IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特許7081244液体回収装置、液体付着装置、液体回収装置の液体回収方法、及び液体回収プログラム
<>
  • 特許-液体回収装置、液体付着装置、液体回収装置の液体回収方法、及び液体回収プログラム 図1
  • 特許-液体回収装置、液体付着装置、液体回収装置の液体回収方法、及び液体回収プログラム 図2
  • 特許-液体回収装置、液体付着装置、液体回収装置の液体回収方法、及び液体回収プログラム 図3
  • 特許-液体回収装置、液体付着装置、液体回収装置の液体回収方法、及び液体回収プログラム 図4
  • 特許-液体回収装置、液体付着装置、液体回収装置の液体回収方法、及び液体回収プログラム 図5
  • 特許-液体回収装置、液体付着装置、液体回収装置の液体回収方法、及び液体回収プログラム 図6
  • 特許-液体回収装置、液体付着装置、液体回収装置の液体回収方法、及び液体回収プログラム 図7
  • 特許-液体回収装置、液体付着装置、液体回収装置の液体回収方法、及び液体回収プログラム 図8
  • 特許-液体回収装置、液体付着装置、液体回収装置の液体回収方法、及び液体回収プログラム 図9
  • 特許-液体回収装置、液体付着装置、液体回収装置の液体回収方法、及び液体回収プログラム 図10
  • 特許-液体回収装置、液体付着装置、液体回収装置の液体回収方法、及び液体回収プログラム 図11
  • 特許-液体回収装置、液体付着装置、液体回収装置の液体回収方法、及び液体回収プログラム 図12
  • 特許-液体回収装置、液体付着装置、液体回収装置の液体回収方法、及び液体回収プログラム 図13
  • 特許-液体回収装置、液体付着装置、液体回収装置の液体回収方法、及び液体回収プログラム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】液体回収装置、液体付着装置、液体回収装置の液体回収方法、及び液体回収プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220531BHJP
   F25B 21/02 20060101ALI20220531BHJP
   B01D 53/26 20060101ALN20220531BHJP
【FI】
B41J2/01 125
F25B21/02 L
B01D53/26 100
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018051774
(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公開番号】P2019162779
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】坂本 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 靖司
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-074216(JP,A)
【文献】特開2004-114577(JP,A)
【文献】特開2004-001426(JP,A)
【文献】特開2018-039196(JP,A)
【文献】特開2004-181672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
B01D 53/26 - 53/28
F25B 19/00 - 30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の成分と、第1の成分よりも沸点の高い第2の成分とを含む蒸気を冷却する冷却部と、
装置外部の環境気圧を検知する気圧センサと、
前記気圧センサが検知した環境気圧に基づいて、前記第1の成分及び前記第2の成分を液化させるような温度になるように、前記冷却部の温度を制御する冷却制御部と、
制御された前記冷却部によって液化した、前記蒸気中の前記第1の成分と前記第2の成分とを回収して貯蔵する第1の回収部と、
前記第1の回収部に回収された液体が通過する回収液流路と、
前記回収液流路を加熱する分離加熱部と、
前記気圧センサが検知した環境気圧に基づいて、前記第1の成分を蒸発させ、前記第2の成分を蒸発させない温度になるように、前記分離加熱部の温度を制御する分離加熱制御部と、
前記回収液流路の下流に設けられ、前記第1の成分が蒸発した後の前記第2の成分を回収して貯蔵する第2の回収部と、を備える
液体回収装置。
【請求項2】
第1の成分と、該第1の成分よりも沸点の高い第2の成分とを含む蒸気を冷却する冷却部と、
装置外部の環境気圧を検知する気圧センサと、
前記気圧センサが検知した環境気圧に基づいて、前記第1の成分及び前記第2の成分を液化させるような温度になるように、前記冷却部の温度を制御する冷却制御部と、
制御された前記冷却部によって液化した、前記蒸気中の前記第1の成分と前記第2の成分とを回収して貯蔵する第1の回収部と、
前記第1の回収部に回収された液体が通過する回収液流路と、
前記回収液流路の下流に設けられる第2の回収部と、
前記第2の回収部及び前記回収液流路の上方の空間に設けられる吸着部材と、を備え、
前記吸着部材は、前記回収液流路を移動中の液体及び前記第2の回収部に回収された液体の中から前記第1の成分を非接触に吸着して回収する
液体回収装置。
【請求項3】
前記冷却部は、電子冷却素子を有しており、
前記冷却制御部は、前記気圧センサが検知した環境気圧に基づいて、前記冷却部の前記電子冷却素子の温度を制御する
請求項1又は2に記載の液体回収装置。
【請求項4】
対象物に付着した液体を加熱して前記蒸気を発生させる対象物加熱部と、
前記気圧センサが検知した環境気圧に基づいて、前記対象物加熱部の温度を制御する対象物加熱制御部と、を備える
請求項1乃至の何れか項に記載の液体回収装置。
【請求項5】
前記対象物に液体を付着させる液体付着部と、
請求項に記載の前記液体回収装置と、を備える
液体付着装置。
【請求項6】
前記気圧センサによる前記環境気圧の測定は、前記液体付着装置の電源をオンした後かつ前記液体の付着動作の開始前のタイミングで行う
請求項に記載の液体付着装置。
【請求項7】
液体回収装置の液体回収方法であって、
気圧センサが、装置外部の環境気圧を検知するステップと、
前記気圧センサが検知した環境気圧に基づいて、冷却温度を制御するステップと、
冷却部が、第1の成分と、第1の成分よりも沸点の高い第2の成分とを含む蒸気を、制御された該第1の成分及び該第2の成分を液化させる冷却温度で、冷却するステップと、
第1の回収部が、前記蒸気中の前記第1の成分と前記第2の成分を回収するステップと、
前記気圧センサが検知した環境気圧に基づいて、分離加熱温度を制御するステップと、
分離加熱部が、前記第1の回収部に回収された液体が通過する回収液流路を、制御された前記第1の成分を蒸発させ前記第2の成分を蒸発させない分離加熱温度で、加熱するステップと、
前記回収液流路の下流に設けられた第2の回収部が、前記第1の成分が蒸発した後の前記第2の成分を回収するステップと、を有する
液体回収方法。
【請求項8】
コンピュータに、
気圧センサに、装置外部の環境気圧を検知させる検知処理と、
前記気圧センサが検知した環境気圧に基づいて、冷却温度を制御する冷却制御処理と、
冷却部、第1の成分と、第1の成分よりも沸点の高い第2の成分とを含む蒸気を制御された該第1の成分及び該第2の成分を液化させる冷却温度で、冷却させる冷却処理と、
第1の回収部に、前記蒸気中の前記第1の成分と前記第2の成分を回収させる一次回収処理と、
前記気圧センサが検知した環境気圧に基づいて、分離加熱温度を制御する加熱制御処理と、
分離加熱部に、前記第1の回収部に回収された液体が通過する回収液流路を、制御された前記第1の成分を蒸発させ前記第2の成分を蒸発させない分離加熱温度で、加熱させる分離加熱処理と、
前記回収液流路の下流に設けられた第2の回収部に、前記第1の成分が蒸発した後の前記第2の成分を回収させる二次回収処理と、を実行させる
液体回収プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体回収装置、液体付着装置、液体回収装置の液体回収方法、及び液体回収プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置では、記録媒体(印刷媒体)上の先塗りコート剤やインク等の溶剤や水分を除去するため、ヒータなどの熱源によって、記録媒体上の上記成分を乾燥させることで、記録媒体への画像形成を定着させている。乾燥によって生じた蒸気は記録媒体上に定着せず過剰となった溶剤や水分が含まれており、それらは人体や環境に有害になる場合もあることから、乾燥蒸気を冷却し溶剤成分を結露させて排気中より分離回収する技術が既に知られている。
【0003】
特許文献1には、乾燥排気ダクト内に塗布剤回収のための排気冷却機構と、その冷却温度をモニタリングする温度センサと、回収装置とを備え、水と塗布剤を回収することが開示されている。詳しくは、この文献には、水蒸気と塗布剤のうち、乾燥排気ダクト内の圧力センサを用いて算出された塗布剤の結露温度より低温かつ水蒸気の結露温度より高温に制御し、主に水分のみを含む排気を装置外に排気することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、圧力センサは回収装置内部の高温排気が通過する流路の気圧を検知するため、温度使用範囲が高温に耐えうるものでならず、センサが高価になってしまった。
【0005】
また、液体の結露温度は装置外部の環境圧力によって変化するため、結露温度の違う複数の成分の分離精度が悪くなることがあった。
【0006】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、設置環境気圧に左右されず、排気中から適切に溶剤を分離回収できる、液体回収装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
本発明の一態様では、
第1の成分と、第1の成分よりも沸点の高い第2の成分とを含む蒸気を冷却する冷却部と、
装置外部の環境気圧を検知する気圧センサと、
前記気圧センサが検知した環境気圧に基づいて、前記第1の成分及び前記第2の成分を液化させるような温度になるように、前記冷却部の温度を制御する冷却制御部と、
制御された前記冷却部によって液化した、前記蒸気中の前記第1の成分と前記第2の成分とを回収して貯蔵する第1の回収部と、
前記第1の回収部に回収された液体が通過する回収液流路と、
前記回収液流路を加熱する分離加熱部と、
前記気圧センサが検知した環境気圧に基づいて、前記第1の成分を蒸発させ、前記第2の成分を蒸発させない温度になるように、前記分離加熱部の温度を制御する分離加熱制御部と、
前記回収液流路の下流に設けられ、前記第1の成分が蒸発した後の前記第2の成分を回収して貯蔵する第2の回収部と、を備える
液体回収装置、を提供する。
【0008】
本発明の他の態様では、
第1の成分と、第1の成分よりも沸点の高い第2の成分とを含む蒸気を冷却する冷却部と、
装置外部の環境気圧を検知する気圧センサと、
前記気圧センサが検知した環境気圧に基づいて、前記第1の成分及び前記第2の成分を液化させるような温度になるように、前記冷却部の温度を制御する冷却制御部と、
制御された前記冷却部によって液化した、前記蒸気中の前記第1の成分と前記第2の成分とを回収して貯蔵する第1の回収部と、
前記第1の回収部に回収された液体が通過する回収液流路と、
前記回収液流路の下流に設けられる第2の回収部と、
前記第2の回収部及び前記回収液流路の上方の空間に設けられる吸着部材と、を備え、
前記吸着部材は、前記回収液流路を移動中の液体及び前記第2の回収部に回収された液体の中から前記第1の成分を非接触に吸着して回収する
液体回収装置、を提供する。
【発明の効果】
【0009】
一態様によれば、液体回収装置において、設置環境気圧に左右されず、排気中から適切に溶剤を分離回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の液体回収装置が適用される画像形成装置(液体付着装置)を含むシステムの概要図。
図2】第1実施形態に係る、大気圧センサを用いた排気冷却制御による液体回収機構を備える液体回収装置の断面図。
図3】第2実施形態に係る、大気圧センサを用いた加熱制御による二次分離機構を備えた液体回収機構の断面図。
図4】溶剤成分の一例であるプロピレングリコールの蒸気圧曲線を示すグラフ。
図5】溶剤成分の他の例であるトリメチレングリコールの蒸気圧曲線を示すグラフ。
図6】第3実施形態に係る、大気圧センサを用いた加熱制御による二次分離機構を備えた液体回収機構の断面図。
図7】第4実施形態に係る、自然冷却方式を用いた液体回収機構の断面図。
図8】本発明の実施形態に係る液体回収の制御ブロック図。
図9】本発明の実施形態に係る大気圧を用いた温度制御の全体概略フロー。
図10】画像形成装置の起動時における、大気圧に基づいた溶剤回収制御の設定フロー。
図11】大気圧制御設定プロセスのフロー。
図12】大気圧制御反映先設定プロセスのサブフロー。
図13】大気圧測定周期設定プロセスのサブフロー。
図14】大気圧測定・反映プロセスのサブフロー。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。下記、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
<液体付着装置(システム)>
まず、図1を用いて画像形成システムについて説明する。
【0013】
図1は、本発明の液体回収装置が適用される画像形成装置(液体付着装置、液体付与装置)を含む画像形成システムの概要図である。画像形成システム100は、例えば、連帳方式のインクジェット式プリンタである。
【0014】
画像形成システム100は、給紙部110と、画像形成装置120と、用紙反転部130と、画像形成装置140と、用紙回収部150と、を有している。
【0015】
給紙部110は、アンワインダー111により巻き出された、記録媒体200を画像形成装置120へと供給する。なお、記録媒体200は、インク滴が吐出される印刷媒体、印字媒体、ウェブ状印刷メディアとして機能し、例えばロール紙等の連続シートや、長尺状のフィルム等であってもよく、インクが付着する対象物となる。
【0016】
画像形成装置120は、インクヘッド122が設けられた作像部121と、乾燥部123と、用紙駆動ローラ124と、を備える。作像部121において、インクヘッド122は、給紙部110より供給されて搬送されている記録媒体200の片面に、インクを吐出する。
【0017】
インクは液体の例であり、例えば液体は水性インクであっても、油性インクであってもよい。さらに染料を含んでいても顔料を含んでいてもよい。
【0018】
例えば、インクが水性インクの場合、各色の顔料分散体(ブラック、シアン、イエロー、マゼンタ)、水溶性有機溶剤(保湿剤、浸透剤として機能)、水、界面活性剤、防カビ剤、消泡剤、及びpH調整剤などの成分から構成される。
【0019】
乾燥部123は作像部121により印字された記録媒体200上のインクを乾燥させる。記録媒体200上のインクを乾燥させることで、インクの成分のうち、各色の顔料分散体や界面活性剤を残して、水溶性有機溶剤や水が蒸発する。
【0020】
用紙駆動ローラ124は、記録媒体200を搬送する。これらの構成要素によって画像形成装置120において、画像印字を行う。
【0021】
用紙反転部130は、記録媒体200を反転することで、画像形成装置120が印字した面と反対面が後段の画像形成装置140で印字面になるように搬送する。
【0022】
画像形成装置140は、インクヘッド142が設けられた作像部141と、乾燥部143と、用紙駆動ローラ144と、を備えており、画像形成装置120と同等の機能を有し、記録媒体200のうち、画像形成装置120の印字面と異なる印字面を印刷する。
【0023】
用紙回収部150は、リワインダー151により、印字完了した記録媒体200を巻き取って回収する。
【0024】
これらの構成に加えて、印字前に先塗りコーティングを施すことでインク定着性を改良し、印字可能な記録媒体の種類を拡張可能な先塗装置(前処理液塗布装置)を設けてもよい。さらに、インクや記録媒体の種類によって印字後の乾燥部123における乾燥フローのみでは不足する場合は、画像形成システムにおいて画像形成装置120、140の後段に乾燥性能を補填する乾燥装置を別途設けた構成にしてもよい。
【0025】
図1において、画像形成装置120,140に設けられる乾燥部123,143は乾燥により用紙から蒸発した液体を回収する液体回収装置として機能する。そして作像部121,141は、対象物である記録媒体200にインク(液体)を吐出させる液体付着部として機能する。作像部(液体付着部)と、乾燥部(液体回収装置)と、を有する画像形成装置120,140は、液体付着装置として機能する。
【0026】
また、前処理液を塗布し、前処理液のための乾燥部を設ける場合は、前処理液用乾燥部は、乾燥により対象物から蒸発した液体を回収する液体回収装置として機能する。そして後処理液塗布装置は、液体付着部として機能する。後処理液付与装置および後処理液乾燥部を有する前処理液付与乾燥装置は、液体付着装置として機能しうる。
【0027】
同様に、後処理液を塗布し、後処理液のための乾燥部を設ける場合は、後処理液用乾燥部は乾燥により対象物から蒸発した液体を回収する液体回収装置として機能する。そして後処理液付与部は、対象物に後処理液(液体)を吐出させる液体付着部として機能する。後処理液付与部(液体付着部)および後処理液乾燥部(液体回収装置)を有する後処理液塗布乾燥装置は、液体付着装置として機能しうる。
【0028】
また、図1図3図6図7において、Xは記録媒体200の搬送方向、Yは奥行方向、Zは高さ方向を示している。
【0029】
<液体回収装置:第1実施形態>
次に、図2を用いて、図1の乾燥部である液体回収装置における排気と溶剤回収について説明する。図2は、第1実施形態に係る、大気圧センサを用いた排気冷却制御による液体回収機構を備える液体回収装置1の断面図である。
【0030】
例えば、図2に示す液体回収装置は図1中の画像形成装置120内において、作像部121の後段に設けられる乾燥部123に適用される。あるいは、先工程である前処理液や、後工程である後処理液の塗布後に、処理液を乾燥させるための乾燥部に適用されてもよい。
【0031】
図2に示す液体回収装置(溶剤回収装置)1は、乾燥機構10及び液体回収機構20を備えている。
【0032】
乾燥機構10は、外部吸引ファン11、対象物乾燥ヒータ12、対象物加熱部温度センサ13、搬送ベルト14、搬送ベルト駆動モータ15、及び対象物加熱制御部16を備えている。
【0033】
液体回収機構20は、乾燥排気ファン21、蒸気流路22、溶剤回収部23、冷却部24、冷却部温度センサ25、冷却制御部26、及び外部排気ファン27を備えている。液体回収機構20において、蒸気流路22と溶剤回収部23を構成する内壁部は、排気ダクトとして機能する。
【0034】
また、液体回収装置1の筐体2の外側には、大気圧センサ3が設けられている。そして、液体回収装置1の筐体2には、吸気口及び排気口が形成されており、吸気口には外部吸引ファン11が設けられ、排気口には外部排気ファン27が設けられている。
【0035】
乾燥機構10において、印刷・塗布後の記録媒体200は、搬送ベルト駆動モータ15により駆動される搬送ベルト14によって、図1に示す乾燥部123(143)の位置まで搬送される。
【0036】
乾燥機構10では、搬送ベルト14による搬送経路上を、対象物乾燥ヒータ12によって高温にすることで、記録媒体200上のインクに含まれる溶剤及び水分を乾燥・蒸発させる。搬送ベルト14には対象物加熱部温度センサ13が設けられ、対象物加熱制御部16は、対象物加熱部温度センサ13による温度値に基づいて乾燥温度を適切に制御して、対象物加熱部である対象物乾燥ヒータ12が駆動している。
【0037】
乾燥機構10において、記録媒体200上のインクに含まれる溶剤及び水分は、外部吸引ファン11によって吸引される外部空気FAに接触し、乾燥排気ファン21によって換気されることで、記録媒体200から、乾燥蒸気V1として積極的に蒸発する。そして、記録媒体200より蒸発した乾燥蒸気V1は、装置内部に進入してきた外部空気FAとともに、乾燥排気ファン21によって吸引されることで、搬送ベルト14の上部から排気ダクトの蒸気流路22の方へ排気される。
【0038】
なお、本例では、乾燥排気ファン21によって、吸引するような空気の流れを作ることで、乾燥蒸気V1を搬送ベルト上から蒸気流路22へ移動させて排気する例を示したが、排気させる方向とは反対側からエアナイフを吹き付けることによって、乾燥蒸気V1を排気させてもよい。
【0039】
液体回収機構20において、蒸気流路22に導入された乾燥排気V2は、冷却部24を通過して外部排気ファン27より外部へと排気される。
【0040】
詳しくは、冷却部24は冷却部温度センサ25の温度値と外部気圧を測定する大気圧センサ3の気圧値に基づいて、冷却制御部26により適切に温度制御される。例えば、本実施形態の冷却部24は、電子冷却素子(ペルチェ素子)を有しており、電子冷却素子へ流れる電流量を調整することで、冷却部24における電子冷却素子の吸熱量が調整されて、冷却部24の温度が制御される。
【0041】
温度制御された冷却部24と接触した乾燥排気V2は、溶剤・水の両者が液化することで、排気内から結露・分離される。この結露した溶剤と水の混合液体成分は、液体回収機構20の内部領域である排気ダクト内に滴下したのち、排気ダクト下部に設けられた溶剤回収部23内に混合回収液Sとして分離する。
【0042】
混合回収液Sはユーザーが適切に廃棄処理できるように液体回収装置1(乾燥部123)より取り外し可能なタンク構造などにすることによって、液体回収装置1と別体となる構造としてもよい。
【0043】
本実施形態における、第1の制御として、冷却制御部26は、大気圧センサ3が検知した環境気圧及び冷却部温度センサ25の温度値に基づいて、乾燥排気V2中の複数の溶剤成分及び水を液化させるような温度になるように、冷却部24の温度を制御する。この制御を一次分離機構とする。この場合、乾燥排気V2中には溶剤成分(第2の成分)と水(第1の成分)が含まれていることになる。
【0044】
本制御では、冷却部24では液化した溶剤と水を個別に分離する単離プロセスは行わず、乾燥排気V2中から溶剤成分と水分をまとめて分離する構成とする。すなわち、水を含めた複数の含有成分のうち最も結露点が低い成分の結露点以下に温度を制御し、蒸発した含有成分を全て回収できるように冷却することによって液体を回収する。
【0045】
上記の制御により、冷却部24にて溶剤を回収することで、乾燥排気V2は外部排気ファン27を通じて外部排気EAとして人体や環境に有害となる溶剤成分を含有せずに機外に放出することが可能となる。
【0046】
このとき、外部排気に関して、やむを得ず除去不能な成分が含有される可能性があるときは、溶剤回収部23とは別にフィルタ形式の分離機構を介在させて外部排気するシステム構成としてもよい。
【0047】
あるいは、同様の構成を用いた第2の制御として、冷却制御部26は、大気圧センサ3が検知した環境気圧及び冷却部温度センサ25の温度値に基づいて、乾燥排気V2中の複数の溶剤成分(第2の成分)を液化させ、水(第1の成分)を液化させないように、冷却部24の温度を制御してもよい。本制御において、沸点が低い水を第1の成分、沸点が高い溶剤を第2の成分とする。本例においても、外部排気に関して、やむを得ず除去不能な成分が含有される可能性があるときは、溶剤回収部23とは別にフィルタ形式の分離機構を介在させて外部排気するシステム構成としてもよい。
【0048】
このように本発明の本実施形態では、冷却部24で、気圧センサ3が検知した環境気圧に基づいて、水及び溶剤成分、あるいは、溶剤成分のみを液化させるように、冷却部24の温度を制御するため、大気圧変動に伴う溶剤成分の沸点の変化に対して、適宜調整することができる。そのため、液体の結露温度が装置外部の環境圧力によって変化しても、設置環境気圧に左右されず、排気中から適切に溶剤を分離回収することが可能である。
【0049】
また、本実施形態において、大気圧センサ3による温度制御は、溶剤回収における冷却部24のみならず、乾燥プロセスにおける対象物乾燥ヒータ12の使用に関して用いると好適である。即ち、対象物加熱制御部16は、大気圧センサ3が検知した環境気圧に基づいて、対象物加熱部である対象物乾燥ヒータ12の温度を制御する。
【0050】
従来の一般的な温度一定制御による乾燥プロセスでは、気圧変動に伴う溶剤成分の沸点の変化から、気圧が上昇した場合には沸点が上昇し、記録媒体上のインク乾燥・蒸発が不十分となってしまい後工程でのインク付着や剥がれなどの画像不良を招く可能性がある。一方、逆に気圧が減少した場合には沸点が減少することにより過剰な乾燥温度設定となってしまい、乾燥過多による記録媒体の黄変や焼け減少、過度な用紙収縮などが発生する。
【0051】
これに対して、本発明の実施形態では、対象物乾燥ヒータ12の乾燥温度を、測定した環境気圧に基づいて制御するため、温度一定での乾燥制御で気圧変動の際に発生する乾燥不足や乾燥過多で誘発される画像不良を防ぐことができる。
【0052】
上記実施形態では、冷却を用いて溶剤を回収した溶剤回収機構(一次分離機構)について説明したが、図2の構成に加えて、回収溶液中から水分を蒸発させることで溶剤成分のみを分離し、回収する2次分離機構を追加してもよい。
【0053】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態に係る、大気圧センサを用いた加熱制御による二次分離機構を備えた液体回収機構の断面図である。
【0054】
図3の液体回収機構20Aは、図2の一次分離機構の構成に加えて、分離加熱ヒータ33、二次回収部36、水蒸気排気ファン37等からなる二次分離回収機構30を備えている。二次分離回収機構30は、回収溶液中から水分を蒸発させることで溶剤成分のみを分離し、回収するという二次分離機能を有している。
【0055】
第1実施形態の第1の制御では冷却部24により回収された溶剤と水との混合回収液Sが廃棄溶液として廃棄処理されたが、本実施形態では、混合液内から水分を取り除いた溶剤成分のみを廃棄するため、恒常的な廃液量を削減して画像形成装置を運用することが可能となる。
【0056】
詳しくは、本実施形態の液体回収機構20Aの二次分離回収機構30において、第1の溶剤回収部23Aに液下して貯蔵された混合回収液S1は、一定の液量に達すると排液弁31を開放することによって二次回収部(第2の回収部)36へと移動する。
【0057】
排液弁31から二次回収部36への流路中には、混合回収液S1より水成分のみを分離するための分離加熱ヒータ33が設けられている。この分離加熱ヒータ33の温度は、分離加熱部温度センサ34によって測定される。分離加熱ヒータ33の加熱温度は、温度センサ34の読み取り値及び気圧センサ3に応じて、分離加熱制御部35によって制御される。分離加熱ヒータ33、分離加熱部温度センサ34、及び分離加熱制御部35は、第2の溶剤分離機構として機能する。
【0058】
混合回収液S1が分離加熱ヒータ33によって加熱された回収液流路32を通過することで、混合回収液S1より水分のみを蒸発させる。そして、蒸発により混合回収液S1から分離された水蒸気W1は、水蒸気排気ファン37より機外に排気される。
【0059】
一方、水蒸気W1が蒸発により分離した混合回収液S1は、そのまま滴下し、二次回収部36へ分離回収溶液S2として貯蔵される。
【0060】
第1実施形態の第1の制御を用いた第1の溶剤回収機構により結露・分離された混合回収液Sと比較して、本実施形態の二次分離機構(第2の溶剤回収機構)30により水蒸気W1を蒸発させて水分量が除去された分離回収溶液S2は、廃棄溶剤として破棄される量が少なくなる。そのため、ユーザーがメンテナンスにより廃液処理するプロセス数を削減し、より効率的な画像形成装置の運用に繋げることができる。
【0061】
このとき、混合回収液Sから水蒸気W1を取り除く分離加熱ヒータ33の制御に関して、機外に設けられた大気圧センサ3の読取り値に基づいて温度制御を行うと、より好適である。即ち、本実施形態において、分離加熱制御部35は、大気圧センサ3が検知した環境気圧に基づいて、分離加熱部である分離加熱ヒータ33の温度を制御する。
【0062】
従来のような大気圧を温度に反映させない排気ダクト内での分離回収機構では、ダクト内の排気圧と機外の大気圧との相関が不明確であり、結露温度の違う複数の成分の分離精度が悪くなる。
【0063】
これに対して、本実施形態では、含有溶剤を一重に回収できる冷却部24による第1の溶剤回収機構と、第1の溶剤回収機構により回収された混合回収液S1を更に分離・回収する二次分離機構(第2の溶剤回収機構)30とを備えている。そのため、排気ダクト内での不安定な単体分離機構を実施すること無く、排気ダクト内と比較して静的かつ低温な第2の溶剤回収機構で、大気圧に応じた分離温度で加熱制御する。この本制御により、液体回収装置1の設置環境気圧に左右されず、排気中から、効率よく水分(第1の成分)を蒸発して分離させ、水よりも沸点が高い溶剤成分(第2の成分)を適切に回収することができる。
【0064】
また、仮に高温排気が通過する流路内に圧力センサを設けるとすると、気圧センサの温度使用範囲が高温に耐えうるものでなくてはならず、溶剤付着によるメンテナンス・交換等を必要とすることにも繋がるため非効率的であるが、本発明の構成では、圧力センサは装置外に設けられている。そのため、本発明の構成では、圧力センサの温度使用範囲は外気温で足りるため高価な圧力センサを設置する必要がなく、溶剤付着によるメンテナンスも不要となる。
【0065】
ここで、図4図5に、代表的なインク溶剤の例の蒸気圧曲線を示す。詳しくは、図4は、プロピレングリコールの蒸気圧曲線であり、図5は、トリメチレングリコールの蒸気圧曲線である。(出典元:神戸海難防止研究会HPより引用)図4及び図5において、横軸は溶剤の温度、縦軸は蒸気圧を示している。
【0066】
ここで標準大気圧1atm=101.33kPaにより、上記の2つの代表的なインク含有溶剤の蒸気圧曲線から、プロピレングリコール及びトリメチレングリコールのいずれの溶剤も大気圧下での沸点が200℃に近い。
【0067】
したがって、図4又は図5に示す溶剤と水とをインク内に含んでいる場合、温度制御を下記のように実施する。
【0068】
記録媒体の蒸発加熱制御では、対象物乾燥ヒータ12が、記録媒体200上のインクの溶剤及び水を蒸発させるように、対象物加熱制御部16では、加熱温度で加熱された記録媒体200が、測定された大気圧における溶剤の沸点(例えば200℃)よりも高くなるように調整して設定する。
【0069】
また、図2の構成の第1の制御及び図3に示す実施形態の冷却制御では、溶剤と水からなる溶媒すべてを液化させるように設定されるため、冷却制御部26は、冷却温度で強制冷却された記録媒体200が、測定された大気圧における水の沸点(例えば100℃)よりも低くなるように調整して設定する。
【0070】
あるいは、図2の構成の第2の制御を行う場合の冷却制御では、溶媒のみを液化されるように設定されるため、冷却制御部26は、冷却温度で強制冷却された蒸気V2が、測定された大気圧における水の沸点(例えば100℃)よりも高く、溶剤の沸点(例えば188.2℃又は204℃)よりも低くなるように調整して設定する。
【0071】
さらに、図3の構成の分離加熱制御では、分離加熱制御部35は、加熱温度で加熱される混合液体が、測定された大気圧における、水の沸点(例えば100℃)以上、且つ溶剤の沸点(例えば188.2℃又は204℃)よりも小さくなるように調整して設定する。
【0072】
ここで図4図5に示したインク含有の溶剤の蒸気圧曲線からわかるように、溶剤を組成するプロピレングリコール及びトリメチレングリコールは大気圧下での沸点が200℃近いため、水の沸点(例えば100℃)とは明確に違いがある。そのため図3における第2の分離回収機構における水蒸気分離プロセスでは、分離加熱ヒータ33によって100℃程度で沸点を迎える水を分離することで、これらの溶剤成分を第2の回収機構において分離回収した後、廃棄処理が可能となる。
【0073】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係る、大気圧センサを用いた加熱制御による二次分離機構を備えた液体回収機構の断面図である。
【0074】
図3に示す上記実施形態では、回収した混合回収液の破棄量を少なくするために、加熱により水蒸気W1による水分を除去していたが、本実施形態では、回収した混合回収液から水を分離するために、吸着部材を用いて水分を除去する。
【0075】
本実施形態では、二次分離回収機構30Bとして、吸着部材38、吸着部材加熱ヒータ33B、二次回収部36等を備えている。
【0076】
本実施形態では、吸着部材38は、二次回収部(第2の回収部)36及び回収液流路32の上方の空間に設けられている。吸着部材38は、混合回収液が回収液流路32を通って移動する際の大気中の水分(第1の成分)を吸着する。また、吸着部材38が、回収液流路32を移動する液体(混合回収液)に加えて二次回収部36に回収された液体から水分を吸着することで、二次回収部36には、回収溶剤S0が残る。吸着部材38は、例えば、シリカゲルのような除湿剤であって、選択的に水分を除去できる部材である。
【0077】
吸着部材加熱ヒータ(吸着部材加熱部)33Bは、水分を蒸発させる温度で吸着部材38を加熱する。
【0078】
そして、蒸発により吸着部材38から分離された水蒸気W1は、第2実施形態同様に、水蒸気排気ファン37より機外に排気される。
【0079】
本実施形態の液体回収機構10Bでは、吸着部材38は、回収液流路32を移動中の液体や、二次回収部36に回収された液体の中から選択的に、水分を吸着する。この制御により、液体回収装置1の設置環境気圧に左右されず、移動中の液体から、効率よく水分(第1の成分)を吸着して分離させ、吸着部材が吸着しない溶剤成分(第2の成分)を、二次回収部36で適切に回収することができる。
【0080】
<第4実施形態>
上記実施形態では、温度が制御された冷却部によって蒸気を強制冷却する例を示したが、乾燥排気が外気によって充分冷却され溶剤回収が可能な場合には、冷却部24を省略し排気ダクトを蛇行させる等によって外部環境との接触面を用いて自然冷却を行うような構成であってもよい。
【0081】
自然冷却方式を用いた溶剤の回収機構について説明する。図7は、第4実施形態に係る自然冷却方式を用いた液体回収機構の断面図である。図7の構成では、第1の溶剤回収機構の冷却部24に代えて、蛇腹上にした排気ダクト内に複数の自然冷却部及び複数の回収部を設けられている。なお、自然冷却部を構成する蒸気の流路の形状は、蛇腹状に屈曲した形状に限られず、例えば内壁に沿って迂回するような形状であってもよい。
【0082】
図7に示すように、自然冷却部28x,28y,28zは、外気と接触するように蛇行している蒸気の流路である。それぞれの自然冷却部28x,28y,28zの下部には、外気環境からの自然冷却により結露・分離して滴下した溶剤及び水分を混合回収液Sx,Sy,Szとして回収・貯蔵する回収部23x,23y,23zが設けられている。即ち、本実施形態では、冷却部は自然冷却部28x,28y,28zによって構成されている。
【0083】
本実施形態において、乾燥機構10より排気ダクト内に流入した乾燥排気V2は、機外に露出した排気ダクト内の複数の自然冷却部28x,28y,28zを通過して外部排気ファン27Cより機外に排気される。詳しくは、乾燥排気V2は複数の自然冷却部28x,28y,28zを通過することで次第に冷却されながらV3からV4へと段階的に溶剤・水分を結露させて分離して外部排気AE1として排気される。
【0084】
一方、自然冷却部28x,28y,28zで乾燥蒸気V3,V4が蒸発により分離した混合回収液Sx,Sy,Szは、そのまま滴下し、溶剤回収部23x,23y,23zへ回収される。溶剤回収部23x,23y,23zで回収された混合回収液Sx,Sy,Szは回収液配管29を通じて第2の溶剤回収機構である二次分離回収機構30Cに移動され、二次分離回収機構30Cにより溶剤と水とが分離される。
【0085】
また、第1の分離回収機構として、冷却部24により温度制御した冷却と、排気ダクト内による自然冷却による冷却との、両者を組み合わせて用いてもよい。例えば、外部環境温度が必要十分に排気ダクト内の乾燥排気を冷却可能な低温である場合には冷却部24による冷却制御を実施せず、第1の分離回収機構として自然冷却による溶剤回収を行う。一方で排気冷却に際して不足が認められるほどに外気温が高温の場合には、自然冷却による溶剤回収に変えて冷却部24による強制冷却を実施して溶剤回収を行う。
【0086】
冷却部24を用いた強制冷却による溶剤回収制御の実施有無にかかわらず、本実施形態のように自然冷却方式に基づいた排気ダクトの方式を導入しておくことにより、排気ダクト内での結露を総じて防止・回収することが可能となる。
【0087】
さらに、排気ダクト内の下部の、回収部23x~23zへ滴下するよう蒸気が通る流路の底部22B1,28B1,28B2を、傾斜構造とすることで、排気ダクトの腐食防止やメンテナンスの低減を実現することができる。
【0088】
また、図7に示す実施形態では、液体回収機構20C内の二次分離機構として図3と同様の液体分離加熱方式の二次分離回収機構30Cを適用する例を示しているが、自然冷却を用いた一次分離機構を、図6に示すような吸着部材による吸着分離方式の二次分離回収機構30Bに類似した形状と組み合わせてもよい。
【0089】
<制御ブロック>
図8は、液体回収装置を含むシステムにおける、大気圧を用いる乾燥及び液体回収の制御ブロック図である。本例では、液体回収装置が、図1の画像形成装置120の乾燥部123である例を示す。
【0090】
本例において、画像形成装置120とは別体で設けられた、ユーザー操作部50が画像形成装置120に接続されている。ユーザー操作部50は、ユーザー操作I/F51及び表示部52を備える。表示部52は、ユーザーに情報を表示する。ユーザー操作I/F51はユーザーによって操作され、画像形成装置120の通信I/F46と通信を行う。
【0091】
画像形成装置120には、乾燥部123と、制御基板40とが設けられている。制御基板40は、液体回収装置1である乾燥部123の冷却・加熱部(対象物乾燥ヒータ12,冷却部24,分離加熱ヒータ33)を、大気圧センサ3による気圧読み取り値に基づいて制御する。
【0092】
制御基板40には、本発明の気圧センサを用いた温度調整を伴う液体回収方法が実行可能な温度制御プログラムを、予めインストールしておく、コンピュータ機能を有する。例えば、この液体回収プログラムは、CD-ROM等によって、適用可能としてもよいし、インターネット等による電気通信回線により配信されてもよい。
【0093】
制御基板40には、CPU(Central Processing Unit)41と、ROM(Read Only Memory)42と、RAM(Random Access Memory)43と、制御I/F(Interface)44と、センサI/F45と、通信I/F46とが設けられている。
【0094】
CPU41は、各種フローの演算を行う。ROM42は、CPU41とパラレルバスにより接続され、計算パラメータ及び各種インク・溶剤種類の個別パラメータを保存する。RAM43は、CPU41の動作時計算領域として用いられる。
【0095】
制御I/F44は、冷却・加熱部12,24,33を駆動する。センサI/F45は、外部環境大気圧を測定する大気圧センサ3(4)と冷却・加熱部12,24,33の温度を監視する温度センサ13,25,34とのやりとりを受け持つ。
【0096】
通信I/F46は、制御基板40以外の画像形成装置120内の他基板(画像形成用基板など)や外部の装置内基板との通信、及びユーザー操作部50との通信を行う。
【0097】
ユーザーあるいはメンテナンス担当者が、ユーザー操作部50の表示部52又はユーザー操作I/F51を用いてインクや溶剤の変更に基づいて制御目標温度を変更する際には、入力された情報が制御基板40内部のROM42に保存され、CPU41による制御目標計算フロー実行時に読み出される。
【0098】
図8では、液体回収装置1の冷却・加熱部12,24,33の温度を、CPU41が一括して制御する例を示しているが、上述の図2図3図6図7に示した通り、液体回収装置のそれぞれの対象物加熱制御部16、冷却制御部26、分離加熱制御部35に、上記の制御基板40に相当する基板を設けて個別に制御を行ってもよい。あるいは、冷却・加熱部12,24,33を同時かつそれぞれを複数箇所まとめて監視・制御できるような構成としてもよい。
【0099】
また、ROM42及びRAM43はそれぞれ独立したデバイスとして実装されるのではなくCPU41の内部回路によって内包される構成であってもよい。
【0100】
<制御概略>
図9は、本発明の実施形態における大気圧を用いた温度制御の全体概略フローである。
【0101】
まず、電源ONとともにフローが開始される(START)。
【0102】
ステップS1(下記、単にSと示す)において、起動時設定を行う。起動時設定において、大気圧を測定し、測定された大気圧に基づいて、CPU41又は対象物加熱制御部16が記録媒体加熱温度を設定し、CPU41又は冷却制御部26が冷却温度を設定し、CPU41又は分離加熱制御部35が分離加熱温度を設定することができる。詳細は、図10図13図14とともに説明する。
【0103】
起動時設定が終了すると、S2で印刷JOBが開始され、S3でJOB間測定を実施するか、即ち、印刷JOBと次の印刷JOBとの間で大気圧測定を実施するかどうか、を判断する。
【0104】
S3でJOB間測定を実施する場合(Yes)、S4で、大気圧センサ3が大気圧(環境気圧)を測定する。印刷JOB間で、大気圧測定を実施する場合は、その後の制御においては、測定された大気圧に応じて、記録媒体加熱温度、冷却温度、分離加熱温度を設定(更新)する。詳細は、図14とともに説明する。
【0105】
そして、S5で印刷JOBを開始する。
【0106】
S6で、紙間に到達することが予想されたら、S7で、紙間測定を実施するか、即ち、記録媒体と次の記録媒体との間の期間で大気圧測定を実施するかどうか、を判断する。
【0107】
そして、S7で紙間測定を実施する場合(Yes)、S8で、大気圧センサ3が、大気圧測定を実施する。
【0108】
S6の紙間の到達~S8の大気圧測定は、S9で印刷JOBが終了するまで、紙間が到達する毎に繰り返す。
【0109】
なお、紙間で、大気圧測定を実施する場合は、その後の制御においては、測定された大気圧に応じて、記録媒体加熱温度、冷却温度、分離加熱温度を設定(更新)する。詳細は、図14とともに説明する。
【0110】
印刷JOBが完了したら(S9)で、電源をOFFにしてよいか判断する(S10)。
電源をOFFにしない場合は、次の印刷JOBが開始される(S2でYes)まで、待機する。
【0111】
電源をOFFにしてよい場合フローを終了する(END)。
【0112】
<設定フロー>
図10は、画像形成装置の起動時における、大気圧に基づいた溶剤回収制御の設定フローについて説明する図である。図10は、図9のS1の起動時設定における詳細フローに相当する。
【0113】
画像形成装置120が電源投入と同時に起動時設定を開始する際、一連のフローの中で図10のフローを実行する。まず、大気圧センサ3による冷却部24又は加熱部12,33における温度制御プロセスを実施する(S11)。S11の詳細については図11とともに説明する。
【0114】
その後、S12において、起動時に大気圧の測定を行うかどうかを判定する。詳しくは、S11のサブフロー内で起動時における大気圧測定の実施フラグが生成されたかについての条件判定を行う。
【0115】
フラグ生成の場合には(S12でYES)、S13において、大気圧センサ3に大気圧を測定させ、大気圧センサ3の読取値(大気圧、環境気圧)に基づいて、加熱部12,33及び冷却部24の温度に反映して温度制御の目標温度値をパラメータ設定する。S13の詳細については図14とともに説明する。
【0116】
フラグ非生成の場合には(S12でNO)、大気圧を測定するS13を省略して、画像形成装置全体の制御における起動時設定を終了する。
【0117】
次に、図11~13を用いて、図10のS11の大気圧制御設定のサブフローについて説明する。
【0118】
図11は、大気圧制御設定プロセスのフローである。
大気圧制御設定プロセスにおいて、ます、S101で、それぞれの冷却部24や加熱部12,33における大気圧制御の実施有無を設定する制御反映先を設定する。
【0119】
その後、S102において、大気圧測定周期を設定する。詳しくは、大気圧制御プロセスを実施する、画像形成装置120のジョブプロセスに含まれる大気圧測定の実行周期を設定する。
【0120】
S101の制御反映先の設定についての詳細は図12とともに説明し、S102の大気圧測定の周期の設定は図13とともに説明する。
【0121】
図12は、大気圧制御反映先設定プロセスのサブフローである。
制御反映先設定プロセスは、加熱部の大気圧制御対象決定工程P1と、冷却部の大気圧制御対象決定工程P2とを有している。加熱部の大気圧制御対象決定工程P1と冷却部の大気圧制御対象決定工程P2の2つの工程の実行順序は問わず、並列処理によって順不同で実施してもよい。
【0122】
加熱部の大気圧制御対象決定工程P1では、画像形成装置内に存在する加熱部(12,33や他の画像形成部内の加熱部)の制御対象に対して制御有無のフラグ擁立を行う(S201)。これを対象とする全制御対象に対してフラグ設定が完了したかを判断して(S202)、全対象へのフラグ擁立を行う(S202でYESになる)まで繰り返す。
【0123】
同様に、冷却部の大気圧制御対象決定工程P2では、画像形成装置内に存在する冷却部24等の制御対象に対して制御有無のフラグ擁立を行う(S203)。これを対象とする全制御対象に対してフラグ設定が完了したかを判断して(S204)、全対象へのフラグ擁立を行う(S204でYESになる)まで繰り返す。
【0124】
このとき、例えば、図2図7の構成など、制御対象が加熱部ないし冷却部のどちらか一方において存在しないときは、存在しない加熱部の大気圧制御対象決定工程、又は冷却部の大気圧制御対象決定工程を省略して実行してもよい。
【0125】
図13は、大気圧測定周期設定プロセスのサブフローである。
大気圧測定周期設定プロセスは、画像形成装置120の動作において大気圧検知制御を行うタイミングを規定する。
【0126】
大気圧測定周期設定プロセスの実行タイミングは、例えば、電源投入後の起動時T1や印刷JOB間T2、印刷紙間T3等である。
【0127】
それぞれの実行タイミングT1,T2,T3において、まず大気圧測定周期間隔を実施するかどうかの有無を判定する(S301、S303、S306)。
【0128】
大気圧測定間隔を実施する場合(S301、S303、S306でYES)、実行フラグを生成する(S302、S304、S307)。
【0129】
そして、印刷JOB間T2および印刷紙間T3では、印刷JOB間T2や印刷紙間T3が到達する間隔に応じて、実行周期(S305、S308)を設定する。
【0130】
これらの処理についてもT1、T2、T3の設定手順は不問であり、並列処理にて実行してもかまわない。
【0131】
大気圧センサによって加熱部や冷却部の温度補正制御を適切な間隔で実行することにより、画像形成装置の設置環境について潜在的に持つ標高による気圧値だけでなく、天候変化などの経時変化による気圧変化にも追従して温度制御を行うことが可能となる。そのため、適切な乾燥・冷却プロセスを常に実行しながらの画像形成の実施が可能となる。
【0132】
図14は、大気圧測定・反映プロセスのサブフローである。図14のフローは、図10のS13の大気圧測定・設定温度反映のプロセスの詳細に相当する。また、図14のフローが、図9のS1、S4及びS8の大気圧測定のプロセスに適用される。
【0133】
大気圧測定・反映プロセスは、加熱部の温度設定工程P3と、冷却部の温度設定工程P3と、を有している。加熱部の温度設定工程P3と冷却部の温度設定工程P4の実行順序は問わず、並列処理によって順不同で実施してもよい。
【0134】
まず、S401において大気圧センサ3で大気圧(環境気圧)を測定する。そして、大気圧の読取値に応じて、加熱部12,33と冷却部24の制御目標温度を計算し(S402,404)、パラメータ保存を行う(S403、S405)。
【0135】
このとき、大気圧センサ値を読み取り(S401)後に、計算に反映するパラメータに際して、計測時の瞬間的な気圧値に代えて一定時間経過した際の平均気圧値を採用してもよい。前記のパラメータをもって、印字プロセスに採用されるインクやその溶剤の種類に応じて加熱部12,33と冷却部24それぞれの制御目標温度値を計算し(S402、S404)、パラメータとして保存する。
【0136】
また、前述のインクや溶剤については、ユーザーやメーカー側がインクの交換・変更に応じて、外部操作部IFから搭載されるインク種類を選択したり、あるいはインクカートリッジ容器に設けられたインク識別手段に応じて自動的に搭載種類を認識したりすることで、搭載インクの種類に応じてS402、S404にかかる計算フローの設定温度計算式を変更できるような構成としてもよい。
【0137】
本フローにおいても、例えば、図2図5の構成など、制御対象が加熱部12,33ないし冷却部24のどちらか一方において存在しないときは、存在しない加熱部の温度設定工程P3、又は冷却部の温度設定工程P4を省略して実行してもよい。
【0138】
なお、図12及び図14において、対象物の加熱及び二次分離のための加熱について加熱部としてまとめて説明したが、対象物乾燥ヒータ12の加熱制御と、分離加熱ヒータ33の加熱制御を別々に行ってもよい。
【0139】
上記の実施形態により、本発明の液体回収装置において、設置環境気圧に左右されず、排気中から適切に溶剤を分離回収できる。
【0140】
ここで、「液体付着装置」とは、液体吐出部である液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出部を駆動させて、液体を吐出させる装置である。この「液体付着装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置等も含むことができる。
【0141】
例えば、「液体付着装置」としては、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置の他に、立体造形物(三次元造形物)を造形するために粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)が挙げられる。
【0142】
又、「液体付着装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0143】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するもの等を意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子等の電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セル等の媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着する全てのものが含まれる。
【0144】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0145】
又、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液等も含まれる。
【0146】
又、「液体付着装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置等が含まれる。
【0147】
又、「液体付着装置」としては他にも、用紙の表面を改質する等の目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置等がある。
【0148】
又、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等は何れも同義語とする。
【0149】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の実施形態の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0150】
1 液体回収装置
2 筐体
3 大気圧センサ(気圧センサ)
10 乾燥機構
12 対象物乾燥ヒータ(対象物加熱部)
13 対象物加熱部温度センサ(温度センサ)
16 対象物加熱制御部
20,20A,20B,20C 液体回収機構
23 溶剤回収部(回収部)
23x,23y,23z 溶剤回収部(回収部)
23A 第1の溶剤回収部(第1の回収部)
24 冷却部
25 冷却部温度センサ(温度センサ)
26,26A,26B 冷却制御部
28x,28y,28z 自然冷却部
30,30B,30C 二次分離回収機構(第2の液体回収機構)
33 分離加熱ヒータ(分離加熱部)
34 分離加熱部温度センサ(温度センサ)
35 分離加熱制御部
35B 吸着部材加熱制御部
36 第2の回収部
38 吸着部材
40 制御基板
120,140 画像形成装置(液体付着装置)
121,141 作像部(液体付着部)
123,142 乾燥部(液体回収装置)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0151】
【文献】特開2005-144285号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14