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特許7079463透明な積層体及び透明ゲルアクチュエータ素子並びにその製造法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】透明な積層体及び透明ゲルアクチュエータ素子並びにその製造法
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20220526BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20220526BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220526BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20220526BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20220526BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20220526BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20220526BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20220526BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
H02N11/00 Z
C08L83/04
B32B27/00 101
H01B1/06 A
H01B5/14 A
H01B1/20 B
H01B1/12 F
B81B3/00
B81C1/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017182297
(22)【出願日】2017-09-22
(65)【公開番号】P2019058028
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-02-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 直弘
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-101581(JP,A)
【文献】特開2017-130276(JP,A)
【文献】特表2017-505600(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161633(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
C08L 83/04
B32B 27/00
B32B 7/025
H01B 1/06
H01B 5/14
H01B 1/20
H01B 1/12
B81B 3/00
B81C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なイオン伝導性薄膜層と酸化・還元機能を持つポリマーを含む透明な導電性薄膜層を有する透明な積層体であって、
前記イオン伝導性薄膜が有機ケイ素系ポリマーおよびイオン液体から構成され、
前記有機ケイ素系ポリマーが、ポリジメチルシロキサン(PDMS)と、
アクリル酸、メタクリル酸、炭素数1~4のアルキル基を有するアクリレート、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリレートからなる群から選択される1種以上の(メタ)アクリレート
からなるグラフト共重合体を含み、
0.5~6Vの直流電圧によって変位を得ることができる、積層体。
【請求項2】
導電性薄膜層がイオン液体をさらに含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記イオン液体が、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、及び1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
導電性薄膜がPEDOT:PSSを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体を含むアクチュエータ素子。
【請求項6】
透明なイオン伝導性薄膜層の表面に、導電性薄膜層が互いに絶縁状態で少なくとも2個形成され、当該導電性薄膜層に電位差を与えることにより変形可能に構成されている請求項5に記載のアクチュエータ素子。
【請求項7】
0.5~6Vの直流電圧によって変位を得ることができる、請求項5又は6に記載のアクチュエータ素子。
【請求項8】
可視光線透過率が80%以上である、請求項5~7のいずれか1項に記載のアクチュエータ素子。
【請求項9】
以下の工程を含むことを特徴とする、請求項5~8のいずれか1項に記載のアクチュエータ素子の製造法:
工程1:ポリジメチルシロキサン(PDMS)と、
アクリル酸、メタクリル酸、炭素数1~4のアルキル基を有するアクリレート、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリレートからなる群から選択される1種以上の(メタ)アクリレートからなるグラフト共重合体、溶媒、及びイオン液体を含む溶液を調製する工程;
工程2:導電性ポリマーおよび溶媒を含む溶液を調製する工程;
工程3:工程1の溶液を用いキャスト後加熱により、イオン伝導性薄膜を形成する工程;
工程4:工程2の溶液を用いキャスト後加熱により、導電性薄膜を形成する工程;
工程5:工程4で形成した導電性薄膜と工程3で形成したイオン伝導層を、圧着により積層し、積層体を形成する工程。
【請求項10】
以下の工程を含むことを特徴とする、請求項5~8のいずれか1項に記載のアクチュエータ素子の製造法:
工程1:ポリジメチルシロキサン(PDMS)と、
アクリル酸、メタクリル酸、炭素数1~4のアルキル基を有するアクリレート、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリレートからなる群から選択される1種以上の(メタ)アクリレートからなるグラフト共重合体、溶媒、及びイオン液体を含む溶液を調製する工程;
工程2:導電性ポリマーおよび溶媒を含む溶液を調製する工程;
工程3:工程1の溶液を用いキャスト後加熱により、イオン伝導性薄膜を形成する工程;
工程4:工程2の溶液を用いスプレー法により、導電性薄膜を形成する工程;
工程5:工程3で形成したイオン伝導層に、工程4で形成したスプレー法により導電性薄膜を積層し、積層体を形成する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な積層体及び透明ゲルアクチュエータ素子並びにその製造法に関する。ここでアクチュエータ素子は、酸化・還元反応や電気二重層の充放電などの電気化学プロセスを駆動力とするアクチュエータ素子である。
【背景技術】
【0002】
空気中、あるいは真空中で作動可能なアクチュエータ素子として、カーボンナノチューブとイオン液体とのゲルを導電性があり、かつ伸縮性のある活性層として用いるアクチュエータが提案されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、高性能な透明ゲルイオン伝導性薄膜を有する伝導体及び透明ゲルアクチュエータ素子並びにその製造法に関する知見はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-176428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高性能な透明ゲルイオン伝導性薄膜を有する積層体及び透明ゲルアクチュエータ素子並びにその製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、イオン液体と有機ケイ素系ポリマーの配合により透明なイオン伝導性薄膜が得られ、この透明なイオン伝導性薄膜と透明な導電性薄膜を積層することにより、透明なアクチュエータが得られることを見出した。
【0007】
本発明は、以下の透明な積層体、アクチュエータ素子、またはその製造法を提供するものである。
項1. 透明なイオン伝導性薄膜層と酸化・還元機能を持つポリマーを含む透明な導電性薄膜層を有する透明な積層体であって、前記イオン伝導性薄膜が有機ケイ素系ポリマーおよびイオン液体から構成される、積層体。
項2. 有機ケイ素系ポリマーがポリジメチルシロキサン(PDMS)である、項1に記載の透明な積層体。
項3. 導電性薄膜層が酸化・還元機能を持つ導電性ポリマーおよび必要に応じてさらにイオン液体から構成される、項1又は2に記載の積層体。
項4. 導電性薄膜がPEDOT:PSSを含む、項3に記載の積層体。
項5. 項1~4のいずれか1項に記載の積層体を含むアクチュエータ素子。
項6. 透明なイオン伝導性薄膜層の表面に、導電性薄膜層が互いに絶縁状態で少なくとも2個形成され、当該導電性薄膜層に電位差を与えることにより変形可能に構成されている項5に記載のアクチュエータ素子
項7. 以下の工程を含むことを特徴とするアクチュエータ素子の製造法:
工程1:有機ケイ素系ポリマーおよび溶媒、必要に応じてさらにイオン液体を含む溶液を調製する工程;
工程2:導電性ポリマーおよび溶媒、必要に応じてさらにイオン液体を含む溶液を調製する工程;
工程3:工程1の溶液を用いキャスト後加熱により、イオン伝導性薄膜を形成する工程
工程4:工程2の溶液を用いキャスト後加熱により、導電性薄膜を形成する工程;
工程5:工程4で形成した導電性薄膜と工程3で形成したイオン伝導層を、圧着により積層し、積層体を形成する工程。
項8. 以下の工程を含むことを特徴とするアクチュエータ素子の製造法:
工程1:有機ケイ素系ポリマーおよび溶媒、必要に応じてさらにイオン液体を含む溶液を調製する工程;
工程2:導電性ポリマーおよび溶媒、必要に応じてさらにイオン液体を含む溶液を調製する工程;
工程3:工程1の溶液を用いキャスト後加熱により、イオン伝導性薄膜を形成する工程
工程4:工程2の溶液を用いスプレー法により、導電性薄膜を形成する工程;
工程5:工程3で形成したイオン伝導層に、工程4で形成したスプレー法により導電性薄膜を積層し、積層体を形成する工程。
【発明の効果】
【0008】
透明で駆動力のある本発明のアクチュエータは、触れるインタフェース、力を伝えるインタフェース、触感を伝えるインタフェースなどの触力覚提示デバイスとして有用である。また、透明アクチュエータをフラットパネルディスプレイ上に統合することで,ディスプレイ上での物体駆動を可能とし、例えば、映像世界と現実物体の動きをリンクしてユーザに情報提示することや,実物体を介してユーザが映像とインタラクションすることなどの映像、広告などへの応用が可能となる。また、遠隔触診などの触感提示技術の応用により遠隔医療技術にも応用できる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例で用いたアクチュエータ素子の構造と使用したイオン液体(IL)、有機ケイ素系ポリマー(Polymer; PDMS)の構造を示す。
図2】実施例のアクチュエータ素子が透明であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、アクチュエータ素子のイオン伝導層に使用するイオン伝導層性薄膜には、イオン液体と透明ゲルを形成する有機ケイ素系ポリマーが使用される。
【0011】
本発明に用いられるイオン液体(ionic liquid)とは、常温溶融塩または単に溶融塩などとも称されるものであり、常温(室温)を含む幅広い温度域で溶融状態を呈する塩であり、例えば0℃、好ましくは-20℃、さらに好ましくは-40℃で溶融状態を呈する塩である。また、本発明で使用するイオン液体はイオン導電性が高いものが好ましい。
【0012】
本発明においては、各種公知のイオン液体を使用することができるが、常温(室温)または常温に近い温度において液体状態を呈する安定なものが好ましい。本発明において用いられる好適なイオン液体としては、下記の一般式(I)~(IV)で表わされるカチオン(好ましくは、イミダゾリウムイオン、第4級アンモニウムイオン)と、アニオン(X-)より成るものが挙げられる。
【0013】
【化1】
【0014】
上記の式(I)~(IV)において、Rは炭素数1~12の直鎖又は分枝を有するアルキル基またはエーテル結合を含み炭素と酸素の合計数が3~12の直鎖又は分枝を有するアルキル基を示し、式(I)においてR1は炭素数1~4の直鎖又は分枝を有するアルキル基または水素原子を示す。式(I)において、RとR1は同一ではないことが好ましい。式(III)および(IV)において、xはそれぞれ1~4の整数である。式(III)および(IV)において、2つのR基は一緒になって3~8員環、好ましくは5員環又は6員環の脂肪族飽和環式基を形成してもよい。
【0015】
炭素数1~12の直鎖又は分枝を有するアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどの基が挙げられる。炭素数は好ましくは1~8,より好ましくは1~6である。
【0016】
炭素数1~4の直鎖又は分枝を有するアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチルが挙げられる。
【0017】
エーテル結合を含み炭素と酸素の合計数が3~12の直鎖又は分枝を有するアルキル基としては、CH2OCH3、CH2CH2OCH3、CH2OCH2CH3、CH2CH2OCH2CH3、(CH2)p(OCH2CH2)qOR2(ここで、pは1~4の整数、qは1~4の整数、R2はCH3又はC2H5を表す)が挙げられる。
【0018】
アニオン(X-)としては、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4 -)、BF3CF3 -、BF3C2F5 -、BF3C3F7 -、BF3C4F9 -、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6 -)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン((CF3SO2)2N-)、ビス(フルオロメタンスルホニル)イミドイオン((FSO2)2N-)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン((CF3CF2SO2)2N-)、過塩素酸イオン(ClO4 -)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)炭素酸イオン(CF3SO2)3C-)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3 -)、ジシアンアミドイオン((CN)2N-)、トリフルオロ酢酸イオン(CF3COO-)、有機カルボン酸イオンおよびハロゲンイオンが例示できる。
【0019】
これらのうち、イオン液体としては、例えば、カチオンが1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、[N(CH3)(CH3)(C2H5)(C2H4OC2H4OCH3)]+、[N(CH3)(C2H5)(C2H5)(C2H4OCH3)]+、アニオンがハロゲンイオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン((CF3SO2)2N-)のものが、具体的に例示でき、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン((CF3SO2)2N-)からなるイオン液体が特に好ましい。なお、カチオン及び/又はアニオンを2種以上使用し、融点をさらに下げることも可能である。
【0020】
ただし、これらの組み合わせに限らず、イオン液体であって、導電率が0.1Sm-1以上のものであれば、使用可能である。
【0021】
本発明のイオン伝導性薄膜は、イオン液体と有機ケイ素系ポリマーと溶媒、必要に応じてさらに前記イオン液体とは異なるイオン液体を含む溶液を調製し、得られた溶液をキャスト法により製膜し、溶媒を蒸発、乾燥させることによって得ることができる。イオン伝導性薄膜の形成は、塗布、印刷、押し出し、キャスト、または、射出などにより行うことができる。ここで、前記溶媒は親水性溶媒と疎水性溶媒の混合溶媒を用いてもよい。
【0022】
本発明において、イオン伝導層に用いられる有機ケイ素系ポリマーとしては、ポリシロキサン系化合物、ポリジオルガノシロキサン系化合物、ポリジオルガノシロキサン系共重合体が挙げられる。また、これら化合物を組む合わせたものであってもよい。
【0023】
[ポリシロキサン系化合物]
ポリシロキサン系化合物は、有機基を有する化合物であり、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの有機基を有しない原料を使用する場合には、1個又は2個の有機基を有するアルコキシシランを少なくとも1種使用して得ることができる。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトキエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するシラン化合物の部分加水分解物や、有機溶媒中に無水ケイ酸の微粒子を安定に分散させたオルガノシリカゾル、または該オルガノシリカゾルにラジカル重合性を有する上記シラン化合物を付加させたもの等を使用することができる。
【0024】
[ポリジオルガノシロキサン系化合物]
ポリジオルガノシロキサン系化合物としては、ポリジメチルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン、カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリジメチルシロキサン、(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサンなどのポリジメチルシロキサン系化合物、ポリジエチルシロキサン、アルキル変性ポリジエチルシロキサン、カルボキシル変性ポリジエチルシロキサン、アミノ変性ポリジエチルシロキサン、エポキシ変性ポリジエチルシロキサン、フッ素変性ポリジエチルシロキサン、(メタ)アクリレート変性ポリジエチルシロキサンなどのポリジエチルシロキサン系化合物、ポリジフェニルシロキサン、アルキル変性ポリジフェニルシロキサン、カルボキシル変性ポリジフェニルシロキサン、アミノ変性ポリジフェニルシロキサン、エポキシ変性ポリジフェニルシロキサン、フッ素変性ポリジフェニルシロキサン、(メタ)アクリレート変性ポリジフェニルシロキサンなどのポリジフェニルシロキサン系化合物などが挙げられる。
【0025】
[オルガノシロキサン系共重合体]
オルガノシロキサン系共重合体は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体のいずれであってもよいが、ブロック共重合体、グラフト共重合体が好ましい。
【0026】
オルガノシロキサン系共重合体は、リビング重合法、高分子開始剤法、高分子連鎖移動法などに製造することができる。
【0027】
ポリシロキサン系化合物、ポリジオルガノシロキサンなどのオルガノシロキサンとの共重合体に用いられるビニルモノマーとしては、例えばメチルアクリレート、フェニルアクリレート,n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2-フェニルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、スチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノフェニルメタクリレート、N,N-ジフェニルアミノフェニルメタクリレート、ジアセチトンアクリルアミド、2-ヒドロキシフェニルアクリレート、2-ヒドロキシフェニルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコールなどを挙げることができる。
【0028】
オルガノシロキサン系共重合体は、通常溶液重合によって製造される。このような溶液重合では、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルフェニルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸フェニル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤などが単独または混合溶剤として用いられる。また、必要に応じてベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチルニトリルなどの重合開始剤を併用する。重合反応は50~150℃で3~12時間行うのが好ましい。
【0029】
また、オルガノシロキサン系共重合体の合成において、イソシアネート基を有するモノマー(例えば、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート)と水酸基を有するモノマー(例えば、水酸基を有する(メタ)アクリレート)を用いることによって、活性エネルギー線硬化性のオルガノシロキサン系共重合体を得ることができる。
【0030】
本発明において、アクチュエータ素子の電極層に使用する導電性薄膜には、酸化・還元機能を持つポリマーが使用される。
【0031】
アクチュエータ素子の電極層に使用される透明な導電性薄膜は、導電性ポリマーを含む。導電性ポリマーとしては、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアニリン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリフェニレン類などが挙げられる。導電性薄膜層は、ドデシルベンゼンスルホン酸塩やPSSを含むことができる。PPSとしては、スチレンスルホン酸単独重合体、スチレンスルホン酸共重合体が挙げられる。スチレンスルホン酸共重合体としては、スチレンスルホン酸とラジカル共重合可能なコモノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト重合体が含まれる。コモノマーとしては、スチレンスルホン酸(塩)とラジカル共重合できるものであれば特に制限はない。例えば、N-フェニルマレイミド、N-(クロロフェニル)マレイミド、N-(メチルフェニル)マレイミド、N-(イソプロピルフェニル)マレイミド、N-(スルフォフェニル)マレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-ブロモフェニルマレイミド、N-ナフチルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-カルボキシフェニルマレイミド、N-(ニトロフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-(4-アセトキシ-1-ナフチル)マレイミド、N-(4-オキシ-1-ナフチル)マレイミド、N-(3-フルオランチル)マレイミド、N-(5-フルオレセイニル)マレイミド、N-(1-ピレニル)マレイミド、N-(2,3-キシリル)マレイミド、N-(2,4-キシリル)マレイミド、N-(2,6-キシリル)マレイミド、N-(アミノフェニル)マレイミド、N-(トリブロモフェニル)マレイミド、N-[4-(2-ベンゾイミダゾリル)フェニル]マレイミド、N-(3,5-ジニトロフェニル)マレイミド、N-(9-アクリジニル)マレイミド等のマレイミド類、フマル酸ジブチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジシクロヘキシルなどのフマル酸ジエステル類、フマル酸ブチル、フマル酸プロピル、フマル酸エチルなどのフマル酸モノエステル類、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジエチルなどのマレイン酸ジエステル類、マレイン酸ブチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸エチル、マレイン酸ジシクロヘキシルなどのマレイン酸モノエステル類、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などの酸無水物、マレイミド、N-(スルフォフェニル)マレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミドなどのマレイミド類、スチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、フロロスチレン、トリフロロスチレン、ニトロスチレン、シアノスチレン、α-メチルスチレン、p-クロロメチルスチレン、p-シアノスチレン、p-アセトキシスチレン、塩化p-スチレンスルホニル、エチルp-スチレンスルホニル、メチルp-スチレンスルホニル、プロピルp-スチレンスルホニル、p-ブトキシスチレン、4-ビニル安息香酸、3-イソプロペニル-α,α’-ジメチルベンジルイソシアネートなどのスチレン類、イソブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2-フェニルビニルアルキルエーテル、ニトロフェニルビニルエーテル、シアノフェニルビニルエーテル、クロロフェニルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ボルニル、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸2-ブトキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸メトキシエチレングリコール、アクリル酸エチルカルビトール、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、ポリエチレングリコールアクリレート、アクリル酸グリシジル、2-(アクリロイルオキシ)エチルフォスフェート、アクリル酸2,2,3,3-テトラフロロプロピル、アクリル酸2,2,2-トリフロロエチル、アクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフロロプロピル、アクリル酸2,2,3,4,4,4-ヘキサフロロブチルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸i-プロピル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸グリシジル、ポリエチレングリコールメタクリレート、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸メトキシエチレングリコール、メタクリル酸エチルカルビトール、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル、2-(メタクリロイルオキシ)エチルフォスフェート、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸3-(ジメチルアミノ)プロピル、メタクリル酸2-(イソシアナート)エチル、メタクリル酸2,4,6-トリブロモフェニル、メタクリル酸2,2,3,3-テトラフロロプロピル、メタクリル酸2,2,2-トリフロロエチル、メタクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフロロプロピル、メタクリル酸2,2,3,4,4,4-ヘキサフロロブチルなどのメタクリル酸エステル類、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、2-シアノ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、2-(N-ピペリジルメチル)-1,3-ブタジエン、2-トリエトキシメチル-1,3-ブタジエン、2-(N,N-ジメチルアミノ)-1,3-ブタジエン、N-(2-メチレン-3-ブテノイル)モルホリン、2-メチレン-3-ブテニルホスホン酸ジエチルなどの1,3-ブタジエン類、その他、アクリルアミド、メタクリルアミド、スルフォフェニルアクリルアミド、スルフォフェニルイタコンイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-シアノエチルアクリレート、無水シトラコン酸、ビニル酢酸、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサミック酸ビニル、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、モノ2-(メタクリロイルオキシ)エチルフタレート、モノ2-(メタクリロイルオキシ)エチルサクシネート、モノ2-(アクリロイルオキシ)エチルサクシネート、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ジアセトンメタクリレート、ビニルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-1-メチルスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルピロリドン、デヒドロアラニン、二酸化イオウ、イソブテン、N-ビニルカルバゾール、ビニリデンジシアニド、パラキノジメタン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ノルボルネン、N-ビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0032】
導電性ポリマーを与えるモノマーとしては、チオフェン、3,4-エチレンジオキシチオフェン、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン等のチオフェン類、ピロール、3-アルキルピロール、3,4-ジアルキルピロール、3-アルコキシピロール、3,4-ジアルコキシピロール等のピロール類、アニリン、2-アルキルアニリン、2-アルコキシアニリン等のアニリン類、フェニレンビニレン類等が挙げられ、これらの単独重合体及び共重合体を導電性ポリマーとして使用することができる。
【0033】
本発明の1つの好ましい実施形態において、導電性薄膜層は、PEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))とPSSを含む、イオン伝導性薄膜中の各成分の好ましい配合割合は、有機ケイ素系ポリマーとイオン液体の重量の合計を100重量%としたとき、
有機ケイ素系ポリマー:
1~98重量%、好ましくは12.5~75重量%、より好ましくは25~50重量%;
イオン液体:
1~98重量%、好ましくは25~87.5重量%、より好ましくは50~75重量%;
である。
【0034】
イオン伝導性薄膜の調製は、有機ケイ素系ポリマーとイオン液体を上記の範囲内であれば任意の割合で混合して実施することが可能である。
【0035】
導電性薄膜の形成は、導電性ポリマー、必要に応じてさらにドデシルベンゼンスルホン酸塩やPSS、イオン液体、溶媒などを含む混合液を、塗布、印刷、押し出し、キャスト、スプレー吹き付けまたは、射出などの方法により行なうことができ、好ましくはスプレー吹き付けにより実施される。
【0036】
本発明の導電性薄膜、イオン伝導性薄膜、およびアクチュエータ素子は、透明であることを特徴とする。本発明の導電性薄膜、イオン伝導性薄膜、アクチュエータ素子は、JIS K 7361-1:1997に従い測定される全光線透過率が40%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は、95%以上である。
【0037】
透明な上記導電性薄膜、イオン伝導性薄膜、およびアクチュエータ素子は、400-800nmの範囲の波長の可視光線の透過率が、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。全光線透過率は高いほど好ましい。
【0038】
透明な上記導電性薄膜、イオン伝導性薄膜、およびアクチュエータ素子は、ヘーズ(JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下である。ヘーズは低いほど好ましい。
【0039】
本発明の方法で製造するアクチュエータ素子としては、例えば、有機ケイ素系ポリマー,イオン液体を含むイオン伝導性薄膜層を、その両側から、PEDOT:PSS(とイオン液体を含む)導電性薄膜層(電極層)で挟んだ3層構造のものが挙げられる。また、電極の表面伝導性を増すために、電極層の外側にさらに導電層が形成された5層構造のアクチュエータ素子であってもよい 。
【0040】
イオン伝導性薄膜層の表面に導電性薄膜層を形成してアクチュエータ素子を得るには、イオン伝導層の表面に導電性薄膜を熱圧着すればよい。あるいは、導電性薄膜層は、イオン伝導性薄膜層の表面に導電性ポリマーを含む混合物を吹き付けることにより形成してもよい。
【0041】
イオン伝導性薄膜層の厚さは、5~500μmであるのが好ましく、200~300μmであるのがより好ましい。導電性薄膜層の厚さは、0.1~10μmであるのが好ましく、0.5~1μmであるのがより好ましい。また、各層の製膜にあたっては、スピンコート、印刷、スプレー等も用いることができる。さらに、押し出し法、射出法等も用いることができる。
【0042】
導電性薄膜は、複数の薄膜を熱圧着などにより積層することもでき、1枚の薄膜からなっていてもよい。
【0043】
このようにして得られたアクチュエータ素子は、電極間(電極は導電性薄膜層に接続されている)に0.5~6Vの直流電圧を加えると、数秒以内に素子長の0.5~1倍程度の変位を得ることができる。また、このアクチュエータ素子は、空気中あるいは真空中で、柔軟に作動することができる。
【0044】
このようなアクチュエータ素子の作動原理は、イオン伝導性薄膜層の表面に相互に絶縁状態で形成された導電性薄膜層に電位差がかかると、導電性薄膜層内のカーボンナノチューブ相とイオン液体相の界面に電気二重層が形成され、それによる界面応力によって、導電性薄膜層2,2が伸縮するためである。プラス極側に曲がるのは、現在よく用いられるイオン液体では、カチオンのイオン半径が大きく、その立体効果によりマイナス極側がより大きくのびるからであると考えられる。またPEDOTの酸化・還元により、ポリマーの立体構造の変化も大きく貢献している。
【0045】
上記の方法で得ることのできるアクチュエータ素子によれば、機械的には、界面の接合の密着性が良好となり、素子の耐久性が大きくなる。その結果、空気中、真空中で、応答性がよく変位量の大きい、且つ耐久性のある素子を得ることができる。しかも、構造が簡単で、小型化が容易であり、小電力で作動することができる。
【0046】
本発明のアクチュエータ素子は、空気中、真空中で耐久性良く作動し、しかも低電圧で柔軟に作動することから、安全性が必要な人と接するロボットのアクチュエータ(例えば、ホームロボット、ペットロボット、アミューズメントロボットなどのパーソナルロボットのアクチュエータ)、また、宇宙環境用、真空チェンバー内用、レスキュー用などの特殊環境下で働くロボット、また、手術デバイスやマッスルスーツなどの医療、福祉用ロボット、さらにはマイクロマシーンなどのためのアクチュエータとして最適である。
【0047】
特に、純度の高い製品を得るために、真空環境下、超クリーンな環境下での材料製造において、純度の高い製品を得るために、試料の運搬や位置決め等のためのアクチュエータの要求が高まっており、全く蒸発しないイオン液体を用いた本発明のアクチュエータ素子は、汚染の心配のないアクチュエータとして、真空環境下でのプロセス用アクチュエータとして有効に用いることができる。
【0048】
本発明の透明なアクチュエータは、フラットパネルディスプレイ上に統合することで,ディスプレイ上での物体駆動が可能になる。このような透明アクチュエータを使用することにより、例えば、映像世界と現実物体の動きをリンクしてユーザに触力覚的な情報提示することや,実物体を介してユーザが映像とインタラクションすることなど、が可能となる。また、透明なアクチュエータに非透明な物体(例えば紙)を連結し、アクチュエータを駆動することで、非透明な物体がひとりでに動いているような印象を与えることができ、広告やアミューズメントへの用途が見込まれる。本発明のアクチュエータは駆動力が大きいので、これらの用途にも有利である。
【0049】
なお、イオン伝導性薄膜層表面への導電性薄膜層の形成は少なくとも2層必要であるが、平面状のイオン伝導性薄膜層の表面に多数の導電性薄膜層を配置することにより、複雑な動きをさせることも可能である。このような素子により、蠕動運動による運搬や、マイクロマニピュレータなどを実現可能である。また、本発明のアクチュエータ素子の形状は、平面状とは限らず、任意の形状の素子が容易に製造可能である。
【実施例
【0050】
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことは言うまでもない。
<実験法の共通の説明>
1.使用した薬品、材料
エチルメチルイミダゾリウム トリフレート(EMICF3SO3、関東化学社製)、
エチルメチルイミダゾリウム フルオロメタンスルホニルイミド(EMIFSI、第一工業化学社製)
使用した酸化還元機能示すPEDOT:PSSは下記に示す構造である。(aldrich社製)
本発明の実施例で用いたアクチュエータ素子の構造と使用したイオン液体(IL)、有機ケイ素系ポリマー(Polymer; PDMS)の構造を図1に示す。
【0051】
【化2】
【0052】
使用した溶媒
ジメチルアセトアミド(DMAc、キシダ化学社製)
ニトロメタン
2.PEDOT:PSS導電薄膜の一般的作製方法
市販のPEDOT:PSS ニトロメタン分散液(商品名AedotronTM C3-NM、Aldrich社製)をスプレー法でイオン伝導性薄膜に吹き付け、透明アクチュエータフィルムを得る。導電薄膜の厚みは約1μm程度である。乾燥は、50℃、1時間行った。
【0053】
電極/電解質ゲル/電極3層構造からなる透明なアクチュエータ素子の変位測定方法
特許文献1に記載のレーザー変位計を用い、素子を2mmx10mmの短冊状に切り取り、電圧を加えた時の4mmの位置の変位を測定した。
また伸縮率(ε)は、以下の式(1)に従い計算した。
【0054】
【数1】
【0055】
L:電圧を印加しない時の素子長
d:素子の厚さ
δ:変位
3.キャパシタンス測定
作成した電極フィルムを直径7mmに切り取り、ステンレス製の電極で挟み込んで、
装置名:ポテンショスタットHSV-100
装置の製造会社名:北斗電工社製
を用いたサイクリックボルタンメトリ法により、±0.5V、0.001V/sの条件で測定を行った。測定値は電極フィルム中のカーボンナノチューブのグラム当りの容量値として(Fg-1)表した。
4.ゲル電解質フィルム厚測定
作成した電極フィルム、ゲル電解質フィルム、およびそれらの積層体からなるアクチュエータ素子フィルムの厚みは、マイクロメーター(Mitsutoya株式会社製)を用いて測定した。
実施例1
イオン伝導膜の作製
以下の薬品を用いた。
EMICF3SO3(関東化学社製)
PDMS(ポリジメチルシロキサン、aldrich社製)
DMAc(ジメチルアセトアミド、キシダ化学社製)
IL(EMICF3SO3)100mg、PDMS 200mg、DMAc 3mlを、室温で1時間以上撹拌し、作製したキャスト液3mlを25mmx25mmのキャスト枠中にキャストし、溶媒を蒸発させて、ゲル電解質フィルムを得る。厚みは約300μm程度である。
また上記の2.PEDOT:PSS導電薄膜の一般的作製方法による方法により透明アクチュエータフィルムを作成した。電極膜、電解質膜及びアクチュエータ素子の特性の結果を表1に示す。また電極間に周波数の異なる±2.0Vの矩形波電圧を加えた時に観測された変位を表2に示す。曲げ(伸縮率)の大きい透明高性能のアクチュエータ素子であることがわかる。
【0056】
本発明のアクチュエータが透明であることは、産業技術総合研究所(AIST)のロゴマークと「AI」の文字が鮮明に読み取れることから確認された(図2)。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
実施例2
電解質膜の作製
実施例1のうち、ゲル電解質膜(IL; EMIFSI)に変更して行った。
【0060】
電極膜、電解質膜及びアクチュエータ素子の特性の結果を表3に示す。また電極間に周波数の異なる±2.0Vの矩形波電圧を加えた時に観測された変位を表4に示す。曲げ(伸縮率)の大きい透明高性能のアクチュエータ素子であることがわかる。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
図1
図2