(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】加工性に優れたエチレン/1-ブテン共重合体
(51)【国際特許分類】
C08F 210/16 20060101AFI20220530BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
C08F210/16
C08F4/6592
(21)【出願番号】P 2020533660
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(86)【国際出願番号】 KR2018016503
(87)【国際公開番号】W WO2019125065
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】10-2017-0177534
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0166741
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キム、チュンス
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ヒョク-チュ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、イ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、キ-ス
(72)【発明者】
【氏名】パク、チョンサン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、テシク
(72)【発明者】
【氏名】イ、イェ-チン
(72)【発明者】
【氏名】カク、チンヨン
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0121006(US,A1)
【文献】特表2017-536422(JP,A)
【文献】特表2019-515097(JP,A)
【文献】特表2017-530201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 210/16
C08F 4/6592
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
190℃でASTM D1238によって測定した溶融流動率比(MFR
21.6/MFR
2.16)が30~60であり、
分子量分布(Mw/Mn,PDI)が8~20であり、
BOCD(Broad Orthogonal Co-monomer Distribution)Indexが1~2であり、
4.0MPaかつ80℃におけるISO 16770によるフルノッチクリープテスト(FNCT)で測定された耐応力亀裂性が1,000~20,000時間である、エチレン/1-ブテン共重合体
であって、
下記化学式1で表される第1メタロセン化合物1種以上;下記化学式2で表される第2メタロセン化合物1種以上;助触媒化合物;および担体を含む混成担持メタロセン触媒の存在下に、エチレンおよび1-ブテンを共重合させることによって製造される、エチレン/1-ブテン共重合体:
【化1】
前記化学式1において、
M
1
は、4族遷移金属であり、
R
1
~R
7
は、互いに同一または相異し、それぞれ独立して水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキルアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、および炭素数7~20のアリールアルキル基からなる群より選ばれた官能基であるか、または互いに隣接する2個以上が互いに連結されて炭素数1~10のヒドロカルビル基で置換または非置換された脂肪族または芳香族環を形成することができ、
X
1
およびX
2
は、互いに同一または相異し、それぞれ独立してハロゲン、または炭素数1~20のアルキル基であり;
Qは、炭素、ゲルマニウム、またはシリコンであり、
Nは、窒素であり、
【化2】
前記化学式2において、
M
2
は、4族遷移金属であり、
R
8
~R
13
中の一つ以上は、-(CH
2
)n-OR(この時、Rは炭素数1~6の直鎖または分枝鎖アルキル基であり、nは2~10の整数である。)であり、残りは互いに同一または相異し、それぞれ独立して水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、または炭素数7~20のアリールアルキル基であり、
R
14
~R
17
は、それぞれ独立して水素、または炭素数1~20のアルキル基であり、
X
3
およびX
4
は、互いに同一または相異し、それぞれ独立してハロゲン、または炭素数1~20のアルキル基である。
【請求項2】
SCB(Short Chain Branch)含有量(炭素1,000個あたり炭素数2~7個の分枝(branch)含有量、単位:個/1,000C)が5~20個である、請求項1に記載のエチレン/1-ブテン共重合体。
【請求項3】
MFR
2.16(ASTM D1238に準じて190℃、2.16kg荷重で測定された溶融流動指数)が0.1~5g/10minであり、
MFR
21.6(ASTM D1238に準じて190℃、21.6kg荷重で測定された溶融流動指数)が10~40g/10minである、請求項1または2に記載のエチレン/1-ブテン共重合体。
【請求項4】
重量平均分子量(Mw)が10,000~400,000g/molである、請求項1~3のいずれかに記載のエチレン/1-ブテン共重合体。
【請求項5】
前記溶融流動率比(MFR
21.6/MFR
2.16)が33~45である、請求項1~4のいずれかに記載のエチレン/1-ブテン共重合体。
【請求項6】
前記分子量分布(Mw/Mn,PDI)が10~12である、請求項1~5のいずれかに記載のエチレン/1-ブテン共重合体。
【請求項7】
前記BOCD Indexが1.2~2.0である、請求項1~6のいずれかに記載のエチレン/1-ブテン共重合体。
【請求項8】
前記化学式1で表される化合物は、下記構造式で表される化合物中のいずれか一つである、請求項
1~7のいずれか一項に記載のエチレン/1-ブテン共重合体:
【化3】
【請求項9】
前記化学式2で表される化合物は、下記構造式で表される化合物中のいずれか一つである、請求項
1~8のいずれか一項に記載のエチレン/1-ブテン共重合体:
【化4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は、2017年12月21日付韓国特許出願第10-2017-0177534号および2018年12月20日付韓国特許出願第10-2018-0166741号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれている。
【0002】
本発明は、加工性に優れたエチレン/1-ブテン共重合体に関する。
【背景技術】
【0003】
大口径高圧パイプ管に使われるポリオレフィン樹脂は一般的に高い耐圧特性および優れた加工性が求められる。高い耐圧特性は一般的に高密度領域で発現する物性であって、これはポリオレフィン樹脂内の結晶化度が高いほど強度(Modulus)が増加して高圧に耐える力が増加するからである。しかし、パイプは一般的に最小50年間の長期耐圧安定性が保障されなければならないが、密度が高いと脆性破壊モード(Brittle Fracture)に対する抵抗力が劣り、長期耐圧特性が劣る短所がある。また、分子量が低かったり分子量分布が狭いと大口径パイプは加工時にSagging現象(Melt撓む現象)が発生して加工が難しいため、分子量が高く、分子量分布が非常に広いポリオレフィン樹脂を適用する場合にこのような問題を解決することができる。特に、分子量が高いと押出負荷が多く発生し、パイプ外観が不良であるため必ず非常に広い分子量分布が求められる。
【0004】
このような問題の改善のために多くの努力が進められており、例えば、韓国特許出願第2003-7007276号、第1999-0064650号、第2006-7005524号および第2003-7004360号などにはブロー成形製品などに適用するための二頂ポリエチレン樹脂、二頂ポリエチレン樹脂を含む組成物またはその製造のための触媒などが記載されているが、製品の物性および加工性を同時に満足させられない問題がある。
【0005】
このような背景で物性と加工性との間のバランスをなす優れた製品の製造が絶えず求められており、特に耐応力亀裂性の改善がさらに必要な状態である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来技術の問題を解決するために、本発明は加工性に優れ、耐応力亀裂性が優れたエチレン/1-ブテン共重合体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、
190℃でASTM D1238によって測定した溶融流動率比(MFR21.6/MFR2.16)値が30~60であり、
分子量分布(Mw/Mn,PDI)が8~20であり、
BOCD(Broad Orthogonal Co-monomer Distribution)Indexが1~2であり、
4.0MPaかつ80℃におけるISO 16770によるフルノッチクリープテスト(FNCT)で測定された耐応力亀裂性が1,000~20,000時間である、
エチレン/1-ブテン共重合体を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるエチレン/1-ブテン共重合体は、狭い分子量分布を有して加工性が向上し、耐応力亀裂性に優れ、高耐圧暖房管、PE-RTパイプまたは大口径パイプなどに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例で製造した共重合体のGPCカーブを示す図ある。
【
図2】本発明の一実施例で製造した共重合体のGPCカーブを示す図ある。
【
図3】本発明の一実施例で製造した共重合体のGPCカーブを示す図ある。
【
図4】本発明の比較例で製造した共重合体のGPCカーブを示す図ある。
【
図5】本発明の比較例で製造した共重合体のGPCカーブを示す図ある。
【
図6】本発明の比較例で製造した共重合体のGPCカーブを示す図ある。
【
図7】本発明の比較例で製造した共重合体のGPCカーブを示す図ある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、第1、第2等の用語は、多様な構成要素の説明に使われ、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使われる。
【0011】
また、本明細書において使われる用語は単に例示的な実施例を説明するために使われたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするためであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解されなければならない。
【0012】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有し得るため、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定するものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の一実施形態によるエチレン/1-ブテン共重合体は、190℃でASTM D1238によって測定した溶融流動率比(MFRR,MFR21.6/MFR2.16)が30~60であり、分子量分布(Mw/Mn,PDI)が8~20であり、BOCD(Broad Orthogonal Co-monomer Distribution)Indexが1~2であり、4.0MPaかつ80℃におけるISO 16770によるフルノッチクリープテスト(FNCT)で測定された耐応力亀裂性が1,000~20,000時間であることを特徴とする。
【0015】
高耐圧暖房管、またはPE-RTパイプには基本的な機械的物性とともに高い耐圧特性および優れた加工性が求められる。加工性を確保するために1-ヘキセン、1-オクテンのような炭素数6以上の共単量体を共重合することによって分子量分布が広いポリオレフィンを製造する方法がある。しかし、前記1-ヘキセン、または1-オクテンは分子量分布の制御が難しく、価格が高いため製造原価が高まる短所にあり、共単量体として1-ブテンを使用する方法に対する研究が続けられている。
【0016】
しかし、1-ブテンを共単量体として使用して共重合体を製造する場合、フルノッチクリープテスト(FNCT)の物性を満足させるために、1-ヘキセン、または1-オクテンを使用する場合に比べて広い分子量分布を有しなければならず、これによって加工性が劣る問題がある。
【0017】
高耐圧暖房管、またはPE-RTパイプなどに適した水準の高加工性および耐応力亀裂性を同時に満足させるためには分子量分布を狭くして樹脂押出量を増加させること、高分子量の部分に高い共単量体含有量が高いこと、高い溶融流動率比を示すことなどが求められるが、1-ブテンを共単量体として使用してこのような条件をすべて満足させるのは容易ではない。
【0018】
そこで、本発明によれば、1-ブテンに対して低分子量領域では低共重合を示し、高分子量領域では高共重合性を示す2種のメタロセン化合物を含む混成担持メタロセン触媒を使用し、従来のエチレン/1-ブテン共重合体に比べて狭い分子量分布を示し、耐応力亀裂性に優れ、同時に高分子量領域でSCB(Short Chain Branch)含有量が高いBOCD構造および高い溶融流動率比を有して加工性および押出特性に優れたエチレン/1-ブテン共重合体を提供することができる。
【0019】
本発明の一実施例によれば、前記エチレン/1-ブテン共重合体は、190℃でASTM D1238によって測定した溶融流動率比(MFRR,MFR21.6/MFR2.16)が30~60である。より好ましくは、前記溶融流動率比は、30以上、または31以上、または33以上、または35以上であり、かつ60以下、または55以下、または50以下、または45以下であり得る。前記のような範囲の溶融流動率比を有することによって各荷重での流れ性が適切に調整され、加工性および機械的物性が同時に向上することができる。
【0020】
また、本発明の一実施例によれば、前記エチレン/1-ブテン共重合体は分子量分布(Mw/Mn,PDI)が8~20である。より好ましくは、前記分子量分布は、9以上であり、または9.5以上、または10以上、または10.1以上、または10.5以上、または11以上であり、かつまたは20以下、または15以下、または14以下、または13以下、または12以下であり得る。前記のような分子量分布により、前記エチレン/1-ブテン共重合体は優れた加工性を示すことができる。
【0021】
本発明の一実施例によれば、前記エチレン/1-ブテン共重合体はBOCD Indexが1~2である。より好ましくは、前記BOCD Indexは、1以上、または1.1以上、または1.2以上であり、かつ2以下、または1.9以下、または1.7以下であり得る。
【0022】
このように本発明のエチレン/1-ブテン共重合体は、広いBOCD Indexを有して優れた耐応力亀裂性を示すことができる。
【0023】
本明細書において使われるBOCD構造とは、αオレフィンのような共単量体の含有量が高分子量主鎖に集中している構造、すなわち、短鎖枝(Short Chain Branch,SCB)の含有量が高分子量側に行くほど多くなる構造を意味する。
【0024】
BOCD IndexはGPC-FTIR装置を用いて分子量、分子量分布およびSCB含有量を同時に連続的に測定することができ、分子量(M)のログ値(log M)をx軸とし、前記ログ値に対する分子量分布(dwt/dlog M)をy軸として分子量分布曲線を描いた時、全体面積に対して左右端0%を除いた中央60%の左側および右側の境界でSCB(Short Chain Branch)含有量(炭素1,000個あたり炭素数2~7個の分枝(branch)含有量、単位:個/1,000C)を測定して下記式1によりその値を計算して求めることができる。この時、高分子量側SCB含有量と、低分子量側SCB含有量は左右端20%を除いた中間60%範囲でそれぞれ右側境界およびおよび左側境界でのSCB含有量値を意味する。
【0025】
【0026】
この時、BOCD Indexが0以下である場合、BOCD構造の高分子ではなく、0より大きい場合BOCD構造の高分子であると見ることができるが、その値が大きいほどBOCD特性に優れると評価することができる。
【0027】
また、本発明の一実施例によれば、前記エチレン/1-ブテン共重合体は前記エチレン/1-ブテン共重合体のSCB(Short Chain Branch)含有量(炭素1,000個あたり炭素数2~7個の分枝(branch)含有量、単位:個/1,000C)が5個以上、または6個以上、または7個以上、または8個以上であり、かつ20個以下、または18個以下、または16個以下、または14個以下、または12個以下であり得る。
【0028】
このように本発明のエチレン/1-ブテン共重合体は、従来の知られているエチレン/1-ブテン共重合体に比べて狭い分子量分布(PDI)と大きいBOCD Indexを有して優れた加工性および耐応力亀裂性を示すことができる。
【0029】
また、前記エチレン/1-ブテン共重合体は、4.0MPaかつ80℃におけるISO 16770によるフルノッチクリープテスト(FNCT)で測定された耐応力亀裂性(単位:時間)が1,000時間~20,000時間である。より好ましくは、前記耐応力亀裂性が、1,000時間以上、または1,200時間以上、または1,300時間以上、または1,600時間以上、または1,700時間以上、または2,000時間以上である。また、前記耐応力亀裂性の値が大きいほど物性に優れることであるため、その上限に実質的な制限はないが、一例として20,000時間以下、または10,000時間以下、または7,000時間以下、または6,000時間以下、または5,000時間以下、または4,000時間以下、または3,000時間以下であり得る。
【0030】
また、前記エチレン/1-ブテン共重合体は、長期物性で80℃でTensile testを用いて測定した引張変形強化(Tensile Strain Hardening)値が0.94~1.00である。より好ましくは、前記引張変形強化値が、0.94以上、または0.95以上である。また、前記引張変形強化値が大きいほど物性に優れることであるため、その上限に実質的な制限はないが、一例として2.0以下、または1.5以下、または1.2以下であり得る。前記引張変形強化(Tensile Strain Hardening)値の測定方法は後述する実施例でより具体的に説明する。
【0031】
本発明の一実施例によれば、前記エチレン/1-ブテン共重合体は、ASTM D1238に準じて190℃、2.16kg荷重で測定された溶融流動指数(MFR2.16)が約0.1g/10min以上、または約0.3g/10min以上または約0.5g/10min以上であり、約5g/10min以下、または約3g/10min以下、または約2g/10min以下、または約1g/10min以下、または約0.6g/10min以下であり得る。
【0032】
また、本発明の一実施例によれば、前記エチレン/1-ブテン共重合体は、ASTM D1238に準じて190℃、21.6kg荷重で測定された溶融流動指数(MFR21.6)が約10g/10min以上、または約12g/10min以上、または約14g/10min以上、または約15g/10min以上であり、かつ約40g/10min以下、または約30g/10min以下、または約28g/10min以下、または約25g/10min以下であり得る。
【0033】
このようなMFR2.16、MFR21.6の範囲は、前記エチレン/1-ブテン共重合体の用途または適用分野を考慮して適切に調整されることができる。
【0034】
また、本発明の一実施例によれば、前記エチレン/1-ブテン共重合体の密度は、0.930~0.950g/cm3であり、好ましくは0.934~0.940g/cm3であり得る。
【0035】
本発明の一実施例によれば、前記エチレン/1-ブテン共重合体は、重量平均分子量(Mw)が10,000~400,000g/molである。より好ましくは、前記重量平均分子量は、50,000g/mol以上、60,000g/mol以上、70,000g/mol以上、80,000g/mol以上、90,000g/mol以上、100,000g/mol以上、110,000g/mol以上、または120,000g/mol以上であり、350,000g/mol以下、300,000g/mol以下、250,000g/mol以下、200,000g/mol以下、または150,000g/mol以下であり得る。
【0036】
前記エチレン/1-ブテン共重合体において、前記1-ブテン共単量体の含有量は約0.5~約10重量%、好ましくは約1~約5重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0037】
前記のようなエチレン/1-ブテン共重合体は、混成担持メタロセン触媒を用いて製造することができる。
【0038】
前記混成担持メタロセン触媒は、下記化学式1で表される第1メタロセン化合物1種以上;下記化学式2で表される第2メタロセン化合物1種以上;助触媒化合物;および担体を含む混成担持メタロセン触媒であり得る。
【0039】
【0040】
前記化学式1において、
M1は、4族遷移金属であり、
R1~R7は、互いに同一または相異し、それぞれ独立して水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキルアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、および炭素数7~20のアリールアルキル基からなる群より選ばれた官能基であるか、または互いに隣接する2個以上が互いに連結されて炭素数1~10のヒドロカルビル基で置換または非置換された脂肪族または芳香族環を形成することができ、
X1およびX2は、互いに同一または相異し、それぞれ独立してハロゲン、または炭素数1~20のアルキル基であり;
Qは、炭素、ゲルマニウム、またはシリコンであり、
Nは、窒素であり、
【0041】
【0042】
前記化学式2において、
M2は、4族遷移金属であり、
R8~R13中の一つ以上は、-(CH2)n-OR(この時、Rは炭素数1~6の直鎖または分枝鎖アルキル基であり、nは2~10の整数である。)であり、残りは互いに同一または相異し、それぞれ独立して水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、または炭素数7~20のアリールアルキル基であり、
R14~R17は、それぞれ独立して水素、または炭素数1~20のアルキル基であり、
X3およびX4は、互いに同一または相異し、それぞれ独立してハロゲン、または炭素数1~20のアルキル基である。
【0043】
前記化学式1および2の置換基をより具体的に説明すると、下記のとおりである。
【0044】
前記炭素数1~20のアルキルとしては、直鎖または分枝鎖のアルキルを含み、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0045】
前記炭素数2~20のアルケニルとしては、直鎖または分枝鎖のアルケニルを含み、具体的にアリル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルなどが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0046】
前記炭素数6~20のアリールとしては、単環または縮合環のアリールを含み、具体的にはフェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニル、フルオレニルなどが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0047】
前記炭素数1~20のアルコキシとしては、メトキシ、エトキシ、フェニルオキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0048】
前記4族遷移金属としてはチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムなどが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0049】
本発明の一実施形態による混成担持メタロセン触媒において、前記化学式1で表される第1メタロセン化合物は、主に低いSCB(Short Chain Branch)含有量を有する低分子量の共重合体を作ることに寄与し、前記化学式2で表される第2メタロセン化合物は、主に高いSCB含有量を有する高分子量のエチレン/1-ブテン共重合体を作ることに寄与することができる。
【0050】
より具体的には、前記化学式1の第1メタロセン化合物と化学式2の第2メタロセン化合物と共に他のメタロセン化合物を共に使用して混成(hybrid)担持メタロセン触媒として使用する場合、第2メタロセン化合物によって高分子量領域の共重合体では1-ブテンに対して高い共重合性を示しながら、前記化学式1のメタロセン化合物の作用によって低分子量領域における共重合体では1-ブテンに対して低い共重合性を示し得る。これにより、1-ブテン共単量体の含有量が高分子量主鎖に集中している構造、すなわち、分枝含有量が高分子量側に行くほど多くなる構造であるBOCD(Broad Orthogonal Co-monomer Distribution)構造を有するエチレン/1-ブテン共重合体の重合に非常に有利である。
【0051】
前記化学式1において、M1はチタニウムであり得る。
【0052】
前記X1およびX2は、好ましくはハロゲン基、より好ましくはClであり得る。
【0053】
前記R1~R5は、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、より好ましくはメチル基であり得る。
【0054】
前記R6は、好ましくは炭素数2~20のアルコキシアルキル基、または炭素数1~20のアルキル基であり得、より好ましくはメチル基、またはtert-ブトキシヘキシル基(tert-butoxy hexyl)であり得る。
【0055】
前記R7は、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、より好ましくはtert-ブチル基であり得る。
【0056】
前記化学式1で表される化合物としては、例えば下記構造式で表される化合物であり得るが、これらにのみ限定されるものではない。
【0057】
【0058】
前記化学式2の第2メタロセン化合物は、インデン(indene)基とシクロペンタジエン(Cp)が非架橋された構造としてシクロペンタジエンまたはインデン基のうち少なくとも一つの置換基に-(CH2)n-OR(この時、Rは炭素数1~6の直鎖または分枝鎖アルキル基であり、nは2~10の整数である。)の置換基を導入することによって、1-ブテン共単量体を用いたエチレン/1-ブテン共重合体の製造時に前記置換基を含まない他のCp系触媒に比べて1-ブテン共単量体に対する低い転換率を示して1-ブテン共単量体分布が調整された中低分子量のエチレン/1-ブテン共重合体を製造することができる。
【0059】
前記化学式2において、M2はジルコニウムであり得る。
【0060】
前記X3およびX4は、好ましくはハロゲン基、より好ましくはClであり得る。
【0061】
前記一実施形態の第2メタロセン化合物において、化学式2のR8~R13中の一つ以上は-(CH2)n-OR(この時、Rは炭素数1~6の直鎖または分枝鎖アルキル基であり、nは2~10の整数である。)の特徴を有する。
【0062】
前記化学式2において、-(CH2)n-ORは、好ましくはtert-ブトキシヘキシル基(tert-butoxy hexyl)であり得る。このような構造のメタロセン化合物が担体に担持された時、置換基のうちインデン基に置換された-(CH2)n-OR基が担持体として使用されるシリカ表面のシラノール基と密接な相互作用により共有結合を形成することができ、安定した担持重合が可能である。また、前記官能基は1-ブテン共単量体の共重合性に影響を及ぼすが、全体重合活性は維持しながら1-ブテン共単量体に対する共重合性(comonomer incorporation)が低くなって他の物性の低下なく共重合度が調整されたエチレン/1-ブテン共重合体の製造に有利である。
【0063】
前記化学式2で表される第2メタロセン化合物の具体的な例として、下記構造式で表される化合物が挙げられるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0064】
【0065】
上記した化学式2で表される第2メタロセン化合物は、公知の反応を応用して合成され得、より詳細な合成方法は実施例を参照することができる。
【0066】
本発明の一実施形態による混成担持触媒は、このように高共重合性のメタロセン化合物と、低共重合性のメタロセン化合物を共に使用して混成担持メタロセン触媒として使用することによって、第2メタロセン化合物によって高分子量領域のエチレン/1-ブテン共重合体では1-ブテンに対して高い共重合性を示しながら、前記第1メタロセン化合物の作用によって低分子量領域におけるエチレン/1-ブテン共重合体では1-ブテンに対して低い共重合性を示すことができる。
【0067】
その結果、1-ブテン共単量体の含有量が高分子量の重鎖に集中している構造、すなわち分枝含有量が高分子量側に行くほど多くなる構造であるBOCD構造を有して分子量分布が従来のエチレン/1-ブテン共重合体より狭い、上述した本発明のエチレン/1-ブテン共重合体の重合に有利である。
【0068】
本発明で使われる混成担持メタロセン触媒は、前記化学式1で表される第1メタロセン化合物の1種以上、および前記化学式2において第2メタロセン化合物の1種以上を助触媒化合物と共に担体に担持したものであり得る。
【0069】
本発明による混成担持メタロセン触媒において、前記メタロセン化合物を活性化するために担体に共に担持される助触媒としては13族金属を含む有機金属化合物として、一般的なメタロセン触媒下にオレフィンを重合する時使用され得るものであれば、特に限定されるものではない。
【0070】
具体的には、前記助触媒化合物は、下記化学式3のアルミニウム含有第1助触媒、および下記化学式4のボレート系第2助触媒中の一つ以上を含み得る。
【0071】
【0072】
前記化学式3において、R18はそれぞれ独立してハロゲン、ハロゲン置換または非置換された炭素数1~20のヒドロカルビル基であり、kは2以上の整数であり、
【0073】
【0074】
化学式4において、T+は+1価の多原子イオンであり、Bは+3酸化状態のホウ素であり、Gはそれぞれ独立してヒドリド、ジアルキルアミド、ハライド、アルコキシド、アリールオキシド、ヒドロカルビル、ハロカルビルおよびハロ-置換されたヒドロカルビルからなる群より選ばれ、前記Gは20個以下の炭素を有するが、ただし、一つ以下の位置でGはハライドである。
【0075】
このような第1および第2助触媒の使用によって重合活性がより向上することができる。
【0076】
前記化学式3の第1助触媒は、線状、円状または網状型で繰り返し単位が結合されたアルキルアルミノキサン系化合物であり得、このような第1助触媒の具体的な例としては、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサンまたはブチルアルミノキサンなどが挙げられる。
【0077】
また、前記化学式4の第2助触媒は、三置換されたアンモニウム塩、またはジアルキルアンモニウム塩、三置換されたホスホニウム塩形態のボレート系化合物であり得る。このような第2助触媒の具体的な例としては、トリメタルアンモニウムテトラフェニルボレート、メチルジオクタデシルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、メチルテトラジシクロオクタデシルアンモニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメエルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチル(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジテトラデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフェニル)ボレート、メチルジオクタデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(2級-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメエルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチル(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、ジメチル(t-ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメエルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレートまたはN,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレートなどの三置換されたアンモニウム塩形態のボレート系化合物;ジオクタデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジテトラデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのジアルキルアンモニウム塩形態のボレート系化合物;またはトリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジオクタデシルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはトリ(2,6-ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの三置換されたホスホニウム塩形態のボレート系化合物などが挙げられる。
【0078】
本発明による混成担持メタロセン触媒において、化学式1で表される第1メタロセン化合物、または化学式2で表される第2メタロセン化合物に含まれる全体遷移金属対担体の質量比は1:10~1:1,000であり得る。前記質量比で担体およびメタロセン化合物を含む時、最適の形状を示すことができる。また、助触媒化合物対担体の質量比は1:1~1:100であり得る。
【0079】
本発明による担持メタロセン触媒において、前記担体としては表面にヒドロキシ基を含有する担体を使用し得、好ましくは乾燥されて表面に水分が除去された反応性が大きいヒドロキシ基とシロキサン基を有している担体を使用することができる。
【0080】
例えば、高温で乾燥されたシリカ、シリカ-アルミナ、およびシリカ-マグネシアなどが使用され得、これらは通常Na2O、K2CO3、BaSO4、およびMg(NO3)2等の酸化物、炭酸塩、硫酸塩、および硝酸塩成分を含有し得る。
【0081】
前記担体の乾燥温度は、200~800℃が好ましく、300~600℃がさらに好ましく、300~400℃が最も好ましい。前記担体の乾燥温度が200℃未満である場合、水分が過度に多いため表面の水分と助触媒が反応し、800℃を超える場合は担体表面の気孔が合わさることによって表面積が減り、また、表面に多くのヒドロキシ基がなくなってシロキサン基のみ残り助触媒との反応サイトが減少するので好ましくない。
【0082】
前記担体表面のヒドロキシ基量は、0.1~10mmol/gが好ましく、0.5~5mmol/gである時さらに好ましい。前記担体表面にあるヒドロキシ基の量は、担体の製造方法および条件または乾燥条件、例えば温度、時間、真空または噴霧乾燥などによって調整することができる。
【0083】
前記ヒドロキシ基の量が0.1mmol/g未満であれば助触媒との反応サイトが少なく、10mmol/gを超えると担体粒子の表面に存在するヒドロキシ基以外に水分に起因したものである可能性があるので好ましくない。
【0084】
一方、本発明によるエチレン/1-ブテン共重合体は、上述した混成担持メタロセン触媒の存在下で、エチレン、および1-ブテンを重合させることによって製造することができる。
【0085】
前記重合反応は一つの連続式スラリー重合反応器、ループスラリー反応器、気相反応器または溶液反応器を用いてエチレン、および1-ブテンを共重合して行うことができる。
【0086】
そして、前記重合温度は、約25~約500℃、好ましくは約25~約200℃、より好ましくは約50~約150℃であり得る。また、重合圧力は、約1~約100Kgf/cm2、好ましくは約1~約50Kgf/cm2、より好ましくは約5~約30Kgf/cm2であり得る。
【0087】
前記混成担持メタロセン触媒は、炭素数5~12の脂肪族炭化水素溶媒、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、およびこれらの異性体とトルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロベンゼンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒などに溶解したり希釈して注入することができる。ここに使用される溶媒は少量のアルキルアルミニウム処理をすることによって触媒毒として作用する少量の水または空気などを除去して使用することが好ましく、助触媒をさらに使用して実施することも可能である。
【0088】
このように本発明によるエチレン/1-ブテン共重合体は、上述した混成担持メタロセン触媒を使用してエチレンおよび1-ブテン共単量体を共重合して製造されることができる。このような混成担持メタロセン触媒内の2種以上のメタロセン触媒の相互作用によって、全体的に分子量分布が狭いながらも、高分子量領域により高い含有量でSCBが含まれたエチレン/1-ブテン共重合体が得られることができる。
【0089】
その結果、前記エチレン/1-ブテン共重合体は、例えば、
図1~
図3に示すようなGPC分子量分布曲線を示し得、狭い分子量分布による優れた耐応力亀裂性と、高分子量領域での高いSCB含有量による優れた加工性を示すことができる。前記のような物性を充足することによって、本発明によるエチレン/1-ブテン共重合体は、加工性および押出特性が良好であり、耐応力亀裂性に優れ、高耐圧暖房管、PE-RTパイプまたは大口径パイプなどに好ましく適用されることができる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の理解を深めるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより簡単に理解するために提供されるものであり、これによって本発明の内容は限定されるものではない。
【0091】
<第1メタロセン化合物の製造実施例>
(合成例1:[(tBu-O-(CH2)6)(CH3)Si(C5(CH3)4)(tBu-N)TiCl2]の製造)
常温で50gのMg(s)を10L反応器に加えた後、THF300mLを加えた。I2 0.5g程度を加えた後、反応器の温度を50℃に維持した。反応器の温度が安定化された後250gの6-t-ブトキシヘキシルクロリド(6-t-buthoxyhexyl chloride)をフィーディングポンプ(feeding pump)を用いて5mL/minの速度で反応器に加えた。6-t-ブトキシヘキシルクロリドを加えることによって反応器の温度が4~5℃程度上昇することを観察した。継続して6-t-ブトキシヘキシルクロリドを加えながら12時間攪拌した。反応12時間後黒色の反応溶液を得た。生成された黒色の溶液2mLを取った後水を加えて有機層を得て1H-NMRにより6-t-ブトキシヘキサン(6-t-buthoxyhexane)を確認した。前記6-t-ブトキシヘキサンからグリニャール(Gringanrd)反応がよく行われたことが分かった。そして、6-t-ブトキシヘキシルマグネシウムクロリド(6-t-buthoxyhexyl magnesium chloride)を合成した。
【0092】
MeSiCl3 500gと1 LのTHFを反応器に加えた後反応器の温度を-20℃まで冷却した。合成した6-t-ブトキシヘキシルマグネシウムクロリド中の560gをフィーディングポンプを用いて5mL/minの速度で反応器に加えた。グリニャール試薬(Grignard reagent)のフィーディング(feeding)が終わった後反応器の温度をゆっくり常温に上げながら12時間攪拌した。反応12時間後白色のMgCl2塩が生成されることを確認した。ヘキサン4Lを加えてラブドリ(labdori)により塩を除去してフィルタ溶液を得た。得られたフィルタ溶液を反応器に加えた後70℃でヘキサンを除去してうすい黄色の液体を得た。得られた液体を1H-NMRにより所望するメチル(6-t-ブトキシヘキシル)ジクロロシラン{Methyl(6-t-buthoxy hexyl)dichlorosilane}化合物であることを確認した。
【0093】
1H-NMR(CDCl3): 3.3(t, 2H), 1.5(m, 3H), 1.3(m, 5H), 1.2(s, 9H), 1.1(m, 2H), 0.7(s, 3H)
【0094】
テトラメチルシクロペンタジエン(tetramethylcyclopentadiene)1.2mol(150g)と2.4LのTHFを反応器に加えた後反応器の温度を-20℃に冷却した。n-BuLi 480mLをフィーディングポンプを用いて5mL/minの速度で反応器に加えた。n-BuLiを加えた後、反応器の温度をゆっくり常温に上げながら12時間攪拌した。反応12時間後、当量のメチル(6-t-ブトキシヘキシル)ジクロロシラン(Methyl(6-t-buthoxy hexyl)dichlorosilane)(326g、350mL)を速やかに反応器に加えた。反応器の温度をゆっくり常温に上げながら12時間攪拌した後再び反応器の温度を0℃に冷却させた後2当量のt-BuNH2を加えた。反応器の温度をゆっくり常温に上げながら12時間攪拌した。反応12時間後THFを除去して4Lのヘキサンを加えてラブドリにより塩を除去したフィルタ溶液を得た。フィルタ溶液を再び反応器に加えた後、ヘキサンを70℃で除去して黄色の溶液を得た。得られた黄色の溶液を1H-NMRによりメチル(6-t-ブトキシヘキシル)(テトラメチルCpH)t-ブチルアミノシラン(Methyl(6-t-buthoxyhexyl)(tetramethylCpH)t-Butylaminosilane)化合物であることを確認した。
【0095】
n-BuLiとリガンドジメチル(テトラメチルCpH)t-ブチルアミノシラン(Dimethyl(tetramethylCpH)t-Butylaminosilane)からTHF溶液で合成した-78℃のリガンドのジリチウム塩にTiCl3(THF)3(10mmol)を速やかに加えた。反応溶液をゆっくり-78℃から常温に上げながら12時間攪拌した。12時間攪拌後、常温で当量のPbCl2(10mmol)を反応溶液に加えた後12時間攪拌した。12時間攪拌後、青色を呈する濃黒色の溶液を得た。生成された反応溶液でTHFを除去した後ヘキサンを加えて生成物をフィルタした。得られたフィルタ溶液でヘキサンを除去した後、1H-NMRから所望する([methyl(6-t-buthoxyhexyl)silyl(η5-tetramethylCp)(t-Butylamido)]TiCl2)である(tBu-O-(CH2)6)(CH3)Si(C5(CH3)4)(tBu-N)TiCl2であることを確認した。
【0096】
1H-NMR(CDCl3): 3.3(s, 4H), 2.2(s, 6H), 2.1(s, 6H), 1.8 ~ 0.8(m), 1.4(s, 9H), 1.2(s, 9H), 0.7(s, 3H)
【0097】
<第2メタロセン化合物の製造実施例>
(合成例2:[(tBu-O-(CH2)6)(CH3)Si(C5(CH3)4)(tBu-N)TiCl2]の製造)
【0098】
【0099】
乾燥された250mL Schlenk flaskに10.8g(100mmol)のchlorohexanolを入れた後10gのmolecular sieveと100mLのMTBE(methyl tert-butyl ether)を添加して20gの硫酸を30分にかけてゆっくり加えた。反応混合物は時間が経つほど徐々にピンク色に変わり、16時間以後氷で冷たく冷ました飽和sodium bicarbonate溶液に注いだ。この混合物にエーテル100mLずつ使用して4回抽出し、集められた有機層はMgSO4で乾燥して濾過を経た後真空減圧下で溶媒を除去して黄色の液体形態の1-(tert butoxy)-6-chlorohexane 10g(60%収率)を得た。
【0100】
1H NMR (500MHz, CDCl3): 3.53 (2H, t), 3.33 (2H, t), 1.79 (2H, m), 1.54 (2H, m), 1.45 (2H, m), 1.38 (2H, m), 1.21 (9H, s)
【0101】
乾燥された250mL Schlenk flaskに4.5g(25mmol)の前記で合成した1-(tert butoxy)-6-chlorohexaneを入れて40mLのTHFに溶かした。ここに20mLのsodium indenide THF溶液をゆっくり加えた後一日間攪拌させた。この反応混合物に50mLの水を加えてクエンチング(quenching)させ、etherで抽出(50mLx3)した後集められた有機層をbrineで十分に洗浄した。MgSO4で残った水分を乾燥して濾過した後、真空減圧下で溶媒を除去することによって暗褐色の粘性のある形態の生成物である3-(6-tert-butoxy hexyl)-1H-indeneを定量収率で収得した。
【0102】
Mw=272.21g/mol
1H NMR (500MHz, CDCl3): 7.47 (1H, d), 7.38 (1H, d), 7.31 (1H, t), 7.21 (1H, t), 6.21 (1H, s), 3.36 (2H, m), 2.57 (2H, m), 1.73 (2H, m), 1.57 (2H, m), 1.44 (6H, m), 1.21 (9H, s)
【0103】
乾燥された250mL Schlenk flaskに前記で製造した3-(6-tert-butoxy hexyl)-1H-indene 5.44g(20mmol)を入れて60mLのエーテル(ether)に溶かした。ここに13mLのn-BuLi 2.0M hexane solutionを加えて一日間攪拌させた後、n-butyl cyclopentadiene ZrCl3のトルエン(toluene)溶液(濃度0.378mmol/g)を-78℃でゆっくり加えた。この反応混合物は常温まで上がると冴えた褐色溶液から黄色固体が浮遊する白色のサスペンション形態に変わった。12時間が経過した後反応混合物に100mLのヘキサンを入れて追加で沈殿を生成させた。以後アルゴン下で濾過して黄色のろ過液を得、これを乾燥して所望する化合物である3-(6-(tert-butoxy)hexyl)-1H-inden-1-yl)(3-butylcylcopenta-2,4-dien-1-yl)zirconium(IV)chlorideが生成されたことを確認した。
【0104】
Mw=554.75g/mol
1H NMR (500MHz, CDCl3): 7.62 (2H, m), 7.24 (2H, m), 6.65 (1H, s), 6.39 (1H, s), 6.02 (1H, s), 5.83 (1H, s), 5.75 (1H, s), 3.29 (2H, m), 2.99 (1H, m), 2.89 (1H, m), 2.53 (1H, m), 1.68 (2H, m), 1.39-1.64 (10H, m), 1.14 (9H, s), 0.93 (4H, m)
【0105】
<混成担持触媒の製造実施例>
(製造例1)
20L sus高圧反応器にトルエン溶液3.0kgを入れて反応器の温度を40℃に維持した。600℃の温度で12時間真空を加えて脱水させたシリカ(Grace Davison,SP2212)500gを反応器に投入してシリカを十分に分散させた後、10wt%メチルアルミノキサン(MAO)/トルエン溶液2.78kgを投入して、80℃で200rpmで15時間以上攪拌した。
【0106】
反応器の温度を40℃に下げた後、7.8wt%合成例1のメタロセン化合物/トルエン溶液200gを反応器に投入して1時間200rpmで攪拌した。次いで8.7wt%合成例2のメタロセン化合物/トルエン溶液250gを反応器に投入して1時間200rpmで攪拌した。
【0107】
助触媒(anilinium tetrakis(pentafluorophenyl)borate)70gをトルエンに薄めて反応器に投入して15時間以上200rpmで攪拌した。反応器の温度を常温に下げた後、攪拌を中止して30分間settlingさせた後反応溶液をdecantationした。
トルエンスラリーをfilter dryerに移送してフィルタした。トルエン3.0kgを投入して10分間攪拌した後、攪拌を中止して濾過した。反応器にヘキサン3.0kgを投入して10分間攪拌した後、攪拌を中止して濾過した。50℃で4時間減圧下に乾燥して500g-SiO2担持触媒を製造した。
【0108】
(製造例2)
製造例1で、合成例1のメタロセン化合物/トルエン溶液125gを投入したことを除いては製造例1と同様に担持触媒を製造した。
【0109】
(製造例3)
製造例1で、合成例1のメタロセン化合物/トルエン溶液100gを投入したことを除いては製造例1と同様に担持触媒を製造した。
【0110】
<エチレン/1-ブテン共重合の実施例>
(実施例1~3)
前記製造例1~3で製造したそれぞれの混成担持メタロセン触媒をhexane slurry stirred tank process重合器を用いて、反応器1個でunimodal運転をしてエチレン/1-ブテン共重合体を製造した。
【0111】
前記実施例1~3でそれぞれの混成担持メタロセン触媒を用いた重合条件を下記表1に整理して示した。
【0112】
【0113】
(比較例1)
DOW社のエチレン/1-オクテン共重合体であるDowlex 2388を比較例1とした。
【0114】
(比較例2)
LG Chemのエチレン/1-ヘキセン共重合体であるSP980を比較例2とした。
【0115】
(比較例3)
Basellのエチレン/1-ブテン共重合体であるHostalen 4731Bを比較例3とした。
【0116】
(比較例4)
Sinopec Qiluのエチレン/1-ヘキセン共重合体であるQHM22Fを比較例4とした。
【0117】
<実験例>
(共重合体の物性評価)
前記実施例および比較例で製造または入手した共重合体に対して下記の方法で物性を評価した。
【0118】
1)密度:ASTM 1505
【0119】
2)溶融指数(MFR、2.16kg/21.6kg):測定温度190℃、ASTM D1238
【0120】
3)MFRR(MFR21.6/MFR2.16):MFR21.6溶融指数(MI、21.6kg荷重)をMFR2.16(MI、2.16kg荷重)で割った比率である。
【0121】
4)Mn,Mw,PDI,GPCカーブ:
サンプルをPL-SP260を用いてBHT 0.0125%含まれた1,2,4-Trichlorobenzeneで160℃、10時間溶かして前処理し、PL-GPC220を用いて測定温度160℃で数平均分子量、重量平均分子量を測定した。分子量分布は重量平均分子量と数平均分子量の比で示した。
【0122】
5)FNCT(Full Notch Creep Test):
文献[M.Fleissner in Kunststoffe 77(1987)、pp.45 et seq.]に記述されており、現在まで施行されているISO 16770により測定した。80℃で4.0MPaの張力を用いた応力亀裂促進媒介物であるIGEPAL CO-630(Etoxilated Nonylphenol,Branched)10%濃度で、ノッチ(1.5mm/安全剃刀)による応力開始時間の短縮により破損時間が短縮された。試験片は厚さ10mmの圧縮された圧縮プラークから横10mm、縦10mm、長さ100mmサイズの3個の試験片を鋸で切って製作する。このような目的のために具体的に製造されたノッチ素子から安全剃刀を用いて中央ノッチを検体に提供する。ノッチの深さは1.5mmである。試験片が切れる時間まで測定した。
【0123】
6)BOCD IndexおよびSCB含有量:
重量平均分子量(M)のログ値(log M)をx軸とし、前記ログ値に対する分子量分布(dwt/dlog M)をy軸として分子量分布曲線を描いた時、全体面積に対して左右端20%を除いた中間60%の左側および右側の境界でSCB(Short Chain Branch)含有量(炭素1,000個あたり炭素数2~7個の分枝(branch)含有量、単位:個/1,000C)を測定して下記数式1によりBOCD Indexを算出した。
【0124】
この時、高分子量側SCB含有量と、低分子量側SCB含有量はそれぞれ中間60%範囲の右側および左側の境界でのSCB含有量値を意味し、試料をPL-SP260を用いてBHT 0.0125%が含まれた1,2,4-Trichlorobenzeneで160℃、10時間溶かして前処理した後、高温GPC(PL-GPC220)と連結されたPerkinElmer Spectrum 100 FT-IRを用いて160℃で測定した。
【0125】
【0126】
7)押出量@50 RPM(kg/hr)
GOTTFERT社の内部直径45OのSingle extruder圧縮機を用いてテストした。Die sizeは60/4であり、温度条件(℃)は190-190-195-195-200-200である。Screwのcompression ratioは2.4である。押出量測定はscrew RPMが50である時測定し、36秒ずつ3回測定し、これを時間当り押出量(kg/hr)に換算した。
【0127】
8)引張変形強化(Tensile Strain Hardening)値
Zwick社のZ010 UTMを用いて80℃チャンバー内でtensile testを行った。テスト試験片はISO37に規定されたtype 3試験片であり、narrow sectionの長さが16mmであるとした。試験片をチャンバー内のgripに取り付けて30分コンディショニングした後測定をした。Strain hardeningが起きる伸び率700~1100%に該当する直線を取ってその勾配値をStrain Hardening constantで定義した。
【0128】
前記結果を下記表2に示した。また、各実施例および比較例の共重合体のGPCカーブをそれぞれ順に
図1~
図7に示した。
【0129】
【0130】
前記表1および
図1~7を参照すると、本願発明の実施例のエチレン/1-ブテン共重合体はエチレン/1-ヘキセン共重合体またはエチレン/1-オクテン共重合体と等しい水準の機械的物性を満足しながらも、比較例4の他のエチレン/1-ブテン共重合体と比較して引張応力、耐応力亀裂性と加工性がいずれも優れた。