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特許7080309超音波プローブ、超音波プローブの制御方法および超音波システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】超音波プローブ、超音波プローブの制御方法および超音波システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20220527BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020513447
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 JP2019015766
(87)【国際公開番号】W WO2019198788
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】P 2018077879
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 弘行
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-158844(JP,A)
【文献】特開2012-090712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子セクタ走査を行う超音波プローブであって、
複数の超音波振動子が配列された振動子アレイと、
前記複数の超音波振動子のうち、超音波の送受信に使用される超音波振動子群を選択するマルチプレクサと、
前記複数の超音波振動子の数よりも少ない数の送信チャネルを用いて前記マルチプレクサにより選択された超音波振動子群から超音波の送信を行わせる送信ビームフォーマと、
前記複数の超音波振動子の数よりも少ない数の受信チャネルを用いて前記マルチプレクサにより選択された超音波振動子群により取得された受信信号に基づいて音線信号を生成する受信ビームフォーマと、
前記マルチプレクサ、前記送信ビームフォーマおよび前記受信ビームフォーマを制御することにより、電子セクタ走査動作に際してステア角度が広くなるに従い、前記振動子アレイにおける超音波送受信開口幅を狭くするセクタ走査制御部と
を備え、
前記セクタ走査制御部は、前記ステア角度が定められた第2角度より広い場合に、前記マルチプレクサを制御することにより、超音波の送受信に使用される前記超音波振動子群のうち周辺に位置する超音波振動子の間隔を広くする超音波プローブ。
【請求項2】
前記マルチプレクサは、超音波の送信に使用される超音波振動子を選択する送信マルチプレクサと、超音波の受信に使用される超音波振動子を選択する受信マルチプレクサとを含み、
前記超音波プローブと前記送信マルチプレクサおよび前記受信マルチプレクサとの間に接続され且つ送信および受信を切り替える切替スイッチをさらに備える請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
電子セクタ走査を行う超音波プローブであって、
複数の超音波振動子が配列された振動子アレイと、
前記複数の超音波振動子のうち、超音波の送受信に使用される超音波振動子群を選択するマルチプレクサと、
前記複数の超音波振動子の数よりも少ない数の送信チャネルを用いて前記マルチプレクサにより選択された超音波振動子群から超音波の送信を行わせる送信ビームフォーマと、
前記複数の超音波振動子の数よりも少ない数の受信チャネルを用いて前記マルチプレクサにより選択された超音波振動子群により取得された受信信号に基づいて音線信号を生成する受信ビームフォーマと、
前記マルチプレクサ、前記送信ビームフォーマおよび前記受信ビームフォーマを制御することにより、電子セクタ走査動作に際してステア角度が広くなるに従い、前記振動子アレイにおける超音波送受信開口幅を狭くするセクタ走査制御部と
を備え、
前記マルチプレクサは、超音波の送信に使用される超音波振動子を選択する送信マルチプレクサと、超音波の受信に使用される超音波振動子を選択する受信マルチプレクサとを含み、
前記複数の超音波振動子と前記送信マルチプレクサおよび前記受信マルチプレクサとの間に接続され且つ送信および受信を切り替える切替スイッチをさらに備える超音波プローブ。
【請求項4】
前記セクタ走査制御部は、前記マルチプレクサを制御することにより、前記ステア角度が広くなるに従い、超音波の送受信に使用される超音波振動子群の平均振動子間隔を小さくする請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記セクタ走査制御部は、前記ステア角度が定められた第1角度より狭い場合に、前記マルチプレクサを制御することにより、それぞれ互いに隣接する1対の超音波振動子からなる複数の超音波振動子対のうち、少なくとも一部の超音波振動子対をそれぞれ短絡する請求項1~4のいずれか一項に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記セクタ走査制御部は、前記ステア角度が定められた第1角度より狭い場合に、前記マルチプレクサを制御することにより、前記複数の超音波振動子のうち、間隔を隔てて配置されている超音波振動子を超音波の送受信に使用される超音波振動子群として選択する請求項1~4のいずれか一項に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記セクタ走査制御部は、前記マルチプレクサを制御することにより、前記ステア角度に応じて前記ステア角度の方向に位置する超音波振動子群を選択して超音波の送受信に使用する請求項1~6のいずれか一項に記載の超音波プローブ。
【請求項8】
前記送信ビームフォーマおよび前記受信ビームフォーマは、それぞれ、前記複数の超音波振動子の数の1/2の数の送信チャネルおよび受信チャネルを有する請求項1~7のいずれか一項に記載の超音波プローブ。
【請求項9】
前記受信ビームフォーマにより生成された前記音線信号に基づいて生成される画像情報データを無線送信する無線通信部をさらに備える請求項1~8のいずれか一項に記載の超音波プローブ。
【請求項10】
前記画像情報データは、前記受信ビームフォーマにより生成された前記音線信号に超音波の反射位置の深度に応じた減衰補正および包絡線検波処理を施した信号である請求項9に記載の超音波プローブ。
【請求項11】
前記画像情報データは、前記受信ビームフォーマにより生成された前記音線信号に超音波の反射位置の深度に応じた減衰補正および包絡線検波処理を施し、且つ、画像表示方式に従って変換された超音波画像信号である請求項9に記載の超音波プローブ。
【請求項12】
前記画像情報データは、前記ステア角度に応じた、超音波の送受信に使用される振動子数の違いによる強度変化を低減するように補正された信号である請求項10または11に記載の超音波プローブ。
【請求項13】
電子セクタ走査を行う超音波プローブの制御方法であって、
振動子アレイの複数の超音波振動子のうち、超音波の送受信に使用される超音波振動子群を選択し、
前記複数の超音波振動子の数よりも少ない数の送信チャネルを用いて、選択された前記超音波振動子群から超音波の送信を行い、
前記複数の超音波振動子の数よりも少ない数の受信チャネルを用いて、選択された前記超音波振動子群により取得された受信信号に基づいて音線信号を生成し、
電子セクタ走査動作に際してステア角度が広くなるに従い、前記振動子アレイにおける超音波送受信開口幅を狭くし、
前記ステア角度が定められた第2角度より広い場合に、超音波の送受信に使用される前記超音波振動子群のうち周辺に位置する超音波振動子の間隔を広くする超音波プローブの制御方法。
【請求項14】
電子セクタ走査を行う超音波プローブの制御方法であって、
前記超音波プローブの受信マルチプレクサにより、振動子アレイの複数の超音波振動子のうち、超音波の送信に使用される超音波振動子群を選択し、
前記複数の超音波振動子の数よりも少ない数の送信チャネルを用いて、選択された前記超音波振動子群から超音波の送信を行い、
前記超音波プローブの送信マルチプレクサにより、振動子アレイの複数の超音波振動子のうち、超音波の受信に使用される超音波振動子を選択し、
前記複数の超音波振動子の数よりも少ない数の受信チャネルを用いて、選択された前記超音波振動子群により取得された受信信号に基づいて音線信号を生成し、
電子セクタ走査動作に際してステア角度が広くなるに従い、前記振動子アレイにおける超音波送受信開口幅を狭くし、
前記複数の超音波振動子と前記送信マルチプレクサおよび前記受信マルチプレクサとの間に接続される切替スイッチにより、超音波の送信と受信を切り替える超音波プローブの制御方法。
【請求項15】
請求項9~12のいずれか一項に記載の超音波プローブと、
前記超音波プローブの前記無線通信部により無線送信された前記画像情報データに基づいて超音波画像を表示する画像表示装置と
を備える超音波システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波プローブ、超音波プローブの制御方法および超音波システムに係り、特に、セクタ走査を行う超音波プローブおよび超音波プローブの制御方法に関する。また、本発明は、このような超音波プローブを備える超音波システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検体の内部の画像を得るものとして、超音波診断装置が知られている。超音波診断装置は、一般的に、複数の超音波振動子が配列された振動子アレイが備えられた超音波プローブを備えている。この超音波プローブを被検体の体表に接触させた状態において、振動子アレイから被検体内に向けて超音波ビームが送信され、被検体からの超音波エコーを振動子アレイにおいて受信して素子データが取得される。さらに、超音波診断装置は、得られた素子データを電気的に処理して、被検体の当該部位に対する超音波画像を生成する。
【0003】
超音波ビームの走査方式として、特許文献1に開示されるように、複数の超音波振動子に供給される送信信号および複数の超音波振動子からの受信信号に対して遅延を与えることにより走査線の角度を変えて走査をする、いわゆる電子セクタ走査と呼ばれる走査方式がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-224101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、緊急治療等の際に、屋外、ベッドサイドおよび救急医療現場等に搬送して使用することができる可搬型の超音波装置への要求が高まっている。このような可搬型の超音波装置は、一般的に、バッテリを電源として駆動するものが多く、装置における消費電力が連続使用時間に大きな影響を及ぼすこととなる。また、消費電力が大きくなると、装置内における発熱量も大きくなるという問題があった。
【0006】
特に、超音波プローブと装置本体等を無線接続する方式では、超音波振動子からの超音波の送信および超音波エコーの受信に関わる送受信回路を小さなプローブ内に配置する必要があり、超音波プローブにおける電極消費が大きくなるという問題があった。また、送受信回路のチャネル数を削減すれば、それだけ消費電力を低減することができるが、超音波ビームのステア角度によっては、いわゆるアーチファクトが発生することがあった。
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解消するためになされたものであり、超音波画像におけるアーチファクトの発生を抑制しながら消費電力を低減することができる超音波プローブ、超音波プローブの制御方法および超音波システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の超音波プローブは、電子セクタ走査を行う超音波プローブであって、複数の超音波振動子が配列された振動子アレイと、複数の超音波振動子のうち、超音波の送受信に使用される超音波振動子群を選択するマルチプレクサと、複数の超音波振動子の数よりも少ない数の送信チャネルを用いてマルチプレクサにより選択された超音波振動子群から超音波の送信を行わせる送信ビームフォーマと、複数の超音波振動子の数よりも少ない数の受信チャネルを用いてマルチプレクサにより選択された超音波振動子群により取得された受信信号に基づいて音線信号を生成する受信ビームフォーマと、マルチプレクサ、送信ビームフォーマおよび受信ビームフォーマを制御することにより、電子セクタ走査動作に際してステア角度が広くなるに従い、振動子アレイにおける超音波送受信開口幅を狭くするセクタ走査制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
セクタ走査制御部は、マルチプレクサを制御することにより、ステア角度が広くなるに従い、超音波の送受信に使用される超音波振動子群の平均振動子間隔を小さくすることが好ましい。
【0010】
また、セクタ走査制御部は、ステア角度が定められた第1角度より狭い場合に、マルチプレクサを制御することにより、それぞれ互いに隣接する1対の超音波振動子からなる複数の超音波振動子対のうち、少なくとも一部の超音波振動子対をそれぞれ短絡することができる。
もしくは、セクタ走査制御部は、ステア角度が定められた第1角度より狭い場合に、マルチプレクサを制御することにより、複数の超音波振動子のうち、間隔を隔てて配置されている超音波振動子を超音波の送受信に使用される超音波振動子群として選択することもできる。
【0011】
また、セクタ走査制御部は、マルチプレクサを制御することにより、ステア角度に応じてステア角度の方向に位置する超音波振動子群を選択して超音波の送受信に使用することができる。
また、セクタ走査制御部は、ステア角度が定められた第2角度より広い場合に、マルチプレクサを制御することにより、超音波の送受信に使用される超音波振動子群のうち周辺に位置する超音波振動子の間隔を広くすることができる。
【0012】
マルチプレクサは、超音波の送信に使用される超音波振動子を選択する送信マルチプレクサと、超音波の受信に使用される超音波振動子を選択する受信マルチプレクサとを含み、超音波プローブと送信マルチプレクサおよび受信マルチプレクサとの間に接続され且つ送信および受信を切り替える切替スイッチをさらに備えることが好ましい。
送信ビームフォーマおよび受信ビームフォーマは、それぞれ、複数の超音波振動子の数の1/2の数の送信チャネルおよび受信チャネルを有することが好ましい。
【0013】
また、受信ビームフォーマにより生成された音線信号に基づいて生成される画像情報データを無線送信する無線通信部をさらに備えることができる。
この場合に、画像情報データは、受信ビームフォーマにより生成された音線信号に超音波の反射位置の深度に応じた減衰補正および包絡線検波処理を施した信号であることが好ましい。
【0014】
もしくは、画像情報データは、受信ビームフォーマにより生成された音線信号に超音波の反射位置の深度に応じた減衰補正および包絡線検波処理を施し、且つ、画像表示方式に従って変換された超音波画像信号であってもよい。
もしくは、画像情報データは、ステア角度に応じた、超音波の送受信に使用される振動子数の違いによる強度変化を低減するように補正された信号であってもよい。
【0015】
本発明の超音波プローブの制御方法は、電子セクタ走査を行う超音波プローブの制御方法であって、振動子アレイの複数の超音波振動子のうち、超音波の送受信に使用される超音波振動子群を選択し、複数の超音波振動子の数よりも少ない数の送信チャネルを用いて、選択された超音波振動子群から超音波の送信を行い、複数の超音波振動子の数よりも少ない数の受信チャネルを用いて、選択された超音波振動子群により取得された受信信号に基づいて音線信号を生成し、電子セクタ走査動作に際してステア角度が広くなるに従い、振動子アレイにおける超音波送受信開口幅を狭くすることを特徴とする。
【0016】
本発明の超音波システムは、上述の超音波プローブと、超音波プローブの無線通信部により無線送信された画像情報データに基づいて超音波画像を表示する画像表示装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、マルチプレクサ、送信ビームフォーマおよび受信ビームフォーマを制御することにより、電子セクタ走査動作に際してステア角度が広くなるに従い、振動子アレイにおける超音波送受信開口幅を狭くするセクタ走査制御部を備えるため、アーチファクトの発生を抑制しながら消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態1に係る超音波システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態1における受信信号処理部の内部構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態1における走査線の角度範囲を模式的に示す図である。
図4】本発明の実施の形態1において使用される超音波振動子群の例を示す図である。(A)は、第1角度範囲において使用される超音波振動子群の例であり、(B)は、第2角度範囲において使用される超音波振動子群の例である。
図5】本発明の実施の形態1の変形例において使用される超音波振動子群の例を示す図である。(A)は、第1角度範囲において使用される超音波振動子群の例であり、(B)は、第2角度範囲において使用される超音波振動子群の例である。
図6】本発明の実施の形態2における超音波ビームの角度範囲を模式的に示す図である。
図7】本発明の実施の形態2において使用される超音波振動子群の例を示す図である。(A)は、第3角度範囲において使用される超音波振動子群の例であり、(B)は、第4角度範囲において使用される超音波振動子群の例であり、(C)は、第5角度範囲において使用される超音波振動子群の例である。
図8】本発明の実施の形態2の変形例1において使用される超音波振動子群の例を示す図である。(A)は、第3角度範囲において使用される超音波振動子群の例であり、(B)は、第4角度範囲において使用される超音波振動子群の例であり、(C)は、第5角度範囲において使用される超音波振動子群の例である。
図9】本発明の実施の形態2の変形例2において使用される超音波振動子群の例を示す図である。(A)は、第3角度範囲において使用される超音波振動子群の例であり、(B)は、第4角度範囲において使用される超音波振動子群の例であり、(C)は、第5角度範囲において使用される超音波振動子群の例である。
図10】本発明の実施の形態2の変形例3において使用される超音波振動子群の例を示す図である。(A)は、第3角度範囲において使用される超音波振動子群の例であり、(B)は、第4角度範囲において使用される超音波振動子群の例であり、(C)は、第5角度範囲において使用される超音波振動子群の例である。
図11】本発明の実施の形態2の変形例4において使用される超音波振動子群の例を示す図である。(A)は、第3角度範囲において使用される超音波振動子群の例であり、(B)は、第4角度範囲において使用される超音波振動子群の例であり、(C)は、第5角度範囲において使用される超音波振動子群の例である。
図12】本発明の実施の形態3において使用される超音波振動子群の例を示す図である。(A)は、第3角度範囲において使用される超音波振動子群の例であり、(B)は、第4角度範囲において使用される超音波振動子群の例であり、(C)は、第5角度範囲において使用される超音波振動子群の例である。
図13】本発明の実施の形態3の変形例において使用される超音波振動子群の例を示す図である。(A)は、第3角度範囲において使用される超音波振動子群の例であり、(B)は、第4角度範囲において使用される超音波振動子群の例であり、(C)は、第5角度範囲において使用される超音波振動子群の例である。
図14】本発明の実施の形態4に係る超音波システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に本発明の実施の形態1に係る超音波システム1の構成を示す。図1に示すように、超音波システム1は、超音波プローブ21と画像表示装置31を備えており、超音波プローブ21と画像表示装置31とは、無線通信により接続されている。
【0020】
超音波システム1の超音波プローブ21は、振動子アレイ2を備えており、振動子アレイ2に、切替スイッチ3が接続されている。また、切替スイッチ3に、送信マルチプレクサ4、送信駆動部5および送信ビームフォーマ6が順次接続されている。また、切替スイッチ3には、受信マルチプレクサ7、受信信号処理部8、受信ビームフォーマ9、信号処理部10、画像処理部11および無線通信部12が順次接続されている。
さらに、切替スイッチ3、送信マルチプレクサ4、送信ビームフォーマ6、受信マルチプレクサ7および受信ビームフォーマ9に、セクタ走査制御部13が接続され、無線通信部12に、通信制御部14が接続されている。また、信号処理部10、画像処理部11、セクタ走査制御部13および通信制御部14に、プローブ制御部15が接続されている。また、超音波プローブ21は、バッテリ16を内蔵している。
【0021】
さらに、切替スイッチ3、送信マルチプレクサ4、送信駆動部5、送信ビームフォーマ6、受信マルチプレクサ7、受信信号処理部8、受信ビームフォーマ9、信号処理部10、画像処理部11、セクタ走査制御部13、通信制御部14およびプローブ制御部15により、超音波プローブプロセッサ17が構成されている。
【0022】
超音波システム1の画像表示装置31は、無線通信部32を備えており、無線通信部32に、表示制御部33および表示部34が順次接続されている。また、無線通信部32に、通信制御部35が接続され、表示制御部33および通信制御部35に本体制御部36が接続されている。また、本体制御部36には、操作部37および格納部38が接続されている。本体制御部36と格納部38とは、双方向に情報の受け渡しが可能に接続されている。
【0023】
さらに、表示制御部33、通信制御部35および本体制御部36により、画像表示装置プロセッサ39が構成されている。
また、超音波プローブ21の無線通信部12と画像表示装置31の無線通信部32とは、双方向に情報の受け渡しが可能に接続されており、これにより、超音波プローブ21と画像表示装置31とが無線通信により接続される。
【0024】
図1に示す超音波プローブ21の振動子アレイ2は、1次元または2次元に配列された複数の超音波振動子Tを有している。例えば、図3に示すように、複数の超音波振動子Tは、素子ピッチPで1次元に配列されることができる。これらの超音波振動子Tは、送信駆動部5から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの反射波を受信して受信信号を出力する。各超音波振動子Tは、例えば、PZT(Lead Zirconate Titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック、PVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride:ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子およびPMN-PT(Lead Magnesium Niobate-Lead Titanate:マグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成した素子を用いて構成される。
【0025】
超音波プローブプロセッサ17のセクタ走査制御部13は、切替スイッチ3、送信マルチプレクサ4、送信ビームフォーマ6、受信マルチプレクサ7および受信ビームフォーマ9を制御して、所定のステア角度を有する走査線に沿った超音波ビームの送信および超音波エコーの受信をする、いわゆる電子セクタ走査を行わせる。ここで、走査線のステア角度とは、図3に示すように、超音波振動子Tの配列方向D1に対して直交する直交方向D2に沿って延びる仮想的な垂直線VLと走査線SLとのなす角のことであり、例えば、垂直線VLの両側に0°~45°の範囲でステア角度が設定される。
【0026】
また、セクタ走査制御部13は、電子セクタ走査に際して走査線のステア角度に応じて、超音波ビームの送信および超音波エコーの受信に使用される振動子アレイ2における超音波送受信開口幅を変化させる。このような、セクタ走査制御部13によりなされる超音波送受信開口幅の制御については、後に詳細に説明する。
【0027】
超音波プローブプロセッサ17の切替スイッチ3は、それぞれ対応する超音波振動子Tと送信マルチプレクサ4との間を接続および遮断し、且つ、それぞれ対応する超音波振動子Tと受信マルチプレクサ7との間を接続および遮断する複数のスイッチからなり、セクタ走査制御部13からの指令に基づいて、超音波ビームの送信と超音波エコーの受信とを切り替える。
【0028】
超音波プローブプロセッサ17の送信マルチプレクサ4は、セクタ走査制御部13からの指令に基づいて、振動子アレイ2を構成する複数の超音波振動子Tのうち超音波ビームの送信に使用される超音波振動子Tを選択する。この際に、送信マルチプレクサ4は、超音波ビームの送信チャネルの数が振動子アレイ2を構成する超音波振動子Tの総数よりも少なくなるように、超音波振動子Tを選択する。このように、超音波ビームの送信に使用される送信チャネルの数を超音波振動子Tの総数よりも少なくすることにより、超音波ビームの送信に要する消費電力を低減することができる。
超音波プローブプロセッサ17の送信駆動部5は、例えば、複数のパルス発生器を含んでおり、送信マルチプレクサ4により選択された複数の超音波振動子Tに対して駆動信号を送信する。
【0029】
超音波プローブプロセッサ17の送信ビームフォーマ6は、セクタ走査制御部13からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ2の複数の超音波振動子Tから送信される超音波が所定の走査線に沿った超音波ビームを形成するように、送信駆動部5により送信される駆動信号に対して遅延量を調節する。この際に、送信ビームフォーマ6は、振動子アレイ2を構成する複数の超音波振動子Tの総数よりも少ない数の送信チャネルに対して遅延量の調節を行う。
【0030】
このようにして、振動子アレイ2の超音波振動子Tの電極にパルス状または連続波状の電圧が印加されると、圧電体が伸縮し、それぞれの超音波振動子Tからパルス状または連続波状の超音波が発生して、それらの超音波の合成波から、所定の走査線に沿った超音波ビームが形成される。
【0031】
送信された超音波ビームは、例えば、被検体の部位等の対象において反射された超音波エコーとして、超音波プローブ21の振動子アレイ2に向かって伝搬する。このように振動子アレイ2に向かって伝搬する超音波は、振動子アレイ2を構成するそれぞれの超音波振動子Tにより受信される。
【0032】
超音波プローブプロセッサ17の受信マルチプレクサ7は、セクタ走査制御部13からの指令に基づいて、振動子アレイ2を構成する複数の超音波振動子Tのうち超音波エコーの受信に使用される超音波振動子Tを選択する。この際に、受信マルチプレクサ7は、超音波エコーの受信チャネルの数が振動子アレイ2を構成する超音波振動子Tの総数よりも少なくなるように、超音波振動子Tを選択する。このように、超音波エコーの受信に使用される受信チャネルの数を超音波振動子Tの総数よりも少なくすることにより、超音波エコーの受信に要する消費電力を低減することができる。
【0033】
超音波プローブプロセッサ17の受信信号処理部8は、振動子アレイ2から出力される受信信号の処理を行う。図2に示すように、受信信号処理部8は、複数の増幅部22および複数の増幅部22と同数のAD(Analog Digital)変換部23を含んでおり、それぞれの増幅部22とAD変換部23は、互いに直列に接続されている。ここで、受信信号処理部8に含まれる増幅部22の数は、振動子アレイ2を構成する超音波振動子Tの総数よりも少ない。
【0034】
受信信号処理部8の増幅部22は、振動子アレイ2を構成するそれぞれの超音波振動子Tから入力された受信信号を増幅し、増幅した受信信号をAD変換部23に送信する。AD変換部23は、増幅部22から送信された受信信号をデジタル化されたデータに変換し、これらのデータを超音波プローブプロセッサ17の受信ビームフォーマ9に送出する。
【0035】
超音波プローブプロセッサ17の受信ビームフォーマ9は、セクタ走査制御部13からの制御信号に応じて選択された受信遅延パターンに基づき、受信信号処理部8から送出されたデータにそれぞれの遅延を与えて加算(整相加算)を施す、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号が生成される。
【0036】
超音波プローブプロセッサ17の信号処理部10は、受信ビームフォーマ9により生成された音線信号に対して、超音波が反射した位置の深度に応じて伝搬距離に起因する減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施して、被検体内の組織に関する断層画像情報である信号を生成する。
【0037】
超音波プローブプロセッサ17の画像処理部11は、信号処理部10により生成された信号を、通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号にラスター変換し、このようにして生成された画像信号に対して、明るさ補正、諧調補正、シャープネス補正および色補正等の各種の必要な画像処理を施すことにより超音波画像信号を生成した後、超音波画像信号を画像情報データとして超音波プローブ21の無線通信部12に送信する。
【0038】
超音波プローブ21の無線通信部12は、電波の送信および受信を行うためのアンテナを含んでおり、画像処理部11により生成された超音波画像信号に基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、伝送信号をアンテナに供給してアンテナから電波を送信することにより、画像表示装置31の無線通信部32に超音波画像信号を送信する。キャリアの変調方式としては、ASK(Amplitude Shift Keying:振幅偏移変調)、PSK(Phase Shift Keying:位相偏移変調)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying:四位相偏移変調)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation:16直角位相振幅変調)等が用いられる。
【0039】
超音波プローブ21の無線通信部12は、超音波画像信号を画像表示装置31に無線送信する。
超音波プローブプロセッサ17の通信制御部14は、プローブ制御部15により設定された送信電波強度で超音波画像信号の送信が行われるように無線通信部12を制御する。
【0040】
超音波プローブプロセッサ17のプローブ制御部15は、予め記憶しているプログラム等に基づいて、超音波プローブ21の各部の制御を行う。
超音波プローブ21のバッテリ16は、超音波プローブ21に内蔵されており、超音波プローブ21の各回路に電力を供給する。
【0041】
画像表示装置31の無線通信部32は、電波の送信および受信を行うためのアンテナを含んでおり、超音波プローブ21の無線通信部12により送信された伝送信号を、アンテナを介して受信し、受信した伝送信号を復調することにより、超音波画像信号を出力する。
画像表示装置プロセッサ39の通信制御部35は、超音波プローブ21の無線通信部12から伝送信号の受信が行われるように画像表示装置31の無線通信部32を制御する。
【0042】
画像表示装置プロセッサ39の表示制御部33は、本体制御部36の制御の下、無線通信部32により復調された超音波画像信号に所定の処理を施して、表示部34に超音波画像を表示させる。
画像表示装置プロセッサ39の本体制御部36は、格納部38等に予め記憶されているプログラムおよび操作部37を介したユーザの操作に基づいて、画像表示装置31の各部の制御を行う。
【0043】
画像表示装置31の表示部34は、表示制御部33により生成された画像を表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)等のディスプレイ装置を含む。
画像表示装置31の操作部37は、ユーザが入力操作を行うためのものであり、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッドおよびタッチパネル等を備えて構成することができる。
【0044】
画像表示装置31の格納部38は、画像表示装置31の動作プログラム等を格納するものであり、格納部38として、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive:ハードディスクドライブ)、SSD(Solid State Drive:ソリッドステートドライブ)、FD(Flexible Disc:フレキシブルディスク)、MOディスク(Magneto-Optical disc:光磁気ディスク)、MT(Magnetic Tape:磁気テープ)、RAM(Random Access Memory:ランダムアクセスメモリ)、CD(Compact Disc:コンパクトディスク)、DVD(Digital Versatile Disc:デジタルバーサタイルディスク)、SDカード(Secure Digital card:セキュアデジタルカード)、USBメモリ(Universal Serial Bus memory:ユニバーサルシリアルバスメモリ)等の記録メディア、またはサーバ等を用いることができる。
【0045】
なお、切替スイッチ3、送信マルチプレクサ4、送信駆動部5、送信ビームフォーマ6、受信マルチプレクサ7、受信信号処理部8、受信ビームフォーマ9、信号処理部10、画像処理部11、セクタ走査制御部13、通信制御部14およびプローブ制御部15を有する超音波プローブプロセッサ17と、表示制御部33、通信制御部35および本体制御部36を有する画像表示装置プロセッサ39は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、および、CPUに各種の処理を行わせるための制御プログラムから構成されるが、FPGA(Field Programmable Gate Array:フィードプログラマブルゲートアレイ)、DSP(Digital Signal Processor:デジタルシグナルプロセッサ)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:アプリケーションスペシフィックインテグレイテッドサーキット)、GPU(Graphics Processing Unit:グラフィックスプロセッシングユニット)、その他のIC(Integrated Circuit:集積回路)を用いて構成されてもよく、もしくはそれらを組み合わせて構成されてもよい。
【0046】
また、超音波プローブプロセッサ17の切替スイッチ3、送信マルチプレクサ4、送信駆動部5、送信ビームフォーマ6、受信マルチプレクサ7、受信信号処理部8、受信ビームフォーマ9、信号処理部10、画像処理部11、セクタ走査制御部13、通信制御部14およびプローブ制御部15を部分的にあるいは全体的に1つのCPU等に統合させて構成することもできる。画像表示装置プロセッサ39の表示制御部33、通信制御部35および本体制御部36も、同様に、部分的にあるいは全体的に1つのCPU等に統合させて構成することができる。
【0047】
次に、電子セクタ走査に際して、本発明に特徴的な超音波送受信開口幅の制御について詳細に説明する。以下の説明においては、振動子アレイ2における送信チャネルに使用される複数の超音波振動子Tと受信チャネルに使用される複数の超音波振動子Tとは、互いに同一であるとする。
【0048】
ここで、一般的に、超音波送受信開口幅が広いほど、送信焦点における超音波ビームの幅を狭くすることができるため、取得される超音波画像における分解能を向上させることができる。しかしながら、超音波ビームの送信に使用される送信チャネルの数が超音波振動子Tの総数よりも少ない場合には、超音波送受信開口幅が広いほど互いに隣接する送信チャネルおよび受信チャネルのピッチが大きくなるため、超音波送受信開口幅が所定の広さ以上である場合には、走査線のステア角度が大きくなるに従って、振動子アレイ2において互いに隣接する超音波振動子Tから送信される超音波の干渉の影響および互いに隣接する超音波振動子Tにより受信される超音波の干渉の影響が強くなる。
【0049】
一般に、超音波振動子Tの配列方向D1に垂直な方向から角度θだけ傾いた方向に超音波ビームを送信する場合に、アーチファクトの発生を抑制するためには、超音波の波長をλとして、送信チャネルおよび受信チャネルのピッチpが下記式(1)を満たす必要があることが知られている。
p≦λ/(1+|sin θ|) ・・・(1)
【0050】
また、超音波ビームの送信および超音波エコーの受信の際に、多くの送信チャネルおよび受信チャネルを使用するほど、取得される超音波画像における分解能を向上させることができるが、使用される送信チャネルおよび受信チャネルの数が多いほど、超音波ビームの送信および超音波エコーの受信に要する消費電力が大きく、超音波プローブ21における発熱の原因となる。
【0051】
本発明の実施の形態1におけるセクタ走査制御部13は、電子セクタ走査に際し、送信マルチプレクサ4、送信ビームフォーマ6、受信マルチプレクサ7および受信ビームフォーマ9を制御して、超音波振動子Tの総数よりも少ない数の送信チャネルおよび受信チャネルを使用しながら、電子セクタ走査動作に際して走査線のステア角度が広くなるに従って振動子アレイ2における超音波送受信開口幅を狭くする、すなわち、送信チャネルおよび受信チャネルとして使用される超音波振動子Tの配列ピッチpが小さくなる。これにより、取得される超音波画像におけるアーチファクトの発生および超音波プローブ21における発熱を抑制することができる。
【0052】
セクタ走査制御部13は、図3に示すように、例えば最大のステア角度を45°として、ステア角度が定められた第1角度A1よりも狭い第1角度範囲R1内に含まれている場合に、超音波送受信開口幅が最大となるように送信マルチプレクサ4、送信ビームフォーマ6、受信マルチプレクサ7および受信ビームフォーマ9を制御し、ステア角度が第1角度A1よりも広い第2角度範囲R2に含まれている場合に、超音波送受信開口幅を狭くするように送信ビームフォーマ6および受信ビームフォーマ9を制御することができる。
【0053】
例えば、ステア角度が第1角度範囲R1内に含まれている場合には、図4(A)に示すように、セクタ走査制御部13は、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御して、振動子アレイ2を構成する複数の超音波振動子T1~T64のうち間隔を隔てて配置されている複数の超音波振動子を超音波の送受信に使用される超音波振動子群として選択することにより、超音波送受信開口幅を広くしながら、送信チャネルおよび受信チャネルの数を超音波振動子T1~T64の総数よりも少なくすることができる。
【0054】
図4(A)に示す例では、64個の超音波振動子T1~T64が1次元に配列されて振動子アレイ2が構成されており、1つの超音波振動子おきに32個の超音波振動子T2~T63を使用することにより、超音波振動子T1~T64の総数の半分である32個の送信チャネルおよび受信チャネルが形成されている。この際に、送信チャネルおよび受信チャネルのチャネルピッチP1は、互いに隣接する超音波振動子の素子ピッチPの2倍である。
【0055】
また、例えば、ステア角度が第2角度範囲R2内に含まれている場合には、図4(B)に示すように、セクタ走査制御部13は、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御して、振動子アレイ2を構成する複数の超音波振動子T1~T64のうち互いに隣接して連なる一部の超音波振動子を使用することにより、超音波送受信開口幅を狭くしながら、送信チャネルおよび受信チャネルの数を超音波振動子T1~T64の総数よりも少なくすることができる。図4(B)に示す例では、振動子アレイ2を構成する64個の超音波振動子T1~T64のうち、互いに隣接して連なる32個の超音波振動子T17~T48が使用されることにより、32個の送信チャネルおよび受信チャネルが形成されている。この場合には、送信チャネルおよび受信チャネルのピッチは、超音波振動子の素子ピッチPに等しい。
【0056】
以上により、本発明の実施の形態1の超音波システム1によれば、電子セクタ走査動作に際して、振動子アレイ2を構成する超音波振動子Tの総数よりも少ない数の送信チャネルおよび受信チャネルを使用し、且つ、ステア角度が広くなるに従い、振動子アレイ2における超音波送受信開口幅を狭くするため、アーチファクトの発生を抑制しながら消費電力を低減することができる。
【0057】
例えば、具体的に、素子ピッチPを0.3mmとし、送信される超音波の中心周波数を1.75MHz、送信される超音波の音速を1540m/s、すなわち送信される超音波の波長を0.88mmとした場合に、定められた第1角度A1を27°に設定して、セクタ走査制御部13により送信マルチプレクサ4、送信ビームフォーマ6、受信マルチプレクサ7および受信ビームフォーマ9が制御されることにより、アーチファクトの発生を抑制しながら消費電力を低減することができる。
【0058】
また、例えば、具体的に、素子ピッチPを0.3mmとし、送信される超音波の中心周波数を2MHz、送信される超音波の音速を1540m/s、すなわち送信される超音波の波長を0.77mmとした場合に、定められた第1角度A1を16.5°に設定して、セクタ走査制御部13により送信マルチプレクサ4、送信ビームフォーマ6、受信マルチプレクサ7および受信ビームフォーマ9が制御されることにより、取得された超音波画像におけるアーチファクトの発生を抑制しながら消費電力を低減することができる。
【0059】
なお、実施の形態1では、走査線のステア角度が第1角度範囲R1に含まれている場合に、図4(A)に示すように、1つの超音波振動子おきに32個の超音波振動子T2~T63、すなわち、振動子アレイ2を構成する超音波振動子T1~T64のうち半数の超音波振動子T2~T63が使用されることが説明されているが、取得される超音波画像において十分な分解能を得ることができれば、使用される超音波振動子の数は、これに限定されない。
【0060】
例えば、図示しないが、セクタ走査制御部13は、振動子アレイ2を構成する超音波振動子の総数の半数より少ない数の超音波振動子を、超音波の送受信に使用される振動子群として選択することができる。また、例えば、セクタ走査制御部13は、振動子アレイ2を構成する超音波振動子の総数の半数より多い数、例えば、3分の2程度の数の超音波振動子を、超音波の送受信に使用される振動子群として選択することもできる。
【0061】
また、実施の形態1では、振動子アレイ2における送信チャネルに使用される複数の超音波振動子Tと受信チャネルに使用される複数の超音波振動子Tとは互いに同一であるとして説明しているが、振動子アレイ2における送信チャネルに使用される複数の超音波振動子Tと受信チャネルに使用される複数の超音波振動子Tとは互いに異なっていてもよい。
【0062】
また、例えば、ステア角度が第1角度範囲R1内に含まれている場合に、セクタ走査制御部13は、図5(A)に示すように、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御して、振動子アレイ2において互いに隣接する超音波振動子対をそれぞれ短絡することにより、送信チャネルおよび受信チャネルの開口幅を最大にしながら、送信チャネルおよび受信チャネルの数を超音波振動子T1~T64の総数よりも少なくすることもできる。図5(A)に示す例では、64個の超音波振動子T1~T64が1次元に配列されて振動子アレイ2が構成されており、互いに隣接する1対の超音波振動子からなる複数の超音波振動子対がそれぞれ短絡されることにより、超音波振動子T1~T64の総数の半分である32個の送信チャネルおよび受信チャネルが形成されている。この際に、送信チャネルおよび受信チャネルのチャネルピッチP1は、互いに隣接する超音波振動子の素子ピッチPの2倍である。
【0063】
ここで、ステア角度が第2角度範囲R2内に含まれる場合には、セクタ走査制御部13は、図4(B)に示す態様と同様に、図5(B)に示すように、振動子アレイ2を構成する複数の超音波振動子T1~T64のうち互いに隣接して連なる一部の超音波振動子を超音波の送受信に使用する超音波振動子群として選択することにより、超音波送受信開口幅を狭くすることができる。
そのため、このような場合にも、取得された超音波画像におけるアーチファクトの発生を抑制しながら消費電力を低減することができる。
【0064】
ところで、図5(A)に示すような送信チャネルおよび受信チャネルの制御がセクタ走査制御部13によりなされる場合には、1つの送信チャネルおよび受信チャネルに対して2つの超音波振動子が使用されるため、振動子アレイ2により送信される超音波ビームの強度および受信される超音波エコーの強度は、図4(A)に示す態様と比較して2倍である。したがって、走査線のステア角度が第1角度範囲R1に含まれている場合の超音波画像等の画像情報データにおける信号強度は、走査線のステア角度が第2角度範囲R2に含まれている場合の画像情報データにおける信号強度の2倍となる。
【0065】
そのため、例えば、超音波プローブプロセッサ17の信号処理部10は、被検体内の組織に関する断層画像情報である信号を補正して、走査線のステア角度が第1角度範囲R1に含まれている場合と、ステア角度が第2角度範囲R2に含まれている場合における画像情報データの信号強度のムラを抑えることができる。
【0066】
例えば、信号処理部10は、被検体内の組織に関する断層画像情報である信号のうち、ステア角度が第2角度範囲R2に含まれている場合に取得された受信信号に対応する部分の信号強度が2倍となるように増幅することにより、この信号の強度のムラを抑えることができる。また、例えば、信号処理部10は、被検体内の組織に関する断層画像情報である信号のうち、ステア角度が第1角度範囲R1に含まれている場合に取得された受信信号に対応する部分の信号強度が半分となるように処理することにより、この信号における強度のムラを抑えることもできる。
【0067】
また、例えば、超音波プローブプロセッサ17の画像処理部11は、超音波画像信号を補正して、走査線のステア角度に応じた信号強度の変化を低減することができる。例えば、画像処理部11は、超音波画像信号のうち、ステア角度が第2角度範囲R2に含まれている場合に取得された受信信号に対応する部分の画素値を補正することにより、超音波画像信号における信号強度のムラを抑えることができる。
【0068】
また、図5(A)に示す例では、セクタ走査制御部13は、振動子アレイ2において互いに隣接する超音波振動子対をそれぞれ短絡するように、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御しているが、取得される超音波画像が十分な分解能を有していれば、隣接する3つ以上の超音波振動子が短絡されることもできる。これにより、振動子アレイ2における送信チャネルおよび受信チャネルの数をさらに減少させて、超音波ビームの送信および超音波エコーの受信に要する消費電力をさらに低減させることが可能である。
【0069】
実施の形態2
実施の形態1では、走査線のステア角度が第1角度範囲R1および第2角度範囲R2の2種類の角度範囲のどちらに含まれているかにより、送信チャネルおよび受信チャネルとして使用する超音波振動子Tが制御されているが、3種類以上の角度範囲に基づいて、送信チャネルおよび受信チャネルとして使用する超音波振動子Tを選択することもできる。
ここで、本発明の実施の形態2に係る超音波システムは、図1に示す実施の形態1の超音波システム1と同一である。
【0070】
例えば、図6に示すように、セクタ走査制御部13は、送信マルチプレクサ4、送信ビームフォーマ6、受信マルチプレクサ7および受信ビームフォーマ9を制御することにより、第3角度範囲R3、第4角度範囲R4および第5角度範囲R5の3種類の角度範囲に基づいて、送信チャネルおよび受信チャネルとして使用する超音波振動子Tを選択する。ここで、第3角度範囲R3とは、走査線のステア角度が定められた第2角度A2よりも狭い角度範囲であり、第4角度範囲R4とは、走査線のステア角度が第2角度A2以上で且つ定められた第3角度A3より狭い角度範囲であり、第5角度範囲R5とは、走査線のステア角度が第3角度A3以上で且つ45°よりも狭い角度範囲である。
【0071】
例えば、ステア角度が第3角度範囲R3内に含まれている場合には、図7(A)に示すように、セクタ走査制御部13は、図4(A)に示す態様と同様に、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御して、振動子アレイ2を構成する複数の超音波振動子T1~T64のうち間隔を隔てて配置されている複数の超音波振動子を超音波の送受信に使用される超音波振動子群として選択することにより、超音波送受信開口幅を広くしながら、送信チャネルおよび受信チャネルの数を超音波振動子T1~T64の総数よりも少なくすることができる。
【0072】
また、ステア角度が第4角度範囲R4に含まれている場合には、図7(B)に示すように、セクタ走査制御部13は、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御して、振動子アレイ2を構成する複数の超音波振動子T1~T64のうち、振動子アレイ2の中心付近において互いに隣接して連なる一部の超音波振動子と、その周辺において互いに間隔を隔てて配置されている複数の超音波振動子とを、超音波の送受信に使用される超音波振動子群として選択することができる。
【0073】
図7(B)に示す例では、振動子アレイ2の中心付近に位置し且つ互いに隣接して連なる16個の超音波振動子T25~T40と、16個の超音波振動子T25~T40の周辺すなわち両隣にそれぞれ8つずつ位置する超音波振動子T9~T23およびT42~T56により、32個の送信チャネルおよび受信チャネルが形成されている。ここで、16個の超音波振動子T25~T40の周辺に位置する超音波振動子T9~T23およびT42~T56は、それぞれ、1つの超音波振動子おきに、すなわちチャネルピッチP1で配置されている。そのため、この場合の送信チャネルおよび受信チャネルとして使用される超音波振動子群における平均振動子間隔、すなわち送信チャネルおよび受信チャンネル間のチャネルピッチの平均値は、図7(A)に示すような、ステア角度が第3角度範囲R3内に含まれている場合と比較して小さくなる。
【0074】
ところで、振動子アレイ2から超音波ビームが送信される際に、振動子アレイ2の両端部付近から発せられる超音波は、走査線の最大のステア角度よりも大きい角度範囲を伝搬する。このような超音波は、被検体内で多重反射等をすることがあり、この場合には、取得される超音波画像において超音波の多重反射等に起因するアーチファクトが発生し易くなる。実施の形態2では、セクタ走査制御部13は、図7(B)に示すように送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子として選択するため、振動子アレイ2の中心付近における超音波の空間的な密度よりも、その周辺における超音波の空間的な密度を小さくして、振動子アレイ2の中心付近における超音波に対して重み付けを行うことができる。これにより、走査線の最大のステア角度よりも大きい角度範囲を伝搬する超音波の影響を小さくして、取得される超音波画像におけるアーチファクトの発生を抑制することができる。
【0075】
また、ステア角度が第5角度範囲R5に含まれている場合には、図7(C)に示すように、セクタ走査制御部13は、図4(B)に示す態様と同様に、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御して、振動子アレイ2を構成する複数の超音波振動子T1~T64のうち、互いに隣接して連なる一部の超音波振動子を送信チャネルおよび受信チャネルに使用する超音波振動子群として選択することができる。
【0076】
以上から、実施の形態2の超音波システムによれば、電子セクタ走査動作に際して、振動子アレイ2を構成する超音波振動子Tの総数よりも少ない数の送信チャネルおよび受信チャネルを使用し、且つ、ステア角度が広くなるに従い、超音波の送受信に使用される超音波振動子群の平均振動子間隔が小さくなるため、アーチファクトの発生を抑制しながら消費電力を低減することができる。また、走査線のステア角度が第4角度範囲R4に含まれている場合に、振動子アレイ2を構成する超音波振動子のうち、互いに隣接して連なる一部の超音波振動子と、その周辺に位置し且つ互いに間隔を隔てて配置される一部の超音波振動子が送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子群として選択されるため、取得される超音波画像におけるアーチファクトをさらに抑制することができる。
【0077】
例えば、具体的に、素子ピッチPを0.3mmとし、送信される超音波の中心周波数を1.75MHz、送信される超音波の音速を1540m/s、すなわち送信される超音波の波長を0.88mmとした場合に、定められた第2角度A2を11°、定められた第3角度A3を27°に設定して、セクタ走査制御部13により送信マルチプレクサ4、送信ビームフォーマ6、受信マルチプレクサ7および受信ビームフォーマ9が制御されることにより、アーチファクトの発生を抑制しながら消費電力を低減し、さらに、超音波画像におけるアーチファクトを抑制することができる。
【0078】
また、例えば、この場合に、第2角度A2を24°、第3角度A3を40°に設定して、セクタ走査制御部13により送信マルチプレクサ4、送信ビームフォーマ6、受信マルチプレクサ7および受信ビームフォーマ9が制御されることによっても、アーチファクトの発生を抑制しながら消費電力を低減し、さらに、超音波画像におけるアーチファクトを抑制することができる。
【0079】
また、例えば、具体的に、素子ピッチPを0.3mmとし、送信される超音波の中心周波数を2MHz、送信される超音波の音速を1540m/s、すなわち送信される超音波の波長を0.77mmとした場合に、第2角度A2を14°、第3角度A3を30°に設定して、セクタ走査制御部13により送信マルチプレクサ4、送信ビームフォーマ6、受信マルチプレクサ7および受信ビームフォーマ9が制御されることにより、取得された超音波画像におけるアーチファクトの発生を抑制しながら消費電力を低減し、さらに、超音波画像におけるアーチファクトを抑制することができる。
【0080】
なお、実施の形態2では、走査線のステア角度が第4角度範囲R4に含まれている場合に、互いに隣接して連なる複数の超音波振動子の両隣において、それぞれ、1つの超音波振動子おきに、すなわちチャネルピッチP1で配置されている超音波振動子を選択する例を説明しているが、選択される超音波振動子間のピッチは、取得される超音波画像においてアーチファクトの発生を抑制することができ、且つ、超音波画像が十分な分解能を有していれば、特に限定されない。
【0081】
しかしながら、走査線のステア角度に応じた超音波画像の分解能を均等にするためには、振動子アレイ2を構成する超音波振動子の配列方向D1において、送信チャネルおよび受信チャネルとして使用される超音波振動子の配置を対称とすることが好ましく、互いに隣接して連なる複数の超音波振動子の一端側に位置する超音波振動子群と、他端側に位置する超音波振動子群とで、超音波振動子間のピッチを、配列方向D1において互いに対称な長さにすることが好ましい。
【0082】
また、走査線のステア角度に応じた超音波画像の分解能を均等にするために、互いに隣接して連なる複数の超音波振動子の一端側に位置する超音波振動子群と、他端側に位置する超音波振動子群とが、同一の数の超音波振動子により構成されていることが好ましい。
【0083】
(変形例1)
また、セクタ走査制御部13は、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御することにより、走査線のステア方向に応じて、すなわち超音波振動子の配列方向D1において走査線が左右のどちらに偏っているかに応じて、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子を選択することもできる。
ここで、例えば、走査線のステア角度が第3角度範囲R3に含まれている場合には、図8(A)に示すように、セクタ走査制御部13は、図4(A)で示す態様と同様に、振動子アレイ2を構成する複数の超音波振動子T1~T64のうち間隔を隔てて配置されている複数の超音波振動子を超音波の送受信に使用される超音波振動子群として選択することができる。
【0084】
走査線のステア角度が第4角度範囲R4に含まれている場合には、セクタ走査制御部13は、例えば、図8(B)に示すように、走査線のステア方向に応じて、送信チャネルおよび受信チャネルとして使用する超音波振動子群の位置を振動子アレイ2の一端側に偏らせることができる。図8(B)に示す例は、走査線が超音波振動子T1側に偏っている場合を表しており、互いに隣接して連なる超音波振動子T17~T32と、その周辺のそれぞれ8つの超音波振動子T1~T15およびT34~T48とが、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子群として選択されている。
【0085】
また、走査線のステア角度が第5角度範囲R5に含まれている場合には、セクタ走査制御部13は、例えば、図8(C)に示すように、走査線のステア方向に応じて、送信チャネルおよび受信チャネルとして使用する超音波振動子群の位置を振動子アレイ2の一端側に偏らせることができる。図8(C)に示す例は、図8(B)と同様に、走査線が超音波振動子T1側に偏っている場合を表しており、互いに隣接して連なる超音波振動子T1~T32が、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子群として選択されている。
【0086】
このように、走査線のステア方向に応じて、振動子アレイ2の一端側に偏って配置された超音波振動子群を、送信チャネルおよび受信チャネルとして使用することにより、図7(B)および図7(C)に示すような、振動子アレイ2の中心付近に集まった超音波振動子群を送信チャネルおよび受信チャネルとして使用する場合と比較して、走査線のステア角度を小さくすることができるため、超音波画像におけるアーチファクトの発生をより抑制することができる。
【0087】
(変形例2)
また、図5(A)に示す態様と同様に、互いに隣接する超音波振動子対を短絡することにより、送信チャネルおよび受信チャネルの数を削減することもできる。
例えば、走査線のステア角度が第3角度範囲R3に含まれている場合には、図9(A)に示すように、セクタ走査制御部13は、図5(A)に示す態様と同様に、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御して、振動子アレイ2において互いに隣接する超音波振動子対をそれぞれ短絡することができる。
【0088】
走査線のステア角度が第4角度範囲R4に含まれている場合には、図9(B)に示すように、セクタ走査制御部13は、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御して、振動子アレイ2を構成する複数の超音波振動子T1~T64のうち、振動子アレイ2の中心付近において互いに隣接して連なる一部の超音波振動子と、その周辺に位置し且つ互いに隣接する超音波振動子対がそれぞれ短絡された複数の超音波振動子とを送信チャネルおよび受信チャネルに使用する超音波振動子群として選択することができる。
【0089】
図9(B)に示す例では、互いに隣接して連なる16個の超音波振動子T25~T40と、その周辺すなわち両隣にそれぞれ8つずつ位置する超音波振動子対により、32個の送信チャネルおよび受信チャネルが形成されている。ここで、16個の超音波振動子T25~T40の一端側に16個の超音波振動子T9~T24からなる8つの超音波振動子対が位置し、16個の超音波振動子T25~T40の他端側に16個の超音波振動子T41~T56からなる8つの超音波振動子対が位置しており、それぞれの超音波振動子対は、互いに短絡されている。
【0090】
また、走査線のステア角度が第5角度範囲R5に含まれている場合には、図9(C)に示すように、セクタ走査制御部13は、図4(B)に示す態様と同様に、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御して、振動子アレイ2を構成する超音波振動子のうち互いに隣接して連なる一部の超音波振動子を、送信チャネルおよび受信チャネルとして使用する超音波振動子群として選択することができる。
【0091】
このようにして、走査線のステア角度が第3角度範囲R3および第4角度範囲R4に含まれる場合に、互いに隣接する超音波振動子対を短絡することによって、超音波画像におけるアーチファクトの発生を抑制しながら消費電力を低減することができる。
【0092】
(変形例3)
また、セクタ走査制御部13は、互いに隣接する超音波振動子対を短絡することにより送信チャネルおよび受信チャネルの数を削減する場合にも、図8(A)および図8(B)に示すように、走査線のステア方向に応じて、送信チャネルおよび受信チャネルに使用する超音波振動子群を選択することができる。
ここで、例えば、走査線のステア角度が第3角度範囲R3に含まれる場合には、図10(A)に示すように、セクタ走査制御部13は、図5(A)に示す態様と同様に、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御して、振動子アレイ2において互いに隣接する超音波振動子対をそれぞれ短絡することができる。
【0093】
走査線のステア角度が第4角度範囲R4に含まれている場合には、セクタ走査制御部13は、例えば、図10(B)に示すように、走査線のステア方向に応じて、送信チャネルおよび受信チャネルとして使用する超音波振動子群の位置を振動子アレイ2の一端側に偏らせることができる。図10(B)に示す例は、走査線が超音波振動子T1側に偏っている場合を表しており、互いに隣接して連なる超音波振動子T17~T32と、その周辺にそれぞれ8つずつ位置する超音波振動子対により32個の送信チャネルおよび受信チャネルが形成されている。ここで、16個の超音波振動子T25~T40の一端側に16個の超音波振動子T1~T16からなる8つの超音波振動子対が位置し、16個の超音波振動子T25~T40の他端側に16個の超音波振動子T33~T48からなる8つの超音波振動子対が位置しており、それぞれの超音波振動子対は、互いに短絡されている。
【0094】
また、走査線のステア角度が第5角度範囲R5に含まれている場合には、図10(C)に示すように、セクタ走査制御部13は、図8(C)に示す態様と同様に、走査線のステア方向に応じて、送信チャネルおよび受信チャネルとして使用する超音波振動子群の位置を振動子アレイ2の一端側に偏らせることができる。図10(C)に示す例は、走査線が超音波振動子T1側に偏っている場合を表しており、互いに隣接して連なる超音波振動子T1~T32が、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子群として選択されている。
【0095】
このように、互いに隣接する超音波振動子対を短絡することにより送信チャネルおよび受信チャネルの数を削減する場合にも、走査線のステア方向に応じて、送信チャネルおよび受信チャネルとして使用する超音波振動子群の位置を振動子アレイ2の一端側に偏らせることにより、超音波画像におけるアーチファクトの発生をより抑制することができる。
【0096】
(変形例4)
また、実施の形態2の変形例2において、セクタ走査制御部13は、図11(B)に示すように、振動子アレイ2の中心付近に位置する複数の超音波振動子群と、その周辺にそれぞれ位置し且つ互いに隣接して連なる複数の超音波振動子とを、送信チャネルおよび受信チャネルに使用する超音波振動子群として選択することもできる。図11(B)に示す例では、セクタ走査制御部13は、振動子アレイ2の中心付近に位置する32個の超音波振動子T17~T48からなる16個の超音波振動子対と、16個の超音波振動子対の周辺にそれぞれ8つずつ隣接して連なる超音波振動子T9~T16および超音波振動子T49~T56とを、送信チャネルおよび受信チャネルに使用する超音波振動子群として選択している。
【0097】
そのため、このようにして配列された超音波振動子群を用いて超音波ビームを送信する場合には、振動子アレイ2の中心付近に位置する16個の超音波振動子対から発せられる超音波の強度の方が、16個の超音波振動子対の周辺にそれぞれ8つずつ隣接して連なる超音波振動子T9~T16および超音波振動子T49~T56から発せられる超音波の強度よりも強くなり、結果的に、振動子アレイ2の中心付近における超音波に対して重み付けを行うことができる。これにより、走査線の最大のステア角度よりも大きい角度範囲を伝搬する超音波の影響を小さくして、取得される超音波画像におけるアーチファクトの発生を抑制することができる。
【0098】
ここで、走査線のステア角度が第3角度範囲R3に含まれている場合には、図11(A)に示すように、セクタ走査制御部13は、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御して、振動子アレイ2において互いに隣接する超音波振動子対をそれぞれ短絡することができる。
また、走査線のステア角度が第5角度範囲R5に含まれている場合には、図11(C)に示すように、セクタ走査制御部13は、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御して、振動子アレイ2を構成する超音波振動子のうち互いに隣接して連なる一部の超音波振動子を、送信チャネルおよび受信チャネルとして使用する超音波振動子群として選択することができる。
【0099】
なお、図示しないが、実施の形態2の変形例4においても、実施の形態2の変形例1および変形例3と同様に、走査線のステア方向に応じて、送信チャネルおよび受信チャネルに使用する超音波振動子群を、振動子アレイ2の一端側に偏らせることができる。
【0100】
なお、実施の形態2では、第3角度範囲R3、第4角度範囲R4および第5角度範囲R5の3種類の角度範囲に基づいて、セクタ走査制御部13により、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子群が選択されているが、4種類以上の角度範囲に基づいて送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子群が選択されることもできる。
【0101】
実施の形態3
実施の形態1および2では、セクタ走査制御部13は、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子が、定められた種類の角度範囲に応じて離散的に変化するように送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御しているが、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子が連続的に変化するように送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御することができる。
ここで、実施の形態3の超音波システムは、図1に示す実施の形態1の超音波システム1と同一の構成を有している。
【0102】
セクタ走査制御部13は、走査線のステア角度が図6に示す第3角度範囲R3に含まれている場合に、例えば、図12(A)に示すように、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御して、振動子アレイ2を構成する複数の超音波振動子T1~T64のうち間隔を隔てて配置されている複数の超音波振動子を超音波の送受信に使用される超音波振動子群として選択することができる。
【0103】
また、セクタ走査制御部13は、走査線のステア角度が図6に示す第4角度範囲R4に含まれている場合に、例えば、図12(B)に示すように、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御して、ステア角度が広くなるほど振動子アレイ2における超音波送受信開口幅が狭くなるように、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子を連続的に変化させることができる。
【0104】
より具体的には、セクタ走査制御部13は、走査線のステア角度が定められた第2角度A2から定められた第3角度A3まで1°ずつ増加する毎に、振動子アレイ2の中心付近において互いに隣接して連なる超音波振動子の数を2つずつ増加させると共に、その両隣において、互いに間隔を隔てて配置されている複数の超音波振動子の数を、それぞれ1つずつ減少させることができる。図12(B)に示す例では、走査線のステア角度が第4角度範囲R4に含まれている場合に、振動子アレイ2の中心付近に位置し且つ互いに隣接して連なる2m個の超音波振動子と、その両隣に16-m個ずつ位置する超音波振動子により、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子群が構成されている。ここで、mは2以上15以下の整数である。
【0105】
また、例えば、走査線のステア角度が図6に示す第5角度範囲R5に含まれている場合には、セクタ走査制御部13は、図12(C)に示すように、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御して、振動子アレイ2を構成する複数の超音波振動子T1~T64のうち互いに隣接して連なる一部の超音波振動子を、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子群として選択することができる。
【0106】
以上のように、実施の形態3の超音波システムによれば、走査線のステア角度が第4角度範囲R4に含まれている場合に、ステア角度が広くなるほど振動子アレイ2における超音波送受信開口幅が狭くなるように、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子を連続的に変化させるため、ステア角度に対応して超音波画像におけるアーチファクトの発生を抑制することができる。また、ステア角度によっては、超音波画像におけるアーチファクトの発生を抑制しながら、超音波画像の分解能を向上させることが可能である。
【0107】
例えば、具体的に、実施の形態2の具体例と同様に、素子ピッチPを0.3mmとし、送信される超音波の中心周波数を1.75MHz、送信される超音波の音速を1540m/s、すなわち送信される超音波の波長を0.88mmとした場合に、定められた第2角度A2を11°、定められた第3角度A3を27°に設定して、走査線のステア角度が11°から27°まで1°ずつ変化する毎に、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子を連続的に変化させることができる。例えばこのようにして、超音波画像におけるステア角度に対応したアーチファクトの発生を抑制することができる。
【0108】
また、例えば、この場合に、第2角度A2を24°、第3角度A3を40°に設定して、走査線のステア角度が24°から40°まで1°ずつ変化する毎に、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子を連続的に変化させることにより、超音波画像におけるステア角度に対応したアーチファクトの発生を抑制することもできる。
【0109】
また、例えば、具体的に、素子ピッチPを0.3mmとし、送信される超音波の中心周波数を2MHz、送信される超音波の音速を1540m/s、すなわち送信される超音波の波長を0.77mmとした場合に、第2角度A2を14°、第3角度A3を30°に設定して、走査線のステア角度が14°から30°まで1°ずつ変化する毎に、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子を連続的に変化させることにより、超音波画像におけるステア角度に対応したアーチファクトの発生を抑制することもできる。
【0110】
なお、例えば図13(A)~図13(C)に示すように、振動子アレイ2において、複数の超音波振動子対を短絡することにより、送信チャネルおよび受信チャネルの数を削減する場合にも、ステア角度が広くなるほど振動子アレイ2における超音波送受信開口幅が狭くなるように、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子を連続的に変化させることができる。
【0111】
ここで、走査線のステア角度が第3角度範囲R3に含まれている場合には、例えば、図13(A)に示すように、セクタ走査制御部13は、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御して、振動子アレイ2を構成する複数の超音波振動子T1~T64において互いに隣接し且つ短絡された超音波振動子対を送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子群として選択することができる。
【0112】
また、走査線のステア角度が第4角度範囲R4に含まれている場合に、例えば、図13(B)に示すように、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御して、ステア角度が広くなるほど振動子アレイ2における超音波送受信開口幅が狭くなるように、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子を連続的に変化させることができる。
【0113】
より具体的には、セクタ走査制御部13は、走査線のステア角度が定められた第2角度A2から定められた第3角度A3まで1°ずつ増加する毎に、振動子アレイ2における両端から中心に向かって超音波振動子対を1ずつ、1つの超音波振動子に置き換えることができる。これにより、走査線のステア角度が第2角度A2から第3角度A3まで1°ずつ増加する毎に、振動子アレイ2の中心付近に位置する超音波振動子対の数が1つずつ減少し、複数の超音波振動子対の両隣において、隣接して連なる超音波振動子の数が1つずつ増加する。図13(B)に示す例では、走査線のステア角度が第4角度範囲R4に含まれている場合に、振動子アレイ2の中心付近に位置する2m個の超音波振動子対と、その両隣に16-m個ずつ位置する超音波振動子により、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子群が構成されている。
【0114】
また、例えば、走査線のステア角度が第5角度範囲R5に含まれている場合には、セクタ走査制御部13は、図13(C)に示すように、送信マルチプレクサ4および受信マルチプレクサ7を制御して、振動子アレイ2を構成する複数の超音波振動子T1~T64のうち互いに隣接して連なる一部の超音波振動子を、送信チャネルおよび受信チャネルに使用される超音波振動子群として選択することができる。
【0115】
実施の形態4
実施の形態1における超音波プローブ21は、画像処理部11を含んでいるが、超音波プローブ21に画像処理部11が含まれる代わりに、画像表示装置31に画像処理部11と同様の画像処理部が含まれていてもよい。
【0116】
図14に、実施の形態4に係る超音波システム1Aの構成を示す。実施の形態4に係る超音波システム1Aは、超音波プローブ21Aおよび画像表示装置31Aにより構成されている。超音波システム1Aの超音波プローブ21Aは、図1に示す実施の形態1における超音波プローブ21において画像処理部11を除いたものであり、超音波システム1Aの画像表示装置31Aは、図1に示す実施の形態1における画像表示装置31に画像処理部40を設けたものである。
【0117】
そのため、超音波プローブ21Aにおいて、信号処理部10に、無線通信部12が接続されており、切替スイッチ3、送信マルチプレクサ4、送信駆動部5、送信ビームフォーマ6、受信マルチプレクサ7、受信信号処理部8、受信ビームフォーマ9、信号処理部10、セクタ走査制御部13、通信制御部14およびプローブ制御部15により、超音波プローブプロセッサ17Aが構成されている。
【0118】
また、画像表示装置31Aにおいて、無線通信部32に、画像処理部40が接続され、画像処理部40に、表示制御部33が接続されている。さらに、表示制御部33、通信制御部35、本体制御部36および画像処理部40により、画像表示装置プロセッサ39Aが構成されている。
【0119】
超音波プローブ21Aの無線通信部12は、信号処理部10により生成された、被検体内の組織に関する断層画像情報を表す信号に基づいて、キャリアを変調して伝送信号を生成し、画像表示装置31Aの無線通信部32に伝送信号を無線送信する。
画像表示装置31Aの無線通信部32は、超音波プローブ21Aの無線通信部12から送信された伝送信号を復調することにより、被検体内の組織に関する断層画像情報を表す信号を画像処理部40に送信する。
【0120】
画像表示装置プロセッサ39Aの表示制御部33は、本体制御部36の制御の下、無線通信部32により復調された信号に所定の処理を施して、表示部34に超音波画像を表示させる。
このようにして、画像表示装置31Aにおいて超音波画像信号を生成することもできる。
【0121】
そのため、実施の形態4に係る超音波システム1Aによれば、図1に示す実施の形態1に係る超音波システム1と同様に、取得された超音波画像におけるアーチファクトの発生を抑制しながら消費電力を低減することができる。
【0122】
なお、上述した実施の形態1~3では、超音波プローブプロセッサ17の信号処理部10により減衰の補正および包絡線検波処理が施された後に、画像処理部11によりラスター変換された超音波画像信号が、画像情報データとして超音波プローブ21の無線通信部12から画像表示装置31に無線送信され、また、実施の形態4では、超音波プローブプロセッサ17Aの信号処理部10により減衰の補正および包絡線検波処理が施された信号が、画像情報データとして超音波プローブ21Aの無線通信部12から画像表示装置31Aに無線送信されたが、このように、超音波プローブ21から画像表示装置31に無線送信される画像情報データ、および、超音波プローブ21Aから画像表示装置31Aに無線送信される画像情報データは、検波後の信号であることが好ましい。ただし、画像情報データは、検波後の信号に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0123】
1,1A 超音波システム、2 振動子アレイ、3 切替スイッチ、4 送信マルチプレクサ、5 送信駆動部、6 送信ビームフォーマ、7 送信マルチプレクサ、8 受信信号処理部、9 受信ビームフォーマ、10 信号処理部、11,40 画像処理部、12,32 無線通信部、13 セクタ走査制御部、14,35 通信制御部、15 プローブ制御部、16 バッテリ、17,17A 超音波プローブプロセッサ、21,21A 超音波プローブ、22 増幅部、23 AD変換部、31,31A 画像表示装置、33
表示制御部、34 表示部、36 本体制御部、37 操作部、38 格納部、39,39A 画像表示装置プロセッサ、A1 第1角度、A2 第2角度、A3 第3角度、D1 配列方向、D2 直交方向、P 素子ピッチ、P1 チャネルピッチ、R1 第1角度範囲、R2 第2角度範囲、R3 第3角度範囲、R4 第4角度範囲、R5 第5角度範囲、SL 走査線、T,T1~T64 超音波振動子、VL 垂直線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14