(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】アクリル系ブロック共重合体と光拡散剤を含む樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 53/00 20060101AFI20220525BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220525BHJP
C08K 5/524 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
C08L53/00
C08K3/22
C08K5/524
(21)【出願番号】P 2018568495
(86)(22)【出願日】2018-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2018004531
(87)【国際公開番号】W WO2018151030
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2020-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2017027275
(32)【優先日】2017-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】菅原 敏晃
(72)【発明者】
【氏名】赤井 真
(72)【発明者】
【氏名】片岡 大
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-188503(JP,A)
【文献】国際公開第2016/190138(WO,A1)
【文献】特開2007-295858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08K3/22、C08K5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ブロック共重合体(A)と光拡散剤(B)
と着色剤(D)として、最大吸収波長が590~610nmの範囲内にある青色着色剤および最大吸収波長が510~530nmの範囲内にある紫色着色剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとを含む樹脂組成物であって、
前記アクリル系ブロック共重合体(A)は、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a2)の両末端にそれぞれメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a1)が結合した構造を少なくとも1つ有し、重量平均分子量が10,000~150,000であり、引張弾性率が1~1,500MPaであり、
前記光拡散剤(B)は、平均粒子径が0.5~2.0μmであるルチル型酸化チタンであり、
前記アクリル系ブロック共重合体(A)に対して、前記光拡散剤(B)を0.5~10ppm(質量基準)含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記アクリル系ブロック共重合体(A)100質量部に対して、酸化防止剤(C)として下記式(i)で表されるホスファイト系化合物を0.01~1質量部含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
1は、置換または非置換の芳香族基を示し、R
2およびR
3は、それぞれ独立して水素原子または有機基を示し、R
1とR
2またはR
3とは互いに結合して、ホスファイトを構成しているリン原子および酸素原子と共に環を形成していてもよく、R
2とR
3とは互いに結合して、ホスファイトを構成しているリン原子および酸素原子と共に環を形成していてもよい。)
【請求項3】
前記アクリル系ブロック共重合体(A)の屈折率が1.485~1.495である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記アクリル系ブロック共重合体(A)の秩序-無秩序転移温度(ODTT)が260℃以下である、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記重合体ブロック(a2)が、アクリル酸アルキルエステル50~90質量%とアクリル酸芳香族エステル50~10質量%との共重合体ブロックである、請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記重合体ブロック(a1)および前記重合体ブロック(a2)の屈折率が、それぞれ1.485~1.495である、請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記アクリル系ブロック共重合体(A)に対して、着色剤(D)として最大吸収波長が590~610nmの範囲内にある青色着色剤を0.1~4ppm(質量基準)含む、請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記アクリル系ブロック共重合体(A)に対して、着色剤(D)として最大吸収波長が510~530nmの範囲内にある紫色着色剤を0.1~10ppm(質量基準)含む、請求項1~7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の樹脂組成物からなる成形体。
【請求項10】
光学部材である、請求項9に記載の成形体。
【請求項11】
導光体である、請求項9に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系ブロック共重合体と光拡散剤を含む樹脂組成物およびそれからなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸エステル重合体ブロックとメタクリル酸エステル重合体ブロックが結合した構造を有するアクリル系ブロック共重合体は、柔軟でありながら透明性、耐候性に優れるため、種々の分野で有用であることが知られている。このようなアクリル系ブロック共重合体は、例えば、光学分野におけるフィルム・シートや、屋外建材用途などに用いられている。
【0003】
アクリル系ブロック共重合体を原料とした光学部材としては、例えば、アクリル系ブロック共重合体および光拡散粒子を含む樹脂組成物からなる、柔軟性を備えた発光体が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、光学部材の発光輝度を向上させる手法として、アクリル系ポリマーと光散乱体からなるコア層とフッ素系ポリマーを主材料とするクラッド層からなる、側面発光型光ファイバーが提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、これらのいずれの技術においても改善の余地があり、透明性、導光性および発光性に優れた樹脂組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5436384号公報
【文献】特許第5341391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高い透明性、導光性および発光性を示し、且つ導光させた際の色度変化率が小さい樹脂組成物およびそれからなる光学部材等の成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のアクリル系ブロック共重合体に対して、特定の光拡散剤を特定の割合で配合することによって、上記問題が解決できることを見出し、当該知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、
[1]アクリル系ブロック共重合体(A)と光拡散剤(B)を含む樹脂組成物であって、
前記アクリル系ブロック共重合体(A)は、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a2)の両末端にそれぞれメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a1)が結合した構造を少なくとも1つ有し、重量平均分子量が10,000~150,000であり、引張弾性率が1~1,500MPaであり、
前記光拡散剤(B)は、平均粒子径が0.5~2.0μmであるルチル型酸化チタンであり、
前記アクリル系ブロック共重合体(A)に対して、前記光拡散剤(B)を0.5~10ppm(質量基準)含む、樹脂組成物;
[2]前記アクリル系ブロック共重合体(A)100質量部に対して、酸化防止剤(C)として下記式(i)で表されるホスファイト系化合物を0.01~1質量部含む、上記[1]の樹脂組成物;
【0009】
【0010】
(式中、R1は、置換または非置換の芳香族基を示し、R2およびR3は、それぞれ独立して水素原子または有機基を示し、R1とR2またはR3とは互いに結合して、ホスファイトを構成しているリン原子および酸素原子と共に環を形成していてもよく、R2とR3とは互いに結合して、ホスファイトを構成しているリン原子および酸素原子と共に環を形成していてもよい。)
[3]前記アクリル系ブロック共重合体(A)の屈折率が1.485~1.495である、上記[1]または[2]の樹脂組成物。
[4]前記アクリル系ブロック共重合体(A)の秩序-無秩序転移温度(ODTT)が260℃以下である、上記[1]~[3]のいずれかの樹脂組成物;
[5]前記重合体ブロック(a2)が、アクリル酸アルキルエステル50~90質量%とアクリル酸芳香族エステル50~10質量%との共重合体ブロックである、上記[1]~[4]のいずれかの樹脂組成物;
[6]前記重合体ブロック(a1)および前記重合体ブロック(a2)の屈折率が、それぞれ1.485~1.495である、上記[1]~[5]のいずれかの樹脂組成物;
[7]前記アクリル系ブロック共重合体(A)に対して、着色剤(D)として最大吸収波長が590~610nmの範囲内にある青色着色剤を0.1~4ppm(質量基準)含む、上記[1]~[6]のいずれかの樹脂組成物;
[8]前記アクリル系ブロック共重合体(A)に対して、着色剤(D)として最大吸収波長が510~530nmの範囲内にある紫色着色剤を0.1~10ppm(質量基準)含む、上記[1]~[7]のいずれかの樹脂組成物;
[9]上記[1]~[8]のいずれかの樹脂組成物からなる成形体;
[10]光学部材である、上記[9]の成形体;
[11]導光体である、上記[9]の成形体;
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記構成をとることにより、高い透明性、導光性および発光性を示し、且つ導光させた際の色度変化率が小さい樹脂組成物およびそれからなる光学部材等の成形体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】製造例1で得られたアクリル系ブロック共重合体(A1)における温度(横軸)と貯蔵弾性率G’(縦軸;対数目盛)との関係を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、アクリル系ブロック共重合体(A)と光拡散剤(B)を含む。ここで、前記アクリル系ブロック共重合体(A)は、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a2)の両末端にそれぞれメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a1)が結合した構造を少なくとも1つ有し、重量平均分子量が10,000~150,000であり、引張弾性率が1~1,500MPaである。また前記光拡散剤(B)は、平均粒子径が0.5~2.0μmであるルチル型酸化チタンである。また、本発明の樹脂組成物は、前記アクリル系ブロック共重合体(A)に対して、前記光拡散剤(B)を0.5~10ppm(質量基準)含む。
【0014】
<アクリル系ブロック共重合体(A)>
本発明におけるアクリル系ブロック共重合体(A)は、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a2)の両末端にそれぞれメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a1)が結合した構造、すなわち、(a1)-(a2)-(a1)の構造(構造中の「-」は、化学結合を示す)を少なくとも1つ有する。
【0015】
重合体ブロック(a1)におけるメタクリル酸エステル単位の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であってもよい。当該メタクリル酸エステル単位となるメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-メトキシエチルなどを挙げることができる。
【0016】
これらのメタクリル酸エステルの中でも、透明性、耐熱性を向上させる観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。重合体ブロック(a1)は、これらのメタクリル酸エステルの1種から構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。
【0017】
また、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、重合体ブロック(a1)は、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル等の反応基を有するメタクリル酸エステルに由来する単位;または、重合体ブロック(a2)の構成単位となり得るアクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸、芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、オレフィン等のメタクリル酸エステル以外の他の重合性単量体に由来する単位;などを共重合成分として含んでいてもよい。これら反応基を有するメタクリル酸エステルに由来する単位または他の重合性単量体に由来する単位は、本発明の効果を発現させる観点から少量であることが好ましく、好ましくは10質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0018】
重合体ブロック(a2)におけるアクリル酸エステル単位の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であってもよい。当該アクリル酸エステル単位となるアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-メトキシエチルなどを挙げることができる。
【0019】
これらのアクリル酸エステルの中でも、柔軟性を向上させる観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2-メトキシエチルなどのアクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルがより好ましい。重合体ブロック(a2)は、これらのアクリル酸エステルの1種から構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。
【0020】
また、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、重合体ブロック(a2)は、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル等の反応基を有するアクリル酸エステルに由来する単位;または、重合体ブロック(a1)の構成単位となり得るメタクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸、芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、オレフィン等のアクリル酸エステル以外の他の重合性単量体に由来する単位;などを共重合成分として含んでいてもよい。これら反応基を有するアクリル酸エステルに由来する単位または他の重合性単量体に由来する単位は、本発明の効果を発現させる観点から少量であることが好ましく、好ましくは10質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0021】
アクリル系ブロック共重合体(A)の透明性や導光性を向上させる観点から、重合体ブロック(a2)は、アクリル酸アルキルエステルと、アクリル酸芳香族エステルとの共重合体ブロックであることが好ましい。アクリル酸芳香族エステルとしては、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、アクリル酸フェノキシ-ポリエチレングリコール、アクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルなどが好ましく、アクリル酸ベンジルがより好ましい。
【0022】
重合体ブロック(a2)が上記のようなアクリル酸アルキルエステルとアクリル酸芳香族エステルとの共重合体ブロックである場合において、当該重合体ブロック(a2)は、後述する屈折率や秩序-無秩序転移温度(ODTT)を好適な範囲にすることができて、透明性や導光性を向上させることができることから、アクリル酸アルキルエステル50~90質量%とアクリル酸芳香族エステル50~10質量%との共重合体ブロックであることが好ましく、アクリル酸アルキルエステル60~80質量%とアクリル酸芳香族エステル40~20質量%との共重合体ブロックであることがより好ましい。
【0023】
アクリル系ブロック共重合体(A)の分子鎖形態は、重合体ブロック(a2)の両末端にそれぞれ重合体ブロック(a1)が結合した構造を少なくとも1つ有する限り、特に限定されることはなく、例えば、線状、分枝状、放射状などのいずれでもよいが、中でも(a1)-(a2)-(a1)で表されるトリブロック体が好ましい。ここで、(a2)の両端の(a1)の分子量、組成などは同じであってもよいし、相互に異なっていてもよい。なお本発明の樹脂組成物は、前記アクリル系ブロック共重合体(A)と共に、(a1)-(a2)で表されるジブロック体をさらに含んでいてもよい。
【0024】
アクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量は、透明性や導光性を向上させる観点から、10,000~150,000である。本発明の樹脂組成物およびそれからなる成形体の柔軟性、成形加工性などを向上させる観点から、アクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量は、30,000~120,000であるのが好ましく、50,000~100,000であるのがより好ましい。アクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量が10,000以上であると、溶融押出成形において十分な溶融張力を保持でき、良好な成形体が得られる。また、得られる成形体の破断強度などの力学物性が優れたものとなる。一方、アクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量が150,000以下であると、溶融押出成形で得られる成形体の表面に微細なシボ調の凹凸や未溶融物(高分子量体)に起因するブツが発生しにくく、良好な成形体が得られやすい。
【0025】
また、アクリル系ブロック共重合体(A)の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)で表される分子量分布は、透明性や導光性を向上させる観点から、1.01以上1.50以下の範囲内にあるのが好ましく、1.01以上1.35以下の範囲内にあるのがより好ましい。このような範囲を取ることにより、本発明の樹脂組成物からなる成形体におけるブツの発生原因となる未溶融物の含有量を極めて少量とすることができる。
なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算のものであり、実施例において後述する方法により測定することができる。
【0026】
アクリル系ブロック共重合体(A)の引張弾性率は、1~1,500MPaであり、10~1,000MPaであることが好ましい。引張弾性率が上記範囲となることで、力学強度と柔軟性のバランスに優れた樹脂組成物および成形体が得られる。
アクリル系ブロック共重合体(A)の引張弾性率は、アクリル系ブロック共重合体(A)よりダンベル形状(ISO B type)の成形体を作製し、ISO527-2に準拠して測定することができ、詳細には実施例において後述する方法により測定することができる。アクリル系ブロック共重合体(A)の引張弾性率は、例えば、重合体ブロック(a1)の構成割合を大きくすることなどにより、その値を高くすることができる。
【0027】
アクリル系ブロック共重合体(A)の秩序-無秩序転移温度(ODTT)は、270℃以下であってもよく、260℃以下であることが好ましい。ODTTが260℃以下であることにより、加工性が向上し、異形押出性が良く、得られる成形体が表面平滑性に優れたものとなるため、成形体表面からの光損失が減少し、導光性が向上する。また、成形温度が下がることで、成形時の熱着色による透明性の低下を防ぐことができる。ODTTは、250℃以下がより好ましく、230℃以下がさらに好ましい。ODTTの下限は特に限定されないが、例えば100℃以上である。
【0028】
アクリル系ブロック共重合体(A)の秩序-無秩序転移温度(ODTT)は、アクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量もしくは分子量分布(Mw/Mn)を、または重合体ブロック(a2)の構成を調整することなどにより所望の値とすることができる。より具体的には例えば、アクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量または分子量分布(Mw/Mn)が大きくなるほど、ODTTは高くなり、重合体ブロック(a2)中におけるアクリル酸アルキルエステル単位の割合が大きくなるほど、ODTTは高くなる。なお、ODTTは実施例に記載の方法により測定することができる。
【0029】
アクリル系ブロック共重合体(A)の屈折率は、1.475~1.495であってもよく、1.485~1.495であることが好ましく、1.490~1.495であることがより好ましい。屈折率が上記の範囲にあると、得られる樹脂組成物の透明性や導光性が向上する。アクリル系ブロック共重合体(A)の屈折率は、アクリル系ブロック共重合体(A)を厚さ3mmの成形体にし、屈折計を用いてVブロック法により測定することができ、具体的には実施例において後述する方法により測定することができる。アクリル系ブロック共重合体(A)の屈折率は、例えば重合体ブロック(a2)中に含まれるアクリル酸芳香族エステルの割合を大きくすることなどにより、その値を高くすることができる。
【0030】
また、重合体ブロック(a1)および重合体ブロック(a2)の屈折率は、アクリル系ブロック共重合体(A)の屈折率に影響を及ぼすことから、それぞれ1.465~1.495であってもよく、それぞれ1.485~1.495であることが好ましく、それぞれ1.490~1.495であることがより好ましい。重合体ブロック(a1)の屈折率は、上記したアクリル系ブロック共重合体(A)の屈折率と同様にして測定することができる。また重合体ブロック(a2)の屈折率は、アクリル系ブロック共重合体(A)の屈折率および重合体ブロック(a1)の屈折率を用いて算出することができる。重合体ブロック(a1)および重合体ブロック(a2)の各屈折率は、具体的には実施例において後述する方法により求めることができる。
【0031】
アクリル系ブロック共重合体(A)の製造方法としては、特に限定されず、公知の手法に準じた方法を採用することができる。例えば、各ブロックを構成する単量体をリビング重合する方法が一般に使用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩などの鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法(特公平7-25859号公報参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法(特開平11-335432号公報参照)、有機希土類金属錯体を重合開始剤として重合する方法(特開平6-93060号公報参照)、α-ハロゲン化エステル化合物を開始剤として銅化合物の存在下ラジカル重合する方法(マクロモレキュラケミカルフィジックス(Macromol.Chem.Phys.)201巻,1108~1114頁(2000年)参照)などが挙げられる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて、各ブロックを構成する単量体を重合させ、アクリル系ブロック共重合体(A)を含有する混合物として製造する方法なども挙げられる。これらの方法中、特に、アクリル系ブロック共重合体(A)が高純度で得られ、また分子量や組成比の制御が容易であり、かつ経済的であることから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法が推奨される。
【0032】
本発明の樹脂組成物は、1種のアクリル系ブロック共重合体(A)を含んでいてもよく、2種以上のアクリル系ブロック共重合体(A)を含んでいてもよい。
【0033】
<光拡散剤(B)>
本発明における光拡散剤(B)は、平均粒子径が0.5~2.0μmであるルチル型酸化チタンであり、当該光拡散剤(B)は本発明の樹脂組成物において、前記アクリル系ブロック共重合体(A)に対して、質量基準で0.5~10ppmの割合で含まれる。酸化チタンは基材となるアクリル系ブロック共重合体(A)との屈折率差が大きく、少量の添加で優位な拡散効果を発現させることができるが、当該酸化チタンとしてルチル型酸化チタンを用いると、耐候性や熱安定性に優れた樹脂組成物が得られる。このようなルチル型酸化チタンとしては、具体的には例えば、「赤外線遮蔽酸化チタン JR-1000」[商品名、テイカ株式会社製]などを好ましく用いることができる。
【0034】
上記ルチル型酸化チタンの平均粒子径は0.5~2.0μmである。平均粒子径が0.4μm程度以下の顔料級酸化チタンや微粒子酸化チタンを用いた場合には、可視光線領域(0.4~0.7μm)の波長よりも粒子径が小さいため、レイリー散乱の影響を受けて0.4μm以下の短波長領域の光散乱が非常に強くなる。そのため、光源近傍では透過光が青味を帯び、光源から離れた位置では黄味を帯びやすい。一方、上記した赤外線遮蔽酸化チタンのように平均粒子径が0.5μm程度以上のルチル型酸化チタンを用いた場合には、赤外線領域(0.7~3μm)の波長を効果的に散乱できるため、0.5μm以上の黄色~赤色の可視光線領域の光散乱が強くなって、光源から離れた位置での透過光が青味を帯びやすい。
【0035】
ところでアクリル系ブロック共重合体(A)を用いて成形体を製造した場合には、溶融加工時の熱履歴などの影響を受けて、光を通した場合に光源から離れた位置で黄味を帯びることがある。本発明では光拡散剤(B)として赤外線遮蔽性の高い上記ルチル型酸化チタンを含むことで、透過光の着色を抑制し、導光させた際の色度変化率を小さくすることができる。このような効果を発現させるために、ルチル型酸化チタンの平均粒子径が0.5~2.0μmの範囲内にあることが必要であり、0.5~1.5μmの範囲内にあることが好ましく、0.8~1.2μmの範囲内にあることがより好ましい。なおルチル型酸化チタンの平均粒子径は、実施例において後述する方法により測定することができる。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、前記アクリル系ブロック共重合体(A)に対して、上記の光拡散剤(B)を質量基準で0.5~10ppm含むことが必要であり、0.8~8ppm含むことが好ましい。光拡散剤(B)の含有量が多くなるにつれて、得られる樹脂組成物や成形体の透明性が低下し、光源近傍での光拡散が大きくなって導光性が低下する傾向がある。一方、光拡散剤(B)の含有量が少なすぎると、光を十分に拡散させることができなくなって、得られる樹脂組成物や成形体に光を通した際の発光輝度が小さくなりやすい。
【0037】
本発明の樹脂組成物は上記したアクリル系ブロック共重合体(A)および光拡散剤(B)のみからなっていてもよいが、酸化防止剤(C)、着色剤(D)およびその他の成分のうちの1種または2種以上を任意成分としてさらに含んでいてもよい。本発明の樹脂組成物におけるアクリル系ブロック共重合体(A)および光拡散剤(B)の合計の含有量は、40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく90質量%以上であることが特に好ましく、95質量%以上、さらには100質量%であってもよい。
【0038】
<酸化防止剤(C)>
上記の酸化防止剤(C)としては、特に制限はなく、例えば、ホスファイト系化合物、フェノール系化合物、硫黄系化合物などが挙げられる。酸化防止剤(C)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの酸化防止剤(C)の中でも、透明性、導光性、色度を向上させる観点から、ホスファイト系化合物および/またはフェノール系化合物を用いることが好ましく、ホスファイト系化合物を単独で用いることがより好ましい。
【0039】
ホスファイト系化合物の種類に特に制限はないが、例えば、下記式(i)で表される化合物(以下、「ホスファイト系化合物(i)」と称する場合がある)を好ましく使用することができる。
【0040】
【0041】
上記式(i)中、R1は、置換または非置換の芳香族基を示し、R2およびR3は、それぞれ独立して水素原子または有機基を示し、R1とR2またはR3とは互いに結合して、ホスファイトを構成しているリン原子および酸素原子と共に環を形成していてもよく、R2とR3とは互いに結合して、ホスファイトを構成しているリン原子および酸素原子と共に環を形成していてもよい。
【0042】
R1における置換または非置換の芳香族基としては、例えば、フェニル基、置換基を有するフェニル基、フェニレン基、置換基を有するフェニレン基などが挙げられる。
また、R2および/またはR3が有機基である場合は、ホスファイト系化合物(i)の機能を損なわない有機基であればいずれでもよい。かかる有機基としては、例えば、アルキル基、置換基を有するアルキル基、フェニル基、置換基を有するフェニル基、アルキレン基などを挙げることができる。
また、ホスファイト系化合物(i)において、R1とR2とが互いに結合して、ホスファイトを構成しているリン原子および酸素原子と共に環を形成していてもよく、R1とR3とが互いに結合して、ホスファイトを構成しているリン原子および酸素原子と共に環を形成していてもよい。
【0043】
ホスファイト系化合物(i)の具体例としては、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2-tert-ブチル-4,6-ジメチルフェニル)・エチルホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクタデシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)フルオロホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル-4,4’-イソプロピリデンジフェノール・ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12~15混合アルキル)・ビスフェノールAジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、テトラトリデシル-4,4’-ブチリデンビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ビス[2,2’-メチレンビス(4,6-ジアミルフェニル)]・イソプロピリデンジフェニルホスファイト、水素化-4,4’-イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス[4,4’-n-ブチリデンビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)]・1,6-ヘキサンジオール・ジホスファイト、2-ブチル-2-エチルプロパンジオール・2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノールモノホスファイト、トリス(2-[(2,4,8,10-テトラキス-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ]エチル)アミンなどを挙げることができる。これらホスファイト系化合物(i)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
ホスファイト系化合物(i)は市販品でもよい。市販されているホスファイト系化合物(i)としては、例えば、「アデカスタブPEP-36」、「アデカスタブPEP-36A」、「アデカスタブ2112」[いずれも商品名、株式会社ADEKA製]などが挙げられる。
【0045】
本発明の樹脂組成物が酸化防止剤(C)を含む場合におけるその含有量は、アクリル系ブロック共重合体(A)100質量部に対して、0.01~1質量部であることが好ましく、0.02~0.5質量部であることがより好ましい。
【0046】
<着色剤(D)>
上記の着色剤(D)としては、特に制限はなく、例えば、無機顔料、有機顔料、染料などが挙げられる。着色剤(D)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの着色剤(D)の中でも、成形体に光を通した際の色度変化を小さくする観点から、最大吸収波長が590~610nmの範囲内にある青色着色剤や、最大吸収波長が510~530nmの範囲内にある紫色着色剤を用いることが好ましい。
【0047】
上記の青色着色剤を用いる場合、アクリル系ブロック共重合体(A)に対して、質量基準で0.1~4ppm含むことが好ましく、0.3~2ppm含むことがより好ましい。また、上記の紫色着色剤を用いる場合、アクリル系ブロック共重合体(A)に対して、質量基準で0.1~10ppm含むことが好ましく、0.3~7ppm含むことがより好ましく、0.5~7ppm含むことがさらに好ましい。さらに色度変化をより小さくするためには、該青色着色剤と該紫色着色剤とを併用することが好ましく、具体的には、アクリル系ブロック共重合体(A)に対するそれぞれの含有量が質量基準で0.3~2ppmおよび0.5~7ppmであることが好ましい。
【0048】
また、色度変化を小さくする観点から、本発明の樹脂組成物は、該青色着色剤および/または該紫色着色剤をホスファイト系化合物(i)と共に含むことが好ましい。なお、前記最大吸収波長とは、着色剤(D)を含有させた樹脂組成物の成形片をサンプルとして、紫外可視分光光度計を用いて分光透過率を測定する方法により算出することができる。
【0049】
着色剤(D)は市販品でもよい。市販されている着色剤(D)としては、例えば、青色顔料「BPA-5500A」、紫色顔料「TV-4M」[いずれも商品名、日本ピグメント株式会社製]などが挙げられる。
【0050】
<その他の成分>
上記の他の成分としては、特に制限はなく、上記したアクリル系ブロック共重合体(A)、光拡散剤(B)、酸化防止剤(C)および着色剤(D)以外のものが挙げられ、例えば、アクリル系ブロック共重合体(A)以外の他の重合体や各種添加剤などが挙げられる。
【0051】
上記他の重合体としては、例えば、メタクリル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリノルボルネン等のオレフィン系樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂等のスチレン系樹脂;メチルメタクリレート-スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマー等のポリアミド樹脂;エステル系ポリウレタンエラストマー、エーテル系ポリウレタンエラストマー、無黄変エステル系ポリウレタンエラストマー、無黄変カーボネート系ポリウレタンエラストマー等のポリウレタン樹脂;ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーンゴム変性樹脂、フェノキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、アクリル系ブロック共重合体(A)との相溶性の観点から、メタクリル樹脂が好ましい。
本発明の樹脂組成物中における上記他の重合体の含有量は、10質量%以下が好ましい
。
【0052】
上記メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステルの単独重合体であるか、または、メタクリル酸エステル単位を主体とする共重合体であることが好ましい。メタクリル樹脂におけるメタクリル酸エステル単位の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であってもよい。当該メタクリル酸エステル単位となるメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-メトキシエチルなどを挙げることができる。
【0053】
これらの中でも、アクリル系ブロック共重合体(A)との相溶性の観点、および樹脂組成物の透明性、成形加工性の観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。メタクリル樹脂は、これらのメタクリル酸エステルの1種から構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。
【0054】
また、本発明の目的および効果を妨げない限りにおいて、上記メタクリル樹脂を構成するメタクリル酸エステル単位として、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル等の反応基を有するメタクリル酸エステルに由来する単位を構成成分として少量、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下含んでいてもよい。
【0055】
上記メタクリル樹脂がメタクリル酸エステル単位を主体とする共重合体である場合、上記メタクリル酸エステルと共重合しうる他の単量体は、特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-オクテン等のオレフィン;1,3-ブタジエン、イソプレン、ミルセン等の共役ジエン;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン等の芳香族ビニル;酢酸ビニル、ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミドなどを挙げることができ、その中でもアクリル酸エステルが好ましく、アクリル酸メチルがより好ましい。メタクリル樹脂は、これらの他の単量体のうちの1種または2種以上を含むことができる。
【0056】
上記メタクリル樹脂が共重合体である場合、その形態に特に制限はなく、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体などが挙げられる。
【0057】
また、上記メタクリル樹脂の立体規則性に特に制限はなく、イソタクチック、ヘテロタクチックあるいはシンジオタクチックであるものを用いることができる。
【0058】
上記メタクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)に特に制限はないが、30,000~500,000であることが好ましく、70,000~200,000であることがより好ましい。また、本発明に用いるメタクリル樹脂は、1種単独で用いることができるが、重量平均分子量(Mw)などが異なる2種以上のメタクリル樹脂の混合物を用いることもできる。
【0059】
メタクリル樹脂は市販品でもよい。市販されているメタクリル樹脂としては、例えば、「パラペットGF」、「パラペットH1000B」、「パラペットEH」、「パラペットHRL」[いずれも商品名、株式会社クラレ製]などが挙げられる。
【0060】
上記各種添加剤としては、例えば、ゴム、軟化剤、フィラー、滑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、粘着剤、粘着付与剤、可塑剤、帯電防止剤、発泡剤、難燃剤などが挙げられる。これらは1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの添加剤の中でも、透明性、導光性、発光性、耐熱性、耐候性、耐光性をさらに良好なものとするために、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを添加することが実用上好ましい。
【0061】
上記ゴムとしては、例えば、アクリル系ゴム;シリコーン系ゴム;SEPS、SEBS、SIS等のスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDM等のオレフィン系ゴムなどが挙げられる。
上記軟化剤としては、例えば、成形加工時の流動性を向上させるためのパラフィン系オイル、ナフテン系オイル等の鉱物油軟化剤などが挙げられる。
上記フィラーとしては、例えば、耐熱性、耐候性等の向上または増量などを目的とする炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム等の無機充填剤;補強のためのガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維または有機繊維などが挙げられる。
【0062】
本発明の樹脂組成物を調製する方法は特に制限されないが、上記樹脂組成物を構成する各成分の分散性を高めるため、溶融混練して混合する方法が推奨される。混合・混練操作は、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合または混練装置を使用して行うことができる。特に、二軸押出機を使用することが好ましい。混合・混練時の温度は、使用するアクリル系ブロック共重合体(A)の溶融温度などに応じて適宜調節するのがよく、通常110~300℃の範囲内の温度がよい。このような方法をとることで、本発明の樹脂組成物をペレット、粉末などの任意の形態で得ることができる。ペレット、粉末などの形態の樹脂組成物は、成形材料として使用するのに好適である。
【0063】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性重合体に対して一般に用いられている成形加工方法や成形加工装置を用いて成形加工することができ、本発明の樹脂組成物からなる成形体を得ることができる。例えば、押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形などの加熱溶融を経る成形加工法、溶液キャスト方法などにより成形体が製造できる。特に、本発明の樹脂組成物は、異形押出性や溶融流動性に優れるため、押出成形に好適であり、表面平滑性に優れた押出成形体が得られる。
【0064】
また、アクリル系ブロック共重合体(A)のペレット、光拡散剤(B)、さらには任意成分としての酸化防止剤(C)および着色剤(D)などを非加熱および無オイル下で、ヘンシェルミキサー、タンブラー、スパーミキサー、リボンブレンダーなどを用いて混合し、上記の溶融成形装置に直接供給する手法をとることもできる。少量規模の場合は、樹脂製などの袋にアクリル系ブロック共重合体(A)のペレット、光拡散剤(B)、さらには任意成分としての酸化防止剤(C)および着色剤(D)などを仕込んだのち、袋の口を縛り、袋を振るなどして混合する、簡易的な手法を採ることもできる。
【0065】
アクリル系ブロック共重合体(A)は、粘着性によるペレット同士のブロッキングによる問題が起こることがあるが、ペレットの表面に粉状の成分、例えば、光拡散剤(B)、酸化防止剤(C)、着色剤(D)などを付着させることで、ペレット同士の膠着を防止する作用が発現し、前記の問題を防ぐことができる。さらに、ブロッキングを防ぐことで、溶融成形装置への供給がスムーズになり、製造される成形体の品質も安定する効果が得られる。
【0066】
上記成形加工方法により、ファイバー、型物、パイプ、シート、フィルム、繊維状物、積層体などの任意の形状の成形体を得ることができる。また、コア-クラッド構造を持つ成形体を得ることもできる。
【0067】
本発明の樹脂組成物からなる成形体の用途は特に限定されず、光学分野、食品分野、医療分野、民生分野、自動車分野、電気・電子分野などの多岐の用途で利用することができる。
【0068】
特に本発明の樹脂組成物ないし成形体は、透明性や異形押出性・表面平滑性のいずれにも優れ、且つ導光性に優れる点から、本発明の成形体は、光学部材に好適に使用できる。
かかる光学部材としては、例えば、コア-クラッド構造を持つライトガイドをはじめとした導光体として、自動車内装用照明装置、具体的には、車両のインストルメントパネル周り、カーオディオ・カーナビ周り、ドアパネル、コンソールボックス、ピラーに設置する補助照明として使用できる。その他、カーテシーランプ、マップランプ、ルームランプ、フロアランプ、フットランプ、天井ランプ、ドアランプに適用することもできる。また、自動車外装用照明装置、例えば自動車用ヘッドランプやテールランプ、ブレーキランプ、サイドマーカーランプ、ナンバープレートランプなどにも適用することもできる。また、太陽光の伝送、車載用配線・移動体配線・FA機器配線等の光信号伝送、液面レベルセンサー、感圧センサー等の光学センサー、内視鏡等のイメージガイド、光学機器のライトガイトにも適用することができる。その他、携帯電話、デジカメ、腕時計、パチンコ台、スロット台、自動販売機、犬の首輪、装飾具、交通標識、洗面台、シャワー、浴槽の湯温表示機、OA機器、家庭用電気製品、光学機器、各種建材、階段、手すり、電車のホーム、屋外看板、バリアフリー空間等のイルミネーションや照明、液晶表示部のバックライト、可変表示体、美術館や博物館向けの熱線や紫外線カット照明におけるライトガイド等としても好適に使用することができる。また、この光伝送体に光源を組合せて、照明装置として各種のイルミネーションや照明設備に使用することができる。
その他、各種カバー、各種端子板、プリント配線板、スピーカー、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計;映像・光記録・光通信・情報機器関連部品としてカメラ、VTR、プロジェクションTV等のファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ、各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LD等)基板保護フィルム、光スイッチ、光コネクター、液晶ディスプレイ;液晶ディスプレイ用導光フィルム・シート、フラットパネルディスプレイ、フラットパネルディスプレイ用導光フィルム・シート、プラズマディスプレイ、プラズマディスプレイ用導光フィルム・シート、位相差フィルム・シート、偏光フィルム・シート、偏光板保護フィルム・シート、波長板、光拡散フィルム・シート、プリズムフィルム・シート、反射フィルム・シート、反射防止フィルム・シート、視野角拡大フィルム・シート、防眩フィルム・シート、輝度向上フィルム・シート、液晶やエレクトロルミネッセンス用途の表示素子基板、タッチパネル、タッチパネル用導光フィルム・シート、各種前面板と各種モジュール間のスペーサーなどが挙げられる。これらの中でも、本発明の成形体は、特に導光体として用いることが好ましい。
【0069】
また、本発明の成形体は、耐候性、柔軟性などにも優れることから、例えば、建築用内・外装用部材、カーテンウォール、屋根用部材、屋根材、窓用部材、雨どい、エクステリア類、壁材、床材、造作材、道路建設用部材、再帰反射フィルム・シート、農業用フィルム・シート、照明カバー、看板、透光性遮音壁など、公知の建材用途へも好適に適用可能である。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。製造例、実施例および比較例で用いた測定機器および測定方法を以下に記す。
【0071】
(1)重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)
アクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(以下GPCと略記する)によりポリスチレン換算分子量で求めた。得られた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とから分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
・GPC装置:東ソー株式会社製 「HLC-8020」
・分離カラム:東ソー株式会社製 「TSKgel GMHXL」、「G4000HXL」および「G5000HXL」を直列に連結
・溶離剤:テトラヒドロフラン
・溶離剤流量:1.0ml/分
・カラム温度:40℃
・検出方法:示差屈折率(RI)
【0072】
(2)各重合体ブロックの構成割合
アクリル系ブロック共重合体(A)における各重合体ブロックの構成割合および各重合体ブロックの組成比は、1H-NMR(1H-核磁気共鳴)測定によって求めた。詳細は以下のとおりである。
・核磁気共鳴装置:日本電子株式会社製 「JNM-LA400」
・重溶媒:重水素化アセトン
【0073】
(3)屈折率
アクリル系ブロック共重合体(A)を230℃で溶融させ、下記の超小型射出成形機を用いて長さ32mm、幅6mm、厚さ3mmの成形体を作製した。得られた成形体から試料(8mm×8mm×11mmの直角三角形で厚さ3mm)を切り出し、測定温度25℃で下記の屈折計および条件でVブロック法により屈折率を測定した。
・超小型射出成形機:CSI社製 「mini max molder」
・屈折計:カール・ツァイス・イエナ社製 「PR-2」
・測定波長:587.562nm(d線)
アクリル系ブロック共重合体(A)および重合体ブロック(a1)の屈折率は、上記の方法により求め、重合体ブロック(a2)の屈折率は、アクリル系ブロック共重合体(A)と重合体ブロック(a1)のそれぞれの屈折率の値から下記の計算式より求めた。
・計算式:重合体ブロック(a2)の屈折率={アクリル系ブロック共重合体(A)の屈折率-(重合体ブロック(a1)の屈折率×重合体ブロック(a1)の体積分率)}÷重合体ブロック(a2)の体積分率
ここで各体積分率は、下記の計算式から求めた値である。
・計算式:
【0074】
【0075】
(4)柔軟性(引張弾性率)
アクリル系ブロック共重合体(A)を用いて、下記の射出成形機により、下記のシリンダー温度および金型温度でダンベル形状(ISO B type)の成形体を作製し、下記の装置を用いてISO 527-2に準拠して引張弾性率を測定した。
・射出成形機:日精樹脂工業株式会社製 「UH1000-80」、
・シリンダー温度:220℃(製造例1)、230℃(製造例2、3)
・金型温度:50℃(製造例1~3)
・装置:株式会社島津製作所製 「万能試験機 AG-I」
【0076】
(5)秩序-無秩序転移温度(ODTT)
アクリル系ブロック共重合体(A)を以下のプレス成形装置を用いて230℃でプレス成形し、厚さ1mmのシート状成形体を得た。得られた成形体を直径25mmの円盤状に打ち抜き、JIS K7244-10に準拠する方法で、以下の装置・条件で、100~280℃の温度範囲の貯蔵弾性率G’を測定した。得られたデータから、縦軸を貯蔵弾性率G’(Pa)の対数目盛とし、横軸を温度(℃)としてチャート(α)を作成した。一般に、チャート(α)においてG’が急激に低下する温度が、秩序-無秩序転移温度(ODTT)とされている。
具体的な値については、得られたチャート(α)について、JISB0103-5113に準じて交会点を求め、その温度を秩序-無秩序転移温度(ODTT)として決定した(
図1参照)。
・プレス成形装置:株式会社神藤金属工業所製 「圧縮成形機 AYS10」
・動的粘弾性測定装置:Rheometric Scientific社製 「ARES粘弾性測定システム」
・測定モード:平行平板
・振動周波数:6.28ラジアン/秒
・印加歪:0.5%
・昇温速度:3℃/分
【0077】
(6)酸化チタンの平均粒子径
酸化チタンの平均粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて写真に撮影し、自動画像処理解析装置にて水平方向等分径を測定することによって求めた。ここで、水平方向等分径とは、粒子の面積を二等分するY軸方向の水平弦長とする。
・透過型電子顕微鏡:日本電子株式会社製 「JEM-1230」
・卓上型自動式多機能画像処理解析機:株式会社ニレコ製 「LUZEX AP」
【0078】
(7)熱安定性
以下の実施例または比較例に使用された光拡散剤(B)を用いて、下記の条件でその重量変化を測定し、光拡散剤(B)の5%重量減少温度を算出した。得られた5%重量減少温度をアクリル系ブロック共重合体(A)の5%重量減少温度(280℃)と比較し以下の基準で評価した。これを熱安定性の指標とした。
A:アクリル系ブロック共重合体(A)の5%重量減少温度(280℃)以上
B:アクリル系ブロック共重合体(A)の5%重量減少温度(280℃)未満
・熱重量測定装置:METTLER TOLEDO製 「TGA/DSC 1」
・雰囲気ガス:空気
・開始温度:30℃
・終了温度:500℃
・昇温速度:10℃/min
【0079】
(8)発光性
以下の実施例または比較例で得られた樹脂組成物を用いて、射出成形機により、下記の条件で長さ5cm、幅5cm、厚さ3mmのシート状成形体を得た。得られた成形体の端面に白色LED光源を設置し、導光させ、光源に対して垂直方向への面発光輝度を測定した。
・射出成形機:住友重機械工業株式会社製 「SE18DU」
・シリンダー温度:230℃
・金型温度:60℃
・分光放射計:株式会社トプコンテクノハウス製 「SR-3A」
・光源:白色LED光源(光束135lm、指向特性120°)
・輝度計と成形体との距離:5cm
【0080】
(9)透明性
(8)と同様の方法により長さ5cm、幅5cm、厚さ3mmのシート状成形体を得た。得られた成形体を用いて、以下の直読へイズメーターにより、ISO 14782に準拠してヘイズ値を測定した。
・直読ヘイズメーター:日本電色工業株式会社製 「NDH5000」
【0081】
(10)導光性
(8)と同様の手法により長さ5cm、幅5cm、厚さ3mmのシート状成形体を得た。得られた成形体を用いて、幅方向(光路長5cm)における分光透過率を測定し、光波長420nmにおける光線透過率を求めた。また、等色関数JIS Z8701-1999に準拠して黄色度b*を求め、成形体内部を透過する光の着色具合を判断する指標とした。使用した装置の詳細を以下に記す。黄色度b*の値が0に近い方が、着色が少なく、導光体として優れている。
・紫外可視近赤外分光光度計:日本分光株式会社製 「V-670」
・光源:重水素ランプ(D2)およびハロゲンランプ(WI)
【0082】
(11)導光体の発光輝度・色度・色度変化率
以下の実施例または比較例で得られた樹脂組成物を用いて、表3に記載の温度条件で押出成形した直径3.3mmの丸棒状成形体の両端面を垂直に切断し、長さ1mの成形体を得た。得られた成形体の端面に白色LED光源を設置し、導光させ、光源から10cmおよび90cm離れた位置で発光輝度およびxy色度を測定した。使用した装置の詳細を以下に記す。また、10cm位置を基準として90cm位置におけるxy色度の変化率(絶対値)を以下の式より算出し、色度変化の指標とした。この変化率が小さいほど導光体として優れており、変化率が10%以下であることが好ましい。
・分光放射計:株式会社トプコンテクノハウス製 「SR-3A」
・光源:白色LED光源(光束135lm、指向特性120°)
・色度変化率(%)=|[(光源からの距離90cmにおける色度)-(光源からの距離10cmにおける色度)]÷(光源からの距離10cmにおける色度)×100|
【0083】
<アクリル系ブロック共重合体(A)>
《製造例1》[アクリル系ブロック共重合体(A1)の合成]
20リットルの反応槽内部を脱気し、窒素で置換した後、室温にて乾燥トルエン10.29kg、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.019kg、イソブチルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウム0.17molを含有するトルエン溶液0.35kgを加え、さらに、sec-ブチルリチウム0.077molを加えた。これにメタクリル酸メチル0.52kgを加え、室温で1時間反応させた。引き続き、重合液の内部温度を-25℃に冷却し、アクリル酸n-ブチル1.26kgとアクリル酸ベンジル0.45kgとの混合液を1時間かけて滴下した。続いて、メタクリル酸メチル1.19kgを加え、反応液を室温に戻し、8時間攪拌した。次いで、反応液にメタノールを0.30kg添加して重合を停止した。この重合停止後の反応液を大量のメタノール中に注ぎ、析出した沈殿物を回収し、アクリル系ブロック共重合体(A1)を得た。
【0084】
得られたアクリル系ブロック共重合体(A1)の構造は、重合体ブロック(a1-1)-重合体ブロック(a2)-重合体ブロック(a1-2)からなるトリブロック構造であり、(a1-1):(a2):(a1-2)の質量比は15.2:50.0:34.8、重量平均分子量(Mw)は61,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.14であった。評価結果を表1に示す。
【0085】
《製造例2》[アクリル系ブロック共重合体(A2)の合成]
アクリル酸n-ブチルを1.69kgに変更し、アクリル酸ベンジルを添加しないこと以外は、製造例1と同じ方法によって、アクリル系ブロック共重合体(A2)を得た。
【0086】
得られたアクリル系ブロック共重合体(A2)の構造は、重合体ブロック(a1-1)-重合体ブロック(a2)-重合体ブロック(a1-2)からなるトリブロック構造であり、(a1-1):(a2):(a1-2)の質量比は15.0:50.5:34.5、重量平均分子量(Mw)は61,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.14であった。評価結果を表1に示す。
【0087】
《製造例3》[アクリル系ブロック共重合体(A3)の合成]
20リットルの反応槽内部を脱気し、窒素で置換した後、室温にて乾燥トルエン10.29kg、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.019kg、イソブチルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウム0.17molを含有するトルエン溶液0.35kgを加え、さらに、sec-ブチルリチウム0.077molを加えた。これにメタクリル酸メチル0.50kgを加え、室温で1時間反応させた。引き続き、重合液の内部温度を-25℃に冷却し、アクリル酸n-ブチル2.09kgを1時間かけて滴下した。続いて、メタクリル酸メチル0.82kgを加え、反応液を室温に戻し、8時間攪拌した。次いで、反応液にメタノールを0.30kg添加して重合を停止した。この重合停止後の反応液を大量のメタノール中に注ぎ、析出した沈殿物を回収し、アクリル系ブロック共重合体(A3)を得た。
【0088】
得られたアクリル系ブロック共重合体(A3)の構造は、重合体ブロック(a1-1)-重合体ブロック(a2)-重合体ブロック(a1-2)からなるトリブロック構造であり、(a1-1):(a2):(a1-2)の質量比は14.7:61.2:24.1、重量平均分子量(Mw)は65,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.09であった。評価結果を表1に示す。
【0089】
【0090】
<光拡散剤(B)>
実施例および比較例では、光拡散剤(B)として以下のものを使用した。
(b-1)酸化チタン「JR-1000」テイカ株式会社製(平均粒子径:1.0μm、ルチル型)
(b-2)酸化チタン「JR-301」テイカ株式会社製(平均粒子径:0.3μm、ルチル型)
(b-3)酸化アルミニウム「AL-43M」昭和電工株式会社製(平均粒子径:1.5μm)
(b-4)ポリスチレン「テクポリマー XX-147D」積水化成品工業株式会社製(平均粒子径:4μm)
(b-5)ポリスチレン「テクポリマー SBX-6」積水化成品工業株式会社製(平均粒子径:6μm)
(b-6)ポリスチレン「テクポリマー SBX-12」積水化成品工業株式会社製(平均粒子径:12μm)
(b-7)シリコーン樹脂「トスパール 120」モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製(平均粒子径:2μm)
(b-8)シリコーン樹脂「トスパール 2000B」モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製(平均粒子径:6μm)
【0091】
<酸化防止剤(C)>
実施例および比較例では、酸化防止剤(C)として以下のものを使用した。
(c-1)ホスファイト系化合物「アデカスタブPEP36/36A」株式会社ADEKA製
【0092】
<着色剤(D)>
実施例では、着色剤(D)として以下のものを使用した。
(d-1)青色顔料「BPA-5500A」日本ピグメント株式会社製(最大吸収波長:600nm)
(d-2)紫色顔料「TV-4M」日本ピグメント株式会社製(最大吸収波長:520nm)
【0093】
《実施例1、2、7~11》
上記製造例1~3で得られたアクリル系ブロック共重合体(A1~A3)、上記光拡散剤(B)、上記酸化防止剤(C)および上記着色剤(D)を下記の表2に示す配合割合で、シリンダー温度200℃の二軸押出機により溶融混練したのち、押出し、切断することによって、樹脂組成物のペレットを作製した。この樹脂組成物の評価結果を表2に示す。
【0094】
《比較例1~10》
上記製造例1で得られたアクリル系ブロック共重合体(A1)と、上記光拡散剤(B)および上記酸化防止剤(C)を下記の表2に示す配合割合で、シリンダー温度200℃の二軸押出機により溶融混練したのち、押出し、切断することによって、樹脂組成物のペレットを作製した。この樹脂組成物の評価結果を表2に示す。
【0095】
【0096】
表2の結果から、平均粒子径が1.0μmであるルチル型酸化チタン(b-1)を含む樹脂組成物は、高い透明性と導光性を維持したまま、優れた発光性を示すことがわかる(実施例1、2、7~11)。実施例1、2は特に優れている。
これに対して、光拡散剤(B)を含まない樹脂組成物は、発光性に劣ることがわかる(比較例1)。また、平均粒子径が0.3μmである酸化チタン(b-2)を含む樹脂組成物は、透明性に劣り、導光性も低いことがわかる(比較例2)。酸化チタン以外の光拡散剤(B)を含む樹脂組成物は、発光性に劣り、黄色度も高く、品位に劣ることがわかる(比較例3~10)。
【0097】
《実施例3~6、12,13》
上記製造例1~3で得られたアクリル系ブロック共重合体(A1~A3)、上記光拡散剤(B)および上記酸化防止剤(C)を下記の表3に示す配合割合で、シリンダー温度200℃の二軸押出機により溶融混練したのち、押出し、切断することによって、樹脂組成物のペレットを作製した。この樹脂組成物の評価結果を上記した比較例1の場合の結果とともに表3に示す。
【0098】
《比較例11~13》
上記製造例1で得られたアクリル系ブロック共重合体(A1)、上記光拡散剤(B)および上記酸化防止剤(C)を下記の表3に示す配合割合で、シリンダー温度200℃の二軸押出機により溶融混練したのち、押出し、切断することによって、樹脂組成物のペレットを作製した。この樹脂組成物の評価結果を表3に示す。
【0099】
【0100】
表3の結果から、平均粒子径が1.0μmであるルチル型酸化チタン(b-1)を0.5~10ppm(質量基準)で含む樹脂組成物は、高い発光輝度を示し、且つ導光させた際の色度変化率が小さいことがわかる。このことから、導光体としてより優れていることがわかる(実施例3~6、12、13)。
これに対して、光拡散剤(B)を含まない樹脂組成物は、発光輝度が低く、色度変化率も大きいことがわかる(比較例1)。また、酸化チタン以外の光拡散剤(B)を含む樹脂組成物は、色度変化率が大きく、性能に劣ることがわかる(比較例11~13)。