IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人山形大学の特許一覧

特許7079782電荷注入層およびその製造方法、ならびに有機光電子素子およびその製造方法
<>
  • 特許-電荷注入層およびその製造方法、ならびに有機光電子素子およびその製造方法 図1
  • 特許-電荷注入層およびその製造方法、ならびに有機光電子素子およびその製造方法 図2
  • 特許-電荷注入層およびその製造方法、ならびに有機光電子素子およびその製造方法 図3
  • 特許-電荷注入層およびその製造方法、ならびに有機光電子素子およびその製造方法 図4
  • 特許-電荷注入層およびその製造方法、ならびに有機光電子素子およびその製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】電荷注入層およびその製造方法、ならびに有機光電子素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20220526BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
H05B33/22 D
H05B33/10
H05B33/14 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019537690
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2018031237
(87)【国際公開番号】W WO2019039563
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2017161640
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 岳文
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 薫
(72)【発明者】
【氏名】桑名 保宏
(72)【発明者】
【氏名】横山 大輔
【審査官】中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/204275(WO,A1)
【文献】特開2010-021422(JP,A)
【文献】国際公開第2016/100313(WO,A1)
【文献】特開2016-224442(JP,A)
【文献】国際公開第2015/029203(WO,A1)
【文献】特開2006-237083(JP,A)
【文献】特開2015-097236(JP,A)
【文献】特開2005-038634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00-33/28
H01L 51/50-51/56
H01L 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正孔注入層であって、
前記正孔注入層は、含フッ素重合体および半導体材料を含み、
前記正孔注入層の波長域450nm~800nmにおける屈折率が、1.60以下であり、
前記含フッ素重合体の1×10-3Pa以下の真空度において300℃における蒸発速度が、0.01g/msec以上であり、
前記含フッ素重合体のガラス転移点が、60℃以上であり、
前記含フッ素重合体が、主鎖に脂肪族環を有さず、フルオロオレフィンに由来する単位を有する含フッ素重合体、または、主鎖に脂肪族環構造を有する含フッ素重合体であり、
前記主鎖に脂肪族環を有さず、フルオロオレフィンに由来する単位を有する含フッ素重合体が、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニルフルオリド、ポリクロロトリフルオロエチレン、および、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、正孔注入層。
【請求項2】
(前記含フッ素重合体の含有量):(前記半導体材料の含有量)で表される体積比が70:30~5:95である、請求項1に記載の正孔注入層。
【請求項3】
ドーパントを含む、請求項1または2に記載の正孔注入層。
【請求項4】
前記含フッ素重合体の含有割合が、前記含フッ素重合体と前記半導体材料と前記ドーパントとの合計に対して、30~70体積%である、請求項3に記載の正孔注入層。
【請求項5】
前記ドーパントの含有割合が、前記半導体材料の全物質量100モル部に対して、10~200モル部である、請求項3または4に記載の正孔注入層。
【請求項6】
前記正孔注入層は物理蒸着層である、請求項1~5のいずれか一項に記載の正孔注入層。
【請求項7】
前記含フッ素重合体の波長域450nm~800nmにおける屈折率が1.5以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の正孔注入層。
【請求項8】
前記含フッ素重合体が、主鎖に脂肪族環構造を有するペルフルオロ重合体である請求項1~のいずれか1項に記載の正孔注入層。
【請求項9】
前記ペルフルオロ重合体が、ポリペルフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)である、請求項に記載の正孔注入層。
【請求項10】
前記ポリペルフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)の固有粘度が、0.01~0.14dl/gである、請求項に記載の正孔注入層。
【請求項11】
前記含フッ素重合体の重量平均分子量が、1,500~50,000である請求項1~10のいずれか1項に記載の正孔注入層。
【請求項12】
陽極と、前記陽極に対向して設けられた陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた発光層と、前記陽極の前記発光層側に設けられた正孔注入層を備え、
前記正孔注入層は、請求項1~11のいずれか一項に記載の正孔注入層である有機光電子素子。
【請求項13】
前記発光層と前記正孔注入層の間に正孔輸送層を備え、前記正孔注入層の厚さと前記正孔輸送層の厚さの比が1:2~30:1である、請求項12に記載の有機光電子素子。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の正孔注入層の製造方法であって、
陽極上に、前記含フッ素重合体と前記半導体材料とを共蒸着させる工程を含む、正孔注入層の製造方法。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載の正孔注入層の製造方法であって、
陽極上に、前記含フッ素重合体と前記半導体材料とを含む液状組成物を塗布する工程を含む、正孔注入層の製造方法。
【請求項16】
請求項12または13に記載の有機光電子素子の製造方法であって、
請求項14または15に記載の方法によって前記正孔注入層を形成する工程を含む、有機光電子素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷注入層およびその製造方法、ならびに有機光電子素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機電界発光素子(有機EL素子)における内部量子効率は100%近くまで達している。その一方、外部量子効率に関する光取り出し効率は20~30%程度にとどまっており、改良が求められている。光取り出し効率が低下する原因の一つとして、2つの電極間に位置する発光層で生じた光の一部が、素子内での反射、表面プラズモン、導波等によって素子内で失われることが挙げられる。光の損失の本質的な原因は、2つの電極間の発光層等を構成する半導体材料の屈折率が高いことにある。
【0003】
特許文献1は、電荷輸送層にナノサイズの多孔質シリカ粒子を含有させ、電荷輸送層の屈折率を低下させる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/108618号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電荷輸送層の製造プロセスにおいては、材料組成物中にナノサイズの多孔質シリカ粒子を均一に分散させて製膜する必要がある。この分散技術の難度は高いため、電荷輸送層内における粒子の分布に偏りが生じる懸念がある。
【0006】
本発明は、屈折率が充分に低く、材料の組成に偏りが生じ難い電荷注入層およびその製造方法、ならびに有機光電子素子およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 含フッ素重合体および半導体材料を含み、波長域450nm~800nmにおける屈折率が1.60以下である電荷注入層。
[2] (前記含フッ素重合体の含有量):(前記半導体材料の含有量)で表される体積比が70:30~5:95である、[1]に記載の電荷注入層。
[3] ドーパントを含む、[1]または[2]に記載の電荷注入層。
[4] 前記含フッ素重合体の含有割合が、前記含フッ素重合体と前記半導体材料と前記ドーパントとの合計に対して、30~70体積%である、[3]に記載の電荷注入層。
[5] 前記ドーパントの含有割合が、前記半導体材料の全物質量100モル部に対して、10~200モル部である、[3]または[4]に記載の電荷注入層。
[6] 前記電荷注入層は物理蒸着層である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の電荷注入層。
[7] 前記含フッ素重合体の波長域450nm~800nmにおける屈折率が1.5以下である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の電荷注入層。
[8] 前記含フッ素重合体の1×10-3Pa以下の真空度において300℃における蒸発速度が0.01g/msec以上である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の電荷注入層。
[9] 前記含フッ素重合体が、主鎖に脂肪族環を有さず、フルオロオレフィンに由来する単位を有する重合体、または主鎖に脂肪族環構造を有する重合体である[1]~[8]のいずれか1項に記載の電荷注入層。
[10] 前記含フッ素重合体が、主鎖に脂肪族環構造を有するペルフルオロ重合体である[1]~[9]のいずれか1項に記載の電荷注入層。
[11] 前記含フッ素重合体の重量平均分子量が、1,500~50,000である[1]~[10]のいずれか1項に記載の電荷注入層。
[12] 陽極と、前記陽極に対向して設けられた陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた発光層と、前記陽極の前記発光層側に設けられた正孔注入層を備え、
前記正孔注入層は、[1]~[11]のいずれか一項に記載の電荷注入層である有機光電子素子。
[13] 前記発光層と前記正孔注入層の間に正孔輸送層を備え、前記正孔注入層の厚さと前記正孔輸送層の厚さの比が1:2~30:1である、[12]に記載の有機光電子素子。
[14] 陽極と、前記陽極に対向して設けられた陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた発光層と、前記陰極の前記発光層側に設けられた電子注入層を備え、
前記電子注入層は、[1]~[11]のいずれか一項に記載の電荷注入層である有機光電子素子。
[15] 前記発光層と前記電子注入層の間に電子輸送層を備え、前記電子注入層の厚さと前記電子輸送層の厚さの比が1:2~30:1である、[14]に記載の有機光電子素子。
[16] 前記ペルフルオロ重合体が、ポリペルフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)である、[12]~[15]のいずれか一項に記載の有機光電子素子。
[17] 前記ポリペルフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)の固有粘度が、0.01~0.14dl/gである、[16]に記載の有機光電子素子。
[18] [1]~[11]のいずれか一項に記載の電荷注入層の製造方法であって、
陽極または陰極上に、前記含フッ素重合体と前記半導体材料とを共蒸着させる工程を含む、電荷注入層の製造方法。
[19] [1]~[11]のいずれか一項に記載の電荷注入層の製造方法であって、
陽極または陰極上に、前記含フッ素重合体と前記半導体材料とを含む液状組成物を塗布する工程を含む、電荷注入層の製造方法。
[20] [12]~[17]に記載の有機光電子素子の製造方法であって、[18]または[19]に記載の方法によって前記電荷注入層を形成する工程を含む、有機光電子素子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電荷注入層は、屈折率が充分に低く、均一な材料組成を有している。
本発明の電荷注入層の製造方法によれば、前記の優れた電荷注入層を歩留り良く製造できる。
本発明の有機光電子素子は、前記の電荷注入層を電極に接する位置に備えている。この構成により、本発明の有機光電子素子は高い光取り出し効率を発揮する。
本発明の有機光電子素子の製造方法によれば、前記の優れた有機光電子素子を歩留り良く製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の有機光電子素子の層構成の一例を示す模式図である。
図2】トップエミッション型有機EL素子における光学計算(1次共振)の解析結果を示す。
図3】トップエミッション型有機EL素子における光学計算(2次共振)の解析結果を示す。
図4】ボトムエミッション型有機EL素子における光学計算の解析結果を示す。
図5】実施例7および比較例7の導電性評価用素子のJ-V特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[電荷注入層]
本発明の電荷注入層は、含フッ素重合体および半導体材料を含み、波長域450nm~800nmにおける屈折率が1.60以下である。
本発明における「波長域450nm~800nmにおける屈折率」とは、前記波長域450nm~800nmにおける全ての波長にわたって屈折率が1.60以下であることを意味する。
【0011】
本発明の電荷注入層は、波長域450nm~800nmにおける屈折率が1.60以下であり、1.55以下であることが好ましく、1.50以下であることがより好ましく、1.45以下であることがさらに好ましい。屈折率が1.60以下であることにより、屈折率に比例して表面プラズモンを励起するエバネッセント波が小さくなるため、プラズモン吸収による光の損失が少なくなり、有機光電子素子の光取り出し効率が向上する。一方、本発明の電荷注入層の屈折率は、膜内導波光を低減するため隣接する電荷輸送層と電荷注入層の屈折率差を小さくする観点で、1.30以上であることが好ましく、1.35以上であることがより好ましく、1.40以上であることがさらに好ましい。
【0012】
本発明の電荷注入層において、(含フッ素重合体の含有量):(半導体材料の含有量)で表される体積比は70:30~5:95であることが好ましく、60:40~20:80であることがより好ましい。含フッ素重合体と半導体材料との体積比が上記範囲であれば、電荷注入層の屈折率が電極やガラス基板等の屈折率と同等水準まで低下し、有機光電子素子における光取り出し効率が向上するため好ましい。
【0013】
本発明の電荷注入層は、有機光電子素子において電極から発光層に電荷を注入する電荷注入層として有用である。本発明の電荷注入層は、陽極に接する正孔注入層であってもよいし、陰極に接する電子注入層であってもよい。
以下、本発明の電荷注入層の材料を説明する。
【0014】
(含フッ素重合体)
本発明の電荷注入層に含まれる含フッ素重合体は、フッ素原子を含む重合体である。なお、本発明においては、オリゴマーも重合体に含める。すなわち、含フッ素重合体はオリゴマーであってもよい。
含フッ素重合体は、電荷注入層および電荷輸送層等の層の形成速度、層の強度と表面粗さの観点から、含フッ素重合体の熱分解が起こる温度以下において実用化するのに十分な蒸発速度もしくは飽和蒸気圧を有することが好ましい。一般的な含フッ素重合体であるPTFEの熱分解開始温度が約400℃、テフロン(登録商標)AFの熱分解開始温度が350℃である。本実施形態に係る含フッ素重合体の300℃における蒸発速度は、0.01g/msec以上が好ましく、0.02g/msec以上がより好ましい。また、飽和蒸気圧は、0.001Pa以上であることが好ましく、0.002Pa以上がより好ましい。この観点から含フッ素重合体は、分子間相互作用が小さいと考えられるペルフルオロ重合体が好ましい。また結晶性が低いといわれる主鎖に脂肪族環構造を有する重合体がさらに好ましい。ここで主鎖に脂肪族環構造を有するとは、含フッ素重合体が繰り返し単位中に脂肪族環構造(芳香族性を示さない環構造)を有し、かつ、該脂肪族環を構成する炭素原子の1個以上が主鎖を構成することを意味する。
本明細書中、飽和蒸気圧(単位:Pa)は、真空示差熱天秤(アドバンス理工社製:VPE-9000)により測定される値である。
【0015】
含フッ素重合体の重量平均分子量(以下、「Mw」で表す。)は1,500~50,000が好ましく、3,000~40,000がより好ましく、5,000~30,000がさらに好ましい。重量平均分子量が1,500以上の場合は、形成される含フッ素重合体で層を形成した場合に十分な強度が得られやすい。一方で、重量平均分子量が50,000以下の場合は、実用的な層形成速度(成膜速度)を与える飽和蒸気圧を有するため、蒸着源を高温、具体的には、400℃超の温度まで加熱する必要がなくなる。蒸着原の温度が高すぎると蒸着過程において含フッ素重合体の主鎖が開裂し、含フッ素重合体が低分子量化してしまい、形成される層の強度が不十分となり、さらに分解物に由来する欠陥が発生し、平滑な表面を得にくい。また、主鎖の開裂により生じ意図せず混入した分子あるいはイオンが膜の導電性や有機EL素子の発光寿命に影響を与える可能性が想定される。
よってMwが1,500~50,000の範囲であれば、含フッ素重合体の主鎖が開裂を起こすことなく、十分な強度と平滑な表面を有する層が形成できる。
「多分散度」とは、数平均分子量(以下、「Mn」で表す。)に対するMwの割合、すなわち、Mw/Mnをいう。形成される層における品質の安定性の観点から、含フッ素重合体の多分散度(分子量分布)(Mw/Mn)は小さい方が好ましく、2以下が好ましい。なお多分散度の理論的な下限値は1である。多分散度の小さい含フッ素重合体を得る方法として、リビングラジカル重合等の制御重合を行う方法、サイズ排除クロマトグラフィを用いた分子量分画精製法、昇華精製による分子量分画精製法が挙げられる。これらの方法のうち、層の形成に蒸着法を適用した場合の蒸着レートの安定性を考慮し、昇華精製を行うことが好ましい。
本明細書中、MwおよびMnはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
含フッ素重合体のガラス転移点(Tg)は高い方が、得られる素子の信頼性が高くなることから好ましい。具体的にはガラス転移点が、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、100℃以上が特に好ましい。上限は特に制限されないが、350℃が好ましく、300℃がより好ましい。
【0016】
主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有するペルフルオロ重合体が、ペルフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)を環化重合してなる繰り返し単位のみからなるペルフルオロ重合体である場合、固有粘度[η]が、0.01~0.14dl/gであることが好ましく、0.02~0.1dl/gであることがより好ましく、0.02~0.08dl/gであることが特に好ましい。[η]が0.01dl/g以上の場合は、相対的に含フッ素重合体の分子量が大きくなり、形成後の層において十分な強度が得られやすい。一方で、[η]が0.14dl/g以下の場合は、相対的に含フッ素重合体の分子量が小さくなり、実用的な成膜速度を与える飽和蒸気圧を有する。
本明細書中、固有粘度[η](単位:dl/g)は、測定温度30℃でアサヒクリン(登録商標)AC2000(旭硝子社製)を溶媒として、ウベローデ型粘度計(柴田科学社製:粘度計ウベローデ)により測定される値である。
【0017】
含フッ素重合体の波長450nm~800nmにおける屈折率の上限値は、1.5が好ましく、1.4がより好ましい。屈折率が1.5以下であれば、有機半導体材料との混合により得られる電荷注入層、電荷輸送層等の層の屈折率をガラス基板等の屈折率と同等水準である1.55程度まで低下させることができ、光取り出し効率が向上するため好ましい。一方、屈折率の理論的な下限値は1.0である。
有機半導体材料の屈折率は、一般的に1.7~1.8程度である。このような一般的な有機半導体材料に対して、屈折率が1.5以下の含フッ素重合体を混合すれば、得られる電荷注入層、電荷輸送層等の屈折率を低下させることができる。電荷注入層、電荷輸送層の屈折率が低下して、電荷注入層、電荷輸送層に隣接する電極、ガラス基板等(ソーダガラスおよび石英ガラスの屈折率は可視光領域でそれぞれ約1.51~1.53、約1.46~1.47である。)の屈折率に近づけば、電荷注入層または電荷輸送層と、電極またはガラス基板との界面で生じる全反射を回避することができ、光取り出し効率が向上する。
【0018】
含フッ素重合体としては、以下の重合体(1),(2)が挙げられる。
重合体(1):主鎖に脂肪族環を有さず、フルオロオレフィンに由来する単位(以下、「フルオロオレフィン単位」とも記す。)を有する含フッ素重合体、
重合体(2):主鎖に脂肪族環を有する含フッ素重合体。
【0019】
≪重合体(1)≫
重合体(1)は、フルオロオレフィンの単独重合体であってもよく、フルオロオレフィンと、フルオロオレフィンと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
【0020】
フルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ビニルフルオライド、ペルフルオロアルキルエチレン(炭素数1~10のペルフルオロアルキル基を有するもの等)、トリフルオロエチレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)等が挙げられる。
例示したうちで、電荷注入層および電荷輸送層の屈折率を低下させやすいことから、炭素原子に結合しているすべての水素原子がフッ素に置換されたテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)が好ましい。
【0021】
フルオロオレフィンと共重合可能な他の単量体としては、ビニルエーテル、ビニルエステル、芳香族ビニル化合物、アリル化合物、アクリロイル化合物、メタクリロイル化合物等が挙げられる。
重合体(1)が共重合体である場合、フルオロオレフィンに由来する単位の割合は、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
【0022】
重合体(1)の主鎖末端の官能基は、反応性の低い官能基であることが好ましい。反応性の低い官能基としては、たとえば、アルコキシカルボニル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0023】
重合体(1)としては、合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
重合体(1)としては、以下の含フッ素重合体が挙げられる。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体((旭硝子社製:Fluon(登録商標)PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(EPA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(旭硝子社製:Fluon(登録商標)ETFE)、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、ポリビニルフルオリド(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等。
例示したうちで、電荷注入層および電荷輸送層の屈折率を低下させやすいことから、炭素原子に結合しているすべての水素原子または塩素原子がフッ素に置換されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(EPA)が好ましい。
重合体(1)は、公知の方法を用いて製造できる。
重合体(1)としては、合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
【0024】
≪重合体(2)≫
重合体(2)は、主鎖に脂肪族環を有する含フッ素重合体である。
「主鎖に脂肪族環構造を有する含フッ素重合体」とは、含フッ素重合体が脂肪族環構造を有する単位を有し、かつ、該脂肪族環を構成する炭素原子の1個以上が主鎖を構成する炭素原子であることを意味する。脂肪族環は酸素原子等のヘテロ原子を有する環であってもよい。
重合体の「主鎖」とは、重合性二重結合を有するモノエンの重合体においては重合性二重結合を構成した2つの炭素原子に由来する炭素原子の連鎖をいい、環化重合しうるジエンの環化重合体においては2つの重合性二重結合を構成した4つの炭素原子に由来する炭素原子の連鎖をいう。モノエンと環化重合しうるジエンとの共重合体においては、該モノエンの上記2つの炭素原子と該ジエンの上記4つの炭素原子とから主鎖が構成される。
したがって、脂肪族環を有するモノエンの重合体の場合は、脂肪族環の環骨格を構成する1つの炭素原子または環骨格を構成する隣接した2つの炭素原子が重合性二重結合を構成する炭素原子である構造のモノエンの重合体である。環化重合しうるジエンの環化重合体の場合は、後述のように、2つの二重結合を構成する4つの炭素原子のうちの2~4つが脂肪族環を構成する炭素原子となる。
【0025】
重合体(2)中の脂肪族環の環骨格を構成する原子の数は、4~7個が好ましく、5~6個が特に好ましい。すなわち、脂肪族環は4~7員環が好ましく、5~6員環が特に好ましい。脂肪族環の環を構成する原子としてヘテロ原子を有する場合、ヘテロ原子としては酸素原子、窒素原子等が挙げられ、酸素原子が好ましい。また、環を構成するヘテロ原子の数は1~3個が好ましく、1個または2個であることがより好ましい。
脂肪族環は置換基を有していてもよく、有さなくてもよい。「置換基を有していてもよい」とは、該脂肪族環の環骨格を構成する原子に置換基が結合してもよいことを意味する。
【0026】
重合体(2)の脂肪族環を構成する炭素原子に結合した水素原子はフッ素原子に置換されていることが好ましい。また、脂肪族環が置換基を有する場合、その置換基に炭素原子に結合した水素原子を有する場合も、その水素原子はフッ素原子に置換されていることが好ましい。フッ素原子を有する置換基としては、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、=CF等が挙げられる。
重合体(2)中の脂肪族環としては、電荷注入層および電荷輸送層の屈折率を低下させやすいことから、ペルフルオロ脂肪族環(置換基を含め、炭素原子に結合した水素原子のすべてがフッ素原子に置換されている脂肪族環)が好ましい。
【0027】
重合体(2)としては、下記の重合体(21)、(22)が挙げられる。
重合体(21):含フッ素環状モノエンに由来する単位を有する含フッ素重合体、
重合体(22):環化重合しうる含フッ素ジエン(以下、単に「含フッ素ジエン」ともいう。)の環化重合により形成される単位を有する含フッ素重合体。
【0028】
フッ素重合体(21):
「含フッ素環状モノエン」とは、脂肪族環を構成する炭素原子間に重合性二重結合を1個有する含フッ素単量体、または、脂肪族環を構成する炭素原子と脂肪族環外の炭素原子との間に重合性二重結合を1個有する含フッ素単量体である。
含フッ素環状モノエンとしては、下記の化合物(1)または化合物(2)が好ましい。
【0029】
【化1】
[式中、X、X、X、X、YおよびYは、それぞれ独立に、フッ素原子、エーテル性酸素原子(-O-)を含んでいてもよいペルフルオロアルキル基、またはエーテル性酸素原子を含んでいてもよいペルフルオロアルコキシ基である。XおよびXは相互に結合して環を形成してもよい。]
【0030】
、X、X、X、YおよびYにおけるペルフルオロアルキル基は、炭素数が1~7であることが好ましく、炭素数が1~4であることが特に好ましい。前記ペルフルオロアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状が好ましく、直鎖状が特に好ましい。具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基等が挙げられ、特にトリフルオロメチル基が好ましい。
、X、X、X、YおよびYにおけるペルフルオロアルコキシ基としては、前記ペルフルオロアルキル基に酸素原子(-O-)が結合したものが挙げられ、トリフルオロメトキシ基が特に好ましい。
【0031】
式(1)中、Xは、フッ素原子であることが好ましい。
は、フッ素原子、トリフルオロメチル基、または炭素数1~4のペルフルオロアルコキシ基であることが好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメトキシ基であることが特に好ましい。
およびXは、それぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1~4のペルフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメチル基であることが特に好ましい。
およびXは相互に結合して環を形成してもよい。前記環の環骨格を構成する原子の数は、4~7個が好ましく、5~6個が特に好ましい。
化合物(1)の好ましい具体例として、化合物(1-1)~(1-5)が挙げられる。
【0032】
【化2】
【0033】
式(2)中、YおよびYは、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1~4のペルフルオロアルキル基または炭素数1~4のペルフルオロアルコキシ基が好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメチル基が特に好ましい。
化合物(2)の好ましい具体例として、化合物(2-1),(2-2)が挙げられる。
【0034】
【化3】
【0035】
重合体(21)は、前記の含フッ素環状モノエンの単独重合体であってもよく、含フッ素環状モノエンと共重合可能な他の単量体の共重合体であってもよい。
ただし、重合体(21)中の全単位に対する含フッ素環状モノエンに由来する単位の割合は、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、100モル%がさらに好ましい。
含フッ素環状モノエンと共重合可能な他の単量体としては、たとえば、含フッ素ジエン、側鎖に反応性官能基を有する単量体、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)等が挙げられる。
含フッ素ジエンとしては、後述する重合体(22)の説明で挙げるものと同様のものが挙げられる。側鎖に反応性官能基を有する単量体としては、重合性二重結合および反応性官能基を有する単量体が挙げられる。重合性二重結合としては、CF=CF-、CF=CH-、CH=CF-、CFH=CF-、CFH=CH-、CF=C-、CF=CF-等が挙げられる。反応性官能基としては、後述する重合体(22)の説明で挙げるものと同様のものが挙げられる。
含フッ素環状モノエンと含フッ素ジエンとの共重合により得られる重合体は重合体(21)とする。
【0036】
重合体(22):
「含フッ素ジエン」とは、2個の重合性二重結合およびフッ素原子を有する環化重合しうる含フッ素単量体である。重合性二重結合としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。含フッ素ジエンとしては、下記化合物(3)が好ましい。
CF=CF-Q-CF=CF ・・・(3)。
式(3)中、Qは、エーテル性酸素原子を含んでいてもよく、フッ素原子の一部がフッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~5、好ましくは1~3の、分岐を有してもよいペルフルオロアルキレン基である。該フッ素以外のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
Qは、エーテル性酸素原子を含むペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。その場合、前記ペルフルオロアルキレン基におけるエーテル性酸素原子は、前記ペルフルオロアルキレン基の一方の末端に存在していてもよく、前記ペルフルオロアルキレン基の両末端に存在していてもよく、前記ペルフルオロアルキレン基の炭素原子間に存在していてもよい。環化重合性の点から、前記ペルフルオロアルキレン基の一方の末端にエーテル性酸素原子が存在していることが好ましい。
【0037】
化合物(3)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
CF=CFOCFCF=CF
CF=CFOCF(CF)CF=CF
CF=CFOCFCFCF=CF
CF=CFOCFCF(CF)CF=CF
CF=CFOCF(CF)CFCF=CF
CF=CFOCFClCFCF=CF
CF=CFOCClCFCF=CF
CF=CFOCFOCF=CF
CF=CFOC(CFOCF=CF
CF=CFOCFCF(OCF)CF=CF
CF=CFCFCF=CF
CF=CFCFCFCF=CF
CF=CFCFOCFCF=CF
【0038】
化合物(3)の環化重合により形成される単位として、下記単位(3-1)~(3-4)等が挙げられる。
【0039】
【化4】
【0040】
重合体(22)は、含フッ素ジエンの単独重合体であってもよく、含フッ素ジエンと共重合可能な他の単量体の共重合体であってもよい。
含フッ素ジエンと共重合可能な他の単量体としては、たとえば、側鎖に反応性官能基を有する単量体、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)等が挙げられる。
【0041】
重合体(22)の具体例としては、たとえば、CF=CFOCFCFCF=CF(ペルフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル))を環化重合させて得られる、下式(3-1-1)で表される重合体が挙げられる。
なお、以下、ペルフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)を「BVE」という。
【0042】
【化5】
【0043】
ただし、式(3-1-1)中、pは5~1,000の整数である。
pは、10~800の整数が好ましく、10~500の整数が特に好ましい。
【0044】
重合体(2)の主鎖末端の官能基は、反応性の低い官能基であることが好ましい。反応性の低い官能基としては、たとえば、アルコキシカルボニル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0045】
重合体(2)としては、合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
重合体(2)の具体例としては、BVE環化重合体(旭硝子社製:サイトップ(登録商標))、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(4-メトキシ-1,3-ジオキソール)共重合体(ソルベイ社製:ハイフロン(登録商標)AD)、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)共重合体(Dupont社製:テフロン(登録商標)AF)、 ペルフルオロ(4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン)重合体(MMD重合体)が好ましい。
【0046】
本発明では、含フッ素重合体は重合体(2)であることが好ましく、重合体(22)であることがより好ましく、BVEを環化重合させて得られる、式(3-1-1)で表される含フッ素重合体が特に好ましい。
【0047】
(半導体材料)
本発明の電荷注入層が含む半導体材料は、有機半導体でもよく、無機半導体でもよいが、屈折率の制御が容易であり、含フッ素重合体との混合が容易である観点から、有機半導体であることが好ましい。
本発明の電荷注入層が含む半導体材料は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0048】
(無機半導体)
前記無機半導体材料としては、たとえば、MoO、WOx(xは任意の正数)で表される酸化タングステン等の金属酸化物が挙げられる。MoOは、陽極側から正孔の注入を受けて輸送する正孔注入材料として好適である。
【0049】
(有機半導体)
前記有機半導体材料は、半導体的な電気特性を示す有機化合物材料である。有機半導体材料は、陽極から正孔の注入を受けて輸送する正孔注入材料と、陰極から電子の注入を受けて輸送する電子注入材料とに分類できる。本発明にはどちらも好適に用いられるが、正孔注入材料が特に好適に用いられる。
【0050】
正孔注入材料としては、芳香族アミン誘導体が好適に例示できる。具体例としては、下記のα-NPD、TAPC、PDA、TPD、m-MTDATA等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
【化6】
【0052】
前記以外の正孔注入材料として、たとえば、酸化モリブデン、または酸化タングステン等の金属酸化物の半導体材料、銅フタロシアニン等の有機金属錯体材料、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-[4-(フェニル-m-トリル-アミノ)-フェニル]-ビフェニル-4,4’-ジアミン(DNTPD)、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(NPB)、4,4’,4”-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TDATA)、ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)、9,9’,9’’-トリフェニル-9H,9’H,9’’H-3,3’:6’,3’’-テルカルバゾール(Tris-PCz)、4,4’,4”-トリス(N,N-2-ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2-TNATA)等のアリールアミン材料、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(PANI/DBSA)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)、ポリアニリンカンファースルホン酸(PANI/CSA)、またはポリアニリン/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PANI/PSS)等の高分子半導体材料、N-(ジフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-N-(4-(9-フェニル-9H-カルバゾイル-3イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン(以下、「HT211」という。)、HTM081(Merck社製)、HTM163(Merck社製)、HTM222(Merck社製)、NHT-5(Novaled社製)、NHT-18(Novaled社製)、NHT-49(Novaled社製)、NHT-51(Novaled社製)、NDP-2(Novaled社製)、NDP-9(Novaled社製)等が挙げられる。例示した正孔注入層形成用材料は、市販品を購入することができる。これら正孔注入材料は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。また、上記正孔注入材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
電子注入材料としては、公知のものを使用することができる。具体例としては、LiF、CsCO、CsF等の無機化合物や、下記のAlq、PBD、TAZ、BND、OXD-7等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
【化7】
【0055】
本発明の電荷注入層は、含フッ素重合体および半導体材料に加えて、他の材料を含んでもよいが、含フッ素重合体および半導体材料からなることが好ましい。ただし半導体材料は1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。また含フッ素重合体は1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0056】
本発明の電荷注入層の厚さは特に制限されないが、1nm~350nmが好ましく、5nm~300nmがより好ましい。
【0057】
本発明の電荷注入層は、波長域450nm~800nmにおける吸収係数が5000cm-1以下であることが好ましく、1000cm-1以下であることがより好ましく、前記波長域において吸収帯を有さないことが特に好ましい。吸収係数が5000cm-1を超える場合、光が厚み100nmの電荷注入層を1回通過すると通過前の光の全量を100%としたときに対し5%の光が吸収される。有機光電子素子の内部では光の多重干渉により、電荷注入層を通過するときの光の吸収による損失が累積するため、電荷注入層を通過する際における光吸収が光取り出し効率を大きく低減させる要因となる。光吸収が充分小さい電荷注入層を用いることは、有機光電子素子の発光効率を損なわないために極めて重要である。有機光電子素子の発光効率が損なわれないことによりエネルギー利用効率が高くなり、かつ、光吸収に基づく発熱が抑制される結果として素子寿命が長くなる。なお、本発明において、「吸収係数(単位:cm-1)」は、JIS K 0115に準拠して測定される値である。
【0058】
<電荷注入層の製造方法>
本発明の電荷注入層は、例えば、含フッ素重合体と半導体材料の混合物に公知のドライコート法およびウェットコート法を適用することによって、製造することができる。
【0059】
ドライコート法としては、たとえば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、およびスパッタ法等の物理蒸着法が挙げられる。電荷注入層を形成する含フッ素重合体と半導体材料と任意成分のドーパントとを任意の割合で均一に混合して成膜するために、各成分を同時に蒸着させる共蒸着法が好ましい。
【0060】
本発明の電荷注入層の製造方法の好ましい態様の一つは、陽極および陰極から任意に選択される電極上に、含フッ素重合体と半導体材料と任意成分のドーパントとを共蒸着させる工程を含む、製造方法である。
【0061】
前記の共蒸着において、含フッ素重合体と半導体材料と任意成分のドーパントの合計の蒸着速度は特に制限されないが、任意の混合比で均一な膜組成としやすい観点から、たとえば、0.001~10nm/sが挙げられる。
各成分の蒸着速度を適宜調整することにより、形成する電荷注入層に含まれる各成分の含有比率を調整することができる。
本態様によれば、各材料成分が均一に混合され易いため、屈折率が充分に低く、均一な材料組成を有する本発明の電荷注入層を歩留り良く製造できる。
【0062】
本発明の電荷注入層は、たとえば以下のドライコート法による作製方法によって作製する。
基板として、酸化インジウムスズ(ITO)が成膜されたガラス基板を用いる。その基板を中性洗剤、アセトン、イソプロパノールを用いて順次超音波洗浄する。その後、イソプロパノール中で煮沸洗浄して、オゾン処理装置に導入してITO膜表面の不要な不純物を除去する。
この基板を真空蒸着機内に置き、圧力10-4Pa以下に真空引きした上で、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などの含フッ素重合体と、HAT-CNなどの有機半導体材料、もしくはMoOなどの無機半導体材料を真空蒸着機内で抵抗加熱し、共蒸着を行うことで電荷注入層をそれぞれの基板上に作製する。全ての材料の合計の蒸着速度は2.0Å/sが好ましい。
【0063】
ウェットコート法としては、たとえば、インクジェット法、キャストコート法、ディップコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソコート法、およびスプレーコート法等が挙げられる。
これらのウェットコート法を用いて、電荷注入層を形成する液状組成物を所望の基材上に塗布し、乾燥、硬化することによって電荷注入層を形成することができる。
【0064】
前記液状組成物は、含フッ素重合体と半導体材料と任意成分のドーパントとを任意の割合で均一に混合した状態で含むことが好ましい。前記液状組成物には、乾燥によって除去可能な希釈溶媒が含まれていてもよい。
【0065】
本発明の電荷注入層の製造方法の好ましい態様の一つは、陽極および陰極から任意に選択される電極上に、含フッ素重合体と半導体材料と任意成分のドーパントとを含む液状組成物を塗布する工程を含む、製造方法である。
前記液状組成物に希釈溶媒等の揮発成分が含まれる場合、さらに前記揮発成分を蒸発させる工程を有することが好ましい。
前記液状組成物に含まれる各成分の含有割合を適宜調整することにより、形成する電荷注入層に含まれる各成分の含有比率を調整することができる。
本態様によれば、各材料成分が均一に混合され易いため、屈折率が充分に低く、均一な材料組成を有する本発明の電荷注入層を歩留り良く製造できる。
【0066】
本発明の電荷注入層は、たとえば以下のウェットコート法による作製方法によって作製する。
基板として、酸化インジウムスズ(ITO)が成膜されたガラス基板を用いる。その基板を中性洗剤、アセトン、イソプロパノールを用いて順次超音波洗浄する。その後、イソプロパノール中で煮沸洗浄して、オゾン処理装置に導入してITO膜表面の不要な不純物を除去する。
スチレンアクリル樹脂を水とメタノールの混合液(1:1、v/v)に10wt%の濃度で加える。銅フタロシアニン(CuPc)などの半導体材料とポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの含フッ素重合体をスチレンアクリル樹脂に対してそれぞれ10wt%の濃度で加え、4時間超音波処理機で分散する。上述の基板をスピンコーターに導入し、基板上にこの超音波処理分散液を垂らして、スピンコートする。得られた塗布基板を200℃、10分間ホットプレート上でベークして、塗布膜を形成した基板を得る。
【0067】
本発明の電荷注入層の製造方法は、ドライコート法でもウェットコート法でもよいが、含フッ素重合体と半導体材料と任意成分のドーパントとを均一な混合比で成膜しやすい観点から、ドライコート法が好ましい。
したがって、本発明の電荷注入層は、物理蒸着法によって成膜された物理蒸着層であることが好ましい。
【0068】
本発明の電荷注入層は、有機電界発光素子、有機トランジスタ、太陽電池、有機フォトダイオード、有機レーザー等の有機光電子デバイスに利用できる。
本発明の電荷注入層は、特に有機電界発光素子(有機EL素子)に好適である。有機電界発光素子は、トップエミッション型であってもよく、ボトムエミッション型であってもよい。これらの有機電界発光素子は、たとえば、有機ELディスプレイ、有機EL照明等の有機ELデバイスに実装することができる。
【0069】
(ドーパント)
本発明の電荷注入層は、主材料の有機半導体に加えてドーパントとして無機化合物を含んでいてもよく、主材料の有機半導体に加えてドーパントとして別の有機化合物(ただし、含フッ素重合体を除く。)を含んでいてもよいし、主材料の無機半導体に加えてドーパントとして有機化合物(ただし、含フッ素重合体を除く。)を含んでいてもよいし、主材料の無機半導体に加えてドーパントとして別の無機半導体を含んでいてもよい。
【0070】
正孔注入材料を形成するドーパントの具体例としては、TCNQ、F-TCNQ、PPDN、TCNNQ、F-TCNNQ、HAT-CN、HATNA、HATNA-Cl6、HATNA-F6、C6036、F16-CuPc、NDP-2(Novaled社製)、NDP-9(Novaled社製)等の有機ドーパント、またはMoO、V、WO、ReO、CuI等の無機ドーパントが挙げられる。
【0071】
前記ドーパントの含有割合は、前記半導体材料の全物質量100モル部に対して、10~200モル部が好ましく、15~150モル部がより好ましい。ドーパントの含有割合が10モル部以上であると、電荷注入層の導電性が良好となる。ドーパントの含有割合が200モル部以下であると、電荷注入層の屈折率が低下しやすくなる。
【0072】
(含フッ素重合体の含有割合)
前記含フッ素重合体の含有割合は、前記含フッ素重合体と前記半導体材料と前記ドーパントとの合計に対して、30~70体積%が好ましく、35~65体積%がより好ましい。含フッ素重合体の含有割合が30体積%以上であると、電荷注入層の屈折率が低下しやすくなる。含フッ素重合体の含有割合が70体積%以下であると、電荷注入層の基本的性能としての導電性が維持されやすい。
【0073】
≪有機ELデバイスの作製方法≫
本発明の電界発光素子は、たとえば以下の方法で作製する。
陽極1上に前記作製方法により正孔注入層2を作製し、正孔輸送層3、発光層4、電子輸送層5、電子注入層6、および陰極7を順次積層して図1に示した積層構造10を作製する。作製した有機ELデバイスの陰極と陽極に電圧をかけると素子が駆動して発光する。低屈折率の正孔注入層を用いると陽極のプラズモン吸収を抑制できるため、光取出し効率が高くなり、高い発光特性が得られる。
【0074】
[有機光電子素子]
本発明の有機光電子素子は、陽極と、発光層と、陰極とを備え、陽極に接する正孔注入層、および陰極に接する電子注入層のうち少なくとも一方を備える。また、陽極に接する正孔注入層、および陰極に接する電子注入層のうち少なくとも一方として、本発明の電荷注入層を備える。
【0075】
本発明の有機光電子素子の好ましい態様の一つは、陽極と、前記陽極に対向して設けられた陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた発光層と、前記陽極の前記発光層側に設けられた正孔注入層を備え、前記正孔注入層は、本発明の電荷注入層である有機光電子素子である。
【0076】
本発明の有機光電子素子の好ましい態様の一つは、陽極と、前記陽極に対向して設けられた陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた発光層と、前記陰極の前記発光層側に設けられた電子注入層を備え、前記電子注入層は、本発明の電荷注入層である有機光電子素子である。
【0077】
本発明の有機光電子素子のより好ましい態様の一つは、陽極と、前記陽極に対向して設けられた陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた発光層と、前記陽極の前記発光層側に設けられた正孔注入層と、前記陰極の前記発光層側に設けられた電子注入層とを備え、前記正孔注入層および前記電子注入層は、本発明の電荷注入層である有機光電子素子である。
【0078】
本発明の有機光電子素子の層構成は特に限定されず、陽極と陰極の間に、本発明の電荷注入層と発光層に加えて、任意の機能層が設けられてもよい。これらの任意の機能層を構成する材料は有機物に限定されず、無機物でもよい。
【0079】
本発明の有機光電子素子における発光層と各電極に接する電荷注入層の間には、電荷輸送層を備えることが好ましい。つまり、発光層と正孔注入層の間には正孔輸送層を備えることが好ましく、発光層と電子注入層の間には電子輸送層を備えることが好ましい。
【0080】
発光層と電荷注入層の間に電荷輸送層を備える場合、電荷注入層の厚さと電荷輸送層の厚さの比は特に制限されないが、光取出し効率向上の観点から、1:20~100:1が好ましく、1:10~50:1がより好ましく、1:2~30:1がさらに好ましい。
また、発光層と正孔注入層の間に正孔輸送層を備える場合、正孔注入層の厚さと正孔輸送層の厚さの比は特に制限されないが、光取出し効率向上の観点から、1:20~100:1が好ましく、1:10~50:1がより好ましく、1:2~30:1がさらに好ましい。
【0081】
図1に、本発明の有機光電子素子の好ましい態様の一つとして、陽極1、正孔注入層2、正孔輸送層3、発光層4、電子輸送層5、電子注入層6、陰極7が、この順に積層された構成を示す。
本発明の有機光電子素子は、ボトムエミッション型でも、トップエミッション型でもよい。
【0082】
正孔注入層は、正孔輸送層のHOMOのエネルギー準位と陽極の仕事関数との間にHOMOのエネルギー準位を有し、陽極から発光層への正孔注入障壁を下げることが可能なものや、正孔輸送層のHOMOのエネルギー準位と同等以下の低いエネルギー準位にLUMOのエネルギー準位を有し、正孔輸送層のHOMOから電子を受け取ることで陽極から発光層への正孔注入障壁を下げることが可能なものが好ましい。好適な正孔注入層は、前述した本発明の電荷注入層によって形成することができる。また、公知の有機光電子素子の正孔注入層を適用してもよい。
エネルギー準位が高いとは、真空準位により近いことを意味し、エネルギー準位が低いとは、真空準位から遠いことを意味する。
【0083】
正孔注入層と発光層の間に正孔輸送層が備えられている場合、その正孔輸送層は、発光層へ正孔を輸送し、発光層から励起エネルギーが移動し難く、発光層よりもエネルギーバンドギャップが大きいものが好ましい。正孔輸送層として、公知の正孔輸送層を適用できる。
正孔輸送層の材料としては、たとえば、α-NPD、PDA、TAPC、TPD、m-MTDATA等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
その他の正孔輸送層の材料としては、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-[4-(フェニル-m-トリル-アミノ)-フェニル]-ビフェニル-4,4’-ジアミン(DNTPD)、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(NPB)、4,4’,4''-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TDATA)、ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)または4,4’,4''-トリス(N,N-2-ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2-TNATA)、9,9’,9’’-トリフェニル-9H,9’H,9’’H-3,3’:6’,3’’-テルカルバゾール(Tris-PCz)、4,4’,4''-トリ(9-カルバゾイル)トリフェニルアミン(TCTA)、2,2’,7,7’-テトラキス(N,N-ジフェニルアミノ)-2,7-ジアミノ-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-TAD)、2,2’,7,7’-テトラキス(N、N-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-MeOTAD)等のアリールアミン材料;ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(PANI/DBSA)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)、またはポリアニリンカンファースルホン酸(PANI/CSA)、ポリアニリン/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PANI/PSS)等の高分子半導体材料;N-(ジフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-N-(4-(9-フェニル-9H-カルバゾイル-3イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン(以下、「HT211」という。)、HTM081(Merck社製)、HTM163(Merck社製)、HTM222(Merck社製)、NHT-5(Novaled社製)、NHT-18(Novaled社製)、NHT-49(Novaled社製)、NHT-51(Novaled社製)、NDP-2(Novaled社製)、NDP-9(Novaled社製)等の市販品等が挙げられる。
これら正孔輸送層の材料は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。正孔輸送層は、正孔注入層と共通する材料を含んでいてもよい。また、上記正孔輸送層の形成材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
正孔輸送層の材料としては、上述した含フッ素重合体および有機半導体材料との電荷の授受を容易にする上述のドーパントが含まれてもよい。ただし、有機半導体材料は1種のみを用いても、2種以上を併用してもよく、また含フッ素重合体は1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0086】
正孔輸送層13の厚さは特に制限されないが、10nm~350nmが好ましく、20nm~300nmがより好ましい。
【0087】
発光層は、公知の有機光電子素子に用いられる公知の発光層が適用される。
発光層は、電子輸送層または電子注入層の機能を兼ね備えていてもよい。
発光層の材料としては、蛍光材料、熱活性化遅延蛍光(TADF)材料、りん光材料等、公知のものを採用することができる。たとえば、発光層14の形成材料としては、(E)-2-(2-(4-(ジメチルアミノ)スチリル)-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)マロノニトリル(DCM)、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-ジュロリジル-9-エニル-4H-ピラン(DCM)、Rubrene、Coumarin6、Ir(ppy)、(ppy)Ir(acac)等の発光ドーパント材料、4,4‘-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル(CBP)、3,3'-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)-1,1'-ビフェニル(mCBP)等のりん光ホスト材料、ADN、Alq等の蛍光ホスト材料、ポリフェニレンビニレン(PPV)、MEH-PPV等のポリマー材料が挙げられるが、これらに限定されない。発光層14の形成材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、所望の発光波長に応じて適宜選択される。発光層14の屈折率は、波長域450nm~800nmにおいて1.65~1.90であり、たとえば波長600nmにおいて1.70~1.80である。
【0088】
電子注入層は、陰極から発光層への電子注入障壁を下げることが可能な材料によって形成されていることが好ましい。好適な電子注入層は、前述した本発明の電荷注入層によって形成することができる。また、公知の有機光電子素子の電子注入層を適用してもよい。
【0089】
電子輸送層は、発光層へ電子を輸送し、発光層内で生成した励起子の移動を阻止し易く、正孔輸送層と同様にエネルギーバンドギャップが広い材料によって形成されていることが好ましい。電子輸送層として、公知の電子輸送層が適用される。
電子輸送層の材料としては、たとえば、下記のAlq、PBD、TAZ、BND、OXD-7、2,2’,2''-(1,3,5-ベンジントリイル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンズイミダゾール)(TPBi)、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BCP)、t-Bu-PBD、シロール誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。電子輸送層は、電子注入層または発光層と共通する材料を含んでいてもよい。
【化8】
【0090】
陽極は特に限定されず、公知の有機光電子素子に用いられる陽極が適用でき、たとえば、インジウム-スズ酸化物(ITO)電極が挙げられる。
【0091】
陰極は特に限定されず、公知の有機光電子素子に用いられる陰極が適用でき、たとえば、MgAg電極、Ag電極、Al電極が挙げられる。Al電極の表面にはLiF等のバッファ層が形成されていてもよい。
【0092】
本発明の有機光電子素子の立体構造は特に限定されず、たとえば、電荷注入層、電荷輸送層および発光層を一対の電極で挟んで、厚み方向に電流を流す立体構造が挙げられる。別の立体構造として、電荷輸送層および発光層が積層された電荷注入層に対し、その表面上の異なる位置に陽極および陰極を設けて面内方向に電流を流す立体構造も挙げられる。
【0093】
本発明の有機光電子素子の好ましい実施形態の一つとしては、たとえば、反射電極と、前記反射電極に対向して設けられた対向電極と、前記反射電極と前記対向電極との間に設けられた発光層と、前記反射電極と前記発光層の間に設けられた電荷輸送層と、前記電荷輸送層と前記反射電極の間に前記反射電極に接する電荷注入層を備えた有機光電子素子が挙げられる。
前記電荷注入層は、前述した本発明の電荷注入層であり、前記含フッ素重合体および前記半導体材料を含み、前記電荷注入層の波長域450nm~800nmにおける屈折率が1.60以下である。
【0094】
前記反射電極は発光層から到達した光を対向電極側に反射する機能を有する電極である。
前記反射電極は、陽極であってもよく、陰極であってもよい。
前記反射電極の材料としては、たとえば、Ag、AlまたはAlNd等のAl合金等が挙げられる。
前記反射電極は、ITO(Indium Tin Oxide:インジウムドープ酸化錫)やIZO(Indium Zinc Oxide:インジウムドープ酸化亜鉛)等の導電性金属酸化物を形成材料とする層と、AgやAl等の金属材料を形成材料とする反射層との積層構造を有していてもよい。
【0095】
前記反射電極を備えるトップエミッション型の有機光電子素子としては、たとえば、下から順に、反射層であるAg/ITOコートガラス基板からなる陽極/本発明の正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/対向電極であるMgAg製の陰極という層構成を有する。
【0096】
本発明の有機光電子素子の好ましい実施形態の一つとしては、たとえば、透明電極と、前記透明電極に対向して設けられた対向電極と、前記透明電極と前記対向電極との間に設けられた発光層と、前記透明電極と前記発光層の間に設けられた電荷輸送層と、前記電荷輸送層と前記透明電極の間に前記透明電極に接する電荷注入層を備えた有機光電子素子が挙げられる。
前記電荷注入層は、前述した本発明の電荷注入層であり、前記含フッ素重合体および前記半導体材料を含み、前記電荷注入層の波長域450nm~800nmにおける屈折率が1.60以下である。
【0097】
前記透明電極は発光層から到達した光を素子の外部へ透過する透明な電極である。
前記透明電極は、陽極であってもよく、陰極であってもよいが、光取出し効率を容易に高める観点から陽極であることが好ましい。
前記透明電極としては、たとえば、ガラス基板の表面にITO等の透明導電層が形成されたITOコートガラス基板が挙げられる。
【0098】
前記透明電極を備えるボトムエミッション型の有機光電子素子としては、たとえば、下から順に、ITOコートガラス基板からなる陽極/本発明の正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/対向電極であるAl製の陰極という層構成を有するものが挙げられる。
【0099】
図1に例示した層構成において、各層の好適な屈折率の関係は、膜内導波光を低減するため隣接する各層の屈折率差を小さくして、プラズモン吸収の抑制の観点から電極と隣接する電荷注入層の屈折率をできるだけ小さくすることが好ましい。
前記の好適な屈折率の各層を配置することにより、図1に例示した有機光電子素子からの光取出し効率を20~30%程度に高めることが容易となる。
【0100】
本発明の有機光電子素子の製造方法は、電荷注入層として前述の本発明の電荷注入層を形成する工程を有する方法であれば特に限定されず、常法を適用することができる。本発明の電荷注入層の製造方法は前述した通りであり、ドライコート法、ウェットコート法のいずれの方法を適用してもよい。
【0101】
本発明の有機光電子素子は、陽極7が、陽極1との間で光を共振させる光共振構造(マイクロキャビティ)を構成していることが好ましい。陽極7と陰極1との間では、発光層4で生じた光が反射を繰り返し、陽極1と陰極7との間の光路長と合致した波長の光が共振して増幅される。一方で、陽極1と陰極7との間の光路長と合致しない波長の光は減衰する。
【0102】
陽極1と陰極7との間の光路長は、たとえば発光層4で生じる光の中心波長の整数倍に設定されている。この場合、発光層4で発せられた光は、中心波長に近いほど増幅され、中心波長から離れるほど減衰して有機EL素子10の外部に射出される。このようにして、有機光電子素子10から射出される光は、発光スペクトルの半値幅が狭く、色純度が向上したものとなる。
【0103】
マイクロキャビティ構造は、陰極および陽極を両端とする固定端反射による共振を利用している。そのため、「発光位置から陽極までの光路長が、素子外部に射出される所望の光の波長λの1/4の整数倍」であり、かつ「発光位置から陰極までの光路長が、素子外部に射出される所望の光の波長λの1/4の整数倍」である場合、所望のマイクロキャビティ構造を形成することができる。
【0104】
<作用効果>
以上説明したように、本発明の電荷注入層は、含フッ素重合体および半導体材料を含み、波長域450nm~800nmにおける屈折率が1.60以下である。この構成を有する本発明の電荷注入層は、半導体材料のみからなる一元系の電荷注入層の屈折率より低い屈折率を有することができる。この結果、有機光電子素子の光取り出し効率が向上する。
【0105】
<本発明の実施方法の例>
以下、本発明の実施方法を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されない。
【0106】
本実施例で合成した含フッ素共重合体の屈折率、分子量、固有粘度および飽和蒸気圧の測定は、以下の記載に従って行った。
【0107】
「含フッ素重合体の屈折率の測定方法」
JIS K 7142に準拠して測定した。
【0108】
「含フッ素重合体の重量平均分子量の測定方法」
含フッ素重合体の重量平均分子量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。まず、分子量既知のPMMA標準試料を、GPCを用いて測定し、ピークトップの溶出時間と分子量から、較正曲線を作成した。ついで、含フッ素重合体を測定し、較正曲線からMwとMnを求めた。移動相溶媒には1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン/ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(体積比で85/15)の混合溶媒を用いた。
【0109】
「含フッ素重合体の固有粘度[η]の測定方法」
含フッ素重合体の固有粘度[η]を測定温度30℃でアサヒクリン(登録商標)AC2000(旭硝子社製)を溶媒として、ウベローデ型粘度計(柴田科学社製:粘度計ウベローデ)により測定した。
【0110】
「含フッ素重合体の蒸発速度および飽和蒸気圧の測定方法」
真空示差熱天秤(アドバンス理工社製:VPE-9000)を用いて300℃における蒸発速度および飽和蒸気圧を測定した。
含フッ素重合体50mgを内径7mmのセルに仕込み、1×10-3Paの真空度にて、毎分2℃で昇温し、300℃における蒸発速度g/m・秒を測定した。飽和蒸気圧の算出には蒸発速度と前記GPC測定でもとめたMwを用いた。
【0111】
本発明の実施方法で作製した電荷注入層に関する各測定、および本実施例で作製した素子の特性評価は、以下の記載に従って行った。
【0112】
「電荷注入層の屈折率の測定方法」
多入射角分光エリプソメトリー(ジェー・エー・ウーラム社製:M-2000U)を用いて、シリコン基板上の膜に対して、光の入射角を45~75度の範囲で5度ずつ変えて測定を行った。それぞれの角度において、波長450~800nmの範囲で約1.6nmおきにエリプソメトリーパラメータであるΨとΔを測定した。前記の測定データを用い、有機半導体の誘電関数をCauchyモデルによりフィッティング解析を行い、各波長の光に対する電荷注入層の屈折率と消衰係数を得た。
【0113】
「導電性評価用素子のJ-V特性の評価」
ソースメータ(Keithley社製:Keithley(登録商標)2401)により、ITO(酸化インジウムスズ)側を陽極、アルミニウム側を陰極として電圧を印加しながら、電圧毎に導電性評価用素子に流れる電流を測定した。
【0114】
以下の含フッ素重合体の製造に使用した単量体、溶剤および重合開始剤の略号は、以下の通りである。
BVE:ペルフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)
1H-PFH:1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン
IPP:ジイソプロピルペルオキシジカーボネート
【0115】
含フッ素重合体Aの合成
BVEの30g、1H-PFHの30g、メタノールの0.5gおよびIPPの0.44gを、内容積50mlのガラス製反応器に入れた。系内を高純度窒素ガスにて置換した後、40℃で24時間重合を行った。得られた溶液を、666Pa(絶対圧)、50℃の条件で脱溶媒を行い、含フッ素重合体の28gを得た。得られた含フッ素重合体の固有粘度[η]は、0.04dl/gであった。
次いで、得られた含フッ素重合体を特開平11-152310号公報の段落[0040]に記載の方法により、フッ素ガスにより不安定末端基を-CF基に置換し、含フッ素重合体Aを得た。
得られた含フッ素重合体Aの波長600nmの光に対する屈折率は1.34、固有粘度[η]は、0.04dl/gであった。含フッ素重合体AのMwは9,000、Mnは6,000、Mw/Mnは1.5、300℃における飽和蒸気圧は0.002Pa、300℃における蒸発速度0.08g/msecであった。
【0116】
[実施例1~3および比較例1~3]
≪光学計算による効果の検証≫
電荷注入層(正孔注入層2)が含フッ素重合体を含むことで低屈折率となることで、光取出し効率が向上する効果を検証するため、Setfos4.6(サイバーネット社製)を用いてシミュレーションした。
≪トップエミッション型有機EL素子における光学計算≫
【0117】
基板としてガラス(厚み1mm)、陽極1としてAg(厚み100nm)、正孔注入層2として下記のもの、正孔輸送層3としてα-NPD(厚み60nm)、発光層4としてIr(ppy)(発光ゲスト)とCBP(厚み20nm)(発光ホスト)、電子輸送層5としてAlq、電子注入層6としてLiF(厚み1nm)、および陰極7としてAg(厚み10nm)を順次積層し、図1に示した積層構造1を有するトップエミッション型有機EL素子にて光学計算を実施した。
実施例1~3では、正孔注入層2として、低屈折率正孔注入層(波長550nmにおける屈折率が1.56である正孔注入層)を用いた。実施例1~3の膜厚をそれぞれ10nm、35nm、60nmとした。
一方、比較例1~3では、正孔注入層2として、HAT-CN正孔注入層(波長550nmにおける屈折率が1.79である正孔注入層)を用いた。比較例1~3の膜厚をそれぞれ10nm、35nm、60nmとした。
正孔注入層2の膜厚が10nm、35nm、60nmの3条件において、電子輸送層5の膜厚を50nm~250nmの範囲で30nm間隔で掃引し、正孔輸送層3の膜厚を10nm~300nmの範囲で30nm間隔で掃引し、正孔輸送層13の薄膜側(1次共振)と厚膜側(2次共振)において光取出し効率が最大となる条件を算出した。解析の結果を、表1および図2および図3に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
正孔注入層2の各膜厚(10nm、35nm、60nm)において、1次共振の光取出し効率、2次共振の光取出し効率をそれぞれ比較すると、正孔注入層2の屈折率が低い、実施例1~3の方が比較例1~3よりも光取出し効率が高いことが確認された。特に、実施例3の1次共振の構成(低屈折率正孔注入層が厚く、正孔輸送層が薄い構成)において、顕著な光取出し効率の向上が確認された。
【0120】
[実施例4~6および比較例4~6]
≪ボトムエミッション型有機EL素子における光学計算≫
基板としてガラス(厚み1mm)、陽極1としてITO(厚み100nm)、正孔注入層2として下記のもの、正孔輸送層3としてα-NPD(厚み30nm)、発光層4としてIr(ppy)(発光ゲスト)とCBP(厚み30nm)(発光ホスト)、電子輸送層5としてTPBi、電子注入層6としてLiF(厚み0.8nm)、および陰極7としてAl(厚み100nm)を順次積層し、図1に示した積層構造1を有するボトムエミッション型有機EL素子にて光学計算を実施した。
実施例4~6では、実施例1~3と同じ設定を用い、低屈折率正孔注入層(波長550nmにおける屈折率が1.56である正孔注入層)を正孔注入層2とした。実施例4~6の膜厚をそれぞれ10nm、35nm、60nmとした。
一方、比較例4~6では、比較例1~3と同じ設定を用いて、HAT-CN正孔注入層(波長550nmにおける屈折率が1.79である正孔注入層)を正孔注入層2とした。比較例4~6の膜厚をそれぞれ10nm、35nm、60nmとした。
正孔注入層2の膜厚が10nm、35nm、60nmの3条件において、電子輸送層5の膜厚と、正孔輸送層3の膜厚を10nm~100nmの範囲で5nm間隔で掃引し、光取出し効率が最大となる条件を算出した。解析の結果を、表2および図4に示す。
【0121】
【表2】
【0122】
正孔注入層2の各膜厚(10nm、35nm、60nm)において、光取出し効率を比較すると、正孔注入層2の屈折率が低い、実施例4~6の方が比較例4~6よりも光取出し効率が高いことが確認された。特に、実施例5、6の低屈折率正孔注入層が厚く、正孔輸送層が薄い構成において、顕著な光取出し効率の向上が確認された。
【0123】
[実施例7]
≪導電性評価用素子の作製≫
評価用の有機EL素子を作製するための基板として、2mm幅の帯状にITO(酸化インジウムスズ)が成膜されたガラス基板を用いた。その基板を中性洗剤、アセトン、イソプロピルアルコールを用いて超音波洗浄し、さらにイソプロピルアルコール中で煮沸洗浄した上で、オゾン処理によりITO膜表面の付着物を除去した。この基板を真空蒸着機内に置き、圧力10-4Pa以下に真空引きした上で、HAT-CNと含フッ素重合体Aを、HAT-CNと含フッ素重合体Aの体積比が50:50となるように、真空蒸着機内で抵抗加熱し、共蒸着を行うことで、正孔注入層として基板上に10nm成膜した。2つの材料の合計の蒸着速度は0.2nm/sとした。その後、α-NPDを真空蒸着機内で抵抗加熱し、蒸着速度0.1nm/sで正孔輸送層を100nm積層した。さらに、アルミニウムを抵抗加熱で2mm幅の帯状に蒸着し、導電性評価用素子を得た。2mm幅のITOと2mm幅のアルミニウムが交差した2mm×2mmが素子面積となる。
[比較例7]
含フッ素重合体Aを用いないで、HAT-CNのみを正孔注入層として基板上に10nm蒸着した以外は実施例7と同様にして、電荷注入層および導電性評価用素子を作製した。
【0124】
実施例7および比較例7の導電性評価用素子のJ-V特性を図5に示す。電流密度10mA/cmとなる電界値(電圧を膜厚で割った値)が、比較例7では0.31MV・cmだったが、実施例7では0.27MV/cmと低電圧化していた。驚くべきことに、電荷注入層に含フッ素重合体を混合することで、導電性向上の効果が確認された。
【0125】
[実施例8]
≪屈折率測定用素子の作製≫
約2cm角程度にカットしたシリコン基板を、それぞれ中性洗剤、アセトン、イソプロパノールを用いて超音波洗浄し、さらにイソプロパノール中で煮沸洗浄した上で、オゾン処理により基板表面の付着物を除去した。この基板をそれぞれ真空蒸着機内に置き、圧力10-4Pa以下に真空引きした上で、HAT-CNと含フッ素重合体Aとを、体積比率が50:50になるように、真空蒸着機内で抵抗加熱し、共蒸着を行うことで厚み約100nmの正孔注入層を基板上に作製した。得られた正孔注入層の波長600nmの光に対する屈折率は1.55であった。
[比較例8]
含フッ素重合体Aを用いないで、HAT-CNのみを基板上に100nm蒸着した以外は実施例8と同様にして、電荷注入層および導電性評価用素子を作製した。得られた正孔注入層の波長600nmの光に対する屈折率は1.78であった。
【0126】
実施例8および比較例8より、HAT-CNと含フッ素重合体Aとを、体積比率が50:50になるように共蒸着することで、屈折率が1.78から1.55まで低下することが確認された。
【0127】
以上より、本実施例の電荷注入層を用いると有機ELデバイスの光取り出し効率を向上させることができ、さらに正孔導電性も向上することから、低消費電力や長寿命化が期待され、産業上、非常に有益である。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の電荷注入層およびこれを備えた素子は、種々の電子機器の操作パネルや情報表示パネルに好適に用いられるほか、屈折率がデバイス特性に影響する各種の有機光電子デバイスにも好適に用いられる。
なお、2017年08月24日に出願された日本特許出願2017-161640号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0129】
1 陽極
2 正孔注入層
3 正孔輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 電子注入層
7 陰極
10 有機光電子素子
図1
図2
図3
図4
図5