、77.9mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(500mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物15-6(33.3g、収率97%)を得た。
【0139】
化合物15の製造
化合物15-6(33.3g、37.6mmol)をTHF(400mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(300mL)で再結晶化して、化合物15(28.2g、収率91%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C42H24F6SN4O6(M+):826.1321;found:826.1319
【0140】
【0141】
化合物16-3の製造
化合物16-2(42.7g、0.25mol)をNMP(500mL)に溶かし、化合物16-1(30.0g、0.12mol)を数回分けて添加した後、140℃に加熱して6時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に水(1000mL)を加え、濾過して得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物16-3(20.5g、収率54%)を得た。
【0142】
化合物16-4の製造
化合物16-3(20.5g、67.5mmol)を氷酢酸(300mL)に分散させた後、0℃で過マンガン酸カリウム(26.6g、168.7mmol)を投入して1時間撹拌した後、常温に昇温して6時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に水(600mL)を投入して濾過した後、得た固体をエタノール(200mL)で再結晶化して、化合物16-4(19.7g、収率87%)を得た。
【0143】
化合物16-5の製造
化合物16-4(19.7g、58.6mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(150mL)で再結晶化して、化合物16-5(14.7g、収率91%)を得た。
【0144】
化合物16-6の製造
プロピオン酸(500mL)に化合物16-5(14.7g、53.3mmol)と化合物1-3(28.7g、106.7mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(500mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物16-6(39.4g、収率95%)を得た。
【0145】
化合物16の製造
化合物16-6(39.4g、50.7mmol)をTHF(500mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(350mL)で再結晶化して、化合物16(33.8g、収率93%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C42H30SN4O6(M+):718.1886;found:718.1883
【0146】
【0147】
化合物17-3の製造
化合物17-1(30.0g、0.13mol)と化合物17-2(31.0g、0.2mol)とをジメチルホルムアミド(DMF)(600mL)に溶かし、炭酸カリウムを添加した後、150℃に加熱した。反応終了後、反応混合物に水(1000mL)を投入して濾過した後、得た固体をエタノール(350mL)で再結晶化して、化合物17-3(34.8g、収率76%)を得た。
【0148】
化合物17-4の製造
化合物17-3(34.8g、101.3mmol)を氷酢酸(400mL)に分散させた後、0℃で過マンガン酸カリウム(40.0g、253.3mmol)を投入して1時間撹拌した後、常温に昇温して6時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に水(800mL)を投入して濾過した後、得た固体をエタノール(300mL)で再結晶化して、化合物17-4(32.3g、収率85%)を得た。
【0149】
化合物17-5の製造
化合物17-4(32.3g、85.9mmol)をTHF(300mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノールで再結晶化して、化合物17-5(25.8g、収率95%)を得た。
【0150】
化合物17-6の製造
プロピオン酸(500mL)に化合物17-5(25.8g、81.6mmol)と化合物1-3(43.9g、163.3mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(500mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物17-6(58.7g、収率88%)を得た。
【0151】
化合物17の製造
化合物17-6(58.7g、71.8mmol)をTHF(600mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(500mL)で再結晶化して、化合物17(50.1g、収率92%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C41H25F3SN4O6(M+):758.1447;found:758.1443
【0152】
【0153】
化合物18-2の製造
化合物18-1(15.0g、54.3mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(100mL)で再結晶化して、化合物18-2(11.0g、収率94%)を得た。
【0154】
化合物18-3の製造
プロピオン酸(400mL)に化合物18-2(11.0g、51.0mmol)と化合物1-3(27.4g、102.1mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(400mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物18-3(31.5g、収率86%)を得た。
【0155】
化合物18の製造
化合物18-3(31.5g、43.9mmol)をTHF(300mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(250mL)で再結晶化して、化合物18(26.5g、収率93%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C40H26SN4O4(M+):658.1675;found:658.1670
【0156】
【0157】
化合物19-2の製造
化合物19-1(15.0g、49.3mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(110mL)で再結晶化して、化合物19-2(11.7g、収率98%)を得た。
【0158】
化合物19-3の製造
プロピオン酸(400mL)に化合物19-2(11.7g、48.3mmol)と化合物1-3(26.0g、96.7mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(400mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物19-3(34.9g、収率97%)を得た。
【0159】
化合物19の製造
化合物19-3(34.9g、46.9mmol)をTHF(400mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(300mL)で再結晶化して、化合物19(27.3g、収率85%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C42H30SN4O4(M+):686.1988;found:686.1986
【0160】
【0161】
化合物20-2の製造
化合物20-1(15.0g、36.4mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(150mL)で再結晶化して、化合物20-2(12.1g、収率95%)を得た。
【0162】
化合物20-3の製造
プロピオン酸(300mL)に化合物20-2(12.1g、34.5mmol)と化合物1-3(18.6g、69.1mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(300mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物20-3(26.5g、収率90%)を得た。
【0163】
化合物20の製造
化合物20-3(26.5g、31.1mmol)をTHF(300mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(250mL)で再結晶化して、化合物20(22.4g、収率91%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C42H24F6SN4O4(M+):794.1422;found:794.1419
【0164】
【0165】
化合物21-2の製造
化合物21-1(15.0g、57.6mmol)をTHF(200mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(100mL)で再結晶化して、化合物21-2(10.6g、収率92%)を得た。
【0166】
化合物21-3の製造
プロピオン酸(400mL)に化合物21-2(10.6g、53.0mmol)と化合物1-3(28.5g、106.1mmol)とを投入した後、還流して12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、エタノール(400mL)を添加して生成された固体を分散させた。反応混合物を濾過した後、得た固体を水とエタノール(1:1、体積比)とで洗浄して、化合物21-3(36.1g、収率97%)を得た。
【0167】
化合物21の製造
化合物21-3(36.1g、51.4mmol)をTHF(300mL)に溶かし、Pd/C触媒を添加した後、60℃に加熱した。水素ガスを持続的に注入しながら反応混合物を4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物は、常温に温度を下げた後、濾過して固体を得た。得た固体をエタノール(300mL)で再結晶化して、化合物21(29.4g、収率89%)を得た。
HR LC/MS/MS m/z calcd for C40H26N4O5(M+):642.1903;found:642.1901
【0168】
<実施例1>
窒素気流が流れる撹拌機内に有機溶媒DEAc(N,N-ジエチルアセトアミド)(100mL)を満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態で前記合成例8から製造されたジアミン化合物8 24.2g(0.031mol)を同じ温度で添加して溶解させた。前記化合物8が添加された溶液に酸無水物としてBPDA(ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物)9.12g(0.031mol)を同じ温度で添加して24時間撹拌して、ポリイミド前駆体組成物を得た。
【化64】
【化65】
【0169】
<実施例2>
窒素気流が流れる撹拌機内に有機溶媒DEAc(150mL)を満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態で前記合成例15から製造されたジアミン化合物15 33.8g(0.041mol)を同じ温度で添加して溶解させた。前記化合物15が添加された溶液に酸無水物としてBPDA 12.1g(0.041mol)を同じ温度で添加して24時間撹拌して、ポリイミド前駆体組成物を得た。
【化66】
【0170】
<実施例3>
窒素気流が流れる撹拌機内に有機溶媒DEAc(150mL)を満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態で実施例1に使われたものと同一のジアミン化合物8 30.5g(0.040mol)を同じ温度で添加して溶解させた。前記化合物8が添加された溶液に酸無水物として6-FDA(4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物)17.7g(0.040mol)を同じ温度で添加して24時間撹拌して、ポリイミド前駆体組成物を得た。
【化67】
【0171】
<実施例4>
窒素気流が流れる撹拌機内に有機溶媒DEAc(200mL)を満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態で実施例2に使われたものと同一のジアミン化合物15 37.2g(0.045mol)を同じ温度で添加して溶解させた。前記化合物15が添加された溶液に酸無水物として6-FDA 20.0g(0.045mol)を同じ温度で添加して24時間撹拌して、ポリイミド前駆体組成物を得た。
【0172】
<比較例1>
窒素気流が流れる撹拌機内に有機溶媒DEAc(150mL)を満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態でジアミン化合物としてTFMB(2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)27.8g(0.087mol)を同じ温度で添加して溶解させた。TFMBが添加された溶液に酸無水物としてBPDA 25.6g(0.087mol)を同じ温度で添加して24時間撹拌して、ポリイミド前駆体組成物を得た。
【化68】
【0173】
<比較例2>
窒素気流が流れる撹拌機内に有機溶媒DEAc(100mL)を満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態でジアミン化合物としてTFMB 22.4g(0.070mol)を同じ温度で添加して溶解させた。TFMBが添加された溶液に酸無水物として6-FDA 31.1g(0.070mol)を同じ温度で添加して24時間撹拌して、ポリイミド前駆体組成物を得た。
【0174】
<比較例3>
実施例1と同じ工程を行うが、ジアミン化合物8の代わりに両側のアミド環にアリール環が結合されていない下記の対照化合物Cを使用して、ポリイミド前駆体組成物を得た。
【化69】
【0175】
<比較例4>
実施例3と同じ工程を行うが、ジアミン化合物8の代わりに両側のアミド環にアリール環が結合されていない下記の対照化合物Cを使用して、ポリイミド前駆体組成物を得た。
【化70】
前記実施例1から実施例4及び比較例1から比較例4から収得したそれぞれのポリイミド前駆体組成物中の固形分含量及び粘度を下記表1に記載した。
【0176】
<実験例1>
実施例1から実施例4及び比較例1と比較例2とから製造されたそれぞれのポリイミド前駆体組成物(溶液)をガラス基板上にスピンコーティングした。それぞれのポリイミド前駆体溶液が塗布されたガラス基板をオーブンに入れ、5℃/minの速度で加熱し、80℃で30分、430℃で30分を保持して硬化工程を進行して、それぞれのポリイミドフィルムを製造した。
【0177】
<ポリイミドフィルムの性能評価>
1.熱膨張係数(CTE)
前記実験例1から得たそれぞれのポリイミドフィルムを5Х20mmのサイズの試験片として準備した後、TMA(thermomechanical analyzer)(TA Instruments社のQ400)のアクセサリーを用いてローディングした。実際に測定されるフィルム試験片の長さは、16mmに同様にした。フィルム試験片の引張力を0.02Nに設定し、100~350℃の温度範囲で5℃/minの昇温速度で1次昇温工程を進行した後、350~100℃の温度範囲で4℃/minの冷却速度で冷却(cooling)工程を進行して、熱膨張変化の態様をTMA(TA Instruments社のQ400)で測定した。
【0178】
2.熱分解温度(thermal decomposition temperature)
TGA(thermogravimetric analyzer)(TGA 8000TM、PerkinElmer)を用いて窒素雰囲気でポリイミドフィルム試験片の重量減少率が1%である時の温度(Td_1%)を測定した。
【0179】
ポリイミドフィルムの測定されたCTE及びTd_1%値を下記表1に示した。
【表1】
【0180】
前記表1から分かるように、本発明による新規なジアミン化合物を含むポリイミド前駆体組成物を使用して製造されたポリイミドフィルム(実施例1から実施例4)は、同じ酸無水物を使用する条件で、本発明のジアミン化合物とは異なる構造のジアミン化合物を使用して製造された比較例1から比較例4のポリイミドフィルムに比べて、低いCTE値を示す。これは、本発明によるポリイミドフィルムが加熱による収縮挙動または変化が非常に小さいということを意味し、これにより本発明によるポリイミドフィルムは、優れた耐熱性を有するということが分かる。
【0181】
以上、本発明の内容の特定の部分を多様な実施形態を通じて詳しく記述したところ、当業者にとって、このような具体的記述は、単に望ましい実施形態に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。