(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/24 20060101AFI20220527BHJP
C08F 20/06 20060101ALI20220527BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CEY
C08F20/06
B01J20/26 D
(21)【出願番号】P 2019565501
(86)(22)【出願日】2018-06-26
(86)【国際出願番号】 KR2018007236
(87)【国際公開番号】W WO2019022389
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2019-11-27
(31)【優先権主張番号】10-2017-0096361
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン-フン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン、テ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、チュン-ウィ
(72)【発明者】
【氏名】シン、クァンイン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、チャン-フン
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/081702(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/075070(WO,A1)
【文献】特表2017-511416(JP,A)
【文献】国際公開第2017/078228(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0074206(KR,A)
【文献】特開2016-112475(JP,A)
【文献】特開2016-113465(JP,A)
【文献】特表2011-511136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J3/00-3/28、99/00、C08F2/00-2/60、
C08C19/00-19/44、C08F6/00-246/00、301/00
C08K3/00-13/08、C08L1/00-101/14
B01J20/00-20/28、20/30-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)内部架橋剤の存在下で少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階と、
B)前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階と、
C)表面架橋剤の存在下で熱処理により前記ベース樹脂粉末を表面架橋して高吸水性樹脂粒子を形成する段階と、
D)前記高吸水性樹脂粒子に凝集防止剤および水を添加する段階と、
E)前記水を蒸発させる段階とを含み、
前記凝集防止剤は、ポリカルボン酸系共重合体を含み、前記ポリカルボン酸系共重合体は、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系単量体および(メタ)アクリレート系単量体のランダム共重合体であり、
前記D)段階は、水および凝集防止剤の投入後、50~120℃の温度条件および300~1000mmH
2Oの圧力条件で5分~2時間の熟成を行う、高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、下記の化学式1で表される化合物である、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法:
[化学式1]
R
1-COOM
1
前記化学式1において、
R
1は、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキルグループであり、
M
1は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【請求項3】
前記内部架橋剤は、
N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、およびエチレンカーボネートからなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記表面架橋剤は;
炭素数3~10のアルキレンカーボネートを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記表面架橋剤は、
炭素数2~10の多価アルコール、炭素数1~10のアミノアルコール、炭素数2~10のオキセタン化合物、炭素数2~10のエポキシ化合物、炭素数2~10の多価アミン化合物、カルシウム水酸化物、マグネシウム水酸化物、アルミニウム水酸化物、鉄水酸化物、カルシウム塩化物、マグネシウム塩化物、アルミニウム塩化物、および鉄塩化物からなる群より選ばれる1種以上をさらに含む;請求項4に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記C)段階は、180~250℃で行われる、請求項1~5のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記D)段階では、前記表面架橋された高吸水性樹脂粒子100重量部に対し;
1~10重量部の水;および
0.01~0.10重量部の凝集防止剤を添加する;請求項1~6のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系単量体は、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートであり、前記(メタ)アクリレート系単量体は、アクリル酸および/またはメタクリル酸である、請求項1~7のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記水を蒸発させる段階以後に得られた高吸水性樹脂は、100℃で30分間放出する総揮発性有機化合物の量が2ppm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2017年7月28日付韓国特許出願第10-2017-0096361号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれている。
【0002】
本発明は、基本的に優れた吸収性能および吸収速度を維持しながらも、高い粉体流動度値を有し、製造過程で含まれる各種添加物から起因する臭いを低減させた高吸水性樹脂およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(super absorbent polymer,SAP)とは、自体重量の約5百~1千倍程度の水分を吸収できる合成高分子物質であり、SAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などとも呼ばれている。高吸水性樹脂は、生理用具に実用化され始め、現在は子供用紙おむつなどの衛生用品、園芸用土壌補修剤、土木用止水材、育苗用シート、食品流通分野における鮮度保持剤など多様な材料に広く使われている。
【0004】
このような高吸水性樹脂を製造する方法としては、逆相懸濁重合による方法または水溶液重合による方法などが知られている。そのうち逆相懸濁重合による高吸水性樹脂の製造については、例えば日本特開昭56-161408号、特開昭57-158209号、および特開昭57-198714などに開示されている。また、水溶液重合による高吸水性樹脂の製造は、複数の軸が備えられた混練機内で含水ゲル状重合体を破断および冷却しながら重合する熱重合方法と、ベルト上で高濃度の水溶液に紫外線などを照射して重合と乾燥を同時に行う光重合方法などが知られている。
【0005】
また、高吸水性樹脂の吸収能や吸収速度など、吸収と関連した物性を向上させるための表面架橋、発泡などの多様な後処理工程などが知られており、各工程では、それぞれの目的を達成するために各種添加剤を用いる。
【0006】
しかし、このような添加剤、あるいはこのような添加剤から起因した副産物は、最終生成物である高吸水性樹脂粒子にそのまま残っており、悪臭を誘発する要因になり得る。
【0007】
これを解決するために、良い香りを持つ別の芳香性物質を添加するか、臭い誘発分子を吸収または吸着できる別の吸着性物質あるいは消臭剤などを添加する方法が試みられた。
【0008】
しかし、別の芳香性物質を添加することは、根本的に問題を解決するものではなく、別の添加物質による副作用が発生し得、また使用者一人一人の性向によって香りの嗜好が異なり、一部の使用者層からはかえって拒否感を持ち得る問題点がある。
【0009】
また、臭い誘発分子を吸収または吸着できる別の吸着性物質を用いる場合も、別の添加による副作用が発生し得、乾燥状態では臭い低減効果はあるが、ぬれた状態ではその機能が低下し、むしろ悪臭が相対的にひどく感じられる問題点がある。
【0010】
また、悪臭低減効果のために、空隙率を高めて吸収速度を速くする場合は、見掛け比重が低くなり、商業性が低下する問題点がある。
【0011】
そこで、既存の優れた吸収関連物性を維持しながらも、添加剤から起因した悪臭を低減させる高吸水性樹脂の製造方法に対する研究が切実に求められている実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、既存の優れた吸収関連物性を維持しながらも、添加剤から起因した悪臭が低減された高吸水性樹脂と、このような高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
A)内部架橋剤の存在下で少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階と、
B)前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階と、
C)表面架橋剤の存在下で熱処理により前記ベース樹脂粉末を表面架橋して高吸水性樹脂粒子を形成する段階と、
D)前記高吸水性樹脂粒子に凝集防止剤および水を添加する段階と、
E)前記水を蒸発させる段階とを含む、高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、
少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体が内部架橋剤の存在下で重合された架橋重合体を含み;
前記架橋重合体は、表面架橋剤によって改質された表面架橋層を含み;
粉体流動度が10g/s以上である、高吸水性樹脂を提供する。
【0015】
また、本発明は、
少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体が内部架橋剤の存在下で重合された架橋重合体を含み;
前記架橋重合体は、表面架橋剤によって改質された表面架橋層を含み;
見掛け密度が0.55g/ml以上であり;
100℃で30分間放出する総揮発性有機化合物の量が2ppm以下である、高吸水性樹脂を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の高吸水性樹脂の製造方法によれば、既存の優れた吸収関連物性を維持しながらも、添加剤から起因した悪臭が低減された高吸水性樹脂を提供できる。
【発明の実施のための形態】
【0017】
本発明の高吸水性樹脂の製造方法は、
A)内部架橋剤の存在下で少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階と、
B)前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階と、
C)表面架橋剤の存在下で熱処理により前記ベース樹脂粉末を表面架橋して高吸水性樹脂粒子を形成する段階と、
D)前記高吸水性樹脂粒子に凝集防止剤および水を添加する段階と、
E)前記水を蒸発させる段階とを含む。
【0018】
また、本発明の高吸水性樹脂は、
少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体が内部架橋剤の存在下で重合された架橋重合体を含み;
前記架橋重合体は、表面架橋剤によって改質された表面架橋層を含み;
粉体流動度が10g/s以上である。
【0019】
また、本発明の他の一側面による高吸水性樹脂は、
少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体が内部架橋剤の存在下で重合された架橋重合体を含み;
前記架橋重合体は、表面架橋剤によって改質された表面架橋層を含み;
見掛け密度が0.55g/ml以上であり;
100℃で30分間放出する総揮発性有機化合物の量が2ppm以下である。
【0020】
また、本明細書で使われる用語は、単に例示的な実施例を説明するために使われるものであり、本発明を限定することを意図しない。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味を有さない限り、複数の表現も含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解しなければならない。
【0021】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な形態を有し得るため、特定の実施例を例示して以下で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明の一側面による高吸水性樹脂の製造方法は、
A)内部架橋剤の存在下で少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階と、
B)前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階と、
C)表面架橋剤の存在下で熱処理により前記ベース樹脂粉末を表面架橋して高吸水性樹脂粒子を形成する段階と、
D)前記高吸水性樹脂粒子に凝集防止剤および水を添加する段階と、
E)前記水を蒸発させる段階とを含む。
【0024】
以下、各段階別に本発明を詳細に説明する。
【0025】
(重合)
先に前記高吸水性樹脂の製造方法には、水溶性エチレン系不飽和単量体から含水ゲル状重合体を形成する段階が含まれる。
【0026】
前記単量体組成物に含まれる水溶性エチレン系不飽和単量体は、高吸水性樹脂の製造に通常用いられる任意の単量体であり得る。非制限的な例として、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、下記の化学式1で表される化合物であり得る:
[化学式1]
R1-COOM1
前記化学式1において、
R1は、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキルグループであり、
M1は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0027】
好ましくは、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれら酸の1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選ばれた1種以上であり得る。このように水溶性エチレン系不飽和単量体としてアクリル酸またはその塩を用いる場合、吸水性が向上した高吸水性樹脂を得ることができ、有利である。
【0028】
その他、前記水溶性エチレン系不飽和単量体としては、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタアクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどを用いることができる。
【0029】
ここで、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したものであり得る。好ましくは前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのようなアルカリ物質で部分的に中和させたものが用いられる。
【0030】
この時、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の中和度は、約40~約95モル%、または約40~約80モル%、または約45~約75モル%であり得る。前記中和度の範囲は、最終物性に応じて変わり得るが、中和度が過度に高ければ中和した単量体が析出され、重合が円滑に行われにくいこともあり、逆に中和度が過度に低ければ高分子の吸収力が大きく落ちるだけでなく、取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質を現わすこともある。
【0031】
また、前記単量体組成物のうち前記水溶性エチレン系不飽和単量体の濃度は、重合時間および反応条件などを考慮して適切に調節でき、好ましくは約20~約90重量%、または約40~約65重量%であり得る。このような濃度範囲は、高濃度水溶液の重合反応で現れるゲル効果現象を用いて重合後未反応単量体を除去する必要が無いようにしながらも、後述する重合体粉砕時の粉砕効率の調節に有利である。ただし、前記単量体の濃度が過度に低くなれば、高吸水性樹脂の収率が低くなる。逆に、前記単量体の濃度が過度に高まれば、単量体の一部が析出されるか重合された含水ゲル状重合体の粉砕時の粉砕効率が落ちるなど工程上問題が生じ得、高吸水性樹脂の物性が低下し得る。
【0032】
一方、前記単量体組成物には高吸水性樹脂の製造に一般的に用いられる重合開始剤が含まれ得る。非制限的な例に、前記重合開始剤としては重合方法によって熱重合開始剤または光重合開始剤などが用いられる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などによって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によってある程度の熱が発生するので、熱重合開始剤がさらに含まれ得る。
【0033】
ここで、前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選ばれた一つ以上の化合物が用いられ得る。そのうちアシルホスフィンの具体例として、商用のlucirin TPO、すなわち2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-トリメチルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethyl-benzoyl-trimethyl phosphine oxide)が用いられ得る。より多様な光重合開始剤については、Reinhold Schwalmの著書である「UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」の115頁に開示されており、これを参照できる。
【0034】
また、前記熱重合開始剤としては過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素、およびアスコルビン酸からなる群より選ばれた一つ以上の化合物が用いられ得る。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na2S2O8)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K2S2O8)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH4)2S2O8)などが挙げられる。また、アゾ(Azo)系開始剤の例としては、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノ吉草酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などが挙げられる。より多様な熱重合開始剤については、Odianの著書である「Principle of Polymerization(Wiley、1981年)」の203頁に開示されており、これを参照できる。
【0035】
このような重合開始剤は、前記単量体組成物に対し、約0.001~1重量%の濃度で添加し得る。すなわち、前記重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり得、最終製品に残存するモノマーが多量抽出され得るので好ましくない。逆に、前記重合開始剤の濃度が過度に高い場合、ネットワークを成す高分子チェーンが短くなり、水可溶成分の含有量が高まって加圧吸水能が低くなるなど樹脂の物性が低下し得るので好ましくない。
【0036】
一方、前記単量体組成物には前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重合による樹脂の物性を向上させるための内部架橋剤を含む。前記架橋剤は、含水ゲル状重合体を内部架橋させるためのものであり、前記含水ゲル状重合体の表面を架橋させるための架橋剤(表面架橋剤)とは区分される。
【0037】
前記内部架橋剤としては、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重合時の架橋結合の導入を可能にするものであれば、特に制限されない。非制限的な例として、前記内部架橋剤として、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、またはエチレンカーボネートのような多官能性架橋剤を単独で使用するかまたは2以上を併用することができ、これに制限されるものではない。
【0038】
このような内部架橋剤は、前記単量体組成物に対し、約0.001~約1重量%の濃度で添加し得る。すなわち、前記内部架橋剤の濃度が過度に低い場合、樹脂の吸収速度が低くなり、ゲル強度が弱くなり得るので好ましくない。逆に、前記内部架橋剤の濃度が過度に高い場合、樹脂の吸収力が低くなって吸収体としては好ましくなくなる。
【0039】
この他にも、前記単量体組成物には必要に応じて増粘剤、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤がさらに含まれ得る。
【0040】
また、このような単量体組成物は、前述した単量体、重合開始剤、内部架橋剤などの原料物質が溶媒に溶解された溶液形態で準備される。この時、使用可能な溶媒としては、前述した原料物質を溶解させるものであれば、その構成の限定なしに用いることができる。例えば、前記溶媒としては水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテート、N,N-ジメチルアセトアミド、またはこれらの混合物などを用いることができる。
【0041】
また、前記単量体組成物の重合による含水ゲル状重合体の形成は、通常の重合方法で行うことができ、その工程は特に限定されない。非制限的な例として、前記重合方法は、重合エネルギー源の種類によって大きく熱重合と光重合に分かれるが、前記熱重合を行う場合は、ニーダー(kneader)のような撹はん軸を有する反応器で行い、光重合を行う場合には移動可能なコンベヤーベルトが備えられた反応器で行い得る。
【0042】
一例として、撹はん軸が備えられたニーダーのような反応器に前記単量体組成物を投入し、ここに熱風を供給するか反応器を加熱して熱重合することによって含水ゲル状重合体を得ることができる。この時、反応器に備えられた撹はん軸の形態に応じて、反応器の排出口に排出される含水ゲル状重合体は数ミリメートル~数センチメートルの粒子で得られる。具体的には、得られる含水ゲル状重合体は、注入される単量体組成物の濃度および注入速度などに応じて多様な形態で得られるが、通常(重量平均)粒径が約2~約50mmである含水ゲル状重合体が得られる。
【0043】
また、他の一例として、移動可能なコンベヤーベルトが備えられた反応器で前記単量体組成物に対する光重合を行う場合は、シート形態の含水ゲル状重合体が得られる。この時、前記シートの厚さは、注入される単量体組成物の濃度および注入速度に応じて変わるが、シート全体が均等に重合されるようにしながらも生産速度などを確保するために、通常約0.5~約5cmの厚さに調節することが好ましい。
【0044】
このような方法で形成される含水ゲル状重合体は、約40~80重量%の含水率を現わす。ここで、含水率は、含水ゲル状重合体の全体重量において水分が占める重量であり、含水ゲル状重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値であり得る。具体的には、赤外線加熱により重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算した値で定義される。この時、乾燥条件は、常温で約180℃まで温度を上昇させた後、約180℃で維持する方式であり、総乾燥時間は、温度上昇段階の約5分を含んで約20分に設定できる。
【0045】
(乾燥)
一方、前記高吸水性樹脂の製造方法には前述した段階により形成された含水ゲル状重合体を乾燥する段階が含まれる。
【0046】
ここで、必要に応じて前記乾燥段階の効率を上げるために、前記乾燥前に前記含水ゲル状重合体を粉砕(組粉砕)する段階をさらに経てもよい。
【0047】
非制限的な例として、前記組粉砕に利用可能な粉砕機としては、竪型粉砕機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、ロータリーカッターミル(Rotary cutter mill)、カッターミル(Cutter mill)、ディスクミル(Disc mill)、シュレッドクラッシャー(Shred crusher)、クラッシャー(Crusher)、チョッパー(chopper)、ディスクカッター(Disc cutter)などが挙げられる。
【0048】
この時、前記組粉砕は、前記含水ゲル状重合体の粒径が約2~約10mmになるように行われる。すなわち、乾燥効率の増大のために前記含水ゲル状重合体は、10mm以下の粒子に粉砕されることが好ましい。しかし、過度な粉砕時、粒子間凝集現象が発生し得るため、前記含水ゲル状重合体は、約2mm以上の粒子に粉砕することが好ましい。
【0049】
また、このように含水ゲル状重合体の乾燥段階前に組粉砕段階を経る場合、重合体は、含水率が高い状態であるため、粉砕機の表面に重合体がくっ付く現象が現れ得る。このような現象を最小化するために、前記組粉砕段階には、必要に応じてスチーム、水、界面活性剤、ClayやSilicaなどの微粉凝集防止剤;過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素、およびアスコルビン酸のような熱重合開始剤、エポキシ系架橋剤、ジオール(diol)類架橋剤、2官能基または3官能基以上の多官能基のアクリレートを含む架橋剤、水酸化基を含む1官能基の化合物のような架橋剤が添加され得る。
【0050】
一方、前記のように組粉砕あるいは重合直後の含水ゲル状重合体に対する乾燥は、約120~約250℃、または約150~約200℃、または約160~約180℃の温度下で行われ得る(この時、前記温度は乾燥のために供給される熱媒体の温度または乾燥工程で熱媒体および重合体を含む乾燥反応器内部の温度で定義される)。すなわち、乾燥温度が低いため乾燥時間が長くなる場合、最終樹脂の物性が低下し得るが、これを防止するために乾燥温度は120℃以上であることが好ましい。また、乾燥温度が必要以上に高い場合、含水ゲル状重合体の表面のみ乾燥されて後述する粉砕工程で微粉発生が多くなり、最終樹脂の物性が低下し得るが、これを防止するために乾燥温度は250℃以下であることが好ましい。
【0051】
この時、前記乾燥段階での乾燥時間は、特に限定されないが、工程効率などを考慮して前記乾燥温度下で20分~90分に調節できる。
【0052】
また、前記乾燥段階の乾燥方法も含水ゲル状重合体の乾燥工程で通常用いられるものであれば、その構成は限定なしに適用可能である。具体的には、前記乾燥段階は、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法が適用され得る。
【0053】
このような方法で乾燥された重合体は、約0.1~約10重量%の含水率を現わし得る。すなわち、重合体の含水率が約0.1重量%未満の場合、過度な乾燥による製造原価の上昇および架橋重合体の分解(degradation)が起き得るので有利でない。また、重合体の含水率が約10重量%を超過する場合、後続工程で不良が発生し得るので好ましくない。
【0054】
(粉砕)
その後、乾燥した重合体を粉砕する段階が行われる。前記粉砕段階は、乾燥した重合体の表面積に最適化するための段階であり、粉砕した重合体の粒径が約150~約850μmになるように行い得る。
【0055】
この時、粉砕機としては、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)、ジョグミル(jog mill)など通常のものが用いられ得る。また、最終的に製品化される高吸水性樹脂の物性を管理するために、前記粉砕段階により得られる重合体粒子で約150~約850μmの粒径を有する粒子を選択的に分級する段階がさらに行われ得る。
【0056】
(表面架橋)
前述した段階により粉砕した重合体、すなわち、ベース樹脂粉末を表面架橋剤によって表面架橋する段階が行われる。
【0057】
前記表面架橋は、表面架橋剤の存在下で前記粉砕した重合体の表面に架橋反応を誘導することによって、より向上した物性を有する高吸水性樹脂を形成させる段階である。このような表面架橋により前記粉砕した重合体粒子の表面には表面架橋層が形成される。
【0058】
前記表面改質は、重合体粒子表面の架橋結合密度を増加させる通常の方法で行うことができ、例えば、表面架橋剤を含む溶液と前記粉砕した重合体を混合して架橋反応させる方法で行われ得る。
【0059】
ここで、前記表面架橋剤は、前記重合体が有する官能基と反応可能な化合物であり、その構成は特に限定されない。
【0060】
ただし、非制限的な例として、前記表面架橋剤は、炭素数が3~10のアルキレンカーボネート化合物を用いることが好ましい。
【0061】
このようなアルキレンカーボネート化合物は、具体的には、例えば、1,3-ジオキソラン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン、1,3-ジオキセタン-2-オンなどが挙げられる。
【0062】
また、本発明の一実施例によれば、前記表面架橋剤は、前述したアルキレンカーボネート化合物の他に、炭素数2~10の多価アルコール、炭素数1~10のアミノアルコール、炭素数2~10のオキセタン化合物、炭素数2~10のエポキシ化合物、炭素数2~10の多価アミン化合物、カルシウム水酸化物、マグネシウム水酸化物、アルミニウム水酸化物、鉄水酸化物、カルシウム塩化物、マグネシウム塩化物、アルミニウム塩化物、および鉄塩化物などをさらに含むこともできる。
【0063】
また、本発明の他の一実施例によれば、前記表面架橋剤は、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(MPEGMAA)などを含むアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系単量体;およびアクリル酸および(メタ)アクリル酸を含む(メタ)アクリレート系単量体のような親水性単量体に由来したランダム共重合体である;ポリカルボン酸系化合物を含むものであり得る。
【0064】
このようなポリカルボン酸系化合物の具体的な例は、韓国公開特許第2015-0143167号公報などに開示されている。
【0065】
この時、前記表面架橋剤の含有量は、架橋剤の種類や反応条件などに応じて適切に調節でき、好ましくは前記粉砕した重合体100重量部に対し、約0.001~約5重量部に調節できる。前記表面架橋剤の含有量が過度に低くなれば、表面架橋がうまく行われず、最終樹脂の物性が低下し得る。逆に過量の表面架橋剤が用いられる場合、過度な表面架橋反応により樹脂の吸収力がむしろ低下し得るので好ましくない。
【0066】
また、前記表面架橋剤を添加する時にさらに水を添加できる。このように表面架橋剤と水を共に添加することによって、表面架橋剤の均等な分散を誘導でき、重合体粒子に対する表面架橋剤の浸透の深さをより最適化することができる。このような目的および効果を考慮して、表面架橋剤とともに添加される水の含有量は、前記粉砕した重合体100重量部に対して約0.5~約10重量部に調節できる。
【0067】
一方、本発明で前記表面架橋は、約180~約250℃で行われ得る。前記温度で表面架橋を行う場合、表面架橋の密度を高め得るので好ましい。より好ましくは、前記表面架橋は、約190℃以上であり、約240℃以下、約230℃以下、約220℃以下、約210℃以下、または約200℃以下で行われる。
【0068】
また、前記表面架橋反応は、約50分以上行われる。すなわち、最小限度の表面架橋反応を誘導しながらも過度な反応時の重合体粒子が損傷して物性が低下することを防止するために前述した表面架橋反応の条件で行われる。また、前記反応は、約120分以下、約100分以下、または約60分以下で行われる。
【0069】
(熟成)
また、前記表面架橋以後、前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子に凝集防止剤および水を添加する段階と、前記水を蒸発させる段階とを行う。
【0070】
前述したように、表面架橋剤など高吸水性樹脂粒子の製造のために用いられる多様な化合物、あるいはこのような添加剤から起因した副産物は、最終の生成物である高吸水性樹脂粒子にそのまま残って悪臭を誘発する要因になり得る。
【0071】
特に、表面架橋剤に用いられる化合物は、高温の表面架橋工程で多様な副産物を生成するが、このような物質などは悪臭の原因となるだけでなく、人体にも良くないため、これを除去する必要がある。
【0072】
具体的には、高吸水性樹脂の製造過程では、硫黄(sulfur)化合物、アルデヒド(aldehyde)系化合物、ケトン(ketone)系化合物、アルコール(alcohol)系化合物、フェニル(Phenyl)系化合物など多様な種類の添加剤が用いられるが、これらは、焦げた臭い、合成ゴムの臭い、ハンダ付けの臭い、ペンキの臭い、病院の臭い、草の臭い、腐った卵の臭いなど多様な悪臭を誘発する。
【0073】
そこで、本願発明の高吸水性樹脂の製造方法では、表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子に水と凝集防止剤を投入して混合し、熟成過程を行った後、水を再び蒸発させる段階を行う。
【0074】
前記のように、表面架橋が行われた高吸水性樹脂に再び水を投入して熟成する過程を行う場合、高吸水性樹脂に含まれていた除去対象化合物、すなわち悪臭を誘発し得る化合物を投入した水に溶かすことができ、後に水を蒸発させながら除去対象化合物も共に除去することが可能である。
【0075】
また、水を投入して凝集防止剤を共に投入する場合、除去対象化合物の除去効率を上げることができるだけでなく、最終生成物、すなわち製造される高吸水性樹脂粒子の粉体流動度を増加させ、見掛け比重を向上させる効果を得ることができる。
【0076】
発明の一実施例によれば、熟成過程では、前記表面架橋された高吸水性樹脂粒子100重量部に対して;約1~約10重量部の水;および約0.01~約1重量部の凝集防止剤を添加することが好ましい。
【0077】
投入する水の含有量が過度に少ない場合、除去対象化合物の除去効率が低くなる問題点が発生し得、水の含有量が過度に多い場合、高吸水性樹脂粒子で表面架橋された部分が簡単に損傷され、加圧吸水能と透過度などの物性が低下する問題点が発生し得る。
【0078】
また、前記凝集防止剤の含有量が過度に少ない場合、除去対象化合物の除去効率が低くなり、高吸水性樹脂の見掛け密度および粉体流動度の向上に寄与することはできない。凝集防止剤の含有量が過度に多い場合、高吸水性樹脂の見掛け密度が過度に小さくなり、保存効率性が低下し得、後に高吸水性樹脂を用いた製品の製造工程において、工程効率が低くなる問題点が発生し得る。
【0079】
発明の一実施例によれば、前記凝集防止剤は、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(MPEGMAA)などを含むアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系単量体;およびアクリル酸および(メタ)アクリル酸を含む(メタ)アクリレート系単量体のような親水性単量体に由来したランダム共重合体である;ポリカルボン酸系化合物を含むものであり得る。
【0080】
このようなポリカルボン酸系化合物の具体的な例は、韓国公開特許第2015-0143167号公報などに開示されている。
【0081】
すなわち、前記のようなポリカルボン酸系化合物は、表面架橋工程で他の表面架橋剤とともに用いることもでき、以後の熟成工程で凝集防止剤として投入されることもできる。
【0082】
また、水と凝集防止剤を投入した後、約50~約120℃の温度条件および約100~約1,500mmH2O未満の圧力条件で約5分~約2時間熟成を行うことが好ましく、好ましくは約50℃以上約100℃未満の相対的に低い温度条件、および約100~約1,000mmH2O、あるいは約300~約800mmH2Oの比較的低い圧条件で、熟成を行い水と除去対象物質(揮発性有機化合物)を蒸発させることが好ましい。
【0083】
前記のような熟成過程により製造される高吸水性樹脂は、100℃で30分間放出する総揮発性有機化合物の量が2ppm以下であり得る。
【0084】
(高吸水性樹脂)
上述した製造方法により製造された高吸水性樹脂は、優れた吸収関連物性を有し得、これに加えて、ぬれた状態でも悪臭が低減した特性を有することができる。
【0085】
具体的には、
本発明の一側面による高吸水性樹脂は、
少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体が内部架橋剤の存在下で重合された架橋重合体を含み;
前記架橋重合体は、表面架橋剤によって改質された表面架橋層を含み;
粉体流動度が10g/s以上であり得る。
【0086】
また、本発明の他の一側面による高吸水性樹脂は、
少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体が内部架橋剤の存在下で重合された架橋重合体を含み;
前記架橋重合体は、表面架橋剤によって改質された表面架橋層を含み;
見掛け密度が0.55g/ml以上であり;
100℃で30分間放出する総揮発性有機化合物の量が2ppm以下であり得る。
【0087】
発明の一実施例によれば、前記高吸水性樹脂の見掛け密度は、約0.58~約0.72であり得、好ましくは約0.58~約0.68g/mlであり得る。このような見掛け密度は、後述する方法によって測定されるものであり得る。
【0088】
また、前記高吸水性樹脂の粉体流動度は、約10g/s以上であり得、好ましくは約10~約12g/s、または約10~約11.6g/sであり得る。このような粉体流動度は、後述する方法によって測定されるものであり得る。
【0089】
粉体流動度が高ければ流れ性が良く、生産工程内での移送が容易であり、パッキングがうまくでき、自動包装が容易である。また、製造された高吸水性樹脂を用いる製品製造工程でも移送および投入が容易である。
【0090】
また、本発明の一実施例による高吸水性樹脂は、保水能(CRC)が約25g/g以上、好ましくは約26~約35g/gであり得る。
【0091】
本発明の他の一実施例によれば、前記高吸水性樹脂は、0.7psiで加圧吸水能(AAP)が約20g/g以上、好ましくは約22g/g以上、または約22~約26g/gであり得る。
【0092】
また、前記高吸水性樹脂は、生理食塩水流れ誘導性(SFC)値が約20(cm3・sec・10-7/g)以上、好ましくは約35以上(cm3・sec・10-7/g)、または約45以上(cm3・sec・10-7/g)であり得る。
【0093】
また、本発明の一実施例によれば、上述した方法によって製造された高吸水性樹脂は、約100℃の温度条件に露出した時、約30分間放出する総揮発性有機化合物(Total Volatile Organic Compounds,TVOC)の量が、前記高吸水性樹脂の単位重量を基準に、約2ppm以下、好ましくは約1ppm以下であるか、さらに好ましくは0.5ppm以下であり得る。
【0094】
ここで、総揮発性有機化合物とは、高吸水性樹脂を前記条件で加熱したときに発生し得る揮発性有機化合物を総称するものであり、さらに具体的には、無極性キャピラリーカラム(Non-polar Capillary Column)を用いるガスクロマトグラフィーィー分析時、n-ヘキサン(n-hexane)とn-ヘキサデカン(n-hexadecane)との間で検出される有機化合物の総合計を意味する。
【0095】
前記揮発性有機化合物は、吸水性樹脂重合、乾燥および表面架橋工程など高温条件で各種添加剤から起因する副産物として生成されるが、これが高吸水性樹脂に残留する場合、臭いを誘発し得る。
【0096】
本発明の一例による高吸水性樹脂の場合、熟成工程により前記のような揮発性有機化合物が水と共に除去されるために、樹脂自体に含むTVOCの量が画期的に減り、そのため、既存の高吸水性樹脂に比べて悪臭を低減できる。
【0097】
以下、発明の具体的な実施例により、発明の作用および効果をより詳細に説明する。ただし、このような実施例は、発明の例示として提示したものに過ぎなく、発明の権利範囲はこれによって定められない。
【0098】
<実施例1>
アクリル酸単量体100重量部に対し、苛性ソーダ(NaOH)38.9重量部および水103.9重量部を混合し、前記混合物に熱重合開始剤である過硫酸ナトリウム0.2重量部、光重合開始剤であるジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド0.01重量部および内部架橋剤であるポリエチレングリコールジアクリレート0.5重量部、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート0.05重量部を添加して単量体組成物を準備した。
【0099】
前記単量体組成物を、内部温度が45℃に維持され、水銀UVランプ光源を用いて10mWの強さを有する紫外線照射装置が上部に設置された連続式ベルト重合反応器の重合ベルトの上で243kg/hrの流量で流しながら紫外線を1分間照射し、さらに2分間無光源状態で重合反応を行った。
【0100】
重合が完了して出るゲルタイプの重合シートは、シュレッダータイプのカッターを用いて1次カットした後ミートチョッパーにより組粉砕した。その後180℃の温度で30分間熱風乾燥器により乾燥した後、回転式ミキサーを用いて粉砕して180μm~850μmに分級してベース樹脂を製造した。
【0101】
前記ベース樹脂を80Kg/hrの速度で投入しながら、水4重量%、エタノール1重量%、エチレンカーボネート1重量%、韓国公開特許第2015-0143167号公報の製造例1に開示されたポリカルボン酸系共重合体0.1重量%になるように、高速混合ミキサーに連続して投入した。表面架橋溶液と均一に混合した樹脂は、パドルミキサーで185℃、1時間表面処理反応を行って高吸水性樹脂を収得した。
【0102】
前記表面処理した樹脂を80Kg/hrの速度で投入し、水3重量%、韓国公開特許第2015-0143167号公報の製造例1に開示されたポリカルボン酸系共重合体0.03重量%になるように、溶液を連続してパドル型乾燥器に投入した。この時、樹脂温度98℃、パドル型乾燥器内の圧力700mmH2Oの条件で30分間滞留させながら、水を蒸発させて高吸水性樹脂を得た。
【0103】
<実施例2>
前記実施例1で表面処理した樹脂を80Kg/hrの速度で投入し、水2重量%、韓国公開特許第2015-0143167号公報の製造例1に開示されたポリカルボン酸系共重合体0.03重量%になるように、溶液を連続してパドル型乾燥器に投入した。この時、樹脂温度98℃、パドル型乾燥器内の圧力700mmH2Oの条件で20分間滞留させながら、水を蒸発させて高吸水性樹脂を得た。
【0104】
<実施例3>
前記実施例1で表面処理した樹脂を80Kg/hrの速度で投入し、水4.5重量%、韓国公開特許第2015-0143167号公報の製造例1に開示されたポリカルボン酸系共重合体0.05重量%になるように、溶液を連続してパドル型乾燥器に投入した。この時、樹脂温度98℃、パドル型乾燥器内の圧力700mmH2Oの条件で45分間滞留させながら、水を蒸発させて高吸水性樹脂を得た。
【0105】
<実施例4>
前記実施例1で表面処理した樹脂を80Kg/hrの速度で投入し、水6重量%、韓国公開特許第2015-0143167号公報の製造例1に開示されたポリカルボン酸系共重合体0.05重量%になるように、溶液を連続してパドル型乾燥器に投入した。この時、樹脂温度98℃、パドル型乾燥器内の圧力700mmH2Oの条件で60分間滞留させながら、水を蒸発させて高吸水性樹脂を得た。
【0106】
<実施例5>
前記実施例1でベース樹脂を作るための重合段階の単量体組成物で内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート0.3重量部、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート0.03重量部を用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法により高吸水性樹脂を得た。
【0107】
<実施例6>
前記実施例5でベース樹脂を作るための重合段階の単量体組成物に炭酸水素ナトリウム0.15重量部をさらに添加して単量体組成物を準備したことを除いては、前記実施例8と同様の方法により高吸水性樹脂を得た。
【0108】
<比較例1>
前記実施例1で表面架橋後の熟成工程を行わないことを除いては、前記実施例1と同様の方法により高吸水性樹脂を得た。
【0109】
<比較例2>
前記実施例5で表面架橋後の熟成工程を行わないことを除いては、前記実施例5と同様の方法により高吸水性樹脂を得た。
【0110】
<比較例3>
前記実施例6で表面架橋後の熟成工程を行わないことを除いては、前記実施例6と同様の方法により高吸水性樹脂を得た。
【0111】
前記製造した高吸水性樹脂に対し、下記の方法により物性を測定した。
【0112】
<保水能(CRC,Centrifugal Retention Capacity)>
保水能の測定は、EDANA法WSP241.3を基準とした。準備した高吸水性樹脂組成物試料0.2gをティーバッグに入れて0.9%塩水溶液に30分間沈殿する。その後、250G(gravity)の遠心力で3分間脱水した後塩水溶液が吸収された量を測定した。
【0113】
<加圧吸水能(AAP,Absorption Against Pressure)>
加圧吸水能の測定は、EDANA法WSP241.3を基準とした。準備した高吸水性樹脂組成物試料0.9gをEDANAで規定するシリンダーに入れてピストンと錘で0.7psiの圧力を加える。後に0.9%塩水溶液を60分間吸収した量を測定した。
【0114】
<生理食塩水流れ誘導性(SFC:Saline Flow Conductivity)>
米国特許出願公開第2009-0131255号明細書のcolumn 16の[0184]~[0189]に開示された方法により測定した。
【0115】
<見掛け密度(Bulk density)>
標準流動度測定装置であるオリフィスにより前記高吸水性樹脂100gを流して体積100ml容器に受け、前記高吸水性樹脂が水平になるように削って、前記高吸水性樹脂の体積を100mlに調節した後、容器を除いた高吸水性樹脂のみの重量を測定した。また、前記高吸水性樹脂のみの重量を高吸水性樹脂の体積である100mlで割って単位体積当たり高吸水性樹脂の重量に該当する見掛け密度を求めた。
【0116】
<粉体流動度(Flowability)>
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂を粒度が均等に混ざれるようによく混合した後、試料100±0.5gを取って250mlビーカーに注いだ。
【0117】
漏斗の下端に密度測定用カップを真ん中に位置させた後、漏斗穴をふさいで前記計量した試料を漏斗に軽く注いで充填させた。ふさいでいた漏斗穴を開く瞬間にストップウオッチ(stop watch)を作動して試料が漏斗の最下端部分にすべて落ちるときまでにかかる時間を測定した。
【0118】
すべての過程は、恒温恒湿室(温度23±2℃、相対湿度45±10%)で行った。
【0119】
<悪臭テスト>
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂各1gを、0.9wt%塩水2gと混合して10分間放置した。
【0120】
臭い強度を0から5までに定め、ヒトの嗅覚による官能テストを実施して各サンプルの臭い強度を測定した。
【0121】
<TVOC測定>
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂各0.5gをステンレス管に入れた後、ガラス綿でふさいで、100℃で30分間加熱して揮発性有機化合物を発生させた。
【0122】
発生する揮発性有機化合物をcold trapで吸着管に濃縮させて、熱脱着ガスクロマトグラフィー質量分析器(Gas Chromatography/Mass Spectrometry-Thermal Desorption,GC/MS-TD)を用いて定量分析を行った。
【0123】
分析時には、無極性カラムであるdimethyl-polysiloxaneコラムを用い、4g/L濃度のトルエン標準液を用い、投入するトルエンの量を4μgに標準化し、有機化合物のPeakを測定した。
【0124】
前記で得られたクロマトグラムのうち、n-ヘキサンとn-ヘキサデカンとの間の面積を合算し、トルエンの質量単位で換算し、TVOC量を計算し、実験に用いられた高吸水性樹脂の量(g)を基準に検出されたTVOCの量(μg)を表示し、ppm単位で示した。
【0125】
前記測定結果を下記の表1に整理した。
【0126】
【0127】
前記一連の実験で本発明の実施例による高吸水性樹脂は、比較例に比べてTVOC値が顕著に低いことが確認でき、臭い強度も弱いことが確認できる。
【0128】
特に、実施例1~4を参照すれば、表面架橋後の臭いを除去するために高吸水性樹脂粒子の製造以後の後処理工程で用いる水の量が増加するほどTVOCと臭い強度が低くなることが明確に確認できる。
【0129】
また、実施例1と比較例1、実施例5と比較例2、実施例6と比較例3をそれぞれ比較すると、本発明の実施例による高吸水性樹脂粒子の粉体流動度が優れ、見掛け比重が高いことが分かる。この結果は、本発明で用いるポリカルボン酸系共重合体が高吸水性樹脂粒子それぞれの表面で粒子間の摩擦を減少させたことに起因した結果であると考えられる。