(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】符号化装置、復号装置、及びホログラム記録・再生装置
(51)【国際特許分類】
G11B 20/18 20060101AFI20220525BHJP
G11B 20/10 20060101ALI20220525BHJP
G11B 7/0065 20060101ALI20220525BHJP
H03M 13/39 20060101ALI20220525BHJP
H03M 13/19 20060101ALI20220525BHJP
G03H 1/04 20060101ALI20220525BHJP
G03H 1/22 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
G11B20/18 522D
G11B20/10 341B
G11B7/0065
G11B20/18 512C
G11B20/18 572C
G11B20/18 522B
H03M13/39
H03M13/19
G03H1/04
G03H1/22
(21)【出願番号】P 2018109748
(22)【出願日】2018-06-07
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100185225
【氏名又は名称】齋藤 恭一
(72)【発明者】
【氏名】石井 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】片野 祐太郎
(72)【発明者】
【氏名】室井 哲彦
(72)【発明者】
【氏名】木下 延博
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-041525(JP,A)
【文献】特開2005-221932(JP,A)
【文献】特開2012-027996(JP,A)
【文献】特開2003-091697(JP,A)
【文献】特開2005-302079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 20/18
G11B 20/10
G11B 7/0065
H03M 13/39
H03M 13/19
G03H 1/04
G03H 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多値ピクセルを用いてn:r変調されている2次元信号を復号する復号装置であって、
前記2次元信号を、rピクセルのブロックにブロック化するブロック抽出部と、
ブロック化されたrピクセルの信号値から、nbitの硬判定を行う硬判定部と、
硬判定されたnbitのデータに基づいて、尤度を算出するビットを0とした第1nbitと、尤度を算出するビットを1とした第2nbitを作成し、前記第1nbitを対応する第1rピクセルデータに変換するとともに、前記第2nbitを対応する第2rピクセルデータに変換し、第1及び第2rピクセルデータと規格化されたrピクセルの信号値との距離の二乗の差分に基づいて、前記ビットの尤度を算出するLLR算出部と、
前記LLR算出部で算出された尤度に基づいて、nbitの誤り訂正復号処理を行う誤り訂正復号部と、
を備える復号装置。
【請求項2】
多値ピクセルを用いてn:r変調されている2次元信号を復号する復号装置であって、
前記2次元信号を、rピクセルのブロックにブロック化するブロック抽出部と、
ブロック化されたrピクセルの信号の位置情報から、m(ただしm<n)bitの情報を復号する第1復号部と、
ブロック化されたrピクセルの信号の多値情報から、(n-m)bitの情報を復号する第2復号部と、
を備える復号装置。
【請求項3】
請求項2に記載の復号装置において、前記第1復号部は、
ブロック化されたrピクセルの検出信号の位置情報から、mbitの硬判定を行う第1硬判定部と、
硬判定されたmbitのデータに基づいて、尤度を算出するビットを1とした第1mbitと、尤度を算出するビットを0とした第2mbitを作成し、前記第1mbitに対応する第1rピクセル位置データと前記第2mbitに対応する第2rピクセル位置データとの差分と、規格化されたrピクセルの信号値とのビットごとの積の平均値に基づいて、前記ビットの尤度を算出する第1LLR算出部と、
前記第1LLR算出部で算出された尤度に基づいて、mbitの誤り訂正復号処理を行う第1誤り訂正復号部と、
を備えることを特徴とする、復号装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の復号装置において、前記第2復号部は、
ブロック化されたrピクセルの検出信号の多値情報から、(n-m)bitの硬判定を行う第2硬判定部と、
硬判定された(n-m)bitのデータに基づいて、尤度を算出するビットを0とした第1(n-m)bitと、尤度を算出するビットを1とした第2(n-m)bitを作成し、前記第1(n-m)bitを対応する第3rピクセルデータに変換するとともに、前記第2(n-m)bitを対応する第4rピクセルデータに変換し、第3及び第4rピクセルデータと規格化されたrピクセルの信号値との距離の二乗の差分に基づいて、前記ビットの尤度を算出する第2LLR算出部と、
前記第2LLR算出部で算出された尤度に基づいて、(n-m)bitの誤り訂正復号処理を行う第2誤り訂正復号部と、
を備えることを特徴とする、復号装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の復号装置において、誤り訂正符号は、LDPCであることを特徴とする、復号装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の復号装置において、前記多値ピクセルは、輝度を利用した振幅多値、又は、光の位相を利用した位相多値の多値情報を有することを特徴とする、復号装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の復号装置を備えたホログラム再生装置であって、
前記2次元信号がホログラムから読みだされた読出し信号である、ホログラム再生装置。
【請求項8】
多値ピクセルを用いたn:r変調により、データを2次元信号に符号化する符号化装置であって、
n:r変調に用いる全ての2次元符号は、単位ブロックとなるrピクセルの中に、設定された信号値の範囲内で、少なくとも1つの最大値ピクセルと、少なくとも1つの最小値ピクセルとを含む、符号化装置。
【請求項9】
請求項8に記載の符号化装置において、
データを第1のデータビット列と第2のデータビット列に分け、第1のデータビット列に対する第1の誤り訂正符号化処理と第2のデータビット列に対する第2の誤り訂正符号化処理を行う誤り訂正符号化部と、
第1の誤り訂正符号化処理を行ったデータをmbitのデータに区切って、rピクセルの位置情報に対応させ、第2の誤り訂正符号化処理を行ったデータを(n-m)bitのデータに区切って、rピクセルの多値情報に対応させ、2次元信号を生成するn:r変調部と、
を備えることを特徴とする、符号化装置。
【請求項10】
請求項9に記載の符号化装置において、
前記第2の誤り訂正符号化処理は、前記第1の誤り訂正符号化処理と比較して、符号化効率が低く、誤り訂正能力が高い符号化を適用することを特徴とする符号化装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の符号化装置において、誤り訂正符号は、LDPCであることを特徴とする、符号化装置。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか一項に記載の符号化装置において、前記多値ピクセルは、輝度を利用した振幅多値、又は、光の位相を利用した位相多値の多値情報を有することを特徴とする、符号化装置。
【請求項13】
請求項8乃至12のいずれか一項に記載の符号化装置を備えたホログラム記録装置であって、
前記2次元信号をホログラムとして記録媒体に書き込む、ホログラム記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、符号化装置、復号装置、及びホログラム記録・再生装置に関し、特に、多値情報を有するピクセルを用いたn:r変調による符号化装置及びホログラム記録装置と、多値情報を有するピクセルを用いてn:r変調された2次元信号を復号する復号装置及びホログラム再生装置に関する。なお、本発明をホログラムの記録・再生装置の例に基づいて説明するが、本発明の符号化装置、復号装置は、ホログラム記録・再生装置に限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量のデータを効率的に記録することができる媒体として、ホログラム光メモリー媒体(ホログラム記録媒体)が注目されている。ホログラフィックメモリーは、画像や音声、コンピュータ等の大容量メモリーとしての利用が期待されている。
【0003】
ホログラフィックメモリー記録システムでは、一般に、デジタルデータを担持した物体光を参照光とともにホログラム記録媒体に同時に照射し、ホログラム記録媒体中に形成される干渉縞を光記録媒体に書き込むことによって、該デジタルデータを記録する。一方、デジタルデータが記録されたホログラム記録媒体に参照光を照射すると、ホログラム記録媒体中に書き込まれた干渉縞により光の回折を生じて、上記物体光が担持していたデジタルデータを再生することができる。現在用いられているホログラフィックメモリー記録システムの一例について
図12及び
図13を参照しながら簡単に説明する。
【0004】
まず、記録時から説明する。
図12は、ホログラフィックメモリー記録システム100の記録時の光学配置と光路(太い一点鎖線)の一例を示す図である。なお、記録時に使用されない光学要素は、細い二点鎖線で描かれている。記録時に用いる光学素子のみを用いて、ホログラム記録装置を構成することができる。
【0005】
レーザ光源101から出力され、シャッタ102を通過したレーザ光(ここではS偏光(縦偏光))が1/2波長板103によって45度偏光に偏光面を回転させられた後、PBS(偏光ビームスプリッタ)104にてP偏光およびS偏光とに分けられる。P偏光はPBS104を透過後、シャッタ105を通過する。その後、拡大レンズ106により拡大された後、PBS107を透過し、反射型液晶素子等からなるSLM(空間光変調素子)108上に照射される。この照射された光は、SLM108の素子面に映出された白と黒のビットパターン(ピクセルパターン)による2次元画像のデジタルデータを担持されるとともに、S偏光に変換されて(実際には、白表示とされた素子からの光がS偏光に変換される)反射され、物体光としてPBS107に戻る。このSLM108から戻った物体光は、PBS107により反射され、FT(フーリエ変換)レンズ109を通過後、空間フィルタ110でナイキスト周波数分を透過し、それ以上の周波数成分をカットし、再度、FT(フーリエ変換)レンズ111、FT(フーリエ変換)レンズ112を介してホログラム記録媒体113上に照射される。
【0006】
一方、PBS104によって反射されたS偏光は1/2波長板117を通過するが、ここでは、1/2波長板117とビームの偏光軸を合わせておき、ビームの偏光面は回転させない。次にPBS116に入射し、ここで、反射され、ミラー120、ガルバノミラー121と反射され、リレーレンズ122を通過後、ホログラム記録媒体113上に照射される。このようにしてホログラム記録媒体113上に照射された参照光と物体光はいずれもS偏光とされているので、このホログラム記録媒体113上で干渉して干渉縞が形成され、該干渉縞がホログラム記録媒体113に書き込まれることになる。
【0007】
次に再生時について
図13を用いて説明する。
図13は、ホログラフィックメモリー記録システム100の再生時の光学配置と光路(太い一点鎖線)の一例を示す図である。なお、再生時に使用されない光学要素は、細い二点鎖線で描かれている。再生時に用いる光学素子のみを用いて、ホログラム再生装置を構成することができる。
【0008】
PBS104までは記録時と同様であるが、透過したP偏光はシャッタ105で止められる。一方、反射されたS偏光は1/2波長板117の軸を45度の設定値へ変更して偏光面を90度回転され、P偏光となる。このP偏光はPBS116を通過後、ガルバノミラー115によって反射され、リレーレンズ114を通過後ホログラム記録媒体113に入射する。ホログラム記録媒体113に書かれた干渉縞によって回折された信号光はFTレンズ112、FTレンズ111、空間フィルタ110、FTレンズ109、と通過後、PBS107を通過して2次元撮像素子118で撮像され、演算装置119で処理することにより、デジタルデータが復元されることになる。
【0009】
このようなホログラフィックメモリー記録システムにおいて、FTレンズを通過する光は一種のローパスフィルタの効果を受け、信号再生する2次元撮像素子118では、点像が大きく広がり、また、近隣の点像が近い場合はその点像同士が接合してしまう再生像となる。また、レーザ光源101から出射する光を拡大レンズ106でSLM108の大きさまで大きくするので、SLM108の中心部が明るく、周辺部がやや暗い再生像となる。
【0010】
この場合の閾値判定においては、輝度分布に応じて周辺部と中心部で閾値を変化させなければならない。しかしながら、輝度分布は記録条件、再生条件など種々の依存性があるので、一概には決定できない。そこで、記録コードとして、ある一定の範囲中で白と黒との判定を行う差分コードが提案されている(特許文献1)。この手法をとることにより、ある一定の範囲内での白と黒との判別により、データを再生できる特徴がある。
【0011】
また、ホログラフィックメモリー記録システムにおいては、差分コードを発展させた2次元符号(2次元コード)を用いることも行われている。例えば、ホログラム記録では、2×2の4ピクセル(pixel:画素)に対し、中から1つのピクセルのみ白とし、そのほかを黒とする、つまり2bitの情報を4ピクセル使って記録再生することがある。以下、nbitの情報を、rピクセルを使って表現する変調方法を「n:r変調」と呼ぶことにする。上記の2bitの情報を4ピクセル使って記録再生する方法は、「2:4変調」である。n:r変調は、nbitの情報を、rピクセルのブロック(コード)を用いて、2次元信号に変換することができる。
【0012】
一方、ホログラフィックメモリー記録システムでは、輝度むらの他にも光学系、記録媒体からのノイズ、多重した記録ページからの漏洩などさまざまなノイズも加わる。このため、上述の差分コードのみで、そのまま誤りなく記録再生することは困難なため、通常誤り訂正コードを付加する。
【0013】
誤り訂正コードには大きく分けて、ブロック符号と畳み込み符号とに分かれる。近年、ブロック符号では、LDPC(Low Density Parity Check)が、畳み込み符号では、ターボ符号がシャノン限界に迫る誤り訂正能力を示すことで、よく使われている。
【0014】
このうち、ターボ符号は復号処理が複雑でレイテンシが比較的大きいところから、記録装置の誤り訂正といった点から考えると、適当ではない。一方、LDPCは線形時間復号である、並列実装に適している、などの点から、衛星放送、無線LANや無線インターネットをはじめとしてさまざまなところで使われている。ホログラフィックメモリー記録システムでも同様に、誤り訂正としてLDPCの使用が有望である(特許文献2)。
【0015】
次に、LDPC符号化/復号化の概要について説明する。
【0016】
LDPCにおいては、符号化の対象とするビットが、一般に「情報ビット」と呼ばれる。また、LDPCの符号化を行うにあたっては、予め「検査行列」(Hと表記される)が定められる。符号化においては、先ず、入力された情報ビット列と上記検査行列Hとに基づき、「検査ビット列」(パリティ)が生成される。検査ビットが付加されたデータ単位、すなわち「情報ビット+検査ビット」の単位が、LDPC符号化/復号化の最小単位である「1LDPCブロック」となる。このようにLDPC符号化されたデータ(LDPC符号列)が、通信路に対して送出され、或いは記録媒体に対して記録される。
【0017】
LDPC符号の復号では、先ず、受信信号(又は読出し信号)から、LDPC符号列を構成する各ビットの「対数尤度比」(Log Likelihood Ratio:LLR)を計算する。この「対数尤度比」は、各ビットの値(「0」又は「1」)の尤度を表す情報として用いられるものであり、以下では「LLR」と略称する。
【0018】
ここで、送信信号をXn(Xnは、+1又は-1)、受信信号をYnとしたときの、LLR(λnとおく)の求め方について説明する。通信路の条件付き確率P(Yn|Xn)より、LLRは次式(1)で計算できる。
【0019】
【0020】
一般的なAWGN(加法白色ガウス雑音)通信路を想定した場合のLDPC符号化・復号化のモデルの場合、通信路の条件付き確率は、次式(2)とおくことができる。但し、σ2はガウス雑音の分散であり、bは+1と-1の値をとる。
【0021】
【0022】
ここで、(1)式に、(2)式を代入すると、LLR(λn)は、次式(3)となる。
【0023】
【0024】
ビットごとのLLRについてはλ(n)と表記する。受信信号からビットごとのLLR(λ(n))を計算し、これらλ(n)と、予め定められた検査行列(H)とに基づき、LDPC復号アルゴリズムにより、LDPCブロックごとに情報ビットの各ビット値を推定するのがLDPC復号化である。
【0025】
LDPC復号アルゴリズムは、いわゆるMAP(Maximum A posteriori Possibility)復号法を基礎としたものとなる。MAP復号法では、符号語Xを送信したとき受信語Yが受信される確率を表す条件付き確率を計算し、該条件付き確率Pを最大とする「0」又は「1」のシンボルをその推定値とする。但し、すべての符号語について事後確率P(Yn|Xn)の値を加算することでビットごとの事後確率を計算する手順を、定義に従ってそのまま実行するとした場合、計算量は膨大なものとなるので、この計算量を削減するためのLDPC復号アルゴリズムとして、例えばsum-productアルゴリズムが提案されている。このsum-productアルゴリズムは、MAP復号法の近似アルゴリズムといえる。sum-productアルゴリズムについては、既に多数の文献に説明されている(非特許文献1~3)。
【0026】
本発明者らは、LDPCによる誤り訂正符号化され、n:r変調された信号を、効率的に復号する復号装置及び復号方法を既に提案している(特許文献4)。これは、n:r変調されている入力信号を、rbitのブロックにブロック化するブロック抽出部と、ブロック化されたrbitの入力信号から、nbitの硬判定を行う硬判定部と、硬判定されたnbitのデータに基づいて、尤度を算出するビットを1とした第1nbitと、尤度を算出するビットを0とした第2nbitを作成し、前記第1nbitに対応するrbit変換データと前記第2nbitに対応するrbit変換データとの差分と、rbitの入力信号とのビットごとの積の平均値に基づいて、前記ビットの尤度を算出するLLR算出部と、を備えたことを特徴とする復号装置である。この提案された復号装置及び復号方法により、n:r変調信号から、nbitデータの尤度(LLR)を四則演算のみで簡略に、且つ、正確に決定することができる。
【0027】
このように、n:r変調信号に基づく2次元コードを利用した符号化・復号装置の開発が進められているが、白と黒との記録だけでは限界があるため、さらに、その中間値も用いて、容量、転送速度を高める多値記録の研究も盛んにされている。例えば、白と黒との中間値を用いて多値化する振幅多値や光の位相情報も用いて多値化する位相多値を利用した光情報記録・再生装置が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【文献】特許第3209493号公報
【文献】特開2007-272973号公報
【文献】特開2010-186503号公報
【文献】特開2018-41525号公報
【文献】特許第6297219号公報
【非特許文献】
【0029】
【文献】「LDPC符号の実践的な構成法(上)」日経エレクトロニクス 2005年8月15日号(126~130頁)
【文献】「LDPC符号の実践的な構成法(中)」日経エレクトロニクス 2005年8月29日号(127~132頁)
【文献】「LDPC符号の実践的な構成法(下)」日経エレクトロニクス 2005年9月12日号(137~145頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
多値情報を有するピクセル(多値ピクセル)を利用した2次元符号(又は2次元信号)は、記録容量を大きく改善することができるが、多値情報を有する2次元符号を用いて、読み取り誤りの少ない符号化を行う手段、及び、多値情報を有する2次元信号から効率的にビットデータを復号する手段は、まだ適切なものが提案されていない。また、多値情報において、中間値を用いたデータは雑音強度に対して読み取り誤りが大きくなる。そのため、誤り訂正符号を付加しても、中間値の輝度レベル変動が大きいため、尤度の確度が小さくなり、誤り訂正能力が発揮できないといった課題があった。
【0031】
この課題は、多値ホログラムメモリー記録システムにおいても同様であり、2次元の多値データを使用して記録・再生を行う際に、中間値の輝度レベル変動が大きいため、誤り訂正能力を発揮できないという課題があった。
【0032】
従って、上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、多値情報を有するピクセルを利用した2次元符号を用いて、読み取り誤りの少ない符号化を行う符号化装置、及び、多値情報を有する2次元信号から効率的にビットデータを復号できる復号装置を提供することにある。
【0033】
また、多値情報を有するピクセルを利用した2次元符号(又は2次元信号)を用いて、情報の記録・再生を行うことができ、さらに、十分な誤り訂正能力を発揮することのできるホログラム記録・再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0034】
上記課題を解決するために本発明に係る復号装置は、多値ピクセルを用いてn:r変調されている2次元信号を復号する復号装置であって、前記2次元信号を、rピクセルのブロックにブロック化するブロック抽出部と、ブロック化されたrピクセルの信号値から、nbitの硬判定を行う硬判定部と、硬判定されたnbitのデータに基づいて、尤度を算出するビットを0とした第1nbitと、尤度を算出するビットを1とした第2nbitを作成し、前記第1nbitを対応する第1rピクセルデータに変換するとともに、前記第2nbitを対応する第2rピクセルデータに変換し、第1及び第2rピクセルデータと規格化されたrピクセルの信号値との距離の二乗の差分に基づいて、前記ビットの尤度を算出するLLR算出部と、前記LLR算出部で算出された尤度に基づいて、nbitの誤り訂正復号処理を行う誤り訂正復号部と、を備えることを特徴とする。
【0035】
また、上記課題を解決するために本発明に係る復号装置は、多値ピクセルを用いてn:r変調されている2次元信号を復号する復号装置であって、前記2次元信号を、rピクセルのブロックにブロック化するブロック抽出部と、ブロック化されたrピクセルの信号の位置情報から、m(ただしm<n)bitの情報を復号する第1復号部と、ブロック化されたrピクセルの信号の多値情報から、(n-m)bitの情報を復号する第2復号部と、を備えることを特徴とする。
【0036】
また、前記復号装置において、前記第1復号部は、ブロック化されたrピクセルの検出信号の位置情報から、mbitの硬判定を行う第1硬判定部と、硬判定されたmbitのデータに基づいて、尤度を算出するビットを1とした第1mbitと、尤度を算出するビットを0とした第2mbitを作成し、前記第1mbitに対応する第1rピクセル位置データと前記第2mbitに対応する第2rピクセル位置データとの差分と、規格化されたrピクセルの信号値とのビットごとの積の平均値に基づいて、前記ビットの尤度を算出する第1LLR算出部と、前記第1LLR算出部で算出された尤度に基づいて、mbitの誤り訂正復号処理を行う第1誤り訂正復号部と、を備えることが望ましい。
【0037】
また、前記復号装置において、前記第2復号部は、ブロック化されたrピクセルの検出信号の多値情報から、(n-m)bitの硬判定を行う第2硬判定部と、硬判定された(n-m)bitのデータに基づいて、尤度を算出するビットを0とした第1(n-m)bitと、尤度を算出するビットを1とした第2(n-m)bitを作成し、前記第1(n-m)bitを対応する第3rピクセルデータに変換するとともに、前記第2(n-m)bitを対応する第4rピクセルデータに変換し、第3及び第4rピクセルデータと規格化されたrピクセルの信号値との距離の二乗の差分に基づいて、前記ビットの尤度を算出する第2LLR算出部と、前記第2LLR算出部で算出された尤度に基づいて、(n-m)bitの誤り訂正復号処理を行う第2誤り訂正復号部と、を備えることが望ましい。
【0038】
また、前記復号装置において、誤り訂正符号は、LDPCであることが望ましい。
【0039】
また、前記復号装置において、前記多値ピクセルは、輝度を利用した振幅多値、又は、光の位相を利用した位相多値の多値情報を有することが望ましい。
【0040】
また、前記復号装置を備えたホログラム再生装置は、前記2次元信号がホログラムから読みだされた読出し信号であることが望ましい。
【0041】
上記課題を解決するために本発明に係る符号化装置は、多値ピクセルを用いたn:r変調により、データを2次元信号に符号化する符号化装置であって、n:r変調に用いる全ての2次元符号は、単位ブロックとなるrピクセルの中に、設定された信号値の範囲内で、少なくとも1つの最大値ピクセルと、少なくとも1つの最小値ピクセルとを含むことを特徴とする。
【0042】
また、前記符号化装置において、データを第1のデータビット列と第2のデータビット列に分け、第1のデータビット列に対する第1の誤り訂正符号化処理と第2のデータビット列に対する第2の誤り訂正符号化処理を行う誤り訂正符号化部と、第1の誤り訂正符号化処理を行ったデータをmbitのデータに区切って、rピクセルの位置情報に対応させ、第2の誤り訂正符号化処理を行ったデータを(n-m)bitのデータに区切って、rピクセルの多値情報に対応させ、2次元信号を生成するn:r変調部と、を備えることが望ましい。
【0043】
また、前記符号化装置において、前記第2の誤り訂正符号化処理は、前記第1の誤り訂正符号化処理と比較して、符号化効率が低く、誤り訂正能力が高い符号化を適用することが望ましい。
【0044】
また、前記符号化装置において、誤り訂正符号は、LDPCであることが望ましい。
【0045】
また、前記符号化装置において、前記多値ピクセルは、輝度を利用した振幅多値、又は、光の位相を利用した位相多値の多値情報を有することが望ましい。
【0046】
また、前記符号化装置を備えたホログラム記録装置は、前記2次元信号をホログラムとして記録媒体に書き込むことが望ましい。
【発明の効果】
【0047】
本発明における符号化装置・復号装置よれば、多値情報を有するピクセルを利用した2次元符号を用いて、読み取り誤りの少ない符号化を行うとともに、多値情報を有する2次元信号から効率的にビットデータを復号することができる。
【0048】
また、本発明におけるホログラム記録・再生装置によれば、多値情報を有するピクセルを利用した2次元符号(又は2次元信号)を用いて、情報の記録・再生を行うことができ、さらに、十分な誤り訂正能力を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明で利用する2次元符号(2次元コード)の一例である。
【
図2】本発明の符号化装置の一例のブロック図である。
【
図3】第1の実施形態の復号装置の一例のブロック図である。
【
図4】第1の実施形態の尤度決定方法を示すフローチャートである。
【
図5】尤度決定方法を入力信号の一例に基づいて説明する図である。
【
図6】振幅多値記録の誤り訂正のSNR依存性を示す図である。
【
図7】第2の実施形態のnbitのブロック分けを示す図である。
【
図8】第2の実施形態の復号装置の一例のブロック図である。
【
図9】位置のみを用いた誤り訂正のSNR依存性を示す図である。
【
図10】輝度のみを用いた誤り訂正のSNR依存性を示す図である。
【
図11】位置・輝度の一括と分離での誤り訂正のSNR依存性を示す図である。
【
図12】ホログラフィックメモリー記録システムにおける記録時の光学配置図の一例である。
【
図13】ホログラフィックメモリー記録システムにおける再生時の光学配置図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0051】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施形態としての符号化について説明する。本発明の符号化では、多値情報を有するピクセルを利用した2次元符号(2次元コード)を用いる。
【0052】
n:r変調の一例として、10:9変調を用いて説明する。10:9変調は、10bitのデータを9個の3×3のピクセルからなる2次元符号で表わす変調方式である。ここでは、多値記録の方法として、振幅多値記録(光の輝度を利用した多値記録)を例として説明する。9個のピクセルのうち、3個を輝点とし、そのほかを暗点(黒)とするとともに、その輝点に中間値(中間輝度)を設定する。
【0053】
設定する輝度は、例えば8bit階調の最小0~最大255の範囲として、輝点を255,170,85の3つの輝度レベルとし、3個の輝点のうち、必ず1つには255(最大輝度)が入るように選択をする。また、暗点(黒)の輝度レベルは、0(最小輝度)とする。これは、基準となる輝度(最大輝度255、最小輝度0)をデータに埋め込むことにより、その他の輝度レベル(170,85)の検出を容易にするためである。すなわち、符号化に使用する全ての2次元符号について、単位ブロックとなるrピクセルの中に、設定された信号値の範囲内で、少なくとも1つ最大値ピクセルと、少なくとも1つの最小値ピクセルとを含む2次元符号を用いる。
【0054】
9個のピクセルから3つの輝点で3つの輝度レベルがあるとし、そのうちのひとつが必ず255である場合の通りの総数は、次のように求められる。
【0055】
【0056】
この1596通りのパターンのうち、実際にデータ(2次元符号)として使用する部分は10bitであるので、210=1024である。
【0057】
1596通りから任意の1024パターンを選択してもよいが、誤る可能性の高いデータ並びを削除することが望ましい。例えば、3つの輝点が255,85,85の場合は、誤る可能性が高いことが確認されており、次にこれを削除する。この場合の通りは次のとおりである。
【0058】
【0059】
同様に誤る可能性の高いデータ並びを削除することを繰り返して、残ったパターンから1024通りのパターンを2次元符号として決定し、記録再生に利用する。
【0060】
図1は、本発明で用いる2次元符号の例であり、3つの輝点ピクセルの中の数字は輝度レベルを示している。残りの6ピクセルは暗点(黒)であり、輝度レベルは0である。
【0061】
なお、これまでの説明では、輝度は3通りとしたが、より多数の中間輝度レベルを使えば、より多くのビットデータを記録できる。より多数の中間輝度レベルを使った場合であっても、以下に説明する本発明の復号手法は、全く同様に適用できる。
【0062】
(符号化装置)
図2は、本発明の符号化装置の一例のブロック図である。符号化装置1は、誤り訂正符号化部2と、n:r変調部3とを含んでおり、データ(ビットデータ)が入力され、多値情報を有するピクセル(多値ピクセル)を用いてn:r変調された2次元信号が出力される。
【0063】
誤り訂正符号化部2は、入力されたビットデータに対して、所定の誤り訂正符号化処理を行う。誤り訂正符号化としては、例えば、誤り訂正能力の高いLDPC符号化とする。誤り訂正符号化されたデータ列(例えば、LDPCブロック)を、n:r変調部3に出力する。
【0064】
n:r変調部3は、入力されたデータ列をnbit(例えば、10bit)ずつに分けて、各nbitを対応する2次元符号(2次元信号)に変換する。ここで用いる2次元符号は、上述した単位ブロックとなるrピクセル(例えば、9ピクセル)の中に、設定された信号値の範囲内で、少なくとも1つの最大値ピクセルと、少なくとも1つの最小値ピクセルとを含んでいる。
【0065】
この結果、データをn:r変調し、多値ピクセルを用いた2次元信号に符号化できる。
【0066】
(復号装置)
次に、復号装置について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態における復号装置の一例のブロック図である。
【0067】
復号装置10は、ブロック抽出部11と、硬判定部12と、LLR算出部13と、誤り訂正復号部14を含んでおり、多値情報を有するピクセル(多値ピクセル)を用いてn:r変調されている2次元信号が入力され、誤り訂正復号されたnbitデータが出力される。ここで、入力される2次元信号は、nbit信号の段階で、誤り訂正符号化(例えば、LDPC符号化)されているのが望ましい。この2次元信号は、
図13のホログラフィックメモリー記録システム(ホログラム再生装置)において、2次元撮像素子118で撮像(読取)された測定データを用いることができる。
【0068】
ブロック抽出部11は、多値情報を有するピクセルを用いてn:r変調されている2次元信号を、rピクセルのブロック(nbitに対応するrピクセル単位)にブロック化し、抽出されたブロックを硬判定部12に出力する。例えば、
図12、
図13のホログラフィックメモリー記憶システムにおいて、10:9変調が用いられた場合、3×3のピクセルからなる9ピクセルのデータ単位が1ブロックとなる。
【0069】
硬判定部12は、ブロック抽出部11から入力されたrピクセルの入力信号データ(検出データ)に基づいて、nbitの硬判定を行い、判定結果をLLR算出部13に出力する。例えば、入力信号に基づいて、信号値の最大値と最小値を利用してrピクセルのパターン及び信号レベルを判定し、これに対応するnbitを硬判定結果として出力する。
【0070】
LLR算出部13は、硬判定部12から入力されたnbitのデータの各ビットについて、尤度の情報としてLLRを算出し、誤り訂正復号部14に出力する。LLRの算出は、硬判定されたnbitのデータに基づいて、尤度を算出するビットを0とした第1nbitと、尤度を算出するビットを1とした第2nbitを作成し、前記第1nbitを対応する第1rピクセルデータに変換するとともに、前記第2nbitを対応する第2rピクセルデータに変換し、第1及び第2rピクセルデータと規格化されたrピクセルの信号値との距離の二乗の差分に基づいて、前記ビットの尤度(LLR)を算出するものである。詳細は、後述の手順に従う。
【0071】
誤り訂正復号部14は、LLR算出部13から入力されたnbit信号のLLRに基づいて、入力信号の誤り訂正符号化に対応した誤り訂正復号を行う。例えば、誤り訂正符号化がLDPC符号化であれば、以後はsum-productアルゴリズム等のLDPC復号処理を行う。誤り訂正復号処理により推定ビットを決定し、この得られた推定ビットに基づく尤度(LLR)算出を行なう。繰り返し処理の結果、パリティ検査を満足する推定ビットが得られると、誤り訂正復号されたnbitデータとして、復号装置10から出力される。
【0072】
次に、誤り訂正にLDPCを使用し、上記のような中間値も用いた2次元符号から各bitデータの尤度を計算する尤度決定方法(LLR算出手順)について、
図4のフローチャートと、
図5に示す入力信号(測定データ)の例に基づいて、説明する。
【0073】
図4のフローチャートのステップ1(S1)において、ブロック化されたrピクセルの測定データ読み込む。ここでは、
図5(1)の9ピクセルのデータ(x
1~x
9)を読み込む。各ピクセルのデータは、例えば、ホログラフィックメモリー記録システムにおいて、撮像素子で取得した8bit階調の測定データである。
【0074】
次に、ステップ2(S2)において、rピクセルのデータからnbitへ変換(nbitの硬判定)を行う。ここでは、
図5(1)の9ピクセルの測定データ(x
1~x
9)から、上述の1024通りのうちの最も近いパターンを求め、その2次元符号に対応するビットとする硬判定をし、10bitを仮決定する。
【0075】
ここで、2次元符号は、単位ブロックとなるrピクセル(9ピクセル)の中に、信号値が最大値のピクセルと、信号値が最小値のピクセルとを含んでいるから、測定データの中で最も輝度の高いものを信号値の最大値ピクセル、最も輝度の低いものを信号値の最小値ピクセルと見なして、データの規格化をすることができる。
【0076】
硬判定方式としては、2つの手法がある。
(A)測定データの明るい方から3点を抽出し(他の6ピクセルは黒と見なし)、測定データ(輝度)の規格化後、1024通りのコードの輝点データとの差分の二乗和が最小となるもの(そのコードに対応するビットデータ)を硬判定とする手法
(B)9ピクセルの全測定データ(輝度)の規格化後の値と、1024通りのコードの輝点データとの差分の二乗和が最小であるもの(そのコードに対応するビットデータ)を硬判定とする手法
【0077】
どちらの手法を採用してもよいが、不要なデータ(6点の暗点)も考慮に入れるとよりノイズに弱くなるので、(A)の手法が望ましい。
【0078】
この結果、例えば、(1)の9ピクセルのデータ(x
1~x
9)から、(2)の10bitのデータ「0111000011」が硬判定結果として得られる。なお、このステップ1(S1)とステップ2(S2)は、
図3の硬判定部12の処理に対応する。
【0079】
次に、ステップ3(S3)として、k=1とおく。このkは、上位からk番目のビットの尤度の情報(LLR)を求める処理であることを意味する。
【0080】
ステップ4(S4)として、まず、ステップ2(S2)で得られたnbitについて、上位からkビット目の判定結果を0としたnbit(第1nbit)を作成する。例えば、硬判定結果の上位1bit(k=1)の尤度(LLR)を求める場合、上位1bitのみを「0」とし、他のbitは硬判定の結果のままとしたnbit(第1nbit)を作成する。
図5の例では、硬判定結果(「0111000011」)の1ビット目は0であるから、第1nbitは(2)となり、硬判定結果のnbitと一致する。次に、ステップ2(S2)で得られたnbitについて、上位からkビット目の判定結果を1としたnbit(第2nbit)を作成する。例えば、上位1bit(k=1)の尤度(LLR)を求める処理では、上位1bitのみを「1」とし、他のbitは硬判定の結果のままとしたnbit(第2nbit)を作成する。
図5の例では、
図5(2)の10bitデータ「0111000011」の上位1bit(左端のbit)を「1」として(反転させて)、「1111000011」の第2nbit(3)を作成する。(2)と(3)の太枠で囲われた部分が、尤度(LLR)を求めるビットである。
【0081】
ステップ5(S5)として、ステップ4(S4)で得られた第1nbit及び第2nbitのデータを、それぞれ対応するrピクセルのパターンデータに変換する。すなわち、ステップ4(S4)で得られた第1nbit(=硬判定結果)の「0111000011」を、その10bitに割り当てられている9ピクセル(第1rピクセル)のパターンデータ(
図5の(4)「1,-1,1/3,1,1,1,-1,1,1」)に変換する。ここで、各ピクセルのデータ値については、黒(輝度0)を1、白(輝度255)を-1、第1中間色(輝度170)を-1/3、第2中間色(輝度85)を1/3としている。この値は限定されるものではないが、後の尤度計算の際に都合がよい。同様に、得られた第2nbitの「1111000011」を、その10bitに割り当てられている9ピクセル(第2rピクセル)のパターンデータ(
図5の(4)「1,1,1/3,-1/3,1,1,-1,1,1」)に変換する。この例では、枠で囲んだ2番目と4番目のピクセル値が不一致となっている。10:9変調の場合は、9ピクセルの内、輝点は3個であるから、不一致のピクセル数は最大6ピクセルとなる。
【0082】
ステップ6(S6)として、rピクセルのデータを規格化する。例えば、
図5(1)の9ピクセルの測定データ(x
1~x
9)を、次式(4)により、9個のデータ中で最大値(max(x
1,…,x
9))と最小値(min(x
1,…,x
9))に基づいて、-1から1に規格化し、
図5(6)の規格化データ(x
1'~x
9')を得る。例えば、撮像素子で得られた測定データが、最大200、最小15の諧調データであった場合、185諧調に分布するデータを-1から1に規格化して対応させる。
【0083】
【0084】
なお、測定データ(x1~x9)の最大・最小を、-1から+1に対応させるか、或いは、+1から-1に対応させるかは、2次元符号の各ピクセルのデータ値に対応させればよく、適切なLLRが導かれるよう設定する。
【0085】
ステップ7(S7)として、ステップ5(S5)で得られた第1rピクセルのパターンデータと、ステップ6(S6)で規格化されたrピクセルの測定データとの距離の二乗(各ピクセル毎のデータ値の差の二乗の総和)を求める。また、ステップ5(S5)で得られた第2rピクセルのパターンデータと、ステップ6(S6)で規格化されたrピクセルの測定データとの距離の二乗(各ピクセル毎のデータ値の差の二乗の総和)を求める。そして、両者の距離の二乗値の差分を求め、この差分のピクセルあたりの平均値を求める。ここでは相違する輝点の数は最大6個であるから、求めた差分を6で割って平均値を求め、この平均値を、式(3)の受信信号Ynとみなす。
【0086】
例えば、
図5の例では、距離の二乗値の差分は、次のように計算される。
(-1-x
2')
2-(1-x
2')
2+(1-x
4')
2-(-1/3-x
4')
2
=(1+2x
2'+x
2'
2)-(1-2x
2'+x
2'
2)+ (1-2x
4'+x
4'
2)- (1/9+2/3x
4'+x
4'
2)
=(1+2x
2'+x
2'
2)-(1-2x
2'+x
2'
2)+ (1-2x
4'+x
4'
2)-(1/9+2/3x
4'+x
4'
2)
=4x
2'+8/9-8/3x
4'
【0087】
そして、この平均値は、
(4x2'+8/9-8/3x4')/6
=2/3x2'+4/27-4/9x4'
となる。なお、ここでは平均値を求める処理を行ったが、平均値を求めずに、この距離の二乗の差分をYnとし、その後の雑音σ2の設定で調整して尤度を求めてもよい。
【0088】
ステップ8(S8)として、ステップ7(S7)の算出結果を受信信号Ynとしてk番目のビットの尤度としてのLLRを算出する。すなわち、前述の式(3)のYnに求めたYn(平均値)を代入する。このとき、雑音σ2は、実測値として求めても、推定値として適当な値を入力しても良い。得られた結果を上位1bit(k=1)の対数尤度比(LLR)とする。
【0089】
その後、ステップ9(S9)として、k=nであるか否かを判定する。判定結果Yes(k=n)であれば終了し、No(k<n)であれば、ステップ10(S10)に進む。
【0090】
ステップ10(S10)では、kに1を加えて、ステップ4(S4)から、再び処理を行う。すなわち、上記ステップでは10bit中の最上位の1bitの説明をしたが、次の処理ではk=2として、10bit中の2番目のbitの尤度を求める。2番目のbitの尤度(LLR)を計算する場合には、同様に、硬判定結果のnbitのデータに基づいて、2番目のbit(k=2)を「0」とした第1nbit(
図5の例では「0011000011」)と、2番目のbitを「1」とした第2nbit(
図5の例では「0111000011」)を作成して、同様の計算を行う。
【0091】
なお、ステップ3からステップ10の処理は、
図3のLLR算出部13の処理に相当する。
【0092】
このような演算処理をすることにより、測定データから一挙にビット列の尤度(LLR)決定することができる。この計算では、乗算、差分、平均値という、ごく基本的な四則演算しか行っていないため、非常に高速かつ、正確な尤度(LLR)を計算することができる。尤度が求まったあとは、通常のLDPCと同様に誤り訂正の計算を進めていくことにより、nbitを決定することができる。
【0093】
(ホログラフィックメモリー記録システム)
図2の符号化装置1の出力を、
図12のホログラフィックメモリー記録システムの空間光変調素子108で表示させることにより、ホログラム記録装置を構成することができる。また、多値の2次元信号を
図13のホログラフィックメモリー記録システムの2次元撮像素子118で受信し、
図3の復号装置10を演算装置119で実現することにより、ホログラム再生装置を構成することができる。
【0094】
(誤り訂正能力の検証)
第1の実施形態における符号化装置及び復号装置をホログラフィックメモリー記録システムで実現し、振幅多値記録における誤り訂正能力を検証した。
図6に、誤り訂正のSNR(signal-noise ratio)依存性を示す。ここで、誤り訂正前とは、硬判定結果を意味する。また、誤り訂正後とは、第1の実施形態で得られたLLRを用いて誤り訂正を行った結果である。このような手法を採用することにより、中間値を用いた多値ホログラムメモリーの誤り訂正が可能となる。
【0095】
(第2の実施の形態)
第2の実施形態では、第1の実施態様の符号化・復号処理を改善し、所要SNRの低減を行った。第1の実施態様では、nbitデータと多値ピクセルからなる2次元符号(2次元コード)とを任意の関係で対応付けており、輝点の位置と輝度の情報を一括して取り扱っている。第2の実施形態では、2次元コードの輝点の位置の情報と輝点の輝度レベルの情報を分離して利用する。すなわち、第1の実施形態では、nbitのデータに対して一括して誤り訂正符号をかけていたが、第2の実施形態では、nbitのデータを多値ピクセルからなる2次元コードで記録する際に、位置情報を利用して記録するmbitのデータと輝度情報を利用して記録する(n-m)bitのデータに分けて、それぞれ誤り訂正符号をかける手法を採用する。位置と輝度を分離して、誤り訂正符号をかける手法を採用することにより、誤り訂正能力を向上させることができる。
【0096】
図7は、第2の実施形態における符号化及び復号の際のnbitのブロック分けを示す図である。nbit(例えば10bit)のデータを、mbit(例えば6bit)と(n-m)bit(例えば4bit)に分けて、誤り訂正符号をかけて記録し、また、それぞれを復号する。
【0097】
具体的には、輝点の位置情報と6bitのデータを対応させる。9個のピクセルから3個の輝点を選ぶ選択の場合の通りは、次のとおり。
【0098】
【0099】
このうち、6bit(26=64)通りを選択して、データ(コード)として使用する。
【0100】
次に、輝度情報では、4bitを表現するが、3つの輝点のうち、ひとつが255で他が170,85となるので、場合の数としては、
3×3×3―2×2×2=27-8=19
となる。このうちの24=16通りを使用する。
【0101】
(符号化装置)
第2の実施形態における符号化装置は、
図2と同様のブロック図で表わされるが、誤り訂正符号化部2及びn:r変調部3の処理が異なる。
【0102】
誤り訂正符号化部2は、入力されたデータを、第1のデータビット列と第2のデータビット列に分ける。第1のデータビット列を、誤り訂正符号(例えばLDPC符号)を用いて第1の誤り訂正符号化処理し、第1の符号化データ(LDPCブロック)に変換する。また、第2のデータビット列を、誤り訂正符号を用いて第2の誤り訂正符号化処理し、第2の符号化データ(LDPCブロック)に変換する。そして、第1及び第2の符号化データをn:r変調部3に出力する。なお、後述するように、第1の符号化処理と第2の符号化処理は異なるものであってもよい。
【0103】
n:r変調部3は、入力された第1の符号化データをmbit(例えば、6bit)ずつに分け、このmbitを複数のnbit(2次元符号に対応)の位置情報に対応するmbit部分に割り振る。また、入力された第2の符号化データを(n-m)bit(例えば、4bit)ずつに分け、この(n-m)bitを複数のnbit(2次元符号に対応)の輝度情報に対応する(n-m)bit部分に割り振る。このmbit部分と(n-m)bit部分の情報を合わせて、nbitに対応する2次元符号を選択し、2次元信号として出力する。なお、ここで用いる2次元符号は、前述した単位ブロックとなるrピクセル(例えば、9ピクセル)の中に、設定された信号値の範囲内で、少なくとも1つの最大値ピクセルと、少なくとも1つの最小値ピクセルとを含んでいる。
【0104】
このように符号化を行うことにより、2次元コードの位置と輝度を分離して、誤り訂正符号化を行うことができる。
【0105】
(復号装置)
図8は、本発明の第2の実施形態としての復号装置の一例のブロック図である。
【0106】
復号装置20は、ブロック抽出部21と、位置情報復号部(第1復号部)30と、輝度情報復号部(第2復号部)40とを備える。位置情報復号部30は、例えば、第1硬判定部31と、第1LLR算出部32と、第1誤り訂正復号部33を含んでいる。また、輝度情報復号部40は、第2硬判定部41と、第2LLR算出部42と、第2誤り訂正復号部43を含んでいる。
【0107】
復号装置20には、多値情報を有するピクセルを用いてn:r変調され、nbitの内のm(m<n)bitが位置情報を用いて記録され、(n-m)bitが輝度情報を用いて記録された2次元信号が入力される。ここで、入力される2次元信号に格納されたデータは、mbitと(n-m)bitとが別々に誤り訂正符号化(例えば、LDPC符号化)されているのが望ましい。この2次元信号は、
図13のホログラム再生装置においては、2次元撮像素子118で撮像(読取)された測定データを用いることができる。なお、復号装置20からは、誤り訂正復号されたnbitデータが出力される。
【0108】
ブロック抽出部21は、多値情報を有するピクセルを用いてn:r変調されている2次元信号を、rピクセルのブロック(nbitに対応するrピクセル単位)にブロック化し、抽出されたブロックを位置情報復号部30に入力する。ブロック抽出部21の機能は、第1の実施形態のブロック抽出部11と同じである。
【0109】
位置情報復号部30は、入力された2次元信号のピクセルの位置情報(輝度を有する3つの輝点が3×3のブロックのどこに配置されているか)に基づいて、mbit(この例では6bit)のデータを出力し、同時に、3つの輝点がどのように配置されているかの位置情報(輝度情報を含まない3ピクセルの位置の情報)を輝度情報復号部40に出力する。この位置情報復号部30は、3個の白いピクセルと6個の黒いピクセルからなる2次元コードからmbitを復号するものであり、その復号手段は、例えば、特許文献3,4等すでに公知の手法(中間輝度を含まない2次元コードの復号手段)を利用することができる。
【0110】
例えば、特許文献4に記載の手法によれば、位置情報復号部30は、第1硬判定部31と、第1LLR算出部32と、第1誤り訂正復号部33により構成することができる。
【0111】
第1硬判定部31は、ブロック抽出部21から入力されたrピクセルの入力信号データに基づいて、mbit(6bit)の硬判定を行い、判定結果を第1LLR算出部22に出力する。例えば、入力信号の強度(輝度レベル)に基づいて、rピクセルの内の輝度の高い3つの輝点を白として2次元のパターンを判定し、このパターンに対応するmbitを硬判定結果として出力する。
【0112】
第1LLR算出部32は、第1硬判定部31から入力されたmbitのデータの各ビットについて、尤度の情報としてLLRを算出し、第1誤り訂正復号部33に出力する。LLRの算出は、硬判定されたmbitの変換データのうちLLR算出対象のビットを1とした第1mbitと、LLR算出対象のビットを0とした第2mbitを作成し、それぞれをrピクセルのデータに変換して、変換データの差分をとり、それに入力信号(rbitの測定データ)を規格化してビットごとに乗算した値の平均値に基づいて、尤度(LLR)を算出するものである。
【0113】
ここでは、位置情報のみを用いるため、第1mbitと第2mbitをrピクセルのデータに変換する際は、白[1]と黒[0]のみからなる2次元データに対応させて、0と1のみからなる9ピクセル(9bit)データを得て、特許文献4と同様の処理を行うことができる。
【0114】
第1誤り訂正復号部33は、第1LLR算出部32から入力されたmbit信号のLLRに基づいて、入力信号の誤り訂正符号化に対応した誤り訂正復号、例えば、LDPC復号処理を行う。誤り訂正復号処理により推定ビットを決定し、この得られた推定ビットに基づいて、再度尤度(LLR)算出を行なう。繰り返し処理の結果、パリティ検査を満足する推定ビットが得られると、誤り訂正復号されたmbitデータとして、位置情報復号部30から出力される。なお、mbitデータの出力は、同時にmbitデータに対応する白ピクセル(輝度を有する3つのピクセル)の位置情報を、輝度情報復号部40に出力することを意味する。
【0115】
次に、誤り訂正で訂正された位置情報を元に、輝度情報を抽出し、その輝度情報で誤り訂正をかける。輝度情報復号部40は、入力された2次元信号のピクセルの輝度情報(位置が決定された3つの輝点がどのような輝度レベルを有しているか)に基づいて、(n-m)bit(この例では4bit)のデータを出力し、同時に、位置情報復号部30で決定されたmbitと併せて、nbitデータとして復号装置20から出力する。輝度情報復号部40は、輝度レベルの情報を有する2次元コードから(n-m)bitのデータを復号するものであり、その復号手段は、第1の実施形態の手法を利用することができる。
【0116】
第2硬判定部41は、ブロック抽出部21から入力されたrピクセルの入力信号データに基づいて、(n-m)bit(4bit)の硬判定を行い、判定結果を第2LLR算出部42に出力する。この手法は、基本的に復号装置10の硬判定部と同じであるが、位置情報復号部30から入力された位置情報を利用することにより、精度よく硬判定が可能である。
【0117】
第2LLR算出部42は、第2硬判定部41から入力された(n-m)bitのデータの各ビットについて、尤度の情報としてLLRを算出し、第2誤り訂正復号部43に出力する。LLRの算出は、硬判定された(n-m)bitのデータに基づいて、尤度を算出するビットを0とした第1(n-m)bitと、尤度を算出するビットを1とした第2(n-m)bitを作成し、前記第1(n-m)bitを対応する第3rピクセルデータに、前記第2(n-m)bitを対応する第4rピクセルデータに変換し、第3及び第4rピクセルデータと規格化されたrピクセルの信号値との距離の二乗の差分の平均値に基づいて、前記ビットの尤度(LLR)を算出するものである。この処理は、基本的に復号装置10のLLR算出部と同じである。
【0118】
第2誤り訂正復号部43は、第2LLR算出部42から入力された(n-m)bit信号のLLRに基づいて、入力信号の誤り訂正符号化に対応した誤り訂正復号を行う。例えば、誤り訂正符号化がLDPC符号化であれば、以後はsum-productアルゴリズム等のLDPC復号処理を行う。この誤り訂正復号処理は、基本的に復号装置10の誤り訂正処理部と同じである。推定ビットに基づく尤度(LLR)算出の繰り返し処理の結果、パリティ検査を満足する推定ビットが得られると、誤り訂正復号された(n-m)bitデータが出力される。
【0119】
そして、位置情報復号部30で求められたmbitと、輝度情報復号部40で求められた(n-m)bitとを合わせて、復号装置20からnbitデータが出力される。
【0120】
(ホログラフィックメモリー記録システム)
第2の実施形態の符号化装置の出力を、
図12のホログラフィックメモリー記録システムの空間光変調素子108で表示させることにより、ホログラム記録装置を構成することができる。また、多値の2次元信号を
図13のホログラフィックメモリー記録システムの2次元撮像素子118で受信し、
図8の復号装置20を演算装置119で実現することにより、ホログラム再生装置を構成することができる。
【0121】
(誤り訂正能力の検証)
第2の実施形態における符号化装置及び復号装置をホログラフィックメモリー記録システムで実現し、誤り訂正能力を検証した。なお、検証の際の符号化効率は、0.65とした。
【0122】
図9に、位置のみを使用した場合(すなわち、位置情報復号部30の出力であるmbit)の誤り訂正前後のSNR依存性を示す。
【0123】
位置のみの誤り訂正では、3つの輝点に3つの輝度レベルが存在しており、その輝度レベルには中間値も存在するが、その中間値を無視し、輝点か暗点かで判別を行うものであり、従来の2値での復号手法と同様に精度よく誤り訂正ができている。
【0124】
図9では、大きな利点がある事が分かる。つまり、訂正前、訂正後ともに大きく左にシフトしている。つまり、所要SNRが大きく改善していることが分かる。誤り訂正後の訂正可能なポイント(誤り0)で見ると、0.42dBから0.16dBへと0.26dB改善している。つまり、多値記録の場合の所要SNRの劣化の大部分は多値化した輝度レベルの判定によることが分かる。このように位置と輝度とを分離することにより、位置の部分は非常に低いSNRでも誤り訂正が可能となる。
【0125】
次に、分離した残りの部分、輝度の訂正について述べる。すでに上述の通り、輝点の位置は確定されているので、ノイズ源となる暗点部分については考慮に入れなくて済むという利点がある。さらに、3つの場所の輝度レベルのみの尤度計算となるので、尤度にかなりの制限を加えることができる。すなわち、輝点以外の6個のピクセルは黒であることを確定させて、測定値xを暗点は0(規格化値1)で計算でき、また、場合の数も輝度情報の4bitを表わす16通りにすぎない。この条件を加えて、4bitについて第1の実施態様に示す復号方法を行う。
図10に、輝度のみを用いた誤り訂正前後のSNR依存性を示す。位置情報のみによる計算よりは所要SNRはかなり右にずれているが、上述の通り、位置が確定されている点、選択数が制限されている点から従来の位置、輝度一括の訂正より所要SNRは低くなっている。
【0126】
図11は、位置と輝度の結果をまとめたもの(分離方式と表示)と、
図6の第1の実施形態の結果(混合方式と表示)とを比較したものである。なお、このとき、位置、輝度分離のデータ総数は位置による誤り訂正の分を加味して計算をしている。この結果、位置と輝度の分離方式の方が、誤り訂正能力が高い(つまり、位置の訂正により、誤り率は下がる。)ことが明らかとなった。
【0127】
すなわち、分離方式では、以下の利点がある事が分かる。
a.硬判定での誤り率が0.2dB以上改善される。
b.誤り率0となるポイントが0.42dBから0.39dBへ0.03dB改善される。
【0128】
(誤り訂正符号化処理の改善)
上記の検証では、位置と輝度に同じLDPCの誤り訂正能力を使用したが、今回の結果を基に、位置部分には誤り訂正能力がやや低く、冗長度が少ない(符号化効率が高い)コードを適用し、逆に輝度部分には誤り訂正能力が高く冗長度が多い(符号化効率が低い)コードを適用し、トータルで符号化効率と誤り率の両立とすることも可能である。この符号化効率の調整は、LDPC符号化のチェックマトリクスを変えること等で対応できる。つまり、これらを最適化することにより、さらに効率を上げることができる。
【0129】
さらに、発明の実施形態では、輝度による振幅多値記録を用いているが、光の位相を利用した位相多値記録にも、同様に適用可能である。
【0130】
上記の実施の形態では、符号化装置及び復号装置の構成と動作について説明したが、本発明はこれに限らず、多値情報を有するピクセルを用いたn:r変調による符号化方法及びホログラム記録方法、或いは、多値情報を有するピクセルを用いてn:r変調された2次元信号を復号する復号方法及びホログラム再生方法として、構成されても良い。
【0131】
なお、上述した符号化装置又は復号装置として機能させるためにコンピュータを好適に用いることができ、そのようなコンピュータは、符号化装置又は復号装置の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを該コンピュータの記憶部に格納しておき、該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。なお、このプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録可能である。
【0132】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0133】
1 符号化装置
2 誤り訂正符号化部
3 n:r変調部
10 復号装置
11 ブロック抽出部
12 硬判定部
13 LLR算出部
14 誤り訂正復号部
20 復号装置
21 ブロック抽出部
30 位置情報復号部
31 第1硬判定部
32 第1LLR算出部
33 第1誤り訂正復号部
40 輝度情報復号部
41 第2硬判定部
42 第2LLR算出部
43 第2誤り訂正復号部
101 レーザ光源
102 シャッタ
103 1/2波長板
104 PBS(偏光ビームスプリッタ)
105 シャッタ
106 拡大レンズ
107 PBS(偏光ビームスプリッタ)
108 SLM(空間光変調素子)
109 FTレンズ
110 空間フィルタ
111 FTレンズ
112 FTレンズ
113 ホログラム記録媒体
114 リレーレンズ
115 ガルバノミラー
116 PBS
117 1/2波長板
118 2次元撮像素子
119 演算装置
120 ミラー
121 ガルバノミラー
122 リレーレンズ