(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】光検出素子
(51)【国際特許分類】
H01L 51/42 20060101AFI20220527BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20220527BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
H01L31/08 T
H01L27/146 E
G06T1/00 400G
(21)【出願番号】P 2018145298
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェララ ジョバンニ
(72)【発明者】
【氏名】清家 崇広
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/115646(WO,A1)
【文献】特開2012-015390(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0202517(US,A1)
【文献】国際公開第2018/131638(WO,A1)
【文献】NG, T. N. et al.,Flexible image sensor array with bulk heterojunction organic photodiode,APPLIED PHYSICS LETTERS,2008年05月28日,Vol.92,pp.213303-1 - 213303-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42-51/48
H01L 27/146、27/30
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられかつp型半導体材料およびn型半導体材料を含む活性層とを含む、光検出素子において、
前記活性層の厚さが、800nm以上であり、
活性層の陰極側表面と接する面の仕事関数から前記n型半導体材料のLUMOの絶対値を減じた値が、0.0~0.5eVである、
光検出素子。
【請求項2】
前記n型半導体材料が、2.0~10.0eVのLUMOの絶対値を有する、請求項1に記載の光検出素子。
【請求項3】
前記n型半導体材料が、フラーレン誘導体である、請求項1または2に記載の光検出素子。
【請求項4】
前記フラーレン誘導体が、C60PCBM、bisC60PCBM、C70IPH、またはC70PCBMである、請求項3に記載の光検出素子。
【請求項5】
活性層の陰極側表面と接する面の仕事関数が、2.0~10.0eVである、請求項1~4のいずれか1項に記載の光検出素子。
【請求項6】
陰極と活性層との間に電子輸送層を含み、
活性層は電子輸送層に接するように設けられており、活性層の陰極側表面と接する面が、電子輸送層の面である、請求項1~5のいずれか1項に記載の光検出素子。
【請求項7】
電子輸送層が、金属酸化物、金属水酸化物または金属アルコキシドを含む、請求項6に記載の光検出素子。
【請求項8】
電子輸送層が、亜鉛もしくはチタンを含む金属酸化物、亜鉛もしくはチタンを含む金属水酸化物、または亜鉛もしくはチタンを含む金属アルコキシドを含む、請求項7に記載の光検出素子。
【請求項9】
電子輸送層が、アルキレン構造を有する化合物を含む、請求項6に記載の光検出素子。
【請求項10】
アルキレン構造を有する化合物が、ポリアルキレンイミンまたはその誘導体である、請求項9に記載の光検出素子。
【請求項11】
ポリアルキレンイミンまたはその誘導体が、ポリエチレンイミンまたはその誘導体である、請求項10に記載の光検出素子。
【請求項12】
陰極と活性層とが、直接接触し、活性層の陰極側表面と接する面が、陰極の面である、請求項1~5のいずれか1項に記載の光検出素子。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の光検出素子を含む、イメージセンサー。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の光検出素子を含む指紋検出部を備える、指紋認証装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、特に光検出素子、イメージセンサー、および指紋認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は、例えば、省エネルギー、二酸化炭素の排出量の低減の観点から極めて有用なデバイスであり、注目されている。
【0003】
光電変換素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に設けられる活性層とを少なくとも備える。光電変換素子では、いずれかの電極を透明または半透明の材料から構成し、透明または半透明とした電極側から活性層に光を入射させる。活性層に入射した光のエネルギー(hν)によって、活性層において電荷(正孔および電子)が生成し、生成した正孔は陽極に向かって移動し、電子は陰極に向かって移動する。そして、陽極および陰極に到達した電荷は、電極を介して光電変換素子の外部に取り出される。
【0004】
光電変換素子のうち、特に光検出素子は、イメージセンサー、種々の生体認証装置などに用いられており、用途に応じて高い検出感度特性が求められ、近年、種々の研究がなされている。
【0005】
光電変換素子を光検出素子として用いる場合、光検出素子として高い検出感度特性を得るために、暗電流(光が照射されていない状態であっても生じてしまう電流)を低減し、かつ外部量子効率(EQE)を向上させることが要求される。
【0006】
光検出素子において、活性層の厚さ(膜厚)を厚くすることにより暗電流を低減させることができることが、報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Adv.Funct.Mater.2010,20,3895-3903
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高い検出感度特性を得るために、暗電流が低減され、かつ外部量子効率が向上した光検出素子が求められている。しかし従来から、光検出素子において活性層の厚さを厚くすると外部量子効率が低下する傾向が見られ、そのために、暗電流および外部量子効率の良好な特性が両立した光検出素子を得ることが困難であるという課題が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を進めたところ、光検出素子における活性層の陰極側表面と接する面の仕事関数(WF)から活性層中のn型半導体の非占有最低軌道準位(LUMO)の絶対値を減じた値を所定の範囲とした場合に、活性層の厚さを厚くしても高い外部量子効率を維持することができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記[1]~[14]を提供する。
[1] 陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられかつp型半導体材料およびn型半導体材料を含む活性層とを含む、光検出素子において、
前記活性層の厚さが、800nm以上であり、
活性層の陰極側表面と接する面の仕事関数から前記n型半導体材料のLUMOの絶対値を減じた値が、0.0~0.5eVである、
光検出素子。
[2] 前記n型半導体材料が、2.0~10.0eVのLUMOの絶対値を有する、[1]に記載の光検出素子。
[3] 前記n型半導体材料が、フラーレン誘導体である、[1]または[2]に記載の光検出素子。
[4] 前記フラーレン誘導体が、C60PCBM、bisC60PCBM、C70IPH、またはC70PCBMである、[3]に記載の光検出素子。
[5] 活性層の陰極側表面と接する面の仕事関数が、2.0~10.0eVである、[1]~[4]のいずれか1つに記載の光検出素子。
[6] 陰極と活性層との間に電子輸送層を含み、活性層の陰極側表面と接する面が、電子輸送層の面である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の光検出素子。
[7] 電子輸送層が、金属酸化物、金属水酸化物または金属アルコキシドを含む、[6]に記載の光検出素子。
[8] 電子輸送層が、亜鉛もしくはチタンを含む金属酸化物、亜鉛もしくはチタンを含む金属水酸化物、または亜鉛もしくはチタンを含む金属アルコキシドを含む、[7]に記載の光検出素子。
[9] 電子輸送層が、アルキレン構造を有する化合物を含む、[6]に記載の光検出素子。
[10] アルキレン構造を有する化合物が、ポリアルキレンイミンまたはその誘導体である、[9]に記載の光検出素子。
[11] ポリアルキレンイミンまたはその誘導体が、ポリエチレンイミンまたはその誘導体である、[10]に記載の光検出素子。
[12] 陰極と活性層とが、直接接触し、活性層の陰極側表面と接する面が、陰極の面である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の光検出素子。
[13] [1]~[12]のいずれか1つに記載の光検出素子を含む、イメージセンサー。
[14] [1]~[12]のいずれか1つに記載の光検出素子を含む指紋検出部を備える、指紋認証装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、暗電流が低減し、かつ外部量子効率が向上した光検出素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、光電変換素子(光検出素子)を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、イメージ検出部の構成例を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、指紋検出部の構成例を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、活性層に含まれるn型半導体としてC60PCBMを、電子輸送層として電子輸送層1を用いて製造した光検出素子(実施例1~7、48、比較例1)の活性層の厚さと外部量子効率(EQE)および暗電流(Jd)の関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、活性層に含まれるn型半導体としてC60PCBMを、電子輸送層として電子輸送層2を用いて製造した光検出素子(実施例8、9、比較例3)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、活性層に含まれるn型半導体としてC60PCBMを、電子輸送層として電子輸送層3を用いて製造した光検出素子(実施例10~13、比較例4)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、活性層に含まれるn型半導体としてC60PCBMを、電子輸送層として電子輸送層4を用いて製造した光検出素子(実施例14~16、比較例5)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、活性層に含まれるn型半導体としてC60PCBMを、電子輸送層として電子輸送層5を用いて製造した光検出素子(実施例17~20)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、活性層に含まれるn型半導体としてC60PCBMを、電子輸送層として電子輸送層6を用いて製造した光検出素子(実施例21、22)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、活性層に含まれるn型半導体としてC60PCBMを用い、電子輸送層なしで製造した光検出素子(実施例23~25、比較例6)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図11】
図11は、活性層に含まれるn型半導体としてC60PCBMを、電子輸送層として電子輸送層7を用いて製造した光検出素子(比較例7~10)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図12】
図12は、活性層に含まれるn型半導体としてC60PCBMを、電子輸送層として電子輸送層8を用いて製造した光検出素子(比較例11~13)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図13】
図13は、活性層に含まれるn型半導体としてbis-C60PCBMを、電子輸送層として電子輸送層7を用いて製造した光検出素子(実施例26、27、比較例14)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図14】
図14は、活性層に含まれるn型半導体としてbis-C60PCBMを、電子輸送層として電子輸送層8を用いて製造した光検出素子(実施例28、29、比較例15)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図15】
図15は、活性層に含まれるn型半導体としてbis-C60PCBMを、電子輸送層として電子輸送層1を用いて製造した光検出素子(実施例30、31、比較例16)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図16】
図16は、活性層に含まれるn型半導体としてbis-C60PCBMを、電子輸送層として電子輸送層2を用いて製造した光検出素子(実施例32~34、比較例17)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図17】
図17は、活性層に含まれるn型半導体としてC70IPHを、電子輸送層として電子輸送層1を用いて製造した光検出素子(実施例35、36)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図18】
図18は、活性層に含まれるn型半導体としてC70IPHを、電子輸送層として電子輸送層2を用いて製造した光検出素子(実施例37、38)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図19】
図19は、活性層に含まれるn型半導体としてC70IPHを用い、電子輸送層なしで製造した光検出素子(実施例39~41)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図20】
図20は、活性層に含まれるn型半導体としてC70IPHを、電子輸送層として電子輸送層7を用いて製造した光検出素子(比較例18~20)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図21】
図21は、活性層に含まれるn型半導体としてC70IPHを、電子輸送層として電子輸送層8を用いて製造した光検出素子(比較例21~23)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図22】
図22は、活性層に含まれるn型半導体としてC70PCBMを、電子輸送層として電子輸送層1を用いて製造した光検出素子(実施例42、43、比較例24)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図23】
図23は、活性層に含まれるn型半導体としてC70PCBMを、電子輸送層として電子輸送層2を用いて製造した光検出素子(実施例44、45、比較例25)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図24】
図24は、活性層に含まれるn型半導体としてC70IPHを用い、電子輸送層なしで製造した光検出素子(実施例46、47、比較例26)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図25】
図25は、活性層に含まれるn型半導体としてC70PCBMを、電子輸送層として電子輸送層7を用いて製造した光検出素子(比較例27~29)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【
図26】
図26は、活性層に含まれるn型半導体としてC70PCBMを、電子輸送層として電子輸送層8を用いて製造した光検出素子(比較例2、30~32)の活性層の厚さとEQEおよびJdの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態にかかる光電変換素子について説明する。なお、図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさおよび配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本発明の実施形態にかかる構成は、必ずしも図面に示された配置で、製造されたり、使用されたりするとは限らない。以下に説明する各図において、同一の構成要素については同一の符合を付して、その説明を省略する場合がある。
【0013】
ここでまず、以下の説明において共通して用いられる用語について説明する。
【0014】
「高分子化合物」とは、分子量分布を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が、1×103以上1×108以下である重合体を意味する。高分子化合物に含まれる構成単位は、合計100モル%である。
【0015】
「構成単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位を意味する。
【0016】
「水素原子」は、軽水素原子であっても、重水素原子であってもよい。
【0017】
「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子を包含する。
【0018】
「置換基を有していてもよい」とは、その化合物または基を構成するすべての水素原子が無置換の場合、および1個以上の水素原子の一部または全部が置換基によって置換されている場合の両方の態様を含む。
【0019】
「アルキル基」は、別に断らない限り、直鎖状、分岐状、および環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~20である。分岐状または環状であるアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。
【0020】
アルキル基は、置換基を有していてもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、2-エチルブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-n-プロピルヘプチル基、アダマンチル基、n-デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-エチルオクチル基、2-n-ヘキシル-デシル基、n-ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基、エイコシル基等のアルキル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、3-フェニルプロピル基、3-(4-メチルフェニル)プロピル基、3-(3,5-ジ-n-ヘキシルフェニル)プロピル基、6-エチルオキシヘキシル基等の置換基を有するアルキル基が挙げられる。
【0021】
「アリール基」は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。
【0022】
アリール基は、置換基を有していてもよい。アリール基の具体例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基、2-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、4-フェニルフェニル基、およびアルキル基、アルコキシ基、アリール基、フッ素原子等の置換基を有する基が挙げられる。
【0023】
「アルコキシ基」は、直鎖状、分岐状、および環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~40であり、好ましくは1~10である。分岐状または環状のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
【0024】
アルコキシ基は、置換基を有していてもよい。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、およびラウリルオキシ基が挙げられる。
【0025】
「アリールオキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
【0026】
アリールオキシ基は、置換基を有していてもよい。アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントラセニルオキシ基、9-アントラセニルオキシ基、1-ピレニルオキシ基、およびアルキル基、アルコキシ基、フッ素原子等の置換基を有する基が挙げられる。
【0027】
「アルキルチオ基」は、直鎖状、分岐状、および環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~40であり、好ましくは1~10である。分岐状および環状のアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
【0028】
アルキルチオ基は、置換基を有していてもよい。アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7-ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基、およびトリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0029】
「アリールチオ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
【0030】
アリールチオ基は、置換基を有していてもよい。アリールチオ基の例としては、フェニルチオ基、C1~C12アルキルオキシフェニルチオ基(ここで「C1~C12」は、その直後に記載された基の炭素原子数が1~12であることを示す。以下も同様である。)、C1~C12アルキルフェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、2-ナフチルチオ基、およびペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。
【0031】
「p価の複素環基」(pは、1以上の整数を表す。)とは、置換基を有していてもよい複素環式化合物から、環を構成する炭素原子またはヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。p価の複素環基の中でも、「p価の芳香族複素環基」が好ましい。「p価の芳香族複素環基」は、置換基を有していてもよい芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子またはヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。
【0032】
複素環式化合物が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、およびニトロ基が挙げられる。
【0033】
芳香族複素環式化合物には、複素環自体が芳香族性を示す化合物に加えて、複素環自体は芳香族性を示さなくとも、複素環に芳香環が縮環している化合物が包含される。
【0034】
芳香族複素環式化合物のうち、複素環自体が芳香族性を示す化合物の具体例としては、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、およびジベンゾホスホールが挙げられる。
【0035】
芳香族複素環式化合物のうち、芳香族複素環自体が芳香族性を示さず、複素環に芳香環が縮環している化合物の具体例としては、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、およびベンゾピランが挙げられる。
【0036】
1価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、2~60であり、好ましくは4~20である。
【0037】
1価の複素環基は、置換基を有していてもよく、1価の複素環基の具体例としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、およびアルキル基、アルコキシ基等の置換基を有する基が挙げられる。
【0038】
「置換アミノ基」とは、置換基を有するアミノ基を意味する。アミノ基が有する置換基の例としては、アルキル基、アリール基、および1価の複素環基が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アリール基、または1価の複素環基が好ましい。置換アミノ基の炭素原子数は、通常2~30である。
【0039】
置換アミノ基の例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ基等のジアリールアミノ基が挙げられる。
【0040】
「アシル基」は、炭素原子数が通常2~20程度であり、好ましくは炭素原子数が2~18である。アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、およびペンタフルオロベンゾイル基が挙げられる。
【0041】
「イミン残基」とは、イミン化合物から、炭素原子-窒素原子二重結合を構成する炭素原子または窒素原子に直接結合する水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。「イミン化合物」とは、分子内に、炭素原子-窒素原子二重結合を有する有機化合物を意味する。イミン化合物の例として、アルジミン、ケチミン、およびアルジミン中の炭素原子-窒素原子二重結合を構成する窒素原子に結合している水素原子が、アルキル基等で置換された化合物が挙げられる。
【0042】
イミン残基は、通常、炭素原子数が2~20程度であり、好ましくは炭素原子数が2~18である。イミン残基の例としては、下記の構造式で表される基が挙げられる。
【0043】
【0044】
「アミド基」は、アミドから窒素原子に結合した水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。アミド基の炭素原子数は、通常1~20程度であり、好ましくは1~18である。アミド基の具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、およびジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
【0045】
「酸イミド基」とは、酸イミドから窒素原子に結合した水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。酸イミド基の炭素原子数は、通常、4~20程度である。酸イミド基の具体例としては、下記の構造式で表される基が挙げられる。
【0046】
【0047】
「置換オキシカルボニル基」とは、R’-O-(C=O)-で表される基を意味する。ここで、R’は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、または1価の複素環基を表す。
【0048】
置換オキシカルボニル基は、炭素原子数が通常2~60程度であり、好ましくは炭素原子数が2~48である。
【0049】
置換オキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、3,7-ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、およびピリジルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0050】
「アルケニル基」は、直鎖状、分岐状、および環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~30であり、好ましくは3~20である。分岐状または環状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは4~20である。
【0051】
アルケニル基は、置換基を有していてもよい。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、7-オクテニル基、およびアルキル基、アルコキシ基等の置換基を有する基が挙げられる。
【0052】
「アルキニル基」は、直鎖状、分岐状、および環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~20であり、好ましくは3~20である。分岐状または環状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常4~30であり、好ましくは4~20である。
【0053】
アルキニル基は置換基を有していてもよい。アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、およびアルキル基、アルコキシ基等の置換基を有する基が挙げられる。
【0054】
[1.光検出素子]
本実施形態にかかる光検出素子(光電変換素子)は、陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられかつp型半導体材料およびn型半導体材料を含む活性層とを含み、活性層の厚さが、800nm以上であり、活性層の陰極側表面と接する面の仕事関数から前記n型半導体材料のLUMOの絶対値を減じた値が、0.0~0.5eVである。
【0055】
ここで、「LUMO」(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)とは、最低空軌道を意味している。
【0056】
n型半導体材料のLUMO準位は、サイクリックボルタンメトリー(CV)の測定値から見積もることができる。LUMO準位の評価にかかるCV測定は、例えば、Advanced Materials、18巻、2006年、789頁~794頁に記載の方法に従って行うことができる。
【0057】
<光電変換素子(光検出素子)の構成例>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態にかかる光電変換素子(光検出素子)について説明する。なお、図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさおよび配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本発明の実施形態にかかる構成は、必ずしも図面に示された配置で、製造されたり、使用されたりするとは限らない。以下に説明する各図において、同一の構成要素については同一の符合を付して、その説明を省略する場合がある。
【0058】
図1を参照して、本実施形態の光電変換素子(光検出素子)が取り得る構成例について説明する。なお、ここでは、いわゆる逆積層構造の光電変換素子(光検出素子)の構成例について説明する。
【0059】
本発明の実施形態にかかる光検出素子は、電子輸送層を含んでいても含んでいなくてもよい。電子輸送層を含む場合の本発明の実施形態にかかる光検出素子は、例えば、
図1に模式的に示される構成を有してもよい。
図1において、本実施形態の光検出素子10は、例えば、支持基板11上に設けられている。光検出素子10は、支持基板11に接するように設けられている陰極12と、陰極12に接するように設けられている電子輸送層13と、電子輸送層13に接するように設けられている活性層14と、活性層14に接するように設けられている正孔輸送層15と、正孔輸送層15に接するように設けられている陽極16とを備えている。この構成例では、陽極に接するように設けられている封止基板17をさらに備えている。電子輸送層を含まない場合の本発明の実施形態にかかる光検出素子は、例えば、
図1において、電子輸送層13が存在せず、陰極12と活性層14とが接する構成を有してもよい。
【0060】
以下、本実施形態の光検出素子に含まれ得る構成要素について具体的に説明する。
【0061】
(基板)
光検出素子は、通常、基板(支持基板または封止基板)上に形成される。この基板には、通常、陰極および陽極からなる一対の電極が形成される。基板の材料は、特に有機化合物を含む層を形成する際に化学的に変化しない材料であれば特に限定されない。
【0062】
基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコンが挙げられる。不透明な基板の場合には、不透明な基板側に設けられる電極とは反対側の電極(すなわち、不透明な基板から遠い側の電極)が透明または半透明の電極とされることが好ましい。
【0063】
(電極)
光検出素子は、一対の電極である陽極および陰極を含んでいる。陽極および陰極のうち、少なくとも一方の電極は、光を入射させるために、透明または半透明の電極とすることが好ましい。
【0064】
透明または半透明の電極の材料としては、例えば、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。電極の材料としては、具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、およびそれらの複合体であるインジウムスズオキサイド(ITO)、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)、NESA等の導電性材料、金、白金、銀、銅が挙げられる。透明または半透明の電極の材料としては、ITO、IZO、酸化スズが好ましい。また、電極として、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体等の有機化合物が材料として用いられる透明導電膜を用いてもよい。透明または半透明の電極は、陽極であっても陰極であってもよい。
【0065】
一対の電極のうちの一方の電極が透明または半透明であれば、他方の電極は光透過性の低い電極であってもよい。光透過性の低い電極の材料としては、例えば、金属、および導電性高分子が挙げられる。光透過性の低い電極の材料の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、およびこれらのうちの2種以上の合金、または、これらのうちの1種以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステンおよび錫からなる群から選ばれる1種以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体が挙げられる。合金としては、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、マグネシウム-アルミニウム合金、インジウム-銀合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金、およびカルシウム-アルミニウム合金が挙げられる。
【0066】
電極の形成方法としては、従来公知の任意好適な形成方法を用いることができる。電極の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スリットコート法やスピンコート法等の塗布法、およびめっき法が挙げられる。
【0067】
(陰極)
陰極は、通常、基板(例、支持基板または封止基板、好ましくは支持基板)上に形成されてもよい。陰極は、透明または半透明の電極であっても、光透過性の低い電極であってもよい。光検出素子を光透過性とする必要がある場合は、陰極は、透明または半透明の電極であることが好ましい。陰極が透明または半透明の電極である場合、陰極の材料としては、上述した透明または半透明の電極の材料が挙げられる。陰極が光透過性の低い電極である場合、陰極の材料としては、上述した光透過性の低い電極の材料が挙げられる。
【0068】
陰極の形成方法としては、例えば、上述した電極の形成方法が挙げられる。
【0069】
陰極の厚さは、特に限定されないが、例えば1000~1nmであってもよく、光のエネルギーを電気エネルギーとして取り出す場合、十分に低い電気抵抗が求められているため、陰極の厚さは、好ましくは500~100nmであってもよく、特に光検出器に用いる場合、電気抵抗よりも高い透過率が必要であるため、陰極の厚さは、より好ましくは200~5nmであってもよい。
【0070】
陰極形成後に、後述する活性層の陰極側表面と接する面の仕事関数を適正な値とするために、基板上の陰極に対し表面処理を行なっても行なわなくてもよい。光検出素子が後述する電子輸送層を含む場合、陰極形成後に、基板上の陰極に対し表面処理を行なっても行なわなくてもよく、表面処理を行なうのが好ましい。光検出素子が後述する電子輸送層を含まない場合(例えば、陰極と後述する活性層が直接接触する場合)、陰極形成後に、基板上の陰極に対し表面処理を行なっても行なわなくてもよく、表面処理を行なわないのが好ましい。表面処理としては、構造に対し、コロナ放電処理、酸素プラズマ処理、紫外線オゾン処理などの物理的処理や、水や有機溶剤を用いた洗浄処理、酸洗浄処理等の化学的処理等、従来公知の任意好適な表面処理を用いることができる。
【0071】
(陽極)
陽極の材料および形成方法は、電極について上述したものを採用してもよい。
【0072】
(活性層)
活性層は、p型半導体材料(電子供与性化合物)とn型半導体材料(電子受容性化合物)とを含む(好適なp型半導体材料およびn型半導体材料の詳細については後述する。)。p型半導体材料およびn型半導体材料のうちのいずれであるかは、選択された化合物のHOMOのエネルギーレベルまたはLUMOのエネルギーレベルから相対的に決定することができる。
【0073】
本実施形態においては、暗電流を低減させる観点から、活性層の厚さは、より厚いことが好ましい。また、本実施形態においては、活性層の厚さがより厚くなることにより外部量子効率が低下する傾向を示す従来技術とは異なり、活性層の厚さがより厚くなっても外部量子効率は低下しない特徴が示される。したがって、活性層の厚さは、低い暗電流および高い外部量子効率による高い感度特性を得る観点から、より厚いことが好ましい。活性層の厚さは、800nm以上であり、好ましくは800nm以上10000nm以下であり、塗布膜乾燥後に平滑な膜を得るために、より好ましくは800nm以上3500nm以下であってもよい。
【0074】
ここで、「外部量子効率(EQE)」とは、具体的には、光検出素子に吸収された光子の数に対して発生した電子のうち光検出素子の外部に取り出すことができた電子の数を比率(%)で示した値を意味している。
【0075】
光検出素子の外部量子効率(EQE)は、例えば、次の方法で評価することができる。光検出素子にの電圧(例、-2V)を引加した状態で、分光感度測定装置を用いて、特定の波長の光(例、高分子化合物P-1の最大吸収波長である波長850nmの光、光子数:1.0×1016)を光検出素子に照射し、発生した電流の電流値を測定し、
式 EQE(%)=(S×1240/λ)×100
S:受光感度(A/W)、λ:波長(nm)
によりEQEの測定値を求めることができる。
【0076】
活性層は、好ましくは、塗布法により形成することができる。活性層に含まれ得るp型半導体材料およびn型半導体材料、活性層の形成方法の詳細については後述する。
【0077】
(電子輸送層)
本実施形態の光検出素子は、特性を向上させるための構成要素である中間層として電子輸送層を、
図1に示されるように陰極と活性層との間に含んでいてもよく、あるいは、電子輸送層を含んでいなくてもよい。本実施形態の光検出素子が電子輸送層を含まない場合、陰極と活性層は、直接接触してもよい。
【0078】
電子輸送層は、電子輸送性材料を含む。電子輸送性材料としては、光検出素子を構成する層中の電子の移動に寄与する任意好適な材料、仕事関数を調節(例、低下または増大、好ましくは低下)する任意好適な材料が挙げられる。電子輸送性材料としては、例えば金属化合物およびアルキレン構造を有する化合物が挙げられる。
【0079】
金属化合物の例としては、金属酸化物、金属水酸化物および金属アルコキシドが挙げられる。金属化合物は、好ましくは二価以上の金属を含む、金属酸化物、金属水酸化物または金属アルコキシド、より好ましくは亜鉛もしくはチタンを含む、金属酸化物、金属水酸化物または金属アルコキシドであってもよい。金属アルコキシドの例としては、金属メトキシド、金属エトキシド、金属プロポキシド、金属イソプロポキシド、金属n-ブトキシド、金属sec-ブトキシド、金属イソブトキシド、金属tert-ブトキシドが挙げられる。
【0080】
金属酸化物の例としては、酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化チタンおよび酸化ニオブが挙げられる。金属酸化物としては、亜鉛を含む金属酸化物が好ましく、中でも酸化亜鉛が好ましい。
【0081】
金属水酸化物の例としては、水酸化亜鉛、水酸化チタンおよび水酸化ニオブが挙げられる。金属水酸化物としては、亜鉛またはチタンを含む金属水酸化物が好ましく、中でも水酸化チタンが好ましい。
【0082】
金属アルコキシドとしては、チタンを含む金属アルコキシドが好ましく、中でもチタニウム(IV)イソプロポキシドが好ましい。
【0083】
アルキレン構造を有する化合物の例としては、ポリアルキレンイミンおよびその誘導体が挙げられる。ポリアルキレンイミンおよびその誘導体の例としては、エチレンイミン、プロピレンイミン、ブチレンイミン、ジメチルエチレンイミン、ペンチレンイミン、ヘキシレンイミン、ヘプチレンイミン、オクチレンイミンといった炭素原子数2~8のアルキレンイミン、特に炭素原子数2~4のアルキレンイミンの1種または2種以上を常法により重合して得られるポリマー、ならびにそれらを種々の化合物と反応させて化学的に変性させたポリマーが挙げられる。ポリアルキレンイミンおよびその誘導体としては、ポリエチレンイミン(PEI)およびポリアルキレンイミンを主鎖として含み、エチレンオキシドが主鎖中の窒素原子に付加した変性体であるポリエチレンイミンエトキシレート(PEIE:エトキシ化ポリエチレンイミン)が好ましい。
【0084】
電子輸送性材料は、真空成膜法により、あるいは、液体の形態(電子輸送層形成用塗布液)として基板上の陰極上に塗布することにより形成されてもよい。電子輸送層形成用塗布液は、溶液、エマルション(乳濁液)、サスペンション(懸濁液)、または分散液であってもよい。電子輸送層形成用塗布液中で、電子輸送性材料は、微粒子またはナノ粒子であってもよい。電子輸送性材料を溶解、乳濁、懸濁、分散、または希釈するための媒質(以下、まとめて「溶媒」と呼ぶ)としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン等の炭化水素溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル溶媒;水、アルコール等が挙げられる。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブトキシエタノール、メトキシブタノール等が挙げられる。塗布液は、1種類単独の溶媒を含んでいてもよく、2種類以上の溶媒を含んでいてもよく、上記溶媒を2種類以上含んでいてもよい。
【0085】
電子輸送層形成用塗布液の塗布法としては、任意好適な塗布法を用いることができる。塗布法としては、スリットコート法、ナイフコーター法、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、インクジェット印刷法、ノズルコート法、またはキャピラリーコート法が好ましく、スリットコート法、ナイフコーター法、スピンコート法、キャピラリーコート法、またはバーコート法がより好ましく、スリットコート法、ナイフコーター法、またはスピンコート法がさらに好ましい。
【0086】
電子輸送層形成用塗布液の塗布後、電子輸送層形成用塗布液の塗布液の塗膜から溶媒を除去(乾燥)することにより電子輸送層を形成させることができる。塗布液の塗膜から、溶媒を除去する方法、すなわち塗膜から溶媒を除去して固化する方法としては、任意好適な方法を用いることができる。溶媒を除去する方法の例としては、ホットプレートを用いて直接的に加熱する方法(例、40℃~300℃で1分間~60分間加熱)、熱風乾燥法、赤外線加熱乾燥法、フラッシュランプアニール乾燥法、減圧乾燥法などの乾燥法が挙げられる。
【0087】
電子輸送層の厚さは、電子輸送層形成用塗布液中の固形分濃度、塗布および/または溶媒除去の条件を適宜調整することにより、所望の厚さとすることができる。
【0088】
具体的には、例えば、塗布法がナイフコーター法である場合には、用いられる塗布液中の成分の濃度(塗布液の粘度)といった塗布液の特性条件、およびナイフコーター法における種々の実施条件を調整することにより、電子輸送層の厚さを任意好適な厚さに調節することができる。
【0089】
例えば、電子輸送層の厚さをより厚くする方向に調整するためには、塗布液中の成分の濃度をより高くし、および/または、ナイフコーター法における基材とナイフの間隙を広くし、塗布速度をより速くすればよい。
【0090】
電子輸送層の厚さは、例えば、0.1~300nmであってもよく、好ましくは0.1~100nm、より好ましくは1~100nmであってもよい。
【0091】
電子輸送層の形成後、電子輸送層に対し表面処理を行なっても行なわなくてもよい。表面処理としては、構造に対し、コロナ放電処理、酸素プラズマ処理、紫外線オゾン処理などの物理的処理や、水や有機溶剤を用いた洗浄処理、酸洗浄処理等の化学的処理等、従来公知の任意好適な表面処理を施す方法等を用いることができる。
【0092】
本実施形態の光検出素子において、活性層の陰極側表面と接する面の仕事関数は、活性層の陰極側表面と接する面の仕事関数からn型半導体材料のLUMOの絶対値を減じた値が、0.0~0.5eVとなるように適宜調整することができる。
【0093】
光検出素子が電子輸送層を含む場合、活性層の陰極側表面と接する面は、電子輸送層の面に該当する。この場合、活性層の陰極側表面と接する面の仕事関数(すなわち、電子輸送層の面の仕事関数)は、電子輸送層形成用塗布液の種類、塗布法、溶媒の除去法、電子輸送層の厚さ、電子輸送層形成用塗布液の塗布前の基板上の陰極に対する表面処理、電子輸送層形成後の電子輸送層に対する表面処理等の電子輸送層形成における各種条件を適宜選択することにより所望の値に調整することができる。
【0094】
光検出素子が後述する電子輸送層を含まない場合(例えば、陰極と活性層が直接接触する場合)、活性層の陰極側表面と接する面は、陰極の面に該当する。この場合、活性層の陰極側表面と接する面の仕事関数(すなわち、陰極の面の仕事関数)は、陰極の材料の種類、陰極の形成方法、陰極の厚さ、表面処理等の陰極形成における各種条件を適宜選択することにより所望の値に調整することができる。
【0095】
活性層の陰極側表面と接する面の仕事関数としては、例えば2.0~10.0eVが挙げられ、好ましくは3.0~7.5eV、より好ましくは4.0~5.0eVであってもよい。
【0096】
仕事関数は、例えば、従来公知のケルビンプローブ装置(例えば、理研計器株式会社製、FAC-2)および校正用基準サンプルとして金(WF:5.1eV)を用いを用いて評価(測定)することができる。
【0097】
図1に示されるように、本実施形態の光検出素子は、陽極と活性層との間に、正孔輸送層を備えていてもよい。正孔輸送層は、活性層から電極へと正孔を輸送する機能を有する。正孔輸送層は、電極への電子の流れをせき止める機能を有することから、電子ブロック層と称される場合もある。
【0098】
陽極に接して設けられる正孔輸送層を、特に正孔注入層という場合がある。陽極に接して設けられる正孔輸送層(正孔注入層)は、陽極への正孔の注入を促進する機能を有する。
【0099】
正孔輸送層は、正孔輸送性材料を含む。正孔輸送性材料の例としては、ポリチオフェンおよびその誘導体、芳香族アミン化合物、芳香族アミン残基を有する構成単位を含む高分子化合物、CuSCN、CuI、NiO、および酸化モリブデン(MoO3)が挙げられる。
【0100】
中間層は、活性層と同様の塗布法により形成することができる。
【0101】
本実施形態にかかる光検出素子は、基板上に設けられており、中間層が電子輸送層および正孔輸送層であって、陰極、電子輸送層、活性層、正孔輸送層および陽極がこの順に互いに接するように積層された、いわゆる逆積層構造を有することが好ましい。
【0102】
(その他)
本実施形態の光検出素子は、封止基板、封止材等の封止部材により封止される態様をとることができる。封止部材の例としては、例えば凹部を有するカバーガラスと封止材との組み合わせが挙げられる。
【0103】
封止部材は、1層以上の層構造であってもよい。よって、封止部材の例としては、ガスバリア層、ガスバリア性フィルムといった層構造がさらに挙げられる。
【0104】
封止部材である層構造は、水分を遮断する性質(水蒸気バリア性)または酸素を遮断する性質(酸素バリア性)を有する材料により形成することが好ましい。層構造の材料として好適な材料の例としては、三フッ化ポリエチレン、ポリ三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、脂環式ポリオレフィン、エチレン-ビニルアルコール共重合体といった樹脂などの有機材料、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、ダイヤモンドライクカーボン等の無機材料が挙げられる。
【0105】
本発明によれば、活性層の厚さを800nm以上とし、活性層の陰極側表面と接する面の仕事関数から前記n型半導体材料のLUMOの絶対値を減じた値を0.0~0.5eVとすることにより、暗電流が低減され、かつ外部量子効率が向上した光検出素子を実現することができる。
【0106】
<光検出素子の適用例>
既に説明した本発明の実施形態にかかる光検出素子は、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末、入退室管理システム、デジタルカメラ、および医療機器などの種々の電子装置が備える検出部に好適に適用することができる。
【0107】
本発明の光検出素子は、上記例示の電子装置が備える、例えば、X線撮像装置およびCMOSイメージセンサーなどの固体撮像装置用のイメージ検出部(イメージセンサー)、指紋検出部、顔検出部、静脈検出部および虹彩検出部などの生体の一部分の所定の特徴を検出する検出部、パルスオキシメーターなどの光学バイオセンサーの検出部などに好適に適用することができる。
【0108】
以下、本発明の実施形態にかかる光検出素子が好適に適用され得る検出部のうち、固体撮像装置用のイメージ検出部、生体情報認証装置(指紋認証装置)のための指紋検出部の構成例について、図面を参照して説明する。
【0109】
<イメージ検出部>
図2は、固体撮像装置用のイメージ検出部の構成例を模式的に示す図である。
【0110】
イメージ検出部1は、CMOSトランジスタ基板20と、CMOSトランジスタ基板20を覆うように設けられている層間絶縁膜30と、層間絶縁膜30上に設けられている、本発明の実施形態にかかる光電変換素子(光検出素子)10と、層間絶縁膜30を貫通するように設けられており、CMOSトランジスタ基板20と光電変換素子(光検出素子)10とを電気的に接続する層間配線部32と、光電変換素子(光検出素子)10を覆うように設けられている封止層40と、封止層上に設けられているカラーフィルター50とを備えている。
【0111】
CMOSトランジスタ基板20は、従来公知の任意好適な構成を設計に応じた態様で備えている。
【0112】
CMOSトランジスタ基板20は、基板の厚さ内に形成されたトランジスタ、コンデンサなどを含み、種々の機能を実現するためのCMOSトランジスタ回路(MOSトランジスタ回路)などの機能素子を備えている。
【0113】
機能素子としては、例えば、フローティングディフュージョン、リセットトランジスタ、出力トランジスタ、選択トランジスタが挙げられる。
このような機能素子、配線などにより、CMOSトランジスタ基板20には、信号読み出し回路などが、作り込まれている。
【0114】
層間絶縁膜30は、例えば酸化シリコン、絶縁性樹脂などの従来公知の任意好適な絶縁性材料により構成することができる。層間配線部32は、例えば、銅、タングステンなどの従来公知の任意好適な導電性材料(配線材料)により構成することができる。層間配線部32は、例えば、配線層の形成と同時に形成されるホール内配線であっても、配線層とは別途形成される埋込みプラグであってもよい。
【0115】
封止層40は、光電変換素子(光検出素子)10を機能的に劣化させてしまうおそれのある酸素、水などの有害物質の浸透を防止または抑制できることを条件として、従来公知の任意好適な材料により構成することができる。封止層40は、既に説明した封止基板17により構成してもよい。
【0116】
カラーフィルター50としては、従来公知の任意好適な材料により構成され、かつイメージ検出部1の設計に対応した例えば原色カラーフィルターを用いることができる。また、カラーフィルター50としては、原色カラーフィルターと比較して、厚さを薄くすることができる補色カラーフィルターを用いることもできる。補色カラーフィルターとしては、例えば(イエロー、シアン、マゼンタ)の3種類、(イエロー、シアン、透明)の3種類、(イエロー、透明、マゼンタ)の3種類、および(透明、シアン、マゼンタ)の3種類が組み合わされたカラーフィルタを用いることができる。これらは、カラー画像データを生成できることを条件として、光電変換素子(光検出素子)10およびCMOSトランジスタ基板20の設計に対応した任意好適な配置とすることができる。
【0117】
カラーフィルター50を介して光電変換素子(光検出素子)10が受光した光は、光電変換素子(光検出素子)10によって、受光量に応じた電気信号に変換され、電極を介して、光電変換素子(光検出素子)10外に受光信号、すなわち撮像対象に対応する電気信号として出力される。
【0118】
次いで、光電変換素子(光検出素子)10から出力された受光信号は、層間配線部32を介して、CMOSトランジスタ基板20に入力され、CMOSトランジスタ基板20に作り込まれた信号読み出し回路により読み出され、図示しないさらなる任意好適な従来公知の機能部によって信号処理されることにより、撮像対象に基づく画像情報が生成される。
【0119】
<指紋検出部>
図3は、表示装置に一体的に構成される指紋検出部の構成例を模式的に示す図である。
【0120】
携帯情報端末の表示装置2は、本発明の実施形態にかかる光電変換素子(光検出素子)10を主たる構成要素として含む指紋検出部100と、当該指紋検出部100上に設けられ、所定の画像を表示する表示パネル部200とを備えている。
【0121】
この構成例では、表示パネル部200の表示領域200aと略一致する領域に指紋検出部100が設けられている。換言すると、指紋検出部100の上方に、表示パネル部200が一体的に積層されている。
【0122】
表示領域200aのうちの一部の領域においてのみ指紋検出を行う場合には、当該一部の領域のみに対応させて指紋検出部100を設ければよい。
【0123】
指紋検出部100は、本発明の実施形態にかかる光電変換素子10を本質的な機能を奏する機能部として含む。指紋検出部100は、図示されていない保護フィルム(protection film)、支持基板、封止基板、封止部材、バリアフィルム、バンドパスフィルター、赤外線カットフィルムなどの任意好適な従来公知の部材を所望の特性が得られるような設計に対応した態様で備え得る。指紋検出部100には、既に説明したイメージ検出部の構成を採用することもできる。
【0124】
光電変換素子10は、表示領域200a内において、任意の態様で含まれ得る。例えば、複数の光電変換素子10が、マトリクス状に配置されていてもよい。
【0125】
光電変換素子10は、既に説明したとおり、支持基板11または封止基板に設けられており、支持基板11には、例えばマトリクス状に電極(陽極または陰極)が設けられている。
【0126】
光電変換素子10が受光した光は、光電変換素子10によって、受光量に応じた電気信号に変換され、電極を介して、光電変換素子10外に受光信号、すなわち撮像された指紋に対応する電気信号として出力される。
【0127】
表示パネル部200は、この構成例では、タッチセンサーパネルを含む有機エレクトロルミネッセンス表示パネル(有機EL表示パネル)として構成されている。表示パネル部200は、例えば有機EL表示パネルの代わりに、バックライトなどの光源を含む液晶表示パネルなどの任意好適な従来公知の構成を有する表示パネルにより構成されていてもよい。
【0128】
表示パネル部200は、既に説明した指紋検出部100上に設けられている。表示パネル部200は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)220を本質的な機能を奏する機能部として含む。表示パネル部200は、さらに任意好適な従来公知のガラス基板といった基板(支持基板210または封止基板240)、封止部材、バリアフィルム、円偏光板などの偏光板、タッチセンサーパネル230などの任意好適な従来公知の部材を所望の特性に対応した態様で備え得る。
【0129】
以上説明した構成例において、有機EL素子220は、表示領域200aにおける画素の光源として用いられるとともに、指紋検出部100における指紋の撮像のための光源としても用いられる。
【0130】
ここで、指紋検出部100の動作について簡単に説明する。
指紋認証の実行時には、表示パネル部200の有機EL素子220から放射される光を用いて指紋検出部100が指紋を検出する。具体的には、有機EL素子220から放射された光は、有機EL素子220と指紋検出部100の光電変換素子10との間に存在する構成要素を透過して、表示領域200a内である表示パネル部200の表面に接するように載置された手指の指先の皮膚(指表面)によって反射される。指表面によって反射された光のうちの少なくとも一部は、間に存在する構成要素を透過して光電変換素子10によって受光され、光電変換素子10の受光量に応じた電気信号に変換される。そして、変換された電気信号から、指表面の指紋についての画像情報が構成される。
【0131】
表示装置2を備える携帯情報端末は、従来公知の任意好適なステップにより、得られた画像情報と、予め記録されていた指紋認証用の指紋データとを比較して、指紋認証を行う。
【0132】
[2.光検出素子の製造方法]
本実施形態の光検出素子の製造方法は、特に限定されない。光検出素子は、各構成要素を形成するにあたり選択された材料に好適な形成方法により製造することができる。
【0133】
以下、本発明の実施形態として、基板(支持基板)上に設けられ、陰極、任意で電子輸送層、活性層、正孔輸送層、陽極がこの順に互いに接する構成を有する光検出素子の製造方法について説明する。
【0134】
(基板を用意する工程)
本工程では、陰極が設けられた支持基板を用意する。
支持基板に陰極を設ける方法は特に限定されない。陰極は、例えば、上記例示の材料を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法等によって、既に説明した材料によって構成される支持基板上に形成することができる。
【0135】
また、既に説明した電極の材料により形成された薄膜が設けられた基板を市場より入手し、必要に応じて、導電性の薄膜をパターニングすることにより陰極を形成することによって、陰極が設けられた支持基板を用意することができる。
【0136】
(電子輸送層の形成工程)
電子輸送層を含む場合の光検出素子の製造方法は、中間層として、活性層と陰極との間に設けられる電子輸送層を形成する工程を含んでいてもよい。電子輸送層の例としては、上述した電子輸送性材料を含むものが挙げられる。電子輸送層の形成方法の例としては、上述した真空成膜法および塗布法が挙げられる。電子輸送層の形成方法に用いる材料(例、電子輸送層形成用塗布液)および条件の例としては、上述したものが挙げられる。
【0137】
本実施形態の光検出素子の製造方法は、陰極が設けられた支持基板を用意する工程の後であって、活性層を形成する工程の前に、電子輸送層を形成する工程をさらに含んでいてもよい。
【0138】
(活性層の形成工程)
本実施形態の光電変換素子が備える主要な構成要素である活性層は、塗布液(インク)を用いる塗布法により製造することができる。
【0139】
以下、本発明の光電変換素子の主たる構成要素である活性層の形成工程が含む工程(i)および工程(ii)について説明する。
【0140】
(工程(i))
塗布液を塗布対象に塗布する方法としては、任意好適な塗布法を用いることができる。塗布法としては、スリットコート法、ナイフコーター法、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、インクジェット印刷法、ノズルコート法、またはキャピラリーコート法が好ましく、スリットコート法、スピンコート法、キャピラリーコート法、またはバーコート法がより好ましく、スリットコート法、またはスピンコート法がさらに好ましい。
【0141】
活性層形成用の塗布液は、光電変換素子およびその製造方法に応じて選択された塗布対象に塗布される。活性層形成用の塗布液は、光電変換素子の製造工程において、光電変換素子が有する機能層であって、活性層が存在し得る機能層に塗布されうる。したがって、活性層形成用の塗布液の塗布対象は、製造される光電変換素子の層構成および層形成の順序によって異なる。例えば、光電変換素子が基板上に設けられ、陽極、正孔輸送層、活性層、電子輸送層、陰極が積層された層構成を有しており、より右側に記載された層が先に形成される場合、活性層形成用の塗布液の塗布対象は、電子輸送層となる。また、例えば、光電変換素子が基板上に設けられ、陰極、電子輸送層、活性層、正孔輸送層、陽極が積層された層構成を有しており、より右側に記載された層が先に形成される場合、活性層形成用の塗布液の塗布対象は、正孔輸送層となる。
【0142】
(工程(ii))
塗布液の塗膜から、溶媒を除去する方法、すなわち塗膜から溶媒を除去して固化する方法としては、任意好適な方法を用いることができる。溶媒を除去する方法の例としては、ホットプレートを用いて直接的に加熱する方法、熱風乾燥法、赤外線加熱乾燥法、フラッシュランプアニール乾燥法、減圧乾燥法などの乾燥法が挙げられる。
【0143】
活性層の厚さは、塗布液中の固形分濃度、上記工程(i)および/または工程(ii)の条件を適宜調整することにより、所望の厚さとすることができる。
【0144】
具体的には、例えば、塗布法がナイフコーター法である場合には、用いられる塗布液中の成分の濃度(塗布液の粘度)といった塗布液の特性条件、およびナイフコーター法における種々の実施条件を調整することにより、活性層の厚さを任意好適な厚さに調節することができる。
【0145】
例えば、活性層の厚さをより厚くする方向に調整するためには、塗布液中の成分の濃度をより高くし、および/または、ナイフコーター法における基材とナイフの間隙を広くし、塗布速度をより速くすればよい。
【0146】
活性層を形成する工程は、前記工程(i)および工程(ii)以外に、本発明の目的および効果を損なわないことを条件としてその他の工程を含んでいてもよい。
【0147】
光検出素子の製造方法は、複数の活性層を含む光検出素子を製造する方法であってもよく、工程(i)および工程(ii)が複数回繰り返される方法であってもよい。
【0148】
活性層形成用の塗布液は、溶液であってもよく、分散液、エマルション(乳濁液)、サスペンション(懸濁液)等の分散液であってもよい。本実施形態にかかる活性層形成用の塗布液は、p型半導体材料と、n型半導体材料と、溶媒とを含む。以下、活性層形成用の塗布液の成分について説明する。
【0149】
(p型半導体材料)
p型半導体材料は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
【0150】
低分子化合物であるp型半導体材料としては、例えば、フタロシアニン、金属フタロシアニン、ポルフィリン、金属ポルフィリン、オリゴチオフェン、テトラセン、ペンタセン、およびルブレンが挙げられる。
【0151】
p型半導体材料が高分子化合物である場合には、高分子化合物は、所定のポリスチレン換算の重量平均分子量を有する。
【0152】
ここで、ポリスチレン換算の重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレンの標準試料を用いて算出した重量平均分子量を意味する。
【0153】
p型半導体材料のポリスチレン換算の重量平均分子量は、溶媒への溶解性の観点から、20000以上200000以下であることが好ましく、30000以上180000以下であることがより好ましく、40000以上150000以下であることがさらに好ましい。
【0154】
高分子化合物であるp型半導体材料としては、例えば、ポリビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリシランおよびその誘導体、側鎖または主鎖に芳香族アミン構造を含むポリシロキサン誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体、ポリフルオレンおよびその誘導体等が挙げられる。
【0155】
高分子化合物であるp型半導体材料としては、チオフェン骨格を含む構成単位を含む高分子化合物であることが好ましい。
【0156】
p型半導体材料は、下記式(I)で表される構成単位および/または下記式(II)で表される構成単位を含む高分子化合物であることが好ましい。
【0157】
【0158】
式(I)中、Ar1およびAr2は、3価の芳香族複素環基を表し、Zは下記式(Z-1)~式(Z-7)で表される基を表す。
【0159】
【0160】
式(II)中、Ar3は2価の芳香族複素環基を表す。
【0161】
【0162】
式(Z-1)~(Z-7)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、またはニトロ基を表す。式(Z-1)~式(Z-7)のそれぞれにおいて、Rが2個存在する場合、2個のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0163】
式(I)で表される構成単位は、下記式(I-1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0164】
【0165】
式(I-1)中、Zは前記と同様の意味を表す。
【0166】
式(I-1)で表される構成単位の例としては、下記式(501)~式(505)で表される構成単位が挙げられる。
【0167】
【0168】
前記式(501)~式(505)中、Rは前記と同様の意味を表す。Rが2個存在する場合、2個のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0169】
Ar3で表される2価の芳香族複素環基が有する炭素原子数は、通常2~60であり、好ましくは4~60であり、より好ましくは4~20である。Ar3で表される2価の芳香族複素環基は置換基を有していてもよい。Ar3で表される2価の芳香族複素環基が有していてもよい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、およびニトロ基が挙げられる。
【0170】
Ar3で表される2価の芳香族複素環基の例としては、下記式(101)~式(185)で表される基が挙げられる。
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
式(101)~式(185)中、Rは前記と同じ意味を表す。Rが複数個存在する場合、複数個のRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0176】
前記式(II)で表される構成単位としては、下記式(II-1)~式(II-6)で表される構成単位が好ましい。
【0177】
【0178】
式(II-1)~式(II-6)中、X1およびX2は、それぞれ独立に、酸素原子または硫黄原子を表し、Rは前記と同様の意味を表す。Rが複数個存在する場合、複数個のRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0179】
原料化合物の入手性の観点から、式(II-1)~式(II-6)中のX1およびX2は、いずれも硫黄原子であることが好ましい。
【0180】
p型半導体材料である高分子化合物は、2種以上の式(I)の構成単位を含んでいてもよく、2種以上の式(II)の構成単位を含んでいてもよい。
【0181】
溶媒に対する溶解性を向上させるため、p型半導体材料である高分子化合物は、下記式(III)で表される構成単位を含んでいてもよい。
【0182】
【0183】
式(III)中、Ar4はアリーレン基を表す。
【0184】
Ar4で表されるアリーレン基とは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から、水素原子を2個除いた残りの原子団を意味する。芳香族炭化水素には、縮合環を有する化合物、独立したベンゼン環および縮合環からなる群から選ばれる2個以上が、直接またはビニレン基等の2価の基を介して結合した化合物も含まれる。
【0185】
芳香族炭化水素が有していてもよい置換基の例としては、複素環式化合物が有していてもよい置換基として例示された置換基と同様の置換基が挙げられる。
【0186】
アリーレン基における、置換基を除いた部分の炭素原子数は、通常6~60であり、好ましくは6~20である。置換基を含めたアリーレン基の炭素原子数は、通常6~100程度である。
【0187】
アリーレン基の例としては、フェニレン基(例えば、下記式1~式3)、ナフタレン-ジイル基(例えば、下記式4~式13)、アントラセン-ジイル基(例えば、下記式14~式19)、ビフェニル-ジイル基(例えば、下記式20~式25)、ターフェニル-ジイル基(例えば、下記式26~式28)、縮合環化合物基(例えば、下記式29~式35)、フルオレン-ジイル基(例えば、下記式36~式38)、およびベンゾフルオレン-ジイル基(例えば、下記式39~式46)が挙げられる。
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
式1~式46中、Rは前記と同じ意味を表す。Rが複数個存在する場合、複数個のRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0197】
p型半導体材料である高分子化合物を構成する構成単位は、式(I)で表される構成単位、式(II)で表される構成単位および式(III)で表される構成単位から選択される2種以上の構成単位が2つ以上組み合わされて連結された構成単位であってもよい。
【0198】
p型半導体材料としての高分子化合物が、式(I)で表される構成単位および/または式(II)で表される構成単位を含む場合、式(I)で表される構成単位および式(II)で表される構成単位の合計量は、高分子化合物が含むすべての構成単位の量を100モル%とすると、通常20~100モル%であり、p型半導体材料としての電荷輸送性を向上させることができるので、好ましくは40~100モル%であり、より好ましくは50~100モル%である。
【0199】
p型半導体材料としての高分子化合物の具体例としては、下記式P-1~P-6で表される高分子化合物(高分子化合物P-1~高分子化合物P-6)が挙げられる。
【0200】
【0201】
【0202】
活性層形成用の塗布液は、p型半導体材料を1種のみ含んでいてもよく、2種以上を任意の割合の組み合わせで含んでいてもよい。
【0203】
(n型半導体材料)
n型半導体材料は、活性層の陰極側表面と接する面の仕事関数からn型半導体材料のLUMOの絶対値を減じた値が、0.0~0.5eVとなる材料として適宜選択することができる。n型半導体材料のLUMOの絶対値としては、例えば2.0~10.0eVが挙げられ、好ましくは3.0~7.5eV、より好ましくは4.0~5.0eVであってもよい。n型半導体材料のLUMOは、例えば、Adv.Mater.、18、789-794(2006)に記載の方法により評価することができる。
【0204】
n型半導体材料は、フラーレン誘導体であることが好ましい。フラーレン誘導体とは、フラーレン(C60フラーレン、C70フラーレン、C84フラーレン)の少なくとも一部が修飾された化合物を意味する。
【0205】
フラーレン誘導体の例としては、下記式(N-1)~式(N-4)で表される化合物が挙げられる。
【0206】
【0207】
式(N-1)~式(N-4)中、nは、1~2の整数を表し、括弧は、括弧で囲まれた構造がnで示される数で存在することを表す。Raは、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、またはエステル構造を有する基を表す。複数個あるRaは、互いに同一であっても異なっていてもよい。Rbは、アルキル基、またはアリール基を表す。複数個あるRbは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0208】
Raで表されるエステル構造を有する基の例としては、下記式(19)で表される基が挙げられる。
【0209】
【0210】
式(19)中、u1は、1~6の整数を表す。u2は、0~6の整数を表す。Rcは、アルキル基、アリール基、または1価の複素環基を表す。
【0211】
C60フラーレン誘導体の例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0212】
【0213】
C60フラーレン誘導体の好適な具体例としては、[6,6]-フェニル-C61酪酸メチルエステル(C60PCBM、[6,6]-Phenyl C61 butyric acid methyl ester)、ビス(1-[3-(メトキシカルボニル)プロピル]-1-フェニル)-[6,6]C62(bisC60PCBM、Bis(1-[3-(methoxycarbonyl)propyl]-1-phenyl)-[6,6]C62)が挙げられる。
【0214】
C70フラーレン誘導体の具体例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0215】
【0216】
C70フラーレン誘導体の好適な具体例としては、[6,6]-フェニル-C71酪酸メチルエステル(C70PCBM、[6,6]-Phenyl-C71-butyric acid methyl ester)、インデンC70プロピオン酸ヘキシルエステル(C70IPH、indene-C70-propionic acid hexyl ester)が挙げられる。
【0217】
また、C84フラーレン誘導体の具体例としては、[6,6]フェニル-C85酪酸メチルエステル(C84PCBM、[6,6]-Phenyl C85 butyric acid methyl ester)が挙げられる。
【0218】
活性層形成用の塗布液は、n型半導体材料を1種のみ含んでいてもよく、2種以上を任意の割合の組み合わせで含んでいてもよい。
【0219】
(溶媒)
活性層形成用の塗布液は、溶媒を1種のみ含んでいてもよく、2種以上を任意の割合の組み合わせで含んでいてもよい。活性層形成用の塗布液が2種以上の溶媒を含む場合、主たる成分である主溶媒(第1溶媒という。)と、溶解性の向上などのために添加されるその他の添加溶媒(第2溶媒という。)とを含むことが好ましい。第1溶媒および第2溶媒について以下に説明する。
【0220】
(1)第1溶媒
溶媒は、選択されたp型半導体材料およびn型半導体材料に対する溶解性、活性層を形成する際の乾燥条件に対応するための特性(沸点など)を考慮して選択することができる。
【0221】
主溶媒である第1溶媒は、置換基(アルキル基、ハロゲン原子)を有していてもよい芳香族炭化水素(以下、単に芳香族炭化水素という。)であることが好ましい。第1溶媒は、選択されたp型半導体材料およびn型半導体材料の溶解性を考慮して選択することが好ましい。
【0222】
このような芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン(例、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン)、トリメチルベンゼン(例、メシチレン、1,2,4-トリメチルベンゼン(プソイドクメン))、ブチルベンゼン(例、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン)、メチルナフタレン(例、1-メチルナフタレン)、テトラリン、インダン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼン(o-ジクロロベンゼン)が挙げられる。
【0223】
第1溶媒は1種のみの芳香族炭化水素から構成されていても、2種以上の芳香族炭化水素から構成されていてもよい。第1溶媒は、1種のみの芳香族炭化水素から構成されることが好ましい。
【0224】
第1溶媒は、好ましくは、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン、プソイドクメン、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、メチルナフタレン、テトラリン、インダン、クロロベンゼンおよびo-ジクロロベンゼンからなる群から選択される1種以上を含み、より好ましくは、o-キシレン、プソイドクメン、クロロベンゼンまたはo-ジクロロベンゼンである。
【0225】
(2)第2溶媒
第2溶媒は、製造工程の実施をより容易にし、光検出素子の特性をより向上させる観点から選択される溶媒であることが好ましい。第2溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、プロピオフェノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸フェニル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、安息香酸ブチル、および安息香酸ベンジル等のエステル溶媒が挙げられる。
【0226】
第2溶媒としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、または安息香酸ベンジルが好ましい。
【0227】
(3)第1溶媒および第2溶媒の組み合わせ
第1溶媒および第2溶媒の好適な組み合わせとしては、例えば、o-キシレンとアセトフェノンとの組み合わせが挙げられる。
【0228】
(4)第1溶媒および第2溶媒の重量比
主溶媒である第1溶媒の添加溶媒である第2溶媒に対する重量比(第1溶媒:第2溶媒)は、p型半導体材料およびn型半導体材料の溶解性をより向上させる観点から、85:15~99:1の範囲とすることが好ましい。
【0229】
(5)第1溶媒および第2溶媒の合計の重量百分率
塗布液に含まれる第1溶媒および第2溶媒の総重量は、塗布液の全重量を100重量%としたときに、p型半導体材料およびn型半導体材料の溶解性をより向上させる観点から、好ましくは90重量%以上、より好ましくは92重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上であり、塗布液中のp型半導体材料およびn型半導体材料の濃度を高くして一定の厚さ以上の層を形成し易くする観点から、好ましくは99重量%以下、より好ましくは98重量%以下、さらに好ましくは97.5重量%以下である。
【0230】
(6)任意の他の溶媒
溶媒は、第1溶媒および第2溶媒以外の任意の溶媒を含んでいてもよい。塗布液に含まれる全溶媒の合計重量を100重量%としたときに、任意の他の溶媒の含有率は、好ましくは5重量%以下であり、より好ましくは3重量%以下であり、さらに好ましくは1重量%以下である。任意の他の溶媒としては、第2溶媒より沸点が高い溶媒が好ましい。
【0231】
(任意の成分)
塗布液には、第1の溶媒、第2の溶媒、p型半導体材料、およびn型半導体材料の他に、本発明の目的および効果を損なわない限度において、紫外線吸収剤、酸化防止剤、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するためのため増感剤、紫外線からの安定性を増すための光安定剤といった任意の成分が含まれていてもよい。
【0232】
(塗布液におけるp型半導体材料およびn型半導体材料の濃度)
塗布液における、p型半導体材料およびn型半導体材料の合計の濃度は、0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましく、0.01重量%以上10重量%以下であることがより好ましく、0.01重量%以上5重量%以下であることがさらに好ましく、0.1重量%以上5重量%以下であることが特に好ましい。塗布液中、p型半導体材料およびn型半導体材料は溶解していても分散していてもよい。p型半導体材料およびn型半導体材料は、好ましくは少なくとも一部が溶解しており、より好ましくは全部が溶解している。
【0233】
(塗布液の調製)
塗布液は、公知の方法により調製することができる。例えば、第1溶媒および第2溶媒を混合して混合溶媒を調製し、混合溶媒にp型半導体材料およびn型半導体材料を添加する方法、第1溶媒にp型半導体材料を添加し、第2溶媒にn型半導体材料を添加してから、各材料が添加された第1溶媒および第2溶媒を混合する方法などにより、調製することができる。
【0234】
第1溶媒および第2溶媒とp型半導体材料およびn型半導体材料とを、溶媒の沸点以下の温度まで加温して混合してもよい。
【0235】
第1溶媒および第2溶媒とp型半導体材料およびn型半導体材料とを混合した後、得られた混合物をフィルターを用いて濾過し、得られた濾液を塗布液として用いてもよい。フィルターとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂で形成されたフィルターを用いることができる。
【0236】
(陽極の形成工程)
本工程では、活性層上に陽極を形成する。本実施形態では、活性層上に陽極を形成するが、光電変換素子の製造方法が、陽極と活性層との間に中間層である正孔輸送層を形成する工程を含む場合、陽極は、正孔輸送層(正孔注入層)上に形成される。
【0237】
陽極の形成方法は特に限定されない。陽極は、既に説明した電極の材料を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法、塗布法等によって、陽極が形成されるべき層上に形成することができる。
【0238】
陽極の材料が、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、導電性物質のナノ粒子、導電性物質のナノワイヤーまたは導電性物質のナノチューブである場合には、これらの材料と、溶媒とを含むエマルション(乳濁液)、サスペンション(懸濁液)等を用いて、塗布法によって陰極を形成することができる。
【0239】
また、陽極が塗布法により形成される場合には、導電性物質を含む塗布液、金属インク、金属ペースト、溶融状態の低融点金属等を用いて、陽極を形成することができる。陽極の材料と溶媒とを含む塗布液の塗布法としては、既に説明した活性層の形成工程と同様の方法が挙げられる。
【0240】
陽極を塗布法により形成する際に用いる塗布液に含まれる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベゼン、tert-ブチルベンゼン等の炭化水素溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル溶媒;水、アルコール等が挙げられる。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブトキシエタノール、メトキシブタノール等が挙げられる。塗布液は、1種類単独の溶媒を含んでいてもよく、2種類以上の溶媒を含んでいてもよく、上記溶媒を2種類以上含んでいてもよい。
【0241】
(正孔輸送層の形成工程)
正孔輸送層(正孔注入層)を形成する場合の正孔輸送層の形成方法は特に限定されない。正孔輸送層の形成工程をより簡便にする観点からは、塗布法によって正孔輸送層を形成することが好ましい。正孔輸送層は、例えば、既に説明した正孔輸送層の材料と溶媒とを含む塗布液を活性層上に塗布することにより形成することができる。
【0242】
塗布法で用いられる塗布液における溶媒としては、例えば、水、アルコール、ケトン、および炭化水素等が挙げられる。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブトキシエタノール、およびメトキシブタノール等が挙げられる。ケトンの具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、およびシクロヘキサノン等が挙げられる。炭化水素の具体例としては、n-ペンタン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、クロロベンゼン、およびオルトジクロロベンゼン等が挙げられる。塗布液は、1種類単独の溶媒を含んでいてもよく、2種類以上の溶媒を含んでいてもよく、上記で例示した溶媒を2種類以上含んでいてもよい。塗布液における溶媒の量は、正孔輸送層の材料1重量部に対し、1重量部以上10000重量部以下であることが好ましく、10重量部以上1000重量部以下であることがより好ましい。
【0243】
正孔輸送層の材料と溶媒とを含む塗布液を塗布する方法(塗布法)としては、例えば、スピンコート法、ナイフコーター法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、およびキャピラリーコート法等が挙げられる。これらの中でも、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
【0244】
正孔輸送層の材料と溶媒とを含む塗布液を塗布して得られる塗膜を、加熱処理、風乾処理、減圧処理等に供することにより、塗膜から溶媒を除くことが好ましい。
【0245】
(陽極の形成工程)
本実施形態では、陽極は、通常、活性層上に形成される。本実施形態にかかる光検出素子の製造方法が、正孔輸送層を形成する工程を含む場合には、正孔輸送層上に陽極が形成される。
【0246】
陽極の形成方法は特に限定されない。陽極は、既に説明した材料を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法、塗布法等によって、活性層、正孔輸送層などの陽極を形成すべき層上に形成することができる。
【0247】
陽極の材料が、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、導電性物質のナノ粒子、導電性物質のナノワイヤーまたは導電性物質のナノチューブである場合には、これらの材料と、溶媒とを含むエマルション(乳濁液)、サスペンション(懸濁液)等を用いて、塗布法によって陽極を形成することができる。
【0248】
また、陽極の材料が、導電性物質を含む場合、導電性物質を含む塗布液、金属インク、金属ペースト、溶融状態の低融点金属等を用いて、塗布法によって陽極を形成してもよい。陽極の材料と溶媒とを含む塗布液の塗布法としては、既に説明した活性層の形成工程と同様の方法が挙げられる。
【0249】
陽極を塗布法により形成する際に用いる塗布液に含まれる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン等の炭化水素溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル溶媒;水、アルコール等が挙げられる。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブトキシエタノール、メトキシブタノール等が挙げられる。塗布液は、1種類単独の溶媒を含んでいてもよく、2種類以上の溶媒を含んでいてもよく、上記溶媒を2種類以上含んでいてもよい。
【実施例】
【0250】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示す。本発明は以下に説明する実施例に限定されない。
【0251】
<実施例1:C60PCBM/電子輸送層1>光電変換素子の製造および評価
(光電変換素子の製造)
スパッタリング法により、ガラス基板上にITO薄膜(陰極)を150nmの厚さで形成させた。このガラス基板の表面に対し、オゾンUV処理を行った。
次に、酸化亜鉛/イソプロパノール分散液(Avantama社製、商品名N-10)を電子輸送層形成用塗布液として、スピンコート法により、オゾンUV処理を行ったガラス基板のITO薄膜上に塗布した。
電子輸送層形成用塗布液が塗布されたガラス基板を、ホットプレートを用いて、120℃で10分間加熱して、陰極であるITO薄膜上に電子輸送層1を形成した。電子輸送層1の厚さは30nmであった。ここで形成された電子輸送層1について仕事関数の測定を行った(詳細は後述する。)。
次に、p型半導体として高分子化合物P-1とn型半導体としてC60PCBM(フロンティアカーボン社製、商品名:E100、LUMO準位:―4.3eV)とを重量比1:2で混合して、第1溶媒であるo-キシレンと第2溶媒であるアセトフェノンとの混合溶媒(o-キシレン:アセトフェノン=95:5(重量比))に加え、80℃で10時間撹拌して、活性層形成用塗布液を調製した。
調製された活性層形成用塗布液を、ガラス基板の電子輸送層上にナイフコーター法により塗布して、塗膜を形成した。形成した塗膜を、100℃に加熱したホットプレートを用いて、5分間乾燥させて、活性層aを形成した。形成された活性層aの厚さは850nmであった。
次に、抵抗加熱蒸着装置内にて、形成された活性層a上に正孔輸送層として酸化モリブデン(MoOx)を約30nmの厚さで蒸着し、更に、陽極として銀(Ag)層を約80nmの厚さで形成することで、光電変換素子(光検出素子)を製造した。
次に、UV硬化性封止剤を、製造された光電変換素子の周辺であるガラス基板上に塗布し、封止基板であるガラス基板を貼り合わせた後、UV光を照射することで光電変換素子を封止した。得られた光電変換素子の厚さ方向から見たときの平面的な形状は2mm×2mmの正方形であった。
【0252】
(光電変換素子の特性の評価)
製造された光電変換素子に-2Vの電圧を引加した状態で、外部量子効率(EQE)と暗電流(Jd)を、それぞれ分光感度測定装置(CEP-2000、分光計器社製)と半導体パラメーターアナライザー(Agilent Technology B1500A、アジレントテクノロジー社製)を用いて測定した。高分子化合物P-1の最大吸収波長である波長850nmの光(光子数:1.0×10
16)を光電変換素子に照射し、発生した電流の電流値を測定し、公知の手法により、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表1および
図4に示す。
【0253】
(活性層中に含まれるn型半導体材料の非占有最低軌道準位(LUMO)の評価)
n型半導体材料のLUMO準位をサイクリックボルタンメトリー(CV)の測定値から、見積もった。CV測定は、Advanced Materials、18巻、2006年、789頁~794頁に記載の方法と同じ条件で行った。
CV測定装置:BAS社製Electrochemical Analyazer Model 600B
支持電解質:ヘキサフロロりん酸テトラブチルアンモニウム(TBAPF6、Aldrich社製)を濃度0.1M含む、脱水アセトニトリル溶液
作用電極:白金ホイル/n型半導体膜(クロロホルムに溶解した溶液を滴下)
対極:白金ホイル
参照電極:Ag/AgCl電極
標準電位:フェロセン
得られたC60PCBMのLUMOは、-4.3eVであった。
【0254】
(活性層と接する面の仕事関数の評価)
電子輸送層1の仕事関数(WF)は、上記の通り電子輸送層が形成された後のガラス基板を用いて、ケルビンプローブ装置を用いて評価した。ケルビンプローブ装置は、理研計器株式会社のFAC-2を使用した。校正用基準サンプルとして金(WFは5.1eV)を用いた。得られた電子輸送層1の仕事関数は、4.4eVであった。
【0255】
<実施例2~7、48、比較例1:C60PCBM/電子輸送層1>
活性層の厚さを600、800、950、1100、1400、1800、3000、3500nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を製作し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表1および
図4に示す。
【0256】
<実施例8、9、比較例3:C60PCBM/電子輸送層2>
酸化亜鉛/水分散液(InfinityPV社製、商品名Doped ZnO ink(water))を用いて厚さ30nmの電子輸送層2を形成し、活性層の厚さを750、1000、1400nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表1および
図5に示す。電子輸送層2のWFは、4.6eVであった。
【0257】
<実施例10~13、比較例4:C60PCBM/電子輸送層3>
アルミドープ酸化亜鉛/イソプロパノール分散液(Avantama社製、商品名N-10X)を用いて厚さ30nmの電子輸送層3を形成し、活性層の厚さを450、850、1100、1800、3100nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表1および
図6に示す。電子輸送層3のWFは、4.4eVであった。
【0258】
<実施例14~16、比較例5:C60PCBM/電子輸送層4>
チタニウム(IV)イソプロポキシド/イソプロパノール溶液(Aldrich社製)を用いて厚さ30nmの電子輸送層4を形成し、活性層の厚さを550、1000、1300、3200nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表1および
図7に示す。電子輸送層4のWFは、4.7eVであった。
【0259】
<実施例17~20:C60PCBM/電子輸送層5>
酸化亜鉛/イソプロパノール分散液(テイカ社製、製品名:HTD-711Z)を3-ペンタノールで1/10倍に希釈した溶液を用いて厚さ30nmの膜を形成した。形成した膜にUVオゾン処理を2分間施すことで電子輸送層5を得た。電子輸送層として電子輸送層5を用い、活性層の厚さを1000、1200、2000、3100nmとした以外は、実施例1に記載の方法(ガラス基板の表面に対するオゾンUV処理も含む)で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表1および
図8に示す。電子輸送層5のWFは、4.6eVであった。
【0260】
<実施例21、22:C60PCBM/電子輸送層6>
ガラス基板上にITO薄膜(陰極)を形成し、このガラス基板の表面に対し、酸素プラズマ処理(150W、15分間)を行い、次いでポリエチレンイミンエトキシレート(PEIE)水溶液(アルドリッチ社製、商品名ポリエチレンイミン、80%エトキシ化溶液、重量平均分子量110000)を水で1/100倍に希釈した溶液を電子輸送層形成用塗布液として用いて、厚さが5nmの電子輸送層6を形成した。電子輸送層として電子輸送層6を用い、活性層の厚さを600、1500nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表1および
図9に示す。電子輸送層6のWFは、4.7eVであった。
【0261】
<実施例23~25、比較例6:C60PCBM/電子輸送層なし>
ガラス基板上にITO薄膜(陰極)を形成し、このガラス基板の表面に対し、UVオゾン処理等の処理および電子輸送層の形成をすることなく、ITO薄膜表面上に、活性層を直接形成し、活性層の厚さを750、1000、1300、2000、3200nmとした以外は実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表1および
図10に示す。ITO薄膜の表面のWFは、4.8eVであった。
【0262】
<比較例7~10:C60PCBM/電子輸送層7>
ガラス基板上にITO薄膜(陰極)を形成し、このガラス基板の表面に対し、オゾンUV処理を行い、次いでポリエチレンイミンエトキシレート(PEIE)水溶液(アルドリッチ社製、商品名ポリエチレンイミン、80%エトキシ化溶液、重量平均分子量110000)を水で1/100倍に希釈した溶液を電子輸送層形成用塗布液として用いて、厚さが5nmの電子輸送層7を得た。電子輸送層として電子輸送層7を用い、活性層の厚さを550、800、1000、1200nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表1および
図11に示す。電子輸送層7のWFは、4.2eVであった。
【0263】
<比較例11~13:C60PCBM/電子輸送層8>
酸化亜鉛/イソプロパノール分散液(テイカ社製、製品名:HTD-711Z)を3-ペンタノールで1/10倍に希釈した溶液を電子輸送層形成用塗布液として用いて厚さ30nmの電子輸送層8を得た。電子輸送層として電子輸送層8を用い、活性層の厚さを650、750、1100、1400nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表1および
図12に示す。表中、LUMOは絶対値で示す。電子輸送層8のWFは、4.2eVであった。
【0264】
【0265】
【0266】
<実施例26、27、比較例14:bis-C60PCBM/電子輸送層7>
活性層に含まれるn型半導体として、bis-C60PCBM(Solenne社製、商品名:bis[C60]PCBM、LUMO準位:-4.2eV)を、電子輸送層として電子輸送層7を用い、活性層の厚さを600、1000、2000nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表2および
図13に示す。
【0267】
<実施例28、29、比較例15:bis-C60PCBM/電子輸送層8>
活性層に含まれるn型半導体として、bis-C60PCBMを、電子輸送層として電子輸送層8を用い、活性層の厚さを600、1000、2000nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表2および
図14に示す。
【0268】
<実施例30、31、比較例16:bis-C60PCBM/電子輸送層1>
活性層に含まれるn型半導体として、bis-C60PCBMを、電子輸送層として電子輸送層1を用い、活性層の厚さを450、1300、2000nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表2および
図15に示す。
【0269】
<実施例32~34、比較例17:bis-C60PCBM/電子輸送層2>
活性層に含まれるn型半導体として、bis-C60PCBMを、電子輸送層として電子輸送層2を用い、活性層の厚さを340、800、1500、3000nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表2および
図16に示す。
【0270】
<実施例35、36:C70IPH/電子輸送層1>
活性層に含まれるn型半導体として、C70IPH(Solenne社製、商品名:[C70]IPH、LUMO準位:-4.3eV)を、電子輸送層として電子輸送層1を用い、活性層の厚さを800、1400nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表2および
図17に示す。
【0271】
<実施例37、38:C70IPH/電子輸送層2>
活性層に含まれるn型半導体として、C70IPHを、電子輸送層として電子輸送層2を用い、活性層の厚さを1000、1500nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表2および
図18に示す。
【0272】
<実施例39~41:C70IPH/電子輸送層なし>
活性層に含まれるn型半導体として、C70IPHを用い、ITO薄膜(陰極)が形成されたガラス基板を用意し、このガラス基板の表面に対し、UVオゾン処理等の処理および電子輸送層を含むことなく、ITO薄膜表面上に、活性層を直接形成し、活性層の厚さを800、1000、1500nmとした以外は実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表2および
図19に示す。
【0273】
<比較例18~20:C70IPH/電子輸送層7>
活性層に含まれるn型半導体として、C70IPHを、電子輸送層として電子輸送層7を用い、活性層の厚さを500、850、1100nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表2および
図20に示す。
【0274】
<比較例21~23:C70IPH/電子輸送層8>
活性層に含まれるn型半導体として、C70IPHを、電子輸送層として電子輸送層8を用い、活性層の厚さを250、750、1200nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表2および
図21に示す。
【0275】
<実施例42、43、比較例24:C70PCBM/電子輸送層1>
活性層に含まれるn型半導体として、C70PCBM(American Dye Source社製、商品名:ADS71BFA、LUMO準位:-4.3eV)を、電子輸送層として電子輸送層1を用い、活性層の厚さを300、800、1600nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表2および
図22に示す。
【0276】
<実施例44、45、比較例25:C70PCBM/電子輸送層2>
活性層に含まれるn型半導体として、C70PCBMを、電子輸送層として電子輸送層2を用い、活性層の厚さを300、900、1600nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表2および
図23に示す。
【0277】
<実施例46、47、比較例26:C70PCBM/電子輸送層なし>
活性層に含まれるn型半導体として、C70PCBMを用い、ITO薄膜(陰極)が形成されたガラス基板を用意し、このガラス基板の表面に対し、UVオゾン処理等の処理および電子輸送層を含むことなく、ITO薄膜表面上に、活性層を直接形成し、活性層の厚さ300、800、1600nmとした以外は実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表2および
図24に示す。
【0278】
<比較例27~29:C70PCBM/電子輸送層7>
活性層に含まれるn型半導体として、C70PCBMを、電子輸送層として電子輸送層7を用い、活性層の厚さを300、750、1300nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表2および
図25に示す。
【0279】
<比較例2、30~32:電子輸送層8>
活性層に含まれるn型半導体として、C70PCBMを、電子輸送層として電子輸送層8を用い、活性層の厚さを250、650、1500、2000nmとした以外は、実施例1に記載の方法で、光電変換素子を作成し、EQEの測定値を求めた。EQEとJdの測定結果を表2および
図26に示す。表中、LUMOは絶対値で示す。
【0280】
【0281】
【0282】
【0283】
実施例および比較例で用いた電子輸送層の各種形成条件(電子輸送層形成用塗布液、電子輸送層の厚さ、表面処理)、および結果として得られた仕事関数を、表3にまとめた。
【0284】
【0285】
<評価>
図4~26に、活性層の厚さに対するEQE、暗電流(Jd)を示す。
図11(比較例7~10)、
図12(比較例11~13)、
図21(比較例21~23)、
図25(比較例27~29)、および
図26(比較例2、30~32)では、従来技術同様に活性層の厚さが厚くなるにつれて、暗電流の低下およびEQEの低下が生じた。しかし、陰極型表面の仕事関数からn型半導体のLUMO準位の絶対値を減じた値が0以上の光電変換素子においては、活性層の厚さが厚くなるにつれて、暗電流は十分に低い値が得られつつ、EQEは高い値を維持し、活性層の厚さが800nm以上であっても高いEQE値を維持した。すなわち本発明の技術を用いることで、高い感度特性が得られることが実施例および比較例において示された。
【符号の説明】
【0286】
1 イメージ検出部
2 表示装置
10 光電変換素子
11、210 支持基板
12 陰極
13 電子輸送層
14 活性層
15 正孔輸送層
16 陽極
17、240 封止基板
20 CMOSトランジスタ基板
30 層間絶縁膜
32 層間配線部
40 封止層
50 カラーフィルター
100 指紋検出部
200 表示パネル部
200a 表示領域
220 有機EL素子
230 タッチセンサーパネル