(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】熱物性測定装置及び熱物性測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 25/18 20060101AFI20220526BHJP
G01N 25/00 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
G01N25/18 E
G01N25/00 B
(21)【出願番号】P 2017253765
(22)【出願日】2017-12-28
【審査請求日】2020-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】天谷 康孝
(72)【発明者】
【氏名】島崎 毅
(72)【発明者】
【氏名】大川 顕次郎
(72)【発明者】
【氏名】藤木 弘之
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/025586(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/169462(WO,A1)
【文献】特開2016-024174(JP,A)
【文献】特開2003-014804(JP,A)
【文献】米国特許第04259859(US,A)
【文献】天谷 康孝,精密低周波交流電圧発生器を用いたゼーベック係数の絶対測定技術の開発,科学研究費助成事業 研究報告書,日本,2016年06月13日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00-25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に温度差がない測定対象物に、正極性の直流電流と、負極性の直流電流と、実効値が前記直流電流の大きさである交流電流とを選択的に印加する電流印加手段と、
前記測定対象物の中央部から任意の距離ずれた第1の測定点における温度変化と、前記中央部の第2の測定点における温度変化とを測定する温度測定手段と、
前記電流印加手段により前記正極性の直流電流を印加した場合における前記第1の測定点における第1の温度変化と前記負極性の直流電流を印加した場合における前記第1の測定点における第2の温度変化との差と、前記電流印加手段により前記交流電
流を印加した場合における前記第2の測定点における第3の温度変化とから、前記測定対象物のトムソン係数を算出する演算手段と、
を備えた熱物性測定装置。
【請求項2】
前記演算手段は、さらに、前記トムソン係数を用いて前記測定対象物の絶対熱電能及び熱伝導率の少なくとも一方を算出する、請求項1に記載の熱物性測定装置。
【請求項3】
両端に温度差がない測定対象物の前記両端に
正極性の直流電流を印加して、前記測定対象物の中央部から任意の距離ずれた測定点における第一の温度変化を測定
し、前記両端に負極性の直流電流を印加して、前記測定点における第二の温度変化を測定し、前記両端に実効値が前記直流電流の大きさである交流電流を印加して、前記中央部における第
三の温度変化を測定する
測定ステップと、
前記
測定ステップで測定された前記第一の温度変化と
前記第二の温度変化との差と、前記
測定ステップで測定された前記第
三の温度変化
とから、前記測定対象物のトムソン係数を算出する
算出ステップと
、
を含む熱物性測定方法。
【請求項4】
前記測定ステップにおいて、
前記第一の温度変化と前記第二の温度変化と前記第三の温度変化との測定順番が任意である
請求項3記載の熱物性測定方法。
【請求項5】
前記トムソン係数を用いて前記測定対象物の絶対熱電能及び熱伝導率の少なくとも一方を算出する
ステップをさらに含む請求項
3又は4記載の熱物性測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電能や熱伝導率などの熱物性値を測定するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、試料のトムソン係数、絶対ゼーベック係数(熱電能)、熱伝導率を得るためには、特許文献1にも示されているように、温度勾配を与えた当該試料に電流を流した上で発生する熱量を測定する方法が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の測定に際しては、当該試料に温度勾配を与えるため、当該試料の両端を加熱するための二個のヒータと、各ヒータの温度を測定するための温度計を設置する必要があり、測定の準備に手間がかかるという問題がある。
【0005】
また、上記の温度勾配が生じにくい試料においては、上記測定における精度が悪くなるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、測定対象となる試料の性質によらず、簡便に正確な熱電能や熱伝導率などの熱物性値を得ることのできる熱物性測定装置及び熱物性測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための熱物性測定装置は、両端に温度差がない測定対象物に、正極性の直流電流と、負極性の直流電流と、実効値が前記直流電流の大きさである交流電流とを選択的に印加する電流印加手段と、測定対象物の中央部から任意の距離ずれた第1の測定点における温度変化と、中央部の第2の測定点における温度変化とを測定する温度測定手段と、電流印加手段により正極性の直流電流を印加した場合における第1の測定点における第1の温度変化と負極性の直流電流を印加した場合における第1の測定点における第2の温度変化との差と、電流印加手段により交流電流を印加した場合における第2の測定点における第3の温度変化とから、測定対象物のトムソン係数を算出する演算手段とを有する。
【0008】
上記課題を解決するための熱物性測定方法は、両端に温度差がない測定対象物の前記両端に正極性の直流電流を印加して、測定対象物の中央部から任意の距離ずれた測定点における第一の温度変化を測定し、両端に負極性の直流電流を印加して、上記測定点における第二の温度変化を測定し、両端に実効値が直流電流の大きさである交流電流を印加して、中央部における第三の温度変化を測定する測定ステップと、測定ステップで測定された第一の温度変化と第二の温度変化との差と、測定ステップで測定された第三の温度変化とから、測定対象物のトムソン係数を算出する算出ステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測定対象となる試料の性質によらず、簡便に正確な熱電能や熱伝導率などの熱物性値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る熱物性測定装置50の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示された測定部55の構成を示す図である。
【
図3】
図1に示された熱物性測定装置50を用いて実現される熱物性測定方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図2に示された試料4の温度分布を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の実施の形態に係る熱物性測定装置及び熱物性測定方法を、図面を参照しつつ詳しく説明する。なお、図中同一符号は、同一又は相等部分を示す。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る熱物性測定装置50の構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、熱物性測定装置50は、ユーザインタフェース51、記憶部53、演算部54、測定部55、及びこれらを互いに接続するバス52とを備える。
【0013】
ここで、ユーザインタフェース51は、ユーザの熱物性測定装置50に対する動作命令を受け付けると共に、生成されたデータをユーザが目視により認識できるよう表示する機能を有する。また、記憶部53は、演算部54が実行するプログラムを格納すると共に、バス52を介して供給されたデータを記憶する。演算部54は、記憶部53に予め格納された上記プログラムを実行することにより、供給されたデータを対象として所定の演算を行う。なお、具体的な演算内容については、後に詳しく説明する。また測定部55は、測定対象とされた試料の熱電特性を測定する。
【0014】
図2は、
図1に示された測定部55の構成を示す図である。
図2に示されるように、測定部55はチャンバ1と、金属ブロック2,3と、熱電対5,10と、電流印加部100とを含む。ここで、電流印加部100は、直流電流を発生させる正極性直流電源6と、上記直流電流と大きさが等しく極性が異なる直流電流を発生させる負極性直流電源7と、実効値が上記直流電流の大きさである交流電流を発生させる交流電源8と、スイッチ9とを含む。
【0015】
なお、測定部55は、熱解析における熱的境界条件を十分に満足できるように設計されている。具体的には、チャンバ1内は熱の対流伝達を抑制するために真空とされ、試料4の両端には温度T1の金属ブロック2,3が接続される。これらの金属ブロック2,3は熱浴としての機能を有する。
【0016】
また、試料4の中央部には熱電対10が取り付けられるが、さらに、トムソン熱と同時に発生する試料4の自己ジュール発熱を積極的に利用するため、試料4の中央部から任意の距離xだけずらした位置(以下「ずれ測定点」という。)には熱電対5が取り付けられる。なお、熱電対5,10は熱の流出を低減させるため、熱コンダクタンスが十分小さいものであることが好ましい。
【0017】
また、試料4の両端間には、上記のように極性の異なる直流電流及びそれと実効値が等しい交流電流を発生することが可能な電流印加部100が接続される。ここで、交流電源8により発生される交流電流の波形は周期的であればよく、例えば正弦波や矩形波等が考えられる。
【0018】
さらに、スイッチ9は制御信号Ctにより交流電源8、正極性直流電源6、負極性直流電源7、交流電源8の順番にオンさせるが、この動作については後に詳しく説明する。
【0019】
図3は、
図1に示された熱物性測定装置50により実現される熱物性測定方法を示すフローチャートである。以下において、当該熱物性測定方法を
図3を用いて詳しく説明する。
【0020】
最初のステップS1において試料4の両端に温度T
1の金属ブロック2,3を設置する。そして、ステップS2において試料4の中央部に熱電対10を取り付けると共に、中央部から例えば試料4の長さの1/4など任意の距離ずれたずれ測定点に熱電対5を取り付ける。なお、
図2に示されるように、試料4の両端におけるx座標は、ずれ測定点の位置を原点として、それぞれ座標(-l
1)、座標l
2とされる。
【0021】
ここで、上記のように熱電対5をずれ測定点に取り付ける理由を説明する。
図4は、横軸を試料4の中央部を原点とした位置x、縦軸を試料4の温度Tとしたときの、試料4の温度分布を示すグラフである。
【0022】
図4に示されるように、ジュール発熱による温度分布は破線グラフg1で示されるように放物線状となる。このため、試料4の中央部では温度勾配I2がゼロとなり、ジュール効果によって生じる温度勾配によるトムソン効果は生じない。一方、試料4の中央部以外の位置では、
図4に示されるように有限の温度勾配I1,I3があるため、ジュール熱に起因したトムソン熱が発生する。そして、このようなトムソン効果により、温度分布はグラフg2で示されるように、原点を中心として左右非対称の曲線になる。従って、温度の測定位置を当該中央部からずらすことにより、自己ジュール発熱により生じた温度勾配によるトムソン効果による温度変化を測定することができることになる。
【0023】
次に、ステップS3においてチャンバ1内を真空にする。
【0024】
次に、ステップS4において試料4の両端に正極性の直流電流I
+DC
を印加して、熱電対5で試料4のずれ測定点における温度変化T
+DC
を測定し、ステップS5において試料4の両端に負極性の直流電流I
-DC
を印加して、熱電対5で試料4のずれ測定点における温度変化T
-DC
を測定する。
【0025】
そして、ステップS6において、演算部54は、以下の式(10)を用いてステップS4で測定された温度変化T
+DC
とステップS5で測定された温度変化T
-DC
の平均差を計算することにより、温度変化δTDCを算出する。
【0026】
次に、ステップS7において試料4の両端に交流電源8を用いて交流電流を印加して、試料中央部における温度変化δT
ACm
を熱電対10により測定する。
【0027】
次に、ステップS8において、演算部54は、記憶部53に予め格納されたプログラムを実行することにより、ステップS6で得られた温度変化δTDCとステップS7で得られた温度変化δTACmを用いてトムソン係数μを算出する。そして、以下のケルビンの式(1)により、該トムソン係数μを用いて絶対熱電能Sを求める。なお、式(1)におけるTは温度、T0は超伝導転移温度を示す。
【0028】
【0029】
そして、ステップS9において、演算部54は、ステップS8で算出されたトムソン係数μを用いて当該試料の熱伝導率を算出するが、具体的な算出方法については後述する。
【0030】
なお、
図3に示された熱物性測定方法においては、ステップS1とステップS2は順序が逆であっても良い。また、ステップS4及びステップS5からなる直流電流を用いた測定とステップS7における交流電流を用いた測定は、いずれを先に行っても良い。また、ステップS9における熱伝導率の算出は、必ずしも絶対熱電能を求めた後に行わなくとも良い。
【0031】
以下においては、上記トムソン係数μの算出方法について詳しく説明する。
【0032】
最初に、フーリエの法則に基づく熱伝導解析を行い、任意の温度測定点xでのトムソン係数の理論式を導出する。
【0033】
図2に示されるように、試料4の両端は一定の温度T
1に保たれ、同時に、試料4に直流電流若しくは交流電流が印加される。なお、試料4で発生した熱流は、試料と試料に取り付けられた熱電対5を介して、温度一定(この場合は室温)の熱浴に流れるものとする。
【0034】
また、熱電対5の位置座標は、
図2に示されるように、ずれ測定点を原点として、試料4の両端がそれぞれ座標(-l
1)、座標l
2となるような一次元座標xで示される。なお、試料4の全長を長さlとすると、長さlは座標(-l
1)の絶対値と座標l
2との和に等しい大きさとなる。
【0035】
上記のような熱的境界条件を有する試料に直流電流Iを印加した場合、試料の定常状態での熱伝導方程式は次式(2)のように表現できる。なお、式(2)以下において、aは試料の断面積、κは試料の熱伝導率、Tは試料の温度、ρは試料の電気抵抗率、pは試料の周囲長、σはステファン・ボルツマン定数、εは試料の輻射率、T0は熱電対5のゼロ点温度を示す。
【0036】
【0037】
上式(2)における左辺第一項は試料中の熱伝導、同第二項はトムソン効果による発熱と吸熱、同第三項はジュール熱、同第四項は輻射熱を示す。そして、定常状態では上式(2)の右辺はゼロになる。ここで、式(2)の両辺をaκで割ると、次式(3)が得られる。
【0038】
【0039】
式(3)の左辺第四項に示された輻射に起因する熱損失は、室温近傍においてはジュール熱の1/100以下であることから、ここでは無視することができる。なお、高温においては無視できないが、温度領域200℃~400℃では良い近似となる。また、試料内の温度分布は十分小さいものとし、トムソン係数、電気伝導率、熱伝導率などの物性値も定数として扱っている。これらの仮定の下で、式(3)は次式(4)のように簡素化される。
【0040】
【0041】
ここで、定数C及び定数Dは次式(5)のように定義される。
【0042】
【0043】
なお、上記の定数Cはトムソン効果に起因する定数項であり、定数Dはジュール発熱に起因する定数項とみなすことができる。
【0044】
ところで、
図2に示された試料4の境界条件は、次式(6),(7)で与えられる。
【0045】
【0046】
【0047】
なお、式(7)で示される第二の境界条件は、試料4に取り付けられた熱電対5を介した熱損失を示しており、式(7)以下においてK1は熱電対5の熱コンダクタンスを示す。
【0048】
ここで、常微分方程式をなす式(4)及び境界条件を示す式(6),(7)からなる非斉次の境界値問題では、解析的な一般解を得られることが知られている。そこで、位置座標xについて2次以上の項を無視して級数展開すると、直流電流を印加した場合における温度分布TDCが、次式(8)のように、熱電対5の取り付け位置を示す座標l1,l2の関数として示される。なお、式(8)以下において、K0は試料の熱コンダクタンスを示す。
【0049】
【0050】
式(8)において、右辺第一項は試料4の初期温度、同第二項はジュール発熱及び二次のトムソン効果による温度上昇を表す。また、係数Nは、試料4の熱電対5を介した熱損失係数であり、試料4と熱電対5の熱コンダクタンスの比から算出される。また、差δlは熱電対5から試料4の両端までの長さの差を示す。
【0051】
ここで、式(8)の右辺第二項のジュール熱の項に一次のトムソン係数による定数Cが現れているが、これはジュール熱の温度勾配を考慮したことではじめて現れたトムソン熱の項であり、差δlがゼロ、すなわち試料4の中央部に熱電対5が取り付けられている場合には、この項はゼロとなる。一方、試料4に交流電流を印加した場合の温度分布TACは、式(8)の定数Cをゼロとすることにより得られる次式(9)により示すことができる。
【0052】
【0053】
これまでに得られた試料温度の解析式から、以下のようにトムソン係数が導出される。式(8)に示されるように、1次のトムソン効果による吸熱および発熱は、電流の極性に依存するのに対し、ジュール効果および2次のトムソン効果による発熱は電流の極性には依存しない。そこで、電流を正の方向に加えた際の温度変化をT
+DC
、負の方向に加えた際の温度変化をT
-DC
とする。ここで、試料4のずれ測定点における温度変化の平均差δTDCを次のように定義する。
【0054】
【0055】
式(10)に式(8)を代入すると、平均差δTDCは次式(11)のように表せる。すなわち、平均差δTDCは電流に対する奇数次の項だけが残るため、ジュール発熱で生じた温度勾配にトムソン係数に関する定数項Cが乗算された式で表されることになる。
【0056】
【0057】
そして、式(11)をトムソン係数について解けば、熱電対の設置位置の関数として次式(12)のようにトムソン係数μを得ることができる。ここでは、直流電流を加えたという意味でμDCと表す。
【0058】
【0059】
ここで、熱電対5からの熱損失が充分小さい場合には、式(12)は次式(13)により近似できる。
【0060】
【0061】
ここで、式(13)には温度勾配情報は含まれないものの、様々な試料情報に関するパラメータが含まれているため、煩雑なものとなっている。そこで、交流電流を加えた時の温度変化を用いれば、これまでの交流直流法(AC-DC法)と同じ要領で式(13)を簡略化することができる。すなわち、式(13)は次式のように変形することができる。なお、式(14)以下において、Rは試料の電気抵抗を示す。また、δTACmは試料中央の測定点の温度変化に相当し、試料に交流を加えた際に生じるジュール発熱による温度上昇を表している。
【0062】
【0063】
そして、式(14)をトムソン係数μについて解けば、次式(15)を得る。ここでは、交流電流を印加したという意味でトムソン係数をμACと表す。
【0064】
【0065】
ここで、熱電対5からの熱損失が充分小さい場合には、式(15)は次式(16)により近似できる。
【0066】
【0067】
式(16)には試料の温度勾配が含まれない上、AC-DC法と同様に試料の熱伝導率は含まれていない。つまり、温度勾配を与えずとも、自己発熱でトムソン効果が測定できることが解析的に示された。
【0068】
一方で、追加的に必要となる物理量は熱電対5のズレ量であるが、試料4の中央部に設置するのと同様に、測定前には採寸するはずなので、測定に際して大きな手間にもならないと考えられる。
【0069】
また、測定対象である試料4の熱伝導率は、上記の式(13)と式(16)が等しい値になることを利用して、容易に算出することができる。
【0070】
上記のような方法により算出された絶対熱電能や熱伝導率の値は、
図1に示された記憶部53に記憶され、ユーザインタフェース51は、熱物性測定装置50のユーザにより入力された所定の動作命令に応じて、当該値をユーザが目視により認識できるよう表示する。
【0071】
以上より、本発明の実施の形態に係る熱物性測定装置及び熱物性測定方法によれば、トムソン熱の測定のために流す電流により発生するジュール発熱による当該試料の温度勾配を利用するため、当該測定にあたって当該試料の両端にヒータや温度計を設ける必要がなくなり、たとえ温度勾配が生じにくい試料であっても、簡便に正確なトムソン係数や絶対ゼーベック係数、熱伝導率を得ることができる。
【符号の説明】
【0072】
5,10 熱電対
6 正極性直流電源
7 負極性直流電源
8 交流電源
9 スイッチ
50 熱物性測定装置
54 演算部
55 測定部
100 電流印加部