(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】剥離性組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 299/08 20060101AFI20220527BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20220527BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20220527BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20220527BHJP
H01L 21/52 20060101ALN20220527BHJP
【FI】
C08F299/08
C09J183/04
C08F290/14
C08F2/50
H01L21/52 E
(21)【出願番号】P 2018530053
(86)(22)【出願日】2016-12-09
(86)【国際出願番号】 US2016065713
(87)【国際公開番号】W WO2017100502
(87)【国際公開日】2017-06-15
【審査請求日】2019-12-06
(32)【優先日】2015-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】コン、 シェンチァン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、 ヤイン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、 ウェンファ
(72)【発明者】
【氏名】ハインズ、 ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ウッズ、 ジョン ジー.
(72)【発明者】
【氏名】オウヤン、 ジャンボ
(72)【発明者】
【氏名】スン、 チュンユー
(72)【発明者】
【氏名】イッサリ、 バハラーム
【審査官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-136021(JP,A)
【文献】特開2010-229382(JP,A)
【文献】特開2013-038098(JP,A)
【文献】特開2013-203794(JP,A)
【文献】特開2014-005324(JP,A)
【文献】国際公開第2015/000150(WO,A1)
【文献】特表2016-529342(JP,A)
【文献】特開2016-210861(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02639277(EP,A1)
【文献】特開2014-529664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 283/01
C08F 290/00 - 290/14
C08F 299/00 - 299/08
C08F 2/00 - 2/60
C09J 1/00 - 5/10
C09J 9/00 - 201/10
H01L 21/52,21/58,
C08L 1/00 - 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1又は複数のSi原子に結合したビニル基を有する直鎖又は分岐のポリシロキサン樹脂;
(b)少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリレートポリシロキサン樹脂;及び
(c)光開始剤と、ペルオキシド又はヒドリドシロキサン又はヒドリドポリシロキサンのうちの1つとの組合せを含む開始剤
を含み、
前記(a)1又は複数のSi原子に結合したビニル基を有する直鎖又は分岐のポリシロキサン樹脂は、ペンダントのビニル基を有し、
前記(b)少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリレートポリシロキサン樹脂は、以下:
【化1】
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、水素、ヘテロ原子又は不飽和を有するか又は有しないC
1-10脂肪族又はC
6-10芳香族炭化水素から独立して選択され、Xは、ヘテロ原子又は不飽和を有するか又は有しないC
1-10脂肪族又はC
6-10芳香族炭化水素から選択される連結基であり、x
1、x
2、y
1、y
2、及びzは、繰り返し単位のモル分率である(式中、x
1+x
2+y
1+y
2+z=1)であり、そしてAは、水素又は(メタ)アクリレート基のいずれかである
)
によって表される構造を有
し、
ビニル官能基の(メタ)アクリレート官能基に対する比率は、21:1~0.29:1である、組成物。
【請求項2】
(a)1又は複数のSi原子に結合したビニル基を有する直鎖又は分岐のポリシロキサン樹脂の鎖末端が、トリメチルシリル基又はビニルジメチルシリル基によって終端されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ヒドリドシロキサン又はヒドリドポリシロキサンが存在し、かつ金属触媒をさらに含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリレートポリシロキサン樹
脂が、ペンダント
の(メタ)アクリレート基を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
電磁スペクトルの放射線へのばく露、又は高温条件へのばく露のうちの少なくとも一方によって硬化可能である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
初期貯蔵弾性率(室温で周波数1Hzで測定される)が、電磁スペクトルの放射線へのばく露後に10
3Paを超える、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
初期貯蔵弾性率(室温で周波数1Hzで測定される)が、電磁スペクトルの放射線へのばく露後に、5×10
3Paを超えるが10
6Pa未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
初期貯蔵弾性率(室温で周波数1Hzで測定される)が、電磁スペクトルの放射線へのばく露後に、5×10
3Paを超えるが3×10
5Pa未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
最終貯蔵弾性率が、高温条件へのばく露後に、10
6Paを超える(室温で周波数1Hzで測定される)、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
1又は複数のSi原子に結合したビニル基を有する直鎖又は分岐のポリシロキサン樹脂のビニルメチルシロキサン単位のモル%が1~99%の範囲である、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
1又は複数のSi原子に結合したビニル基を有する直鎖又は分岐のポリシロキサン樹脂のビニルメチルシロキサン単位のモル%が4.0~13.0%の範囲である、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
1又は複数のSi原子に結合したビニル基を有する直鎖又は分岐のポリシロキサン樹脂の(メタ)アクリレートポリシロキサン樹脂に対する比率が、99:1~40:60である、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
(a)1又は複数のSi原子に結合したビニル基を有する直鎖又は分岐のポリシロキサン樹脂が、以下:
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、水素、ヘテロ原子又は不飽和を有するか又は有しないC
1-10脂肪族又はC
6-10芳香族炭化水素から独立して選択され、そしてw、x、y、及びzは、繰り返し単位のモル分率である(w+x+y+z=1、w>0))
によって表される構造を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
基板、
担体、及び、
担体と基板との間に配置された請求項1~
13のいずれか1項に記載の組成物
を含む、アセンブリ。
【請求項15】
基板を担体に接合するための方法であって:
(a)基板を提供すること;
(b)担体を提供すること;
(c)請求項1~
13のいずれか1項に記載の組成物を、基板又は担体の少なくとも1つ上に配置すること;
(d)組成物が担体と基板との間に配置されるように基板と担体とを接触させて、アセンブリを形成すること;及び、
(e)(i)アセンブリを電磁スペクトルの放射線にばく露すること、
(ii)アセンブリを高温条件にばく露すること、又は
(iii)(i)に続いて(ii)を行うこと
によって組成物をラジカル硬化すること
を含む、方法。
【請求項16】
接着して接合されている担体から基板を剥離するための方法であって:
(a)それらの間に請求項1~
13のいずれか1項に記載の組成物を有する基板及び担体を含むアセンブリを提供すること;及び
(b)担体から基板を分離すること
を含む、方法。
【請求項17】
組成物が、以下のうちの少なくとも1つを示す、請求項
16に記載の方法:電磁スペクトルの放射線へのばく露後に、10
3Paを超える初期貯蔵弾性率(室温で周波数1Hzで測定される);電磁スペクトルの放射線へのばく露後に、5×10
3Paを超えるが10
6Pa未満である初期貯蔵弾性率(室温で周波数1Hzで測定される);電磁スペクトルの放射線へのばく露後に、5×10
3Paを超えるが3×10
5Pa未満である初期貯蔵弾性率(室温で周波数1Hzで測定される)、及び高温条件へのばく露後に、10
6Paを超える最終貯蔵弾性率(室温で周波数1Hzで測定される)。
【請求項18】
1又は複数のSi原子に結合したビニル基を有する直鎖又は分岐のポリシロキサン樹脂(a)が、トリメチルシロキシ末端化ビニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーであり;少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリレートポリシロキサン樹脂(b)が、(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーであり;そして、光開始剤と、ペルオキシド又はヒドリドシロキサン又はポリヒドリドシロキサンのうちの1つと、の組合せを含む、開始剤(c)が、
【化3】
及び1,1-ジ-(t-アミルペルオキシ)-シクロヘキサン、又は
【化4】
トリメチルシロキシ末端化ポリメチルヒドロシロキサン、3,5-ジメチル-ヘキシン-3-オール、及び白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高温接着剤用途における使用のための、特に、1つの基板を別の基板に一時的に接着して取り付けるための、二重硬化性組成物が提供される。これらの二重硬化性接着剤は、UV放射線ばく露によってBステージ化して初期生強度をもたらし、続いてCステージ硬化して、200℃を超える、特に300℃を超える高温プロセスに耐えることができ、それでもなお、その後に容易に剥離させて上部基板と下部基板に分離できる、シリコーン系組成物である。
【背景技術】
【0002】
関連技術の簡単な説明
数多くの産業において、商品、特に、パーソナルエレクトロニクスのような消費者向け商品のアセンブリにおいて、可撓性かつ/又は極薄の基板の使用への関心が高まっている。例えば、ステンレス鋼、シリコンウェハ、ガラス、セラミック、ポリイミド、及びポリエステルフィルムが、そのような基板としてしばしば使用される。可撓性かつ/又は極薄の基板は、下流の製造条件において自立させて扱うにはあまりに脆弱であり、持ちこたえさせるには好適な担体上に支持する必要がある。製造プロセスが行われた後、基板は、担体から、損傷せずに、好ましくは環境温度で、取り外し可能である必要がある。
【0003】
一例としてエレクトロニクス産業では、撮像ディスプレイ、センサー、光電池及びRFIDが、携帯電話、携帯情報端末、iPAD、又はテレビのディスプレイ用途のために、薄型かつ/又は可撓性の基板をますます必要としている。例示的な基板は、機能がパッケージされた極薄の(100μm)ガラスである。ガラスは、薄膜トランジスタ(「TFT」)を形成するために400℃で、あるいは透明導電体として酸化インジウムスズ(「ITO」)を堆積させるために350℃で加工される。ガラスの脆弱性と過酷なプロセス条件のために、このガラスは、製造中、より安定な基板によって、補強又は保護する必要がある。
【0004】
このような用途では、容易にかつきれいに剥離可能であり、高い加工温度における仮接合を可能とし、かつ基板の取り扱いや性能を損なわない、高温安定接着剤が必要とされる。そのような接着剤の設計及び開発によって、既存の製造方法(例えば、半導体、アクティブマトリクス薄膜トランジスタ、タッチ膜、又は光電池の製造方法)において、これまで組み込まれている製造ツールや機械の基盤の使用が可能となる。現在入手可能な仮止め接着剤の大部分は、製造工程の最大加工温度(これは、400℃にも達する可能性がある)で熱的に安定でない。
【0005】
後でターゲット部品に損傷を与えることなく室温で取り除くことができる高温仮接合用途に好適な接着剤は、様々な産業にわたって、より薄型で、かつ/又はより可撓性の基板の使用を進歩させるであろう。
【0006】
近年、国際特許公開WO第2015/000150号は、(A)1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン上のビニル基と末端Si-H水素を有するシラン又はシロキサン上の末端Si-H水素との間の反応のヒドロシリル化反応生成物、(B)ヒドロシリル化反応生成物の架橋剤、並びに(C)金属触媒及び/又はラジカル開始剤を含む、剥離性接着剤組成物を記載している。
【0007】
前述の段落で参照した剥離性接着剤におけるこの最近の進歩にもかかわらず、そのようなプロセスのスループットを向上させるために、UV照射へのばく露後に迅速な固定をもたらし、続いて高温条件へのばく露によって接着剤組成物を熱硬化させて最終的な硬化状態に達する組成物が非常に望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示された接着剤組成物及びプロセスは、その要望を満たす。
【0009】
本発明の組成物は、電磁スペクトルの放射線にばく露されると、液体からBステージ硬化のゲル又は固体に硬化することができる。該状態変換は感圧性接着剤を形成し、25℃及び1Hzで、>5.0×103Pa、望ましくは>1.0×104Paの貯蔵弾性率G’を達成する。これらの特性は十分な接着強度をもたらす。本発明の組成物に感圧接着特性を付与するには、粘着性に関するDahlquist基準[Dahlquist,C.A.,Creep,in Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology,Satas D.ed.,Warwick,RI(1999)を参照されたい]によると、25℃及び1Hzで、3.0×105Pa以下の貯蔵弾性率G’が望ましい。高温条件へのばく露によるCステージ硬化の後、本発明の組成物は、望ましくは、25℃及び1Hzで、>1.0×106Paの貯蔵弾性率G’に達する。これらの特性は、組成物にタックフリー表面をもたらし、それにより、該組成物によって互いに貼り付けられた基板の容易な分離(separation)/剥離(debonding)が可能となる。
【0010】
大まかに言えば、本発明の組成物は、
(a)1又は複数のビニル基を有するポリシロキサン樹脂;
(b)少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリル化ポリシロキサン樹脂;及び
(c)光開始剤と、ペルオキシド及びヒドリドシロキサン又はヒドリドポリシロキサンのうちの1種と、の組合せを含む開始剤
を含む組成物を対象とする。
【0011】
本発明の組成物は、2つの異なる様式によって硬化可能である。第1の様式は、電磁スペクトルの放射線(例えば、UV)へのばく露であり、そして第2の様式は、高温条件へのばく露である。これらの様式をタンデムに使用してもよい。
【0012】
本発明の組成物は、様々な方法に有用である。例えば、本発明の組成物を用いて接合及び剥離する方法が本明細書に提供される。
【0013】
接合方法に関して、基板を担体に接合する方法が提供される。該方法は、以下の工程:
(a)基板及び担体を提供する工程;
(b)本発明の組成物を基板及び/又は担体上に配置する工程;
(c)担体と基板との間に本発明の組成物が配置されるように、基板と担体とを接触させて、アセンブリを形成する工程;
(d)(i)アセンブリを高温条件にばく露するか、又は
(ii)アセンブリを電磁スペクトルの放射線にばく露するか、又は
(iii)アセンブリを電磁スペクトルの放射線に、続いて高温条件にばく露する
ことによって、本発明の組成物を硬化させる工程
を含む。
【0014】
剥離方法に関して、担体から基板を剥離する方法が提供される。該方法は、以下の工程:
(a)本発明の組成物を用いて担体に接着して接合された基板を提供する工程;及び
(b)担体から基板を分離する工程
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】アクリレート官能性シリコーン(UMS-182)を含むか含まない光開始ビニルシロキサン(VDT-731)-ラジカル光開始剤(Irgacure 2100)組成物の貯蔵弾性率の発現
【
図2】異なるレベルのアクリレート官能性シリコーン(UMS-182)を含む光開始ビニルシロキサン(VDT-731)-ラジカル光開始剤(Irgacure 2100)組成物の貯蔵弾性率の発現
【
図3】アクリレート官能性シリコーン(UMS-182) 対 メタクリレート官能性シリコーン(RMS-083)を使用した光開始ビニルシロキサン(VDT-731)-ラジカル光開始剤(Irgacure 2100)組成物の貯蔵弾性率の発現
【
図4】異なるラジカル光開始剤を使用した光開始ビニルシロキサン(VDT-731)-アクリレート官能性シリコーン(UMS-182)組成物の貯蔵弾性率の発現
【
図5】熱開始ビニルシロキサン(VDT-731)-ラジカル光開始剤(Irgacure 2100)/ペルオキシド開始剤(Luperox 531M80)組成物の貯蔵弾性率の発現
【
図6】二重硬化性UV/熱開始ビニルシロキサン(VDT-731)アクリレート官能性シリコーン(UMS-182)/ペルオキシド開始剤(Luperox 531M80)組成物の貯蔵弾性率の発現
【
図8】180度剥離試験機における剥離力として記録された力Fを示す剥離強度試験片の略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
この明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「基板」は、製造プロセスのターゲット部品を指し、そして「担体」は、「基板」の支持構造を指す。「Bステージ」プロセスは、一般に、接着剤系の部分硬化、溶媒の蒸発、又はその両方を伴い、しばしばUV又は熱を使用する。これは、典型的には、上記の剥離性(debondable)接着剤の場合のように、接着剤の取り扱いを容易にするか、又は初期接着強度をもたらす。次いで接着剤系を高温で加熱すると、接着剤系のより完全な架橋が起こることができ、「C-ステージ」硬化が達成される。
【0017】
ビニルシリコーン樹脂は、Si-CH=CH2基を有する直鎖又は分岐のポリシロキサン化合物である。
【0018】
ビニルシリコーン樹脂の代表的な構造を下記に示す:
【0019】
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、水素、ヘテロ原子又は不飽和を有するか又は有しないC
1-10脂肪族又はC
6-10芳香族炭化水素から独立して選択され、そしてw、x、y、及びzは、繰り返し単位のモル分率である(w+x+y+z=1、w>0))。
【0020】
一般に、これらの樹脂の鎖末端はトリメチルシリル基又はビニルジメチルシリル基によって終端される。例示的なビニルシリコーンは、GelestからVDTの製品表示で入手可能である。
【0021】
(メタ)アクリレートシリコーン樹脂は、主鎖又は鎖末端のいずれかに(メタ)アクリレート基を有する直鎖又は分岐のポリシロキサン化合物である。
【0022】
(メタ)アクリレートシリコーン樹脂の代表的な構造を下記に示す:
【0023】
【化2】
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、水素、ヘテロ原子又は不飽和を有するか又は有しないC
1-10脂肪族又はC
6-10芳香族炭化水素から独立して選択され、Xは、ヘテロ原子又は不飽和を有するか又は有しないC
1-10脂肪族又はC
6-10芳香族炭化水素から選択される連結基であり、x
1、x
2、y
1、y
2、及びzは、繰り返し単位のモル分率である(式中、x
1+x
2+y
1+y
2+z=1)であり、そしてAは、水素又は(メタ)アクリレート基のいずれかである)。例示的な(メタ)アクリレートシリコーンとしては、Gelest Inc.から商品表示DMS-R、RMS、及びUMSで市販されている製品、並びにEvonikから市販されている剥離コーティング用のTEGO RCシリコーン樹脂が挙げられる。これらの各々についてのさらなる詳細を実施例の項に示す。加えて、アクリレートシリコーンはまた、Siltech CorporationからもSilmer ACRの製品ラインで、例えば、Silmer ACR D208、Silmer ACR D2、Silmer ACR Di-10、Silmer ACR Di-50、Silmer ACR Di-1508、Silmer ACR Di-2510、Silmer ACR Di-4515-O、及びFluorosil ACR C7-Fが入手可能である。
【0024】
ラジカル熱開始剤は、熱下でラジカル種を生成してラジカル反応を開始することができる物質である。典型的な熱開始剤は、アゾ化合物、並びに結合が弱く結合解離エネルギーが小さい有機/無機ペルオキシドである。
【0025】
好適なラジカル熱開始剤はよく知られており、また、ジクメンペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、及びt-ブチルペルベンゾエートなどのペルベンゾエートから選択することができる。Luperox 531M80[1,1-ジ-(t-アミルペルオキシ)-シクロヘキサン]など、ArkemaからLuperoxの商品名で市販されている有機ペルオキシドが本明細書において特に有用である。
【0026】
ヒドリドシラン及びヒドリドシロキサン樹脂は、ビニルシリコーン樹脂構造上の二重結合とのヒドロシリル化反応が可能なSi-H基を有する化合物である。例示的な化合物としては、これらに限定されるものではないが、以下の構造が挙げられる:
【0027】
【化3】
(式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、水素、ヘテロ原子又は不飽和を有するか又は有しないC
1-10脂肪族又はC
6-10芳香族炭化水素から独立して選択され、そしてw、x、y、zは、繰り返し単位のモル分率である(w+x+y+z=1、w>0))
【0028】
ヒドロドシラン及びヒドリドシロキサン樹脂はまた、環状シロキサン構造で存在してもよく、その例は、シクロトリシロキサン(D3)、シクロペンタシロキサン(D5)、又はさらに高位のものである。
【0029】
ヒドロシリル化触媒(hydrosilation catalysts(hydrosilylation catalystsとも呼ばれる))は、不飽和二重結合にわたるSi-H結合の付加を促進する。これらは典型的には白金及びロジウム化合物などの金属触媒である。
【0030】
別の実施形態では、この発明は、接着剤組成物が基板の間に配置されている、基板と担体とのアセンブリである。
【0031】
さらなる実施形態では、担体から基板を剥離する方法が提供される。該方法は、以下の工程:(a)基板及び担体を提供する工程、(b)基板及び/又は担体上に剥離性接着剤を配置する工程、(c)剥離性接着剤がそれらの間に配置されるように基板と担体とを接触させて、アセンブリを形成する工程、(d)基板を担体に接着させるのに有利な条件にアセンブリをばく露する工程であって、かかる条件は、高温で加熱すること、電磁スペクトルの放射線にばく露すること、又は電磁スペクトルの放射線へのばく露に続いて加熱することである、工程、並びに(e)基板を担体から分離する工程、を含む。
【0032】
工程(d)が加熱を伴う場合には、温度は、100℃~175℃の範囲で1~30分間であるべきである。工程(d)が放射線ばく露を伴う場合、放射線は、400ワットランプを約1~4分間使用して生成及び印加され得る。放射線と熱の組み合わせを使用して所望の硬化を得る場合には、好適な条件は、過度の実験を行うことなく当業者が決定することができる。
【実施例】
【0033】
ゲル浸透クロマトグラフィーを使用してシリコーン材料の分子量を決定した。オートサンプラ及び屈折率検出器を備えたWatersモデル717GPCを、様々な分子量のポリスチレンを標準として用い(1.1M~162Da)、そしてテトラヒドロフランを溶媒として用いて使用した。
【0034】
下記表において、様々なシリコーン材料について、(ポリスチレン標準に対する)平均分子量(Mn及びMw、ダルトンで)及び多分散度(Mn/Mw)計算値を示す。
【0035】
【0036】
上記のデータは、VDTシリーズ、以下によって表されるビニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー(トリメチルシロキシ末端化)についての例示である:
【0037】
【0038】
【0039】
上記のデータは、DMSシリーズ、以下によって表されるビニル末端化ポリジメチルシロキサンについての例示である:
【0040】
【0041】
【0042】
上記のデータは、
PDVシリーズ:以下によって表されるジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー:
【0043】
【化6】
TEGO RC-902:CAS番号155419-56-のアクリル化シリコーンであり、かつ、製造業者によって、ジ-Me、水素末端化シロキサン及びシリコーンであり、アクリル酸及び2-エチル-2[(2-プロペニルオキシ)メチル]-1,3-プロパンジオールとの反応生成物と説明されている;並びに
UMSシリーズ:(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー:
【0044】
【化7】
UMS-182:15~20%の(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン繰り返し単位
UMS-992:99~100%の(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン繰り返し単位
についての例示である。
【0045】
実施例1:ビニルシリコーン樹脂のUV硬化に対するアクリル化ポリシロキサンの影響
7~8%のビニル基を有するビニルシリコーン樹脂VDT-731(Gelest)とIrgacure 2100との100:0.9(重量)ブレンドを230mW/cm
2UVA下で硬化させた。Anton Paar Physica MCR501フォトレオメーターで、8mmプレート、1mmギャップを使用し、1Hzで硬化をモニターした。UV硬化は60秒で開始した。この試料をVDT-731:UMS-182:Irgacure 2100の90:10:0.9ブレンド(重量)と比較したが、ここでUMS-182(Gelest)は、シリコーンポリマー鎖に沿って15~20%のアクリレート基を有するシリコーン樹脂である。
図1に示すように、少量のアクリル化シリコーンの使用は、硬化速度を劇的に改善し、また貯蔵弾性率をおよそ2桁増加させる結果となった。組成物中の全てのシロキサン繰り返し単位の中でアクリレート官能基のレベルが非常に低い(約2%)ことを考慮すると、硬化の改善は極めて効果的である。最も重要なことは、貯蔵弾性率が10
4Paを超えたことである。また、Tanデルタ、貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比率によれば、UMS-182を含有する配合物は、わずか1.5秒でゲル化したことも注目された。アクリル化シリコーンを含まない場合、ゲル化プロセスは2分超を要した。
【0046】
Irgacure 2100は、以下の構造を有する:
【0047】
【0048】
このことは、VDT-731:UMS-182:Irgacure 2100の94.6:5.4:0.9ブレンド(重量)でも繰り返された。今回も、アクリレート官能基が極めて低レベルの場合でさえ、非常に効果的な弾性率の増強が観察された(
図2を参照されたい。)。
【0049】
実施例2:ビニルシロキサン及びアクリレートモノマーのモデル試験
SIV9082:アクリル酸ブチルの90:10(重量)ブレンドを、2重量%のDarocur 1173を使用して光重合させた。混合物を石英NMR試料管中に封入し、そして約50mW/cm2UVA下で5分間照射した。SIV9082(Gelest)は、以下の構造を有するビニルシロキサンモノマーである:
【0050】
【0051】
Darocur 1173は、以下の構造を有する:
【0052】
【0053】
SIV9082:アクリル酸ブチルブレンドのモル比は、4.6:1である。このブレンドは、高速アクリレートモノマーの単独重合の代わりに、2種のモノマー間の共重合反応を促進するのに役立つ。
【0054】
UV照射前後に1H NMR分析を行った。さらに、残留モノマーをUV重合試料から400ミクロンの真空下、95℃で除去したところ、1H NMRにより、ビニルシロキサンSIV9082及びアクリル酸ブチルモノマーの両方が組み込まれたポリマーの形成が確認される。
【0055】
実施例3:アクリレートシリコーンとメタクリレートシリコーンの比較
この例では、シリコーン繰り返し単位中に7~9%のメタクリレート基を有するメタクリル化シリコーンRMS-083(Gelest)を試験した。90:10:0.9の比率及び80:20:0.9の比率のVDT-731:RMS-083:Irgacure 2100ブレンドを、上記実施例1において製造及び評価したアクリル化シリコーン配合物と比較した。硬化がより遅いことが観察されたが、いずれの試料も最終的に5×10
3Pa領域まで硬化した(
図3を参照されたい。)。
【0056】
実施例4:高官能性アクリレートシリコーンの使用
この例では、UMS-992(Gelest)、全シロキサン繰り返し単位上に99~100%のアクリレート基を有するアクリレートシリコーンを試験した。VDT-731:UMS-182:UMS-992:Irgacure 2100の90:10:5:0.9の比率のブレンドをフォトレオメトリーによって硬化させると、貯蔵弾性率が約104Paであることが見出された。
【0057】
実施例5:異なる光開始剤の比較
この例では、VDT-731:UMS-182:光開始剤の樹脂ブレンドを90:10:0.9の比率で調製した。3つの異なる種類の光開始剤を評価した(Irgacure 2100、Darocur 1173、及びIrgacure MBF)。Irgacure 2100はアシルホスフィンオキサイド型開始剤であり、Darocur 1173はアルファ-ヒドロキシルケトン型開始剤であり、そしてIrgacure MBFはフェニルグリオキシレート型開始剤である。Irgacure MBFは下記に示す構造を有する:
【0058】
【0059】
フォトレオメトリーを使用して硬化させると、3種全てにおいて、硬化後に5×10
3Paを超える貯蔵弾性率を有する硬化生成物が得られた。しかしながら、Irgacure 2100が最も速い光開始剤であることが見いだされた(
図4を参照されたい)。一方、Darocur 1173は、硬化後により高い貯蔵弾性率をもたらした。
【0060】
さらに、TEGO A18(Evonik)を、Darocur 1173に対するより低揮発性の代替物として試験したところ、同様の性能が認められた。この開始剤の構造を下記に示す(式中、Rは、C10~13アルキル鎖を有するアルキル基である):
【0061】
【0062】
実施例6:VDT 731の熱硬化
剥離性接着剤の重要な特性は、プロセス後に容易に剥離できる能力である。一般的に言えば、10
6Paを超える貯蔵弾性率を有する接着剤は、感圧接着剤の領域を超え、タックフリーである。VDT-731を2及び4重量%のLuperox 531M80とブレンドし、そしてレオメーター上で硬化させた。試料を高温条件へのばく露(室温から150℃の温度まで10℃/分の間隔で昇温させ、次いで150℃の温度で1時間保持した)によって硬化させた。
図5に示すように、硬化試料は、10
6Paを超える貯蔵弾性率をもたらした。この例は、この化学に基づく試料が熱誘導性Cステージ硬化に好適であることを実証している。
【0063】
実施例7:二重硬化性配合物
VDT-731(90.0g)、UMS-182(1.0g)、Irgacure2100(0.1g)、及びLuperox 531M80(0.2g)を合わせて混合し、そしてガラスダイ(4mm2)上に分配し、その上に顕微鏡ガラススライドを配置した。電磁スペクトルの放射線(50mw/cm2UVA)を、ガラスダイ/ガラススライドアセンブリに30秒間当てた。次いで、アセンブリを150℃の高温条件に60分間ばく露した。次に、アセンブリを350℃又は400℃のいずれかにおいて30分間の焼成に供して、TFT/ITOプロセスを模倣した。これら2つの焼成条件において、ダイはガラススライドに接着された。しかし、該ダイは、本明細書に記載の剥離強度評価技術を使用して容易に剥離することが認められた。
【0064】
図6を参照すると、フォトレオメトリー測定値は、先ず電磁放射線へのばく露後、そして次に高温条件へのばく露の弾性率の発現を示している。
【0065】
実施例8:3つのマスターバッチの調製
マスターバッチAは、20.0gのVDT-731、0.20gのIrgacure 2100、及び0.40gのLuperox 231を含有する。マスターバッチBは、10.0gのUMS-182、0.10gのIrgacure 2100、及び0.20gのLuperox 231を含有する。マスターバッチCは、10.0gのTego RC-902アクリレートシリコーン樹脂(Evonik)、0.10gのIrgacure 2100、及び0.20gのLuperox 231を含有する。これらのマスターバッチから様々なブレンド試料を調製し、それらを下記表1に示す。ブレンド試料を、フォトレオメーターにおいて、実施例1の条件を使用して5分間硬化させた。ブレンド試料の各々についてのG’値もまた、表1に記録する。
【0066】
【0067】
これらのデータから、本発明の組成物の感圧接着性を達成するためには、ビニル官能基のアクリレート官能基に対する比率が21:1~0.29:1の範囲内にほぼ収まるように、ビニルシリコーンの(メタ)アクリレートシリコーンに対する比率が97:3~40:60の範囲内であることが望ましい。
【0068】
実施例9:3つのマスターバッチの調製
UMS-992、99~100モル%の(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン単位を有するアクリレートシリコーン樹脂を、VDT-731及び開始剤パッケージとのブレンドとして評価した。各試料の1滴を、2枚の顕微鏡スライドの間に置き、そして電磁スペクトルの放射線(50mW/cm2UVA)に60秒間ばく露した。次いでこのようにして形成したアセンブリを、150℃の高温条件に1時間ばく露した。結果を表2に要約する。
【0069】
【0070】
ここで、望ましいビニルシリコーンの(メタ)アクリレートシリコーンに対する比率は、99:1~90:10の範囲内であり、ビニル官能基のアクリレート官能基に対する比率は、およそ19:1~1.4:1の範囲内である。
【0071】
実施例10:様々なビニルシリコーン樹脂
ポリマー鎖に沿って異なるレベルのビニル基を有する様々なビニルシリコーンを配合した。各試料の1滴を2枚の顕微鏡スライドの間に置き、そして電磁スペクトルの放射線(50mW/cm2UVA)に60秒ばく露した。次いでこのようにして形成したアセンブリを、150℃の高温条件に1時間ばく露した。結果を表3に要約する。
【0072】
【0073】
実施例11:ヒドリドシロキサン熱硬化を使用した二重硬化性配合物
VDT-731(9.0g)、UMS-182(1.0g)、Darocur1173(0.1g)、HMS-993(0.6g)、3,5-ジメチル-ヘキシン-3-オール(0.05g)、及びSIP6830.3(0.0062g)を合わせて混合した。HMS-993(Gelest)は、全ての繰り返し単位にSi-H基を有するヒドリドシロキサン樹脂であり(製造者、Gelestによれば、2100~2400の分子量を有するトリメチルシロキシ末端化ポリメチルヒドロシロキサンである)、3,5-ジメチル-ヘキシン-3-オールは、ポットライフ安定性のためのヒドロシリル化阻害剤であり、SIP6830.3(Gelest)は、ビニルシロキサン樹脂及びヒドリドシロキサン樹脂のヒドロシリル化硬化を触媒するための白金触媒である。より具体的には、白金触媒は、白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体又はKarstedt触媒と説明されるものであってよく、ここで、ビニル末端化ポリジメチルシロキサン中、3~3.5%の濃度の白金が存在し、錯体はPt[O(SiMe2CH=CH2)2]1.5と記載される。試料を、ガラスダイ(4mm2)と顕微鏡ガラススライドとの間で、50mw/cm2UVAの放射線へ60秒間ばく露し、続いて150℃の温度で60分間加熱して硬化させた。次いで硬化アセンブリを、350℃又は400℃のいずれかで30分間の焼成に供した。これら2つの焼成条件において、ダイはガラススライドに接着した。しかしながら、ダイは容易に剥離することが観察された。
【0074】
剥離試験評価は、Cheminstrument180度剥離接着試験機にて行った。剥離試験試料は、
図7に示すように、50×75mmのガラス基板(1mm厚)上に50mm×75mmガラス基板(0.12mm厚)をオフセットで接着することによって調製した。オーバーラップは50mmである。ガラス基板は、0.125mmとなるように厚さが制御された組成物によって接着した。
図8は、接合されたアセンブリを分離するために適用される力を示す。2N/25mm超の平均剥離力は、かかる条件下では基板の故障が通常認められるため、剥離性でないとみなされる。1.5~2N/25mmの平均剥離力を半剥離性(semi-debondable)とみなし、1.5N/25mm未満の平均剥離力を剥離性とみなす。
【0075】
比較例1:ビニル末端化ポリジメチルシロキサン
一連のアルファ、オメガ-ビニル末端化線状ポリジメチルシロキサンを、1重量パーセントのDarocur 1173の存在下、50mw/cm2UVAの放射線への60秒間のばく露で硬化させた。結果を表4に要約する。
【0076】
【0077】
表に示されるように、60,000ダルトンを超える分子量を有するこれらのアルファ、オメガ-ビニル末端化線状ポリジメチルシロキサンのみが、硬化後、ゲル化するか、又は感圧接着剤として有用である可能性を示すことが見出された。DMS-V51は、1重量%のDarocur 1173及び2重量%のLuperox 231と混合し、そしてその1滴を2枚の顕微鏡スライド間に置いた。スライドアセンブリは、UV範囲の電磁スペクトルの放射線(50mw/cm2UVA)に60秒間ばく露した。次に、スライドアセンブリを150℃の温度で1時間加熱した。硬化試料は、スライドに対して良好な接着性を示したが、濁っており不均一であることが観察された。顕微鏡スライドを手で分離することは困難であり、従って、剥離性接着剤には好適ではなかった。
【0078】
比較例2:ビニル末端化ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー
一連のアルファ、オメガ-ビニル末端化線状ポリジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーを、1重量パーセントのIrgacure 2100及び2重量パーセントのLuperox 231と混合した。各試料の1滴を、2枚の顕微鏡スライドの間に置き、そして電磁スペクトルの放射線(50mW/cm2UVA)に60秒ばく露し、次いで150℃の温度で1時間加熱した。結果を表5に要約する。
【0079】
【0080】
これらの樹脂はいずれも、UV硬化後、感圧接着性を有する組成物をもたらさない。また熱硬化後、全ての試料スライドは手で分離することが困難であった。
【0081】
レオロジー試験を、表5の配合物について、室温から150℃まで10℃/分で昇温し、次いで150℃で1時間保持することによって実施した。最終的な貯蔵弾性率を表6に一覧にする。
【0082】