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特許7078741リチウム金属電池用負極及びそれを含むリチウム金属電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】リチウム金属電池用負極及びそれを含むリチウム金属電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20220524BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20220524BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220524BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20220524BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220524BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220524BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20220524BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20220524BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/052
H01M10/0566
H01M10/0569
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020549522
(86)(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 KR2018012345
(87)【国際公開番号】W WO2019112167
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-06-03
(31)【優先権主張番号】10-2017-0165353
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サン・イル・ハン
(72)【発明者】
【氏名】イル・ソク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ギュ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヒ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ギュ・チョ
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-520926(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0064409(US,A1)
【文献】特開2015-195171(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0066848(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム金属負極を含む第1負極と、
前記第1負極上に配置され、炭素系物質を含むコーティング層を含む第2負極と、を含み、
前記炭素系物質は、グラフェン及びシリコン系物質を含む球状のグラフェンボールであり、
前記シリコン系物質は、SiO(1<x<3)であることを特徴とするリチウム金属電池用負極。
【請求項2】
前記グラフェンボールは、シリコン系物質を、グラフェンボールの総重量を基準として、50ないし80重量%の量で含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウム金属電池用負極。
【請求項3】
前記グラフェンボールの比表面積は、80ないし120m/gであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム金属電池用負極。
【請求項4】
前記グラフェンボールの常温(25℃)での電気伝導度は、10ないし50S/cmであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム金属電池用負極。
【請求項5】
前記コーティング層は、ハードカーボンまたはソフトカーボンを含むカーボン層であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム金属電池用負極。
【請求項6】
前記コーティング層は、高分子バインダ及びリチウム塩のうち一つ以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウム金属電池用負極。
【請求項7】
前記高分子バインダは、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン及びスチレンブタジエンゴム系ポリマーのうち選択された一つ以上であることを特徴とする請求項6に記載のリチウム金属電池用負極。
【請求項8】
前記リチウム塩は、LiDFOB,LiFSI,LiSCN,LiN(CN),LiClO,LiBF,LiAsF,LiPF,LiCFSO,LiC(CFSO,LiN(SO,LiN(SOCF,LiN(SOF),LiSbF、LiPF(CFCF,LiPF(CF及びLiB(Cのうち選択された一つ以上であることを特徴とする請求項6に記載のリチウム金属電池用負極。
【請求項9】
前記コーティング層の厚さは、2ないし100μmであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム金属電池用負極。
【請求項10】
前記第2負極上に、固体電解質界面(Solid electrolyte interface: SEI)被膜をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウム金属電池用負極。
【請求項11】
正極と、
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載のリチウム金属電池用負極と、
前記正極と負極との間に介在される電解質と、を含むことを特徴とするリチウム金属電池。
【請求項12】
前記正極は、下記化学式1で表示される正極活物質を含み、
[化1]LiCo1-x
前記式中、
Mは、Ni,Mn,Al,Cu,Fe,Mg,Cr,Zn,B及びGaからなる群から選択された一つ以上であり、
0.5<x<1である、
ことを特徴とする請求項11に記載のリチウム金属電池。
【請求項13】
前記電解質は、リチウム塩及び有機溶媒を含む液体電解質であることを特徴とする請求項11に記載のリチウム金属電池。
【請求項14】
前記有機溶媒は、カーボネート系化合物またはエーテル系化合物であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム金属電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム金属電池用負極及びそれを含むリチウム金属電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、現在商用化された二次電池のうち、エネルギー密度が最も高い高性能の二次電池であり、例えば、電気自動車のような様々な分野で使用できる。
【0003】
該リチウム二次電池の負極としては、リチウム金属が用いられる。そのようなリチウム金属を負極として用いる場合、グラファイトなどを使用する場合と異なり、持続的にリチウム被膜が形成され、リチウムが枯渇するという問題点がある。また、リチウムの高い反応性により、充放電時に液体電解質との反応性が高く、リチウム金属の表面上にデンドライトが形成されるので、リチウム金属を採用したリチウム二次電池の寿命及び安定性が低下してしまい、それに対する改善が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一側面は、リチウム金属電池用負極を提供することである。
【0005】
他の側面は、前述した負極を含み、セル性能が改善されたリチウム金属電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面によって、リチウム金属負極を含む第1負極と、前記第1負極上に配置され、炭素系物質を含むコーティング層を含む第2負極とを含むリチウム金属電池用負極が提供される。
【0007】
他の側面によって、前述した負極、正極及びそれらの間に介在される電解質を含むリチウム金属電池が提供される
【発明の効果】
【0008】
一具現例によるリチウム金属電池用負極を利用すれば、リチウム金属負極の表面に堅固なSEI被膜を形成することにより、リチウム金属負極の表面にリチウム被膜が形成され、リチウムが枯渇するという問題点を解決することができる。その結果、リチウム金属電池の充放電効率を改善することができる。
【0009】
また、一具現例によるリチウム金属電池用負極を利用すれば、リチウム金属負極の表面でリチウムデンドライトが成長することを効果的に抑制して、リチウム電着密度が増加する。その結果、寿命が向上したリチウム金属電池を製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一具現例による負極の構造を概略的に示す図面である。
図2】他の具現例による負極の構造を概略的に示す図面である。
図3】製造例1で製造されたグラフェンボールの電子走査顕微鏡写真である。
図4】実施例1で製造されたコインセルについての測定結果を示すグラフである。
図5図4のアノーディックピークを拡大したグラフである。
図6】比較例1で製造されたコインセルについての測定結果を示すグラフである。
図7】実施例1及び比較例1で製造されたコインセルの電圧プロファイルを示す図面である。
図8】実施例2及び3のフルセルについてのサイクル特性を示すグラフである。
図9】比較例2のフルセルについてのサイクル特性を示すグラフである。
図10】実施例2、3及び5のフルセルについてのサイクル特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付された図面を参照して、例示的なリチウム金属電池用負極、それを含むリチウム金属電池及びその製造方法について、より詳細に説明する。
【0012】
リチウム金属負極を含む第1負極と、前記第1負極上に配置され、炭素系物質を含むコーティング層を含む第2負極とを含むリチウム金属電池用負極が提供される。
【0013】
リチウム金属負極を含むリチウム金属電池の従来の最大の問題は、電解質とリチウムとの反応性により、電池の充放電中にリチウム密度が低くなり、リチウム金属が多孔性のものとなることである。また、リチウム金属負極の表面に堅固なSEI被膜が形成されず、持続的にリチウム被膜が形成され、リチウムが枯渇するという問題点がある。さらに、リチウム金属負極を有するリチウム金属電池は、電池の駆動中にリチウム金属負極の表面にリチウムデンドライトが成長しつつ、該リチウムデンドライトが正極に付き、電池の作動が止まるという問題点が生じる。
【0014】
本発明では、前述した問題点を解決するために、炭素系物質をリチウム金属負極の表面に様々な方法により積層して、表面が改質されたリチウム金属電池用負極を提供する。そのような負極を利用すれば、リチウム金属負極の表面に形成された炭素系物質を含むコーティング層と、前記炭素系物質により形成された堅固なSEI被膜により、リチウムの枯渇を抑制することができる。それによって、リチウムの電着/脱離中に充放電効率が改善される。
【0015】
また、前記負極を利用すれば、電池の駆動中に生じるリチウムデンドライトの成長を抑制し、局部的にデンドライトが形成されることを防ぎ、均一に成長するように制御することにより、電池の性能を向上させる。さらに、前記負極は、リチウム金属負極上で、リチウムイオンの移動に優れ、抵抗が低く、かつ機械的強度に優れる。
【0016】
一具現例において、炭素系物質は、グラフェン及びシリコン系物質を含む球状のグラフェンボールであってもよい。
【0017】
図1は、一具現例による負極の構造を概略的に示す図面である。
【0018】
図1を参照すれば、一具現例によるリチウム金属電池用負極は、リチウム金属負極110上に配置された、グラフェン及びシリコン系物質を含む球状のグラフェンボール121を含むコーティング層120を含み、コーティング層120上に配置されたSEI被膜130を含む。
【0019】
前記シリコン系物質は、SiO(1<x<3)であってもよい。例えば、前記シリコン系物質は、SiOである。前記シリコン系物質は、電気伝導度がグラフェンに比べて低いという問題点があるが、リチウムを色々な形態のリチウムシリサイド(LiSi)にトラッピング可能であり、リチウム保護膜として使用する場合、リチウムの枯渇を防止する効果を発揮することができる。
【0020】
前記グラフェンボールは、シリコン系物質を、グラフェンボールの総重量を基準として、50ないし80重量%の量で含んでもよい。例えば、前記グラフェンボールは、シリコン系物質を、グラフェンボールの総重量を基準として、60ないし80重量%の量で含む。例えば、前記グラフェンボールは、シリコン系物質を、グラフェンボールの総重量を基準として、65ないし75重量%の量で含む。
【0021】
前記範囲を逸脱して、シリコン系物質が過度に多く含まれる場合には、グラフェンボールの比表面積が大きくなり、電気伝導度が非常に低くなるので、それを採用する電池の特性が低下するという問題点があり、逆にシリコン系物質が過度に少なく含まれる場合には、外部に流出されるリチウムをトラッピングすることができないという問題点がある。
【0022】
前記グラフェンボールの比表面積は、80ないし120m/gであってもよい。例えば、前記グラフェンボールの比表面積は、90ないし110m/gである。
【0023】
前記グラフェンボールの常温(約25℃)での電気伝導度は、10ないし50S/cmであってもよい。例えば、前記グラフェンボールの常温(約25℃)での電気伝導度は、20ないし50S/cmである。
【0024】
前記のように、グラフェンボールを含むことにより、電気伝導度が向上し、低率(例えば、0.1C)での容量に比べて、1C以上の高率で誘発される容量の低下を大幅に減らすことができる。
【0025】
他の具現例において、前記コーティング層は、ハードカーボンまたはソフトカーボンを含むカーボン層であってもよい。
【0026】
図2は、前記カーボン層を含む負極の構造を概略的に示す図面である。
【0027】
図2を参照すれば、一具現例によるリチウム金属電池用負極は、リチウム金属負極210上にカーボン層220を含む。
【0028】
一つの具体例において、前記コーティング層の厚さは、2ないし100μmであってもよい。例えば、前記コーティング層の厚さは、5ないし80μmであるが、それに限定されるものではない。例えば、前記コーティング層の厚さは、30ないし70μmであるが、それに限定されるものではない。例えば、前記コーティング層の厚さは、50ないし70μmであるが、それに限定されるものではない。
【0029】
前記範囲を逸脱して、前記コーティング層の厚さが過度に薄い場合、本発明の所望の効果を発揮することが困難であり、一方、前記コーティング層の厚さが過度に厚い場合、負極の厚さが不要に厚くなるので、厚さ増加によるオーム抵抗が増加する。
【0030】
一つの具体例において、前記コーティング層は、高分子バインダ及びリチウム塩のうち一つ以上をさらに含んでもよい。例えば、前記コーティング層は、高分子バインダ及びリチウム塩をさらに含む。前記コーティング層は、高分子バインダまたはリチウム塩をさらに含むことにより、高い電着力及び伝導性が得られ、充放電サイクルが反復されることによる容量維持率を向上させることができる。
【0031】
前記高分子バインダは、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン及びスチレンブタジエンゴム系ポリマーのうち選択された一つ以上であってもよい。例えば、前記高分子バインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)であるが、それに限定されるものではない。
【0032】
前記リチウム塩は、LiDFOB,LiFSI,LiSCN,LiN(CN),LiClO,LiBF,LiAsF,LiPF,LiCFSO,LiC(CFSO,LiN(SO,LiN(SOCF,LiN(SOF),LiSbF,LiPF(CFCF,LiPF(CF及びLiB(Cのうち選択された一つ以上であってもよい。
【0033】
一具現例によれば、前記コーティング層は、液体電解質をさらに含むことにより、コーティング層内のイオン伝導性経路を形成することができる。
【0034】
前記液体電解質は、有機溶媒、イオン性液体及びリチウム塩のうち選択された一つ以上をさらに含む。有機溶媒は、カーボネート系化合物、グライム系化合物、ジオキソラン系化合物、ジメチルエーテルまたは1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテルなどのエーテル系化合物がある。当該有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジメチレングリコールジメチルエーテル、トリメチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、スクシノニトリル、スルホラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、アジポニトリル及び1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテルのうち選択された一つ以上が挙げられる。
【0035】
前記イオン性液体は、常温以下の融点を有しており、イオンのみで構成される、常温で液状の塩、または常温溶融塩をいう。イオン性液体は、例えば、N-メチル-N-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-ブチル-N-メチルピロリジウムビス(3-トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド及び1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドからなる群から選択された一つ以上である。
【0036】
一具現例による保護膜が、カーボネート系化合物のような有機溶媒を含有する液体電解質を共に使用する場合、保護膜は、カーボネート系化合物のような有機溶媒、またはそれを含有する電解質に対して非常に安定しているので、耐化学性に優れる。
【0037】
一具現例によるリチウム金属電池は、セパレータをさらに含んでもよい。セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、またはそれらの二層以上の多層膜が使われ、ポリエチレン/ポリプロピレンの二層のセパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの三層のセパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの三層のセパレータなどのような混合多層膜が使われてもよい。前記セパレータには、リチウム塩と有機溶媒とを含有する電解質がさらに付加されてもよい。
【0038】
正極は、多孔性正極でもある。多孔性正極は、気孔を含有しているか、または意図的に正極の形成を排除せずに、正極の内部に、毛細管現象などによって液体電解質が浸透される正極も含む。
【0039】
例えば、多孔性正極は、正極活物質、導電剤、バインダ及び溶媒を含む正極活物質組成物をコーティング及び乾燥して得られる正極を含む。そのように得られた正極は、正極活物質粒子の間に存在する気孔を含有してもよい。そのような多孔性正極には、液体電解質が含浸される。
【0040】
他の具現例によれば、正極は、液体電解質、ゲル電解質または固体電解質を含んでもよい。前記液体電解質、ゲル電解質及び固体電解質は、当該技術分野でリチウム電池の電解質として使用可能なものであり、充放電過程で、正極活物質と反応して、正極活物質を劣化させないものであれば、いずれも可能である。
【0041】
他の側面によって、リチウム金属電池用負極の製造方法が提供される。
【0042】
一具現例において、シリコン系物質とグラフェンとを混合して、グラフェンボールを製造するステップと、前記グラフェンボールをポリマーフィルム上に静電気を用いて分散させるステップと、前記ポリマーフィルムをリチウム金属の表面上に置いて加圧し、前記グラフェンボールを前記リチウム金属の表面上に転写させるステップとを含むリチウム金属電池用負極を製造する方法が提供される。
【0043】
前記ポリマーフィルムは、PETフィルムまたはポリオレフィンフィルムでもあるが、それらに限定されるものではない。
【0044】
他の具現例において、シリコン系物質とグラフェンとを混合して、グラフェンボールを製造するステップと、溶媒に前記グラフェンボールを添加して、グラフェンボールスラリーを製造するステップと、前記グラフェンボールスラリーをリチウム金属の表面上に塗布後、乾燥するステップとを含むリチウム金属電池用負極を製造する方法が提供される。
【0045】
前記グラフェンボールスラリーは、溶媒及びグラフェンボールを含む。グラフェンボールについての説明は、本明細書に記載された通りであり、溶媒は、特に限定されず、当該技術分野で有機溶媒として使われるものであれば、いずれも使用できる。例えば、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、2-メチルテトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、コロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテルまたはそれらの混合物などが使用できる。有機溶媒の含量は、グラフェンボール100重量部を基準として、100ないし3000重量部である。
【0046】
前記グラフェンボールスラリーは、高分子バインダ及びリチウム塩のうち選択された一つ以上をさらに含んでもよい。例えば、前記グラフェンボールスラリーは、高分子バインダ及びリチウム塩をさらに含む。
【0047】
前記高分子バインダ及びリチウム塩の種類は、特に限定されないが、本明細書に記載されたところと同じ種類のものであってもよい。
【0048】
前記グラフェンボールスラリー中の高分子バインダは、グラフェンボールスラリーの総重量を基準として、1ないし5重量%の量で含まれるが、それに限定されるものではない。例えば、前記グラフェンボールスラリー中の高分子バインダは、グラフェンボールスラリーの総重量を基準として、2ないし4重量%の量で含まれるが、それに限定されるものではない。例えば、前記グラフェンボールスラリー中の高分子バインダは、グラフェンボールスラリーの総重量を基準として、2ないし3重量%の量で含まれるが、それに限定されるものではない。
【0049】
前記グラフェンボールスラリー中のリチウム塩は、高分子バインダの量を基準として、10ないし30重量%の量で含まれるが、それに限定されるものではない。例えば、前記グラフェンボールスラリー中のリチウム塩は、高分子バインダの量を基準として、15ないし25重量%の量で含まれるが、それに限定されるものではない。
【0050】
前記グラフェンボールスラリーは、スラリーの製造時に通常利用可能な方法であれば限定されないが、例えば、ソニケーションにより製造される。
【0051】
前記グラフェンボールスラリーを用いて、コーティング層を形成する場合、グラフェンボールスラリーをリチウム金属の少なくとも一部分に塗布してから、それを乾燥して、リチウム電池用負極を製造することができる。
【0052】
前記塗布方法は、保護膜の形成時に通常利用可能な方法であれば、いずれも使用可能である。例えば、スピンコート、ロールコート、カーテンコート、押出、キャスティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、ドクターブレードなどの方法が用いられる。
【0053】
さらに他の具現例において、カーボン層をリチウム金属上に直接圧延して塗布することにより、リチウム金属電池用負極を製造することができる。
【0054】
さらに他の側面によって、正極と、一具現例によるリチウム金属電池用負極を採用した負極と、前記正極と負極との間に介在された電解質とを含むリチウム金属電池が提供される。
【0055】
前記正極は、銅金属、または下記化学式1で表示される正極活物質を含む。
【0056】
[化1]LiCo1-x
【0057】
前記式中、Mは、Ni,Mn,Al,Cu,Fe,Mg,Cr,Zn,B及びGaからなる群から選択された一つ以上であり、0.5<x<1である。
【0058】
一具現例において、前記正極は、前記化学式1で表示される正極活物質を含んでもよい。
【0059】
前記電解質は、液体電解質、固体電解質及びゲル電解質のうち選択された一つ以上をさらに含む混合電解質タイプでもある。リチウム金属電池は、セパレータをさらに含んでもよい。
【0060】
液体電解質、高分子イオン性液体、ゲル電解質及び固体電解質のうち選択された一つ以上は、正極と電解質との間に介在されてもよい。前述したように、液体電解質、高分子イオン性液体、固体電解質及びゲル電解質のうち選択された一つ以上をさらに含めば、電解質の伝導度及び機械的物性をさらに改善することができる。
【0061】
保護膜は、液体電解質をさらに含み、イオン伝導性経路を形成する。前記液体電解質は、有機溶媒、イオン性液体及びリチウム塩のうち選択された一つ以上をさらに含む。例えば、前記液体電解質は、リチウム塩及び有機溶媒を含む。
【0062】
前記有機溶媒は、カーボネート系化合物、グライム系化合物、ジオキソラン系化合物、エーテル系化合物などがある。カーボネート系化合物は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジエチルカーボネートまたはエチルメチルカーボネートがある。
【0063】
前記グライム系化合物は、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME、polyglyme)、テトラ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(TEGDME、tetraglyme)、トリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(triglyme)、ポリ(エチレングリコール)ジラウレート(PEGDL)、ポリ(エチレングリコール)モノアクリレート(PEGMA)、及びポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)から選択された一種以上がある。
【0064】
ジオキソラン系化合物の例としては、3-ジオキソラン、4,5-ジエチル-ジオキソラン、4,5-ジメチル-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン及び4-エチル-1,3-ジオキソランからなる群から選択された一つ以上がある。
【0065】
エーテル系化合物の例としては、ジメチルエーテル(DME)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテルなどがある。
【0066】
例えば、前記有機溶媒は、カーボネート系化合物またはエーテル系化合物であるが、それに限定されるものではない。
【0067】
前記ゲル電解質は、ゲル形態を有する電解質であり、当該技術分野で周知のものであれば、いずれも使用可能である。ゲル電解質は、例えば、高分子と、高分子イオン性液体とを含有してもよい。ここで、高分子は、例えば、固体グラフト(ブロック)コポリマー電解質でもある。
【0068】
固体電解質は、有機固体電解質または無機固体電解質である。
【0069】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、リン酸エステル高分子、ポリアジテーションリシン、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使われる。
【0070】
前記無機固体電解質としては、LiN,LiI,LiNI,LiN-LiI-LiOH,LiSiS,LiSiO,LiSiO-LiI-LiOH,LiPO-LiS-SiS,CuN,LiPON,LiS.GeS.Ga,LiO.11Al,(Na,Li)1+xTi2-xAl(PO(0.1≦x≦0.9),Li1+xHf2-xAl(PO(0.1≦x≦0.9),NaZrSiPO12,LiZrSiPO12,NaZrP12,NaTiP12,NaFe12,NaNbP12,Na-Silicates,Li0.3La0.5TiO,NaMSi12(Mは、Nd,Gd,Dyなどの希土類元素である),LiZrP12,LiTiP12,LiFe12,LiNbP12,Li1+x(M,Al,Ga)x(Ge1-yTiy)2-x(PO(X≦0.8、0≦Y≦1.0、Mは、Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,TmまたはYbである),Li1+x+yTi2-xSi3-y12(0<x≦0.4、0<y≦0.6、Qは、AlまたはGaである),LiBaLaTa12,LiLaZr12,LiLaNb12,LiLa12(Mは、Nb,Taである),Li7+xLa3-xZr12(0<x<3、Aは、Znである)などが使われる。
【0071】
前記リチウム金属負極は、リチウム金属薄膜電極またはリチウム金属合金電極であり、前記電解質と正極との間に、有機溶媒、イオン性液体及びリチウム塩のうち選択された一つ以上を含有した液体電解質がさらに含まれてもよい。
【0072】
リチウム金属電池は、電圧、容量及びエネルギー密度が高く、携帯電話、ノート型パソコン、風力や太陽光などの発電設備の蓄電池、電気自動車、無停電電源装置、家庭用蓄電池などの分野で広く用いられている。
【0073】
一具現例によるリチウム金属電池は、作動電圧が4.0ないし5.0V、例えば、4.5ないし5.0Vである。
【0074】
一具現例による負極を含むリチウム金属電池を構成する各構成要素、及び当該構成要素を有するリチウム金属電池の製造方法について、より詳細に説明すれば、次の通りである。
【0075】
正極を製造するための正極活物質として、前述した銅金属、または化学式1で表示される化合物外に、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウム鉄リン酸化物及びリチウムマンガン酸化物からなる群のうち選択された一つ以上をさらに含んでもよいが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で利用可能な全ての正極活物質が使われてもよい。
【0076】
例えば、Li1-b(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5である);Li1-b2-c(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2-b4-c(前記式中、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiNi1-b-cCoα(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1-b-cCo2-αα(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cCo2-αα(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnα(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1-b-cMn2-αα(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMn2-αα(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である);LiNiCoMn(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である);LiNiG(前記式中、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiCoG(前記式中、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiMnG(前記式中、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiMn(前記式中、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiIO;LiNiVO;Li(3-f)(PO(0≦f≦2);Li(3-f)Fe(PO(0≦f≦2);LiFePOの化学式のうちいずれか一つで表現される化合物を使用できる。
【0077】
前記化学式において、Aは、Ni,Co,Mnまたはそれらの組み合わせであり、Bは、Al,Ni,Co,Mn,Cr,Fe,Mg,Sr,V,希土類元素またはそれらの組み合わせであり、Dは、O,F,S,Pまたはそれらの組み合わせであり、Eは、Co,Mnまたはそれらの組み合わせであり、Fは、F,S,Pまたはそれらの組み合わせであり、Gは、Al,Cr,Mn,Fe,Mg,La,Ce,Sr,Vまたはそれらの組み合わせであり、Qは、Ti,Mo,Mnまたはそれらの組み合わせであり、Iは、Cr,V,Fe,Sc,Yまたはそれらの組み合わせであり、Jは、V,Cr,Mn,Co,Ni,Cuまたはそれらの組み合わせである。
【0078】
下記方法によって正極が準備される。
【0079】
正極活物質、バインダ及び溶媒が混合された正極活物質組成物が準備される。
【0080】
正極活物質組成物には、導電剤がさらに付加されてもよい。
【0081】
前記正極活物質組成物が、金属集電体上に直接コーティング及び乾燥され、正極板が製造される。あるいは、前記正極活物質組成物が別途の支持体上にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされて、正極板が製造される。
【0082】
前記バインダは、活物質と導電剤などとの結合、及び集電体への結合に一助となる成分であり、正極活物質の総重量100重量部を基準として、1ないし50重量部で添加する。そのようなバインダの非制限的な例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン・ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。その含量は、正極活物質の総重量100重量部を基準として、2ないし5重量部を使用する。バインダの含量が前記範囲である時、集電体への活物質層の結着力が良好である。
【0083】
前記導電剤としては、当該電池に化学的変化を誘発せずに、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボン系物質;炭素ファイバや金属ファイバなどの導電性ファイバ;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカ;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使われてもよい。
【0084】
前記導電剤の含量は、正極活物質の総重量100重量部を基準として、1ないし10重量部、例えば、2ないし5重量部を使用する。導電剤の含量が前記範囲である時、最終的に得られた電極の伝導度特性に優れる。
【0085】
前記溶媒の非制限的な例として、N-メチルピロリドンなどを使用する。
【0086】
前記溶媒の含量は、正極活物質100重量部を基準として、100ないし2000重量部を使用する。溶媒の含量が前記範囲である時、活物質層を形成するための作業が容易である。
【0087】
負極は、前述したように、リチウム金属薄膜またはリチウム合金薄膜でもある。
【0088】
リチウム合金は、リチウム、及びリチウムと合金可能な金属/準金属を含んでもよい。例えば、前記リチウムと合金可能な金属/準金属は、Si,Sn,Al,Ge,Pb,Bi,Sb,Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Siではない)、Sn-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Snではない)などである。前記元素Yとしては、Mg,Ca,Sr,Ba,Ra,Sc,Y,Ti,Zr,Hf,Rf,V,Nb,Ta,Db,Cr,Mo,W,Sg,Tc,Re,Bh,Fe,Pb,Ru,Os,Hs,Rh,Ir,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Zn,Cd,B,Al,Ga,Sn,In,Ge,P,As,Sb,Bi,S,Se,Te,Poまたはそれらの組み合わせである。
【0089】
電解質としては、リチウム電池において通常使われるセパレータ及び/またはリチウム塩含有非水電解質が使われてもよい。
【0090】
セパレータは、高いイオン透過度と機械的強度とを有する絶縁性の薄膜が使われる。セパレータの気孔径は、一般的に、0.01~10μmであり、厚みは、一般的に、5~20μmである。そのようなセパレータとしては、例えば、ポリプロピレンなどのオレフィン系高分子;ガラスファイバまたはポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが使われる。電解質として、固体高分子電解質が使われる場合には、固体高分子電解質がセパレータを兼ねることも可能である。
【0091】
前記セパレータの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、またはそれらの二層以上の多層膜が使われ、ポリエチレン/ポリプロピレンの二層のセパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの三層のセパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの三層のセパレータのような混合多層膜が挙げられる。
【0092】
前記リチウム塩含有非水電解質は、非水電解質とリチウム塩とからなる。
【0093】
非水電解質としては、非水電解液、有機固体電解質または無機固体電解質が使われる。
【0094】
前記非水電解液は、有機溶媒を含む。そのような有機溶媒は、当該技術分野で、有機溶媒として使われるものであれば、いずれも使用可能である。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテルまたはそれらの混合物などである。そして、前記リチウム塩の例としては、例えば、LiPF,LiBF,LiSbF,LiAsF,LiClO,LiCFSO,Li(CFSON,Li(FSON,LiCSO,LiAlO,LiAlCl,LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(但し、x及びyは、自然数である),LiCl,LiIまたはそれらの混合物がある。
【0095】
さらに、非水系電解質には、充放電特性、難燃性などの改善を目的として、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム、ヘキサメチルホスホアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されることも可能である。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含めることも可能である。
【0096】
一具現例によるリチウム電池は、容量及び寿命特性に優れ、小型デバイスの電源として使われる電池セルに使用可能であるだけでなく、中大型デバイスの電源として使われる多数の電池セルを含む中大型電池パックまたは電池モジュールに、単位電池としても使用可能である。
【0097】
前記中大型デバイスの例としては、電気自動車(Electric Vehicle: EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle: HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle: PHEV)などを含む電気車、電気自転車(E-bike)、電気スクータ(E-scooter)を含む電気二輪車、電動工具、電力保存装置などが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【実施例
【0098】
以下の実施例及び比較例により、さらに詳細に説明する。但し、実施例は、例示するためのものであり、それらだけで限定されるものではない。
【0099】
[製造例1:グラフェンボールの製造]
グラフェンとSiOとを、グラフェンの含量がSiOの重量を基準として42.5重量%となるように定量して混合し、それを約105℃で1200分間反応して、グラフェンボールを製造した。
【0100】
製造例1で製造されたグラフェンボールの電子走査顕微鏡写真を図3に示した。
【0101】
[実施例1:リチウム金属電池の製造]
製造例1で製造されたグラフェンボールを、静電気を用いてPETフィルム上に分散させた後、圧縮加圧により、リチウム金属負極上に転写させ、負極を製造した。
【0102】
前記で製造された負極を負極として使用し、銅金属を正極として使用し、電解質として、FEC及びDECの混合溶媒(3:7)に1M LiFOBを混合したものを使用して、コインセルを製造した。
【0103】
[比較例1:リチウム金属電池の製造]
負極として、前記実施例1の負極の代わりに、グラフェンボールの転写過程を経ていないリチウム金属を使用したことを除いては、実施例1と同様な方法により、コインセルを製造した。
【0104】
[評価例1:循環電圧電流法測定]
実施例1及び比較例1で製造されたコインセルに対して、0.1mV/sのスキャン速度で循環電圧電流法測定を実施した。
【0105】
実施例1で製造されたコインセルについての測定結果を図4に示し、図4のうち、0V以下の区間、すなわち、アノーディックピークを拡大したグラフを図5に示し、比較例1で製造されたコインセルについての測定結果を図6に示した。
【0106】
図4ないし図6を参照すれば、実施例1で製造されたコインセルは、リチウム電着を表すカソーディックピークが、-0.2Vから-0.1Vに移動し、サイクルが進むほど、比較例1に比べてさらに高い電位でリチウム電着を表した。すなわち、実施例1のコインセルにおいて、リチウム電着がさらに早く起こるということが分かる。それは、実施例1の負極が、効果的なリチウムホストとしての役割を行っていることを意味する。
【0107】
また、図4及び図5を参照すれば、アノーディックピークも、サイクルが進むにつれて、さらに高い電位に移動し、それは、実施例1のコインセルにおいて、グラフェンボール内のSiO2へのリチウムトラッピングに起因して、リチウムの枯渇が防止されることを表す。
【0108】
[評価例2:初期充放電効率測定]
実施例1及び比較例1によって製造されたコインセルに対して、それぞれ25℃で、0.8mAの電流で、電圧が4.40V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.40Vを維持しながら、0.5Vまたは8mAhの電流でカットオフした。10分間休止期間を有した後、放電時に電圧が3.0V(vs.Li)に至るまで、0.8mAの定電流で放電した(化成段階、最初のサイクル)。
【0109】
前記化成段階を経たリチウム金属電池に対し、常温(25℃)で、リチウム金属対比で、3.0~4.4Vの電圧範囲で、0.7Cの定電流で充電を行った後、4.4Vのカットオフ電圧に達するまで、5.6mA電流で定電流放電を行った。
【0110】
実施例1及び比較例1のコインセルについての電圧プロファイルを図7に示した。
【0111】
図7を参照すれば、実施例1のコインセルは、リチウムの電着/脱離過程において、過電圧が抑制され、それによって、リチウムの消耗が抑制される効果があるということが分かる。
【0112】
実施例1によるコインセルの初期充放電効率は、97.3%と測定され、比較例1によるコインセルの初期充放電効率は、95.6%と測定された。
【0113】
すなわち、実施例1のコインセルは、リチウム消耗抑制効果を有し、結果として高い充放電効率を達成することができる。
【0114】
[実施例2:リチウム金属電池の製造]
THF溶媒と、製造例1で製造されたグラフェンボールとを90:10の重量比で混合して、グラフェンボールスラリーを製造した。前記グラフェンボールスラリーをリチウム金属負極の表面に30μmの厚さに塗布して、負極を製造した。
【0115】
それと別途に、LiCoO2、導電剤(Super-P; Timcal Ltd.)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)及びN-ピロリドンを混合して、正極組成物を得た。正極組成物において、LiCoO2、導電剤及びPVDFの混合重量比は、97:1.5:1.5であった。
【0116】
前記正極組成物を、アルミニウムホイル(厚さ:約15μm)の上部にコーティングし、25℃で乾燥させた後、乾燥した結果物を、真空、約110℃で乾燥させ、正極を製造した。
【0117】
前記過程によって得た正極と、負極(厚さ:約20μm)との間に、ポリエチレン/ポリプロピレンのセパレータを介在させ、リチウム金属電池(コインセル)を製造した。ここで、前記正極と負極との間には、液体電解質を付加した。液体電解質としては、3:7体積比のFEC及びDECの混合溶媒に、1M LiFOBが溶解された電解液を用いた。
【0118】
[実施例3:リチウム金属電池の製造]
前記グラフェンボールスラリーを60μmの厚さに塗布したことを除いては、実施例2と同様な方法により、リチウム金属電池を製造した。
【0119】
[実施例4:リチウム金属電池の製造]
前記グラフェンボールスラリーの代わりに、カーボン層を30μmの厚さにリチウム金属負極上に圧延して塗布し、負極を製造したことを除いては、実施例2と同様な方法により、リチウム金属電池を製造した。
【0120】
[実施例5:リチウム金属電池の製造]
製造例1で製造されたグラフェンボール0.05g、LiFSI 0.02g、N-メチルピロリドン4g及びPVDF 0.1gを混合した後、100分間ソニケーションを経て、グラフェンボールスラリーを製造した。このように製造されたグラフェンボールスラリーを、リチウム金属負極上に約5μmの厚さに塗布した後、60℃で一晩乾燥させ、負極を製造した。
【0121】
正極及び電解液は、実施例2と同様なものを使用し、前記で製造された負極を使用して、リチウム金属電池を製造した。
【0122】
[比較例2:リチウム金属電池の製造]
前記グラフェンボールスラリーの代わりに、ポリスチレン・ポリイソプレン共重合体を、5μmの厚さにリチウム金属負極に塗布して、負極を製造したことを除いては、実施例2と同様な方法により、リチウム金属電池を製造した。
【0123】
[評価例3:寿命特性評価]
実施例2ないし5によって製造されたリチウム金属電池(フルセル)、及び比較例2によって製造されたリチウム金属電池(フルセル)に対して、25℃で、0.7C rateの電流で、電圧が4.40V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.40Vを維持しながら、0.05C rateの電流でカットオフした。10分間休止期間を有した後、放電時に電圧が3.0V(vs.Li)に至るまで、0.5C rateの定電流で放電した(化成段階、最初のサイクル)。そのような充放電過程を二回さらに実施し、化成過程を完了した。
【0124】
前述した充放電過程を反復的に実施し、サイクルが進むにつれて、容量の変化を測定して、図8及び図9に示した。具体的には、実施例2及び3のフルセルについてのサイクル特性グラフを図8に示し、比較例2のフルセルについてのサイクル特性グラフを図9に示し、実施例2、3及び5のフルセルについてのサイクル特性グラフを図10に示した。
【0125】
図8から、グラフェンボールスラリーの塗布厚さがさらに厚い実施例3のフルセルが、実施例2のフルセルに比べて、サイクルが進むにつれて、容量維持率が高いことを確認できる。
【0126】
また、図9から、比較例2のフルセルは、初期効率に比べて、10サイクル以後の効率が88.1%と低下することを確認できる。
【0127】
図10を参照すれば、グラフェンボールスラリーがリチウム塩及び高分子バインダをさらに含む場合、容量維持特性が良好になることを確認できる。それは、リチウム塩及び高分子バインダを含むことにより、コーティング層が高い電着力及び伝導性を発揮できることに起因する。
【0128】
以上、図面及び実施例を参照して、一具現例を説明したが、それは、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、それらから多様な変形及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲により決まらなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10