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特許7079340半導体装置の製造方法、基板処理装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20220525BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20220525BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20220525BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/31 B
C23C16/455
C23C16/40
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020548564
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2019036615
(87)【国際公開番号】W WO2020066800
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2018180802
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹林 雄二
(72)【発明者】
【氏名】寿崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】磯辺 紀之
(72)【発明者】
【氏名】中川 隆一
(72)【発明者】
【氏名】平野 敦士
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-118462(JP,A)
【文献】特開2015-173226(JP,A)
【文献】特開2006-286716(JP,A)
【文献】特開平03-255618(JP,A)
【文献】特開2015-065447(JP,A)
【文献】特開2018-087370(JP,A)
【文献】特開2013-225660(JP,A)
【文献】特開2015-153825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/31
C23C 16/455
C23C 16/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内に収容された基板に対して原料ガスを供給する第1ガス供給工程と、
前記基板に対して反応ガスを供給する第2ガス供給工程と、を有し、
前記第1ガス供給工程と前記第2ガス供給工程とを交互に行って前記基板上に膜を形成し、前記第2ガス供給工程では、前記基板に対して前記反応ガスを供給する反応ガス供給系から前記反応ガスを供給すると共に前記反応ガスが前記基板の中心部に到達し易くなるように前記基板に対して前記反応ガス供給系とは異なる供給系から不活性ガスを供給し、前記第1ガス供給工程における前記原料ガスと前記第2ガス供給工程における前記反応ガスは、それぞれ独立したガス供給ラインから前記基板に対して供給し、前記第2ガス供給工程では、前記第1ガス供給工程において前記原料ガスを供給するガス供給ラインを介して前記基板に対して前記不活性ガスを供給する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2ガス供給工程では、前記基板の表面積に応じて前記不活性ガスの供給量を調整する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2ガス供給工程では、前記反応ガスの供給開始時点では、前記不活性ガスの供給量に対して前記反応ガスの供給量を多くする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
処理室内に収容された基板に対して原料ガスを供給する第1ガス供給工程と、
前記基板に対して反応ガスを供給する第2ガス供給工程と、を有し、
前記第1ガス供給工程と前記第2ガス供給工程とを交互に行って前記基板上に膜を形成し、前記第2ガス供給工程では、前記基板に対して前記反応ガスを供給する反応ガス供給系から前記反応ガスを供給すると共に前記反応ガスが前記基板の中心部に到達し易くなるように前記基板に対して前記反応ガス供給系とは異なる供給系から不活性ガスを供給し、
前記第2ガス供給工程では、前記反応ガスの供給開始時点では、前記不活性ガスの供給量に対して前記反応ガスの供給量を多くして、徐々に少なくする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2ガス供給工程では、前記反応ガスの供給開始時点では、前記不活性ガスの供給量に対して前記反応ガスの供給量を少なくする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
処理室内に収容された基板に対して原料ガスを供給する第1ガス供給工程と、
前記基板に対して反応ガスを供給する第2ガス供給工程と、を有し、
前記第1ガス供給工程と前記第2ガス供給工程とを交互に行って前記基板上に膜を形成し、前記第2ガス供給工程では、前記基板に対して前記反応ガスを供給する反応ガス供給系から前記反応ガスを供給すると共に前記反応ガスが前記基板の中心部に到達し易くなるように前記基板に対して前記反応ガス供給系とは異なる供給系から不活性ガスを供給し、
前記第2ガス供給工程では、前記反応ガスの供給開始時点では、前記不活性ガスの供給量に対して前記反応ガスの供給量を少なくし、徐々に多くする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1ガス供給工程と、前記第2ガス供給工程と、を複数回繰り返し行い、前記第2ガス供給工程において前記反応ガスの供給量に対する前記不活性ガスの供給量を変化させる請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2ガス供給工程において、前記反応ガスの供給量に対する前記不活性ガスの供給量を少なくして、前記第1ガス供給工程と、前記第2ガス供給工程と、を繰り返して行う請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2ガス供給工程において、前記反応ガスの供給量に対する前記不活性ガスの供給量を多くして、前記第1ガス供給工程と、前記第2ガス供給工程と、を繰り返して行う請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
処理室内に収容された基板に対して原料ガスを供給する第1ガス供給工程と、
前記基板に対して反応ガスを供給する第2ガス供給工程と、を有し、
前記第1ガス供給工程と前記第2ガス供給工程とを交互に行って前記基板上に膜を形成し、前記第2ガス供給工程では、前記基板に対して前記反応ガスを供給する反応ガス供給系から前記反応ガスを供給すると共に前記反応ガスが前記基板の中心部に到達し易くなるように前記基板に対して前記反応ガス供給系とは異なる供給系から不活性ガスを供給し、
前記第1ガス供給工程と、前記第2ガス供給工程と、を複数回繰り返し行い、前記複数回繰り返し行ううちの前半における前記第2ガス供給工程において、前記反応ガスの供給量に対する前記不活性ガスの供給量を少なくして、前記第1ガス供給工程と、前記第2ガス供給工程と、を繰り返して行い、前記複数回繰り返し行ううちの後半における前記第2ガス供給工程において、前記反応ガスの供給量に対する前記不活性ガスの供給量を多くして、前記第1ガス供給工程と、前記第2ガス供給工程と、を繰り返して行う半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第2ガス供給工程において、前記不活性ガスを供給するノズルが、前記反応ガスを供給するノズルと排気管とを通る直線の両側に設けられ、前記不活性ガスを供給するノズルから供給される不活性ガスの流量を異ならせるようにする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記反応ガスは、オゾンガスである請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
基板処理装置の処理室内に収容された基板に対して原料ガスを供給する第1ガス供給手順と、
前記基板に対して反応ガスを供給する第2ガス供給手順と、を有し、
前記第1ガス供給手順と前記第2ガス供給手順とを交互に行って前記基板上に膜を形成し、前記第2ガス供給手順では、前記基板に対して前記反応ガスを供給する反応ガス供給系から前記反応ガスを供給すると共に前記反応ガスが前記基板の中心部に到達し易くなるように前記基板に対して前記反応ガス供給系とは異なる供給系から不活性ガスを供給し、前記第1ガス供給手順における前記原料ガスと前記第2ガス供給手順における前記反応ガスは、それぞれ独立したガス供給ラインから前記基板に対して供給し、前記第2ガス供給手順では、前記第1ガス供給手順において前記原料ガスを供給するガス供給ラインを介して前記基板に対して前記不活性ガスを供給する手順を、コンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項14】
基板を収容して処理する処理室と、
前記処理室内に収容された前記基板に対して原料ガスを供給する第1ガス供給部と、前記基板に対して反応ガスを供給する第2ガス供給部と、を有するガス供給部と、
前記処理室内に収容された前記基板に対して前記第1ガス供給部から前記原料ガスを供給する第1ガス供給工程と、前記第2ガス供給部から前記処理室内に前記反応ガスを供給する第2ガス供給工程とを交互に行って前記基板上に膜を形成し、前記第2ガス供給工程では、前記基板に対して前記反応ガスを供給すると共に前記反応ガスが前記基板の中心部に到達し易くなるように前記第1ガス供給部から前記基板に対して不活性ガスを供給し、前記第1ガス供給工程における前記原料ガスと前記第2ガス供給工程における前記反応ガスは、それぞれ独立したガス供給ラインから前記基板に対して供給し、前記第2ガス供給工程では、前記第1ガス供給工程において前記原料ガスを供給するガス供給ラインを介して前記基板に対して前記不活性ガスを供給するように、前記ガス供給部を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、基板処理装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウエハなどの基板に薄膜を形成して、半導体装置を製造する基板処理装置及び半導体装置の製造方法が開発されている。
【0003】
例えば、基板を収容する処理室に、原料ガスと、原料ガスと反応する反応ガスとを順番に供給して、処理室内に収容された基板に膜を形成する半導体装置の製造方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1:特開2014-127702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されているように、原料ガスと、原料ガスと反応する反応ガスとを処理室内に順番に供給して、処理室内に収容された基板に膜を形成する際、基板上に形成される膜の面内均一性を高めることが求められている。
【0006】
本開示は、処理室に収容された基板に原料ガスと反応ガスとを交互に供給して基板の表面に膜を形成する場合に、膜の面内均一性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
本開示の一態様によれば、処理室内に収容された基板に対して原料ガスを供給する第1ガス供給工程と、
前記基板に対して反応ガスを供給する第2ガス供給工程と、
を有し、
前記第1ガス供給工程と前記第2ガス供給工程とを交互に行って前記基板上に膜を形成し、前記第2ガス供給工程では、前記基板に対して前記反応ガスを供給する反応ガス供給系から前記反応ガスを供給すると共に前記反応ガスが前記基板の中心部に到達し易くなるように前記基板に対して前記反応ガス供給系とは異なるガス供給系から不活性ガスを供給する技術が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、処理室に収容された基板に原料ガスと反応ガスとを交互に供給して基板の表面に膜を形成する場合に、膜の面内均一性を向上させる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施形態に係る基板処理装置の縦型処理炉の概略を示す縦断面図である。
図2図1におけるA-A線概略横断面図である。
図3】第一実施形態に係る基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図4】第2ガス供給工程におけるオゾンガスの供給量に対する窒素ガスの供給量が多過ぎる場合の膜厚の面内分布を示す図である。
図5】第2ガス供給工程におけるオゾンガスの供給量に対する窒素ガスの供給量が少な過ぎる場合の膜厚の面内分布を示す図である。
図6】第2ガス供給工程におけるオゾンガスの供給量に対する窒素ガスの供給量を変化させた場合の膜厚の面内分布を示す図である。
図7】第二実施形態に係る基板処理装置の縦型処理炉におけるガスを供給するノズルの配置を示す概略横断面図である。
図8】第三実施形態に係る基板処理装置の縦型処理炉におけるガスを供給するノズルの配置を示す概略横断面図である。
図9】第四実施形態に係る基板処理装置の縦型処理炉におけるガスを供給するノズルの配置を示す概略横断面図である。
図10】第三実施形態の変形例に係る基板処理装置の縦型処理炉におけるガスを供給するノズルの配置を示す概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。例えば、10sccm~500sccmとは、10sccm以上500sccm以下を意味する。流量のみならず、圧力、時間、温度等、本明細書に記載される全ての数値範囲について同様である。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
【0011】
原料ガスと、原料ガスと反応する反応ガスと、を基板に交互に供給して基板上に膜を形成する場合、例えば、複数の基板を基板支持部材に支持して処理室内に収容し、基板の配列方向に沿って処理室の下部領域から上部領域まで延在し、各基板に対してガスを噴出するための複数のガス供給孔が開口するロングノズルを備えた基板処理装置を用いれば、複数枚の基板を同時に処理することができる。
しかし、原料ガスとして例えばトリメチルアルミニウム(Al(CH、以下「TMA」と略記する場合がある。)を供給し、反応ガスとしてオゾン(O)を供給してウエハの表面にAlO膜(AlO層)を形成する場合、オゾンは失活しやすく、ガス供給管の入り口(インレット)に入ってからウエハ中心に到達するまでの4~6×10-2secの間に、濃度が1/30~1/100へ減少する。その結果、膜厚の面内均一性が低下してしまう。
また、近年、半導体装置の微細化に伴い、ウエハ表面にパターンが形成され、ベアウエハと比較して表面積が大きくなり、その結果、膜厚の面内均一性が低下してしまう。
【0012】
膜厚の面内均一性を向上させるため、本件開示者らは鋭意検討を重ねる中、TMAガスの供給時間を長くしても、膜の面内均一性を十分改善することができなかった。一方、Oガスの供給時間を長くすると膜厚はウエハ中心部に近くいほど薄い凹んだ形状となり、膜の面内均一性は低下した。TMAガスの供給によりCH等の副生成物が生成し、Oガスの供給により、NO,CO,CH,CH等の様々な副生成物が生成され、Oより先に、CH又はCOがウエハ表面に吸着して成膜を阻害している可能性がある。
そこで、本件開示者らはさらに検討を重ねたところ、Oガスを処理炉内に供給する際、Nガスを追加して供給することで、副生成物の濃度が低下した。Nガスの追加により副生成物の基板への再付着率が低下すると考えられる。そして、本件開示者らは、Oガス供給時に、Oガスがウエハに到達し易くなるようにOガスライン以外のガスラインからウエハに向けてNガスを供給し、Oガスの供給量に対するNガスの供給量を調整することにより、ウエハ上に形成される膜の厚さの分布を調整することができ、面内均一性が改善されることを見出した。その理由として、Oガス供給時にウエハに向けてNガスを供給することで、Oガスの流速が上がり、ウエハ中心付近におけるOガスの流速を上げることができ、あるいは、Oガスがウエハ以外の領域に拡散することが抑制され、ウエハ中心付近まで効率的に供給される。そのため、Oがウエハ中心に到達する前にOの失活によるO濃度の低下が抑制され、また、ウエハ表面に吸着しているTMAの副生成物がNガスによって取り除かれてOによる酸化が促進されることで、膜厚均一性が向上することが考えられる。すなわち、面内均一性を改善するには、オゾンガスの流速を速めるなどしてウエハの中心付近まで到達し易くすることが大きく影響して重要であると考えられる。
【0013】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、処理室内に収容された基板に対して原料ガスを供給する第1ガス供給工程と、前記基板に対して反応ガスを供給する第2ガス供給工程と、を有し、前記第1ガス供給工程と前記第2ガス供給工程とを交互に行って前記基板上に膜を形成し、前記第2ガス供給工程では、前記処理室内に前記反応ガスを供給すると共に前記反応ガスが前記基板に到達し易くなるように前記基板に対して不活性ガスを供給する。
【0014】
ここで、第2ガス供給工程では、「処理室内に反応ガスを供給すると共に反応ガスが基板に到達し易くなるように基板に対して不活性ガスを供給する」とは、反応ガスを単独で処理室内に供給する場合に比べ、処理室内に供給された反応ガスが短時間で基板に到達するように基板に向けて不活性ガスを供給するか、反応ガスが基板に到達する前に拡散することが抑制されるように基板に向けて不活性ガスを供給することを意味する。
例えば、基板の中心部に向けて、隣接するガス供給孔から反応ガスと不活性ガスをそれぞれ供給することで反応ガスの流速を速める方法、ガス供給孔から基板付近に向かう反応ガスの流れの少なくとも片側(好ましくは両側)を不活性ガスの流れでブロックするように基板に向けて不活性ガスを供給することで反応ガスの流れを基板中心付近に促す方法などが挙げられる。
【0015】
また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、第1ガス供給工程と第2ガス供給工程とをこの順に1回ずつ行うサイクルを1回又は複数回繰り返して基板上に膜を形成するが、第2ガス供給工程中に反応ガスの供給量に対する不活性ガスの供給量を調整して膜厚分布を調整してもよいし、第2ガス供給工程中の反応ガスの供給量に対する不活性ガスの供給量は一定とし、サイクル毎に反応ガスの供給量に対する不活性ガスの供給量を調整して膜厚分布を調整してもよいし、これらの組み合わせ、すなわち、各サイクル毎及び各第2ガス供給工程毎に反応ガスの供給量に対する不活性ガスの供給量を調整することで膜厚分布を調整してもよい。
【0016】
下記の説明では、一度に複数枚の基板に対し成膜処理等を行うバッチ式の縦型装置である基板処理装置を使用した場合について述べる。しかし、本開示は、バッチ式縦型装置の使用を前提としたものでなく、例えば、一度に1枚もしくは数枚の基板に対し成膜処理等を行う枚葉装置である基板処理装置を使用してもよい。
なお、本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層又は膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0017】
<第一実施形態>
以下、本開示に係る第一実施形態にについて図1図3を参照しながら説明する。
図1に示す基板処理装置100は、本実施形態に係る半導体装置(デバイス)の製造工程において使用される装置の一例として構成されている。基板処理装置100は、ウエハ200を収容する処理室201、第1ガス供給部として処理室201内に原料ガス又は不活性ガスを供給するガス供給管310及びガス供給孔410a、第2ガス供給部として処理室201内に反応ガスとしてのオゾンガスを供給するガス供給管320及びガス供給孔420a、各ガス供給孔410a,420aから供給されるガス種、ガス供給量(ガス流速)、ガス供給時間などを制御することが可能なよう構成される制御部としてのコントローラ280などを備えている。
【0018】
(処理炉)
処理炉202は、中心線が垂直になるように縦向きに配され、筐体によって固定的に支持された反応管としての縦形のプロセスチューブ205を備えている。
プロセスチューブ205は、インナチューブ204とアウタチューブ203とを備えている。インナチューブ204及びアウタチューブ203は、石英(SiO)、炭化珪素(SiC)等の耐熱性の高い材料によって、円筒形状にそれぞれ一体成形されている。
【0019】
インナチューブ204は、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。インナチューブ204内には、基板保持具としてのボート217によって水平姿勢で互いに間隔を設けて多段に保持されたウエハ200を収納して処理する処理室201が形成されている。インナチューブ204の下端開口は、ウエハ200群を保持したボート217を出し入れするための炉口を構成している。したがって、インナチューブ204の内径は、ウエハ200群を保持したボート217の最大外径よりも大きくなるように設定されている。
【0020】
アウタチューブ203は、インナチューブ204と略相似形状にあって、その内径はインナチューブ204に対して大きく、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されており、インナチューブ204の外側を取り囲むように同心円に被せられている。
インナチューブ204とアウタチューブ203との間の下端部は、円形リング形状に形成されたマニホールド209によってそれぞれ気密に封止されている。マニホールド209は、インナチューブ204及びアウタチューブ203についての保守点検作業又は清掃作業のために、インナチューブ204及びアウタチューブ203に着脱自在に取り付けられている。マニホールド209が筐体に支持されることにより、プロセスチューブ205は垂直に据え付けられた状態になっている。
【0021】
(排気ユニット)
マニホールド209の側壁の一部には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が接続されている。マニホールド209との接続部には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口が形成されている。
排気管231内は、排気口を介して、インナチューブ204とアウタチューブ203との間に形成された隙間により構成される排気路206内に連通している。なお、排気路206の横断面形状は、リング形状になっている。排気管231には、上流から順に、圧力センサ245、圧力調整バルブとしてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ231a、真空排気装置としての真空ポンプ231cが設けられている。
真空ポンプ231cは、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。
APCバルブ231a及び圧力センサ245には、制御部(コントローラ)280が電気的に接続されている。制御部280は、処理室201内の圧力が所望のタイミングにて所望の圧力となるように、圧力センサ245により検出された圧力に基づいてAPCバルブ231aの開度を制御するように構成されている。
主に、排気管231、圧力センサ245、APCバルブ231aにより、本実施形態に係る排気ユニット(排気系)が構成される。また、真空ポンプ231cを排気ユニットに含めてもよい。
【0022】
マニホールド209には、マニホールド209の下端開口を閉塞するシールキャップ219が垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は、アウタチューブ203の外径と同等以上の外径を有する円盤形状に形成されており、プロセスチューブ205の外部に垂直に設備されたボートエレベータ115によって水平姿勢で垂直方向に昇降されるように構成されている。
【0023】
(基板保持具)
シールキャップ219上には、ウエハ200を保持する基板保持具としてのボート217が垂直に立脚されて支持されるようになっている。ボート217は、上下で一対の端板217cと、端板217c間に垂直に設けられた複数本の保持部材217aとを備えている。端板217c及び保持部材217aは、例えば石英、SiC等の耐熱性材料により構成される。各保持部材217aには、多数条の保持溝217bが長手方向に等間隔に設けられている。ウエハ200の円周縁が複数本の保持部材217aにおける同一の段の保持溝217b内にそれぞれ挿入されることにより、複数枚のウエハ200は水平姿勢かつ互いに中心を揃えた状態で間隔を設けて多段に保持されるように構成されている。
【0024】
ボート217とシールキャップ219との間には、上下で一対の補助端板217dが複数本の補助保持部材218によって支持されて設けられている。各補助保持部材218には、多数条の保持溝が設けられている。保持溝には、例えば石英、SiC等の耐熱性材料により構成される円板形状をした複数枚の図示しない断熱板が、水平姿勢で多段に装填されるように構成されている。断熱板によって、後述するヒータユニット207からの熱がマニホールド209側に伝わりにくくなるように構成されている。
【0025】
シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボート217を回転させる回転機構267が設けられている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217を下方から支持している。回転軸255を回転させることで処理室201内にてウエハ200を回転させることが可能なように構成されている。シールキャップ219は、上述のボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート217を処理室201内外に搬送することが可能となっている。
【0026】
回転機構267及びボートエレベータ115には、制御部280が電気的に接続されている。制御部280は、回転機構267及びボートエレベータ115が所望のタイミングにて所望の動作をするよう制御するように構成されている。
【0027】
(ヒータユニット)
アウタチューブ203の外部には、プロセスチューブ205内を全体にわたって均一又は所定の温度分布に加熱する加熱機構としてのヒータユニット207が、アウタチューブ203を包囲するように設けられている。ヒータユニット207は、基板処理装置100の筐体(不図示)に支持されることにより垂直に据え付けられた状態になっており、例えばカーボンヒータ等の抵抗加熱ヒータとして構成されている。
【0028】
プロセスチューブ205内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。ヒータユニット207と温度センサ263とには、制御部280が電気的に接続されている。制御部280は、処理室201内の温度が所望のタイミングにて所望の温度分布となるように、前記温度センサ263により検出された温度情報に基づいてヒータユニット207への通電具合を制御するように構成されている。
主に、ヒータユニット207、温度センサ263により、本実施形態に係る加熱ユニット(加熱系)が構成される。
【0029】
(ガス供給ユニット)
インナチューブ204の側壁(後述する排気孔204aとは180度反対側の位置)には、チャンネル形状の予備室201aが、インナチューブ204の側壁からインナチューブ204の径方向外向きに突出して垂直方向に長く延在するように形成されている。予備室201aの側壁はインナチューブ204の側壁の一部を構成している。また、予備室201aの内壁は処理室201の内壁の一部を形成するように構成されている。
予備室201aの内部には、予備室201aの内壁(すなわち処理室201の内壁)に沿うように、予備室201aの内壁の下部より上部に沿ってウエハ200の配列方向に延在されて処理室201内にガスを供給するノズル410,420が設けられている。すなわち、ノズル410,420は、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。ノズル410,420はL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。便宜上、図1には1本のノズルを記載しているが、実際には図2に示すように2本のノズル410,420が設けられている。ノズル410,420の側面には、ガスを供給する多数のガス供給孔410a,420aがそれぞれ設けられている。ガス供給孔410a,420aは、下部から上部にわたってそれぞれ同一又は、大きさに傾斜をつけた開口面積を有し、さらに同じ開口ピッチで設けられている。
【0030】
マニホールド209を貫通したノズル410,420の水平部の端部は、プロセスチューブ205の外部で、ガス導入口部410b,420bを介して、ガス供給ラインとしてのガス供給管310,320とそれぞれ接続されている。
【0031】
ガス供給管310には、上流側から順に、流量制御装置(流量制御手段)としてのMFC(マスフローコントローラ)312及びバルブ314がそれぞれ設けられており、原料ガスとして、例えばアルミニウム(Al)を含むAl含有ガスであるTMA(Al(CH、トリメチルアルミニウム)が、ガス供給管310を通って処理室201内に供給される。なお、TMAは常温常圧下で液体状態であるため、液体状態のTMAを気化器、バブラ等の気化システムにより気化して、TMAガスとして供給することとなる。主に、ノズル410、ガス供給管310、MFC312、バルブ314により原料ガス供給部が構成される。なお、気化システムを原料ガス供給部に含めてもよい。また、例えばガス供給管310から上述のAl含有ガスを供給する場合、原料ガス供給部によりAl含有ガス供給部が構成される。
【0032】
また、ガス供給管310のバルブ314の下流側(バルブ314とガス導入口部410bとの間)には、不活性ガスであるNガス等を供給するガス供給管の下流端が接続されており、上流側から順に、MFC512、及びバルブ514がそれぞれ設けられている。バルブ314を閉じると共にバルブ514を開くことで、ガス供給管310を通ってNガスのみを処理室201へ供給することが可能である。
【0033】
一方、ガス供給管320には、上流側から順に、MFC322、及びバルブ324がそれぞれ設けられており、反応ガスとしての酸化ガス、すなわち、O(酸素)含有ガスとして、O(オゾン)ガスがガス供給管320を通って処理室201へ供給される。Oガスは酸化種として作用する。また、Oガスは、Oを生成するオゾン発生装置、すなわちオゾン生成器としてのオゾナイザにより生成されてガス供給管320を通って処理室201へ供給される。主に、ノズル420、ガス供給管320、MFC322、バルブ324により反応ガス供給部としてのオゾンガス供給部が構成される。なお、オゾナイザを反応ガス供給部に含めてもよい。また、原料ガス供給部(第1ガス供給部)とオゾンガス供給部(第2ガス供給部)とをまとめて、ガス供給部と呼ぶ。
【0034】
MFC312,322,512及びバルブ314,324,514には、制御部280が電気的に接続されている。制御部280は、後述する各ステップで処理室201内に供給するガスの種類が所望のタイミングにて所望のガス種となるよう、また、供給するガスの流量が所望のタイミングにて所望の量となるよう、さらには、Oガスの流量に対するNガスの流量が所望のタイミングにて所望の比率となるよう、MFC312,322,512及びバルブ314,324,514を制御することが可能なように構成されている。
【0035】
インナチューブ204の側壁であってノズル410,420に対向した位置、すなわち予備室201aとは180度反対側の位置には、例えばスリット状の貫通孔である排気孔204aが垂直方向に細長く開設されている。処理室201内と排気路206内とは排気孔204aを介して連通している。したがって、ノズル410,420のガス供給孔410a,420aから処理室201内に供給されたガスは、排気孔204aを介して排気路206内へと流れた後、排気口を介して排気管231内に流れ、処理炉202外へと排出されるように構成されている。なお、排気孔204aはスリット状の貫通孔として構成される場合に限らず、複数個の孔により構成されていてもよい。特に、ガス供給孔410a,420aから処理室201内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向、すなわちウエハ200の表面と平行な方向に向かって流れた後、排気孔204aを介して排気路206内へと流れる。
【0036】
(コントローラ)
図3に示されているように、制御部(制御手段)であるコントローラ280は、CPU(Central Processing Unit)280a、RAM(Random Access Memory)280b、記憶装置280c、I/Oポート280dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM280b、記憶装置280c、I/Oポート280dは、内部バス280eを介して、CPU280aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ280には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置282が接続されている。
【0037】
記憶装置280cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置280c内には、基板処理装置100の動作を制御する制御プログラム、後述する基板処理の手順又は条件などが記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ(制御部)280に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピ、制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、又は、その両方を含む場合がある。また、RAM280bは、CPU280aによって読み出されたプログラム、データ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0038】
I/Oポート280dは、上述のMFC312,322、バルブ314,324、圧力センサ245、APCバルブ231a、真空ポンプ231c、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0039】
CPU280aは、記憶装置280cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置282からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置280cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU280aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、MFC312,322,512による各種ガスの流量調整動作、バルブ314,324,514の開閉動作、APCバルブ231aの開閉動作及びAPCバルブ231aによる圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ231cの起動及び停止、回転機構267によるボート217の回転及び回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0040】
なお、コントローラ280は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、CD、DVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ、メモリカード等の半導体メモリ)283を用意し、かかる外部記憶装置283を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ280を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置283を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネット、専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置283を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。なお、記憶装置280c及び外部記憶装置283は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。
なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置280c単体のみを含む場合、外部記憶装置283単体のみを含む場合、又は、その両方を含む場合がある。
【0041】
[基板処理工程(成膜工程)]
次に、本実施形態に係る半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、上述の基板処理装置100を用い、基板上に膜を形成して半導体装置(デバイス)を製造する方法の一例について説明する。以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作はコントローラ280により制御される。
【0042】
例えば、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によりウエハ200上に膜を形成するための各工程(手順)をコンピュータにより基板処理装置に実行させるプログラムを用意し、被処理基板としての複数のウエハ200がボート217に積載された状態で収容された処理室201内を所定温度で加熱しつつ、処理室201内の各ウエハ200に対して、ノズル410に開口する複数の供給孔410aから原料ガスとしてTMAガスを供給する原料ガス供給ステップ(第1ガス供給工程)と、ノズル420に開口する複数の供給孔420aから反応ガスとしてOガスを供給すると共に、ノズル410に開口する複数の供給孔410aから不活性ガスとしてNガスを供給するオゾンガス及び不活性ガス供給ステップ(第2ガス供給工程)と、を交互に所定回数(n回)行うことで、ウエハ200上に、Al及びOを含む膜としてアルミニウム酸化膜(AlO膜)を形成する。そして、第2ガス供給工程では、Oガスがウエハ200の中心部に到達し易くなるようにウエハ200に対してNガスを供給することにより、ウエハ200上に形成される膜の厚さの分布を調整することができ、膜厚の面内均一性の高い膜を形成することができる。
以下、処理室201内にウエハを搬入して成膜を行った後、処理室201からウエハ200を搬出するまでの具体的な手順の一例について説明する。
【0043】
(ウエハチャージ及びボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング(不図示)を介して反応管(プロセスチューブ)205の下端をシールした状態となる。
【0044】
(圧力・温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ231cによって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ231aがフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ231cは、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。
また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
続いて、回転機構267によりボート217及びウエハ200の回転を開始する。回転機構267によるボート217及びウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0045】
(成膜ステップ)
その後、原料ガス供給ステップ(第1ガス供給工程)、残留ガス除去ステップ(残留ガス除去工程)、オゾンガス及び不活性ガス供給ステップ(第2ガス供給工程)、残留ガス除去ステップ(残留ガス除去工程)をこの順で所定回数行う。
【0046】
〔原料ガス供給ステップ〕
バルブ314を開き、ガス供給管310へTMAガスを流す。TMAガスは、MFC312により流量調整され、供給孔410aからウエハ200に対して供給される。すなわちウエハ200はTMAガスに暴露される。供給孔410aから供給されたTMAガスは、排気孔204aを経て排気管231から排気される。
【0047】
このとき、APCバルブ231aを適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~1000Pa、好ましくは1~100Pa、より好ましくは10~50Paの範囲内の圧力とする。処理室201内の圧力を1000Pa以下とすることで、後述する残留ガス除去を好適に行うことができると共に、ノズル410内でTMAガスが自己分解してノズル410の内壁に堆積してしまうことを抑制することができる。処理室201内の圧力を1Pa以上とすることで、ウエハ200表面でのTMAガスの反応速度を高めることができ、実用的な成膜速度を得ることが可能となる。
【0048】
MFC312で制御するTMAガスの供給流量は、例えば、10~2000sccm、好ましくは50~1000sccm、より好ましくは100~500sccmの範囲内の流量とする。TMAガスの供給流量を2000sccm以下とすることで、後述する残留ガス除去を好適に行うことができると共に、ノズル410内でTMAガスが自己分解してノズル410の内壁に堆積してしまうことを抑制することができる。また、TMAガスの供給流量を10sccm以上とすることで、ウエハ200表面でのTMAガスの反応速度を高めることができる、実用的な成膜速度を得ることが可能となる。
【0049】
TMAガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば、1~60秒、好ましく1~20秒、より好ましくは2~15秒の範囲内とする。
【0050】
ヒータ207は、ウエハ200の温度が、例えば、200~600℃、好ましくは350~550℃、より好ましくは400~550℃の範囲内となるように加熱する。ウエハ200の温度を600℃以下とすることで、TMAガスの過剰な熱分解を抑制しつつ成膜速度を適切に得ることができる。なお、TMAガスの熱分解は、当該処理に近い条件下においては450℃程度で開始するため、550℃以下の温度に加熱された処理室201内において本開示を用いるとより有効である。一方、ウエハ200の温度が200℃以上であることにより、反応性が高く、効率的な膜形成が可能である。
【0051】
上述の条件下で処理室201内へTMAガスを供給することにより、ウエハ200の最表面上に、Al含有層が形成される。Al含有層はAlの他、C及びHを含み得る。Al含有層は、ウエハ200の最表面に、TMAが物理吸着したり、TMAの一部が分解した物質が化学吸着したり、TMAが熱分解することでAlが堆積したりすること等により形成される。すなわち、Al含有層は、TMA又はTMAの一部が分解した物質の吸着層(物理吸着層又は化学吸着層)であってもよく、Alの堆積層(Al層)であってもよい。
【0052】
〔残留ガス除去ステップ〕
Al含有層が形成された後、バルブ314を閉じ、TMAガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ231aは開いたままとして、真空ポンプ231cにより処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応又はAl含有層の形成に寄与した後のTMAガスを処理室201内から排除する。
【0053】
なお、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよい。処理室201内に残留するガスが微量であれば、その後に行われるステップにおいて悪影響はほとんど生じない。
【0054】
〔オゾンガス及び不活性ガス供給ステップ〕
処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ324を開き、ガス供給管320内に反応ガスであるOガスを流す。Oガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420の供給孔420aから処理室201内のウエハ200に対して供給され、排気孔204aを経て排気管231から排気される。すなわちウエハ200はOガスに暴露される。
また、バルブ324を開いて供給孔420aからOガスを処理室201内に供給する際、バルブ514も開き、ガス供給管310内に不活性ガスとしてNガスを流す。Nガスは、MFC512により流量調整され、ノズル410の供給孔410aから処理室201内に供給されて、排気孔204aを経て排気管231から排気される。
【0055】
このとき、APCバルブ231aを適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~1000Pa、好ましくは50~500Pa、より好ましくは100~200Paの範囲内の圧力とする。
MFC322で制御するOガスの供給流量は、例えば、5~40slm、好ましくは5~30slm、より好ましくは10~20slmの範囲内の流量とする。Oガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば、1~120秒、好ましくは10~90秒、より好ましくは20~60秒の範囲内とする。
【0056】
供給孔420aからOガスを処理室201内に供給すると同時に、供給孔410aからNガスを処理室201内に供給することでOガスの流速が増大し、ウエハの中心部に到達し易くなる。
なお、図2に示すように、両ノズル410,420が隣接して各供給孔410a,420aがウエハ200の中心へ向かって開口していることが好ましい。第2ガス供給工程において供給孔410aからNガスが流れ、隣接した供給孔420aから平行してOガスの流れがあると、供給孔410aからのNガスが、供給孔420aからのOガスの片側をブロックする形となり、ウエハ200上(ウエハ200の中心部)へOガスが到達しやすくなる。
ただし、供給孔410aからのNガス供給量が多すぎると、Oガスのウエハ200の中心部への流れを阻害してしまう可能性がある。また、供給孔410aからのNガス供給量が多すぎると、供給孔420aからのOガスがNガスによって希釈されてOガスの濃度が低下し、Oガスのウエハ200上への到達を妨げてしまう可能性がある。そのため、ウエハ200上に形成される膜の厚さの面内分布の均一性が高くなるように、Oガスの供給量に対するNガスの供給量を調整することが好ましい。
ガスの流量によって膜厚分布が変化する。膜の凸形状を小さくする観点から、第2ガス供給工程における各供給孔からの流量は、下記の範囲とすることが好ましい。
ガス供給孔410aからのNガスの流量:0.5~30slm
ガス供給孔420aからのOガスの流量:9~30slm
【0057】
第2ガス供給工程におけるウエハ200の温度、回転数その他の処理条件は、上述の原料ガス供給ステップ(第1ガス供給工程)と同様の処理条件とする。
【0058】
第2ガス供給工程において処理室201内に流しているガスは、Oガスと不活性ガス(Nガス)のみである。Oガスは、原料ガス供給ステップでウエハ200上に形成されたAl含有層の少なくとも一部と反応する。Al含有層は酸化され、金属酸化層としてAlとOとを含むアルミニウム酸化層(AlO層)が形成される。すなわちAl含有層はAlO層へと改質される。
【0059】
なお、1回のサイクルにおけるオゾンガス及び不活性ガス供給ステップ(第2ガス供給工程)では、最初の方(オゾンガスの供給開始時点)ではNガスの供給量に対してOガスの供給量を多くし、Oガスの供給量を徐々に少なくしてもよい。最初にOガスの供給量を多くすれば、ウエハ200表面に形成される膜厚分布は最初はウエハ200中心部が厚くなり、Oガスの供給量の減少に伴い、ウエハ200の周辺部(縁部)において膜が形成され易くなり、膜厚均一性の向上を図ることができる。
あるいは、最初の方(オゾンガスの供給開始時点)ではNガスの供給量に対してOガスの供給量を少なくし、Oガスの供給量を徐々に多くしてもよい。最初にOガスの供給量を少なくすれば、ウエハ200表面に形成される膜厚分布は最初はウエハ200中心部が薄くなり、Oガスの供給量の増加に伴い、ウエハ200の中心部において膜が形成され易くなり、膜厚均一性の向上を図ることができる。
また、Nガスの供給量(流量)が異なる流量Aと流量Bのサイクルを交互に行うか、流量Aを複数回繰り返した後、流量Bを複数回繰り返すことによって、膜厚均一性を図ってもよい。
【0060】
また、オゾンガス及び不活性ガス供給ステップ(第2ガス供給工程)では、ウエハ200の表面積に応じてNガスの供給量を調整してウエハ200上に形成される膜の厚さの分布を調整することが好ましい。例えば、ウエハの表面に微細パターンが形成されている場合は、表面にアスペクト比が大きい凹凸を有し、ベアウエハに比べて表面積が大きいため、ベアウエハを処理する場合に比べ、ウエハ200の外周部から中央部に向けてOガスが消費され易く、膜厚均一性が低下し易い。そこで微細パターンが形成されたウエハを処理する場合は、ベアウエハを処理する場合よりも、Oガスの供給量に対するNガスの供給量を相対的に多くすることで、膜厚均一性を向上させることができる。
【0061】
〔残留ガス除去ステップ〕
AlO層が形成された後、バルブ324,524を閉じて、Oガス及びNガスの供給を停止する。そして、原料ガス供給ステップ後の残留ガス除去ステップと同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくはAlO層の形成に寄与した後のOガス、並びに、Nガス及び反応副生成物を処理室201内から排除する。このとき、処理室201内に残留するガス等を完全に排除しなくてもよい点は、原料ガス供給ステップ後の残留ガス除去ステップと同様である。
【0062】
〔所定回数実施〕
上述の原料ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップ、オゾンガス及び不活性ガス供給
ステップ、残留ガス供給ステップを順に行うサイクルを1回以上(所定回数)行うことにより、ウエハ200上にAlO膜が形成される。このサイクルの回数は、最終的に形成するAlO膜において必要とされる膜厚に応じて適宜選択されるが、このサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。
AlO膜の厚さ(膜厚)は、例えば、0.1~100nm、好ましくは1~30nm、より好ましくは1~10nmとする。
上記サイクルを2回以上行う場合は、サイクル毎に第2ガス供給工程におけるOガスの供給量に対するNガスの供給量を変化させて膜厚分布を調整してもよい。
例えば、図4に示すように、第2ガス供給工程においてOガスの供給量に対するNガスの供給量を多くして上記サイクルを繰り返し行うと、ウエハ中心部の膜厚が大きい凸形状の膜300aが形成される傾向がある。一方、図5に示すように、第2ガス供給工程においてOガスの供給量に対するNガスの供給量を少なくして上記サイクルを繰り返し行うと、ウエハ中心部の膜厚が小さい凹形状の膜300bが形成される傾向がある。そこで、例えば、図6に示すように、前半のサイクルにおける第2ガス供給工程では、Oガスの供給量に対するNガスの供給量を多くしてウエハ中心部の膜厚が大きい凸形状となるように成膜を行い、後半のサイクルにおける第2ガス供給工程では、Oガスの供給量に対するNガスの供給量を少なくしてウエハ中心部の膜厚が小さい凹形状となるように成膜を行うことで、凸形状の膜厚分布と凹形状の膜厚分布とが組み合わさって、結果的に面内均一性の高い膜300cを形成することができる。
なお、前半のサイクルにおける第2ガス供給工程では凹形状の膜厚分布となるようにOガスの供給量に対するNガスの供給量を少なくし、後半のサイクルにおける第2ガス供給工程では凸形状の膜厚分布となるようにOガスの供給量に対するNガスの供給量を多くすることで、結果的に面内均一性の高い膜を形成してもよい。
【0063】
(アフターパージ・大気圧復帰)
成膜ステップが終了したら、バルブ514を開き、ガス供給管310からNガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。Nガスはパージガスとして作用し、処理室201内に残留するガス又は副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気がNガスに置換され(Nガス置換)、処理室201内の圧力は常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0064】
(ボートアンロード・ウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端からプロセスチューブ205の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ(不図示)が移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング(不図示)を介してシャッタによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管205の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0065】
<第二実施形態>
図7は、第二実施形態に係る基板処理装置の構成の縦型処理炉におけるガスを供給するノズルの配置を概略的に示す横断面図である。本実施形態に係る基板処理装置は第一実施形態の変形例であり、第一実施形態に係る基板処理装置と同様、予備室201aに、原料ガスとしてTMAを供給するノズル410と、Oガスを供給するノズル420を備えている。各ノズル410,420には、ウエハ200の中心に向けてガス供給孔410a,420aがそれぞれ設けられ、ノズル410のガス供給孔410aはウエハ200の中心へ向かって開口し、ノズル420のガス供給孔420aは、ノズル410とウエハ200の縁部との間に向かって開口している。
【0066】
第1ガス供給工程では、ノズル410を経てガス供給孔410aからTMAガスを供給し、第2ガス供給工程では、ノズル420を経てガス供給孔420aからOガスを供給するとともに、ノズル410を経てガス供給孔410aからNガスを供給する。この場合、Oガスはガス供給孔420aからノズル410とウエハ200の縁部との間に向かって供給されるが、ウエハ200の中心に向けられたガス供給孔410aから供給されるNガスによってOガスもウエハ200の中心に向けられ、ウエハ200中心部での反応が促進される、ガス供給孔420aから供給されるOガスの供給量に対して、ガス供給孔410aから供給されるNガスの供給量を調整することで、膜厚の面内均一性を高めることができる。
【0067】
第一実施形態及び第二実施形態では、第1ガス供給工程における原料ガスと第2ガス供給工程におけるオゾンガスを、それぞれ独立したガス供給ラインからウエハ200に対して供給し、第2ガス供給工程では、第1ガス供給工程において原料ガスを供給するガス供給ラインを介してウエハ200に対して不活性ガスを供給する構成となっている。このように第1ガス供給工程において原料ガスを供給するガス供給ラインが、第2ガス供給工程において不活性ガスを供給するガス供給ラインを兼ねた構成とすることで装置コストを低く抑えることができる。
【0068】
<第三実施形態>
原料ガスを供給するガス供給ラインとは別に、第3ガス供給部として不活性ガスを供給するガス供給ラインを設けてもよい。第2ガス供給工程では、第1ガス供給工程においてTMAを供給するノズル410からのNガスの供給量を増やしてOガスの流速を高めてウエハ200の中心部に到達し易くさせるのではなく、例えば、Oガスを供給するノズルの両側に1本ずつNガスを供給するためのノズルを設けて、第2ガス供給工程においてNガスを供給してもよい。
図8は、第三実施形態に係る基板処理装置の構成の縦型処理炉におけるガスを供給するノズルの配置を概略的に示す横断面図である。本実施形態に係る基板処理装置は、予備室201aに、原料ガスとしてTMAを供給するノズル410、Oガスを供給するノズル420、さらにノズル420の両側にそれぞれNガスを供給するノズル430,440を備えている。すなわち、Nガスを供給するノズル430,440は、平面視においてOガスを供給するノズル420と排気管231とを通る直線の両側に設けられる。各ノズル410,420,430,440には、それぞれウエハ200の中心に向けて開口したガス供給孔410a,420a,430a,440aが設けられ、ガス供給管310,320,330,340を通じてそれぞれガスが供給されるように構成されている。なお、Nガスを供給するガス供給孔430a,440aの開口向きは、これらのガス供給孔430a,440aから供給されるNガスによって、ガス供給孔420aから供給されるOガスの両側の壁を作るように平行とすることが好ましい。
【0069】
第1ガス供給工程では、ノズル410を通じてガス供給孔410aからTMAガスを供給し、第2ガス供給工程では、ノズル420を通じてガス供給孔420aからOガスを供給するとともに、ノズル430,440を通じてガス供給孔430a,440aからそれぞれNガスを供給する。これにより、ガス供給孔420aから供給されるOガスの両側をNガスによってブロックする形となり、ウエハ200上(ウエハ200の中心部)へOガスがより到達しやすくなる。
【0070】
<第四実施形態>
図9は、第四実施形態に係る基板処理装置の構成の縦型処理炉におけるガスを供給するノズルの配置を概略的に示す横断面図である。本実施形態に係る基板処理装置は、予備室201aに、原料ガスとしてTMAを供給するノズル410(第1ガス供給部)、Oガスを供給するノズル420(第2ガス供給部)、さらにNガスを供給するノズル430(第3ガス供給部)を備え、各ノズル410,420,430には、ウエハ200の中心に向けてガス供給孔410a,420a,430aがそれぞれ設けられている。このように、それぞれ専用のノズル410,420,430を備えた基板処理装置を用い、第1ガス供給工程では、ノズル410を通じてガス供給孔410aからTMAガスを供給し、第2ガス供給工程では、ノズル420を通じてガス供給孔420aからOガスを供給するとともに、ノズル430を通じてガス供給孔430aからNガスを供給する。そして、Oガスの供給量に対するNガスの供給量を調整することにより、ウエハ上に形成される膜の厚さの分布を調整することで、面内均一性の高い膜を形成することができる。
【0071】
なお、ノズル410に通じるガス供給管310には、図1に示す第一実施形態に係る基板処理装置と同様、Nガスを供給するキャリアガス供給管の下流端を接続しておき、MFC、及びバルブがそれぞれ設けられた構成としてもよい。そして、第2ガス供給工程では、ノズル420を通じてガス供給孔420aからOガスを供給するとともに、2本のノズル410,430を通じてガス供給孔410a,430aからNガスを供給するようにしてもよい。ノズル410、430は、平面視において、ノズル420と排気管231とを通る直線の両側に設けられる。これにより、ガス供給孔420aから供給されるOガスの両側をNガスによってブロックする形となり、ウエハ200上へOガスがより到達しやすくなる。そして、Oガスの供給量に対するNガスの供給量を調整してウエハ200上に形成される膜の厚さの分布を調整することで、面内均一性の高い膜を形成することができる。
【0072】
以上、本開示の実施形態について具体的に説明した。しかし、本開示は上述の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0073】
例えば、上述の実施形態では、原料ガスの一例であるAl含有ガスとしてTMAガスを用いる例について説明したが、これに限らず、原料ガスとしては、例えば、塩化アルミニウム(AlCl)等を用いてもよい。
また、不活性ガスとしては、Nガスを用いる例について説明したが、これに限らず、例えば、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0074】
また、上述の実施形態では、基板上にAlO膜を形成する例について説明したが、本開示で形成する膜種はAlO膜に限定されず、本開示は、原料ガスと、反応ガスであるOガスとを交互に供給して基板上に膜を形成する場合に適用することができる。そのような膜種として、例えば、ZrO、TiO、HfOなどの金属酸化膜を挙げることができる。また、これらの膜を積層した膜や、複合した膜を形成する場合にも適用することができる。
【0075】
また、上述の実施形態では、反応ガスとして、オゾンガスを用いる例について説明したが、これに限るものでは無い。例えば、酸素含有ガスとして、酸素(O)ガス、水(HO)ガス、等を用いることができる。また、反応ガスとして、酸素含有ガスを用いる例について説明したが、窒化処理を行う窒素含有ガスを用いても良い。窒素含有ガスとしては、例えば、アンモニア(NH)ガスがある。この様なガスを用いることで、基板上に、窒化物膜や、酸窒化膜を形成することが可能となる。この様な膜であっても、基板上に形成する膜厚分布を調整することができる。なお、本開示は、この様な処理にも適用することができるが、上述の様に酸素含有ガス、特にOガスを用いることで、膜厚分布の調整に顕著な効果を得ることができる。
【0076】
成膜処理に用いられるレシピ(処理手順、処理条件等が記載されたプログラム)は、処理内容(形成する膜の種類、組成比、膜質、膜厚、処理手順、処理条件等)に応じて個別に用意し、電気通信回線又は外部記憶装置123を介して記憶装置280c内に格納しておくことが好ましい。そして、処理を開始する際、CPU280aが、記憶装置280c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになり、それぞれの場合に適正な処理を行うことができるようになる。また、オペレータの負担(処理手順、処理条件等の入力負担等)を低減でき、操作ミスを回避しつつ、処理を迅速に開始できるようになる。
【0077】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線又は当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置282を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0078】
また、上述の実施形態、変形例等は、適宜組み合わせて用いることができる。また、このときの処理手順、処理条件は、上述の実施形態、変形例等の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0079】
<変形例>
図10は、第三実施形態の変形例であり、基板処理装置の縦型処理炉におけるガスを供給するノズルの配置を概略的に示す横断面図である。ノズル410、430は、平面視において、ノズル420と排気管231とを通る直線の両側に設けられる。
第1ガス供給工程では、ノズル410及び/又はノズル430を経てガス供給孔410a及び/又はガス供給孔430aからTMAガスを供給する。
第2ガス供給工程では、ノズル420を経てガス供給孔420aからOガスを供給するとともに、ノズル410及びノズル430を経てガス供給孔410a及びガス供給孔430aからそれぞれNガスを供給する。この場合、ガス供給孔410a及びガス供給孔430aの一方からのNガス流量を他方からのNガス流量よりも増加させる。すなわち、ガス供給孔410a及びガス供給孔430aから供給されるNガスの流量を異ならせるようにする。例えば、ガス供給孔410aから供給するNガスの流量を大きく、ガス供給孔430aから供給するNガスの流量を小さくする。このようにガス供給孔410a及びガス供給孔430aから異なる流量でNガスをそれぞれ供給することで、ガス供給孔420aから供給されたOガスは、両側に供給されるNガスによってブロックされた状態でウエハ200上に到達し易くなると共にウエハ200の中心部よりも縁部側に供給され易くなる。これにより、ウエハ200上に形成される膜の凸分布が緩和され、膜の面内均一性を高めることができる。膜の面内均一性を高める観点から、第2ガス供給工程における各ガス供給孔からの流量は、下記の範囲とすることが好ましい。
ガス供給孔410aからのNガスの流量:10~30slm
ガス供給孔420aからのOガスの流量:9~30slm
ガス供給孔430aからのNガスの流量:0.5~30slm
【実施例
【0080】
以下に実施例によって本開示をより具体的に説明するが、本開示はこれら実施例によって制限されるものではない。
オゾンガス及び窒素ガスの各供給量と膜厚分布との関係を調べるため、オゾンガスの流量に対して窒素ガスの流量を変化させて膜厚分布を測定した。
【0081】
〔実験条件〕
図1に示す構成を有する基板処理装置を用い、TMAとOとを反応させ、膜厚測定用のSi基板(300mmウエハ)に成膜処理を施し、酸化アルミニウム膜を形成した。
【0082】
(実験例1)
実験例1では、以下の条件でTMAガス、Oガス、Nガスをそれぞれ処理室内に供給し、300mmウエハに酸化アルミニウム膜(AlO膜)を成膜した。
<第1ガス供給工程>
TMAガスの流量:200sccm
TMAガスの供給時間:10秒
<第2ガス供給工程>
ガスの流量:20slm
ガスの流量:60slm
ガス及びNガスの供給時間:20秒
上記第1ガス供給工程と第2ガス供給工程とを1サイクルとして、合計50サイクル行ってウエハ表面にAlO膜を成膜した。
ウエハ表面に形成されたAlO膜の厚さ分布を測定したところ、図4に示すようにウエハの縁部から中心部に向けて膜厚が大きくなる膜厚分布が得られた。
【0083】
(実験例2)
実験例2では、以下の条件でTMAガス、Oガス、Nガスをそれぞれ処理室内に供給し、300mmウエハに酸化アルミニウム膜(AlO膜)を成膜した。
<第1ガス供給工程>
TMAガスの流量:200sccm
TMAガスの供給時間:10秒
<第2ガス供給工程>
ガスの流量:20slm
ガスの流量:5slm
ガス及びNガスの供給時間:20秒
上記第1ガス供給工程と第2ガス供給工程とを1サイクルとして、合計50サイクル行ってウエハ表面にAlO膜を成膜した。
ウエハ表面に形成されたAlO膜の厚さ分布を測定したところ、図5に示すようにウエハの縁部から中心部に向けて膜厚が小さくなる膜厚分布が得られた。
【0084】
(実験例3)
実験例3では、第2ガス供給工程におけるOガスの供給量に対するNガスのガス供給量を以下のように変化させて成膜を行った。
-第1サイクル~第25サイクル-
<第1ガス供給工程>
TMAガスの流量:200sccm
TMAガスの供給時間:10秒
<第2ガス供給工程>
ガスの流量:20slm
ガスの流量:60slm
ガス及びNガスの供給時間:20秒
【0085】
-第26サイクル~第50サイクル-
<第1ガス供給工程>
TMAガスの流量:200sccm
TMAガスの供給時間:10秒
<第2ガス供給工程>
ガスの流量:20slm
ガスの流量:5slm
ガス及びNガスの供給時間:20秒
ウエハ表面に形成されたAlO膜の厚さ分布を測定したところ、図6に示すように膜厚の面内均一性が高い膜厚分布が得られた。
1バッチ内で、前半のサイクルでは第2ガス供給工程におけるOガスの供給量に対するNガスの供給量を相対的に多くし、後半のサイクルでは第2ガス供給工程におけるOガスの供給量に対するNガスの供給量を相対的に少なくすることにより、前半のサイクルにおける凸形状の膜厚分布と、後半のサイクルにおける凹形状の膜厚が組み合わさったフラットな膜厚形状を得ることができる。
【0086】
以上、本開示の種々の典型的な実施形態を説明してきたが、本開示はそれらの実施形態に限定されない。上述の実施形態、変形例等は、適宜組み合わせて用いることができる。
【0087】
2018年9月26日に出願された日本国特許出願2018-180802の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0088】
10 基板処理装置
200 ウエハ(基板の一例)
201 処理室
280 コントローラ(制御部)
410、420、430、440 ノズル
410a、420a、430a、440a ガス供給孔(ガス供給部の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10