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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】電気接続ユニット材セット
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20220525BHJP
   H02G 15/02 20060101ALI20220525BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
H01B7/00 302
H01B7/00 306
H02G15/02
H01R4/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018048640
(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公開番号】P2019160706
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】李 江
(72)【発明者】
【氏名】佐川 正彦
(72)【発明者】
【氏名】澤樹 良昭
(72)【発明者】
【氏名】平山 祥之
(72)【発明者】
【氏名】中里 秀樹
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-246298(JP,A)
【文献】特開2016-110850(JP,A)
【文献】特開2011-181189(JP,A)
【文献】特開2014-143905(JP,A)
【文献】特開2007-005093(JP,A)
【文献】特開2012-033386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H02G 15/02
H01R 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車が備える2つの電気部品の間を電気的に接続する電気接続ユニット材を複数束ねて構成される電気接続ユニット材セットであって、
それぞれの前記電気接続ユニット材は、
断面形状が矩形である細長い導体、及び、当該導体の周囲を被覆する絶縁層を有する複数の平角線と、
複数の前記平角線に取り付けられる導電部材と、
を備え、
複数の平角線は、2×2の2次元でマトリクス状に配列され、
それぞれの前記平角線には、長手方向の一部の長さにおいて、前記導体が前記絶縁層に被覆されずに露出している導体露出部が形成され、
複数の前記平角線の前記導体露出部が互いに接触又は近接して配置された状態で、複数の前記導体露出部が前記導電部材に固定され、
それぞれの前記電気接続ユニット材において、複数の前記平角線は、前記絶縁層による被覆部分を接触又は近接させるように配置されて平角線群を構成し、
複数の前記平角線群同士が束ねられて平角線群セットを構成しており、
前記平角線群セットの長手方向に垂直に切って現れる当該平角線群セットの断面が一様であり、
前記平角線の長さが、全ての前記電気接続ユニット材の間で互いに等しく、
それぞれの前記電気接続ユニット材において、複数の前記平角線は、何れも長さが等しく、
それぞれの前記電気接続ユニット材において、複数の前記平角線の長手方向中間部同士
が互いに接触又は近接して束を形成しており、
前記束の部分に、
一側に曲がる第1曲げ部と、
前記第1曲げ部と反対側に曲がる第2曲げ部と、
が形成されており、
それぞれの前記電気接続ユニット材において、前記第2曲げ部が前記第1曲げ部と反対側に曲がることで、前記第1曲げ部における前記平角線の経路長の差と前記第2曲げ部における前記平角線の経路長の差とが相殺され、これによって複数の平角線の長さが一致することを特徴とする電気接続ユニット材セット。
【請求項2】
請求項に記載の電気接続ユニット材セットであって、
それぞれの前記電気接続ユニット材において、前記導電部材は、複数の前記平角線の前記導体露出部が束ねられた部分の周囲に巻き付けられる巻付け部を有することを特徴とする電気接続ユニット材セット。
【請求項3】
請求項に記載の電気接続ユニット材セットであって、
それぞれの前記電気接続ユニット材において、前記導電部材は、複数の前記平角線の前記導体露出部が直列状に並べられた部分に接触する平面部を有することを特徴とする電気接続ユニット材セット。
【請求項4】
請求項1からまでの何れか一項に記載の電気接続ユニット材セットであって、
それぞれの前記電気接続ユニット材において、前記導電部材は、電気的に接続される全ての前記平角線の前記導体露出部に接触した状態で、前記導体露出部に固定されることを特徴とする電気接続ユニット材セット。
【請求項5】
請求項1からまでの何れか一項に記載の電気接続ユニット材セットであって、
それぞれの前記電気接続ユニット材において、前記導体の側面に前記導電部材が固定されていることを特徴とする電気接続ユニット材セット。
【請求項6】
請求項に記載の電気接続ユニット材セットであって、
それぞれの前記電気接続ユニット材において、それぞれの前記平角線の長手方向端部に前記導体露出部が形成されており、
前記導電部材は、前記導体の長手方向端部が前記導電部材からハミ出ないように、前記導体露出部に固定されることを特徴とする電気接続ユニット材セット。
【請求項7】
請求項1からまでの何れか一項に記載の電気接続ユニット材セットであって、
それぞれの前記電気接続ユニット材において、前記導体の長手方向の端面に前記導電部材が固定されていることを特徴とする電気接続ユニット材セット。
【請求項8】
請求項1からまでの何れか一項に記載の電気接続ユニット材セットであって、
それぞれの前記電気接続ユニット材において、複数の前記平角線が有する前記導体の断面形状は互いに一致しており、
複数の前記平角線の前記導体露出部は、前記導体の断面の向きが互いに一致した状態で2次元で配列されており、
前記導体露出部が配列される方向は、前記導体の断面形状である矩形の何れかの辺に平行であることを特徴とする電気接続ユニット材セット。
【請求項9】
請求項1からまでの何れか一項に記載の電気接続ユニット材セットであって、
それぞれの前記電気接続ユニット材は、複数の前記平角線の長手方向中間部同士の間に差し込まれるスペーサ部を備えることを特徴とする電気接続ユニット材セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車において電気部品同士を電気的に接続する構成に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電源に接続されて電気部品に電気を供給するバスバーを開示する。このバスバーは、隣接する他のバスバー等との短絡を防止するため、周囲に絶縁被覆が設けられている。特許文献1においては、導電部材に絶縁性樹脂を塗布した後、硬化させることにより、絶縁被覆が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-066435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成では、絶縁層の厚さがバスバーの形状によって変化するために、絶縁性能が不十分になる部分が生じるおそれがあった。また、バスバーの導体を形成する加工のために金型が必要になるので、製造コストの増大を招いていた。
【0005】
なお、絶縁被覆付きのバスバーの代わりに、可撓性を有する電線を束ねたワイヤハーネスを用いて電気的な接続を行う構成も考えられる。しかしながら、電線に可撓性がある場合、自動車の振動等によって電線束が大きく振られるため、多数の箇所で電線を固定しないとワイヤハーネスに損傷が生じるおそれがあった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、周囲に対して安定して絶縁できる安価な電気接続構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の、自動車が備える2つの電気部品の間を電気的に接続する電気接続ユニット材を複数束ねて構成される電気接続ユニット材セットが提供される。即ち、それぞれの前記電気接続ユニット材は、複数の平角線と、導電部材と、を備える。前記平角線は、断面形状が矩形である細長い導体、及び、当該導体の周囲を被覆する絶縁層を有する。前記導電部材は、複数の前記平角線に取り付けられる。複数の平角線は、2×2の2次元でマトリクス状に配列される。それぞれの前記平角線には、長手方向の一部の長さにおいて、前記導体が前記絶縁層に被覆されずに露出している導体露出部が形成される。複数の前記平角線の前記導体露出部が互いに接触又は近接して配置された状態で、複数の前記導体露出部が前記導電部材に固定される。それぞれの前記電気接続ユニット材において、複数の前記平角線は、前記絶縁層による被覆部分を接触又は近接させるように配置されて平角線群を構成する。複数の前記平角線群同士が束ねられて平角線群セットを構成している。前記平角線群セットの長手方向に垂直に切って現れる当該平角線群セットの断面が一様である。前記平角線の長さが、全ての前記電気接続ユニット材の間で互いに等しい。それぞれの前記電気接続ユニット材において、複数の前記平角線は、何れも長さが等しい。それぞれの前記電気接続ユニット材において、複数の前記平角線の長手方向中間部同士が互いに接触又は近接して束を形成している。前記束の部分に、一側に曲がる第1曲げ部と、前記第1曲げ部と反対側に曲がる第2曲げ部と、が形成される。それぞれの前記電気接続ユニット材において、前記第2曲げ部が前記第1曲げ部と反対側に曲がることで、前記平角線の経路長の差が2つの曲げ部によって相殺され、これによって複数の平角線の長さが一致する。
【0009】
これにより、電流が流れる経路として平角線を用いることで、電気接続構造を安価に構成することができる。大きな電流容量が必要な場合でも、複数の平角線を用いることで容易に対応することができる。狭い空間に複数の平角線をコンパクトに配置することができる。また、平角線の絶縁層を樹脂の押出しにより形成することで、絶縁層の厚みを均一にでき、安定した絶縁性能を実現できる。独立した複数の電流経路を、コンパクトな構成で実現することができる。また、複数の電気接続ユニットをまとめることで、取扱いが容易になる。電気接続ユニット材セットのコンパクトな構成を実現でき、狭い空間に配線することが容易になる。記平角線の長さが、全ての前記電気接続ユニット材の間で互いに等しいので、独立した複数の電流経路の間で、長さを均等にすることができる。第1曲げ部と第2曲げ部とにより経路長の差を互いに相殺することができる。
【0010】
前記の電気接続ユニット材セットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、それぞれの前記電気接続ユニット材において、前記導電部材は、複数の前記平角線の前記導体露出部が束ねられた部分の周囲に巻き付けられる巻付け部を有する
【0011】
これにより、複数の導体露出部をコンパクトに束ねて固定するとともに、その部分での電気的接続を実現することができる。
【0012】
前記の電気接続ユニット材セットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、それぞれの前記電気接続ユニット材において、前記導電部材は、複数の前記平角線の前記導体露出部が直列状に並べられた部分に接触する平面部を有する
【0013】
これにより、複数の導体露出部に対し、導電部材を簡素な構成で接続することができる。
【0014】
前記の電気接続ユニット材セットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、それぞれの前記電気接続ユニット材において、前記導電部材は、電気的に接続される全ての前記平角線の前記導体露出部に接触した状態で、前記導体露出部に固定される
【0015】
これにより、全ての導体露出部の導電部材への固定及び電気的接続を、確実に行うことができる。
【0016】
前記の電気接続ユニット材セットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、それぞれの前記電気接続ユニット材において、前記導体の側面に前記導電部材が固定されている
【0017】
これにより、絶縁層を適宜の長さにわたって除去することによって、導体露出部と導電部材とを固定する面積を容易に確保することができる。
【0018】
前記の電気接続ユニット材セットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、それぞれの前記電気接続ユニット材において、それぞれの前記平角線の長手方向端部に前記導体露出部が形成されている。前記導電部材は、前記導体の長手方向端部が前記導電部材からハミ出ないように、前記導体露出部に固定される。
【0019】
これにより、導電部材から導体露出部が不揃いにハミ出すことを防止できる。
【0020】
前記の電気接続ユニット材セットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、それぞれの前記電気接続ユニット材において、前記導体の長手方向の端面に前記導電部材が固定されている
【0021】
これにより、導体露出部を多数束ねた場合でも、それぞれの導体露出部を導電部材に容易に電気的に接続することができる。
【0022】
前記の電気接続ユニット材セットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、それぞれの前記電気接続ユニット材において、複数の前記平角線が有する前記導体の断面形状は互いに一致している。複数の前記平角線の前記導体露出部は、前記導体の断面の向きが互いに一致した状態で次元で配列されている。前記導体露出部が配列される方向は、前記導体の断面形状である矩形の何れかの辺に平行である。
【0023】
これにより、複数の導体露出部を小さくまとめて配置して、導電部材に固定することができる。
【0028】
前記の電気接続ユニット材セットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、それぞれの前記電気接続ユニット材は、複数の前記平角線の長手方向中間部同士の間に差し込まれるスペーサ部を備える
【0029】
これにより、スペーサ部によって平角線の周囲に隙間を形成することができるので、放熱によって良好に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態に係る電気接続ユニット材セットの全体的な構成を示す斜視図。
図2】電気接続ユニット材を構成する平角線の導体と絶縁層を詳細に示す斜視図。
図3】平角線の導体露出部を接続端子に取り付ける様子を示す図。
図4】第1変形例の電気接続ユニット材を示す斜視図。
図5】第2変形例の電気接続ユニット材を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電気接続ユニット材セット60の全体的な構成を示す斜視図である。図2は、電気接続ユニット材51を構成する平角線1の導体2と絶縁層3を詳細に示す斜視図である。図3は、平角線1の導体露出部4を接続端子11に取り付ける様子を示す図である。
【0040】
図1に示す電気接続ユニット材セット60は、自動車が備える2つの電気部品の間を電気的に接続するものである。電気接続ユニット材セット60は、例えば、自動車に設けられた図略の電気接続箱の内部に配置される。
【0041】
本実施形態の電気接続ユニット材セット60は、電気自動車の3相モータと、当該3相モータを制御するインバータと、を繋ぐために用いられる。しかしながら、電気接続ユニット材セット60は、上記以外にも様々な電気部品に接続して用いることができる。
【0042】
電気接続ユニット材セット60は、3つの電気接続ユニット材51を備える。電気接続ユニット材51は、例えば、48ボルト以上かつ1アンペア以上の配電系統と接続される。
【0043】
3つの電気接続ユニット材51は、3相モータ側の端子(U,V,W)、及び、インバータ側の端子(R,S,T)に対応して設けられている。電気接続ユニット材セット60を介してインバータから3相交流が供給されることにより、3相モータを駆動することができる。
【0044】
それぞれの電気接続ユニット材51は、細長く形成された平角線1と、接続端子(導電部材)11と、を備える。1つの電気接続ユニット材51につき、平角線1は複数(4本)設けられる。電流は、4本の平角線1に分配されて並行的に流れる。接続端子11は、平角線1の長手方向一側の端部に配置されている。
【0045】
それぞれの平角線1は、図2に示すように、細長い導体2と、絶縁層3と、を備える。
【0046】
導体2は、電気の良導体、例えば銅等の金属により形成されている。この導体2は、長手方向と垂直に切った断面が矩形となるように形成されている。電気接続ユニット材セット60が備える全ての平角線1において、導体2の断面形状は同一である。
【0047】
導体2の製造方法は様々に考えられるが、例えば、押出成形したり、丸線を圧延加工することで得ることができる。加工のための金型が部品ごとに必要となるバスバーと比較して、導体2の製造コストを小さくすることができる。
【0048】
導体2の断面形状の矩形の大きさは任意であるが、幅が1mm以上かつ厚さが0.5mm以上であることが好ましい。これにより、平角線1の撓みが殆ど生じなくなるので、乗用車の振動が電気接続ユニット材セット60に加わっても平角線1が大きく振られず、導体2の破損を防止することができる。
【0049】
絶縁層3は、4角筒状に形成され、導体2の周囲を被覆する。絶縁層3の厚みは、例えば数十~数百μmとすることができる。
【0050】
絶縁層3は、電気絶縁性を有する樹脂を押出し成形することにより形成されることが好ましい。これにより、例えば塗布により絶縁層を形成する場合に比べて、絶縁層3の厚みの均一性を著しく向上させることができ、安定した絶縁を実現することができる。
【0051】
それぞれの平角線1の長手方向一端部において、その長さの一部にわたって絶縁層3が剥ぎ取られて、内部の導体2が露出している。以下の説明では、平角線1の絶縁層3が除去されて内部の導体2が露出した部分を、導体露出部4と呼ぶことがある。前述のとおり導体2の断面形状は矩形であるので、導体露出部4の部分の導体2は4角柱状となっている。
【0052】
1つの電気接続ユニット材51につき、4本の平角線1は2×2の2次元で(マトリクス状に)配列され、互いに平行に配置されている。4本の平角線1は、平角線群を構成している。平角線1が絶縁層3により被覆された部分(平角線1の長手方向中間部)において、平角線群を構成する4本の平角線1は、絶縁層3の表面同士を互いに接触させながら配置され、束を形成している。これにより、狭い空間に4本の平角線1をコンパクトに配線することができる。
【0053】
図1に示す平角線1の長手方向中間部には、絶縁層3により被覆された部分の適宜の箇所に、例えば第1曲げ部7及び第2曲げ部8のように曲げが形成されている。これにより、複雑な経路での配線が可能になる。4本の平角線1は同一の箇所で束のまま曲げられるので、4本の平角線1が隙間なくまとめられた状態が維持される。言い換えれば、絶縁層3で覆われた部分であれば、その長手方向のどこで切ったとしても、平角線群の断面(言い換えれば、平角線1の断面の集合)は一様である。従って、電気接続ユニット材51による配線経路が太くなることを防止できる。
【0054】
平角線1の長手方向中間部には、3つの電気接続ユニット材51の平角線群を束ねて保持する結束部材21が取り付けられている。結束部材21は、合成樹脂により適宜の形状に成形されている。
【0055】
結束部材21の構成は任意であるが、例えば、複数の平角線1を挟み込んで固定する1対のアームを有する構成が考えられる。これにより、電気接続ユニット材セット60を構成する12本の平角線1を、1箇所にまとめた状態で保持することができる。なお、以下の説明では、3つの平角線群(12本の平角線1)をまとめたものを「平角線群セット」と呼ぶことがある。
【0056】
電気接続ユニット材51の平角線群を構成する4本の平角線1は、何れも長さが等しくなっている。これにより、電流が流れる経路の長さのバラツキを防止することができる。これに関連して、上述した平角線1の束の曲げは、図1に示すように、一側に曲がる第1曲げ部7と、それと反対方向に曲がる第2曲げ部8と、の組合せを含んでいる。これにより、経路長の差が相殺されるので、4本の平角線1の長さを揃え易くすることができる。
【0057】
4本の平角線1のそれぞれに形成される導体露出部4は、絶縁層3で覆われる部分と同様に、2×2の2次元で(マトリクス状に)配列される。導体露出部4の部分において、露出する4本の導体2は何れも直線状に延びており、互いに平行に配置される。4つの導体露出部4は、その断面の向きが全て一致した状態で配置されている。導体露出部4が並べられる2つの方向は、導体露出部4における導体2の断面形状である矩形の何れかの辺に平行である。言い換えれば、導体露出部4は、導体2の断面である矩形の何れかの辺に平行な方向に並べられるとともに、当該辺と隣り合う辺と平行な方向にも並べられる。
【0058】
接続端子11は、電気の良導体(例えば、金属)により、適宜の厚みを有する板状の部材として構成されている。この接続端子11には、接続相手の電気部品に例えばボルト等により固定するための貫通孔が形成されている。
【0059】
接続端子11の一部には、巻付け部12が一体的に形成されている。この巻付け部12は、4本の平角線1の導体露出部4を束ねるように4角筒状に折り曲げられる。これにより、巻付け部12が4つの導体露出部4の周囲に巻かれ、4つの導体露出部4のそれぞれにおいて、導体2の長手方向と垂直な方向を向く面が、巻付け部12の内壁と接触する。
【0060】
この状態で、4本の平角線1の導体露出部4と、巻付け部12の内壁とが溶接される。これにより、4つの導体露出部4が接続端子11に機械的に固定されるとともに、電気的に接続される。なお、導体露出部4と巻付け部12との間の固定は、溶接以外の方法、例えば半田付けによって行われても良い。
【0061】
巻付け部12の内部で、4つの導体露出部4は、小さな隙間をあけて互いに近接して配置されている。ただし、4つの導体露出部4を締め付けるように巻付け部12をきつく巻き付けて、導体露出部4同士を互いに接触させるように構成しても良い。また、隣り合う導体露出部4同士を、溶接等の適宜の方法で互いに固定しても良い。
【0062】
巻付け部12によって束ねられる導体露出部4の数(言い換えれば、電気接続ユニット材51を構成する平角線1の数)は任意であり、1次元で並べられても良いし、2次元で並べられても良い。導体露出部4がM×Nの2次元で(マトリクス状に)配列される場合、MとNのうち少なくとも何れかが2であることが好ましい。これは、仮にMとNが何れも3以上であると、束ねられた中央に位置する導体露出部4が巻付け部12の内壁と直接接触しなくなり、巻付け部12に安定して固定することが困難になってしまうためである。この点、本実施形態では導体露出部4が2×2の配列となっているため、接続端子11の巻付け部12は、束ねられる全ての導体露出部4に接触した状態で、当該導体露出部4に固定される。従って、固定強度及び電気的接続の安定性を確保することができる。
【0063】
折り曲げられた巻付け部12の先端は、接続端子11に対して溶接等により固定される。これにより、巻付け部12の機械的強度を高めることができる。
【0064】
なお、平角線1に上記のように曲げを形成する加工の誤差等により、導体露出部4の先端部が4本の平角線1の間で一致せず、当該先端部の位置がバラつくことがある。この場合、4つの導体露出部4の先端部のうち最も突出している先端部に、4角筒状に形成された巻付け部12の軸方向端部の位置を合わせるように、巻付け部12が固定される。これにより、接続端子11は、平角線1の長手方向に垂直な方向(側面方向)から見て、平角線1の長手方向端部が接続端子11から露出しないように、導体露出部4に固定される。このように導体露出部4がハミ出ないように接続端子11が固定されるので、接続端子11(具体的には、巻付け部12)から導体露出部4が不揃いに突出するのを防止することができる。
【0065】
3相モータを駆動するインバータは、例えば数kHzのPWMキャリア周波数で動作する。このような高周波の交流を導体に流す場合、電流が導体の表面近くに集中して流れるため、交流抵抗が高くなる(表皮効果)。この点、本実施形態では、4本の平角線1の長手方向における大部分が絶縁層3によって電気的に絶縁されているため、実質的な表面積を大きく確保することができる。これにより、導体抵抗の増加を抑制することができる。
【0066】
電気接続ユニット材セット60を構成する3つの電気接続ユニット材51の間で、平角線群の長さ(平角線1の長さ)は互いに等しくなるように定められている。これにより、電気経路の長さを3相の間で揃えることができるので、3相モータをインバータにより良好に制御することができる。
【0067】
以上に説明したように、本実施形態の電気接続ユニット材51は、4本の平角線1と、接続端子11と、を備える。平角線1は、断面形状が矩形である細長い導体2、及び、当該導体2の周囲を被覆する絶縁層3を有する。接続端子11は、複数の平角線1に取り付けられる。それぞれの平角線1には、長手方向の一部の長さにおいて、導体2が絶縁層3に被覆されずに露出している導体露出部4が形成される。複数の平角線1の導体露出部4が互いに接触又は近接して配置された状態で、複数の導体露出部4が接続端子11に固定される。
【0068】
これにより、電流が流れる経路として平角線1を用いることで、バスバー等と比較して、電気接続構造を安価に構成することができる。大きな電流容量が必要な場合でも、複数の平角線1を用いることで容易に対応することができる。また、平角線1の絶縁層3を樹脂の押出しにより形成することで、絶縁層3の厚みを均一にでき、安定した絶縁性能を実現できる。
【0069】
また、本実施形態の電気接続ユニット材51において、接続端子11は、4本の平角線1の導体露出部4が束ねられた部分の周囲に巻き付けられる巻付け部12を有する。
【0070】
これにより、4つの導体露出部4をコンパクトに束ねて固定するとともに、その部分での電気的接続を実現することができる。
【0071】
また、本実施形態の電気接続ユニット材51において、接続端子11は、電気的に接続される4本全ての平角線1の導体露出部4に接触した状態で、当該導体露出部4に固定される。
【0072】
これにより、全ての導体露出部4の接続端子11への固定及び電気的接続を、確実に行うことができる。
【0073】
また、本実施形態の電気接続ユニット材51においては、導体2の長手方向に垂直な方向を向く面(言い換えれば、導体2の側面)に、接続端子11が固定されている。
【0074】
これにより、絶縁層3を適宜の長さにわたって除去することによって、導体露出部4と接続端子11とを固定する面積を容易に確保することができる。
【0075】
また、本実施形態の電気接続ユニット材51において、それぞれの平角線1の長手方向端部に導体露出部4が形成されている。接続端子11は、導体2の長手方向端部が接続端子11(巻付け部12)からハミ出ないように、前記導体露出部4に固定される。
【0076】
これにより、接続端子11から導体露出部4が不揃いにハミ出すことを防止できる。
【0077】
また、本実施形態の電気接続ユニット材51において、4本の平角線1が有する導体2の断面形状は互いに一致している。複数の平角線1の導体露出部4は、導体2の断面の向きが互いに一致した状態で2次元で配列されている。導体露出部4が配列される方向は、導体2の断面形状である矩形の何れかの辺に平行である。
【0078】
これにより、複数の導体露出部4を小さくまとめて配置して、接続端子11に固定することができる。
【0079】
また、本実施形態の電気接続ユニット材51において、4本の平角線1は、何れも長さが等しい。
【0080】
これにより、電流経路の長さを均等にすることができる。
【0081】
また、本実施形態の電気接続ユニット材51において、4本の平角線1の長手方向中間部同士が互いに接触して束を形成している。この束の部分に、第1曲げ部7と、第2曲げ部8と、が形成されている。第1曲げ部7は、一側に曲がる。第2曲げ部8は、第1曲げ部7と反対側に曲がる。
【0082】
これにより、平角線1の経路長の差が2つの曲げ部によって相殺されるので、4本の平角線1の長さを一致させることが容易になる。
【0083】
なお、電気接続ユニット材51の結束部材21に、平角線1の間に差し込まれる適宜の形状のスペーサ部が形成されても良い。この場合、4本の平角線1のそれぞれの絶縁層3の間に、スペーサ部の大きさに応じた隙間が形成される。4本の平角線1は、当該隙間をあけて、互いに近接して配置される。
【0084】
この構成では、スペーサ部によって平角線1の周囲に隙間を形成することができるので、放熱によって良好に冷却することができる。
【0085】
また、本実施形態の電気接続ユニット材51において、4本の平角線1は、絶縁層3による被覆部分を接触させるように配置されて平角線群を構成している。絶縁層3による被覆部分において、平角線群の長手方向に垂直に切って現れる平角線群の断面が一様である。
【0086】
これにより、電気接続ユニット材51のコンパクトな構成を実現でき、狭い空間に配線することが容易である。
【0087】
また、本実施形態の電気接続ユニット材セット60は、電気接続ユニット材51を複数束ねて構成される。
【0088】
これにより、インバータと3相モータとの間の3つの電流経路を、コンパクトな構成で実現することができる。また、複数の電気接続ユニット材51をまとめることで、取扱いが容易になる。
【0089】
また、本実施形態の電気接続ユニット材セット60では、4本の平角線1からなる平角線群同士が結束部材21により束ねられて、12本の平角線1からなる平角線群セットを構成している。平角線群セットの長手方向に垂直に切って現れる当該平角線群セットの断面が一様である。
【0090】
これにより、電気接続ユニット材セット60のコンパクトな構成を実現でき、狭い空間に配線することが容易になる。
【0091】
また、本実施形態の電気接続ユニット材セット60では、平角線1の長さが、全ての電気接続ユニット材51の間で互いに等しい。
【0092】
これにより、独立した複数の電流経路の間で、長さを均等にすることができる。
【0093】
次に、上記実施形態の変形例を説明する。図4は、第1変形例の電気接続ユニット材51aを示す斜視図である。図5は、第2変形例の電気接続ユニット材51bを示す斜視図である。なお、第1変形例及び第2変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0094】
図4に示す第1変形例の電気接続ユニット材51aは、接続端子11に巻付け部12が形成されていない点で、前述の実施形態と異なる。
【0095】
この電気接続ユニット材51aにおいて、接続端子11の厚み方向一側の面は、平坦な平面部13として構成されている。この平面部13に、1次元方向に多数配列された平角線1の導体露出部4が溶接等により固定される。直列状に並べられた導体露出部4同士は、小さな隙間をあけて互いに近接している。
【0096】
本変形例では、巻付け部12を形成するための加工を省略することができるので、接続端子11の製造コストを低減することができる。
【0097】
図5に示す第2変形例の電気接続ユニット材51bも、接続端子11に巻付け部12が形成されていない。また、平角線1に形成される導体露出部4の長さが、前述の実施形態と比較して短くなっている。
【0098】
接続端子11には、垂直に曲げられた折曲げ部14が形成される。この折曲げ部14の厚み方向一側の面が、導体露出部4において露出されている導体2の長手方向一側の端面に固定される。
【0099】
この第2変形例では、それぞれの導体露出部4において、導体2の長手方向の端面が接続端子11に固定される。図5では導体露出部4(平角線1)が2×5の2次元配列をなしているが、これを例えば3×3の2次元配列とした場合でも、束ねられた中央に位置する導体露出部4を接続端子11に容易に固定することができる。
【0100】
以上に説明したように、図4に示す第1変形例の電気接続ユニット材51aにおいては、接続端子11は、複数の平角線1の導体露出部4が直列状に並べられた部分に接触する平面部13を有する。
【0101】
これにより、簡素な構成の電気接続ユニット材51aを提供することができる。
【0102】
また、図5に示す第2変形例の電気接続ユニット材51bにおいては、それぞれの平角線1において、導体露出部4は導体2の長手方向の端面を露出させている。この導体2の端面に接続端子11が固定されている。
【0103】
これにより、導体露出部4を様々に配置した場合でも、接続端子11をそれぞれの導体露出部4に容易に固定することができる。
【0104】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0105】
平角線1は、導体2と絶縁層3との間に、中間層(例えば、エナメル層)が形成された構成であっても良い。
【0106】
1つの電気接続ユニット材51を構成する平角線1は、複数であれば任意であり、何本であっても良い。例えば、図1に示す電気接続ユニット材51において、3本の導体露出部4を1次元で(言い換えれば、直列状に1列で)配列し、その周囲に巻付け部12を巻き付けて固定することができる。平角線1の本数を増やすことで、電流容量を増加させて、高電圧/大電流での用途に容易に対応することができる。
【0107】
接続端子11の形状及び大きさは、任意に変更することができる。例えば、図1に示す電気接続ユニット材51において、1つの接続端子11に複数の巻付け部12が形成されても良い。
【0108】
接続端子11に垂直な曲げ部を形成して、導体露出部4において、導体2の長手方向と垂直な方向を向く面と、導体2の長手方向の端面と、の両方が接続端子11に固定されても良い。
【0109】
図5の第2変形例において、接続端子11の片側だけでなく両側の面に導体露出部4が並べて固定されても良い。
【0110】
接続端子11は、複数の平角線1からなる平角線群の長手方向一側の端部にだけ設けられても良いし、両側の端部に設けられても良い。
【0111】
結束部材21の形状は任意であり、例えばリング状に構成されても良い。また、例えば粘着テープを結束部材として用いて、12本の平角線1を結束しても良い。
【0112】
電気接続ユニット材51,51a,51bは、電気接続ユニット材セット60の一部ではなく、単独で使用されても良い。
【0113】
電気接続ユニット材セット60は、2つ又は4つ以上の電気接続ユニット材51,51a,51bによって構成されても良い。
【0114】
電気接続ユニット材セット60に複数の結束部材21が設けられても良い。また、結束部材21は、1つの電気接続ユニット材51につき1つ設けられ、4本の平角線1を保持するように構成しても良い。
【0115】
電気接続ユニット材51及び電気接続ユニット材セット60は、電気自動車に限らず、例えばハイブリッド車に適用することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 平角線
2 導体
3 絶縁層
4 導体露出部
11 接続端子(導電部材)
12 巻付け部
13 平面部
51 電気接続ユニット材
60 電気接続ユニット材セット
図1
図2
図3
図4
図5