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特許7078921液晶表示素子の製造方法及び液晶表示素子の製造装置
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  • 特許-液晶表示素子の製造方法及び液晶表示素子の製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】液晶表示素子の製造方法及び液晶表示素子の製造装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20220525BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220525BHJP
   C09K 19/54 20060101ALN20220525BHJP
   C09K 19/06 20060101ALN20220525BHJP
【FI】
G02F1/1337
G02F1/13 500
C09K19/54 Z
C09K19/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017194287
(22)【出願日】2017-10-04
(65)【公開番号】P2019066758
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-05-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100160945
【弁理士】
【氏名又は名称】菅家 博英
(74)【代理人】
【識別番号】100168996
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 雅美
(72)【発明者】
【氏名】矢野 智広
(72)【発明者】
【氏名】近藤 史尚
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 厚
(72)【発明者】
【氏名】久野 恭平
(72)【発明者】
【氏名】相沢 美帆
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-302061(JP,A)
【文献】特開平11-133387(JP,A)
【文献】特開2016-224361(JP,A)
【文献】国際公開第2017/102068(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/13
C09K 19/54
C09K 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶性化合物を配向させるための配向膜を有さない又は配向処理を施していない一対の透明基板と、
互いに対向する該透明基板の面の少なくとも一方に配置された透明電極と、
前記一対の透明基板の間に封入された液晶性化合物を含む液晶組成物と、
液晶性化合物の配向に用いられる重合性基を有する成分の重合体を含む液晶表示素子の製造方法であって、
前記一対の透明基板の間に、前記液晶組成物と、前記液晶性化合物の配向に用いられる重合性基を有する成分を含む液晶媒体を封入する第一の工程と、
前記液晶表示素子の一辺の領域から光照射を開始し、順次光の照射領域の境界を光の未照射の領域に向けて連続的に移動させる第二の工程を含み、
前記第二の工程の後、液晶媒体に含まれる液晶性化合物が、前記基板に対してホモジニアス配向している、
液晶表示素子の製造方法。
【請求項2】
前記第二の工程において、前記液晶表示素子と照射光とを実質的に定速で相対的に移動させる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第二の工程において、透明基板の内部に順次、液晶組成物の配向に用いられる重合性基を有する成分の重合体を形成する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記光照射の照射光が紫外光である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記光照射の照射角度が、透明基板に対して略垂直の非偏光である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第一の工程で封入された液晶組成物に含まれる液晶性化合物が、第一の工程の段階では、前記基板に対してホメオトロピック配向している、請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項7】
前記光照射の際にフォトマスクを利用し、該フォトマスクを連続的に移動させることにより前記光の照射領域の境界を光の未照射の領域に向けて連続的に移動させる、請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項8】
前記境界を移動させる速度が5μm/s~100mm/sである、請求項1~7のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項9】
前記第二の工程を、50℃未満の温度で行う、請求項1~8のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子の製造方法及び液晶表示素子の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子では基板に配向膜を設けたり配向処理(偏光UV照射やラビングなど)を施したりすることによって、液晶セル中の液晶性化合物を配向させる。
【0003】
これに対して、このような配向処理を施さなくても液晶媒体に極性化合物等を添加することによって液晶性化合物を配向させる技術は報告されている(特許文献1)。ここで報告されているのはホメオトロピック配向(垂直配向)させる技術である。
【0004】
一方、液晶媒体をホモジニアス配向させる技術としては、アゾベンゼン骨格をもつ重合性デンドリマーを用いる技術(非特許文献1)や重合性化合物を用いる技術(非特許文献2)があり、これらは配向膜を用いていないが偏光UV照射やラビングなどの配向処理が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2013-543526号公報
【文献】特開2003-287755号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Mol. Cryst. Liq. Cryst., Volume 610, Issue 1, 2015, Page 201-209
【文献】Society for Information Display International Symposium (2014), 45(1), 1418-1420
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたものであり、従来用いられてきた液晶性化合物を配向させるための配向膜の使用、偏光UV照射、ラビング等の配向処理や、加熱処理等を必要とすることなく、基板の中に封入された液晶性化合物を所望の方向に配向させることができる液晶表示素子の製造方法と液晶表示素子の製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討した結果、特定の組成を有する液晶媒体を、液晶表示素子を構成する、配向膜を有さない又は配向処理をしていない一対の透明基板の間に封入する工程と、その液晶表示素子の一辺の領域から光照射を開始し、順次光の照射領域の境界を光の未照射の領域に向けて連続的に移動させる工程を含む、液晶表示素子の製造方法が、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の以下の各態様に関するものである。
[1] 液晶性化合物を配向させるための配向膜を有さない又は配向処理を施していない一対の透明基板と、
互いに対向する該透明基板の面の少なくとも一方に配置された透明電極と、
前記一対の透明基板の間に封入された液晶性化合物を含む液晶組成物と、
液晶性化合物の配向に用いられる重合性基を有する成分の重合体を含む液晶表示素子の
製造方法であって、
前記一対の透明基板の間に、前記液晶組成物と、前記液晶性化合物の配向に用いられる重合性基を有する成分を含む液晶媒体を封入する第一の工程と、
前記液晶表示素子の一辺の領域から光照射を開始し、順次光の照射領域の境界を光の未照射の領域に向けて連続的に移動させる第二の工程を含む、
液晶表示素子の製造方法。
[2] 前記第二の工程において、前記液晶表示素子と照射光とを実質的に定速で相対的に移動させる、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記第二の工程において、透明基板の内部に順次、液晶組成物の配向に用いられる重合性基を有する成分の重合体を形成する、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4] 前記光照射の照射光が紫外光である、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 前記光照射の照射角度が、透明基板に対して略垂直の非偏光である、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 前記第一の工程で封入された液晶組成物に含まれる液晶性化合物が、第一の工程の段階では、前記基板に対してホメオトロピック配向している、[1]~[5]のいずれかに記載の液晶表示素子の製造方法。
[7] 前記第二の工程の後、液晶媒体に含まれる液晶性化合物が、前記基板に対してホモジニアス配向している、[1]~[6]のいずれかに記載の液晶表示素子の製造方法。[8] 前記光照射の際にフォトマスクを利用し、該フォトマスクを連続的に移動させることにより前記光の照射領域の境界を光の未照射の領域に向けて連続的に移動させる、[1]~[7]のいずれかに記載の液晶表示素子の製造方法。
[9] 前記境界を移動させる速度が5μm/s~100mm/sである、[1]~[8]のいずれかに記載の液晶表示素子の製造方法。
[10]前記第二の工程を、50℃未満の温度で行う、[1]~[9]のいずれかに記載の液晶表示素子の製造方法。
[11] 液晶性化合物を配向させるための配向膜を有さない又は配向処理を施していない一対の透明基板と、
互いに対向する該透明基板の面の少なくとも一方に配置された透明電極と、
前記一対の透明基板の間に封入され、液晶性化合物を含む液晶組成物と、
液晶性化合物の配向に用いられる重合性基を有する成分を含む液晶媒体とを含む、液晶表示素子の構成材料を載置する台座と、
前記液晶表示素子の構成材料に光を照射する光源と、
前記光源からの光を遮断するフォトマスクと、
前記光源から液晶表示素子の構成材料への光の照射領域の境界を移動させるための、前記フォトマスク及び前記台座の少なくとも一方を移動させるための手段と、を有する、液晶表示素子の製造装置。
[12] 前記フォトマスク及び台座の少なくとも一方の移動速度を、5μm/s~100mm/sに設定する、[11]に記載の液晶表示素子の製造装置。
[13] 前記フォトマスクと、前記台座に載置された液晶表示素子の構成材料の光照射側の面との間隔が、1cm以下である、[11]または[12]に記載の液晶表示素子の製造装置。
【発明の効果】
【0010】
液晶表示素子の製造において、特定の組成を有する液晶媒体を用い、これに対して光照射の工程を特定の手段により行わせ、液晶媒体中の液晶性化合物を所望の方向に配向させることができる技術はこれまでになく、本願発明の好ましい態様によれば、従来の液晶を配向させるための配向膜や配向処理を用いることなく、液晶媒体中の液晶性化合物を所望の方向、例えばホモジニアス配向させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】液晶表示素子の製造装置と、その製造方法の過程を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。「液晶媒体」とは、液晶表示素子または装置に用いられる液晶または液晶性のものであり、以下に限定されるわけではないが、例えば液晶性化合物、液晶組成物、高分子液晶等と、当該液晶性化合物の配向に用いられる重合性基を有する成分を含むものである。「液晶組成物」および「液晶表示素子」の用語をそれぞれ「組成物」および「素子」と略すことがある。「液晶表示素子」は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが、ネマチック相の温度範囲、粘度、誘電率異方性のような特性を調節する目的で組成物に混合される化合物の総称である。この化合物は、例えば1,4-シクロヘキシレンや1,4-フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。「重合性化合物」は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加する化合物である。「低分子」とは、「高分子」でないものをいう。「高分子」とは、重合反応が可能な構造を持つ化合物が、重合反応によって生成したモノマー単位の繰り返し構造を持つものである。重合反応ではない反応で合成され、モノマー単位の繰り返し構造を待たない高分子量の化合物は低分子である。また、重合反応が可能な構造を持つ化合物であって、重合前の化合物は低分子である。
【0013】
液晶組成物は、複数の液晶性化合物を混合することによって調製される。液晶性化合物の割合(含有量)は、この液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。この液晶組成物に、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、消泡剤、色素のような添加物が必要に応じて添加される。添加物の割合(添加量)は、液晶性化合物の割合と同様に、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。重量百万分率(ppm)が用いられることもある。重合開始剤および重合禁止剤の割合は、例外的に重合性化合物の重量に基づいて表される。
【0014】
例として式(X)で表される化合物は、式(X)で表される1つの化合物、2つの化合物の混合物、または3つ以上の化合物の混合物を意味する。六角形で囲んだB、C、Fなどの記号はそれぞれ環B、環C、環Fなどに対応する。六角形は、シクロヘキサン環やベンゼン環のような六員環またはナフタレン環のような縮合環を表す。この六角形を横切る斜線は、環上の任意の水素が-Sp-Qなどの基で置き換えられてもよいことを表す。eなどの添え字は、置き換えられた基の数を示す。添え字が0のとき、そのような置き換えはない。
【0015】
末端基の記号(例えばRに上付き添え字)を複数の成分化合物に用いた。これらの化合物において、任意の2つの同記号の末端基が表す2つの基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。例えば、化合物(Y)の末端基がエチルであり、化合物(Z)の同記号の末端基がエチルであるケースがある。化合物(Y)の末端基がエチルであり、化合物(Z)の同記号の末端基がプロピルであるケースもある。このルールは、他の末端基、環、結合基などの記号にも適用される。式(8)において、iが2のとき、2つの環Dが存在する。この化合物において、2つの環Dが表す2つの基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。このルールは、iが2より大きいときの任意の2つの環Dにも適用される。このルールは、他の環、結合基などの記号にも適用される。
【0016】
「少なくとも1つの‘X’」の表現は、‘X’の数は任意であることを意味する。「少なくとも1つの‘X’は、‘Y’で置き換えられてもよい」の表現は、‘X’の数が1つ
のとき、‘X’の位置は任意であり、‘X’の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できる。このルールは、「少なくとも1つの‘X’が、‘Y’で置き換えられた」の表現にも適用される。「少なくとも1つのXが、Y、Z、またはWで置き換えられてもよい」という表現は、少なくとも1つのXがYで置き換えられた場合、少なくとも1つのXがZで置き換えられた場合、および少なくとも1つのXがWで置き換えられた場合、さらに複数のXがY、Z、Wの少なくとも2つで置き換えられた場合を含むことを意味する。例えば、少なくとも1つの-CH-(または、-(CH-)が-O-(または、-CH=CH-)で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルが含まれる。なお、連続する2つの-CH-が-O-で置き換えられて、-O-O-のようになることは好ましくない。液晶性化合物においては、アルキルなどにおいて、メチル部分(-CH-H)の-CH-が-O-で置き換えられて-O-Hになることは好ましくない。
【0017】
ハロゲンはフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。好ましいハロゲンは、フッ素または塩素である。さらに好ましいハロゲンはフッ素である。アルキルは、直鎖状または分岐状であり、断りがない限りは環状アルキルを含まない。直鎖状アルキルは、一般的に分岐状アルキルよりも好ましい。これらのことは、アルコキシ、アルケニルなどの末端基についても同様である。1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置は、ネマチック相の上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。2-フルオロ-1,4-フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向き(L)であってもよいし、右向き(R)であってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン-2,5-ジイルのような、環から水素を2つ除くことによって生成した非対称な二価基にも適用される。
【化1】
【0018】
<液晶表示素子の製造方法>
本発明の実施形態にかかる液晶表示素子の製造方法は、液晶性化合物を配向させるための配向膜を有さない又は配向処理を施していない一対の透明基板と、
互いに対向する該透明基板の面の少なくとも一方に配置された透明電極と、
前記一対の透明基板の間に封入された液晶性化合物を含む液晶組成物と、
液晶性化合物の配向に用いられる重合性基を有する成分の重合体を含む液晶表示素子の製造方法であって、
前記一対の透明基板の間に、前記液晶組成物と、前記液晶性化合物の配向に用いられる重合性基を有する成分を含む液晶媒体を封入する第一の工程と、
前記液晶表示素子の一辺の領域から光照射を開始し、順次光の照射領域の境界を光の未照射の領域に向けて連続的に移動させる第二の工程を含む。
【0019】
本発明の実施形態にかかる液晶表示素子の製造方法で製造される液晶表示素子は、透明基板を有する。この透明基板には、液晶性化合物を配向させるための配向膜を有さず、また、配向処理が施されていないものである。
当該基板は、ガラス、ITOその他の透明基板を用いることができ、そこに絶縁膜(例
えばポリイミド)などが形成されていてもよい。用いる一対の基板の少なくともどちらか一方には、透明電極を形成しておく必要がある。
【0020】
この透明基板は、一対で形成されるものであり、その間に液晶媒体を封入することができる。透明基板の側端には、後述するように液晶媒体を一対の透明基板の間に封入するため封止材を設けることができる。
本発明の実施形態にかかる液晶表示素子には、通常の液晶表示素子が有する構成部材を有してもよい。例えば、透明基板上に薄膜トランジスタや、カラーフィルタ、偏光板を有していてもよい。
【0021】
前記第一の工程において、前記一対の透明基板の間に、液晶性化合物を含む液晶組成物と、前記液晶性化合物の配向に用いられる重合性基を有する成分を含む液晶媒体とを封入する。
液晶性化合物は特に制限なく用いることができ、一種でも二種以上を混合して用いてもよい。液晶性化合物については後述する。
また、液晶性化合物の配向に用いられる重合性基を有する成分(単に重合性基を有する成分ともいう)は、以下で説明する第二の工程において、光照射により重合する重合性基を有する化合物から構成されるものである。そのような化合物は一種を用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
重合性基を有する成分については後述する。
【0022】
前記第二の工程において、前記液晶表示素子と照射光とを実質的に定速で相対的に移動させることが好ましい。透明液晶表示素子と照射光とを相対的に移動させるとは、液晶表示素子のみを移動させる態様、照射光の照射領域のみを移動させる態様、液晶表示素子と照射領域をそれぞれ移動させる態様を挙げることができる。
その移動を定速で行うと、液晶媒体に含まれる重合性基を有する成分の重合が一定の速度で起こり、液晶性化合物の配向にムラが生じなくなるので好ましい。また、光照射の境界の移動を一定の速度で行うことも、液晶性化合物の配向にムラを生じさせなくするために望ましい。
【0023】
前記の第二の工程において、液晶表示素子に対して、その一辺から光照射が行われ、さらにその光の照射領域が光の未照射の領域に向けて連続的に移動することで、液晶表示素子を構成する透明基板内に封入された重合性基を有する成分が順次重合することで、その成分の重合体が形成される。
重合性基を有する成分が順次重合して重合体が形成されることで、封入されている重合性基を有する成分の濃度に勾配が生じ、これにより起こる分子拡散を駆動力として液晶媒体に含まれる液晶性化合物の配向が変わる。この液晶性化合物の配向の変化としては、ホメオトロピック配向していたものが、ホモジニアス配向する態様を挙げることができる。
つまり、第一の工程で封入された液晶組成物に含まれる液晶性化合物が、第一の工程の段階では、前記基板に対してホメオトロピック配向している態様を挙げることができる。
そして、前記第二の工程の後、液晶媒体に含まれる液晶性化合物が、前記基板に対してホモジニアス配向している態様を挙げることができる。
【0024】
光照射をする際の光としては、X線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)等を挙げることができる。これらの中でも、紫外線を用いた紫外光であることが好ましく、偏光紫外光を用いる必要はない。
光照射の際には、0.1μW/cm~100mW/cmの強度で光を照射することが好ましく、0.5μW/cm~30mW/cmの強度で光を照射することがより好ましい。このような光の照度が前記下限未満では反応速度が遅くなるため、前記境界の移動速度が遅くなり、生産性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると重合性化合
物が拡散する速度よりも重合反応速度の方が速くなり過ぎることにより、化合物の拡散が十分に起こらず、液晶化合物の配向を起こさせることが困難となる可能性がある。
【0025】
光照射の照射角度は、透明基板に対して略垂直の非偏光であることが、重合性基を有する成分の重合を規則的に行わせ、液晶性化合物の配向を規則的に行わせるために好ましい。なお、本明細書において略垂直とは、基板に対して80~100°を意味する。光照射の照射角度は、85°~95°程度であることがより好ましく、88~92°程度であることが特に好ましい。
【0026】
光照射の際に、一部の領域から光を照射するための方法は特に制限されず、例えば、一部の領域のみに光を照射できるようにした光源を利用してもよく、あるいは、フォトマスクを利用して一部の領域から光を照射してもよい。その中でも、重合領域と未重合領域の制御がより容易となるため、フォトマスクを利用することが好ましい。
上記のとおり、液晶表示素子の一辺の領域から光照射を開始し、順次光の照射領域の境界を光の未照射の領域に向けて連続的に移動させるが、このように光照射の領域を順次移動させることで液晶媒体に含まれる重合性基を有する成分の重合領域と未重合領域との境界が、未重合の領域に向けて連続的に移動することになる。
これにより、移動していく境界の近傍の領域において、物質の拡散現象を順次連続的に引き起こすことが可能となる。
なお、液晶表示素子における液晶性化合物の配向方向は、フォトマスクの移動方向により定まるものであり、フォトマスクの移動方向に対して、ある一定の角度を持った方向に液晶性化合物が並ぶ態様が挙げられる。より具体的には、フォトマスクの移動方向と同じ、または直角の方向に配向する態様が挙げられる。
光照射の際に、重合性官能基を有する化合物を含む液晶媒体は加熱せずに常温(例えば50℃未満)で光照射のみにより重合を行わせる態様が特に好ましい。
【0027】
図1は、液晶表示素子の製造装置と、その製造過程を模式的に示す概略縦断面図である。なお、図中の点線Sは重合領域の境界を示しており、矢印Aは重合領域の境界Sを移動させる方向を概念的に示しており、矢印Lは光源から照射される光を概念的に示すものであり、A1は光Lが照射されて重合された領域(重合領域:露光部)を概念的に示し、A2は光Lが照射されていない未重合の領域(未重合領域:遮光部)を概念的に示し、A3の枠内は配向が形成されている領域を概念的に示す。
【0028】
図1に示す実施形態においては、光重合により配向を形成する際に、先ず、図1に示すように、光源1と、光源1から照射される光を透過させることが可能な一対の基板3と、前記一対の基板3の間に封入した液晶性化合物5を含む液晶組成物と、重合性官能基を有する成分を含む液晶表示素子4と、光源1から照射される光を遮光することが可能なフォトマスク2とを準備する。そして、台座8に液晶表示素子4を載置し、前記一対の基板3のうちの一方の基板側に光源1を配置し、液晶表示素子4の一部の領域のみに光源1からの光が照射されるように、液晶表示素子4と光源1との間に、液晶表示素子4の一部を遮光することが可能なフォトマスク2を配置する。
次に、光源1を点灯し、光源1から光Lを照射する。このようにして光Lを照射すると、遮光部A2では反応は進行せず未重合のままであるが、光が照射される露光部A1においては、重合性基を有する成分6の重合が進行し、その重合体7が生成する。このようにして一部の領域を露光して、液晶表示素子4の一部の領域(露光部)A1から重合性基を有する成分6の重合を開始する。
【0029】
そして、このようにして重合された領域(重合領域:露光部)A1においては、重合性基を有する成分が重合して消費されていくため、重合領域(露光部)A1と未重合領域(遮光部)A2との間では液晶表示素子4中の液晶媒体における重合性基を有する成分の濃
度に偏りが生じる。このようにして、液晶媒体中の成分の濃度に偏りが生じると、通常は、物質の拡散現象により濃度勾配を解消する方向に物質の拡散が生じる。
そのため、上述のように光を照射すると、重合領域(露光部)A1と未重合領域(遮光部)A2の境界Sにおいては、濃度勾配を解消する方向に成分の拡散が誘起され、未重合領域である遮光部A2から重合領域である露光部A1へと重合性基を有する成分の流れが発生する(矢印B)。このようにして未重合領域A2から重合領域A1への成分の流れが生じると、その流れにより液晶性化合物には一種のずり応力が加わり、液晶性化合物が重合領域(露光部)A1と未重合領域(遮光部)A2の境界Sの近傍の領域において配向し、配向領域A3が形成(誘起)される。
なお、このような化合物の移動による流れが生じる方向は重合領域(露光部)A1と未重合領域(遮光部)A2の境界Sに対して略垂直な方向となるため、液晶性化合物が棒状のものである場合、通常、平均的な配向方向は境界Sに対して略垂直な方向となる。このように、液晶表示素子4の一部の領域から前記重合性基を有する成分の重合を開始した後、フォトマスク2を連続的に移動させて重合領域の境界Sを未重合の領域A2に向けて連続的に移動させることにより(図1の矢印A)、境界Sが移動していく先々において(新たな位置で)成分の拡散が誘起され、光重合と拡散誘起による配向とを連続的に引き起こすことが可能となる。
この際、液晶性化合物が配向するような速度で(前述の化合物の移動により生じる一種のずり応力が、配向を形成するために前記液晶性を示す化合物に十分に加えられるような速度で)、境界Sを連続的に移動させることにより、拡散誘起による配向を連続的に生じさせることが可能である。
【0030】
なお、本発明の実施形態にかかる液晶表示素子の製造方法においては、上述のようにして配向を形成する際の重合を、加熱せずに常温(例えば50℃未満)で行うことができる。これにより、省エネルギー化と装置の簡便化を図ることができる。
【0031】
ここで、前記境界を移動させる際の移動速度である「液晶性化合物が配向するような速度」は、液晶性化合物の種類、拡散移動する化合物の種類、重合して形成される化合物(重合物)の種類(重合後に得られる化合物の種類)、重合時に採用する重合の条件(光の照射条件、温度等)等によっても、前記液晶表示素子中の液晶性化合物を配向させるために必要となる時間等が異なることから、一概に言えるようなものではないが、その具体的な速度の例を挙げると、例えば5μm/s~100mm/sを挙げることができる。
【0032】
<液晶性化合物の配向に用いられる重合性基を有する成分>
液晶性化合物の配向に用いられる重合性基を有する成分は、上記で説明したとおり、光照射により重合する成分である。上記の第二の工程において、光照射による重合性基を有する成分の重合が順次起こることにより、封入されている重合性基を有する成分の濃度に勾配が生じ、これにより起こる分子拡散を駆動力として液晶媒体中の液晶性化合物の配向が起こる。
【0033】
液晶性化合物の配向に用いられる重合性基を有する成分は、重合性基を有する化合物から構成される。重合性基を有する化合物としては、例えば重合性基を有する低分子極性化合物を挙げることができる。
重合性基を有する低分子極性化合物は、液晶媒体を基板に対して、当初は好ましくはホメオトロピック配向させる極性化合物であり、低分子である。ここで液晶表示素子は液晶媒体を配向させるための配向処理または配向膜を施していない2枚の基板(少なくとも一方の基板には透明電極が形成されている)とその間に挟持された液晶媒体とから構成され、液晶媒体に添加された極性化合物により当該液晶媒体中の液晶性化合物は当該基板に対して当初は好ましくはホメオトロピック配向する。ホメオトロピック配向とは、液晶媒体が基板面と垂直に配向することに加えて、基板面と垂直な面内においても液晶媒体中の液
晶性化合物が配向していることを意味する。液晶性化合物が、当初はホメオトロピック配向していることが好ましい理由としては、基板と液晶性化合物との相互作用が非常に低い状態にあるということになるので、当初の液晶性化合物の配向の履歴が残りにくく、液晶性化合物の配向変化もしやすいからである。本発明の極性化合物の化学構造は好ましくは無極性基と極性基とから構成され、本発明は特定の原理に拘束されるわけではないが、当該極性基は基板や基板上に形成された電極と相互作用し、当該無極性基は液晶媒体と相互作用することで、液晶媒体を基板に対して当初は好ましくはホメオトロピック配向させるものと考えられる。重合性基を有する極性化合物は液晶媒体を配向させると共に、紫外線照射等により重合および他の重合性化合物と共重合する。これによって、重合後の配向を安定化することができる。
前記重合性基を有する低分子極性化合物は、下記一般式(2)、(3)及び(4)で表される少なくとも一つを挙げることができる。
【0034】
一般式(2)、(3)で表される低分子極性化合物
【化2】
上記式(2)および式(3)中、
は水素、ハロゲンまたは炭素数1~20のアルキルであり、このRにおいて、少なくとも1つの-CH-は独立して-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は-CH=CH-で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
【化3】
、P、PおよびPは、独立して、上記一般式(Q-0)で表される基、または、炭素数1~25の直鎖状、分岐状または環状のアルキルであり、このP、P、PおよびPにおいて、少なくとも1つの隣接していない-CH-は、独立して、N、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、-N(-P)-、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-または-O-CO-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの第3級炭素(CH基)はNで置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素は独立してFまたはClで置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は独立して-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、ただし、P、P、PおよびPはN、Sおよび/またはOより選択される1個以上のヘテロ原子を含有し、
は、独立して炭素数1~25の直鎖状、分岐状または環状のアルキルであり、このPにおいて、少なくとも1つの隣接していない-CH-は、独立して、N、Oおよび
/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、-N(-P)-、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-または-O-CO-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの第3級炭素(CH基)はNで置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素は独立してFまたはClで置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は独立して-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、ただし、PはN、Sおよび/またはOより選択される1個以上のヘテロ原子を含有し、
上記式(Q-0)中、R、RおよびRは、独立して、水素、ハロゲンまたは炭素数1~20のアルキルであり、このR、RおよびRにおいて、少なくとも1つの-CH-は独立して-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は-CH=CH-で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【0035】
上記式(2)におけるP~P、上記式(3)におけるP~Pは、好ましくは、アクリレートまたはメタクリレートであり、上記式(3)におけるRは、好ましくはアルキル、炭素数1~30のアルキル、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~10のアルキルである。
【0036】
上記式(2)または(3)の極性化合物の中でも以下の化学構造を有する極性化合物が好ましい。
【化4】
上記一般式(2-1)におけるRは炭素数1~4の直鎖状または環状のアルキルであり;
上記一般式(2-2)および式(3-1)におけるR、R、RおよびRは、独立して、水素、ハロゲンまたは炭素数1~20のアルキルであり、このR、R、RおよびRにおいて、少なくとも1つの-CH-は独立して-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は-CH=CH-で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【0037】
さらに好ましくは以下の化学構造を有する極性化合物である。
【化5】
【0038】
一般式(4)で表される低分子極性化合物
【化6】
【0039】
上記式(4)中、
は炭素数1~15のアルキルであり、このRにおいて、少なくとも1つの-CH-は独立して-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は独立して-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
環Aおよび環Aは、独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、フルオレン-2,7-ジイル、フェナントレン-2,7-ジイル、アントラセン-2,6-ジイル、ペルヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイル、または2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、独立して、フッ素、塩素、炭素数1~12のアルキル、炭素数2~12のアルケニル、炭素数1~11のアルコキシ、または炭素数2~11のアルケニルオキシで置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素は独立してフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
は独立して、単結合または炭素数1~10のアルキレンであり、このZにおいて、少なくとも1つの-CH-は、独立して、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は独立して-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
Spは単結合または炭素数1~10のアルキレンであり、このSpにおいて、少なくとも1つの-CH-は、独立して、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は独立して-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
およびMは独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~5のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1~5のアルキルであり;
aは0、1、2、3、または4であり;
は、下記一般式(1a)または一般式(1b)で表される基であり:
【化7】
上記式(1a)および式(1b)中、
SpおよびSpは独立して単結合または炭素数1~10のアルキレンであり、このSpおよびSpにおいて、少なくとも1つの-CH-は、独立して、-O-、-NH-、-CO-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は独立して-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
は、>CH-または>N-であり;
【化8】
は、独立して、-OH、-NH、-OR、-N(R、上記一般式(x1)で表される基、-COOH、-SH、-B(OH)、または-Si(Rで表される基であり、ここでRは水素または炭素数1~10のアルキルであり、このRにおいて、少なくとも1つの-CH-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は-CH=CH-で置き換えられてもよく、Xにおいて少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、上記一般式(x1)中のwは1、2、3または4である。
【0040】
式(4)中、好ましい環Aまたは環Aは、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、ペルヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイル、または2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素はフッ素、または炭素数1から5のアルキルで置き換えられてもよい。さらに好ましい環Aまたは環Aは、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、ペルヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイルであり、これらの環において、例えば、1-メチル-1,4-シクロへキシレン、2-エチル-1,4-シクロへキシレン、2-フルオロ-1,4-フェニレンのように、少なくとも1つの水素はフッ素、メチル、またはエチルで置き換えられてもよい。
【0041】
式(4)中、好ましいZは独立して、単結合、-(CH-、-CH=CH-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-CFO-、-OCF-、-CHO-、-OCH-、または-CF=CF-である。さらに好ましいZは独立して、単結合、-(CH-、または-CH=CH-である。特に好ましいZは、単結合である。
【0042】
式(4)中、好ましいSpは、単結合、炭素数1~5のアルキレン、または1つの-
CH-が-O-で置き換えられた炭素数1~5のアルキレンである。さらに好ましいSpは、単結合、炭素数1~3のアルキレン、または1つの-CH-が-O-で置き換えられた炭素数1~3のアルキレンである。
【0043】
式(4)中、好ましいMまたはMは、水素、フッ素、メチル、エチル、またはトリフルオロメチルである。さらに好ましいMまたはMは水素である。
【0044】
式(4)中、好ましいaは、0、1、2、または3である。さらに好ましいaは、0、1、または2である。
【0045】
式(1a)および式(1b)中、好ましいSpまたはSpは、炭素数1~7のアルキレン、または1つの-CH-が-O-で置き換えられた炭素数1~5のアルキレンである。さらに好ましいSpまたはSpは、炭素数1~5のアルキレン、または1つの-CH-が-O-で置き換えられた炭素数1~5のアルキレンである。特に好ましいSpまたはSpは、-CH-である。
【0046】
式(1a)および式(1b)中、好ましいXは独立して、-OH、-NH、-OR、-N(R、一般式(x1)で表される基、または-Si(Rで表される基であり、ここで、Rは水素または炭素数1~5のアルキルであり、このRにおいて、少なくとも1つの-CH-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は-CH=CH-で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、上記一般式(x1)におけるwは1、2、3または4である。さらに好ましいXは、-OH、-NH、または-N(Rである。特に好ましいXは-OHである。
【0047】
一般式(4)のより具体的な極性化合物として以下が挙げられる。
【化9】
【0048】
式(4-1)~式(4-10)中、
は、炭素数1~10のアルキルであり;
Spは単結合または炭素数1~5のアルキレンであり、このSpにおいて少なくとも1つの-CH-は-O-で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
Spは炭素数1~5のアルキレンであり、このSpにおいて少なくとも1つの-CH-は-O-で置き換えられてもよく;
、L、L、LおよびLは独立して、水素、フッ素、メチル、またはエチルであり;
およびYは独立して水素またはメチルである。
【0049】
一般式(4)のより具体的な極性化合物として以下が挙げられる。
【化10】
【0050】
式(4-11)~式(4-20)中、
は、炭素数1~10のアルキルであり;
Spは単結合または炭素数1~5のアルキレンであり、このSpにおいて少なくとも1つの-CH-は-O-で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
Spは炭素数1~5のアルキレンであり、このSpにおいて少なくとも1つの-CH-は-O-で置き換えられてもよく;
、L、L、LおよびLは独立して、水素、フッ素、メチル、またはエチルであり;
およびYは独立して水素またはメチルであり;
は、水素、メチルまたはエチルである。
【0051】
さらに好ましくは以下の化学構造を有する極性化合物である。
【化11】
【0052】
上記式(2)~(4)で表される極性化合物は無極性基と極性基との結合体であり、当業者に公知の有機合成の知見を利用すれば容易に合成することができる。
【0053】
液晶媒体における、液晶性化合物を配向させるための重合性基を有する成分、好ましくは一般式(2)、(3)、(4)で表される化合物の少なくとも一つの含有量は、各成分の種類にもよるが、1~10重量%である態様をあげることができ、2~9重量%であることが好ましく、3~6重量%であることがより好ましい。
【0054】
<液晶性化合物の配向を促進するための成分>
前記液晶媒体は、さらに、重合性基を有する成分とは異なる液晶性化合物の配向の促進を行うための成分を含むことが好ましい。
前記液晶性化合物の配向の配向の促進を行うための成分として、以下の式(1)で表される化合物及び/又は後述する光ラジカル重合開始剤に代表される重合開始剤を挙げることができる。
このような成分は、前記の液晶性化合物の配向に用いられる重合性基を有する成分と同様に、光照射により重合する成分である。この成分が重合する際に、液晶媒体における液晶性化合物の配向が促進される。
【化12】
式(1)において、
環A、A、AおよびAは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、フルオレン-2,7-ジイル、フェナントレン-2,7-ジイル、アントラセン-2,6-ジイル、ペルヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイル、または2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、炭素数1から11
のアルコキシ、または炭素数2から11のアルケニルオキシで置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも一つの炭素はケイ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、-CH、-OCHで置き換えられてもよく、aまたはbが2のとき、任意の2つのAまたはAは異なっていてもよく;
、Z、Z、ZおよびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲンで置き換えられてもよく、aまたはbが2のとき、任意の2つのZまたはZは、異なっていてもよく;
SpおよびSpは、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは-OHで置き換えられてもよく;
及びPは式(1a)~式(1i)のいずれかで表される基であり;
【化13】
式(1a)~式(1i)において、MおよびMは独立して、水素、ハロゲン、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり;
は式(2a)、式(2b)または式(2c)のいずれかであり、
【化14】
は水素、ハロゲン、炭素数1から5のアルキル、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から5のアルキル、式(2a)、式(2b)または式(2c)のいずれかであり、
、RおよびRは独立して、水素、または炭素数1から15の直鎖状、分岐状または環状のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも
1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく:
式(2a)、式(2b)、および式(2c)において、SpおよびSpは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-NH-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲンで置き換えられてもよく;
は、>CH-、>SiH-または>N-であり;
は、>C<または>Si<であり;
は独立して、-OH、-NH、-OR、-N(R)、-COOH、-SH、-B(OH)、または-Si(Rで表される基であり、ここで、Rは独立して、水素または炭素数1から10のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲンで置き換えられてもよく、;
aおよびbは0、1または2であるが、0≦a+b≦3である。
【0055】
式(1)で表される化合物のうち、好ましい化合物として式(1-1)~(1-5)で表される化合物を挙げることができる。
【化15】
(式(1-1)~(1-5)において、式中の環A、A、AおよびA、Z、Z、Z、ZおよびZ、P、P、Sp、Spの定義は、式(1)と同じである。
【0056】
また、式(1)で表される化合物の具体例として、以下の式(1-6-1)~(1-6
-93)を挙げることができる。
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【0057】
液晶性化合物の配向を促進するための成分としての、上記式(1)で表される化合物以外の成分としては、上記のように光ラジカル重合開始剤に代表される重合開始剤を挙げることができる。そのような重合開始剤として、例えば以下の、<添加剤>で例示される市販品を用いることができ、その中でも、例えばイルガキュア651を用いることが好ましい。
【0058】
液晶媒体における、液晶性化合物の配向を促進するための成分、好ましくは式(1)で表される化合物の含有量は、各成分の種類にもよるが、0.1~10重量%である態様をあげることができ、0.2~5重量%であることが好ましく、0.3~2重量%であることがより好ましい。
後述する重合開始剤を使用する場合には、液晶媒体におけるその含有量は、0.01~1重量%であることが好ましい。
【0059】
化合物(1)の合成法について説明する。化合物(1)は、有機合成化学の方法を適切に組み合わせることにより合成できる。合成法を記載しなかった化合物は、「オーガニック・シンセシス」(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、「オーガニック・
リアクションズ」(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、「コンプリヘンシ
ブ・オーガニック・シンセシス」(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press
)、「新実験化学講座」(丸善)などの成書に記載された方法によって合成する。
【0060】
<液晶性化合物>
本発明の実施形態にかかる液晶表示素子の製造方法に用いることができる液晶性化合物について説明する。液晶性化合物としては、一般式(5)~(18)のいずれかで表される液晶性化合物を挙げることができる。これらの化合物を適切に組み合わせることによって、高い上限温度、低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、正または負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性、大きな弾性定数などの特性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を調製することができる。必要に応じて、これらの化合物とは異なる液晶性化合物を添加してもよい。
【0061】
一般式(5)~(7)で表される液晶性化合物
【化24】
【0062】
上記式(5)~式(7)中、
13は炭素数1~10のアルキルまたは炭素数2~10のアルケニルであり、このR13において、少なくとも1つの-CH-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
11は、フッ素、塩素、-OCF、-OCHF、-CF、-CHF、-CHF、-OCFCHF、または-OCFCHFCFであり;
環C、環Cおよび環Cは独立して、1,4-シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4-フェニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
14、Z15およびZ16は独立して、単結合、-(CH-、-CH=CH-、-C≡C-、-COO-、-CFO-、-OCF-、-CHO-、または-(CH-であり;
11およびL12は独立して水素またはフッ素である。
【0063】
式(5)~(7)の液晶性化合物は、右末端にハロゲンまたはフッ素含有基を有する化合物である。
【0064】
式(5)~(7)の液晶性化合物は、誘電率異方性が正であり、熱、光などに対する安定性が非常に優れているので、IPS、FFS、OCBなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。これらの化合物の含有量は、液晶媒体の重量に基づいて1~99重量%の範囲が適しており、好ましくは10~97重量%の範囲、さらに好ましくは40~
95重量%の範囲である。これらの化合物を誘電率異方性が負である組成物に添加する場合、その含有量は液晶媒体の重量に基づいて30重量%以下が好ましい。これらの化合物を添加することにより、液晶媒体の弾性定数を調整し、素子の電圧-透過率曲線を調整することが可能となる。
【0065】
一般式(8)で表される液晶性化合物
【化25】
【0066】
上記式(8)中、
14は炭素数1~10のアルキルまたは炭素数2~10のアルケニルであり、このR14において、少なくとも1つの-CH-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
12は-C≡Nまたは-C≡C-C≡Nであり;
環Dは独立して、1,4-シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4-フェニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
17は独立して、単結合、-(CH-、-C≡C-、-COO-、-CFO-、-OCF-、または-CHO-であり;
13およびL14は独立して水素またはフッ素であり;
iは、1、2、3、または4である。
【0067】
式(8)で表される液晶性化合物は、右末端基が-C≡Nまたは-C≡C-C≡Nである化合物である。
【0068】
式(8)で表される液晶性化合物は、誘電率異方性が正であり、その値が大きいので、TNなどのモード用の組成物を調製する場合に主として用いられる。この化合物を添加することにより、組成物の誘電率異方性を大きくすることができる。この化合物は、液晶相の温度範囲を広げる、粘度を調整する、または光学異方性を調整する、という効果がある。この化合物は、素子の電圧-透過率曲線の調整にも有用である。
【0069】
TNなどのモード用の組成物を調製する場合には、式(8)で表される液晶性化合物の含有量は、液晶媒体の重量に基づいて1~99重量%の範囲が適しており、好ましくは10~97重量%の範囲、さらに好ましくは40~95重量%の範囲である。この化合物を誘電率異方性が負である組成物に添加する場合、その含有量は液晶媒体の重量に基づいて30重量%以下が好ましい。この化合物を添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧-透過率曲線を調整することが可能となる。
【0070】
一般式(9)~(15)で表される液晶性化合物
【化26】
【0071】
式(9)から式(15)において、
15およびR16は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられて
もよく;
17は、水素、フッ素、炭素数1から10のアルキル、または炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH2
は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環E、環E、環E、および環Eは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4-フェニレン,テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、またはデカヒドロナフタレン-2,6-ジイルであり;
環Eおよび環Eは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン,テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、またはデカヒドロナフタレン-2,6-ジイルであり;
18、Z19、Z20、およびZ21は独立して、単結合、-CHCH-、-COO-、-CHO-、-OCF-、または-OCFCHCH-であり;
15およびL16は独立して、フッ素または塩素であり;
11は、水素またはメチルであり;
Xは、-CHF-または-CF-であり;
j、k、m、n、p、q、r、およびsは独立して、0または1であり、k、m、n、およびpの和は、1または2であり、q、r、およびsの和は、0、1、2、または3であり、tは、1、2、または3である。
【0072】
式(9)から(15)で表される液晶性化合物は、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレンのように、ラテラル位が2つのハロゲンで置換されたフェニレンを有する。
式(9)~(15)で表される液晶性化合物は、誘電率異方性が負に大きい。式(9)~(15)で表される液晶性化合物は、IPS、VA、PSAなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。式(9)~(15)で表される液晶性化合物の含有量を増加させるにつれて組成物の誘電率異方性が負に大きくなるが、粘度が大きくなる。そこで、素子のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は少ないほうが好ましい。誘電率異方性が-5程度であることを考慮すると、充分な電圧駆動をさせるには、含有量が液晶媒体において40重量%以上であることが好ましい。
【0073】
式(9)~(15)で表される液晶性化合物のうち、化合物(9)は二環化合物であるので、主として、粘度の減少、光学異方性の調整、または誘電率異方性の増加に効果がある。化合物(10)および(11)は三環化合物であるので、上限温度を高くする、光学異方性を大きくする、または誘電率異方性を大きくするという効果がある。化合物(12)から(15)は、誘電率異方性を大きくするという効果がある。
【0074】
IPS、VA、PSAなどのモード用の組成物を調製する場合には、式(9)~(15)で表される化合物の含有量は、液晶媒体の重量に基づいて、好ましくは40重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%から95重量%の範囲である。式(9)~(15)で表される液晶性化合物を誘電率異方性が正である組成物に添加する場合は、式(9)~(15)で表される液晶性化合物の含有量が液晶媒体の重量に基づいて30重量%以下が好ましい。式(9)~(15)で表される液晶性化合物を添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧-透過率曲線を調整することが可能となる。
【0075】
一般式(16)~(18)の液晶性化合物
【化27】
【0076】
上記式(16)~式(18)中、
11およびR12は独立して炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルコキシ、炭素数2~10のアルコキシアルキル、炭素数2~10のアルケニルまたはジフルオロビニルであり、このR11およびR12において、少なくとも1つの-CH-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環B、環B、環Bおよび環Bは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
11、Z12およびZ13は独立して、単結合、-(CH-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-である。
【0077】
式(16)~(18)の液晶性化合物は、2つの末端基がアルキルなどである化合物である。
【0078】
式(16)~(18)の液晶性化合物は、誘電率異方性の絶対値が小さいので、中性に近い化合物である。式(16)の化合物は、主として粘度の減少または光学異方性の調整に効果がある。式(17)の化合物および式(18)の化合物は、上限温度を高くすることによってネマチック相の温度範囲を広げる効果、または光学異方性の調整に効果がある。
【0079】
式(16)~(18)の液晶性化合物の含有量を増加させるにつれて組成物の誘電率異方性が小さくなるが粘度は小さくなる。そこで、素子のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は多い方が好ましい。IPSなどのモード用の組成物を調製する場合には、式(16)~(18)の液晶性化合物の含有量は、液晶媒体の重量に基づいて、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である。
【0080】
一般式(19)の重合性化合物
【化28】
【0081】
上記式(19)中、
環Fおよび環Iは独立して、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、テトラヒドロピラン-2-イル、1,3-ジオキサン-2-イル、ピリミジン-2-イル、またはピリジン-2-イルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、独立して、ハロゲン、炭素数1~12のアルキル、炭素数1~12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1~12のアルキルで置き換えられてもよく;
環Gは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,2-ジイル、ナフタレン-1,3-ジイル、ナフタレン-1,4-ジイル、ナフタレン-1,5-ジイル、ナフタレン-1,6-ジイル、ナフタレン-1,7-ジイル、ナフタレン-1,8-ジイル、ナフタレン-2,3-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、ナフタレン-2,7-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、またはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、独立して、ハロゲン、炭素数1~12のアルキル、炭素数1~12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1~12のアルキルで置き換えられてもよく;
22およびZ23は独立して単結合または炭素数1~10のアルキレンであり、このZ22およびZ23において、少なくとも1つの-CH-は、独立して、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CHCH-は、独立して、-CH=CH-、-C(CH)=CH-、-CH=C(CH)-、または-C(CH)=C(CH)-で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
、QおよびQは独立して重合性基であり;
Sp、SpおよびSpは独立して単結合または炭素数1~10のアルキレンであり、このSp、SpおよびSpにおいて、少なくとも1つの-CH-は、独立して、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CHCH-は、独立して、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において少なくとも1つの水素は独立してフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
dは0、1、または2であり;
e、f、およびgは独立して0、1、2、3、または4であり、そしてe、f、およびgの和は1以上である。
【0082】
上記一般式(19)において、Q、QおよびQが独立して下記一般式(Q-1)~(Q-5)のいずれかで表される重合性基であることが好ましい。
【化29】
上記式(Q-1)~式(Q-5)において、M、MおよびMは独立して、水素、フッ素、炭素数1~5のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1~5のアルキルである。
【0083】
液晶媒体がさらに、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤および消泡剤から選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0084】
<添加剤>
重合開始剤
重合性化合物は、重合開始剤を添加することによって、速やかに重合させることができる。反応温度を最適化することによって、残存する重合性化合物の量を減少させることができる。光ラジカル重合開始剤の例は、BASF社のダロキュアシリーズからTPO、1173、および4265であり、イルガキュアシリーズから184、369、500、651、784、819、907、1300、1700、1800、1850、および2959である。
【0085】
光ラジカル重合開始剤のさらなる例は、4-メトキシフェニル-2,4-ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2-(4-ブトキシスチリル)-5-トリクロロメチル-1,3,4-オキサジアゾール、9-フェニルアクリジン、9,10-ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2-メチル-1-[4-(メチル
チオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,4-ジエチルキサントン/p-ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物である。
上記で例示する光ラジカル重合開始剤は、重合開始剤として用いるだけでなく、本発明の実施形態においては、上記のように、液晶性化合物の配向を促進するための成分としても用いることができる。
【0086】
液晶組成物に光ラジカル重合開始剤を添加したあと、紫外線を照射することによって重合を行うことができる。しかし、未反応の重合開始剤または重合開始剤の分解生成物は、素子に画像の焼き付きなどの表示不良を引き起こすかもしれない。これを防ぐために重合開始剤を添加しないまま光重合を行ってもよい。照射する光の好ましい波長は150~500nmの範囲である。さらに好ましい波長は250~450nmの範囲であり、最も好ましい波長は300~400nmの範囲である。
【0087】
重合禁止剤
重合性化合物を保管するとき、重合を防止するために重合禁止剤を添加してもよい。重合性化合物は、通常は重合禁止剤を除去しないまま組成物に添加される。重合禁止剤の例は、ヒドロキノン、メチルヒドロキノンのようなヒドロキノン誘導体、4-t-ブチルカテコール、4-メトキシフェノ-ル、フェノチアジンなどである。
【0088】
光学活性化合物
光学活性化合物は、液晶分子にらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与えることによって逆ねじれを防ぐ、という効果を有する。光学活性化合物を添加することによって、らせんピッチを調整することができる。らせんピッチの温度依存性を調整する目的で2つ以上の光学活性化合物を添加してもよい。光学活性化合物の好ましい例として、下記の化合物(Op-1)~(Op-18)を挙げることができる。化合物(Op-18)において、環Jは1,4-シクロへキシレンまたは1,4-フェニレンであり、R28は炭素数1~10のアルキルである。
【0089】
【化30】
【0090】
酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、消泡剤
酸化防止剤は、大きな電圧保持率を維持するために有効である。酸化防止剤の好ましい例として、下記の化合物(AO-1)および(AO-2);IRGANOX 415、IRGANOX 565、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 3114、およびIRGANOX 1098(商品名:BASF社)を挙げる
ことができる。紫外線吸収剤は、上限温度の低下を防ぐために有効である。紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。具体例として下記の化合物(AO-3)および(AO-4);TINUVIN 329、TINUVIN P、TINUVIN 326、TINUVIN 234、TINUVIN 213、TINUVIN 400、TINUVIN 328、およびTINUVIN 99-2(商品名:BASF社);および1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を挙げることができる。
【0091】
立体障害のあるアミンのような光安定剤は、大きな電圧保持率を維持するために好ましい。光安定剤の好ましい例として、TINUVIN 144、TINUVIN 765、およびTINUVIN 770DF(商品名:BASF社)を挙げることができる。熱安定剤も大きな電圧保持率を維持するために有効であり、好ましい例としてIRGAFOS
168(商品名:BASF社)を挙げることができる。消泡剤は、泡立ちを防ぐために有効である。消泡剤の好ましい例は、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどである。
【0092】
<液晶表示素子の製造装置>
本発明の実施形態は、液晶表示素子の製造装置にも関する。
本発明の実施形態にかかる液晶表示素子の製造装置は、以下の構成を有する。
液晶性化合物を配向させるための配向膜を有さない又は配向処理を施していない一対の透明基板と、
互いに対向する該透明基板の面の少なくとも一方に配置された透明電極と、
前記一対の透明基板の間に封入され、液晶性化合物を含む液晶組成物と、
液晶性化合物の配向に用いられる重合性基を有する成分を含む液晶媒体とを含む、液晶表示素子の構成材料を載置する台座と、
前記液晶表示素子の構成材料に光を照射する光源と、
前記光源からの光を遮断するフォトマスクと、
前記光源から液晶表示素子の構成材料への光の照射領域の境界を移動させるための、前記フォトマスク及び前記台座の少なくとも一方を移動させるための手段と、を有する。
【0093】
本発明の実施形態にかかる液晶表示素子を構成する材料は、上記液晶表示装置の製造方法と同じものを用いることができる。また、液晶表示素子に封入する液晶媒体の組成や、その組成比も上記で説明した液晶表示装置の製造方法と同じものを用いることができる。
本発明の実施形態にかかる液晶表示装置の製造装置は、光源からの光の照射領域の境界を移動させるための前記フォトマスク及び前記台座の少なくとも一方を移動させるための手段を有する。
前記フォトマスク及び前記台座を移動させるための手段は特に制限ないが、アクチュエータで制御される水平搬送機構などが挙げられる。
光の照射領域の境界を移動させるには、フォトマスクのみを移動させる場合、液晶表示素子の構成材料を載置した台座を移動させる場合、及びそれらの両方を移動させる場合がある。
フォトマスクと台座の両方を移動させる場合、互いに移動方向が異なるように移動させることもできる。
フォトマスク及び前記台座の少なくとも一方を水平搬送機構に備え付けることで、これらの部材を移動させることができる。
【0094】
前記フォトマスク及び台座の少なくとも一方の移動速度は、5μm/s~100mm/sとなるように設定されることが好ましい。このような速度で移動させると、光照射による重合性基を有する成分の重合が所望の速度で起こり、前記で説明したずり応力が適切に発生することで、液晶性化合物の配向が良好になる。
また、前記フォトマスクと、前記台座に載置された液晶表示素子の構成材料の光照射側の面との間隔が、1cm以下であることが好ましい。ここで、前記光照射側の面とは、液晶表示素子を構成する透明基板の表面である。この間隔が1cm以下であることで、光照射の光が滲むことなく重合性基を有する成分にまで到達し、重合が良好に行われるので好ましい。
【実施例
【0095】
<実施例1>
液晶性化合物の配向に用いられる重合性基を有する成分として、以下の化合物(A)が5重量%、液晶性化合物の配向を促進するための化合物として化合物(B)が1重量%となるように液晶組成物(a)に溶解させ、液晶媒体(1)を得た。
NI=74.8℃;η=14.1mPa・s;Δn=0.101;Δε=-2.8
【化31】
【0096】
【化32】
【0097】
得られた液晶媒体(1)をセル(上面:ベアガラス、下面:ITOパターニングガラス、セルギャップ3.2μm、)に毛管力で注入した。なお、セルのガラス基板は配向処理を施していない。このセルをクロスニコルにした2枚の偏光板に挟み、セルを回転させながら目視および偏光顕微鏡で観察した。その結果、いずれも暗視野で観察され、セル内の液晶媒体に含まれる液晶性化合物はホメオトロピック配向していることを確認した。
【0098】
このセルを室温で、15mW/cmの紫外線を照射しセル内の化合物(A)及び化合物(B)を重合させポリマーとした。その際に板状マスクを10μm/sの速さで移動さ
せながら照射し、照射部と非照射部を徐々にずらし、端から徐々に重合をしていく方法をとった。具体的には、照射開始時は液晶セルを完全に覆っている状態とし、そこから徐々に移動させ照射部を広げていき、最終的にはセル全体を照射する位置まで移動した。紫外線の照射には、ウシオ電機株式会社製のUV-ランプ250BYを用いた。
【0099】
このセルをクロスニコルにした2枚の偏光板に挟み、セルを回転させながら目視および偏光顕微鏡で観察した。その結果、45度周期で明暗を繰り返すことからホモジニアス配向であることを確認した。
【0100】
<実施例2~12>
化合物(B)を他の化合物に変更し、移動速度を各値に変更した以外は、実施例1に準じて、以下の表1に示す液晶媒体(2)~(12)を調製した。各液晶媒体について、実施例1と同様に偏光顕微鏡で観察した結果、液晶性化合物はホモジニアス配向していることを確認した。
【表1】
図1