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特許7079393液体調味料及びその製造方法、並びに液体調味料の風味改善方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】液体調味料及びその製造方法、並びに液体調味料の風味改善方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/10 20160101AFI20220526BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20220526BHJP
【FI】
A23L27/10 B
A23L27/00 D
A23L27/10 H
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017126917
(22)【出願日】2017-06-29
(65)【公開番号】P2019010005
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2020-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(73)【特許権者】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086221
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 裕也
(72)【発明者】
【氏名】水野 速人
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-101149(JP,A)
【文献】特開2002-085007(JP,A)
【文献】食生活総合研究会誌, 1992年,Vol.3, No.2,p.3-8
【文献】調理科学, 1981年,Vol.14, No.1,p.49-54
【文献】調理科学, 1986年,Vol.19, No.2,p.73-77
【文献】日本食品工業学会誌, 1984年,第31巻, 第10号,p.624-629 (p.6-11)
【文献】生物工学会誌, 2014年,第2号,p.81
【文献】アサムラサキ あごだしつゆ ストレート 400ml,Amazon, 2016年3月8日,p.1-6,https://www.amazon.co.jp/アサムラサキ-あごだしつゆ-ストレート-400ml/dp/B01COSDMQE/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=カタカナ&dchild=1&keywords…, 検索日:2021年3月12日
【文献】ニビシ あご白だし 11倍濃縮 1L,Amazon, 2016年,p.1-6,https://www.amazon.co.jp/ニビシ-あご白だし-11???@?Y-1L/dp/B0194GKSQG/ref=sr_1_73?dchild=1&keywords=人気のあごだしランキング&qid=1615..., 検索日2021年3月12日
【文献】マルエ 焼きあご白だし400ml×12本,Amazon, 2015年,p.1-6,https://www.amazon.co.jp/マルヱ醤油-マルエ-焼きあご.だし-400ml×12本/dp/B015GWW69Y/ref=sr_1_2?__mk_ja_JP=カタカナ&dchild=1&keywords…, 検索日:2021年3月12日
【文献】ヤマエ食品 高千穂峡つゆ あごだし 500ml×15本,Amazon, 2012年,https://www.amazon.co.jp/ヤマエ食品-高千穂峡つゆ-あごだし-500ml??15??/dp/B008XEV9WS/ref=sr_1_2?__mk_ja_JP=カタカナ&dchild=1&keywords...,検索日:2021年3月12日
【文献】久原醤油 あごだしつゆ500ml,Amazon, 2016年,p.1-8,https://www.amazon.co.jp/久原本家-久原醤油-あごだしつゆ-500ml/dp/B01H5NOYPQ/ref=sr_1_13?dchild=1&keywords=.気のあごだしランキング&qi…, 2021年3月16日
【文献】日本官能評価学会誌, 2010年,Vol.14, No.1,p.34-39
【文献】あごいろは,九州あご文化推進委員会,p.1-2,https://kyushuago.jp/agoiroha/05/, 検索日:2021年3月12日
【文献】日本栄養・食糧学会誌, 1997年,Vol.50, No.4,p.295-301
【文献】日本家政学会誌, 1988年,Vol.39, No.8,p.823-828
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00-27/40
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
あごだし、鰹だし及びトルラ酵母エキスを含有する液体調味料であって、
前記あごだしが、原料として焼きあごを選択し、抽出だしの出来高1000質量部に対して前記原料を500質量部使用して、90℃にて1時間、攪拌しながら前記原料から風味成分を抽出した後、固液分離することにより得られたものであり、
喫食時の前記液体調味料に対する、前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.075質量%以上0.25質量%以下であり、
前記鰹だしが、抽出だしの出来高1000質量部に対して原料を500質量部使用して、90℃にて1時間、攪拌しながら前記原料から風味成分を抽出した後、固液分離することにより得られたものであり、
前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記鰹だしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.5質量部以上4質量部以下であり、かつ、
前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記トルラ酵母エキスの含有量が、0.5質量部以上3質量部以下であることを特徴とする、
あごだし含有液体調味料。
【請求項2】
前記液体調味料が、醤油を含有し、かつ、
前記醤油の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.2質量%以上1質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のあごだし含有液体調味料。
【請求項3】
前記液体調味料が、糖類を含有し、かつ、
前記糖類の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.8質量%以上1質量%以下である、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のあごだし含有液体調味料。
【請求項4】
前記液体調味料が、野菜煮込み用調味料であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のあごだし含有液体調味料。
【請求項5】
前記液体調味料が、レトルト調味料であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のあごだし含有液体調味料。
【請求項6】
あごだしに、鰹だし、トルラ酵母エキスを混合した後、
60℃以上90℃以下かつ60分以下達温以上の範囲で加熱処理することを特徴とする、
あごだし含有液体調味料の製造方法であって、
前記あごだしが、原料として焼きあごを選択し、抽出だしの出来高1000質量部に対して前記原料を500質量部使用して、90℃にて1時間、攪拌しながら前記原料から風味成分を抽出した後、固液分離することにより得られたものであり、
喫食時の前記液体調味料に対する、前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.075質量%以上0.25質量%以下であり、
前記鰹だしが、抽出だしの出来高1000質量部に対して原料を500質量部使用して、90℃にて1時間、攪拌しながら前記原料から風味成分を抽出した後、固液分離することにより得られたものであり、
前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記鰹だしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.5質量部以上4質量部以下であり、かつ、
前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記トルラ酵母エキスの含有量が、0.5質量部以上3質量部以下となるように、混合する、あごだし含有液体調味料の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のあごだし含有液体調味料の製造方法において、
前記あごだしに、さらに醤油を混合した後に、前記加熱処理を行い、かつ、
前記醤油の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.2質量%以上1質量%以下となるように混合すること、
を特徴とする、あごだし含有液体調味料の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のあごだし含有液体調味料の製造方法において、
前記あごだしに、さらに糖類を混合した後に、前記加熱処理を行い、かつ、
前記糖類の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.8質量%以上1質量%以下となるように混合すること、
を特徴とする、あごだし含有液体調味料の製造方法。
【請求項9】
あごだしに、鰹だし、トルラ酵母エキスを混合した後、
110℃以上130℃以下かつ60分以下5分以上の範囲でレトルト殺菌処理することを特徴とする、
あごだし含有液体調味料の製造方法であって、
前記あごだしが、原料として焼きあごを選択し、抽出だしの出来高1000質量部に対して前記原料を500質量部使用して、90℃にて1時間、攪拌しながら前記原料から風味成分を抽出した後、固液分離することにより得られたものであり、
喫食時の前記液体調味料に対する、前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.075質量%以上0.25質量%以下であり、
前記鰹だしが、抽出だしの出来高1000質量部に対して原料を500質量部使用して、90℃にて1時間、攪拌しながら前記原料から風味成分を抽出した後、固液分離することにより得られたものであり、
前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記鰹だしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.5質量部以上4質量部以下であり、かつ、
前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記トルラ酵母エキスの含有量が、0.5質量部以上3質量部以下となるように、混合する、あごだし含有液体調味料の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のあごだし含有液体調味料の製造方法において、
前記あごだしに、さらに醤油を混合した後、前記レトルト殺菌処理を行い、かつ、
前記醤油の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.2質量%以上1質量%以下となるように混合すること、
を特徴とする、あごだし含有液体調味料の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のあごだし含有液体調味料の製造方法において、
前記あごだしに、さらに糖類を混合した後、前記レトルト殺菌処理を行い、かつ、
前記糖類の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.8質量%以上1質量%以下となるように混合すること、
を特徴とする、あごだし含有液体調味料の製造方法。
【請求項12】
あごだし含有液体調味料に、鰹だし、トルラ酵母エキスを含有させることにより、前記あごだし含有液体調味料について感じられる生臭み、苦味、エグ味、焦げ臭から選ばれる不快風味を改善すると共に、前記あごだし含有液体調味料について感じられる好ましい風味を増強することを特徴とする、あごだし含有液体調味料の風味の改善方法であって、
前記あごだしが、原料として焼きあごを選択し、抽出だしの出来高1000質量部に対して前記原料を500質量部使用して、90℃にて1時間、攪拌しながら前記原料から風味成分を抽出した後、固液分離することにより得られたものであり、
喫食時の前記液体調味料に対する、前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.075質量%以上0.25質量%以下であり、
前記鰹だしが、抽出だしの出来高1000質量部に対して原料を500質量部使用して、90℃にて1時間、攪拌しながら前記原料から風味成分を抽出した後、固液分離することにより得られたものであり、
前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記鰹だしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.5質量部以上4質量部以下であり、かつ、
前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記トルラ酵母エキスの含有量が、0.5質量部以上3質量部以下である、
あごだし含有液体調味料の風味の改善方法。
【請求項13】
請求項12に記載のあごだし含有液体調味料の風味の改善方法において、
前記あごだし含有液体調味料に、さらに醤油を含有させること、及び、
前記醤油の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.2質量%以上1質量%以下であること、
を特徴とする、あごだし含有液体調味料の風味の改善方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のあごだし含有液体調味料の風味の改善方法において、
前記あごだし含有液体調味料に、さらに糖類を含有させること、及び、
前記糖類の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.8質量%以上1質量%以下であること、
を特徴とする、あごだし含有液体調味料の風味の改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体調味料及びその製造方法、並びに液体調味料の風味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、あごだし(トビウオを原料としただし)を使用した液体調味料が普及しつつある。あごだしは、特有の繊細なうま味や好ましい香りを有するが、一方で、独特の生臭みや苦味、エグ味を有する。焼きあごにあっては、焼成処理による強い焦げ味や焦げ臭を有する。
したがって、これらを利用した液体状調味料においては、その不快風味の結果、あごだし特有の繊細なうま味や好ましい香りが埋没し、不快風味が強調され、液体調味料の呈味が嫌悪されてしまうという課題があった。
【0003】
この課題に対して様々な技術開発がなされている。
【0004】
特許文献1には、鰹節、鯖節、煮干し等と熱水又は水を接触させることによりだし汁を得、次いで、このだし汁を粒子径2μm以下のケイソウ土により濾過し、生臭さが少なく、泡立ちのほとんどない鰹節、鯖節、煮干し等のだし汁を得る技術が開示されている。
【0005】
特許文献2には、鰹節、鯖節、煮干し等と溶媒を接触させた後、溶媒を除去し、次いで、これらと熱水又は水を接触させることにより、生臭さが少なく、泡立ちのほとんどない鰹節、鯖節、煮干し等のだし汁を得る技術が開示されている。
【0006】
特許文献3には、気液向流接触装置を用い、節類と水の混合物、またはこの混合物の抽出エキスから揮発性成分を分離しておき、かつ、分離後の抽出エキスを特定条件範囲で濃縮等の処理をし、最後に、濃縮液と前記分離した揮発性成分を混合する技術が開示されている。
【0007】
特許文献4には、魚節エキスに、酵母エキス、動植物蛋白分解物、香料および魚節分画香気成分から選ばれる香気・香味付与乃至改良剤の1種以上を配合させることにより、本発明の魚節フレーバー組成物を容易に調製する技術が開示されている。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1、2、3には、あごだしについて全く記載されておらず、しかもその方法をあごだしの製造に適用した場合、生臭みは少なくなるものの、あごだしが含有する、特有の繊細なうま味や好ましい香りも失われてしまうという課題があった。
【0009】
上記特許文献4における方法では、酵母エキス、動植物蛋白分解物には不快臭のマスキング作用がその不快臭の抑制に対する作用効果を奏することが記載されており、かつ、香料、魚節分画香気成分には、魚節の好ましい風味を付与し、嗜好性の向上に寄与することが記載されている。
【0010】
酵母エキスや動植物蛋白質には、一般に不快臭のみならず、その風味の強さにより、香味全般をマスキングする効果がある。
しかしながら、その風味が強いことにより、酵母エキス自体の風味が被添加飲食品に強く付与され、あごだし特有の繊細なうま味や好ましい香りのような、繊細な香りをも殺してしまうという課題があった。
しかも特許文献4に記載された発明では、そのマスキング効果によって埋没した、魚節の好ましい香りを増強すべく、香料や魚節分画香気成分を配合することで、この回復を図っており、素材本来が有する好ましい香りの特質を変化させることなく、そのまま引き出すという点において、解決がなされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平7-8203号公報
【文献】特開平7-8204号公報
【文献】特開平9-308455号公報
【文献】特開2004-135522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、あごだしを含有する液体調味料において、生臭みや苦味、エグ味、焦げ臭などの不快風味が改善され、あごだし特有の繊細なうま味や好ましい香りが増強された、あごだし含有液体調味料を提供すること、及びその製造方法を提供すること、並びに液体調味料の風味改善方法を提供すること、をそれぞれ目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の事情に鑑みて鋭意研究した結果、従来の技術にない、あごだし以外の他の魚節類によるあごだしの不快風味のマスキング効果に着目するとともに、さらには酵母エキスによるあごだしの好ましい風味のエンハンス(増強)効果に着目し、上記課題を解決できることを新規に知見した。
そして、本発明者らは上記の知見に基づいてさらに鋭意研究を進めることにより、最終的に下記の発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明の特徴は、あごだし含有液体調味料において、あごだし以外の他の魚節類をあごだし抽出原料の使用量に対して特定の範囲で配合させること、さらに、酵母エキスを同様に特定の範囲で配合させることにある。
【0015】
上記の課題を解決するための手段[1]~[13]を以下に列挙する。
【0016】
手段[1]:あごだし、鰹だし及びトルラ酵母エキスを含有する液体調味料であって、
前記あごだしが、原料として焼きあごを選択し、抽出だしの出来高1000質量部に対して前記原料を500質量部使用して、90℃にて1時間、攪拌しながら前記原料から風味成分を抽出した後、固液分離することにより得られたものであり、
喫食時の前記液体調味料に対する、前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.075質量%以上0.25質量%以下であり、
前記鰹だしが、抽出だしの出来高1000質量部に対して原料を500質量部使用して、90℃にて1時間、攪拌しながら前記原料から風味成分を抽出した後、固液分離することにより得られたものであり、
前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記鰹だしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.5質量部以上4質量部以下であり、かつ、
前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記トルラ酵母エキスの含有量が、0.5質量部以上3質量部以下であることを特徴とする、
あごだし含有液体調味料。
手段[2]:前記液体調味料が、醤油を含有し、かつ、
前記醤油の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.2質量%以上1質量%以下であることを特徴とする、手段1に記載のあごだし含有液体調味料。
手段[3]:前記液体調味料が、糖類を含有し、かつ、
前記糖類の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.8質量%以上1質量%以下である、
ことを特徴とする、手段1又は2に記載のあごだし含有液体調味料。
手段[4]:前記液体調味料が、野菜煮込み用調味料であることを特徴とする、手段1乃至3のいずれか1項に記載のあごだし含有液体調味料。
手段[5]:前記液体調味料が、レトルト調味料であることを特徴とする、手段1乃至4のいずれか1項に記載のあごだし含有液体調味料。
手段[6]:あごだしに、鰹だし、トルラ酵母エキスを混合した後、
60℃以上90℃以下かつ60分以下達温以上の範囲で加熱処理することを特徴とする、
あごだし含有液体調味料の製造方法であって、
前記あごだしが、原料として焼きあごを選択し、抽出だしの出来高1000質量部に対して前記原料を500質量部使用して、90℃にて1時間、攪拌しながら前記原料から風味成分を抽出した後、固液分離することにより得られたものであり、
喫食時の前記液体調味料に対する、前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.075質量%以上0.25質量%以下であり、
前記鰹だしが、抽出だしの出来高1000質量部に対して原料を500質量部使用して、90℃にて1時間、攪拌しながら前記原料から風味成分を抽出した後、固液分離することにより得られたものであり、
前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記鰹だしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.5質量部以上4質量部以下であり、かつ、
前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記トルラ酵母エキスの含有量が、0.5質量部以上3質量部以下となるように、混合する、あごだし含有液体調味料の製造方法。
手段[7]:手段6に記載のあごだし含有液体調味料の製造方法において、
前記あごだしに、さらに醤油を混合した後に、前記加熱処理を行い、かつ、
前記醤油の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.2質量%以上1質量%以下となるように混合すること、
を特徴とする、あごだし含有液体調味料の製造方法。
手段[8]:手段6又は7に記載のあごだし含有液体調味料の製造方法において、
前記あごだしに、さらに糖類を混合した後に、前記加熱処理を行い、かつ、
前記糖類の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.8質量%以上1質量%以下となるように混合すること、
を特徴とする、あごだし含有液体調味料の製造方法。
手段[9]:あごだしに、鰹だし、トルラ酵母エキスを混合した後、
110℃以上130℃以下かつ60分以下5分以上の範囲でレトルト殺菌処理することを特徴とする、
あごだし含有液体調味料の製造方法であって、
前記あごだしが、原料として焼きあごを選択し、抽出だしの出来高1000質量部に対して前記原料を500質量部使用して、90℃にて1時間、攪拌しながら前記原料から風味成分を抽出した後、固液分離することにより得られたものであり、
喫食時の前記液体調味料に対する、前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.075質量%以上0.25質量%以下であり、
前記鰹だしが、抽出だしの出来高1000質量部に対して原料を500質量部使用して、90℃にて1時間、攪拌しながら前記原料から風味成分を抽出した後、固液分離することにより得られたものであり、
前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記鰹だしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.5質量部以上4質量部以下であり、かつ、
前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記トルラ酵母エキスの含有量が、0.5質量部以上3質量部以下となるように、混合する、あごだし含有液体調味料の製造方法。
手段[10]:手段9に記載のあごだし含有液体調味料の製造方法において、
前記あごだしに、さらに醤油を混合した後、前記レトルト殺菌処理を行い、かつ、
前記醤油の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.2質量%以上1質量%以下となるように混合すること、
を特徴とする、あごだし含有液体調味料の製造方法。
手段[11]:手段9又は10に記載のあごだし含有液体調味料の製造方法において、
前記あごだしに、さらに糖類を混合した後、前記レトルト殺菌処理を行い、かつ、
前記糖類の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.8質量%以上1質量%以下となるように混合すること、
を特徴とする、あごだし含有液体調味料の製造方法。
手段[12]:あごだし含有液体調味料に、鰹だし、トルラ酵母エキスを含有させることにより、前記あごだし含有液体調味料について感じられる生臭み、苦味、エグ味、焦げ臭から選ばれる不快風味を改善すると共に、前記あごだし含有液体調味料について感じられる好ましい風味を増強することを特徴とする、あごだし含有液体調味料の風味の改善方法であって、
前記あごだしが、原料として焼きあごを選択し、抽出だしの出来高1000質量部に対して前記原料を500質量部使用して、90℃にて1時間、攪拌しながら前記原料から風味成分を抽出した後、固液分離することにより得られたものであり、
喫食時の前記液体調味料に対する、前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.075質量%以上0.25質量%以下であり、
前記鰹だしが、抽出だしの出来高1000質量部に対して原料を500質量部使用して、90℃にて1時間、攪拌しながら前記原料から風味成分を抽出した後、固液分離することにより得られたものであり、
前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記鰹だしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.5質量部以上4質量部以下であり、かつ、
前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記トルラ酵母エキスの含有量が、0.5質量部以上3質量部以下である、
あごだし含有液体調味料の風味の改善方法。
手段[13]:手段12に記載のあごだし含有液体調味料の風味の改善方法において、
前記あごだし含有液体調味料に、さらに醤油を含有させること、及び、
前記醤油の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.2質量%以上1質量%以下であること、
を特徴とする、あごだし含有液体調味料の風味の改善方法。
手段[14]:手段12又は13に記載のあごだし含有液体調味料の風味の改善方法において、
前記あごだし含有液体調味料に、さらに糖類を含有させること、及び、
前記糖類の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.8質量%以上1質量%以下であること、
を特徴とする、あごだし含有液体調味料の風味の改善方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、あごだしを含有する液体調味料において、生臭みや苦味、エグ味、焦げ臭などの不快風味が改善され、あごだし特有の繊細なうま味や好ましい香りが増強された、あごだし含有液体調味料を提供することができる。
次に、本発明によれば、生臭みや苦味、エグ味、焦げ臭などの不快風味が改善され、あごだし特有の繊細なうま味や好ましい香りが増強された、あごだし含有液体調味料の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、あごだしを含有する液体調味料について感じられる生臭みや苦味、エグ味、焦げ臭などの不快風味を改善すると共に、あごだしを含有する液体調味料について感じられる特有の繊細なうま味や好ましい香り(以下、これらを「好ましい風味」と称することがあります。)を増強することのできる、風味の改善方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の液体調味料及びその製造方法、並びに液体調味料の風味改善方法について詳細に説明する。
【0019】
本発明の液体調味料は、基本的には、あごだしを含有する液体調味料であって、喫食時の前記液体調味料に対する、前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.05質量%以上0.5質量%以下であることを特徴とするものである。
【0020】
本発明において「あごだし」とは、トビウオを原料としただしであって、トビウオを素干しした「アゴ干し」、これを破砕した「トビ節」、火であぶって焦がした「焼きアゴ」、天日干しと炭火による「焼き干し」等を原料として、これを水抽出、温水抽出、熱水抽出や、アルコール含有溶媒等を用いて、適宜抽出温度や、抽出時間を調節して抽出しただしを指す。
【0021】
尚、この内、日持ち性や使い勝手の観点から、「焼きアゴ」が好ましい。しかしながらこの場合、焦げ臭が強いため、これに対する解決課題は大きくなる。
【0022】
あごだしの抽出方法としては、前記抽出温度や抽出時間以外の条件として、攪拌の有無、1番だし、2番だしなどの抽出回数、溶媒濃度に勾配をつけて抽出する方法や、これに伴う装置の種類など、各種抽出方法があるが、その方法や種類は、目的とする品質のだしや、本発明の作用効果を奏するだしが得られれば、その条件や方法、種類は問わない。
【0023】
尚、上記原料からだしを抽出する際、抽出だしの出来高Xgに対して原材料Ygを使用した場合、X/Y倍の抽出だしと言う。具体例としては、抽出だし1000gを抽出するのに、500gの原材料を使用した場合、2倍抽出だし(2倍の抽出倍率)」と言う。
【0024】
「あごだし」は、他の魚節と異なった、特有の繊細なうま味や好ましい香りと、強い生臭みや苦味、エグ味、焦げ臭を有することが特徴である。したがって、前者を活かし、後者をなるべく抑制することがその好ましい風味を活かすポイントである。
【0025】
よって、あごだしを含有する液体調味料において、喫食時の液体調味料に対する、前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.05質量%以上0.5質量%以下であることが好ましく、あごだしの好ましい風味と不快風味のバランスの観点から、0.06質量%以上0.4質量%以下であることがより好ましく、0.075質量%以上0.25質量%以下であることがさらに好ましい。尚、「喫食時の」と記載したのは、上記液体調味料が濃縮調味料であっても、ストレート調味料であってもよいからである。
【0026】
本発明においては、上記したあごだしを含有する液体調味料について、あごだし以外の魚節だし類を用い、これを含有したものとすることができ、これにより、あごだしの不快な風味をマスキングすることができる。
【0027】
本発明におけるあごだし以外の「魚節だし類」とは、鰹節、そのナマリ節、その荒節や、宗田節、サバ節、イワシ節、ムロ節、サンマ節、マグロ節、煮干し(マイワシ、キビナゴ、アジ、サバ、ウルメイワシ、カタクチイワシから選ばれる1種以上)、およびその他の魚類やこれらの加工品から選ばれる1種以上を、水やエタノール含有溶媒等を用いて抽出されただしを指す。尚、あごと前記魚節類を混合して同時にだしを抽出してもよい。
尚、この内、あごだしの特有の繊細なうま味や好ましい香りを活かすという観点から、比較的風味に独特すぎる特徴が少なく、ある程度の強さを有する、鰹だし、サバだし、煮干しだしが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、1種以上を混合して使用してもよい。また、単独で抽出しただしを混合してもよいし、複数の原料を混合して抽出しただしであってもよい。
【0028】
本発明における、前記魚節だし類による、あごだしの不快風味のマスキング効果は、開発中に意中なく想定外に発見された効果であった。そのメカニズムは不明であるが、あごだしの特有の繊細なうま味や好ましい香りに影響することなく、生臭みや苦味、エグ味、焦げ臭などの不快風味をマスキングすることから、あごだしに含まれる香りや味と、その他の魚節だし類に含まれる香りや味のそれぞれのバランスの重なりによって、不快風味が抑制され、好ましい風味が残るものと推察される。
【0029】
あごだしに対するその配合比は、あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記魚節だしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.3質量部以上12質量部以下であることが好ましい。前記魚節だしによるあごだしの不快風味のマスキングの作用効果の強さの観点から、0.4質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上4質量部以下であることがさらに好ましい。
【0030】
次に、本発明においては、上記したあごだしを含有する液体調味料について、酵母エキスを用い、これを含有したものとすることができ、これにより、あごだし特有の繊細なうま味や好ましい香り(「好ましい風味」)を増強することができる。
【0031】
本発明における酵母エキスとは、酵母を、自己消化法、酵素分解法、酸分解法等の方法によってエキス化したものを指す。
酵母の種類としては、ビール酵母由来、パン酵母由来、トルラ酵母由来のものがあるが、その風味は、処理法よりもその由来によることが大きく、特に、パン酵母やビール酵母はいわゆる「酵母風味」と呼ばれる酵母エキス独特の濃厚な味や強い香りが特に強く、生臭みなどの不快風味をマスキングをするにはより適しているが、逆に酵母風味も強く付与され、被添加調味料中に含まれる原料素材が元来有する風味をそのまま活かすという点では、使いづらい。これに対してトルラ酵母は前2者に対して、酵母風味が比較的弱く、不快風味をマスキングするには効果が劣るものの、原料素材が元来有する風味を活かすという点では使い易い。よって、これらの使い様はその種類に対しての工夫次第ではあるが、トルラ酵母由来であることがより好ましい。
【0032】
前記酵母エキスは、通常、風味のマスキングや、風味の増強に用いられる。前者の風味のマスキングは、酵母エキスの風味の強さによって、後者の風味の増強は香味の増強物質の含有によって、それぞれなされるといわれている。
しかしながら、本発明においては、前記魚節だし類による、あごだしの不快風味のマスキング効果が奏されており、かつ、あごだしの特有の繊細なうま味や好ましい香りはマスキングされていないことから、これのみを増強させることができるかどうか検討した結果、酵母エキスを含有させることにより、マスキングされた不快風味を増強し、再度不快風味を発現させることは無く、あごだしの特有の繊細なうま味や好ましい香りのみを増強することが分かった。
【0033】
前記記載までの条件であっても、不快風味が抑制されたことで、あごだしの特有の繊細なうま味や好ましい香りが前面に押し出され、あごだし含有液体調味料の品質としては上出来であるが、前記好ましい風味の力価自体は弱く、繊細であり、あごだし特有のうま味や好ましい香りを増強し、より顕著に発現させることができる点で、より好ましい。
【0034】
あごだしに対する酵母エキスの配合比は、あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対して、前記酵母エキスの含有量が、0.1質量部以上5質量部以下であればよいが、あごだしの前記好ましい風味の増強効果の強さの観点から、0.5質量部以上4質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上3質量部以下であることがさらに好ましい。
【0035】
上記酵母エキスによる作用効果は、前記ビール酵母、パン酵母、トルラ酵母由来エキスのいずれにおいても奏され、これらから選ばれる1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。同種の酵母由来の酵母エキスを併用してもよい。
ただし、前記したように、トルラ酵母はそれ自体の「酵母風味」が弱いため、風味のマスキング効果よりも、風味のエンハンス効果が強く、液体調味料に異質な「酵母風味」が付与され難いという観点からも、トルラ酵母由来であることがより好ましい。
【0036】
また、本発明においては、上記したあごだしを含有する液体調味料について、醤油を用い、これを含有したものとすることができる。
【0037】
本発明のあごだし含有液体調味料においては、風味のバランスの観点から、醤油を使用することが好ましいが、せっかく増強された前記好ましい風味に影響を及ぼさないように、元来風味の強い醤油の使用量を少なめにしたほうがよい。
【0038】
具体的には、前記醤油の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.05質量%以上5質量%以下であればよいが、風味への影響の観点から、0.1質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上1質量%以下であることがさらに好ましい。尚、「喫食時の」と記載したのは、上記液体調味料が濃縮調味料であっても、ストレート調味料であってもよいからである。
【0039】
尚、醤油の種類としては、含有量が上記範囲内であれば、濃口、うすくち、生揚げなどの種類は問わない。
【0040】
さらに、本発明においては、上記したあごだしを含有する液体調味料について、糖類を用い、これを含有したものとすることができる。
【0041】
本発明のあごだし含有液体調味料においては、風味のバランスの観点から、甘味を付けることが好ましいが、せっかく増強された前記好ましい風味に影響を及ぼさないように、甘味の強い糖類の使用量を少なめにしたほうがよい。
ここでいう糖類とは、単糖や二糖類(例えば、グルコース、フルクトース、スクロースなど)のように甘味を有する糖類のことを指す。
【0042】
尚、糖類の態様としては液状であっても固体状であってもよく、みりん等の甘味料由来であってもよい。
【0043】
前記糖類の含有量としては、喫食時の前記液体調味料に対して0.2質量%以上2質量%以下であればよいが、風味への影響の観点から、0.4質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましく、0.8質量%以上1質量%以下であることがさらに好ましい。尚、「喫食時の」と記載したのは、上記液体調味料が濃縮調味料であっても、ストレート調味料であってもよいからである。
【0044】
加えて、本発明のあごだし含有液体調味料においては、総合的な風味バランスを整えるため、有機酸及び/又は核酸を配合し、含有させるとよい。
尚、これらを配合しなくても十分に前記好ましい風味を発現させたあごだし含有液体調味料をなし得るが、風味のバランスを整え、呈味の底上げ(全体的な力価の増強)を図る観点から、これらを加えたほうがよりよい。
【0045】
具体的には、前記有機酸がコハク酸及び/又はコハク酸塩であって、これらの含有量が、あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対して、0.03質量部以上0.3質量部以下であればよいが、呈味バランスの観点から、0.1質量部以上0.2質量部以下であることがより好ましい。
【0046】
また、前記核酸がイノシン酸又はその塩、及び/又は、グアニル酸又はその塩であって、これらの含有量が、あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対して、0.03質量部以上0.7質量部以下であればよいが、呈味バランスの観点から、0.1質量部以上0.5質量部以下であることがより好ましい。
【0047】
本発明のあごだし含有液体調味料は、内容的には以上の如きものである。
本発明のあごだし含有液体調味料は、汎用的に使用できるものであるが、特に、その風味の野菜との相性及び元来風味が弱く調味料の風味に負け易い野菜類に適用されることが好ましい。つまり、野菜の本来の風味を活かし、適度なだし風味を付与するという観点から、野菜煮込み用調味料であることが好ましい。
【0048】
さらには、本発明のあごだし含有液体調味料は、レトルト処理された調味料であることがより好ましい。
その理由としては、あごだしを含有する調味料はレトルト処理によって、風味が弱まるためである。
本発明の作用効果によって、事前にあごだしの前記好ましい風味を増強しておくことで、レトルト処理によっても十分にあごだしの好ましい風味を感じられるあごだし含有液体調味料が得られるからである。
【0049】
本発明には、上記あごだし含有液体調味料の製造方法も含まれる。
上記あごだし含有液体調味料が常圧加熱処理(レトルト殺菌処理をしない)の場合は、前記原材料を混合した後(つまり、前記あごだしに、前記した如きあごだし以外の魚節だし類、酵母エキス、醤油、糖類、有機酸、核酸から選ばれる1種以上を混合した後)、60℃以上90℃以下かつ60分以下達温以上の範囲で加熱処理することにより、あごだし含有液体調味料を製造することができる。
【0050】
また、上記あごだし含有液体調味料がレトルト調味料の場合には、前記原材料を混合した後(つまり、前記あごだしに、前記した如きあごだし以外の魚節だし類、酵母エキス、醤油、糖類、有機酸、核酸から選ばれる1種以上を混合した後)、110℃以上130℃以下かつ60分以下5分以上の範囲で加圧加熱処理(レトルト殺菌処理)することにより、あごだし含有液体調味料を製造することができる。
【0051】
このあごだし含有液体調味料の製造方法における前記原材料やその含有割合及びその好適割合などは、基本的に上記したあごだし含有液体調味料の説明中の記載と同様である。
【0052】
本発明には、上記記載したとおり、あごだし含有液体調味料に、一定量の上記魚節だし類を含有させること、さらに一定量の上記酵母エキスを含有させること、さらに、上記醤油、上記糖類を一定量含有させること、さらに、上記有機酸及び/又は核酸を一定量含有させることによって、あごだしの特有の繊細なうま味や好ましい香りに影響することなく、生臭みや苦味、エグ味、焦げ臭などの不快風味をマスキングし、さらには、前記好ましい風味を増強し、液体調味料の全体の風味バランスを整え、あごだし含有液体調味料の風味改善方法を含むものである。
なお、ここで「魚節だし類」、「酵母エキス」、「醤油」、「糖類」、「有機酸及び/又は核酸」については、それぞれ上記あごだし含有液体調味料についての説明中に記載したとおりであり、また、「一定量」とは、上記あごだし含有液体調味料についての説明中に記載した、上記各成分の含有割合及びその好適割合を指している。
【0053】
上記した如きあごだし含有液体調味料に、あごだし以外の魚節だし類、酵母エキス、醤油、糖類、有機酸、核酸から選ばれる1種以上を含有させることにより、あごだし含有液体調味料の風味を改善することができる。
ここで風味の改善とは、あごだしを含有する液体調味料について感じられる生臭みや苦味、エグ味、焦げ臭などの不快風味を改善することと、あごだしを含有する液体調味料について感じられる特有の繊細なうま味や好ましい香り(好ましい風味)を増強することとの両方を含むものである。
【0054】
尚、本発明の調味料には、その構成要件を満たす範囲で必要に応じて一般的な食品に用いられる各種食品や食品添加物などを含んでいてもよい。
【0055】
例えば、水、味噌、食酢、食塩、アルコール類、アミノ酸類、上記以外の糖類、糖アルコール、人工甘味料(スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムKなど)、ミネラル(カルシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、亜鉛、マグネシウムなど、及びこれらの塩類)、香料、pH調整剤(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸及び酢酸など)、増粘剤、乳化剤、着色料、シクロデキストリン、酸化防止剤(ビタミンE、ビタミンC、香辛料抽出物、ビタミンCなど)、各種食品素材などを挙げることができる。
【0056】
さらに、トッピング効果(見た目を良くしたり、香味や栄養バランスを調整したりする効果)を持たせるため、肉類、魚介類、野菜類、香草類、種実類などの粒子の大きい可食性具材を適宜加えてもよい。
【0057】
尚、これら本発明の詳細については上記したとおりである。
【実施例
【0058】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
[実施例1]あごだしの力価範囲の検証(試験例1~12)
本実施例では、好ましい風味と不快風味を共に含有するあごだしの液体調味料に対する配合量(力価)の範囲についての検証を行なった。
【0060】
あごだしの原料として「焼きあご」を選択し、抽出だしの出来高1000gに対して原料500gを使用した。90℃にて1時間、攪拌しながら焼きあごから風味成分を抽出し、フィルタープレスによって固液分離をし、清澄なあごだしを得た。
【0061】
得られたあごだしを出来高1000gに対して、表1に示す配合量で添加・攪拌し、液体調味料として相応しいだしの配合量(力価)の範囲を検証した。
【0062】
さらに、これら調製したあごだし含有液体調味料について、以下のそれぞれ5段階の基準で、「生臭み、苦味、エグ味、焦げ臭」(評価基準1:不快風味)、「うま味、好ましい香り」(評価基準2:好ましい風味)、「総合評価」(評価基準3)について評価した。評価は、品温を室温とし、専門のパネラー6名で行った(尚、評点の小数点以下は四捨五入した)。
これら試験例1~12の条件と結果を表1に示す。
【0063】
(評価基準1:不快風味:生臭み、苦味、エグ味、焦げ臭)
5:不快風味が弱い。
4:不快風味がやや弱い。
3:不快風味がある。
2:不快風味がやや強い。
1:不快風味が強い。
【0064】
(評価基準2:好ましい風味:うま味、香り)
5:好ましい風味が強い。
4:好ましい風味がやや強い。
3:好ましい風味がある。
2:好ましい風味がやや弱い。
1:好ましい風味が弱い。
【0065】
(評価基準3:総合評価)
5:好ましい風味と不快風味のバランスの点で風味改善可。
4:好ましい風味と不快風味のバランスの点で風味改善やや可。
3:好ましい風味と不快風味のバランスの点で風味改善許容範囲。
2:好ましい風味と不快風味のバランスの点で風味改善やや難。
1:好ましい風味と不快風味のバランスの点で風味改善難。
【0066】
【表1】
【0067】
結果、不快風味が感じられるものの、好ましい風味の力価が十分あると判定されたあごだしの配合量の範囲は、あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.05質量%以上0.5質量%以下であることが分かった(試験例2~10)。風味の改善可能性の観点から、0.06質量%以上0.4質量%以下であることがより好ましく(試験例3~9)、0.075質量%以上0.25質量%以下であることがさらに好ましいことが分かった(試験例4~8)。
【0068】
[実施例2]魚節だし類の配合によるあごだしの風味改善効果の検証(試験例13~22)
ここでは、実施例1の結果から、風味の改善可能性の高いあごだしの配合量に調整した液体調味料に、表2に示す各種魚節だし類を加え、あごだしの風味改善が可能かどうかを検証した。
【0069】
各種魚節だし類は、実施例1のあごだしの場合と同様に調製し(同抽出倍率)、実施例1の試験例8のあごだし含有液体調味料に対して、同一の配合量で添加・攪拌し、魚節だし類の配合による風味改善効果を評価した。
魚節だし類の配合による風味改善効果は、以下のそれぞれ5段階の基準で、試験例8を比較対照として、各試験例の「生臭み、苦味、エグ味、焦げ臭」(評価基準4:不快風味)、「うま味、香り」(評価基準5:好ましい風味)、「総合評価」(評価基準5)について評価した。評価は、品温を室温とし、専門のパネラー6名で行った(尚、評点の小数点以下は四捨五入した)。
これら試験例13~22の条件と結果を、試験例8の条件と共に表2に示す。
【0070】
(評価基準4:不快風味:生臭み、苦味、エグ味、焦げ臭)
5:不快風味がほとんど感じられず、優れている。
4:不快風味が弱く、やや優れている。
3:不快風味があるが、許容範囲。
2:不快風味がやや強く、やや劣る。
1:不快風味が強すぎて、劣る。
【0071】
(評価基準5:好ましい風味:うま味、香り)
5:好ましい風味が強く、優れている。
4:好ましい風味がやや強く、やや優れている。
3:好ましい風味があり、許容範囲。
2:好ましい風味がやや弱く、やや劣る。
1:好ましい風味が弱く、劣る。
【0072】
(評価基準6:総合評価)
5:あごだしの好ましい風味が顕著に感じられ、特に優れている。
4:あごだしの好ましい風味が強く感じられ、優れている。
3:あごだしの好ましい風味が強く感じられ、やや優れている。
2:あごだしの好ましい風味がやや弱く感じられ、やや劣る。
1:あごだしの好ましい風味が弱く感じられ、劣る。
【0073】
【表2】
【0074】
結果、驚くべきことに、表2で検証した全ての魚節だし類によって、あごだしの不快風味がマスキングされ(試験例8に対比したときの、試験例13~22)、好ましい風味がより明確に感じられることが分かった。その中でも特に、鰹だし(試験例13~15)、サバだし(試験例17)、煮干しだし(試験例22)により強い作用効果が認められることが分かった。
【0075】
[実施例3]魚節だし類の力価範囲の検証(試験例23~34)
ここでは、実施例2において、各種魚節だし類が、あごだしの不快臭をマスキングし、好ましい風味を感じられやすくする作用が確認されたため、魚節だし類のあごだし含有液体調味料に対する配合量(力価)の範囲についての検証を行なった。
【0076】
あごだし含有液体調味料は、実施例2と同様に調製し(試験例8と同条件)、魚節だし類の代表として、効果のより強かった鰹だしを選択した。
鰹だしは実施例2の試験例13と同様に調製し、表3に示す配合比で、あごだし含有液体調味料に添加・攪拌し、風味改善効果を評価した。評価は実施例2と同様にして行った。
これら試験例23~34の条件と結果を、試験例13の条件と結果と共に表3に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
結果、あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記魚節だしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.3質量部以上12質量部以下の範囲であればよいことが分かった(試験例13、24~33)。さらに不快風味のマスキング作用効果の強さの観点から、0.4質量部以上10質量部以下であることがより好ましく(試験例13、25~32)、0.5質量部以上4質量部以下であることがさらに好ましいことが分かった(試験例13、26~30)。
【0079】
[実施例4]酵母エキスの配合によるあごだしの好ましい風味の増強効果の検証(試験例35~37)
実施例2、3において、魚節だし類によるあごだしの不快風味マスキング効果及びその至適配合量の範囲が分かった。
そこで、ここでは、あごだしの好ましい風味をより増強できるか否かについて検証を行なった。
【0080】
あごだし、及び魚節だし類の代表としての鰹だしは、実施例3の試験例13と同様に調製した。これに、表4に示す酵母エキスを添加して、あごだしの好ましい風味のみをより増強できるか否かについて検証を行なった。評価は実施例2と同様にして行った。
これら試験例35~37の条件と結果を、試験例13の条件と結果と共に表4に示す。
【0081】
【表4】
【0082】
結果、評価した全ての酵母エキスについて、その酵母種類の由来を問わず、魚節だしによってマスキングされた不快風味は増強されず、あごだしの好ましい風味のみをより増強できることが分かった(試験例35~37)。ただし、備考欄に記載したとおり、異質な酵母風味による液体調味料の風味に対する影響という観点から、トルラ酵母由来の酵母エキスがより好ましいことが分かった(試験例37)。
【0083】
[実施例5]酵母エキスの配合量の検証(試験例38~45)
ここでは、実施例4の結果、酵母エキスの添加により、あごだしの好ましい風味のみが増強されることが分かったため、あごだし含有液体調味料に対する酵母エキスの配合量(力価)の範囲についての検証を行なった。
【0084】
あごだし含有液体調味料は、実施例2と同様に調製し、魚節だし類の代表として、実施例2の結果より、効果のより強かった鰹だしを選択した。鰹だしは実施例3の試験例13と同様に調製し、実施例4の結果から、酵母エキスとしてトルラ酵母由来の酵母エキスを選択した。表5に示す配合比で、あごだし含有液体調味料に添加・攪拌し、風味改善効果を評価した。評価は実施例2と同様にして行った。
これら試験例38~45の条件と結果を、試験例37の条件と結果と共に表5に示す。
【0085】
【表5】
【0086】
結果、あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記酵母エキスの含有量が、0.1質量部以上5質量部以下であればよいことが分かった(試験例37、39~44)。好ましい風味の増強効果の観点及び酵母エキスの風味が付与される観点から、0.5質量部以上、4質量部以下であればより好ましいことが分かった(試験例37、40~43)。さらに、総合的な観点から、0.5質量部以上3質量部以下がさらに好ましいことが分かった(試験例37、40~42)。
【0087】
[実施例6]液体調味料の喫食時における醤油の含有量の範囲の検証(試験例46~54)
【0088】
ここでは、あごだし含有液体調味料の全体の味を考慮した場合における、風味のバランスを整えるための醤油の使用量の範囲について検証した。
【0089】
あごだし含有液体調味料は、実施例2と同様に調製し、魚節だし類の代表として、実施例2の結果より、効果のより強かった鰹だしを選択した。鰹だしは実施例3の試験例29と同様に調製し、実施例4の結果から、酵母エキスとしてトルラ酵母由来の酵母エキスを選択した。表6に示す配合比で、あごだし含有液体調味料に添加・攪拌し、風味バランスの適否について、以下の5段階の評価基準(評価基準6)で総合評価した。評価は実施例2と同様に、品温を室温とし、専門のパネラー6名で行った(尚、評点の小数点以下は四捨五入した)。尚、本実施例で調製したあごだし含有液体調味料は、濃縮タイプではなく、ストレートタイプとした。
これら試験例46~54の条件と結果を表6に示す。
【0090】
(評価基準6:総合評価)
5:あごだし含有液体調味料の風味バランスが特に改善されている。
4:あごだし含有液体調味料の風味バランスが改善されている。
3:あごだし含有液体調味料の風味バランスがやや改善されている。
2:あごだし含有液体調味料の風味バランスがやや改善されていない。
1:あごだし含有液体調味料の風味バランスが改善されていない。
【0091】
【表6】
【0092】
結果、醤油の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.05質量%以上5質量%以下であれば、増強されたあごだしの好ましい風味を阻害せず、あごだし含有液体調味料の全体の風味バランスを整えられることが分かった(試験例47~53)。また、バランスのよさの観点から、0.1質量%以上3質量%以下がより好ましく(試験例48~52)、0.2質量%以上1質量%以下がさらに好ましいことがわかった(試験例49~51)。
【0093】
[実施例7]液体調味料の喫食時における糖類の含有量の範囲の検証(試験例55~63)
【0094】
ここでは、実施例6と同様に、あごだし含有液体調味料の全体の味を考慮した場合における、風味のバランスを整えるための糖類の使用量の範囲について検証した。
【0095】
あごだし含有液体調味料は、実施例6と同様に調製し、実施例6の試験例49の結果から喫食時の醤油の含有量を0.2質量%とした。評価は実施例6と同様に行なった。
これら試験例55~63の条件と結果を表7に示す。
【0096】
【表7】
【0097】
結果、糖類の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.2質量%以上2質量%以下であれば、増強されたあごだしの好ましい風味を阻害せず、あごだし含有液体調味料の全体の風味バランスを整えられることが分かった(試験例56~62)。また、バランスのよさの観点から、0.4質量%以上1.5質量%以下がより好ましく(試験例57~61)、0.8質量%以上1質量%以下がさらに好ましいことがわかった(試験例59~60)。
【0098】
[実施例8]液体調味料の喫食時における有機酸及び/又は核酸の含有量の範囲の検証(試験例64~83)
ここでは、実施例6、7と同様に、あごだし含有液体調味料の全体の味を考慮した場合における、風味のバランスを整え、呈味全体の底上げ(全体的な力価の増強)をするための有機酸及び/又は核酸の使用量の範囲について検証した。
【0099】
あごだし含有液体調味料は、実施例7と同様に調製し、実施例7の試験例60の結果から糖類の含有量を1質量%とした。評価は実施例6と同様に行なった。
これら試験例64~83の条件と結果を表8(表8-1と表8-2)に示す。
【0100】
【表8-1】
【0101】
【表8-2】
【0102】
結果、有機酸の含有量が、あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対して、0.03質量部以上0.3質量部以下であれば、増強されたあごだしの好ましい風味を阻害せず、あごだし含有液体調味料の全体の風味バランス及び風味全体の呈味の底上げ(全体的な力価の増強)を図れることができることが分かった(試験例65~68)。また、バランスのよさの観点から、0.1質量部以上0.2質量部以下がより好ましいことがわかった(試験例65~67)。
【0103】
一方で、核酸の含有量が、あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対して、0.03質量部以上0.7質量部以下であれば、増強されたあごだしの好ましい風味を阻害せず、あごだし含有液体調味料の全体の風味バランス及び風味全体の呈味の底上げ(全体的な力価の増強)を図れることができることが分かった(試験例71~74)。また、バランスのよさの観点から、0.1質量部以上0.5質量部以下がより好ましいことがわかった(試験例72~73)。
【0104】
さらに、有機酸と核酸を上記好適な範囲において併用した場合には、増強されたあごだしの好ましい風味を阻害せず、あごだし含有液体調味料の全体の風味バランス及び風味全体の呈味の底上げ(全体的な力価の増強)をより強く図れることができることが分かった(試験例76~83)。
【0105】
[実施例9]あごだし含有液体調味料の加熱処理温度・時間の範囲の検証(試験例84~88)
本発明のあごだし含有液体調味料は、加熱殺菌処理される。そこでここでは、この加熱処理による本発明の作用効果に対する影響を検証した。
【0106】
あごだし含有液体調味料は前記各実施例の結果に基づき、表9に示す処方によって調製した。そして、表10に示す温度及び時間の条件で加熱処理し、その影響を評価した。評価は実施例2の評価基準3:総合評価と同様に行なった。
【0107】
処方は表9に、結果は表10に示す。
【0108】
【表9】
【0109】
【表10】

*:あごだしの不快風味が著しく強く、あごだし含有液体調味料の風味として不適。
**:あごだし含有液体調味料の呈味の底上げ(力価向上)感が認められ好ましい。
***:あごだし含有液体調味料の風味全体のバランスがよく、好ましい。
※:あごだしの好ましい風味が強く、風味全体のバランス、呈味の底上げ感が認められ特に好ましい。
【0110】
結果、魚節だし類が含まれないもの(試験例84)は、加熱前からあごだしの不快風味が強くあごだし含有液体調味料の風味として適していなかったが、特に加圧加熱殺菌処理(レトルト処理)によって、あごだしの好ましい風味がより弱化し、より風味が劣ってしまった。
【0111】
魚節だし類が含まれ、酵母エキスが含まれないもの(試験例85)は、加熱前からあごだしの不快風味がマスキングされ、好ましい風味が強く感じられたものの、試験例84の場合と同様に、特に加圧加熱殺菌処理(レトルト処理)によって、あごだしの好ましい風味が弱化してしまった(ただし、あごだし含有液体調味料の風味としては許容範囲と認められた。)。
【0112】
魚節だし類と酵母エキスが含まれ、醤油や糖類が含まれないもの(試験例86)は、加熱前からあごだしの不快風味がマスキングされ、好ましい風味が特に強く感じられ、呈味の底上げ(力価向上)が認められたものの、試験例84の場合と同様に、特に加圧加熱殺菌処理(レトルト処理)によって、あごだしの好ましい風味が弱化してしまった(ただし、あごだし含有液体調味料の風味としては依然として優れていた)。
【0113】
魚節だし類と酵母エキスが含まれ、さらに醤油や糖類が含まれ、有機酸や核酸が含まれないもの(試験例87)については、加熱前からあごだしの不快風味がマスキングされ、好ましい風味が特に強く感じられ、風味のバランスの良さが認められたものの、試験例84の場合と同様に、特に加圧加熱殺菌処理(レトルト処理)によって、あごだしの好ましい風味が弱化してしまった(ただし、あごだし含有液体調味料の風味としては依然として優れていた)。
【0114】
これら試験例84~87の風味の変化に対して、試験例88においては、常圧加熱及び加圧加熱殺菌処理(レトルト処理)によってもその処理前後で風味の変化は生じず、あごだしの好ましい風味が強く、風味全体のバランス、呈味の底上げ感が認められ特に好ましい状態が維持されていた。
【0115】
以上から、本発明のあごだし含有液体調味料は、常圧加熱条件下では、60℃以上90℃以内で、60分以下達温以上の範囲であれば、風味の変質が認められず好ましいことが分かった。尚、前記温度と時間の範囲の関係は、温度が高いほど短い時間であることを表す。
【0116】
さらに、本発明のあごだし含有液体調味料は、加圧加熱殺菌処理(レトルト処理)下では、110℃以上130℃以下で、60分以下5分以上の範囲であれば、風味の変質が配合される原料の組成によっては、風味の変質は認められるものの、あごだし含有液体調味料としての風味品質は許容範囲を保つことが分かった。特に、本発明の構成要件を全て満たす場合においては、風味の変質が認められず極めて好ましいことが分かった。尚、前記温度と時間の範囲の関係は、温度が高いほど短い時間であることを表す。
【0117】
以上から、本発明の構成要件と、作用効果の関係が実証された。
よって、上記の通り、本発明によれば、生臭みや苦味、エグ味、焦げ臭などの不快風味が改善され、あごだし特有の繊細なうま味や好ましい香りが増強された、あごだし含有液体調味料、及びその製造方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、あごだし液体調味料の風味を改善することができ、あごだしを含有する液体調味料について感じられる生臭みや苦味、エグ味、焦げ臭などの不快風味を改善すると共に、あごだしを含有する液体調味料について感じられる特有の繊細なうま味や好ましい香りを増強することができる。
それゆえ、本発明は食品産業の発展及び消費者の摂食行動に対して、確実に貢献することができるものと期待される。