IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大学共同利用機関法人自然科学研究機構の特許一覧

特許7079515時刻タイミング信号を伝送する方法及びシステム
<>
  • 特許-時刻タイミング信号を伝送する方法及びシステム 図1
  • 特許-時刻タイミング信号を伝送する方法及びシステム 図2
  • 特許-時刻タイミング信号を伝送する方法及びシステム 図3
  • 特許-時刻タイミング信号を伝送する方法及びシステム 図4
  • 特許-時刻タイミング信号を伝送する方法及びシステム 図5
  • 特許-時刻タイミング信号を伝送する方法及びシステム 図6
  • 特許-時刻タイミング信号を伝送する方法及びシステム 図7
  • 特許-時刻タイミング信号を伝送する方法及びシステム 図8
  • 特許-時刻タイミング信号を伝送する方法及びシステム 図9
  • 特許-時刻タイミング信号を伝送する方法及びシステム 図10
  • 特許-時刻タイミング信号を伝送する方法及びシステム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】時刻タイミング信号を伝送する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/80 20130101AFI20220526BHJP
   H04B 10/548 20130101ALI20220526BHJP
   H04B 10/07 20130101ALI20220526BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
H04B10/80
H04B10/548
H04B10/07
H04L7/00 990
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020102127
(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2021197606
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】木内 等
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-033029(JP,A)
【文献】特開2011-071700(JP,A)
【文献】特開2013-101256(JP,A)
【文献】特開平11-344583(JP,A)
【文献】Przemyslaw Krehlik et al.,ELSTAB-Fiber-Optic Time and Frequency Distribution Technology: A General Characterization and Fundamental Limits,IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control,IEEE,2015年11月20日,Volume 63, Issue 7,pages 993-1004
【文献】Hitoshi Kiuchi,Highly Stable Millimeter-Wave Signal Distribution With an Optical Round-Trip Phase Stabilizer,IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques,IEEE,2008年06月06日,pages 1493-1500
【文献】Przemyslaw Krehlik et al.,A Hybrid Solution for Simultaneous Transfer of Ultrastable Optical Frequency, RF Frequency, and UTC Time-Tags Over Optical Fiber,IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control,IEEE,2017年10月12日,vlume 64, Issue 12,pages 1884-1890
【文献】Hitoshi Kiuchi,Postprocessing Phase Stabilizer for Wide Frequency Range Photonic-Microwave Signal Distribution,IEEE Transactions on Terahertz Science and Technology,IEEE,2017年02月24日,Volume 7, Issue 2,pages 177-183
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/80
H04B 10/548
H04B 10/07
H04L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻タイミング信号によりレーザ光を光位相変調して光位相変調信号を生成するステップと、
前記光位相変調信号を基地局から光ファイバを通してリモート局に伝送するステップと、
前記リモート局に伝送された前記光位相変調信号を、前記光ファイバを通して前記基地局に戻すステップと、
前記レーザ光または前記光位相変調信号の一方の光周波数をシフトさせるステップと、
前記リモート局から前記基地局に戻された前記光位相変調信号と前記レーザ光との周波数差の差信号を生成するステップと、
前記差信号を位相変調復調して前記差信号に含まれる位相変調された前記時刻タイミング信号を電気的に抽出するステップと、
光位相変調に使用した前記時刻タイミング信号と復調により抽出した前記時刻タイミング信号とのタイミング差から遅延時間を求めるステップと、
前記遅延時間だけ進めた前記時刻タイミング信号により前記レーザ光を光位相変調して同期用の前記光位相変調信号を生成し、前記光ファイバを通して同期用の前記光位相変調信号を前記リモート局に送信するステップと、
を備える、時刻タイミング信号を伝送する方法。
【請求項2】
前記光周波数をシフトさせるステップは、前記リモート局において前記光位相変調信号に対して行われる、
請求項1に記載の時刻タイミング信号を伝送する方法。
【請求項3】
前記光周波数をシフトさせるステップは、前記差信号を生成するステップにおいて前記差信号を電気信号として生成できるように設定されたシフト周波数を、前記光位相変調信号に付与する、
請求項1または2に記載の時刻タイミング信号を伝送する方法。
【請求項4】
基地局からリモート局に光ファイバを通して時刻タイミング信号を伝送するシステムであって、
前記基地局は、
時刻タイミング信号によりレーザ光を光位相変調して光位相変調信号を生成する光位相変調部と、
前記リモート局から前記基地局に戻された前記光位相変調信号と前記レーザ光との周波数差の差信号を生成する光結合部と、
前記差信号を位相変調復調し、前記差信号に含まれる位相変調された前記時刻タイミング信号を電気的に抽出する電気位相変調復調部と、
光位相変調に使用した前記時刻タイミング信号と復調により抽出した前記時刻タイミング信号とのタイミング差から遅延時間を求める遅延算出部と、
前記遅延時間だけ進めた前記時刻タイミング信号により前記レーザ光を光位相変調して同期用の前記光位相変調信号を生成し、前記光ファイバを通して同期用の前記光位相変調信号を前記リモート局に送信するように制御する制御部と、を備え、
前記リモート局は、伝送された前記光位相変調信号を、前記光ファイバを通して前記基地局に戻す逆送部を備え、
前記基地局または前記リモート局のいずれか一方は、前記レーザ光または前記光位相変調信号の一方の光周波数をシフトさせる光周波数シフタを有する、
時刻タイミング信号を伝送するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、時刻タイミング信号を伝送する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
高速光通信、深宇宙探査、天文精密計測などの分野では、非常に離れた複数の測定地点で時刻を高精度に同期させる必要がある。このような時刻の同期のため、高精度な時刻タイミング信号の伝送が求められている。
【0003】
基地局とリモート局とが光ファイバにより接続されており、基地局からリモート局にタイミング信号を伝送して同期をとる場合、光ファイバにおいて生じる遅延時間を精密に測定し、測定した遅延時間分を進めたタイミング信号を基地局からリモート局に伝送することで、時刻同期を行う。この種の技術は、以下の非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】P.Krehlik, L.Sliwczynski, L.Buczek, J.Kolodziej, M.Lipinski, 「ELSTAB.Fiber-Optic Time and Frequency Distribution Technology: A General Characterization and Fundamental Limits,」, IEEE Trans on Ultrasonics, Ferroelectrics, and frequency control, (vol.63, no.7, pp.993-1004, Jul. 2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記非特許文献1に記載された従来の手法では、以下のようにして時刻同期を行う。
1. 基地局は、時刻タイミング信号によりレーザ光を振幅変調し、振幅変調された光信号を生成する。
2. 基地局は、光信号を光ファイバ経由でリモート局に伝送する。
3. リモート局は、光ファイバ経由で伝送された光信号を光電変換により電気信号に変換し、時刻タイミング信号を抽出する。
4. リモート局は、抽出した時刻タイミング信号によりレーザ光を振幅変調し、光信号を再生成する。ただし、基地局で生成された光信号とリモート局で再生成された光信号とを、基地局で分離可能なように、リモート局において再生成する光信号の波長は、光フィルタで分離可能なように、基地局で生成された光信号の波長と異なるものにしておく。
5. リモート局は、再生成した光信号を光ファイバ経由で基地局に伝送する。
6. 基地局は、リモート局から伝送された光信号を光フィルタにより分離抽出し、分離抽出した光信号を光電変換により電気信号に変換し、時刻タイミング信号を抽出する。
7. 基地局は、元の時刻タイミング信号と、リモート局から伝送された光信号に含まれる時刻タイミング信号とのタイミングを比較し、光信号の往復により生じた遅延を検出する。
8. 基地局は、往路分の遅延に相当する時間を早めた時刻タイミング信号によりレーザ光を振幅変調し、リモート局用の光信号を生成する。
9. 基地局は、リモート局用の光信号を光ファイバ経由でリモート局に伝送する。
【0006】
従来手法では、基地局からリモート局までの往路の光信号と、リモート局から基地局までの復路の光信号とで、光フィルタにより分離可能なように異なる波長を採用している。この場合、光ファイバ伝送における波長分散の影響により、往路と復路の光信号の波長の違いに応じて、遅延量が変化する。従って、光ファイバ伝送される光信号に生じる遅延を正確に測定することが困難になる。
【0007】
従来手法では、リモート局は、基地局からの光信号から時刻タイミング信号を抽出し、抽出した時刻タイミング信号によりレーザ光を振幅変調して光信号を再生成している。この場合、基地局からリモート局までの光信号の往路とリモート局から基地局までの光信号の復路とで異なる経路を通ることがある。従って、光ファイバ伝送される光信号に生じる遅延を正確に測定することが困難になる。
【0008】
この開示は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、基地局とリモート局との間で光ファイバ伝送される光信号に生じる遅延を正確に測定し、基地局からリモート局に高精度な時刻タイミング信号を伝送する方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この開示に係る時刻タイミング信号を伝送する方法は、時刻タイミング信号によりレーザ光を光位相変調して光位相変調信号を生成するステップと、光位相変調信号を基地局から光ファイバを通してリモート局に伝送するステップと、リモート局に伝送された光位相変調信号を、光ファイバを通して基地局に戻すステップと、レーザ光または光位相変調信号の一方の光周波数をシフトさせるステップと、リモート局から基地局に戻された光位相変調信号とレーザ光との周波数差の差信号を生成するステップと、差信号を位相変調復調して差信号に含まれる位相変調された時刻タイミング信号を電気的に抽出するステップと、光位相変調に使用した時刻タイミング信号と復調により抽出した時刻タイミング信号とのタイミング差から遅延時間を求めるステップと、遅延時間だけ進めた時刻タイミング信号によりレーザ光を光位相変調して同期用の光位相変調信号を生成し、光ファイバを通して同期用の光位相変調信号をリモート局に送信するステップと、を備える。
【0010】
この開示に係る時刻タイミング信号を伝送するシステムは、基地局からリモート局に光ファイバを通して時刻タイミング信号を伝送するシステムであって、基地局は、時刻タイミング信号によりレーザ光を光位相変調して光位相変調信号を生成する光位相変調部と、リモート局から基地局に戻された光位相変調信号とレーザ光との周波数差の差信号を生成する光結合部と、差信号を位相変調復調し、差信号に含まれる位相変調された時刻タイミング信号を電気的に抽出する電気位相変調復調部と、光位相変調に使用した時刻タイミング信号と復調により抽出した時刻タイミング信号とのタイミング差から遅延時間を求める遅延算出部と、遅延時間だけ進めた時刻タイミング信号によりレーザ光を光位相変調して同期用の光位相変調信号を生成し、光ファイバを通して同期用の光位相変調信号をリモート局に送信するように制御する制御部と、を備え、リモート局は、伝送された光位相変調信号を、光ファイバを通して基地局に戻す逆送部を備え、基地局またはリモート局のいずれか一方は、レーザ光または光位相変調信号の一方の光周波数をシフトさせる光周波数シフタを有する。
【0011】
光周波数をシフトさせるステップは、リモート局において光位相変調信号に対して行われてもよい。
【0012】
光周波数をシフトさせるステップは、差信号を生成するステップにおいて差信号を電気信号として生成できるように、シフト周波数を設定してもよい。
【発明の効果】
【0013】
この開示に係る時刻タイミング信号を伝送する方法及びシステムによれば、基地局とリモート局との間で光ファイバ伝送される光信号に生じる遅延を正確に測定し、基地局からリモート局に高精度な時刻タイミング信号を伝送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の実施の形態1に係るシステムの構成を示すブロック図である。
図2】本開示の実施の形態1における光位相変調の様子を示すタイミングチャートである。
図3】本開示の実施の形態1における位相変調復調の様子を示すタイミングチャートである。
図4】本開示の実施の形態1における光分離部と光周波数シフタと逆送部との構成を示す構成図である。
図5】本開示の実施の形態1における光分離部と光周波数シフタと逆送部との構成を示す構成図である。
図6】本開示の実施の形態1における光分離部と光周波数シフタと逆送部との構成を示す構成図である。
図7】本開示の実施の形態1における光分離部と光周波数シフタと逆送部との構成を示す構成図である。
図8】本開示の実施の形態1における光分離部と光周波数シフタと逆送部との構成を示す構成図である。
図9】本開示の実施の形態1における光分離部と光周波数シフタと逆送部との構成を示す構成図である。
図10】本開示の実施の形態2に係るシステムの構成を示すブロック図である。
図11】本開示の実施の形態3に係るシステムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の基地局からリモート局に光ファイバを通して時刻タイミング信号を伝送する方法及びシステムの実施の形態につき、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付している。
【0016】
実施の形態1.
はじめに、本開示の実施の形態1におけるシステム1の基本的な構成について、図1を参照して説明する。図1は、本開示の実施の形態1に係るシステム1の構成を示すブロック図である。なお、本開示の実施の形態1に係るシステム1は、基地局100からリモート局200に光ファイバ300を通して時刻タイミング信号を伝送する方法を実現する手段である。
【0017】
[システム1の構成]
システム1は、基地局100と、リモート局200と、光ファイバ300とを備えている。基地局100には、制御部101と、レーザ光源110と、光分配部120と、タイミング信号生成部130と、光位相変調部140と、光分離部150と、光結合部160と、光電気変換部170と、電気位相変調復調部180と、遅延算出部190とが設けられている。リモート局200には、光周波数シフタ210と、逆送部220とが設けられている。光ファイバ300は、高速光通信、深宇宙探査、または天文精密計測などを行うため非常に離れた測定地点に設けられている基地局100とリモート局200とを、光通信可能に接続している。なお、リモート局200は、1つである必要は無く、複数存在していてもよい。
【0018】
[システム1の各部の動作]
制御部101は、基地局100とリモート局200との時刻同期の制御を行う。制御部101は、以下に述べるようにして遅延時間を算出した後、時刻同期の制御として、遅延時間だけ進めた時刻タイミング信号によりレーザ光を光位相変調して同期用の光位相変調信号を生成し、光ファイバ300を通して光位相変調信号をリモート局200に送信するように、基地局100の各部を制御する。
【0019】
レーザ光源110は、光ファイバ300を往復伝送した後も可干渉性を持つ狭線幅レーザ光を生成する。以下、本願明細書において、狭線幅レーザ光を単にレーザ光と呼ぶ。光分配部120は、レーザ光を光学的に分配し、光位相変調部140と光結合部160とに供給する。タイミング信号生成部130は、1秒信号などの精密な時刻タイミング信号を生成する。
【0020】
光位相変調部140は、タイミング信号生成部130により生成された時刻タイミング信号によりレーザ光を光位相変調して、光位相変調信号を生成する。なお、本願明細書において、レーザ光源110により生成された光であって、変調されていなものを「レーザ光」と呼ぶ。そして、本願明細書において、レーザ光が時刻タイミング信号により光位相変調された光を「光位相変調信号」と呼ぶ。
【0021】
光位相変調部140よる光位相変調について、図2を参照して説明する。図2は、本開示の実施の形態1における光位相変調の様子を示すタイミングチャートである。図2の(a)は、レーザ光源110において生成されるレーザ光の波形を示している。図2の(b)は、タイミング信号生成部130において生成される時刻タイミング信号の波形を示している。図2の(c)は、光位相変調部140において、時刻タイミング信号によりレーザ光を光位相変調して生成される光位相変調信号の波形を示している。すなわち、図2の(c)に示す光位相変調信号は、図2の(a)に示すレーザ光を搬送波として、振幅は変化せず、図2の(b)に示す時刻タイミング信号の波形変化タイミングでレーザ光の位相が変化する状態になっている。
【0022】
光分離部150は、光位相変調部140で生成された光位相変調信号を光ファイバ300に供給する。これにより、光位相変調信号は、基地局100から送信され、往路信号として光ファイバ300を通り、リモート局200に向かう。
【0023】
リモート局200において、基地局100からの光位相変調信号は、光周波数シフタ210を通過した後に逆送部220に到達する。逆送部220に到達した光位相変調信号は、逆送部220を構成する反射ミラーまたはファラデー反射器により向きを変えられ、光周波数シフタ210を再び通過した後に、復路信号として光ファイバ300を通して基地局100へ向かう。すなわち、リモート局200は、往路の光位相変調信号を外部に取り出すことをせずに復路の光位相変調信号としている。
【0024】
光位相変調信号は、光周波数シフタ210を2回通過するため、光周波数シフタ210により付与されるシフト周波数の2倍のシフト周波数を与えられる。ここで、光位相変調信号が光周波数シフタ210から受けるシフト周波数は、可視光線の周波数405THz~790THzの百万分の一程度の低い周波数、例えば、数十MHzから数百MHzになるように設定しておく。また、シフト周波数は、周波数の上昇であっても、周波数の低下であってもよい。
【0025】
光周波数シフタ210によりシフト周波数を与えられて光位相変調信号の周波数が変化する様子について、図3を参照して説明する。図3は、本開示の実施の形態1における位相変調復調の様子を示すタイミングチャートである。
【0026】
図3の(a)は、図2の(c)と同じであり、光位相変調部140で生成された光位相変調信号の波形を示している。図3の(b)は、リモート局200から光ファイバ300を通して基地局100に到達する復路の光位相変調信号を示している。図3の(b)において、基地局100に戻った復路の光位相変調信号は、光周波数シフタ210によりシフト周波数を与えられて光位相変調信号の周波数が変化すると共に、光ファイバ300を往復したことにより遅延が生じている。
【0027】
光分離部150は、リモート局200から光ファイバ300を通して基地局100に到達する復路の光位相変調信号を光結合部160に供給する。光結合部160は、光分離部150から供給される光位相変調信号と、光分配部120から供給されるレーザ光とを混合し、レーザ光の光周波数と光位相変調信号の光周波数との差の周波数のビート成分によって振幅と位相とが変化するビート成分光を生成する。
【0028】
光電気変換部170は、ヘテロダイン動作により、レーザ光の光周波数と光位相変調信号の光周波数との差の周波数のビート成分を有するビート成分光を電気信号の差信号として生成する。差信号は、光周波数シフタ210が光位相変調信号に与えたシフト周波数の2倍の周波数の信号であり、光信号ではなく、数十MHzから数百MHz程度の電波の周波数の電気信号である。従って、所望の周波数の差信号を得ることができるように、光周波数シフタ210のシフト周波数を設定しておく。
【0029】
以下、差信号を生成する様子を図3により説明する。図3の(b)は、光分離部150から光結合部160に供給される復路の光位相変調信号の波形を示している。図3の(c)は、光分配部120から光結合部160に供給されるレーザ光の波形を示している。図3の(d)は、光結合部160と光電気変換部170とにおけるヘテロダイン動作によりビート成分として生成される、レーザ光の光周波数と光位相変調信号の光周波数との差の周波数の差信号の波形を示している。
【0030】
電気位相変調復調部180は、差信号に含まれている位相変調された時刻タイミング信号を、電気的な位相変調復調により抽出する。図3の(e)は、位相変調復調により、図3の(d)に示す差信号から時刻タイミング信号を取り出す様子を示している。
【0031】
遅延算出部190は、光位相変調部140において光位相変調に使用した時刻タイミング信号と、電気位相変調復調部180において抽出された時刻タイミング信号とを比較し、タイミング差Δtを求める。
以下、タイミング差Δtを求める様子を図3により説明する。図3の(e)は、電気位相変調復調部180において抽出された時刻タイミング信号の波形を示している。図3の(f)は、光位相変調部140において光位相変調に使用した時刻タイミング信号の波形を示している。ここで、図3の(e)と(f)との波形のずれがタイミング差Δtに相当する。
【0032】
このタイミング差Δtは、光ファイバ300を往復した光位相変調信号に生じる往復の遅延時間である。よって、遅延算出部190は、往復の遅延時間に相当するタイミング差Δtの1/2であるΔt/2を、光ファイバ300を通して基地局100からリモート局200までに生じる遅延時間として算出する。この結果、基地局100とリモート局200との間において光ファイバ300で伝送される光位相変調信号に生じる遅延を正確に測定することが可能になる。
【0033】
制御部101は、以上のようにして光ファイバ300を通して光位相変調信号を伝送する際に生じる遅延時間Δt/2を算出した後、時刻同期の制御を行う。すなわち、時刻同期の制御として、制御部101の指示に基づいて、タイミング信号生成部130は、リモート局200のために、遅延時間Δt/2だけ進めた時刻タイミング信号を生成する。光位相変調部140は、遅延時間だけ進めた時刻タイミング信号によりレーザ光を光位相変調して同期用の光位相変調信号を生成する。光分離部150は、光ファイバ300を通して同期用の光位相変調信号をリモート局200に送信する。
【0034】
これにより、システム1において、リモート局200は、光ファイバ300での伝送において生じる遅延時間が相殺された、正確な時刻タイミング信号を入手することができる。そして、基地局100とリモート局200とは、時刻を高精度に同期させた状態において、高速光通信、深宇宙探査、天文精密計測などを行うことが可能になる。
【0035】
ところで、基地局100から光ファイバ300を通りリモート局200に向かう往路の光位相変調信号の一部は、リモート局200に到達する前に、光ファイバ300の途中で異常反射して基地局100に戻ることがある。この異常反射の光位相変調信号は、リモート局200において光周波数シフタ210を通過していないため、元の周波数のままである。従って、光分離部150を通過した異常反射の光位相変調信号と、光分配部120から供給されるレーザ光とは同一の周波数であるため、光結合部160と光電気変換部170により得られる差信号は、電気的にDC周波数成分近辺となる。一方、異常反射がない場合、光結合部160と光電気変換部170により得られる差信号は、シフト周波数の2倍の周波数近辺の電気信号となる。よって、異常反射の生じた差信号と異常反射のない差信号とは、容易に分離可能である。すなわち、基地局100とリモート局200とは、異常反射の光位相変調信号の影響を受けることなく、遅延を正確に測定し、同期した状態を実現することができる。
【0036】
以上のシステム1では、基地局100からリモート局200までの往路の光位相変調信号と、リモート局200から基地局100までの復路の光位相変調信号とで、数十MHzから数百MHz程度の電波の周波数に相当する周波数差がある。すなわち、以上のシステム1は、従来のような光フィルタで分離可能な数THzの周波数差は必要なく、必要な周波数差を従来の1万分の一程度に小さくすることができる。従って、実施の形態1においては、往路と復路の光位相変調信号の波長の違いに応じた遅延量の変化は従来と比較して無視することができ、光ファイバ300に伝送される光位相変調信号に生じる遅延を正確に測定することが可能になる。
【0037】
以上のシステム1では、基地局100からリモート局200までの光信号の往路とリモート局200から基地局100までの光信号の復路とは、光位相変調信号を外部に取り出さないため、同一の経路を通っている。すなわち、従来のように光信号が異なる経路を伝送されるために生じる経路差に基づく誤差の問題も発生しない。
【0038】
[システム1の構成の変形例]
以下、光位相変調信号の往復に関する、光分離部150と逆送部220との構成の各種の具体例を図4図9を参照して説明する。
【0039】
図4は、本開示の実施の形態1における光分離部150と光周波数シフタ210と逆送部220との構成を示す構成図である。この図4の構成において、光分離部150は、方向性結合器により構成されている。そして、逆送部220は、反射ミラーにより構成されている。
【0040】
リモート局200において、基地局100からの光位相変調信号は、光周波数シフタ210を通過した後に逆送部220に到達する。逆送部220に到達した光位相変調信号は、逆送部220を構成する反射ミラーにより反射されて、光周波数シフタ210を再び通過した後に、復路信号として光ファイバ300を通して基地局100へ向かう。基地局100に到達した復路の光位相変調信号は、光分離部150を構成する方向性結合器によりb端子からc端子に向かって進行方向を変えられ、光結合部160に向かう。
【0041】
図5は、本開示の実施の形態1における光分離部150と光周波数シフタ210と逆送部220との構成を示す構成図である。この図5の構成において、光分離部150は、偏波分離器により構成されている。そして、逆送部220は、ファラデー反射器により構成されている。
【0042】
リモート局200において、基地局100からの光位相変調信号は、光周波数シフタ210を通過した後に逆送部220に到達する。逆送部220に到達した光位相変調信号は、逆送部220を構成するファラデー反射器により、偏波面を変更されつつ反射され、光周波数シフタ210を再び通過した後に、復路信号として光ファイバ300を通して基地局100へ向かう。基地局100に到達した復路の光位相変調信号は、光分離部150を構成する偏波分離器により、偏波面の違いに応じてb端子からc端子に向かって進行方向を変えられ、光結合部160に向かう。
【0043】
図6は、本開示の実施の形態1における光分離部150と光周波数シフタ210と逆送部220との構成を示す構成図である。この図6の構成において、光分離部150は、方向性結合器により構成されている。そして、逆送部220は、方向性結合器221と、光ファイバループ222とにより、ループ状に構成されている。ここで、方向性結合器221のa端子には、光周波数シフタ210が接続され、方向性結合器221のb端子とc端子とには、光ファイバループ222が接続されている。
【0044】
リモート局200において、基地局100からの光位相変調信号は、光周波数シフタ210を通過した後に逆送部220に到達する。逆送部220に到達した光位相変調信号は、方向性結合器221のa端子に入力され、b端子から光ファイバループ222に入り、光ファイバループ222から方向性結合器221のc端子に戻る。方向性結合器221のc端子に入力された光位相変調信号は、a端子に向かう。その後、光位相変調信号は、方向性結合器221のa端子から光周波数シフタ210を再び通過した後に、復路信号として光ファイバ300を通して基地局100へ向かう。基地局100に到達した復路の光位相変調信号は、光分離部150を構成する方向性結合器によりb端子からc端子に向かって進行方向を変えられ、光結合部160に向かう。
【0045】
図7は、本開示の実施の形態1における光分離部150と光周波数シフタ210と逆送部220との構成を示す構成図である。この図7の構成において、光分離部150は、方向性結合器により構成されている。また、逆送部220は、方向性結合器221と、光ファイバ223と、光周波数シフタ210と、光ファイバ224とにより、ループ状に構成されている。ここで、方向性結合器221のa端子には、光ファイバ300が接続されている。方向性結合器221のb端子と、光周波数シフタ210の一方の端子との間には、光ファイバ223が接続されている。そして、光周波数シフタ210の他方の端子と、方向性結合器221のc端子との間には、光ファイバ224が接続されている。
【0046】
リモート局200において、逆送部220に到達した基地局100からの光位相変調信号は、方向性結合器221のa端子に入力され、b端子から光ファイバ223を通り、光周波数シフタ210を通過した後に、光ファイバ224を通り方向性結合器221のc端子に戻る。方向性結合器221のc端子に入力された光位相変調信号は、a端子に向かう。その後、光位相変調信号は、復路信号として光ファイバ300を通して基地局100へ向かう。基地局100に到達した復路の光位相変調信号は、光分離部150を構成する方向性結合器によりb端子からc端子に向かって進行方向を変えられ、光結合部160に向かう。
【0047】
図8は、本開示の実施の形態1における光分離部150と光周波数シフタ210と逆送部220との構成を示す構成図である。この図8の構成において、光分離部150は、偏波分離器により構成されている。また、逆送部220は、方向性結合器221と、光ファイバ223と、ファラデー回転子230と、光ファイバ224とにより、ループ状に構成されている。ここで、光周波数シフタ210の一方の端子は、光ファイバ300に接続されている。光周波数シフタ210の他方の端子は、方向性結合器221のa端子に接続されている。方向性結合器221のb端子と、ファラデー回転子230の一方の端子との間には、光ファイバ223が接続されている。そして、ファラデー回転子230の他方の端子と、方向性結合器221のc端子との間には、光ファイバ224が接続されている。
【0048】
リモート局200において、基地局100からの光位相変調信号は、光周波数シフタ210を通過した後に逆送部220に到達する。逆送部220に到達した光位相変調信号は、方向性結合器221のa端子に入力され、b端子から光ファイバ223に入り、ファラデー回転子230を通って偏波面が変更され、光ファイバ224から方向性結合器221のc端子に戻る。方向性結合器221のc端子に入力された光位相変調信号は、a端子に向かう。その後、光位相変調信号は、方向性結合器221のa端子から光周波数シフタ210を再び通過した後に、復路信号として光ファイバ300を通して基地局100へ向かう。基地局100に到達した復路の光位相変調信号は、光分離部150を構成する偏波分離器により、偏波面の違いに応じてb端子からc端子に向かって進行方向を変えられ、光結合部160に向かう。
【0049】
図9は、本開示の実施の形態1における光分離部150と光周波数シフタ210と逆送部220との構成を示す構成図である。この図9の構成において、光分離部150は、偏波分離器により構成されている。また、逆送部220は、方向性結合器221と、光ファイバ223と、光周波数シフタ210と、光ファイバ224と、ファラデー回転子230と、光ファイバ225とにより、ループ状に構成されている。ここで、方向性結合器221のa端子に光ファイバ300が接続されている。方向性結合器221のb端子と、光周波数シフタ210の一方の端子との間に、光ファイバ223が接続されている。光周波数シフタ210の他方の端子と、ファラデー回転子230の一方の端子との間に、光ファイバ224が接続されている。そして、ファラデー回転子230の他方の端子と、方向性結合器221のc端子との間には、光ファイバ225が接続されている。
【0050】
リモート局200において、基地局100からの光位相変調信号は、方向性結合器221のa端子に入力され、b端子から光ファイバ223を通り、光周波数シフタ210を通過した後に、光ファイバ224を通り、ファラデー回転子230を通って偏波面が変更され、光ファイバ225から方向性結合器221のc端子に戻る。方向性結合器221のc端子に入力された光位相変調信号は、a端子に向かう。その後、光位相変調信号は、方向性結合器221のa端子から光周波数シフタ210を再び通過した後に、復路信号として光ファイバ300を通して基地局100へ向かう。基地局100に到達した復路の光位相変調信号は、光分離部150を構成する偏波分離器により、偏波面の違いに応じてb端子からc端子に向かって進行方向を変えられ、光結合部160に向かう。
【0051】
実施の形態2.
次に、本開示の実施の形態2におけるシステム1の構成について、図10を参照して説明する。図10は、本開示の実施の形態2に係るシステム1の構成を示すブロック図である。図10のブロック図において、既に説明した図1のブロック図と同じ構成については同じ符号を付している。よって、図10のブロック図の構成について、図1のブロック図と異なる部分を詳細に説明する。
【0052】
基地局100において、光分配部120と光結合部160との間に、光周波数シフタ125が設けられている。光分配部120は、レーザ光を光学的に分配し、光位相変調部140と、光周波数シフタ125とに供給する。
【0053】
光分配部120により分配されたレーザ光には、光周波数シフタ125によりシフト周波数が与えられて、その周波数が変化する。光周波数シフタ125は、周波数が変化したレーザ光を、光結合部160に供給する。
【0054】
一方、光分離部150は、光ファイバ300を通して基地局100に到達するリモート局200からの光位相変調信号を、光結合部160に供給する。なお、リモート局200には、光周波数シフタが設けられていない。このため、リモート局200から光ファイバ300を通して基地局100に到達する復路の光位相変調信号は、周波数の変化は生じておらず、光ファイバ300を往復したことによる遅延のみが生じている。
【0055】
光結合部160は、光周波数シフタ125から供給されるシフト周波数を与えられたレーザ光と光分離部150から供給される遅延を有する光位相変調信号とを混合し、レーザ光の光周波数と光位相変調信号の光周波数との差の周波数のビート成分によって振幅と位相とが変化するビート成分光を生成する。
【0056】
光電気変換部170は、ヘテロダイン動作により、レーザ光の光周波数と光位相変調信号の光周波数との差の周波数のビート成分を有するビート成分光を電気信号の差信号として生成する。差信号は、光周波数シフタ125が光位相変調信号に与えたシフト周波数と同じ周波数の信号であり、光信号ではなく、数十MHzから数百MHz程度の電波の周波数の電気信号である。従って、所望の周波数の差信号を得ることができるように、光周波数シフタ125のシフト周波数を設定しておく。この後、図1のシステム1と同様に、制御部101は、光ファイバ300を通して光位相変調信号を伝送する際に生じる遅延時間を算出した後、時刻同期の制御を行う。
【0057】
図10に示すシステム1も、図1のシステム1と同様に、基地局100とリモート局200との間において光ファイバ300で伝送される光位相変調信号に生じる遅延を正確に測定し、基地局100からリモート局200に高精度な時刻タイミング信号を伝送することが可能になる。また、図10に示すシステム1の場合、リモート局200に光周波数シフタを設ける必要がないため、構成を簡素化することができる。
【0058】
実施の形態3.
次に、本開示の実施の形態3におけるシステム1の構成について、図11を参照して説明する。図11は、本開示の実施の形態3に係るシステム1の構成を示すブロック図である。図11のブロック図において、既に説明した図1のブロック図と同じ構成については同じ符号を付している。よって、図11のブロック図の構成について、図1のブロック図と異なる部分を詳細に説明する。
【0059】
基地局100において、光分離部150と光結合部160との間に、光周波数シフタ155が設けられている。光分離部150は、光ファイバ300を通して基地局100に到達するリモート局200からの光位相変調信号を、光周波数シフタ155に供給する。
【0060】
なお、リモート局200には、光周波数シフタが設けられておらず、リモート局200から光ファイバ300を通して基地局100に到達する復路の光位相変調信号は、周波数の変化は生じておらず、光ファイバ300を往復したことによる遅延のみが生じている。このように遅延のみが生じている光位相変調信号には、光周波数シフタ155によりシフト周波数が与えられて、その周波数が変化する。光周波数シフタ155は、周波数が変化した光位相変調信号を光結合部160に供給する。
【0061】
光結合部160は、光分配部120から供給されるレーザ光と、光周波数シフタ155から供給されるシフト周波数を与えられた光位相変調信号とを混合し、レーザ光の光周波数と光位相変調信号の光周波数との差の周波数のビート成分によって振幅と位相とが変化するビート成分光を生成する。光電気変換部170は、ヘテロダイン動作により、レーザ光の光周波数と光位相変調信号の光周波数との差の周波数のビート成分を有するビート成分光を電気信号の差信号として生成する。差信号は、光周波数シフタ155が光位相変調信号に与えたシフト周波数と同じ周波数の信号であり、光信号ではなく、数十MHzから数百MHz程度の電波の周波数の電気信号である。従って、所望の周波数の差信号を得ることができるように、光周波数シフタ155のシフト周波数を設定しておく。
【0062】
この後、図1のシステム1と同様に、制御部101は、光ファイバ300を通して光位相変調信号を伝送する際に生じる遅延時間を算出した後、時刻同期の制御を行う。
【0063】
図11に示すシステム1も、図1のシステム1と同様に、基地局100とリモート局200との間において光ファイバ300で伝送される光位相変調信号に生じる遅延を正確に測定し、基地局100からリモート局200に高精度な時刻タイミング信号を伝送することが可能になる。また、図11に示すシステム1の場合、リモート局200に光周波数シフタを設ける必要がないため、構成を簡素化することができる。
【0064】
[実施の形態により得られる効果]
基地局100からリモート局200に光ファイバ300を通して時刻タイミング信号を伝送する方法及びシステムの実施の形態により得られる効果は以下の通りである。
【0065】
本開示における方法は、時刻タイミング信号によりレーザ光を光位相変調して光位相変調信号を生成し、光位相変調信号を基地局100から光ファイバ300を通してリモート局200に伝送し、リモート局200に伝送された光位相変調信号を、光ファイバ300を通して基地局100に戻し、レーザ光または光位相変調信号の一方の光周波数をシフトさせ、リモート局200から基地局100に戻された光位相変調信号とレーザ光との周波数差の差信号を生成し、差信号を位相変調復調して差信号に含まれる位相変調された時刻タイミング信号を電気的に抽出し、光位相変調に使用した時刻タイミング信号と復調により抽出した時刻タイミング信号とのタイミング差から遅延時間を求め、遅延時間だけ進めた時刻タイミング信号によりレーザ光を光位相変調して同期用の光位相変調信号を生成し、同期用の光位相変調信号を光ファイバ300を通してリモート局200に送信する。この開示に係るシステムは、以上の方法を用いて、基地局100からリモート局200に光ファイバ300を通して同期用の光位相変調信号を伝送する。
【0066】
これにより、基地局100とリモート局200との間において光位相変調信号を伝送する光ファイバ300で生じる遅延時間を、シフト周波数に応じた周波数差を有する電気信号の差信号として検出することができる。ここで、光位相変調信号のシフト周波数による周波数差は電波の周波数範囲であり、光の周波数に比べると極めて小さい。このため、光ファイバ300の伝送における波長分散の影響による遅延量の変化に基づく誤差を極めて小さくすることができる。そして、光位相変調信号を往復の経路の途中で外部に取り出さないため、光位相変調信号は同じ経路を通っており、往復経路差による誤差も生じない。このため、基地局100とリモート局200との間において光ファイバ300で伝送される光位相変調信号に生じる遅延を正確に測定することができる。そして、基地局100からリモート局200に高精度な時刻タイミング信号を含む光位相変調信号を伝送することができる。
【0067】
光周波数をシフトさせるステップを、リモート局200において光位相変調信号に対して行うことが可能である。これにより、リモート局200に到達する前に、光ファイバ300の途中で異常反射して基地局100に戻る位相変調信号は、周波数シフトを受けておらず元の周波数のままであるため、差信号として現れることがない。従って基地局100とリモート局200とは、異常反射した位相変調信号の影響を受けることなく、遅延を正確に測定し、同期した状態を実現することができる。
【0068】
光周波数をシフトさせるステップは、差信号を生成するステップにおいて差信号を電気信号として生成できるように、シフト周波数を定める。これにより、差信号を、光信号ではなく、数十MHzから数百MHz程度の電波の周波数の電気信号として得ることができる。光信号は光電変換することで位相変調の成分が欠落してしまうが、本開示では差信号を電気信号として直接生成しているため、位相変調復調によって遅延を正確に測定することができる。この結果、基地局100からリモート局200に高精度な時刻タイミング信号を含む光位相変調信号を伝送することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示は、たとえば、複数の局間において時刻を高精度に同期させた状態にすることで、高速光通信、深宇宙探査、天文精密計測への応用が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 システム、100 基地局、101 制御部、110 レーザ光源、120 光分配部、125 光周波数シフタ、130 タイミング信号生成部、140 光位相変調部、150 光分離部、155 光周波数シフタ、160 光結合部、170 光電気変換部、180 電気位相変調復調部、190 遅延算出部、200 リモート局、210 光周波数シフタ、220 逆送部、300 光ファイバ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11