(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及びその製造方法、液体吐出装置、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20220531BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/14 305
B41J2/16 503
(21)【出願番号】P 2018047519
(22)【出願日】2018-03-15
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 達哉
(72)【発明者】
【氏名】羽橋 尚史
(72)【発明者】
【氏名】知場 亮太
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-221541(JP,A)
【文献】特開2002-254660(JP,A)
【文献】特開2004-035857(JP,A)
【文献】米国特許第06358354(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力発生室が列設された流路形成部品と、前記圧力発生室に圧力を付与する圧力発生手段と、を有する液体吐出ヘッドであって、
前記圧力発生手段は、振動手段を前記流路形成部品に対して樹脂層で接合することで形成され、
前記樹脂層が、(A)エポキシ樹脂、(B)ポリチオール化合物、(C)下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2-1)で表されるチタン化合物及び下記一般式(2-2)で表されるチタン化合物から選択される少なくとも1種の接着付与化合物、並びに(D)硬化促進剤を含有する硬化性樹脂組成物
の硬化物を含むことを特徴とする液体吐出ヘッド。
[一般式(1)]
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、X
1、X
2、X
3、及びX
4は、それぞれ独立して、単結合、O、S、C(CH
3)
2、CO、CO
2、又はSO
2を表す。Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、H、Cl、又はOHを表す。aは、1~10,000の整数を表す。
[一般式(2-1)]
【化2】
[一般式(2-2)]
【化3】
ただし、前記一般式(2-1)及び(2-2)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ独立して、炭素原子数1~10の非置換、若しくは水酸基で置換されたアルキル基、又は下記一般式(2-3)で表される基である。b及びcは、それぞれ独立して、1~3の整数であり、b+c=4である。
[一般式(2-3)]
【化4】
ただし、前記一般式(2-3)中、R
5は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【請求項2】
前記(A)エポキシ樹脂が、多核多価フェノール化合物のアルキレンオキサイド変性型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンジメタノールのジグリシジルエーテル、及びグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記(B)ポリチオール化合物が、分子内にメルカプト基を2つ有するチオール化合物、及び分子内にメルカプト基を3つ以上有するチオール化合物の少なくともいずれかである請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記(C)成分である接着付与化合物が、前記一般式(1)で表される化合物、並びに前記一般式(2-1)で表されるチタン化合物、及び前記一般式(2-2)で表されるチタン化合物の少なくともいずれかである請求項1から3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記一般式(1)で表される化合物が、ポリエーテルスルホンである請求項1から4のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記(A)エポキシ樹脂として(E)多核多価フェノール化合物のアルキレンオキサイド変性型エポキシ樹脂、(F)ジシクロペンタジエンジメタノールのジグリシジルエーテル、及び(G)グリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を含み、該エポキシ樹脂の含有量が、前記(A)エポキシ樹脂の総量100質量部に対して10質量部以上である請求項1から5のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記樹脂層が、前記硬化性
樹脂組成物を硬化した硬化物を含む請求項1から6のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
圧力発生室が列設された流路形成部品と、前記圧力発生室に圧力を付与する圧力発生手段と、を有する液体吐出ヘッドを製造する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
振動手段を前記流路形成部品に対して樹脂層で接合することにより前記圧力発生手段を形成する工程を少なくとも含み、
前記樹脂層が、(A)エポキシ樹脂、(B)ポリチオール化合物、(C)下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2-1)で表されるチタン化合物及び下記一般式(2-2)で表されるチタン化合物から選択される少なくとも1種の接着付与化合物、並びに(D)硬化促進剤を含有する硬化性樹脂組成物を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
[一般式(1)]
【化5】
ただし、前記一般式(1)中、X
1、X
2、X
3、及びX
4は、それぞれ独立して、単結合、O、S、C(CH
3)
2、CO、CO
2、又はSO
2を表す。Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、H、Cl、又はOHを表す。aは、1~10,000の整数を表す。
[一般式(2-1)]
【化6】
[一般式(2-2)]
【化7】
ただし、前記一般式(2-1)及び(2-2)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ独立して、炭素原子数1~10の非置換、若しくは水酸基で置換されたアルキル基、又は下記一般式(2-3)で表される基である。b及びcは、それぞれ独立して、1~3の整数であり、b+c=4である。
[一般式(2-3)]
【化8】
ただし、前記一般式(2-3)中、R
5は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
インクジェット用インクを収容する収容手段と、
前記インクジェット用インクに刺激を印加し、該インクを飛翔させて画像を記録用メディア上に記録する液体吐出ヘッドと、を有する画像形成装置であって、
前記液体吐出ヘッドが、請求項1から7のいずれかに記載の液体吐出ヘッドであることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド及びその製造方法、液体吐出装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドは、液滴を吐出するノズルと、前記ノズルが連通する液室と、前記液室内の液体を加圧する圧力発生手段とを備えている。前記液室等の流路を形成するための流路基板と、ノズルを有するノズル板とを接着剤で接合して前記液体吐出ヘッドが形成されている。
【0003】
例えば、流路ユニットに固定されるケースヘッドに、一方の面が第1接着剤と第2接着剤とで接着される固定部材、及び該固定部材の前記一方の面とは交差する他方の面に固定されるとともに、流路ユニットの圧力発生室に対向する領域に接合される圧電素子を有する圧電素子ユニットとを備え、第2接着剤は、第1接着剤よりも硬化時間が短く、第1接着剤は、第2接着剤よりも接着強度が高く、固定部材の一方面のうち圧電素子による反力が掛かる領域に設けられている液体噴射ヘッドが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、振動板のフィルム上の接着剤と対向して接合される面に、圧電素子の配列方向に並行になっている2条のスリットを配置する液体噴射ヘッドが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた液体吐出特性と高い耐久性を両立できる液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明の液体吐出ヘッドは、圧力発生室が列設された流路形成部品と、前記圧力発生室に圧力を付与する圧力発生手段と、を有する液体吐出ヘッドであって、
前記圧力発生手段は、振動手段を前記流路形成部品に対して樹脂層で接合することで形成され、
前記樹脂層が、(A)エポキシ樹脂、(B)ポリチオール化合物、(C)下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2-1)で表されるチタン化合物及び下記一般式(2-2)で表されるチタン化合物から選択される少なくとも1種の接着付与化合物、並びに(D)硬化促進剤を含有する硬化性樹脂組成物を含む。
【0007】
[一般式(1)]
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、X
1、X
2、X
3、及びX
4は、それぞれ独立して、単結合、O、S、C(CH
3)
2、CO、CO
2、又はSO
2を表す。Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、H、Cl、又はOHを表す。aは、1~10,000の整数を表す。
【0008】
【0009】
[一般式(2-2)]
【化3】
ただし、前記一般式(2-1)及び(2-2)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ独立して、炭素原子数1~10の非置換、若しくは水酸基で置換されたアルキル基、又は下記一般式(2-3)で表される基である。b及びcは、それぞれ独立して、1~3の整数であり、b+c=4である。
【0010】
[一般式(2-3)]
【化4】
ただし、前記一般式(2-3)中、R
5は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、優れた液体吐出特性と高い耐久性を両立できる液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の液体吐出装置の記録ヘッドを構成する液体吐出ヘッドの一例を示す液室長手方向に沿う断面説明図である。
【
図2】
図2は、本発明の液体吐出装置の一例を示す液室短手方向に沿う断面説明図である。
【
図3】
図3は、本発明の液体吐出装置の一例を示す液室平面方向に沿う断面説明図である。
【
図4】
図4は、本発明の液体吐出装置の機構部の全体構成の一例を示す側面概略構成図である
【
図5】
図5は、本発明の液体吐出装置の機構部の一例を示す要部平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドの製造方法)
本発明の液体吐出ヘッドは、圧力発生室が列設された流路形成部品と、前記圧力発生室に圧力を付与する圧力発生手段と、を有する液体吐出ヘッドであって、
前記圧力発生手段は、振動手段を前記流路形成部品に対して樹脂層で接合することで形成され、
前記樹脂層が、(A)エポキシ樹脂、(B)ポリチオール化合物、(C)下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2-1)で表されるチタン化合物、及び下記一般式(2-2)で表されるチタン化合物から選択される少なくとも1種の接着付与化合物、並びに(D)硬化促進剤を含有する硬化性樹脂組成物を含み、更に必要に応じてその他の部材を有する。
【0014】
[一般式(1)]
【化5】
ただし、前記一般式(1)中、X
1、X
2、X
3、及びX
4は、それぞれ独立して、単結合、O、S、C(CH
3)
2、CO、CO
2、又はSO
2を表す。Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、H、Cl、又はOHを表す。aは、1~10,000の整数を表す。
【0015】
【0016】
[一般式(2-2)]
【化7】
ただし、前記一般式(2-1)及び(2-2)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ独立して、炭素原子数1~10の非置換、若しくは水酸基で置換されたアルキル基、又は下記一般式(2-3)で表される基である。b及びcは、それぞれ独立して、1~3の整数であり、b+c=4である。
【0017】
[一般式(2-3)]
【化8】
ただし、前記一般式(2-3)中、R
5は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0018】
本発明の液体吐出ヘッドの製造方法は、圧力発生室が列設された流路形成部品と、前記圧力発生室に圧力を付与する圧力発生手段と、を有する液体吐出ヘッドを製造する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
振動手段を前記流路形成部品に対して樹脂層で接合することにより前記圧力発生手段を形成する工程を少なくとも含み、
前記樹脂層が、(A)エポキシ樹脂、(B)ポリチオール化合物、(C)上記一般式(1)で表される化合物、上記一般式(2-1)で表されるチタン化合物及び上記一般式(2-2)で表されるチタン化合物から選択される少なくとも1種の接着付与化合物、並びに(D)硬化促進剤を含有する硬化性樹脂組成物を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
なお、「液体吐出」は、液滴を吐出する。
【0019】
本発明の液体吐出ヘッドは、特許文献1に記載の技術では、圧電素子の保持構造体とケースヘッドの接合接着剤であるため、接合後に振動板-圧電素子間へかかる応力を緩和することができず、剥離などの破損を防止できないという知見に基づくものである。
本発明の液体吐出ヘッドは、特許文献2に記載の技術では、シート状接着剤であり、かつ1種類の接着剤しか使用していないため、振動板-圧電素子間の剥離や破損を防止できないという知見に基づくものである。
【0020】
振動手段と振動板(流路形成部品の振動素子と接合する部分)を接着剤によって接着接合する際に、(1)振動手段と振動板の接合部が、部品の線膨張係数が異なることに起因する、熱膨張や冷却収縮時に発生する両部品の伸縮量の差を原因として発生する変形やせん断応力によって、破損及び剥離のおそれがある。(2)同様に、後工程での加熱、液体吐出ヘッドへの液体の充填行為、液体が充填された状態での使用などにより、当該接合部の破損及び剥離のおそれがあるという問題が発生する。この問題は、液体吐出ヘッドの寸法が大きくなり、ノズル数が多くなるほど発生しやすくなる。その結果、液体吐出ヘッドとして、(3)液体吐出特性が悪化する(液滴が吐出しなくなる、液体吐出速度のばらつきの増大など)、(4)組立工程の歩留まりが下がるという問題がある。
【0021】
したがって、本発明の液体吐出ヘッドによると、後工程や液体吐出ヘッドの使用環境で高温環境、低温環境、高湿度環境等に放置された際、また、液体吐出ヘッド内に液体が充填された際に発生する部品同士の線膨張係数の差などに起因する圧電素子-圧力発生室の接合部へかかる応力を、柔軟かつ各部品への良好な接着接合を実現できる硬化性樹脂組成物からなる樹脂層によって緩和することが可能となり、接合部の破損、及び剥離を防ぐことができる。その結果、優れた液体吐出特性と高い耐久性を両立できる液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0022】
<樹脂層>
前記樹脂層は、硬化性樹脂組成物を含む。前記硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)ポリチオール化合物、(C)上記一般式(1)で表される化合物、上記一般式(2-1)で表されるチタン化合物、及び上記一般式(2-2)で表されるチタン化合物から選択される少なくとも1種の接着付与化合物、並びに(D)硬化促進剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0023】
-(A)エポキシ樹脂-
前記(A)成分のエポキシ樹脂としては、分子内にエポキシ基を少なくとも2つ有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物、多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物、多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;前記単核多価フェノール化合物、多核多価フェノール化合物、又は多価アルコール類に、ポリアルキレンオキサイドを付加させたポリオールのポリグリシジルエーテル化合物;脂肪族、芳香族又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類及びグリシジルメタクリレートの単独重合体又は共重合体;グリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物、環状オレフィン化合物のエポキシ化合物、複素環化合物、又はこれらのエポキシ樹脂の末端イソシアネートのプレポリマーによって内部架橋されたもの、あるいは多価の活性水素化合物(例えば、多価フェノール、ポリアミン、カルボニル基含有化合物、ポリリン酸エステル等)でポリマー化したものでもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノールなどが挙げられる。
【0025】
前記多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物としては、例えば、ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノールなどが挙げられる。
【0026】
前記多価アルコール類のポリグリシジルエーテルとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、ジシクロペンタジエンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA-エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0027】
前記脂肪族、芳香族又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類及びグリシジルメタクリレートの単独重合体又は共重合体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類及びグリシジルメタクリレートの単独重合体又は共重合体などが挙げられる。
【0028】
前記グリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物としては、例えば、N,N-ジグリシジルアニリン、ビス(4-(N-メチル-N-グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)-2-メチルアニリン、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリン、N,N,N’,N’-テトラ(2,3-エポキシプロピル)-4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0029】
前記環状オレフィン化合物のエポキシ化合物としては、例えば、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペートなどが挙げられる。
エポキシ化共役ジエン重合体としては、例えば、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン-ブタジエン共重合物などが挙げられる。
【0030】
前記複素環化合物としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0031】
これらの中でも、硬化性樹脂組成物の作業性、接着性、靱性、ガラス転移点、及び耐溶剤性等の硬化物の性能を向上させる点から、多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、多核多価フェノール化合物のアルキレンオキサイド変性型エポキシ樹脂、グリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物が好ましく、多核多価フェノール化合物のアルキレンオキサイド変性型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンジメタノールのジグリシジルエーテル、グリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物がより好ましく、ビスフェノールAのポリプロピレンオキサイド変性型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンジメタノールのジグリシジルエーテル、ジグリシジルオルトトルイジン、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)-2-メチルアニリン、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリンが特に好ましい。
【0032】
前記(A)エポキシ樹脂としては、(E)多核多価フェノール化合物のアルキレンオキサイド変性型エポキシ樹脂、(F)ジシクロペンタジエンジメタノールのジグリシジルエーテル、及び(G)グリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を含み、該エポキシ樹脂の含有量が、前記(A)エポキシ樹脂の総量100質量部に対して10質量部以上、特に20質量部以上50質量部以下であることが、優れた液体吐出特性と高い耐久性を両立できる点から好ましい。
【0033】
前記(A)成分のエポキシ樹脂としては、無溶剤であってもよいが、適度な粘度になるように希釈溶剤で希釈して用いることも可能である。前記希釈溶剤としては、エポキシ基と反応性がある反応性希釈剤が用いられる。
【0034】
-反応性希釈剤-
反応性希釈剤としては、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させた時のブリード抑制の観点から、エポキシ基を少なくとも1つ有する希釈剤を使用することが好ましい。
反応性希釈剤に含まれるエポキシ基の数は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1つであってもよく、2つ以上のいずれでもよい。
【0035】
エポキシ基の数が1つの反応性希釈剤としては、例えば、n-ブチルグリシジルエーテル、C12~C14のアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、3級カルボン酸グリシジルエステルなどが挙げられる。
【0036】
エポキシ基の数が2つの反応性希釈剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0037】
エポキシ基の数が3つの反応性希釈剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0038】
これらの中でも、エポキシ基を2つ有するものが好ましく、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルがより好ましい。
【0039】
反応性希釈剤の含有量は、硬化物の物性低下抑制と硬化性樹脂組成物の作業性とのバランスの観点から、(A)エポキシ樹脂の総量に対して、1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0040】
-(B)ポリチオール化合物-
(B)成分のポリチオール化合物としては、分子内にメルカプト基を少なくとも2つ有する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、エチレングリコールジチオグリコレート、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトチオプロピオネート)、ジペンタエリスリトールポリ(3-メルカプトプロピオネート)等のポリオールとメルカプト有機酸のエステル化反応によって得られるチオール化合物;1,4-ブタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,10-デカンジチオール等のアルキルポリチオール化合物;末端チオール基含有ポリエーテル、末端チオール基含有ポリチオエーテル、エポキシ化合物と硫化水素との反応によって得られるチオール化合物、ポリチオール化合物とエポキシ化合物との反応によって得られる末端チオール基を有するチオール化合物、特許第3974404号公報に記載の分子内にエステル骨格を有しないチオール化合物、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、入手の容易性と硬化物の強靭性の点から、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトチオプロピオネート)、ジペンタエリスリトールポリ(3-メルカプトプロピオネート)が好ましく、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)がより好ましい。
【0041】
本発明においては、硬化物の架橋密度が上がりすぎないようにする点から、分子内にメルカプト基を2つ有するチオール化合物と、分子内にメルカプト基を3つ以上有するチオール化合物とを併用することが好ましい。その際の含有量としては、分子内にメルカプト基を2つ有するチオール化合物が、(B)成分のポリチオール化合物の総量に対して、5質量%以上95質量%以下が好ましく、20質量%以上80質量%以下がより好ましく、30質量%以上70質量%以下が更に好ましい。
【0042】
(B)成分のポリチオール化合物の含有量としては、(A)エポキシ樹脂(上記反応性希釈剤を使用する場合は、(A)エポキシ樹脂と反応性希釈剤の総量)100質量部に対して、30質量部以上200質量部以下が好ましく、50質量部以上150質量部以下がより好ましい。前記含有量が、30質量部以上200質量部の範囲において、硬化性樹脂組成物の硬化性が良好となる。
【0043】
-(C)接着付与化合物-
前記(C)成分の接着付与化合物は、部材に対する接着性を高めるためのものである。一般的な硬化性樹脂硬化物はある程度の接着性を有しているものであるが、(C)成分の接着付与化合物を併用することにより、大幅に部材に対する接着性を向上させることができる。
(C)成分の接着付与化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2-1)で表されるチタン化合物、下記一般式(2-2)で表されるチタン化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
[一般式(1)]
【化9】
ただし、前記一般式(1)中、X
1、X
2、X
3、及びX
4は、それぞれ独立して、単結合、O、S、C(CH
3)
2、CO、CO
2、又はSO
2を表す。Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、H、Cl、又はOHを表す。aは、1~10,000の整数を表す。
【0045】
【0046】
[一般式(2-2)]
【化11】
ただし、前記一般式(2-1)及び(2-2)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ独立して、炭素原子数1~10の非置換、若しくは水酸基で置換されたアルキル基、又は下記一般式(2-3)で表される基である。b及びcは、それぞれ独立して、1~3の整数であり、b+c=4である。
【0047】
[一般式(2-3)]
【化12】
ただし、前記一般式(2-3)中、R
5は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0048】
前記一般式(1)におけるX1、X2、X3、及びX4としては、例えば、X1、X2、X3、及びX4がともに酸素原子の場合はポリフェニレンエーテルとなり、X1、X3がともに酸素原子であり、X2、X4がともにCO2の場合はポリカーボネートとなる。
前記一般式(1)中の、Y1、Y2はH、Cl、又はOHであるが、これらの基は、前記一般式(1)で表される化合物の製造方法に由来する。
【0049】
前記一般式(1)で表される化合物としては、いわゆる耐熱性の高いプラスチックであり、エンジニアリングプラスチックと呼称されるポリマーの一部であり、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、異種材料間における接着性が向上するという観点から、ポリエーテルスルホン(前記一般式(1)中X1、X3が酸素であり、X2、X4がSO2である)、ポリスルホン(前記一般式(1)中X1がSO2、X2、X4が酸素、X3がC(CH3)2である)、ポリフェニレンスルホン(前記一般式(1)中X1がSO2、X2、X4が酸素、X3が単結合)、ポリフェニレンサルファイド(前記一般式(1)中X1、X2、X3、X4が全て硫黄)が好ましく、ポリエーテルスルホンが特に好ましい。
【0050】
前記(C)成分の接着付与化合物における前記一般式(2-1)及び前記一般式(2-2)中の、R1、R2、R3、及びR4で表される炭素原子数が1~10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、アミル、イソアミル、t-アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、t-オクチル、ノニル、イソノニル、デシルなどが挙げられる。これらのアルキル基は、水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい。
【0051】
前記一般式(2-3)中の、R5で表される炭素原子数が1~6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、アミル、イソアミル、t-アミル、ヘキシルなどが挙げられる。
本発明においては、基材に対する接着性がより向上するという観点から、R1、R2、R3、及びR4の少なくとも1つが、前記一般式(2-3)で表される基であることが好ましい。その際のR5はメチル、エチル、又はプロピルであることが、入手が容易である点で好ましい。
【0052】
前記ポリエーテルスルホンとしては、適宜製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
ポリエーテルスルホンの製造方法としては、例えば、ジクロロジフェニルスルホンとビスフェノールSを、ジフェニルエーテルやジフェニルスルホン等の高沸点溶剤に溶解させた後、炭酸カリウムのようなアルカリ金属塩を用いて、140℃~340℃で、1時間~20時間反応させて得ることができる。この際、ジクロロジフェニルスルホンをビスフェノールSよりも過剰に使用した場合は、得られた化合物の末端(即ち、前記一般式(1)におけるY1、Y2)が塩素となり、ビスフェノールSがジクロロジフェニルスルホンよりも過剰に使用された場合は、得られた化合物の末端は水酸基となる。
【0053】
ポリエーテルスルホンの市販品としては、例えば、スミカエクセルPESシリーズ(住友化学株式会社製)、PESシリーズ(三井化学株式会社製)、ウルトラゾーンEシリーズ(BASFジャパン株式会社製)、レーデルAシリーズ(ソルベイアドバンスとポリマーズ株式会社製)などが挙げられる。
【0054】
本発明において使用することができるチタン化合物としては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンブトキシドダイマー、チタンテトラ-2-エチルヘキソキシド、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンジ-2-エチルヘキソキシビス(2-エチル-3-ヒドロキシヘキソキシド)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、基材に対する接着性がより向上するという点から、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0055】
本発明においては、前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(2-1)で表されるチタン化合物、若しくは前記一般式(2-2)で表されるチタン化合物を併用した方が、硬化物の接着性が特に優れるという点で好ましい。その際の前記一般式(1)で表される化合物の含有量としては、(C)接着付与化合物の総量に対して、25質量%以上80質量%以下が好ましく、40質量%以上70質量%以下がより好ましい。
【0056】
前記(C)成分の接着付与化合物の含有量としては、硬化物の接着性と靱性のバランスの観点から、(A)エポキシ樹脂(上記反応性希釈剤を使用する場合は、(A)エポキシ樹脂と反応性希釈剤の総量)100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下が好ましく、3質量部以上15質量部以下がより好ましく、5質量部以上10質量部以下が更に好ましい。
【0057】
-(D)硬化促進剤-
前記(D)成分の硬化促進剤としては、アミン系の硬化促進剤が好ましい。
前記アミン系の硬化促進剤としては、例えば、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール等のイミダゾール類;ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、反応速度のコントロールが容易である点から、イミダゾール類が好ましい。
【0058】
(D)成分の硬化促進剤の含有量としては、(A)エポキシ樹脂(上記反応性希釈剤を使用する場合は、(A)エポキシ樹脂と反応性希釈剤の総量)100質量部に対して1質量部以上20質量部以下が好ましく、5質量部以上15質量部以下がより好ましい。前記含有量が、1質量部以上であると、硬化性樹脂組成物の硬化速度が適正であり、20質量部以下であると、硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性を向上させることができる。
【0059】
<その他の成分>
本発明の硬化性樹脂組成物には、更に必要に応じて、その他の成分として、有機溶剤、無機充填剤、粉末状ゴム、添加剤などを添加してもよい。
【0060】
-有機溶剤-
有機溶剤は、粘度調整剤であり、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記有機溶剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物の総質量に対して、1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0061】
-無機充填剤-
前記無機充填剤としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、炭酸カルシウム、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、アルミナ、窒化アルミ、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記無機充填剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の全固形分(有機溶剤等の揮発成分を除いた全成分の合計質量)に対して、5質量%以上90質量%以下が好ましく、10質量%以上50質量%以下がより好ましい。無機充填剤の含有量が5質量%以上であると、硬化物の熱膨張係数の低減効果が得られ、90質量%以下であると、硬化性樹脂組成物の粘度が適正であり、作業性が良好である。
【0062】
-粉末状ゴム-
粉末状ゴムとしては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボン酸変性NBR、水素添加NBR、コアシェル型ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリルゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、コアシェル型ゴムが好ましい。
前記コアシェル型ゴムとは、粒子がコア層とシェル層を有するゴムのことであり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマー、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、又は外層のシェル層がガラス状ポリマー、中間層がゴム状ポリマー、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。
前記ガラス状ポリマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルの重合物、アクリル酸メチルの重合物、スチレンの重合物などが挙げられる。
ゴム状ポリマーとしては、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)、シリコーンゴム、ポリブタジエンなどが挙げられる。
粉末状ゴムの含有量としては、硬化性樹脂組成物の全固形分(有機溶剤等の揮発成分を除いた全成分の合計質量)に対して、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0063】
-添加剤-
添加剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルアルコール、コールタール等の非反応性希釈剤(可塑剤);ガラス繊維、パルプ繊維、合成繊維、セラミック繊維等の繊維質充填材;ガラスクロス・アラミドクロス、カーボンファイバー等の補強材;顔料;γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-N’-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;キャンデリラワックス、カルナウバワックス、木ろう、イボタロウ、みつろう、ラノリン、鯨ろう、モンタンワックス、石油ワックス、脂肪族ワックス、脂肪族エステル、脂肪族エーテル、芳香族エステル、芳香族エーテル等の潤滑剤;増粘剤;チキソトロピック剤;酸化防止剤;光安定剤;紫外線吸収剤;難燃剤;消泡剤;防錆剤;カーボンブラック、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等の常用の添加物などが挙げられる。なお、本発明においては、更に、キシレン樹脂、石油樹脂等の粘着性の樹脂類を併用することもできる。
【0064】
前記添加剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の全固形分(有機溶剤等の揮発成分を除いた全成分の合計質量)に対して、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0065】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記(A)~(D)成分、及び必要に応じて添加するその他の成分を、必要により加熱処理しながら、撹拌、溶融、混合、分散させることにより製造することができる。撹拌、溶融、混合、分散に使用する装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、撹拌器、加熱装置を備えたライカイ機、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル、遊星攪拌機、又はこれらを組み合わせた装置などが挙げられる。
【0066】
-用途-
本発明の硬化性樹脂組成物は、特に制限はなく、様々な用途に使用することができ、例えば、接着剤、注型剤、封止材料、シーリング剤、繊維強化用樹脂、コーティング剤、塗料などに使用でき、接着性が良好であるという点から、同種若しくは異種材料の接着剤として好適に使用することができる。
【0067】
<流路形成部品>
流路形成部品は、圧力発生室が列設された部品である。
圧力発生室は、液滴を吐出するノズルと、前記ノズルが連通する液室である。
ノズル板は、ノズル基板と、前記ノズル基板上に撥水膜とを有する。
ノズル基板は、その形状、大きさ、材質、構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ノズル基板の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼、Al、Bi、Cr、InSn、ITO、Nb、Nb2O5、NiCr、Si、SiO2、Sn、Ta2O5、Ti、W、ZAO(ZnO+Al2O3)、Znなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、防錆性の点から、ステンレス鋼が好ましい。
前記吐出孔としては、その数、配列、間隔、開口形状、開口の大きさ、開口の断面形状などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0068】
<圧力発生手段>
前記圧力発生手段は、圧力発生室に圧力を付与する手段であり、振動手段を前記流路形成部品に対して樹脂層で接合することにより形成される。
【0069】
振動手段としては、圧電素子が好適に用いられる。圧電素子としては、例えば、圧電材料の上面及び下面に電圧を印加するための電極を設けた構造とすることができる。この場合、駆動手段から圧電素子の上下電極間に電圧を印加することによって膜の面横方向に圧縮応力が加わり、膜状部材を膜の面上下方向に振動させることができる。
圧電材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ビスマス鉄酸化物、ニオブ酸金属物、チタン酸バリウム、又はこれらの材料に金属や異なる酸化物を加えたものなどが挙げられる。これらの中でも、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)が好ましい。
【0070】
前記樹脂層の平均厚みは0.1μm以上2.5μm以下が好ましい。前記樹脂層の平均厚みが2.5μm以下であることにより、接着信頼性が確保できる。前記樹脂層の平均厚みを0.1μm以上とすることで高い初期強度を得られ、接着信頼性と初期接着性の両方を確保することが可能になる。
【0071】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、例えば、刺激発生部材などが挙げられる。
前記刺激発生部材は、液体(インク)に印加する刺激を発生する部材である。
前記刺激発生部材における刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱(温度)、圧力、振動、光などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好適に挙げられる。
前記刺激発生部材としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライトなどが挙げられる。前記刺激発生部材としては、具体的には、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどが挙げられる。
【0072】
前記刺激が「熱」の場合、前記液体吐出ヘッド内の液体(インク)に対し、記録信号に対応した熱エネルギーを、例えば、サーマルヘッド等を用いて付与する。前記熱エネルギーにより前記インクに気泡を発生させ、前記気泡の圧力により、前記ノズル板の前記ノズル孔から前記インクを液滴として吐出させる方法などが挙げられる。
前記刺激が「圧力」の場合、例えば、前記液体吐出ヘッド内のインク流路内にある前記圧力室と呼ばれる位置に接着された前記圧電素子に電圧を印加することにより、前記圧電素子が撓む。それにより、前記圧力室の容積が収縮して、前記液体吐出ヘッドの前記ノズル孔1から前記液体(インク)を液滴として吐出させる方法などが挙げられる。
これらの中でも、ピエゾ素子に電圧を印加して液体(インク)を飛翔させるピエゾ方式が好ましい。
【0073】
ここで、記録ヘッド34を構成している液体吐出ヘッドの一例について
図1、
図2、及び
図3を参照して説明する。
図1は液体吐出ヘッドの要素拡大図、
図2は同ヘッドのチャンネル間方向の要部拡大断面図、
図3は圧力発生室部の上面図である。
なお、以下の説明では、本説明は積層圧電素子方式ヘッドを用いて説明するが、他の方式(サーマル方式、静電方式)の液体吐出ヘッドに関しても同様に適用することができる。
【0074】
この液体吐出ヘッドは、インク供給口1-1と共通液室1-2となる彫り込みを形成したフレーム1と、流体抵抗部2-1、圧力発生室2-2となる彫り込みとノズル3-1に連通する連通口2-3を形成した流路板2と、ノズル3-1を形成するノズル板と、凸部6-1、ダイアフラム部6-2及びインク流入口6-3を有する振動板6と、振動板に樹脂層7を介して接合された積層圧電素子5と、積層圧電素子5を固定しているベース4を備えている。
ベース4はチタン酸バリウム系セラミックからなり、積層圧電素子5を2列配置して接合している。
【0075】
積層圧電素子5は、厚さ10μm~50μm/1層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電層5-1と、厚さ数μm/1層の銀・パラジューム(AgPd)からなる内部電極層5-2とを交互に積層している。
内部電極層5-2は両端で外部電極5-3に接続する。
積層圧電素子5はハーフカットのダイシング加工により櫛歯上に分割され、1つ毎に駆動部5-6と支持部5-7(非駆動部)として使用する。
外部電極5-3の外側はハーフカットのダイシング加工で分割されるように、切り欠き等の加工により長さを制限しており、これらは複数の個別電極5-4となる。他方はダイシングでは分割されずに導通しており共通電極5-5となる。
駆動部の個別電極5-4にはFPC8が半田接合されている。また、共通電極5-5は積層圧電素子の端部に電極層を設けて回し込んでFPC8のGnd電極に接合している。FPC8には図示しないドライバICが実装されており、これにより駆動部5-6への駆動電圧印加を制御している。
振動板6は、薄膜のダイアフラム部6-2と、このダイアフラム部6-2の中央部に形成した駆動部5-6となる積層圧電素子5と接合する島状凸部(アイランド部)6-1と、支持部18に接合する梁を含む厚膜部と、インク流入口6-3となる開口を電鋳工法によるNiメッキ膜を2層以上重ねて形成している。
【0076】
ダイアフラム部の厚さは3μm、幅は35μm(片側)である。また、共通液室1-2に面する個所には振動板が1層からなる薄膜部6-4を設け、共通液室の圧力を吸収する機能を設けている。
この振動板6の島状凸部6-1と積層圧電素子5の駆動部5-6、振動板6とフレーム1の結合は、ギャップ材を含んだ樹脂層7をパターニングして接着接合している。
【0077】
樹脂層7には様々な機能が求められるが、代表的な機能としては下記2点がある。
(1)積層圧電素子5で発生する振動を振動板6の島状凸部6-1へと伝達すること
(2)破損、剥離等せずに(1)の機能を維持し続けること
【0078】
(1)の機能を発現するためには樹脂層7は硬いこと、薄いこと、もしくはその両方を兼ね備えることが望ましく、(2)の機能を発現するためには樹脂層7は積層圧電素子5と振動板6との両界面での接合強度が高いこと、柔らかいこと、もしくはその両方を兼ね備えることが望ましい。
【0079】
(2)の機能に着目した時、樹脂層7と積層圧電素子5もしくは振動板6との界面に何らかの変形(垂直、せん断、又はその複合)が発生した際に、変形に対応した応力が発生して、剥離が発生してしまう。上記応力は樹脂層7が硬いほど大きく、上記剥離現象が発生しやすい。つまり、樹脂層7は硬ければ硬いほど液体吐出ヘッドの吐出効率(入力電圧に対する吐出速度や吐出量)が向上するが、使用環境(温度、湿度など)に対する耐久性が低くなる。
【0080】
流路板2はシリコン単結晶基板を用いて、流体抵抗部2-1、圧力発生室2-2となる彫り込み、及びノズル3-1に対する位置に連通口2-3となる貫通口をエッチング工法でパターニングした。
【0081】
エッチングで残された部分が圧力発生室2-2の隔壁2-4となる。また、このヘッドではエッチング幅を狭くする部分を設けて、これを流体抵抗部2-1とした。
ノズル板3は金属材料、例えば、電鋳工法によるNiメッキ膜等で形成したもので、インク滴を飛翔させるための微細な吐出口であるノズル3-1を多数形成している。このノズル3-1の内部形状(内側形状)は、ホーン形状(略円柱形状又は略円錘台形状でもよい。)に形成している。また、このノズル3-1の径はインク滴出口側の直径で20μm以上35μm以下である。また、各列のノズルピッチは150dpiとした。
【0082】
このノズル板3のインク吐出面(ノズル表面側)は、図示しない撥水性の表面処理を施した撥水処理層3-2を設けている。PTFE-Ni共析メッキやフッ素樹脂の電着塗装、蒸発性のあるフッ素樹脂(例えばフッ化ピッチなど)を蒸着コートしたもの、シリコーン系樹脂・フッ素系樹脂の溶剤塗布後の焼き付け等、インク物性に応じて選定した撥水処理膜を設けて、インクの滴形状、飛翔特性を安定化し、高品位の画像品質を得られるようにしている。
【0083】
インク供給口1-1と共通液室1-2となる彫り込みを形成するフレーム1は樹脂成形で作製している。このように構成したインクジェットヘッドにおいては、記録信号に応じて駆動部5-6に駆動波形(10V~50Vのパルス電圧)を印加することによって、駆動部5-6に積層方向の変位が生起し、振動板3を介して圧力発生室2-2が加圧されて圧力が上昇し、ノズル3-1からインク滴が吐出される。
その後、インク滴吐出の終了に伴い、圧力発生室2-2内のインク圧力が低減し、インクの流れの慣性と駆動パルスの放電過程によって圧力発生室2-2内に負圧が発生してインク充填行程へ移行する。このとき、インクタンクから供給されたインクは共通液室1-2に流入し、共通液室1-2からインク流入口6-3を経て流体抵抗部2-1を通り、圧力発生室2-2内に充填される。
流体抵抗部2-1は、吐出後の残留圧力振動の減衰に効果が有る反面、表面張力による最充填(リフィル)に対して抵抗になる。流体抵抗部を適宜に選択することで、残留圧力の減衰とリフィル時間のバランスが取れ、次のインク滴吐出動作に移行するまでの時間(駆動周期)を短くできる。
【0084】
(液体吐出装置)
本発明の液体吐出装置は、本発明の液体吐出ヘッドを備えており、更に必要に応じてその他の手段を有している。
【0085】
<液滴>
前記液滴としては、前記液体吐出ヘッドで吐出可能な液体であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インク、インクジェット用インク、光重合性インク、前処理液、定着処理液、レジスト、パターン形成材料、などが挙げられる。これらの中でも、インクジェット用インクが特に好ましい。
【0086】
<その他の手段>
前記その他の手段としては、例えば、制御手段などが挙げられる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0087】
(画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、インク収容手段と、液体吐出ヘッドと有してなり、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
【0088】
<インク収容手段>
前記インク収容手段は、インクジェット用インクを収容する手段であり、例えば、タンク、インクカートリッジなどが挙げられる。
前記インクカートリッジは、前記インクジェット用インクを容器中に収容してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材などを有してなる。
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを有するものなどが好適である。
【0089】
<液体吐出ヘッド>
前記液体吐出ヘッドは、前記インクジェット用インクに刺激を印加し、前記インクを飛翔させて画像を記録用メディアに記録する手段である。
前記液体吐出ヘッドとしては、本発明の液体吐出ヘッドが用いられる。
【0090】
<インクジェット用インク>
前記インクジェット用インクとしては、水を主溶剤として用いる水性インク、反応性有機化合物を溶剤として用いる光重合性インク、200℃以下で揮発しない溶剤を主溶剤として用いる油性インク、及び揮発性溶剤を主溶剤として用いるソルベントインクのいずれにも用いることができる。
【0091】
<<水性インク>>
以下、水性インクに用いる有機溶剤、水、色材、樹脂、添加剤等について説明する。
【0092】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0093】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0094】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0095】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0096】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0097】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、混晶を使用してもよい。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性のよいものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、又は銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
更に、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
【0098】
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。
【0099】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0100】
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0101】
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いるとよい。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0102】
<樹脂>
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いてもよい。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0104】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0105】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度は20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0106】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えてもよい。
【0107】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも、高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0108】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化13】
一般式(S-1)
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0109】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化14】
一般式(F-1)
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
一般式(F-2)
C
nF
2n+1-CH
2CH(OH)CH
2-O-(CH
2CH
2O)
a-Y
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCnF
2n+1でnは1~6の整数、又はCH
2CH(OH)CH
2-CnF
2n+1でnは4~6の整数、又はCpH
2p+1でpは1~19の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。
この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0110】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0111】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0112】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0113】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0114】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0115】
<<光重合性インク>>
前記光重合性インクは、活性エネルギー線硬化型組成物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0116】
前記活性エネルギー線硬化型組成物の含有量は、光重合性インク全量に対して、10質量%~70質量%が好ましい。光硬化反応によって使用できる化合物が異なり、光ラジカル発生開始剤を用いるラジカル重合系光硬化性化合物と、光酸発生開始剤を用いるカチオン重合系光硬化性化合物とに分けられる。なお、前記ラジカル重合系光硬化性化合物と前記カチオン重合系光硬化性化合物を混合して利用することも可能であり、硬化特性や密着強度、作像プロセスに応じて任意に設計することができる。
【0117】
<活性エネルギー線>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
【0118】
<重合開始剤>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、活性エネルギー線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものであればよい。このような重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でもラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。また、重合開始剤は、十分な硬化速度を得るために、組成物の総質量(100質量%)に対し、5質量%~20質量%含まれることが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物などが挙げられる。
また、上記重合開始剤に加え、重合促進剤(増感剤)を併用することもできる。重合促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルベンジルアミン及び4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミン化合物が好ましく、その含有量は、使用する重合開始剤やその量に応じて適宜設定すればよい。
【0119】
<色材>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、色材を含有していてもよい。色材としては、本発明における組成物の目的や要求特性に応じて、ブラック、ホワイト、マゼンタ、シアン、イエロー、グリーン、オレンジ、金や銀等の光沢色、などを付与する種々の顔料や染料を用いることができる。色材の含有量は、所望の色濃度や組成物中における分散性等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、組成物の総質量(100質量%)に対して、0.1~20質量%であることが好ましい。なお、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、色材を含まず無色透明であってもよく、その場合には、例えば、画像を保護するためのオーバーコート層として好適である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
また、顔料の分散性をより良好なものとするため、分散剤を更に含んでもよい。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散物を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。
染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0120】
<有機溶媒>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)組成物であれば、当該組成物を扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。なお、「有機溶媒」とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどの一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、反応性モノマーとは区別すべきものである。また、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0121】
<その他の成分>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、必要に応じてその他の公知の成分を含んでもよい。その他成分としては、特に制限されないが、例えば、従来公知の、界面活性剤、重合禁止剤、レべリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、粘度安定化剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤などが挙げられる。
【0122】
<活性エネルギー線硬化型組成物の調製>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、上述した各種成分を用いて作製することができ、その調製手段や条件は特に限定されないが、例えば、重合性モノマー、顔料、分散剤等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて顔料分散液を調製し、当該顔料分散液に更に重合性モノマー、開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させることにより調製することができる。
【0123】
<油性インク>
前記油性インクは、有機溶剤、顔料、分散剤、及びその他添加剤を含有してなり、前記顔料及び分散剤としては、前記光重合性インクと同じものを利用することが可能である。
【0124】
前記有機溶剤としては、エステル溶剤、アルコール溶剤、高級脂肪酸溶剤、炭化水素溶剤、エーテル等の有機溶剤も使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0125】
前記エステル溶剤としては、例えば、ラウリル酸メチル、ラウリル酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、リノール酸メチル、リノール酸イソブチル、リノール酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、モノカプリン酸プロピレングリコール、トリ2エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2エチルヘキサン酸グリセリルなどが挙げられる。
【0126】
前記アルコール溶剤としては、例えば、イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどが挙げられる。
前記高級脂肪酸溶剤としては、例えば、イソノナン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などが挙げられる。
【0127】
前記炭化水素溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0128】
前記脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素系溶剤としては、例えば、新日本石油社製「テクリーンN-16、テクリーンN-20、テクリーンN-22、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、AF-4、AF-5、AF-6、AF-7」(いずれも商品名)、新日本石油化学社製「日石アイソゾール、ナフテゾール」(いずれも商品名)、エクソンモービル社製「IsoparG、IsoparH、IsoparL、IsoparM、ExxolD40、ExxolD80、ExxolD100、ExxolD140、ExxolD140」(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0129】
前記エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテルなどが挙げられる。
【0130】
前記有機溶剤の含有量は、油性インク全量の60質量%以上が好ましく、70質量%以上98質量%以下がより好ましい。
【0131】
<<ソルベントインク>>
前記ソルベントインクは、有機溶剤、顔料、顔料分散剤、及びバインダー樹脂を含有し、必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記有機溶剤としては、通常の溶剤系インクに用いられる揮発性のある有機溶媒を使用することができる。
【0132】
前記有機溶剤としては、例えば、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、エステル類、ケトン類、芳香族化合物、含窒素化合物などが挙げられる。
【0133】
前記アルコール類としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2-メチルシクロヘキシルアルコールなどが挙げられる。
【0134】
前記グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
【0135】
前記グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
【0136】
前記エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピレン、酢酸nブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどが挙げられる。
【0137】
前記ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。
前記芳香族化合物としては、例えば、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0138】
前記含窒素化合物としては、例えば、アセトニトリル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
【0139】
これらは、印刷時のヘッドノズルの特性への適合性、安全性、乾燥性の観点から種々の溶剤が選択され、必要に応じて複数の溶剤を混合して用いることができる。
【0140】
前記ソルベントインクは、有機溶媒としてグリコールエーテル類を含むことが好ましい。
【0141】
前記グリコールエーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0142】
前記ソルベントインクに用いるバインダー樹脂は、通常のインク組成物に普通に用いられているバインダー樹脂でよく、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、メラミン、ベンゾグアナミン等のアミノ樹脂、ポリアミド樹脂、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ニトロセルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、ベンジルセルロース、トリチルセルロース、シアンエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボシキエチルセルロース、アミノエチルセルロース等のセルロースエーテル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂を含むことが、印字したときの基材との密着性が向上するため好ましい。
【0143】
前記ポリエステル樹脂としては、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル樹脂の両方を用いることができる。前記ポリエステル樹脂は、多塩基酸と多価アルコールとの縮合反応により得られる。前記ポリエステル樹脂の数平均分子量は1,000~50,000が好ましく、2,000~20,000がより好ましい。
【0144】
前記アクリル樹脂としては、通常用いられるラジカル重合性単量体を共重合させたものを用いることができる。
前記ラジカル重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類:アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸nブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0145】
前記ビニル類としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0146】
α-オレフィン類としては、例えば、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノnブチル、フマル酸モノnブチル、イタコン酸モノnブチル、クロトン酸などが挙げられる。
【0147】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4ヒドロキシブチル、アクリル酸(2ヒドロキシメチル)エチル、アクリル酸(2ヒドロキシメチル)ブチル、(メタ)アクリル酸(4ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル2ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ3フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0148】
アミド基含有単量体類としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸アミド、ジアセトンアクリルアミドなどが挙げられる。
【0149】
グリシジル基含有単量体としては、例えば、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
シアノ基含有単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0150】
ジエン類としては、例えば、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
水酸基含有アリル化合物としては、例えば、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルアリルエーテルなどが挙げられる。
3級アミノ基含有単量体としては、例えば、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどが挙げられる。
【0151】
アルコキシシリル基含有単量体類としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0152】
また、1分子中に2個以上の不飽和結合を有する単量体類、例えば、フタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、アクリル酸アリル、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。
これらの単量体は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせても使用できる。
【0153】
塩化ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニルと酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル、マレイン酸等の他のモノマーとの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、好ましくは塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂であり、重量平均分子量30,000以下の共重合樹脂である。
【0154】
これら樹脂は、併用して用いることができ、前記樹脂の含有量は、1質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0155】
インクの着色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどが挙げられる。
これらの着色を2種以上併用したインクセットを使用して記録を行うと、多色画像を形成することができ、全色併用したインクセットを使用して記録を行うと、フルカラー画像を形成することができる。
【0156】
ここで、本発明の液体吐出装置の一例について、
図4及び
図5を参照して説明する。なお、
図4は本発明の液体吐出装置の全体構成の一例を示す側面説明図、
図5は本発明の液体吐出装置の一例を示す要部平面説明図である。
【0157】
この液体吐出装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体201の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して
図4で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0158】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0159】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
なお、記録ヘッド34としては、1つのノズル面に複数のノズルを並べた各色のノズル列を備えるものなどを用いることもできる。
【0160】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するための第2インク供給部としてのサブタンクであるサブタンク35a、35b(区別しないときは「サブタンク35」という。)を搭載している。
このサブタンク35には、カートリッジ装填部204に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジ(メインタンク)10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色の記録液が補充供給される。
【0161】
一方、給紙トレイ202の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0162】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0163】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。 また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。
この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。
【0164】
この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって
図4のベルト搬送方向に周回移動する。
更に、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。
この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。
また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
更に、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。
【0165】
この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャッピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。
【0166】
また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0167】
このように構成したこの液体吐出装置においては、給紙トレイ202から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド部材45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0168】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。
【0169】
このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。
【0170】
記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ23に排紙する。
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出動作などの維持回復動作を行うことにより、安定した液体吐出による画像形成を行うことができる。
【0171】
<記録媒体>
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。
前記非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である基材をいう。
前記非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートフィルムなどのプラスチックフィルムを、好適に使用することができる。
【0172】
記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材、タイル等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。また、記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、セラミックスやガラス、金属などを使用することもできる。
【0173】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
【実施例】
【0174】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0175】
(硬化性樹脂組成物の調製例1)
-硬化性樹脂組成物(X-1)の調製-
500mLビーカー内に、EP-4088Lを80質量部、EP-4100Eを20質量部、PESを4質量部加え、80℃にて48時間加熱した。その後、スパチュラで撹拌を行い、目視にて、PESが均一に溶解していることを確認した。その後、TMMPを47質量部、EGMP-4を47質量部、TC-750を3質量部、及び1B2PZを7質量部、KBM-603を10質量部加え、25℃にて5分間、スパチュラで撹拌を行った。内容物を500mLディスポカップに移した後、遊星式攪拌機を使用して、撹拌を行い、硬化性樹脂組成物(X-1)を得た。
次に、得られた硬化性樹脂組成物(X-1)について、以下のようにして、硬化性、貯蔵弾性率、及び接着性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0176】
<硬化性>
硬化性樹脂組成物(X-1)1gをSUS板の上に載せ、60℃に設定した恒温槽に4時間保存した。その後、硬化性樹脂組成物(X-1)が硬化しているかを、指による触感で確認を行った。指に未硬化の硬化性樹脂組成物(X-1)が付着しないものを合格、付着するものを不合格と判定した。
【0177】
<貯蔵弾性率>
硬化性樹脂組成物(X-1)を縦:40mm、横:10mm、厚み:0.5mmに設計した型に流し込み、80℃の恒温槽にて、4時間で硬化させた後、動的粘弾性測定装置(RSA-G2、TAインスツルメント株式会社製)を用いて、-60℃~200℃、10℃/分の昇温速度、歪0.1%、周波数1Hzの測定条件で測定を行い、25℃の貯蔵弾性率の数値について、下記の基準で評価を行った。
硬化性樹脂組成物の硬化物の特性としては、ある程度の貯蔵弾性率が接着強度等の影響もあり必要である一方、高すぎる貯蔵弾性率は部材を接着させた後の、応力緩和能が悪くなる。その結果、長期信頼性に乏しいものとなってしまうという観点から、本発明においては、A又はBを評価良好とし、Cを評価不良と判断した。
[評価基準]
A:貯蔵弾性率が5MPa以上100MPa未満
B:貯蔵弾性率が100MPa以上300MPa未満
C:貯蔵弾性率が5MPa未満、又は300MPa以上
【0178】
<接着性>
硬化性樹脂組成物(X-1)をSUS板に厚み10μmで塗布した後、幅10mmのNi箔の半分を配合物に付着させ、80℃、4時間で硬化性樹脂組成物(X-1)を硬化させた。その後、万能型ボンドテスター4000plus(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー株式会社製)を用いて、剥離速度0.2mm/sの条件で、90度ピール試験を行い、接着強度を測定し、下記基準で接着性の評価を行った。なお、本発明においては、実用レベルを考慮し、A又はBを評価良好とし、Cを評価不良と判断した。
[評価基準]
A:接着強度が0.2N/cm以上
B:接着強度が0.1N/cm以上0.2N/cm未満
C:接着強度が0.1N/cm未満
【0179】
(硬化性樹脂組成物の調製例2~調製例12、及び硬化性樹脂組成物の比較調製例1~5)
-硬化性樹脂組成物(X-2~X-17)の調製-
調製例1において、表1~表3に示すように配合組成を変えた以外は、調製例1と同様にして、硬化性樹脂組成物(X-2~X-17)を得た。なお、各成分の単位は質量部である。
得られた各硬化性樹脂組成物について、調製例1と同様にして、硬化性、貯蔵弾性率、及び接着性の評価を行った。結果を表1~表3に示した。
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
表1~表3に記載の原料の詳細については、以下の通りである。
・EP-4088L:ジシクロペンタジエンジメタノールのジグリシジルエーテル、株式会社ADEKA製、エポキシ当量:165g/eq.
・EP-4010S:ビスフェノールAのプロピレンオキサイド変性型エポキシ樹脂、株式会社ADEKA製、エポキシ当量:350g/eq.
・ED-503G:1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、株式会社ADEKA製、エポキシ当量:135g/eq.
・EP-3980S:オルトトルイジンのジグリシジルエーテル、株式会社ADEKA製、エポキシ当量:115g/eq.
・EP-4100E:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、株式会社ADEKA製、エポキシ当量:190g/eq.
・EP-1:ビスフェノールヘキサフルオロイソプロピルグリシジルエーテル
・jER-871:三菱ケミカル株式会社製、エポキシ当量:390~470g/eq.
・TMMP:トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、SC有機化学株式会社製
・EGMP-4:テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、SC有機化学株式会社製
・T0429:トリエチレンテトラミン(N,N’-ジ(2-アミノエチル)エチレンジアミン)、東京化成工業株式会社製
・PES:スミカエクセルPES-5003PS、ポリエーテルスルホン、住友化学株式会社製
・TC-750:チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、前記一般式(2-1)において、R1がイソプロピルであり、bとcが共に2であり、R2が前記一般式(2-3)で表される基であり、R5がプロピルである化合物、マツモトファインケミカル株式会社製
・TA-10:チタンテトライソプロポキシド、前記一般式(2-1)において、R1、R2が共にイソプロピルであり、bとcが共に2である化合物、マツモトファインケミカル株式会社製
・1B2PZ:1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、四国化成株式会社製
・KBM-603:N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業株式会社製
・KBM-403:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製
・KBM-803:γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製
・KBM-503:γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製
・KBE-903:γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業株式会社製
【0184】
表1~表3の結果から、調製例1~12の硬化性樹脂組成物は、低温での硬化性、貯蔵弾性率、及び接着性のいずれもが良好であり、接着剤としての性能に優れていることがわかった。特に調製例12の硬化性樹脂組成物は全ての評価項目が良好であった。
これに対して、比較調製例1~4の硬化性樹脂組成物は、特に接着性において満足できる結果が得られなかった。また、比較調製例5の硬化性樹脂組成物は、特に貯蔵弾性率において満足できる結果が得られなかった。
【0185】
(インクの製造例1)
-インクAの調製-
プロピレングリコール30質量部、ジグリセリン5質量部、ナフタレンスルホン酸塩(分散剤)3質量部、サーフィノール465(界面活性剤)2質量部、プロキセルXL2(防腐剤、Arch Chemicals社製)0.1質量部、及び純水54.9質量部を混合し15分間撹拌した。その後、分散染料(Disperse Yellow54)5質量部を加えて30分間撹拌し、トリエタノールアミンにてpH9に調整し、更に30分間撹拌した。攪拌後に平均孔径5.0μmのセルロースアセテートメンブランフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子を除去して、インクAを作製した。
【0186】
(インクの製造例2)
-インクBの調製-
プロピレングリコール25質量部、SC-P1200(ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、平均分子量1,200)10質量部、2-ピロリドン3質量部、サーフィノール440(界面活性剤)0.1質量部、プロキセルXL2(防腐剤、Arch Chemicals社製)0.1質量部、反応染料(C.I. Reactive Blue 15:1)8質量部、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン0.5質量部、及び純水53.3質量部を混合し、60分間撹拌した。撹拌後に平均孔径0.2μmセルロースアセテートメンブランフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子を除去して、インクBを作製した。
【0187】
(インクの製造例3)
-インクCの調製-
顔料(ピグメントブルー15:4)20質量部と、顔料分散剤(ソルスパーズ24000、日本ルーブリゾール社製)8質量部、及びイソボニルアクリレート72質量部を混合し、アイガーミル(メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用)を用いて分散させて顔料分散体を得た。
得られた顔料分散体8質量部、イソボニルアクリレート24質量部、N-ビニルカプロラクタム28質量部、2-フェノキシエチルアクリレート28質量部、CN371(REACTIVE AMINE COINITIATOR、SARTOMER社製)4.5質量部、トリプロピレングリコールジアクリレート1質量部、TPO(2,4,6-trimethylbenzoyl diphenyl phosphine oxide)3質量部、IRGACURE819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、BASF社製)3質量部、及びBYK-315(シリコーン添加剤、BYK Chemie社製)0.5質量部を混合し、60分間撹拌した。撹拌後に平均孔径5μmポリエステルフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子を除去して、インクCを作製した。
【0188】
(インクの製造例4)
-インクDの調製-
Irgalite blue GLVO(顔料)30質量部、Disperbyk 168(分散剤)20質量部、及びトリエチレングリコールジビニルエーテル50質量部を混合し、アイガーミル(メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用)を用いて分散させて顔料分散体を得た。
得られた顔料分散体6.4質量部、γ-ブチルラクトン20質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテル60質量部、ペンタエリトリトールテトラアクリラート5質量部、Irgacure 819(phenylbis(2,4,6-trimethylbenzoyl)-phosphine oxide、BASF社製)4質量部、Irgacure 2959(2-hydroxy-1-[4-(2-hydroxyethoxy)phenyl]-2-methyl-1-propanone、BASF社製)4質量部、Florstab UV 12(安定剤)0.5質量部、及びBYK331(シリコーン添加剤、BYK Chemie社製)0.1質量部を混合し、60分間撹拌した。撹拌後に平均孔径5μmポリエステルフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子を除去して、インクDを作製した。
【0189】
(インクの製造例5)
-インクEの調製-
エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート50質量部に、Disperbyk-111(分散剤、BYK Chemie社製)15質量部添加し、混合溶解させ、LIONOL BLUE FG-7351(顔料、東洋インキ株式会社製)35質量部を投入して撹拌混合後、横型サンドミルを用いて4時間分散を行い、顔料分散体を得た。
得られた顔料分散体14質量部、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート43質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート19質量部、γ-ブチルラクトン19質量部、及びビニル樹脂VMCA(ダウケミカルズ社製の塩酢ビ樹脂)5質量部を混合し、60分間撹拌した。撹拌後に平均孔径5μmポリエステルフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子を除去して、インクEを作製した。
【0190】
ここで、表4に、インクの種類及び分類について、まとめて記載した。
【表4】
【0191】
(実施例1~3及び比較例1)
<液体吐出ヘッドの作製>
硬化後の物性を鑑み、表1~表3の硬化性樹脂組成物を下記表5に示すように分類分けして各分類の代表処方として実施例1~3の硬化性樹脂組成物(X-8、X-10、X-12)、及び貯蔵弾性率が大きい硬化性樹脂組成物の比較例1として比較調製例5の硬化性樹脂組成物(X-17)を、樹脂層7に使用して、
図1及び
図2に示す液体吐出ヘッドを常法により作製した。
【0192】
【0193】
次に、作製した各液体吐出ヘッドを用いて、以下のようにして諸特性を評価した。結果を表6に示した。
【0194】
<初期吐出特性>
液体吐出ヘッドの吐出特性=初期吐出特性として評価した。初期吐出性評価方法としては、吐出された液滴の吐出速度のバラつき(総数150チャネル)を下記の基準で評価した。具体的には、吐出評価用の液体を満たした液体吐出ヘッドに、電気信号を一定周期(マイクロ秒オーダー)で入力し、等間隔で吐出される液滴を撮影した。各液滴の距離を算出(画像処理→測長)し、液滴の吐出速度=(液滴間の距離/電気信号の周期)の計算により算出した。150チャンネル分の上記データを取得し、平均値やバラつきを算出し、平均値に対する変化率(±の%)を求め、下記の評価基準で初期吐出特性を評価した。なお、A、Bを良好とし、Cを不良とした。
[評価基準]
A:±10%以下
B:±15%以下
C:±15%を超える
【0195】
<ヘッド劣化試験>
液体吐出ヘッド内に各インクを充填した状態で70℃、湿度80%RHの環境条件下で、各インクによる液体吐出ヘッドの劣化を加速してヘッド劣化試験を行った。1日間ごとに液体吐出ヘッド内を洗浄した後に上記初期吐出性評価方法を実施し、吐出特性評価結果がCとなった時点で液体吐出ヘッドを分解して破壊箇所を確認した。
【0196】
-ヘッド耐久性評価-
ヘッドの耐久性は、前記ヘッド劣化試験を実施した際の液体吐出ヘッドの吐出特性≒ユニット接合の接合状態の評価が良好であった期間を求め、下記基準で評価した。なお、A、B、Cを良好とし、D、Eを不良とした。
[評価基準]
A:7日間以上
B:5日間以上7日間未満
C:3日間以上5日間未満
D:1日間以上3日間未満
E:1日間未満
【0197】
【表6】
*表6のヘッド耐久性(水性インク)の結果は、インクAとインクBのうち悪い方の結果を示した。
*表6のヘッド耐久性(光重合性インク)の結果は、インクCとインクDのうち悪い方の結果を示した。
【0198】
表6の結果から、本発明の硬化性樹脂組成物を用いた実施例1~3の液体吐出ヘッドは、低温での硬化性、貯蔵弾性率、及び接着性の何れも評価良好であり、特に接着剤としての性能に優れていることが分かった。
また、実施例1~3の液体吐出ヘッドは、低温での組立性、ヘッド吐出特性、種々の液体に対するヘッド耐久性のいずれも評価良好であり、特にヘッド吐出特性とヘッド耐久性とが両立できるという優れた性能を有していることが分かった。
これに対して、比較例1の液体吐出ヘッドは、特にヘッド耐久性で満足できる結果が得られなかった。
【0199】
なお、上記実施例においては、本発明の液体吐出装置をプリンタ構成の液体吐出装置に適用した例で説明したが、これに限るものではなく、例えば、プリンタ/ファックス/コピー複合機などの液体吐出装置にも適用することができる。また、インク以外の液滴を用いる液体吐出装置にも適用することができる。
【0200】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 圧力発生室が列設された流路形成部品と、前記圧力発生室に圧力を付与する圧力発生手段と、を有する液体吐出ヘッドであって、
前記圧力発生手段は、振動手段を前記流路形成部品に対して樹脂層で接合することで形成され、
前記樹脂層が、(A)エポキシ樹脂、(B)ポリチオール化合物、(C)下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2-1)で表されるチタン化合物及び下記一般式(2-2)で表されるチタン化合物から選択される少なくとも1種の接着付与化合物、並びに(D)硬化促進剤を含有する硬化性樹脂組成物を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドである。
[一般式(1)]
【化15】
ただし、前記一般式(1)中、X
1、X
2、X
3、及びX
4は、それぞれ独立して、単結合、O、S、C(CH
3)
2、CO、CO
2、又はSO
2を表す。Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、H、Cl、又はOHを表す。aは、1~10,000の整数を表す。
[一般式(2-1)]
【化16】
[一般式(2-2)]
【化17】
ただし、前記一般式(2-1)及び(2-2)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ独立して、炭素原子数1~10の非置換、若しくは水酸基で置換されたアルキル基、又は下記一般式(2-3)で表される基である。b及びcは、それぞれ独立して、1~3の整数であり、b+c=4である。
[一般式(2-3)]
【化18】
ただし、前記一般式(2-3)中、R
5は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
<2> 前記(A)エポキシ樹脂が、多核多価フェノール化合物のアルキレンオキサイド変性型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンジメタノールのジグリシジルエーテル、及びグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物から選択される少なくとも1種である前記<1>に記載の液体吐出ヘッドである。
<3> 前記(B)ポリチオール化合物が、分子内にメルカプト基を2つ有するチオール化合物、及び分子内にメルカプト基を3つ以上有するチオール化合物の少なくともいずれかである前記<1>又は<2>に記載の液体吐出ヘッドである。
<4> 前記(C)成分である接着付与化合物が、前記一般式(1)で表される化合物、並びに前記一般式(2-1)で表されるチタン化合物、及び前記一般式(2-2)で表されるチタン化合物の少なくともいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の液体吐出ヘッドである。
<5> 前記一般式(1)で表される化合物が、ポリエーテルスルホンである前記<1>から<4>のいずれかに記載の液体吐出ヘッドである。
<6> 前記(A)エポキシ樹脂が、(E)多核多価フェノール化合物のアルキレンオキサイド変性型エポキシ樹脂、(F)ジシクロペンタジエンジメタノールのジグリシジルエーテル、及び(G)グリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を含み、該エポキシ樹脂の含有量が、前記(A)エポキシ樹脂の総量100質量部に対して10質量部以上である前記<1>から<5>のいずれかに記載の液体吐出ヘッドである。
<7> 前記樹脂層が、前記硬化性組成物を硬化した硬化物を含む前記<1>から<6>のいずれかに記載の液体吐出ヘッドである。
<8> 前記樹脂層の平均厚みが2.5μm以下である前記<1>から<7>のいずれかに記載の液体吐出ヘッドである。
<9> 圧力発生室が列設された流路形成部品と、前記圧力発生室に圧力を付与する圧力発生手段と、を有する液体吐出ヘッドを製造する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
振動手段を前記流路形成部品に対して樹脂層で接合することにより前記圧力発生手段を形成する工程を少なくとも含み、
前記樹脂層が、(A)エポキシ樹脂、(B)ポリチオール化合物、(C)下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2-1)で表されるチタン化合物及び下記一般式(2-2)で表されるチタン化合物から選択される少なくとも1種の接着付与化合物、並びに(D)硬化促進剤を含有する硬化性樹脂組成物を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法である。
[一般式(1)]
【化19】
ただし、前記一般式(1)中、X
1、X
2、X
3、及びX
4は、それぞれ独立して、単結合、O、S、C(CH
3)
2、CO、CO
2、又はSO
2を表す。Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、H、Cl、又はOHを表す。aは、1~10,000の整数を表す。
[一般式(2-1)]
【化20】
[一般式(2-2)]
【化21】
ただし、前記一般式(2-1)及び(2-2)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ独立して、炭素原子数1~10の非置換、若しくは水酸基で置換されたアルキル基、又は下記一般式(2-3)で表される基である。b及びcは、それぞれ独立して、1~3の整数であり、b+c=4である。
[一般式(2-3)]
【化22】
ただし、前記一般式(2-3)中、R
5は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
<10> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする液体吐出装置である。
<11> インクジェット用インクを収容する収容手段と、
前記インクジェット用インクに刺激を印加し、該インクを飛翔させて画像を記録用メディア上に記録する液体吐出ヘッドと、を有する画像形成装置であって、
前記液体吐出ヘッドが、前記<1>から<8>のいずれかに記載の液体吐出ヘッドであることを特徴とする画像形成装置である。
<12> 前記インクジェット用インクが、水性インク、光重合性インク、油性インク、及びソルベントインクの少なくともいずれかである前記<10>に記載の画像形成装置である。
【0201】
前記<1>から<8>のいずれかに記載の液体吐出ヘッド、前記<9>に記載の液体吐出ヘッドの製造方法、前記<10>に記載の液体吐出装置、及び前記<11>から<12>のいずれかに記載の画像形成装置によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0202】
1 フレーム
2 流路板
3 ノズル板
4 ベース
5 積層圧電素子
6 振動板
7 樹脂層
8 FPC
W 流路(=圧力室)の幅
w 硬化性樹脂組成物の流路へのはみ出し量
【先行技術文献】
【特許文献】
【0203】
【文献】特開2013-151093号公報
【文献】特開2001-113696号公報