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特許7081228エンボス部付き部材、それを備えた筐体及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】エンボス部付き部材、それを備えた筐体及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 19/08 20060101AFI20220531BHJP
   B21D 22/02 20060101ALI20220531BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20220531BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20220531BHJP
   B41J 2/47 20060101ALI20220531BHJP
   B41J 29/02 20060101ALI20220531BHJP
   B21D 28/26 20060101ALN20220531BHJP
【FI】
B21D19/08 D
B21D22/02 B
G03G21/16 147
G03G15/00 550
B41J2/47 101Z
B41J29/02
B21D28/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018045660
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019155424
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(72)【発明者】
【氏名】瀧田 浩平
(72)【発明者】
【氏名】平川 利和
(72)【発明者】
【氏名】寒河江 英利
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 聡
(72)【発明者】
【氏名】徳脇 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊平
(72)【発明者】
【氏名】前代 陸
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎一
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-042641(JP,A)
【文献】特開2001-050353(JP,A)
【文献】米国特許第05642641(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 19/08
B21D 22/02
G03G 21/16
G03G 15/00
B41J 2/47
B41J 29/02
B21D 28/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部と、該板状部の表面から凸に形成されかつ先端側が先細り形状に形成されたエンボス部と、を有し、
貫通孔が設けられた物品を、前記貫通孔に前記エンボス部が嵌入されることにより位置決めするエンボス部付き部材において、
前記エンボス部は、その基端側に、前記板状部に連なり、前記エンボス部の先端側に向かって円筒状に垂直に延びたストレート部を有しており、
前記ストレート部の高さが前記板状部の板厚よりも大きく、
前記エンボス部の先端に開口部が形成されており、
前記板状部には、該板状部の裏面から凹に形成されかつ前記エンボス部の内部空間と連通した中空部が形成されており、
前記中空部の内面が、前記板状部の裏面から垂直に延びかつ前記ストレート部の内面と滑らかに繋がっている
ことを特徴とするエンボス部付き部材。
【請求項2】
前記開口部の内径/前記ストレート部の外径が0.3以上0.9以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のエンボス部付き部材。
【請求項3】
前記開口部の形状が円形又は多角形である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエンボス部付き部材。
【請求項4】
請求項1~の何れか1項に記載のエンボス部付き部材を備えた
ことを特徴とする筐体。
【請求項5】
請求項1~の何れか1項に記載のエンボス部付き部材を備えた
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボス部付き部材と、該エンボス部付き部材を備えた筐体及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、板金部品等に設けた貫通孔に、別部品のエンボス部を嵌入させて両部品を位置決めする位置決め構造が知られている(例えば特許文献1を参照。)。
【0003】
特許文献1に開示された位置決め構造は、図13に示すように、板金に貫通孔21が設けられた物品2と、板金の板状部6の表面から凸にプレス成形されたエンボス部7を有するエンボス部付き部材5と、を備えている。エンボス部7は、その基端側に、板状部6に連なり先端側に向かって円筒状に垂直に延びたストレート部を有し、その先端側に、半球面状の球面部を有している。この位置決め構造においては、エンボス部7が貫通孔21に嵌入されることにより物品2がエンボス部付き部材5に対して位置決めされる。
【0004】
図13に示した従来の位置決め構造においては、エンボス部7におけるストレート部の高さを高く取ることで物品2を確実に位置決めすることができる。このため、エンボス部付き部材5においては、ストレート部に高さが出るようにプレス加工が施された結果、エンボス部7の基端近傍に段差部5aが形成されている。このように、従来のエンボス部付き部材5においては、エンボス部7の基端近傍に段差部5aを有する形状とすることでストレート部の高さを確保していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、上述した従来のエンボス部付き部材5においては、コストダウンのため、従来よりも板厚が小さい板金を使用することが検討されている。
【0006】
従来のエンボス部付き部材5においては、段差部5aが形成されることでエンボス部7の基端近傍に薄肉部F(図14参照)が形成されるが、板厚が1mm以上の板金を使用していたため強度等に問題は生じ難かった。しかしながら、板厚が0.8mm以下の薄い板金を使用して上記エンボス部付き部材5を成形する場合、薄肉部Fがさらに薄くなって強度が低下し、エンボス部7が脱落し易くなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、薄い板金を使用した場合でもエンボス部のストレート部の高さを高く取ることができかつ強度を確保することができるエンボス部付き部材、該エンボス部付き部材を備えた筐体及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、板状部と、該板状部の表面から凸に形成されかつ先端側が先細り形状に形成されたエンボス部と、を有し、貫通孔が設けられた物品を、前記貫通孔に前記エンボス部が嵌入されることにより位置決めするエンボス部付き部材において、前記エンボス部は、その基端側に、前記板状部に連なり、前記エンボス部の先端側に向かって円筒状に垂直に延びたストレート部を有しており、前記ストレート部の高さが前記板状部の板厚よりも大きく、前記エンボス部の先端に開口部が形成されており、前記板状部には、該板状部の裏面から凹に形成されかつ前記エンボス部の内部空間と連通した中空部が形成されており、前記中空部の内面が、前記板状部の裏面から垂直に延びかつ前記ストレート部の内面と滑らかに繋がっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エンボス部の先端に開口部が形成されているので、エンボス部のプレス成形時、エンボス部先端側の材料が基端側に流れ易い。よって、薄い板金を使用してストレート部の高さを高く取った場合でも、エンボス部の基端近傍の厚みが薄くなり過ぎることを抑制でき、エンボス部の強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態にかかるエンボス部付き部材の要部を模式的に示す断面図である。
図2図1のエンボス部付き部材の平面図である。
図3図1のエンボス部付き部材のエンボス部が物品の貫通孔に嵌入されて、物品がエンボス部付き部材に対し位置決めされた状態を示す断面図である。
図4図1のエンボス部付き部材の成形方法を説明する説明図であり、孔開けダイに載置された板金に向かって孔開けパンチが押し出されて貫通孔が形成された様子を示す図である。
図5図1のエンボス部付き部材の成形方法を説明する説明図であり、図4の貫通孔が形成された板金が成形ダイに載置され、貫通孔の中心に向かって成形パンチが押し出されてエンボス部が形成される様子を示す図である。
図6図1のエンボス部が形成される際の材料の流れを示す説明図である。
図7】エンボス部付き部材の強度を測定するための治具と、この治具を用いた強度測定方法を説明する説明図である。
図8図1のエンボス部の開口部内径が所定の比率より小さい場合に生じ得る破断メカニズムを説明する説明図である。
図9図1のエンボス部の開口部内径が所定の比率より大きい場合の作用を説明する説明図である。
図10図1のエンボス部付き部材の変形例を示す平面図である。
図11】本発明のエンボス部付き部材が適用される画像形成装置の概略構成図である。
図12図11の画像形成装置に用いられる本発明のエンボス部付き部材の一例としてのブラケットの斜視図である。
図13】従来のエンボス部付き部材のエンボス部が物品の貫通孔に嵌入されて、物品がエンボス部付き部材に対し位置決めされた状態を示す断面図である。
図14図13のエンボス部が形成される際の材料の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態にかかるエンボス部付き部材について、図1~9を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかるエンボス部付き部材1の要部を模式的に示す断面図である。図2は、図1のエンボス部付き部材1の平面図である。図3は、図1のエンボス部付き部材1のエンボス部4が物品2の貫通孔21に嵌入されて、物品2がエンボス部付き部材1に対し位置決めされた状態を示す断面図である。
【0012】
図1~3に示すエンボス部付き部材1は、板金にプレス加工等が施されて得られるものであり、板状部3と、板状部3の表面から凸に形成されかつ先端側が先細り形状に形成されたエンボス部4と、を有している。このエンボス部付き部材1は、図3に示すように、貫通孔21が設けられた物品2を、貫通孔21にエンボス部4が嵌入されることにより位置決めする。
【0013】
続いて、エンボス部4の形状についてさらに詳細に説明する。エンボス部4は、その基端側に位置するストレート部41と、その先端側に位置する先細り部42と、その先端に形成された開口部43と、を有している。
【0014】
ストレート部41は、板状部3に連なり、エンボス部4の先端側に向かって円筒状に垂直に延びている。ストレート部41は、高さ方向の全域にわたって内径及び外径がほぼ一定に形成されている。また、ストレート部41の高さhは、板状部3の板厚tよりも大きい。本明細書において「ストレート部の高さh」とは、板状部3の表面から先細り部42の基端部まで(即ち、板状部3の表面からエンボス部4の先細り形状の開始点まで)の長さhと定義する。
【0015】
ストレート部41は、物品2の貫通孔21に嵌入されて物品2を位置決めする部位である。物品2は、その表面が板状部3に重ねられ、平面視円形に形成された貫通孔21の内面がストレート部41の外周面に沿う。
【0016】
このような構造においては、ストレート部41の高さhが板状部3の板厚tよりも大きいことで、物品2をエンボス部4から外れ難くすることができ、物品2を確実に位置決めすることが可能となる。また、本実施形態の物品2は、板金にプレス加工等が施されて得られるものであるが、これに限定されず、例えば合成樹脂で構成されるものであってもよい。
【0017】
また、図3に示す例では、物品2とエンボス部付き部材1とが直接重ねられているが、物品2とエンボス部付き部材1の板状部3との間には、他部材(例えば高さ調整用の部材等)が介在していてもよい。
【0018】
先細り部42は、ストレート部41に連なり、円筒状に延びている。先細り部42は、ストレート部41から離れるにしたがって内径及び外径が徐々に小さくなるように形成されている。先細り部42は、物品2の貫通孔21にエンボス部付き部材1のエンボス部4を嵌入させる際のガイド機能を果たす部位である。
【0019】
開口部43は、先細り部42の縁部に囲まれた部分であり、図2に示すように、平面視円形の形状である。
【0020】
また、本実施形態のエンボス部付き部材1は、炭素量が0.25%以下の低炭素鋼(例えば、SPCC、SPCD、SPCE、SPCG、SGCC、SGCE、SGCD等)で構成されている。このような材質を採用することにより、後述するプレス加工をより容易に行うことができるが、本発明ではこれに限定されず、各種金属でエンボス部付き部材1を構成することができる。
【0021】
続いて、エンボス部付き部材1の成形方法について説明する。図4は、図1のエンボス部付き部材1の成形方法を説明する説明図であり、孔開けダイ13に載置された板金11に向かって孔開けパンチ14が押し出されて貫通孔12が形成された様子を示す図である。図5は、図1のエンボス部付き部材1の成形方法を説明する説明図であり、図4の貫通孔12が形成された板金11が成形ダイ15に載置され、貫通孔12の中心に向かって成形パンチ16が押し出されてエンボス部4が形成される様子を示す図である。図6は、図1のエンボス部4が形成される際の材料の流れを示す説明図である。
【0022】
図1のエンボス部付き部材1は、図4に示す第1のプレス工程と、図5に示す第2のプレス工程と、を経て成形される。
【0023】
図4に示す第1のプレス工程では、孔開けダイ13の上に板金11を置き、孔開けパンチ14を板金11に向けて押し出して板金11に貫通孔12を形成する。この貫通孔12は、第2のプレス工程を経た後に開口部43となる孔であり、本実施形態では開口部43よりも小径の円形状である。なお、貫通孔12の径は、必要なストレート部41の高さhや強度、板金11の板厚によって適宜変更される。
【0024】
図5に示す第2のプレス工程では、第1のプレス工程で貫通孔12が形成された板金11を成形ダイ15上に置き、成形パンチ16を貫通孔12の中心に向けて押し出してエンボス部4を形成する。また、成形パンチ16は、円柱状で先端部が半球状のものを使用する。また、成形ダイ15は、完成品のストレート部41の外径とほぼ等しい径の孔15aを有している。この孔15a内に板金11及び成形パンチ16が押し込まれることにより、図1に示すエンボス部4が形成される。なお、成形パンチ16の押し出し量は、エンボス部4のサイズや板金11の板厚によって適宜調節される。また、完成品の開口部43の内径d1/貫通孔12が4.0以下であることで、第2のプレス工程時にエンボス部4の破断が生じ難い。
【0025】
なお、図14は、図13に示した従来のエンボス部7がプレス成形される際の材料の流れを示す説明図である。エンボス部7のプレス成形時、パンチを板金にプレスするとエンボス部7先端の材料は矢印の方向に流れるが、エンボス部7先端は繋がっているため、材料が突っ張って基端側に流れ難い。このため、エンボス部7の基端近傍に薄肉部Fができてしまう。
【0026】
上記第2のプレス工程で成形パンチ16を板金11にプレスすると、エンボス部4の先端側の材料は、図6中に示す矢印の方向に流れる。この際、開口部がない従来のエンボス形状(図14を参照。)においては、エンボス部先端の材料が突っ張って基端側に流れ難かったが、本実施形態では、エンボス部4の先端に開口部43が形成されているので、エンボス部4先端側の材料が基端側に流れ易い。即ち、上記第2のプレス工程では、貫通孔12が拡がりながらエンボス部4先端側の材料が基端側に流れる。このため、エンボス部付き部材1においては、従来構造のようにエンボス部の基端近傍に段差部(図13を参照。)を形成することなくストレート部41の高さhを確保できる。よって、従来よりも板厚が小さい板金11を使用し、ストレート部41の高さhを高く取った場合でも、エンボス部4の基端近傍E(図6を参照。)の厚みが薄くなり過ぎることを抑制でき、エンボス部4の強度を確保することができる。
【0027】
なお、上記エンボス部4の構造は、従来よりも板厚が小さい(0.8mm以下)板金を使用する場合に特に有効であるが、従来と同じ板厚(1mm程度)の板金を使用してエンボス部4を形成した場合においても、ストレート部41の高さhとエンボス部4の強度との両方を従来よりも多く得ることができ、有効である。また、エンボス部の基端近傍に段差部を有する従来構造(図13を参照。)は、板厚が1mm以上の板金で実現可能であったが、上記エンボス部4の構造は、板厚が大きいものから小さいものまで広範囲の板金で実現可能であり、しかも、これら広範囲の板金に対して共通の金型を使用することができる。
【0028】
さらに、本願発明者は、エンボス部4の開口部43の内径d1とストレート部41の外径d2の比率、及び、使用する板金11の板厚が異なる複数のエンボス部付き部材を用意し、それぞれのエンボス部付き部材におけるエンボス部4の強度及びガイド機能性について評価した。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示すように、開口部43の内径d1/ストレート部41の外径d2が0.3未満の場合、1.0mm、0.8mm、0.6mmの全ての板厚において、上記第2のプレス工程時にエンボス部4が破断し易くなり、十分な強度が得られなかったため評価を×とした。また、開口部43の内径d1/ストレート部41の外径d2が0.9より大きい場合、1.0mm、0.8mm、0.6mmの全ての板厚において、ガイド機能を果たす先細り部42の面積が小さくなり、物品2の貫通孔21にエンボス部4を嵌入し難くなったため評価を×とした。また、開口部43の内径d1/ストレート部41の外径d2が0.3以上0.9以下の場合、1.0mm、0.8mm、0.6mmの全ての板厚において、エンボス部4の強度及びガイド機能性の両方が良好であったため評価を○とした。
【0031】
図8は、開口部43の内径d1/ストレート部41の外径d2が0.3未満のエンボス部付き部材1Aに生じ得る破断メカニズムを説明する説明図である。図8に示すように、開口部43の内径d1が上記比率よりも小さい場合、成形パンチ16を板金にプレスすると、成形パンチ16の先端部と板金との接触面積が大きくなり、エンボス部4先端側の材料が基端側に流れ難くなる。よってこのエンボス部付き部材1Aは、エンボス部4の基端近傍が破断し易くなる。
【0032】
図9は、開口部43の内径d1/ストレート部41の外径d2が0.9より大きいエンボス部付き部材1Bの作用を説明する説明図である。図9に示すように、開口部43の内径d1が上記比率よりも大きい場合、エンボス部4先端側の先細り部42即ちガイド部分が小さくなることが図より明らかである。ガイド部分が小さくなることで、このエンボス部4が物品2の貫通孔21に嵌入し難くなり、位置決め作業性が悪くなる。
【0033】
さらに、本願発明者は、図7に示す治具を用いて、従来構造のエンボス部付き部材及び本実施形態のエンボス部付き部材の強度を測定した。図7に示す強度試験治具17は、エンボス部付き部材を挟む上板18及び下板19と、これら上板18及び下板19を固定するボルトと、を備えている。上板18には、エンボス部を位置付ける孔18aと、突出部18bと、が形成されている。このような治具17にエンボス部付き部材をセットし、該エンボス部付き部材の一端及び突出部18bを矢印方向に引張ることで、従来構造のエンボス部付き部材及び本実施形態のエンボス部付き部材の強度を測定した。結果を表2に示す。
【0034】
また、下記の表2における「従来品」とは、板厚が0.8mmの板金に図13に示す形状のエンボス部7を形成したものである。また、表2における「本発明品」とは、板厚が0.6mmの板金に、図1に示す形状のエンボス部4を形成したものである。また、当該エンボス部4における開口部43の内径d1/ストレート部41の外径d2は、0.7である。
【0035】
【表2】
【0036】
表2に示すように、従来品の場合、強度はばらつきを含め約200N以下であった。この強度は物品2との組み付けや輸送や振動等で壊れてしまう恐れがある。しかし、本発明品の場合、強度はばらつきを含め約900Nであり、高い強度を有していることが分かった。また、エンボス部4における開口部43の内径d1/ストレート部41の外径d2が0.3である本発明品においても、従来品を上回る強度を有している。
【0037】
このように、エンボス部付き部材1においては、開口部43の内径d1/ストレート部41の外径d2が0.3以上0.9以下である場合に、エンボス部4の強度及びガイド機能性をより良好にできる。
【0038】
上記実施形態の変形例について、図10を参照して説明する。図10は、図1のエンボス部付き部材の変形例を示す平面図である。図10において、上記実施形態(図1~9)と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
図10に示す実施形態の変形例のエンボス部付き部材1Cは、上記開口部43の代わりに、平面視四角形の開口部44を有している。このように、開口部の形状は円形(真円)に限らず、三角形、四角形等の多角形であってもよいし、楕円形であってもよい。また、本発明においては、開口部が多角形や楕円形のエンボス部であっても、当該エンボス部の強度及びガイド機能性は、開口部が円形の場合と同等であり、従来品(板厚が0.8mmの板金に、図13に示す形状のエンボス部7を形成したもの)を上回っている。
【0040】
上述した実施形態(図1~9)及び変形例(図10)では、ストレート部41が平面視円形(真円)の円筒状に形成されていたが、本発明ではこれに限らず、ストレート部が平面視楕円形の円筒状に形成されていてもよい。このように、ストレート部の外形が楕円形である場合や、エンボス部先端の開口部の形状が多角形や楕円形である場合は、これら形状の内径及び外径を円相当径に変換した上で、上述した「開口部の内径d1/ストレート部の外径d2」の比率を当てはめることができる。
【0041】
次に、上述したエンボス部付き部材1が適用される画像形成装置の一実施形態について図11を参照して説明する。図11に示す画像形成装置100は、光走査装置111と、感光体及び中間転写ベルト114を含んで構成される画像形成部113と、転写部115と、定着部116と、各種サイズの用紙Sが積載された給紙カセット117と、排紙トレイ118と、を備えている。
【0042】
このような画像形成装置100においては、光走査装置111によって感光体を露光して静電潜像を形成し、画像形成部113においてトナー画像を形成し、転写部115において給紙カセット117から搬送されてきた用紙Sにトナー画像を転写し、定着部116において用紙Sに転写されたトナー画像を定着する。定着後の用紙Sは、装置外部の排紙トレイ118に排出される。
【0043】
上述した図1のエンボス部付き部材1は、例えば、図12に示すブラケット1を構成する。このブラケット1は、図11の画像形成装置100の光走査装置111の筐体の一部品として用いられ、前記筐体の他部品(板金部材であり、図3の物品2に相当する。)と重ねられて該他部品を位置決めする。このような画像形成装置100は、従来よりも板厚が小さい(0.8mm以下)板金を使用してブラケット1を成形することができるので、低コスト化、軽量化を図ることができる。
【0044】
上述した実施形態では、エンボス部付き部材1が画像形成装置100の筐体に適用される例を説明したが、本発明のエンボス部付き部材は、画像形成装置100の筐体以外の部位に適用することが可能であり、画像形成装置以外の各種装置にも適用することが可能である。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 エンボス部付き部材
2 物品
3 板状部
4 エンボス部
21 貫通孔
41 ストレート部
43 開口部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【文献】特開2000-042641号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14