(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】可撓電線管、可撓電線管の接続方法、および止水部材
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20220525BHJP
F16L 21/02 20060101ALI20220525BHJP
F16L 33/00 20060101ALI20220525BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20220525BHJP
H02G 9/06 20060101ALI20220525BHJP
H02G 3/06 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
H02G3/04 068
F16L21/02 Z
F16L33/00 B
H02G1/06
H02G9/06
H02G3/06
(21)【出願番号】P 2018141228
(22)【出願日】2018-07-27
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕造
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-293763(JP,A)
【文献】特開2008-14456(JP,A)
【文献】特開2014-25559(JP,A)
【文献】特開2011-137518(JP,A)
【文献】特開平10-82488(JP,A)
【文献】特開2004-7996(JP,A)
【文献】特開2012-154488(JP,A)
【文献】特開2002-38876(JP,A)
【文献】特開平11-351461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/00-21/08
29/00-35/00
H02G 1/00-1/10
3/00-3/06
9/00-9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する電線管であって、
本体部と、
前記本体部の一方の端部に設けられる雄型接続部と、
前記本体部の他方の端部に設けられ、前記雄型接続部と嵌合可能な形状の雌型接続部と、
を具備し、
前記雄型接続部は、前記雄型接続部の先端部の外径よりも外径が小さく管軸方向に対して所定長さの止水部材配置部と、前記止水部材配置部に配置される止水部材と、を有し、
前記止水部材は、止水部材本体と水膨張性不織布から構成され、前記止水部材本体はリング状の弾性部材であり、前記止水部材本体の外周部に前記水膨張性不織布が貼り付けられることを特徴とする可撓電線管。
【請求項2】
前記止水部材配置部の管軸方向奥側に、前記止水部材配置部より外径が大きく、前記雄型接続部の先端部の外径と略等しい直線状部が管軸方向の所定長さに形成されていることを特徴とする請求項1記載の可撓電線管。
【請求項3】
前記止水部材配置部の管軸方向奥側に、山部谷部が平坦で管軸方向に略平行なコルゲート部が管軸方向の所定長さに形成されており、前記山部の外径は、前記止水部材配置部の外径より大きく、前記雄型接続部の先端部の外径と略等しいことを特徴とする請求項1記載の可撓電線管。
【請求項4】
前記雌型接続部の内径は、前記止水部材における前記水膨張性不織布の外径と略同一か、前記水膨張性不織布の外径よりも小さく、前記止水部材本体の外径より大きいことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の可撓電線管。
【請求項5】
前記雌型接続部は、先端からの管軸方向の所定長さに直線状部が設けられ、前記雌型接続部の直線状部の管軸方向長さは、前記雄型接続部の直線状部の長さと前記止水部材配置部の長さとを合計した長さ以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の可撓電線管。
【請求項6】
前記雌型接続部と前記本体部の境界部近傍において、内面に突出する突起が形成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の可撓電線管。
【請求項7】
前記止水部材本体の外周に、テーパ状の斜面部と大径部が設けられ、前記止水部材配置部は、管軸方向の断面において、略コの字型の形状を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の可撓電線管。
【請求項8】
前記本体部には、略円形断面の螺旋波または独立波形状の波状部が繰り返して複数個形成されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の可撓電線管。
【請求項9】
前記本体部には、矩形断面の大径部と円形断面の小径部が交互に形成されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の可撓電線管。
【請求項10】
前記円形断面の小径部の略中央には、管軸方向に略対称に2つの微少突起が形成され、前記微少突起間には、凹部が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の可撓電線管。
【請求項11】
請求項4に記載の可撓電線管が複数用いられ、一方の前記可撓電線管に形成された前記雄型接続部に配置された前記止水部材および前記雄型接続部の直線状部の外周部が、他方の前記可撓電線管に形成された前記雌型接続部の直線状部の内周部と、対向配置されて接続されることを特徴とする可撓電線管の接続構造。
【請求項12】
請求項4に記載の可撓電線管が複数用いられ、一方の前記可撓電線管に形成された前記雄型接続部を、他方の前記可撓電線管に形成された前記雌型接続部に管軸方向に挿入することで可撓電線管同士を接続することを特徴とする可撓電線管の接続方法。
【請求項13】
止水部材本体と水膨張性不織布を有し、
前記止水部材本体は、ゴム製または水膨張性ゴム製のリング状であり、
前記止水部材本体の外周部に前記水膨張性不織布が貼り付けられることを特徴とする止水部材。
【請求項14】
前記止水部材本体の外周に、テーパ状の斜面部と大径部が設けられ、前記止水部材本体の内周部は略直線状であり、前記内周部に一つまたは複数の突部が設けられることを特徴とする請求項13に記載の止水部材。
【請求項15】
前記止水部材本体の前記斜面部の先端に突起が形成され、前記斜面部と前記大径部に前記水膨張性不織布が貼り付けられることを特徴とする請求項14記載の止水部材。
【請求項16】
前記水膨張性不織布は、前記止水部材本体の外周に巻き付けられ、前記止水部材本体の周方向の一部に、前記水膨張性不織布の両端部のラップ部を固定する凹部が設けられることを特徴とする請求項13から請求項15のいずれかに記載の止水部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線が挿通され、端部に接続部を有する可撓電線管、可撓電線管の接続方法、および可撓電線管に用いられる止水部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地中埋設用の電線保護管として、可撓性を有する樹脂製の波付管が用いられる。このような可撓電線管を敷設するためには、複数の可撓電線管を接続する必要がある。したがって、可撓電線管同士を互いに接続可能な管継手などの接続手段が必要である。
【0003】
このような可撓電線管同士を接続するための手段としては、例えば、一方端に受口が形成され、他方端に差口が形成された波付合成樹脂管がある(特許文献1)。
【0004】
特許文献1において、差口の近傍には、ゴム輪とそのゴム輪より奥側の第1所定位置にリングが装着される。また、受口の近傍には、ゴム輪より先端側の第2所定位置にリングを受容しかつリングと協働して抜けを防止する溝が設けられる。また、受口先端と溝との間の内面に受口先端から溝に向かって縮径するテーパが形成される。他の波付合成樹脂管の差口が受口に挿入されると、溝がリングを受容し、溝とリングとが協働することで、波付合成樹脂管の抜けが防止される。
【0005】
また、継手本体で管体を接続した時、管体外周面と止水層との間にほぼ均等なクリアランスを形成することで、継手本体の取付け取外しが容易であり、水分を積極的に浸入させる水通路を確保して、止水層の迅速な吸水膨張により確実な止水効果を得ることができる管継手がある(特許文献2)。
【0006】
特許文献2の管継手は、螺旋凹凸条を有する管体の端部同士を接続するものである。継手本体の内周面には、止水層として水密封止用繊維シートが設けられる。また、特許文献2の継手本体で管体を接続した時、接続される管体外周面と止水層との間には、略均等なクリアランスが形成されるので、管体と継手本体を接続する場合に、容易に管体との接続を行なうことができる。
【0007】
また、波付可撓管同士をワンタッチで容易に接続することができ、管継手部分が抜け落ちることがなく、確実に波付可撓管を固定することができ、さらには、水の浸入を確実に防止することができる波付可撓管の接続方法がある(特許文献3)。
【0008】
特許文献3では、一方の端部に雄部を有する管継手において、雄部の内周面には吸水性不織布が設けられる。また、雄部は螺旋状部を有し、管外周にはゴムパッキンが設けられる。また、一方の端部に雌部を有する管継手において、雌部の内周面に吸水性不織布が設けられる。また、雌部は螺旋状部を有し、管内周にストッパリングを有する。それぞれの管継手は、波付管と螺合することができるとともに、雄型管継手と雌型管継手同士は、互いに直線的に嵌合することができる。
【0009】
また、管路口部材にケーブル保護管を接続するにあたって、抜け止め対策や止水対策を行うための各種部材の組み付けを簡単且つ確実に行うことができる管接続構造がある(特許文献4)。
【0010】
特許文献4の管接続構造は、管継手の一端側に管路口部材を接続するとともに、この管継手の他端側に装着される機能部材を介してケーブル保護管が接続される。機能部材は、抜け止め用兼止水用であり、管継手の他端側に嵌合される嵌合筒部と、この嵌合筒部に一体的に形成されて管継手からの保護管の抜けを阻止する抜け止め材と、嵌合筒部に設けられて接続部分を水膨張性不織布からなる止水材とを備えている。
【0011】
また、一端に管継手雄部を有し、他端に管継手雄部に嵌合する管継手雌部を有する管継手付き波付き管がある(特許文献5)。
【0012】
特許文献5の管継手雄部は、その先端部の外周全周に亘って係止部が設けられ、係止部から管軸方向に所定距離隔てた位置にリング状の防水用パッキンを有している。また、管継手雌部は、接続相手側の管継手雄部が挿入された後、係止部に係止して管継手雌部から管継手雄部が抜けるのを防止する係止爪を有する抜け止めリング及びこの抜け止めリングを収納する抜け止めリング収納部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2002-098268号公報
【文献】特開2004-332895号公報
【文献】特開2007-127170号公報
【文献】特開2009-159742号公報
【文献】特開2010-210093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献1では、受口側の所定位置にリングとゴム輪の2つの部材を配置する必要があり、構造が複雑であるとともに、ゴム輪が劣化した場合には、雨水が電線管に侵入する可能性がある。
【0015】
また、特許文献2では、電線管を接続する場合には、継手本体を用いて一方の電線管に螺合した後、逆方向に回転させることで、他方の電線管に螺合させる必要がある。このため、螺旋波を有する電線管にしか適用ができず、また、接続のための作業性が悪い。
【0016】
また、特許文献3では、雄部継手と雌部継手は、ともに螺旋状部の内面に吸水性不織布が敷設され、継手の外周面または内周面にゴムパッキンまたはストッパリング等の部材が、吸水性不織布と相互に離間した位置に配置されている。このため、吸水性不織布とゴムパッキンまたはストッパリング等の部材を別々の位置に設けなければならず、電線管の継手や接続部の構造が複雑である。また、電線管に継手を装着した後に、さらに雄部継手と雌部継手を装着した電線管同士を相互に差し込む必要があり接続構造が複雑で手間がかかる。
【0017】
また、特許文献4は、管路口の接続部材の構造が複雑で、管継手と機能部材等複数の部材を有し、さらに抜け止め材や止水材を必要とするなど、多くの部材を必要とし、構造が複雑である。また、この構造は、電線管同士を直接挿入して接続させるものではない。
【0018】
また、特許文献5も、防水用パッキンと抜け止めリング等の部材を別々の位置に設けなければならず、電線管の継手や接続部の構造が複雑になる。
【0019】
このように、従来の方法では、止水部の性能には問題はないものの、電線管の雄型継手部の構造が複雑となる問題がある。一方、止水性をより確実にするために、水膨張性不織布を用いた止水部を設ける方法が提案されている。しかし、この方法では、水膨張性不織布を雄型接続部の所定位置に巻き付ける必要があり、現場における作業に手間がかかる問題があった。また、場合によっては、空気中の湿気を吸って水膨張性不織布が膨潤して膨張してしまうため、施工現場にて、水膨張性不織布を電線管や管継手に巻きつける際に、巻付け施工性にばらつきが生じやすい。さらに膨潤により、水膨張性不褥布の直径が大きくなり過ぎて、雌型接続部に挿入できない場合がある。
【0020】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、接続時の作業性が良好であり、高い止水性を得ることが可能な、可撓電線管、可撓電線管の接続方法、および可撓電線管に用いられる止水部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前述した目的を達するために第1の発明は、可撓性を有する電線管であって、本体部と、前記本体部の一方の端部に設けられる雄型接続部と、前記本体部の他方の端部に設けられ、前記雄型接続部と嵌合可能な形状の雌型接続部と、を具備し、前記雄型接続部は、前記雄型接続部の先端部の外径よりも外径が小さく管軸方向に対して所定長さの止水部材配置部と、前記止水部材配置部に配置される止水部材と、を有し、前記止水部材は、止水部材本体と水膨張性不織布から構成され、前記止水部材本体はリング状の弾性部材であり、前記止水部材本体の外周部に前記水膨張性不織布が貼り付けられることを特徴とする可撓電線管である。
【0022】
前記止水部材配置部の管軸方向奥側に、前記止水部材配置部より外径が大きく、前記雄型接続部の先端部の外径と略等しい直線状部が管軸方向の所定長さに形成されていることが望ましい。
【0023】
前記止水部材配置部の管軸方向奥側に、山部と谷部が平坦で管軸方向に略平行なコルゲート部が管軸方向の所定長さに形成されており、前記山部の外径は、前記止水部材配置部の外径より大きく、前記雄型接続部の先端部の外径と略等しくてもよい。
【0024】
前記雌型接続部の内径は、前記止水部材における前記水膨張性不織布の外径と略同一か、前記水膨張性不織布の外径よりも小さく、前記止水部材本体の外径より大きいことが望ましい。
【0025】
前記雌型接続部は、先端からの管軸方向の所定長さに直線状部が設けられ、前記雌型接続部の直線状部の管軸方向長さは、前記雄型接続部の直線状部の長さと前記止水部材配置部の長さとを合計した長さ以上であってもよい。
【0026】
前記雌型接続部と前記本体部の境界部近傍において、内面に突出する突起が形成されてもよい。
【0027】
前記止水部材本体の外周に、テーパ状の斜面部と大径部が設けられ、前記止水部材配置部は、管軸方向の断面において、略コの字型の形状を有してもよい。
【0028】
前記本体部には、略円形断面の螺旋波または独立波形状の波状部が繰り返して複数個形成されてもよい。
【0029】
前記本体部には、矩形断面の大径部と円形断面の小径部が交互に形成されてもよい。
【0030】
前記円形断面の小径部の略中央には、管軸方向に略対称に2つの微少突起が形成され、前記微少突起間には、凹部が形成されていてもよい。
【0031】
第1の発明によれば、止水部材が、弾性部材からなる止水部材本体に水膨張性不織布が貼り付けられて構成されるため、管継手を用いずに、雄型接続部を雌型接続部に直線的に差し込むだけで可撓電線管同士を容易に接続可能である。また、雄型接続部の管軸方向の1カ所に止水部材を設けるため、可撓電線管の雄部接続部の先端の構造が簡易になるとと同時に、現場での電線管の雄型接続部における止水部材の巻き付けが不要になる。このため、現場における可撓電線管同士の接続作業が容易になる。
【0032】
また、大口径の可撓電線管同士をねじ込んで接続する場合には、螺旋接続を行なうことは困難であるが、直線状に雄型接続部を雌型接続部に差し込むだけで、電線管を容易に接続することができるため、大口径の可撓電線管にも適用可能である。また、電線管本体の断面が円形断面の電線管だけでなく、電線管本体が角形の電線管にも適用することができる。
【0033】
また、止水部材本体が弾性部材で形成されているので、雄型接続部と雌型接続部を嵌合させる時に、雄型接続部と雌型接続部を嵌合する場合の挿入抵抗を小さくすることができる。
【0034】
また、雄型接続部を雌型接続部と嵌合させた時に、地震などにより接続部の配置が少しずれたとしても、雄型接続部の直線状部によって、雄型接続部が雌型接続部から抜けることを抑制することができる。
【0035】
また、雌型接続部の内径を、止水部材本体の外径よりも大きくすることで、雄型接続部を雌型接続部に挿入する際の挿入抵抗を小さくすることができる。また、雌型接続部の内径を水膨張性不織布の外径よりも小さくすることで、雄型接続部が雌型接続部から抜けることを抑制することができる。
【0036】
また、雌型接続部の直線状部の長さを、雄型接続部の止水部材配置部の長さに雄型接続部の直線状部の長さを加えた合計の長さ以上とすることで、雌型接続部の直線状部と雄型接続部の直線状部を所定長さに渡って対向させることができる。このため、地震などの際に、接続部が少しずれたとしても雄型接続部が雌型接続部から抜けることを抑制することができる。
【0037】
また、止水部材本体の外周にテーパ状の斜面部と大径部を形成することで、弾性部材が変形しやすく、挿入抵抗を低くすることが可能である。また、止水部材配置部の断面形状を略コの字型の形状をすることで、止水部材を安定配置しやすい。
【0038】
また、雌型接続部と本体部の境界部近傍の内面に突出する突起が形成されれば、雄型接続部を雌型接続部に挿入した際に、突起がストッパとなって、雄型接続部が過剰に雌型接続部の奥側に挿入されることを防止することができる。
【0039】
また、可撓電線管の本体部としては、螺旋波、独立波の場合でも適用が可能であり、螺旋波の場合において、接続時にねじ込む必要がないため、作業が容易である。
【0040】
また、可撓電線管の本体部が、矩形断面の大径部と円形断面の小径部が交互に形成されていることで、例えば、可撓電線管を上下左右に併設する際に、安定して配置することができる。
【0041】
この際、円形断面の小径部の略中央に、略対称に2つの微少突起が形成され、2つの微少突起間に、凹部が形成されれば、長さ調整のため、電線管を切断する場合に、凹部を切断の位置決めとして使用することができる。
【0042】
第2の発明は、第1の発明にかかる可撓電線管が複数用いられ、一方の前記可撓電線管に形成された前記雄型接続部に配置された前記止水部材および前記雄型接続部の直線状部の外周部が、他方の前記可撓電線管に形成された前記雌型接続部の直線状部の内周部と、対向配置されて接続されることを特徴とする可撓電線管の接続構造である。
【0043】
第2の発明によれば、抜け止めリング等の抜け止め構造を必要とせず、雄型接続部の直線状部と雌型接続部の直線状部を対向配置することで、簡易な構造によって、雄型接続部と雌型接続部の接続状態を維持することができる。
【0044】
第3の発明は、第1の発明にかかる可撓電線管が複数用いられ、一方の前記可撓電線管に形成された前記雄型接続部を、他方の前記可撓電線管に形成された前記雌型接続部に管軸方向に挿入することで可撓電線管同士を接続することを特徴とする可撓電線管の接続方法である。
【0045】
第3の発明によれば、管軸方向に雄型接続部を雌型接続部に挿入することで簡単に両者を接続できるので、螺旋管の回転接続よりも容易である。
【0046】
第4の発明は、止水部材本体と水膨張性不織布を有し、前記止水部材本体は、ゴム製または水膨張性ゴム製のリング状であり、前記止水部材本体の外周部に前記水膨張性不織布が貼り付けられることを特徴とする止水部材である。
【0047】
前記止水部材本体の外周に、テーパ状の斜面部と大径部が設けられ、前記止水部材本体の内周部は略直線状であり、前記内周部に一つまたは複数の突部が設けられることが望ましい。
【0048】
前記止水部材本体の前記斜面部の先端に突起が形成され、前記斜面部と前記大径部に前記水膨張性不織布が貼り付けられることが望ましい。
【0049】
前記水膨張性不織布は、前記止水部材本体の外周に巻き付けられ、前記止水部材本体の周方向の一部に、前記水膨張性不織布の両端部のラップ部を固定する凹部が設けられることが望ましい。
【0050】
第4の発明によれば、止水部材本体がゴム製または水膨張性ゴム製であり、止水部材本体のみでも止水性を有し、また、水膨張性不織布を電線管に貼り付けただけでも止水性を有するが、止水部材本体に水膨張部材を貼り付けて一体化することで、抜け止め効果と止水効果の両方の効果を得ることができる。
【0051】
また、止水部材本体の外周にテーパ状の斜面部と大径部を形成することで、弾性部材が変形しやすく、挿入抵抗を低くすることが可能である。また、内周部に一つまたは複数の突部が設けることで、雌型接続部が雄型接続部に挿入される時に、止水部材本体の弾性変形が容易となり、さらに挿入抵抗を低くすることが可能である。
【0052】
また、止水部材本体の斜面部の先端に突起を形成することで、接続時等において、水膨張性不織布の剥がれやずれを抑制することができる。
【0053】
また、止水部材本体の周方向の一部に、巻き付けられる水膨張性不織布の両端部のラップ部を固定する凹部が設けられれば、ラップ部が厚肉になることがない。このため、接続時における水膨張性不織布の剥がれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、接続時の作業性が良好であり、高い止水性を得ることが可能な、可撓電線管、可撓電線管の接続方法、および可撓電線管に用いられる止水部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】(a)は、可撓電線管1を示す正面図、(b)は、(a)のA-A線断面図。
【
図4】(a)、(b)は、止水部材9の部分背面図。
【
図5】(a)~(c)は、雄型接続部5と雌型接続部7との接続方法を示す図。
【
図8】雄型接続部5の直線状部13aの代わりにコルゲート部14を形成した可撓電線管2の部分拡大図。
【
図10】(a)は、可撓電線管1aを示す正面図、(b)は、可撓電線管1bを示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態にかかる可撓電線管について説明する。
図1(a)は、可撓電線管1を示す正面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のA-A線断面図である。可撓電線管1は、例えば高密度ポリエチレン製などの可撓性を有する電線管であり、主に、本体部3と、雄型接続部5と、雌型接続部7等から構成される。
【0057】
本体部3は、矩形断面の大径部15と円形断面の小径部17が交互に形成される。なお、大径部15は、断面形状が略正方形状であり、大径部15の径(1辺の長さ)は、小径部17における外径よりも大きい。このように、略正方形状の大径部15を設けることで、可撓電線管1を積み上げた際に、可撓電線管1を安定して配列することができる。
【0058】
円形断面の小径部17の略中央には、管軸方向に略対称に2つの微少突起18が形成されており、2つの微少突起18間には、凹部20が形成されていてもよい。このように、2つの微少突起18間に、凹部20が形成されていることで、長さ調整のため、電線管を切断する場合に、凹部20を切断することで、切断が容易になると同時に切断位置を位置決めしないでも正確な長さに切断できる。
【0059】
本体部3の一方の端部には、雄型接続部5が設けられる。雄型接続部5は、雄型接続部5の先端部の外径よりも外径が小さく管軸方向に対して所定長さの止水部材配置部11と、止水部材配置部11に配置される止水部材9とを有する。止水部材9については、詳細を後述する。
【0060】
止水部材配置部11の管軸方向奥側(本体部3側)には、止水部材配置部11より外径が大きく、雄型接続部5の先端部の外径と略等しい直線状部13aが管軸方向の所定長さに形成されている。すなわち、止水部材配置部11と本体部3の間には、直線状部13aが形成される。直線状部13aは、内面および外面ともに、管軸方向に凹凸がない部位である。
【0061】
本体部3の他方の端部には、雌型接続部7が設けられる。雌型接続部7は、前述した雄型接続部5と嵌合可能な形状を有する。雌型接続部7は、雌型接続部7の先端からの管軸方向の所定長さに直線状部13bが設けられる。直線状部13bは、内面および外面ともに、管軸方向に凹凸がない直線状の部位である。
【0062】
なお、本体部3の外径は、雄型接続部5の直線状部13a及び雌型接続部7の直線状部13bの外径よりも大きい。すなわち、直線状部13a、13bの奥側の本体部3との境界部には、段差が形成される。
【0063】
次に、止水部材9について詳細に説明する。
図2は、止水部材9の斜視図であり、
図3は、止水部材9の軸方向の断面図である。止水部材9は、止水部材本体19と水膨張性不織布21等からなる。
【0064】
止水部材本体19はリング状であり、ゴム製または水膨張性ゴム製等の弾性部材で形成される。止水部材本体19は、例えば、クロロプレンゴム、EPDMゴム等を適用可能である。止水部材本体19の内周部は軸方向の断面において略直線状であり、止水部材本体19の内周部には、一つまたは複数の突部23が設けられる。突部23は、周方向に連続して形成される。なお、図示した例では、3本の突部23が所定の間隔をあけて配置される。
【0065】
また、止水部材本体19の外周には、軸方向の断面において、テーパ状の斜面部29と軸方向に略平行な大径部31が設けられる。止水部材9は、斜面部29(縮径部側)が、雄型接続部5の管軸方向の先端側に位置し、大径部31が本体部3側に位置する向きで、止水部材配置部11に配置される。
【0066】
さらに、
図3に示すように、止水部材本体19の斜面部29の先端には、突起27が形成される。水膨張性不織布21は、先端部が突起27に突き当たり、止水部材本体19の外周部の斜面部29と大径部31に貼り付けられる。すなわち、水膨張性不織布21は、斜面部29と大径部31との総長に略対応した幅で、止水部材本体19の外周長に略対応した長さの帯状である。なお、水膨張性不織布21は、例えば、ポリエステル繊維とポリアクリル酸ナトリウム繊維を所定割合で配合したものを適用可能である。
【0067】
図4(a)は、止水部材9の部分背面図である。水膨張性不織布21を止水部材本体19の外周に巻き付ける際には、その両端部に隙間が形成されないように、ラップ部25が形成される。ラップ部25は、水膨張性不織布21が重なるため、止水部材9の外径が部分的に大きくなる。
【0068】
これを解消するため、
図4(b)に示すように、止水部材本体19の周方向の一部に、水膨張性不織布21の両端部のラップ部25を収容して固定する凹部33を設けてもよい。水膨張性不織布21の厚みと略等しい深さの凹部33を形成し、凹部33の周方向の長さよりも、水膨張性不織布21の周方向のラップ長を短くすることで、ラップ部25において、止水部材9の外径が大きくなることを抑制することができる。
【0069】
次に、複数の可撓電線管1を用いた、可撓電線管1同士の接続方法について説明する。まず、
図5(a)に示すように、一対の可撓電線管1を用い、一方の可撓電線管1に形成された雄型接続部5と他方の可撓電線管1に形成された雌型接続部7とを対向して配置する。
【0070】
この状態から、
図5(b)に示すように、一方の可撓電線管1に形成された雄型接続部5を、他方の可撓電線管1に形成された雌型接続部7に管軸方向に挿入する(図中矢印B)。
【0071】
図6は、
図5(a)のC部拡大図である。止水部材配置部11は、管軸方向の断面において、略コの字型の形状を有する。止水部材9は、略コの字状の止水部材配置部11に配置される。
【0072】
ここで、雌型接続部7の内径(図中E)は、止水部材本体19の大径部31における外径(図中F)よりも大きい。このようにすることで、雄型接続部5を雌型接続部7に挿入した際に、止水部材本体19が大きく潰されることがないため、挿入抵抗を小さくすることができる。
【0073】
一方、雌型接続部7の内径(図中E)は、止水部材9の大径部31における水膨張性不織布21の外径(図中G)と略同一か、水膨張性不織布21の外径よりも小さい。このようにすることで、雌型接続部7と水膨張性不織布21とが接触するため、抜け止め効果を得ることができる。なお、水膨張性不織布21は、止水部材本体19と比較して、容易に収縮するため、水膨張性不織布21が雌型接続部7の内面と接触しても、雄型接続部5を雌型接続部7へ挿入する際の抵抗の増大は小さい。
【0074】
さらに、
図5(c)に示すように、雄型接続部5を完全に雌型接続部7へ挿入することで、一対の可撓電線管1同士が接続された、可撓電線管接続構造35を得ることができる。
【0075】
図7は、
図5(c)のD部拡大図である。可撓電線管接続構造35においては、一方の可撓電線管1に形成された雄型接続部5に配置された止水部材9および雄型接続部5の直線状部13aの外周部が、他方の可撓電線管1に形成された雌型接続部7の直線状部13bの内周部と対向配置されて接続される。この際、雌型接続部7の直線状部13bの管軸方向長さ(図中H)は、雄型接続部5の直線状部13aの長さと止水部材配置部11の長さとを合計した長さ(図中I)以上である。このように、雌型接続部7の直線状部13bと雄型接続部5の直線状部13a等が所定長さに渡って対向しているので、地震などにより接続部が少しずれたとしても嵌合状態が維持される。
【0076】
また、図示したように、可撓電線管接続構造35においては、雌型接続部7(直線状部13b)の先端は、雄型接続部5の基部の本体部3の端面と接触し、それ以上、雄型接続部5が雌型接続部7へ挿入されることがない。すなわち、直線状部13aよりも外径の大きな本体部3の端部の段差部が、雌型接続部7と接触するストッパの役割を果たす。
【0077】
図8は、
図7の雄型接続部5の直線状部13aに相当する部分に代えてコルゲート部14とした可撓電線管2を用いた可撓電線管接続構造35bを示す図である。コルゲート部14は、止水部材配置部11の管軸方向奥側に、管軸方向に略平行に所定長さに形成される。コルゲート部14は、外面方向に突出する山部43と外面において凹部となる谷部45を有する。山部43の外径は、止水部材配置部11の外径よりも大きく、雄型接続部5の先端部の外径と略等しい。また、山部43と谷部45は平坦であり、山部43と谷部45の間に、両者を結ぶ斜面部が設けられる。山部43と谷部45を結ぶ斜面部は、略平面状であってもよいし、曲面状であってもよい。
【0078】
可撓電線管接続構造35bでは、雄型接続部5のコルゲート部14の山部43と雌型接続部7の直線状部13bの内周部とが対向する。このように、雄型接続部5の直線状部13aに変わり、コルゲート部14を形成することで、雄型接続部5の剛性が向上するので、雄型接続部5の配置の精度が向上して、位置決めがしやすい。これに対して、雌型接続部7に直線状部13bが形成されているので、雌型接続部7はしなやかに雄型接続部5に嵌合することができる。
【0079】
なお、
図9に示す可撓電線管接続構造35aのように、雌型接続部7の基部(雌型接続部7と本体部3との境界部近傍)の内面に、突起41を設けてもよい。突起41は、可撓電線管1の内面において、中心方向に突出する。突起41の内径を、雄型接続部5の端部における外径よりも小さくすることで、雄型接続部5の先端が、雌型接続部7の奥側の本体部3へ挿入されることを防止するストッパとして機能させることができる。
【0080】
尚、雌型接続部7と本体部3の境界部近傍において、内面に突出する突起41が形成される場合には、直線状部13a、13bの奥側の本体部3との境界部の段差は必ずしも必要でない。
【0081】
以上説明したように、本実施形態によれば、管継手を用いずに可撓電線管1の雄型接続部5を、雌型接続部7に直線的にずらして差し込むだけで接続が可能である。また、弾性部材からなる止水部材本体19と水膨張性不織布21が一体となった止水部材9を用いることで、可撓電線管1同士の接続部において、嵌合部と止水部とが複数個所に配置される場合と比較して、構造も簡易である。
【0082】
また、止水部材9は、止水部材本体19の弾性反発力と水膨張性不織布21の止水効果の両者を利用できるため、より高い止水効果を期待できる。
【0083】
また、水膨張性不織布21は、予め止水部材本体19の外周に巻き付けられるため、現場での水膨張性不織布21の巻き付け作業が不要である。水膨張性不織布21は伸び易いため、現場で水膨張性不織布21を電線管等の端部に巻き付けようとすると、均一な厚さに巻くことが困難である。このため、水膨張性不織布21の厚みばらつきが大きく、漏水の原因になることもある。これに対し、本実施形態では、予め工場等で止水部材本体19と水膨張性不織布21が一体となった止水部材9を用いることで、このような現場での作業が不要となる。このため、作業が容易であるとともに、高い止水性を確保することができる。
【0084】
また、止水部材本体19の内周部に、突部23を設けることにより、止水部材本体19の外周に圧力がかかった時に、より変形しやすい。特に、止水部材本体19がゴム製であれば、ゴム材料としてのゴム弾性による変形の他、突部23に応力集中して、形状的に変形しやすい。
【0085】
また、止水部材本体19の外周部には、雄型接続部5の先端方向に縮径し、大径部31に向けてテーパ状に肉厚が増加する斜面部29が形成される。このため、雄型接続部5の挿入抵抗を低減することができる。
【0086】
また、水膨張性不織布21は、止水部材本体19の少なくとも斜面部29と大径部31を覆うように止水部材本体19の外周に接着固定されている。この際に、斜面部29の先端部に、突起27を設けることで、水膨張性不織布21を突起27に合わせて貼り付けることができる。また、接続時に、水膨張性不織布21が雌型接続部の端部に引っかかることを防止し、水膨張性不織布21が剥がれることを抑制することができる。
【0087】
また、止水部材本体19の外周に、帯状の水膨張性不織布21を巻き付けた時に、水膨張性不織布21の端部同士が重なりあうラップ部25を形成することで、水膨張性不織布21を止水部材本体19の全周に渡って隙間なく貼り付けることができる。この際、ラップ部25は、厚さが2倍になり、剥がれやすくなるが、凹部33を設けることで、ラップ部25における外径の変化を抑制し、水膨張性不織布21を剥がれにくくすることができる。
【0088】
また、矩形断面の大径部15と円形断面の小径部17が交互に形成された可撓電線管1によれば、可撓電線管1を積み上げた際に、可撓電線管1を安定して配列することができる。
【0089】
なお、本発明では、雄型接続部5を雌型接続部7に挿入するのみで接続するため、いずれの形態の本体部3を有する可撓電線管に適用可能である。例えば、
図10(a)に示す可撓電線管1aのように、本体部3の外周に、略円形断面の独立波形状の波状部37が管軸方向に繰り返して複数個形成されてもよい。また、
図10(b)に示す可撓電線管1bのように、本体部3の外周に、略円形断面の螺旋波形状の波状部39が管軸方向に繰り返して複数個形成されてもよい。いずれの可撓電線管も、雄型接続部5を雌型接続部7に挿入するのみで接続することができる。
【0090】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0091】
1、1a、1b………可撓電線管
2………可撓電線管
3………本体部
5………雄型接続部
7………雌型接続部
9………止水部材
11………止水部材配置部
13a、13b………直線状部
14………コルゲート部
15………大径部
17………小径部
18………微少突起
19………止水部材本体
20………凹部
21………水膨張性不織布
23………突部
25………ラップ部
27………突起
29………斜面部
31………大径部
33………凹部
35、35a、35b………可撓電線管接続構造
37………独立波形状の波状部
39………螺旋波形状の波状部
41………突起
43………山部
45………谷部