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<図1>
  • 特許-ラミネート方法及びラミネート装置 図1
  • 特許-ラミネート方法及びラミネート装置 図2
  • 特許-ラミネート方法及びラミネート装置 図3
  • 特許-ラミネート方法及びラミネート装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】ラミネート方法及びラミネート装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/02 20060101AFI20220526BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
B29C63/02
B29C65/48
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022509972
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2021010565
(87)【国際公開番号】W WO2021193226
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2020057494
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100196380
【弁理士】
【氏名又は名称】森 匡輝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 茂和
(72)【発明者】
【氏名】高田 長一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 秀宣
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 あゆみ
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-043099(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082683(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/128032(WO,A1)
【文献】特開2015-093470(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0020949(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00-63/48
B29C 65/00-65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウエブを貼り合わせて食品包装材を製造するラミネート方法であって、
二液硬化型接着剤のポリオールである主剤及びイソシアネートである硬化剤のいずれか一方を塗工液として第1のウエブに塗工する第1塗工工程と、
前記主剤及び前記硬化剤のうち前記第1のウエブに塗工していないもう一方を塗工液として第2のウエブに塗工する第2塗工工程と、
前記第1のウエブの塗工液塗工面と前記第2のウエブの塗工液塗工面とを貼り合わせて、前記主剤と前記硬化剤とを反応させて高分子量化する貼り合わせ工程と、を含み、
前記第1塗工工程及び前記第2塗工工程では、
チャンバードクターを有するオフセットグラビア塗工機によって、前記主剤又は前記硬化剤を塗工し、
前記貼り合わせ工程では、
前記主剤と前記硬化剤とを結合させてポリウレタン樹脂とする、
ことを特徴とするラミネート方法。
【請求項2】
前記第1塗工工程の塗工量及び前記第2塗工工程の塗工量は、
0.3~3.0g/mである、
ことを特徴とする請求項1に記載のラミネート方法。
【請求項3】
複数のウエブを貼り合わせて食品包装材を製造するラミネート装置であって、
二液硬化型接着剤のポリオールである主剤及びイソシアネートである硬化剤のいずれか一方を塗工液として第1のウエブに塗工する第1塗工部と、
前記主剤及び前記硬化剤のうち前記第1のウエブに塗工していないもう一方を塗工液として第2のウエブに塗工する第2塗工部と、
前記第1のウエブの塗工液塗工面と前記第2のウエブの塗工液塗工面とを貼り合わせて、前記主剤と前記硬化剤とを結合させてポリウレタン樹脂とする貼合部と、を備え、
前記第1塗工部及び前記第2塗工部はチャンバードクターを有するオフセットグラビア塗工機である、
ことを特徴とするラミネート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート方法及びラミネート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウエブに接着剤を塗布し、複数のウエブを貼り合わせて複合フィルムを製造するラミネート装置が開発されている。例えば、特許文献1のラミネート装置では、ロールコータを用いて一方のウエブに二液硬化型接着剤を塗布して、他方のウエブと貼り合わせ、複合フィルムを製造する。
【0003】
代表的な二液硬化型接着剤の1つは、イソシアネート化合物とヒドロキシ化合物とを組み合わせた反応性接着剤である。この他の二液硬化型接着剤として、エポキシ化合物とアミン化合物とを組み合わせた反応性接着剤(例えば特許文献2参照)、エポキシ化合物と1級アミノ基を分子構造中に有するポリウレタンポリウレア樹脂とを組み合わせた反応性接着剤(例えば特許文献2参照)等がある。また、カルボキシル基とカルボジイミド基からなる硬化系も提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-122074号公報
【文献】特許第5651172号公報
【文献】特許第6512256号公報
【文献】国際公開第2018/128032号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のラミネート装置では、予め二液硬化型接着剤の主剤と硬化剤とを混合して液溜部に貯留させる。そして、該ラミネート装置は、ロールコータを用いて貯留されている接着混合液をウエブに塗工する。このようなラミネート装置では、液溜部において二液硬化型接着剤の硬化が開始される。したがって、ポリウレタン樹脂を用いてラミネートされる食品包装材を製造する場合のように、多品種生産で製品の切替が多い場合、接着剤の付着した各ロールを清掃するのに手間がかかり、生産効率は低い。また、清掃が不足すると、接着剤に起因する異物が貼り合わせ面に混入し、製品品質を低下させるおそれがある。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、製品の切替が多い場合であっても、清掃性が良好で、異物混入等による品質低下を軽減し、生産効率を向上させることができるラミネート方法及びラミネート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の観点に係るラミネート方法は、
二液硬化型接着剤の主剤及び硬化剤のいずれか一方を塗工液として第1のウエブに塗工する第1塗工工程と、
前記主剤及び前記硬化剤のうち前記第1のウエブに塗工していないもう一方を塗工液として第2のウエブに塗工する第2塗工工程と、
前記第1のウエブの塗工液塗工面と前記第2のウエブの塗工液塗工面とを貼り合わせて、前記主剤と前記硬化剤とを反応させて高分子量化する貼り合わせ工程と、を含み、
前記第1塗工工程及び前記第2塗工工程では、
グラビア塗工機によって、前記主剤又は前記硬化剤を塗工する。
【0008】
また、前記主剤はポリオールであり、前記硬化剤はイソシアネートであり、
前記貼り合わせ工程では、
前記主剤と前記硬化剤とを結合させてポリウレタン樹脂とする、
こととしてもよい。
【0009】
また、前記グラビア塗工機は、
チャンバードクターを有するオフセットグラビア塗工機である、
こととしてもよい。
【0010】
また、前記第1塗工工程の塗工量及び前記第2塗工工程の塗工量は、
0.3~3.0g/mである、
こととしてもよい。
【0011】
また、この発明の第2の観点に係るラミネート装置は、
二液硬化型接着剤の主剤及び硬化剤のいずれか一方を塗工液として第1のウエブに塗工する第1塗工部と、
前記主剤及び前記硬化剤のうち前記第1のウエブに塗工していないもう一方を塗工液として第2のウエブに塗工する第2塗工部と、
前記第1のウエブの塗工液塗工面と前記第2のウエブの塗工液塗工面とを貼り合わせて、前記主剤と前記硬化剤とを反応させて高分子量化する貼合部と、を備え、
前記第1塗工部及び前記第2塗工部はグラビア塗工機である。
【0012】
前記主剤はポリオールであり、前記硬化剤はイソシアネートであり、
前記貼合部は、前記主剤と前記硬化剤とを結合させてポリウレタン樹脂とする、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のラミネート方法及びラミネート装置によれば、グラビア塗工機によって、主剤と硬化剤とを別々のウエブに塗工して、ウエブ同士を貼り合わせるので、ロールの清掃性が良好であり、異物混入を低減できるとともに、塗工量を安定化できる。したがって、製品品質を向上させることができる。また、製品の切替が多い場合であっても、生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態に係るラミネート装置の正面図である。
図2】第1塗工部の要部の構成を示す正面図である。
図3】ダイレクトグラビア方式のグラビア塗工機の構成を示す正面図である。
図4】(A)、(B)及び(C)は、グラビアロール、オフセットロール及び圧胴の配置と回転方向の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照しつつ、本発明の実施の形態に係るラミネート装置及びラミネート方法について説明する。
【0016】
本実施の形態に係るラミネート装置1は、食品包装材をラミネート加工するラミネート装置であり、二液硬化型接着剤を用いて第1のウエブW1と第2のウエブW2とを貼り合わせる装置である。二液硬化型接着剤の種類は特に限定されず、主剤Mと硬化剤Hとが反応して高分子量化することによって接着力を発揮するものであればよい。
【0017】
このような二液硬化型接着剤としては、イソシアネート化合物(主剤M)と、ヒドロキシ化合物(硬化剤H)とを用いるもの;イソシアネート化合物(主剤M)と、アミノ基を分子構造中に有するヒドロキシ化合物(硬化剤H)とを用いるもの;エポキシ化合物(主剤M)と、アミン化合物(硬化剤H)とを用いるもの;エポキシ化合物(主剤M)と、1級アミノ基を分子構造中に有するポリウレタンポリウレア樹脂(硬化剤H)とを用いるもの;カルボキシル基を含有する化合物(主剤M)と、カルボジイミド基を含有する化合物(硬化剤H)とを用いるもの、等が挙げられる。本実施の形態に係る二液硬化型接着剤は、食品包装材に用いられる無溶剤型のウレタン系接着剤であり、ポリオールである主剤Mとイソシアネートである硬化剤Hとが結合されることによってポリウレタン樹脂となる接着剤である。
【0018】
ラミネート装置1は、図1に示すように、第1塗工ユニット10、第2塗工ユニット20、ラミネータ30を備える。
【0019】
第1塗工ユニット10は、第1のウエブW1を送出する第1巻出部11、第1巻出部11から送出された第1のウエブW1に二液硬化型無溶剤系接着剤の主剤Mを塗工液として塗工する第1塗工部12を備える。第1のウエブW1は、第1巻出部11に回転可能に装着されている。
【0020】
第1塗工部12は、主剤Mをグラビア塗工するグラビア塗工機である。図2に示すように、本実施の形態に係る第1塗工部12は、チャンバードクター123を備え、版胴に塗工された主剤Mを転写して塗工するオフセットグラビア塗工機である。具体的には、第1塗工部12は、グラビアロール121、オフセットロール122、チャンバードクター123、圧胴124、塗工液タンク125、ポンプ126、温度調節機127を備える。
【0021】
グラビアロール121は、第1塗工部12に回転可能に支持され、図示しない駆動装置により回転駆動される、金属製のロールである。グラビアロール121の表面には、例えばレーザー彫刻により、複数の凹部(グラビアパターン)が形成されている。この凹部の容積、開口比、深さ等を変化させることで、グラビアロール121の表面に塗工される塗工液の量を調整することができる。より具体的には、グラビアロール121の線数を調整することにより、塗工量を調整することができる。グラビアロール121の表面に施されるグラビアパターンは特に限定されないが、斜線のような連続するセル形状では厚みムラが生じやすいので、好ましくは穴タイプのパターンを用いる。更に好ましくは、ハニカムパターンを用いる。
【0022】
図2に示すように、チャンバードクター123は、主剤Mを貯留する、密閉された容器である。チャンバードクター123は、グラビアロール121の径方向の一側方に配置されている。
【0023】
チャンバードクター123は、主剤Mを貯留するための貯留部123aを備える。貯留部123aは、グラビアロール121側に開口している。そして、グラビアロール121の外周面の一部は、貯留部123a内に貯留された主剤Mに浸されている。
【0024】
チャンバードクター123は、板状のドクターブレード123bを備える。ドクターブレード123bは、貯留部123aの開口上端部からグラビアロール121に向けて突設されている。ドクターブレード123bの材質は特に限定されず、金属でも樹脂でもよい。本実施の形態に係るドクターブレード123bは、ステンレス製である。
【0025】
ドクターブレード123bの先端部は、グラビアロール121の外周面に圧接され、貯留部123aのロール回転方向下流側をシールする。また、ドクターブレード123bは、グラビアロール121の外周面に付着する余分な主剤Mを、グラビアロール121の回転動作により掻き取って計量する。本実施の形態に係るドクターブレード123bは、グラビアロール121の回転方向に対して逆方向となるように設置されている。これにより、主剤Mをより正確に計量することができる。
【0026】
また、チャンバードクター123は、板状のシールプレート123cを備える。シールプレート123cは、貯留部123aの開口下端部からグラビアロール121に向けて突設されている。シールプレート123cの材質は、特に限定されず、例えば、ポリエステル等の樹脂である。
【0027】
シールプレート123cの先端部は、グラビアロール121の外周面に圧接され、貯留部123aのロール回転方向上流側をシールする。
【0028】
また、チャンバードクター123は、樹脂製のサイドプレート123dを備える。サイドプレート123dは、チャンバードクター123の両側面、すなわちグラビアロール121の回転軸方向両端部にそれぞれ取り付けられている。
【0029】
図2に示すように、サイドプレート123dのグラビアロール121側の側面は、グラビアロール121に沿った円弧形状となっており、グラビアロール121に圧接されている。
【0030】
ドクターブレード123b、シールプレート123c、1対のサイドプレート123d及びグラビアロール121によって、貯留部123aは密閉されている。
【0031】
オフセットロール122は、グラビアロール121と並行になるように、第1塗工部12に回転可能に支持され、図示しない駆動装置により回転駆動される、ゴム製のロールである。オフセットロール122は、オフセットロール122の外周面とグラビアロール121の外周面とが接するように配置されており、グラビアロール121の外周面に塗工された主剤Mを転写する。
【0032】
一般的に、版胴であるグラビアロール121の塗工液を直接ウエブに塗工するダイレクトグラビア方式では、グラビアロール121とウエブとの速度差によって、ウエブの蒸着に傷が付く等の不具合を生じる場合がある。したがって、グラビアロール121とウエブとの速比を任意に調整することは難しい。本実施の形態のように、グラビアロール121の塗工液を、ゴム製のオフセットロール122を介して第1のウエブW1に塗工することにより、グラビアロール121と第1のウエブW1との速比の調整範囲を広げることができる。これにより、第1のウエブW1に対する主剤Mの塗工量を容易に調整することができる。したがって、線数の異なる複数のグラビアロール121の使い分けが不要となり、複合フィルムの製造コストを低減することができる。
【0033】
オフセットロール122の径の大きさは、特に限定されないが、例えば直径60~250mmであり、好ましくは直径60~200mm、より好ましくは60~120mmである。グラビアロール121、圧胴124の径も同様である。一般的に、オフセットロール122の径を小さくした方が、ミストを低減できるので好ましいが、オフセットロール122に曲がりが生じるおそれがある。したがって、オフセットロール122の変形による不具合を生じない範囲で、径を適切に選択すればよい。本実施の形態に係るオフセットロール122は、グラビアロール121と圧胴124との間に挟まれるように、直線的に配置されているので、径が小さくても曲がりを抑制することができる。
【0034】
圧胴124は、オフセットロール122との間で第1のウエブW1を挟持し、第1のウエブW1を搬送するロールである。また、圧胴124は、第1のウエブW1をオフセットロール122に圧接させて、オフセットロール122の外周面に塗工された主剤Mを第1のウエブW1へ転写させる。圧胴124の材質は、特に限定されず、例えばゴム、アルミニウム等を用いることができる。具体的には、主剤Mの転写性を向上させたい場合はゴム製とし、第1のウエブW1の張力制御のし易さを向上し、曲がりを抑制したい場合はアルミニウム製、カーボン製、鉄製とし、表面処理はクロムメッキ、セラミック等、塗工条件を考慮して選択すればよい。
【0035】
塗工液タンク125は、主剤Mを貯留する容器である。図2に示すように、塗工液タンク125は、配管を介して、チャンバードクター123へ主剤Mを流入させるポンプ126に接続されている。また、塗工液タンク125は、配管を介して、チャンバードクター123と接続されている。これにより、チャンバードクター123の貯留部123aからオーバーフローした主剤Mは、塗工液タンク125に回収される。
【0036】
ポンプ126は、配管を介して、塗工液タンク125及びチャンバードクター123に接続されている。ポンプ126は、塗工液タンク125に貯留されている主剤Mをチャンバードクター123の貯留部123aに供給する。ポンプ126は、例えばサインポンプであり、温度調節のために加温された主剤Mに対応可能なポンプであればよい。
【0037】
温度調節機127は、塗工液タンク125に貯留されている主剤Mの温度を調整する。これにより、主剤Mの温度を一定に保ち、主剤Mの粘度を安定化する。より具体的には、本実施の形態に係る二液硬化型無溶剤系接着剤では、加熱によって接着剤の粘度を低下させ、塗工に適した粘度にしている。さらに、本実施の形態に係る第1塗工部12は、密閉されたチャンバードクター123を備えるので、主剤Mの温度、粘度をより安定化することができる。温度調節機127は、例えば熱媒体である水をヒーターで加熱し、塗工液タンク125に貯留された主剤Mの周囲を循環させる水用温調機である。
【0038】
第2塗工ユニット20は、第1塗工ユニット10と同様の構成であり、第2のウエブW2を送出する第2巻出部21、第2巻出部21から送出された第2のウエブW2に二液硬化型無溶剤系接着剤の硬化剤Hを塗工液として塗工する第2塗工部22を備える。第2のウエブW2は、第2巻出部21に回転可能に装着されている。
【0039】
第2塗工部22は、硬化剤Hをグラビア塗工するグラビア塗工機である。本実施の形態に係る第2塗工部22は、図2に示す第1塗工部12と同様の構成であり、チャンバードクター223を備え、版胴に塗工された硬化剤Hを転写して塗工するオフセットグラビア塗工機である。第2塗工部22は、グラビアロール221、オフセットロール222、チャンバードクター223、圧胴224、塗工液タンク225、ポンプ226、温度調節機227を備える。各部の構成は第1塗工部12と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0040】
ラミネータ30は、図1に示すように、第1塗工部12から送出された第1のウエブW1と、第2塗工部22から送出された第2のウエブW2とを貼り合わせる貼合部31、貼り合わされたウエブを巻き取る巻取部32を備える。
【0041】
貼合部31は、第1塗工部12から送出された第1のウエブW1の塗工液塗工面と、第2塗工部22から送出された第2のウエブW2の塗工液塗工面とを貼り合わせる。貼合部31で、第1のウエブW1に塗工された主剤Mと、第2のウエブW2に塗工された硬化剤Hとが混合されることにより化学反応が起こり、高分子量化する。これにより、二液硬化型無溶剤系接着剤の硬化が開始され、第1のウエブW1と第2のウエブW2とが貼り合わせ固定される。
【0042】
巻取部32は、貼合部31で第1のウエブW1と第2のウエブW2とが貼り合わされて形成された複合フィルムを巻き取る。
【0043】
続いて、本実施の形態に係るラミネート装置1を用いたラミネート方法について説明する。
【0044】
ラミネート装置1の動作が開始されると、第1のウエブW1は、第1巻出部11から第1塗工工程を行う第1塗工部12へ送出される。第1塗工部12では、図2に矢印で示す方向に、グラビアロール121、オフセットロール122、圧胴124が回転を開始する。
【0045】
グラビアロール121の回転動作により、グラビアロール121の表面に、チャンバードクター123内の主剤Mが塗工される。主剤Mは、チャンバードクター123内で所定の温度に保たれることにより、所定の粘度を保たれるので、塗工量の調整が容易となる。
【0046】
グラビアロール121に塗工された主剤Mは、チャンバードクター123のドクターブレード123bで掻き落とされることにより、計量される。
【0047】
グラビアロール121の回転方向は、オフセットロール122の回転方向と同方向である順回転、オフセットロール122の回転方向と逆方向である逆回転のいずれでもよい。本実施の形態に係るグラビアロール121のオフセットロール122に対する回転方向は、順回転としている。すなわち、図2に示すように、グラビアロール121は、オフセットロール122と同方向に回転しながら、オフセットロール122に主剤Mを転写する。
【0048】
また、オフセットロール122の回転方向は、第1のウエブW1の搬送方向と同方向である順回転、第1のウエブW1の搬送方向と逆方向である逆回転のいずれでもよい。本実施の形態に係るオフセットロール122の第1のウエブW1に対する回転方向は、順回転としている。すなわち、図2に示すように、オフセットロール122は、第1のウエブW1の搬送方向と同方向に回転しながら、第1のウエブW1に主剤Mを転写する。
【0049】
そして、第1塗工部12は、主剤Mが塗工された第1のウエブW1を、貼り合わせ工程を行うラミネータ30へと送出する。
【0050】
第2のウエブW2は、第2巻出部21から第2塗工工程を行う第2塗工部22へ送出される。第2塗工部22では、図2に示す第1塗工部12と同様に、グラビアロール221、オフセットロール222、圧胴224が回転を開始する。
【0051】
グラビアロール221の回転動作により、グラビアロール221の表面に、チャンバードクター223内の硬化剤Hが塗工される。硬化剤Hは、チャンバードクター223内で所定の温度に保たれることにより、所定の粘度を保たれるので、塗工量の調整が容易となる。
【0052】
グラビアロール221に塗工された硬化剤Hは、チャンバードクター223のドクターブレード223bで掻き落とされることにより、計量される。
【0053】
グラビアロール221の回転方向は、オフセットロール222の回転方向と同方向である順回転、オフセットロール222の回転方向と逆方向である逆回転のいずれでもよい。本実施の形態に係るグラビアロール221のオフセットロール222に対する回転方向は、順回転としている。すなわち、図2に示す第1塗工部12と同様に、グラビアロール221は、オフセットロール222と同方向に回転しながら、オフセットロール222に硬化剤Hを転写する。
【0054】
また、オフセットロール222の回転方向は、第2のウエブW2の搬送方向と同方向である順回転、第2のウエブW2の搬送方向と逆方向である逆回転のいずれでもよい。本実施の形態に係るオフセットロール222の第2のウエブW2に対する回転方向は、順回転としている。すなわち、図2に示す第1塗工部12と同様に、オフセットロール222は、第2のウエブW2の搬送方向と同方向に回転しながら、第2のウエブW2に硬化剤Hを転写する。
【0055】
そして、第2塗工部22は、硬化剤Hが塗工された第2のウエブW2を、貼り合わせ工程を行うラミネータ30へと送出する。
【0056】
本実施の形態に係る食品包装材に用いられるウレタン系接着剤における、主剤Mと硬化剤Hの塗工量の例は、以下の通りである。ノンボイルの軽包装用途では、ポリオールである主剤Mが1.0~2.0g/m、イソシアネートである硬化剤Hが0.5~1.0g/mの範囲であり、より好ましくは主剤Mが1.0~1.5g/m、硬化剤Hが0.5~0.8g/mの範囲である。また、レトルト用途では、主剤Mが1.2~3.0g/m、硬化剤Hが0.6~1.5g/mの範囲であり、より好ましくは主剤Mが1.2~2.0g/m、硬化剤Hが0.6~1.0g/mの範囲である。
【0057】
本実施の形態では、第1塗工部12で主剤Mを塗工し、第2塗工部22で硬化剤Hを塗工することとしたが、第1塗工部12と第2塗工部22とは、基本的に同様の構成であるので、第1塗工部12で硬化剤Hを塗工し、第2塗工部22で主剤Mを塗工することとしてもよい。したがって、第1塗工部12、第2塗工部22の塗工量の範囲は、主剤M及び硬化剤Hの塗工量の範囲である0.3~3.0g/mであることが好ましい。また、本実施の形態では、塗工量を精度よく調整可能なグラビア塗工機を用いて、主剤M及び硬化剤Hを塗工するので、塗工品質を向上させることができる。ここで、塗工量を0.3~3.0g/mとする場合の適当なグラビアロール121、221の線数は、100~2000線/インチである。
【0058】
ラミネータ30の貼合部31は、第1塗工部12から送出された第1のウエブW1の塗工液塗工面と、第2塗工部22から送出された第2のウエブW2の塗工液塗工面とが接触するように、第1のウエブW1と第2のウエブW2とを貼り合わせる。これにより、第1のウエブW1に塗工された主剤Mと、第2のウエブW2に塗工された硬化剤Hとが混合され、二液硬化型無溶剤系接着剤の硬化が開始される。より具体的には、ポリオールである主剤Mとイソシアネートである硬化剤Hとが、結合されてポリウレタン樹脂となる。これにより、第1のウエブW1と第2のウエブW2とが接着される。
【0059】
貼合部31で第1のウエブW1と第2のウエブW2とが貼り合わされることにより作製された複合フィルムは、巻取部32へと搬送される。そして、巻取部32は、複合フィルムを巻き取る。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態に係るラミネート装置1は、グラビア塗工機によって、二液硬化型無溶剤系接着剤の主剤Mと硬化剤Hとを別々のウエブに塗工して、ウエブ同士を貼り合わせるので、硬化開始後の接着剤がロールに付着せず、ロールの清掃を容易にすることができる。したがって、清掃不足による異物の混入を低減し、製品品質を向上させることができる。
【0061】
また、ポリウレタン樹脂を用いてラミネートされる食品包装材のように、多品種生産で製品の切替が多い場合であっても、生産効率を向上させることができる。特に、ロールコート方式より塗工量を安定化させ易く、塗工量を精度よく調整可能なグラビア塗工機を用いて主剤Mと硬化剤Hとを塗工するので、環境保護の観点から需要が増大している無溶剤型の二液硬化型接着剤を用いる場合であっても、塗工品質、生産効率を向上させることができる。
【0062】
また、主剤Mと硬化剤Hとが予め混合されることなく、貼合部31で混合されるので、ポットライフに関わらず、硬化の速い接着剤を用いることができる。したがって、貼り合わせ時のウエブのずれ等の不具合を抑制し、複合フィルムの品質を向上させることができる。
【0063】
また、本実施の形態では、第1塗工部12及び第2塗工部22を、チャンバードクター123、223を備えるグラビア塗工機としている。これにより、主剤M及び硬化剤Hが外気にさらされないので、塗工液の劣化を抑制するとともに、温度調整による粘度調整を容易にすることができる。特に、第2塗工部22がチャンバードクター223を備えることにより、空気中の水分と、硬化剤Hであるイソシアネートとが結合して、硬化剤Hが劣化することを抑制することができる。
【0064】
また、本実施の形態では、第1塗工部12及び第2塗工部22をオフセットグラビア塗工機としている。これにより、第1のウエブW1及び第2のウエブW2の送り速度に対するグラビアロール121、221の回転速度(速比)を容易に調整することができる。より具体的には、グラビアロール121、221の回転速度とオフセットロール122、222の回転速度とによって、速比を調整することができる。これにより、主剤M及び硬化剤Hの塗工量、膜厚を容易に調整することができ、均一な塗工面を得ることができる。したがって、複合フィルムの品質を向上させることができる。また、速比の調整によって容易に塗工量の増減を行うことができるので、グラビアロールを交換する手間が減少し、製品の切替が多い場合であっても生産効率を向上させることができる。
【0065】
また、本実施の形態に係るラミネート装置1は、主剤M及び硬化剤Hの塗工量を計測する塗工量計測用計器と、グラビアロール121、221及びオフセットロール122、222の回転速度を制御する制御器とを連動させることとしてもよい。これにより、計測された塗工量に基づいて、グラビアロール121、221とオフセットロール122、222との速比を自動的に調整することができる。したがって、塗工量を予め定められた適正値に保つことが可能となり、主剤Mと硬化剤Hとの塗工量比の応答性を向上させることができる。
【0066】
本実施の形態に係る第1塗工部12、第2塗工部22は、オフセットグラビア塗工機であることとしたが、これに限られない。例えば、グラビアロール121と第1のウエブW1との速比、グラビアロール221と第2のウエブW2との速比が適切で、塗工品質が良好であれば、第1塗工部12、第2塗工部22の両方又はいずれか一方を、図3に示すダイレクトグラビア方式の塗工機としてもよい。これにより、第1塗工部12、第2塗工部22の構造を簡素化し、ラミネート装置1のメンテナンス性を向上させることができる。
【0067】
また、第1塗工部12及び第2塗工部22をグラビア塗工機とすることにより、粘度が低く、ロールコータでは液ダレ等の不具合を生じる塗工液を用いる場合であっても、液ダレを防止して塗工品質を向上させることができる。また、第1塗工部12及び第2塗工部22の構成を簡素化して、ラミネート装置1を小型化することができる。
【0068】
上記実施の形態に係る第1塗工部12、第2塗工部22では、それぞれ温度調節機127、227によって塗工液タンク125、225に貯留された主剤M又は硬化剤Hの温度のみを調節することとしたが、これに限られない。例えば、チャンバードクター123、223の貯留部123a、223aに貯留されている主剤M又は硬化剤Hの温度を調節することとしてもよく、チャンバードクター123、223、塗工液タンク125、225、ポンプ126、226の間の配管の温度を調節することとしてもよい。また、グラビアロール121、221、オフセットロール122、222、圧胴124、224の温度を調節することとしてもよい。これにより、塗工時の主剤M、硬化剤Hの粘度を安定化させ、塗工品質を向上させることができる。
【0069】
また、上記実施の形態に係るラミネータ30は、図1に示すように、第1塗工ユニット10と第2塗工ユニット20との間に配置されることとしたが、これに限られない。例えば、第1塗工ユニット10とラミネータ30との間に第2塗工ユニット20を配置することとしてもよい。また、第1塗工ユニット10と第2塗工ユニット20とを入れ替えて配置してもよい。これにより、各部のレイアウトを最適化し、ラミネート装置1を小型化することができる。
【0070】
また、上記実施の形態では、図2に示すように、グラビアロール121、221、オフセットロール122、222及び圧胴124、224を垂直方向に並べて配置することとしたが、これに限られない。例えば、図4(A)に示すように、グラビアロール121、221、オフセットロール122、222及び圧胴124、224を水平方向に並べて配置することとしてもよい。また、図4(B)に示すように、グラビアロール121、221及びオフセットロール122、222を圧胴124、224の下側に配置することとしてもよい。また、図4(B)を上下反転させて、グラビアロール121、221及びオフセットロール122、222を圧胴124、224の上側に配置することとしてもよい。
【0071】
また、上記実施の形態では、グラビアロール121、221は、チャンバードクター123、223の下側から上側に向けて回転するように配置されることとしたが、これに限られない。例えば、図4(C)に示すように、グラビアロール121、221が、チャンバードクター123、223の上側から下側に向けて回転するように配置されることとしてもよい。この場合、ロール回転方向下流側となるチャンバードクター123、223の下側にドクターブレード123bが配置される。
【0072】
また、上記実施の形態では、グラビアロール121、221、オフセットロール122、222を駆動装置によって回転駆動させ、それぞれの回転速度によって、グラビアロール121と第1のウエブW1との速比、又はグラビアロール221と第2のウエブW2との速比を調整することとしたが、これに限られない。例えば、圧胴124、224を駆動装置によって回転駆動させ、オフセットロール122、222と圧胴124、224とで、速比を調整することとしてもよい。これにより、例えば、グラビアロール121、221とオフセットロール122、222との間で塗工液の膜厚(塗工量)を調整し、オフセットロール122、222と圧胴124、224との間で塗布面の外観調整を行うことができる。
【0073】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0074】
1 ラミネート装置、10 第1塗工ユニット、11 第1巻出部、12 第1塗工部、20 第2塗工ユニット、21 第2巻出部、22 第2塗工部、121,221 グラビアロール、122,222 オフセットロール、123,223 チャンバードクター、123a,223a 貯留部、123b,223b ドクターブレード、123c,223c シールプレート、123d,223d サイドプレート、124,224 圧胴、125,225 塗工液タンク、126,226 ポンプ、127,227 温度調節機、30 ラミネータ、31 貼合部、32 巻取部、M 主剤、H 硬化剤、W1 第1のウエブ、W2 第2のウエブ
図1
図2
図3
図4