(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】ポリアミドセグメントを有する熱可塑性エラストマーから成る発泡粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/18 20060101AFI20220530BHJP
【FI】
C08J9/18 CFG
(21)【出願番号】P 2018567678
(86)(22)【出願日】2017-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2017065275
(87)【国際公開番号】W WO2017220671
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-05-29
(32)【優先日】2016-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ケッペラー,ウヴェ
(72)【発明者】
【氏名】バルトル,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】アーレルス,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】デシュライン,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】グートマン,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】プリソク,フランク
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-042432(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052387(WO,A1)
【文献】特表2016-537450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドセグメントを有する熱可塑性エラストマーからできている発泡粒子の製造方法であって、下記段階:
(a)懸濁液媒体中の前記熱可塑性エラストマーのペレットの懸濁液の製造、
(b)発泡剤の添加、
(c)150~5500kPa(絶対圧)の範囲の含浸圧IMPにおける、含浸温度IMTまでの、圧力容器内での前記懸濁液の加熱による、前記発泡剤での前記ペレットの含浸、
(d)減圧装置を用いた、前記圧力容器からの排出による前記懸濁液の減圧、及び、得られた発泡粒子の後処理
を含む、前記製造方法。
【請求項2】
熱可塑性エラストマーとして、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱可塑性エラストマーは、0.5~7.5質量%の範囲の窒素含有量を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱可塑性エラストマーは、DIN EN ISO306による試験荷重10Nにて、40~170のビカット軟化温度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記ペレットは、1~50mgの範囲の平均質量を有する、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
懸濁媒体として水を使用する、請求項1~5のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
発泡剤として、3~6個の炭素原子を有する炭化水素、二酸化炭素、窒素又はそれらの混合物を使用する、請求項1~6のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
段階(c)における前記含浸は、80~180℃の範囲の含浸温度IMTにて行う、請求項1~7のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
段階(c)における前記含浸は、2℃/分以上の加熱速度にて、前記含浸温度(IMT)まで前記懸濁液を加熱し、そして、2~100分の間、前記含浸温度(IMT)よりも2℃高い温度から前記含浸温度(IMT)よりも5℃低い温度までの範囲の温度にて、前記懸濁液を保持することによって行う、請求項1~8のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
段階(c)において、500~4000kPaの範囲の含浸圧IMPを確立するように、30~75℃の範囲の懸濁液温度にて、前記圧力容器に窒素を供給する、請求項1~9のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
段階(d)における前記懸濁液の減圧は、ボールバルブを介した膨張容器内への圧力容器からの排出によって行う、請求項1~10のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記懸濁液を、段階(d)における減圧装置の下流にて液体冷却剤と接触させる、請求項1~11のうちいずれか1項に記載の方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁液中における発泡剤含浸による、ポリアミドセグメントを有する熱可塑性エラストマーから成る発泡粒子の製造方法に、そしてまた、当該方法により得られ得る発泡粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、膨張性ポリアミドペレット、及び、発泡剤含有のポリマー溶融物の押出し及び水中のペレット化によるその製造について記載している。当該発泡剤含有ペレットは、プレフォーマー中で発泡されて発泡粒子を与え得、そして自動成形機中で一緒に融合されて、高い長期使用の温度及び耐溶剤性を有する発泡ポリマーフォームを与え得る。
【0003】
特許文献2は、自動成形機又はオートクレーブ中で発泡剤とともに充填された架橋重合ポリマーフィルム又はプレートを発泡させることにより得られる、ポリエーテルポリアミドブロックコポリマーから成る、クローズドセル型の、架橋重合フォームシート又はプレートについて記載している。
【0004】
特許文献3及び特許文献4は、発泡剤と共に溶融されたポリマーの含浸及びノズルを通した膨張による、ポリアミド、例えばポリエーテルブロックアミドに基づく発泡ポリマー粒子の製造方法について記載しており、当該ポリマーは、鎖延長剤、例えばエポキシド基を有するスチレン-アクリレートコポリマーを含んでいる。
【0005】
特許文献5は、二酸化炭素又は窒素により充填されたポリマー溶融物のペレット化による、高い破断点伸びを有する熱可塑性樹脂から成る発泡ペレットの製造方法について記載している。とりわけ、言及される熱可塑性エラストマーは、弾性ポリエーテル単位及び結晶性ポリアミド単位を有するポリエーテルコポリアミドである当該方法により得られた発泡粒子は、頻繁に、過度に高い嵩密度を有している。
【0006】
特許文献6は、弾性発泡成形体の製造のための結晶性ポリアミドセグメント及びポリエーテルセグメントから構成される架橋ブロックコポリマーから成る発泡粒子について記載している。当該方法により得られた発泡粒子は、同じく過度に高い嵩密度を有している。
【0007】
懸濁液中の発泡剤含浸によるポリプロピレン(EPP)又は生物分解性ポリエステルから成る膨張発泡粒子の製造方法が、例えば、特許文献7又は特許文献8より既知である。
【0008】
特許文献9は、オートクレーブ反応器中の気体状CO2又はN2を用いた含浸による、閉じられた外皮、低密度及び均質なセル分布を有する、膨張発泡クローズドセル型の熱可塑性エラストマー粒子の製造方法について記載している。当該方法は、非常に高圧、長い含浸時間を必要とし、そして大量生産に際し経済的に実現可能でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2011/134996号
【文献】国際公開第2006/045513号
【文献】国際公開第2016/030026号
【文献】国際公開第2016/030333号
【文献】国際公開第2014/198779号
【文献】特開昭60-042432号公報
【文献】欧州特許出願公開第2336225号公報
【文献】国際公開第2015/052019号
【文献】国際公開第2015/052265号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ポリアミドセグメントを有する熱可塑性エラストマーから成り、及び、低い嵩密度を有し、及び高い回復能力を有する弾性発泡成形体を得るために加工可能な、発泡粒子の製造方法を提供することにあった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本目的は、ポリアミドセグメントを有する熱可塑性エラストマーからできている発泡粒子の製造方法であって、下記段階:
(a)懸濁液媒体中の前記熱可塑性エラストマーのペレットの懸濁液の製造、
(b)発泡剤の添加、
(c)含浸圧IMPにおける、含浸温度IMTまでの、圧力容器内での前記懸濁液の加熱による、前記発泡剤を用いた前記ペレットの含浸、
(d)減圧装置を用いた前記圧力容器からの排出による前記懸濁液の減圧、及び、得られた発泡粒子の加工
を含む製造方法によって達成された。
【発明を実施するための形態】
【0012】
熱可塑性エラストマーとして、エーテル(TPA-ET)、エステル(TPA-ES)又はエーテル及びエステル架橋の両方(TPA-EE)を有するソフトセグメントを有するポリアミドTPE(TPA)を使用することが好ましく、特に好ましくはポリエーテルブロックアミド(PEBA)である。
【0013】
前記熱可塑性エラストマーは、好ましくは0.5~7.5質量%の範囲、特に好ましくは1~5質量%の範囲の窒素含有量を有する。窒素含有量は、元素分析によって測定され得る。ポリアミドブロックの比率及びハードセグメントの比率は、窒素含有量から算出され得る。
【0014】
通常、熱可塑性エラストマーは、段階(a)においてペレットの形態で使用され得る。0.2~10mm、特に0.5~5mmの平均直径を有する円筒形、楕円形又は球形ペレットを使用することが好ましい。円筒形又は楕円形のペレットの場合、本発明の目的においては、その直径は最長寸法を表す。
【0015】
通常、個々のペレットは、1~50mgの範囲、好ましくは5~25mgの範囲の平均質量を有する。ペレットの平均質量(粒子質量)は、各々の場合で10ペレットの3回の計量による算術平均として測定される。これらの好ましい円筒形又は丸型ペレットは、当業者に既知の全てのコンパウンディング工程と冷間裁断又は熱間裁断としてのその後のペレット化により製造され得る。例えば、任意に、二軸スクリュー押出機中の更なる添加剤と一緒のコンパウンディング、押出機からの押出し、任意に冷却及びペレット化による。そのような方法は、例えばKunststoff Taschenbuch(プラスチックハンドブック)ハンザ出版、第28巻(2001年)に記載されている。
【0016】
当該ペレットは、熱可塑性エラストマーだけではなく、抗酸化剤、安定化剤、難燃剤、ワックス、充填剤、顔料及び染料のような慣例の添加剤を任意に含有し得る。セル構造を調節するために、タルク、パラフィン、ワックス、カーボンブラック、グラファイト、焼成シリカ、天然又は合成ゼオライト又はベントナイトのような核剤を用いることが好ましい。これらは通常、ペレットに基づき0.01~5質量%の範囲の量で使用される。
【0017】
ペレットは、適した懸濁媒体、例えば水、アルコール、ケトン又はこれらの混合物のような極性有機溶媒の中に懸濁される。通常、水が懸濁媒体として使用される。
【0018】
通常、懸濁媒体の量は、懸濁媒体に対するペレットの質量比としての相比が0.2~0.9の範囲となるように、選択される。
【0019】
懸濁媒体中のペレットの均一な分布を達成するために、通常は懸濁助剤が添加される。適した懸濁助剤は、水に不溶の無機安定化剤、例えば、リン酸三カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、炭酸カルシウムのような金属炭酸塩、及びまた、ポリビニルアルコール及びイオン性又は非イオン性界面活性剤である。懸濁助剤は、通常0.01~5質量%の量で使用される。
【0020】
段階(b)において、発泡剤が添加される。大気圧における沸点が-10~125℃の範囲を有する揮発性物質又は二酸化炭素又は窒素のような気体が、通常は使用される。ポリマーマトリックスの嵩密度、セル構造及び結晶化度は、発泡剤の種類及び量の選択により影響され得る。3~6個の炭素原子を有する炭化水素、特にn-ブタン及びイソブタン、二酸化炭素、窒素又はこれらの混合物を発泡剤として使用することが好ましい。ブタンを使用することが特に好ましい。通常、発泡剤は、ペレットに基づき1~50質量%の量で使用される。
【0021】
窒素もまた、熱可塑性エラストマーのDSCにおける第1の溶融ピークより低い開始温度、例えば30~75℃の範囲において、注入により、及び含浸反応器の内圧を200~3000kPaだけ上げることにより、共発泡剤として導入され得る。
【0022】
段階(c)の含浸は、80~180℃の範囲の含浸温度(IMT)において好ましく行われる。この目的のために、懸濁液は、通常、好ましくは2℃/分の加熱速度において、又は含浸温度(IMT)を超えるまで加熱され、そして任意に、当該温度において、又はIMTよりも2℃高い温度からIMTよりも5℃低い温度までの範囲の温度において、2~100分の間、保持される(保持時間HT)。
【0023】
発泡剤の種類及び量並びに温度又は気体を用いた処理に応じて、圧力(含浸圧IMP)は、密閉圧力容器中で規定される。
【0024】
段階(c)の含浸は、好ましくは150~5500kPa(絶対圧)の範囲、特に好ましくは500~4000kPa(絶対圧)の範囲の含浸圧(IMP)において行われる。
【0025】
段階(c)において、圧力容器には、好ましくは、窒素を供給し、そして含浸圧IMPを、30~75℃の範囲の懸濁液温度にて設定する。
【0026】
段階(c)で得られた発泡剤含有ペレットは、その後の段階(d)において、減圧によって発泡されて、発泡粒子が得られる。段階(d)の懸濁液の減圧は、通常、開けられた遮断弁を介して、膨張容器内へと、圧力容器内から排出させることが効果的である。遮断弁としては、バルブ、スライダ、コック又は蛇口を使用することが可能であり、ボールバルブが好ましい。圧力容器からの排出中に、懸濁液は、大気圧(1013Pa)まで直接に、又は100~1000kPaの範囲のゲージ圧を有する中間容器中で、減圧され得る。窒素の導入による減圧中、圧力容器内の圧力(圧搾圧力)を一定にすること、又は、減圧前の数秒の窒素の注入によって、圧力を、6000kPa、好ましくは3000~4000kPaの範囲の圧搾圧力までさらに上昇させることもまた有利である。圧搾圧力の上昇によって、より低い嵩密度及びより狭い発泡粒子径分布を有する発泡粒子を得ることが可能となる。
【0027】
段階(d)において、懸濁液は、好ましくは、減圧装置の下流の液体冷却剤と接触させられる。クエンチングとも称されるこの段階は、例えば、特許文献7において、発泡性ポリプロピレン(EPP)の製造のために記載されている。本発明の方法は、好ましくは、
式:(クエンチング水の質量)/(懸濁媒体の質量)=0.5~2.0
に相当する水の量を用いて行われる。
【0028】
任意の後処理(work-up)段階において、使用されそして未だ発泡粒子に付着している懸濁助剤は、得られた発泡粒子から除去され得る。発泡粒子は、その後洗浄され、そして濾過又は遠心分離により液相から分離され、そしてその後乾燥される。
【0029】
本発明の製造方法により得られ得るポリアミドセグメントを有する熱可塑性エラストマーからできている発泡粒子は、好ましくは20~250kg/m3の範囲、特に好ましくは35~150kg/m3の範囲、そして非常に特に好ましくは40~120kg/m3の範囲の嵩密度を有する。
【0030】
膨張発泡粒子は、通常、少なくともおよそ球状である。正確な幾何学的形状又は直径は、選択される形状及び出発時のペレットの粒子質量に、及び得られる嵩密度に依存する。
【0031】
本発明により製造された膨張発泡粒子は、DIN EN ISO4590(2003年8月1日)に基づく方法により行われるクローズドセルの容量割合の測定による、主としてクローズドセルであり、そして、通常、1~750セル/mm2、好ましくは2~500セル/mm2、特に5~200セル/mm2、そして特に好ましくは10~100セル/mm2のセル密度(セル数/面積)を有する。
【0032】
結晶構造を特徴付けるために、膨張発泡粒子は、ISO 11357-3(2013年4月1日のドイツ版)による示差走査熱量測定法(DSC)により試験され得る。この目的のために、第1回の試験において、発泡粒子の3~5mgが、20℃/分の加熱速度にて20℃~200℃に加熱され、そして生じた熱流が測定される。使用された熱可塑性エラストマーの種類に応じて、第1回の試験において少なくとも2つの吸熱ピークが各々の場合において測定され得る。
【0033】
発泡粒子は、蒸気によって一緒に融合されて、低い成形体密度を有する発泡成形体が得られる。成形体の密度は、好ましくは70~300kg/m3の範囲、特に好ましくは80~200kg/m3の範囲である。
【0034】
使用された熱可塑性ポリアミドエラストマー中の軟質相の種類及び割合に応じて、驚くことに、250kPa(ゲージ圧)未満の、特に80~150kPaの範囲の低い蒸気圧が使用され得る。
【0035】
本発明の方法により得られ得る発泡粒子の融合により得られる発泡成形体の機械的特性もまた、通常、使用された熱可塑性ポリアミドエラストマーに、及び成形体の製造に使用された充填プロセスの種類に依存する。
【0036】
しかしながら驚くべきことに、発泡成形体は、使用された熱可塑性ポリアミドエラストマーの広い硬度範囲(ショア硬度A)にわたって高い弾力性及び回復能力を示す。これらは、DIN EN ISO8307:2007(ボール反発による弾性の測定 DIN EN ISO 8307:2008-03)に従い測定された、少なくとも55%のボール反発弾性を常に有している。
【0037】
下記実施例により本発明を示すが、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
試験方法:
とりわけ、使用された原料、及びまた生じた発泡粒子及び成形体の特性も明らかにするため、以下の試験方法及びパラメータを用いた。
【0039】
DSC法による融点の測定
ISO11357-3(2013年4月1日のドイツ版)による手順に、TAインスツルメンツ社のDSC Q100を用いた。使用された熱可塑性エラストマーの、又はペレット形態にある本発明のその他の熱可塑性エラストマーの融点を測定するために、3~5mgを、第1回の試験において20℃/分の加熱速度にて、20℃~200℃に加熱し、その後、10℃/分にて20℃まで冷却し、次いで、10℃/分の加熱速度にて更なる加熱サイクル(第2回試験)に付した。第2回試験の最高ピークの温度を融点として記録した。
【0040】
DSCによる結晶構造
圧縮熱可塑性エラストマー又は膨張発泡粒子の結晶構造の特性を明らかにするために、3~5mgを、20℃/分の加熱速度にて20℃~200℃に加熱し、そして生じた熱流を測定した。
【0041】
嵩密度
測定は、DIN EN ISO60:2000-1に基づく方法によって行った。ここに、所定の形状を有する漏斗を用いて、発泡粒子を、既知の容量を有するメスシリンダーに導入し(試料で完全に充填した)、直定規を用いて、余分の試料をメスシリンダーからすり切り、そしてメスシリンダーの内容物の計量を行った。
【0042】
使用した漏斗は40cmの高さ、35°の開口角度及び直径50mmの出口を有していた。メスシリンダーは、内径188mm及び容量10Lを有していた。
【0043】
嵩密度(BD)を、0.01[m3]当りの床の質量[kg]で表した。
3回の測定の平均値(kg/m3)を嵩密度として記録した。
【0044】
圧縮度DC
圧縮度DCは、嵩密度(BD)に対する成形体の密度(M密度)の比率をいう。DC=M密度[kg/m3]/BD[kg/m3]。
【0045】
加熱貯蔵
試験見本(180×60×M密度mm)を適切な貯蔵温度(110℃)に予め加熱したオーブン中に置き、そして当該温度において96時間貯蔵した。
表面/エッジの評価は、以下の通りである:
各段階の等級に従い、貯蔵時間中、24時間毎に、試験見本の表面及びエッジを評価した。この目的のため、試験見本を手短にオーブンから取り出した。
【0046】
【0047】
加熱貯蔵の後に、試験見本を注意深くオーブンより取り出し、室内条件下、室温にて24時間貯蔵し、そしてその後、寸法の変化を、ノギスを用いて測定した。
【0048】
寸法(長さ、幅、高さ)の変化を、以下の式に基づいて計算した。
【0049】
CD=[(Lo-L1)/(Lo)]×100
CD=寸法の変化(%)
Lo=元の寸法
L1=加熱保存後の寸法
【0050】
表面とエッジが如何なる変化も示さず、且つ、長さ、幅及び高さにわたる寸法の平均変化が<10%である場合に、耐熱性は「申し分ない」(OK)とした。この寸法の変化がより低温での貯蔵の場合にのみ達成された場合は、「制限あり」とした。
【0051】
出発物質
TPA-EE、即ち、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)を本発明の実施例における熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPA)として使用した。この製品は、例えば、商標名PEBAX(ぺバックス)の下で、アルケマスペシャルティポリアミド社(Arkema Speciality Polyamides)により供給されている。表1に掲げた製品は、可撓性ポリテトラヒドロフラン及び結晶ポリアミド単位(PA-12)から成る。
【0052】
【0053】
膨張熱可塑性エラストマーの製造
全体的な実験の記載
表1に記載した組成物の約19mgの粒子質量を有するペレットを使用した。
【0054】
実施例1-4及び6-13
試験を、容器の80%の充填度、及び相の比率0.41において用いて行った。
ペレットの100質量部(発泡剤を除く全懸濁液に基づき28.5質量%に相当する)、水の245質量部(発泡剤を除く全懸濁液に基づき、69.6質量%に相当する)、炭酸カルシウムの6.7質量部(発泡剤を除く全懸濁液に基づき、1.9質量%に相当する)、界面活性物質(ルテンソル(Lutensol)AT 25)の0.13質量部(発泡剤を除く全懸濁液に基づき、0.04質量%に相当する)及び発泡剤としての適切な量のブタン(使用されるペレットの量に基づく)を、攪拌しながら加熱した。その後、窒素をさらに、50℃の液相温度において注入し、そして予め定義した圧力(800kPa)に内部圧を設定した。その後、含浸温度(IMT)の到達後に、且つ任意に保持時間(HT)の後に、最後に設定した含浸圧(IMP)において、減圧装置を介して減圧を行った。気相空間を、予め決定した圧搾圧とし、そして、減圧の間、一定に保持した。減圧装置の下流の特定の温度を有する特定の容量流の水を用いて(水によるクエンチング)、減圧噴射流を任意に冷却した。実施例1~4及び10において、冷却を、比(クエンチング水の質量)/(懸濁媒体の質量)=0.85に相当する量の25℃の水を用いて行った。
【0055】
懸濁助剤(分散剤及び石鹸)の除去及び乾燥後、得られた粒子の嵩密度(BD)を測定した。
【0056】
実施例5
実施例1~4において、発泡剤としてブタンの代わりに12質量%のCO2を用いたが、さらなる窒素を注入しなかった。
【0057】
実施例14
試験を、容器の70%の充填度、及び相の比率0.27において用いて行った。
ペレットの100質量部(発泡剤を除く全懸濁液に基づき21.2質量%に相当する)、水の365質量部(発泡剤を除く全懸濁液に基づき、77.4質量%に相当する)、炭酸カルシウムの6.7質量部(発泡剤を除く全懸濁液に基づき、1.4質量%に相当する)、界面活性物質(ルテンソルAT 25)の0.14質量部(発泡剤を除く全懸濁液に基づき、0.03質量%に相当する)及び発泡剤としての適切な量のブタン(使用されるペレットの量に基づく)を、攪拌しながら加熱した。その後、50℃における窒素のさらなる注入は行わなかった。含浸温度(IMT)の到達後に、且つ任意に保持時間(HT)の後に、最後に設定した含浸圧(IMP)において、減圧装置を介して減圧を行った。気相空間を、予め決定した圧搾圧(3700kPa)とし、そして、減圧の間一定に保持した。
【0058】
懸濁助剤(分散剤及び石鹸)の除去及び乾燥後、得られた発泡粒子の嵩密度(BD)を測定した。
【0059】
実施例15及び16
試験を、容器の80%の充填度、及び相の比率0.31において用いて行った。
ペレットの100質量部(発泡剤を除く全懸濁液に基づき23.4質量%に相当する)、水の320質量部(発泡剤を除く全懸濁液に基づき、75.0質量%に相当する)、炭酸カルシウムの6.7質量部(発泡剤を除く全懸濁液に基づき、1.6質量%に相当する)、界面活性物質(ルテンソルAT 25)の0.13質量部(発泡剤を除く全懸濁液に基づき、0.03質量%に相当する)及び発泡剤としての適切な量のブタン(使用されるペレットの量に基づく)を、攪拌しながら加熱した。
【0060】
実施例15の場合においては、さらなる窒素は注入しなかった。実施例16の場合においては、窒素をさらに注入し、そして、液相の温度を50℃において予め定義した圧力(800kPa)に内部圧を設定した。
【0061】
試験のさらなる進め方は、実施例14と同様にした。
【0062】
本発明による実施例1~16についての実験パラメータ(発泡剤、発泡剤の量、含浸温度(IMT)、含浸圧(IMP)、圧搾圧)、及び得られた嵩密度を、表2に纏めた。
【0063】
相比は、キログラムで測定されたペレットの、同様にキログラムで測定された、好ましくは水である懸濁媒体との比率として定義される。
【0064】
保持時間(HT)は、液相の温度が、IMTよりも5℃低い温度からIMTよりも2℃高い温度までの範囲の温度にある時間[分]として、定義される。
【0065】
成形体の製造
成形体の製造は、市販の自動EPP成形機(クルツ社(Kurtx GmbH)からのK68型)において行った。315×210×25mm、つまり315*210*20mmの寸法を有するツールを使用して、種々の厚さを有する直方体試験見本を製造した。圧縮充填プロセス又はクラック充填(crack filling)プロセスにより、成形体を製造した。成形体の製造後、60℃にて16時間貯蔵した。
【0066】
成形体についてその後行った試験の結果を、表3に纏めた。
【0067】
【0068】