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  • 特許-廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/30 20220101AFI20220524BHJP
   C01F 11/46 20060101ALI20220524BHJP
   B03B 5/30 20060101ALI20220524BHJP
   B09B 101/45 20220101ALN20220524BHJP
【FI】
B09B3/30
C01F11/46 C
B03B5/30
B09B101:45
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018200466
(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公開番号】P2020065975
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(73)【特許権者】
【識別番号】512232399
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ・チヨダジプサム
(74)【代理人】
【識別番号】100086830
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 明
(74)【代理人】
【識別番号】100096046
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 みか
(72)【発明者】
【氏名】松尾 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 功
(72)【発明者】
【氏名】片岡 誠
【審査官】越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/176688(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/013807(WO,A1)
【文献】特開平09-271606(JP,A)
【文献】特開昭59-125991(JP,A)
【文献】特開2000-070915(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0241082(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00-5/00
C01F 11/46
B03B 5/28-5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃石膏ボード由来の石膏をか焼し半水及び/又は無水III型の石膏粒体とし、当該石膏粒体を水と混合して石膏スラリーとした後、当該石膏スラリー中に析出した二水石膏粒子を固液分離する、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法において、
石膏粒体を水に混合した後、二水石膏粒子を固液分離する前に、石膏スラリー中の重量異物を重力沈降により除去することを特徴とする、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法。
【請求項2】
混合槽で石膏粒体を水と混合し、析出槽で石膏スラリー中に二水石膏粒子を析出させ、
当該石膏スラリーを異物分離装置に導入し、重力沈降により、石膏スラリーと、重量異物及び石膏スラリーの混合物に分離し、
分離した石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させ、
前記混合物を重量異物と石膏スラリーとに篩い分けし、篩い分けした石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させることを特徴とする、請求項1の廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法。
【請求項3】
前記混合物から重量異物と石膏スラリーへの篩い分けを振動篩により行うと共に、
前記固液分離前に石膏スラリーから紙粉を振動篩により篩い分けし、篩い分けした石膏スラリーを固液分離することを特徴とする、請求項2の廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は廃石膏ボードからの二水石膏の回収に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(WO2012/176688)は、廃石膏ボードからの二水石膏の回収を開示している。廃石膏ボードを破砕機により粉砕し、紙片と石膏とに分離する。また必要に応じ、破砕機の前後に磁選機を配置し、ビス、ネジなどの金属異物を分離し、異物を除去する。異物を除去した石膏をか焼し半水石膏に変化させ、水と混合して石膏スラリーとする。石膏スラリー中に二水石膏粒子を析出させ、振動篩により残存する紙粉を除去し、篩を通過した石膏スラリーを固液分離すると、二水石膏粒子を回収できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2012/176688
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、廃石膏ボードには、石膏ボードの原紙に由来する紙と金属異物の他に、石膏プラスター等に由来する砂利、砂が混入していることに気付いた。また銅、アルミニウム等の非磁性金属は、磁選機では分離できない。か焼後に風力選別等により石膏中の砂、砂利等と金属異物(重量異物)を分離することを試みたが、重量異物に石膏が固着しているため、石膏と重量異物の分離は不十分であった。
【0005】
この発明の課題は、石膏スラリー中の重量異物を効率的に分離することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、廃石膏ボード由来の石膏をか焼し半水及び/又は無水III型の石膏粒体とし、当該石膏粒体を水と混合して石膏スラリーとした後、当該石膏スラリー中に析出した二水石膏粒子を固液分離する、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法において、
石膏粒体を水に混合した後、二水石膏粒子を固液分離する前に、石膏スラリー中の重量異物を重力沈降により除去することを特徴とする。
【0007】
重量異物を風力選別等により乾式で分離することに比べ、石膏スラリー中で重量異物を沈降させると、重量異物とスラリーを容易に分離でき、分離装置に附属する篩等が石膏により目詰まりすることもない。この発明では、二水石膏スラリーから重量異物を効率的に除去できる。
【0008】
好ましくは、混合槽で石膏粒体を水と混合し、析出槽で石膏スラリー中に二水石膏粒子を析出させ、
当該石膏スラリーを異物分離装置に導入し、重力沈降により、石膏スラリーと、重量異物及び石膏スラリーの混合物に分離し、
分離した石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させ、
前記混合物を重量異物と石膏スラリーとに篩い分けし、篩い分けした石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させる。
【0009】
重量異物は、混合槽及び析出槽の撹拌羽根、石膏スラリーを送り出すポンプのインペラー、配管等を摩耗させ、さらに撹拌羽根の回転を不安定にする。そこで析出槽あるいは混合槽から石膏スラリーを異物分離装置に導入し、異物を除去した石膏スラリーを還流させることにより装置の摩耗を抑制し、また安定して撹拌できるようにする。なお固液分離の直前に重量異物を分離しても良い。石膏スラリー中で二水石膏粒子の析出が進むと、重量異物の分離が容易になるので、好ましくは析出槽から石膏スラリーを抽出し、重量異物を分離する。
【0010】
重力沈降で重量異物のみを分離することは難しく、重量異物に石膏スラリーも随伴する。そこで混合物を重量異物と石膏スラリーとに篩い分けし、篩い分けした石膏スラリーを混合槽あるいは析出槽に還流させることにより、石膏スラリーのロスを防止する。
【0011】
特に好ましくは、前記混合物から重量異物と石膏スラリーへの篩い分けを振動篩により行うと共に、前記固液分離前に石膏スラリーから紙粉を振動篩により篩い分けし、篩い分けした石膏スラリーを固液分離する。
【0012】
固液分離前の段階では石膏スラリーから重量異物を篩い分け済みで、重量異物を除去済みの石膏スラリーから紙粉を篩い分けすると、回収した紙粉は製紙原料として再利用できる。また振動篩は、メッシュとは異なり、紙粉が詰まり難い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例の二水石膏の回収方法を示す工程図
図2】実施例での重量異物の分離工程を示す図
図3】変形例での重量異物の分離工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を実施するための実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載とこの分野での周知技術とを参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。
【実施例
【0015】
図1図3に、実施例と変形例を示す。図1において、2は二水石膏の回収装置で、廃石膏ボードを破砕機4により破砕し、粉砕機5により粉砕し、図示しない篩により廃石膏と石膏ボードの紙に由来する紙片とに分離する。そして廃石膏を例えば一旦サイロ6に貯蔵し、か焼機7により例えば130℃以上150℃以下に加熱し、半水石膏及び又は無水III型石膏に変化させる。なおサイロ6は設けなくても良い。か焼機7でか焼した石膏には砂、砂利、金属片等の重量異物と紙粉とが混入し、重量異物に石膏が固着しているため、風力選別等により石膏と重量異物を分離することは難しい。また篩で分離すると、篩の開口以下の重量異物を除去できず、開口を小さくすると石膏により篩が目詰まりしやすい。
【0016】
か焼した石膏を混合槽10へ投入し、後述の異物分離装置12から還流した石膏スラリー、石膏スラリーのろ液及び水と混合し、石膏スラリーとする。石膏スラリーを重力落下あるいはスラリーポンプ等により、図示しない撹拌機を備えた析出槽11へ供給し、析出槽11で石膏スラリーは撹拌され、半水石膏等が溶解し、二水石膏粒子として析出する。重量異物は撹拌機の撹拌羽根、後述のスラリーポンプ21のインペラー、配管等を摩耗させ、また撹拌を不安定にするので、異物分離装置12により除去する。なお析出槽11は多段に限らず1段でも良い。
【0017】
混合槽10あるいは析出槽11の底部あるいは下部から、スラリーポンプ13により石膏スラリーを異物分離装置12へ圧送する。異物分離装置12の底部にスラリー中の重量異物を沈降させ、異物分離装置12の上部から、石膏スラリーを還流路18を介して混合槽10あるいは析出槽11へ還流させる。異物分離装置12内に沈降した重量異物には石膏スラリーが随伴しているので、振動篩14により篩上の重量異物と篩下の石膏スラリーとに分離し、石膏スラリーを還流路19を介して混合槽10あるいは析出槽11へ還流させる。
【0018】
図2に異物分離装置12を拡大して示す。異物分離装置12は例えば縦長のパイプで、異物分離装置12の形状、内径、高さ、邪魔板などの付属物の有無は、スラリーの流速、重量異物の形状と重量等に応じて定める。異物分離装置12は底部あるいは下部にロータリーバルブ17等の強制排出装置を有し、重量異物をロータリーバルブ17により排出する。なおロータリーバルブ17を設けず、底部の排出口から重量異物を自然流出させると、石膏スラリーも多量に流出する。石膏スラリー中で二水石膏粒子の析出が進むと、重量異物の分離が容易になるので、混合槽10のスラリーではなく、析出槽11のスラリーを処理することが好ましい。また重量異物は析出槽11等の底部に滞留するので、析出槽11等の底部あるいは下部から石膏スラリーをスラリーポンプ13へ供給する。
【0019】
重量異物を除去済みで、二水石膏粒子が析出したスラリーをスラリーポンプ21を介して振動篩15へ供給し、紙粉と石膏スラリーを分離する。なお振動篩15を低い位置に設け、重力落下によりスラリーを供給しても良い。分離した紙粉には重量異物が含まれていないので、製紙材料として再利用できる。石膏スラリーをフィルタープレス16等の固液分離装置へ供給し、二水石膏粒子を回収し、ろ液を還流路20を介して混合槽10へ供給する。また篩い分け、ろ過などにより失われた水を、還流路20等から補給する。
【0020】
異物分離装置は図2の構造のものに限らない。例えば図3の異物分離装置22のように、傾斜した流路を石膏スラリーが流れる間に重量異物を沈降させ、沈降部23から分離するようにしても良い。さらに析出槽11の底部外周等にロータリーバルブ等の強制排出装置を設けて、重量異物を分離しても良い。また異物分離装置12,22を振動篩15の直上流側に配置し、重量異物を除去した石膏スラリーを振動篩15に供給しても良い。
【0021】
異物分離装置12,22を設けることにより、スラリー中の重量異物を除去し、撹拌羽根、インペラー、配管等の摩耗を抑制すると共に、安定して撹拌できるようにし、さらに振動篩15で重量異物を含まない紙粉と石膏スラリーを分離できるようにする。
【0022】
実験例
半水石膏5t/hと、ろ液と水の混合物10t/hを混合槽10へ投入し、合計容積175mの析出槽11で二水石膏粒子を析出させた。析出装置11の底部から石膏スラリーを15m/hで抽出し、異物分離装置12に供給し、重量異物を濃縮した石膏スラリーを排出し、重量異物を除去済みの石膏スラリーを析出槽11等へ還流した。強制排出装置から排出した石膏スラリーを開口1mmの振動篩14により篩い分けした。
【0023】
乾式での篩い分けと異なりスラリーから重量異物を分離するので、開口1mmの篩でも二水石膏による目詰まりは生じなかった。なお篩を多量の石膏スラリーが通過したので、析出槽11へ還流させた。重量異物の多くは砂利と砂で、石膏プラスターの骨材であり、サイズは1~3mm程度、石膏の付着量は僅かで、重量は乾燥重量で40kg/hであった。
【0024】
析出槽11から12m/hで石膏スラリーを抽出し、振動篩15により紙粉を除去し、紙粉を除去済みのスラリーをフィルタープレス16により固液分離した。振動篩15の開口は0.5mmで、乾燥重量で15kg/hの軽量異物を分離した。軽量異物中の灰分は22mass%で、石膏と砂に由来していた。灰分がこのレベルであれば、製紙用にリサイクルが可能である。
【0025】
石膏スラリーを析出槽11と異物分離装置12の間で循環させたので、スラリーポンプのインペラー、配管、撹拌羽根の損傷を抑制できた。また析出槽11の底部に蓄積した重量異物のため撹拌が停止することもなかった。一方、異物分離装置12を設置する前は、インペラー等の損傷が著しく、撹拌羽根の動作も不安定であった。さらに振動篩15で除去した異物中の灰分は78mass%で、これは最終処分場で処理するしかなかった。
【符号の説明】
【0026】
2 回収装置
4 破砕機
5 粉砕機
6 サイロ
7 か焼機
10 混合槽
11 析出槽
12,22 異物分離装置
13.21 スラリーポンプ
14,15 振動篩
16 フィルタープレス
17 ロータリーバルブ
18~20 還流路
23 沈降部
図1
図2
図3