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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】アゾベンゼン誘導体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 245/08 20060101AFI20220525BHJP
   C07C 309/14 20060101ALI20220525BHJP
   C07C 303/22 20060101ALI20220525BHJP
   C07C 271/28 20060101ALI20220525BHJP
   C07C 269/04 20060101ALI20220525BHJP
   C07C 269/06 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
C07C245/08 CSP
C07C309/14
C07C303/22
C07C271/28
C07C269/04
C07C269/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019045354
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2019156841
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2018045116
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】小林 修
(72)【発明者】
【氏名】一條 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】平井 憲次
(72)【発明者】
【氏名】藤馬 大亮
(72)【発明者】
【氏名】小関 洋平
【審査官】布川 莉奈
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-019726(JP,A)
【文献】特開昭51-124121(JP,A)
【文献】特開昭49-019179(JP,A)
【文献】Georgiev, Anton et al,Synthesis, structure, spectral properties and DFT quantum chemical calculations of 4-aminoazobenzene dyes. Effect of intramolecular hydrogen bonding on photoisomerization,Spectrochimica Acta, Part A: Molecular and Biomolecular Spectroscopy ,2017年,175,76-91
【文献】Tsutsumi, Naoto et al,Novel nonlinear optical polymers,ACS Symposium Series,1997年,672,151-168,(Photonic and Optoelectronic Polymers)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるアゾベンゼン誘導体。
【化1】
[一般式(1)中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。Rは、水素原子、置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。Rは、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
【請求項2】
一般式(1)のRが水素原子、炭素数1から6の無置換のアルキル基、炭素数2から6の無置換のアシル基又は炭素数2から6の無置換のアルコキシカルボニル基である、請求項1に記載のアゾベンゼン誘導体。
【請求項3】
請求項1に記載の一般式(1)のRが水素原子、4-メトキシベンジル基、2,4-ジメトキシベンジル基、3,4-ジメトキシベンジル基、2-ナフチルメチル基、ソジオオキシスルホニルメチル基又はtert-ブチルオキシカルボニル基である、請求項1又は2に記載のアゾベンゼン誘導体。
【請求項4】
請求項1に記載の一般式(1)のRがニトロ基又はtert-ブチルオキシカルボニルアミノ基である、請求項1から3のいずれか一項に記載のアゾベンゼン誘導体。
【請求項5】
下記一般式(2a)で示されるベンゼンジアゾニウム塩と、下記一般式(3a)で示されるアニリン誘導体とを反応させることにより、下記一般式(1a)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する、アゾベンゼン誘導体の製造方法。
【化2】
[一般式(2a)中、Xは対イオンを表す。Rは、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
【化3】
[一般式(3a)中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。R2aは、置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。]
【化4】
[一般式(1a)中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。R2aは、置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。Rは、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
【請求項6】
下記一般式(1a)で示されるアゾベンゼン誘導体におけるアミノ基の保護基R2aを脱保護して、下記一般式(1b)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する、アゾベンゼン誘導体の製造方法。
【化5】
[一般式(1a)中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。R2aは、置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。Rは、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
【化6】
[一般式(1b)中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。Rは、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
【請求項7】
下記一般式(2a)で示されるベンゼンジアゾニウム塩と、下記一般式(3a)で示されるアニリン誘導体とを反応させることにより、下記一般式(1a)で示されるアゾベンゼン誘導体を得た後、前記一般式(1a)で示されるアゾベンゼン誘導体におけるアミノ基の保護基R2aを脱保護して、下記一般式(1b)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する、アゾベンゼン誘導体の製造方法。
【化7】
[一般式(2a)中、Xは対イオンを表す。Rは、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
【化8】
[一般式(3a)中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。R2aは、置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。]
【化9】
[一般式(1a)中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。R2aは、置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。Rは、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
【化10】
[一般式(1b)中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。Rは、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
【請求項8】
下記一般式(1ba)で示されるアゾベンゼン誘導体と、下記一般式(5)で示される化合物とを塩基の存在下に反応させることにより、下記一般式(1bb)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する、アゾベンゼン誘導体の製造方法。
【化11】
[一般式(1ba)中、R1aは水素原子を表す。Rは、ニトロ基、アミノ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
【化12】
[一般式(5)中、R1bは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。Lは脱離基を表す。]
【化13】
[一般式(1bb)中、R1bは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。Rは、ニトロ基、アミノ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
【請求項9】
下記一般式(1c)で示されるアゾベンゼン誘導体の2位の水酸基の水素原子を、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基で置換することにより、下記一般式(1d)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する、アゾベンゼン誘導体の製造方法。
【化14】
[一般式(1c)中、R2aは置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。R3aは置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
【化15】
[一般式(1d)中、R1bは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。R2aは置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。R3aは置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
【請求項10】
一般式(1d)のR1bが置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基であり、一般式(1c)で示される化合物と、下記一般式(8)、下記一般式(9)または下記一般式(10)で示される化合物とを反応させることにより、一般式(1d)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する、請求項9に記載のアゾベンゼン誘導体の製造方法。
【化16】
[一般式(8)、一般式(9)および一般式(10)中、R1baは置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアルコキシ基を表す。R1bbは置換されていてもよいアルキル基を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ用ポリイミド光配向膜の製造原料として用いられる4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の製造中間体として有用なアゾベンゼン誘導体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主鎖にアゾベンゼン骨格を有するポリイミド光配向膜は、液晶分子の配向性制御能が高く、熱・光・薬品に対して安定で、高速動作に対応可能な配向膜として注目されている。当該ポリイミド光配向膜は、ベンゼン環上が無置換の4,4’-ジアミノアゾベンゼンやベンゼン環上に種々の置換基を有する4,4’-ジアミノアゾベンゼン類と、テトラカルボン酸二無水物との反応により得られるポリアミック酸を有機溶剤に溶解させ、基板に塗布した後、直線偏光紫外光を照射し、次いで、熱イミド化することにより得られる(例えば、特許文献1~3参照)。
こうしたポリイミド光配向膜の原料となる4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の製造においては、公知の反応を応用して、例えばベンゼンジアゾニウム塩とベンゼン誘導体をジアゾカップリング反応させることでアゾベンゼン骨格を構築し(例えば、特許文献4~6、非特許文献1~6参照)、さらに、アミノ基や所望の置換基をアゾベンゼン骨格の所望の位置に導入するため、ニトロ基のアミノ基への還元反応やアミノ基への保護基の導入・脱離反応など、様々な反応を適宜組み合わせて実施することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-253963号公報
【文献】特開2005-275364号公報
【文献】特開2011-008218号公報
【文献】米国特許公開第2016/122285A1号明細書
【文献】国際公開第2011/024892号
【文献】国際公開第2016/060174号
【非特許文献】
【0004】
【文献】Dyes and Pigments, 82(3), 347-352; 2009
【文献】Journal of Enzyme Inhibition and Medicinal Chemistry, 31(6), 1162-1169; 2016
【文献】Synthetic Metals, 206, 84-91; 2015
【文献】Chemical Communications (Cambridge,United Kingdom), 50(93), 14613-14615; 2014
【文献】Journal of the American Chemical Society, 135(26), 9777-9784; 2013
【文献】Bioconjugate Chemistry, 27(3), 509-514; 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、4,4’-ジアミノアゾベンゼン類は、ベンゼンジアゾニウム塩とベンゼン誘導体のジアゾカップリング反応によるアゾベンゼン骨格の構築と、ニトロ基のアミノ基への還元反応やアミノ基への保護基の導入・脱離反応などを組み合わせて製造される。
しかしながら、アゾベンゼン類のうちで合成方法が検討されているのは、アゾ基(-NH=NH-)の1,2位に結合している2つベンゼン環の置換基の種類や位置が等しい対称構造の化合物であり、2つのベンゼン環の置換基の種類や置換位置が異なる化合物(非対称アゾベンゼン)については、合成方法を検討した報告例が存在しないのが実情である。
【0006】
このような状況の下、本発明者らは、ポリイミド光配向膜の原料として、一方のベンゼン環の2位にヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、アシルオキシメチル基又はアルコキシカルボニルオキシメチル基を有する4,4’-ジアミノアゾベンゼン類(以下では、これらを総称して「2-置換4,4’-ジアミノアゾベンゼン類」と言う)に着目した。そして、その化合物を、簡便な手法により、高い純度で効率よく生成しうる中間体を見出すこと、さらに、その中間体を、簡便な手法により、効率よく製造しうる製造方法を提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、一方のベンゼン環の2位にヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、アシルオキシメチル基又はアルコキシカルボニルオキシメチル基を有するとともに、その4位にアミノ基又は特定の保護基で保護された置換アミノ基を有し、また、他方のベンゼン環の4’位にニトロ基又は特定の保護基で保護された置換アミノ基を有するアゾベンゼン誘導体を中間体として用いることにより、目的の2-置換4,4’-ジアミノアゾベンゼン類を、簡便な手法により、高い純度で収率よく生成できるとの知見を得るに至った。さらに、このアゾベンゼン誘導体は、特定のベンゼンジアゾニウム塩と特定のアニリン誘導体とのジアゾカップリング反応と、必要に応じて脱保護反応や還元反応を行うことにより、簡便な手法で効率よく製造できることも見出した。本発明はこうした知見に基づいて提案されたものであり、具体的に以下の構成を有する。
【0008】
[1] 下記一般式(1)で示されるアゾベンゼン誘導体。
【化1】
[一般式(1)中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。Rは、水素原子、置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。Rは、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
[2] 一般式(1)のRが水素原子、炭素数1から6の無置換のアルキル基、炭素数2から6の無置換のアシル基又は炭素数2から6の無置換のアルコキシカルボニル基である、[1]に記載のアゾベンゼン誘導体。
[3] 一般式(1)のRが水素原子、4-メトキシベンジル基、2,4-ジメトキシベンジル基、3,4-ジメトキシベンジル基、2-ナフチルメチル基、ソジオオキシスルホニルメチル基又はtert-ブチルオキシカルボニル基である、[1]又は[2]に記載のアゾベンゼン誘導体。
[4] 一般式(1)のRがニトロ基又はtert-ブチルオキシカルボニルアミノ基である、[1]から[3]のいずれか一項に記載のアゾベンゼン誘導体。
[5] 下記一般式(2a)で示されるベンゼンジアゾニウム塩と、下記一般式(3a)で示されるアニリン誘導体とを反応させることにより、下記一般式(1a)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する、アゾベンゼン誘導体の製造方法。
【化2】
[一般式(2a)中、Xは対イオンを表す。Rは、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
【化3】
[一般式(3a)中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。R2aは、置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。]
【化4】
[一般式(1a)中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。R2aは、置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。Rは、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
[6] 下記一般式(1a)で示されるアゾベンゼン誘導体におけるアミノ基の保護基R2aを脱保護して、下記一般式(1b)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する、アゾベンゼン誘導体の製造方法。
【化5】
[一般式(1a)中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。R2aは、置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。Rは、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
【化6】
[一般式(1b)中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。Rは、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
[7] 下記一般式(2a)で示されるベンゼンジアゾニウム塩と、下記一般式(3a)で示されるアニリン誘導体とを反応させることにより、下記一般式(1a)で示されるアゾベンゼン誘導体を得た後、前記一般式(1a)で示されるアゾベンゼン誘導体におけるアミノ基の保護基R2aを脱保護して、下記一般式(1b)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する、アゾベンゼン誘導体の製造方法。
【化7】
[一般式(2a)中、Xは対イオンを表す。Rは、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
【化8】
[一般式(3a)中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。R2aは、置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。]
【化9】
[一般式(1a)中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。R2aは、置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。Rは、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
【化10】
[一般式(1b)中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。Rは、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
[8] 下記一般式(1ba)で示されるアゾベンゼン誘導体と、下記一般式(5)で示される化合物とを塩基の存在下に反応させることにより、下記一般式(1bb)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する、アゾベンゼン誘導体の製造方法。
【化11】
[一般式(1ba)中、R1aは水素原子を表す。Rは、ニトロ基、アミノ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
【化12】
[一般式(5)中、R1bは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。Lは脱離基を表す。]
【化13】
[一般式(1bb)中、R1bは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。Rは、ニトロ基、アミノ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
[9] 下記一般式(1c)で示されるアゾベンゼン誘導体の2位の水酸基の水素原子を、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基で置換することにより、下記一般式(1d)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する、アゾベンゼン誘導体の製造方法。
【化14】
[一般式(1c)中、R2aは置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。R3aは置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
【化15】
[一般式(1d)中、R1bは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。R2aは置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。R3aは置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。]
[10] 一般式(1d)のR1bが置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基であり、一般式(1c)で示される化合物と、下記一般式(8)、下記一般式(9)または下記一般式(10)で示される化合物とを反応させることにより、一般式(1d)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する、[9]に記載のアゾベンゼン誘導体の製造方法。
【化16】
[一般式(8)、一般式(9)および一般式(10)中、R1baは置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアルコキシ基を表す。R1bbは置換されていてもよいアルキル基を表す。]
【発明の効果】
【0009】
本発明のアゾベンゼン誘導体は、液晶ディスプレイ用ポリイミド光配向膜の製造原料として用いられる2-置換4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の製造中間体として有用である。また、本発明のアゾベンゼン誘導体は、特定のベンゼンジアゾニウム塩と特定のアニリン誘導体との反応と、必要に応じて脱保護反応や還元反応を行うことにより、簡便な手法により、効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」又は「から」を用いて表される数値範囲は「~」又は「から」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
アゾベンゼン誘導体
本発明のアゾベンゼン誘導体は一般式(1)で示される構造を有するものである。
【0012】
【化17】
【0013】
本発明の一般式(1)で示されるアゾベンゼン誘導体において、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。好ましくは、Rは、水素原子、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子や炭素数1~4のアルコキシ基で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよいアシル基又はフッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。
におけるアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の好ましい炭素数は1~6であり、より好ましくは1~4であり、さらに好ましくは1~3である。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1-メチルペンチル基、1-エチルブチル基等を例示することができる。Rにおけるアルキル基はハロゲン原子で置換されていてもよい。アルキル基に置換しうるハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、フッ素原子であることが好ましい。ハロゲン原子で置換されたアルキル基の具体例として、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、3-フルオロプロピル基等を例示することができる。Rにおけるアルキル基は、炭素数1~4のアルコキシ基で置換されていてもよく、ここでいうアルコキシ基は直鎖状、分枝状のいずれであってもよい。アルコキシ基の具体例として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等を例示することができる。Rにおけるアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
におけるアシル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。また、ここでいうアシル基は、アルキル基がカルボニル基に結合した構造と、アリール基がカルボニル基に結合した構造をともに含む概念である。Rにおけるアシル基は、フッ素原子又は塩素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい。アシル基の好ましい炭素数は2~7であり、より好ましい炭素数は2~6であり、さらに好ましくは2~4であり、さらにより好ましくは2又は3である。アシル基の具体例として、メタノイル基(ホルミル基)、エタノイル基(アセチル基)、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、プロパノイル基(プロピオニル基)、ブタノイル基(ブチリル基)、イソブタノイル基(イソブチリル基)、ペンタノイル基(バレリル基)、イソペンタノイル基(イソバレリル基)、sec-ペンタノイル基(2-メチルブチリル基)、tert-ペンタノイル基(ピバロイル基)、ヘキサノイル基、イソヘキサノイル基(4-メチルペンタノイル基)、2,2-ジメチルブタノイル基、3,3-ジメチルブタノイル基、2-メチルペンタノイル基、2-エチルブタノイル基、ベンゾイル基、2-フルオロフェニルカルボニル基、4-フルオロフェニルカルボニル基、2,4-ジフルオロフェニルカルボニル基、2,6-ジフルオロフェニルカルボニル基、2,4,6-トリフルオロフェニルカルボニル基、パーフルオロフェニルカルボニル基等を例示することができ、エタノイル基(アセチル基)、プロパノイル基(プロピオニル基)が好ましい。
におけるアルコキシカルボニル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。Rにおけるアルコキシカルボニル基は、フッ素原子又は塩素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい。アルコキシカルボニル基の好ましい炭素数は2~6であり、より好ましくは2~4であり、さらに好ましくは2又は3である。アルコキシカルボニル基の具体例として、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec-ブチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、tert-ペンチルオキシカルボニル基、1-メチルブチルオキシカルボニル基、1-エチルプロピルオキシカルボニル基、2,2-ジトリフルオロエチルオキシカルボニル基、2,2,2-トリフルオロエチルオキシカルボニル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチルオキシカルボニル基等を例示することができ、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が好ましい。
最終的に製造される光配向膜の性能を良好にできる点から、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、エタノイル基(アセチル基)、エトキシカルボニル基、水素原子が好ましい。
【0014】
は、水素原子、置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。好ましくは、Rは、水素原子、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子や炭素数1~4のアルキル基や炭素数1~4のアルコキシ基で置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又はフッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。
におけるアリールメチル基のアリール部分は、単環であっても縮合環であってもよい。アリール部分の好ましい炭素数は6~22であり、より好ましくは6~14であり、さらに好ましくは6~10である。アリール部分の具体例として、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等を例示することができる。Rにおけるアリールメチル基はハロゲン原子で置換されていてもよく、ここでいうハロゲン原子としてフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、フッ素原子、塩素原子であることが好ましい。Rにおけるアリールメチル基は炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよく、ここでいうアルキル基は直鎖状、分枝状のいずれであってもよい。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等を例示することができる。Rにおけるアリールメチル基は炭素数1~4のアルコキシ基で置換されていてもよく、ここでいうアルコキシ基は直鎖状、分枝状のいずれであってもよい。アルコキシ基の具体例として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等を例示することができる。アリールメチル基の具体例として、4-メトキシベンジル基、2,4-ジメトキシベンジル基、3,4-ジメトキシベンジル基、2-ナフチルメチル基等を例示することができる。
がとることができるアルカリ金属オキシスルホニルメチル基のアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムを好ましく例示することができる。好ましいのは、ソジオオキシスルホニルメチル基である。
におけるアルコキシカルボニル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよいが、分枝状であることが好ましい。Rにおけるアルコキシカルボニル基は、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子等で置換されていてもよい。アルコキシカルボニル基の好ましい炭素数は2~6であり、より好ましくは4~6であり、さらに好ましくは4又は5である。アルコキシカルボニル基の具体例については、Rにおけるアルコキシカルボニル基の具体例を参照することができる。Rにおけるアルコキシカルボニル基は、イソプロピルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec-ブチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基が好ましく、tert-ブチルオキシカルボニル基が特に好ましい。
は、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。好ましくは、Rは、ニトロ基、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子や炭素数1~4のアルキル基や炭素数1~4のアルコキシ基で置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又はハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。Rのアミノ基におけるアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又はアルコキシカルボニル基、及びこれらの好ましい置換基の説明と好ましい範囲、具体例については、Rについての対応する記載を参照することができる。
【0015】
がとりうるフッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基で置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基及びフッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、並びに、Rのアミノ基におけるフッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子や炭素数1~4のアルキル基や炭素数1~4のアルコキシ基で置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基及びフッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシカルボニル基は、アゾベンゼン誘導体を、ジアゾカップリング反応等を用いて合成する際や、2位のヒドロキシ基の水素原子をアルキル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基で置換する際、アミノ基を保護する保護基として機能する。
以下の説明では、「置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基及び置換されていてもよいアルコキシカルボニル基」を「所定の保護基」といい、「置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基及び置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基」を「所定の保護基で保護されたアミノ基」ということがある。
【0016】
~Rの好ましい組み合わせとして、Rが水素原子又は置換されていてもよいアルキル基であり、Rが水素原子、置換されていてもよいアリールメチル基又はアルカリ金属オキシスルホニルメチル基であり、Rがニトロ基である組み合わせや、Rが置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基であり、Rが置換されていてもよいアルコキシカルボニル基であり、Rが置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基である組み合わせを挙げることができる。
【0017】
以下において、一般式(1)で示されるアゾベンゼン誘導体の具体例を例示する。ただし、本発明において用いることができる一般式(1)で示されるアゾベンゼン誘導体はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【化18】
【0018】
[アゾベンゼン誘導体の用途]
一般式(1)で表されるアゾベンゼン誘導体を中間体として4,4’-ジアミノアゾベンゼン類を合成することにより、光配向膜の原料として有用な、2位がヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、アシルオキシメチル基又はアルコキシカルボニルオキシメチル基で置換された4,4’-ジアミノアゾベンゼン類(総称して「2-置換4,4’-ジアミノアゾベンゼン類」と言う)を、簡便な手法により、高い純度で効率よく製造することができる。そのため、一般式(1)で表されるアゾベンゼン誘導体は、2-置換4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の製造中間体として有用である。
具体的には、例えば、公知の反応を単純に応用してアゾベンゼン骨格は構築し、ニトロ基のアミノ基への還元反応やアミノ基への保護基の導入・脱離反応などを組み合わせて、2-置換4,4’-ジアミノアゾベンゼン類のような非対称アゾベンゼンを合成しようとした場合、工程数が多くなり、工程毎の原料及び生成物の損失、不純物の混入のために、純度や収率が低くなる傾向がある。
これに対して、本発明においては、例えば一般式(1)で表されるアゾベンゼン誘導体のうち、
(I) Rが置換されていてもよいアルキル基で、Rが水素原子で、Rがニトロ基であるもの(例えば、アゾベンゼン誘導体A1~A5)は、Rのニトロ基を還元することにより4,4’-ジアミノ-2-(アルコキシメチル)アゾベンゼン類に変換することができる。また、
(II) 一般式(1)において、Rが置換されていてもよいアルキル基で、Rが所定の保護基で、Rがニトロ基であるもの(例えば、アゾベンゼン誘導体B1~B6)は、Rを構成する基を水素原子に変換(脱保護)した後、Rのニトロ基を還元することにより4,4’-ジアミノ-2-(アルコキシメチル)アゾベンゼン類に変換することができる。
(III) 一般式(1)において、R及びRがともに水素原子で、Rがニトロ基であるもの(例えば、アゾベンゼン誘導体C1)では、Rのニトロ基を還元してアミノ基に変換することにより4,4’-ジアミノ-2-(ヒドロキシメチル)アゾベンゼン類を得ることができ、そのRの水素原子をアルキル基で置換(水酸基をアルキル化)することにより4,4’-ジアミノ-2-(アルコキシメチル)アゾベンゼン類を生成することができる。
(IV) 一般式(1)において、Rが水素原子で、Rが所定の保護基、Rがニトロ基であるもの(例えば、アゾベンゼン誘導体D1、D2)では、Rを構成する基を水素原子に変換(脱保護)し、Rを構成するニトロ基を還元してアミノ基に変換することにより4,4’-ジアミノ-2-(ヒドロキシメチル)アゾベンゼン類を得ることができ、そのRの水素原子をアルキル基で置換(水酸基をアルキル化)することにより4,4’-ジアミノ-2-(アルコキシメチル)アゾベンゼン類を生成することができる。
(V) 一般式(1)において、Rが置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基で、Rが所定の保護基、Rが所定の保護基で保護されたアミノ基であるもの(例えば、アゾベンゼン誘導体E1、E2)では、Rを構成する基を水素原子に変換(脱保護)するとともにRを脱保護してアミノ基に変換することにより、4,4’-ジアミノ-2-(アシルオキシメチル)アゾベンゼン類又は4,4’-ジアミノ-2-(アルコキシカルボニルオキシメチル)アゾベンゼン類を得ることができる。
また、上記の(I)、(II)の欄に記載した方法で、Rが置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基であるものを用いた場合には、各欄に記載したのと同様の操作により、4,4’-ジアミノ-2-(アシルオキシメチル)アゾベンゼン類又は4,4’-ジアミノ-2-(アルコキシカルボニルオキシメチル)アゾベンゼン類を得ることができる。
また、上記の(III)、(IV)の欄に記載した方法で、Rの水素原子と置き換える置換基をアシル基又はアルコキシカルボニル基に変えた場合には、各欄に記載したのと同様の操作により、4,4’-ジアミノ-2-(アシルオキシメチル)アゾベンゼン類又は4,4’-ジアミノ-2-(アルコキシカルボニルオキシメチル)アゾベンゼン類を得ることができる。
また、上記の(V)の欄に記載した方法で、Rが置換されていてもよいアルキル基であるものを用いた場合には、この欄に記載したのと同様の操作により、4,4’-ジアミノ-2-(アルコキシメチル)アゾベンゼン類を得ることができる。
すなわち、いずれのアゾベンゼン誘導体を中間体として用いる場合でも、比較的少ない工程数で、目的の2-置換4,4’-ジアミノアゾベンゼン類を製造することができるため、高い純度と高い収率を実現することができる。
なお、本発明のアゾベンゼン誘導体を中間体として用いる2-置換4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の製造方法の詳細については、後掲の4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の製造方法の欄において説明する。ここでは、代表として、一般式(1)のRが水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基で、Rが水素原子、Rがニトロ基であるアゾベンゼン誘導体を用いる場合、および、Rが置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基で、Rが所定の保護基、Rが所定の保護基で保護されたアミノ基であるアゾベンゼン誘導体を用いる場合を例にしているが、その他のアゾベンゼン誘導体(Rが所定の保護基、Rがニトロ基であるアゾベンゼン誘導体)を中間体として用いる場合には、4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の製造方法の欄に記載された方法とアゾベンゼン誘導体の第1製造方法におけるアミノ基の脱保護工程(工程1-2)についての説明を参照することができる。
また、本発明のアゾベンゼン誘導体を中間体として製造される2-置換4,4’-ジアミノアゾベンゼン類は、光配向膜の原料として有用である。すなわち、2-置換4,4’-ジアミノアゾベンゼン類を原料として製造されたポリアミック酸溶液の塗膜は、直線偏光紫外光の照射により配向性を付与した後、加熱・焼成すると、そのベンゼン環の2位に置換しているアルコキシ基、アシル基又はアルコキシカルボニル基がアゾ基と反応して環状構造を形成し、アゾベンゼン基を含まない光配向膜となる。こうした形成された光配向膜は、アゾベンゼン基を含まないため、例えば液晶表示素子の液晶配向膜に用いた場合には、長時間強い光に晒されても液晶表示素子の電圧保持率を低下させず、高い表示品位を保持させることができる。
4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の製造に供するアゾベンゼン誘導体の純度は、目的の4,4’-ジアミノアゾベンゼン類を高純度で得るとともに、最終的に得られる光配向膜の品質向上の点から、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上である。
【0019】
アゾベンゼン誘導体の製造方法
次に、本発明のアゾベンゼン誘導体の製造方法(第1製造方法~第4製造方法)について詳細に説明する。本発明の一般式(1)で示されるアゾベンゼン誘導体は、本発明のアゾベンゼン誘導体の製造方法を用いることにより、簡便な手法で効率よく製造することができる。
【0020】
[アゾベンゼン誘導体の第1製造方法]
アゾベンゼン誘導体の第1製造方法では、本発明の一般式(1)で示されるアゾベンゼン誘導体のうち、Rが置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基(所定の保護基)である化合物、すなわち下記一般式(1a)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する。具体的には、下記一般式(2a)で示されるベンゼンジアゾニウム塩と下記一般式(3a)で示されるアニリン誘導体とを反応させる工程(工程1-1)により、一般式(1a)で示されるアゾベンゼン誘導体(1a)を製造する。
【0021】
【化19】
【0022】
一般式(2a)で示されるベンゼンジアゾニウム塩において、Xは対イオンを表す。Xで表される対イオンとしては、Cl、Brなどのハロゲン化物イオン、硫酸水素イオン(HSO )、硝酸イオン(NO )、過塩素酸イオン(ClO )、テトラフルオロほう酸イオン(BF )又はヘキサフルオロリン酸イオン(PF )などを例示することができる。ベンゼンジアゾニウム塩(2a)を簡便に調製することができる点で、XはCl、Brなどのハロゲン化物イオンや硫酸水素イオン(HSO )が好ましい。
一般式(3a)で示されるアニリン誘導体及び一般式(1a)で示されるアゾベンゼン誘導体において、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表し、R2aは、置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。
一般式(2a)で示されるベンゼンジアゾニウム塩及び一般式(1a)で示されるアゾベンゼン誘導体において、Rは、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。
ここで、Rが表す各基の説明と好ましい範囲、具体例については、一般式(1)のRについての対応する記載を参照することができ、R2aが表す各基の説明と好ましい範囲、具体例については、一般式(1)のRについての対応する記載を参照することができ、Rが表す各基の説明と好ましい範囲、具体例については、一般式(1)のRについての対応する記載を参照することができる。
【0023】
一般式(2a)で示されるベンゼンジアゾニウム塩と一般式(3a)で表されるアニリン誘導体との反応(工程1-1の反応)はジアゾカップリング反応であり、ジアゾカップリング反応における一般的な反応条件を採用して行うことができる。例えば酢酸ナトリウムや酢酸カリウムのようなカルボン酸塩の存在下で反応を実施することにより、目的物である一般式(1a)で示されるアゾベンゼン誘導体を収率よく得ることができる。ここで、カルボン酸塩の使用量に特に制限されず、ジアゾカップリング反応で通常用いられる使用量を採用することができる。
工程1-1の反応は溶媒中で実施することができる。溶媒としては、水、メタノールやエタノール等のアルコール系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性溶媒又はこれらの混合溶媒を用いることができる。
工程1-1の反応温度は0~50℃の範囲から適宜選択することができる。反応時間は、反応温度等の他の条件によっても異なるが、1~5時間が適当である。
【0024】
工程1-1の反応により得られたアゾベンゼン誘導体は、精製せずに次の反応(例えば、下記の第2製造方法)に供してもよいし、精製してから次の反応に供してもよい。精製方法として、抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の方法を挙げることができる。
【0025】
ここで、工程1-1の原料に用いる一般式(2a)で示されるベンゼンジアゾニウム塩は、対応する4-ニトロアニリンを原料として、ジアゾニウム塩の一般的な合成方法により得ることができる。ジアゾニウム塩の合成方法については、例えば、Journal of Heterocyclic Chemistry,42,781-786;2005等に記載された方法を参照することができる。一般式(3a)で示されるアニリン誘導体(3a)の合成方法については、下記の<アニリン誘導体の製造方法>の欄を参照することができる。
【0026】
[アゾベンゼン誘導体の第2製造方法]
アゾベンゼン誘導体の第2製造方法では、本発明の一般式(1)で示されるアゾベンゼン誘導体のうち、Rが水素原子である化合物、すなわち下記一般式(1b)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する。具体的には、下記一般式(1a)で示されるアゾベンゼン誘導体のアミノ基の保護基R2aを水素原子に変換(脱保護)する工程(工程1-2)により、下記一般式(1b)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する。
【0027】
【化20】
【0028】
一般式(1a)のR、R2a及びRは、アゾベンゼン誘導体の第1製造方法における一般式(1a)のR、R2a及びRとそれぞれ同義であり、一般式(1b)のR及びRは、第1製造方法における一般式(1a)のR及びRとそれぞれ同義である。すなわち、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表し、R2aは、置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表し、Rは、ニトロ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。それらの説明と好ましい範囲、具体例については、アゾベンゼン誘導体の第1製造方法の一般式(1a)についての対応する記載を参照することができる。
一般式(1a)で示されるアゾベンゼン誘導体は、上記の第1製造方法で得たアゾベンゼン誘導体であってもよいし、その他の方法で得たアゾベンゼン誘導体であってもよいが、第1製造方法で得たアゾベンゼン誘導体であることが好ましい。
【0029】
工程1-2の反応は、アミノ基の保護基R2aに適した脱保護法を利用することにより、目的の一般式(1b)で示されるアゾベンゼン誘導体を収率よく製造することができる。
脱保護法としては、アミノ基の保護基R2aが、置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基の場合には、加水素化分解(例えばH、Pd/C)による脱保護、酸化条件下における脱保護、強酸性条件下における脱保護などを挙げることができる。中でも、酸化条件下における脱保護が好ましく、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(DDQ)、p-クロラニル、o-クロラニル等のキノン系酸化試薬や硝酸二アンモニウムセリウム(IV)等の酸化剤を用いる温和な酸化条件下における脱保護が、一般式(1a)で示されるアゾベンゼン誘導体の他の置換基に害を及ぼさないことから、より好ましい。また、強酸性条件下における脱保護には、トリフルオロ酢酸(TFA)や塩酸を用いることができる。
これらの加水素化分解、酸化条件、又は強酸性条件による脱保護反応は有機溶媒中で実施することができる。有機溶媒としては、反応に害を及ぼさない溶媒であれば使用することができ、具体的にはジクロロメタンやクロロホルム等のハロゲン系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒を例示することができる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
この脱保護反応での反応温度は、室温から60℃の範囲から適宜選択することができ、これにより、目的物である一般式(1b)で示されるアゾベンゼン誘導体を収率よく得ることができる。反応時間は、反応温度等の他の条件によっても異なるが、2~48時間が適当である。
【0030】
また、アミノ基の保護基R2aがソジオオキシスルホニルメチル基の場合には、アルカリ水溶液中で加水分解することにより、容易に保護基R2aを脱保護することができる。脱保護に用いるアルカリとしては、アルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物を例示することができる。中でも、安価で、且つ、一般式(1b)で示されるアゾベンゼン誘導体を収率良く得られる点で、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を用いることが好ましい。
アルカリ加水分解による脱保護反応は水溶液中で実施することができるが、メタノールやエタノール、THFなどの水と均一に混合する有機溶媒とアルカリ水溶液との混合溶媒中や、トルエンやキシレン、ジクロロメタンなどの水と混合しない二層系中で実施してもよい。
この脱保護反応での反応温度は、室温から溶媒還流温度の範囲から適宜選択することができ、これにより、目的物である一般式(1b)で示されるアゾベンゼン誘導体を収率よく得ることができる。反応時間は、反応温度等の他の条件によっても異なるが、1~3時間が適当である。
【0031】
また、アミノ基の保護基R2aがアルコキシカルボニル基の場合には、酸処理することにより、容易に保護基R2aを脱保護することができる。脱保護に用いる酸としては、TFAや塩酸を例示することができる。
酸処理による脱保護反応は有機溶媒中で実施することができる。有機溶媒としては、反応に害を及ぼさない溶媒であれば使用することができ、具体的にはジクロロメタンやクロロホルム等のハロゲン系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒を例示することができる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
この脱保護反応での反応温度は、室温から溶媒の加熱還流温度の範囲から適宜選択することができ、これにより、目的物である一般式(1b)で示されるアゾベンゼン誘導体を収率よく得ることができる。反応時間は、反応温度等の他の条件によっても異なるが、2~24時間が適当である。
【0032】
[アゾベンゼン誘導体の第3製造方法]
アゾベンゼン誘導体の第3製造方法では、本発明の一般式(1)で示されるアゾベンゼン誘導体のうち、Rが置換されていてもよいアルキル基であってRが水素原子である化合物、すなわち下記一般式(1bb)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する。具体的には、下記一般式(1ba)で示されるアゾベンゼン誘導体と下記一般式(5)で示される化合物とを、塩基の存在下で反応させる工程(工程2-1)により、下記一般式(1bb)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する。
【0033】
【化21】
【0034】
一般式(1ba)のR1aは水素原子を表す。
一般式(5)及び一般式(1bb)のR1bは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。
一般式(1ba)及び一般式(1bb)のRはニトロ基、アミノ基、置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。
ここで、R1bが表す各基の説明と好ましい範囲、具体例については、一般式(1)のRについての対応する記載を参照することができ、Rが表す各基の説明と好ましい範囲、具体例については、一般式(1)のRについての対応する記載を参照することができる。
一般式(5)のLは脱離基を表す。一般式(5)のLで表される脱離基としては、臭素原子やヨウ素原子などのハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基やトリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基などのスルホニルオキシ基を例示することができる。
【0035】
一般式(1ba)で示されるアゾベンゼン誘導体と一般式(5)で示される化合物の反応(工程2-1)は塩基の存在下に実施する。塩基としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、水素化ナトリウムなどのアルカリ金属水素化物、ナトリウムメトキシドやナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、水酸化テトラブチルアンモニウムなどを例示することができる。塩基の使用量に特に制限はなく、原料としての一般式(1ba)で示されるアゾベンゼン誘導体に対して1~5モル等量用いればよい。
工程2-1の反応は溶媒中で実施することができる。溶媒としては、反応に害を及ぼさない溶媒であれば使用することができ、例えば、ジエチルエーテルやジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒、ベンゼンやトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)やN,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水などを例示することができる。これらの溶媒は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
工程2-1の反応温度は、室温から使用する溶媒の還流温度の範囲から適宜選択することができる。反応時間は、反応温度等の他の条件によっても異なるが、1~24時間が適当である。
【0036】
[アゾベンゼン誘導体の第4製造方法]
アゾベンゼン誘導体の第4製造方法では、本発明の一般式(1)で示されるアゾベンゼン誘導体のうち、Rが水素原子、Rが置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基(所定の保護基)、Rが置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基(所定の保護基で保護されたアミノ基)である化合物、すなわち下記一般式(1c)で示されるアゾベンゼン誘導体と、Rが置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基であり、Rが所定の保護基、Rが所定の保護基で保護されたアミノ基である化合物、すなわち下記一般式(1d)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する。具体的には、下記式(4c)で表される4,4’-ジアミノ-2-(ヒドロキシメチル)-アゾベンゼンのアミノ基に所定の保護基を導入して下記一般式(1c)で表される化合物を製造する工程(工程7-1)と、下記一般式(1c)で示される化合物のヒドロキシメチル基の水素原子を、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基で置換する工程(工程7-2)により、下記一般式(1d)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する。
【0037】
【化22】
【0038】
一般式(1d)のR1bは、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。
一般式(1c)及び一般式(1d)のR2aは置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。
一般式(1c)及び一般式(1d)のR3aは置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。
ここで、R1bが表す各基の説明と好ましい範囲、具体例については、一般式(1)のRについての対応する記載を参照することができ、R2aが表す各基の説明と好ましい範囲、具体例については、一般式(1)のRについての対応する記載を参照することができ、R3aが表す各基の説明と好ましい範囲、具体例については、一般式(1)のRについての対応する記載を参照することができる。
式(4c)で示される4,4’-ジアミノ-2-(ヒドロキシメチル)-アゾベンゼンは、後述の4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の第1製造方法で得たアゾベンゼン誘導体であってもよいし、その他の方法で得たものであってもよいが、後述の4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の第1製造方法で得たものであることが好ましい。
【0039】
工程7-1において、例えば、一般式(1c)のR2aがアルコキシカルボニル基、R3aがアルコキシカルボニルアミノ基であるアゾベンゼン誘導体は、下記式(4c)で表される4,4’-ジアミノ-2-(ヒドロキシメチル)-アゾベンゼンと下記一般式(7)で示される炭酸エステルとを反応させることにより得ることができる。
【0040】
【化23】
【0041】
一般式(7)中、R23aは、置換されていてもよいアルキル基を表す。R23aにおけるアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよいが、分枝状であることが好ましい。アルキル基の好ましい炭素数は1~5であり、より好ましくは3~5であり、さらに好ましくは3又は4である。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基等を例示することができ、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が好ましく、tert-ブチル基が特に好ましい。
【0042】
一般式(4c)で示されるアゾベンゼン誘導体と一般式(7)で示される化合物の反応(工程7-1)はアミノ基の保護である。工程7-1で用いる一般式(7)で示される炭酸エステルの使用量に特に制限はなく、原料としての一般式(4c)で示されるアゾベンゼン誘導体に対して、2~5モル等量用いればよい。
工程7-1の反応は、有機溶媒中で実施することができる。有機溶媒としては、反応に害を及ぼさない溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、ジクロロメタンやクロロホルム等のハロゲン系溶媒、ジオキサン、THF、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ベンゼンやトルエンなどの芳香族有機溶媒、DMFやN,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒を例示することができる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。中でも、一般式(1c)で示されるアゾベンゼン誘導体を収率よく得られる点で、ジオキサン、THF、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒が好ましい。これらの有機溶媒は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
また、工程7-1の反応は、塩基の存在下に反応を促進させることができる。塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミンなどの三級アミン、ピリジン、N,N‐ジメチル‐4‐アミノピリジン(DMAP)等の芳香族アミン、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、水素化ナトリウムなどのアルカリ金属水素化物、ナトリウムメトキシドやナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、水酸化テトラブチルアンモニウムなどを例示することができる。中でも、一般式(1c)で示されるアゾベンゼン誘導体を収率よく得られる点で、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミンなどの三級アミンが望ましい。塩基の使用量に特に制限はなく、一般式(4c)で示されるアゾベンゼン誘導体に対して1~2モル等量用いればよい。
工程7-1の反応温度は、0℃から使用する溶媒の還流温度の範囲から適宜選択することができ、高い収率が得られることから、40から60℃となるように温度制御しながら反応を行うことが好ましい。反応時間は、反応温度等の他の条件によっても異なるが、2~24時間が適当である。
【0043】
工程7-1の反応により得られたアゾベンゼン誘導体は、精製せずに次の反応に供してもよいし、精製してから次の反応に供してもよい。精製方法として、抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の方法を挙げることができる。
工程7-2では、一般式(1c)で示されるアゾベンゼン誘導体の2位の水酸基の水素原子を、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基で置換して一般式(1d)で示されるアゾベンゼン誘導体を製造する。一般式(1d)のR1bがアシル基であるアゾベンゼン誘導体は、一般式(1c)で表されるアゾベンゼン誘導体と下記一般式(8)で示されるカルボン酸無水物又は下記一般式(9)で示されるカルボン酸塩化物との反応により得ることができ、一般式(1d)のR1bがアルコキシカルボニル基であるアゾベンゼン誘導体は、一般式(1c)で示されるアゾベンゼン誘導体と下記一般式(9)で示されるクロロギ酸エステル又は下記一般式(10)で示される炭酸エステルとの反応により得ることができる。
【0044】
【化24】
【0045】
一般式(8)、一般式(9)および一般式(10)中、R1baは置換されていてもよいアルキル基又はアルコキシ基を表す。R1baにおけるアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の好ましい炭素数は1~5であり、より好ましくは1~3であり、さらに好ましくは1又は2である。アルキル基の具体例については、R23aにおけるアルキル基の具体例を参照することができる。R1baにおけるアルキル基は、メチル基、エチル基であることが好ましい。また、工程7-2については、上記のアゾベンゼン誘導体の第3製造方法における工程2-1についての記載も参照することができる。R1baにおけるアルコキシ基の好ましい炭素数は1~5であり、より好ましくは1~3であり、さらに好ましくは1又は2である。R1baにおけるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基であることが好ましい。R1bbは置換されていてもよいアルキル基を表す。R1bbにおけるアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の好ましい炭素数は1~5であり、より好ましくは1~3であり、さらに好ましくは1又は2である。アルキル基の具体例については、R23aにおけるアルキル基の具体例を参照することができる。R1baにおけるアルキル基は、メチル基、エチル基であることが好ましい。
【0046】
一般式(1c)で示されるアゾベンゼン誘導体と一般式(8)、一般式(9)および一般式(10)で示される化合物の反応(工程7-2)はヒドロキシ基のアシル化およびアルコキシカルボニル化である。工程7-2で用いる一般式(8)、一般式(9)および一般式(10)で示されるカルボン酸無水物、カルボン酸塩化物、クロロギ酸エステル、炭酸エステルの使用量に特に制限はなく、原料としての一般式(1c)で示されるアゾベンゼン誘導体に対して、1~3モル等量用いればよい。
工程7-2の反応は、有機溶媒中で実施することができる。有機溶媒としては、反応に害を及ぼさない溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、ジクロロメタンやクロロホルム等のハロゲン系溶媒、ジオキサン、THF、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族有機溶媒、DMFやN,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒を例示することができる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。中でも、一般式(1d)で示されるアゾベンゼン誘導体を収率よく得られる点で、ジオキサン、THF、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒が好ましい。これらの有機溶媒は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
また、工程7-2の反応は、塩基の存在下に行うことがより好ましい。これにより、反応を促進させることができる。塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミンなどの三級アミン、ピリジン、DMAP等の芳香族アミン、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、水素化ナトリウムなどのアルカリ金属水素化物、ナトリウムメトキシドやナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、水酸化テトラブチルアンモニウムなどを例示することができる。中でも、一般式(1d)で示されるアゾベンゼン誘導体を収率よく得られる点で、ピリジンとDMAPを組み合わせ使用するのが望ましい。塩基の使用量に特に制限はなく、一般式(1c)で示されるアゾベンゼン誘導体に対して1~3モル等量用いればよい。
工程7-2の反応温度は、0℃から使用する溶媒の還流温度の範囲から適宜選択することができ、高い収率が得られることから、40から60℃となるように温度制御しながら反応を行うことが好ましい。反応時間は、反応温度等の他の条件によっても異なるが、2~12時間が適当である。
【0047】
工程7-2の反応により得られたアゾベンゼン誘導体は、精製せずに次の反応に供してもよいし、精製してから次の反応に供してもよい。精製方法として、抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の方法を挙げることができる。
【0048】
[アゾベンゼン誘導体の精製]
上記の第1製造方法~第4製造方法で製造されたアゾベンゼン誘導体は高い純度を有するため、精製せずに4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の製造に供してもよいが、必要に応じて更なる精製を行ってもよい。例えば、アゾベンゼン誘導体の製造品に包含される微量の金属を排除することや、製造品の着色を低減する目的で、最終段階又は一連の製造工程の途中の工程で精製を行うことも好ましい。微量の金属を除去する方法としては、水、酸又は塩基性水による洗浄を挙げることができ、特に純水洗浄、希塩酸洗浄、希硫酸洗浄、重曹水洗浄、苛性ソーダ水洗浄等を用いることが好ましい。着色を低減する方法としては、単体又は酸塩の再結晶、カラムクロマトグラフィー、活性炭吸着処理等を挙げることができる。クロマトグラフィーにはシリカゲル、アルミナ、ゼオライト等の吸着剤を用いることが好ましい。さらに、反応により最終的に得られた生成品に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶、活性炭処理などの通常の方法により、精製を行ってもよい。
【0049】
アニリン誘導体の製造方法
次に、上記のアゾベンゼン誘導体の第1製造方法において、一般式(1a)で示されるアゾベンゼン誘導体の製造に用いる一般式(3a)で示されるアニリン誘導体の製造方法について説明する。
【0050】
[アニリン誘導体の第1製造方法]
アニリン誘導体の第1製造方法では、一般式(3a)で示されるアニリン誘導体のうち、R2aが置換されていてもよいアリールメチル基である化合物、すなわち下記一般式(3aa)で示されるアニリン誘導体を製造する。具体的には、下記一般式(3)で示されるアニリン誘導体と、下記一般式(6)で示される芳香族アルデヒドとを反応させることにより、下記一般式(3b)で示されるアニリン誘導体を合成する工程(工程3-1)と、合成した一般式(3b)で示されるアニリン誘導体を還元して一般式(3aa)で示されるアニリン誘導体を製造する工程(工程3-2)を順に行う。
【0051】
【化25】
【0052】
一般式(3)、(3b)及び(3aa)において、Rはアゾベンゼン誘導体の第1製造方法における一般式(1a)のRと同義である。すなわち、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。その説明と好ましい範囲、具体例については、アゾベンゼン誘導体の第1製造方法の一般式(1a)についての対応する記載を参照することができる。
一般式(3b)、(3aa)及び(6)において、R2aaは置換されていてもよいアリールメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。
【0053】
工程3-1の反応は、一般式(3)で示されるアニリン誘導体と一般式(6)で示される芳香族アルデヒドとの縮合反応である。工程3-1で用いる一般式(6)で示される芳香族アルデヒドの使用量に特に制限はなく、原料としての一般式(3)で示されるアニリン誘導体に対して、1~1.5モル等量用いればよい。
工程3-1の反応は、有機溶媒中で実施することができる。有機溶媒としては、反応に害を及ぼさない溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族有機溶媒、メタノール、エタノール又はイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒等を例示することができる。中でも、一般式(3b)で示されるアニリン誘導体を収率よく得られる点で、メタノール、エタノールやイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましい。これらの有機溶媒は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
また、工程3-1の反応は、酸の存在下に行うことがより好ましい。これにより、反応を促進させることができる。酸としては、酢酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸などのカルボン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸、塩酸、硫酸等の鉱酸を例示することができる。
工程3-1の反応温度は、室温から使用する溶媒の還流温度の範囲から適宜選択することができ、高い収率が得られることから、溶媒の還流温度となるように温度制御しながら反応を行うことが好ましい。反応時間は、反応温度等の他の条件によっても異なるが、2~15時間が適当である。
【0054】
工程3-1の反応により得られたアニリン誘導体は、精製せずに次の反応に供してもよいし、精製してから次の反応に供してもよい。精製方法として、抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の方法を挙げることができる。
【0055】
工程3-2における一般式(3b)で示されるアニリン誘導体の還元は、例えば、Journal of Organic Chemistry,55,2034-2044;1990、Journal of Organic Chemistry,37,1673-1674;1972に記載されるように、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、2-ピコリンボラン等の還元剤を用いて行うことができ、その他の公知の還元方法を用いてもよい。還元剤の使用量に特に制限はなく、一般式(3b)で示されるアニリン誘導体に対して1~1.5モル等量用いればよい。
工程3-2の反応は、有機溶媒中で実施することができる。有機溶媒としては、反応に害を及ぼさない溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)等の非プロトン性溶媒等を例示することができる。目的の一般式(3aa)で示されるアニリン誘導体を収率良く得られる点で、メタノール、エタノール又はイソプロピルアルコールが好ましい。これらの溶媒は1種類を使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
工程3-2の反応温度は、室温から使用する溶媒還流温度の範囲から適宜選択することができ、高い収率が得られることから、溶媒の還流温度となるように温度制御しながら反応を行うことが好ましい。反応時間は、反応温度等の他の条件によっても異なるが、1~48時間が適当である。
【0056】
工程3-2の反応により得られたアニリン誘導体は、精製せずに次の反応(アゾベンゼン誘導体の第1製造方法)に供してもよいし、精製してから次の反応に供してもよい。精製方法として、抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の方法を挙げることができる。
【0057】
[アニリン誘導体の第2製造方法]
アニリン誘導体の第2製造方法では、一般式(3a)で示されるアニリン誘導体のうち、R2aがアルカリ金属オキシスルホニルメチル基である化合物、すなわち下記一般式(3ab)で示されるアニリン誘導体を製造する。具体的には、下記一般式(3)で示されるアニリン誘導体をホルムアルデヒド及び亜硫酸水素アルカリ金属と反応させる工程(工程4-1)により、下記一般式(3ab)で示されるアニリン誘導体を製造する。
【0058】
【化26】
【0059】
一般式(3)及び(3ab)において、Rはアゾベンゼン誘導体の第1製造方法における一般式(1a)のRと同義である。すなわち、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。その説明と好ましい範囲、具体例については、アゾベンゼン誘導体の第1製造方法の一般式(1a)についての対応する記載を参照することができる。Mは、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属を表す。
一般式(3ab)において、R2abはアルカリ金属オキシスルホニルメチル基を表す。
【0060】
工程4-1の反応は、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基をアニリン誘導体に付加する反応であり、例えばJournal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry, 185, 338-344; 2007やJournal of the American Chemical Society, 135, 9777-9784; 2013等に記載されたアルカリ金属オキシスルホニルメチル基をアニリン又はアニリン誘導体に付加する方法を参照して行うことができる。
工程4-1では、ホルムアルデヒドの代わりに、複数のホルムアルデヒドが重合したトリオキサンやパラホルムアルデヒドを用いることもできる。また、ホルムアルデヒドの水溶液、いわゆるホルマリンを用いてもよい。ホルマリンの濃度に特に制限はなく、市販の37%ホルマリンが入手容易で取り扱いが簡便な点で好ましい。ホルムアルデヒドの使用量に特に制限はなく、例えば原料となる一般式(3)で示されるアニリン誘導体に対して、1~1.5モル等量用いればよい。
工程4-1で用いる亜硫酸水素アルカリ金属として、亜硫酸水素ナトリウムや亜硫酸水素カリウム等を例示することができる。例えば、市販の亜硫酸水素ナトリウム等を固体のまま使用してもよいし、水溶液として使用してもよい。亜硫酸水素アルカリ金属の使用量に特に制限はなく、原料となる一般式(3)で示されるアニリン誘導体(3)に対して、1~2モル等量用いればよい。
また、工程4-1で用いるホルムアルデヒド及び亜硫酸水素アルカリ金属の代わりに、市販のヒドロキシメタンスルホン酸アルカリ金属を用いてもよいが、製造コストが抑えられる点から、ホルムアルデヒド及び亜硫酸水素アルカリ金属を組み合わせて用いるのが好ましい。ヒドロキシメタンスルホン酸アルカリ金属の使用量に特に制限はなく、原料となる一般式(3)で示されるアニリン誘導体(3)に対して、1~1.5モル等量用いればよい。
工程4-1の反応は、水溶液中で実施することができる。
反応温度は、室温から100℃の範囲で適宜選択することができる。反応時間は、反応温度等の他の条件によっても異なるが、1~3時間が適当である。
【0061】
工程4-1の反応により得られたアニリン誘導体は、精製せずに次の反応(アゾベンゼン誘導体の第1製造方法)に供してもよいし、精製してから次の反応に供してもよい。精製方法として、抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の方法を挙げることができる。
【0062】
4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の製造方法
次に、一般式(1)で示されるアゾベンゼン誘導体を中間体として用いる4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の製造方法を、一般式(1b)または一般式(1d)で示されるアゾベンゼン誘導体を中間体に用いる場合を例にして説明する。
【0063】
[4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の第1製造方法]
4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の第1製造方法では、中間体である下記一般式(1b)で示されるアゾベンゼン誘導体のニトロ基を、還元反応によりアミノ基に変換する工程(工程5-1)により、下記一般式(4)で示される4,4’-ジアミノアゾベンゼン類を製造する。
【0064】
【化27】
【0065】
一般式(1b)及び(4)のRは、アゾベンゼン誘導体の第2製造方法における一般式(1b)のRと同義である。すなわち、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。その説明と好ましい範囲、具体例については、アゾベンゼン誘導体の第2製造方法の一般式(1b)についての対応する記載を参照することができる。
【0066】
工程5-1で行うニトロ基の還元には、硫化ナトリウムなどの硫化物、亜ジチオン酸ナトリウムなどの無機塩等を還元剤に用いる試薬による還元や、水素ガス雰囲気下でPd/C触媒、ラネーニッケルなどを用いて還元する接触還元、塩酸、酢酸等の酸存在下で鉄、亜鉛、又は塩化スズ等を用いて還元する金属還元など多様な還元法を利用することができるが、アゾ結合の還元を抑制しつつニトロ基を還元できることから、硫化物などの還元剤を用いて行う、試薬による還元によることが好ましい。試薬による還元の具体的な条件については、例えば、特開2014-12218号公報、特開2014-055123号公報等の記載を参照することができる。
還元剤としての硫化物は特に限定されず、水硫化物、硫化物、二硫化物及び多硫化物がいずれも使用可能である。具体的には、例えば、水硫化物としては、水硫化ナトリウムや水硫化カリウム、水硫化アンモニウムなどが挙げられ、硫化物としては、硫化ナトリウムや硫化カリウム、硫化アンモニウムなどが挙げられる。これらは無水物でも結晶水を含有したものであってもよい。二硫化物としては、二硫化ナトリウムや二硫化カリウム、二硫化アンモニウムなどが挙げられ、多硫化物としては、三硫化ナトリウムや三硫化カリウム、三硫化アンモニウム、四硫化ナトリウム、四硫化カリウム、四硫化アンモニウムなどが挙げられる。二硫化物及び多硫化物は、市販のものを用いてもよいが、硫化物と硫黄から調製したものを用いてもよい。これらの硫化物は1種類を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
還元剤としての硫化物の使用量については、特に制限はないが、原料としての一般式(1b)で示されるアゾベンゼン誘導体に対して、硫黄原子換算で2.5~10モル等量が好ましく、2.5~5モル等量がより好ましい。硫化物は、水溶液として使用することが好ましく、その硫化物水溶液の濃度は、10%~40%が好ましく、18%~28%がより好ましい。
工程5-1の反応は、反応に害を及ぼさない有機溶媒中で実施することもできる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
工程5-1の反応温度は、50℃から150℃の範囲から適宜選択することができ、90℃から110℃の範囲から選択することが好ましい。反応時間は、反応温度等の他の条件によっても異なるが、例えば0.5~2時間の範囲とするのが適当である。
【0067】
第1製造方法で得られた一般式(4)で示される4,4’-ジアミノアゾベンゼン類は精製することも好ましい。例えば、抽出や洗浄などの慣用の後処理方法によって、過剰の硫化物などを除去することにより、4,4’-ジアミノアゾベンゼン類を効率よく単離することができる。また、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶、活性炭処理などの通常の方法により、精製することもできる。
【0068】
[4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の第2製造方法]
4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の第2製造方法では、第1製造方法で得られる4,4’-ジアミノアゾベンゼン類のうち、Rが水素原子である化合物の水酸基をアルコキシ基に変換して、2位にアルコキシメチル基を有する4,4’-ジアミノアゾベンゼン類を製造する。具体的には、下記一般式(4a)で示される4,4’-ジアミノアゾベンゼン類を、塩基の存在下で、下記一般式(5)で示される化合物と反応させる工程(工程6-1)により、下記一般式(4b)で示される4,4’-ジアミノアゾベンゼン類を製造する。
【化28】
【0069】
一般式(4a)のR1aは水素原子を表す。
一般式(4b)及び(5)のR1bは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。R1bが表す各基の説明と好ましい範囲、具体例については、一般式(1)のRについての対応する記載を参照することができる。
一般式(5)のLは脱離基を表す。Lで表される脱離基としては、臭素原子やヨウ素原子などのハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基やトリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基などのスルホニルオキシ基を例示することができる。
工程6-1の反応は塩基の存在下で実施する。塩基としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、水素化ナトリウムなどのアルカリ金属水素化物、ナトリウムメトキシドやナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド、水酸化テトラブチルアンモニウムなどを例示することができる。塩基の使用量に特に制限はなく、原料である一般式(4a)で示されるアゾベンゼン誘導体に対して1~5モル等量用いればよい。
工程6-1の反応は溶媒中で実施することができる。溶媒としては、反応に害を及ぼさない溶媒であれば使用することができ、例えば、ジエチルエーテルやジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒、ベンゼンやトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)やN,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水などを例示することができる。これらの溶媒は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
工程6-1の反応温度は、室温から使用する溶媒の還流温度の範囲から適宜選択することができ、高い収率が得られることから、溶媒還流温度となるに温度制御しながら反応を実施することが好ましい。反応時間は、反応温度等の他の条件によっても異なるが、1~24時間が適当である。
【0070】
第2製造方法で得られた一般式(4b)で示される4,4’-ジアミノアゾベンゼン類は精製することも好ましい。この4,4’-ジアミノアゾベンゼン類は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶、活性炭処理などの通常の方法により、精製することができる。
【0071】
[4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の第3製造方法]
4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の第3製造方法では、中間体である下記一般式(1d)で示されるアゾベンゼン誘導体の保護基を脱保護する工程(工程8-1)により、下記一般式(4b)で示される4,4-ジアミノアゾベンゼン類を製造する。
【0072】
【化29】
【0073】
一般式(1d)および一般式(4b)のR1bは、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。
一般式(1d)のR2aは置換されていてもよいアリールメチル基、アルカリ金属オキシスルホニルメチル基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を表す。
一般式(1d)のR3aは置換されていてもよいアリールメチルアミノ基、アルカリ金属オキシスルホニルメチルアミノ基又は置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基を表す。
ここで、R1bが表す各基の説明と好ましい範囲、具体例については、一般式(1)のRについての対応する記載を参照することができ、R2aが表す各基の説明と好ましい範囲、具体例については、一般式(1)のRについての対応する記載を参照することができ、R3aが表す各基の説明と好ましい範囲、具体例については、一般式(1)のRについての対応する記載を参照することができる。
【0074】
工程8-1で行う脱保護法については、[アゾベンゼン誘導体の第2製造方法]の欄における工程1-2についての記載を参照することができる。
【実施例
【0075】
以下、実施例、参考例及び比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。例えば、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。
【0076】
[1]アゾベンゼン誘導体の製造例1
以下の実施例1、2では、アミノ基を保護してアゾベンゼン誘導体B1を製造し(実施例1)、そのアゾベンゼン誘導体B1のアミノ基の保護基を脱保護することによりアゾベンゼン誘導体A1を製造した(実施例2)。
また、実施例3では、アミノ基を保護してアゾベンゼン誘導体B4を製造し、そのアゾベンゼン誘導体B4のアミノ基の保護基を脱保護することによりアゾベンゼン誘導体A1を製造した。
【0077】
アニリン誘導体1の合成
ここでは、実施例1において、アゾベンゼン誘導体B1の原料として用いるアニリン誘導体1を合成した。
【0078】
【化30】
【0079】
アルゴン雰囲気下、3-ニトロベンジルアルコール(50.0 g, 326 mmol)のジクロロメタン(1L)溶液に、氷冷下(氷浴)で、トリエチルアミン(49.5 g, 489 mmol)及びメタンスルホニルクロリド(41.1 g, 359 mmol)を加え、1時間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。この反応溶液に酢酸エチル(150 mL)を用いて3回抽出を行い、合一した有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮することにより、メタンスルホン酸3-ニトロベンジルの粗生成物を得た。
得られたメタンスルホン酸3-ニトロベンジルの粗生成物にエタノール(500 mL)を加え、ナトリウムエトキシド(18.5 g, 342 mmol)のエタノール(200 mL)溶液を室温で滴下した後、20時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。析出した不溶物をろ過によって除去した後、母液を減圧下濃縮した。得られた濃縮物に酢酸エチル(150 mL)を用いて3回抽出を行い、合一した有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮することにより、粗生成物を得た。この粗生成物を、ヘキサン:酢酸エチル=100:0~83:17の溶媒(ヘキサン単独又はヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒)を溶離液に用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、エチル(3-ニトロベンジル)エーテルの淡黄色油状物を収量56.4 g、収率94%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 8.22 (m, 1H), 8.14 (m, 1H), 7.68 (m, 1H), 7.52 (m, 1H), 4.59 (s, 2H), 3.60 (q, J = 7.0Hz, 2H), 1.29 (t, J = 7.0Hz, 3H).
【0080】
【化31】
【0081】
アルゴン雰囲気下、エチル(3-ニトロベンジル)エーテル(36.2g, 200 mmol)のメタノール(200 mL)溶液に、塩化アンモニウム(53.5 g, 1.00 mol)の水(460 mL)溶液と、還元鉄(33.5 g, 600 mmol)を加え、90℃の油浴中で4時間半撹拌した。反応終了後、反応液を室温に冷却し、セライトろ過にて不溶物を除去した。母液を濃縮した後、酢酸エチル(300 mL)を用いて3回抽出を行い、合一した有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下濃縮することにより、粗生成物を得た。この粗生成物を、ヘキサン:酢酸エチル=95:5~60:40の混合溶媒を溶離液に用いてカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、3-(エトキシメチル)アニリンを収量25.2 g、収率83%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 7.12 (m, 1H), 6.73-6.61 (m, 2H), 6.60 (m, 1H), 4.42 (s, 2H), 3.65 (brs, 2H), 3.53 (q, J = 7.0Hz, 2H), 1.24 (t, J = 7.0Hz, 3H).
【0082】
【化32】
【0083】
アルゴン雰囲気下、3-(エトキシメチル)アニリン(30.0 g, 198 mmol)のイソプロピルアルコール(300 mL)溶液にクロロ酢酸(374 mg, 3.96 mmol)と4-メトキシベンズアルデヒド(25.3 mL, 208 mmol)を加え、撹拌しながら14時間加熱還流した後、クロロ酢酸(1.50 g, 15.8 mmol)を加え、更に2時間撹拌しながら加熱還流した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、減圧下濃縮することにより、3-(エトキシメチル)-N-(4-メトキシベンジリデン)アニリンの粗生成物を得た。
得られた3-(エトキシメチル)-N-(4-メトキシベンジリデン)アニリンの粗生成物をエタノール(200 mL)に溶解し、その溶液を氷冷した後、水素化ホウ素ナトリウム(7.49 g, 198 mmol)を少量ずつ加えた。反応溶液を室温で3時間撹拌した後、更に12時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液を氷冷し、水(200 mL)をゆっくり加え、減圧下濃縮した。得られた反応溶液にクロロホルム(250 mL)を用いて3回抽出を行い、合一した有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下濃縮し、得られた粗生成物を、ヘキサン:酢酸エチル=94:6~73:27の混合溶媒を溶離液に用いてカラムクロマトグラフィーにて精製した。以上の工程により、3-(エトキシメチル)-N-(4-メトキシベンジル)アニリン(アニリン誘導体1)の黄色油状物を収量45.6 gg、収率:85%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 7.29 (d, J = 8.7Hz, 2H), 7.14 (m, 1H), 6.88 (d, J = 8.7Hz, 2H), 6.71-6.63 (m, 2H), 6.55 (m, 1H), 4.43 (s, 2H), 4.26 (s, 2H), 3.95 (brs, 1H), 3.80 (s, 2H), 3.51 (q, J = 7.0Hz, 2H), 1.22 (t, J = 7.0Hz, 3H).
【0084】
(実施例1)アゾベンゼン誘導体B1の製造
本実施例では、4-ニトロアニリンから生成したベンゼンジアゾニウム塩1と、合成したアニリン誘導体1とを反応させることにより、アゾベンゼン誘導体B1を製造した。
【0085】
【化33】
【0086】
4-ニトロアニリン(15.1 g, 109 mmol)、酢酸(140 mL)及びプロピオン酸(72 mL)の混合溶液に、硫酸(20 mL)を氷冷下(氷浴)で加えた。次いで、この溶液に、亜硝酸ナトリウム(9.04 g, 131 mmol)の水(24 mL)の溶液を氷冷下(氷浴)でゆっくりと加え、5分間撹拌した後、尿素(2.16 g, 36.0 mmol)を加え、更に5分間撹拌し、4-ニトロベンゼンジアゾニウム硫酸塩(ベンゼンジアゾニウム塩1)の水溶液を調製した。
得られた4-ニトロベンゼンジアゾニウム硫酸塩の水溶液を、氷冷した3-(エトキシメチル)-N-(4-メトキシベンジル)アニリン(アニリン誘導体1:29.7 g, 109 mmol)のエタノール(200 mL)の溶液に撹拌しながらゆっくりと加えた。反応溶液を氷冷下(氷浴)で3時間撹拌した後、水酸化ナトリウム(40 g)の水(200 mL)溶液を加えた。反応混合物を減圧下濃縮し、酢酸エチル(300 mL)を用いて3回抽出を行い、合一した有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下濃縮することにより、粗製の2-(エトキシメチル)-4-(4-メトキシベンジルアミノ)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体B1)の紫色固体を収量42.9 gで得た。得られた2-(エトキシメチル)-4-(4-メトキシベンジルアミノ)-4’-ニトロアゾベンゼンは精製することなく次の反応に用いることができる。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 8.33 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.89 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.79 (m, 1H), 7.32-7.27 (m, 2H), 6.93-6.88 (m, 3H), 6.57 (m, 1H), 5.08 (s, 2H), 4.68 (brs, 1H), 4.40 (s, 2H), 3.82 (s, 3H), 3.66 (q, J = 7.0Hz, 2H), 1.28 (t, J = 7.0Hz, 3H).
【0087】
(実施例2)アゾベンゼン誘導体A1の製造
本実施例では、実施例1で製造したアゾベンゼン誘導体B1のアミノ基の保護基を脱保護して、アゾベンゼン誘導体A1を製造した。
【0088】
【化34】
【0089】
2-(エトキシメチル)-4-(4-メトキシベンジルアミノ)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体B1:42.9 g, 102 mmol)のジクロロメタン(600 mL)溶液に水(380 mL)とDDQ(23.6 g, 104 mmol)を加え、室温で3時間半撹拌した。反応終了後、反応混合物にクロロホルム(200 mL)を加えた後、セライトろ過し、不溶物を除去した。母液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、有機層と水層を分離した。水層にクロロホルム(200 mL)を用いて3回抽出を行い、合一した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水及び飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮することにより、4-アミノ-2-(エトキシメチル)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体A1)の紫色固体を収量30.6 gで得た。得られた4-アミノ-2-(エトキシメチル)-4’-ニトロアゾベンゼンは精製することなく次の反応に用いることができる。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 8.34 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.90 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.76 (d, J = 8.8Hz, 1H), 6.94 (d, J = 2.6Hz, 1H), 6.61 (dd, J = 8.8 and 2.6Hz, 1H), 5.07 (s, 2H), 4.25 (brs, 2H), 3.69 (q, J = 7.0Hz, 2H), 1.31 (t, J = 7.0Hz, 3H).
【0090】
(実施例3)アゾベンゼン誘導体B4の製造、A1の他工程による製造
本実施例では、4-ニトロアニリンから生成したベンゼンジアゾニウム塩2と、アニリン誘導体1の合成の欄に記載した方法により調製した3-(エトキシメチル)アニリンから合成したアニリン誘導体7とを反応させることにより、アゾベンゼン誘導体B4を得、次いでアゾベンゼン誘導体B4のアミノ基の保護基を脱保護して、アゾベンゼン誘導体A1を製造した。
【0091】
【化35】
【0092】
4-ニトロアニリン(13.8 g, 100 mmol)の水(100 mL)懸濁液に、室温で攪拌しながら濃塩酸(24 mL)を加え、0℃の氷浴にて冷却した。次いで、氷浴で冷却しながら、反応溶液に亜硝酸ナトリウム(6.90 g, 100 mmol)の水(33 mL)溶液を滴下した後、0℃で30分間攪拌することにより、4-ニトロベンゼンジアゾニウムクロリド(ベンゼンジアゾニウム塩2)の水溶液を得た。この水溶液は全量を次の反応に使用した。
メカニカルスターラーを備えた1Lセパラブルフラスコに3-(エトキシメチル)アニリン(15.1 g, 100 mmol)、ホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウム(13.8 g, 100 mmol)、水(23.5 mL)を加え、70℃で1時間半激しく攪拌することでアニリン誘導体7を合成し、0℃の氷浴で冷却した。冷却の後、水(150 mL)を加え、先に調製した4-ニトロベンゼンジアゾニウムクロリド(ベンゼンジアゾニウム塩2)の水溶液を0℃で5分かけて滴下した。反応混合物を室温まで徐々に昇温させながら3時間攪拌した。
得られたアゾベンゼン誘導体B4を含む反応溶液を0℃の氷浴で冷却した後、トルエン(150 mL)と48%水酸化ナトリウム水溶液(55.2 mL, 1.00 mol)を加え、70℃まで昇温させて、2時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、蒸留水(600 mL)を加え、酢酸エチル(600 mL)で抽出した。有機層を水(300 mL)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、エバポレーターで減圧濃縮することにより、粗製の4-アミノ-2-(エトキシメチル)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体A1)の紫色固体を収量26.4 gで得た。NMRスペクトルは実施例2に記載したとおりである。
【0093】
[2]アゾベンゼン誘導体の製造例2
以下の実施例4、5では、アミノ基を保護してアゾベンゼン誘導体B3を製造し(実施例4)、そのアゾベンゼン誘導体B3のアミノ基の保護基を脱保護することによりアゾベンゼン誘導体A3を製造した(実施例5)。
また、実施例6では、アミノ基の脱保護に用いる水酸化ナトリウムの使用量を変更したこと以外は、実施例4、5と同様にしてアゾベンゼン誘導体B3、A3を製造した。
【0094】
アニリン誘導体2の合成
ここでは、実施例4において、アゾベンゼン誘導体B3の原料として用いるアニリン誘導体2を合成した。
【0095】
【化36】
【0096】
アルゴン雰囲気下、55%油性水素化ナトリウム(5.59 g, 128 mmol)をヘキサンで洗浄した後、氷冷下(氷浴)で、プロピルアルコール(200 mL)をゆっくり加え、20分間撹拌した。次いで、この混合物に3-ニトロベンジルブロミド(25.0 g, 116 mmol)を加え、徐々に室温まで昇温させながら3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を氷冷(氷浴)し、飽和塩化アンモニウム水溶液(200 mL)を加えた。析出した不溶物をろ過によって取り除いた後、母液を減圧濃縮し、酢酸エチル(150 mL)を用いて3回抽出を行った。合一した有機層を水(150 mL)及び飽和食塩水(150 mL)で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去することにより、3-ニトロベンジル(プロピル)エーテルの淡黄色油状物を収量22.6 gで得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 8.22 (m, 1H), 8.14 (m, 1H), 7.68 (m, 1H), 7.52 (m, 1H), 4.59 (s, 2H), 3.49 (t, J = 6.7Hz, 2H), 1.68 (qt, J = 7.4 and 6.7Hz, 2H), 0.97 (t, J = 7.4Hz, 3H).
【0097】
【化37】
【0098】
アルゴン雰囲気下、3-ニトロベンジル(プロピル)エーテル(22.6 g, 116 mmol)のエタノール(200 mL)溶液に、還元鉄(19.4 g, 348 mmol)と2M塩酸(50 mL)を加え、90℃(油浴)で2時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を室温に冷却し、炭酸カリウム(16 g)の水(75 mL)溶液を加えた。得られた反応溶液をセライトろ過した後、母液を減圧濃縮した。得られた混合物に酢酸エチル(100 mL)を用いて3回抽出を行い、合一した有機層を水(100 mL)及び飽和食塩水(100 mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下に溶媒を留去することにより、3-(プロピルオキシメチル)アニリン(アニリン誘導体2)の茶褐色油状物を収量19.2 gで得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 7.12 (m, 1H), 6.73-6.61 (m, 2H), 6.60 (m, 1H), 4.42 (s, 2H), 3.65 (brs, 2H), 3.42 (t, J = 6.7Hz, 2H), 1.64 (qt, J = 7.4 and 6.7Hz, 2H), 0.94 (t, J = 7.4Hz, 3H).
【0099】
(実施例4)アゾベンゼン誘導体B3の製造
本実施例では、4-ニトロアニリンから生成したベンゼンジアゾニウム塩2と、アニリン誘導体2から生成したアニリン誘導体3とを反応させることにより、アゾベンゼン誘導体B3を製造した。
【0100】
【化38】
【0101】
4-ニトロアニリン(1.67 g, 12.1 mmol)を水(12 mL)に懸濁させた懸濁液に、室温で撹拌しながら濃塩酸(3 mL)を加え、0℃の氷浴にて冷却した。次いで、氷浴で冷却しながら、反応溶液に、亜硝酸ナトリウム(0.835 g, 12.1 mmol)の水(4 mL)溶液を滴下した後、0℃で30分間撹拌することにより4-ニトロベンゼンジアゾニウムクロリド(ベンゼンジアゾニウム塩2)の水溶液を得た。この水溶液はそのまま次の反応に使用した。
亜硫酸水素ナトリウム(1.75 g, 16.8 mmol)及び37%ホルマリン(1.13 ml, 15.1 mmol)の水(2 mL)溶液を50℃の油浴中で30分間撹拌した。この溶液に、70℃の油浴中で、3-(プロピルオキシメチル)アニリン(アニリン誘導体2:2.00 g, 12.1 mmol)とエタノール(1 mL)のエタノール溶液を加え、1時間半撹拌した後、氷冷下で10分間静置した。反応混合物に酢酸ナトリウム(8 g)の水(40 mL)溶液を加え、[{3-(プロピルオキシメチル)フェニル}アミノ]メチルスルホン酸ナトリウム(アニリン誘導体3)の懸濁液を得た。
得られた[{3-(プロピルオキシメチル)フェニル}アミノ]メチルスルホン酸ナトリウムの懸濁液に、別途調製した4-ニトロベンゼンジアゾニウムクロリド(ベンゼンジアゾニウム塩2)の水溶液を氷冷下(氷浴)で10分かけて滴下した。反応混合物を室温まで徐々に昇温させながら3時間撹拌し、析出した固体をろ取した。この固体を蒸留水で洗浄し、減圧乾燥することにより、粗製の2-(プロピルオキシメチル)-4-(ソジオオキシスルホニルメチルアミノ)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体B3)の茶褐色固体を収量5.21 gで得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6): δ 8.35 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.91 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.68 (d, J = 9.1Hz, 1H), 7.67 (t, J = 6.9Hz, 1H), 6.96 (d, J = 2.5Hz, 1H), 6.79 (dd, J = 9.1 and 2.5Hz, 1H), 4.95 (s, 2H), 4.03 (d, J = 6.9Hz, 2H), 3.50 (t, J = 6.5Hz, 2H), 1.60 (qt, J = 7.4 and 6.5Hz, 2H), 0.91 (t, J = 7.4Hz, 3H).
【0102】
(実施例5)アゾベンゼン誘導体A3の製造
本実施例では、アゾベンゼン誘導体B3のアミノ基の保護基を脱保護して、アゾベンゼン誘導体A3を製造した。
【0103】
【化39】
【0104】
2-(プロピルオキシメチル)-4-(ソジオオキシスルホニルメチルアミノ)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体B3:5.21 g, 12.1 mmol)に、水酸化ナトリウム(1.09 g, 27.2 mmol)の水(15 mL)溶液を室温で加え、次いで80℃の油浴中で2時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、水(100 mL)を加え、析出した固体をろ取した。得られた固体を水(100 mL)で洗浄した後、酢酸エチル(200 mL)に溶解させた。得られた酢酸エチル溶液を水(50 mL)及び飽和食塩水(100 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮することにより、4-アミノ-2-(プロピルオキシメチル)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体A3)の茶褐色固体を収量2.46 g、収率65%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 8.34 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.90 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.76 (d, J = 8.8Hz, 1H), 6.94 (d, J = 2.6Hz, 1H), 6.61 (dd, J = 8.8 and 2.6Hz, 1H), 5.07 (s, 2H), 4.26 (brs, 2H), 3.58 (t, J = 6.7Hz, 2H), 1.71 (qt, J = 7.4 and 6.7Hz, 2H), 0.98 (t, J = 7.4Hz, 3H).
【0105】
(実施例6)アゾベンゼン誘導体A3の他工程による製造
本実施例では、実施例4と同様にしてアゾベンゼン誘導体B3を製造し、そのアゾベンゼン誘導体B3のアミノ基の保護基を脱保護して、アゾベンゼン誘導体A3を製造した。
【0106】
【化40】
【0107】
実施例4と同様にして、2-(プロピルオキシメチル)-4-(ソジオオキシスルホニルメチルアミノ)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体B3)の水溶液を得た。
得られた2-(プロピルオキシメチル)-4-(ソジオオキシスルホニルメチルアミノ)-4’-ニトロアゾベンゼンの水溶液に、水酸化ナトリウム(2.42 g, 60.5 mmol)の水(20 mL)溶液を室温で加え、次いで80℃の油浴中で2時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、水(100 mL)を加え、析出した固体をろ取した。得られた固体を水(100 mL)で洗浄した後、酢酸エチル(200 mL)に溶解させた。得られた酢酸エチル溶液を水(50 mL)及び飽和食塩水(100 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮することにより、4-アミノ-2-(プロピルオキシメチル)-4’-ニトロアゾベンゼンの茶褐色固体(アゾベンゼン誘導体A3)を収量3.25 g、収率86%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 8.34 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.90 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.76 (d, J = 8.8Hz, 1H), 6.94 (d, J = 2.6Hz, 1H), 6.61 (dd, J = 8.8 and 2.6Hz, 1H), 5.07(s, 2H), 4.26 (brs, 2H), 3.58(t, J = 6.7Hz, 2H), 1.71 (qt, J = 7.4 and 6.7Hz, 2H), 0.98 (t, J = 7.4Hz, 3H).
【0108】
[3]アゾベンゼン誘導体の製造例3
以下の実施例7、8では、アミノ基を保護してアゾベンゼン誘導体B2を製造し(実施例7)、そのアゾベンゼン誘導体B2のアミノ基の保護基を脱保護することによりアゾベンゼン誘導体A2を製造した(実施例8)。
【0109】
アニリン誘導体4の合成
ここでは、実施例7において、アゾベンゼン誘導体B2の原料として用いるアニリン誘導体4を合成した。
【0110】
【化41】
【0111】
アルゴン雰囲気下、55%油性水素化ナトリウム(5.59 g, 128 mmol)をヘキサンで洗浄した後、氷冷下(氷浴)で、イソプロピルアルコール(200 mL)をゆっくり加え、20分間撹拌した。次いで、3-ニトロベンジルブロミド(25.0 g, 116 mmol)を加え、徐々に室温まで昇温させながら3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を氷冷(氷浴)し、飽和塩化アンモニウム水溶液(200 mL)を加えた。析出した不溶物をろ過によって取り除いた後、母液を減圧濃縮し、酢酸エチル(100 mL)を用いて3回抽出を行った。合一した有機層を水(200 mL)及び飽和食塩水(200 mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に溶媒を留去することにより、イソプロピル(3-ニトロベンジル)エーテルの淡黄色油状物を収量22.6 gで得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 8.22 (m, 1H), 8.13 (m, 1H), 7.68 (m, 1H), 7.51 (m, 1H), 4.59 (s, 2H), 3.73 (sep, J = 6.1Hz, 1H), 1.25 (d, J = 6.1Hz, 6H).
【0112】
【化42】
【0113】
アルゴン雰囲気下、イソプロピル(3-ニトロベンジル)エーテル(44.2 g, 216 mmol)とエタノール(200 mL)のエタノール溶液に、還元鉄(32.7 g, 585 mmol)と2N塩酸(100 mL)を加え、90℃の油浴中で3時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を室温に冷却し、炭酸カリウム(32 g)と水(150 mL)の水溶液を加えた。得られた反応溶液をセライトろ過した後、母液を減圧濃縮した。得られた混合物に酢酸エチル(100 mL)を用いて3回抽出を行い、合一した有機層を水(100 mL)及び飽和食塩水(100 mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去することにより得られた粗生成物を、ヘキサン:酢酸エチル=84:16~63:37の混合溶媒を溶離液に用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより3-(イソプロピルオキシメチル)アニリンの茶褐色油状物を収量31.5 g、収率:88%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 7.11 (m, 1H), 6.74-6.68 (m, 2H), 6.59 (m, 1H), 4.43 (s, 2H), 3.67 (sep, J = 6.1Hz, 1H), 3.65 (brs, 2H), 1.21 (d, J = 6.1Hz, 6H).
【0114】
【化43】
【0115】
アルゴン雰囲気下、3-(イソプロピルオキシ)アニリン(31.5 g, 191 mmol)とイソプロピルアルコール(190 mL)の溶液にクロロ酢酸(1.80 g, 19.1 mmol)と4-メトキシベンズアルデヒド(24.4 mL, 201 mmol)を加え、撹拌しながら13時間加熱還流した後、減圧下濃縮することにより、3-(イソプロピルオキシメチル)-N-(4-メトキシベンジリデン)アニリンの粗生成物を得た。
得られた3-(イソプロピルオキシメチル)-N-(4-メトキシベンジリデン)アニリンの粗生成物をエタノール(200 mL)に溶解し、その溶液を氷冷した後、水素化ホウ素ナトリウム(7.23 g, 191 mmol)を少量ずつ加えた。反応溶液を室温で4時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を氷冷し、飽和塩化アンモニウム水溶液(150 mL)をゆっくり加え、減圧下濃縮した。得られた濃縮物に酢酸エチル(150 mL)を用いて3回抽出を行い、合一した有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下濃縮し、得られた粗生成物を、ヘキサン:酢酸エチル=100:0~90:10の溶媒(ヘキサンの単独溶媒又はヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒)を溶離液に用いてカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、目的の3-(イソプロピルオキシメチル)-N-(4-メトキシベンジル)アニリン(アニリン誘導体4)の黄色油状物を収量50 4 g、収率:92%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 7.39 (d, J = 8.7Hz, 2H), 7.13 (m, 1H), 6.88 (d, J = 8.7Hz, 2H), 6.70-6.64 (m, 2H), 6.54 (m, 1H), 4.44 (s, 2H), 4.25 (s, 2H), 3.95 (brs, 2H), 3.80 (s, 3H), 3.66 (sep, J = 6.1Hz, 2H), 1.19 (d, J = 6.1Hz, 6H).
【0116】
(実施例7)アゾベンゼン誘導体B2の製造
本実施例では、4-ニトロアニリンから生成したベンゼンジアゾニウム塩1と、合成したアニリン誘導体4とを反応させることにより、アゾベンゼン誘導体B2を製造した。
【0117】
【化44】
【0118】
4-ニトロアニリン(2.71 g, 19.6 mmol)、酢酸(25 mL)及びプロピオン酸(13 mL)の混合溶液に、硫酸(3.6 mL)を氷冷下(氷浴)で加えた。次いで、この溶液に、亜硝酸ナトリウム(1.62 g, 23.5 mmol)の水(4 mL)溶液を氷冷下(氷浴)でゆっくりと加え、5分間撹拌した後、尿素(466 mg, 7.76 mmol)を加え、更に5分間撹拌し4-ニトロベンゼンジアゾニウム硫酸塩(ベンゼンジアゾニウム塩1)の溶液を得た。
得られた4-ニトロベンゼンジアゾニウム硫酸塩の溶液を、氷冷した3-(イソプロピルオキシメチル)-N-(4-メトキシベンジル)アニリン(アニリン誘導体4:5.58 g, 19.6 mmol)のエタノール(40 mL)溶液に撹拌しながらゆっくりと加えた。反応溶液を氷冷下(氷浴)で3時間撹拌した後、蒸留水(200 mL)を加え、反応系中の固体をろ取した。この固体を水(500 mL)、エタノール(50 mL)、ヘキサン(100 mL)で順次洗浄し、減圧下乾燥することにより、粗製の2-(イソプロピルオキシメチル)-4-(4-メトキシベンジルアミノ)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体B2)の紫色固体を収量7.86 gで得た。得られた2-(イソプロピルオキシメチル)-4-(4-メトキシベンジルアミノ)-4’-ニトロアゾベンゼンは精製することなく次の反応に用いることができる。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 8.33 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.89 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.79 (m, 1H), 7.32-7.27 (m, 2H), 6.93-6.87 (m, 3H), 6.56 (m, 1H), 5.07 (s, 2H), 4.68 (brs, 1H), 4.40 (s, 2H), 3.82 (s, 3H), 3.78 (sep, J = 6.1Hz, 1H), 1.25 (d, J = 6.1Hz, 3H).
【0119】
(実施例8)アゾベンゼン誘導体A2の製造
本実施例では、実施例7で製造したアゾベンゼン誘導体B2のアミノ基の保護基を脱保護して、アゾベンゼン誘導体A2を製造した。
【0120】
【化45】
【0121】
2-(イソプロピルオキシメチル)-4-(4-メトキシベンジルアミノ)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体B2:7.00 g, 16.1 mmol)のジクロロメタン(100 mL)溶液に水(50 mL)とDDQ(3.70 g, 16.3 mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、反応混合物にクロロホルム(300 mL)を加えた後、セライトろ過し、不溶物を除去した。母液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、有機層と水層を分離した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水及び飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮することにより、粗製の4-アミノ-2-(イソプロピルオキシメチル)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体A2)の紫色固体を収量5.06 gで得た。得られた4-アミノ-2-(イソプロピルオキシメチル)-4’-ニトロアゾベンゼンは精製することなく次の反応に用いることができる。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 8.34 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.90 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.75 (d, J = 8.8Hz, 1H), 6.96 (d, J = 2.6Hz, 1H), 6.60 (dd, J = 8.8 and 2.6Hz, 1H), 5.07 (s, 2H), 4.26 (brs, 2H), 3.81 (sep, J = 6.1Hz, 1H), 1.28 (d, J = 6.1Hz, 3H).
【0122】
[4]アゾベンゼン誘導体の製造例4
以下の実施例9では、アミノ基を保護してアゾベンゼン誘導体B5を製造し、そのアゾベンゼン誘導体B5のアミノ基の保護基を脱保護することによりアゾベンゼン誘導体A4を製造した。
【0123】
アニリン誘導体8の合成
ここでは、実施例9において、アゾベンゼン誘導体B5の原料として用いるアニリン誘導体8を合成した。
【0124】
【化46】
【0125】
アルゴン雰囲気下、55%油性水素化ナトリウム(7.77 g, 178 mmol)をヘキサンで洗浄した後、氷冷下(氷浴)でイソブチルアルコール(290 mL)をゆっくり加え、15分間撹拌した。次いで、この混合物に3-ニトロベンジルブロミド(35.0 g, 162 mmol)を加え、徐々に室温まで昇温させながら3時間半撹拌した。反応終了後、反応溶液を氷冷(氷浴)し、飽和塩化アンモニウム水溶液(300 mL)を加えた。析出した不溶物をろ過によって取り除いた後、母液を減圧濃縮し、酢酸エチル(150 mL)を用いて3回抽出を行った。合一した有機層を水(150 mL)及び飽和食塩水(150 mL)で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去することにより、イソブチル(3-ニトロベンジル)エーテルの淡黄色油状物を収量33.8 gで得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 8.21 (m, 1H), 8.14 (m, 1H), 7.68 (m, 1H), 7.52 (m, 1H), 4.59 (s, 2H), 3.29 (d, J = 6.6Hz, 2H), 1.94 (m, 1H), 0.95 (d, J = 6.7Hz, 6H).
【0126】
【化47】
【0127】
アルゴン雰囲気下、イソブチル(3-ニトロベンジル)エーテル(33.8 g, 162 mmol)のエタノール(130 mL)溶液に、還元鉄(27.1 g, 486 mmol)と2M塩酸(90 mL)を加え、90℃(油浴)で2時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を室温に冷却し、炭酸カリウム(29 g)の水(125 mL)溶液を加えた。得られた反応溶液をセライトろ過した後、母液を減圧濃縮した。得られた混合物に酢酸エチル(150 mL)を用いて3回抽出を行い、合一した有機層を水(100 mL)及び飽和食塩水(50 mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下に溶媒を留去することにより、3-(イソブチルオキシメチル)アニリン(アニリン誘導体8)の茶褐色油状物を収量28.3 g、収率98%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 7.12 (m, 1H), 6.72 (m, 1H), 6.69 (m, 1H), 6.60 (m, 1H), 4.42 (s, 2H), 3.65 (brs, 2H), 3.22 (t, J = 6.7Hz, 2H), 1.91 (m, 1H), 0.92 (d, J = 6.7Hz, 6H).
【0128】
(実施例9)アゾベンゼン誘導体B5、A4の製造
本実施例では、4-ニトロアニリンから生成したベンゼンジアゾニウム塩2と、アニリン誘導体8から合成したアニリン誘導体9とを反応させることにより、アゾベンゼン誘導体B5を得、次いでアゾベンゼン誘導体B5のアミノ基の保護基を脱保護して、アゾベンゼン誘導体A4を製造した。
【0129】
【化48】
【0130】
4-ニトロアニリン(25.6 g, 185 mmol)の水(180 mL)懸濁液に、室温で撹拌しながら濃塩酸(46 mL)を加え、0℃の氷浴にて冷却した。次いで、氷浴で冷却しながら、反応溶液に、亜硝酸ナトリウム(12.8 g, 185 mmol)の水(60 mL)溶液を滴下した後、0℃で30分間撹拌することにより、4-ニトロベンゼンジアゾニウムクロリド(ベンゼンジアゾニウム塩2)の水溶液を得た。この水溶液はそのまま次の反応に使用した。
亜硫酸水素ナトリウム(26.7 g, 257 mmol)及び37%ホルマリン(17.1 mL, 216 mmol)の水(30 mL)溶液を50℃の油浴中で30分間撹拌した。この溶液に、70℃の油浴中で、3-(イソブチルオキシメチル)アニリン(アニリン誘導体8:33.1 g, 185 mmol)のエタノール(15 mL)溶液を加え、1時間半撹拌した後、氷冷下で酢酸ナトリウム(120 g)の水(600 mL)溶液を加えてアニリン誘導体9の懸濁液を得た。得られたアニリン誘導体9の懸濁液に、別途調製した4-ニトロベンゼンジアゾニウムクロリド(ベンゼンジアゾニウム塩2)の水溶液を氷冷下(氷浴)で10分かけて滴下した。反応混合物を室温まで徐々に昇温させながら3時間半撹拌した。
得られたアゾベンゼン誘導体B5を含む反応溶液に、水酸化ナトリウム(37.0 g, 925 mmol)の水(300 mL)溶液を室温で加え、次いで80℃の油浴中で2時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、水(1L)を加え、析出した固体をろ取した。得られた固体を水(1L)で洗浄し、減圧乾燥することにより、粗製の4-アミノ-2-(イソブチルオキシメチル)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体A4)の茶褐色固体を収量60.7 gで得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 8.34 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.91 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.80 (d, J = 8.9Hz, 1H), 6.94 (d, J = 2.5Hz, 1H), 6.64 (dd, J = 8.9 and 2.5Hz, 1H), 5.09 (s, 2H), 3.39 (d, J = 6.7Hz, 2H), 1.98 (m, 1H), 0.96 (d, J = 6.7Hz, 6H).
【0131】
[5]アゾベンゼン誘導体の製造例5
以下の実施例10では、アミノ基を保護してアゾベンゼン誘導体B6を製造し、そのアゾベンゼン誘導体B6のアミノ基の保護基を脱保護することによりアゾベンゼン誘導体A5を製造した。
【0132】
アニリン誘導体10の合成
ここでは、実施例10において、アゾベンゼン誘導体B6の原料として用いるアニリン誘導体10を合成した。
【0133】
【化49】
【0134】
アルゴン雰囲気下、55%油性水素化ナトリウム(5.59 g, 128 mmol)をヘキサンで洗浄し、THF(150 mL)に懸濁させた後、氷冷下(氷浴)で2,2,2-トリフルオロエタノール(29.0 g, 290 mmol)をゆっくり加え、10分間撹拌した。次いで、この混合物に3-ニトロベンジルブロミド(25.0 g, 116 mmol)を加え、徐々に室温まで昇温させながら一晩撹拌した。反応終了後、反応溶液を氷冷(氷浴)し、飽和塩化アンモニウム水溶液(100 mL)を加えた。析出した不溶物をろ過によって取り除いた後、母液を減圧濃縮し、酢酸エチル(150 mL)を用いて3回抽出を行った。合一した有機層を水(50 mL)及び飽和食塩水(50 mL)で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去することにより、3-ニトロベンジル(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル(アニリン誘導体10)の淡黄色油状物を収量27.3 gで得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 8.25-8.15 (m, 2H), 7.70 (m, 1H), 7.57 (m, 1H), 4.78 (s, 2H), 3.93 (q, J = 8.6Hz, 2H); 19F-NMR (376MHz, CDCl3): -73.9 (s).
【0135】
【化50】
【0136】
アルゴン雰囲気下、3-ニトロベンジル(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル(27.3 g,116 mmol)のエタノール(100 mL)溶液に、還元鉄(19.4 g, 348 mmol)と2M塩酸(65 mL)を加え、90℃(油浴)で2時間半撹拌した。反応終了後、反応混合物を室温に冷却し、炭酸カリウム(20 g)の水(100 mL)溶液を加えた。得られた反応溶液をセライトろ過した後、母液を減圧濃縮した。得られた混合物に酢酸エチル(100 mL)を用いて3回抽出を行い、合一した有機層を水(100 mL)及び飽和食塩水(100 mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下に溶媒を留去することにより、3-[(2,2,2-トリフルオロエチルオキシ)メチル]アニリンの茶褐色油状物を収量22.4 g、収率94%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 7.14 (m, 1H), 6.73-6.62 (m, 3H), 4.59 (s, 2H), 3.80 (q, J = 8.7Hz, 2H), 3.69 (brs, 2H); 19F-NMR (376MHz, CDCl3): -73.9 (s).
【0137】
(実施例10)アゾベンゼン誘導体B6、A5の製造
本実施例では、4-ニトロアニリンから生成したベンゼンジアゾニウム塩2と、アニリン誘導体10から合成したアニリン誘導体11とを反応させることにより、アゾベンゼン誘導体B6を得、次いでアゾベンゼン誘導体B6のアミノ基の保護基を脱保護して、アゾベンゼン誘導体A5を製造した。
【0138】
【化51】
【0139】
4-ニトロアニリン(15.1 g, 109 mmol)の水(100 mL)懸濁液に、室温で撹拌しながら濃塩酸(27 mL)を加え、0℃の氷浴にて冷却した。次いで、氷浴で冷却しながら、反応溶液に、亜硝酸ナトリウム(7.59 g, 110 mmol)の水(30 mL)溶液を滴下した後、0℃で30分間撹拌することにより4-ニトロベンゼンジアゾニウムクロリド(ベンゼンジアゾニウム塩2)の水溶液を得た。この水溶液はそのまま次の反応に使用した。
亜硫酸水素ナトリウム(15.8 g, 152 mmol)及び37%ホルマリン(9.72 mL, 128 mmol)の水(20 mL)溶液を50℃の油浴中で30分間撹拌した。この溶液に、70℃の油浴中で、3-[(2,2,2-トリフルオロエチルオキシ)メチル]アニリン(22.4 g, 109 mmol)のエタノール(10 mL)溶液を加え、1時間半撹拌した後、氷冷下で酢酸ナトリウム(70 g)の水(350 mL)溶液を加え、得られた懸濁液に、別途調製した4-ニトロベンゼンジアゾニウムクロリドの水溶液を氷冷下(氷浴)で10分かけて滴下した。反応混合物を室温まで徐々に昇温させながら3時間半撹拌した。
得られたアゾベンゼン誘導体B6を含む反応溶液に、水酸化ナトリウム(22.0 g, 550 mmol)の水(150 mL)溶液を室温で加え、次いで80℃の油浴中で1時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、水(1L)を加え、析出した固体をろ取した。得られた固体を水(1L)で洗浄し、減圧乾燥することにより、粗製の4-アミノ-2-[(2,2,2-トリフルオロエチルオキシ)メチル]-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体A5)の茶褐色固体を収量38.6 gで得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 8.34 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.89 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.79 (d, J = 8.8Hz, 1H), 6.90 (d, J = 2.6Hz, 1H), 6.65 (dd, J = 8.8 and 2.6Hz, 1H), 5.25 (s, 2H), 3.98 (d, J = 8.7Hz, 2H); 19F-NMR (376MHz, CDCl3): -73.9 (s).
【0140】
[6]アゾベンゼン誘導体の製造例6
以下の実施例11、12では、アミノ基を保護してアゾベンゼン誘導体D1を製造し(実施例11)、そのアゾベンゼン誘導体D1のアミノ基の保護基を脱保護することによりアゾベンゼン誘導体C1を製造した(実施例12)。
【0141】
アニリン誘導体5の合成
ここでは、実施例11において、アゾベンゼン誘導体D1の原料として用いるアニリン誘導体5を合成した。
【0142】
【化52】
【0143】
アルゴン雰囲気下、3-アミノベンジルアルコール(10.0 g, 81.2 mmol)とイソプロピルアルコール(120 mL)の溶液にクロロ酢酸(767 mg, 8.12 mmol)及び4-メトキシベンズアルデヒド(10.4 mL, 85.3 mmol)を加え、撹拌しながら14時間加熱還流した。反応後、反応溶液を室温に戻し、減圧下濃縮することにより、3-(ヒドロキシメチル)-N-(4-メトキシベンジリデン)アニリンの粗生成物を得た。
得られた3-(ヒドロキシメチル)-N-(4-メトキシベンジリデン)アニリンの粗生成物のエタノール(120 mL)溶液を氷冷した後、水素化ホウ素ナトリウム(3.07 g, 81.2 mmol)を少量ずつ加え、室温で2日間撹拌した。反応終了後、反応溶液を氷冷し、水(100 mL)をゆっくりと加え、減圧下濃縮した。得られた反応液に、クロロホルム(100 mL)を用いて3回抽出を行い、合一した有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下濃縮し、ヘキサン:酢酸エチル=94:6~73:27の混合溶媒を溶離液に用いてカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、3-(ヒドロキシメチル)-N-(4-メトキシベンジル)アニリン(アニリン誘導体5)の黄色油状物を収量18.6 g、収率94%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 7.28 (d, J = 8.7Hz, 2H), 7.16 (m, 1H), 6.88 (d, J = 8.7Hz, 2H), 6.70 (m, 1H), 6.66 (m, 1H), 6.56 (m, 1H), 4.60 (s, 2H), 4.26 (s, 2H), 3.99 (brs, 1H), 3.80 (s, 3H).
【0144】
(実施例11)アゾベンゼン誘導体D1の製造
本実施例では、4-ニトロアニリンから生成したベンゼンジアゾニウム塩1と、合成したアニリン誘導体5とを反応させることにより、アゾベンゼン誘導体D1を製造した。
【0145】
【化53】
【0146】
4-ニトロアニリン(10.6 g, 76.4 mmol)、酢酸(93 mL)及びプロピオン酸(46 mL)の混合物を氷冷した後、硫酸(14 mL)を加えた。この溶液に亜硝酸ナトリウム(6.33 g, 91.7 mmol)の水(14 mL)溶液をゆっくり加えた後、氷冷下(氷浴)で5分間撹拌した後、尿素(1.51 g, 25.2 mmol)を加え、更に5分間撹拌し、4-ニトロベンゼンジアゾニウム硫酸塩(ベンゼンジアゾニウム塩1)の水溶液を得た。
得られた4-ニトロベンゼンジアゾニウム硫酸塩の水溶液を、氷冷したN-(3-ヒドロキシメチル)-N-(4-メトキシベンジル)アニリン(アニリン誘導体5:18.6 g,76.4 mmol)のエタノール(150 mL)溶液にゆっくりと加え、氷冷下(氷浴)で3時間撹拌した。反応後、生じた固体をろ取し、水(2L)、エタノール(100 mL)及びヘキサン(500 mL)で洗浄し、減圧下乾燥した。得られた粗固体に酢酸エチル(200 mL)及びヘキサン(300 mL)を加えた後、析出した固体をろ取することにより、粗製の2-(ヒドロキシメチル)-4-(4-メトキシベンジルアミノ)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体D1)を収量25.9 gで得た。得られた2-(ヒドロキシメチル)-4-(4-メトキシベンジルアミノ)-4’-ニトロアゾベンゼンは精製することなく次の反応に用いることができる。
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6): δ 8.34 (d, J = 8.6Hz, 2H), 7.88 (d, J = 8.6Hz, 2H), 7.67 (m, 1H), 7.29 (d, J = 8.6Hz, 2H), 6.95 (m, 1H), 6.91 (d, J = 8.6Hz, 2H), 6.62 (m, 1H), 5.00 (s, 2H), 4.37 (s, 2H), 3.73 (s, 3H).
【0147】
(実施例12)アゾベンゼン誘導体C1の製造
本実施例では、実施例11で製造したアゾベンゼン誘導体D1のアミノ基の保護基を脱保護して、アゾベンゼン誘導体C1を製造した。
【0148】
【化54】
【0149】
2-(ヒドロキシメチル)-4-(4-メトキシベンジルアミノ)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体D1:5.00 g, 12.7 mmol)とジクロロメタン(80 mL)の溶液に水(50 mL)及びDDQ(2.95 g, 13.0 mmol)を加え、室温で2日間撹拌した。反応終了後、反応混合物にクロロホルム(200 mL)を加えた後、固形物をろ取した。得られた固体を酢酸エチル(300 mL)に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水及び飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮することにより、粗製の4-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体C1)の紫色固体を収量2.51 gで得た。得られた4-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-4’-ニトロアゾベンゼンは精製することなく次の反応に用いることができる。
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6): δ 8.34 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.88 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.65 (m, 1H), 6.89 (m, 1H), 6.56 (brs, 2H), 6.54 (m, 1H), 5.23 (m, 1H), 5.01-4.98 (m, 2H).
【0150】
[7]アゾベンゼン誘導体の製造例7
以下の実施例13では、アミノ基を保護してアゾベンゼン誘導体D2を製造し、そのアゾベンゼン誘導体D2のアミノ基の保護基を脱保護することによりアゾベンゼン誘導体C1を製造した。また、実施例14では、アゾベンゼン誘導体C1の2位の水酸基をエトキシ基に変換してアゾベンゼン誘導体A1を製造した。
【0151】
(実施例13)アゾベンゼン誘導体D2、C1の製造
本実施例では、4-ニトロアニリンから生成したベンゼンジアゾニウム塩2と、3-アミノベンジルアルコールから生成したアニリン誘導体6とを反応させることにより、アゾベンゼン誘導体D2を製造し、さらに、そのアゾベンゼン誘導体D2のアミノ基の保護基を脱保護することにより、アゾベンゼン誘導体C1を製造した。
【0152】
【化55】
【0153】
4-ニトロアニリン(1.67 g, 12.1 mmol)を水(12 mL)に懸濁させた懸濁液に、室温で撹拌しながら濃塩酸(3 mL)を加えた。次いで、氷浴で冷却しながら、反応溶液に亜硝酸ナトリウム(835 mg, 12.1 mmol)の水(4 mL)溶液を滴下した後、氷冷下(氷浴)で30分間撹拌することにより4-ニトロベンゼンジアゾニウムクロリド(ベンゼンジアゾニウム塩2)の水溶液を得た。この水溶液の全量を次の反応に使用した。
亜硫酸水素ナトリウム(1.75 g, 16.8 mmol)及び37%ホルマリン(1.13 mL, 15.1 mmol)と水(2 mL)を混合した溶液を50℃(油浴)で30分間撹拌した。この溶液に、70℃の油浴中で、3-アミノベンジルアルコール(1.49 g, 12.1 mmol)のエタノール(1 mL)溶液を加え、1時間半撹拌した後、氷冷下で10分間静置した。反応混合物に酢酸ナトリウム(8 g)の水(40 mL)溶液を加え、[{3-(ヒドロキシメチル)フェニル}アミノ]メチルスルホン酸ナトリウム(アニリン誘導体6)の懸濁液を得た。
得られた[{3-(ヒドロキシメチル)フェニル}アミノ]メチルスルホン酸ナトリウムの懸濁液に、別途調製した4-ニトロベンゼンジアゾニウムクロリド(ベンゼンジアゾニウム塩2)の水溶液を氷冷下(氷浴)で10分かけて滴下した。反応混合物を室温まで徐々に昇温させながら3時間撹拌し、2-(ヒドロキシメチル)-4-(ソジオオキシスルホニルメチルアミノ)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体D2)の水溶液を得た。
得られた2-(ヒドロキシメチル)-4-(ソジオオキシスルホニルメチルアミノ)-4’-ニトロアゾベンゼンの水溶液に、水酸化ナトリウム(2.42 g, 60.5 mmol)の水(20 mL)溶液を室温で加え、次いで80℃の油浴中で1時間半撹拌した。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、水(100 mL)を加え、析出した固体をろ取した。得られた固体を水(100 mL)で洗浄し、減圧乾燥することにより、4-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体C1)の茶褐色固体を収量2.48 g、収率:75%で得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6): δ 8.34 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.88 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.65 (m, 1H), 6.89 (m, 1H), 6.56 (brs, 2H), 6.54 (m, 1H), 5.23 (m, 1H), 5.01-4.98 (m, 2H).
【0154】
(実施例14)アゾベンゼン誘導体A1の製造
本実施例では、実施例13で製造したアゾベンゼン誘導体C1の水酸基をエトキシ基に変換して、アゾベンゼン誘導体A1を製造した。
【0155】
【化56】
【0156】
アルゴン雰囲気下、ヘキサンで鉱油を洗浄除去した55%油性水素化ナトリウム(64.1 mg, 1.47 mmol)をDMF(2 mL)に懸濁させた懸濁液に、冷却下(氷浴)で、4-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体C1:100 mg, 0.367 mmol)のDMF(2 mL)溶液をゆっくり加えた。次いで、ヨードエタン(60 mg, 0.385 mmol)を加え、室温まで昇温させた後、24時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を冷却(氷浴)し、水(50 mL)を加えた。得られた混合物に酢酸エチル(50 mL)を用いて3回抽出を行い、合一した有機層を蒸留水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下濃縮することで得られた粗生成物を、ヘキサン:酢酸エチル=64:36~43:57の混合溶媒を溶離液に用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、4-アミノ-2-(エトキシメチル)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体A1)の赤褐色固体を収量42.5 mg、収率37%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 8.34 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.90 (d, J = 9.1Hz, 2H), 7.76 (d, J = 8.8Hz, 1H), 6.94 (d, J = 2.6Hz, 1H), 6.61 (dd, J = 8.8 and 2.6Hz, 1H), 5.07 (s, 2H), 4.25 (brs, 2H), 3.69 (q, J = 7.0Hz, 2H), 1.31 (t, J = 7.0Hz, 3H).
【0157】
[8]アゾベンゼン誘導体の製造例8
以下の実施例15では、アミノ基が保護されたアゾベンゼン誘導体F1を製造し、そのアゾベンゼン誘導体F1の水酸基をアセチルオキシ基に変換してアゾベンゼン誘導体E1を製造した。また、実施例16では、アゾベンゼン誘導体F1の水酸基をエトキシカルボニルオキシ基に変換してアゾベンゼン誘導体E2を製造した。
【0158】
(実施例15)アゾベンゼン誘導体F1、E1の製造
本実施例では、4,4’-ジアミノ-2-(ヒドロキシメチル)アゾベンゼンを原料に用いて、アゾベンゼン誘導体F1、E1を製造した。
【0159】
【化57】
【0160】
アルゴン雰囲気下、4,4’-ジアミノ-2-(ヒドロキシメチル)アゾベンゼン(15.0 g, 61.9mmol)のTHF(300 mL)溶液を氷冷した後、二炭酸ジtert-ブチル(40.6 g, 186 mmol)を加えた。反応系を55℃で12時間撹拌した後、減圧下濃縮し、得られた残渣をヘキサンで洗浄することにより、4,4’-ビス(tert-ブチルオキシカルボニルアミノ)-2-(ヒドロキシメチル)アゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体F1)の黄色固体を収量24.4 g、収率89%で得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6): δ 9.72 (brs, 1H), 9.69 (brs, 1H), 7.87 (d, J = 2.2Hz, 1H), 7.77 (d, J = 9.0Hz, 2H), 7.64 (d, J = 9.0Hz, 2H), 7.55 (d, J = 8.8Hz, 1H), 7.43 (dd, J = 8.9 and 2.3Hz, 1H), 5.21 (t, J = 5.6Hz, 1H), 5.02 (d, J = 5.5Hz, 2H), 1.50 (s, 18H).
【0161】
【化58】
【0162】
アルゴン雰囲気下、4,4’-ビス(tert-ブチルオキシカルボニルアミノ)-2-(ヒドロキシメチル)アゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体F1:24.0 g, 54.2 mmol)のTHF(300 mL)溶液を氷冷した後、無水酢酸(5.81 g, 56.9 mmol)、ピリジン(8.54 g, 108 mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(66 mg, 0.54 mmol)を順次加えた。反応系を50℃で4時間撹拌した後、減圧下濃縮し、残渣を酢酸エチル(500 mL)に溶解させた。有機層を水(200 mL)、飽和食塩水(100 mL)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮することにより、4,4’-ビス(tert-ブチルオキシカルボニルアミノ)-2-(アセチルオキシメチル)アゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体E1)の黄色固体を収量23.5 g、収率89%で得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6): δ 9.77 (brs, 1H), 9.76 (brs, 1H), 7.79 (d, J = 9.0Hz, 2H), 7.69 (d, J = 2.2Hz, 1H), 7.66 (d, J = 9.0Hz, 2H), 7.65 (d, J = 8.9Hz, 1H), 7.58 (dd, J = 8.9 and 2.2Hz, 1H), 5.59 (s, 2H), 2.09 (s, 3H), 1.50 (s, 18H).
【0163】
(実施例16)アゾベンゼン誘導体E2の製造
本実施例では、実施例15で合成したアゾベンゼン誘導体F1を原料に用いて、アゾベンゼン誘導体E2を製造した。
【0164】
【化59】
【0165】
アルゴン雰囲気下、アゾベンゼン誘導体F1(19.0 g, 42.9 mmol)のTHF(150 mL)溶液を氷冷した後、ピリジン(8.46 g, 107 mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(524 mg, 4.29 mmol)、クロロぎ酸エチル(7.91 g, 72.9 mmol)を順次加えた。反応系を室温まで昇温させながら1時間半撹拌した後、減圧下濃縮し、残渣を酢酸エチル(500 mL)に溶解させた。有機層を水(200 mL)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮することにより、4,4’-ビス(tert-ブチルオキシカルボニルアミノ)-2-(エトキシカルボニルオキシメチル)アゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体E2)の黄色固体を収量20.9 g、収率95%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 7.86 (m, 2H), 7.76 (m, 1H), 7.55 (m, 1H), 7.52-7.45 (m, 3H), 6.65 (brs, 2H), 5.74 (s, 2H), 4.23 (q, J = 7.1Hz, 2H), 1.55 (s, 9H), 1.54 (s, 9H), 1.31 (t, J = 7.1Hz, 3H).
【0166】
[9]4,4’-ジアミノアゾベンゼン類の製造例
以下の実施例17~25では、アゾベンゼン誘導体A1~A5、C1、E1、E2を原料に用いて4,4’-ジアミノアゾベンゼン類1~8を製造した。
【0167】
(実施例17)4,4’-ジアミノアゾベンゼン類1の製造
本実施例では、アゾベンゼン誘導体A1を原料に用いて、4,4’-ジアミノアゾベンゼン類1を製造した。
【0168】
【化60】
【0169】
4-アミノ-2-(エトキシメチル)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体A1:30.6 g, 102 mmol)のエタノール(500 mL)溶液に水(50 mL)及び硫化ナトリウム(23.9 g, 306 mmol)を加え30分間加熱還流した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、水(100 mL)を加え、減圧下濃縮した後、酢酸エチル(300 mL)で抽出した。合一した有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下濃縮することにより、4,4’-ジアミノ-2-(エトキシメチル)アゾベンゼンの粗生成物を得た。
得られた粗生成物にトルエン(70 mL)を加えて溶解させ、次いでヘキサン(100 mL)を加え、析出した固体をろ取した。得られた固体を、ヘキサン:酢酸エチル=70:30~25:75の混合溶媒を溶離液に用いてカラムクロマトグラフィーにて精製した後、メタノール(200 mL)に溶解させ、活性炭(10 g)を加えて50℃の油浴中で10分間撹拌した。活性炭をろ別し、母液から減圧下に溶媒を留去することにより、4,4’-ジアミノ-2-(エトキシメチル)アゾベンゼン(4,4’-ジアミノアゾベンゼン類1)の黄色固体を収量9.93 g、収率36%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 7.71 (d, J = 8.7Hz, 2H), 7.63 (m, 1H), 6.90 (m, 1H), 6.72 (d, J = 8.7Hz, 2H), 6.59 (m, 1H), 5.05 (s, 2H), 3.95 (brs, 4H), 3.65 (q, J = 7.0Hz, 2H), 1.29 (t, J = 7.0Hz, 3H).
【0170】
(実施例18)4,4’-ジアミノアゾベンゼン類2の製造
本実施例では、アゾベンゼン誘導体A3を原料に用いて、4,4’-ジアミノアゾベンゼン類2を製造した。
【0171】
【化61】
【0172】
4-アミノ-2-(プロピルオキシメチル)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体A3:3.00 g, 9.54 mmol)のエタノール(48 mL)溶液に、水(4.8 mL)及び硫化ナトリウム(2.23 g, 28.6 mmol)を加え、30分間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却し、減圧濃縮した後、水(50 mL)を加え、酢酸エチル(50 mL)を用いて3回抽出を行った。合一した有機層を水(50 mL)及び飽和食塩水(50 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮することにより、4,4’-ジアミノ-2-(プロピルオキシメチル)アゾベンゼンの粗生成物を得た。
得られた4,4’-ジアミノ-2-(プロピルオキシメチル)アゾベンゼンの粗生成物を、ヘキサン:酢酸エチル=60:40の混合溶媒を溶離液に用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、高極性成分を除去した。次いで、得られた粗生成物をトルエン(5 mL)に溶解し、ヘキサン(10 mL)を加え、析出した固体をろ取することで、粗固体(2.2 g)を得た。得られた粗固体(2.2 g)をメタノール(44 mL)に溶解させた。このメタノール溶液に、活性炭(2.2 g)を加え50℃の油浴中で10分間撹拌した後、更にメタノール(44 mL)を加え、セライトろ過で活性炭を取り除いた。得られた母液を減圧濃縮した後、減圧乾燥することにより、4,4’-ジアミノ-2-(プロピルオキシメチル)アゾベンゼン(4,4’-ジアミノアゾベンゼン類2)の黄色固体を収量1.87 g、収率69%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 7.72 (d, J = 8.8Hz, 2H), 7.63 (d, J = 8.7Hz, 1H), 6.91 (s, 1H), 6.73 (d, J = 8.8Hz, 2H), 6.60 (dd, J = 8.7 and 2.6Hz, 1H), 5.05 (s, 2H), 3.95 (brs, 4H), 3.55 (t, J = 6.71Hz, 2H), 1.67 (qt, J = 7.4 and 6.7Hz, 2H), 0.97 (t, J = 7.4Hz, 3H).
【0173】
(実施例19)4,4’-ジアミノアゾベンゼン類3の製造
本実施例では、アゾベンゼン誘導体A2を原料に用いて、4,4’-ジアミノアゾベンゼン類3を製造した。
【0174】
【化62】
【0175】
4-アミノ-2-(イソプロピルオキシメチル)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体A2:5.06 g, 16.1 mmol)のエタノール(80 mL)溶液に、水(8 mL)及び硫化ナトリウム(3.77 g, 48.3 mmol)を加え、30分間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却し、減圧濃縮した後、水(30 mL)を加え、酢酸エチル(100 mL)を用いて4回抽出を行った。合一した有機層を水(150 mL)及び飽和食塩水(150 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮することにより、4,4’-ジアミノ-2-(プロピルオキシメチル)アゾベンゼンの粗生成物を得た。
得られた4,4’-ジアミノ-2-(プロピルオキシメチル)アゾベンゼンの粗生成物を、ヘキサン:酢酸エチル=70:30~25:75の混合溶媒を溶離液に用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、高極性成分を除去した。次いで、得られた粗生成物をトルエン(5 mL)に溶解し、ヘキサン(10 mL)を加え、析出した固体をろ取することで、粗固体(2.4 g)を得た。得られた粗固体(2.4 g)をメタノール(48 mL)に溶解させた。このメタノール溶液に、活性炭(2.4 g)を加え50℃(油浴)で10分間撹拌した後、更にメタノール(48 mL)を加え、セライトろ過で活性炭を取り除いた。得られた母液を減圧濃縮した後、減圧乾燥することにより、4,4’-ジアミノ-2-(イソプロピルオキシメチル)アゾベンゼン(4,4’-ジアミノアゾベンゼン類3)の黄色固体を収量1.63 g、収率36%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 7.72 (d, J = 8.8Hz, 2H), 7.62 (d, J = 8.7Hz, 1H), 6.93 (d, J = 2.6Hz, 1H), 6.73 (d, J = 8.8Hz, 2H), 6.60 (dd, J = 8.7 and 2.6Hz, 1H), 5.05 (s, 2H), 3.95 (brs, 4H), 3.78 (t, J = 6.1Hz, 1H), 1.26 (d, J = 6.1Hz, 6H).
【0176】
(実施例20)4,4’-ジアミノアゾベンゼン類4の製造
本実施例では、アゾベンゼン誘導体C1を原料に用いて、4,4’-ジアミノアゾベンゼン類4を製造した。
【0177】
【化63】
【0178】
4-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体C1:132 mg, 0.485 mmol)のエタノール(25 mL)溶液に、水(2.5 mL)及び硫化ナトリウム(114 mg, 1.46 mmol)を加え、30分間加熱還流した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、水(100 mL)を加え、減圧下濃縮した。得られた反応液を、酢酸エチル(100 mL)を用いて3回抽出を行い、合一した有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下濃縮することにより、4,4’-ジアミノ-2-(ヒドロキシメチル)アゾベンゼンの粗生成物を得た。
得られた4,4’-ジアミノ-2-(ヒドロキシメチル)アゾベンゼンの粗生成物を、酢酸エチルを溶離液に用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、高極性成分を除去した。次いで、得られた粗生成物にトルエン(5 mL)及びヘキサン(10 mL)を加え、析出した固体をろ取することで、粗固体(0.1 g)を得た。得られた粗固体(0.1 g)をメタノール(10 mL)に溶解させた。このメタノール溶液に、活性炭(0.1 g)を加え50℃(油浴)で10分間撹拌した後、更にメタノール(10 mL)を加え、セライトろ過で活性炭を取り除いた。得られた母液を減圧濃縮した後、減圧乾燥することにより、4,4’-ジアミノ-2-(ヒドロキシメチル)アゾベンゼンの黄色固体(収量67 mg,収率:58%)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6): δ 7.50 (d, J = 8.8Hz, 2H), 7.42 (m, 1H), 6.81 (m, 1H), 6.62 (d, J = 8.8Hz, 2H), 6.46 (m, 1H), 5.72 (brs, 2H), 5.71 (brs, 2H), 5.00 (m, 1H), 4.93-4.90 (m, 2H).
【0179】
【化64】
【0180】
アルゴン雰囲気下、ヘキサンで鉱油を洗浄除去した55%油性水素化ナトリウム(54.1 mg, 1.24mmol)をTHF(6 mL)に懸濁させた懸濁液に、冷却下(氷浴)で、4,4’-ジアミノ-2-(ヒドロキシメチル)アゾベンゼン(300 mg, 1.24 mmol)のTHF(6 mL)溶液をゆっくり加えた。次いで、ヨードメタン(176 mg, 1.24 mmol)を加え、室温まで昇温させた後、22時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を冷却(氷浴)し、水(50 mL)を加えた。得られた混合物を、酢酸エチル(30 mL)を用いて3回抽出を行い、合一した有機層を蒸留水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下濃縮することで得られた粗生成物を、ヘキサン:酢酸エチル=57:43~36:64の混合溶媒を溶離液に用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、4,4’-ジアミノ-2-(メトキシメチル)アゾベンゼン(4,4’-ジアミノアゾベンゼン類4)の黄色固体を収量135 mg、収率42%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 7.72 (d, J = 8.8Hz, 2H), 7.64 (d, J = 8.7Hz, 1H), 6.88 (d, J = 2.6Hz, 1H), 6.73 (d, J = 8.8Hz, 2H), 6.61 (dd, J = 8.8 and 2.6Hz, 1H), 5.01 (s, 2H), 3.95 (brs, 4H), 3.49 (s, 3H).
【0181】
(実施例21)4,4’-ジアミノアゾベンゼン類1の他工程による製造
ヨードメタンの代わりにヨードエタンを用いること以外は、実施例20と同様にして、4,4’-ジアミノ-2-(ヒドロキシメチル)アゾベンゼンを原料に用いて、4,4’-ジアミノ-2-(エトキシメチル)アゾベンゼン(4,4’-ジアミノアゾベンゼン類1)を合成した。
【0182】
【化65】
【0183】
アルゴン雰囲気下、ヘキサンで鉱油を洗浄除去した55%油性水素化ナトリウム(54.1 mg, 1.24mmol)をDMF(6 mL)に懸濁させた懸濁液に、冷却下(氷浴)で、4,4’-ジアミノ-2-(ヒドロキシメチル)アゾベンゼン(300 mg, 1.24 mmol)とDMF(6 mL)の溶液をゆっくり加えた。次いで、ヨードエタン(193 mg, 1.24 mmol)を加え、室温まで昇温させた後、22時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を冷却(氷浴)し、水(50 mL)を加えた。得られた混合物に酢酸エチル(50 mL)を用いて3回抽出を行い、合一した有機層を蒸留水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下濃縮することで得られた粗生成物をヘキサン:酢酸エチル=57:43~36:64の混合溶媒を溶離液に用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、4,4’-ジアミノ-2-(エトキシメチル)アゾベンゼン(4,4’-ジアミノアゾベンゼン類1)の黄色固体を収量132 mg、収率39%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 7.71 (d, J = 8.7Hz, 2H), 7.63 (m, 1H), 6.90 (m, 1H), 6.72 (d, J = 8.7Hz, 2H), 6.59 (m, 1H), 5.05 (s, 2H), 3.95 (brs, 4H), 3.65 (q, J = 7.0Hz, 2H), 1.29 (t, J = 7.0Hz, 3H).
【0184】
(実施例22)4,4’-ジアミノアゾベンゼン類5の製造
本実施例では、アゾベンゼン誘導体A4を原料に用いて、4,4’-ジアミノアゾベンゼン類5を製造した。
【0185】
【化66】
4-アミノ-2-(イソブチルオキシメチル)-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体A4:58.8 g, 179 mmol)のエタノール(880 mL)溶液に、水(60 mL)及び硫化ナトリウム(42.0 g, 538 mmol)を加え、30分間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却し、減圧濃縮した後、水(300 mL)を加え、酢酸エチル(300 mL)を用いて3回抽出を行った。合一した有機層を水(300 mL)及び飽和食塩水(300 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮することにより、4,4’-ジアミノ-2-(イソブチルオキシメチル)アゾベンゼンの粗生成物を得た。
得られた4,4’-ジアミノ-2-(イソブチルオキシメチル)アゾベンゼンの粗生成物を、ヘキサン:酢酸エチル=60:40の混合溶媒を溶離液に用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、高極性成分を除去した。次いで、得られた粗生成物をトルエン(50 mL)に溶解し、ヘキサン(200 mL)を加え、析出した固体をろ取することにより、粗固体を得た。得られた粗固体(15 g)をメタノール(600 mL)に溶解させ、活性炭(15 g)を加え50℃の油浴中で5分間撹拌した後、更にメタノール(300 mL)を加え、セライトろ過で活性炭を取り除いた。得られた母液を減圧濃縮した後、減圧乾燥することにより、4,4’-ジアミノ-2-(イソブチルオキシメチル)アゾベンゼン(4,4’-ジアミノアゾベンゼン類5)の黄色固体を収量12.3 g、収率23%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 7.72 (d, J = 8.8Hz, 2H), 7.62 (d, J = 8.6Hz, 1H), 6.92 (d, J = 2.6Hz, 1H), 6.73 (d, J = 8.8Hz, 2H), 6.60 (dd, J = 8.6 and 2.6Hz, 1H), 5.04 (s, 2H), 3.95 (brs, 4H), 3.35 (d, J = 6.7Hz, 2H), 1.97 (m, 1H), 0.96 (d, J = 6.7Hz, 6H).
【0186】
(実施例23)4,4’-ジアミノアゾベンゼン類6の製造
本実施例では、アゾベンゼン誘導体A5を原料に用いて、4,4’-ジアミノアゾベンゼン類6を製造した。
【0187】
【化67】
【0188】
4-アミノ-2-[(2,2,2-トリフルオロエチルオキシ)メチル]-4’-ニトロアゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体A5:38.6 g, 109 mmol)のエタノール(550 mL)溶液に、水(45 mL)及び硫化ナトリウム(25.5 g, 327 mmol)を加え、30分間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却し、減圧濃縮した後、水(100 mL)を加え、酢酸エチル(100 mL)を用いて3回抽出を行った。合一した有機層を水(150 mL)及び飽和食塩水(150 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮することにより、4,4’-ジアミノ-2-[(2,2,2-トリフルオロエチルオキシ)メチル]アゾベンゼンの粗生成物を得た。
得られた4,4’-ジアミノ-2-[(2,2,2-トリフルオロエチルオキシ)メチル]アゾベンゼンの粗生成物を、ヘキサン:酢酸エチル=60:40の混合溶媒を溶離液に用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、高極性成分を除去した。次いで、得られた粗生成物をトルエン(10 mL)に溶解し、ヘキサン(200 mL)を加え、析出した固体をろ取することにより、粗固体(12.7 g)を得た。得られた粗固体(12.7 g)をメタノール(260 mL)に溶解させ、活性炭(13 g)を加え50℃の油浴中で5分間撹拌した後、更にメタノール(260 mL)を加え、セライトろ過で活性炭を取り除いた。得られた母液を減圧濃縮した後、減圧乾燥することにより、4,4’-ジアミノ-2-[(2,2,2-トリフルオロエチルオキシ)メチル]アゾベンゼン(4,4’-ジアミノアゾベンゼン類6)の黄色固体を収量9.53 g、収率27%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 7.71 (d, J = 8.7Hz, 2H), 7.66 (d, J = 8.7Hz, 1H), 6.86 (d, J = 2.6Hz, 1H), 6.73 (d, J = 8.7Hz, 2H), 6.65 (dd, J = 8.7 and 2.6Hz, 1H), 5.22 (s, 2H), 3.99 (brs, 4H), 3.94 (t, J = 8.8Hz, 2H); 19F-NMR (376MHz, CDCl3): -74.0 (s).
【0189】
(実施例24)4,4-ジアミノアゾベンゼン類7の製造
本実施例では、アゾベンゼン誘導体E1を原料に用いて、4,4-ジアミノアゾベンゼン類7を製造した。
【0190】
【化68】
【0191】
アルゴン雰囲気下、4,4’-ビス(tert-ブチルオキシカルボニルアミノ)-2-(アセチルオキシメチル)アゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体E1:23.4 g, 48.3 mmol)のジクロロメタン(450 mL)溶液を氷冷した後、TFA(55.1 g, 483 mmol)を加えた。反応系を徐々に室温まで昇温させながら13時間撹拌した後、減圧下濃縮した。残渣に酢酸エチル(500 mL)を加えた後、飽和炭酸ナトリウム水溶液(200 mL)を加えて撹拌した。有機層を水(200 mL)、飽和食塩水(200 mL)にて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた粗生成物を、ヘキサン:酢酸エチル=60:40の混合溶媒を溶離液に用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、高極性成分を除去した。次いで、得られた粗生成物をトルエン(20 mL)に溶解し、ヘキサン(200 mL)を加え、析出した固体をろ取することにより、粗固体(10.9 g)を得た。得られた粗固体(10.9 g)をメタノール(600 mL)に溶解させ、活性炭(10 g)を加え50℃の油浴中で5分間撹拌した後、更にメタノール(600 mL)を加え、セライトろ過で活性炭を取り除いた。得られた母液を減圧濃縮した後、減圧乾燥することにより、4,4’-ジアミノ-2-(アセチルオキシメチル)アゾベンゼン(4,4’-ジアミノアゾベンゼン類7)の黄色固体を収量8.59 g、収率63%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 7.73 (d, J = 8.8Hz, 2H), 7.67 (d, J = 8.7Hz, 1H), 6.78 (d, J = 2.6Hz, 1H), 6.72 (d, J = 8.8Hz, 2H), 6.66 (dd, J = 8.7 and 2.6Hz, 1H), 5.66 (s, 2H), 3.97 (brs, 4H), 2.12 (s, 3H).
【0192】
(実施例25)4,4-ジアミノアゾベンゼン類8の製造
本実施例では、アゾベンゼン誘導体E2を原料に用いて、4,4-ジアミノアゾベンゼン類8を製造した。
【化69】
【0193】
アルゴン雰囲気下、4,4’-ビス(tert-ブチルオキシカルボニルアミノ)-2-(エトキシカルボニルオキシメチル)アゾベンゼン(アゾベンゼン誘導体E2:81.9 mg, 0.159 mmol)のジクロロメタン(1 mL)溶液を氷冷した後、TFA(181 mg, 1.59 mmol)を加えた。反応系を徐々に室温まで昇温させながら21時間撹拌した後、減圧下濃縮した。残渣に酢酸エチル(10 mL)を加えた後、飽和炭酸ナトリウム水溶液(10 mL)を加えて撹拌した。有機層を水(50 mL)にて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、4,4’-ジアミノ-2-(エトキシカルボニルオキシメチル)アゾベンゼン(4,4’-ジアミノアゾベンゼン類8)の黄色固体を収量3.66 mg、収率7%で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 7.73 (d, J = 8.8Hz, 2H), 7.67 (d, J = 8.7Hz, 1H), 6.82 (d, J = 2.6Hz, 1H), 6.72 (d, J = 8.8Hz, 2H), 6.65 (dd, J = 8.7 and 2.6Hz, 1H), 5.72 (s, 2H), 4.24 (q, J = 7.1Hz, 2H), 3.97 (brs, 4H), 1.32 (t, J = 7.1Hz, 3H).
【産業上の利用可能性】
【0194】
本発明のアゾベンゼン誘導体を中間体として用いることにより、液晶ディスプレイ用ポリイミド光配向膜の製造原料である4,4’-ジアミノアゾベンゼン類を簡便な手法により、高い純度で効率よく製造することができる。したがって、本発明のアゾベンゼン誘導体は産業上の利用可能性が高い。