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特許7080325硬化性組成物、膜、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、固体撮像素子および画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】硬化性組成物、膜、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、固体撮像素子および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20220527BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20220527BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20220527BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20220527BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20220527BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G03F7/004 505
G03F7/004 504
G03F7/027
C08F2/44 Z
C08F2/50
G09F9/30 349A
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020532376
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2019028597
(87)【国際公開番号】W WO2020022248
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2018140256
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】水野 明夫
(72)【発明者】
【氏名】牧野 雅臣
(72)【発明者】
【氏名】尾田 和也
(72)【発明者】
【氏名】出井 宏明
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0120725(KR,A)
【文献】特開2016-180020(JP,A)
【文献】特開2013-073104(JP,A)
【文献】特開2015-145441(JP,A)
【文献】特開2011-219741(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194527(WO,A1)
【文献】特開2019-038985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G03F 7/004
G03F 7/027
C08F 2/44
C08F 2/50
G09F 9/30
C08F 220/06
C08F 220/28
C08F 220/30
C08F 220/36
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、
色素部分構造と塩基性基とをそれぞれ同一の構成単位aに含み、かつ、前記構成単位aを1分子中に2個以上有し、アミン価が0.4~4.5mmol/gである化合物A、
光重合開始剤、
硬化性化合物、および、
樹脂、を含む硬化性組成物であり、
前記化合物Aは、下記式(A-1)で表される繰り返し単位を含む化合物、および、下記式(A-2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であり、
前記硬化性組成物の全固形分中に前記化合物Aを1~15質量%含有する、硬化性組成物。
【化1】
(式(A-1)中、Ra ~Ra は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、La は単結合または2価の連結基を表し、Z は前記構成単位aを表す;
式(A-2)中、Z は前記構成単位aを表し、A は以下のいずれかで表されるs価の連結基を表し、sは3~6の整数を表す。)
【化2】
(L は3価の基を表し、T は単結合又は2価の連結基を表し、3個存在するT は互いに同一であっても異なっていてもよい;
は4価の基を表し、T は単結合又は2価の連結基を表し、4個存在するT は互いに同一であっても異なっていてもよい;
は5価の基を表し、T は単結合又は2価の連結基を表し、5個存在するT は互いに同一であっても異なっていてもよい;
は6価の基を表し、T は単結合又は2価の連結基を表し、6個存在するT は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記色素部分構造は、ベンズイミダゾロン色素、ベンズイミダゾリノン色素、キノフタロン色素、フタロシアニン色素、アントラキノン色素、ジケトピロロピロール色素、キナクリドン色素、アゾ色素、イソインドリノン色素、イソインドリン色素、ジオキサジン色素、ペリレン色素、チオインジゴ色素から選ばれる色素由来の部分構造である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記塩基性基は、アミノ基、ピリジル基およびそれらの塩、アンモニウム基の塩、並びにフタルイミドメチル基から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記構成単位aは、塩基性基を2個以上含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記構成単位aは、色素部分構造と、塩基性基とを含む化合物由来の構成単位である、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記構成単位aは、下記式(a1)~(a3)のいずれかで表される、請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性組成物
【化3】
式(a1)中、*は結合手を表し、Pは色素部分構造を表し、L11は単結合または2価の連結基を表し、L12はb1+1価の連結基を表し、B塩基性基を表し、b1およびmはそれぞれ独立して1以上の整数を表す;
式(a2)中、*は結合手を表し、Pは色素部分構造を表し、L21はb2+2価の連結基を表し、B塩基性基を表し、b2は1以上の整数を表す;
式(a3)中、*は結合手を表し、Pは色素部分構造を表し、L31およびL32はそれぞれ独立して単結合または2価の連結基を表し、B塩基性基を表す。
【請求項7】
前記化合物Aの重量平均分子量が1000~15000である、請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記樹脂は酸基を有する樹脂を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記顔料は有彩色顔料を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記顔料は緑色顔料を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
顔料を2種以上含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記硬化性化合物は多官能の重合性モノマーを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
有機溶剤を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
カラーフィルタの画素形成用である、請求項1~13のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
緑色の画素形成用である、請求項14に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法であって、
顔料を、色素部分構造と塩基性基とをそれぞれ同一の構成単位aに含み、かつ、前記構成単位aを1分子中に2個以上有し、アミン価が0.4~4.5mmol/gである化合物A、および、樹脂の存在下で分散する工程を含み、
前記化合物Aは、下記式(A-1)で表される繰り返し単位を含む化合物、および下記式(A-2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である、硬化性組成物の製造方法。
【化4】
(式(A-1)中、Ra ~Ra は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、La は単結合または2価の連結基を表し、Z は前記構成単位aを表す;
式(A-2)中、Z は前記構成単位aを表し、A は以下のいずれかで表されるs価の連結基を表し、sは3~6の整数を表す。)
【化5】
(L は3価の基を表し、T は単結合又は2価の連結基を表し、3個存在するT は互いに同一であっても異なっていてもよい;
は4価の基を表し、T は単結合又は2価の連結基を表し、4個存在するT は互いに同一であっても異なっていてもよい;
は5価の基を表し、T は単結合又は2価の連結基を表し、5個存在するT は互いに同一であっても異なっていてもよい;
は6価の基を表し、T は単結合又は2価の連結基を表し、6個存在するT は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載の硬化性組成物から得られる膜。
【請求項18】
請求項17に記載の膜を有するカラーフィルタ。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか1項に記載の硬化性組成物を用いて支持体上に硬化性組成物層を形成する工程と、フォトリソグラフィ法により硬化性組成物層に対してパターンを形成する工程と、を有するカラーフィルタの製造方法。
【請求項20】
請求項17に記載の膜を有する固体撮像素子。
【請求項21】
請求項17に記載の膜を有する画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料を含む硬化性組成物に関する。また、本発明は、硬化性組成物を用いた膜、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、固体撮像素子および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話等の普及から、電荷結合素子(CCD)イメージセンサなどの固体撮像素子の需要が大きく伸びている。ディスプレイや光学素子のキーデバイスとしてカラーフィルタが使用されている。
【0003】
カラーフィルタは、着色剤と硬化性化合物とを含む硬化性組成物を用いて製造されている。また、一般的に着色剤として顔料を用いた場合、顔料誘導体および分散剤などを用いて硬化性組成物中に顔料を分散させている。
【0004】
また、特許文献1には、(A)色素多量体、(B)顔料、(C)重合性化合物、(D)光重合開始剤、及び(E)片末端にヒドロキシル基を有するポリマーと酸無水物とを反応させて得られた分散樹脂を含有する着色感放射線性組成物を用いてカラーフィルタを製造することが記載されている。なお、特許文献1では、(A)色素多量体は着色剤として用いられている。
【0005】
一方、特許文献2はアゾ顔料と、スチレン化合物、(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物または(メタ)アクリル酸アミド化合物などに由来する繰り返し単位に、所定のアゾ色素構造が結合したアゾ化合物と、を含むトナーに関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-195854号公報
【文献】特開2013-209639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、カラーフィルタなどに用いられる膜は、より薄膜化が望まれている。所望の分光を維持しつつ薄膜化を達成するためには、膜形成に用いる硬化性組成物中の着色剤濃度を高めることが必要である。しかしながら、硬化性組成物中の着色剤濃度を高めると、相対的に着色剤以外の含有量が少なくなるので、硬化性が不足する傾向にある。また、着色剤として顔料を用いた場合においては、顔料の分散性が低下して硬化性組成物の粘度が増加し、硬化性組成物の保存安定性が低下しやすい傾向にある。このため、顔料を含む硬化性組成物においては、保存安定性と硬化性とをより高い水準で両立させることが望まれている。
【0008】
よって、本発明の目的は、保存安定性および硬化性に優れた硬化性組成物、前述の硬化性組成物を用いた膜、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、固体撮像素子および画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者の検討によれば、以下の構成とすることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。よって、本発明は以下を提供する。
<1> 顔料、
色素部分構造と、酸基または塩基性基と、をそれぞれ同一の構成単位aに含み、かつ、構成単位aを1分子中に2個以上有する化合物A、
光重合開始剤、
硬化性化合物、および、
樹脂、を含む硬化性組成物であり、
硬化性組成物の全固形分中に化合物Aを1~15質量%含有する、硬化性組成物。
<2> 色素部分構造は、ベンズイミダゾロン色素、ベンズイミダゾリノン色素、キノフタロン色素、フタロシアニン色素、アントラキノン色素、ジケトピロロピロール色素、キナクリドン色素、アゾ色素、イソインドリノン色素、イソインドリン色素、ジオキサジン色素、ペリレン色素、チオインジゴ色素から選ばれる色素由来の部分構造である、<1>に記載の硬化性組成物。
<3> 酸基は、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種であり、
塩基性基は、アミノ基、ピリジル基およびそれらの塩、アンモニウム基の塩、並びにフタルイミドメチル基から選ばれる少なくとも1種である、<1>または<2>に記載の硬化性組成物。
<4> 構成単位aは、酸基または塩基性基を2個以上含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<5> 構成単位aは、色素部分構造と、酸基または塩基性基とを含む化合物由来の構成単位である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<6> 構成単位aは塩基性基を有する、<1>~<5>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<7> 化合物Aのアミン価が0.4~4.5mmol/gである、<6>に記載の硬化性組成物。
<8> 構成単位aは、下記式(a1)~(a3)のいずれかで表される、<1>~<7>のいずれか1つに記載の硬化性組成物;
【化1】
式(a1)中、*は結合手を表し、Pは色素部分構造を表し、L11は単結合または2価の連結基を表し、L12はb1+1価の連結基を表し、Bは酸基または塩基性基を表し、b1およびmはそれぞれ独立して1以上の整数を表す;
式(a2)中、*は結合手を表し、Pは色素部分構造を表し、L21はb2+2価の連結基を表し、Bは酸基または塩基性基を表し、b2は1以上の整数を表す;
式(a3)中、*は結合手を表し、Pは色素部分構造を表し、L31およびL32はそれぞれ独立して単結合または2価の連結基を表し、Bは酸基または塩基性基を表す。
<9> 化合物Aは、下記式(A-1)で表される繰り返し単位を含む化合物、および下記(A-2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の硬化性組成物;
【化2】
式(A-1)中、Ra~Raは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、Laは単結合または2価の連結基を表し、Zは構成単位aを表す;
式(A-2)中、Zは構成単位aを表し、Aはs価の連結基を表し、sは2以上の整数を表す。
<10> 化合物Aの重量平均分子量が1000~15000である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<11> 上記樹脂は酸基を有する樹脂を含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<12> 上記顔料は有彩色顔料を含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<13> 上記顔料は緑色顔料を含む、<1>~<12>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<14> 顔料を2種以上含む、<1>~<13>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<15> 硬化性化合物は多官能の重合性モノマーを含む、<1>~<14>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<16> 有機溶剤を含む、<1>~<15>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<17> カラーフィルタの画素形成用である、<1>~<16>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<18> 緑色の画素形成用である、<17>に記載の硬化性組成物。
<19> <1>~<18>のいずれか1つに記載の硬化性組成物の製造方法であって、
顔料を、色素部分構造と、酸基または塩基性基と、をそれぞれ同一の構成単位aに含み、かつ、構成単位aを1分子中に2個以上有する化合物A、および、樹脂の存在下で分散する工程を含む、硬化性組成物の製造方法。
<20> <1>~<18>のいずれか1つに記載の硬化性組成物から得られる膜。
<21> <20>に記載の膜を有するカラーフィルタ。
<22> <1>~<18>のいずれか1つに記載の硬化性組成物を用いて支持体上に硬化性組成物層を形成する工程と、フォトリソグラフィ法により硬化性組成物層に対してパターンを形成する工程と、を有するカラーフィルタの製造方法。
<23> <20>に記載の膜を有する固体撮像素子。
<24> <20>に記載の膜を有する画像表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保存安定性および硬化性に優れた硬化性組成物、前述の硬化性組成物を用いた膜、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、固体撮像素子および画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において、構造式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により測定したポリスチレン換算値である。
本明細書において、近赤外線とは、波長700~2500nmの光をいう。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において、顔料とは、溶剤に対して溶解しにくい化合物を意味する。例えば、顔料は、23℃の水100gおよび23℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gに対する溶解度がいずれも0.1g以下であることが好ましく、0.01g以下であることがより好ましい。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0012】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、
顔料、
色素部分構造と、酸基または塩基性基と、をそれぞれ同一の構成単位aに含み、かつ、構成単位aを1分子中に2個以上有する化合物A、
光重合開始剤、
硬化性化合物、および、
樹脂、を含む硬化性組成物であり、
硬化性組成物の全固形分中に化合物Aを1~15質量%含有することを特徴とする。
【0013】
本発明の硬化性組成物は、保存安定性および硬化性に優れている。このような効果が得られる理由としては次によるものであると推測される。上記化合物Aの構成単位aに含まれる色素部分構造は、顔料と相互作用して顔料に吸着し、構成単位aに含まれる酸基または塩基性基は、樹脂と相互作用して樹脂に吸着すると推測される。そして、この化合物Aは、構成単位aを1分子中に2個以上有するので、顔料や樹脂に対して化合物Aが多点で相互作用して、硬化性組成物中において、顔料-化合物A-樹脂の相互作用が強固に形成され易くなって硬化性組成物中における顔料の分散性を向上させることができ、保存安定性に優れた硬化性組成物とすることができると推測される。また、上記の相互作用が強固に形成されることにより、相互作用が架橋のように働き、露光部(光硬化部)では架橋密度が上がり、露光部での硬化性を向上させることができたと推測される。そして、本発明の硬化性組成物は、このような化合物Aを硬化性組成物の全固形分中に1~15質量%含有することにより、保存安定性と硬化性とを高いレベルで両立させることができたと推測される。
【0014】
本発明の硬化性組成物は、カラーフィルタ、近赤外線透過フィルタ、近赤外線カットフィルタ、ブラックマトリクス、遮光膜、屈折率調整膜、マイクロレンズなどに用いることができる。特に本発明の硬化性組成物は、カラーフィルタの画素形成用の硬化性組成物として好ましく用いることができ、カラーフィルタの緑色画素形成用の硬化性組成物としてより好ましく用いることができる。また、本発明の硬化性組成物は、カラーマイクロレンズの形成用の組成物として用いることもできる。カラーマイクロレンズの製造方法としては、特開2018-010162号公報に記載された方法などが挙げられる。
【0015】
以下、本発明の硬化性組成物に用いられる各成分について説明する。
【0016】
<<顔料>>
本発明の硬化性組成物は、顔料を含有する。顔料としては、白色顔料、黒色顔料、有彩色顔料、近赤外線吸収顔料が挙げられる。なお、本発明において、白色顔料は純白色のみならず、白に近い明るい灰色(例えば灰白色、薄灰色など)の顔料などを含む。また、顔料は、無機顔料、有機顔料のいずれでもよく、分散安定性をより向上させやすいという理由から有機顔料であることが好ましい。また、顔料は、有彩色顔料を含むものであることが好ましく、緑色顔料を含むものであることがより好ましい。また、顔料には、無機顔料または有機‐無機顔料に、有機発色団を置換した材料を用いることもできる。無機顔料や有機‐無機顔料を有機発色団で置換することで、色相設計をしやすくできる。
【0017】
顔料の平均一次粒子径は、1~200nmが好ましい。下限は5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。上限は、180nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。顔料の平均一次粒子径が上記範囲であれば、硬化性組成物中における顔料の分散安定性が良好である。なお、本発明において、顔料の一次粒子径は、顔料の一次粒子を透過型電子顕微鏡により観察し、得られた画像写真から求めることができる。具体的には、顔料の一次粒子の投影面積を求め、それに対応する円相当径を顔料の一次粒子径として算出する。また、本発明における平均一次粒子径は、400個の顔料の一次粒子についての一次粒子径の算術平均値とする。また、顔料の一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
【0018】
(有彩色顔料)
有彩色顔料としては、特に限定されず、公知の有彩色顔料を用いることができる。有彩色顔料としては、波長400~700nmの範囲に極大吸収波長を有する顔料が挙げられる。例えば、黄色顔料、オレンジ色顔料、赤色顔料、緑色顔料、紫色顔料、青色顔料などが挙げられる。これらの具体例としては、例えば、以下が挙げられる。
【0019】
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214,231,232等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279,294等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59,62,63等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42,60,61等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,29,60,64,66,79,80,87,88等(以上、青色顔料)。
【0020】
また、緑色顔料として、1分子中のハロゲン原子数が平均10~14個であり、臭素原子数が平均8~12個であり、塩素原子数が平均2~5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/118720号に記載の化合物が挙げられる。また、緑色顔料としてCN106909027Aに記載の化合物、リン酸エステルを配位子として有するフタロシアニン化合物などを用いることもできる。
【0021】
また、青色顔料として、リン原子を有するアルミニウムフタロシアニン化合物を用いることもできる。具体例としては、特開2012-247591号公報の段落0022~0030、特開2011-157478号公報の段落0047に記載の化合物が挙げられる。
【0022】
また、黄色顔料として、特開2017-201003号公報に記載されている顔料、特開2017-197719号公報に記載されている顔料を用いることができる。また、黄色顔料として、下記式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、2種以上の金属イオンと、メラミン化合物とを含む金属アゾ顔料を用いることもできる。
【化3】
式中、RおよびRはそれぞれ独立して、-OHまたは-NRであり、RおよびRはそれぞれ独立して、=Oまたは=NRであり、R~Rはそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。R~Rが表すアルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐および環状のいずれであってもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基およびアミノ基が好ましい。
【0023】
上記の金属アゾ顔料については、特開2017-171912号公報の段落番号0011~0062、0137~0276、特開2017-171913号公報の段落番号0010~0062、0138~0295、特開2017-171914号公報の段落番号0011~0062、0139~0190、特開2017-171915号公報の段落番号0010~0065、0142~0222の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0024】
また、黄色顔料として、特開2018-062644号公報に記載の化合物を用いることもできる。この化合物は顔料誘導体としても使用可能である。
【0025】
赤色顔料として、特開2017-201384号公報に記載の構造中に少なくとも1つ臭素原子が置換したジケトピロロピロール系顔料、特許第6248838号の段落番号0016~0022に記載のジケトピロロピロール系顔料などを用いることもできる。また、赤色顔料として、芳香族環に対して、酸素原子、硫黄原子または窒素原子が結合した基が導入された芳香族環基がジケトピロロピロール骨格に結合した構造を有する化合物を用いることもできる。このような化合物としては、式(DPP1)で表される化合物であることが好ましく、式(DPP2)で表される化合物であることがより好ましい。
【化4】
【0026】
上記式中、R11およびR13はそれぞれ独立して置換基を表し、R12およびR14はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、n11およびn13はそれぞれ独立して0~4の整数を表し、X12およびX14はそれぞれ独立して酸素原子、硫黄原子または窒素原子を表し、X12が酸素原子または硫黄原子の場合は、m12は1を表し、X12が窒素原子の場合は、m12は2を表し、X14が酸素原子または硫黄原子の場合は、m14は1を表し、X14が窒素原子の場合は、m14は2を表す。R11およびR13が表す置換基としては、後述する置換基Tで挙げた基が挙げられ、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、スルホキシド基、スルホ基などが好ましい具体例として挙げられる。
【0027】
本発明において、有彩色顔料は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
(白色顔料)
白色顔料としては、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、中空樹脂粒子、硫化亜鉛などが挙げられる。白色顔料は、チタン原子を有する粒子が好ましく、酸化チタンがより好ましい。また、白色顔料は、波長589nmの光に対する屈折率が2.10以上の粒子であることが好ましい。前述の屈折率は、2.10~3.00であることが好ましく、2.50~2.75であることがより好ましい。
【0029】
また、白色顔料は「酸化チタン 物性と応用技術 清野学著 13~45ページ 1991年6月25日発行、技報堂出版発行」に記載の酸化チタンを用いることもできる。
【0030】
白色顔料は、単一の無機物からなるものだけでなく、他の素材と複合させた粒子を用いてもよい。例えば、内部に空孔や他の素材を有する粒子、コア粒子に無機粒子を多数付着させた粒子、ポリマー粒子からなるコア粒子と無機ナノ微粒子からなるシェル層とからなるコアおよびシェル複合粒子を用いることが好ましい。上記コアおよびシェル複合粒子としては、例えば、特開2015-047520号公報の段落番号0012~0042の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0031】
白色顔料は、中空無機粒子を用いることもできる。中空無機粒子とは、内部に空洞を有する構造の無機粒子であり、外殻に包囲された空洞を有する無機粒子のことを言う。中空無機粒子としては、特開2011-075786号公報、国際公開第2013/061621号、特開2015-164881号公報などに記載された中空無機粒子が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0032】
(黒色顔料)
黒色顔料としては特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、カーボンブラック、チタンブラック、グラファイト等が挙げられ、カーボンブラック、チタンブラックが好ましく、チタンブラックがより好ましい。チタンブラックとは、チタン原子を含有する黒色粒子であり、低次酸化チタンや酸窒化チタンが好ましい。チタンブラックは、分散性向上、凝集性抑制などの目的で必要に応じ、表面を修飾することが可能である。例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、又は、酸化ジルコニウムでチタンブラックの表面を被覆することが可能である。また、特開2007-302836号公報に表されるような撥水性物質での処理も可能である。黒色顔料として、カラーインデックス(C.I.)Pigment Black 1,7等が挙げられる。チタンブラックは、個々の粒子の一次粒子径及び平均一次粒子径のいずれもが小さいことが好ましい。具体的には、平均一次粒子径が10~45nmであることが好ましい。チタンブラックは、分散物として用いることもできる。例えば、チタンブラック粒子とシリカ粒子とを含み、分散物中のSi原子とTi原子との含有比が0.20~0.50の範囲に調整した分散物などが挙げられる。上記分散物については、特開2012-169556号公報の段落0020~0105の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。チタンブラックの市販品の例としては、チタンブラック10S、12S、13R、13M、13M-C、13R-N、13M-T(商品名:三菱マテリアル(株)製)、ティラック(Tilack)D(商品名:赤穂化成(株)製)などが挙げられる。
【0033】
(近赤外線吸収顔料)
近赤外線吸収顔料は、有機顔料であることが好ましい。また、近赤外線吸収顔料は、波長700nmを超え1400nm以下の範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。また、近赤外線吸収顔料の極大吸収波長は、1200nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることがより好ましく、950nm以下であることが更に好ましい。また、近赤外線吸収顔料は、波長550nmにおける吸光度A550と極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA550/Amaxが0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましく、0.03以下であることが更に好ましく、0.02以下であることが特に好ましい。下限は、特に限定はないが、例えば、0.0001以上とすることができ、0.0005以上とすることもできる。上述の吸光度の比が上記範囲であれば、可視透明性および近赤外線遮蔽性に優れた近赤外線吸収顔料とすることができる。なお、本発明において、近赤外線吸収顔料の極大吸収波長および各波長における吸光度の値は、近赤外線吸収顔料を含む硬化性組成物を用いて形成した膜の吸収スペクトルから求めた値である。
【0034】
近赤外線吸収顔料としては、特に限定はないが、ピロロピロール化合物、リレン化合物、オキソノール化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、クロコニウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ピリリウム化合物、アズレニウム化合物、インジゴ化合物およびピロメテン化合物が挙げられ、ピロロピロール化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物およびナフタロシアニン化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ピロロピロール化合物またはスクアリリウム化合物であることが更に好ましく、ピロロピロール化合物であることが特に好ましい。
【0035】
硬化性組成物の全固形分中における顔料の含有量は5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることがより一層好ましく、35質量%以上であることが更に一層好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。上限は90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましく、65質量%以下であることが特に好ましい。
【0036】
<<染料>>
本発明の硬化性組成物は、染料を含有することができる。染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。染料は、有彩色染料であってもよく、近赤外線吸収染料であってもよい。有彩色染料としては、ピラゾールアゾ化合物、アニリノアゾ化合物、トリアリールメタン化合物、アントラキノン化合物、アントラピリドン化合物、ベンジリデン化合物、オキソノール化合物、ピラゾロトリアゾールアゾ化合物、ピリドンアゾ化合物、シアニン化合物、フェノチアジン化合物、ピロロピラゾールアゾメチン化合物、キサンテン化合物、フタロシアニン化合物、ベンゾピラン化合物、インジゴ化合物、ピロメテン化合物が挙げられる。また、特開2012-158649号公報に記載のチアゾール化合物、特開2011-184493号公報に記載のアゾ化合物、特開2011-145540号公報に記載のアゾ化合物を用いることもできる。また、黄色染料として、特開2013-054339号公報の段落番号0011~0034に記載のキノフタロン化合物、特開2014-026228号公報の段落番号0013~0058に記載のキノフタロン化合物などを用いることもできる。近赤外線吸収染料としては、ピロロピロール化合物、リレン化合物、オキソノール化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、クロコニウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ピリリウム化合物、アズレニウム化合物、インジゴ化合物およびピロメテン化合物が挙げられる。また、特開2017-197437号公報に記載のスクアリリウム化合物、国際公開第2017/213047号の段落番号0090~0107に記載のスクアリリウム化合物、特開2018-054760号公報の段落番号0019~0075に記載のピロール環含有化合物、特開2018-040955号公報の段落番号0078~0082に記載のピロール環含有化合物、特開2018-002773号公報の段落番号0043~0069に記載のピロール環含有化合物、特開2018-041047号公報の段落番号0024~0086に記載のアミドα位に芳香環を有するスクアリリウム化合物、特開2017-179131号公報に記載のアミド連結型スクアリリウム化合物、特開2017-141215号公報に記載のピロールビス型スクアリリウム骨格又はクロコニウム骨格を有する化合物、特開2017-082029号公報に記載されたジヒドロカルバゾールビス型のスクアリリウム化合物、特開2017-068120号公報の段落番号0027~0114に記載の非対称型の化合物、特開2017-067963号公報に記載されたピロール環含有化合物(カルバゾール型)、特許第6251530号公報に記載されたフタロシアニン化合物などを用いることもできる。
【0037】
硬化性組成物の全固形分中における染料の含有量は1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。上限としては特に制限はないが、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
また、染料の含有量は、顔料の100質量部に対して5~50質量部であることが好ましい。上限は、45質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましい。下限は、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることが更に好ましい。
また、本発明の硬化性組成物は染料を実質的に含有しないこともできる。本発明の硬化性組成物が染料を実質的に含まない場合、本発明の硬化性組成物の全固形分中における染料の含有量が0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0038】
<<化合物A>>
本発明の硬化性組成物は、色素部分構造と、酸基または塩基性基と、をそれぞれ同一の構成単位aに含み、かつ、この構成単位aを1分子中に2個以上有する化合物Aを含有する。化合物Aは顔料の分散助剤として用いることができる。
【0039】
上記構成単位aに含まれる上記色素部分構造は、ベンズイミダゾロン色素、ベンズイミダゾリノン色素、キノフタロン色素、フタロシアニン色素、アントラキノン色素、ジケトピロロピロール色素、キナクリドン色素、アゾ色素、イソインドリノン色素、イソインドリン色素、ジオキサジン色素、ペリレン色素およびチオインジゴ色素から選ばれる色素由来の部分構造であることが好ましく、化合物Aと顔料との相互作用をより高めて本発明の効果がより顕著に得られやすいという理由から、ベンズイミダゾリノン色素、キノフタロン色素、フタロシアニン色素、ジケトピロロピロール色素、アゾ色素およびイソインドリノン色素から選ばれる色素由来の部分構造であることがより好ましく、ベンズイミダゾリノン色素、フタロシアニン色素およびジケトピロロピロール色素から選ばれる色素由来の部分構造であることが更に好ましい。
【0040】
1つの構成単位a中に含まれる色素部分構造の数は1個であってもよく、2個以上であってもよい。製造適性に優れるという理由から1個であることが好ましい。
【0041】
上記構成単位aに含まれる上記酸基は、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、カルボキシル基、スルホ基およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。塩を構成する原子または原子団としては、アルカリ金属イオン(Li、Na、Kなど)、アルカリ土類金属イオン(Ca2+、Mg2+など)、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
【0042】
上記構成単位aに含まれる上記塩基性基は、アミノ基、ピリジル基およびそれらの塩、アンモニウム基の塩、並びにフタルイミドメチル基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アミノ基、アミノ基の塩、およびアンモニウム基の塩から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、アミノ基またはアミノ基の塩であることがより好ましい。アミノ基としては、-NH、ジアルキルアミノ基、アルキルアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、環状アミノ基などが挙げられる。ジアルキルアミノ基、アルキルアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、環状アミノ基はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては後述する置換基Tなどが挙げられる。塩を構成する原子または原子団としては、水酸化物イオン、ハロゲンイオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、フェノキシドイオンなどが挙げられる。
【0043】
1つの構成単位aに含まれる酸基または塩基性基の数は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。1つの構成単位aに含まれる酸基または塩基性基の数が1個の場合、顔料の分散性をより向上させやすく、硬化性組成物の保存安定性をより向上させやすい。また、1つの構成単位aに含まれる酸基または塩基性基の数が2個以上の場合、硬化性組成物の保存安定性を高めつつ、硬化性も向上させやすい。また、化合物Aに含まれる酸基または塩基性基の数が2個以上の場合、顔料の分散性の観点から酸基のみを2個以上含むか、あるいは、塩基性基のみを2個以上含むことが好ましい。また、構成単位aは塩基性基を有することが好ましい。また、1つの構成単位aに含まれる酸基または塩基性基の数は、1~4個が好ましく、1~3個がより好ましく、1~2個がさらに好ましい。
【0044】
化合物Aは、構成単位aを1分子中に2個以上含み、保存安定性および硬化性の観点から2~10個含むことが好ましく、2~8個含むことがより好ましく、2~6個含むことがより好ましい。
【0045】
化合物Aにおける構成単位aは、色素部分構造と、酸基または塩基性基とを含む化合物由来の構成単位であることが好ましい。また、構成単位aは、下記式(a1)~(a3)のいずれかで表される構成単位であることが好ましい。
【化5】
式(a1)中、*は結合手を表し、Pは色素部分構造を表し、L11は単結合または2価の連結基を表し、L12はb1+1価の連結基を表し、Bは酸基または塩基性基を表し、b1およびmはそれぞれ独立して1以上の整数を表す;
式(a2)中、*は結合手を表し、Pは色素部分構造を表し、L21はb2+2価の連結基を表し、Bは酸基または塩基性基を表し、b2は1以上の整数を表す;
式(a3)中、*は結合手を表し、Pは色素部分構造を表し、L31およびL32はそれぞれ独立して単結合または2価の連結基を表し、Bは酸基または塩基性基を表す。
【0046】
式(a1)において、b1およびmはそれぞれ独立して1以上の整数を表す。b1は1~4が好ましく、1~3がより好ましく、1または2が更に好ましい。mは1~4が好ましく、1~3がより好ましく、1または2が更に好ましい。
【0047】
式(a2)において、b2は1以上の整数を表す。b2は1~4が好ましく、1~3がより好ましく、1または2が更に好ましい。
【0048】
式(a1)~(a3)において、P~Pが表す色素部分構造としては、ベンズイミダゾロン色素、ベンズイミダゾリノン色素、キノフタロン色素、フタロシアニン色素、アントラキノン色素、ジケトピロロピロール色素、キナクリドン色素、アゾ色素、イソインドリノン色素、イソインドリン色素、ジオキサジン色素、ペリレン色素、チオインジゴ色素から選ばれる色素由来の部分構造であることが好ましく、ベンズイミダゾリノン色素、キノフタロン色素、フタロシアニン色素、ジケトピロロピロール色素、アゾ色素およびイソインドリノン色素から選ばれる色素由来の部分構造であることがより好ましく、ベンズイミダゾリノン色素、フタロシアニン色素およびジケトピロロピロール色素から選ばれる色素由来の部分構造であることが更に好ましい。
【0049】
式(a1)~(a3)において、B~Bは、それぞれ独立して酸基または塩基性基を表す。酸基および塩基性基については上述したものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0050】
式(a1)~(a3)において、L11が表す2価の連結基、L12が表すb1+1価の連結基、L21が表すb2+2価の連結基、L31が表す2価の連結基およびL32が表す2価の連結基としては、炭化水素基、複素環基、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO-、-NR-、-NRCO-、-CONR-、-NRSO-、-SONR-およびその組み合わせからなる基が挙げられ、Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。炭化水素基は脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基、またはこれらの基から水素原子を1個以上除いた基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。アリーレン基の炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましく、6~10がさらに好ましい。複素環基は、単環または縮合数が2~4の縮合環が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。複素環基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がより好ましい。炭化水素基および複素環基は置換基を有していてもよい。置換基としては、後述する置換基Tで挙げた基が挙げられる。また、Rが表すアルキル基の炭素数は1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。Rが表すアルキル基はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては後述する置換基Tが挙げられる。Rが表すアリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。Rが表すアリール基はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては後述する置換基Tが挙げられる。
【0051】
化合物Aは、分子間相互作用を有する官能基を含むことが好ましい。化合物Aがこのような官能基を有する場合においては、化合物Aと顔料との親和性が向上し、組成物中における顔料の分散性をより向上させることができる。上記の官能基としては、アミド基、ウレア基、ウレタン基、スルホンアミド基、トリアジン基、イソシアヌル基、イミド基、イミダゾリジノン基などが挙げられる。
【0052】
(置換基T)
置換基Tとしては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、-ORt、-CORt、-COORt、-OCORt、-NRtRt、-NHCORt、-CONRtRt、-NHCONRtRt、-NHCOORt、-SRt、-SORt、-SOORt、-NHSORtまたは-SONRtRtが挙げられる。RtおよびRtは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。RtとRtが結合して環を形成してもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルケニル基の炭素数は、2~30が好ましく、2~12がより好ましく、2~8が特に好ましい。アルケニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキニル基の炭素数は、2~30が好ましく、2~25がより好ましい。アルキニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。複素環基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。複素環基は、単環または縮合数が2~4の縮合環が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。複素環基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がより好ましい。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基および複素環基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した置換基が挙げられる。
【0053】
化合物Aは、下記式(A-1)で表される繰り返し単位を含む化合物、および下記(A-2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。化合物Aとして、下記式(A-1)で表される繰り返し単位を含む化合物を用いた場合は、耐熱性に優れた膜を形成しやすい。また、この化合物は、モノマーを合成し、重合することで簡便に製造でき、入手しやすく、製造適正にも優れる。また、化合物Aとして下記式(A-2)で表される化合物を用いた場合は、より優れた現像性が得られやすい。更には、この化合物は、製造の際の分子量調整が容易であり、物性を調整しやすい。
【化6】
式(A-1)中、Ra~Raは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、Laは単結合または2価の連結基を表し、Zは上記構成単位aを表す;
式(A-2)中、Zは上記構成単位aを表し、Aはs価の連結基を表し、sは2以上の整数を表す。
【0054】
式(A-1)のRa~Raは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。Ra~Raは、それぞれ独立して水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0055】
式(A-1)のLaは単結合または2価の連結基を表し、2価の連結基であることが好ましい。2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、複素環基、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO-、-NRLa1-、-NRLa1CO-、-CONRLa1-、-NRLa1SO-、-SONRLa1-およびその組み合わせからなる基が挙げられ、RLa1は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。アリーレン基の炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましく、6~10がさらに好ましい。複素環基は、単環または縮合数が2~4の縮合環が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。複素環基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がより好ましい。アルキレン基、アリーレン基および複素環基は置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した置換基Tで挙げた基が挙げられる。また、RLa1が表すアルキル基の炭素数は1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。RLa1が表すアルキル基はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては上述した置換基Tが挙げられる。RLa1が表すアリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。RLaが表すアリール基はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては上述した置換基Tが挙げられる。
【0056】
式(A-2)のAはs価の連結基を表す。s価の連結基としては、炭化水素基、複素環基、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO-、-NRLa2-、-NRLa2CO-、-CONRLa2-、-NRLa2SO-、-SONRLa2-およびその組み合わせからなる基が挙げられる。RLa2は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。炭化水素基は脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基、またはこれらの基から水素原子を1個以上除いた基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。アリーレン基の炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましく、6~10がさらに好ましい。複素環基は、単環または縮合数が2~4の縮合環が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。複素環基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がより好ましい。複素環基としては、例えば、トリアジン基、ピロメリット酸ジイミド基、イソシアヌル酸基などが挙げられ、トリアジン基が好ましい。炭化水素基および複素環基は置換基を有していてもよい。置換基としては上述した置換基Tが挙げられる。RLa2が表すアルキル基およびアリール基は、RLa1が表すアルキル基およびアリール基で説明した基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0057】
式(A-2)のAが表すs価の連結基は、酸基または塩基性基を有することも好ましい。
【0058】
式(A-2)のAが表すs価の連結基は、下記式のいずれかで表される基であることが好ましい。
【化7】
は3価の基を表す。Tは単結合又は2価の連結基を表し、3個存在するTは互いに同一であっても異なっていてもよい。
は4価の基を表す。Tは単結合又は2価の連結基を表し、4個存在するTは互いに同一であっても異なっていてもよい。
は5価の基を表す。Tは単結合又は2価の連結基を表し、5個存在するTは互いに同一であっても異なっていてもよい。
は6価の基を表す。Tは単結合又は2価の連結基を表し、6個存在するTは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0059】
~Tが表す2価の連結基としては、-CH-、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-、脂肪族環基、芳香族炭化水素基、複素環基およびこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。脂肪族環基、芳香族炭化水素基および複素環基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。2価の連結基は、置換基を更に有していてもよい。置換基としては、上述した置換基T、上述した酸基および上述した塩基性基が挙げられる。
【0060】
が表す3価の基としては、上記の2価の連結基から水素原子を1個除いた基が挙げられる。Lが表す4価の基としては、上記の2価の連結基から水素原子を2個除いた基が挙げられる。Lが表す5価の基としては、上記の2価の連結基から水素原子を3個除いた基が挙げられる。Lが表す6価の基としては、上記の2価の連結基から水素原子を4個除いた基が挙げられる。L~Lが表す3~6価の基は置換基を更に有していてもよい。置換基としては、上述した置換基T、上述した酸基および上述した塩基性基が挙げられる。
【0061】
化合物Aが上述した式(A-1)で表される繰り返し単位を含む化合物である場合、化合物Aは上述した式(A-1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位(他の繰り返し単位ともいう)を更に含有することができる。他の繰り返し単位としては、式(A1-a)で表される繰り返し単位が挙げられる。化合物Aが上述した式(A-1)で表される繰り返し単位を含む化合物である場合、化合物Aは上述した式(A-1)で表される繰り返し単位を化合物Aの全繰り返し単位中に50~100モル%含有することが好ましい。下限は、60モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることが更に好ましい。
【化8】
式(A-1a)中、Ra1a~Ra3aは、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、La1aは単結合または2価の連結基を表し、Yは置換基を表す。
【0062】
式(A-1a)のRa1a~Ra3aおよびLa1aは、式(A-1)のRa~RaおよびLaと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0063】
式(A-1a)のYが表す置換基としては、上述した酸基、上述した塩基性基などが挙げられる。
【0064】
化合物Aの重量平均分子量は、1000~15000であることが好ましい。上限は、10000以下であることが好ましく、8000以下であることがより好ましい。下限は、1500以上であることが好ましい。
【0065】
化合物Aが塩基性基を有する化合物である場合、化合物Aのアミン価は0.4~4.5mmol/gであることが好ましい。また、化合物Aが上述した式(A-1)で表される繰り返し単位を含む化合物である場合、化合物Aのアミン価は0.5~3.5mmol/gであることが好ましい。下限は、0.55mmol/g以上であることが好ましく、0.6mmol/g以上であることがより好ましい。上限は、3.0mmol/g以下であることが好ましく、2.6mmol/g以下であることがより好ましい。また、化合物Aが上述した(A-2)で表される化合物である場合、化合物Aのアミン価は0.4~4.5mmol/gであることが好ましい。下限は、0.5mmol/g以上であることが好ましく、0.55mmol/g以上であることがより好ましく、0.6mmol/g以上であることが更に好ましい。上限は、4.0mmol/g以下であることが好ましい。
【0066】
化合物Aが酸基を有する化合物である場合、化合物Aの酸価は0.5~4.0mmol/gであることが好ましい。また、化合物Aが上述した式(A-1)で表される繰り返し単位を含む化合物である場合、化合物Aの酸価は0.5~4.0mmol/gであることが好ましい。下限は、0.9mmol/g以上であることが好ましい。上限は、3.6mmol/g以下であることが好ましく、3.5mmol/g以下であることがより好ましい。また、化合物Aが上述した(A-2)で表される化合物である場合、化合物Aの酸価は0.5~2.5mmol/gであることが好ましい。下限は、0.6mmol/g以上であることが好ましく、0.7mmol/g以上であることがより好ましい。上限は、2.2mmol/g以下であることが好ましい。
【0067】
化合物Aの具体例としては、下記構造の化合物が挙げられる。なお、化合物Aの重量平均分子量(Mw)は、以下の条件に従って、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定した。
カラムの種類:TOSOH TSKgel Super HZM-Hと、TOSOH TSKgel Super HZ4000と、TOSOH TSKgel Super HZ2000とを連結したカラム
展開溶媒:Nメチルピペリドン
カラム温度:40℃
流量(サンプル注入量):1.0μL(サンプル濃度0.1質量%)
装置名:東ソー(株)製 HLC-8220GPC
検出器:RI(屈折率)検出器
検量線ベース樹脂:ポリスチレン樹脂
【0068】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0069】
上記表に記載の略語の構造は以下の通りである。以下の構造式中、黒丸、波線、*、*1および*2はそれぞれ連結手であり、同じ種類の記号同士の位置でそれぞれの基が結合している。例えば、SY-1においては、AとL11は黒丸の位置で結合している。
【0070】
(Aの構造)
【化9】
【0071】
(L11の構造)
【化10】
【0072】
(L12の構造)
【化11】
【0073】
(Bの構造)
【化12】
【0074】
(Pの構造)
【化13】
【0075】
(L21の構造)
【化14】
【0076】
(Bの構造)
【化15】
【0077】
(Pの構造)
【化16】
【0078】
(Pの構造)
【化17】
【0079】
(L31の構造)
【化18】
【0080】
(Bの構造)
【化19】
【0081】
(L32の構造)
【化20】
【0082】
(ポリマー主鎖構造)
【化21】
【0083】
(Zの基の構造)
【化22】
【0084】
硬化性組成物の全固形分中における化合物Aの含有量は1~15質量%である。下限は2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。上限は12質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。また、化合物Aの含有量は顔料100質量部に対して0.1~50質量部であることが好ましい。下限は1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることが更に好ましい。上限は、20質量部以下であることが好ましく、18質量部以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。化合物Aは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合はそれらの合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0085】
<<他の色素誘導体>>
本発明の硬化性組成物は、上述した化合物A以外の色素誘導体(他の色素誘導体)を更に含有することができる。他の色素誘導体としては、色素の一部を、酸基、塩基性基、塩構造を有する基又はフタルイミドメチル基で置換した構造を有する化合物が挙げられる。他の色素誘導体としては、下記構造の化合物が挙げられる。また、特開昭56-118462号公報、特開昭63-264674号公報、特開平01-217077号公報、特開平03-009961号公報、特開平03-026767号公報、特開平03-153780号公報、特開平03-045662号公報、特開平04-285669号公報、特開平06-145546号公報、特開平06-212088号公報、特開平06-240158号公報、特開平10-030063号公報、特開平10-195326号公報、国際公開第2011/024896号の段落番号0086~0098、国際公開第2012/102399号の段落番号0063~0094、国際公開第2017/038252号の段落番号0082、特開2015-151530号公報の段落番号0171等に記載の化合物を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【化23】
【0086】
硬化性組成物の全固形分中における他の色素誘導体の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。下限は1質量%以上とすることもできる。
また、他の色素誘導体の含有量は、化合物Aの100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。下限は1質量部以上とすることもでき、2質量部以上とすることもできる。
本発明の硬化性化合物は、他の色素誘導体を実質的に含有しないことも好ましい。他の色素誘導体を実質的に含有しないとは、硬化性組成物の全固形分中における他の色素誘導体の含有量が0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることが更に好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0087】
<<硬化性化合物>>
本発明の硬化性組成物は硬化性化合物を含有する。本発明で用いられる硬化性化合物は色素部分構造を有さない化合物であることが好ましい。硬化性化合物としては、ラジカル、酸または熱により架橋可能な公知の化合物を用いることができる。硬化性化合物としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物、環状エーテル基を有する化合物などが挙げられ、エチレン性不飽和結合基を有する化合物であることが好ましい。エチレン性不飽和結合基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。本発明で用いられる硬化性化合物は、重合性化合物であることが好ましく、ラジカル重合性化合物であることがより好ましい。
【0088】
(重合性化合物)
重合性化合物としては、モノマー、プレポリマー、オリゴマーなどの化学的形態のいずれであってもよいが、モノマーが好ましい。重合性化合物の分子量は、100~3000が好ましい。上限は、2000以下がより好ましく、1500以下が更に好ましい。下限は、150以上がより好ましく、250以上が更に好ましい。
【0089】
重合性化合物は、多官能の重合性モノマーであることが好ましい。また、多官能の重合性モノマーは、エチレン性不飽和結合基を3個以上含む化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和結合基を3~15個含む化合物であることがより好ましく、エチレン性不飽和結合基を3~6個含む化合物であることが更に好ましい。また、多官能の重合性モノマーは、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。重合性化合物の具体例としては、特開2009-288705号公報の段落番号0095~0108、特開2013-029760号公報の段落0227、特開2008-292970号公報の段落番号0254~0257、特開2013-253224号公報の段落番号0034~0038、特開2012-208494号公報の段落番号0477、特開2017-48367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報に記載されている化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0090】
重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、NKエステルA-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)が好ましい。また、重合性化合物としては、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としてはM-460;東亞合成製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステルA-TMMT)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)、RP-1040(日本化薬(株)製)、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)、NKオリゴUA-7200(新中村化学工業(株)製)、8UH-1006、8UH-1012(大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB-A0(共栄社化学(株)製)などを用いることもできる。
【0091】
また、重合性化合物として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート化合物を用いることも好ましい。3官能の(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、アロニックスM-309、M-310、M-321、M-350、M-360、M-313、M-315、M-306、M-305、M-303、M-452、M-450(東亞合成(株)製)、NKエステル A9300、A-GLY-9E、A-GLY-20E、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、A-TMPT、TMPT(新中村化学工業(株)製)、KAYARAD GPO-303、TMPTA、THE-330、TPA-330、PET-30(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0092】
重合性化合物は、酸基を有する化合物を用いることもできる。酸基を有する重合性化合物を用いることで、現像時に未露光部の重合性化合物が除去されやすく、現像残渣の発生を抑制できる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸基を有する重合性化合物の市販品としては、アロニックスM-510、M-520、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)等が挙げられる。酸基を有する重合性化合物の好ましい酸価としては、0.1~40mgKOH/gであり、より好ましくは5~30mgKOH/gである。重合性化合物の酸価が0.1mgKOH/g以上であれば、現像液に対する溶解性が良好であり、40mgKOH/g以下であれば、製造や取扱い上、有利である。
【0093】
重合性化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物であることも好ましい態様である。カプロラクトン構造を有する重合性化合物は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120等が挙げられる。
【0094】
重合性化合物は、アルキレンオキシ基を有する重合性化合物を用いることもできる。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物は、エチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基を有する重合性化合物が好ましく、エチレンオキシ基を有する重合性化合物がより好ましく、エチレンオキシ基を4~20個有する3~6官能(メタ)アクリレート化合物がさらに好ましい。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR-494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA-330などが挙げられる。
【0095】
重合性化合物は、フルオレン骨格を有する重合性化合物を用いることもできる。フルオレン骨格を有する重合性化合物の市販品としては、オグソールEA-0200、EA-0300(大阪ガスケミカル(株)製、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートモノマー)などが挙げられる。
【0096】
重合性化合物としては、トルエンなどの環境規制物質を実質的に含まない化合物を用いることも好ましい。このような化合物の市販品としては、KAYARAD DPHA LT、KAYARAD DPEA-12 LT(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0097】
重合性化合物としては、特公昭48-41708号公報、特開昭51-37193号公報、特公平02-032293号公報、特公平02-016765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-049860号公報、特公昭56-017654号公報、特公昭62-039417号公報、特公昭62-039418号公報に記載されたエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物も好適である。また、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平01-105238号公報に記載された分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する重合性化合物を用いることも好ましい。また、重合性化合物としては、UA-7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600、LINC-202UA(共栄社化学(株))製などの市販品を用いることもできる。
【0098】
(環状エーテル基を有する化合物)
硬化性化合物として用いられる環状エーテル基を有する化合物は、色素部分構造を有さない化合物であることが好ましい。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。環状エーテル基を有する化合物は、エポキシ基を有する化合物であることが好ましい。エポキシ基を有する化合物としては、1分子内にエポキシ基を1つ以上有する化合物が挙げられ、エポキシ基を2つ以上有する化合物が好ましい。エポキシ基は、1分子内に1~100個有することが好ましい。エポキシ基の上限は、例えば、10個以下とすることもでき、5個以下とすることもできる。エポキシ基の下限は、2個以上が好ましい。エポキシ基を有する化合物としては、特開2013-011869号公報の段落番号0034~0036、特開2014-043556号公報の段落番号0147~0156、特開2014-089408号公報の段落番号0085~0092に記載された化合物、特開2017-179172号公報に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。
【0099】
エポキシ基を有する化合物は、低分子化合物(例えば、分子量2000未満、さらには、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)のいずれでもよい。エポキシ基を有する化合物の重量平均分子量は、200~100000が好ましく、500~50000がより好ましい。重量平均分子量の上限は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、3000以下が更に好ましい。
【0100】
エポキシ基を有する化合物としては、エポキシ樹脂を好ましく用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えばフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、エポキシ基をもつケイ素化合物とそれ以外のケイ素化合物との縮合物、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、310~3300g/eqであることが好ましく、310~1700g/eqであることがより好ましく、310~1000g/eqであることが更に好ましい。環状エーテル基を有する化合物の市販品としては、例えば、EHPE3150((株)ダイセル製)、EPICLON N-695(DIC(株)製)、マープルーフG-0150M、G-0105SA、G-0130SP、G-0250SP、G-1005S、G-1005SA、G-1010S、G-2050M、G-01100、G-01758(以上、日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)等が挙げられる。
【0101】
硬化性組成物の全固形分中における硬化性化合物の含有量は0.1~50質量%であることが好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。硬化性化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、それらの合計が上記範囲となることが好ましい。
また、硬化性組成物の全固形分中における重合性化合物の含有量は0.1~50質量%であることが好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。重合性化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、それらの合計が上記範囲となることが好ましい。
【0102】
本発明の硬化性組成物が硬化性化合物として環状エーテル基を有する化合物を含有する場合、硬化性組成物の全固形分中における環状エーテル基を有する化合物の含有量は、0.1~20質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、例えば、15質量%以下が好ましく、10質量%以下が更に好ましい。環状エーテル基を有する化合物は1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0103】
<<光重合開始剤>>
本発明の硬化性組成物は光重合開始剤を含む。光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する化合物が好ましい。光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0104】
光重合開始剤としては、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物および3-アリール置換クマリン化合物であることが好ましく、オキシム化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、および、アシルホスフィン化合物から選ばれる化合物であることがより好ましく、オキシム化合物であることが更に好ましい。光重合開始剤については、特開2014-130173号公報の段落0065~0111、特許第6301489号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0105】
α-ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-184、DAROCUR-1173、IRGACURE-500、IRGACURE-2959、IRGACURE-127(以上、BASF社製)などが挙げられる。α-アミノケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-907、IRGACURE-369、IRGACURE-379、及び、IRGACURE-379EG(以上、BASF社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、IRGACURE-819、DAROCUR-TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0106】
オキシム化合物としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-66385号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2017-019766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物、特開2017-198865号公報に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0038に記載の化合物などが挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。市販品としては、IRGACURE-OXE01、IRGACURE-OXE02、IRGACURE-OXE03、IRGACURE-OXE04(以上、BASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられる。また、オキシム化合物としては、着色性が無い化合物や、透明性が高く変色し難い化合物を用いることも好ましい。市販品としては、アデカアークルズNCI-730、NCI-831、NCI-930(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0107】
本発明において、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0108】
本発明において、光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0109】
本発明において、光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落番号0031~0047、特開2014-137466号公報の段落番号0008~0012、0070~0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007~0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)が挙げられる。
【0110】
本発明において、光重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/036910号に記載されるOE-01~OE-75が挙げられる。
【0111】
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0112】
【化24】
【化25】
【0113】
オキシム化合物は、波長350~500nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、波長360~480nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物の波長365nm又は波長405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、高いことが好ましく、1000~300000であることがより好ましく、2000~300000であることが更に好ましく、5000~200000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0114】
本発明は、光重合開始剤として、2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤を用いてもよい。そのような光ラジカル重合開始剤を用いることにより、光ラジカル重合開始剤の1分子から2つ以上のラジカルが発生するため、良好な感度が得られる。また、非対称構造の化合物を用いた場合においては、結晶性が低下して溶剤などへの溶解性が向上して、経時で析出しにくくなり、硬化性組成物の経時安定性を向上させることができる。2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開第2015/004565号、特表2016-532675号公報の段落番号0407~0412、国際公開第2017/033680号の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)および化合物(G)、国際公開第2016/034963号に記載されているCmpd1~7、特表2017-523465号公報の段落番号0007に記載されているオキシムエステル類光開始剤、特開2017-167399号公報の段落番号0020~0033に記載されている光開始剤、特開2017-151342号公報の段落番号0017~0026に記載されている光重合開始剤(A)などが挙げられる。
【0115】
本発明の硬化性組成物の全固形分中の光重合開始剤の含有量は0.1~30質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。本発明の硬化性組成物において、光重合開始剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0116】
<<樹脂>>
本発明の硬化性組成物は樹脂を含有する。樹脂は、例えば、顔料などの粒子を硬化性組成物中で分散させる用途やバインダーの用途で配合される。なお、主に顔料などの粒子を分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で使用することもできる。
【0117】
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3000~2000000が好ましい。上限は、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましい。下限は、4000以上が好ましく、5000以上がより好ましい。
【0118】
樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、特開2017-206689号公報の段落番号0041~0060に記載の樹脂、特開2018-010856号公報の段落番号0022~007に記載の樹脂を用いることもできる。
【0119】
本発明において、樹脂として酸基を有する樹脂を用いることが好ましい。特に、化合物Aとして塩基性基を有する化合物を用いた場合、このような化合物と酸基を有する樹脂とを併用することで、得られる膜の耐熱性を向上させやすい。このような効果が得られる理由は、樹脂が有する酸基により、顔料の熱分解機構を抑制することができるためであると推測される。更には、硬化性組成物中における顔料の分散性をより向上させることができる。酸基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸基を有する樹脂は、例えば、アルカリ可溶性樹脂として用いることができる。
【0120】
酸基を有する樹脂は、酸基を側鎖に有する繰り返し単位を含むことが好ましく、酸基を側鎖に有する繰り返し単位を樹脂の全繰り返し単位中5~70モル%含むことがより好ましい。酸基を側鎖に有する繰り返し単位の含有量の上限は、50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。酸基を側鎖に有する繰り返し単位の含有量の下限は、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。
【0121】
酸基を有する樹脂は、下記式(ED1)で示される化合物および/または下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分に由来する繰り返し単位を含むことも好ましい。
【0122】
【化26】
【0123】
式(ED1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【化27】
式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1~30の有機基を表す。式(ED2)の詳細については、特開2010-168539号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0124】
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013-029760号公報の段落番号0317の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0125】
本発明で用いられる樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する繰り返し単位を含むことも好ましい。
【化28】
式(X)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数2~10のアルキレン基を表し、Rは、水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。nは1~15の整数を表す。
【0126】
酸基を有する樹脂については、特開2012-208494号公報の段落番号0558~0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0685~0700)の記載、特開2012-198408号公報の段落番号0076~0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸基を有する樹脂は市販品を用いることもできる。
【0127】
酸基を有する樹脂の酸価は、30~500mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、400mgKOH/g以下が好ましく、300mgKOH/g以下がより好ましく、200mgKOH/g以下が更に好ましい。酸基を有する樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000~100000が好ましい。また、酸基を有する樹脂の数平均分子量(Mn)は、1000~20000が好ましい。
【0128】
酸基を有する樹脂としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。
【化29】
【0129】
本発明の硬化性組成物は、分散剤としての樹脂を含むこともできる。分散剤としては、酸性分散剤(酸基を有する樹脂)、塩基性分散剤(塩基性基を有する樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。酸性分散剤の酸価は、40~105mgKOH/gが好ましく、50~105mgKOH/gがより好ましく、60~105mgKOH/gがさらに好ましい。また、塩基性分散剤とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基であることが好ましい。
【0130】
本発明において、化合物Aとして、色素部分構造と、塩基性基と、硬化性基と、をそれぞれ有する化合物を用いた場合においては、分散剤としても用いる樹脂は、酸性分散剤(酸基を有する樹脂)であることが好ましい。また、化合物Aとして、色素部分構造と、酸基と、硬化性基と、をそれぞれ有する化合物を用いた場合においては、分散剤としても用いる樹脂は、塩基性分散剤(塩基性基を有する樹脂)であることが好ましい。
【0131】
本発明においては、化合物Aとして色素部分構造と、塩基性基と、硬化性基と、をそれぞれ有する化合物を用い、かつ、分散剤としても用いる樹脂が、酸性分散剤(酸基を有する樹脂)であることが好ましい。この態様によれば、得られる膜の耐熱性を向上させやすい。更には、顔料の分散性をより顕著に向上させることもできる。更には、フォトリソグラフィ法によりパターン形成する際、現像残渣の発生をより効果的に抑制することもできる。
【0132】
分散剤として用いる樹脂は、グラフト樹脂であることも好ましい。グラフト樹脂の詳細は、特開2012-255128号公報の段落番号0025~0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0133】
分散剤として用いる樹脂は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むポリイミン系分散剤であることも好ましい。ポリイミン系分散剤としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造を有する主鎖と、原子数40~10000の側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子とは、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。ポリイミン系分散剤については、特開2012-255128号公報の段落番号0102~0166の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0134】
分散剤として用いる樹脂は、コア部に複数個のポリマー鎖が結合した構造の樹脂であることも好ましい。このような樹脂としては、例えばデンドリマー(星型ポリマーを含む)が挙げられる。また、デンドリマーの具体例としては、特開2013-043962号公報の段落番号0196~0209に記載された高分子化合物C-1~C-31などが挙げられる。
【0135】
また、上述した酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)を分散剤として用いることもできる。
【0136】
また、分散剤として用いる樹脂は、エチレン性不飽和結合基を側鎖に有する繰り返し単位を含む樹脂であることも好ましい。エチレン性不飽和結合基を側鎖に有する繰り返し単位の含有量は、樹脂の全繰り返し単位中10モル%以上であることが好ましく、10~80モル%であることがより好ましく、20~70モル%であることが更に好ましい。
【0137】
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、BYKChemie社製のDISPERBYKシリーズ(例えば、DISPERBYK-111、161など)、日本ルーブリゾール(株)製のソルスパースシリーズ(例えば、ソルスパース76500など)などが挙げられる。また、特開2014-130338号公報の段落番号0041~0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。なお、上記分散剤として説明した樹脂は、分散剤以外の用途で使用することもできる。例えば、バインダーとして用いることもできる。
【0138】
硬化性組成物の全固形分中における樹脂の含有量は、5~50質量%が好ましい。下限は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。上限は、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。また、硬化性組成物の全固形分中における酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)の含有量は、5~50質量%が好ましい。下限は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。上限は、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。また、樹脂全量中における酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)の含有量は、優れた現像性が得られやすいという理由から30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が特に好ましい。上限は、100質量%とすることができ、95質量%とすることもでき、90質量%以下とすることもできる。
【0139】
また、硬化性組成物の全固形分中における重合性化合物と樹脂との合計の含有量は、硬化性、現像性および被膜形成性の観点から10~65質量%が好ましい。下限は、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。また、重合性化合物の100質量部に対して、樹脂を30~300質量部含有することが好ましい。下限は50質量部以上が好ましく、80質量部以上がより好ましい。上限は250質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましい。
【0140】
<<シランカップリング剤>>
本発明の硬化性組成物はシランカップリング剤を含有することができる。この態様によれば、得られる膜の支持体との密着性をより向上させることができる。本発明において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応及び縮合反応の少なくともいずれかによってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また、加水分解性基以外の官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基、フェニル基などが挙げられ、アミノ基、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基が好ましい。シランカップリング剤の具体例としては、特開2009-288703号公報の段落番号0018~0036に記載の化合物、特開2009-242604号公報の段落番号0056~0066に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0141】
硬化性組成物の全固形分中におけるシランカップリング剤の含有量は、0.1~5質量%が好ましい。上限は、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。シランカップリング剤は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0142】
<<溶剤>>
本発明の硬化性組成物は、溶剤を含有することができる。溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤は、各成分の溶解性や硬化性組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はない。有機溶剤としては、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤などが挙げられる。これらの詳細については、国際公開第2015/166779号の段落番号0223を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤を好ましく用いることもできる。有機溶剤の具体例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジクロロメタン、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドなどが挙げられる。ただし溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる)。
【0143】
本発明においては、金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましく、溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
【0144】
溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
【0145】
溶剤は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0146】
本発明において、有機溶剤中の過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0147】
硬化性組成物中における溶剤の含有量は、10~95質量%であることが好ましく、20~90質量%であることがより好ましく、30~90質量%であることが更に好ましい。
【0148】
また、本発明の硬化性組成物は、環境規制の観点から環境規制物質を実質的に含有しないことが好ましい。なお、本発明において、環境規制物質を実質的に含有しないとは、硬化性組成物中における環境規制物質の含有量が50質量ppm以下であることを意味し、30質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることが更に好ましく、1質量ppm以下であることが特に好ましい。環境規制物質は、例えばベンゼン;トルエン、キシレン等のアルキルベンゼン類;クロロベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類等が挙げられる。これらは、REACH(Registration Evaluation Authorization and Restriction of CHemicals)規則、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法、VOC(Volatile Organic Compounds)規制等のもとに環境規制物質として登録されており、使用量や取り扱い方法が厳しく規制されている。これらの化合物は、本発明の硬化性組成物に用いられる各成分などを製造する際に溶媒として用いられることがあり、残留溶媒として硬化性組成物中に混入することがある。人への安全性、環境への配慮の観点よりこれらの物質は可能な限り低減することが好ましい。環境規制物質を低減する方法としては、系中を加熱や減圧して環境規制物質の沸点以上にして系中から環境規制物質を留去して低減する方法が挙げられる。また、少量の環境規制物質を留去する場合においては、効率を上げる為に該当溶媒と同等の沸点を有する溶媒と共沸させることも有用である。また、ラジカル重合性を有する化合物を含有する場合、減圧留去中にラジカル重合反応が進行して分子間で架橋してしまうことを抑制するために重合禁止剤等を添加して減圧留去してもよい。これらの留去方法は、原料の段階、原料を反応させた生成物(例えば重合した後の樹脂溶液や多官能モノマー溶液)の段階、またはこれらの化合物を混ぜて作製した硬化性組成物の段階いずれの段階でも可能である。
【0149】
<<重合禁止剤>>
本発明の硬化性組成物は、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)が挙げられる。中でも、p-メトキシフェノールが好ましい。硬化性組成物の全固形分中における重合禁止剤の含有量は、0.0001~5質量%が好ましい。
【0150】
<<界面活性剤>>
本発明の硬化性組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができる。界面活性剤については、国際公開第2015/166779号の段落番号0238~0245を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0151】
本発明において、界面活性剤はフッ素系界面活性剤であることが好ましい。硬化性組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで液特性(特に、流動性)がより向上し、省液性をより改善することができる。また、厚みムラの小さい膜を形成することもできる。
【0152】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好適であり、より好ましくは5~30質量%であり、特に好ましくは7~25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、硬化性組成物中における溶解性も良好である。
【0153】
フッ素系界面活性剤としては、特開2014-041318号公報の段落番号0060~0064(対応する国際公開2014/017669号公報の段落番号0060~0064)等に記載の界面活性剤、特開2011-132503号公報の段落番号0117~0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780、EXP、MFS-330(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0154】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報、2016年2月22日)(日経産業新聞、2016年2月23日)、例えばメガファックDS-21が挙げられる。
【0155】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。このようなフッ素系界面活性剤は、特開2016-216602号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0156】
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。例えば特開2011-089090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化30】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3000~50000であり、例えば、14000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【0157】
また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和結合基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落番号0050~0090および段落番号0289~0295に記載された化合物、例えばDIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落番号0015~0158に記載の化合物を用いることもできる。
【0158】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD-6112、D-6112-W、D-6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0159】
シリコン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP-341、KF-6001、KF-6002(以上、信越シリコーン株式会社製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0160】
硬化性組成物の全固形分中における界面活性剤の含有量は、0.001質量%~5.0質量%が好ましく、0.005~3.0質量%がより好ましい。界面活性剤は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0161】
<<紫外線吸収剤>>
本発明の硬化性組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤は、共役ジエン化合物、アミノジエン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物、インドール化合物、トリアジン化合物などを用いることができる。これらの詳細については、特開2012-208374号公報の段落番号0052~0072、特開2013-068814号公報の段落番号0317~0334、特開2016-162946号公報の段落番号0061~0080の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。紫外線吸収剤の具体例としては、下記構造の化合物などが挙げられる。紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、UV-503(大東化学(株)製)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としては、ミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)が挙げられる。また、紫外線吸収剤として特許第6268967号公報の段落番号0049~0059に記載の化合物も使用できる。
【化31】
【0162】
硬化性組成物の全固形分中における紫外線吸収剤の含有量は、0.01~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい。本発明において、紫外線吸収剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0163】
<<酸化防止剤>>
本発明の硬化性組成物は、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。フェノール性ヒドロキシ基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。前述の置換基としては炭素数1~22の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。また、酸化防止剤は、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物も好ましい。また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。リン系酸化防止剤としてはトリス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2-[(4,6,9,11-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-2-イル)オキシ]エチル]アミン、亜リン酸エチルビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)などが挙げられる。酸化防止剤の市販品としては、例えば、アデカスタブ AO-20、アデカスタブ AO-30、アデカスタブ AO-40、アデカスタブ AO-50、アデカスタブ AO-50F、アデカスタブ AO-60、アデカスタブ AO-60G、アデカスタブ AO-80、アデカスタブ AO-330(以上、(株)ADEKA)などが挙げられる。また、酸化防止剤は、特許第6268967号公報の段落番号0023~0048に記載の化合物も使用できる。
【0164】
硬化性組成物の全固形分中における酸化防止剤の含有量は、0.01~20質量%であることが好ましく、0.3~15質量%であることがより好ましい。酸化防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0165】
<<その他成分>>
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、増感剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含有してもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012-003225号公報の段落番号0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落番号0237)の記載、特開2008-250074号公報の段落番号0101~0104、0107~0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、潜在酸化防止剤を含有してもよい。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開第2014/021023号、国際公開第2017/030005号、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0166】
また、本発明の硬化性組成物は、得られる膜の屈折率を調整するために金属酸化物を含有させてもよい。金属酸化物としては、TiO、ZrO、Al、SiO等が挙げられる。金属酸化物の一次粒子径は1~100nmが好ましく、3~70nmがより好ましく、5~50nmが最も好ましい。金属酸化物はコア-シェル構造を有していてもよく、この際、コア部が中空状であってもよい。
【0167】
また、本発明の硬化性組成物は、耐光性改良剤を含んでもよい。耐光性改良剤としては、特開2017-198787号公報の段落番号0036~0037に記載の化合物、特開2017-146350号公報の段落番号0029~0034に記載の化合物、特開2017-129774号公報の段落番号0036~0037、0049~0052に記載の化合物、特開2017-129674号公報の段落番号0031~0034、0058~0059に記載の化合物、特開2017-122803号公報の段落番号0036~0037、0051~0054に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0039に記載の化合物、特開2017-186546号公報の段落番号0034~0047に記載の化合物、特開2015-025116号公報の段落番号0019~0041に記載の化合物、特開2012-145604号公報の段落番号0101~0125に記載の化合物、特開2012-103475号公報の段落番号0018~0021に記載の化合物、特開2011-257591号公報の段落番号0015~0018に記載の化合物、特開2011-191483号公報の段落番号0017~0021に記載の化合物、特開2011-145668号公報の段落番号0108~0116に記載の化合物、特開2011-253174号公報の段落番号0103~0153に記載の化合物などが挙げられる。
【0168】
本発明の硬化性組成物の粘度(25℃)は、例えば、塗布により膜を形成する場合、1~100mPa・sであることが好ましい。下限は、2mPa・s以上がより好ましく、3mPa・s以上が更に好ましい。上限は、50mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下が更に好ましく、15mPa・s以下が特に好ましい。
【0169】
本発明の硬化性組成物は、顔料などと結合または配位していない遊離の金属の含有量が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが更に好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。この態様によれば、顔料分散性の安定化(凝集抑止)、分散性良化に伴う分光特性の向上、硬化性成分の安定化や、金属原子・金属イオンの溶出に伴う導電性変動の抑止、表示特性の向上などの効果が期待できる。また、特開2012-153796号公報、特開2000-345085号公報、特開2005-200560号公報、特開平08-043620号公報、特開2004-145078号公報、特開2014-119487号公報、特開2010-083997号公報、特開2017-090930号公報、特開2018-025612号公報、特開2018-025797号公報、特開2017-155228号公報、特開2018-036521号公報などに記載された効果も得られる。上記の遊離の金属の種類としては、Na、K、Ca、Sc、Ti、Mn、Cu、Zn、Fe、Cr、Fe、Co、Mg、Al、Ti、Sn、Zn、Zr、Ga、Ge、Ag、Au、Pt、Cs、Bi等が挙げられる。また、本発明の硬化性組成物は、顔料などと結合または配位していない遊離のハロゲンの含有量が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが更に好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。硬化性組成物中の遊離の金属やハロゲンの低減方法としては、イオン交換水による洗浄、ろ過、限外ろ過、イオン交換樹脂による精製等の方法が挙げられる。
【0170】
<収容容器>
本発明の硬化性組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や硬化性組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0171】
<硬化性組成物の製造方法>
本発明の硬化性組成物は、前述の成分を混合して製造できる。硬化性組成物の製造に際しては、全成分を同時に溶剤に溶解および/または分散して硬化性組成物を製造してもよいし、必要に応じて、各成分を適宜2つ以上の溶液または分散液としておいて、使用時(塗布時)にこれらを混合して硬化性組成物を製造してもよい。
本発明の硬化性組成物の製造方法は、顔料を、化合物A、および、樹脂の存在下で分散する工程を含むことが好ましい。
【0172】
また、硬化性組成物の製造に際して、顔料を分散させるプロセスを含むことが好ましい。顔料を分散させるプロセスにおいて、顔料の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、顔料を分散させるプロセスおよび分散機は、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015-157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を好適に使用出来る。また顔料を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて粒子の微細化処理を行ってもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015-194521号公報、特開2012-046629号公報の記載を参酌できる。
【0173】
硬化性組成物の製造にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、硬化性組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
【0174】
フィルタの孔径は、0.01~7.0μmが好ましく、0.01~3.0μmがより好ましく、0.05~0.5μmが更に好ましい。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物をより確実に除去できる。フィルタの孔径値については、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。フィルタは、日本ポール株式会社(DFA4201NIEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)および株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタを用いることができる。
【0175】
また、フィルタとしてファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。市販品としては、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)が挙げられる。
【0176】
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
【0177】
<膜>
本発明の膜は、上述した本発明の硬化性組成物から得られる膜である。本発明の膜は、カラーフィルタ、近赤外線透過フィルタ、近赤外線カットフィルタ、ブラックマトリクス、遮光膜、屈折率調整膜などに用いることができる。例えば、カラーフィルタの着色層(画素)として好ましく用いることができ、より具体的には、カラーフィルタの緑色着色層(緑色画素)として好ましく用いることができる。本発明の膜の膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。例えば、膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。
【0178】
<カラーフィルタ>
次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。本発明のカラーフィルタは、上述した本発明の膜を有する。より好ましくは、カラーフィルタの画素として、本発明の膜を有する。本発明のカラーフィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や画像表示装置などに用いることができる。
【0179】
本発明のカラーフィルタにおいて本発明の膜の膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
【0180】
本発明のカラーフィルタは、画素の幅が0.5~20.0μmであることが好ましい。下限は、1.0μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましい。上限は、15.0μm以下であることが好ましく、10.0μm以下であることがより好ましい。また、画素のヤング率が0.5~20GPaであることが好ましく、2.5~15GPaがより好ましい。
【0181】
本発明のカラーフィルタに含まれる各画素は高い平坦性を有することが好ましい。具体的には、画素の表面粗さRaは、100nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが更に好ましい。下限は規定されないが、例えば0.1nm以上であることが好ましい。画素の表面粗さは、例えばVeeco社製のAFM(原子間力顕微鏡) Dimension3100を用いて測定することができる。また、画素上の水の接触角は適宜好ましい値に設定することができるが、典型的には、50~110°の範囲である。接触角は、例えば接触角計CV-DT・A型(協和界面科学(株)製)を用いて測定できる。また、画素の体積抵抗値は高いことが好ましい。具体的には、画素の体積抵抗値は10Ω・cm以上であることが好ましく、1011Ω・cm以上であることがより好ましい。上限は規定されないが、例えば1014Ω・cm以下であることが好ましい。画素の体積抵抗値は、例えば超高抵抗計5410(アドバンテスト社製)を用いて測定することができる。
【0182】
また、本発明のカラーフィルタは、本発明の膜の表面に保護層を設けてもよい。保護層を設けることで、酸素遮断化、低反射化、親疎水化、特定波長の光(紫外線、近赤外線、赤外線等)の遮蔽等の種々の機能を付与することができる。保護層の厚さとしては、0.01~10μmが好ましく、0.1~5μmがさらに好ましい。保護層の形成方法としては、有機溶剤に溶解した樹脂組成物を塗布して形成する方法、化学気相蒸着法、成型した樹脂を接着材で貼りつける方法等が挙げられる。保護層を構成する成分としては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アラミド樹脂、ポリアミド樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、セルロース樹脂、Si、C、W、Al、Mo、SiO、Siなどが挙げられ、これらの成分を二種以上含有しても良い。例えば、酸素遮断化を目的とした保護層の場合、保護層はポリオール樹脂、SiO、Siを含むことが好ましい。また、低反射化を目的とした保護層の場合、保護層は(メタ)アクリル樹脂、フッ素樹脂を含むことが好ましい。
【0183】
樹脂組成物を塗布して保護層を形成する場合、樹脂組成物の塗布方法としては、スピンコート法、キャスト法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の公知の方法を用いることができる。樹脂組成物に含まれる有機溶剤は、公知の有機溶剤(例えば、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、シクロペンタノン、乳酸エチル等)を用いることが出来る。保護層を化学気相蒸着法にて形成する場合、化学気相蒸着法としては、公知の化学気相蒸着法(熱化学気相蒸着法、プラズマ化学気相蒸着法、光化学気相蒸着法)を用いることができる
【0184】
保護層は、必要に応じて、有機・無機微粒子、特定波長(例えば、紫外線、近赤外線、赤外線等)の吸収剤、屈折率調整剤、酸化防止剤、密着剤、界面活性剤等の添加剤を含有しても良い。有機・無機微粒子の例としては、例えば、高分子微粒子(例えば、シリコーン樹脂微粒子、ポリスチレン微粒子、メラミン樹脂微粒子)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アルミニウム、窒化チタン、酸窒化チタン、フッ化マグネシウム、中空シリカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。特定波長の吸収剤は公知の吸収剤を用いることができる。紫外線吸収剤および近赤外線吸収剤としては、上述した素材が挙げられる。これらの添加剤の含有量は適宜調整できるが、保護層の全重量に対して0.1~70質量%が好ましく、1~60質量%がさらに好ましい。
【0185】
また、保護層としては、特開2017-151176号公報の段落番号0073~0092に記載の保護層を用いることもできる。
【0186】
<カラーフィルタの製造方法>
次に、本発明のカラーフィルタの製造方法について説明する。本発明のカラーフィルタは、上述した本発明の硬化性組成物を用いて支持体上に硬化性組成物層を形成する工程と、フォトリソグラフィ法により硬化性組成物層に対してパターンを形成する工程と、を経て製造できる。
【0187】
フォトリソグラフィ法によるパターン形成は、本発明の硬化性組成物を用いて支持体上に硬化性組成物層を形成する工程と、硬化性組成物層をパターン状に露光する工程と、硬化性組成物層の未露光部を現像除去してパターン(画素)を形成する工程と、を含むことが好ましい。必要に応じて、硬化性組成物層をベークする工程(プリベーク工程)、および、現像されたパターン(画素)をベークする工程(ポストベーク工程)を設けてもよい。
【0188】
硬化性組成物層を形成する工程では、本発明の硬化性組成物を用いて、支持体上に硬化性組成物層を形成する。支持体としては、特に限定は無く、用途に応じて適宜選択できる。例えば、ガラス基板、シリコン基板などが挙げられ、シリコン基板であることが好ましい。また、シリコン基板には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、シリコン基板には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。また、シリコン基板には、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層が設けられていてもよい。
【0189】
硬化性組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載の方法が挙げられる。また、硬化性組成物の塗布方法については、国際公開第2017/030174号、国際公開第2017/018419号の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0190】
支持体上に形成した硬化性組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。低温プロセスにより膜を製造する場合は、プリベークを行わなくてもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク時間は、10~300秒が好ましく、40~250秒がより好ましく、80~220秒がさらに好ましい。プリベークは、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0191】
<<露光工程>>
次に、硬化性組成物層をパターン状に露光する(露光工程)。例えば、硬化性組成物層に対し、ステッパー露光機やスキャナ露光機などを用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン状に露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。
【0192】
露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等が挙げられる。また、波長300nm以下の光(好ましくは波長180~300nmの光)を用いることもできる。波長300nm以下の光としては、KrF線(波長248nm)、ArF線(波長193nm)などが挙げられ、KrF線(波長248nm)が好ましい。また、300nm以上の長波な光源も利用できる。
【0193】
また、露光に際して、光を連続的に照射して露光してもよく、パルス的に照射して露光(パルス露光)してもよい。なお、パルス露光とは、短時間(例えば、ミリ秒レベル以下)のサイクルで光の照射と休止を繰り返して露光する方式の露光方法のことである。パルス露光の場合、パルス幅は、100ナノ秒(ns)以下であることが好ましく、50ナノ秒以下であることがより好ましく、30ナノ秒以下であることが更に好ましい。パルス幅の下限は、特に限定はないが、1フェムト秒(fs)以上とすることができ、10フェムト秒以上とすることもできる。周波数は、1kHz以上であることが好ましく、2kHz以上であることがより好ましく、4kHz以上であることが更に好ましい。周波数の上限は50kHz以下であることが好ましく、20kHz以下であることがより好ましく、10kHz以下であることが更に好ましい。最大瞬間照度は、50000000W/m以上であることが好ましく、100000000W/m以上であることがより好ましく、200000000W/m以上であることが更に好ましい。また、最大瞬間照度の上限は、1000000000W/m以下であることが好ましく、800000000W/m以下であることがより好ましく、500000000W/m以下であることが更に好ましい。なお、パルス幅とは、パルス周期における光が照射されている時間のことである。また、周波数とは、1秒あたりのパルス周期の回数のことである。また、最大瞬間照度とは、パルス周期における光が照射されている時間内での平均照度のことである。また、パルス周期とは、パルス露光における光の照射と休止を1サイクルとする周期のことである。
【0194】
照射量(露光量)は、例えば、0.03~2.5J/cmが好ましく、0.05~1.0J/cmがより好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、または、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、または、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m~100000W/m(例えば、5000W/m、15000W/m、または、35000W/m)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m、酸素濃度35体積%で照度20000W/mなどとすることができる。
【0195】
次に、硬化性組成物層の未露光部を現像除去してパターン(画素)を形成する。硬化性組成物層の未露光部の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の硬化性組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。現像液の温度は、例えば、20~30℃が好ましい。現像時間は、20~180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0196】
現像液は、有機溶剤、アルカリ現像液などが挙げられる。アルカリ現像液としては、アルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液が好ましい。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ剤は、分子量が大きい化合物の方が環境面および安全面で好ましい。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。また、現像液は、さらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、上述した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5~100倍の範囲に設定することができる。また、現像後純水で洗浄(リンス)することも好ましい。また、リンスは、現像後の硬化性組成物層が形成された支持体を回転させつつ、現像後の硬化性組成物層へリンス液を供給して行うことが好ましい。また、リンス液を吐出させるノズルを支持体の中心部から支持体の周縁部に移動させて行うことも好ましい。この際、ノズルの支持体中心部から周縁部へ移動させるにあたり、ノズルの移動速度を徐々に低下させながら移動させてもよい。このようにしてリンスを行うことで、リンスの面内ばらつきを抑制できる。また、ノズルを支持体中心部から周縁部へ移動させつつ、支持体の回転速度を徐々に低下させても同様の効果が得られる。
【0197】
現像後、乾燥を施した後に追加露光処理や加熱処理(ポストベーク)を行うことが好ましい。追加露光処理やポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の処理である。ポストベークを行う場合、加熱温度は、例えば100~240℃が好ましく、200~240℃がより好ましい。ポストベークは、現像後の膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。追加露光処理を行う場合、露光に用いられる光は、波長400nm以下の光であることが好ましい。また、追加露光処理は、KR1020170122130Aに記載の方法で行ってもよい。
【0198】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の膜を有する。本発明の固体撮像素子の構成としては、本発明の膜を備え、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0199】
基板上に、固体撮像素子(CCD(電荷結合素子)イメージセンサ、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサ等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口した遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、カラーフィルタを有する構成である。更に、デバイス保護膜上であってカラーフィルタの下(基板に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、カラーフィルタ上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各着色画素が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各着色画素に対して低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012-227478号公報、特開2014-179577号公報、国際公開第2018/043654号に記載の装置が挙げられる。本発明の固体撮像素子を備えた撮像装置は、デジタルカメラや、撮像機能を有する電子機器(携帯電話等)の他、車載カメラや監視カメラ用としても用いることができる。
【0200】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の膜を有する。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や各画像表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木昭夫著、(株)工業調査会、1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、(株)工業調査会、1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【実施例
【0201】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0202】
<分散液の調製>
G顔料(C.I.Pigment Green 36)を8.29質量部と、Y顔料(C.I.Pigment Yellow 185)を2.07質量部と、表記載の誘導体を1.03質量部と、表に記載の分散剤と、溶剤を71.92質量部とを混合したのち、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を加えて、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液を製造した。下記の表に記載の数値は質量部である。なお、下記表において、「↑」の記載は、該当する化合物又は使用量が、1つ上の欄の化合物又は使用量と同一であることを示している。
【0203】
【表10】
【0204】
【表11】
【0205】
【表12】
【0206】
【表13】
【0207】
上記表に記載の素材の詳細は下記の通りである。
(誘導体)
SY-1~SY-326:上記化合物Aの具体例で説明した構造の化合物。
誘導体1~4:下記構造の化合物。以下の構造式中、Etはエチル基を表し、nは1または2の整数を表す。
【化32】
【0208】
(分散剤)
P-1:下記構造の樹脂の30質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw=20000。
P-2:下記構造の樹脂の30質量%PGMEA溶液。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw=24000。
P-3:下記構造の樹脂の30質量%PGMEA溶液。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw=22000。
P-4:下記構造の樹脂の20質量%PGMEA溶液。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw=22900。
【化33】
【0209】
(溶剤)
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0210】
<硬化性組成物の調製>
(実施例1~342、比較例1~4)
以下の原料を混合して硬化性組成物を調製した。
下記表に記載の種類の分散液 ・・・39.4質量部
樹脂D1 ・・・0.58質量部
重合性化合物E1 ・・・0.54質量部
光重合開始剤F3 ・・・0.33質量部
界面活性剤H1 ・・・4.17質量部
p-メトキシフェノール ・・・0.0006質量部
PGMEA ・・・7.66質量部
【0211】
上記の略語で示す素材の詳細は下記の通りである。
【0212】
樹脂D1:下記構造の樹脂。主鎖に付記した数値はモル比である。Mw=11000。
【化34】
【0213】
重合性化合物E1:KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)
光重合開始剤F3:下記構造の化合物。
【化35】
【0214】
界面活性剤H1:下記混合物(Mw=14000)の1質量%PGMEA溶液。下記の式中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【化36】
【0215】
<保存安定性評価>
上記で得られた硬化性組成物の粘度を、東機産業(株)製「RE-85L」にて測定後、硬化性組成物を45℃、3日間の条件にて静置した後、再度粘度を測定した。静置前後での粘度差(ΔVis)から下記評価基準に従って保存安定性を評価した。粘度差(ΔVis)の数値が小さいほど、保存安定性が良好であるといえる。硬化性組成物の粘度は25℃に温度調整を施した状態で測定した。
〔評価基準〕
A:ΔVisが0.5mPa・s以下
B:ΔVisが0.5mPa・sより大きく1.0mPa・s以下
C:ΔVisが1.0mPa・sより大きく2.0mPa・s以下
D:ΔVisが2.0mPa・sより大きい
【0216】
<耐熱性>
各硬化性組成物を5cm×5cmのガラス基板の上に乾燥後の膜厚が0.6μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃で120秒間プリベークして膜を形成した。上記の膜が形成されたガラス基板を、上記基板面で接するように200℃のホットプレートに載置して1時間加熱した後、色度計MCPD-1000(大塚電子(株)製)を用いて加熱前後での色差(ΔE*ab値)を測定し、下記判定基準に従って耐熱性を評価した。ΔE*ab値は、値の小さい方が、耐熱性が良好なことを示す。なお、ΔE*ab値は、CIE1976(L*,a*,b*)空間表色系による以下の色差公式から求められる値である(日本色彩学会編 新編色彩科学ハンドブック(昭和60年)p.266)。
ΔE*ab={(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2}1/2
〔評価基準〕
A:ΔE*abの値が0以上、1.0未満
B:ΔE*abの値が1.0以上、2.0未満
C:ΔE*abの値が2.0以上、3.0未満
D:ΔE*abの値が3.0以上
【0217】
<硬化性>
シリコンウエハ上にCT-4000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を膜厚が0.1μmとなるようにスピンコート法で塗布し、ホットプレートを用いて220℃で1時間加熱して下地層を形成した。この下地層付きのシリコンウエハ上に各硬化性組成物をスピンコート法で塗布し、その後、ホットプレートを用いて100℃で2分間加熱して、膜厚0.5μmの組成物層を得た。この組成物層に対して、i線ステッパーFPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用し、一辺1.1μmの正方ピクセルがそれぞれ基板上の4mm×3mmの領域に配列されたマスクパターンを介し、365nmの波長の光を照射し、露光量500mJ/cmにて露光を行った。露光後の組成物層に対し、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにて水を用いてリンスを行い、更に純水にて水洗いを行った。その後、水滴を高圧のエアーで飛ばし、シリコンウエハを自然乾燥させたのち、ホットプレートを用いて220℃で300秒間ポストベークを行い、パターンを形成した。得られたパターンについて、光学顕微鏡を用いて観察し、全パターン中密着しているパターンをカウントして硬化性を評価した。
A:すべてのパターンが密着している。
B:密着しているパターンが、全パターンの95%以上100%未満である。
C:密着しているパターンが、全パターンの90%以上95%未満である。
D:密着しているパターンが、全パターンの85%以上90%未満である。
E:密着しているパターンが、全パターンの85%未満である。
【0218】
<現像性>
シリコンウエハ上にCT-4000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を膜厚が0.1μmとなるようにスピンコート法で塗布し、ホットプレートを用いて220℃で1時間加熱して下地層を形成した。この下地層付きのシリコンウエハ上に各硬化性組成物をスピンコート法で塗布し、その後、ホットプレートを用いて100℃で2分間加熱して、膜厚1μmの組成物層を得た。この組成物層に対して、i線ステッパーFPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用し、一辺1.1μmの正方ピクセルがそれぞれ基板上の4mm×3mmの領域に配列されたマスクパターンを介し、365nmの波長の光を照射し、露光量200mJ/cmにて露光を行った。露光後の組成物層に対し、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにて水を用いてリンスを行い、更に純水にて水洗いを行った。その後、水滴を高圧のエアーで飛ばし、シリコンウエハを自然乾燥させたのち、ホットプレートを用いて200℃で300秒間ポストベークを行い、パターンを形成した。パターン間の残差の有無を観察して現像性を評価した。
パターンの形成領域外(未露光部)を走査型電子顕微鏡(SEM)(倍率10000倍)で観察し、未露光部5μm×5μmの面積(1エリア)あたりの直径0.1μm以上の残渣を数え、下記評価基準に従って残渣を評価した。
A:1エリアあたりの残渣が全くない。
B:1エリアあたりの残渣の数が10個未満
C:1エリアあたりの残渣の数が10個以上20個未満
D:1エリアあたりの残渣の数が20個以上30個未満。
【0219】
【表14】
【0220】
【表15】
【0221】
【表16】
【0222】
【表17】
【0223】
上記表に示すように、実施例の硬化性組成物は、保存安定性および硬化性に優れていた。なお、実施例1~11、13~37、39~61、63~125、127~342においては、硬化性組成物の全固形分中における化合物Aの含有量は5.2質量%である。また、実施例12、38、62、126において、硬化性組成物の全固形分中における化合物Aの含有量は5.6質量%である。
【0224】
<硬化性組成物の調製>
(実施例343~364)
以下の原料を混合して硬化性組成物を調製した。なお、下記表において、「↑」の記載は、該当する化合物又は使用量が、1つ上の欄の化合物又は使用量と同一であることを示している。
分散液 ・・・下記表に記載の質量部
樹脂 ・・・下記表に記載の質量部
重合性化合物 ・・・下記表に記載の質量部
光重合開始剤 ・・・下記表に記載の質量部
界面活性剤H1 ・・・4.17質量部
p-メトキシフェノール ・・・0.0006質量部
溶剤 ・・・下記表に記載の質量部
【0225】
【表18】
【0226】
上記表中の略語で記載した素材のうち、上述した素材以外の詳細は下記の通りである。
【0227】
(分散液)
[分散液347]
分散液36において配合したC.I.Pigment Green 36の8.29質量部を、C.I.Pigment Green 58の4.15質量部およびC.I.Pigment Green 36の4.15質量部に変更した以外は分散液36と同様にして分散液347を調製した。
【0228】
[分散液348]
分散液36において配合したC.I.Pigment Yellow 185の2.07質量部を、C.I.Pigment Yellow 139の2.07質量部に変更した以外は分散液36と同様にして分散液348を調製した。
【0229】
[分散液349]
分散液36において配合したC.I.Pigment Yellow 185の2.07質量部を、C.I.Pigment Yellow 150の2.07質量部に変更した以外は分散液36と同様にして分散液349を調製した。
【0230】
[分散液350]
分散液36において配合した誘導体としての化合物SY-32のかわりに、同量の化合物SY-327を用いた以外は分散液36と同様にして分散液350を調製した。
【化37】
【0231】
(樹脂)
D2:下記構造の樹脂。主鎖に付記した数値はモル比である。Mw=14000。
【化38】
【0232】
(重合性化合物)
E2:アロニックス M-305(東亞合成(株)製)
E3:NKエステル A-TMMT(新中村化学工業(株)製)
E4:KAYARAD RP-1040(日本化薬(株)製)
E5:アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)
【0233】
(光重合開始剤)
F1:IRGACURE-OXE01(BASF社製)、下記構造の化合物。
F2:IRGACURE-OXE02(BASF社製)、下記構造の化合物。
F4:IRGACURE 369(BASF社製)、下記構造の化合物。
F5:下記構造の化合物。
【化39】
【0234】
得られた硬化性組成物について、実施例1と同様の方法にて保存安定性、耐熱性、硬化性、および現像性を評価した。実施例347および実施例348の各評価項目は実施例246と同等の結果が得られた。また、そのほかの実施例の各評価項目は、実施例36と同等の結果が得られた。
【0235】
(実施例365)
以下の分散液365を使用した以外は実施例1と同様にして硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物は、硬化性組成物の全固形分中における化合物A(化合物SY-32)の含有量は1.4質量%である。
得られた硬化性組成物について、実施例1と同様の方法にて保存安定性、耐熱性、硬化性、および現像性を評価した。保存安定性の評価は「B」で、耐熱性の評価は「A」で、硬化性の評価は「B」で、現像性の評価は「C」であった。
<分散液365の調製>
G顔料(C.I.Pigment Green 36)を8.29質量部と、Y顔料(C.I.Pigment Yellow 185)を2.07質量部と、誘導体として化合物SY-32を0.25質量部と、分散剤P-1を3.3質量部と、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を71.92質量部とを混合したのち、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を加えて、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液365を製造した。
【0236】
(実施例366)
以下の分散液366を使用した以外は実施例1と同様にして硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物は、硬化性組成物の全固形分中における化合物A(化合物SY-32)の含有量は14.3質量%である。
得られた硬化性組成物について、実施例1と同様の方法にて保存安定性、耐熱性、硬化性、および現像性を評価した。保存安定性の評価は「B」で、耐熱性の評価は「A」で、硬化性の評価は「B」で、現像性の評価は「C」であった。
<分散液366の調製>
G顔料(C.I.Pigment Green 36)を8.29質量部と、Y顔料(C.I.Pigment Yellow 185)を2.07質量部と、誘導体として化合物SY-32を2・50質量部と、分散剤P-1を3.3質量部と、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を71.92質量部とを混合したのち、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を加えて、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液366を製造した。
【0237】
(比較例5)
以下の分散液367を使用した以外は実施例1と同様にして硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物は、硬化性組成物の全固形分中における化合物A(化合物SY-32)の含有量は0.5質量%である。
得られた硬化性組成物について、実施例1と同様の方法にて保存安定性、耐熱性、硬化性、および現像性を評価した。保存安定性の評価は「C」で、耐熱性の評価は「C」で、硬化性の評価は「D」で、現像性の評価は「D」であった。
<分散液の調製>
G顔料(C.I.Pigment Green 36)を8.29質量部と、Y顔料(C.I.Pigment Yellow 185)を2.07質量部と、誘導体として化合物SY-32を0.09質量部と、分散剤P-1を3.3質量部と、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を71.92質量部とを混合したのち、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を加えて、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液367を製造した。下記の表に記載の数値は質量部である。
【0238】
(比較例6)
以下の分散液368を使用した以外は実施例1と同様にして硬化性組成物を調製した。この硬化性組成物は、硬化性組成物の全固形分中における化合物A(化合物SY-32)の含有量は16質量%である。
得られた硬化性組成物について、実施例1と同様の方法にて保存安定性、耐熱性、硬化性、および現像性を評価した。保存安定性の評価は「C」で、耐熱性の評価は「C」で、硬化性の評価は「D」で、現像性の評価は「D」であった。
<分散液368の調製>
G顔料(C.I.Pigment Green 36)を8.29質量部と、Y顔料(C.I.Pigment Yellow 185)を2.07質量部と、誘導体として化合物SY-32を2・80質量部と、分散剤P-1を3.3質量部と、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を71.92質量部とを混合したのち、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を加えて、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液368を製造した。
【0239】
(実施例1001)
以下の分散液R-1を使用した以外は実施例1と同様にして硬化性組成物を調製した。得られた硬化性組成物について、実施例1と同様の方法にて保存安定性、耐熱性、硬化性、および現像性を評価した。各評価において実施例36と同等の結果が得られた。
【0240】
分散液R-1:以下の方法で調製した分散液
C.I.Pigment Red254の10.5質量部、C.I.Pigment Yellow139の4.5質量部、誘導体として化合物SY-32の2.0質量部、分散剤P-2の5.5質量部、および、PGMEAの77.5質量部を混合した混合液に、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を加えて、ペイントシェーカーを用いて3時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液R-1を調製した。
【0241】
(実施例1002)
以下の分散液B-1を使用した以外は実施例1と同様にして硬化性組成物を調製した。得られた硬化性組成物について、実施例1と同様の方法にて保存安定性、耐熱性、硬化性、および現像性を評価した。各評価において実施例36と同等の結果が得られた。
【0242】
分散液B-1:以下の方法で調製した顔料分散液
C.I.Pigment Blue15:6の12質量部、特開2015-041058号公報の段落番号0292に記載のV染料2(酸価=7.4mgKOH/g)の3質量部、誘導体として化合物B-1の2.7質量部、分散剤P-2の4.8質量部、および、PGMEAの77.5質量部を混合した混合液に、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を加えて、ペイントシェーカーを用いて3時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液を調製した。
【0243】
(実施例2001)
シリコンウエハ上に、Green組成物をポストベーク後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(キヤノン(株)製)を用い、365nmの波長光を1000mJ/cmの露光量で2μm四方のドットパターンのマスクを介して照射(露光)した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、更に純水にて水洗した。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱(ポストベーク)することで、Green組成物をパターニングした。同様にRed組成物、Blue組成物を順次パターニングし、緑、赤及び青の着色パターン(ベイヤーパターン)を形成した。Green組成物としては、実施例1の硬化性組成物を使用した。Red組成物及びBlue組成物については後述する。なお、ベイヤーパターンとは、米国特許第3,971,065号明細書に開示されているような、一個の赤色(Red)素子と、二個の緑色(Green)素子と、一個の青色(Blue)素子とを有する色フィルタ素子の2×2アレイを繰り返したパターンである。得られたカラーフィルタを公知の方法に従い固体撮像素子に組み込んだ。この固体撮像素子は好適な画像認識能を有していた。
【0244】
-Red組成物-
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Red組成物を調製した。
Red顔料分散液:51.7質量部
樹脂D1の40質量%PGMEA溶液:0.6質量部
重合性化合物E6:0.6質量部
光重合開始剤F1:0.3質量部
界面活性剤H1:4.2質量部
PGMEA:42.6質量部
【0245】
-Blue組成物-
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Blue組成物を調製した。
Blue顔料分散液:44.9質量部
樹脂D1の40質量%PGMEA溶液:2.1質量部
重合性化合物E1:1.5質量部
重合性化合物E6:0.7質量部
光重合開始剤F1:0.8質量部
界面活性剤H1:4.2質量部
PGMEA:45.8質量部
【0246】
Red組成物及びBlue組成物に使用した原料は、以下の通りである。
【0247】
Red顔料分散液
C.I.Pigment Red254を9.6質量部、C.I.Pigment Yellow139を4.3質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を6.8質量部、PGMEAを79.3質量部とからなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合及び分散した。その後更に、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行った。この分散処理を10回繰り返し、Red顔料分散液を得た。
【0248】
Blue顔料分散液
C.I.Pigment Blue15:6を9.7質量部、C.I.Pigment Violet23を2.4質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を5.5質量部、PGMEAを82.4質量部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合及び分散した。その後更に、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行った。この分散処理を10回繰り返し、Blue顔料分散液を得た。
【0249】
樹脂D1、重合性化合物E1、光重合開始剤F1および界面活性剤H1:上述した材料である。
重合性化合物E6:下記構造の化合物
【化40】