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特許7079200半導体ウェハ表面保護用粘着テープ及び半導体ウェハの加工方法
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  • 特許-半導体ウェハ表面保護用粘着テープ及び半導体ウェハの加工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】半導体ウェハ表面保護用粘着テープ及び半導体ウェハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220525BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220525BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20220525BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220525BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
H01L21/304 631
C09J7/38
C09J7/29
C09J201/00
B32B27/00 M
B32B27/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018538670
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2018012284
(87)【国際公開番号】W WO2018181240
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2017071346
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100202898
【弁理士】
【氏名又は名称】植松 拓己
(72)【発明者】
【氏名】五島 裕介
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-060151(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143711(WO,A1)
【文献】特開2010-258426(JP,A)
【文献】特開2014-015521(JP,A)
【文献】特許第6034522(JP,B1)
【文献】特開2015-004003(JP,A)
【文献】国際公開第2010/047272(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/122060(WO,A1)
【文献】特開2005-048039(JP,A)
【文献】特開2013-087131(JP,A)
【文献】国際公開第2012/042869(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C09J 7/38
C09J 7/29
C09J 201/00
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20μm以上の凹凸差を有する半導体ウェハの表面に、40℃~90℃の条件で加熱貼合して用いる半導体ウェハ表面保護用粘着テープであって、
前記半導体ウェハ表面保護用粘着テープは、基材フィルムと、粘着剤層と、該基材フィルムと該粘着剤層との間に中間樹脂層とを有し、
前記中間樹脂層の厚みが、前記凹凸差以上であり、該中間樹脂層を構成する樹脂がメタロセンプラストマー樹脂であり、該中間樹脂層を構成する樹脂の融点若しくはビカット軟化点が40℃~90℃であり、該中間樹脂層を構成する樹脂のメルトマスフローレートが、10g/10min~100g/10minである、半導体ウェハ表面保護用粘着テープ。
【請求項2】
紫外線照射後の前記粘着剤層の、23℃のSUS280研磨面に対する粘着力が0.5N/25mm以上5.0N/25mm以下であり、かつ50℃のSUS280研磨面に対する粘着力が、0.3N/25mm以上7.0N/25mm以下である、請求項に記載の半導体ウェハ表面保護用粘着テープ。
【請求項3】
前記基材フィルムの厚みと前記中間樹脂層の厚みの比が、基材フィルムの厚み:中間樹脂層の厚み=0.5:9.5~7:3である、請求項1又は2に記載の半導体ウェハ表面保護用粘着テープ。
【請求項4】
前記基材フィルムの構成材料の融点が90℃~150℃である、請求項1~のいずれか1項に記載の半導体ウェハ表面保護用粘着テープ。
【請求項5】
前記中間樹脂層の厚みが、100μm~400μmである、請求項1~のいずれか1項に記載の半導体ウェハ表面保護用粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤層の厚みが、5μm~40μmである、請求項1~のいずれか1項に記載の半導体ウェハ表面保護用粘着テープ。
【請求項7】
前記基材フィルムの厚みが25μm~100μmである、請求項1~のいずれか1項に記載の半導体ウェハ表面保護用粘着テープ。
【請求項8】
20μm以上の凹凸差を有する半導体ウェハの表面に、半導体ウェハ表面保護用粘着テープを、40℃~90℃の条件で加熱貼合し、半導体ウェハ裏面を研削することを含む半導体ウェハの加工方法であって、
前記半導体ウェハ表面保護用粘着テープは、基材フィルムと、粘着剤層と、該基材フィルムと該粘着剤層との間に中間樹脂層とを有し、
該中間樹脂層の厚みが、前記凹凸差以上であり、該中間樹脂層を構成する樹脂がメタロセンプラストマー樹脂であり、該中間樹脂層を構成する樹脂の融点若しくはビカット軟化点が40℃~90℃であり、該中間樹脂層を構成する樹脂のメルトマスフローレートが、10g/10min~100g/10minである、半導体ウェハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ表面保護用粘着テープ及び半導体ウェハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージは、高純度シリコン単結晶等をスライスして半導体ウェハとした後、イオン注入、エッチング等により当該ウェハ表面に集積回路を形成して製造される。集積回路が形成された半導体ウェハの裏面を研削、研磨等することにより、半導体ウェハは所望の厚みに加工される。この際、半導体ウェハ表面に形成された集積回路を保護するために、半導体ウェハ表面保護用粘着テープ(以下、単に「表面保護テープ」ともいう。)が用いられる。
裏面研削された半導体ウェハは、裏面研削が終了した後にウェハカセットに収納され、ダイシング工程へ運搬され、半導体チップに加工される。
【0003】
従来は、裏面研削等により半導体ウェハの厚みを200~400μm程度とすることが求められていた。しかし、近年の高密度実装技術の進歩に伴い、半導体チップを小型化する必要が生じ、それに伴い、半導体ウェハの薄膜化も進んでいる。半導体チップの種類によっては、半導体ウェハを100μm程度まで薄くすることが必要となっている。一方で、一度の加工によって製造できる半導体チップの数を多くするために、もとの半導体ウェハを大径化する傾向にある。これまでは直径が5インチや6インチの半導体ウェハが主流だったのに対し、近年では直径8~12インチの半導体ウェハを半導体チップ化する加工が主流となっている。
半導体ウェハを薄膜化と同時に大径化する流れは、特に、NAND型やNOR型が存在するフラッシュメモリの分野や、揮発性メモリであるDRAMなどの分野で顕著である。例えば、直径12インチの半導体ウェハを150μm以下の厚みまで研削することも珍しくない。
【0004】
これに加え、特に近年、スマートフォンの普及や携帯電話の性能向上および音楽プレーヤの小型化、かつ性能向上などに伴い、耐衝撃性などを考慮した電極付半導体ウェハを用いたフリップチップ実装に用いるウェハについても薄膜化の要求が増えてきている。またバンプ付半導体ウェハについても半導体ウェハ部分を100μm以下の薄膜研削をする必要が出てきている。フリップチップ接続されるためのバンプは、転送速度向上のため高密度化されてきており、バンプの高さ(半導体ウェハ表面からの突出高さ)が低くなってきており、それに伴ってバンプ間距離が短くなってきている。また近年ではDRAMにもフリップチップ接続が実施されてきているためウェハの薄膜化も加速している。
【0005】
フリップチップ実装は、近年の電子機器の小型化、高密度化に対して半導体素子を最小の面積で実装できる方法として注目されてきた。このフリップチップ実装に使用される半導体素子の電極上にはバンプが形成されており、バンプと回路基板上の配線とを電気的に接合する。これらのバンプの組成としては、主に半田や金が使用されている。この半田バンプや金バンプは、蒸着やメッキで、チップの内部配線につながる露出したアルミ端子上などに形成する。
【0006】
しかし、バンプ付半導体ウェハは、その表面に大きな凹凸を有しているため薄膜加工が難しく、通常の表面保護テープを用いて裏面研削を行うと半導体ウェハに割れが生じたり、半導体ウェハの厚み精度が悪化したりする。そのため、バンプ付半導体ウェハの研削は、特別に設計された表面保護テープを用いて行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、これらの表面保護テープではバンプを十分に吸収して研削性を確保しているため剥離性との両立が非常に難しい。これまでのフリップチップ実装されてきたチップの仕上げ厚みは200μm厚以上とある程度の厚みがあり、剛性を保てたため何とか剥離できてきた。しかし、最近、半導体ウェハ仕上げ厚みが、よりいっそう薄膜となり、バンプ密度も高くなってきているため、表面保護テープは、剥離が容易にできない、糊残りするといった問題を引き起こしてしまっている。また逆に、剥離性を確保すると密着が不十分となり、裏面研削時にシーページ(例えば、ダストや研削水の浸入)を引き起こしてしまっている。
【0008】
一方、ウェハレベルパッケージに使用されるバンプ付半導体ウェハのバンプ高さは依然高いままであり、高さ250μm以上のバンプも搭載されている。ウェハレベルパッケージではチップをスタックする必要がないためメモリ系半導体ウェハのように50μm以下といった極薄研削されることがないが、高いバンプがついているため厚膜研削でも非常に割れやすく、150μm厚以下の研削厚で容易に半導体ウェハ割れの問題が発生する。
【0009】
このような半導体ウェハに対して専用の表面保護テープが提案されている(特許文献2~4参照)。特許文献2には、半導体ウェハ加工時には半導体ウェハに強固に密着するとともに、剥離時に、半導体ウェハの破損や糊残りすることなく剥離することができる半導体ウェハ表面保護用粘着テープが記載されている。この表面保護テープは、基材フィルム上に、層厚及び収縮値を特定の範囲内にした放射線硬化型粘着剤層を有する。また、特許文献3には、バンプ高さの高いバンプウェハの裏面研削に用いる表面保護用粘着テープで、ウェハを研削してもウェハの破損防止やシーページが生じないで、剥離力の軽減と糊残りの抑制された半導体ウェハ表面保護用粘着テープが開示されている。この表面保護テープは、特定のタック力と層厚を有する。また、特許文献4には、ウェハ表面に形成された凸凹の高低差以下までウエハの裏面を研削する際に、ウェハ表面の凸凹の保護と、ウェハ表面への研削屑や研削水などの浸入防止、及び研削後のウェハの破損防止を図ることのできる半導体ウエハ保護用粘着シートの貼り合わせ方法が開示されている。この方法に用いられる表面保護シートは、50℃~100℃における損失正接を特定の範囲内にした中間層と粘着剤層とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2001-203255号公報
【文献】特許第5242830号公報
【文献】特許第5117630号公報
【文献】特開2010-258426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2記載の表面保護テープは、半導体ウェハの破損や糊残りは一定程度抑制することができる。また、特許文献3記載の表面保護テープは、剥離性は良好である。しかし、より高いバンプを、より狭いピッチで有する半導体ウェハに適用するには、特許文献2記載の表面保護テープは、剥離性ないし糊残りをさらに改善する余地がある。また、特許文献3記載の表面保護テープは、密着性をさらに向上させ、シーページを抑制し、糊残りを改善する余地がある。
【0012】
特許文献4記載の方法に用いられる表面保護テープは、追従性が極めて良好であるために、高さ250μm以上のバンプに追従した際に、テープが凹凸状に変形してしまい、吸引搬送している加工装置内で搬送中の半導体ウェハが落下し、破損してしまうこともある。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑み、半導体ウェハ加工時には半導体ウェハに強固に密着し、シーページ、加工装置内での搬送エラー、半導体ウェハ破損を抑制し、剥離時には糊残りすることなく剥離することができる半導体ウェハ表面保護用粘着テープおよびそれを用いた半導体ウェハの加工方法を提供することを課題とする。
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を行った結果、基材フィルム、中間樹脂層及び粘着剤層を有する半導体ウェハ表面保護用粘着テープにおいて、前記中間樹脂層を構成する樹脂の融点若しくはビカット軟化点及びメルトマスフローレート(MFR)を、それぞれ、特定の範囲内とし、この表面保護テープを特定の凹凸差を有する半導体ウェハ表面に特定温度で加熱貼合することにより、表面保護テープを半導体ウェハの回路面に強固に密着させることができ、半導体ウェハ加工時にはシーページ、加工装置内での搬送エラー、半導体ウェハ破損を抑制でき、剥離した際には、糊残りすることなく剥離でき、さらには半導体ウェハ表面に貼合した状態での反りを抑制できることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされるに至ったものである。
【0015】
すなわち、上記課題は以下の手段により解決された。
<1>
20μm以上の凹凸差を有する半導体ウェハの表面に、40℃~90℃の条件で加熱貼合して用いる半導体ウェハ表面保護用粘着テープであって、
前記半導体ウェハ表面保護用粘着テープは、基材フィルムと、粘着剤層と、該基材フィルムと該粘着剤層との間に中間樹脂層とを有し、
前記中間樹脂層の厚みが、前記凹凸差以上であり、該中間樹脂層を構成する樹脂の融点若しくはビカット軟化点が40℃~90℃であり、該中間樹脂層を構成する樹脂のメルトマスフローレートが、10g/10min~100g/10minである、半導体ウェハ表面保護用粘着テープ。
<2>
紫外線照射後の前記粘着剤層の、23℃のSUS280研磨面に対する粘着力が0.5N/25mm以上5.0N/25mm以下であり、かつ50℃のSUS280研磨面に対する粘着力が、0.3N/25mm以上7.0N/25mm以下である、<1>に記載の半導体ウェハ表面保護用粘着テープ。
【0016】
<3>
前記基材フィルムの厚みと前記中間樹脂層の厚みの比が、基材フィルムの厚み:中間樹脂層の厚み=0.5:9.5~7:3である、<1>または<2>に記載の半導体ウェハ表面保護用粘着テープ。
<4>
前記中間樹脂層を構成する樹脂が、エチレン-アクリル酸メチルコポリマー樹脂、エチレン-アクリル酸エチルコポリマー樹脂およびエチレン-アクリル酸ブチルコポリマー樹脂の少なくとも1種である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の半導体ウェハ表面保護用粘着テープ。
<5>
前記基材フィルムの構成材料の融点が90℃~150℃である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の半導体ウェハ表面保護用粘着テープ。
<6>
前記中間樹脂層の厚みが、100μm~400μmである、<1>~<5>のいずれか1項に記載の半導体ウェハ表面保護用粘着テープ。
<7>
前記粘着剤層の厚みが、5μm~40μmである、<1>~<6>のいずれか1項に記載の半導体ウェハ表面保護用粘着テープ。
<8>
前記基材フィルムの厚みが25μm~100μmである、<1>~<7>のいずれか1項に記載の半導体ウェハ表面保護用粘着テープ。
【0017】
<9>
20μm以上の凹凸差を有する半導体ウェハの表面に、半導体ウェハ表面保護用粘着テープを、40℃~90℃の条件で加熱貼合し、半導体ウェハ裏面を研削することを含む半導体ウェハの加工方法であって、
前記半導体ウェハ表面保護用粘着テープは、基材フィルムと、粘着剤層と、該基材フィルムと該粘着剤層との間に中間樹脂層とを有し、
該中間樹脂層の厚みが、前記凹凸差以上であり、該中間樹脂層を構成する樹脂の融点若しくはビカット軟化点が40℃~90℃であり、該中間樹脂層を構成する樹脂のメルトマスフローレートが、10g/10min~100g/10minである、半導体ウェハの加工方法。
【0018】
本発明の説明において、半導体ウェハの表面とは、半導体ウェハの凹凸を有する面、すなわち、集積回路が形成された面を意味する。また、この表面の反対側の面を裏面と称する。
本発明の説明において、凹凸差とは、凸部のうちの最高部からウェハ表面までの距離または凹部のうちの最深部から半導体ウェハ表面までの距離を意味する。例えば、半導体ウェハ上に金属電極(バンプ)が形成されている場合において、最高部とは最も高いバンプの頂上部であり、そこから半導体ウェハ表面までの距離、すなわち、バンプの高さが凹凸差である。あるいは、半導体ウェハにスクライブライン(ダイシングライン)が形成されている場合において、最深部とはスクライブラインのうち最も深い位置であり、そこから半導体ウェハ表面までの距離を凹凸差という。
本発明の説明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の半導体ウェハ表面保護用粘着テープは、半導体ウェハ加工時には半導体ウェハに強固に密着することでシーページの発生を低減し、また加工装置内での搬送エラーないし半導体ウェハ破損を抑制することができ、剥離した際には糊残りを生じにくい。さらに、本発明の半導体ウェハ表面保護用粘着テープは、半導体ウェハ表面に貼合した状態での反りを抑制できる。また、本発明の半導体ウェハの加工方法によれば、上記半導体ウェハ表面保護用粘着テープを用いて、高いバンプを狭いピッチで有する薄膜状の半導体ウェハを得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のウェハ表面保護用粘着テープの模式的な概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
[半導体ウェハ表面保護用粘着テープ]
本発明の半導体ウェハ表面保護用粘着テープは、20μm以上の凹凸差を有する半導体ウェハの表面に、40℃~90℃の条件で加熱貼合する半導体ウェハ表面保護用粘着テープであって、該半導体ウェハ表面保護用粘着テープは、基材フィルムと、粘着剤層とを有し、さらに、該基材フィルムと該粘着剤層との間に中間樹脂層を少なくとも有する。前記中間樹脂層の厚みは、前記凹凸差以上である。また、前記中間樹脂層を構成する樹脂の融点若しくはビカット軟化点が40℃~90℃であり、該中間樹脂層のメルトマスフローレートが、10g/10min~100g/10minである。
前記粘着剤層は、特に制限されないが、放射線硬化型粘着剤層が好ましく、「放射線硬化型粘着剤層」とは、放射線〔例えば、紫外線のような光線(レーザー光線を含む)、電子線などの電離性放射線〕の照射で硬化する粘着剤層をいう。照射する放射線は紫外線が好ましい。
【0023】
<基材フィルム>
本発明の半導体ウェハ表面保護用粘着テープに用いられる基材フィルムは、特に制限されない。本発明の半導体ウェハ表面保護用粘着テープにおいて、基材フィルムを構成する材料の融点は90℃~150℃の範囲が好ましく、100℃~140℃の範囲がより好ましく、110℃~130℃の範囲が更に好ましい。基材フィルムの融点が前記範囲であることにより、表面保護テープを貼合する工程で貼合ローラーやチャックテーブルへの融着を防いで、20μm以上の凹凸を有する半導体ウェハへの十分な貼合ができる。また、ダイシングダイボンディング一体型フィルム(DDF)を貼合する場合も、チャックテーブルへの融着を防いでDDFの貼合が可能となる。本発明の半導体ウェハ表面保護用粘着テープは、中間樹脂層に熱をかけることで中間樹脂層の流動性が向上し、20μm以上の凹凸差を有する半導体ウェハに対して十分な密着性を確保するため、十分高い温度である40℃~90℃の条件で加熱貼合される。従って、基材フィルムを構成する材料の融点が低すぎると基材フィルムの背面が溶けてしまい貼合ローラーやチャックテーブルと融着してしまうおそれがある。基材フィルムが、例えばスチレンのように非結晶性の樹脂で構成される場合は、融点が存在しないためビカット軟化点が指標となる。すなわち、ビカット軟化点が上記融点の範囲にあることが好ましい。ビカット軟化点が高すぎると基材背面(中間樹脂層と接する面の反対側の面)に流動性が出るため、チャックテーブルのポーラス部に入り込むおそれがある。
【0024】
本発明の半導体ウェハ表面保護用粘着テープに用いられる基材フィルムは、樹脂からなるものが好ましく、このような樹脂として、本発明の属する技術分野で通常用いられるプラスチック、ゴム等を用いることができる。例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体又はアイオノマー等のエチレン性不飽和基を含むモノマーの単独重合体もしくは共重合体からなる樹脂)、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートからなる樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エンジニアリングプラスチック(例えば、ポリメチルメタクリレート)、合成ゴム類(例えば、スチレン-エチレン-ブテンもしくはペンテン系共重合体)、熱可塑性エラストマー(例えば、ポリアミド-ポリオール共重合体)が挙げられる。本発明の表面保護テープに用いられる基材フィルムは、上記樹脂1種単独からなるフィルムでもよく、2種以上を組み合わせたフィルムでもよい。また、本発明の表面保護テープに用いられる基材フィルムは、単層でもよく、複層にしたものを使用してもよい。なお、複層の基材フィルムは、中間樹脂層と反対側の最外層を構成する材料の融点が上記範囲にあることが好ましい。
本発明の表面保護テープにおいて、基材フィルムは、ポリエステル樹脂またはポリオレフィン系樹脂からなるフィルムが好ましい。
【0025】
基材フィルムの厚みは、半導体ウェハの反りの矯正力と表面保護テープの剥離性のバランス、コストや製造適性などの面を考慮すると、25μm以上が好ましく、50μm以上が更に好ましい。上限は、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下が特に好ましい。基材フィルムの厚みが前記範囲にあることで、半導体ウェハを50μm以下に薄膜研削した場合においても搬送エラーを抑制しつつ研削可能であり、表面保護テープの剥離性を向上させることができる。なお、「半導体ウェハを50μm以下に薄膜研削した場合」とは、バンプを有する半導体ウェハにおいては、バンプを除く、半導体ウエハ自体の厚みを50μm以下になるまで裏面研削することを意味する。また、スクライブラインが形成された半導体ウェハにおいては、上述の最深部から、裏面までの距離を意味する。
【0026】
<中間樹脂層>
本発明の半導体ウェハ表面保護用粘着テープは、中間樹脂層を必須とする。表面保護テープを、半導体ウェハ表面に40~90℃の温度条件で加熱貼合することにより中間樹脂層が溶融し、20μm以上の凹凸差を有する半導体ウェハの表面の形状に対して粘着剤層及び中間樹脂層の形状が追従する。さらに貼合後は冷却されるため、粘着剤層が半導体ウェハの表面に密着した状態で表面保護テープが固定されることでダスト侵入等を抑制することができる。本発明の表面保護テープに用いられる中間樹脂層を構成する樹脂の融点若しくはビカット軟化点は、40℃~90℃の範囲であって、より好ましくは60℃~80℃の範囲である。表面保護テープを40℃~90℃の範囲で加熱貼合し、粘着剤層を半導体ウェハの表面に密着させる必要があるため、この温度範囲で中間樹脂層の引張り弾性率が大きく変化する必要がある。すなわち、半導体ウェハ研削時は通常の温度であり、この温度において樹脂が流動してしまうと研削の際の厚み精度が極端に悪化するため高弾性であることが好ましい。一方、加熱貼合する際に半導体ウェハの表面に十分に追従させるためには低弾性である必要があることから、中間樹脂層には相反する性能が求められる。この相反する性能を実現するため、引張り弾性率及び流動性に大きく影響する融点若しくはビカット軟化点が40~90℃である必要がある。融点及びビカット軟化点は、実施例に記載の方法で測定される。本発明において中間樹脂層は、融点若しくはビカット軟化点の両方が40~90℃であることも好ましい。
中間樹脂層を構成する樹脂の融点及びビカット軟化点が40℃未満である場合、成形することが困難であり、また厚み精度も悪化してしまう。すなわち、中間樹脂層の厚みが不均一になってしまう。一方、中間樹脂層を構成する樹脂の融点及びビカット軟化点が90℃を超える場合、40~90℃の条件で加熱貼合しても半導体ウェハの表面の形状に対して十分に追従しないため、ダスト侵入やウェハ割れが生じやすくなる。
【0027】
本発明の表面保護テープに用いられる中間樹脂層を構成する樹脂は、融点若しくはビカット軟化点が40~90℃であり、さらに、メルトマスフローレート(MFR)が10g/10min~100g/10minである。融点又はビカット軟化点が上記範囲内にある中間樹脂層は、前述の通り、表面保護テープを40~90℃の条件で半導体ウェハに貼合すると、半導体ウェハの表面の形状に対して中間樹脂層及び粘着剤層の形状が追従する。その結果、粘着剤層が半導体ウェハ表面に十分に密着する。しかし、中間樹脂層を構成する樹脂の融点又はビカット軟化点が上記範囲内にあるだけでは、半導体ウェハの凹凸差が250μm以上となると表面保護テープ自体が凹凸状に変形し、搬送エラーを誘発する。MFRを10g/10min~100g/10minの範囲とすることにより加熱貼合時の中間樹脂層に適度な流動性が生まれ、凹凸に追従し変形した表面保護テープを平らな状態へ戻すことができる。これにより、搬送エラー及び半導体ウェハの落下による破損を防ぐことができる。中間樹脂層のメルトマスフローレート(MFR)が10g/10min未満であると、流動性が不足し、表面保護テープ自体が変形したままの状態で加工されるため、搬送エラーや半導体ウェハの破損が発生してしまう。一方、中間樹脂層を構成する樹脂のメルトマスフローレート(MFR)が100g/10minを超えると、基材としての厚み精度(厚みの均一性)を維持したままの製膜が困難となってしまう。また、研削後の半導体ウェハの厚み精度も悪化する。本発明の表面保護テープは、中間樹脂層を構成する樹脂の融点又はビカット軟化点が上記範囲内にあり、さらに、MFRが10g/10min~100g/10minの範囲にあることにより、半導体ウェハの凹凸差が250μm以上の半導体ウェハの加工にも適用することができる。本発明の表面保護テープを適用することができる半導体ウェハの凹凸差の上限は、300μm以下であることが実際的である。
なお、MFRは、実施例に記載の方法で測定される。
【0028】
中間樹脂層は粘着することを目的とするものでないため、非粘着性が好ましい。非粘着性とは常温においてべたつきが無い状態をいう。
このような樹脂層もしくは樹脂フィルムを構成する樹脂として、例えば、ラジカル重合性酸コモノマー、アクリル酸エステルコモノマー、メタクリル酸エステルコモノマー及びカルボン酸ビニルエステルコモノマーから選択される少なくとも1種のコモノマーと、エチレンとの共重合体であるエチレン系共重合体からなる樹脂、アイオノマー等のエチレン性不飽和基を含むモノマーの単独重合体または共重合体からなる樹脂、ポリエチレン(例えば、低密度ポリエチレン)からなる樹脂が挙げられる。本発明の表面保護テープに用いられる中間樹脂層には、これらの樹脂を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、上記中間樹脂層は2層以上有してもよい。
【0029】
上記ラジカル重合性酸コモノマーとしては、具体的には、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸またはこれらの無水物、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、ペンテン酸等の不飽和モノカルボン酸等が挙げられ、中でも無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
上記アクリル酸エステルコモノマーとしては、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等が挙げられ、中でもアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルが好ましい。
【0030】
上記メタクリル酸エステルコモノマーとしては、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等が挙げられ、中でもメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが好ましい。
上記カルボン酸ビニルエステルコモノマーとしては、具体的には、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられ、中でも酢酸ビニルが好ましい。
【0031】
エチレン系共重合体の具体例としては、二元系共重合体として、例えば、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
三元系共重合体として、例えば、エチレン-アクリル酸-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸-酢酸ビニル共重合体、エチレン-無水マレイン酸-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-無水マレイン酸-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-無水マレイン酸-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-無水マレイン酸-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-無水マレイン酸-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
さらに、上記のコモノマーを組み合わせた多元系の共重合体も挙げられる。
上記共重合体の中でも、特に、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-無水マレイン酸-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-無水マレイン酸-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-無水マレイン酸-メタクリル酸メチル共重合体及びエチレン-無水マレイン酸-メタクリル酸エチル共重合体が好ましく、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体及びエチレン-アクリル酸ブチル共重合体が好ましい。
【0032】
エチレン系共重合体の合成に用いられるエチレンとコモノマ―との合計質量中、コモノマーの割合は10質量%~50質量%が好ましく、15質量%~40質量%が更に好ましい。
中間樹脂層は、上述のように単層でもよく、複層であっても良い。製造性の点から、複層の方が単層に比べてフィルム化が容易である。複層にした場合、基材フィルム側の層は低密度ポリエチレン若しくはエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる樹脂層ないし樹脂フィルムであることが好ましく、押し出しにより複層の中間樹脂層の製膜の際に不良率を低下させることができ且つ安価に製造することができる。中間樹脂層が複層である場合の融点ないしビカット軟化点は、粘着剤層と接している層またはフィルムを構成する樹脂の融点ないしビカット軟化点を示す。
樹脂層もしくは樹脂フィルムの積層方法は、樹脂層もしくは樹脂フィルムの厚みの精度や、該樹脂層もしくは樹脂フィルムに欠陥に影響を及ぼさない範囲であれば、特に制限されるものではない。例えば、共押出による製膜や接着剤による貼り合わせなどが挙げられる。
【0033】
基材フィルムの厚みと中間樹脂層の厚みとの比は、基材フィルムの厚み:中間樹脂層の厚み=0.5:9.5~3:7の範囲であることが、粘着剤層及び中間樹脂層の半導体ウェハの表面形状に対する追従性の点から好ましい。基材フィルムと中間樹脂層の積層方法は、一体となったフィルムの欠陥に影響を及ぼさなければ特に制限されるものではなく、共押出しによる製膜や接着剤による貼り合わせが可能である。
【0034】
本発明の表面保護テープに用いられる中間樹脂層の厚みは半導体ウェハの凹凸差以上が必要であるが、製造性や厚み精度の点から100μm~400μmであることが好ましい。半導体ウェハの凹凸差よりも薄いと、粘着剤層が半導体ウェハに十分に密着しないためダスト侵入やウェハ割れが発生する。本発明の表面保護テープに用いられる中間樹脂層の厚みは、半導体ウェハの凹凸差よりも10μm~30μm厚いことが好ましい。中間樹脂層が厚すぎると、半導体ウェハの厚み精度が悪化する恐れがあり、また製造コストも増加する。また、バンプ付き半導体ウェハのバンプ部分を製造する際、10μm程度の誤差が生じるため、平均バンプ高さに加えて10μmの厚みがあると余裕をもって追従することが可能となる。
【0035】
<粘着剤層>
本発明の表面保護テープが有する粘着剤層に用いられる粘着剤は、特に制限されないが、放射線硬化型粘着剤が好ましい。
放射線硬化型粘着剤は、放射線により硬化し三次元網状化する性質を有すればよく、大きく分けて、1)側鎖にエチレン性不飽和基(放射線重合性炭素-炭素二重結合でエチレン性二重結合とも称す)を有するベース樹脂(重合体)からなる粘着剤と、2)通常のゴム系あるいは(メタ)アクリル系のベース樹脂(ポリマー)に対して、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する低分子量化合物(以下、放射線重合性低分子量化合物という)および光重合開始剤を配合する粘着剤に分類される。
本発明の表面保護テープでは、上記の2)が好ましい。
【0036】
1)側鎖にエチレン性不飽和基を有するベース樹脂からなる粘着剤
側鎖にエチレン性不飽和基を有する粘着剤は、(メタ)アクリル系粘着剤が好ましく、ベース樹脂が(メタ)アクリル重合体もしくは(メタ)アクリル重合体を主成分として含むものがより好ましい。
ここで、「(メタ)アクリル重合体を主成分として含む」とは、ベース樹脂を構成する重合体ないし樹脂のうち、(メタ)アクリル系重合体の含有量が少なくとも50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上(100質量%以下)であることを意味する。
【0037】
(メタ)アクリル重合体は、少なくとも側鎖にエチレン性不飽和基を有することで放射線照射による硬化が可能となる。(メタ)アクリル重合体は、さらにエポキシ基やカルボキシ基などの官能基を有してもよい。
【0038】
側鎖にエチレン性不飽和基を有する(メタ)アクリル重合体は、どのようにして製造されたものでもよいが、例えば、側鎖に官能基(α)を有する(メタ)アクリル重合体と、(メタ)アクリルロイル基、(メタ)アクリルロイルオキシ基などのエチレン性不飽和基を有する基を有し、かつ、この(メタ)アクリル重合体の側鎖の官能基(α)と反応し得る官能基(β)をもつ化合物とを反応させて得たものが好ましい。
エチレン性不飽和基を有する基は、非芳香族性のエチレン性二重結合を有すればどのような基でも構わないが、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、アリル基、1-プロペニル基、ビニル基(スチレンもしくは置換スチレンを含む)が好ましく、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましい。
官能基(α)、(β)としては、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、スルファニル基、環状酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基(-N=C=O)等が挙げられる。
【0039】
ここで、官能基(α)と官能基(β)のうちの一方の官能基が、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、スルファニル基、または環状酸無水物基である場合には、他方の官能基は、エポキシ基、イソシアネート基が挙げられる。一方の官能基が環状酸無水物基の場合、他方の官能基はカルボキシ基、水酸基、アミノ基、スルファニル基が挙げられる。なお、一方の官能基が、エポキシ基である場合は、他方の官能基はエポキシ基であってもよい。
【0040】
官能基(α)としては、カルボキシ基、水酸基が好ましく、水酸基が特に好ましい。
側鎖に官能基(α)を有する(メタ)アクリル系重合体は、官能基(α)を有する(メタ)アクリル系モノマー、好ましくは(メタ)アクリル酸エステル〔特に、アルコール部に官能基(α)を有するもの〕をモノマー成分に使用することで得ることができる。
側鎖に官能基(α)を有する(メタ)アクリル系重合体は、共重合体である場合が好ましく、この共重合成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、なかでもアルコール部に官能基(α)やエチレン性不飽和基を有する基が置換していない(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0041】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びドデシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレートヘキシルアクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルは1種単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよく、アルコール部の炭素数が5以下のものと炭素数が6~12のものを併用することが好ましい。
【0042】
なお、アルコール部の炭素数の大きなモノマーを使用するほどガラス転移点(Tg)は低くなるので、所望のガラス転移点のものを得ることができる。また、ガラス転移点の他、相溶性と各種性能を上げる目的で酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどの炭素-炭素二重結合をもつ低分子化合物を配合することも好ましく、この場合、これらのモノマー成分の含有量は5質量%以下の範囲内が好ましい。
【0043】
官能基(α)を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、けい皮酸、イタコン酸、フマル酸、フタル酸、2-ヒドロキシアルキルアクリレート類、2-ヒドロキシアルキルメタクリレート類、グリコールモノアクリレート類、グリコールモノメタクリレート類、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、アリルアルコール、N-アルキルアミノエチルアクリレート類、N-アルキルアミノエチルメタクリレート類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸、無水フタル酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部を水酸基またはカルボキシ基およびエチレン性不飽和基を有する単量体でウレタン化したものなどが挙げられる。
【0044】
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、2-ヒドロキシアルキルアクリレート類、2-ヒドロキシアルキルメタクリレート類、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、2-ヒドロキシアルキルアクリレート類、2-ヒドロキシアルキルメタクリレート類がより好ましく、メタクリル酸、2-ヒドロキシアルキルアクリレート類、2-ヒドロキシアルキルメタクリレート類がさらに好ましい。
【0045】
エチレン性不飽和基と官能基(β)を有する化合物における官能基(β)としては、イソシアネート基が好ましく、例えば、アルコール部にイソシアネート(-N=C=O)基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、なかでもイソシアネート(-N=C=O)基で置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。このようなモノマーとしては、例えば、2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート等が挙げられる。
また、官能基(β)がイソシアネート基以外の場合の好ましい化合物は、官能基(α)を有する(メタ)アクリル系モノマーで例示した化合物が挙げられる。
【0046】
エチレン性不飽和基と官能基(β)を有する化合物は、側鎖に官能基(α)を有する(メタ)アクリル系重合体に加えて重合体の側鎖の官能基(α)、好ましくは水酸基と反応することで共重合体に重合性基を組み込むことができ、放射線照射後の粘着力を低下させることができる。
【0047】
(メタ)アクリル系共重合体の合成において、反応を溶液重合で行う場合の有機溶剤としては、ケトン系、エステル系、アルコール系、芳香族系のものを使用することができるが、中でもトルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、ベンゼンメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトンなどの、一般に(メタ)アクリル系ポリマーの良溶媒で、沸点60~120℃の溶剤が好ましい。重合開始剤としては、α,α’-アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾビス系、ベンゾイルペルオキシドなどの有機過酸化物系などのラジカル発生剤を通常用いる。この際、必要に応じて触媒、重合禁止剤を併用することができ、重合温度および重合時間を調節することにより、所望の分子量の(メタ)アクリル系共重合体を得ることができる。また、分子量を調節することに関しては、メルカプタン、四塩化炭素等の溶剤を用いることが好ましい。なお、この反応は溶液重合に限定されるものではなく、塊状重合、懸濁重合など別の方法でもさしつかえない。
【0048】
側鎖にエチレン性不飽和基を有するベース樹脂〔好ましくは(メタ)アクリル系共重合体〕の質量平均分子量は、20万~100万程度が好ましい。
質量平均分子量が大きすぎると、放射線照射した場合に、放射線照射後の粘着剤の可撓性がなく、脆くなっているため、剥離時に半導体チップ面に糊残りを生じる。質量平均分子量が小さすぎると、放射線照射前の凝集力が小さく、粘着力が弱いため、ダイシング時に十分に半導体チップを保持することができず、チップ飛びが生じるおそれがある。また、放射線照射後も硬化が不十分で、剥離時に半導体チップ面に糊残りを生じる。これらを極力防止するためには、質量平均分子量が20万以上であることが好ましい。
なお、本発明の説明において、質量平均分子量は、常法によるポリスチレン換算の質量平均分子量である。
【0049】
側鎖にエチレン性不飽和基を有するベース樹脂のガラス転移点は、-70~-10℃が好ましく、-50~-10℃がより好ましい。ガラス転移点が低すぎると、粘着剤の流動性が高く糊残りの原因となってしまい、高すぎると流動性が不十分で半導体ウェハの裏面になじみにくく、半導体ウェハの研削加工時に研削水がウェハ表面に浸入する原因となってしまう。
【0050】
側鎖にエチレン性不飽和基を有するベース樹脂の酸価〔ベース樹脂1g中に存在する遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数〕は、0.5~30が好ましく、1~20がより好ましい。
側鎖にエチレン性不飽和基を有するベース樹脂の水酸基価〔ベース樹脂1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数〕は、5~100が好ましく、10~80がより好ましい。
このようにすることで、さらに半導体ウェハ表面保護用粘着テープ剥離時の糊残り防止効果に優れる。
【0051】
なお、酸価や水酸基価の調製は、側鎖に官能基(α)を有する(メタ)アクリル系重合体と、エチレン性不飽和基を有し、かつ、この(メタ)アクリル系重合体の側鎖の官能基(α)と反応し得る官能基(β)をもつ化合物とを反応させる段階で、未反応の官能基を残すことにより所望のものに調製することができる。
【0052】
側鎖にエチレン性不飽和基を有するベース樹脂を放射線照射によって硬化させる場合には、必要に応じて、光重合開始剤、例えばイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、フェニルジメトキシアセチルベンゼン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を使用することができる。
これら光重合開始剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して0.01~10質量部が好ましく、0.01~5質量部がより好ましい。配合量が少なすぎると反応が不十分であり、配合量が多すぎると低分子成分が増加することで汚染性に影響を与えることになる。
【0053】
側鎖にエチレン性不飽和基を有するベース樹脂からなる粘着剤は、架橋剤を含有することが好ましい。
このような架橋剤は、どのようなものでも構わないが、ポリイソシアネート類、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂およびエポキシ樹脂の群から選択される架橋剤が好ましい。
このなかでも、本発明の表面保護テープでは、ポリイソシアネート類が好ましい。
【0054】
ポリイソシアネート類としては、特に制限がなく、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-〔2,2-ビス(4-フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が挙げられる。具体的には、コロネートL(日本ポリウレタン株式会社製、商品名)等を用いることができる。
【0055】
メラミン・ホルムアルデヒド樹脂としては、具体的には、ニカラックMX-45(三和ケミカル社製、商品名)、メラン(日立化成工業社製、商品名)等を用いることができる。
【0056】
エポキシ樹脂としては、TETRAD-X(三菱化学社製、商品名)等を用いることができる。
【0057】
架橋剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましい。
粘着剤塗布後に、架橋剤により、ベース樹脂が架橋構造を形成し、粘着剤の凝集力を向上させることができる。
【0058】
架橋剤の配合量が少なすぎると凝集力向上効果が十分でないため、粘着剤の流動性が高く糊残りの原因となってしまう。架橋剤の配合量が多すぎると粘着剤弾性率が高くなりすぎてしまい、半導体ウェハ表面を保護できなくなってしまう。
【0059】
2)放射線重合性低分子量化合物を含む粘着剤
放射線重合性低分子量化合物を含む粘着剤の主成分としては、特に限定されるものではなく、粘着剤に使用される通常の塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂〔(メタ)アクリル樹脂〕、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を使用することができる。
【0060】
本発明の表面保護テープでは、粘着剤のベース樹脂としては、アクリル樹脂〔(メタ)アクリル樹脂〕が好ましく、前述の側鎖にエチレン性不飽和基を有するベース樹脂を合成する際の原料である側鎖に官能基(α)を有する(メタ)アクリル系重合体が特に好ましい。
この場合の粘着剤としては、ベース樹脂としてのアクリル樹脂および放射線重合性低分子量化合物に加え、光重合開始剤、硬化剤ないし架橋剤等を適宜配合して粘着剤を調製するのが好ましい。
【0061】
粘着剤のベース樹脂の質量平均分子量は、20万~200万程度が好ましい。
粘着剤は、ベース樹脂に加え、質量平均分子量が、1,000~20,000のオリゴマーを少なくとも1種含むことが好ましい。オリゴマーの質量平均分子量は、1,100~20,000がより好ましく、1,300~20,000がさらに好ましく、1,500~10,000が特に好ましい。
【0062】
放射線重合性低分子量化合物としては、放射線照射によって三次元網状化しうる、分子内にエチレン性不飽和基(放射線重合性炭素-炭素二重結合)を少なくとも2個以上有し、官能基(β)のうちの少なくとも1種(好ましくはヒドロキシ基)を有する低分子量化合物が用いられる。
特に、本発明の表面保護テープでは、上記のオリゴマーが、エチレン性不飽和基を有する放射線重合性低分子量化合物である場合が好ましい。
【0063】
放射線重合性低分子量化合物としては、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、オリゴエステル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系化合物が適用可能である。
【0064】
また、上記のような(メタ)アクリレート系化合物のほかに、放射線重合性低分子量化合物として、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを用いることもできる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物(例えば、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、1,3-キシリレンジイソシアナート、1,4-キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアナートなど)を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなど)を反応させて得られる。
放射線重合性低分子量化合物は1種でも2種以上併用してもよい。
【0065】
放射線硬化型粘着剤には、必要に応じて光重合開始剤を含むことができる。光重合開始剤には基材を透過する放射線により反応するものであれば、特に制限はなく、通常のものを用いることができる。例えば、ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、フェニルジメトキシアセチルベンゼン等のアセトフェノン類、2-エチルアントラキノン、t-ブチルアントラキノン等のアントラキノン類、2-クロロチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジル、2,4,5-トリアリ-ルイミダゾール二量体(ロフィン二量体)、アクリジン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド類、等を挙げることができ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
光重合開始剤の添加量は、ベース樹脂100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、0.3~7.5質量部がより好ましく、0.5~5質量部がさらに好ましい。光重合開始剤の添加量が多すぎると放射線硬化が多地点で、かつ、急激に発生するため、放射線硬化収縮が大きくなってしまうため、従来の放射線硬化型の表面保護用粘着テープに比べ光重合開始剤の量を少なくすることも放射線硬化収縮の抑制の点から有用である。
【0067】
粘着剤には硬化剤ないし架橋剤を含有することが好ましい。
硬化剤もしくは架橋剤としては、多価イソシアネート化合物、多価エポキシ化合物、多価アジリジン化合物、キレート化合物等を挙げることができる。
【0068】
多価イソシアネート化合物としては、特に制限がなく、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-〔2,2-ビス(4-フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が挙げられる。具体的には、コロネートL〔日本ポリウレタン工業(株)製、商品名〕等を用いることができる。
【0069】
多価エポキシ化合物としては、エポキシ樹脂が挙げられ、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステルアクリレート、N原子に2つのグリジジル基が置換したアニリン類等を挙げることができる。また、上述のTETRAD-Xも用いることができる。
なお、アニリン類としては、N,N’-テトラグリシジル-m-フェニレンジアミンが挙げられる。
【0070】
多価アジリジン化合物は、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1,3,5-トリアジン、トリス〔1-(2-メチル)-アジリジニル〕ホスフィンオキシド、ヘキサ〔1-(2-メチル)-アジリジニル〕トリホスファトリアジン等を挙げることができる。またキレート化合物としては、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等を挙げることができる。
【0071】
硬化剤もしくは架橋剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、0.1~5.0質量部がより好ましく、0.5~4.0質量部がさらに好ましい。
【0072】
(粘着剤層の厚み)
粘着剤層の厚みは、製造性の点から5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、20μm以上が更に好ましい。上限は、75μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、40μm以下が特に好ましい。粘着剤層は複層であってもよく、その場合は、少なくとも、半導体ウェハ表面と接する最外層の粘着剤が、放射線硬化型粘着剤であることが好ましい。
【0073】
(粘着剤層もしくは粘着剤の特性)
〔放射線硬化型粘着剤層中に有するエチレン性不飽和基の含有量〕
本発明の表面保護テープにおいて、粘着剤層を構成する放射線硬化型粘着剤が有するエチレン性不飽和基(放射線重合性炭素-炭素二重結合)の含有量は、0.2~2.0mmol/gが好ましい。
放射線硬化型粘着剤が有するエチレン性不飽和基の含有量は、放射線硬化型粘着剤が含有するエチレン性不飽和基を有する化合物が有する全てのエチレン性不飽和基の総和であり、放射線硬化型粘着剤の単位g当たりのエチレン性不飽和基の総和のモル数である。なお、エチレン性不飽和基を有する化合物とは、例えば、側鎖にエチレン性不飽和基を有するベース樹脂のような重合体、放射線重合性低分子量化合物である。
【0074】
放射線硬化型粘着剤が有するエチレン性不飽和基の含有量は、0.2~1.8mmol/gが好ましく、0.2~1.5mmol/gがより好ましく、0.5~1.5mmol/gがより好ましい。
粘着剤層が複層の場合には、全ての粘着剤層を1層と見做したときに、粘着剤層を構成する放射線硬化型粘着剤が有するエチレン性不飽和基の含有量が上記範囲を満たすことが好ましく、それぞれの層が上記範囲を満たすことがより好ましい。
【0075】
放射線硬化型粘着剤が有するエチレン性不飽和基の含有量は、上記官能基(β)をもつ化合物及び放射線重合性低分子量化合物が有するエチレン性不飽和基の数やこれらの化合物の配合量で調節できる。
【0076】
放射線硬化型粘着剤が有するエチレン性不飽和基の含有量は、上記のように使用する化合物の量ないしこれらの化合物が有するエチレン性不飽和基の数から求めることができる。また、放射線硬化型粘着剤のヨウ素価〔ベース樹脂及び放射線重合性低分子量化合物の合計100gに付加するヨウ素(I)のg数〕を求め、Iの分子量が253.8であることから、この値をmmol/gに単位変換することで求められる。
【0077】
〔SUS板に対する紫外線硬化後の粘着力〕
本発明の表面保護テープにおける粘着剤層の紫外線照射後の粘着力は、23℃のSUS研磨面に対して0.5N/25mm以上が好ましく、0.7N/25mm以上がより好ましい。上限は、5.0N/25mm以下が好ましく、3.0N/25mm以下がより好ましく、1.5N/25mm以下がさらに好ましい。また、上記粘着剤層の紫外線照射後の粘着力は、50℃のSUS研磨面に対して0.3N/25mm以上が好ましく、0.5N/25mm以上がより好ましい。上限は、7.0N/25mm以下が好ましく、4.0N/25mm以下がより好ましく、2.5N/25mm以下がさらに好ましい。この粘着力は、表面保護テープ自体の特性である。
なお、紫外線照射後とは、紫外線を積算照射量500mJ/cmとなるように粘着剤層全体を照射して硬化させた後を意味する。
【0078】
具体的には、以下のようにして求めることができる。
放射線照射前の表面保護テープから幅25mm×長さ150mmの試験片をそれぞれ3点採取する。その試験片をJIS R 6253に規定する280番の耐水研磨紙で仕上げたJIS G 4305に規定する厚さ1.5mm~2.0mmのSUS鋼板上に2kgのゴムローラを3往復かけ圧着する。常温(25℃)で1時間放置後、積算照射量500mJ/cmの紫外線を照射して粘着剤層を硬化させる。粘着剤層を硬化後、測定値がその容量の15~85%の範囲に入るJIS B 7721に適合する引張試験機を用いて、3点の粘着力の平均値を求める。粘着力の測定は、引張速度50mm/minで90°引きはがし法により常温、湿度50%で行う。この試験において、試験片をSUS鋼板に圧着する前に、ホットプレート等を用いて、SUS鋼板を所定の温度(23℃、50℃)に調整しておく。なお、上記引張試験機として、例えば、インストロン社製の引張試験機:ツインコラム卓上モデル5567(商品名)を用いることができる。
【0079】
SUS研磨面に対する紫外線硬化後の粘着力は、粘着剤に用いられる化合物の種類や量、架橋剤等の添加剤の種類や量、粘着剤層の厚み等を適宜調節することで本発明の好ましい範囲にできる。
SUS研磨面に対する上記粘着力を小さくしすぎると、架橋反応による硬化収縮が大きくなるため、バンプウェハなど表面凹凸が大きい被着体からの剥離力は逆に大きくなってしまう。SUS研磨面に対する見かけの粘着力が大きすぎると放射線硬化が不十分で剥離不良や糊残りが発生してしまう。
【0080】
<剥離ライナー>
半導体ウェハ表面保護用粘着テープは、粘着剤層上に剥離ライナーを有してもよい。剥離ライナーとしては、シリコーン離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられる。また必要に応じて、シリコーン離型処理をしないポリプロピレンフィルムなども用いられる。
【0081】
<<半導体ウェハの加工方法>>
本発明の半導体ウェハの加工方法は、本発明の半導体ウェハ表面保護用粘着テープを使用する半導体ウェハの加工方法である。
本発明の半導体ウェハ表面保護用粘着テープは、半導体ウェハの加工工程ならどの工程で使用してもよい。例えば、半導体ウェハ裏面研削工程、ダイシング工程、ダイシングダイボンディング工程などが好ましく挙げられる。
【0082】
本発明の半導体ウェハ表面保護用粘着テープは、20μm以上の凹凸差を有する半導体ウェハの表面に貼合して使用される。
凹凸差〔バンプ(電極)の高さないしスクライブラインの深さ〕が、20~400μmの半導体ウェハに適用するのがより好ましく、50~250μmの半導体ウェハに適用するのがさらに好ましい。
【0083】
半導体ウェハ表面のバンプの配設密度(高密度)は、特に限定されるものではないが、バンプの高さの0.5~3倍以下、好ましくは1~2倍以下のピッチ(バンプの高さ方向の頂点から、次に配置されたバンプの高さ方向の頂点までの距離)のものに対して適用できる。また、全面に均一にバンプが配置された半導体ウェハにも用いられる。
【0084】
半導体ウェハの厚みは、半導体ウェハ表面保護用粘着テープを用いる加工方法により裏面研削された半導体ウェハの厚みにおいて、20~500μmが好ましく、50~200μmがより好ましく、80~200μmがさらに好ましい。
本発明の半導体ウェハ表面保護用粘着テープを用いることで、薄膜半導体ウェハを高い歩留まりで得ることができる。この半導体ウェハの加工方法は、50μm以下に薄膜研削された電極付半導体ウェハの製造方法として好適である。
【0085】
本発明の半導体ウェハの加工方法は、本発明の半導体ウェハ表面保護用粘着テープを半導体ウェハ表面に貼合した後、放射線、特に、紫外線照射して、半導体ウェハ表面保護用粘着テープを剥離する工程を含むことが好ましい。
【0086】
具体的には、まず、半導体ウェハの回路パターン面(表面)に、本発明の半導体ウェハ表面保護用粘着テープを粘着剤層が貼合面となるように貼合する。次に、半導体ウェハの回路パターンのない面側を半導体ウェハの厚みが所定の厚み、例えば10~200μmになるまで研削する。その後、この半導体ウェハ表面保護用粘着テープの貼合された面を下側にして加熱吸着台に載せ、その状態で、半導体ウェハの回路パターンのない研削した面側に、ダイシング・ダイボンディングフィルムを貼合してもよい。
ダイシング工程を行い、その後、半導体ウェハ表面保護用粘着テープの基材フィルムの背面に、ヒートシールタイプ(熱融着タイプ)もしくは粘着タイプの剥離テープを接着して半導体ウェハから半導体ウェハ表面保護用粘着テープを剥離する。
【実施例
【0087】
以下に、本発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0088】
(粘着剤組成物の調製)
以下のようにして、粘着剤組成物1A~1Cを調製した。
【0089】
1)粘着剤組成物1Aの調製
2-エチルヘキシルアクリレート78質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート17質量部、メタクリル酸5質量部から、質量平均分子量55万からなる共重合体を得た。この共重合体100質量部に対して、アクリレート5官能で、官能基(β)としてヒドロキシ基を有する質量平均分子量3,000のウレタンアクリレートオリゴマー100質量部およびポリイソシアネートのコロネートL〔商品名、日本ポリウレタン工業社製〕5.0質量部、光重合開始剤としてSPEEDCURE BKL〔商品名、DKSHジャパン社製〕5.0質量部を加えて、混合して、粘着剤組成物1Aを得た。
【0090】
2)粘着剤組成物1Bの調製
2-エチルヘキシルアクリレート70質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート7質量部、メタクリル酸23質量部を、酢酸エチル中で重合させ、得られた質量平均分子量100万のメタアクリル系ポリマーを得た。このメタアクリル系ポリマー100質量部に対して、エポキシ系硬化剤2.0質量部を混合して、粘着剤組成物Bを得た。
【0091】
3)粘着剤組成物1Cの調製
2-エチルヘキシルアクリレート78質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート13質量部、メタクリル酸9質量部から質量平均分子量60万からなる共重合体を得た。この共重合体100質量部に対して、アクリレート3官能で、官能基(β)としてヒドロキシ基を有する質量平均分子量1,500のウレタンアクリレートオリゴマー100質量部およびポリイソシアネートのコロネートL 3.0質量部、エポキシ樹脂のTETRAD-X〔三菱ガス化学社製〕0.5質量部、光重合開始剤としてSPEEDCURE BKL5.0質量部を加えて混合して、粘着剤組成物1Cを得た。
【0092】
(基材フィルムおよび中間樹脂層の製膜)
以下のようにして、中間樹脂層および基材フィルム2A~2Gを製膜した。
【0093】
1)フィルム2Aの作製
中間樹脂層を構成する樹脂としてエチレン-アクリル酸エチルコポリマー(EEA)樹脂(日本ポリエチレン社製、商品名:レクスパールEEA A6200)を用い、基材フィルムを構成する樹脂として低密度ポリエチエレン(LDPE)樹脂(東ソー社製、商品名:ペトロセン212)を用いた。押し出し機により、これらの樹脂を押し出し成形することで、中間樹脂層を有する基材フィルム(フィルム2A)を作製した。LDPE層の厚みは12.5μm、EEAの厚みは237.5μmであった。
【0094】
2)フィルム2Bの作製
中間樹脂層を構成する樹脂としてエチレン-アクリル酸メチルコポリマー(EMA)樹脂(日本ポリエチレン社製、商品名:レクスパールEB330H)を用い、基材フィルムを構成する樹脂として低密度ポリエチエレン(LDPE)樹脂(東ソー社製、商品名:ペトロセン212)を用いた。押し出し機により、これらの樹脂を押し出し成形することで、中間樹脂層を有する基材フィルム(フィルム2B)を作製した。LDPE層の厚みは140.0μm、EEAの厚みは210.0μmであった。
【0095】
3)フィルム2Cの作製
中間樹脂層を構成する樹脂としてエチレン系特殊コポリマー樹脂(日本ポリエチレン社製、商品名:レクスパールET720X)を用い、基材フィルムを構成する樹脂として低密度ポリエチエレン(LDPE)樹脂(東ソー社製、商品名:ペトロセン212)を用いた。押し出し機により、これらの樹脂を押し出し成形することで、中間樹脂層を有する基材フィルム(フィルム2C)を作製した。LDPE層の厚みは50.0μm、エチレン系特殊コポリマー樹脂層の厚みは200.0μmであった。
【0096】
4)フィルム2Dの作製
中間樹脂層を構成する樹脂としてメタロセンプラストマー樹脂(日本ポリエチレン社製、商品名:カーネルKJ640T)を用い、基材フィルムを構成する樹脂として低密度ポリエチエレン(LDPE)樹脂(日本ポリエチレン社製、商品名:ノバテックLL UJ580)を用いた。押し出し機により、これらの樹脂を押し出し成形することで、中間樹脂層を有する基材フィルム(フィルム2D)を作製した。LDPE層の厚みは90μ.0m、エチレン系特殊コポリマー樹脂層の厚みは210.0μmであった。
【0097】
5)フィルム2Eの作製
中間樹脂層を構成する樹脂としてエチレン系特殊ポリマー樹脂(日本ポリエチレン社製、商品名:レクスパールET220X)を用い、基材フィルムを構成する樹脂として低密度ポリエチエレン(LDPE)樹脂(東ソー社製、商品名:ペトロセン212)を用いた。押し出し機により、これらの樹脂を押し出し成形することで、中間樹脂層を有する基材フィルム(フィルム2E)を作製した。LDPE層の厚みは150.0μm、エチレン系特殊コポリマー樹脂層の厚みは150.0μmであった。
【0098】
6)フィルム2Fの作製
中間樹脂層を構成する樹脂としてエチレン-ブチルアクリレートコポリマー樹脂(アルケマ社製、商品名:ロトリル28BA175)と、基材フィルムを構成する樹脂として低密度ポリエチエレン(LDPE)樹脂(日本ポリエチレン社製、商品名:ノバテックLL UJ580)を用いた。押し出し機により、これらの樹脂を押し出し成形することで、中間樹脂層を有する基材フィルム(フィルム2F)を作製した。LDPE層の厚みは90.0μm、エチレン-ブチルアクリレートコポリマー樹脂層の厚みは210.0μmであった。
【0099】
7)フィルム2Gの製膜
中間樹脂層を構成する樹脂としてエチレン-アクリル酸メチルコポリマー樹脂(日本ポリエチレン社製、商品名:EB240H)と、基材フィルムを構成する樹脂として低密度ポリエチエレン(LDPE)樹脂(東ソー社製、商品名:ペトロセン212)を用いた。押し出し機により、これらの樹脂を押し出し成形することで、中間樹脂層を有する基材フィルム(フィルム2G)を作製した。LDPE層の厚みは90.0μm、エチレン-アクリル酸メチルコポリマー樹脂層の厚みは210.0μmであった。
【0100】
8)フィルム2Hの製膜
中間樹脂層を構成する樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂(東ソー社製、商品名:ペトロセン180)と、基材フィルムを構成する樹脂として低密度ポリエチエレン(LDPE)樹脂(東ソー社製、商品名:ペトロセン212)を用いた。押し出し機により、これらの樹脂を押し出し成形することで、中間樹脂層を有する基材フィルム(フィルム2H)を作製した。中間樹脂層として用いたLDPE層の厚みは90.0μm、基材フィルムとして用いたLDPE層の厚みは210.0μmであった。
【0101】
(実施例1)
乾燥後の厚みが30μmになるように、粘着剤組成物1Aを透明な剥離ライナー上に塗工し、乾燥させた。剥離ライナー上の粘着剤層と、フィルム2Aの中間樹脂層とが接するように張り合わせ、剥離ライナーを除いて、図1に示す構成の半導体ウェハ表面保護用粘着テープを得た。
【0102】
参考例2)
実施例1において、粘着剤組成物1Aを粘着剤組成物1Bに、フィルム2Aをフィルム2Bに変えた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の半導体ウェハ表面保護用粘着テープを得た。
【0103】
参考例3)
実施例1において、粘着剤組成物1Aを粘着剤組成物1Cに、フィルム2Aをフィルム2Cに変えた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の半導体ウェハ表面保護用粘着テープを得た。
【0104】
(実施例4)
実施例1において、粘着剤組成物1Aを粘着剤組成物1Bに、フィルム2Aをフィルム2Dに変えた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の半導体ウェハ表面保護用粘着テープを得た。
【0105】
(比較例1)
実施例1において、粘着剤組成物1Aを粘着剤組成物1Cに、フィルム2Aをフィルム2Eに変えた以外は、実施例1と同様にして、半導体ウェハ表面保護用粘着テープを得た。
【0106】
(比較例2)
実施例1において、粘着剤組成物1Aを粘着剤組成物1Bに、フィルム2Aをフィルム2Fに変えた以外は、実施例1と同様にして、半導体ウェハ表面保護用粘着テープを得た。
【0107】
(比較例3)
実施例1において、フィルム2Aをフィルム2Gに変えた以外は、実施例1と同様にして、半導体ウェハ表面保護用粘着テープを得た。
【0108】
(比較例4)
実施例1において、フィルム2Aをフィルム2Hに変えた以外は、実施例1と同様にして、半導体ウェハ表面保護用粘着テープを得た。
【0109】
上記の実施例、参考例及び比較例で作製した半導体ウェハ表面保護用粘着テープについて、以下の試験を行い、その性能を評価した。評価結果を下記表1に記載した。なお、参考例2、3、実施例4及び比較例1~3で作製した表面保護テープについても、実施例1と同様にして試験を行った。
【0110】
<試験例1>密着性試験
(1)高さ50μmのバンプに対する密着性
高さ50μm、バンプピッチ100μmのCuピラーバンプを有する直径8インチのバンプ付シリコンウェハ(シリコンウェハ自体の厚み725μm)の表面に、日東精機社製DR8500III(商品名)を用いて、テーブル温度80℃及びローラー温度60℃、貼合圧0.35MPa、貼合速度低速(9mm/sec)の条件で、上記実施例1で作製した表面保護テープを上記ウェハに貼合した。このようにして、表面保護テープ付ウェハ(バンプ高さ:50μm)を25枚作製した。この貼合条件で、融点80℃以下の樹脂からなる中間樹脂層を構成層とする表面保護テープの中間樹脂層は溶融した(以下の試験例2の場合も同様であった)。その時の密着性を目視にて確認を行い、表面保護テープと上記ウェハとの間へのエアー混入の有無を調べた。
(2)高さ200μmのバンプに対する密着性
高さ200μm、バンプピッチ400μmのソルダーバンプを有する直径8インチのバンプ付シリコンウェハ(バンプを除いた部分の厚み725μm)の表面に、日東精機社製DR8500III(商品名)を用いて、テーブル温度80℃及びローラー温度60℃、貼合圧0.35MPa、貼合速度低速(9mm/sec)の条件で、上記実施例1で作製した表面保護テープを上記ウェハに貼合した。このようにして、表面保護テープ付ウェハ(バンプ高さ:200μm)を5枚作製した。その時の密着性を目視にて確認を行い、表面保護テープと上記ウェハとの間へのエアー混入の有無を調べた。評価基準を以下に示す。A及びBが合格である。
【0111】
(評価基準)
A:貼合後、室温(25℃)で静置し、72時間を超えても、全ての表面保護テープ付ウェハにエアー混入が観察されなかった。
B:貼合後、室温で静置し、48時間を超え72時間以内に、全ての表面保護テープ付ウェハにエアー混入が観察されなかった。
C:貼合後、室温で静置し、少なくとも1枚の表面保護テープ付ウェハに、貼合後48時間以内にエアーが観察された。
【0112】
<試験例2>研削試験
(1)ダスト侵入
上記と同様にして、表面保護テープを上記ウェハに貼合し、実施例1の表面保護テープ付ウェハ(バンプ高さ:50μm)5枚と、実施例1の表面保護テープ付ウェハ(バンプ高さ:200μm)5枚を作製した。表面保護テープを上記ウェハに貼合後48時間静置した後、裏面研削を行った。この裏面研削には、インライン機構を持つグラインダー〔株式会社ディスコ製DFG8760(商品名)〕を使用した。その後、研削後の表面保護テープ付ウェハについて、ウェハと表面保護テープ間にシリコンダストの侵入の有無の確認を目視で行った。尚、実施例1の表面保護テープ付ウェハ(バンプ高さ:50μm)についてはウェハの最終研削厚みが50μmになるまで裏面研削を行った。一方、実施例1の表面保護テープ付ウェハ(バンプ高さ:200μm)についてはシリコンの最終研削厚みが200μmになるまで裏面研削を行い、以下の評価基準に従って評価した。
【0113】
(評価基準)
合格:表面保護テープ付ウェハ(バンプ高さ:50μm)及び表面保護テープ付ウェハ(バンプ高さ:200μm)のいずれについてもダスト侵入が見られなかった。
不合格:表面保護テープ付ウェハ(バンプ高さ:50μm)及び表面保護テープ付ウェハ(バンプ高さ:200μm)のいずれか少なくとも1枚にダスト侵入が見られた。
【0114】
(2)搬送エラー
評価基準を以下に示す。A及びBが合格である。
A:研削試験において、全てのウェハで研削装置内での搬送エラーが発生しなかった。
B:研削試験において、研削装置内での搬送エラーが1枚発生した。
C:研削試験において、研削装置内での搬送エラーが2枚以上発生した。
「搬送エラー」とは、基材フィルムが変形し、真空吸着して表面保護テープ付ウェハを搬送できなかったことを意味する。
【0115】
(3)ウェハ破損の評価
研削した各表面保護テープ付ウェハ全体を目視で確認し、光学顕微鏡にてウェハ端部の観察を行いウェハ破損の有無を調べた。評価基準を以下に示す。「無し(A)」が合格である。
【0116】
(評価基準)
無し(A):目視および顕微鏡観察で破損がなかった。
B:目視では破損はなかったが、顕微鏡によって破損が確認された。
C:目視で破損が確認された。
【0117】
(4)反り評価
ダスト侵入の評価で用いた、実施例1の表面保護テープ付ウェハ(バンプ高さ:50μm)5枚について、反り高さ(表面保護テープ付ウェハを平板の上に置き、平板表面から反ったウェハの最も高い点の下面までの高さ)を測定した。評価基準を以下に示す。Aが合格である。
(評価基準)
A:反り高さの平均値が5mm未満
B:反り高さの平均値が5mm以上、10mm未満
C:反り高さの平均値が10mm以上
【0118】
(5)剥離性評価
表面に高さ75μmのバンプ(バンプピッチ150μm)を有する8インチ径の半導体ウェハ表面に、上記で製造した各半導体ウェハ表面保護用粘着テープを、貼合温度90℃で貼合した。その後、株式会社ディスコ製DFG8760(商品名)を用いて、上記の半導体ウェハ表面保護用粘着テープで貼合されたバンプ付半導体ウェハの裏面を2枚ずつ、200μmの厚さまで研削加工した。研削後の半導体ウェハ表面保護用粘着テープ付き半導体ウェハに500mJ/cmの紫外線を照射し、インストロン社製の引張試験機(ツインコラム卓上モデル5567(商品名))を用いて半導体ウェハ表面保護用粘着テープを剥離し、剥離時の幅が最大(200mm)となったときの剥離力において、以下の基準で評価した。A及びBが合格である。
なお、表1では「剥離性」として示した。
【0119】
(評価基準)
A:20N/200mm以下
B:20N/200mm越50N/200mm以下
C:50N/200mm越
【0120】
(6)糊残り評価
剥離性評価で用いた、実施例1の表面保護テープ付ウェハ(バンプ高さ:50μm)5枚について、光学顕微鏡(オリンパス)を用いて糊残り観察を行った。評価基準を以下に示す。
(評価基準)
合格:全ての表面保護テープ付ウェハに糊残りが発生しなかった。
不合格:少なくとも1枚の表面保護テープ付ウェハに糊残りが発生した。
【0121】
<試験例3>耐熱性試験
ミラーウェハに実施例1の表面保護テープの貼合を行った。貼合条件は試験例2でシリコンウェハに表面保護テープを貼合した条件と同一である。その後、90℃に加熱したホットプレート上にテープ面を下向きにして、表面保護テープの基材フィルムがホットプレートと接するようにして、3分間静置した後、テープ表面を目視にて観察を行った。
(評価基準)
合格:基材フィルムが溶けなかった。
不合格:基材フィルムが溶けた。
【0122】
<物性の測定>
(融点、ビカット軟化点、MFR)
中間樹脂層を構成する樹脂の融点及びビカット軟化点については、JIS K 7206に基づいて測定を行った。中間樹脂層を構成する樹脂のメルトマスフローレート(MFR)については、JIS K 7210に基づいて測定を行った。基材フィルムの構成材料の融点は、JIS K 6977-2に基づいて測定を行った。
(粘着力)
上述した方法により測定した。
【0123】
【表1】
【0124】
<表の注>
粘着力の行の括弧書きは、粘着剤層の形成に使用した粘着剤組成物の種類を示す。
【0125】
表1から明らかなように、実施例1、参考例2、3及び実施例4の表面保護テープは、密着性にすぐれ、ダスト侵入、搬送エラー、ウェハ破損を抑制することができた。さらに、実施例1、参考例2、3及び実施例4の表面保護テープは、半導体ウェハ表面に貼合した状態での反りを抑制でき、剥離性、糊残り及び耐熱性に優れた。
これに対し、比較例1~3の表面保護テープは少なくとも2つの評価項目が不合格であった。
【0126】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0127】
本願は、2017年3月31日に日本国で特許出願された特願2017-71346に基づく優先権を主張するものであり、これはいずれもここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【符号の説明】
【0128】
10 半導体ウェハ表面保護用粘着テープ
1 粘着剤層
2 中間樹脂層
3 基材フィルム
図1