(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 20/06 20060101AFI20220530BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20220530BHJP
C08F 2/10 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
C08F20/06
C08J3/12 CEY
C08F2/10
(21)【出願番号】P 2020532009
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(86)【国際出願番号】 KR2019012832
(87)【国際公開番号】W WO2020116760
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】10-2018-0157082
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウォン、テ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、チョンミン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヘミン
(72)【発明者】
【氏名】イ、チュンウィ
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ソンポム
(72)【発明者】
【氏名】シン、クァンイン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、チャン-フン
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/133440(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/095427(WO,A1)
【文献】特表2009-507119(JP,A)
【文献】特表2011-526962(JP,A)
【文献】特表2019-518821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および混合物全体に対して0.01乃至0.3重量%の含有量の発泡剤を含む単量体混合物を形成する段階;
前記単量体混合物を重合反応器に移送しながら、その移送速度を制御して下記計算式1で算出される移送中の単量体混合物に加えられる動圧を140Pa以上に調整する段階;
前記重合反応器に移送された単量体混合物を架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階;
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階;および
表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂粉末の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する段階を含
み、
前記単量体混合物は、区間により変化する直径を有する移送管に沿って移送され、前記移送管の最小直径区間で前記単量体混合物は0.45乃至2.5m/sの最大移送速度を示し、前記移送管の最大直径区間では前記単量体混合物が0.1乃至0.4m/sの速度で移送され、該最大移送速度区間で前記単量体混合物に加えられる動圧が140Pa以上に調節される、高吸水性樹脂の製造方法。
【数6】
(前記計算式1で、pは前記移送中である単量体混合物の密度(g/cm
3)を示し、Vは前記単量体混合物の移送速度(m/s)を示す。)
【請求項2】
前記移送管は、最小直径区間で0.002乃至0.01mの直径を有し、最小直径区間前の最大直径区間で0.011乃至0.020mの直径を有する、請求項
1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記単量体混合物は、100乃至15000kg/hrの流量で移送管を通じて移送される、請求項
2に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記高吸水性樹脂は、樹脂1gが0.3psiの加圧下で塩化ナトリウムおよび炭素数12乃至14のアルコールエトキシレートの水溶液20gを吸収する所要時間を示すT-20が170秒以下である、請求項1~
3のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記高吸水性樹脂は、EDANA法 WSP 241.3により測定した生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能(CRC)が28g/g以上である、請求項1~
4のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記高吸水性樹脂は、EDANA法 WSP 242.3-10により測定された0.7psiの加圧吸水能(AUP)が23乃至27g/gである、請求項1~
5のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記高吸水性樹脂は、生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(SFC;・10
-7cm
3・s/g)が30(10
-7cm
3・s/g)以上である、請求項1~
6のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記高吸水性樹脂は、ボルテックス法による吸水速度が5乃至50秒である、請求項1~
7のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は、2018年12月7日付韓国特許出願第10-2018-0157082号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
本発明は、発泡剤の使用量を減らしながらも、より向上した吸水速度を示す高吸水性樹脂の製造を可能にする高吸水性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百乃至1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であり、開発企業ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名称で命名している。このような高吸水性樹脂は、生理用具として実用化し始め、現在は乳幼児用紙おむつなど衛生用品以外に、園芸用土壌保水材、土木・建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における新鮮度保持剤、および湿布用などの材料として広く用いられている。
【0003】
最も多い場合に、このような高吸水性樹脂は、おむつや生理用ナプキンなど衛生材分野で広く使用されている。このような衛生材内で、前記高吸水性樹脂は、パルプ内に広がった状態で含まれることが一般的である。しかし、最近は、より薄い厚さのおむつなど衛生材を提供するための努力が続いており、その一環としてパルプの含有量が減少したり、ひいてはパルプが全く使用されない所謂パルプレス(pulpless)おむつなどの開発が積極的に進められている。
【0004】
このように、パルプの含有量が減少したり、パルプが使用されない衛生材の場合、相対的に高吸水性樹脂が高い比率で含まれ、このような高吸水性樹脂粒子が衛生材内に不可避に多層で含まれる。このように多層で含まれる全体的な高吸水性樹脂粒子がより効率的に小便などの液体を吸収するためには、前記高吸水性樹脂が基本的に高い吸水性能および吸水速度を示す必要がある。
【0005】
そのために、最近はより向上した吸水速度を示す高吸水性樹脂を製造および提供しようとする試みが継続して行われている。
【0006】
吸水速度を高めるための最も一般的な方法としては、高吸水性樹脂の内部に多孔性構造を形成して高吸水性樹脂の表面積を広げる方法が挙げられる。
【0007】
このように、高吸水性樹脂の表面積を広げるために、従前は炭酸塩系発泡剤を用いて架橋重合を行うことによってベース樹脂粉末内に多孔性構造を形成する方法を代表的に適用した。このような炭酸塩系発泡剤を用いる場合、重合過程で二酸化炭素気体が発生して微細気孔が形成され得るため、多孔性構造を有する高吸水性樹脂が製造され得る。
【0008】
しかし、このような方法では、重合温度および時間により、二酸化炭素気体の発生効果が減少し、その結果、高吸水性樹脂の物性間に偏差が起こる短所があった。また、前記炭酸塩系発泡剤を適用した化学的発泡を行うと、乾燥および粉砕などの過程で所望しない微粉などが多量発生して高吸水性樹脂の他の物性が低下するばかりか、微粉の再循環が必要になるなどの工程上の短所も発生した。
【0009】
そのために、発泡剤の使用量を減らしながらも、適切な多孔性構造を形成してより向上した吸水速度を示す高吸水性樹脂の製造を可能にする技術の開発が継続して要請されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許登録番号第5562646号
【文献】米国特許公開番号第2013-007940号
【文献】国際特許公開番号第1987-003208号
【非特許文献】
【0011】
【文献】Reinhold Schwalmの著書「UV Coatings:Basics, Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」のp115
【文献】Odianの著書「Principle of Polymerization(Wiley,1981)」のp203
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明の目的は、発泡剤の使用量を減らしながらも、より向上した吸水速度を示す高吸水性樹脂の製造を可能にする高吸水性樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明は、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体および内部架橋剤を含む単量体混合物を形成する段階;
前記単量体混合物を重合反応器に移送しながら、その移送速度を制御して下記計算式1で算出される移送中の単量体混合物に加えられる動圧を140Pa以上に調整する段階;
前記重合反応器に移送された単量体混合物を架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階;
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階;および
表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂粉末の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する段階を含む高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0014】
【0015】
前記計算式1で、pは前記移送中である単量体混合物の密度を示し、Vは前記単量体混合物の移送速度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の具体的な実施形態に係る高吸水性樹脂の製造方法などについてより詳細に説明する。ただし、これは発明の一つの例示として提示されるものであり、これによって発明の権利範囲が限定されるのではなく、発明の権利範囲内で実施形態に対する多様な変形が可能であることは当業者に自明である。
【0017】
追加的に、本明細書全体において、特別な言及がない限り、「含む」または「含有する」とは、ある構成要素(または構成成分)を特別な制限なしに含むことをいい、他の構成要素(または構成成分)の付加を除くものと解釈されない。
【0018】
発明の一実施形態によれば、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体および内部架橋剤を含む単量体混合物を形成する段階;
前記単量体混合物を重合反応器に移送しながら、その移送速度を制御して下記計算式1で算出される移送中の単量体混合物に加えられる動圧を140Pa以上に調整する段階;
前記重合反応器に移送された単量体混合物を架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階;
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階;および
表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂粉末の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する段階を含む高吸水性樹脂の製造方法が提供される。
【0019】
【0020】
前記計算式1で、pは前記移送中である単量体混合物の密度を示し、Vは前記単量体混合物の移送速度を示す。
【0021】
本発明者らは、発泡剤の使用量を減らしながらも、発達した多孔性構造および優れた吸水速度を示す高吸水性樹脂の製造技術を開発するために研究を継続してきた。
【0022】
このような発明者らの研究結果、単量体混合物を重合反応器に移送する過程で、移送管の直径や、移送管を通じた単量体混合物の移送速度を変化させて、移送管中の特定領域で単量体混合物に印加される動圧を140Pa以上、あるいは150乃至1000Pa、あるいは150乃至800Paに調整する場合、物理的発泡によって、炭酸塩系発泡剤の使用量を減らしながらも、発達した多孔性構造および優れた吸水速度を示す高吸水性樹脂を製造可能であることを見出して発明を完成した。
【0023】
これは前記移送管を通じた移送中の単量体混合物に印加される圧力が瞬間的に変化することによって、前記単量体混合物中の酸素など気体溶解度が減少するためであると予測される。したがって、前記動圧調整段階で、前記単量体混合物から酸素気泡が発生し、前記発生した気泡によって、架橋重合段階で発泡重合が行われ得、その結果、発泡剤を使用しないか、またはその使用量を減らしても物理的発泡により発達した多孔性構造を有する高吸水性樹脂が製造され得る。
【0024】
このような高吸水性樹脂は、発泡剤の使用量が最小化されて、これによる問題点を有さないながらも、優れた吸水速度を示すことができ、発泡剤による物性低下の現像が減って残りの物性も優秀に維持され得る。結果として、一実施形態の方法によれば、発泡剤の使用量を減らしながらも、優れた吸水速度および諸般物性を示す高吸水性樹脂が製造され得る。
【0025】
以下、一実施形態の製造方法を各段階別により具体的に説明する。
【0026】
一実施形態の高吸水性樹脂の製造方法において、まず前記高吸水性樹脂の原料物質である単量体混合物は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、内部架橋剤、および重合開始剤と、選択的に発泡剤を含む単量体混合物を重合して含水ゲル状重合体を得、これを乾燥、粉砕、および分級してベース樹脂粉末を形成する。
【0027】
これについて以下でより詳細に説明する。
【0028】
前記高吸水性樹脂の原料物質である単量体混合物は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体、より具体的に、アクリル酸系単量体および重合開始剤を含むことができる。
【0029】
前記アクリル酸系単量体は、下記の化学式1で表される化合物である。
【0030】
【0031】
前記化学式1で、
R1は不飽和結合を含む炭素数2乃至5のアルキルグループであり、
M1は水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0032】
好ましくは、前記アクリル酸系単量体は、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選択される1種以上を含む。
【0033】
ここで、前記アクリル酸系単量体は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したものであってもよい。好ましくは、前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのような塩基性物質で部分的に中和させたものが用いられてもよい。この時、前記アクリル酸系単量体の中和度は、80モル%以下、あるいは40乃至75モル%、あるいは50乃至70モル%に調節されてもよい。
【0034】
しかし、前記中和度が過度に高ければ中和された単量体が析出されて重合が円滑に行われ難いこともあり、ひいては、表面架橋開始以降の追加中和による効果が実質的になくなり、表面架橋層の架橋程度が最適化されず、高吸水性樹脂の通液性などが不十分になることがある。反対に中和度が過度に低ければ高分子の吸水力が大幅に落ちるだけでなく、取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質を示すことがある。
【0035】
前記単量体の濃度は、前記高吸水性樹脂の原料物質および溶媒を含む単量体混合物に対して20乃至60重量%、あるいは30乃至55重量%、あるいは40乃至50重量%になることができ、重合時間および反応条件などを考慮して適切な濃度になることができる。ただし、前記単量体の濃度が過度に低くなれば高吸水性樹脂の収率が低く、経済性に問題が発生することがあり、反対に濃度が過度に高くなれば単量体の一部が析出されたり重合された含水ゲル状重合体の粉砕時に粉砕効率が低く示されるなど、工程上の問題が生じることがあり、高吸水性樹脂の物性が低下することがある。
【0036】
前記一実施形態の高吸水性樹脂製造方法において、重合時に使用される重合開始剤は、高吸水性樹脂の製造に一般的に使用されるものであれば特に限定されない。
【0037】
具体的に、前記重合開始剤は、重合方法により熱重合開始剤またはUV照射による光重合開始剤を用いることができる。ただし、光重合方法によるとしても、紫外線照射などの照射により一定量の熱が発生し、また発熱反応である重合反応の進行によりある程度の熱が発生するため、追加的に熱重合開始剤を含むこともできる。
【0038】
前記光重合開始剤は、紫外線のような光によりラジカルを形成することができる化合物であればその構成の限定なしに用いることができる。
【0039】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される一つ以上を用いることができる。一方、アシルホスフィンの具体的な例として、商用のlucirin TPO、つまり、2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-トリメチルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethyl-benzoyl-trimethyl phosphine oxide)を用いることができる。より多様な光開始剤については、Reinhold Schwalmの著書である「UV Coatings:Basics, Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」p115によく明示されており、前述した例に限定されない。
【0040】
前記光重合開始剤は、前記単量体混合物に対して0.01乃至1.0重量%、あるいは0.1乃至0.9重量%、あるいは0.3乃至0.7重量%の濃度で含まれてもよい。このような光重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなることがあり、光重合開始剤の濃度が過度に高ければ高吸水性樹脂の分子量が小さく、物性が不均一になることがある。
【0041】
また、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選択される一つ以上を用いることができる。具体的に、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na2S2O8)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K2S2O8)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH4)2S2O8)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane) dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロライド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane] dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノ吉草酸 )(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤については、Odianの著書である「Principle of Polymerization(Wiley,1981)」p203によく明示されており、前述した例に限定されない。
【0042】
発明の一実施形態によれば、前記単量体混合物は、高吸水性樹脂の原料物質として内部架橋剤を含む。このような内部架橋剤は、アクリル酸系単量体が重合された重合体、つまり、ベース樹脂の内部を架橋させるためのものであって、前記重合体の表面を架橋させるための表面架橋剤とは区分される。
【0043】
このような内部架橋剤の種類は特に限定されず、以前から高吸水性樹脂の製造に使用可能なものとして任意の内部架橋剤を用いることができる。このような内部架橋剤の具体的な例としては、炭素数2乃至20のポリオールのポリ(メト)アクリレート系化合物、炭素数2乃至20のポリオールのポリグリシジルエーテル系化合物または炭素数2乃至20のアリル(メト)アクリレート系化合物などが挙げられる。
【0044】
これら内部架橋剤のより具体的な例としては、トリメチルロールプロパントリ(メト)アクリレート、エチレングリコールジ(メト)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メト)アクリレート、プロピレングリコールジ(メト)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メト)アクリレート、ブタンジオールジ(メト)アクリレート、ブチレングリコールジ(メト)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メト)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メト)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メト)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メト)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メト)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メト)アクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethyleneglycol diglycidyl ether)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルまたはポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられ、その他にも多様な多官能化合物を内部架橋剤として用いることができる。
【0045】
このような内部架橋剤は、前記単量体混合物に対して0.01乃至1重量%、あるいは0.05乃至0.8重量%、あるいは0.2乃至0.7重量%の濃度で含まれて、含水ゲル重合体およびこれから形成されるベース樹脂粉末内部に架橋構造を導入することができる。前記内部架橋剤の含有量が過度に小さければ、高吸水性樹脂の内部架橋度が低くなって加圧吸水能など諸般物性が低下することがあり、反対に内部架橋剤の含有量が過度に高ければ、保水能など吸水性能が低下することがある。
【0046】
一方、前述した単量体混合物は、達成しようとする吸水速度の程度により、必要な場合、単量体混合物全体に対して0.01乃至0.3重量%、あるいは0.05乃至0.25重量%、あるいは0.1乃至0.2重量%の含有量で発泡剤をさらに含むこともできる。しかし、一実施形態の方法では、以前に知られたものよりも同一水準の多孔性を得るために大幅に減少された含有量の発泡剤使用が可能になるため、発泡剤の過量使用などによる問題点が最小化することができる。
【0047】
前記発泡剤としては、以前から高吸水性樹脂の発泡重合のために使用可能であると知られた任意の発泡剤、例えば、炭酸塩系発泡剤を用いることができる。このような炭酸塩系発泡剤の具体的な例としては、ソジウムビカーボネート(sodium bicarbonate)、ソジウムカーボネート(sodium carbonate)、ポタシウムビカーボネート(potassium bicarbonate)、ポタシウムカーボネート(potassium carbonate)、カルシウムビカーボネート(calcium bicarbonate)、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、マグネシウムビカーボネート(magnesium bicarbonate)またはマグネシウムカーボネート(magnesium carbonate)が挙げられる。
【0048】
一方、前述した単量体混合物は、必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0049】
また、このような単量体混合物は、前述した酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和した単量体、光重合開始剤、熱重合開始剤、内部架橋剤、選択的発泡剤および添加剤のような原料物質が溶媒に溶解された溶液の形態で準備されてもよい。
【0050】
この時、用いることができる前記溶媒は、前述した成分を溶解することができればその構成の限定なしに用いることができ、例えば水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどから選択された1種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
前記溶媒は、単量体混合物の総含有量に対して前述した成分を除いた残量で含まれてもよい。
【0052】
一方、前述した方法で単量体混合物を形成した後は、前記単量体混合物を移送管を通じて重合反応器に移送しながら、その移送速度を制御して前記計算式1で算出される移送中の単量体混合物に加えられる動圧を140Pa以上、あるいは150乃至1000Pa、あるいは150乃至800Paに調整することができる。
【0053】
前述のように、前記単量体混合物の移送中に移送管直径や、移送速度などを変化させて、前記単量体混合物に加えられる動圧を調整することによって、単量体混合物中の酸素など気体溶解度を減少させることができる。したがって、前記単量体混合物から酸素気泡が発生し、前記発生した気泡によって、架橋重合段階で発泡重合が行われてもよく、このような物理的発泡により発達した多孔性構造を有する高吸水性樹脂が製造され得る。
【0054】
もし、前記動圧が過度に低くなれば、物理的発泡および発泡重合が良好に行われず、高吸水性樹脂の多孔性構造および吸水速度が良好に発現しないこともある。反対に、動圧が過度に高くなる場合、追加的な発泡効果が大きくないばかりか、工程上の移送速度などが良好に制御されず、工程上の進行の困難が発生することがある。
【0055】
前記動圧は、前記計算式1から確認されるように、単量体混合物の密度および移送速度から算出されてもよく、単量体混合物の密度は各成分の濃度や種類などにより当業者が容易に測定および算出することができる。このような単量体混合物の密度は、一般に比重瓶、比重計または密度層の方法で測定されてもよい。最も普遍的な方法は比重計を利用する方法で測定されてもよい
一方、前述した動圧の制御のために、移送管の直径や、単量体混合物の移送速度を変化させることができる。例えば、前記単量体混合物は、区間により変化する直径を有する移送管に沿って移送され、具体的には、移送管の直径が移送経路に沿って減ることができる。したがって、前記移送管の最小直径区間で前記単量体混合物は、最大移送速度を示すように制御されてもよく、このような移送管の直径または単量体混合物の移送速度変化を通じて前述した動圧を達成することができる。
【0056】
より具体的な一例において、前記移送管は、最小直径区間で0.002乃至0.01m、あるいは0.005乃至0.009mの直径を有し、最小直径区間前の最大直径区間で0.011乃至0.020m、あるいは0.012乃至0.015mの直径を有することができる。このような移送管の直径は、高吸水性樹脂の適切な生産性を達成するための単量体混合物の流量と、前述した動圧を達成するための移送速度などを考慮して前述した範囲内で適切に決定され得る。
【0057】
また、前記移送管の最小直径区間では、前記単量体混合物が0.45乃至2.5m/s、あるいは0.7乃至2.0m/sの速度で移送されてもよく、前記移送管の最大直径区間では前記単量体混合物が0.1乃至0.5m/s、あるいは0.2乃至0.4m/sの速度で移送されるように制御されてもよい。
【0058】
通常、高吸水性樹脂の製造過程において、適切な生産性を確保するために、前記単量体混合物は、100乃至15000kg/hr、あるいは100乃至13000kg/hr、あるいは110乃至1000kg/hrの流量で移送管を通じて移送されてもよい。このような流量で移送時、前述した範囲に移送管の直径および/または単量体混合物の移送速度を変化させることによって、単量体混合物に印加される動圧を前述した範囲に制御することができる。これによって、物理的発泡程度を最適化して発達した多孔性構造および優れた吸水速度を示す高吸水性樹脂の製造が可能になる。
【0059】
一方、前述した方法で単量体混合物の物理的発泡を行いながら、これを重合反応器に移送した後は、前記単量体混合物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を形成することができる。このような重合段階の進行方法/条件は特に限定されず、一般的な高吸水性樹脂の重合条件および方法に従うことができる。
【0060】
具体的に、重合方法は、重合エネルギー源により大きく熱重合および光重合に区分され、通常、熱重合を行う場合、ニーダー(kneader)のような攪拌軸を有する反応器で行われてもよく、光重合を行う場合、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で行われてもよいが、前述した重合方法は一例であり、発明が前述した重合方法に限定されない。
【0061】
一例として、前述のように攪拌軸を備えたニーダー(kneader)のような反応器に、熱風を供給したり反応器を加熱して熱重合して得られた含水ゲル状重合体は、反応器に備えられた攪拌軸の形態により、反応器排出口で排出される含水ゲル状重合体は数センチメートル乃至数ミリメートル形態であってもよい。具体的に、得られる含水ゲル状重合体の大きさは、注入される単量体混合物の濃度および注入速度などにより多様に示され得るが、通常、重量平均粒径が2乃至50mm、あるいは3乃至30mmである含水ゲル状重合体が得られる。
【0062】
また、前述のように移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で光重合を行う場合、通常得られる含水ゲル状重合体の形態は、ベルトの幅を有するシート状の含水ゲル状重合体であってもよい。この時、重合体シートの厚さは、注入される単量体混合物の濃度および注入速度により変わるが、通常0.5乃至5cm、あるいは1乃至3cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるように単量体混合物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度に単量体混合物を供給する場合、生産効率が低くて好ましくなく、シート状の重合体の厚さが5cmを超える場合には過度に厚い厚さによって、重合反応が厚さの全体にかけて均一に起こらないことがある。
【0063】
この時、このような方法で得られた含水ゲル状重合体の通常の含水率は、40乃至80重量%、あるいは50乃至70重量%であってもよい。一方、本明細書全体で「含水率」は、含水ゲル状重合体重量全体に対して占める水分の含有量であり、含水ゲル状重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱を通じて重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値と定義する。この時、乾燥条件は、常温で約180℃まで温度を上昇させた後、180℃で維持する方式で総乾燥時間は温度上昇段階5分を含んで20分に設定して、含水率を測定する。
【0064】
次に、得られた含水ゲル状重合体を乾燥する段階を行う。
【0065】
この時、必要に応じて前記乾燥段階の効率を上げるために乾燥前に粗粉砕する段階をさらに経ることができる。
【0066】
この時、使用される粉砕機は、構成の限定はないが、具体的に、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、回転切断式粉砕機(Rotary cutter mill)、切断式粉砕機(Cutter mill)、円板粉砕機(Disc mill)、切れ破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、チョッパー(chopper)および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器群より選択されるいずれか一つを含むことができるが、前述した例に限定されない。
【0067】
この時、粉砕段階は、含水ゲル状重合体の粒径が2乃至50mm、あるいは3乃至30mmになるように粉砕することができる。このような含水ゲル状重合体の粒径は、含水ゲル状重合体表面の任意の点を連結した直線距離中の最長距離と定義され得る。
【0068】
粒径を2mm未満に粉砕することは含水ゲル状重合体の高い含水率のため、技術的に容易でなく、また粉砕された粒子間に互いに凝集する現像が現れることもある。一方、粒径が50mm超過に粉砕する場合、後に行われる乾燥段階の効率増大効果が微々である。
【0069】
前記のように粉砕されたり、あるいは粉砕段階を経ていない重合直後の含水ゲル状重合体に対して乾燥を行う。この時、前記乾燥段階の乾燥温度は150乃至250℃であってもよい。乾燥温度が150℃未満である場合、乾燥時間が過度に長くなり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する虞があり、乾燥温度が250℃を超える場合、過度に重合体表面のみが乾燥されて、後で行われる粉砕工程で微粉が発生することもあり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する虞がある。したがって、好ましくは前記乾燥は150乃至200℃の温度で、より好ましくはは160乃至180℃の温度で行われてもよい。
【0070】
一方、乾燥時間の場合には、工程効率などを考慮して、10乃至90分、あるいは20乃至70分間お行われてもよいが、これに限定されない。
【0071】
前記乾燥段階の乾燥方法も含水ゲル状重合体の乾燥工程として通常使用されるものであれば、その構成の限定なしに選択して用いることができる。具体的に、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行うことができる。このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は、0.1乃至10重量%、あるいは1乃至8重量%であってもよい。乾燥後の含水率が過度に低くなれば、乾燥過程で含水ゲル重合体が劣化して高吸水性樹脂の物性が低下することがあり、反対に含水率が過度に高くなれば、高吸水性樹脂内の多量の水分により吸水性能が低下したり、以降の工程の進行が難しくなることがある。
【0072】
次に、このような乾燥段階を経て得られた乾燥された重合体を粉砕する段階を行う。
【0073】
粉砕段階後に得られる重合体粉末は、粒径が150乃至850μmであってもよい。このような粒径に粉砕するために使用される粉砕機は、具体的に、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを用いることができるが、前述した例に発明が限定されるのではない。
【0074】
そして、このような粉砕段階以降に最終製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕後に得られる重合体粉末を粒径により分級する別途の過程を経ることができ、前記重合体粉末を粒径範囲により一定の重量比になるように分級することができる。
【0075】
一方、前述した分級段階を経てベース樹脂を粉末形態で得た後は、表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂粉末を昇温して前記ベース樹脂粉末に対する表面架橋を行う。
【0076】
一般的な高吸水性樹脂の製造方法において、乾燥、粉砕および分級された重合体、つまり、ベース樹脂粉末に表面架橋剤を含む表面架橋溶液を混合した後、これら混合物に熱を加えて昇温することによって前記ベース樹脂粉末に対して表面架橋反応を行う。
【0077】
前記表面架橋段階は、表面架橋剤の存在下で前記粉砕された重合体の表面に架橋反応を誘導することによって、より向上した物性を有する高吸水性樹脂を形成させる段階である。このような表面架橋を通じて前記粉砕および分級されたベース樹脂粉末の表面には表面架橋層が形成される。
【0078】
一般に、表面架橋剤は、ベース樹脂粉末表面に塗布されるため、表面架橋反応はベース樹脂粉末表面で起こり、これは粒子内部には実質的に影響を与えないながら、粒子の表面上での架橋結合性は改善させる。したがって、表面架橋された高吸水性樹脂粒子は、ベース樹脂粉末表面の架橋重合体が追加架橋されて内部よりも表面付近でより高い架橋度を有する。
【0079】
一方、前記表面架橋剤としては、ベース樹脂が有する官能基と反応可能な化合物を用い、一例として多価アルコール系化合物、多価エポキシ系化合物、ポリアミン化合物、ハロエポキシ化合物、ハロエポキシ化合物の縮合産物、オキサゾリン化合物類、またはアルキレンカーボネート系化合物などを特別な制限なしに全て用いることができる。
【0080】
具体的に、多価アルコール系化合物の例としては、ジ-、トリ-、テトラ-またはポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオ-ル、ジプロピレングリコール、2,3,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、ポリグリセロール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、および1,2-シクロヘキサンジメタノールからなる群より選択される1種以上を用いることができる。
【0081】
また、多価エポキシ系化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテルおよびグリシドールなどを用いることができ、ポリアミン化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミンおよびポリアミドポリアミンからなる群より選択される1種以上を用いることができる。
【0082】
そして、ハロエポキシ化合物としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンおよびα-メチルエピクロロヒドリンを用いることができる。一方、モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物としては、例えば2-オキサゾリジノンなどを用いることができる。
【0083】
そして、アルキレンカーボネート系化合物としては、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなどを用いることができる。これらをそれぞれ単独で用いたり互いに組み合わせて用いることもできる。
【0084】
前記添加される表面架橋剤の含有量は、具体的に追加される表面架橋剤の種類や反応条件により適切に選択されてもよいが、通常、ベース樹脂粉末100重量部に対して、0.001乃至5重量部、あるいは0.01乃至3重量部、あるいは0.05乃至2重量部を用いることができる。
【0085】
表面架橋剤の含有量が過度に少なければ、表面架橋反応がほとんど起こらず、重合体100重量部に対して、5重量部を超える場合、過度な表面架橋反応の進行により保水能などの基本的な吸水特性低下が示されることがある。
【0086】
前記表面架橋剤の添加時、追加的に水を共に混合して表面架橋溶液の形態で添加することができる。水を添加する場合、表面架橋剤が重合体に均一に分散され得る利点がある。この時、追加される水の含有量は、表面架橋剤の均一な分散を誘導し、重合体粉末の凝集現像を防止すると同時に、表面架橋剤の表面浸透深さを最適化するための目的で重合体100重量部に対して、1乃至10重量部の比率で添加されることが好ましい。
【0087】
一方、前述した表面架橋段階は、前記表面架橋剤以外に多価金属塩、例えば、アルミニウム塩、より具体的にアルミニウムの硫酸塩、カリウム塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩および塩酸塩からなる群より選択された1種以上をさらに用いて行うことができる。
【0088】
このような多価金属塩は、追加的に用いることによって、一実施形態の方法で製造された高吸水性樹脂の通液性などをより向上させることができる。このような多価金属塩は、前記表面架橋剤と共に表面架橋溶液に添加されてもよく、前記ベース樹脂粉末100重量部に対して0.01乃至4重量部の含有量で用いられてもよい。
【0089】
一方、前記ベース樹脂粉末、および表面架橋溶液の混合物に熱を加えて昇温することによって前記ベース樹脂粉末に対して表面改質段階を行う。
【0090】
前記表面架橋段階は、表面架橋剤の種類によりよく知られた条件下で行うことができ、例えば、100乃至200℃の温度で20分乃至60分間行うことができる。より具体的な一例で、前記表面架橋段階は、20℃乃至80℃の初期温度を有するベース樹脂粉末に対して、表面架橋剤などを付加し、10分乃至30分にかけて140℃乃至200℃の最高温度に昇温し、前記最高温度を5分乃至60分間維持して熱処理することによって行われてもよい。
【0091】
前記表面架橋条件により、高吸水性樹脂の保水能など基本的な吸水特性と、通液性および/または加圧吸水能が共に最適化され得る。
【0092】
表面架橋反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給したり、熱源を直接供給して加熱することができる。この時、使用可能な熱媒体の種類としては、スチーム、熱風、熱油のような昇温した流体などを用いることができるが、これに限定されるのではなく、また供給される熱媒体の温度は、熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択することができる。一方、直接供給される熱源としては、電気を通じた加熱、ガスを通じた加熱方法が挙げられるが、前述した例に本発明が限定されるのではない。
【0093】
前述した方法で製造された高吸水性樹脂は、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の第1架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および前記ベース樹脂粉末上に形成されており、前記第1架橋重合体が表面架橋剤を媒介として追加架橋された表面架橋層を含む高吸水性樹脂であって、前記ベース樹脂粉末内には多数の気孔が形成されている。
【0094】
前記高吸水性樹脂は、実質的に発泡剤を含まず、優れた吸水速度を示すことができる。
【0095】
より具体的に、前記高吸水性樹脂は、樹脂1gが0.3psiの加圧下で、塩化ナトリウムおよび炭素数12乃至14のアルコールエトキシレートの水溶液20gを吸収する所要時間を示すT-20が170秒以下、あるいは165秒以下、あるいは163秒以下であり、100秒以上、あるいは110秒以上、あるいは120秒以上である特性を示すことができる。これは前記高吸水性樹脂の高い吸水速度を反映することができる。
【0096】
また、前記高吸水性樹脂は、EDANA法 WSP 241.3により測定した生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能(CRC)が28g/g以上、あるいは28.4g/g以上であり、40g/g以下、あるいは36g/g以下、あるいは34g/g以下の範囲を有することができる。
【0097】
そして、前記高吸水性樹脂は、EDANA法 WSP 242.3-10により測定された0.7psiの加圧吸水能(AUP)が23乃至27g/g、あるいは23.5乃至26.5g/g、あるいは24乃至26g/gである特性を示すことができ、このような加圧吸水能は、前記高吸水性樹脂の優れた加圧下の吸水特性を反映することができる。
【0098】
また、一実施形態の高吸水性樹脂は、生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(SFC、10-7cm3・s/g)が30(・10-7cm3・s/g)以上、あるいは35(・10-7cm3・s/g)以上であり、100(・10-7cm3・s/g)以下、あるいは70(・10-7cm3・s/g)以下である特性を示すことができる。
【0099】
前記生理食塩水の流れ誘導性(SFC)は、以前から当業者によく知られた方法、例えば、米国特許登録番号第5562646号のカラム54乃至カラム59に開示された方法により測定および算出することができる。
【0100】
このように、一実施形態の方法で製造された高吸水性樹脂は、発泡剤の過量使用による他の物性低下が減り、優れた吸水速度と共に、優れた通液性と、保水能など吸水能を同時に示すことができる。
【0101】
付加して、前記高吸水性樹脂は、ボルテックス法による吸水速度が5乃至50秒、あるいは10乃至45秒である特性を示すことができ、これも前記高吸水性樹脂の優れた吸水速度を定義することができる。
【0102】
前述のように、一実施形態の製造方法により得られた高吸水性樹脂は、優れた吸水速度を示し、発泡剤の過量使用などが不要になり、他の諸般物性も優秀に維持され得る。したがって、前記高吸水性樹脂は、おむつなど衛生材、特に、パルプの含有量が減少した超薄型衛生材などに適切に用いられ得る。
【0103】
(発明の効果)
前述のように、本発明によれば、発泡剤の最小化された使用のみで物理的発泡により発達した多孔性構造および優れた吸水速度を示す高吸水性樹脂が製造され得る。
【0104】
したがって、前述の方法で製造された高吸水性樹脂は、優れた吸水速度を示し、発泡剤の過量使用などが不要になり、吸水能、通液性など他の諸般物性も優秀に維持され得る。したがって、前記高吸水性樹脂は、おむつなど衛生材、特に、パルプの含有量が減少した超薄型衛生材などに適切に用いられ得る。
【実施例】
【0105】
以下、発明の理解のために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明をこれらだけに限定するのではない。
【0106】
(実施例1)
アクリル酸、苛性ソーダ、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(Mw=523;アクリル酸基準0.5重量%)、およびUV開始剤としてジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド0.033gを含み、アクリル酸の中和度が70モル%であり、単量体の濃度が43重量%である単量体水溶液を製造した。
【0107】
以降、前記単量体水溶液に、まず、0.17重量%炭酸水素ナトリウムの発泡剤溶液0.3重量%(前記単量体水溶液基準)を混合し、このような組成物を110kg/hの流量で一次的に0.015mの直径(最大直径区間)を有する短管を通じて投入した後、2次的に0.008mの直径に変化された短管(最小直径区間)を通じて連続移送した。このような移送を通じて、移動するコンベヤーベルトからなる重合反応器に単量体水溶液を投入し、UV照射装置を通じて紫外線を照射(照射量:2mW/cm2)して2分間UV重合を進行して含水ゲル重合体を製造した。
【0108】
この時、最終2次短管を通過する単量体水溶液組成物の動圧は152paであった。
【0109】
前記含水ゲル重合体を切断機に移送した後、最大長さ0.2cmに切断した。この時、切断された含水ゲル重合体の含水率は52重量%であった。
【0110】
次いで、前記含水ゲル重合体に対して190℃温度の熱風乾燥機で30分間乾燥し、乾燥された含水ゲル重合体をピンミル粉砕機で粉砕した。その後、篩(sieve)を利用して粒径が150μm未満である重合体と、粒度150μm乃至850μmである重合体を分級した。
【0111】
以降、製造されたベース樹脂粉末100重量部に、エチレンカーボネート1.5重量部を含む表面架橋剤水溶液を噴射して高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階において、分級されたベース樹脂粉末を一つの表面架橋反応器に供給し、190℃以上の温度で35分間前記表面架橋反応を進行した。
【0112】
以降、前記表面処理後、高吸水性樹脂の温度を90℃に冷却した後、篩(sieve)を利用して粒径が150乃至850μmである表面処理された高吸水性樹脂を得た。前記高吸水性樹脂に含まれている150μm未満の微粉含有量は2重量%未満であった。
【0113】
(実施例2)
実施例1において、投入される単量体水溶液組成物の投入量を150kg/hに調整して単量体水溶液の移送速度を下記表1のように調整したことを除き、実施例1と同様に実施し、この時、2次短管(最小直径区間)を通過する単量体水溶液の動圧は282paであった。
【0114】
(実施例3)
実施例1において、投入される単量体水溶液組成物の投入量を242kg/hに調整して単量体水溶液の移送速度を下記表1のように調整したことを除き、実施例1と同様に実施し、この時、2次短管(最小直径区間)を通過する単量体水溶液の動圧は734paであった。
【0115】
(比較例1)
実施例1において、投入される単量体水溶液組成物の投入量を90kg/hに調整して単量体水溶液の移送速度を下記表1のように調整したことを除き、実施例1と同様に実施し、この時、2次短管(最小直径区間)を通過する単量体水溶液の動圧は101paであった。
【0116】
(比較例2)
実施例1において、投入される単量体水溶液組成物の投入量を242kg/hに調整し、移送管(短管)の直径変化なしに単量体水溶液を移送したことを除き、実施例1と同様に実施し、この時、単量体水溶液の動圧は59paであった。
【0117】
(実験例)
実施例および比較例で製造した各高吸水性樹脂の物性、そして製造過程中の諸般因子を次の方法で測定および評価した。
【0118】
(1)単量体水溶液の密度
移送管を通じて移送される直前の単量体混合物の密度は、Mettler Toledo社の比重計を用いた方法で測定した。このような測定結果、前記実施例および比較例で製造された単量体水溶液は1.05g/cm3の密度を有することが確認された。
【0119】
(2)単量体水溶液の移送速度(m/s)
単量体水溶液の移送速度は、移送区間で移送管の直径から断面積を求め、当該区間で単量体混合物の流量を測定して下記式から算出した。
【0120】
【0121】
(3)動圧(Pa)
前記(1)および(2)でそれぞれ測定された密度および移送速度を計算式1に代入して、単量体水溶液の移送中の動圧を算出した。
【0122】
(4)粒径の評価
実施例および比較例で使用されたベース樹脂粉末および高吸水性樹脂の粒径は、欧州不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)規格EDANA WSP 220.3方法により測定した。
【0123】
(5)遠心分離保水能(CRC、Centrifuge Retention Capacity)
欧州不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)規格EDANA WSP 241.3により無荷重下の吸水倍率による遠心分離保水能(CRC)を測定した。高吸水性樹脂(またはベース樹脂粉末;以下同一)W0(g、約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温に0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液の生理食塩水に浸水させた。30分後に封筒を遠心分離機を利用して250Gで3分間水気を除去した後に封筒の質量W2(g)を測定した。また、高吸水性樹脂を利用せずに同一の操作をした後にその時の質量W1(g)を測定した。このように得られた各質量を利用して次の計算式2によりCRC(g/g)を算出して保水能を確認した。
【0124】
【0125】
(6)加圧吸水能(Absorbing under Pressure、AUP)
実施例および比較例の高吸水性樹脂に対して、欧州不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association)規格EDANA WSP 242.3-10の方法により加圧吸水能(AUP:Absorbency under Pressure)を測定した。
【0126】
まず、内径60mmのプラスチックの円筒底にステンレス製の400メッシュ(mesh)鉄網を装着させた。23±2℃の温度および45%の相対湿度条件下で鉄網上に実施例および比較例で得られた樹脂W0(g、0.90g)を均一に散布し、その上に4.83kPa(0.7psi)の荷重を均一にさらに付与できるピストン(piston)は、外径が60mmより若干小さく、円筒の内壁と隙間がなく、上下の動きが妨害されないようにした。この時、前記装置の重量W3(g)を測定した。
【0127】
直径150mmのペトリ皿の内側に直径125mmに厚さ5mmのガラスフィルターを置き、0.90重量%塩化ナトリウムから構成された生理食塩水をガラスフィルターの上面と同一のレベルになるようにした。ガラスフィルターの上に前記測定装置を載せ、液を荷重下で1時間吸収した。1時間後、測定装置を持ち上げ、その重量W4(g)を測定した。
【0128】
このように得られた各質量を利用して次の計算式3によりAUP(g/g)を算出して加圧吸水能を確認した。
【0129】
【0130】
前記計算式3で、
W0(g)は高吸水性樹脂の初期重量(g)であり、
W3(g)は高吸水性樹脂の重量および前記高吸水性樹脂に荷重を付与できる装置重量の総和であり、
W4(g)は荷重(0.7psi)下で1時間にかけて前記高吸水性樹脂に生理食塩水を吸収させた後に、高吸水性樹脂の重量および前記高吸水性樹脂に荷重を付与できる装置重量の総和である。
【0131】
(7)生理食塩水の流れ誘導性(SFC;saline flow conductivity)
米国特許登録番号第5562646号のカラム54乃至カラム59に開示された方法により測定および算出した。単に測定時に使用された高吸水性樹脂の量を0.9gの代わりに1.5gを用いたことだけを前記米国特許とは異にした。
【0132】
(8)T-20
蒸溜水1Lに9gの塩化ナトリウムおよび0.1gのLorodac(主成分:線形炭素数12乃至14のアルコールエトキシレート、CAS# 68439-50-9)を溶解した水溶液を作り、0.3psiの加圧下で、高吸水性樹脂1gがこのような水溶液20gを吸収するのに要する時間で算出および測定した。このようなT-20の具体的な測定方法は、米国特許公開番号第2013-007940号に詳細に記述されている。
【0133】
(9)吸水速度(Vortex time)
実施例および比較例の高吸水性樹脂の吸水速度は、国際特許公開番号第1987-003208号に記載された方法に準じて秒単位で測定された。
【0134】
具体的に、吸水速度(あるいはvortex time)は、23℃乃至24℃の50mLの生理食塩水に2gの高吸水性樹脂を入れ、マグネチックバー(直径8mm、長さ31.8mm)を600rpmで攪拌して渦流(vortex)がなくなる時までの時間を秒単位で測定して算出された。
【0135】
前記物性評価結果を下記表1に整理して示した。
【0136】
【0137】
前記表1を参照すると、単量体水溶液の移送中の動圧が140Pa以上に印加された実施例1乃至3で製造された高吸水性樹脂は、比較例と同等水準以上の保水能、加圧吸水能および通液性などを示しながらも、より向上した吸水速度を示すことが確認された。